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特表2022-535892推進装置のための推力ユニット及び関連した推進装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】推進装置のための推力ユニット及び関連した推進装置
(51)【国際特許分類】
   F02K 1/00 20060101AFI20220803BHJP
   B64C 15/12 20060101ALI20220803BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220803BHJP
   F02K 1/60 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F02K1/00
B64C15/12
B64C39/02
F02K1/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572443
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 FR2020050973
(87)【国際公開番号】W WO2020245553
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/858,705
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/FR2020/050002
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518356305
【氏名又は名称】ジップエール
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランキー ザパタ
(57)【要約】
本発明は、実質的に垂直離着陸能力を提供するような方向に向けられた推力(F1、F2)を提供するように設けられた推力エンジン(302)と、排出された流体を選択的に逸らすように設けられ、流体排出経路に可動に取り付けられた一対のデフレクタ要素(306a、306b)を備えるデフレクタアセンブリ(304)とを備える、推進装置(10)のための推力ユニット(300)に関する。推力ユニットの容積を低減し、信頼性及び応答性を向上させるために、本発明は、特に、排出された流体に対するデフレクタ要素の位置決めに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置(10)のための推力ユニット(300)であって、
流体排出口(302b)を定めるノズル(302n)を含む、推力の流れ(F1)を生成するように設けられた推力エンジン(302)と、
前記推力の流れ(F1)の全て又は一部を逸らすように、前記推力の流れ(F1)における前記流体排出ノズル(302n)の下流に、一対の可動のデフレクタ要素(306a、306b)を備え、前記デフレクタ要素(306a、306b)は、前記推力の流れ内で互いに接触するように、及びそれぞれの旋回リンクに従って可動に取り付けられるように設けられ、前記それぞれの旋回リンクのリンクピン(308paa、308pab)は、平行であり、前記流体排出口の両側の上流に置かれ、前記デフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれは、前記リンクピン(308paa、308pab)の1つの周りの回転運動(r)を描き、前記推力エンジン(302)によって生成された推力の流れに突入するための前縁(BA)を含む、「先導」と呼ばれる第1部分(306aa、306ba)を有するデフレクタアセンブリ(304)と、
前記デフレクタ要素(306a、306b)が前記推力エンジン(302)によって生成された推力の流れに入り又は前記推力エンジン(302)によって生成された推力の流れから離れるように、これらのデフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれの回転運動を引き起こすように設けられたアクチュエータ(310)と、を含み、
前記デフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれの旋回リンクのピン(308paa、308pab)は、前記デフレクタ要素(306a、306b)が前記推力エンジン(302)によって生成された推力の流れに突入するときに、これらのデフレクタ要素(306a、306b)のどんな反発又は吸引効果も除去するように、及び前記デフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれの回転運動を引き起こすための前記アクチュエータ(310)の作用力を低減するように定められることを特徴とする、推力ユニット(300)。
【請求項2】
それぞれのデフレクタ要素(306a、306b)は、それぞれ、実質的に半円形の断面を有する実質的に曲がり傾斜した表面を定める、請求項1に記載の推力ユニット(300)。
【請求項3】
それぞれのデフレクタ要素(306a、306b)は前記第1部分の延長上に「定常」と呼ばれる第2部分(306at、306bt)を有し、そのような第2部分は、実質的に平らな内面を有し、前記デフレクタ要素内で窪みの形成を可能にするように設けられ、前記デフレクタ要素(306a、306b)内で、排出された流体の層流を促進する、請求項1又は2に記載の推力ユニット(300)。
【請求項4】
それぞれのデフレクタ要素(306a、306b)は、前記第2部分の延長上に、反対推力角βを有する、「逆推力又は反対推力」と呼ばれる第3部分(306ar、306br)を有し、それにより、デフレクタ要素内の流体の流れの結果として生じるベクトルは、前記デフレクタ要素が閉配置にあるとき、流体排出方向に実質的に平行な軸(314)に関して、推力のベクトルの方向と反対の方向を定める、請求項3に記載の推力ユニット(300)。
【請求項5】
推進装置(10)のための推力ユニット(300)であって、
前記デフレクタアセンブリはリンクアーム(3081aa、3081ab)を含み、それぞれのリンクアームは、適切な機械的リンクに従って、前記デフレクタ要素(306a、306b)の1つとそれぞれ一体的に協働し、
フレーム(308)が、嵌込みリンクに従って前記推力エンジン(302)と、前記リンクピン(308paa、308pab)によって前記それぞれの旋回リンクに従って前記リンクアーム(3081aa、3081ab)を介して前記デフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれと一体的に協働し、
前記デフレクタ要素(306a、306b)の1つの回転運動を引き起こすように設けられたそれぞれのアクチュエータ(310)は、ラダーバーを含み、
前記推力ユニット(300)は、第1端で前記デフレクタ要素(306a、306b)と、第2端で前記アクチュエータ(310)のラダーバーとそれぞれ一体的に協働するコネクティングロッド(312a、312b)を含み、前記コネクティングロッドのそれぞれは、推力作用点(312ap)を定め、ラダーバーから、前記コネクティングロッドの1つを介して前記ラダーバーと協働する前記デフレクタ要素(306a、306b)に前記回転運動を伝達するように設けられ、
前記流体排出口(302b)に対する前記リンクピン(308paa、308pab)の相対的な位置決めは、前記推力ユニット(300)を前記推力の流れの方向に沿って対称的に2つの半分に分離する前記推力ユニット(300)の横平面(PT)に射影された距離D2及びD5によって定められ、D2は、前記推力の流れが地面に向けられているとき、前記リンクピン(308paa、308pab)の1つと、関係している前記デフレクタ要素が閉配置にあるときに結果として生じる推力のベクトルの力点(P)との間の垂直距離からなり、D5は、前記リンクピン(308paa、308pab)と前記力点(P)との間の水平距離からなり、前記距離D2及びD5自体は、
【数1】
ここで、Dnは前記排出ノズル(302n)の直径からなり、bは1と1.3の間に含まれる所定の係数からなり、α1は、開配置における流体排出方向に前記横平面(PT)内で実質的に平行な軸(314)に対する前記デフレクタ要素(306a、306b)の迎え角α′と、閉配置における前記流体排出方向に前記横平面(PT)内で実質的に平行な軸(314)に対する前記デフレクタ要素(306a、306b)の迎え角αとの間の最大の角度差からなり、
【数2】
ここで、C4は、求められる逆トルク、即ち前記リンクピン(306paa、306pab)での閉鎖トルクと機械系のトルクとの差からなり、F1は結果として生じる推力の水平方向のベクトルの絶対値からなり、C1は前記リンクピンの点での前記機械系のトルクからなり、C2は前記アクチュエータ(310)の所定のサーボモータトルクからなり、D3は前記ラダーバーの所定の長さからなり、D4は前記リンクピン(308paa、308pab)と前記推力作用点(312ap)との間の距離からなり、C3は前記リンクピン(308paa、308pab)での前記閉鎖トルクからなる、ように定められ、
前記距離D2及びD5は前記逆トルクC4の値を最小にするように選択される、推力ユニット(300)。
【請求項6】
前記デフレクタ要素(306a、306b)と前記流体排出口(302b)との間の相対的な位置決めは距離D1によって予め定められ、そのような距離D1は、前記推力ユニットの流体排出口を定める排出ノズル(302n)の下端と、前記デフレクタ要素(306a、306b)のそれぞれの前縁(BA)との間の距離からなり、前記排出ノズル(302n)の直径(Dn)に実質的に等しい、請求項5に記載の推力ユニット(300)。
【請求項7】
前記推力エンジン(302)が実質的に40キログラムに等しい推力を有し、前記デフレクタ要素が実質的に45度に等しい迎え角αを定める場合、前記横平面(PT)内における前記流体排出口又は領域(302b)に対する前記リンクピン(308paa、308pab)の相対的な位置は、前記横平面(PT)に射影された距離D2及びD5によって定められ、
前記距離D2は、実質的に、120ミリメートルと160ミリメートルとの間に含まれ、好ましくは140ミリメートルであり、
前記距離D5は実質的に80ミリメートルと120ミリメートルとの間に含まれる、請求項6に記載の推力ユニット(300)。
【請求項8】
前記推力エンジンは、ターボジェット及び/又はターボプロップエンジンを備える、請求項1から7の何れかに記載の推力ユニット(300)。
【請求項9】
台(11)と、推力ユニット(300、12)と、前記台(11)と一体的に協働し、前記推力ユニット(300、12)を保持及び支持するように設けられた支持手段(14)とを含み、前記推力ユニット(300、12)は請求項1から8の何れかに記載のものであることを特徴とする、推進装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましいが非限定的に、乗員が非常に大きな動きの自由度で空中を動き得るための乗員のための推進装置及び/又はシステムの分野に関する。本発明は、特に、そのような推進装置及び/又はシステムに含まれる1つの又は複数の推力ユニットの改良に関する。本発明は、実施することが容易で、できるだけ多くの人々に利用可能であることを意図している。
【0002】
文書の残りの部分において、本発明は、好ましいが非限定的に、空中で移動できるための推進装置を用いた適用の点から記述される。しかし、本発明は、このたった1つの適用例に限定されるべきではなく、代わりに任意の型の推進装置に関連して使用され得る。
【背景技術】
【0003】
空間をできるだけ自由に動くことができることは、人々にとって不変の関心事であり、又はある人たちにとって事実上実現不可能な夢でさえある。この目的を実現することに多かれ少なかれ成功するために、最も基本的な機械から最も高度な機械まで、多くの機械が開発されてきた。
【0004】
特に、最近、「Flyboard Air」という名前で知られる、特に効果的な装置が開発された。それは、特に文献WO2017/174944 A1に記述されており、大成功を収めている。従って、図1及び図2はそのような推進装置10の第1の非限定的な実施形態を示し、その幾つかの構成要素は簡単のために文書の残りの部分で記述されない。
【0005】
そのような装置10は主として台11の形をした主要本体10aを含み、乗員1はその上に乗ることができる。台11の寸法及び装置10の推力ユニット12の動力に応じて、複数の乗員が前記台11上に同時に乗ることができてもよい。この目的のために、台11は、特に図1により明確に示されるように、乗員1の足又は靴を受け止めるように設けられた1つ以上の表面11aを有する。
【0006】
図1及び図2に関連して記述される推進装置10の本体10aは、台11と協働する推力ユニット12を含む。
【0007】
文書の残りの部分において、
-「中央平面」PMは、装置10の本体10aの左舷部分を右舷部分から分離し、前記部分は必ずしも均等ではない、特に台11に垂直な任意の平面を意味し、
-「横平面」PTは、推進装置の本体10aを2つの部分に分離し、一方は前記本体の前部を含み、他方は前記本体の後部を含み、前記部分は必ずしも均等ではない、中央平面に垂直な任意の平面を意味し、
-「縦平面」PLは、装置10の本体10aの上部を下部から分離し、前記部分は必ずしも均等ではない、横平面及び中央平面に垂直な任意の平面を意味する。
【0008】
そのような平面PM、PT、PLは図2Aに点線で示されている。同様に、
-横平面と縦平面の両方に属する任意の軸を示すために「横軸」を、
-中央平面と縦平面の両方に属する任意の軸を示すために「縦軸」を、
-中央平面と横平面の両方に属する任意の軸を示すために「中央軸」を、用いる。
【0009】
図2は、特に、そのような装置10の本体10aの分解図を示している。
【0010】
前記図2で示されるように、非限定的な例として、推力ユニット12は、有利に、それぞれ2つのスラスタを備える一対の推力サブユニット12a及び12bからなる。従って、第1推力サブユニット12aは2つのスラスタ12a1及び12a2を含む。同じことが推力サブユニット12bにも当てはまり、それは2つのスラスタ12bl及び12b2を含む。変形例として、そのようなサブユニットは2つより多いスラスタを含み得る。第2変形例によれば、推力ユニット12は、それ自体1つ以上のスラスタを備えるより多くの推力サブユニットを含み得る。図2に関連して記述される構成例は他の推力ユニット構成と比較して一定の質を示している。事実、装置10は、例えば熱ターボジェット型のたった1つのスラスタに低減された推力ユニットで移動し得る。しかし、この構成は、乗員1が容易に移動できることを可能にするには、かさばりすぎるだろう。事実、そのようなたった1つのスラスタの長さは、スラスタが装置10及びその乗員1を空中に推進するのに十分な推力を供給できるために、1メートルのオーダー又はそれより長くさえなるだろう。同様に、それぞれ1つのスラスタのみを備える2つのサブユニットを含む推力ユニット12を考えることが可能である。それぞれのスラスタの容積は低減されるだろうが、そのような推力ユニット12は、先に示されたたった1つのスラスタ構成のように、安全性の点で大きな欠点を持ち続けるだろう。事実、2つのスラスタの1つが故障した場合、ユニットの全推力は、乗員1を空中に保ち十分な機動性を維持するのに不十分だろう。従って、4つのスラスタ、例えばジェットエンジンから生じる容積は、依然として、求められる使用方法に完全に適合する。他方、たとえスラスタの1つが故障したとしても、推進装置10は依然として完全に移動できる。
【0011】
乗員の体の向きによる最適な機動性条件を提供するために、図1及び2に関連して記述される実施形態によれば、推力ユニット12の推力は、有利に、装置10の本体10aの中心にできるだけ近く配置される。従って、好ましくは、図1及び2によって示されるように、乗員1の足又は靴を受け止めるように台11上に設けられた表面11aは、有利に、前記推力ユニット12の両側に配置される。これにより、乗員が、自身の体を用いて、装置10の姿勢を変え、それに伴って、
-乗員が装置10の前方に自身の体重をかけた場合、まっすぐ前に、
-この前記乗員1が装置10の後方に自身の体重をかけた場合、後方に、
-前記乗員1が装置10の前方にかつ装置10の一方側に自身の体重をかけた場合、斜め前方に、
-前記乗員1が装置10の後方にかつ装置10の一方側に自身の体重をかけた場合、斜め後方に、動くために克服しなければならない慣性モーメントが低減される。
【0012】
特に、容易に旋回して曲線に沿って移動でき、従って前記推進装置10によって行われ得る動きを高めるために、推力ユニット12は、有利に、2つの補助経路修正スラスタ19a及び19bを含み得る。これらのスラスタは有利に台の横軸に沿って中心を外れて配置される。これらのスラスタは、それぞれ、非同期的に作動される場合、曲線軌道を生成するのに十分なトルクを作り出す。変形例として又は加えて、そのような補助スラスタを使用せずに済ますために、本発明は、例えば旋回リンク又は嵌込みリンクのような1つ以上の適切なそれぞれの機械的リンクに従って、関係している1つ又は複数のスラスタの気体流のための排出ノズルと協働するだろう、例えば水上オートバイの方向付け可能な円錐型の流体排出口のような方向付け可能な流体排出口が、1つの推力サブユニット又は推力サブユニット12a、12bのスラスタの全て又は一部に追加され得ることを提供する。
【0013】
推力ユニットの異なるスラスタは支持手段14によって保持及び支持される。これらの手段14は台11を支持するフレームの機能上の同等物を構成する。前述のように、そのような推力ユニット12は、それぞれ2つのスラスタを備える2つの推力サブユニット12a及び12bを含み、2つのスラスタは、1番目のものに対して12a1及び12a2と付され、2番目のものに対して12b1及び12b2と付されている。そのようなスラスタは、好ましくはターボジェットからなる。ターボジェットは、現在、航空分野で使用されている熱機関であり、酸化剤、正確には本体10aの流体吸入口を通して吸入された周囲の空気と化合された、燃料、例えばケロシン又は同等物に含まれるポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換する。この運動エネルギーは弾性環境で気体排出物の排出とは反対方向に反力を発生させる。この結果、スラスタの流体吸入口とその排出ノズルの間で一定量の空気が加速され、前記排出ノズルでの膨張によって推力が発生する。そのようなスラスタはブレード又はローターを有する空気圧縮機を使用する。前述のケロシンの代わりに、他の任意の種類の燃料が場合により使用され得る。
【0014】
図2によれば、推力サブユニット12a及び12bのそれぞれのスラスタは、方向付け可能であり、公称上の運転において、台11の縦平面に実質的に垂直な軸AL12a(スラスタ12a2に対して)又はAL12b(スラスタ12b1に対して)に沿って、即ち乗員1の縦軸AL1に実質的に平行に向けられ得ることがわかる。また、前記スラスタは、前記スラスタのそれぞれの排出ノズルが、乗員1の足から頭に向かう前記方向付けられた縦軸AL1とは反対方向に気体流を排出するように向けられる。このようにして、スラスタは台11を介して前記乗員1を「押す」。前述のように、特に装置10のハンドリング性を高めるために、装置10の主要本体10aは推力ユニット12のための支持手段14を含む。支持手段14は、台11と協働し、本体10aの中心のできるだけ近くにスラスタを集めることで前記推力ユニット12を支持するように設けられる。従って、前記支持手段14は、スラスタ12a1、12a2、12b1、12b2のそれぞれの排出ノズルによる気体流排出の方向AL12a、AL12bと、装置10の本体10aの重心を通る仮想中央平面PMへの前記方向のそれぞれの正射影との間の距離をできるだけ最小にし、前記気体流排出の方向は、前記中央平面PMに実質的に平行である。そのような装置の場合、より正確には、支持手段14は、前記排出方向と、前記重心を通る本体10aの仮想的な中央軸との間の距離を最小にするように設けられる。これにより、乗員が、自身の体を用いて、本体10aの姿勢、その結果、推進装置10の軌道を変えるために克服しなければならない慣性モーメントが低減される。従って、そのような推進装置の使用によって提供される娯楽性は高められる。図1及び図2に示される好ましい例によれば、本体10aの重心は2つの推力サブユニット12a及び12bのスラスタの中心に実質的に位置する。
【0015】
変形例として又は加えて、前記推進装置10のハンドリング性及び応答性を向上させるために、スラスタの支持手段14は、装置10の本体10aの中央平面PMにおいて、公称上の流体排出方向、即ち装置10の本体10aの縦軸AL10に実質的に垂直な方向に対して、-45°と45°の間に含まれる角度で前記スラスタを傾ける、又はそれぞれの気体の流体排出口の軸AL12を少なくともそのような角度で傾けることができるように設けられ得る。従って、図2によれば、推力ユニット12のスラスタは装置10を垂直な軌道で発射する。他方、前記流体排出方向が軸AL10に対してゼロでない角度に向けられた場合、前記スラスタは、例えば前方に、前記装置10の変位を生じさせるだろう。従って、全く同一の推力サブユニット12aのスラスタの流体排出方向は、非限定的な例として作動シリンダのようなアクチュエータの力の下で方向付けられ得、その推移は前記気体の流体排出口の共同の傾斜を引き起こす。そのようなアクチュエータは、有利に、乗員1から来る操縦指示に基づいて、装置10の本体10aに存在する処理手段によって作られた命令を介して制御され得る。推進装置の推力ユニットの前記スラスタのそのような傾斜によって、前記装置の乗員又は操作者は、台上で静止したまま、完全に安全に前記装置を容易に操縦し扱うことができる。
【0016】
補助経路修正スラスタ19a及び19bを推力サブユニット12a及び12bと結合し、それに伴って曲線軌道を可能にするために、本発明による装置10の支持手段14は、補助経路修正スラスタ19a及び19bと協働し、台11の縦軸に実質的に平行な推力方向に従ってこれらの補助経路修正スラスタ19a及び19bを保持するように設けられた補助支持手段と協働し得る。そのような補助経路修正スラスタ19a、19bによって、特に、前記推進装置のハンドリング性を高めることができる。変形例として、熱経路修正スラスタ19a及び19bの設計は、それぞれの電気タービンの代わりに、推力サブユニット12a及び12bのスラスタと実質的に平行に向けられたターボプロップエンジンを使用することからなり得る。強い応答性を維持するために、水上オートバイの方向付け可能な円錐型の流体排出口のような方向付け可能な流体排出口は補助熱スラスタの気体排出ノズルと協働し得る。前記円錐を台11の中央平面内で方向付けることで、電気タービンの使用によって与えられるものに非常に近い総合的な結果が得られる。
【0017】
前述のように、前記推進装置の1つ又は複数の推力ユニットは、乗員が、自身の体を使って、装置10の姿勢を変え、それに伴って動くために克服しなければならない慣性モーメントを低減するように設けられる。その結果、前記推進装置の軌道を生じさせるのは、乗員の体を使った動きである。補助スラスタ、主要スラスタを傾けることができるアクチュエータ、又は方向付け可能な1つ又は複数の流体排出口のような、前記推進装置のハンドリング性を最適化するための前述のいろいろな構成要素は、図4に関連して後で見られるように、1つ又は複数の推力ユニットが重心から比較的遠くにあるだろう推進装置のハンドリング性をより容易にすることができない。図4は、台11と、それぞれスラスタを含む4つの推力ユニット300、12とを備える推進装置10の第2実施形態を概略的に示している。図4に関連して示される本発明による推進装置のこの第2実施形態によれば、場合により前記台上にある乗員の体重は前記装置の変位をもはや可能にせず、又は、変形例として、台は1人以上の乗員の輸送を意図されておらず、従って、可動に取り付けられたスラスタ又は可動に取り付けられた流体排出口によって、それぞれの推力ユニットのそれぞれのスラスタの排出方向を機械的に方向付けることが必須になる。その上、可動に取り付けられる推力ユニット又は可動に取り付けられる流体排出口の実施は、前記推力ユニット及び/又は流体排出口がアクチュエータによって制御されるが、一般に、製造に必要な部品の数及び/又は前記構成要素の取り付けの複雑さのために、より困難に、その結果より高価となる。
【0018】
さらに、例えば特にそれぞれ図1図2、及び図4に関連して記述される第1又は第2実施形態に関連して記述されるような推進装置の実施は、特に、一般に「スロットル応答」とも呼ばれる、スロットルアクチュエータに対する推力ユニットの応答時間の特性に特に関連して現れる他の困難さをもたらす。事実、燃焼エンジン又はジェットエンジン、特にターボジェットは、一般に非常に大きな推力を提供できる機械装置からなるが、一般に加速命令の受信と推力の効果的な生成との間の長い遅延時間を抱える。そのようなギャップ時間又は遅延時間は、特に、部分的に、ガスタービンの慣性、圧縮機の応答、燃料供給、及び/又は燃焼過程自体のために、数秒続き得る。なぜなら、これらの全ての現象は次にギャップ時間又は遅延時間の蓄積を作り出し、従ってそれはスロットルの作動に応答するための効果的な推力の生成を遅らせるからである。そして、乗員又は操作者、又はより一般に推進装置は、気体の制御又は制御設定をもはや管理することができず、その結果、与えられた推力点は追い越され、過剰な推力が生成されたときの推進装置による次の過度の修正応答が後に現れる。
【0019】
数秒の推力遅延は、推進装置の使用中に、悲惨で特に有害な結果をもたらし得る。そのような推進装置は、その操縦中に、例えば障害物のある場合及び/又は装置の特定の機械的欠陥を克服する必要がある場合、特に場合により回避行動からなる回避操作又は厳しい軌道制御を必要とする状況において、スロットリングに関して1秒の何分の1かの間での調整を必要とすることがある。一般に、「飛行機」型の推進装置は、最終的に揚力を与えるために、前記飛行機内に含まれるブレードの1つの向きを変えることで、非限定的な例として、迎え角を変えたり、前記飛行機上にあるフラップを伸ばしたりすることで、推力遅延を補正し得る。ヘリコプタに関しては、それらは、結果として生じる揚力を増加又は低減するために、ローターのブレードピッチを操ることで、推力遅延を補正し得る。しかし、それぞれ図1及び図2又は図4で記述される第1及び第2実施形態で示されるような、空気力学的な外形又はローターブレードを有しない推進装置の垂直な離陸及び/又は着陸運転において、この種の補償機構は推力遅延を改善することができない。事実、1つ以上のターボジェットを含む1つ以上の推力ユニットを備え、垂直離陸を行う推進装置の気体の手動操作における誤り及び過剰補償は、これらの遅延時間又は遅れ時間のために、その後、特に怪我のような深刻な危険に乗員を導き、その生命を危険にさらすことさえあり得る。
【0020】
この欠点を克服し、例えば数百分の1秒のオーダーのほぼ瞬時のスロットリング命令への正確な応答を提供するために、推進装置の1つ又は複数の推力ユニットは、それぞれ、「ガイド」又は「偏向要素」とも呼ばれる1つ以上のデフレクタ要素を含み又はそれと協働し得る。そのような偏向要素は、垂直な向きを有する、即ち、推進装置が、前記乗員、例えば図1の乗員1を運搬している場合、例えば(乗員の足から頭へ)方向付けられた軸AL1とは反対方向を向くターボジェットを想定して、ターボジェットのノズルの排出口の真下に可動に取り付けられる。前記1つ又は複数のデフレクタ要素は、推力の排出口及び/又は流れの軌道上で作動可能及び位置決め可能である。前記デフレクタ要素が開配置にあるとき、ターボジェットによって引き起こされた推力はそれらの間に空いた空間を通り、従ってエンジンは全出力で作動することができ、従ってターボジェットの流体排出方向が地面に向けられているときに垂直方向の上昇させる力が提供される。前記デフレクタ要素が閉配置にあるとき、ターボジェットによって引き起こされた推力は、デフレクタ要素に衝突し、及び/又はデフレクタ要素によって逸らされ、消散する。デフレクタ要素が閉配置にあるとき、デフレクタ要素は依然として推進装置のフレーム又は支持手段と一体的に協働し、下方に向けられた推力は推進装置の構造内で無効にされ、ターボジェットの推力は上昇させる力にあまり寄与しない。
【0021】
デフレクタ、又はより一般にターボジェットの流体排出を消散させるために一緒に作動される要素の使用は、特に航空分野で知られている。例として、文献US 2,735,264は、2つの対称な半殻の形をした(「貝殻状」)の装置を記述している。この装置の使用によって、航空機を遅らせるために航空機の抵抗を増加させることが可能になる。前記航空機の移動速度はスラスタの固有の推力と無関係に遅くなる。そのような機構又は装置の使用による音の衝撃は、高高度を飛行する航空機の場合にほとんど重要ではない。その上、前記装置を作動するのに必要な力は、前記文献US 2,735,264の図面に示されているように、特に液圧式の複数のアクチュエータの使用を必要とする。そのようなアクチュエータの応答時間、重量、及び費用は、航空機の抵抗を調整することを目指すそのような利用にとって重要ではない。先行技術による「貝殻状」装置の数秒の応答時間は非常に大まかに十分である。
【0022】
スラスタの排出口における流体の流れに影響を与えるためのデフレクタの他の使用がある。それらの中で、文書GB1250811に開示されている装置が言及されることがある。これは一対の対称なフラップからなる。フラップは、必要に応じて、閉配置で、即ち前記文書GB1250811の図3に示されているように、スラスタの排出ノズルの下流で、前記スラスタの流体排出方向を逸らし、それがデフレクタとの接触で前記スラスタの排出ノズルの排出口における流体の方向に直交するように配置され得る。そのような配置は、あまり応答性の良くないデフレクタの複雑な作動を必要とする。文書GB1250811の技術的教示の目的は、スラスタの向きに従って水平方向に移動するように設計された航空機の垂直離着陸を可能にすることにある。しかし、航空機が実質的に水平である場合、上記のデフレクタの使用は上空又は地面に流体排出方向を向けるのに不十分である。スラスタによって排出される流れを方向付けるために、可動に取り付けられた追加の装置(「ストラット」)、例えば第3フラップを使用することが必要であり、前記第3構成要素は、スラスタの排出ノズルの下流、かつ流体排出方向を直交方向に逸らす一対のデフレクタ又はフラップの上流で作動される。
【0023】
互いに直交する2つの方向の一方に流体を引き寄せ又は向けるためではなく、例えば図1及び図4に関連して記述されるように、推力ユニットの推力を制御し、推力装置の軌道又は姿勢を正確に管理するためにデフレクタを使用することは、特に革新的である。しかし、効果的で適切であるために、そのようなデフレクタの使用は、前述のように、前記デフレクタを作動するための応答時間が数百分の1秒であることを必要とする。その上、本発明によるデフレクタの使用によって、推力ユニットが部分的に又は完全にさえ正常に機能していなくても、航空機の飛行を維持することが可能になることも分かる。そのアクチュエータの選択、より一般に、本発明によるデフレクタを含む推力ユニットの設計は、主に航空機の変位を抑制するように作用するデフレクタの既知の使用と調和しない。
【0024】
従って、本発明による推力ユニットの前記デフレクタ要素と協働して使用されるアクチュエータは、2つの極端な位置、この場合、閉位置と最大開位置との間で正確な位置決めを可能にし、燃料システム及び実質的に一定又は所定の流量を有するターボジェットのスロットル命令への応答の完全に制御可能な範囲を作り出し、その上アクチュエータに制御信号を送るのに必要な時間まで推力の遅れを低減する。アクチュエータは、ターボジェット又は既知のデフレクタのギャップ時間又は遅延時間より100倍のオーダーではるかに速い100分の1秒で応答する。
【0025】
図3A図3Cはデフレクタ要素を備える推力ユニットの一例を示す。そのような推力ユニット300は、概して、前述のようなターボジェット及び/又はターボプロップエンジンを備え得る推力エンジン302を備える。推力エンジンは、空気又は別の流体がエンジン内に引き込まれる入口端又は領域302aと、推力を生成するために、圧縮、加熱、及び/又は加圧された流体が排出される推力排出口、排出端又は領域302bとを備え又は一般に定める。推力ユニット300は、エンジン302の排出領域302bから排出される流体、関連する推力、及び結果として生じる推力ベクトルを逸らし、吸収し、及び/又は消散させるために使用及び/又は構成され得るデフレクタアセンブリ304を備え得る。デフレクタアセンブリ304は、1つ以上のデフレクタ要素又は偏向ガイド306a、306bを備え得、そのようなデフレクタ要素又は偏向ガイドは、推力の全部の大きさ、及び結果として生じる推力ベクトル、特にその方向を調整するために、エンジン302の排出領域302bの辺りで選択的かつ制御可能に動かされ得る。デフレクタアセンブリ304は、推力排出から生じる軸に対して傾けられた少なくとも2つの推力ベクトルに推力排出を逸らす。典型的に、エンジン302は縦軸314の向きに推力を供給する。多数の推力ベクトルは、全て、実質的に同じ大きさ又は絶対値を有し得、前記縦軸に対して約45度と約90度の間で傾けられ又は方向付けされ得る。それぞれの推力ベクトルの方向は、推力排出から生じる軸に対して実質的に同じ角度をなし得る。
【0026】
デフレクタアセンブリ304に含まれる、デフレクタ要素306a、306b、特にリンクアーム3081aa、3081abは、機械的リンク、好ましいが非限定的に旋回リンクに従って、エンジン302と、又は、変形例として、1つ以上のフレームワーク、リンク、若しくは他の機械的構造308によって、若しくは、好ましくは図3A図3Cによれば、前記旋回リンクを実現するピン308paa、308pabによって推力ユニットを含む装置のフレーム308と一体的に協働し得る。エンジン302からの流体の出力又は排出に関係したデフレクタ要素306a、306bの移動又は変位は、それぞれのデフレクタ要素306a、306bと協働するように設けられた1つ以上のアクチュエータ310によって行われ得る。そのようなアクチュエータ310は、非限定的な例としてラダーバー/コネクティングロッドアセンブリのような1つ以上の機械的リンク又は構造312を介して、デフレクタ要素306a、306bと機能的に協働し得る。
【0027】
より正確に、図3A図3Cに関連して記述される推力ユニットの実施例によれば、デフレクタ要素306a、306bは、それぞれ、エンジン302の排出領域302bに近い領域で、旋回型の機械的リンクに従って、フレーム308と、又はエンジン302若しくはより大まかに推力ユニットの前記デフレクタ要素306a、306bを支持するのに適した他の任意のアセンブリと一体的に協働し得、デフレクタアセンブリ304の「挟み込み動作」が可能になる。デフレクタ要素306a、306bのそれぞれは、推力エンジンの、以下「推力排出口」と呼ばれる、流体排出口又は排出領域302bの上方に置かれたリンクピン308paa、308pabによって定められた軸の周りに旋回し得、これにより、デフレクタ要素306a、306bが推力ユニットの運転中に開閉されるとき、エンジン302の推進出力に打ち勝ち抵抗するために、レバーアーム、又はアクチュエータの結果として生じるトルクに機械的な利点が与えられる。図3Aは特に「開」配置を示している。この配置において、デフレクタ要素306a、306bはエンジン302の流体排出軌道又は推力の実質的に外側に配置され、従ってエンジン302によって供給される推力ベクトルの全出力及び大きさがシステム300を用いる推進装置に作用することができる。図3B及び図3Cは「閉」配置を示している。この配置において、デフレクタ要素306a、306bは推力エンジン302の流体排出領域又は排出口302bにおいて互いに閉じられ又は「挟まれる」。エンジン302の流体排出口又は結果として生じる推力は、初め、エンジン302の縦軸314に実質的に沿うように向けられる。その後、排出された流体及び結果として生じる推力はデフレクタ要素306a、306bに向けられる。デフレクタ要素306a、306bは、デフレクタ要素が閉位置又は閉配置にあるとき、例えば45度のオーダーの角度αを縦軸314となす軸314に交差する方向に、排出された流体及び結果として生じる力を逸らし又は分散するために、実質的に曲げられ軸314に対して傾斜した半円形の表面を定め、縦軸314に沿った結果として生じる推力ベクトルの大きさは実質的に低減される。
【0028】
図4は、非限定的な実施例として、台11、4つの推力ユニット300、12、及び支持手段14を含む推進装置10を示している。推力ユニット300、12は、それぞれ、2つのデフレクタ要素を設けられたデフレクタアセンブリ(簡単のために図に符号を付されていない)を含み、それぞれのデフレクタ要素は、前述のような実質的に半円形の断面を有する実質的に曲げられ傾斜した表面を定め、前縁、即ち流体排出口又は領域に最も近い端部を含み、支持手段14は前記推力ユニット300、12を保持及び支持するように設けられる。前述の解決策と同様に、そのような手段14は、台11を支持するフレームの機能上の同等物を構成する。支持手段14は、1つ以上の適切な機械的リンクに従って、前記台11と一体的に協働する。好ましいが非限定的に、図4によれば、そのような機械的リンクは有利に嵌込みリンクからなり得る。
【0029】
推力ユニット、特に、推力エンジン302、流体排出領域又は排出口、及びフレームに対するデフレクタ要素の配置に応じて、前記デフレクタ要素の出力は、それらが、それぞれの推力エンジンの流体排出口、推力エンジンの容積、又はとりわけ推力エンジンの作動に対してさえ適切に配置されない限り、問題となり得る。事実、前述のように、そのようなデフレクタ要素は、それぞれ旋回型の機械的リンクを実現するリンクピンの周りの回転において可動に取り付けられる。デフレクタ要素の前縁、即ち流体排出口又は領域に最も近い端部が、流体排出口又は領域に接触し、開配置から出発して閉配置に至るとき、排出された流体の力、及び/又は結果として生じる垂直又は水平方向の推力ベクトルは、デフレクタ要素への特に強力な反発又は吸引効果を有し得る。従って、そのような反発又は吸引効果は、デフレクタ要素の進行又は動きに圧力又は力をかけ、それ故より高出力でよりかさばるエンジン及び/又はアクチュエータの使用を必要とし、そのような圧力又はそのような力を克服し、特に前述のようなデフレクタ要素を含む1つ以上の推力ユニットを備える推進装置の安定性を保証するために、高出力のアクチュエータを使用し及び/又は正確に管理された操縦を行うことは、最終的に、解決策の総費用を増加させ、それぞれのデフレクタ要素の動きの応答性を変える。相互的に、そのような吸引又は反発効果は閉配置から開配置へのデフレクタ要素の移動中にも存在し得る。
【発明の概要】
【0030】
本発明によって、前述され、既知の解決策によって提起された欠点の全て又は一部に答えることが可能になる。特に、本発明による推力ユニットは、前述の推力ユニットへの改良点、特に前記推力ユニットのデフレクタ要素の新規の配置及び/又は新規の構造を提案することによって、そのような困難さを改善する。そのような配置及び構造は、有利だが非限定的に、一緒に又は別々に使用され得る。本発明は、特に旋回リンクを実現するリンクピンの位置決めを定め、そのような推力ユニットのデフレクタ要素とフレームの間の協働を保証することからなる。ピボットピンの正確な位置決めによって、特にレバーアームと結果として生じる垂直方向の推力とで結果として生じるトルクを大幅に減少又は打ち消しさえすることが可能になる。そのような改良は、推力ユニットの容積を低減し、その信頼性及び応答性を向上させることを可能にするため、多くの利点を有する。
【0031】
第1主題によれば、特に、推進装置のための推力ユニットが提供され、それは、
-流体排出口を定めるノズルを含む、方向付けられた推力の流れを生成するように設けられた推力エンジンと、
-推力の流れの全て又は一部を逸らすように、推力の流れにおける流体排出ノズルの下流に、一対の可動のデフレクタ要素を備え、前記デフレクタ要素は、前記推力の流れ内で互いに接触するように、及びそれぞれの旋回リンクに従って可動に取り付けられるように設けられ、それぞれの旋回リンクのリンクピンは、平行であり、流体排出口の両側の上流に置かれ、前記デフレクタ要素のそれぞれは、前記リンクピンの1つの周りの回転運動を描き、前記推力エンジンによって生成された推力の流れに突入するための前縁を含む、「先導」と呼ばれる第1部分を有するデフレクタアセンブリと、
-前記デフレクタ要素が推力エンジンによって生成された推力の流れに入り又は推力エンジンによって生成された推力の流れから離れるように、これらのデフレクタ要素のそれぞれの回転運動を引き起こすように設けられたアクチュエータと、を含む。
【0032】
推力ユニットの容積を低減し、その信頼性及び応答性を向上させるために、それぞれのデフレクタ要素のそれぞれの旋回リンクのリンクピンは、デフレクタ要素が推力エンジンによって生成された推力の流れに突入するときに、デフレクタ要素のどんな反発又は吸引効果も除去するように、及び前記デフレクタ要素のそれぞれの回転運動を引き起こすためのアクチュエータの作用力を低減するように設けられる。
【0033】
好ましいが非限定的なやり方において、本発明による推力ユニットの製造を容易にするために、それぞれのデフレクタ要素は、それぞれ、実質的に半円形の断面を有する実質的に曲がり傾斜した表面を定める。
【0034】
流体の排出によって引き起こされる乱流、振動、及び/又は外乱を低減するために、変形例として又は加えて、それぞれのデフレクタ要素は第1部分の延長上に定常と呼ばれる第2部分を有し得、そのような第2部分は、実質的に平らな内面を有し、デフレクタ要素内で窪みの形成を可能にするように設けられ、前記デフレクタ要素内で、排出された流体の層流を促進する。
【0035】
変形例として又は加えて、推進装置にある推力エンジンの1つが正常に機能していなくても、推進装置の安定性を維持するために、それぞれのデフレクタ要素は、第2部分の延長上に、反対推力角βを有する、「逆推力又は反対推力」と呼ばれる第3部分を有し、それにより、デフレクタ要素内の流体の流れの結果として生じるベクトルは、デフレクタ要素が閉配置にあるとき、流体排出方向に実質的に平行な軸に関して、推力のベクトルの方向と反対の方向を定める。
【0036】
好ましい実施形態によれば、本発明による推力ユニットは、次のように設けられ得る。即ち、
-前記デフレクタアセンブリはリンクアームを含み、それぞれのリンクアームは、適切な機械的リンクに従って、デフレクタ要素の1つとそれぞれ一体的に協働し、
-フレームが、嵌込みリンクに従って推力エンジンと、リンクピンによってそれぞれの旋回リンクに従ってリンクアームを介してデフレクタ要素のそれぞれと一体的に協働し、
-デフレクタ要素の1つの回転運動を引き起こすように設けられたそれぞれのアクチュエータは、ラダーバーを含み、
-推力ユニットは、第1端でデフレクタ要素と、第2端でアクチュエータのラダーバーとそれぞれ一体的に協働するコネクティングロッドを含み、コネクティングロッドのそれぞれは、推力作用点を定め、ラダーバーから、コネクティングロッドの1つを介してラダーバーと協働するデフレクタ要素に回転運動を伝達するように設けられ、
-流体排出口に対するリンクピンの相対的な位置決めは、推力ユニットを推力の流れの方向に沿って対称的に2つの半分に分離する推力ユニットの横平面に射影された距離D2及びD5によって定められ、D2は、推力の流れが地面に向けられているとき、リンクピンの1つと、関係しているデフレクタ要素が閉配置にあるときに結果として生じる推力のベクトルの力点との間の垂直距離からなり、D5は、前記リンクピンと力点との間の水平距離からなり、距離D2及びD5自体は、
【数1】
ここで、Dnは排出ノズルの直径からなり、bは1と1.3の間に含まれる所定の係数からなり、α1は、開配置における流体排出方向に横平面内で実質的に平行な軸に対するデフレクタ要素の迎え角α′と、閉配置における流体排出方向に横平面内で実質的に平行な軸に対するデフレクタ要素の迎え角αとの間の最大の角度差からなり、
【数2】
ここで、C4は、求められる逆トルク、即ちリンクピンでの閉鎖トルクと機械系のトルクとの差からなり、F1は結果として生じる推力の水平方向のベクトルの絶対値からなり、C1はリンクピンの点での機械系のトルクからなり、C2はアクチュエータの所定のサーボモータトルクからなり、D3はラダーバーの所定の長さからなり、D4はリンクピンと推力作用点との間の距離からなり、C3はリンクピンでの閉鎖トルクからなる、ように定められ、
前記距離D2及びD5は逆トルクC4の値を最小にするように選択される。
【0037】
最適な性能を提供し、本発明による推力ユニットのどんな過剰な圧力も防止するために、推力ユニットのデフレクタ要素と流体排出口との間の相対的な位置決めは距離D1によって予め定められ得、そのような距離D1は、推力ユニットの流体排出口を定める排出ノズルの下端と、デフレクタ要素のそれぞれの前縁との間の距離からなり、排出ノズルの直径に実質的に等しい。
【0038】
本発明による推力ユニットの好ましいが非限定的な実施形態によれば、推力エンジンが実質的に40キログラムに等しい推力を有し、デフレクタ要素が実質的に45度に等しい迎え角αを定める場合、横平面(PT)内における流体排出口又は領域(302b)に対するリンクピン(308paa、308pab)の相対的な位置決めは、横平面(PT)に射影された距離D2及びD5によって定められ得、
-距離D2は、実質的に、120ミリメートルと160ミリメートルとの間に含まれ、好ましくは140ミリメートルであり、
-距離D5は実質的に80ミリメートルと120ミリメートルとの間に含まれる。
【0039】
好ましいが非限定的に、本発明による推力ユニットの推力エンジンはターボジェット及び/又はターボプロップエンジンを備え得る。
【0040】
第2主題によれば、本発明は、台と、推力ユニットと、台と一体的に協働し、前記推力ユニットを保持及び支持するように設けられた支持手段とを含む推進装置に関する。推進装置の性能を高めるが、前記推進装置の容積、さらに燃料消費を減少させるために、前記推力ユニットは本発明の第1主題によるものである。
【0041】
他の特徴及び利点は、以下の説明を読み、添付図を考察すると、より明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】前述の図1は既知の推進装置の第1実施形態を概略的に示している。
図2】前述の図2は既知の推進装置の第1実施形態の分解図である。
図3A】前述の図3Aは、好都合に開配置にある既知の推進装置のための推力ユニットの一実施形態の第1斜視図である。
図3B】前述の図3Bは、好都合に閉配置にある既知の推進装置のための推力ユニットの一実施形態の正面図である。
図3C】前述の図3Cは、好都合に閉配置にある既知の推進装置のための推力ユニットの一実施形態の第2斜視図である。
図4】前述の図4は既知の推進装置の第2実施形態を概略的に示している。
図5A図5Aは、好都合に閉配置にある本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の第1斜視図である。
図5B図5Bは、好都合に開配置にある本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の第2斜視図である。
図5C図5Cは、好都合に閉配置にある本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の概略的な第1正面図である。
図5D図5Dは、好都合に開配置にある本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の概略的な第2正面図である。
図6図6は、好都合に閉配置にある本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の概略的な斜視図であり、前記装置に対する横平面の位置決めを示すことを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明によるそのような推力ユニットは、文書の残りの部分において、概して垂直方向の推力を有する推進装置に関連した利用という観点から説明され、そのような推進装置は、前記推進装置上に乗った乗員、又は場合により推進装置が輸送するだろう商品の移動を保証することができるだろう。しかし、本発明はこのたった1つの実施例に限定されるべきではない。変形例として、そのような推力ユニットは任意の型の推進装置と関連して使用され得る。
【0044】
本発明の意味の範囲内で及び文書全体を通して、「推力ユニット」は、現在、航空分野で使用されている任意の推進装置を意味する。それは、酸化剤、正確には本体の流体吸入口を通して吸入された周囲の空気と化合された、燃料、例えばケロシン又は同等物に含まれるポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換する。この運動エネルギーは弾性環境で気体排出物の排出とは反対方向に反力を発生させる。この結果、スラスタ又は推力ユニットの流体吸入口とその排出ノズルの間で一定量の空気が加速され、前記排出ノズルでの膨張によって推力が発生する。そのようなスラスタはブレード又はローターを有する空気圧縮機を使用する。前述のケロシンの代わりに、他の任意の種類の燃料が場合により使用され得る。
【0045】
図5A図5D及び図6は、本発明による推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の異なる図である。特に、図5A及び図5Cは、デフレクタ要素306a、306bが互いに閉じられる閉配置にある推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の2つの概略図であるが、図5B図5D及び図6は、開配置にある推進装置のための推力ユニットの非限定的な実施形態の2つの概略図である。
【0046】
前述のデフレクタ要素を備える推力ユニットと同様に、本発明による推力ユニット300は、概して、前述のようなターボジェット及び/又はターボプロップエンジンを備え得る推力エンジン302を備える。前記推力ユニット300は、垂直離着陸能力を提供するような方向に向けられた、即ち重力の方向に従う推力F1、F2を、前記推力ユニットを含む推進装置に提供するように設けられる。垂直の概念は流体排出の軸と実質的に平行な軸との関連で理解される。これを行うために、図5A図5D及び図6によれば、推力エンジン302は、有利に、実質的に垂直な方向、地面の方向に配置され向けられる。以下「推力の流れ」と呼ばれる推力を作り出すことを可能にするために、推力エンジン302は、空気又は別の流体がエンジン内に引き込まれる入口端又は領域302aと、推力を生成するために、圧縮、加熱、及び/又は加圧された流体が排出される流体又は推力排出口、排出端又は領域302bとを備え又は一般に定める。好ましいが非限定的に、推力排出口において、本発明による推力ユニットは、前記推力エンジン302に含まれ又はそれと一体的に協働する排出ノズル302nを含む。
【0047】
前記推力ユニット300は、エンジン302の排出ノズル302nから排出される流体、関連する推力、及び結果として生じる推力ベクトルを選択的に逸らし、吸収し、及び/又は消散するために使用及び/又は構成され得る2つのデフレクタ要素306a、306bを含むデフレクタアセンブリ304を備え得る。従って、前記デフレクタ要素306a、306bは、推力の全部の大きさ及び結果として生じる推力ベクトルを調整するために、流体排出軌道上に可動に取り付けられ、エンジン302の排出領域302b及び/又は排出ノズル302nの辺りで選択的かつ制御可能に動かされ得る。好ましいが非限定的に、図5A図5C及び図6によれば、前記推力ユニット300の前記デフレクタ要素306a、306bは、中央平面に関して実質的に等しく対称な形状及び寸法を有し得、中央平面は、推力エンジン302の回転軸314を含み、推力エンジン302、より大まかに推力ユニット200の左舷半分を右舷半分から分離する。従って、前記デフレクタ要素306a、306bは、平行であり流体排出口の両側の上流に配置されたそれぞれのリンクピン308paa、308pabの旋回リンクによって、可動に取り付けられる。第1デフレクタ要素306aが、図5Cに示されるように、反時計回りの回転rを描くとき、その端部の1つは推力エンジンの流体排出口によって作り出された流れに入る。他方、前記第1デフレクタ要素306aがリンクピン308paaの周りに時計回りの回転rを描くとき、それは流れから離れる。第2デフレクタ要素306bは、可動に取り付けられ、第1デフレクタ要素306aを「映す」ので、前記第2デフレクタ要素306bは、図5Cによって示されるように、時計回りの回転rを描くとき、流れに突入し、リンクピン308pabの周りに反時計回りの回転rを描くとき、流れから離れる。前記第1及び第2デフレクタ要素は、進行の終わりに互いに接触して、推力エンジンの流れを完全に消散することができるように相互に配置される。有利に、2つのデフレクタ要素306a及び306bは、2つのデフレクタ要素の2つの末端に向かうそれぞれ推力エンジンによって生成された流れの全部の横方向の分散を増進するために、互いに接触しているときに、流体排出口に向けられた底を有する実質的に逆「V」字の形をした結果として生じる表面を共同して描く。
【0048】
排出された流体によって引き起こされる乱流を低減するように、流体排出によって生成された推力を「吸収」するために、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは先導と呼ばれる第1部分306aa、306baを有し、そのような第1部分は流体排出領域302bに最も近い端部に相当する前縁BAを含む。先導と呼ばれる前記部分306aa、306ba、特に前縁BAは、有利に、結果として生じる推力のベクトルの力点Pを含むように設けられる。本発明の意味の範囲内において及び本文書全体を通して、「力点P」は、衝撃点とも呼ばれ、前記デフレクタ要素が閉配置にあるときに、推力がそれぞれのデフレクタ要素のそれぞれの壁の内面に加えられる点を意味する。従って、そのような力点Pは、前縁にあり、排出された流体の流れが2つの部分に分割されるよどみ点として定められる。
【0049】
この目的で、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは、それぞれ先導と呼ばれる第1部分を有し、力点Pを含む。そのような力点Pの位置決めは、推力ユニット内にあるデフレクタ要素の数、及び排出ノズルの横断面の形状との関連で定められる。事実、推力ユニットが閉配置の2つのデフレクタ要素を備える、即ちそれらが互いに接触しているとき、排出された流体は、前記デフレクタ要素と接触すると、結果として生じる2つのベクトルへと逸らされる。好ましくは、図5A図5D及び図6によれば、排出ノズル302nが実質的に円形の横断面を有する場合、力点Pは、実質的に前記排出ノズル302nの中心の約3分の1の位置に定められる。
【0050】
さらに、排出された流体の流れ及び偏向を可能にするために、前縁BAを含むそれぞれのデフレクタ要素306a、306bの先導と呼ばれるそれぞれの第1部分306aa、306bbは、流体排出方向に実質的に平行な軸314に対して、デフレクタ要素が閉配置にあるとき(即ち、それらが推力エンジン302によって生成された流れの中で互いに接触しているとき)迎え角αを、デフレクタ要素が開配置にあるとき(即ち、それらが互いに離れ、それぞれのデフレクタ要素が推力エンジン302によって生成された流れから出ているとき)迎え角α′を有する。図5A図5D及び図6に関連して記述される実施例によれば、推力ユニットのエンジンが実質的に垂直な位置にあり、エンジン302及び排出ノズル302nが実質的に円形の横断面を有するため、流体排出方向に実質的に平行な軸はエンジン302の回転軸314からなり得る。従って、そのような迎え角αは、乱流を最小限で発生させるために、概して30度と60度との間に含まれ、好ましくは45度である。
【0051】
その上、本発明による推力ユニットのデフレクタ要素306a、306bとエンジン302との間の協働を保証するために、前記デフレクタアセンブリ304は、例えばリンクアーム3081aa、3081abの形のリンク手段を含み、それぞれのリンクアームは、適切な機械的リンクに従ってデフレクタ要素306a、306bの1つとそれぞれ一体的に協働する。好ましいが非限定的に、図5A図5D及び図6によれば、デフレクタ要素306a、306bのそれぞれは、嵌込みリンクに従って、前記デフレクタ要素306a、306bの両側に置かれた一対のリンクアーム3081aa、3081abとそれぞれ一体的に協働し得る。しかし、本発明は、デフレクタ要素306a、306bとエンジン302との間の協働を保証するリンクアームの数、又はそのような協働を保証するリンクの型を限定されるべきではない。さらに、リンクアーム308laa、308labの形状及び寸法は、デフレクタ要素306a、306bが、流体排出口302bの下方の近い領域に配置され、前記排出された流体の偏向を保証し得るように設計され又は定められる。
【0052】
加えて、本発明による推力ユニット300は、嵌込みリンクに従って推力エンジン302と一体的に協働するフレーム308を含む。即ち、前記フレームは、その形状及びその寸法のため、排出ノズル302n又はより一般に推力エンジン302を囲むように設けられる。デフレクタ要素306a、306bと推力エンジン302との協働を保証するために、前記フレームは、一般にピボットピンとも呼ばれるリンクピン308paa、308pabによるそれぞれの旋回リンクに従ってリンクアーム308laa、308labを介してデフレクタ要素306a、306bのそれぞれと等しく一体的に協働する。従って、開又は閉配置における前記デフレクタ要素306a、306bのそれぞれの位置決めを確実にするために、これらのデフレクタ要素は、推力ユニット300の横平面PT内において、リンクピン308paa、308pabのうちの対応するものの周りの回転運動rを描き、前記横平面PTは、実質的に、流体排出口表面を2つの等しい半分に分割する。本発明の意味の範囲内において、「横平面」PTは、推力の流れの方向に沿って、推力ユニット、その結果、推力エンジン302、排出ノズル302n、フレーム308、及びデフレクタ要素306a、306bを対称的に2つの部分に分離する任意の平面として定められ、前記部分の一方は前記推力ユニットの前部を含み、前記部分の他方は前記推力ユニットの後部を含み、前記部分は実質的に等しい又は半分である。
【0053】
流体排出口302bに対するデフレクタ要素306a、306bの移動又は変位は、それぞれのデフレクタ要素306a、306bと協働するように設けられた1つ以上のアクチュエータ310によって行われ得る。非限定的な例として、そのようなアクチュエータ310はそれぞれサーボモータからなり得る。そのようなアクチュエータ310は前記デフレクタ要素306a、306bのそれぞれの回転運動を引き起こすように設けられる。図5A図5D及び図6に関連して記述される実施例によれば、そのようなアクチュエータ310はラダーバー310pを備え又はそれと協働する。さらに、そのようなアクチュエータは1つ以上の機械的リンク又は構造312a、312bを通じてデフレクタ要素306a、306bと機能的に協働し得る。この目的で、推力ユニットは、有利に、第1端でデフレクタ要素306a、306bと、第2端でアクチュエータ310のラダーバー310pとそれぞれ一体的に協働するコネクティングロッド312a、312bを含み、コネクティングロッドのそれぞれは、推力作用点312apを定め、ラダーバーから、対応するデフレクタ要素306a、306bに回転運動を伝達するように設けられる。本発明の意味の範囲内において、「コネクティングロッド」は、2つの連結部を備え付けられ、2つの連結された部分の間で、特にラダーバー310pとリンクアーム308paa、308pabとの間でその平行な軸に続く端部で回転運動を伝達し並進運動に変換することを意図された任意の長手方向を有する要素又は任意の棒を意味する。従って、そのようなコネクティングロッドは、ラダーバーの端部及びリンクアーム308paa、308pabの端部に回転可能に取り付けられた一定の長さを有するリンク要素からなり、ステアリングタイロッドを含み得る。変形例として、本発明は、構成要素306a、306bのそれぞれの回転運動の伝達を保証するために、コネクティングロッド/ラダーバーアセンブリを作動シリンダで置き換え得ることを提供する。
【0054】
アクチュエータからラダーバー及びコネクティングロッドを介して動きが伝達されると、リンクピン308paa、308pabの機械的反動及び共振スロッシングが生じ得る。そのような機械的反動を克服及び吸収するために、本発明による推力ユニット300は、簡単のために図示されていない、好ましいが非限定的に青銅で作られたリングを含む。しかし、機械的反動の多すぎる吸収は、推力ユニットの良好な作用、特にデフレクタ要素306a、306bの回転運動に影響し得る。従って、共振力を制限するために、リンクピン308paa、308pabのところでの制御された摩擦の生成を確実にすることが有利である。この目的で、本発明による推力ユニットは、リンクピン308paa、308pabを囲むように設計及び配置された弾力のある機械的ワッシャ308ra、308rbを備え得る。
【0055】
前述のように、デフレクタ要素306a、306bは、リンクアーム308laa、308labを介してフレーム308に回転運動rに従って回転可能に取り付けられ、前記リンクアームの末端は、デフレクタ要素306a、306bと機械的な嵌込みリンクに従って一体的に協働し、それぞれリンクピン308paa、308pabの周りで旋回し、前記リンクピン308paa、308pabは、好ましくは、流体排出口302b、その結果、推力エンジン302の推力の上方又は上流に配置される。そのような流体排出領域の上流への位置決めは、デフレクタ要素306a、306bが推力ユニットの運転中に開閉されるとき、エンジン302の推進出力に打ち勝ち抵抗するために、アクチュエータのレバーアーム又は結果として生じるトルクに機械的な利点を与えるので、特に有利であると既にわかっている。しかし、前述のように、リンクピン308paa、308pabの無原則又は任意の位置決めは、偏向要素の前縁BA、即ち流体排出領域に最も近い端部が、流体排出口若しくは領域に接触又は突入し、開配置から出発して閉配置に到達する、又は、相互的に、流体排出口若しくは領域302bから離れ、閉配置から出発して開配置に到達するとき、推力ユニット300の使用に有害な結果をもたらし得る。事実、推力エンジンから排出された流体の力、及び/又は図5Cでそれぞれ符号を付された垂直方向及び水平方向のベクトルF1及びF2によって表されるデフレクタ要素306bによる前記流体の一部の分散は、デフレクタ要素への特に強力な反発又は吸引効果を有し得、それにより、デフレクタ要素の進行又は動きに圧力又は力がかかり、その結果より高出力でより大きくより高価なエンジン及び/又はアクチュエータが必要となり、そのような圧力又はそのような力を克服し、特に前述のようなデフレクタ要素を含む1つ以上の推力ユニットを備える推進装置の安定性を保証するために、高出力のアクチュエータの使用及び/又は管理された正確な操縦が必要となる。
【0056】
それ故、経験上、推力ユニットの性能を高めつつ、前記推力ユニットの容積、さらに燃料流量を低減するように、推力ユニットの様々な要素に関連して、非常に正確に、所定の方法で、リンクピン308paa、308pabの旋回点の位置を定める必要性が明らかになっている。
【0057】
次に、デフレクタ要素306a又は306bが推力ユニットのエンジンによって生成された推力の流れに突入するとき、本発明による推力ユニットの作用に有害な反発又は吸引効果を最小に又は除去さえするための、デフレクタ要素306a、306bと、推力ユニット300、特にフレーム308との相互の配置が説明される。そのような相互の配置は、特に、それぞれリンクアーム308laa、308labを通じたデフレクタ要素306a、306bとの旋回リンクを保証するそれぞれのリンクピン308paa、308pabの、推力ユニット300の流体排出口302bに対する相対的な位置の決定に基づく。そのような位置決めは、図5C及び図5Dに関連して、横平面PTに射影された距離D2及びD5によって決定され、推力ユニット300のフレーム308に対して回転可能に取り付けられたデフレクタ要素306a、306bの進路を決定し、ここで、
-距離D2は、リンクピン308paa、308pabの1つと、関係しているデフレクタ要素が閉配置にあるときに結果として生じる推力のベクトルの力点Pとの間の垂直距離からなり、
-距離D5は、前記リンクピン308paa、308pabと力点Pとの間の水平距離からなる。
【0058】
距離D2及びD5自体は、文書の残りの部分で記述されるような、定められた及び/又は予め定められた一定の数のパラメータから定められる。本文書で言及される距離及び角度は、図5C及び図5Dで記述される断面への射影として表される。特に、距離D2及びD5は、
【数3】
及び
【数4】
ここで、
-Dnは排出ノズル302nの直径からなり、
-bは1と1.3の間に含まれる所定の係数からなり、
-α1は、開配置における流体排出方向に横平面PT内で実質的に平行な軸314に対するデフレクタ要素306a、306bの迎え角α′と、閉配置における流体排出方向に横平面PT内で実質的に平行な軸314に対するデフレクタ要素306a、306bの迎え角αとの間の最大の角度差からなり、
-C4は、アクチュエータ310、より大まかに推力エンジン302を最適化するために最小にすることが望まれる、求められる逆トルク、即ち、リンクピン306paa、306pabでの閉鎖トルクC3と、リンクピンの点での機械系のトルクC1との間の差からなり、
-F1は結果として生じる推力の水平方向のベクトルの絶対値からなり、
-C1はリンクピンの点での機械系のトルクからなり、
-C2はアクチュエータの所定のサーボモータトルクからなり、
-D3はラダーバーの所定の長さからなり、
-D4はリンクピン308paa、308pabと推力作用点312apとの間の距離からなり、
-C3はリンクピン308paa、308pabでの閉鎖トルクからなる、ように定められる。
【0059】
前記距離D2及びD5は、有利に、逆トルクC4の値を最小にするように選択される。
【0060】
次に、推力エンジンが40キログラムに実質的に等しい推力を有し、デフレクタ要素が45度に実質的に等しい迎え角αを定める場合において、好ましいが非限定的な例を通じて、様々なパラメータに関連した前述の距離D2及びD5の決定が説明される。
【0061】
好ましいが非限定的に、事前に、デフレクタ要素306a、306bと流体排出口302bとの間の相対的な位置決めが距離D1によって予め定められ得る。距離D1は、推力ユニットの流体排出口302bを定める排出ノズル302nの下端と、デフレクタ要素306a、306bのそれぞれの前縁BAとの間の距離からなり、最適な性能を提供し、もしかすると推力エンジン302又はより大まかに前記推力ユニット300を損傷し得る推力ユニット300のどんな過剰な圧力も防止するために、0.3と1.2の間に含まれる係数を排出ノズル302nの直径Dnに掛けたものと実質的に等しくなるように定められる。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニット300の非限定的な実施形態によれば、直径Dnは実質的に70ミリメートルに等しく、距離D1は21ミリメートルから84ミリメートルの間に含まれ得る。好ましくは、推力ユニット300の排出ノズル302nが実質的に横の断面を定める場合、距離D1は排出ノズル302nの直径Dnに実質的に等しくなり得る。
【0062】
角度α1は、開配置における、図5C及び図5Dの中で推力エンジン302の回転軸314に相当する、流体排出方向に横平面PT内で実質的に平行な軸314に対するデフレクタ要素306a、306bの迎え角α′と、閉配置における、流体排出方向に横平面PT内で実質的に平行な同じ軸314に対するデフレクタ要素306a、306bの迎え角αとの間の最大の角度差からなり、最適な性能を提供するために、5度と30度の間に含まれるように定められる。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの非限定的な実施形態によれば、前記角度α1は実質的に14度に等しくなり得る。
【0063】
デフレクタ要素306a、306bの前縁BAの間の最大間隙距離R1は排出ノズル302nの直径Dnの1倍と1.3倍の間に含まれ得る。好ましくは、燃料消費を低減し、エンジン302の推力の全出力を享受又は維持するために、最大間隙距離R1は排出ノズル302nの直径Dnと実質的に等しくなり得る。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの非限定的な実施形態によれば、直径Dnが70ミリメートルに実質的に等しいため、距離R1は70ミリメートルに実質的に等しくなり得る。
【0064】
距離D2を定めるために、直角三角形において、角度の正接は対辺の隣辺に対する比に等しいという三角法の式が考慮される。従って、図5C及び図5Dによれば、角度α1の正接は、デフレクタ要素306a、306bの前縁の間の最大間隙距離R1を2で割ったものに相当する、開配置と閉配置との間の力点の水平直線距離PP′の、距離D2に対する比に等しい。従って、距離D2は、最大間隙距離R1の2分の1の、角度α1の正接に対する比に等しく、即ち、最終的に、
【数5】
である。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニット300の非限定的な実施形態によれば、距離R1は実質的に70ミリメートルに等しく、角度α1は実質的に14度に等しく、距離D2は、120ミリメートルと160ミリメートルの間に含まれ、好ましくは実質的に140ミリメートルに等しくなり得る。
【0065】
さらに、距離D5は、逆トルクC4の、結果として生じる推力の水平方向のベクトルF1に対する比に等しいと定められ得る。
【0066】
まず、図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの実施形態にいて、結果として生じる水平方向の推力F1の値が検討される。乱流及び締結荷重を最小にするために、デフレクタ要素306a、306bが閉配置にあるときの迎え角αは、実質的に45度に等しくなるように定められたことに注意すべきである。従って、結果として生じる水平方向の推力F1の値は、結果として生じる垂直方向の推力F2の値に等しい。さらに、本発明による推力ユニット300は、有利に、2つのデフレクタ要素306a、306bを含む。従って、結果として生じる水平方向の推力F1の値は、エンジンの推力を2で割ったものをさらに2で割ったものに等しくなり得る。図5C及び図5Dによれば、先に明記されたように、実質的に40キログラムに等しいエンジンの推力が検討される。従って、結果として生じる水平方向の推力F1の値は、10キログラムに等しくなり得る。
【0067】
前述のように、デフレクタ要素306a、306bが閉配置にあるときの迎え角αは45度に等しいため、結果として生じる水平方向の推力F1の値は、結果として生じる垂直方向の推力F2の値に等しい。従って、図5C及び図5Dによれば、結果として生じる垂直方向の推力F2の値は、10キログラムに等しくなり得る。
【0068】
次に、逆トルクC4を推定するために、リンクピン308paa、308pabの点での機械系のトルクC1が定められる。トルクC1は、アクチュエータ310の所定のサーボモータトルクC2の、ラダーバーの同様に所定の長さD3に対する比に、この場合、図5C及び図5Dによれば、コネクティングロッドの長さに相当する、リンクピン308paa、308pabの点と推力作用点312apとの間の距離に相当する距離D4を掛けたものに等しいように定められ得る。距離D4は、サーボモータのトルクC2に依存するが、それ故、容積を低減し、アクチュエータ及び機械的反動による不正確さを最小にするように、デフレクタ要素306a、306bの形状及び寸法だけでなく、前記トルクに応じて定められる。そのような反動は、コネクティングロッド、タイロッド、及びラダーバーでの動きの伝達中に非限定的に存在し、振動を発生させる。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニット300の非限定的な実施形態によれば、距離D3が実質的に24ミリメートルに等しく、サーボモータの所定のトルクC2が実質的に22キログラムセンチメートルに等しく、距離D4が実質的に134ミリメートルに等しい場合、トルクC1は実質的に122キログラムセンチメートルに等しくなり得る。
【0069】
まだ逆トルクC4を推定する中で、次に、リンクピン308paa、308pabの点での閉鎖トルクC3、換言すれば推力で克服されるトルクが定められる。トルクC3は、結果的に生じる水平方向の推力F1に距離D2を掛けた値に等しく定められ得る。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの非限定的な実施形態によれば、結果として生じる水平方向の推力F1の値が実質的に10キログラムに等しく、距離D2が実質的に140ミリメートルに等しい場合、トルクC3は実質的に140キログラムセンチメートルに等しくなり得る。
【0070】
最後に、最小することが望まれる逆トルクC4が定められる。逆トルクC4は、リンクピンの点での閉鎖トルクC3と、リンクピンの点での機械系のトルクC1との差に等しく定められ得、前記トルクC1は、有利に、0と1の間に含まれる所定の安全係数を掛けられる。そのような安全係数によって、アクチュエータ310をその出力のある割合で使用し、アクチュエータ310の完全性を維持し、前記アクチュエータ310の信頼性及び敏捷性を保証することが可能になる。従って、この安全係数の適用によって、低出力で非常に応答性の高い安価なアクチュエータを維持しつつ、保護及び信頼性の目的で前記アクチュエータ310を必要より大きくすることが可能になる。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの非限定的な実施形態によれば、所定の安全係数が0.3に等しく、トルクC3が実質的に140キログラムセンチメートルに等しく、トルクC1が実質的に122キログラムセンチメートルに等しい場合、トルクC4は実質的に103キログラムセンチメートルに等しいと推定され得る。
【0071】
最後に、距離D5が定められる。特に図5C及び図5Dに関連して記述される本発明による推力ユニットの非限定的な実施形態によれば、逆トルクC4が実質的に105キログラムセンチメートルに等しく、結果として生じる水平方向の推力F1の値が実質的に10キログラムに等しい場合、距離D5は、実質的に、80ミリメートルと120ミリメートルの間に含まれ、好ましくは10センチメートル又は100ミリメートルに等しくなり得る。
【0072】
特にレバーアームと結果として生じる垂直方向の推力とで結果として生じるトルクを打ち消すことを可能にするために、本発明による推力ユニット300のエンジン302、フレーム308、及び/又はリンク要素306a、306bは、特に逆トルクC4の値を最小にするために、先に決定されたような2つの距離D2及びD5によって定められる基準を満たすように相互に配置される。
【0073】
より正確には、図5A図5Dに関連して記述される推力ユニットの実施例によれば、本発明による推力ユニット300のそれぞれのデフレクタ要素306a、306bは、特に、排出された流体の前記デフレクタ要素306a、306b内の通過中における偏向及び/又は消散を改善することで、そのような推力ユニット300の安定性及び信頼性を向上させるために、新規の外形及び新規の配置を有する。好ましいが非限定的に、特に図5A図5D及び図6に関連して記述される本発明による推力ユニット300の実施例によれば、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは、それぞれ、溝の断面に似た実質的に半円形の断面を有する実質的に曲げられ傾斜した表面を定め得る。しかし、本発明は、デフレクタ要素のこのたった1つの実施例及び外形に限定されるべきではない。排出された流体の前記デフレクタ要素内の通過中における偏向及び/又は消散の作用を保証することを可能にする任意の外形が代わりに使用され得る。
【0074】
前述のように、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは、結果として生じる推力のベクトルの力点又は衝撃点Pを含むように設けられた、先導と呼ばれる第1部分306aa、306baを備え又は有する。力点Pは、排出ノズルが実質的に円形の横断面を有する場合、実質的に排出ノズルの中心の約3分の1の位置に定められる。第1部分306aa、306baは、前縁BA、即ち流体排出領域302bに最も近い端部を含み、デフレクタ要素が閉位置にあるときにエンジン302の回転軸314に対して迎え角αを有する。これにより、排出された流体によって引き起こされる乱流を低減するように、流体排出によって生成された推力を「吸収」することが可能になる。先に明記されたように、そのような迎え角αは、乱流を最小限で発生させるために、概して30度と60度の間に含まれ、好ましくは45度である。
【0075】
変形例として又は加えて、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは、第1部分の延長上に定常と呼ばれる第2部分306at、306btを有し又は定め得、そのような第2部分は、実質的に平らな内面を有し、デフレクタ要素内で窪みの形成を可能にし、前記デフレクタ要素306a、306b内で、排出された流体の層流を促進する。従って、そのような第2の部分によって、流体の排出によって引き起こされる乱流、振動及び/又は外乱を低減することが可能になる。
【0076】
さらに、再び変形例として又は加えて、それぞれのデフレクタ要素306a、306bは、第2部分の延長上に、反対推力角βを有する、逆推力又は反対推力と呼ばれる場合により任意の第3部分306ar、306brを有し又は定め得、それにより、推進装置にある推力ユニット又はエンジンの1つが正常に機能していなくても、推進装置の安定性を維持することが可能になる。従って、反対推力角βは、デフレクタ要素が閉配置にあるときに、デフレクタ要素内の流体の流れの結果として生じるベクトルが流体排出方向に実質的に平行な軸314に関して推力のベクトルの方向と反対の方向を定めるように決定され得る。従って、そのような第3部分は、排出された流れの一部を流体排出口とは反対方向に向けるように設けられ得る。例えば、図4に関連して記述されるような4つの推力ユニットを含む推進装置の推力ユニットが正常に機能しない場合、正常に機能しないものとは反対側の推力ユニットは、この領域又は部分により、前記推進装置の平衡の維持を保証し得る。事実、機能状態にある推力ユニットのデフレクタ要素の複合的な作動及び配置によって、正又は負の推力が供給され得、従って推進装置の平衡が維持される。そのような反対推力角βは、第3部分がない場合に流体がたどる方向と、前記第3部分がある場合に前記流体がたどる方向とで定められ、乱流を最小限で発生させるために、概して5度と15度の間に含まれ、好ましくは10度である。この状況は、本発明に従って設けられたデフレクタ要素の使用によって生成された逆推力が、前述の従来技術によって明らかにされるような、推進装置の変位を遅くし又は大幅に変更する結果をもたらさないことを明確に示している。全くそれと反対に、本発明による技術的教示は、推力ユニットが部分的に正常に機能しなくても、上記の推力ユニットを含む推進装置の軌道及び飛行を確実に維持することを可能にし、従って前記推進装置の信頼性を高める。
【0077】
さらに、再び変形例として又は加えて、本発明による推進装置のための推力ユニットの性能を向上させるために、デフレクタ要素の横断面は実質的に「U」の形状を有し、デフレクタ要素306a、306bの幅La、Lbは排出ノズル302nの直径Dnの1倍と1.2倍の間に含まれ得る。最後に、再び変形例として又は加えて、どんな不必要な圧力損失も防止するために、本発明は、デフレクタ要素306a、306bの前縁の間の最大間隙距離が排出ノズル302nの直径Dnの1倍と1.3倍の間に含まれ得ることを提供する。デフレクタ要素306a、306bの前縁の間の最大間隙距離R1が実質的に直径Dnの1.3倍に等しいことで、推力ユニットの有効性を高めることが可能になる。そして、デフレクタ要素306a、306bは、エンジン302の流体排出軌道又は推力の実質的に外側に配置され、前記エンジン302、より大まかに推力ユニット300は、最大出力及び/又は推力を提供できる。しかし、それにより、前記推力ユニットによってもたらされる容積も増加する。
【0078】
その上、先に示されたように、そのような推力ユニットのデフレクタ要素は、本発明による推力ユニットの形状と無関係に、それに、一方でデフレクタ要素の作動の非常に高い応答性を与え、及び/又は他方でスラスタ又は推力エンジンの流体排出方向に関して正又は負の推力を供給しながら、互いに共同して又は無関係に作動され得る。従って、デフレクタ要素は同期的に作動され得、流れに対するそれらのそれぞれの動きはスラスタの流体排出方向に対して対称であり、又は、デフレクタ要素は非同期的に作動され得、前記デフレクタ要素はそれぞれの非対称な回転(又は流れの中で相対的な変位)を描き、2つのデフレクタ要素の1つは静止したままでさえあり得、その結果、前記スラスタの推力の分散は2つのデフレクタ要素によって釣り合うように行われない。このように、推力ユニットは推進装置の横方向の変位を引き起こすことを可能にする。流れの中におけるそれらのそれぞれの相対的な変位のため、2つのデフレクタ要素は、スラスタの推力を低減するのではなく、横方向の推力を引き起こす。2つのデフレクタ要素のそのような非同期的な操縦によって、推進装置の姿勢を傾けることを必要とせず、ヨーイングの非常に正確な制御だけでなく、前記推進装置の正確な横方向の、即ち「横に動く」変位も可能になり、推進装置は水平のままで横方向に又は自身を軸にして動き得る。
【0079】
相互的に、本発明による推力ユニットの前記デフレクタ要素の分離された又は非同期の作動によって、前記推進装置の着陸目標上での横方向の変位を引き起こすことなく、ピッチング及び/又はローリングしている船の甲板のような動く受台の動きに、例えば図4に示されるような推進装置の姿勢を適合又は従属させることが可能になる。従って、そのような推進装置の着陸又は着水はより容易で安全になる。1つの同じ推力ユニットのデフレクタ要素のそのような独立した制御は、従来技術からもたらされる教示との関連で特に特徴的である。
【0080】
先に明記されたような別の主題によれば、本発明は、台11と、1つ以上の推力ユニット300、12と、台11と一体的に協働し、前記推力ユニット300、12を保持及び支持するように設けられた支持手段14とを含む推進装置10に関する。有利に、推進装置の性能を高めるが、前記推進装置の容積、さらに燃料消費を減少させるために、前記推力ユニット300、12の1つは本発明によるものである。
【0081】
そのような推進装置は操縦において有用な支援をそのユーザに提供し得る。ただ、それは要求又は任意に特定の権限に基づいて解除され得る。本発明に従い、そのような推進装置に装備された、推力ユニットの1つ又は複数のスラスタだけでなく、推力ユニットのデフレクタ要素のアクチュエータも、前記推進装置によって描かれる軌道、姿勢、及び高度が、ユーザ、乗員、又は遠隔操縦者からの指示に応じて制御及び管理されるために、推進装置の1つ又は複数の推力ユニットの操縦処理を行う、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ、計算器、又はマイクロコントローラの形をした処理ユニットからのデジタル信号又は電気信号の助けを借りて操縦又は制御され得る。そのような方法の実施は、有利に、コンピュータプログラム製品の命令の解釈又は実行によって開始され得、その命令は予め処理ユニットのプログラムメモリにロードされ又は書き込まれている。その上、処理ユニットは、他の構成要素、例えばセンサ及び/又は1つ以上のヒューマンマシン命令インターフェースによって送られたデータを受け取ることを意図されたデータメモリを含み又はそれと協働し得る。その上、そのようなデータメモリは、推進装置を操縦するユーザに与えることが望まれる自由度を限定する1つ以上の設定パラメータを記録し得る。非限定的な例として、そのような設定パラメータは、前記推進装置を操縦する平均体重の乗員に関連する、例えば最大高度及び/又は推進速度の形をした基準系を定め得る。
【0082】
前記ユーザは、例えば決められた身振りによって、軌道又は高度を変更する要望を処理ユニットに通知し得る。これを行うために、推進装置は、遠隔制御の有利な形式のヒューマンマシン命令又は入力インターフェースを含み得る。公称の姿勢及び軌道に関連して推進装置の現在の姿勢及び/又は軌道を制御するために、処理ユニットは、有利に、有線又は無線手段によって、ジャイロスコープのような、1つ以上のセンサ、有利に1組のセンサと協働し得る。それにより、3軸上で、それが受ける加速及び磁界のために、本発明による推進装置の現在の空間的位置をそれぞれの瞬間に定めることが可能になる。そのような1組のセンサは、例えば飛行機に装備され、「Attitude and Heading Reference System」に対する頭字語AHRS、そうでなければ名称「慣性航法装置」によって知られるものに類似し得る。前記1組のセンサは、方向の変化を測定すること、又は垂直方向の基準を与えるために重力加速度を測定することを可能にする振動を使用する。従って、そのようなセンサは、推進装置によって描かれるローリング及び/又はピッチングの測定を提供する。本発明による推力ユニットの設計のために、推進装置の操縦は今までにない方法で正確で応答性の高いものになる。事実、そのような推進装置の1つ又は複数の推力ユニットは、スラスタの推力及び/又は向き自体が従来技術に従って操縦される場合の数秒ではなく、数百分の1秒で操縦指示に応答する。
【0083】
本発明は、概して垂直方向の推力を有する推進装置に関連した利用の観点から説明され、そのような推進装置は、任意に、前記推進装置上に乗った乗員、又は任意に推進装置が輸送するだろう物品の移動を保証し得る。しかし、本発明はこのたった1つの実施例に限定されるべきではない。変形例として、そのような推力ユニットは任意の型の推進装置と関連して使用され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【国際調査報告】