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特表2022-535881精製されたダブルネガティブT細胞およびその調製と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】精製されたダブルネガティブT細胞およびその調製と応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220803BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220803BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K35/17 A
C12N5/0783
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P11/06
A61P11/14
A61P3/00
A61P9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572346
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2020087606
(87)【国際公開番号】W WO2020244345
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】201910483156.2
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521530299
【氏名又は名称】北京医明佳和生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 彦兵
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】田 丹
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ソン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲廣▼永
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA62
4C087ZB08
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZC21
(57)【要約】
IL-17分泌細胞が除去されたDNT細胞集団およびその調製方法およびその使用が提供される。当該DNT細胞集団は、T細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する効果を有し、脂肪組織の炎症を阻害し、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病を軽減し、脂肪性肝炎を緩和することができ、抗原特異的アレルギー性喘息の予防および治療にも使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞製剤であって、
前記細胞製剤は、DNT細胞集団を含み、前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上、好ましくは、98%以上、より好ましくは、99%以上、最も好ましくは、99.9%以上を占める細胞は、IL-17を分泌および発現しないことを特徴とする、前記細胞製剤。
【請求項2】
前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上を占める細胞は、表面抗原CD3+およびTCRαβを有することを特徴とする
請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項3】
前記DNT細胞集団において、総細胞数の50%以上を占める細胞は、LAG3遺伝子を高発現することを特徴とする
請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞製剤を調製するための方法であって、
前記方法は、
(a)単核細胞集団(PBMCs)を提供し、選別によってDNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得る段階と、
(b)第1の細胞亜集団からIL-17を分泌するDNT細胞を除去した後、それらを増殖および培養することにより、第2の細胞亜集団を得る段階、または
第1の細胞亜集団を増殖および培養した後、IL-17を分泌するDNT細胞を除去することにより、第2の細胞亜集団を得る段階と、
(c)選択可能に、第2の細胞亜集団内のDNT細胞をさらに選別することにより、第3の細胞亜集団を得る段階と、
(d)第2のまたは第3の細胞亜集団を適切なベクターと混合することにより、請求項1に記載の細胞製剤を得る段階とを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
段階(a)において、単核細胞集団内のB細胞、CD4とCD8 T細胞、γδ T細胞、1型NKTおよび2型NKT細胞を除去することにより、DNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得ることを特徴とする
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)において、グループAの発現タンパク質から選択される一つまたは複数の抗体を使用して、培養前にIL-17を分泌するDNT細胞を除去し、ここで、グループAは、S100a6、Tmem176b、CXCR6、Ramp1、Tmem176a、Lgals1、Lgals3、ACTN2、ICOS、CCR2、CD82、CD127(IL7r)、Ltb4r1、Hk2、TNFRSF25、Ly6a、BLK、Lsp1、Ly6e、Itgb7、Itm2b、S100a10、Ly6g5b、Thy1、CD40Ig、Ramp3、Gm2aまたはその組み合わせを含み、
好ましくは、グループAは、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4rまたはその組み合わせであることを特徴とする
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
段階(b)において、グループBの発現タンパク質から選択される一つまたは複数の抗体を使用して、培養後にシステムからIL-17を分泌するDNT細胞を除去し、ここで、グループBは、IL-17a、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、IL-4、IL-3、ICOS、S100a10、Ramp1、Tmem176b、Tnfrsf4、AA467197、Itm2b、Thy1、Igtp、Arl6ip1、Serpine2、Ltb、Tnfrsf25、Furin、Tmem176a、Ifi27l2a、Gbp2、Emp3、Ltb4r1、Tspo、Cst3、Vim、CD200またはその組み合わせを含み、
好ましくは、グループBは、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、ICOS、S100a10、Tnfrsf4、またはその組み合わせであることを特徴とする
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
段階(b)において、抗原提示細胞および/または抗原ペプチドの存在条件下で増殖培養することを特徴とする
請求項4に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の細胞製剤の用途であって、
医薬組成物の調製に使用され、前記医薬組成物は、
腫瘍、感染性疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー性喘息、自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、脳卒中、またはその組み合わせからなる群から選択される疾患の治療に使用されることを特徴とする、前記用途。
【請求項10】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項4に記載の方法によって調製された細胞製剤、および薬学的に許容されるベクター、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬の分野に関し、より具体的には、精製されたダブルネガティブT細胞およびその調製と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルネガティブT細胞(Double negative T cells、DNT細胞)は、表現型が独特なTCRαβ+Tリンパ球であり、CD4、CD8、NK等の細胞の特徴的な表面マーカーを発現しない。DNT細胞は、ヒト、マウスの末梢血およびリンパ器官で総Tリンパ球の1%~3%しか占めていないが、ますます多くの研究では、このようなまれなT細胞集団が免疫系において重要で多様な調節的役割を果たしていることが証明された。
【0003】
ほとんどの研究は、DNT細胞が体の抗原特異的免疫恒常性を維持することで重要な役割を果たしていることを示す。DNT細胞は、パーフォリン(perforin)、グランザイムB(granzyme B)およびFasLを高発現し、CD4およびCD8 T細胞、B細胞、樹状細胞およびNK細胞等に対して、強力な免疫阻害活性を示して、体の過剰な免疫応答をダウンレギュレートすることにより、移植拒絶反応を阻害し、移植片対宿主病の発生を避免し、自己免疫性疾患の発生および発症を効果的に制御することを達成することができる。DNT細胞は、グランザイムおよびパーフォリン等の細胞殺傷関連タンパク質を高発現するため、腫瘍細胞の殺傷治療にも使用されることができる。これらの発見に基づいて、臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫性疾患、さらに腫瘍の予防および治療に使用されるDNT細胞のインビトロ増殖に関する多くの研究があり、これらの研究では、主にヒト末梢血またはマウス脾臓細胞から単核細胞を抽出し、CD4、CD8およびCD56(ヒト)/NK1.1(マウス)を除去した後に増殖させ、増殖させた細胞は、CD4、CD8およびCD56(ヒト)/NK1.1(マウス)をさらに除去した後に養子移入療法に使用される。
【0004】
研究によると、DNT細胞は、移植拒絶反応および自己免疫性糖尿病の標的に予防および治療等、抗原特異的免疫阻害を有することが分かっているが、DNT細胞がMHC-II分子を識別するのを助ける重要な分子であるCD4分子が足りないため、DNT細胞がMHC-II抗原の特異的識別をどのように保持するかはまだ不明である。従って、この分野において、DNT細胞およびその応用に関するさらなる詳細な研究が緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、精製されたダブルネガティブT細胞およびその調製と応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、細胞製剤を提供し、前記細胞製剤は、DNT細胞集団を含み、前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上、好ましくは、98%以上、より好ましくは、99%以上、最も好ましくは、99.9%以上を占める細胞は、IL-17を分泌および発現しない。
【0007】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上を占める細胞は、表面抗原CD3+およびTCRαβを有する。
【0008】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団内の細胞CD3の発現は、正常または低であり、TCRαβの発現は、正常または低である。
【0009】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上を示す細胞は、CD4、CD8、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)、またはその組み合わせからなる群から選択される表面マーカーを発現しない。
【0010】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%以上を示す細胞は、CCR5、CXCR3、B220、FasL、NKG2D、パーフォリン(Perforin)、グランザイム(Granzyme)B、またはその組み合わせからなる群から選択される遺伝子を発現する。
【0011】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団において、総細胞数の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上を占める細胞は、LAG3遺伝子を高発現する。
【0012】
別の好ましい例において、前記高発現とは、前記細胞LAG3遺伝子の発現量G1と正常なCD4 T細胞LAG3遺伝子の発現量G0との比率、即ち、G1/G0≧1.2、好ましくは≧1.5、より好ましくは≧2を指す。
【0013】
別の好ましい例において、前記低発現とは、前記細胞内の特定の遺伝子の発現量R1と正常なCD4 T細胞における対応する遺伝子の発現量R0との比率、即ち、R1/R0≦1、好ましくは≦0.8、より好ましくは≦0.5を指す。
【0014】
別の好ましい例において、前記DNT細胞集団内の細胞は、抗原特異性を有する。
【0015】
別の好ましい例において、前記細胞製剤は、前記DNT細胞集団および薬学的に許容されるベクターからなる。
【0016】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に記載の細胞製剤を調製するための方法を提供し、前記方法は、
(a)単核細胞集団(PBMCs)を提供し、選別によってDNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得る段階と、
(b)第1の細胞亜集団からIL-17を分泌するDNT細胞を除去した後、それらを増殖および培養することにより、第2の細胞亜集団を得る段階、または
第1の細胞亜集団を増殖および培養した後、IL-17を分泌するDNT細胞を除去することにより、第2の細胞亜集団を得る段階と、
(c)選択可能に、第2の細胞亜集団内のDNT細胞をさらに選別することにより、第3の細胞亜集団を得る段階と、
(d)第2または第3の細胞亜集団を適切なベクターと混合することにより、本発明の第1の態様に記載の細胞製剤を得る段階とを含む。
【0017】
別の好ましい例において、段階(a)において、単核細胞集団内のB細胞、CD4とCD8 T細胞、γδ T細胞、1型NKTおよび2型NKT細胞を除去することにより、DNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得る。
【0018】
別の好ましい例において、段階(a)において、CD19、CD4、CD8、TCR-γδ、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)、aGalcer-CD1dおよびLPC-CD1dテトラマー抗体(またはTCRVα24-Jα18抗体)を使用してPBMCを標識し、次にそれらをネガティブ選別することにより、DNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得る。
【0019】
別の好ましい例において、前記ネガティブ選別は、磁気ビーズ選別、蛍光活性化細胞選別(fluorescence-activated cell sorting, FACS)および密度勾配遠心分離からなる群から選択される。
【0020】
別の好ましい例において、段階(b)において、グループAの発現タンパク質から選択される一つまたは複数の抗体を使用して、培養前にIL-17を分泌するDNT細胞を除去し、ここで、グループAは、S100a6、Tmem176b、CXCR6、Ramp1、Tmem176a、Lgals1、Lgals3、ACTN2、ICOS、CCR2、CD82、CD127(IL7r)、Ltb4r1、Hk2、TNFRSF25、Ly6a、BLK、Lsp1、Ly6e、Itgb7、Itm2b、S100a10、Ly6g5b、Thy1、CD40Ig、Ramp3、Gm2aまたはその組み合わせを含み、
好ましくは、グループAは、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4rまたはその組み合わせである。
【0021】
別の好ましい例において、段階(b)において、グループBの発現タンパク質から選択される一つまたは複数の抗体を使用して、培養後にシステムからIL-17を分泌するDNT細胞を除去し、ここで、グループBは、IL-17a、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、IL-4、IL-3、ICOS、S100a10、Ramp1、Tmem176b、Tnfrsf4、AA467197、Itm2b、Thy1、Igtp、Arl6ip1、Serpine2、Ltb、Tnfrsf25、Furin、Tmem176a、Ifi27l2a、Gbp2、Emp3、Ltb4r1、Tspo、Cst3、Vim、CD200またはその組み合わせを含み、;
好ましくは、グループBは、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、ICOS、S100a10、Tnfrsf4、またはその組み合わせである。
【0022】
別の好ましい例において、段階(b)において、T細胞刺激剤の存在条件下で増殖培養し、前記T細胞刺激剤は、
コンカナバリンA(ConA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、PMA、カルシウムイオノフォア(ionomycin)、IPP、パミドロネート(Pamidronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、CD2抗体または磁気ビーズ標識抗体、CD3抗体または磁気ビーズ標識抗体、CD28抗体または磁気ビーズ標識抗体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
別の好ましい例において、段階(b)において、IL-2、IL-15、またはその組み合わせからなる群から選択されるサイトカインは、増殖培養中に加えられる。
【0024】
別の好ましい例において、段階(b)において、抗原提示細胞および/または抗原ペプチドの存在条件下で増殖培養する。
【0025】
別の好ましい例において、前記抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞、および/またはB細胞を含む。
【0026】
別の好ましい例において、前記抗原ペプチドは、ヒョウヒダニ抗原ペプチド、花粉抗原ペプチド、樹木紛抗原ペプチド等のアレルゲンに関する抗原ポリペプチドを含む。
【0027】
別の好ましい例において、前記抗原ペプチドは、自己免疫性疾患に関する自己抗原ペプチドを含む。
【0028】
別の好ましい例において、前記抗原ペプチドは、
(i)喘息に関するアレルゲンポリペプチド、
(ii)1型糖尿病に関するGAD65抗原ペプチドおよびインスリン抗原ペプチド、
(iii)リウマチ性免疫疾患に関するENAポリペプチド、核タンパク質抗原ポリペプチド、細胞質タンパク質抗原ポリペプチド、および
(iv)自己免疫性肝疾患に関するミトコンドリア抗原ペプチドおよび肝抗原ペプチドからなる群から選択される。
【0029】
別の好ましい例において、段階(b)において、前記増殖培養の時間は、14~21日である。
【0030】
別の好ましい例において、段階(b)において、前記増殖培養は、インビトロで行われる
【0031】
別の好ましい例において、段階(c)において、第2の細胞亜集団内のCD4とCD8 T細胞、NK細胞を除去することにより、第3の細胞亜集団を得る。
【0032】
別の好ましい例において、段階(c)において、CD4、CD8、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)抗体を使用して、第2の細胞亜集団内のDNT細胞を標識し、次にそれらをネガティブ選別することにより、第3の細胞亜集団を得る。
【0033】
別の好ましい例において、段階(d)において、前記ベクターは、等張液である。
【0034】
別の好ましい例において、段階(d)において、前記ベクターは、PBS、HBSS、生理食塩水、乳酸ナトリウムリンゲル液、血漿、血清アルブミンを含む等張液、無血清細胞保存液、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
別の好ましい例において、前記単核細胞(PBMCs)は、哺乳動物、より好ましくはヒトに由来する。
【0036】
別の好ましい例において、前記段階(a)において、前記単核細胞集団は、末梢血または脾臓から分離された単核細胞である。
【0037】
本発明の第3の態様は、医薬組成物の調製に使用される、本発明の第1の態様に記載の細胞製剤の用途を提供し、前記医薬組成物は、腫瘍、感染性疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー性喘息、自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、脳卒中、またはその組み合わせからなる群から選択される疾患の治療に使用される。
【0038】
別の好ましい例において、前記メタボリックシンドロームは、肥満、インスリン抵抗、2型糖尿病、脂肪性肝炎、冠状動脈アテローム性動脈硬化症、またはその組み合わせを含む。
【0039】
別の好ましい例において、前記自己免疫疾患は、1型糖尿病、紅斑性狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群、乾癬、多発性硬化症、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性腎症、またはその組み合わせを含む。
【0040】
本発明の第4の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第2の態様に記載の方法によって調製された細胞製剤、および薬学的に許容されるベクター、希釈剤または賦形剤を含む。
【0041】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、液体製剤である。
【0042】
在本発明的第5の態様は、T細胞増殖を阻害するための、および/またはT細胞アポトーシスを誘導するための方法を提供し、前記方法は、必要とする対象に、本発明の第1の態様に記載の組成物、または前記組成物を有効成分として含む薬物を投与する段階を含む。
【0043】
別の好ましい例において、前記方法は、脂肪組織の炎症を阻害し、インスリン抵抗性を改善することもできる。
【0044】
別の好ましい例において、前記方法は、喘息の抗原特異的予防および治療を有することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ダブルネガティブT細胞の精製およびフローサイトメトリーのダイアグラムを示す(従来の方法でTCR-γδ、CD4、CD8およびNK1.1陽性細胞のみを除去した場合でも、残りのTCRαβ+CD4-CD8-NK1.1-のDNT細胞には、依然として6%近くのNKT細胞が混合されている)。
図2】naive DNT細胞の単細胞亜集団に対する分析を示す(IL-17を分泌および発現する亜集団が存在し、初期DNT細胞の総数の約5.8%を占める)。
図3】インビトロで刺激、活性化および増殖した精製されたDNT細胞の単細胞亜集団の分析を示す(IL-17分泌亜集団が存在し、比率は、増殖した細胞総数の15.5%に達することができる)。
図4】IL-17を分泌するnaiveDNT細胞亜集団における細胞膜タンパク質遺伝子の発現レベルを示す。
図5】IL-17を分泌する活性化されたDNT細胞亜集団における細胞膜タンパク質遺伝子の発現レベルを示す。
図6】細胞の各グループのインビトロ刺激実験の結果を示す。具体的には、精製された総naive DNT細胞、IL-17を分泌するDNT細胞およびIL-17を分泌するDNT細胞を除去した後の他のDNT細胞に対して、それぞれCD3/CD28抗体を使用して、インビトロで刺激および増殖する。三日後のPCR検証によると、総DNT(Total DNT)が活性化および増殖された後IL-17が発現され、IL-17を分泌するDNT細胞(IL-17 producing DNT)が増殖された後、IL-17の分泌は、総DNTグループよりも有意に高かったが、事前にIL-17を分泌するDNT細胞(Purified DNT)を除去し、活性化および増殖された後、IL-17の分泌発現を検出できないことが分かる。
図7】細胞の各グループのインビトロ刺激実験の結果を示す。具体的には、まず総naive DNTをCD3/28抗体で三日間刺激し、次にIL-17を分泌する活性化DNT亜集団の細胞表面マーカーを使用して、それらを蛍光活性化細胞選別することによって精製される。研究によると、IL-17を分泌する活性化DNT亜集団には明らかなIL-17発現があるが、IL-17を分泌する活性化DNT亜集団を除去した後、残りのDNT細胞には、炎症性サイトカインであるIL-17の発現がないことが分かる。
図8】マウスDNT細胞の最適化されたインビトロ増殖および培養システムに基づいて得られたDNT細胞は、T細胞増殖を阻害し、T細胞アポトーシスを誘導する有意な能力を有することを示す。
図9】マウスDNT細胞の最適化されたインビトロ増殖および培養システムに基づいて得られたDNT細胞は、有意なインビボ免疫阻害機能を有し、食事による肥満、インスリン抵抗性および脂肪性肝炎に対して優れた予防および治療効果を発揮することができることを示す。ここで、図9のA部分は、実験プロセスを示す。具体的には、8週間の高脂肪食後、マウスに1回のDNT細胞注入投与し、8週間高脂肪食を与え続ける。図9のB部分は、DNT注射後、マウスの体重増加が単純な高脂肪食グループの体重増加よりも有意に低下したことを示す。図9のC部分は、DNT細胞治療グループのマウス肝脂肪液胞変性および炎症細胞蓄積が有意に改善されたことを示す。図9のD部分は、DNT細胞治療グループのマウスの空腹時の血糖が高脂肪食を与えられたグループよりも有意に低下したことを示す。
図10】総DNT細胞(IL-17を分泌するDNT細胞を事前に除去されない)を注射した治療グループのマウスにおける肝脂肪液胞変性および炎症細胞蓄積は、対照グループと比較して有意に改善されておらず、脂肪液胞および炎症細胞浸潤の現象が以前に存在することを示す。
図11】OVA323-339ペプチドによって刺激および増殖されたDNT細胞が、OVA抗原によって誘導された喘息に対して、有意な保護効果を有し、アレルギー性気道炎症および肺好酸球、リンパ球の蓄積が、有意に減少することを示す。OVA非関連ポリペプチド(MOG35-55)によって誘導されたDNT細胞は、マウスのOVAによって誘導された喘息に対して保護効果がない。
図12】CD4 T細胞と比較して、DNT細胞がLAG3分子を高発現することを示す。
図13】野生型DNT細胞と比較して、LAG3ノックアウトされたDNT細胞が、OVAによって誘導された喘息に対する予防および治療効果が有意に低下することを示す。
図14】OVAによって刺激されたDNT細胞において、I-Ab OVA323-339テトラマー陽性細胞の頻度が、OVAによって刺激されたLag3ノックアウトDNT細胞またはOVAによって刺激されたいない野生型DNT細胞よりも有意に高いことを示す。
図15】DNT細胞(IL-17を分泌するDNTを除去した後の精製されたDNT細胞)の注射が、肺リンパ球浸潤の症状を完全に緩和することができることを示す。しかしながら、同じ用量の総DNT細胞(IL-17を分泌するDNT細胞を除去していない)を注射した場合でも、肺胞の周囲に明らかなリンパ球浸潤が依然に見られ、喘息を完全に緩和する効果には達しない。
図16】最適化されたヒトDNT細胞のインビトロ増殖および培養システムに基づいて得られたDNT細胞は、T細胞の増殖を有意に阻害する能力を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究の後、DNT細胞集団からのIL-17を分泌するDNT細胞を除去した後、T細胞増殖を有意に阻害し、アポトーシスを誘導することができ、脂肪組織の炎症を阻害し、インスリン抵抗性を改善することもでき、喘息を抗原特異的予防および治療する効果を有する。
【0048】
DNT細胞
DNT細胞、即ち、ダブルネガティブT細胞(Double negative T cells)は、独特の表現型を有するTCRαβ+Tリンパ球の一つであり、CD4、CD8、NK等の細胞の特徴的な表面マーカーを発現せず、免疫系において核心かつ多様な調節的役割を果たす。
【0049】
本発明は、T細胞増殖を有意に阻害し、アポトーシスを誘導する効果を有し、脂肪組織の炎症を阻害し、インスリン抵抗性を改善することもできる、IL-17を分泌するDNT細胞を除去したDNT細胞集団を提供する。
【0050】
本明細書に使用されるように、naive DNT細胞という用語は、天然のDNT細胞を指す。
【0051】
DNT細胞の精製および増殖
本発明において、DNT細胞の精製は、培養および増殖前に、または培養および増殖後に行うことができ、前者は後者よりも抗体の使用量が大幅に少ないため、DNT細胞を培養および増殖させる前に、IL-17分泌DNT細胞を事前に除去することが好ましい。具体的には、二つの精製方法は、次のとおりである。
【0052】
1.精製してから増殖する:即ち、DNTを増殖する前に、IL-17を分泌するnaive DNT亜集団を事前に除去する。
【0053】
無菌条件下でマウス脾臓またはヒト末梢血PBMCを取得し、勾配遠心分離法によって単核細胞の懸濁液を取得する。CD19、CD4、CD8、TCR-γδ、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)、aGalcer-CD1dおよびLPC-CD1dテトラマー抗体(またはTCRVα24-Jα18抗体)を使用して単核細胞(それぞれB細胞、CD4とCD8 T細胞、γδ T細胞、1型NKTおよび2型NKT細胞を除去する)を標識し、ネガティブ選別(磁気ビーズ選別、蛍光活性化細胞選別または密度勾配遠心分離等の分離方式)によってDNT細胞を主とする細胞亜集団を取得し、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4r等の抗体のいずれか一つまたは組み合わせを同時に使用して、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団を除去し、次にインビトロでDNT細胞を刺激および増殖させ(コンカナバリンA(ConA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、PMA、カルシウムイオノフォア(ionomycin)、IPP、パミドロネート(Pamidronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、CD2、CD3およびCD28抗体または磁気ビーズ標識抗体の一つまたは複数の混合物等、DNT細胞の増殖を刺激できる任意の試薬。複数の混合の場合、任意の比率で試薬を配合することができる)、DNT細胞の増殖率を増加するために、IL-2および/またはIL-15等の様々なサイトカインまたは組み合わせを加えることができる。培養時間は、14~21日であり、期間中に培地の状況および細胞密度に応じて溶液を交換するかプレートを交換して培養する。培養終了後、CD4、CD8、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)抗体磁気ビーズネガティブ選択を使用して、培養中に存在することができるCD4、CD8およびNK細胞をさらに除去し、増殖および培養されたDNT細胞を取得して後続の治療に使用される。培養および増殖したDNT細胞の表現型は、CD3+TCRαβ±CD4-CD8- NK1.1-(マウス)/CD56-(ヒト)CD19-TCRγδ±である。
【0054】
2.増殖してから精製する:即ち、まずDNT細胞亜集団を増殖した後、IL-17を分泌する活性化されたDNT細胞を除去する。無菌条件下でマウス脾臓またはヒト末梢血PBMCを取得し、勾配遠心分離法によって単核細胞の懸濁液を取得する。CD19、CD4、CD8、TCR-γδ、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)、aGalcer-CD1dおよびLPC-CD1dテトラマー抗体(またはTCRVα24-Jα18抗体)を使用して単核細胞を標識し、磁気ビーズネガティブ選別によってDNT細胞を取得する。次にインビトロでDNT細胞を刺激および増殖させ(コンカナバリンA(ConA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、PMA、カルシウムイオノフォア(ionomycin)、IPP、パミドロネート(Pamidronate)、ゾレドロネート(Zoledronate)、CD2、CD3およびCD28抗体または磁気ビーズ標識抗体の一つまたは複数の混合物等、DNT細胞の増殖を刺激できる任意の試薬。複数の混合の場合、任意の比率で試薬を配合することができる)、DNT細胞の増殖率を増加するために、IL-2および/またはIL-15等の様々なサイトカインまたは組み合わせを加えることができる。培養および増殖した後、増殖された総DNT細胞を収集し、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、ICOS、S100a10等の抗体のいずれか一つまたは組み合わせを使用して、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団を除去する。CD4、CD8、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)抗体磁気ビーズネガティブ選択を同時に使用して、培養に存在することができるCD4、CD8およびNK細胞をさらに除去し、増殖および培養されたDNT細胞を取得して後続の治療に使用される。培養および増殖したDNT細胞表現型は、CD3+TCRαβ±CD4-CD8- NK1.1-(マウス)/CD56-(ヒト)CD19-TCRγδ±である。
【0055】
3.抗原特異的DNT細胞の増殖および培養の方法は、次のとおりである。
【0056】
無菌条件下でマウス脾臓またはヒト末梢血PBMCを取得し、勾配遠心分離法によって単細胞の懸濁液を取得する。CD19、CD4、CD8、TCR-γδ、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)、aGalcer-CD1dおよびLPC-CD1dテトラマー抗体(またはTCRVα24-Jα18抗体)を使用してマウスの脾臓細胞(それぞれB細胞、CD4とCD8 T細胞、γδ T細胞、1型NKTおよび2型NKT細胞を除去する)を標識し、ネガティブ選別(磁気ビーズ選別、蛍光活性化細胞選別または密度勾配遠心分離等の分離方式)によってDNT細胞を主とする細胞亜集団を取得し、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4r等の抗体のいずれか一つまたは組み合わせを同時に使用して、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団を除去し、次にインビトロでマクロファージ、樹状細胞およびB細胞等を抗原提示細胞として使用できる細胞と共培養し、同時に抗原特異性を増強させるために、特定の抗原ペプチドを加えることができる。培養中にIL-2、IL-15等の様々なサイトカインまたは組み合わせを加えることができる。インビトロでの増殖能力を増強させるために、CD3抗体を同時に加えることができる。7~10日間培養した後、培養された細胞を収集し、CD4、CD8、NK1.1(マウス)/CD56(ヒト)抗体磁気ビーズネガティブ選択を使用して、培養中に存在することができるCD4、CD8およびNK細胞をさらに除去する。CD19、CD11bおよび/またはCD11c磁気ビーズ抗体を同時に使用して、共培養システム内のB細胞、樹状細胞等の抗原提呈細胞を除去する。精製して得られたDNT細胞は、後続の治療に使用される。培養および増殖したDNT細胞表現型は、CD3+TCRαβ±CD4-CD8- NK1.1-(マウス)/CD56-(ヒト)CD19-TCRγδ±である。
【0057】
医薬組成物および投与方法
本発明は、T細胞の増殖を阻害し、および/またはT細胞のアポトーシスを誘導し、腫瘍、感染性疾患、メタボリックシンドローム(肥満、インスリン抵抗、糖尿病、脂肪性肝炎、冠状動脈アテローム性動脈硬化症)、脳卒中、またはその組み合わせからなる群から選択される疾患の治療に使用されることができる、本発明の第1の態様に記載の細胞製剤を含む本発明の第4の態様に記載の医薬組成物をさらに提供する。前記疾患は、アレルギー性喘息、1型糖尿病、紅斑性狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群、乾癬、多発性硬化症、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変和硬化性胆管炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性腎症、器官移植拒絶反応、移植片対宿主病、またはその組み合わせをさらに含む。
【0058】
本発明は、安全かつ有効な量の本発明の細胞製剤、および薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む、医薬組成物をさらに提供する。このようなベクターは、食塩水、緩衝液、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、粉末剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびその組み合わせを含む(これらに限定されない)。薬物製剤は、投与方法と一致している必要がある。本発明の医薬組成物は、注射剤の形態で調製されることができ、例えば、生理食塩水またはデキストロースおよび他の補助剤を含む水溶液を使用して、従来の方法によって調製する。有効成分の投与量は、治療有効量である。さらに、本発明の細胞製剤は、他の治療剤と一緒に使用されることができる。
【0059】
本発明の医薬組成物は、従来の方法で、必要とする対象(例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳動物)に投与することができる。代表的な投与方法には、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内、腹骨盤腔、くも膜下腔、副鼻腔、頭蓋内、様々な組織(例えば、腫瘍組織、炎症性疾患組織)等の様々な部位の注射等を含む(これらに限定されない)。
【0060】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
【0061】
(a)本発明は、DNT細胞のシステムを増殖および精製する。
【0062】
(b)IL-17は、重要な炎症因子であり、体の自己免疫応答および炎症反応を誘発することができる。本発明の精製されたDNT細胞は、IL-17を分泌する能力を有さないため、細胞治療受容体の自己免疫応答および炎症反応を誘発するIL-17の副作用が回避される。
【0063】
(c)本発明の精製されたDNT細胞の免疫阻害機能は、精製されていないDNTの免疫阻害機能よりも強力であり、様々な自己免疫性疾患、アレルギー性喘息および及炎症関連疾患の治療に使用されることができる。
【0064】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量によって計算される。
【0065】
実施例1
単細胞シーケンシング
単細胞トランスクリプトームシーケンシング技術により、マウス脾臓のDNT細胞に対して、単細胞レベルの分析を行う。まず、蛍光活性化細胞選別技術(図1を参照する)を使用して、TCRαβ+CD4-CD8-NK1.1-のダブルネガティブT細胞を取得し、CD1dテトラマー抗体染色技術を使用して、1型NKT(αGalcer-CD1dテトラマー抗体陽性)および2型NKT(LPC-CD1dテトラマー抗体陽性)細胞をさらに除去し、次に精製されたnaive DNTに対して、単細胞トランスクリプトームシーケンシング分析を実行して、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団が存在するかどうかを検出する。
【0066】
単細胞シーケンシングおよびPCR検証の結果から、精製されたDNT細胞のいくつかの細胞亜集団におけるIL-17のmRNA発現レベルが他のDNT細胞の発現レベルよりも有意に高いことを示し、このDNT細胞亜集団は、総DNT細胞の約5.8%を示す(図2を参照する)。精製された総DNT細胞をインビトロでCD3/28抗体で三日間刺激した後、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団の増殖が明らかであり、この時点で、IL-17mRNAを高発現するDNT細胞は、総DNT細胞の15.5%に達することができ(図3を参照する)、これは、インビトロでの刺激、活性化および増殖において、IL-17を分泌するDNT細胞が他のDNT細胞よりも唯に増殖することを証明する。これらのDNT細胞を治療するために再注入されれと、受容体免疫活性化、さらに自己免疫応答を引き起こす可能性がある。
【0067】
このIL-17を分泌するDNT細胞を書鉅するために、総naive DNT細胞をさらに分析する。結果は、これらのIL-17を分泌するnaive DNT細胞が様々な膜貫通タンパク質を高発現することを示し、ここで、他のDNT細胞と比較して、S100a6、Tmem176b、CXCR6、Ramp1、Tmem176a、Lgals1、Lgals3、ACTN2、ICOS、CCR2、CD82、CD127(IL7r)、Ltb4r1、Hk2、TNFRSF25、Ly6a、BLK、Lsp1、Ly6e、Itgb7、Itm2b、S100a10、Ly6g5b、Thy1、CD40Ig、Ramp3、Gm2a等の発現は、0.5倍以上増加し、特に、他のDNT細胞と比較して、S100a6、Tmem176b、CXCR6、Ramp1、Tmem176a、Lgals1、Lgals3、ACTN2、ICOS、CCR2、CD82、CD127(IL7r)等のタンパク質の発現は、1倍以上増加する(図4を参照する)。従って、上記示差タンパク質の抗体(S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4r等を含むが、これらに限定されない)は、IL-17を分泌するnaive DNT細胞亜集団の精製および分離に使用されることができる。
【0068】
次に、まず総naive DNTをCD3/28抗体で三日間刺激し、単細胞シーケンシングで活性化および増殖したDNT細胞を検出する。結果は、図5に示されたように、IL-17を分泌する活性化されたDNT細胞亜集団は、IL-17a、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、IL-4、IL-3、ICOS、S100a10、Ramp1、Tmem176b、Tnfrsf4、AA467197、Itm2b、Thy1、Igtp、Arl6ip1、Serpine2、Ltb、Tnfrsf25、Furin、Tmem176a、Ifi27l2a、Gbp2、Emp3、Ltb4r1、Tspo、Cst3、Vim、CD200等の分泌タンパク質および膜貫通タンパク質を高発現し、これらのタンパク質を使用する抗体は、IL-17を分泌する活性化されたDNT細胞亜集団の選別に使用されることができる。
【0069】
実施例2
DNT細胞の精製および有効性の検証
上記発見をさらに証明するために、まずマウスnaive DNTを精製し、即ち、無菌条件下でマウス脾臓を取得し、赤血球を粉砕および溶解した後、単一の脾臓細胞の懸濁液を取得する。CD19、CD4、CD8、TCR-γδ、NK1.1、aGalcer-CD1dおよびLPC-CD1dテトラマー抗体(またはTCRVα24-Jα18抗体)を使用して、マウスの脾臓細胞を標識し、磁気ビーズネガティブ選別によってDNT細胞を主とする細胞亜集団を取得し、同時にS100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4r等の抗体のいずれかを使用して、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団を標識する。
【0070】
続いて、同じ数の総naive DNT細胞、IL-17を分泌するDNT細胞およびIL-17を分泌するDNT細胞を除去した他のDNT細胞を使用して、それぞれCD3/CD28抗体でインビトロで刺激および増殖させる。
【0071】
結果は、図6に示されたように、三日間の刺激後、総DNT活性化増殖グループにはIL-17発現があり、IL-17を分泌するDNT細胞が増殖した後、IL-17の分泌は、総DNTグループよりも有意に高く、IL-17分泌細胞を事前に除去したDNT細胞は、インビトロでCD3/28刺激された後、活性化および増殖したDNT細胞にはIL-17の分泌および発現がない(事前除去の有効性が確認される)。上記結果は、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127またはLtb4r陽性のDNT細胞を事前に除去することにより、IL-17を分泌するDNT細胞亜集団を効果的に除去し、それらのさらなる増殖を回避することができることを示す。
【0072】
次に、まずnaive 総DNTをCD3/28抗体で三日間刺激し、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、ICOS、S100a10またはTnfrsf4等の抗体を使用して、このグループの細胞を分離および精製し、PCR検証により、このグループの抗体によって分離および精製された活性化DNT亜集団には、明らかなIL-17発現があり、IL-17を分泌する活性化DNT亜集団を除去した後、残りDNT細胞には、IL-17の炎症性サイトカインの発現がないことが分かる(図7を参照する)。
【0073】
培養および増殖前および培養および増殖後のDNT細胞を精製する二つの方法と比較すると、第1のタイプで抗体を使用する量は、第2のタイプよりも明らかに少なく、その後の機能検証は、第1のタイプの条件、即ち、培養前にDNT細胞を増殖させる前、IL-17分泌DNT細胞を事前に除去する方法を使用する。
【0074】
実施例3
精製後のDNT細胞の機能検証
精製後のDNT細胞のインビトロ免疫阻害機能を検証するためである。精製および増殖したDNT細胞を、樹状細胞によって刺激および増殖された同じマウスのTリンパ球と混合および培養する。
【0075】
結果は、図8に示されたように、精製後のDNT細胞は、T細胞増殖を有意に阻害し、アポトーシスを誘導する効果を有する。
【0076】
続いて、高脂肪食を使用して、マウス肥満、糖尿病および脂肪性肝炎モデルを誘導し、インビボでの炎症を阻害するDNT細胞の効果を研究する。マウスでの8週間の高脂肪食後、3~5×106DNT細胞の単回注入、その後高脂肪食を8週間続ける(16週間のフルコース)。
【0077】
結果は、図9に示されたように、DNT細胞治療グループのマウスの体重、空腹時の血糖および脂肪肝の状況は、有意に改善され、これは、DNT細胞による脂肪組織の炎症を阻害し、インスリン抵抗性の改善に関連する。
【0078】
しかしながら、総DNT細胞を注射した場合(IL-17を分泌するDNT細胞を事前に除去されていない)、治療グループのマウスの肝脂肪液胞変性および炎症細胞の蓄積は、対照グループと比較して有意に改善されず、依然として脂肪液胞および炎症細胞浸潤の現象が存在する(図10)。
【0079】
実施例4
抗原特異性を有するDNT細胞の培養
DNTの抗原特異的免疫阻害を研究するために、まずOVAによって誘導されたマウスアレルギー性喘息モデルを初めて構築される。続いて、成熟したマウス樹状細胞および精製されたnaive DNT細胞をインビトロで混合培養する。刺激および増殖したDNT細胞の抗原特異的阻害効果をカンサスするために、培養中にOVA特異的OVA323-339抗原ペプチドを加えるか、またはOVAとは関係の内MOG33-55抗原ペプチドを加える。
【0080】
結果は、図11に示されたように、OVA感作を2回行った後、OVAタンパク質は、アレルギー性喘息を刺激した後、OVA323-339ポリペプチドを注入して刺激および増殖したDNT細胞は、喘息発作に対して優れた制御効果を有する。
【0081】
無関係のペプチド断片MOG33-55によってインビトロで刺激されたDNT細胞は、OVAタンパク質によって誘発された喘息に対して優れた予防および治療効果を有さず、インビトロでの培養および増殖したDNTが有意な抗原特異的免疫阻害効果を有することが証明される。
【0082】
CD4 T細胞と比較して、DNTは、より高いレベルの分子LAG3を発現することが分かる(図12を参照する)。Lag3分子は、MHC-II分子に結合することができ、MHC-II分子に対するその親和性は、CD4分子よりもはるかに高くなる。
【0083】
OVA323-339ポリペプチドを使用して、それぞれ野生型DNT細胞およびLAG3ノックアウトDNT細胞をインビトロで刺激する。その後、OVAによって誘導されたアレルギー性喘息に対する予防および治療効果を観察する。結果は、図13および図14に示されたように、LAG3ノックアウトDNT細胞の免疫保護効果は、明らかに低下する。OVA特異的MHC-II分子で染色したテトラマー(Tetramer)(I-Ab OVA323-339テトラマー)染色によると、LAG3ノックアウトDNT細胞がI-A OVA323-339テトラマーを認識する能力が大幅に低下して、DNT細胞の抗原特異的免疫阻害能力が低下することが分かる。LAG3分子がDNT細胞の抗原特異性を維持する上で重要な役割を果たしていることを証明する。
【0084】
しかしながら、同じ用量の総DNT細胞を注射した場合でも(IL-17を分泌するDNT細胞が除去されない)、肺胞の周囲に明らかなリンパ球浸潤が見られ、喘息を完全に緩和することはできない(図15)。
【0085】
実施例5
ヒトDNT細胞の機能検証
精製されたヒトDNT細胞のインビトロ免疫阻害機能をさらに検証するために、実施例2の方法を使用してヒトDNT細胞を精製および増殖し、それらを樹状細胞(DC)によって刺激および増殖されたTリンパ球を混合培養する。
【0086】
結果は、図16に示されたように、精製されたDNT細胞がT細胞の増殖を有意に阻害する効果を示す。
【0087】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞製剤であって、前記細胞製剤は、DNT細胞集団を含み、前記DNT細胞集団において、IL-17を分泌および発現しない細胞が、総細胞数の95%、好ましくは98%、より好ましくは99%、最も好ましくは99.9%超である、細胞製剤。
【請求項2】
前記DNT細胞集団において、総細胞数の95%超の細胞、表面抗原CD3+およびTCRを有する、請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項3】
前記DNT細胞集団において、総細胞数の50%超の細胞、LAG3遺伝子を高発現する、請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項4】
請求項1に記載の細胞製剤を調製するための方法であって、前記方法は、
(a)単核細胞集団(PBMC)を提供し、前記細胞集団を選別し、それによってDNT細胞を主とする第1の細胞亜集団を得る段階と、
(b)前記第1の細胞亜集団からIL-17を産生するDNT細胞を除去し、残りの第1の細胞亜集団を増殖培し、それによって、第2の細胞亜集団を得る段階、または
前記第1の細胞亜集団を増殖培養した後、IL-17を産生するDNT細胞を除去し、それによって、第2の細胞亜集団を得る段階と、
(c)任意選択的に、前記第2の細胞亜集団内のDNT細胞をさらに選別し、それによって、第3の細胞亜集団を得る段階と、
(d)前記第2のまたは第3の細胞亜集団を適切な担体と混合し、それによって、請求項1に記載の細胞製剤を得る段階
む、方法。
【請求項5】
段階(a)において、前記単核細胞集団からB細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞、γδ T細胞、1型NKT細胞、ならびに2型NKT細胞除去され、それによって、DNT細胞を主とする前記第1の細胞亜集団を得る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)において、グループAから選択される発現タンパク質を標的とする一つまたは複数の抗体を使用することによって前記IL-17を産生するDNT細胞が培養前に除去され、ここで、グループAは、S100a6、Tmem176b、CXCR6、Ramp1、Tmem176a、Lgals1、Lgals3、ACTN2、ICOS、CCR2、CD82、CD127(IL7r)、Ltb4r1、Hk2、TNFRSF25、Ly6a、BLK、Lsp1、Ly6e、Itgb7、Itm2b、S100a10、Ly6g5b、Thy1、CD40Ig、Ramp3、Gm2aおよびその組み合わせからなり
好ましくは、グループAは、S100a6、CXCR6、ICOS、CCR2、CD82、CD127、Ltb4rおよびその組み合わせからなる、
求項4に記載の方法。
【請求項7】
段階(b)において、グループBから選択される発現タンパク質を標的とする一つまたは複数の抗体を使用することによって前記IL-17を産生するDNT細胞が培養後に培養系から除去され、ここで、グループBは、IL-17a、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、IL-4、IL-3、ICOS、S100a10、Ramp1、Tmem176b、Tnfrsf4、AA467197、Itm2b、Thy1、Igtp、Arl6ip1、Serpine2、Ltb、Tnfrsf25、Furin、Tmem176a、Ifi27l2a、Gbp2、Emp3、Ltb4r1、Tspo、Cst3、Vim、CD200およびその組み合わせからなり
好ましくは、グループBは、Lgals1、Ly6a、CXCR6、S100a6、Lgals3、Lta、ICOS、S100a10、Tnfrsf4およびその組み合わせからなる、
求項4に記載の方法。
【請求項8】
段階(b)において、抗原提示細胞および/または抗原ペプチドの存在下前記増殖培養が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍、感染性疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー性喘息、自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、脳卒中、およびその組み合わせからなる群から選択される疾患を治療するための医薬組成物を調製するための、請求項1に記載の細胞製剤の使用。
【請求項10】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、請求項4に記載の方法によって調製され細胞製剤、および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【国際調査報告】