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特表2022-535875細菌株ラクトバチルス・パラカゼイおよびヒアルロン酸を含む組成物および皮膚の治療のためのその使用
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  • 特表-細菌株ラクトバチルス・パラカゼイおよびヒアルロン酸を含む組成物および皮膚の治療のためのその使用 図1
  • 特表-細菌株ラクトバチルス・パラカゼイおよびヒアルロン酸を含む組成物および皮膚の治療のためのその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】細菌株ラクトバチルス・パラカゼイおよびヒアルロン酸を含む組成物および皮膚の治療のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20220803BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20220803BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220803BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220803BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220803BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K8/99
A61K31/728
A61K8/73
A61Q19/00
A61P17/00
A61K9/06
A61K9/70 401
A61K9/10
A61P17/00 101
A61P17/16
A61Q17/04
A61P17/02
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572311
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 IB2020055326
(87)【国際公開番号】W WO2020245797
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019000008097
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521530060
【氏名又は名称】ラック2バイオーム・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】LAC2BIOME S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ビッフィ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA16
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC18
4C076FF11
4C076FF68
4C083AA031
4C083AA032
4C083AD331
4C083AD332
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC07
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD39
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE17
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZA90
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC57
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA32
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA05
4C087ZA89
4C087ZA90
(57)【要約】
本発明は、皮膚の老化、皮膚の免疫防御の低下、または紫外線によって誘発されるか、または引き起こされる炎症などの皮膚の炎症/感染に関連するか、またはそれらによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状の予防、治療(治療的または美容的治療薬)または減弱に使用するための、プロバイオティクス(生存しているか、生存可能であるか、または不活化された細菌株)およびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01として同定され、受託番号DSM 26760でDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する細菌株;および
(II)ヒアルロン酸またはその塩;
を含むか、またはからなる混合物Mを含む組成物であって、
任意に、少なくとも1つの許容可能な医薬品または化粧品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含む、組成物。
【請求項2】
該細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760が、生存可能な細菌株である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760が、加熱不活化またはチンダリゼーションまたは超音波処理またはガンマ線照射される、好ましくは加熱不活化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該組成物が、局所的皮膚使用のために、好ましくは、クリームまたはパックに製剤される、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
該組成物が、経口使用のため、好ましくは、懸濁液または即時懸濁液の形成用の調製品に製剤される、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
医薬としての使用のための、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
皮膚の炎症および/または感染症、あるいは関連疾患または症状の、予防および/または治癒的治療のための方法における使用のための、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物であって、該治療が、必要とする対象への組成物の投与を含む、組成物。
【請求項8】
該皮膚の炎症および/または感染症が、紫外線によって誘発される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該皮膚の炎症および/または感染症が、キューティバクテリウム・アクネスまたはプロピオニバクテリウム・アクネスによって誘発される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
紫外線照射;および/または
皮膚にとっての悪天候、好ましくは、太陽光線、寒さまたは風;および/または
皮膚に有害な生活条件、好ましくは、汚染、喫煙または飲酒;
によって引き起こされるか、または誘発される損傷、
および/または関連疾患または症状の、予防および/または治癒的治療のための方法における使用のための、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物であって、該治療が、必要とする対象への組成物の投与を含む、組成物。
【請求項11】
該皮膚の炎症および/または感染症または皮膚に誘発された損傷、あるいは関連疾患または症状が、急性または慢性の皮膚の炎症または感染症、皮膚の細菌またはウイルスまたは真菌感染症、膿瘍(abscess)、膿瘍(aposteme)、蓄膿症、蜂窩織炎、ひょう疽、せつ、癰、化膿性汗腺炎、丹毒、乾癬、アトピー性皮膚炎、にきび、急性または慢性皮膚症、酒さ(rosacea)、酒さ(couperosa)、紅斑、皮膚の発赤、やけど、日焼け、口腔ヘルペスの再活性化、褥瘡、潰瘍、亀裂、瘻、痛み、傷、打撲傷、擦り傷、斑状出血、血腫、擦り剥き、角化症、過角化症、ケロイドを含むか、またはからなる群から選択される、7~10のいずれか1つに請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物の局所的、化粧品、皮膚用途であって、該用途が、
皮膚の恒常性の維持のため、および/または
アンチエイジング皮膚剤として、
である、用途。
【請求項13】
該組成物が、しわ、肌の弾力性の喪失または日光弾性線維症、乾燥肌、肌荒れ、光老化、肌の赤み、頬、鼻および/または耳の拡張毛細血管の存在、シミ、皮膚の異常または不均等な色素沈着または色素沈着過剰の治療における局所的、化粧品用途である、請求項14に記載の化粧品用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の老化、皮膚の免疫防御の低下、または紫外線によって誘発されるか、または引き起こされる炎症などの皮膚の炎症/感染に関連するか、またはそれらによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状の予防、治療(治療的または美容的治療薬)または減弱に使用するための、プロバイオティクス(生存しているか、または不活化された細菌株)およびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は人体の最も外側の内張りであり、潜在的な病原体や有害物質の可能性に対する解剖学的障壁として機能することを前提として、外部からの攻撃に対する身体の防御の第一線を構成する。皮膚の変化は、特に病原体によって引き起こされる皮膚疾患の発症を促進する可能性がある。たとえば、皮膚が老化するにつれて、皮膚は薄くなり、もろくなり、これは、細胞の再生が遅くなり、通常の3~4週間から4~6週間になるためである。皮膚は、時間の経過とともに、皮膚の水分補給の喪失、微小なしわの発症、弾力性の喪失、角質増殖、および色素過剰の斑点の形成を決定する、異なる起源のいくつかの要因によって引き起こされる、構造変化を起こす。
【0003】
さらに、ヒトの皮膚にコロニーを形成する豊富な微生物叢は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、アクネ菌などの皮膚病原体の付着および発生と戦う上で重要かつ有用な機能を果たし、さまざまな要因による不均衡または腸内毒素症に直面する可能性がある。
【0004】
腸内毒素症が皮膚で発生すると、プロバイオティクスはモジュレーターとして機能し、皮膚の微生物叢のレベルでバランスを回復することができる。過去10年間で、新しいテクノロジーの使用により、皮膚微生物叢の分類学的分析が容易になったが、その細菌集団は、約1010種の微生物であり、25以上のフィラ(phila)に属し、その中で最も代表的なものは放線菌、ファーミキューテス、およびプロテオバクテリアである。さまざまな皮膚疾患が皮膚微生物叢の変化に関連しており、たとえば、アクネ菌は皮膚のにきびに関連する病原菌と考えられている。したがって、皮膚微生物叢の恒常性の状況を維持するか、微生物叢腸内毒素症の後に前記恒常性を回復することは、皮膚疾患、特に皮膚感染症または炎症、さらにより具体的には、細菌またはウイルスなどの病原体による感染症または炎症、ならびに皮膚への紫外線の照射または好ましくない状態への皮膚の曝露による、感染症または炎症を予防または治療するための基本である。
【0005】
古典的には、これらの問題は抗菌剤の使用、すなわち、消毒剤と局所抗生物質を使用でアプローチされる。一方では、抗生物質は、間違いなく効果的であるが、有益な細菌を排除することに加えて、特に広域スペクトル抗生物質の長期使用により、感作および潜在的な有害事象のリスクがもたらされる。
【0006】
さらに、紫外線の照射による損傷や皮膚の老化の問題を防ぐための従来のアプローチは、一般に日焼け止めと呼ばれる、紫外線を反射または吸収するクリームまたは皮膚関連製品を使用することである。いわゆる「化学」ソーラーフィルターの有効成分(サリチル酸塩、シンナメート、オキシベンゾン、オクチルクリレンなど)は、その構造のおかげで、紫外線を吸収することができる。一方、二酸化チタンと酸化亜鉛は、不活性な鉱物物質であり、強力なカバー力を持ち、太陽光を物理的に反射するため、いわゆる物理スクリーンに含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記ソーラーフィルターは、紫外線と皮膚との相互作用を防ぐことしかできず、皮膚微生物叢の恒常性の維持を刺激せず、また、ソーラーフィルターで完全にシールドされていない可能性がある前記紫外線によって引き起こされる腸内毒素症または感染症または炎症の場合に、前記恒常性を回復することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
集中的な研究開発活動に続いて、出願人は、ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01DSM26760として同定されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する、生存している、および生存可能であるか、または不活化された細菌株およびヒアルロン酸またはその塩(略して、HA)を含むか、あるいはそれからなる混合物(要するに、本発明の混合物)を含む革新的な組成物(要するに、本発明の組成物)を提供することによって、前述の技術的問題に取り組み、解決した。
【0009】
発明の概略
本発明の第1の態様は、プロバイオティクスおよびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物を使用して、たとえば、自然の皮膚老化または紫外線などの外的要因への曝露によって引き起こされる皮膚老化を予防、軽減または治療することに関する。
【0010】
本発明の第2の態様は、プロバイオティクスおよびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物を使用して、皮膚の免疫防御の低下に関連するか、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状を予防、軽減または治療することに関する。
【0011】
本発明の第3の態様は、皮膚の炎症/感染に関連するかまたはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状を予防、軽減または治療するための、プロバイオティクスおよびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物の使用に関する。
【0012】
本発明の目的に特に有用なプロバイオティクスは、ラクトバチルス属に属する細菌、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ種に属する細菌であり、たとえば、L. パラカゼイ菌株LPC-S01 DSM 26760である。
【0013】
出願人は、プロバイオティクス、好ましくはラクトバチルス属に属する細菌、およびヒアルロン酸を含む組成物が、皮膚の抗菌ペプチドおよびケモカインの放出を促進することによって免疫防御を増強し、表皮の分化および細胞置換の通常のプロセスを増強し、そして真皮の構造を強化することができることを実際に発見した。
【0014】
さらに、出願人は、ヒアルロン酸とプロバイオティクス、好ましくはラクトバチルス属に属する細菌を含む組成物の使用が、抗炎症作用を実行し、紫外線によって誘発されるか、または引き起こされる炎症の活性化を防ぐことができることを発見した。
【0015】
特に、本発明の組成物および混合物は、以下:
- 皮膚の防御および/または治癒のためのメカニズム、特に免疫調節メカニズムを誘発する;
- 炎症性または感染性の皮膚疾患、特にUV-AとUV-Bの両方のUV放射によって誘発される疾患を予防および/または治療する;
- 皮膚に対する病原性のある細菌の増殖と戦う;
- 皮膚の恒常性状態および/または皮膚微生物叢のバランスを維持または回復する;
- 創傷治癒プロセスおよび/または再上皮化および/または瘢痕形成プロセスを促進、促進、促進(favouring、facilitating、promoting)および/または加速する;
- 皮膚の老化と闘うおよび/または遅らせる;
を行うことが可能である。
【0016】
さらに、本発明の組成物は、短期および長期の両方で、正の効果を誘導および/または促進することができる。
【0017】
さらに、本発明の混合物および組成物は、重大な有害作用を有さず、それらは、すべての対象に、特に、小児対象および妊娠中または授乳中の女性に投与することができる。
【0018】
最後に、本発明の混合物および/または組成物は、調製が容易であり、費用効率が高い。
【0019】
以下の詳細な説明から明らかなこれらの目的および他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載された技術的特徴のおかげで、本発明の混合物および組成物(該混合物を含む)によって達成される。
【0020】
添付の図面を参照して、本発明を以下に詳細に説明し、例示する:
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、マッソントリクローム染色でマークされた、生理食塩水(A)および菌株LPC-S01を含む組成物(B)でそれぞれ処置された、組織学的組織の切片の20倍および40倍の拡大画像を示す。
図2図2は、マッソントリクローム染色でマークされた、ヒアルロン酸を含む組成物(A)およびLPC-S01+ヒアルロン酸株を含む組成物(B)でそれぞれ処置された、組織学的組織の切片の20倍および40倍の拡大画像を示す。
図3図3は、紫外線に曝露され、LPC-S01株を含む組成物(P1)、LPC-S01株+ヒアルロン酸を含む組成物(P2)、およびヒアルロン酸を含む組成物(P3)で処置された組織におけるNFκBの核転座の定量化を示す。
図4図4は、UV傷害の4時間後、ヘマトキシリン-エオジン染色でマークされた、生理食塩水(A)、LPC-S01株を含む組成物(B)、ヒアルロン酸を含む組成物(C)、およびLPC-S01株とヒアルロン酸を含む組成物(D)でそれぞれ処置された組織学的組織の切片の20倍の拡大画像を示す。
図5図5は、UV傷害の24時間後、ヘマトキシリン-エオジン染色でマークされた、生理食塩水(A)、LPC-S01株を含む組成物(B)、ヒアルロン酸を含む組成物(C)、およびLPC-S01株とヒアルロン酸を含む組成物(D)でそれぞれ処置された組織学的組織の切片の20倍の拡大画像を示す。
図6a-d】図6a、6b、6c、6dは、24時間(6a:24時間でのNC、6b:24時間でのP3-i)および48時間(6c:48時間でのNC、6d:48時間でのP3-i)での恒常性モデルにおけるH&E染色による組織形態学的分析の顕微鏡下で取得された画像である。
図7図7は、P1-i、P2-i、P3-i製品についての恒常性モデルにおける24時間での遺伝子発現結果(qRT-PCR)(24時間でNCを使用して計算されたRQ = 1;RQ<0.5 脱制御、RQ>2 上方制御)である。
図8図8は、不活化株を含む本発明の組成物を用いた「引っかき傷のある」組織へのUV照射に関する前処置プロトコルである。
図9図9は、不活化株を含む本発明の組成物を用いた「引っかき傷のある」組織へのUV照射に関する後処置プロトコルである。
図10-11】図10および11は、実験条件(それぞれ除外モデルおよび競合モデル)下でのインビトロでの皮膚インサート上のLog10 CFUで発現した病原体C. アクネスDMS1897の生存率の低下を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本発明の文脈において、「皮膚」という用語は、外部環境に関する防御の第一線を示すために使用される;特に、防御は、外皮層(表皮)に散在するケラチノサイトの作用によって発動され、サイトカインおよびケモカインの分泌を誘発して、警告メッセージを皮膚のより深い層に伝え、炎症反応を引き起こす。
【0023】
本発明の文脈において、「皮膚の老化」という表現は、不可逆的な進化過程を示すために使用される;それは、皮膚の水分補給の喪失、微小なしわの出現、弾力性の喪失、角質増殖および「老人性そばかす」と呼ばれる色素沈着過剰斑の形成を決定する一連の生理学的変化で表される。
【0024】
本発明の文脈において、「プロバイオティクス」という用語は、FAOおよびWHOによって与えられた定義:「適切な量で投与されたときに宿主に健康上の利益を与える生きた微生物」に従って示すために使用される。言い換えれば、プロバイオティクスは、適切な量を摂取すると、生物に有益な機能を発揮することができることを証明する微生物(細菌株)である。
【0025】
本発明の文脈において、「ヒアルロン酸」という表現は、一緒に、あるいは、グリコシド結合β1→4およびβ1→3によって、ならびにそのコンフォメーションを安定化する分子内水素結合によって結合したグルコサミンおよびグルクロン酸の反復単位からなるグリコサミノグリカンを示すために使用される。
【0026】
発明の詳細な記載
本発明の目的は、(I)ラクトバチルス・パラカゼイLPC-S01 DSM 26760(生存および生存可能または不活化またはその誘導体)として同定および寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する細菌株およびヒアルロン酸またはその塩を含むか、または、それらからなる混合物M;ならびに(II)少なくとも1つの許容可能な医薬品または化粧品または食品グレードの添加剤および/または賦形剤を含む組成物(要するに、本発明の組成物または組成物)である。
【0027】
本発明の目的は、薬剤として使用するための、L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760として同定および寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する細菌株およびヒアルロン酸またはその塩を含むか、またはそれらからなる本発明の前記組成物または混合物Mである(記載された実施態様のいずれかによる)。
【0028】
本発明の第1の態様は、皮膚の老化(以下に定義する内因性老化または外因性老化)に関連するか、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状の治療(治療的または美容的)、予防または軽減における使用のための、プロバイオティクス(L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存可能または不活化またはその誘導体)、好ましくはプロバイオティクス細菌、およびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物(本発明の組成物)に関する。
【0029】
皮膚の老化の前記徴候または症状は、一般に皮膚構造の菲薄化および/または降伏(yielding)につながる一連の改変に関連している。
【0030】
好ましくは、前記老化は、遺伝的(または内因性)要因に実質的に依存する内因性、または経時老化である。内因性老化は、原則として、25歳以降に始まる。好ましくは、内因性皮膚老化に関連するか、またはそれによって引き起こされる前記徴候または症状は、しわ、皮膚の弛緩、皮膚の完全性の喪失または低下、皮膚の弾力性の喪失、皮膚の張りの喪失、皮膚の菲薄化、皮膚の落屑および皮膚脱水、「染み」とも呼ばれる暗斑または皮膚の色素沈着過剰の形成の中から選択される。
【0031】
したがって、本発明の目的は、L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760として同定および寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ種に属する細菌株およびヒアルロン酸またはその塩、ならびに、任意に皮膚の恒常性の維持のための、および/または皮膚の老化防止剤としての、たとえば、皮膚のしわ、皮膚の弾力性の喪失(太陽弾性線維症)、乾燥肌または乾燥肌、肌荒れ、光老化、皮膚の赤み、頬、鼻および/または耳の拡張した毛細血管の存在、日焼け、異常または不均一な色素沈着または色素沈着過剰などの美容治療のための、または肌をより明るく自然にするための、第1の物質および/または第2の物質(記載された実施態様のいずれかによる)を含むか、またはそれらからなる本発明の組成物または混合物Mの美容上の使用である。
【0032】
あるいは、前記皮膚の老化は、外因性、すなわち、外部環境要因(外的要因)によるものである。外因性老化は、たとえば、外部因子の攻撃および/またはUV放射(光老化の原因)、タバコの喫煙、アルコール乱用、汚染、刺激物との継続的な接触、冷たさ、風およびそれらの組み合わせなどの環境要因によって引き起こされる。光老化は、皮膚腫瘍などの深刻な病気につながる可能性のある多くの病気や皮膚の損傷に関連しているという点で特に興味深い。
【0033】
好ましくは、外因性皮膚老化に関連するか、またはそれによって引き起こされる前記徴候または症状は、紅斑、日光色素沈着または日焼け、角化症、好ましくは角化亢進、皮膚の発赤、日焼け、火傷、光老化、日光性弾力線維症、皮質白内障、翼状片、冷痛の再活性化、あらゆる性質の皮膚損傷(潰瘍、創傷または打撲)、好ましくは、唇および/または結膜損傷、皮膚黒色腫、扁平表皮癌、基底細胞癌(基底細胞腫)、扁平表皮癌または結膜癌の中から選択される。
【0034】
皮膚の老化は、必然的に、炎症性疾患および/または感染症に対する感受性の増加につながる、皮膚の構造の変化に関連する。
【0035】
1つの実施態様では、のための、プロバイオティクス(L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存可能または不活化またはその誘導体)、好ましくはプロバイオティクス細菌、およびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物(本発明の組成物)は、皮膚の免疫系の低下または炎症性疾患および/または皮膚感染症に関連するか、またはそれらによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状を治療(治療的処置方法)、予防または軽減するために使用される。言い換えれば、該組成物は、皮膚の免疫防御を強化するために使用される。
【0036】
皮膚の免疫防御の低下に関連するか、またはそれによって引き起こされる、あるいは皮膚の炎症状態によって引き起こされる前記少なくとも1つの徴候または症状は、好ましくは刺激または擦り剥きを伴う皮膚炎、にきび、急性または慢性皮膚症(たとえば、酒さまたはクペローザ(couperosa))、皮膚感染症、皮膚炎症、紅斑、潰瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、耳炎、ひび割れ、瘻および痔核の中から選択される。
【0037】
皮膚の疾患または疾患(affections or diseases)は、病原体に関連するか、または病原体によって引き起こされる可能性がある。この場合、病原体は、細菌、真菌、酵母、ウイルスおよびそれらの組み合わせでありうる。
【0038】
1つの実施態様では、プロバイオティクス(L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存可能または不活化またはその誘導体)およびヒアルロン酸またはその塩を含む本発明の組成物または混合物Mは、たとえば、病原体に関連するか、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状を治療(治療的処置方法)、予防または軽減するために使用される。
【0039】
好ましくは、前記病原体は、細菌、好ましくは、プロピオニバクテリウム属の細菌、好ましくは、アクネ菌(種プロピオニバクテリウム・アクネスまたはキューティバクテリウム・アクネス、略して、C. アクネス);ブドウ球菌、好ましくは表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ワルネリ、化膿ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ミティス;コリネバクテリウム亜種;シュードモナス菌、好ましくは、緑膿菌;アシネトバクター、で好ましくは、アシネトバクター・ジョンソニイ;レンサ球菌、好ましくは、化膿レンサ球菌;ミクロコッカス亜種、ブレビバクテリウム亜種である。
【0040】
出願人によって調製された実験データは、ヒアルロン酸およびプロバイオティクス(L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存および生存可能または不活化またはその誘導体)を含む本発明の組成物または混合物Mが、ケラチノサイト、したがって皮膚のレベルでの抗炎症および/または免疫調節効果を発揮することができることを示す。
【0041】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、組成物の使用は、抗炎症能力、免疫調節、表皮細胞の再生、表皮の分化、およびプロバイオティクスによって好まれる皮膚構造の増強、ならびに組成物に含まれるヒアルロン酸による。
【0042】
特に、出願人は、皮膚がヒアルロン酸およびプロバイオティクスを含む組成物に曝露されると、表皮の分化プロセスを増加させることができ、特に角質層が厚くなることを示した。また、コラーゲン繊維は、より高密度かつ緻密であることが観察された。
【0043】
さらに、ケモカインおよびディフェンシンのコード遺伝子の発現の評価から明らかなように、プロバイオティクス((L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存可能または不活化またはその誘導体)およびヒアルロン酸またはその塩を含む本発明の組成物は、皮膚の免疫系の免疫調節(または免疫刺激)効果を発揮することができる。特に、ディフェンシンβ2の発現の増加は、プロバイオティクスと、ヒアルロン酸およびプロバイオティクスを含む本発明の組成物の両方によって観察されている。
【0044】
本発明の実施態様において、プロバイオティクス(ヒアルロン酸またはその塩と共に本発明の組成物中に存在する)は、好ましくは、細菌、真菌、酵母およびそれらの組み合わせ;好ましくは、細菌、より好ましくは、ラクトバチルス・パラカゼイ種に属し、L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760(生存、不活化またはその誘導体)として同定された細菌株の中から選択される:
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、細菌は、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、バチルス、プロピオニバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、アエロコッカスおよびエンテロコッカスの中から選択される少なくとも1つの属に属する。
【0046】
より好ましくは、細菌はラクトバチルス属に属する。
【0047】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、ラクトバチルス属の細菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロリティカス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・アビアリエス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・セロビオサス、ラクトバチルス・コリニフォルミス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・カルバタス、ラクトバチルス・デルブリッキー、ラクトバチルス・ファルシミニス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ガリナラム、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ヘルベチカス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ジョンソニィ、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス、ラクトバチルス・ケフィリ、ラクトバチルス・ムコサ、ラクトバチルス・パニス、ラクトバチルス・コリノイデス、ラクトバチルス・パラプランタルム、ラクトバチルス・ペントサス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ポンティス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サンフランシセンシスおよびそれらの組み合わせの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0048】
より好ましくは、乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ種、好ましくは、クトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572菌株および/またはラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM26760菌株のものである。
【0049】
両方の菌株は、SOFAR S.p.A.によって単離および寄託された;特に、細菌株L.カゼイ DG(登録商標)(Sofar、Italyによって登録された商標)は、1995年5月5日に、SOFAR S.p.A.によって、パリのパスツール研究所の国立微生物培養コレクションに寄託番号CNCMI-1572で寄託された。当初、この菌株の名前は、ラクトバチルス・カゼイDG亜種カゼイであった(ラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572として再分類された)。
【0050】
細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01は、2017年5月15日(ブダペスト条約に基づく寄託の変更の申請日;元の寄託日は2013年1月11日)に、SOFAR S.p.A.によって受入番号DSM26760で、ドイツ微生物細胞培養コレクションに寄託された。
【0051】
ラクトバチルス・パラカゼイ菌株は、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイとして再分類された。
【0052】
本発明の好ましい実施態様では、組成物は、ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01およびヒアルロン酸またはその塩を含む。
【0053】
本発明のさらに好ましい態様によれば、ビフィズス菌属の細菌は、B. アニマリス、B. ビフィダム、B. ブレーベ、B. インファンティス、B. ロンガム、B. アドレッセンティス、B. カテニュラータム、B. アンギュレイタム、B. アステロイデス、B. ボウム、B. コエリナム、B. コリネフォルメ、B. クニクリ、B. デンティコレンス、B. デンティウム、B. ガリクム、B. ガリナラム、B. インディカム、B. イノピナタム、B. ラクティス、B. マグナム、B. メリシカム、B. ミニマム、B. シュードカテニュラータム、B. シュードロンガム、B. プロラム、B. ルミナンチウム、B. サエクラレ、B. サブチル、B. サームアシドフィルム、B. サーモフィルム、B. ツルミエンスの中から選択され;より好ましくは、バチルス・クラウジイ、バチルス・サブチリス、バチルス・コアグランス、バチルス・メガテリウム、バチルス・ハロデュランス、バチルス・スリンギエンシス、バチルス・インソリタス、バチルス・マリナスの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0054】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、プロピオン酸菌属の細菌は、P. シャーマニイ、P. アクネス、P. オーストラリエンス、P. アビダム、P. シクロヘキサニカム、P. フロイデンライシイ、P. グラヌロサム、P. ジェンセニイ、P. ミクロアエロフィルム、P. プロピオニカムおよびP. ソエニイの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0055】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、ストレプトコッカス属の細菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・アガラクチエ、ストレプトコッカス・アンギノサス、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・カニス、ストレプトコッカス・コンステラタス、ストレプトコッカス・ダウネイ、ストレプトコッカス・ディスガラクチエ、ストレプトコッカス・エクイナス、ストレプトコッカス・フェルス、ストレプトコッカス・インファンタリウス、ストレプトコッカス・イニアエ、ストレプトコッカス・インテルメディウス、ストレプトコッカス・ミレリ、ストレプトコッカス・ミチス、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・オラリス、ストレプトコッカス・オリスラッティ、ストレプトコッカス・パラサンギニス、ストレプトコッカス・ペロリス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・シュードニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・ラッチ、ストレプトコッカス・チグリヌス、ストレプトコッカス・サンギニス、ストレプトコッカス・ソブリナス、ストレプトコッカス・スイス、ストレプトコッカス・ウベリス、ストレプトコッカス・ベスティブラリス、ストレプトコッカス・ビリダンスおよびストレプトコッカス・ズーエピデミカスの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0056】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、ラクトコッカス属の細菌は、L. チュンガンゲンシス、L. フォルモセンシス、L. フジエンシス、L. ガルビエ、L. ラクチス、L. ピシウム、L. プランタルム、L. ラフィノラクチスおよびL. タイワンエンシスの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0057】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、アエロコッカス属の細菌は、A. ウリナエ、A. サンギニコラ、A. クリステンセニイ、A. スイス、A. ウリナエクイおよびA. ウリナエホミニスの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0058】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、エンテロコッカス属の細菌は、エンテロコッカス・アビウム、エンテロコッカス・デュランス、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・ガリナラム、エンテロコッカス・ヘモペロキシダス、エンテロコッカス・ヒラエ、エンテロコッカス・マロドラタス、エンテロコッカス・モラビエンシス、エンテロコッカス・ムンドティ、エンテロコッカス・シュードアビウム、エンテロコッカス・ラフィノサスおよびエンテロコッカス・ソリタリウスの中から選択される種の少なくとも1つに属する。
【0059】
本発明の好ましいさらなる態様によれば、酵母菌は、サッカロミセス属、より好ましくは、サッカロミセス・セレビシエおよび/またはサッカロミセス・ブラウディ種に属する。
【0060】
本発明の混合物または組成物では、プロバイオティクス、好ましくは、細菌株L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572および/または細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、(ヒアルロン酸またはその塩と共に)生きて使用される、すなわち、それらはプロバイオティクスとして使用される。
【0061】
あるいは、前記プロバイオティクス、好ましくは、細菌株L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572、および/または細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、死んでいる、および/または不活化されている、および/またはチンダライズされている(tyndallized)。
【0062】
たとえば、本発明の生存可能な菌株(プロバイオティクス)(たとえば、L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760)は、加熱またはチンダリゼーションまたはガンマ線照射または超音波処理によって不活化することができる。加熱またはチンダリゼーションによる前記不活性化は、50℃~120℃、好ましくは65℃~105℃、より好ましくは75℃~95℃の範囲の温度、たとえば、約85℃で、30分~120分、好ましくは、45分~85分の範囲に含まれる時間、たとえば、約60分間;あるいはチンダリゼーションによって、実施することができる。加熱またはチンダリゼーションまたはガンマ線照射または超音波処理プロセスは、当業者に知られている技術、手順、および装置に従って実行される。
【0063】
加熱またはチンダリゼーションによる前記不活化プロセスに付された細菌は、前記加熱またはチンダリゼーション不活化技術に供された細菌の総数に関して、70%~99.5%、好ましくは、80%~95%の範囲に含まれる細菌の%で細胞壁が無傷のままであるが、死んでいる(プレートカウントおよび/または細胞蛍光測定によるコントロール)。
【0064】
さらなる実施態様において、プロバイオティクス、好ましくは細菌株L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572および/または細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、溶解物および/または抽出物の形態で(ヒアルロン酸またはその塩とともに)使用される、すなわち、それらは、パラプロバイオティクスとして使用される。
【0065】
あるいは、前記プロバイオティクス、好ましくは細菌株L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572および/または細菌株クトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、上清、代謝産物、生物学的製剤、ポストバイオティクス、細胞壁およびその成分、エキソ多糖類、リボソームおよび糖タンパク質、グルカンおよび他の多糖類、リポ多糖類および上清の任意の成分の中から選択される細菌産物の形態で(ヒアルロン酸またはその塩と共に)使用される。
【0066】
要するに、本発明の文脈において、細菌株または生存可能な細菌株(たとえば、L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760)またはプロバイオティクスの「誘導体」という表現は、適切な量で投与された(経口または局所経路を介して)場合、ヒトまたは動物の消費者に利益を与える、前述のパラプロバイオティクスまたは細菌株の任意の誘導体および/または成分(上清、代謝産物、生物学的製剤、ポストバイオティクス、細胞壁およびその成分、エキソ多糖類、リボソームおよび糖タンパク質、グルカンおよび他の多糖類、リポ多糖類および上清の任意の成分)である。
【0067】
本発明の文脈において、「プロバイオティクス」という用語は、別段の指定がない限り、上記で定義された、生きているおよび不活化された細菌株(たとえば、L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760)、および前記細菌株の誘導体を示し、それらを含む。
【0068】
一般に、上記プロバイオティクスは、EFSAのQPSリストに記載されている任意の微生物種の単一の微生物または微生物の組み合わせ、またはコンソーシアムである。
【0069】
好ましくは、上記の組成物は、好ましくは細菌、真菌、酵母およびそれらの組み合わせの中から選択される、上記で報告された菌株と上記の他の微生物との組み合わせを含む。
【0070】
プロバイオティクス、好ましくは細菌株 L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572および/または細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、生物の皮膚、腸および/または他の領域の一時的なコロニー形成を可能にするのに十分な最小量で(ヒアルロン酸またはその塩と共に)組成物中に存在する。好ましくは、本発明の組成物の1日摂取量(または単回投与)に関して、前記量は、1x106 CFU~1x1012 CFUの範囲、好ましくは108~1012単位の微生物、108~1012単位の微生物、より好ましくは109~1011単位の微生物、たとえば、約1x109 CFU(コロニー形成単位)以上の範囲に含まれる濃度で変化する。
【0071】
本発明のプロバイオティクス、好ましくは細菌株L. カゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572および/または細菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760は、好ましくは、各摂取量について、108~1012単位の微生物、より好ましくは109~1011単位の微生物の間で可変の量で投与される。
【0072】
好ましい態様によれば、プロバイオティクス、細菌の摂取は、一日に少なくとも1~2回行われるのが好ましい。
【0073】
上記のように、本発明の組成物または混合物Mは、ヒアルロン酸またはその塩、ならびにそれらの組み合わせを含む。前記ヒアルロン酸またはその塩(略して、HA)は、L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760菌株および任意に少なくとも1つのさらなる第1または第2の物質(記載された実施態様のいずれかによる)とともに本発明の組成物に含まれ、好ましくは、約10 kDa(キロダルトン=1,000.00ダルトンまたは103ダルトン)~3,000 kDa、好ましくは、約800 kDa~2,500 kDa、より好ましくは、約1,000 kDa~ 2,000 kDaの範囲に含まれる平均分子量、たとえば、約1,300 kDa、1,400 kDa、1,500 kDa、1,600 kDa、1,700 kDa、1,800 kDaを有する。1つの実施態様では、ヒアルロン酸塩(たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属ヒアルロン酸塩)は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトおよびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0074】
さらに、本発明の文脈において、「ヒアルロン酸またはその塩」または「HA」または単に「ヒアルロン酸」という用語は、ヒアルロン酸それ自体、および加水分解されたヒアルロン酸(たとえば、発酵によって得られる)、ならびに上記のヒアルロン酸塩(ヒアルロン酸塩)を示すために使用される。
【0075】
本発明の前記ヒアルロン酸が、発酵によって得られる生物工学的に加水分解されたヒアルロン酸である場合、それは、約10kDaの平均分子量を有することができる。本発明の前記ヒアルロン酸がヒアルロン酸ナトリウム(たとえば、CAS番号9067-32-7、Mw-分子量1,000~1,400kDaまたはMw1,000~1,700 kDa)またはヒアルロン酸カリウムである場合、それは、約1,000kDa~2,000kDaの範囲に含まれる平均分子量を有し得る。
【0076】
L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760およびHAに加えて、本発明の組成物は、有利には、薬学的に受容される賦形剤および/またはさらなる物質(たとえば、以下に記載される第1の物質または第2の物質)および/または担体をさらに含む。
【0077】
L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760およびHA、ならびに任意に第2の物質(以下に定義される)に加えて、本発明の組成物は、好ましくは、血漿、PRP、瘢痕形成治癒物質(cicatrizing substance)、再上皮化物質、保湿剤(humectant)、保湿剤(hydrating agent)、皮膚軟化剤、吸着剤、鎮痛剤、フレボトニック、抗炎症剤、筋弛緩薬、抗生物質、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、殺虫剤、ペプチドおよび/またはタンパク質物質および/またはコラーゲンなどのタンパク質、グリコサミノグリカンなどの結合組織に属する物質、好ましくはコンドロイチン硫酸、および/またはそれらの組み合わせの中から選択される第1の物質をさらに含む。
【0078】
本発明の1つの実施態様では、組成物は、局所または皮膚局所適用のために、(たとえば、固体、半固体または液体の形態で)、好ましくはクリーム、ゲル、油、エマルジョン(または泡状物)、溶液、分散液(固体-液体または液体-液体)、懸濁液、二相混合物、スプレー(スプレー液)、ガーゼ、プラスター、包帯、ローション、ムース、マスク(皮膚に適用可能なマスク)、軟膏またはペーストの形態で処方される。
【0079】
本発明の1つの実施態様では、組成物は、経口投与用に、好ましくは、錠剤、カプセル、バー、顆粒粉末、蓋(operculum)、頬側可溶性顆粒、サシェまたは丸剤、懸濁液(たとえば、飲用に適したバイアル)または溶液(単相または二相)として処方される。
【0080】
あるいは、組成物は、組成物を水と混合することによって即座に調製される。
【0081】
あるいは、たとえば、皮膚に適用されるマスクまたは経口使用(飲用に適したバイアル)のための懸濁液の調製のために、組成物は、2つの成分、プロバイオティクス(L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760)およびヒアルロン酸またはその塩を一緒に混合することによって即座に調製される。特に、本発明の組成物の即時調製のための装置は、ヒアルロン酸またはその塩の水溶液を含むバイアルおよび粉末、顆粒または錠剤の固体形態でその中の細菌株(L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760、生存可能または不活化またはその誘導体)を含むボトルの一端の部分(たとえば、キャップなど、バイアルを密閉するために)からなりうる;本発明の組成物の即時調製は、バイアルの端部からの固体形態の細菌株を、バイアルに含まれるヒアルロン酸またはその塩の溶液に放出する(たとえば、圧力によって)ことによって起こる。
【0082】
好ましい実施態様によれば、L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760およびHA、および任意に前記第1の物質に加えて、本発明の組成物は、アミノ酸、サプリメント、ビタミン、亜鉛およびセレンなどの微量元素、主要および微量栄養素、酵素および/またはフラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、イヌリン、グアーガムなどのプレバイオティクス物質またはそれらの組み合わせの中から選択される他の物質(第2の物質)を含む。
【0083】
L. パラカゼイ LPC-01 DSM 26760、HA、および任意に第1または第2の物質を含む本発明の組成物は、さらに、前記(II)少なくとも1つの医薬品または食品または化粧品グレードの添加剤および/または賦形剤を含み、これは医薬品または食品に適した治療活性を欠く物質である。本発明の文脈において、医薬品または食品または化粧品の使用に許容される添加剤および/または賦形剤は、たとえば、希釈剤、溶媒(水、グリセリン、エチルアルコールなど)、可溶化剤、酸性化剤、増粘剤、甘味料、香味増強剤、着色剤、滑沢剤、界面活性剤、防腐剤、pH安定化緩衝液およびそれらの混合物などの、固体、半固体または液体の形態の組成物を調製するための当業者に知られているすべての補助物質を含む。
【0084】
L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760菌株およびヒアルロン酸またはその塩、および任意に第1および/または第2の物質を含む本発明の組成物は、医薬組成物(またはライブ生物療法製品)、医療機器組成物、栄養補助食品、食品、新規食品、プロバイオティクス製品、特殊医療用食品(FSMP)用の組成物、または化粧品組成物でありうる。
【0085】
本発明の実施態様(FRn)を以下に概説する:
FR1.治療、皮膚の老化に関連する/それによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状の治療、予防または軽減に、あるいは皮膚の免疫系の低下に関連する/引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状の治療、予防または軽減に、使用するためのプロバイオティクスおよびヒアルロン酸またはその塩を含む組成物。
FR2.内因性皮膚老化および外因性皮膚老化の中から皮膚老化が選択される、FR1に従う使用のための組成物。
FR3.内因性皮膚老化に関連する/それによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状が、しわ、皮膚のたるみ、皮膚の完全性の喪失または低下、皮膚の弾力性の欠如、皮膚の色調の欠如、皮膚の薄さ、皮膚の剥離および皮膚の脱水の中から選択される、FR2に従う組成物。
FR4.外因性皮膚老化に関連する/またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状が、紅斑、色素沈着、角化症、好ましくは角化亢進、皮膚の発赤、火傷、皮質白内障、翼状片、冷痛の再活性化、あらゆる性質の皮膚損傷、好ましくは唇および/または結膜損傷、皮膚黒色腫、皮膚の扁平表皮癌、基底細胞胞癌(基底細胞腫)、角膜または結膜の扁平表皮癌中から選択される、FR2に従う使用のための組成物。
FR5.皮膚の免疫系の低下に関連する/またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの徴候または症状が、好ましくは刺激または擦り剥きを伴う皮膚炎、にきび、感染症、皮膚の炎症、紅斑、潰瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、耳炎、ひび割れ、瘻および痔核の中から選択される、FR1に従う使用のための組成物。
FR6.前記プロバイオティクスが、好ましくは、細菌、真菌、酵母およびそれらの組み合わせの中から選択され、好ましくは、ラクトバチルス、ビフィズス菌、バチルス、プロピオニバクテリウム、連鎖球菌、ラクトコッカス、アエロコッカスおよびエンテロコッカスの中から選択される少なくとも1つの属に属する細菌である、FR1~5のいずれか1つに従う使用のための組成物。
FR7.ラクトバチルス属の細菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロリティカス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・アビアリエス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・セロビオサス、ラクトバチルス・コリニフォルミス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・カルバタス、ラクトバチルス・デルブリッキー、ラクトバチルス・ファルシミニス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ガリナラム、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ヘルベチカス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ジョンソニィ、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス、ラクトバチルス・ケフィリ、ラクトバチルス・ムコサ、ラクトバチルス・パニス、ラクトバチルス・コリノイデス、ラクトバチルス・パラプランタルム、ラクトバチルス・ペントサス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ポンティス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サンフランシセンシスおよびそれらの組み合わせの中から選択される種の少なくとも1つに属する、FR6に従う使用のための組成物。
FR8.細菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ種、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ DG(登録商標) CNCM I-1572菌株および/またはラクトバチルス・パラカゼイ 菌株LPC-S01 DSM 26760のものである、FR6またはFR7に従う使用のための組成物。
FR9.ヒアルロン酸塩が、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトおよびそれらの組み合わせの中から選択される、前記FRのいずれか1つに従う使用のための組成物。
FR10.前記プロバイオティクスが、生きている、および/または死んでいる、および/または不活化されている、および/またはチンダライズされている、および/または溶解物および/または抽出物の形態であり、および/または上清、代謝産物、生物学的製剤、ポストバイオティクス、細胞壁およびその成分、エキソ多糖類、リボソームおよび糖タンパク質、グルカンおよび他の多糖類、リポ多糖類および上清の任意の成分から選択される細菌産物の形態である、前記FRのいずれか1つに従う使用のための組成物。
FR11.前記プロバイオティクスが、108~1012単位の微生物、好ましくは109~1011単位の微生物の間で可変の量で存在する、前記FRのいずれか1つに従う使用のための組成物。
FR12.クリーム、ゲル、オイル、エマルジョン、スプレー、ガーゼ、プラスター、包帯、ローション、ムース、マスク、軟膏、ペースト、または即時調製用の液体製剤の形態で、前述のFRのいずれかに従う使用のための組成物。
【0086】
本発明の文脈における「治療」または「治療的処置」または「治療方法」という用語は、病状または疾患およびその症状または障害の排除、軽減/減少または予防の目的での、治療有効量の組成物または混合物Mの投与を含む、必要としている対象への介入を示すために使用される。
【0087】
「治療有効量」という用語は、個人、研究者、獣医、医師、または他の臨床医または医療従事者によって求められ、定義される組織、系統、哺乳動物、またはヒトにおける生物学的または医学的反応を誘発する活性化合物および/または細菌株の量を示す。
【0088】
本発明の文脈において、「対象」という表現は、ヒト対象または動物対象(たとえば、イヌまたはネコまたは他の哺乳動物などのペット)を示すために使用される。好ましくは、本発明の組成物は、医学的治療の方法で使用するため、またはヒト対象の美容的使用のためのものである。
【0089】
本発明の文脈において、「医療機器」という用語は、1997年2月24日付けの法令第46号に従う、または新しい医療機器規則(EU)2017/745(MDR)に従う意味で使用される。
【0090】
本発明の文脈において、「新規食品」という用語は、1997年の規則EC258に従う意味で使用される。
【0091】
特に明記しない限り、「xからyの範囲に含まれる」量の成分を含む発現組成物または混合物または他のものは、前記成分が、指定されていない場合でも、含まれる範囲内の端の範囲に存在するすべての量で組成物または混合物または抽出物または他のものに存在しうることを示すために使用される。
【実施例
【0092】
実施例A
L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760菌株およびヒアルロン酸またはその塩を含む本発明によるクリーム:
該クリームを調製するために、菌株LPC-S01 DSM 26760(生存可能または不活化)-粉末または粉末カプセル(約8x109 CFU)の形に凍結乾燥-を13mlのヒアルロン酸ベースのクリーム(略して、HAクリーム)に溶解した。
【0093】
HAクリームの組成(重量/重量%)の例:
- 水(溶媒) 100%に適量;
- 機能性物質:オクトクリレン(UV-Bフィルター) 2-8%(4.5%)、カプセルに入った、オクトクリレン(UV-Bフィルター) 0.1-5%(2%)で安定化されたBMDBM、シアオーガニックバター(butyrospermum parkii = シア)(CAS番号194043-92-0) 0.1-4%(1%)、コラーゲン複合体およびパンテノール 0.1-4%(1%)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(UV-Aフィルター) 0.1-4%(1%)、ビタミンE 0.01-1%(0.3%)、クチナシの茎 0.01-1%(0.1%)、低分子量ヒアルロン酸(たとえば、CAS番号9004-61-9) 0.005-1%(0.05%)、中/高分子量ヒアルロン酸(たとえば、CAS番号9067-32-7) 0.005-1%(0.02%);
- 賦形剤および添加剤(2-10% w/w、当業者に知られている技術的要件による):抗酸化剤(たとえば、酢酸トコフェリル)、保存剤(たとえば、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム)、界面活性剤-乳化剤(たとえば、セテアリルグルコシド、セチルアルコール)、乳化安定剤(たとえば、カルボマー)、溶媒(たとえば、1,2-ヘキサンジオール)、研磨剤(たとえば、シリカ)、結合剤(たとえば、PVP)、保湿剤(たとえば、グリセリン)、および/または皮膚調整剤(たとえば、ジメチコン、キサンタンガム、トロポロン)。
【0094】
実施例B
L. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760菌株およびヒアルロン酸またはその塩を含む本発明によるパック:
該パックを調製するために、菌株LPC-S01 DSM 26760(生存可能または不活化、好ましくは、生存可能)-粉末または粉末カプセル(約8x109 CFU)の形に凍結乾燥-をヒアルロン酸またはその塩の水溶液、たとえば、表Aに記載の成分を有する溶液
に溶解した;ここで、低分子量ヒアルロン酸(たとえば、CAS番号9004-61-9) 0.01-2%(0.1%)および中/高分子量ヒアルロン酸(たとえば、CAS番号9067-32-7) 0.005-1%(0.05%)は、重量/重量%(該ヒアルロン酸水溶液の総重量に対して)で存在する。
表A
【表1】
【0095】
- 加熱によって不活化したL. パラカゼイ LPC-S01 DMS 26760菌株:
【0096】
実験パート-(1)
Episkin T-Skin TM モデル(3D皮膚モデル)
Episkin T-SkinTM(略して、T-Skinまたは「全層皮膚」または3D皮膚)は、真皮と表皮を含む、インビトロで再構築された3D皮膚モデルである(全層皮膚モデル)。
Episkin T-SkinTMは、不活性ポリカーボネートフィルター上で培養された正常なヒトケラチノサイトに由来する十分に分化した重層表皮に重ねられたヒト線維芽細胞と同等の皮膚からなるインビトロで再構築された皮膚である。
インビトロで再構築されたヒト皮膚モデルは、形態(多層表皮)、生化学的および生理学的特性の点で、インビボのヒト組織に近く、現在、製品の局所適用の有効性と安全性の評価にとって、動物、エクスビボの外植片、および浸漬細胞単層に最も有望な代替物である(Gordon et al. 2015、Zuang V. 2016)。
【0097】
これらのモデルの生物学的関連性と予測可能性は、現実的な臨床用量と曝露条件で局所的に適用された製品を評価することを可能にする、生細胞の異なる層で組織化された組織の存在に由来する。化粧品などの局所的に適用される製品によるヒトの皮膚の処置は、動的経路を有するゲノム応答をもたらし、それは、転写レベルで、一連の事象に関与する最初の細胞シグナルを表す。3Dヒト組織は、作用機序を研究し、製品の有効性を評価するための関連する試験システムであり、直接的なゲノム応答と、可溶性メディエーターおよび特定のバイオマーカーの発現を介した細胞およびクロストーク通信の結果の両方を考慮に入れている。
【0098】
I.Episkin T-SkinTMモデルでの恒常性モデル(非炎症性)
Episkin T-SkinTMモデルでの恒常性モデルの現在のインビトロ研究において、ヒアルロン酸(HA)および生存可能または不活化細菌株LPC-S01 DSM 26760を含む本発明による組成物の皮膚の恒常性に対する利益に関する有効性は、スキンケアのためのその潜在的な用途および有効性を調査するために評価された。
【0099】
研究の目的は、高濃度への曝露後の本発明による組成物の皮膚耐性プロファイルを研究し、それらの有効性を以下で評価することである:
・抗菌ペプチドの誘導による皮膚の自己防衛の強化、
・ケラチノサイトの自然免疫応答の刺激、表皮再生および分化
・表皮・真皮区画のポジティブリニューアルの誘発、アンチエイジング剤としての作用。
【0100】
I.1.生存可能な菌株-恒常性モデル
I.1.1.分析中の製品およびコントロール
- ネガティブコントロール(NC):0.9% NaCl生理食塩水;
- P1:生理食塩水に再懸濁された生存可能な菌株LPC-S01 DSM 26760;
- P2:ヒアルロン酸系水溶液(上記の実施例B(パック)のように);
- P3:ヒアルロン酸系水溶液に再懸濁した生存可能な菌株LPC-S01 DSM 26760;
【0101】
P3を調製するために、凍結乾燥した生存可能な菌株LPC-S01 DSM 26760の粉末カプセル(約8×10 9 CFU)の内容物を、13mlのヒアルロン酸系水溶液に溶解した。
P1(菌株のみ)を調製するために、凍結乾燥した生存可能な菌株LPC-S01 DSM 26760の粉末カプセル(約8×10 9 CFU)の内容物を、13mlの生理食塩水に再懸濁した。
【0102】
I.1.2.自己防衛と細胞再生能力の増加の方法論評価
真皮と表皮の区画を再現し、したがって、真皮の細胞外マトリックスの修飾および生存可能な皮膚層の分化を研究することができる、インビトロで再構築された完全な3D皮膚モデル(「全層皮膚」モデル)において、プロバイオティクス菌株LPC-S01(生存可能)+ヒアルロン酸(P3)およびヒアルロン酸(P2)のプロバイオティクス菌株LPC-S01(ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760、生存可能;P1)の自己防衛および細胞再生能力の増加を評価した。
【0103】
この研究は、菌株LPC-S01 DSM 26760、ヒアルロン酸、およびLPC-S01菌株+ヒアルロン酸を含む組成物が、免疫応答の活性化、表皮の細胞分化、および真皮の細胞の再生に及ぼす影響の評価に焦点を当てた。菌株LPC-S01 DSM 26760、ヒアルロン酸、およびLPC-S01プロバイオティクス菌株+ヒアルロン酸を含む組成物を3D皮膚モデルの表面に直接塗布(30μl)し、8時間インキュベートした後、生理食塩水を使用してすすぎ、余分な製品を排除した。組織を分析前にさらに16時間培養し、24時間で顔パックの現実的な露出を模倣した。
生理食塩水をネガティブコントロール(NC)として使用した。
【0104】
以下のパラメータは、ネガティブコントロールに関して分析された(当業者に知られている方法に従って):
・マッソンのトリクローム染色による組織学的分析;
・皮膚防衛の主なバイオマーカー(HBD2およびCCL27)の遺伝子発現(qRT-PCR)、自然免疫応答(TLR2)、表皮分化(KRT14、LORおよびIVL)、表皮再生(HAS-2、CD44、コラーゲンIII、IVおよびXIII、KGFおよびEGF);
・アデニル酸キナーゼ(略して、AK)の放出を定量化することによる細胞損傷(Toxilightアッセイ)。
実験は、生物学的三重で実施された。
【0105】
I.1.2.1.マッソンのトリクローム染色による組織形態学的分析
処置の終わりに、組織を生理食塩水で洗浄し、10%ホルマリンで固定した。マッソントリクロームキット(Abcam 150686)を製造元の指示に従って使用して、組織切片に印を付けた。各サンプルについて、セクションの3つの異なる部分で3つの顕微鏡的取得が実行された。組織学的サンプルを光学顕微鏡(倍率20倍および40倍)で分析し、組織の形態学的変化を評価した。
【0106】
I.1.2.2.リアルタイムPCR分析
処置の最後に、RNA抽出およびcDNA逆転写のために組織を溶解緩衝液に回収した。RNAの完全性は、1%アガロースゲルで抽出したRNAをロードすることによって評価された:18Sおよび28Sリボソームバンドが検出された。GAPDHは、入力量を正規化するための内因性コントロール遺伝子として使用された。得られたデータの分析は、当業者に知られている方法を使用して実施された。
【0107】
I.1.3.自己防衛と細胞再生能力の活性化の結果
I.1.3.1.マッソンのトリクローム染色による組織形態学的分析の結果
生理食塩水とのインキュベーション後、ネガティブコントロール(図1A)は、表皮と真皮の両方で形態および/または構造変化を示さなかった。コラーゲン線維の分布は配向され、線維芽細胞を含んでいた。
【0108】
菌株LPC-S01 DSM 26760(生存可能)での処置は、表皮および真皮の構造に有意な変化を誘発しなかった。コラーゲン線維とその分布は、ネガティブコントロールと比較して、線維の太さの減少と密度の減少を示した(図1B)。
【0109】
ヒアルロン酸による処置は、表皮および真皮の構造に有意な変化を誘発しなかった。コラーゲン線維は、ネガティブコントロールと比較して密度の低下を示した(図2A)。
【0110】
プロバイオティクス菌株LPC-S01 DSM 26760(生存可能)+ヒアルロン酸による処置は、表皮の形態、特により薄い角質層の形態を変化させることができ、分化プロセスを増加させた(図2B)。
【0111】
I.1.3.2.リアルタイムPCR結果(qRT-PCR)
第1表は、LPC-S01 DSM 26760(生存可能)、ヒアルロン酸、およびLPC-S01 DSM 26760(生存可能)+ヒアルロン酸で処置された組織の、リアルタイムPCRによって得られた値のネガティブコントロールに関する相対的定量化(RQ)を示す。
【0112】
第1表
【表2】
【0113】
プロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760による処置は、ヒトディフェンシンβ2(HBD2)およびTLR2の増加を誘発する。これらのデータは、プロバイオティクスの免疫調節特性と一致し、皮膚防衛を引き起こし、皮膚の自然免疫応答を強化する能力を示す。
【0114】
ヒアルロン酸による処置は、評価の遺伝子対象の発現の調節を誘発することはできない。
【0115】
ヒアルロン酸+LPC-S01 DSM 26760による処置は、ヒアルロン酸による処置と比較して、HBD2発現の増加を引き起こす。コラーゲンIIIおよびHAS-2値の減少が観察され(プロバイオティクス治療のみですでに観察されたように)、一方、KGFの減少も観察された。
【0116】
一般的に言えば、得られた結果は、プロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760は、単独で適用すると、自然免疫(TLR2およびHBD-2に基づく)を強化することによって、皮膚にプラスの効果を発揮することを示す。
【0117】
ヒアルロン酸を単独で塗布しても、皮膚にプラスの効果を発揮することはない;それどころか、ヒアルロン酸と同じ製剤で導入されたLPC-S01は、皮膚の自然防御を強化するというその主な活性を維持することができる。
【0118】
I.1.3.4.アデニル酸キナーゼの放出の結果(Toxilightアッセイ)
研究対象の製品で処置された組織によって放出されるアデニル酸キナーゼのレベルは、8時間および16時間のインキュベーション後の製品の良好な生体適合性を示す。
【0119】
I.1.4.結論
得られた結果は、ヒアルロン酸+LPC-S01 DSM 26760(生存および生存可能)による処置が最も有望であり、皮膚の再生、および通常、コラーゲンネットワークを増やすことによる皮膚区画の構造の強化において、皮膚の分化プロセスの改善にプラスの効果を示していることを示す。したがって、ヒアルロン酸とプロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760(P3)の併用投与は、真皮構造の強化において相乗効果を示し、細胞の分化と再生の重要な要因に介入する。ヒアルロン酸とプロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760を別々に投与しても、皮膚の分化に有意な効果が見られなかったため、この相乗効果は予測できなかった。
【0120】
I.2.不活化細菌株-恒常性モデル
I.2.1.分析中の製品およびコントロール
- ネガティブコントロール(NC):0.9% NaCl生理食塩水;
- P1-i.:生理食塩水に再懸濁された不活化菌株LPC-S01 DMS 26760(109 細胞/組織)、2g LPC-S01/mlの濃度を使用;
- P2-i.:ヒアルロン酸系クリーム(上記の実施例A(クリーム)のように);
- P3-i.:ヒアルロン酸系クリームに再懸濁した不活化菌株LPC-S01 DSM 26760、2g 細胞/mlの濃度を使用。
【0121】
P3-i.を調製するために、凍結乾燥した不活化菌株LPC-S01 DSM 26760の粉末カプセル(約8×109 CFU)の内容物を、13mlのヒアルロン酸系クリームに溶解した。
P1-i.(菌株のみ)を調製するために、凍結乾燥した不活化菌株LPC-S01 DSM 26760の粉末カプセル(約8×109 CFU)の内容物を、生理食塩水に再懸濁した。
【0122】
I.2.2.分析中の細菌株の不活化
出発物質:2×1011個の細胞/g粉末の生細胞数を有する凍結乾燥形態の菌株 LPC-S01 DSM 26760の生存可能な菌細胞。
処置の前日、粉末2gを秤量し、4mLの生理食塩水に再懸濁して、1011個の細菌細胞/mLの生理食塩水の懸濁液を得た。この懸濁液の30μLを使用して、MRS寒天培地でのカウントによって有効な細菌負荷を確認した。
【0123】
処置当日、生理食塩水で調製した菌株の懸濁液を85℃で1時間インキュベートすることにより熱失活させた。この期間の後、細菌を4本のエッペンドルフ試験管(各1ml、1011個の細菌細胞に対応する)に分割し、遠心分離した。次に、ペレットを、以下に再懸濁した:
- 生理食塩水1ml、P1-iを得る。
- ヒアルロン酸系クリーム1ml、P3-iを得る。
【0124】
I.2.3.方法論
分析下およびネガティブコントロール中の製品(P1-i.、P2-i.、P3-i.、NC:15 μl)を、恒常性条件下で24時間および48時間T-Skinモデル組織の表面に直接適用した。P1-iおよびP3-iの懸濁液15μLを適用することにより、109個の細菌/組織を適用した。
【0125】
以下のパラメータを、未処置のコントロール(ネガティブコントロール、NC)に関して分析した:
・H&E(ヘマトキシリン&エオシン)染色による組織形態学的分析;
・皮膚防衛(ヒトディフェンシンβ2(DEFB4))、自然免疫応答(TLR2、TNFα)、分化および表皮再生(TGMS-1、CCND1、TGF-β1)の主要なバイオマーカーの遺伝子発現(RT-qPCRによる)。
実験は、生物学的三重で実施された。
【0126】
I.2.4.結果
I.2.4.1.24時間および48時間でのH&E組織形態学的分析の結果
各組織学的スライド上に垂直組織の3つの切片(3反復からなる)が調製される;選択された切片で5つの顕微鏡的取得が実行された。生物学的複製ごとに、選択した垂直切片の最も代表的な取得が報告される。平均厚さは、5回の顕微鏡取得において計算された。
【0127】
結果を以下に報告する:
24時間でのCN(図6a):
- 表皮:完全に生存可能で、通常のSC(角質層)ラメラ構造を備えている;
- 真皮-表皮接合部:構造の完全性が観察される;
- 繊維およびコラーゲンの分布:配向し、多くの線維芽細胞を含む。
24時間でのP1-i.(図には示さず):
- 表皮:同じ複製において差異が観察され、おそらく不均一な分布に関連している;多くの細胞が代謝活性化および増殖を示していることが明らかである;濃縮した核はほとんどない;SCラメラ構造は有意に変更されていないように見える;
24時間でのP3-i.(図6b):
- 表皮:同じ複製において差異が観察され、おそらく不均一な分布に関連している;多くの細胞が代謝活性化および増殖を示していることが明らかである;濃縮した核はほとんどない;SCラメラ構造は有意に変更されているように見える;
- 真皮-表皮接合部:構造の完全性が観察される;
- 繊維およびコラーゲンの分布:高密度で、ぎっしり詰まって配向し、多くの線維芽細胞を含む。
【0128】
48時間でのNC(図6c):
- 表皮:完全に生存可能で、通常のSC(角質層)ラメラ構造を備えている;
- 真皮-表皮接合部:剥離および完全性の喪失(組織の固有の脆弱性)が観察された;
- 繊維およびコラーゲンの分布:配向し、多くの線維芽細胞を含む。
48時間でのP1-i.(図には示さず):
- 表皮:完全に分化した表皮が観察される;組織は、より大きな増殖および分化ゆえに、構造と厚さの点で変更されたSCを示す。
48時間でのP3-i.(図6d):
- 表皮:同じ複製において差異が観察され、おそらく不均一な分布に関連している;多くの細胞が代謝活性化および増殖を示している;濃縮した核はほとんどない;SC(角質層)ラメラ構造はより大きな増殖ゆえに、変更されたように見える;
- 真皮-表皮接合部:構造の完全性が観察される;
- 繊維およびコラーゲンの分布:配向し、多くの線維芽細胞を含む;ネガティブコントロールに対してより高密度でぎっしり詰まっている。
【0129】
上記のデータは、24時間でP3-i組織に適用した後、SC(角質層)の層状構造が変化しているように見えること、一方で、P1-iを適用した後、SCラメラ構造の変化を観察する前に48時間待つ必要があることを考慮すると、組成物P3-i.(不活化菌株+HA)が、P1-i組成物(不活化菌株のみ)よりも短時間でより高い効力で作用することを示す。
【0130】
I.2.4.2.リアルタイムPCR結果
I.2.4.2.1.24時間でのリアルタイムPCR結果
図7は、24時間での遺伝子発現(qRT-PCR)の結果を示す(24時間でNCを使用して計算されたRQ=1;RQ <0.5脱制御、RQ> 2アップレギュレーション)。
【0131】
分析中の組成物(P1-i.、P2-i.、P3-i.)で24時間処置した組織で得られた相対定量化(RQ)遺伝子発現(qRT-PCR)の結果を以下の図7にまとめる。結果は、ネガティブコントロールに関して表される(24時間でNCを使用して計算されたRQ=1;RQ <0.5脱制御、RQ> 2アップレギュレーション)。
【0132】
全般的な考察として、分析中の組成物の完全に均質でない適用は、3反復間の高い生物学的変動性をもたらした。
【0133】
24時間の後処置:
・単独(P1-i)またはHAを含む組成物(P3-i)に含まれる分析中の不活化プロバイオティクス菌株は、ヒトディフェンシンβ2(DEFB4)のアップレギュレーションを誘導した。これらのデータは、セクションI.1.3.1で観察された生存可能な菌株LPC-S01 DMS 26760の免疫調節特性と一致しており、生存不能な状態でも皮膚防衛を誘発する能力を示す。したがって、この免疫調節活性は、細菌の細胞壁内の外部に露出した要素と相関する可能性がある。
・HAのみを含む組成物(P2-i.)は、ヒトディフェンシンβ2(DEFB4)を調節しなかった:この結果は、P3-i.(菌株+HA)におけるDEFB4のアップレギュレーションが細菌の存在にのみ関連していることを確認する。
・組成物P3-i.(菌株+HA)は、P1-i.(菌株のみ)と比較して、24時間でより高い(有意ではないが)様式でヒトディフェンシンβ2(DEFB4)のアップレギュレーションを誘導した。TNFαの有意な調節が定量化され、おそらく皮膚の表面による細菌の免疫認識による炎症反応の誘導を示す。この効果は、P2-i.(HAのみ)で処置された組織では観察されないため、この結果は、組成物P3-i.に含まれる高用量のLPC-S01 DMS 26760株に関連している可能性がある。
【0134】
I.2.4.2.2.48時間でのリアルタイムPCR結果
24時間の時点(セクションI.2.4.2.1)よりも高い値で、分析中の不活化細菌株(P1-i.とP3-i.の両方)によるヒトディフェンシンβ2(DEFB4)の誘導が確認され、効果的な保護メカニズムをもたらす安定した生物学的反応と皮膚防衛の強化が示される。
【0135】
I.2.5.結論
恒常性(非炎症性)モデルでは、不活化LPC-S01 DMS 26760菌株およびヒアルロン酸の組み合わせを含む本発明による組成物P3-i.(不活化菌株+HA)は、3D皮膚モデルで十分に許容され、個々の成分および/またはネガティブコントロールと比較して、身体の防御および細胞分化プロセスを刺激することができた。
【0136】
特に、本発明の組成物P3-i.(不活化菌株+HA)の有効性レベルは、ヒアルロン酸と組み合わせていない細菌株(P1-i.)と比較して、より短い時間で達成される。
【0137】
II.EpiskinT-Skin TM モデルにおける炎症モデル
細菌株LPC-S01 DMS 26760(生存可能または不活化)およびヒアルロン酸を含む本発明による組成物の、UV放射によって引き起こされる損傷を低減する能力を、真皮と表皮の区画を再現し、真皮の細胞外マトリックスの変化と生存層の分化を研究することができる(全層皮膚モデル)、完全3Dインビトロ再構築された皮膚モデル(T-SkinTMモデル)で評価した。
【0138】
上記の評価は、炎症モデルA(損傷していない組織に対する前処置)および炎症モデルB(損傷した組織に対する前処置および後処置)の2つのモデルに従って実施され、以下に報告される。
【0139】
II.A.生存可能または不活化細菌株のための炎症モデルA
II.A.1.分析中の製品およびコントロール
- P1:生理食塩水に再懸濁された生存可能なLPC-S01 DMS 26760、
- P2:ヒアルロン酸系溶液(I.1.1.パックを参照);
- P3:ヒアルロン酸系溶液に再懸濁された生存可能なLPC-S01 DMS 26760、
- P1-i.:生理食塩水に再懸濁された不活化LPC-S01 DMS 26760、
- P2-i.:ヒアルロン酸系溶液(I.1.1.パックを参照)、
- P3-i.:ヒアルロン酸系溶液に再懸濁された不活化LPC-S01 DMS 26760、
- ポジティブコントロール(PC):0.9% NaCl生理食塩水で処置され、擦過され、UV放射に曝露された組織、
- ネガティブコントロール(NC):UV放射への曝露なしで0.9% NaCl生理食塩水で処置された組織。
【0140】
P1(生存可能な菌株のみ)およびP3(生存可能な菌株+HA)を、凍結乾燥細菌株(CFU 8x109)のカプセルの内容物を、それぞれヒアルロン酸を含む生理食塩水13mlに再懸濁して調製した。
【0141】
P1-i.(不活化菌株のみ)およびP3-i.(不活化菌株+HA)を、凍結乾燥菌株カプセル(CFU 8x109)の内容物を生理食塩水に再懸濁し、85℃で1時間インキュベートして調製した。この期間の後、細菌を遠心分離し、ペレットをそれぞれ13mlのヒアルロン酸ベースの生理食塩水(またはクリーム)に懸濁させた。
【0142】
II.A.UV損傷の減少の評価方法
プロバイオティクス菌株LPC-S01 DSM 26760(生存および生存可能または不活化)のUV損傷の減少を、上記のように「全層皮膚」モデルで評価した。この研究では、ヘマトキシリン-エオジンでマークされた組織の形態における、およびUV照射に応答したインフラマソームの活性化おける、LPC-S01菌株、ヒアルロン酸、およびLPC-S01 DSM 26760菌株+ヒアルロン酸を含む組成物の効果を検討した。菌株LPC-S01 DSM 26760、ヒアルロン酸、およびプロバイオティクス菌株LPC-S01 DSM 26760+ヒアルロン酸を含む組成物を3D皮膚モデルの表面に直接塗布し、一晩インキュベートし、続いて生理食塩水を使用してすすぎ、過剰な生成物を除去した。 (前処置ステップ)。組織をわずかに擦過させた後、通常の日光曝露を模倣するために1 MED(最小紅斑線量)のUVに曝露した。炎症の活性化を、紫外線への曝露の4時間後と24時間後に試験した。生理食塩水で処置し、紫外線に曝露した組織をポジティブコントロールとして使用した。生理食塩水で処置し、UVに曝露されていない組織をネガティブコントロールとして使用した。
【0143】
当業者に知られている方法に従って、紫外線によって引き起こされる損傷を低減することにおける分析中の組成物の有効性の評価を、以下を用いて分析した:
- NFkB免疫染色法;
- ヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色による組織形態学的分析;および
- IL-1β定量化法(生存可能な菌株のみ)。
【0144】
II.A.3.UV損傷低減の結果(炎症モデルA)
II.A.3.1.NFkB免疫染色の結果
図3は、紫外線への曝露から4時間後のNFkB転座の定量結果のまとめである(分析中の組成物は生存可能な菌株を含む)。
照射の4時間後、ポジティブコントロール(PC)は、特に表皮の基底上層において、多数のNFkB転座を示した。
LPC-S01 DSM 26760(P1)、菌株LPC-S01 DSM 26760とヒアルロン酸(P2)、およびヒアルロン酸(P3)による処置は、ポジティブコントロールに対してNFkBの核転座を有意に阻害する。
したがって、プロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760、LPC-S01 DSM 26760+ヒアルロン酸、およびヒアルロン酸による処置は、紫外線による傷害を受けた細胞の核内でのNFkBの転座を阻害することにより、炎症の活性化を防ぐ能力を示す。
【0145】
さらに、第2表は、生存可能な菌株(P3)または不活化菌株(P3-i)を含む、分析中の組成物を使用して16時間(長期)の前処置時間について決定されたNFkB核転座の半定量的データ、および長期処置の効果を評価するのに有用である紫外線照射4時間後のパラメータ評価を示す。
【0146】
上記インフラマソームモデル(1 MEDでのUV曝露、最小紅斑線量)の生物学的関連性と再現性は、非照射サンプル(ネガティブコントロール)と比較した、照射サンプル(ポジティブコントロール)の細胞核におけるNFkB転座の増加によって確認された。
【0147】
不活化菌株を含む組成物P3-iを用いた研究におけるNFkB転座の相対的増加(パーセンテージ差)(+70.7%、w=0.01)は、生存可能な菌株を含む組成物P3を用いた研究で定量化されたものに匹敵する(+83.7、w=0.01)。
【0148】
第2表
【表3】
【0149】
さらに、24時間後、P3は、ポジティブコントロールと比較して、NFkBの細胞質含有量の減少を示した(P3-iのデータは測定されていない)。
【0150】
II.A.3.2.H&E染色による組織形態学的結果
図4および5は、紫外線による傷害の4時間後および24時間後に、生理食塩水(ポジティブコントロール)(A)、プロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760(B)、ヒアルロン酸(C)、およびLPC-S01 DSM 26760(生存可能)+ヒアルロン酸(D)でそれぞれ処置された組織を示す(H&E染色による組織形態学)。
【0151】
両方の図からわかるように、ヒアルロン酸による処置とプロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760による処置は、紫外線によって誘発される損傷を軽減することはできない。特に、表皮の基底層と有棘層に紫外線による日焼けの兆候が見られる。さらに、真皮と表皮の接合部は、紫外線によって損傷を受け、表皮は真皮に完全には付着しておらず、これは、皮膚構造の変化の兆候である(図4A、4B、5Aおよび5B)。
【0152】
ヒアルロン酸+プロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760による処置は、損傷の誘発から4時間および24時間後にUVによって誘発される損傷を低減することができる。特に、真皮および表皮の両方の構造は、ヒアルロン酸およびプロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760を個別に処置した場合と比較して、よりぎっしり詰まっている。さらに、真皮-表皮接合部の構造はよりよく維持され、真皮への表皮のより良い付着を促進する(図4Dおよび5D)。
【0153】
ヒアルロン酸およびプロバイオティクスLPC-S01 DSM 26760の併用投与のこの相乗効果は、ヒアルロン酸単独でもプロバイオティクス単独投与でも、真皮からの表皮の「放出」を低減することができず、したがって、皮膚の生理学的構造を維持することができなかったため、予測できなかった。
【0154】
II.A.3.3.Il-1β定量化の結果
IL-1βは、生存可能な菌株およびヒアルロン酸を含む本発明P3による組成物について、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロールに向けて、4時間で定量化された(第3表)。シグナルがキットの検出限界(3.91 Pg/mL限界)を下回っていることを考慮すると、結果は、定量的データとは見なされない。結果は、全体的な傾向を示すために示さる。
第3表
【表4】
【0155】
II.A.4.結論
UVA+UVB(1MED用量)によって誘発される炎症経路に基づくT-skinTM(全層皮膚)の実験モデルを使用して、インフラマソームストレスの誘発前に適用した場合(前処置)の、細菌株LPC-S01 DMS 26760(それぞれ生存可能または不活化)とヒアルロン酸を含む本発明のP3およびP3-iによる組成物の有効性を評価した。
【0156】
本発明による組成物P3(生存可能な菌株+HA)およびP3-i(不活化菌株+HA)は、長期前処置(16時間)においてNFkBの転座を低減するのに良好な効力を示した。
【0157】
さらに、本発明による組成物P3(生存可能な菌株+HA)は、H&E染色による組織形態学研究において、紫外線から真皮-表皮接合部の構造を保護する良好な能力を示した。
【0158】
II.B.不活化菌株のための炎症モデルB
UVA+UVB(1MED用量)によって誘発される炎症経路に基づくT-skinTM(全層皮膚)の実験モデルを使用して、インフラマソームストレスの誘発前または誘発後に損傷した組織に適用される(UV照射に関して前処置または後処置)、不活化菌株LPC-S01 DMS 26760とヒアルロン酸を含む、本発明による組成物P3-i.の有効性を評価した。
【0159】
分析中の組成物(II.B.1を参照)は、T-Skinインフラマソームモデルでの潜在的な用途と有効性を調査することを目的として、2つのプロトコルにより、分析中の高濃度の不活化細菌株(107または109個の細胞/組織)を使用して評価された:
【0160】
B.I.前処置プロトコル:表皮表面において機械的ストレスによりTスキンを擦過し、検査中の組成物で45分間または4時間前処置した後、UVAおよびUVB照射(1MED)に付す。上記照射(インキュベーション後)の4時間後、組織を収集して分析した。
【0161】
B.II.後処置プロトコル:表皮表面において機械的ストレスによりTスキンを擦過し、UVAおよびUVB照射(1 MED)に付し、検査中の組成物で45分間または4時間処置し、分析のためにただちに収集する。
【0162】
研究の目的は、核内のNFkBの活性化および転座を調節することにおける、高用量(単独またはHAと混合して)の、不活化された分析中の細菌株の有効性を研究することであった。
【0163】
II.B.1.分析中の組成物およびコントロール
- P3-i.-109:不活化LPC-S0 1DMS 26760(109個の細胞/組織)を、最終組成物の30%に相当するヒアルロン酸系クリーム(I.2.1を参照)に再懸濁した;
- P3-i.-107:不活化LPC-S0 1DMS 26760(107個の細胞/組織)を、最終組成物の0.03%に相当するヒアルロン酸系クリーム(I.2.1を参照)に再懸濁した;
- ポジティブコントロール(PC):0.9%NaCl生理食塩水で処置され、擦過され、紫外線に曝露された組織;
- ネガティブコントロール(NC):紫外線への曝露なしで、0.9%NaCl生理食塩水で処置された組織。
【0164】
P3-i.(不活化菌株+HA)は、凍結乾燥細菌株カプセル(CFU 109)の内容物を生理食塩水に再懸濁し、85℃で1時間インキュベートすることにより調製した。この期間の後、細菌を遠心分離し、ペレットを13mlのヒアルロン酸系クリームに懸濁させた。
【0165】
II.B.2.研究計画
II.B.2.1.分析中の組成物の調製
細胞数が2×1011個の細胞/粉末gである凍結乾燥形態の分析中の不活化菌株を秤量し、以下のように適格な溶媒に再懸濁した:
- 4mlのHA系クリーム中2g(I.2.1.を参照)、P3-109を得る。109個の細菌/組織を、15μLの懸濁液を適用することによって適用した。
- 4mlのHA系クリーム中0.02g(I.2.1.を参照)、P3-107を得る。107個の細菌/組織を、15μLの懸濁液を適用することによって適用した。
【0166】
II.B.2.2.インフラマソームT-skinの誘導と処置
II.B.2.2.1.前処置プロトコル
実験計画を図8に要約する:実験当日、わずかな機械的ストレス(Algerbrush n ストローク= 2)によって組織を損傷し、T-SkinTM組織に直接均一に適用された15μLの分析組成物(P3-i.)で処置し、45分間または4時間インキュベートした。
【0167】
続いて、PBS中、キセノンアークランプおよび放射照度WG320[mW/cm2]紅斑フィルターを備えたOriel 1KWソーラーシミュレーター(0.035 mW/cm2、Opto.Cal GmbHによって発行された校正証明書番号16121による)を用いて、1MED(0.025 J/cm2に相当)で組織を照射した。インフラマソームの誘導後、組織を恒常性条件下で4時間ポストインキュベートし、ホルマリンで固定し、次に、パラフィン(FFPE)に組み込んでNFκB免疫染色を行った。また、さらなるRT-qPCR分析のために組織を収集した。担体を回収し、-20℃で保存した。
【0168】
II.B.2.2.2.後処置プロトコル
実験計画を図9に要約する:実験当日、わずかな機械的ストレス(Algerbrush n ストローク= 2)によって組織を損傷し、PBS中、1MED(0.025J/cm2に相当)を照射した。インフラマソームの誘導後、組織を15μLの分析中の組成物で処置し、45分間または4時間インキュベートした。処置直後に、組織を収集し、NFκB免疫染色のためにホルマリンで固定した。また、さらなるRT-qPCR分析のために組織を収集した。
【0169】
II.B.3.NFkB免疫染色の結果
以下の第4表は、各プロトコルのポジティブコントロールに対するネガティブコントロールでのNFkB転座(3つの生物学的反復で検出された核の総数として表される)の結果を示す。第4表に報告されるように、インフラマソームモデルの誘導は、ネガティブコントロールと比較して、照射されたサンプルの細胞核におけるNFkB転座の増加によって確認された。
【0170】
しかしながら、このT-skinバッチでは、各時点で転座が観察されたが、照射後に、より早いNFkB活性化が観察された。特に、NFkBの最も高い誘導は、照射後の45分に観察される。
【0171】
採用されたプロトコルは、急性炎症過程からの回復に対する製品の有効性を評価することを目的としている場合、後処置モデルでのUV照射後の読み取りおよび前処置モデルでのインキュベーション後の読み取りに基づく。
第4表
【表5】
【0172】
A)45分間の前処置
第5表に、NFκB核転座の半定量分析(すべての生物学的反復で検出された核の総数として表される)を、45分間の前処置+4時間のUV照射後インキュベーションについて示す。
第5表
【表6】
* 本発明組成物
【0173】
B)4時間の前処置
第6表に、NFκB核転座の半定量分析(すべての生物学的反復で検出された核の総数として表される)を、4時間の前処置+4時間のUV照射後インキュベーションについて示す。
第6表
【表7】
* 本発明組成物
【0174】
第5表および第6表の結果の分析:
- 前処置として適用した場合、不活化菌株LPC-S01 DMS 26760とヒアルロン酸を含む組成物P3-i.は、核内のNFkB転座を減少させることができ、 紫外線によって誘発される炎症ストレスから皮膚を保護する予防効果を示す。
- 菌株の濃度が109の場合、45分間の前処置モデルでは、組成P3-i.(不活化菌株+HA)は核内のNFkB転座を大幅に減少させることができ、不活化LPC-S01 DMS 26760菌株とヒアルロン酸の間の相乗的および/または非常に効果的な効果を示す。
- 不活化LPC-S01 DMS 26760の2つの異なる濃度の組成物P3-i.(109)およびP3-i.(107)の前処置に対する組織反応は、用量反応メカニズムを示唆する:組成物中の菌株濃度の増加において検出されたNFkB陽性核は少なかった。
【0175】
C)45分間の後処置
第7表に、NFκB核転座の半定量分析(すべての生物学的反復で検出された核の総数として表される)を、UV照射後45分間の後処置について示す。
第7表
【表8】
* 本発明組成物
【0176】
D)4時間の後処置
第8表に、NFκB核転座の半定量分析(すべての生物学的反復で検出された核の総数として表される)を、UV照射後4時間の後処置について示す。
第8表
【表9】
* 本発明組成物
【0177】
- 組成物P3(不活化菌株+HA)は、特に短期的に(炎症反応が最大レベルにあるとき)、NFKBの基礎レベルの迅速かつ効果的な回復を示し、これは、炎症組織の恒常性を回復する上での不活化菌株LPC-S01 DMS 26760+ヒアルロン酸の組み合わせにおける相乗効果/効果の改善を示唆する。
【0178】
II.B.4.結論
これらの結果から、不活化LPC-S01 DMS 26760 +ヒアルロン酸の組み合わせを含む組成物P3-iが、それが炎症の発症の短期に特に効果的であることを考慮すると、恒常性状態(セクションI.2を参照)と皮膚の炎症状態(たとえば、紫外線照射によって引き起こされる)、特に炎症の急性期における状態の両方で有効であることが確認される。
【0179】
実験パート(2)
本発明による組成物(菌株ラクトバチルス・パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760およびヒアルロン酸)の存在下での3D「全層皮膚」モデルへのキューティバクテリウム・アクネス DSM 1897の付着の評価
1.研究の目的
この研究の目的は、プロバイオティクス菌株L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760を単独、および/またはヒアルロン酸(HA)と組み合わせての、C. アクネスの「全層皮膚」モデルへのインビトロ付着に対抗する能力を評価することであった。
【0180】
キューティバクテリウム・アクネス(略して、C. アクネス、Propionibacterium acnesまたはP. アクネスとしても知られる(Douglas et Gunter、1946))は、にきびなどの特定の皮膚疾患に関連する成長の遅いグラム陽性嫌気性細菌である;それは、眼瞼炎および眼内炎の原因にもなりうる。
【0181】
さまざまな可能性のある感染状況を評価するために、2015年にComan et al. によって記載された方法の適応に基づいて、競合モデルおよび除外モデルが実践された。
【0182】
2.実験計画
菌株C. アクネス DSM 1897を用いて、Phenion(Henkel)から合計30個のインサートを購入した3D「全層皮膚」モデルにおいて感染症をシミュレーションした。
【0183】
試験は、以下にリストされるさまざまな処置条件を考慮して実行された:
1)処置なし、2つの除外および競合モデルでC. アクネス DSM 1897の有効付着能力を評価する;
2)L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760による24時間の予防的または併用処置;
3)0.5%ヒアルロン酸(Sigma-Aldrich 41897)による24時間の予防的または併用処置;
4)ヒアルロン酸およびL. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760の均質混合物による24時間の予防的または併用処置;
5)過酸化ベンゾイル(ベンザック10%、ポジティブコントロール)による24時間の予防的または併用処置。
【0184】
菌株L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760の懸濁液を調製し、50μlの懸濁液をインサートの表面に接触させた。
【0185】
0.5%ヒアルロン酸懸濁液を調製し、50μlの懸濁液をインサートの表面に接触させた。
【0186】
さらに、50μlの菌株L. パラカゼイ LPC-S01 DSM 26760をヒアルロン酸0.25 mgと混合して、ヒアルロン酸の濃度が同じ(0.5%)で、個々の物質の試験に使用したものと初期ロードが同じである、プロバイオティクス+ヒアルロン酸の組み合わせ製剤を得た。
【0187】
ポジティブコントロールとして、50μlのベンザックゲル10%(過酸化ベンゾイル)をインサートと接触させて配置した。
上記の5つの条件すべてを2回試験し、10個のインサートをCO2の存在下、37℃で24時間インキュベートした。
【0188】
2.a.除外試験の実行
プロバイオティクス菌株(またはヒアルロン酸または2つの混合物)によるインサートの前処置、その後の病原体による感染、および感染の理想的な条件(予防的プロバイオティクス処置のインビトロモデル)に関してインサートへの病原体の付着%の可能な減少のその後の検証のために提供された排除試験。
【0189】
2.b.競合試験の実行
プロバイオティクス菌株(またはヒアルロン酸または2つの混合物)および病原体によるインサートの同時処置、および感染の理想的な条件(感染の過程でのプロバイオティクス処置のインビトロモデル)に関してインサートへの病原体の付着%の可能な減少のその後の検証のために提供された排除試験。
【0190】
3.結果
3.1 除外試験
図10は、Log10 CFUで表された病原体C. アクネス DMS 1897の生存率の低下を示し、一方、第9表は、さまざまな試験条件下での病原体生存率の低下率(%)と同じ状況を示す。
第9表
【表10】
【0191】
報告された結果から明らかなように、ベンザック10%、LPC-S01 DSM 26760、および0.5%ヒアルロン酸の存在下でのLPC-S01 DSM 26760の組み合わせによる処置は、C. アクネス DSM 1897の生存率を約1.0-1.4 Log10まで低下させ、これは、病原体の生存率の約20%の減少に相当する。0.5%ヒアルロン酸単独による処置は、病原体の生存率をいくらかでも低下させることはできないようである。
【0192】
3.2.競合試験
図11と第10表は、各試験条件の複製で得られた平均値の、競合試験で得られた減少率の、インサートのC.アクネス DSM 1897の対数減少logCFUとして表された、生存数のチャートを示す。
第10表
【表11】
【0193】
提示されたデータに基づいて、ベンザック10%、LPC-S01 DSM 26760、および0.5%ヒアルロン酸の存在下でのLPC-S01 DSM 26760の組み合わせで行われた処置が、1.0-1.3 Log10CFUにより、C. アクネス DSM 1897の生存率を低下させることが確認された。除外試験と同様に、0.5%ヒアルロン酸単独での処理は、病原体の生存率を低下させることができないようである。
【0194】
4.結論
実施されたすべてのインビトロ試験は、C. アクネスによる感染の抑制におけるベンザック10%ポジティブコントロールの有効性を実証し、病原体集団の生存率を15%から23%に、%減少させた。
【0195】
除外および競合試験は、LPC-S01+0.5%ヒアルロン酸(本発明による組成物)の組み合わせにより実施された処置が、C. アクネス DSM 1897による感染を約18~19%まで減少させることを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a-b】
図6c-d】
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】