(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】自然光及び/又は人工光の下での物体認識のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220803BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20220803BHJP
G06V 10/143 20220101ALI20220803BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N21/01 D
G06V10/143
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572381
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020065749
(87)【国際公開番号】W WO2020245442
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クルトグル,ユヌス エムレ
(72)【発明者】
【氏名】チルダース,マシュー イアン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE06
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG03
2G059JJ02
2G059KK04
(57)【要約】
本発明は、コンピュータビジョンアプリケーションを介した物体認識のためのシステム及び方法に関し、前記システムは少なくとも以下の構成要素:
- 認識される少なくとも1つの物体であって、物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンとを有する、物体と、
- 前記少なくとも1つの物体を含むシーンを照射するように構成された光源であって、前記光源は、前記シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは前記少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターン内にある、光源と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されたときに、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドの少なくとも1つで前記シーンの放射輝度データのみを測定するように構成された、少なくとも1つのセンサと、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含む、データ記憶ユニットと、
- データ処理ユニットであって、前記シーンの前記測定された放射輝度データから前記認識される少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを抽出し、前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するように構成された、データ処理ユニットと、
を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータビジョンアプリケーションを介した物体認識のためのシステムであって、少なくとも以下の構成要素:
- 認識される少なくとも1つの物体であって、物体特有の反射スペクトルパターンと物体特有の発光スペクトルパターンとを有する、物体と、
- 前記少なくとも1つの物体を含むシーンを照射するように構成された光源であって、前記光源は、前記シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは前記少なくとも1つの物体の前記発光スペクトルパターン内にある、光源と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されるときに、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドの少なくとも1つで前記シーンの放射輝度データのみを測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットと、
- 前記シーンの前記測定された放射輝度データから、認識される前記少なくとも1つの物体の物体特有の前記発光スペクトルパターンを抽出し、前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するように構成されたデータ処理ユニットと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記光源は、前記シーンを照射する際に、前記光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを意図的かつ本質的に除外するように構成されたLED光源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記LED光源は、複数のスペクトルバンドを省略するように構成され、複数の狭帯域LEDで構成され、前記各LEDは狭いスペクトルバンドの光を放射するように構成され、前記LEDのスペクトルバンドは、間に前記省略されたスペクトルバンドを有して互いに離間している、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光源は、少なくとも1つの光フィルタを備え、前記少なくとも1つの光フィルタは、前記光のスペクトル範囲の前記少なくとも1つのスペクトルバンドが前記シーンに入るのを遮断するように設計されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光フィルタは、ある時点では光の少なくとも1つのスペクトルバンドが前記シーンに入るのを遮断し、遮断される前記少なくとも1つのスペクトルバンドを動的に変更し、したがって、経時的に光のスペクトル範囲の少なくとも一部分を遮断するように構成された動的光フィルタとして設計されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記動的光フィルタは、対象となる光のスペクトル範囲にわたって連続的に作動し、要求に応じて対象となる前記少なくとも1つのスペクトルバンドの少なくとも1つを遮断するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
同一の自然光源及び/又は人工光源、及び/又はシーンを照射する複数の自然光源及び/又は人工光源上に複数の動的光フィルタを備え、前記フィルタは、前記少なくとも1つのスペクトルバンドのうちの同一のものの少なくとも一部を同時に遮断するように互いに同期するように構成されている、請求項4~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光フィルタは、自然光のように窓からシーンに入る光又は人工照明要素からシーンに入る光を、前記少なくとも1つの別個のスペクトルバンドで連続的に遮断するように構成されたノッチフィルタとして設計されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記ノッチフィルタは、前記光のスペクトル範囲内の複数の別個のスペクトルバンドを遮断するように設計されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサは、前記シーンが前記光源によって照射されている時間間隔で、前記シーンを撮像し、前記光のスペクトル範囲の前記少なくとも1つのスペクトルバンドの異なるスペクトルバンドで前記シーンの放射輝度データのみを記録するように構成されているカメラである、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサはハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記データ処理ユニットは、前記シーンの前記測定された放射輝度データのスペクトル分布に基づいて、認識される前記少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、前記計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶されている発光スペクトルパターンとマッチングして、ベストマッチングする発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
コンピュータビジョンアプリケーションを介した物体認識のための方法であって、少なくとも以下の工程:
- 認識される物体を提供する工程であって、前記物体は物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンとを有している、工程と、
- 光源を用いて前記物体を含むシーンを照射する工程であって、前記光源は、前記シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは、少なくとも1つの前記物体の発光スペクトルパターンにある、工程と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されたときに、少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドで前記シーンの放射輝度データのみを、少なくとも1つのセンサを用いて測定する、工程と、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットを提供する、工程と、
- データ処理ユニットにより、前記シーンの前記測定された放射輝度データから前記認識される物体の物体特有の発光スペクトルパターンを抽出する、工程と、
- 前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶されている発光スペクトルパターンとマッチングさせる、工程と、
- ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別する、工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
前記光源は、前記シーンを照射する際に、前記光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを意図的かつ本質的に除外するように構成されたLED光源として選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光源は、少なくとも1つの光フィルタを備え、前記少なくとも1つの光フィルタは、前記光のスペクトル範囲の前記少なくとも1つのスペクトルバンドが前記シーンに入るのを遮断するように設計されている、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの光フィルタを動的フィルタとして選択し、対象となる光のスペクトル範囲にわたって作動し、要求に応じて対象となる少なくとも1つのスペクトルバンドの少なくとも1つの遮断を提供することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つ光フィルタを、自然光のように窓から前記シーンに入る光又は人工照明要素からの光を前記少なくとも1つの別個のスペクトルバンドで連続的に遮断するように、特に前記光のスペクトル範囲内の複数の別個のスペクトルバンドを遮断するように構成されたノッチフィルタとして選択することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドのスペクトル分布と前記シーンの測定された放射輝度データに基づいて、認識される前記少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、前記計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別することをさらに含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、マシンに:
- 認識される物体を提供することであって、前記物体は物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンとを有している、ことと、
- 光源を用いて前記物体を含むシーンを照射することであって、前記光源は、前記シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは、前記少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンにある、ことと、
- 前記シーンが前記光源によって照射されたときに、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドで前記シーンの放射輝度データのみを測定する、ことと、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットを提供することと、
- 前記シーンの前記測定された放射輝度データから前記認識される物体の物体特有の発光スペクトルパターンを抽出することと、
- 前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶されている発光スペクトルパターンとマッチングさせることと、
- ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別することと、
を行わせる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドのスペクトル分布と前記シーンの前記放射輝度データに基づいて、前記認識される少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、前記計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングする発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するための命令をさらに記憶する、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自然光及び/又は人工光の下で、光フィルタを用いた物体認識のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータビジョンは、幾つか挙げると、カメラ、LiDARやレーダーなどの距離センサ、構造化光やステレオビジョンに基づく深度カメラシステムなどのセンサを介して周囲の情報を収集できる電子機器の豊富な使用により、急速な発展を遂げている分野である。これらの電子機器は、コンピュータ処理ユニットによって処理され、その結果、人工知能及び/又はコンピュータ支援アルゴリズムを用いて環境やシーンの理解を深める生の画像データを提供する。この環境の理解を如何に深めるかについては多くの方法がある。一般的には、2D又は3Dの画像及び/又はマップが形成され、そして、これらの画像及び/又はマップはシーンとそのシーン内の物体の理解を深めるために分析される。コンピュータビジョンを改善するための1つの見込みは、シーン内の物体の化学的組成の成分を測定することである。2D又は3D画像として取得された環境内の物体の形状と外観は、環境の理解を深めるために使用されることができるが、これらの技術にはいくつかの欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンピュータビジョン分野の課題の1つは、センサ、計算能力、ライトプローブなどの最小量の資源を用いて、高精度かつ低遅延で各シーン内の可能な限り多くの物体を識別できるようにすることにある。物体識別方法は、長年にわたって、リモートセンシング、物体識別、分類、認証又は認識と呼ばれてきた。本開示の範囲では、シーン内の物体を識別するコンピュータビジョンシステムの能力は、「物体認識」と呼ばれる。例えば、コンピュータによって写真を分析し、その写真の中のボールを識別/ラベル付けすることは、時にはボールの種類(バスケットボール、サッカーボール、野球ボール)、ブランド、状況などのさらなる情報を有するとしても、「物体認識」の用語に該当する。
【0004】
一般に、コンピュータビジョンシステムで物体を認識するために利用される技術は、以下のように分類される。
【0005】
技術1: 物理タグ(画像ベース):バーコード、QRコード(登録商標)、シリアルナンバー、テキスト、パターン、ホログラムなど。
【0006】
技術2: 物理タグ(スキャン/密着ベース):視野角依存顔料、アップコンバージョン顔料、メタクロミクス、カラー(赤/緑)、発光材料。
【0007】
技術3: 電子タグ(パッシブ):RFIDタグなど。電力なしで対象物体に取り付けられる装置であって、必ずしも見えなくてもよいが、他の周波数(例えば無線)で作動することができる。
【0008】
技術4: 電子タグ(アクティブ):無線通信、光、無線、車両から車両、車両から任意のもの(X)など。種々の形で情報を発する対象物体上の電力駆動装置。
【0009】
技術5: 特徴検出(画像ベース):画像の分析及び識別、すなわち、車について側面視で一定の距離にある2つの車輪;顔認識について2つの目と1つの鼻及び口(この順序で)など。これは、既知の幾何学形状/形に依存する。
【0010】
技術6: ディープラーニング/CNNベース(画像ベース):車や顔などのラベル付けされた画像の多数の写真によってコンピュータをトレーニングし、該コンピュータが検出すべき特徴を決定し、対象物体が新しいエリアに存在するか予測する。識別すべき物体の各分類についてトレーニング手順を繰り返す必要がある。
【0011】
技術7: 物体追跡方法:シーン内の物品を特定の順序に整理し、最初に順序付けられた物体にラベル付けする。その後に、既知の色/幾何学形状/3D座標でシーン内の物体を追跡する。物体がシーンから離れて再び入ってくる場合は、「認識」は失われる。
【0012】
以下では、上述の技術のいくつかの欠点が示される。
【0013】
技術1: 画像内の物体が遮蔽されている場合、又は物体の小さな部分だけが視界にある場合、バーコード、ロゴなどが読めない可能性がある。さらに、可撓性の物品上にあるバーコードなどは、歪む可能性があり、可視性を制限する。物体のすべての側面が、遠距離から見えるために、大きなバーコードを担持しなければならず、さもなければ、物体は近距離で正しい方向に向いている時のみ認識されるだけである。これは、例えば倉庫の棚上の物体のバーコードがスキャンされる場合に、問題となる。シーン全体にわたって操作する場合、技術1は、変化し得る周囲光に依存する。
【0014】
技術2: アップコンバージョン顔料は、それらの低量子収率による低レベルの発光のため、視認距離に限界がある。そのため、強力なライトプローブが必要となる。また、それらは通常不透明で大きい粒子であるため、コーティングの選択肢が限られる。さらに、それらの使用を複雑にしているのは、蛍光と光反射に比べて、アップコンバージョン反応が遅いということである。幾つかの適用は、使用される化合物に依存するこの独特の反応時間を利用するが、これは、該センサ/物体システムの飛行距離時間が予め知られている場合にのみ、可能である。これはコンピュータビジョンアプリケーションではめったにないケースである。これらの理由から、偽造防止センサは、正確さのために、読み取りのためのカバーされた/暗い部分と、プローブとしてのクラス1又は2のレーザと、対象物体への固定された限られた距離とを有している。
【0015】
同様に視野角依存の顔料システムは、近距離でのみ機能し、複数の角度で見る必要がある。また、視覚的に心地よい効果に関しては、色が均一ではない。正しい測定を行うためには、入射光のスペクトルが管理されなければならない。単一の画像/シーン内では、角度依存のカラーコーティングを施した物体は、サンプルの次元に沿って、カメラに見える色を複数有している。
【0016】
色ベースの認識は、測定された色が周囲光条件に部分的に依存するため、困難である。したがって、シーンごとに基準サンプル及び/又は制御された光条件が必要となる。また、異なるセンサは、異なる色を区別する能力が異なり、また、センサの種類やメーカーによって異なり、センサごとに較正ファイルを必要とする。
【0017】
周囲光下での発光ベースの認識は、物体の反射成分と発光成分が合計加算されるため、困難なタスクとなる。一般的に、発光ベースの認識は、代わりに、暗い測定条件と、発光材料の励起領域の先験的な(a priori)知識を利用し、それによって正しいライトプローブ/光源が使用され得る。
【0018】
技術3: RFIDタグなどの電子タグは、回路、集電装置、アンテナを物品/対象物体に取り付ける必要があり、コストを増加させ、設計を複雑化させる。RFIDタグは存在するかどうかの情報を提供するが、シーンにわたって多数のセンサが使用されない限り、正確な位置情報を提供しない。
【0019】
技術4: これらの能動的な手法では、対象物体を電源に接続する必要があり、サッカーボール、シャツ、又はパスタの箱などの単純な物品にはコストがかかりすぎて、したがって実用的ではない。
【0020】
技術5: 遮蔽や異なる視野角などは容易に結果を変化させるため、予測精度は、画像の品質とシーン内でのカメラの位置に大きく依存する。ロゴタイプの画像は、シーン内の複数の場所に存在することができ(すなわち、ロゴがボール、Tシャツ、帽子、又はコーヒーカップに存在し得るなど)、物体認識は推論による。物体の視覚パラメータは、多大な労力をかけて数学パラメータに変換されなければならない。形状を変えることができる柔軟な物体は、それぞれの可能な形がデータベースに含まれなければならないため、問題である。似た形の物体が対象物体と誤認される可能性があるため、常に固有の曖昧さが存在する。
【0021】
技術6: トレーニング用データセットの質が方法の成功を決定する。認識/分類される各物体のために、多数のトレーニング用画像が必要とされる。技術5についての遮蔽や柔軟な物体の形の制限が適用される。数千以上の画像によって材料の各分類についてトレーニングする必要がある。
【0022】
技術7: この技術は、シーンがあらかじめ整理されている場合に有効であるが、これはほとんど現実的ではない。対象物体がシーンから離れたり、完全に遮蔽されたりすると、上記の他の技術と組み合わされていない限り、物体は認識されない。
【0023】
上記のような既存の技術の欠点の他に、言及すべきいくつかの課題がある。遠距離を見る能力、小さな物体を見る能力、又は物体を十分に詳細に見る能力は、すべて高解像度画像化システム、すなわち、高解像度カメラ、LiDAR、レーダーなどを必要とする。高解像度の必要性は、関連するセンサのコストを増加させ、処理すべきデータ量を増加させる。
【0024】
自律走行やセキュリティのように瞬時に応答する必要があるアプリケーションでは、遅延はもう1つの重要な側面である。処理される必要があるデータ量は、エッジコンピューティング又はクラウドコンピューティングが該アプリケーションに適しているか否かを決定し、後者はデータ量が少ない場合にのみ可能である。エッジコンピューティングが重い処理に使用される場合、システムを作動させる装置は大型化し、使用、したがって、実装の容易さを制限する。
【0025】
このように、コンピュータビジョンアプリケーションの物体認識能力を向上させるのに適したシステム及び方法に対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本開示は、独立請求項の特徴を有するシステム及び方法を提供する。実施形態は、従属請求項ならびに説明及び図面の対象である。
【0027】
請求項1によれば、コンピュータビジョンアプリケーションを介した物体認識のためのシステムが提供され、該システムは少なくとも以下の構成要素:
- 認識される少なくとも1つの物体であって、物体特有の反射スペクトルパターンと物体特有の発光スペクトルパターンとを有する、物体と、
- 前記少なくとも1つの物体を含むシーンを照射するように構成された自然光源及び/又は人工光源であって、前記光源は、前記シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは前記少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターン内にある、自然光源及び/又は人工光源と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されるときに、前記少なくとも1つの物体を含む前記シーンの放射輝度データを測定し、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドで読み取るように構成されたセンサと、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットと、
- データ処理ユニットであって、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンド内で前記シーンの測定された放射輝度データから認識される前記少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算/抽出/導出し、前記計算/抽出/導出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するように構成されたデータ処理ユニットと、
を備える。
【0028】
本システムの可能な一実施形態によれば、光源は、シーンを照射する際に、光のスペクトル範囲の少なくとも1つの個別スペクトルバンドを意図的かつ本質的に除外する(省略する)ように構成されたLED光源である。LED光源は、複数の狭帯域LEDで構成されることができ、各LEDは狭いスペクトルバンドの光を放射するように構成され、LEDのスペクトルバンドは、それらの間に省略される個別スペクトルバンドを有して互いに離間されている。
【0029】
提案されたシステムのさらなる態様では、光源は、少なくとも1つの光フィルタを備え、前記少なくとも1つの光フィルタは、光のスペクトル範囲の少なくとも1つの個別スペクトルバンドがシーンに入るのを遮断するように設計されている。
【0030】
「個別スペクトルバンド」という用語は、以下では単に「スペクトルバンド」とも呼ばれ、比較的多数の連続した光の波長にまたがる光のスペクトル範囲内で、1つ又は比較的少数の連続した光の波長にまたがるスペクトルバンドを指す。
【0031】
本開示の範囲内では、周囲光は、自然光又は人工光/室内光のいずれかであり得るが、通常は両方ではない。場合によっては、両方であることが可能であり、両方とも同じスペクトルバンドでフィルタリングされてよい。そのようなケースの1つは、部屋の窓から太陽が射し込み、部屋がさらに電球で照射されている場合に生じる。自然光は、例えば、太陽光、月の光、星の光などであり得る。人工光は、電球などの光であり得る。
【0032】
本開示の範囲内では、「蛍光性」及び「発光性」という用語は同義的に使用される。「蛍光」及び「発光」という用語についても同様である。
【0033】
本開示の一態様によれば、少なくとも1つの光フィルタは、ある時点では光の少なくとも1つのスペクトルバンドがシーンに入るのを遮断し、そして、遮断される前記少なくとも1つのスペクトルバンドを動的に変更し、したがって、経時的に光のスペクトル範囲の少なくとも一部分を遮断するように構成された動的光フィルタとして設計される。
【0034】
各スペクトルバンドが少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンにある複数の個別スペクトルバンドを事前に与え、シーンを照射する際にシステムに省略/遮断されるスペクトルバンド(単数又は複数)をランダムに選択させることが可能である。このような選択は、複数の光源の中から少なくとも1つの適切な光源を選択及び/又は活性化させることによって行われ、複数の光源の各光源は、複数のスペクトルバンドのうちの1つのスペクトルバンドを省略し、及び/又は、複数のスペクトルバンドのすべてのスペクトルバンドを選択的に省略/遮断するように構成されている光源を制御するように構成され、それによって光源が1つ以上のスペクトルバンドをランダムに省略する(光源が備えているフィルタを活性化/非活性化させる、及び/又は、LED光源の1つ以上の単一のLEDを活性化/選択する)ように構成されている。
【0035】
さらに、動的光フィルタは、対象となる光のスペクトル範囲にわたって、特に少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンによってカバーされる波長で連続的に作動し、要求に応じて対象となる少なくとも1つのスペクトルバンドを遮断するように構成されている。
【0036】
提案されたシステムのさらなる実施形態によれば、システムは、同一の自然光源及び/又は人工光源、及び/又はシーンを照射する複数の自然光源又は人工光源上に複数の動的光フィルタを備え、フィルタは、同一のスペクトルバンド又は複数のスペクトルバンドを同時に遮断するように互いに同期するように構成されている。
【0037】
請求されたシステムのさらに別の実施形態では、少なくとも1つの光フィルタは、自然光のように窓からシーンに入る光又は人工照明要素からシーンに入る光を、少なくとも1つの別個のスペクトルバンドにおいて連続的に遮断するように構成されたノッチフィルタとして設計されている。
【0038】
ノッチフィルタは、光のスペクトル範囲内の複数の別個のスペクトルバンドを遮断するように設計されてよい。
【0039】
狭帯域又は広帯域のノッチフィルタを使用することにより、シーン及び/又は環境に入る光スペクトルの特定部分を遮断することができる。このようなノッチフィルタは、高い又は低い遮断性能を有する広い又は狭い遮断バンドを備えるように設計されることができる。このようなノッチフィルタは、複数のフィルムを重ねることによって、または他の技術によって、1つ又は複数の遮断バンドを含むように設計されることができる(マルチノッチフィルタ)。あるいは、ある時点でスペクトルバンドの一部を遮断するが、遮断バンドの波長を動的に変化させる能力を有する光フィルタリング要素(動的光フィルタ)を使用することによって、同じ目的を達成することができる。このような動的光フィルタは、スペクトル範囲を連続的に走査し、要求に応じてノッチフィルタのように、対象の波長帯(単数又は複数)で遮断を提供するように作動され得る。
【0040】
提案されたシステムの別の実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、対象の時間間隔、特に個別スペクトルバンドが省略される時間間隔、例えばフィルタリングが行われる時間間隔で、シーンを撮像し、光のスペクトル範囲の異なる波長範囲でシーン全体の放射輝度データを記録するように構成されているカメラである。
【0041】
センサは、ハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラであってもよい。センサは、通常、光子カウンティング機能を有する光センサである。より具体的には、センサは、モノクロカメラ、又はRGBカメラ、又はマルチスペクトルカメラ、又はハイパースペクトルカメラであり得る。センサは上記のいずれかの組み合わせであってもよいし、又は、上記のいずれかと例えば特定フィルタを備えたモノクロセンサなどの調整可能又は選択可能なフィルタセットとの組み合わせであってもよい。センサは、シーンの単一のピクセルを測定してもよく、又は一度に多くのピクセルを測定してもよい。光センサは、特定のスペクトル範囲で、特に3つ以上のバンドで、光子をカウントするように構成されてよい。光センサは、広い視野のために、特にすべてのバンドを同時に読み、又は異なる時間に異なるバンドを読む複数の画素を有するカメラであってよい。
【0042】
マルチスペクトルカメラは、電磁スペクトル上の特定の波長範囲の画像データを取得する。波長は、フィルタで分離されてもよく、可視光域を超える周波数の光、すなわち赤外線や紫外線を含む特定の波長に感度を有する機器を使用することによって分離されてもよい。スペクトルイメージングは、赤、緑、青の受容体によって人間の目では捉えられない追加の情報の抽出を可能にする。マルチスペクトルカメラは、少数(通常3~15)のスペクトルバンドで光を測定する。ハイパースペクトルカメラは、しばしば数百の連続したスペクトルバンドが利用可能であるスペクトルカメラの特別な例である。
【0043】
さらなる態様では、データ処理ユニットは、省略/遮断/フィルタリングされたスペクトルバンド内のシーンの放射輝度データに基づいて、例えば、少なくとも1つの光フィルタのスペクトル分布に基づいて、認識される少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別するように構成される。
【0044】
本開示はさらに、コンピュータビジョンアプリケーションを介する物体認識のための方法に関し、少なくとも以下の工程:
- 認識される少なくとも1つの物体を提供する工程であって、前記物体は物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンとを有している、工程と、
- 自然光源及び/又は人工光源を用いて前記物体を含むシーンを照射する工程であって、前記光源は、シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つの個別スペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つのスペクトルバンドは、前記少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンに適合されており、前記発光スペクトルパターンの少なくとも1つの波長をカバーし、すなわち、前記少なくとも1つのフィルタリングされたスペクトルバンドは前記物体の発光スペクトル範囲にある、工程と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されたときに、前記物体を含む前記シーンの放射輝度データを、センサを用いて測定し、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドで読み取る、工程と、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットを提供する、工程と、
- データ処理ユニットにより、前記シーンの測定された放射輝度データから認識される前記物体の物体特有の発光スペクトルパターンを抽出する、工程と、
- 前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶されている発光スペクトルパターンとマッチングさせる、工程と、
- ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別する、工程と、
を含む。
【0045】
提案された方法の一実施形態によれば、光源は、少なくとも1つの個別スペクトルバンドを遮断するように設計された少なくとも1つの光フィルタを備えている。あるいは、光源は、1つ以上のLEDを備えたLED光源として選択され、各LEDは、狭いスペクトルバンドの光を放射するように構成され、LEDのスペクトルバンドは、それらの間に省略された個別スペクトルバンドを有して離間して配置されている。
【0046】
さらなる態様では、本方法は、少なくとも1つの光フィルタを動的フィルタとして選択し、対象の光スペクトル範囲を走査し、特に少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンによってカバーされる波長において、要求に応じて対象の波長/スペクトルバンドでの遮断を提供することをさらに含む。
【0047】
さらなる別の態様によれば、提案された本方法は、少なくとも1つの別個のスペクトルバンドを恒常的に遮断するように、特に光のスペクトル範囲内の複数の別個のスペクトルバンドを遮断するように構成されたノッチフィルタとしての少なくとも1つの光フィルタを選択することを含む。ノッチフィルタは、自然光のように窓からシーンに入る光又は人工照明要素からシーンに入る光を少なくとも1つの別個のスペクトルバンドで連続的に遮断するように構成されることができる。
【0048】
提案された本方法のさらに別の実施形態によれば、物体特有の発光スペクトルパターンを抽出することは、省略された少なくとも1つのスペクトルバンド内のシーンの放射輝度データに基づいて、例えば、少なくとも1つの光フィルタのスペクトル分布とシーンの測定された放射輝度データに基づいて、認識される少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせること、及びベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別することを含む。
【0049】
通常、少なくとも光源、センサ、データ処理ユニット、データ記憶ユニット(データベース)は、それぞれの通信接続を介して相互にネットワーク化されている。このように、監視装置の異なる構成要素間の各通信接続は、それぞれ、直接接続又は間接接続であってよい。各通信接続は、有線接続又は無線接続であってよい。それぞれの適切な通信技術が使用されてよい。データ処理ユニット、センサ、データ記憶ユニット、光源はそれぞれ相互に通信するための1つ以上の通信インターフェースを含んでよい。このような通信は、ファイバ分散データインタフェース(FDDI)、デジタル加入者線(DSL)、イーサネット、非同期転送モード(ATM)などの有線データ伝送プロトコル、又はその他の有線伝送プロトコルを用いて実行されてよい。あるいは、通信は、汎用パケット無線サービス(GPRS)、ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)、符号分割多元接続(CDMA)、長期的進化(Long Term Evolution(LTE))、ワイヤレスユニバーサルシリアルバス(USB)などのさまざまなプロトコル、及び/又はその他の無線プロトコルのいずれかを使用して、無線通信ネットワークを介して無線で行われてもよい。それぞれの通信は、無線通信及び有線通信を組み合わせたものであってよい。
【0050】
データ処理ユニットは、タッチスクリーン、音声入力、動作入力、マウス、キーパッド入力及び/又は同様のものなどの1つ以上の入力ユニットを含むか、又はそれらと通信接続されていてよい。さらに、データ処理ユニットは、音声出力、ビデオ出力、スクリーン/ディスプレイ出力及び/又は同様のものなどの1つ以上の出力ユニットを含むか、又はそれらと通信すなわち通信接続されていてよい。
【0051】
本発明の実施形態は、独立型ユニットであり得るか、又は例えばクラウドに設置された中央コンピュータと例えばインターネットもしくはイントラネットなどのネットワークを介して通信する1つ以上の遠隔端末又は装置を含み得るコンピュータシステムと共に使用されるか、又はコンピュータシステムに組み込まれ得る。このように、本明細書に記載されるデータ処理ユニット及び関連構成要素は、ローカルコンピュータシステム又はリモートコンピュータ又はオンラインシステムの一部であってよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。データベース、すなわち本明細書に記載されているデータ記憶ユニット及びソフトウェアは、コンピュータの内部メモリに記憶されていてよく、又は非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されていてよい。本開示の範囲内では、データベースは、データ記憶ユニットの一部であってもよく、又はデータ記憶ユニット自体を表していてもよい。「データベース」及び「データ記憶ユニット」という用語は、同義的に使用される。
【0052】
本開示は、さらに、コンピュータによって実行可能な命令を有するコンピュータプログラム製品に言及しており、前記コンピュータプログラム製品は、以下の命令:
- 認識される物体を提供するための命令であって、前記物体は物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンを有している、命令と、
- 自然光源及び/又は人工光源を用いて前記物体を含むシーンを照射する命令であって、前記光源は、シーンを照射するときに光のスペクトル範囲の少なくとも1つの個別スペクトルバンドを省略するように設計されており、前記少なくとも1つのスペクトルバンドは、前記少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンに適合されており、前記発光スペクトルパターンの少なくとも1つの波長をカバーし、すなわち、前記少なくとも1つの省略されたスペクトルバンドは前記物体の発光スペクトル範囲にある、命令と、
- 前記シーンが前記光源によって照射されたときに、前記物体を含む前記シーンの放射輝度データを測定し、前記少なくとも1つのフィルタリングされたスペクトルバンドで読み取る、命令と、
- 適切に割り当てられたそれぞれの物体とともに発光スペクトルパターンを含むデータ記憶ユニットを提供する、命令と、
- 前記シーンの測定された放射輝度データから認識される物体の物体特有の発光スペクトルパターンを抽出する、命令と、
- 前記抽出された物体特有の発光スペクトルパターンを、前記データ記憶ユニットに記憶されている発光スペクトルパターンとマッチングさせる、命令と、
- ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別する、命令と、
を含む。
【0053】
光源は、少なくとも1つの個別スペクトルバンドがシーンに入るのを遮断するように設計された、少なくとも1つの光フィルタを備えていてよい。
【0054】
一態様では、コンピュータプログラム製品は、少なくとも1つのスペクトルバンド内でシーンの放射輝度データに基づいて、認識される少なくとも1つの物体の物体特有の発光スペクトルパターンを計算し、計算された物体特有の発光スペクトルパターンを、データ記憶ユニットに記憶された発光スペクトルパターンとマッチングさせ、ベストマッチングした発光スペクトルパターン、すなわち、その割り当てられた物体を識別する命令をさらに有する。
【0055】
本開示は、不変(定常状態)の周囲光条件下で、シーン内の物体/材料の蛍光放射スペクトルを検出するシステム及び方法を記載している。該システムは、屋内空間の光源(様々なタイプの電球及び/又は窓など)に適用された、又は同じフィルタリングされた光源を使用した屋外の暗い又は低照度の周囲光条件に適用されたノッチフィルタと、シーンを走査し異なる波長範囲でシーン全体の応答を記録することができるセンサ/カメラと、ノッチフィルタのスペクトル分布に基づいて、すなわち、光源の省略されたスペクトルバンド内で測定されたセンサ/カメラからの測定放射輝度データに基づいて、蛍光放射スペクトルを計算するように構成されたデータ処理ユニットと、を備えることができる。あるいは、システムは、一度に光のスペクトルの一部を遮断し、経時的にスペクトル範囲を走査することができる、シーンのための光源に配置された動的光フィルタを使用して構築されることができる。システムに複数の動的光フィルタが使用される場合、各フィルタは、同じスペクトルバンドを同時に遮断し、遮断されたスペクトルバンドで標的物体の発光読み取り値を許容するように、同期され得る。複数の異なるスペクトルバンドが同時に遮断されることも可能である。あるいは、光源が、1つ以上のLEDを有するLED光源として選択され、各LEDは、狭いスペクトルバンドで光を放射するように構成され、LEDのスペクトルバンドは、それらの間に省略された個別スペクトルバンドを有して互いに離間して配置されている。システムはさらに、発光材料/物体のデータベースを有するデータ記憶ユニットと、様々なアルゴリズムを用いてそのような発光物体のスペクトルマッチを計算するデータ/コンピュータ処理ユニットとを含む。提案されたシステム及び方法は、屋内環境だけでなく、シーンに入る太陽光の有無にかかわらず、また、高周波可変照射源を要することなく、低照度の屋外環境に対しても同様に、発光体/発光材料を用いた色空間ベースの物体認識を可能にする。
【0056】
本発明は、以下の実施例でさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すことにより、説明のみのために与えられていることを理解されたい。上述の議論及び実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために、本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1aは、フィルタリングされていない発光スペクトルとノッチフィルタの透過スペクトルの概略図を示し、
図1bは、フィルタリング後に得られる発光スペクトルの概略図、すなわち、
図1aのフィルタリングされていない発光スペクトルとノッチフィルタの透過スペクトルを重ね合わせた図を示す。
【
図2】ノッチフィルタの透過スペクトルと、各ノッチフィルタの遮断バンド内に配置された1つのセンサバンドの概略図を示す。
【
図3】ノッチフィルタの透過スペクトルと、各ノッチフィルタの遮断バンド内に配置された複数のセンサバンドの概略図を示す。
【
図4】提案されたシステムの一実施形態を概略的に示す。
【0058】
図面の詳細な説明
図1aは、横軸101と2つの縦軸102、103を有する図を示している。この図は、コンピュータビジョンアプリケーションを介する物体認識のための提案されたシステムの一実施形態について示されている。このシステムは、認識される少なくとも1つの物体を含むシーンを照射するための少なくとも1つの発光体を含む自然光源及び/又は人工光源を少なくとも備えている。認識される少なくとも1つの物体は、物体特有の反射スペクトルパターンと発光スペクトルパターンを有している。光源は、光のスペクトル範囲内の少なくとも1つの予め定義されたスペクトルバンドがシーンに入るのを遮断するように設計された少なくとも1つのノッチフィルタを備え、該少なくとも1つのフィルタリングされたスペクトルバンドは、発光スペクトルパターン内、すなわち、少なくとも1つの物体の発光スペクトル範囲内にある。光のスペクトル範囲の波長は、横軸101に沿ってプロットされている。ノッチフィルタの透過率は、縦軸103に沿ってプロットされ、透過率はパーセントで与えられている。光源の、すなわち光源に含まれる発光体の放射強度が縦軸102に沿ってプロットされている。曲線110は、波長の関数としての光源の放射強度値の展開を示し、曲線111は、波長の関数としてのノッチフィルタの透過率を示している。このように、
図1aの図では、フィルタリングされていない発光スペクトルとノッチフィルタの透過スペクトルとが、互いに独立した波長のそれぞれの関数としてプロットされている。
【0059】
図1bは、
図1aからの曲線110及び111が互いに重ね合わされて曲線120を形成している図であり、したがって、どのスペクトルバンドがシーンに入るのをフィルタリング/遮断されているかを示している。すでに上述したように、フィルタリングされるスペクトルバンドは、認識される物体の発光スペクトルパターンと相関があるように選択されるので、これらの(照射から遮断された)スペクトルバンドの結果、センサによって測定された放射輝度データは、少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンに明確に間違いなく割り当てられており、したがって、少なくとも1つの物体の明確な表示を与える。ここに示されるノッチフィルタは、横軸101に沿ってプロットされた波長範囲に沿って5つのスペクトルバンドを遮断する。遮断されたスペクトルバンド内の光がシーンに入ることができないため、それらのスペクトルバンド内の光は反射されることができず、そのため、それらのスペクトルバンド内でセンサによって感知/測定され得るすべての光は、間違いなく少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンに起因する。
【0060】
図2は、光源と、ノッチフィルタと、シーンが光源によって照射されたときに少なくとも1つの物体を含むシーンの放射輝度データを測定するように構成されたそれぞれのセンサとを備えるシステムの概略図である。この図は、横軸201と2つの縦軸202、203を有する。シーンに入る光の波長及びシーンから放射される光の波長は、横軸201に沿ってプロットされる。センサ感度は縦軸202に沿ってプロットされている。ノッチフィルタの透過率は、縦軸203に沿ってプロットされている。透過率はパーセントで示されている。ノッチフィルタは、マルチバンドノッチフィルタとして選択され、すなわち、ノッチフィルタは、光のスペクトル範囲の複数のスペクトルバンドがシーンに入るのを遮断するように構成され、光のスペクトル範囲は、横軸201の始点と終点によって定められる。ここに示されている場合では、ノッチフィルタは、曲線210によって示されるように、横軸201によって定められる光のスペクトル範囲に沿った5つのスペクトルバンドを遮断する。センサは、曲線220によって示されるように、特にノッチフィルタによってシーンに入るのを遮断される光のスペクトル範囲の正確に5つのスペクトルバンド内の放射輝度データを測定するように構成されている。したがって、センサは、入射光に対する発光応答としてシーンから放射される光のみを感知するように明確に構成されている。シーンの反射応答は、センサがノッチフィルタによって遮断されないスペクトルバンド内の放射輝度データを測定するように構成されていないため遮蔽される。そのため、センサによって行われた測定をシーンの発光応答に集中させることができる。遮断されたノッチフィルタのスペクトルバンドが、認識される少なくとも1つの物体の発光スペクトルパターンに適合されている場合、センサは、物体の発光スペクトルパターンから生じる輝度データを明確に測定することができ、測定された発光スペクトルパターンによって物体を明確に識別することができる。
【0061】
図3は、さらに図の例を示している。シーンに入る光の波長、又はシーンから放射される光の波長が、横軸301に沿ってプロットされている。センサ感度は、前と同様に縦軸302に沿ってプロットされている。ノッチフィルタの透過率は、前と同様に縦軸303に沿ってプロットされている。横軸301で定められる波長範囲内で、ノッチフィルタは、曲線310で示されるように、遮断される2つのスペクトルバンドと、遮断されない3つのスペクトルバンドを有している。ここに示す例では、センサは、曲線320によって示されるように、ノッチフィルタの各遮断されたスペクトルバンド内の2つのスペクトルバンドを測定するように構成されている。つまり、複数のセンサバンドが各ノッチフィルタのバンド内、すなわちノッチフィルタによって遮断された各スペクトルバンド内に配置されていることを意味する。センサバンドを有するセンサが、認識される物体の発光スペクトルパターンに適合/相関するように選択され、かつ、遮断スペクトルバンドを有するノッチフィルタも物体の発光スペクトルパターンに適合されている場合、物体は、それぞれのセンサによって詳細に測定され得るその発光スペクトルパターンによって曖昧さなく識別され得る。
【0062】
蛍光放射及び反射を含む物体からの蛍光放射スペクトルを測定する方法は既に知られている。これらの方法の多くは、既知であることが必要な2つ以上の照射条件で物体の放射輝度スペクトルを測定すること、及び、物体の全放射輝度に対する反射及び放射の寄与を分離するために様々な計算を用いることに依存している。しかし、複数の照射条件を使用することは、追加の照射条件が光源のコストを増加させ、光源と使用されるセンサの同期に複雑さの課題を加えるため、実験室以外の環境では理想的ではない。単一の照射条件で蛍光放射と反射を分離することを記述した論文がある(Zheng,Fu,Lam,Sato,and Sato,ICCV2015 3523~3531頁)。この論文では、「スパイク状の」照射源、すなわち主に自動車のヘッドライトに使用されている高輝度放電バルブを使用している。このように、単一の光源条件下で反射と蛍光放射を分離するための一般化可能な方法とシステムが依然として必要である。
【0063】
提案されたシステムと方法は、照射スペクトル内に意図的に暗域を作り、その暗域内の放射輝度を測定することを可能にする。蛍光を伴わない物体は、これらの波長で反射する照射がないため、暗域内では放射輝度を示さない。暗域に重なる蛍光放射を伴う物体は、より高いエネルギーの光の変換によって放射輝度を有することになる。これらの暗域は、ノッチフィルタを適用することで生成されることができ、該ノッチフィルタは、スペクトルの相対的に小さな部分を除いて、光の有効範囲にわたって光の大部分を透過させるフィルタであり、該除かれた部分は可能な限り透過率がゼロに近い必要があるフィルタである。
【0064】
ノッチフィルタは、単一フィルタ内に複数の「ノッチ」を設けたものも含めて、市販されている。電球などの照射源及び窓の外側にノッチフィルタを適用して、物体が認識される環境/シーンを作り出すことが提案されている。発光スペクトルの暗域内でスペクトル感度を有するセンサ、特にカメラも必要である。蛍光スペクトル形状を得るため、複数の暗域(
図2)又はその領域内に複数のセンサバンドを有するより大きな暗域(
図3)のいずれかが必要となる。さらに、スペクトルの「ノッチ」部分が経時的に変化する動的ノッチフィルタを利用することができる。動的ノッチフィルタを使用することにより、スペクトル全体が経時的に走査されることができ、認識されるそれぞれの物体の蛍光スペクトルをより正確に識別することができる。
【0065】
図4は、提案されたシステムの一実施形態を示している。システム400は、認識される物体420と、光源410と、センサ440と、データ記憶ユニット460と、データ処理ユニット450とを備える。物体420は、物体特有の反射スペクトルパターンと、物体特有の発光スペクトルパターンとを有している。光源410は、光のスペクトル範囲内において、UV、可視又は赤外光を放射するように構成されている。通常、光源410は光の全スペクトル範囲にわたって光を放射するように構成されることが可能である。その場合、光源は、光源410がシーン430に向けて光を放射したときに、光のスペクトル範囲の少なくとも1つの個別スペクトルバンドが、物体420を含むシーン430に入るのを遮断するように設計された光フィルタ415に結合されている/光フィルタ415を装備している。光源410は太陽であってもよく、フィルタ415は、フィルタを備え、任意にカメラ440(
図4参照)などのセンサを備えた窓であってもよい。遮断される少なくとも1つの個別スペクトルバンドは、物体420の発光スペクトルパターン内にある。あるいは、光源410は、少なくとも1つの個別スペクトルバンドを本質的に除外するように設計されており、すなわち、光源410は、物体420を含むシーン430を照射する際に、当該個別スペクトルバンド内の光を放射しない。本システムの可能な一実施形態によれば、光源は、シーンを照射する際に光のスペクトル範囲の少なくとも1つのスペクトルバンドを意図的かつ本質的に除外する(省略する)ように構成されたLED光源である。LED光源は、複数の狭帯域LEDから構成されることができ、各LEDは狭いスペクトルバンドの光を放射するように構成され、LEDのスペクトルバンドは、間に省略されるスペクトルバンドを有して互いに離間して配置されている。
【0066】
このような光源とフィルタの組み合わせも可能である。
図4に示されたシステム400は、シーン430を照射する際に除外された少なくとも1つのスペクトルバンドで、シーン430にわたって放射輝度データ/応答を感知/記録するように構成されたセンサ440をさらに備える。つまり、認識される物体420を含むシーン430の蛍光応答のみがすなわち、物体420の蛍光応答のみが、同様の蛍光スペクトルパターンを有するさらなる物品がシーン内に存在しないことを条件として、が記録される。システム400は、データ処理ユニット450と、データ記憶ユニット460とをさらに備える。データ記憶ユニットは、複数の異なる物体の蛍光スペクトルパターンのデータベースを有する。データ処理ユニットは、データ記憶ユニットと通信接続されており、また、センサ440とも通信接続されている。したがって、データ処理ユニット450は、認識される物体420の発光放射スペクトルを計算し、計算された発光放射スペクトルとマッチするものをデータ記憶ユニットのデータベース460から検索することができる。このように、データベース460内でマッチするものを見つけることができれば、認識される物体420を識別することができる。
【0067】
参照記号の一覧
101 横軸
102 縦軸
103 縦軸
110 曲線
111 曲線
120 曲線
201 横軸
202 縦軸
203 縦軸
210 曲線
220 曲線
301 横軸
302 縦軸
303 縦軸
310 曲線
320 曲線
400 システム
410 光源
415 フィルタ
420 認識される物体
430 シーン
440 センサ
450 データ処理ユニット
460 データ記憶ユニット
【国際調査報告】