(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】中枢神経系障害を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220803BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220803BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20220803BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220803BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/255 20060101ALI20220803BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220803BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/00
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/40
A61K47/14
A61K47/10
A61K9/12
A61K31/255
A61K33/00
A61K9/10
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572548
(86)(22)【出願日】2020-05-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2020031217
(87)【国際公開番号】W WO2020247127
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521532525
【氏名又は名称】パックスメディカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タン, ホック セン
(72)【発明者】
【氏名】ダービー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ローム, ザッカリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
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4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA02
(57)【要約】
本発明は、認知、社会、または行動障害、および自閉症スペクトラム障害(ASD)などの神経発達障害ならびにその他の中枢神経系障害、例えば脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、慢性疲労症候群(CFS)、および心的外傷後ストレス症候群(PTSD)などを処置するための組成物および方法を提供する。本発明は、その患者の障害を処置するための治療有効量のスラミンなどの抗プリン作動薬の鼻腔内送達(IN)のための組成物および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に鼻腔内送達することを含む、認知、社会、または行動障害および神経発達障害を処置するための方法。
【請求項2】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、自閉症スペクトラム障害、FSX、FXTAS、CFS、およびPTSDから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、自閉症スペクトラム障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、FSXである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、FXTASである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、CFSである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記認知、社会、行動障害、または神経発達障害が、PTSDである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記自閉症スペクトラム障害が、コミュニケーション困難、他者との交流困難、および反復行動から選択される1またはそれを超える症候を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記薬学的に許容される塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩がナトリウム塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩が六ナトリウム塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が水性組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が粉末状組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が透過促進剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記透過促進剤が、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記透過促進剤がメチルβ-シクロデキストリンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記透過促進剤がカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記透過促進剤が2-(2-エトキシエトキシ)エタノールである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、少なくとも1日1回、または少なくとも1日2回、または少なくとも週1回、または少なくとも週2回、または少なくとも隔週(すなわち、2週間に1回)、または少なくとも月1回、または少なくとも4週間ごとに1回投与される、すなわち投薬される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が約41日~約78日ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が約50日ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物がスラミンの平均半減期に基づく時間間隔ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記患者のスラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて、約3マイクロモル濃度(μM)未満、または約2.75マイクロモル濃度未満、または約2.5マイクロモル濃度未満、または約2マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記患者のスラミンの脳組織内濃度が、約1ng/ml~約1000ng/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記患者のスラミンの脳組織内濃度が、少なくとも約1ng/ml、または少なくとも約10ng/ml、または少なくとも約50ng/ml、または少なくとも約100ng/ml、または少なくとも約250ng/ml、または少なくとも約500ng/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
スラミンの脳組織/血漿分配比が、少なくとも約0.05、または少なくとも約0.1、または少なくとも約0.25、または少なくとも約0.50である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約200mgのスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約100mg、または約0.01mg~約50mgのスラミン、または単位投与量あたり約0.01mg~約25mgのスラミン、または単位投与量あたり約0.01mg~約10mgのスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体重に基づいて、1週間あたり約0.1mg/kg~1週間あたり約20mg/kgのスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体重(質量)に基づいて、単位投与量あたり約0.025mg/kg~約10mg/kgのスラミンまたは単位投与量あたり約0.05mg/kg~約6mg/kgのスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体重(質量)に基づいて、単位投与量あたり約0.0476mg/kg~約5.720mg/kgのスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体重(質量)に基づいて、単位投与量あたり約1mg/kg未満のスラミン、または単位投与量あたり約0.5mg/kg未満のスラミン、または単位投与量あたり約0.25mg/kg未満のスラミン、または単位投与量あたり約0.1mg/kg未満のスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約400mg/m
2未満のスラミン、または単位投与量あたり約200mg/m
2未満のスラミン、または単位投与量あたり約100mg/m
2未満のスラミン、または単位投与量あたり約50mg/m
2未満のスラミン、または単位投与量あたり約25mg/m
2未満のスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、スラミン活性物質と前記患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約10mg/m
2~約300mg/m
2のスラミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記患者に対するスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約80μg
*日/L未満であるか、または約75μg
*日/L未満であるか、または約50μg
*日/L未満であるか、または約25μg
*日/L未満であるか、または約10μg
*日/L未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記患者に対するスラミン活性物質の血漿中濃度のC
maxが、単一用量に基づいて、約75マイクロモル濃度未満であるか、または約7.5マイクロモル濃度未満であるか、または約0.1マイクロモル濃度未満であり、必要に応じて少なくとも約0.01マイクロモル濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、鼻腔用スプレー、すなわち鼻腔内投与用のスプレーの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、単位投与量の形態であり、前記単位投与量が約0.01ml~約0.5mlの液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記単位投与量が約0.1mlの液体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、培養ヒト気道組織を通して、スラミン活性物質に基づいて、1時間あたり約1マイクログラム/cm
2~1時間あたり約200マイクログラム/cm
2のスラミンの透過速度を示す、すなわち提供可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、浸透圧制御のために選択された薬剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
浸透圧制御のために選択された薬剤が、例えば塩化ナトリウムなどの塩から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者の症候と比較して1またはそれを超える症候を改善することを含み、前記1またはそれを超える症候が、コミュニケーション困難、他者との交流困難、および反復行動から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置することが、前記投与前の前記患者のスコアと比較して、前記患者の評価スコアを改善することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記患者の前記評価スコアが、前記投与前の前記患者のスコアと比較して、10%またはそれを超えて改善される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記評価スコアが、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記患者のADOSスコアまたは同様の試験が、前記投与前のスコアと比較して1.6またはそれを超えて改善されるか、または同様の試験で対応する性能が改善される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ADOSスコアまたは同様の試験の改善のp値が0.05またはそれ未満である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記ADOSスコアまたは同様の試験の改善のサイズ効果が、約1以上または約2.9以上である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASを処置するための、鼻腔内送達のための医薬組成物であって、
(a)治療有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ、および
(b)透過促進剤
を含む、医薬組成物。
【請求項55】
(c)水をさらに含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記スラミンの濃度が約10mg/ml~約200mg/mlであり、前記透過促進剤の濃度が約25%~約50%、または約40重量%であり、水が適量である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記透過促進剤が、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記透過促進剤が、メチルβ-シクロデキストリン、またはカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、または2-(2-エトキシエトキシ)エタノールである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が、それを必要とするヒトに投与されると、前記患者における前記スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて、約3マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持される、請求項56に記載の組成物。
【請求項62】
処置を必要とする患者、例えばヒトにおいて自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するための、治療有効量のスラミンを鼻腔内送達するための医薬の製造における、抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用。
【請求項63】
前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
前記スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約3マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持される、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
抗プリン作動薬を含む組成物を投与するための鼻腔用スプレー吸入器を含む、自己投与および患者以外の個人による前記患者への投与から選択される投与を含む、前記患者への投与のための装置であって、前記装置が、処置を必要とする患者において自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するために一定量の前記抗プリン作動薬を分与させるように設計されている、装置。
【請求項66】
前記抗プリン作動薬が、溶液、乳濁液、または粉末から選択される組成物を含む、請求項65に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、認知、社会、または行動障害、および自閉症スペクトラム障害(ASD)などの神経発達障害ならびにその他の中枢神経系障害、例えば脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、慢性疲労症候群(CFS)、および心的外傷後ストレス症候群(PTSD)などを処置するための組成物および方法を提供する。本発明は、治療有効量の抗プリン作動薬、例えばスラミン、およびこれらの薬剤の薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグを送達するための組成物を提供する。薬剤は鼻腔内(IN)投与によって送達される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自閉症は遺伝的要因と環境要因の組み合わせに関連するものであり、米国での発生率は子供の約60人に1人の発生率であると報告されている。世界的には自閉症患者は約2,500万人と推定されている。自閉症は、自閉症スペクトラム障害(ASD)とも呼ばれる。これは、社会的スキル、反復行動、発話、非言語的コミュニケーションの課題を特徴とする幅広い症状が含まれるためである。2013年に、アメリカ精神医学会は4つの異なる自閉症の診断を単一の自閉症スペクトラム障害という診断に統合した。これらの診断には、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群が含まれる。自閉症の徴候は、通常、2歳または3歳までに現れる。自閉症スペクトラム障害は、脳の発達に関連する症状であり、人が他人をどのように認識して社交するかに影響を及ぼし、社会的相互作用およびコミュニケーションに問題を引き起こす。また、この障害には、限定的で反復的な行動パターンが含まれる場合もある。
【0003】
研究により、早期の介入が良い結果をもたらすことが明らかになっている。Chaste P,Leboyer M(2012).「Autism risk factors:genes,environment,and gene-environment interactions」.Dialogues in Clinical Neuroscience.14(3):281-92.PMC 3513682.PMID 23226953;およびCenters for Disease Control and Prevention Morbidity and Mortality Weekly Report,Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years-Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network,11 Sites,United States,2014 Surveillance Summaries/April 27,2018/67(6);1-23を参照されたい。
【0004】
現在、自閉症スペクトラム障害の治療法はなく、中心的な症候を処置するための米国FDA承認薬もない。代わりに行われるのは、抗精神病薬などのさまざまな薬物を使用して、付随する中心的でない症候のいくつかを処置することである。しばしば現れる症候には、うつ病、発作、不安神経症、睡眠障害、集中力の低下などがある。また、行動療法およびその他の薬理学的介入が用いられている。しかし、自閉症の正確な原因は完全には理解されておらず、そのことにより新薬の開発が困難になっている。
【0005】
脆弱X症候群(FXS)は、米国の男性および女性のおよそ4,000人に1人が罹患する、まれな遺伝性神経発達障害である。それは非常に変化しやすい認知的および行動的徴候に関連しており、ASDと重複する特徴が多い。これはX連鎖性障害であり、X染色体上で遺伝子変異が起こることを意味する。FXSでは、FMR1遺伝子に3塩基リピート伸長がある。三塩基伸長は、3つのヌクレオチド塩基対からなる配列が不適切に複数回繰り返される特定の種類の遺伝子変異である。FXSの場合、繰り返される3塩基配列はシトシン-グアニン-グアニン(CGG)である。通常、このDNAセグメントは、5から約40回繰り返される。FXSの人では、このセグメントは200回超繰り返される。この結果、一般に機能的なFMR1 mRNA転写物が生成されず、この転写物によって正常にコードされるタンパク質(脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP))も存在しない。
【0006】
脆弱X関連振戦/運動失調(FXTAS)は、FXSとは異なる障害であるが、遺伝的に関連している。これは「成人発症」のまれな遺伝性神経変性障害であり、通常50歳以上の男性が罹患する。女性はFXTAS人口のごく一部を占めており、その症候は軽い傾向にある。FXTASは神経系に影響を及ぼし、個人によって進行速度が異なる。
【0007】
FXS患者はFMR1遺伝子に「完全な変異」(通常200をはるかに超えるCGG3塩基リピート)を有するが、FXTASの患者は、CGG3塩基リピート数が55~200の範囲であるので、FMR1遺伝子の前変異の「保因者」と見なされる。FMR1遺伝子の仕事は、脳の発達に重要なタンパク質(FMRP)を作ることである。研究者は、(理由は不明であるが)前変異があると、FMR1 mRNA(伸長したリピートを含む)が過剰産生されると考えている。研究者はまた、高濃度のmRNAがFXTASの徴候および症候を引き起こす原因であると疑っているが、これらの仮説を裏付けるにはさらに研究が必要である。
【0008】
FXTASの患者は、通常、55歳以降に症候を経験する。前変異の保因者、特に男性が加齢するにつれて、症候を経験する可能性が高くなる。この可能性は、前変異の男性では75歳までに75%に達する。記憶喪失、発話の鈍化、振戦、および引きずり歩行をはじめとする症候は徐々に進行し、振戦および転倒による日常生活の妨害は、最初の症状の発症から約10年後に起こる。杖や歩行器への依存は、最初に障害の症候を示してから約15年後に起こる。FXTASの人の中には、急性疾患、大手術、またはその他の主要な日常生活のストレス要因によって症候がより急速に悪化する段階的進行(つまり、症候が一定期間横ばいであるが、その後突然悪化すること)を示す人もいる。
【0009】
FXTASの有病率は不明であるが、現在の推定では、すでに脆弱Xを有する人がいることがわかっている家族の中で、50歳超の男性FMR1前変異保因者の約30%~40%が最終的にFXTASの何らかの特徴を示すことが示唆されている。FXTASに対するFDA承認の治療法はなく、現在使用されている処置は、病態生理学自体を対象とするのではなく、症状の症候にのみ対処するものである。
【0010】
抗プリン作動薬は、プリン受容体に作用する化合物のファミリーを構成する。これらの受容体は、生体内に最も豊富にある受容体であり、進化の初期に出現し、細胞機能の調節に関与している。プリン受容体は、アデノシン三リン酸(ATP)またはアデノシンの放出への応答として、特定の種類の平滑筋の弛緩などのさまざまな生理学的機能を媒介する特定のクラスの膜受容体である。プリン受容体には、P1、P2X、およびP2Y受容体として知られる3つの既知の異なるクラスがある。また、プリン作動性シグナル伝達は、細胞外シグナル伝達の一形態である。このシグナル伝達は、プリンヌクレオチドと、アデノシンおよびATPなどのヌクレオシドによって媒介される。このシグナル伝達は、細胞内および/または近傍の細胞内のプリン受容体の活性化を伴い、それによって細胞機能を調節する。
【0011】
プリン受容体に影響を与える化合物が知られている。これらの1つは、1900年代初頭に最初に合成された化合物であるスラミンである。スラミンは、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)種の原生動物によって引き起こされ、より一般的にはアフリカ睡眠病として知られている寄生虫症であるトリパノソーマ症を処置するために使用される薬物である。この薬は、河川盲目症の処置にも使用される。スラミンは経口で生物学的に利用できないため、静脈への注射によって投与される。しかし、アフリカ睡眠病の処置に必要な用量では、スラミンは多くの副作用を引き起こす。これらの副作用には、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、および一般的な不快感が含まれる。その他の副作用には、蟻走感またはピリピリ感などの皮膚感覚、手のひらおよび足裏の圧痛、四肢のしびれ感、涙目、および羞明が含まれる。さらに、薬物が高用量で投与された場合の末梢神経障害と同様に、腎毒性がよく見られる。薬物動態に関して、スラミンは血清中でおよそ99~98%のタンパク質と結合し、半減期は41~78日であり、平均は50日である。また、スラミンは広範囲に代謝されず、腎臓で排除される。したがって、自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASなどの症状の処置としてスラミンをより効果的に使用するためには、脳組織への標的化送達を用いてスラミンの全身濃度を最小化することが望ましいであろう。
最近では、スラミンが自閉症スペクトラム障害のマウスモデルのいくつかの多系統の異常に影響を与えることが報告されている。また、自閉症スペクトラム障害と診断された少年を対象に、小規模なヒト試験が行われた。Antipurinergic Therapy Corrects the Autism-Like Features in the Poly(IC)Mouse Model Robert K.Naviaux,PLoS One.2013;8(3):e57380,2013年3月13日オンライン公開。doi:10.1371/journal.pone.0057380,PMCID:PMC3596371,PMID:23516405を参照されたい。また、2018年8月16日に公開のVaughnらへのPCT特許出願公開第WO2018/148580A1号も参照されたい。また、Naviaux、R.K.ら、’’Low-dose suramin in autism spectrum disorder:a small,phase I/II,randomized clinical trial’’,Annals of Clinical and Translational Neurology、2017年5月26日:4(7):491-505も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2018/148580A1号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Chaste P,Leboyer M(2012).「Autism risk factors:genes,environment,and gene-environment interactions」.Dialogues in Clinical Neuroscience.14(3):281-92.PMC 3513682.PMID 23226953
【非特許文献2】Centers for Disease Control and Prevention Morbidity and Mortality Weekly Report,Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years-Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network,11 Sites,United States,2014 Surveillance Summaries/April 27,2018/67(6);1-23
【非特許文献3】Antipurinergic Therapy Corrects the Autism-Like Features in the Poly(IC)Mouse Model Robert K.Naviaux,PLoS One.2013;8(3):e57380,2013年3月13日オンライン公開。doi:10.1371/journal.pone.0057380,PMCID:PMC3596371,PMID:23516405
【非特許文献4】Naviaux、R.K.ら、’’Low-dose suramin in autism spectrum disorder:a small,phase I/II,randomized clinical trial’’,Annals of Clinical and Translational Neurology、2017年5月26日:4(7):491-505
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述のことから、自閉症スペクトラム障害の処置は依然として困難であることが明らかである。初期の動物およびヒトの研究からの有望な結果にもかかわらず、自閉症を処置するためのスラミンなどの抗プリン作動薬の安全で効果的な送達を提供するために、多くの研究が依然として必要であることが認識されている。必要なことは、適切な濃度の薬剤を脳組織に送達しながら、血液および他の組織での濃度も最小限に抑えることである。しかし、ヒトを含むほとんどの哺乳動物の天然の保護機構である血液脳関門(「BBB」)を越えて薬物を送達することは困難である。血液脳関門は、内皮細胞の高度に選択的な半透性の境界であり、循環血液中の溶質がニューロンが存在する中枢神経系の細胞外液に非選択的に交差するのを防ぐ。血液脳関門を通過するこのような送達は、高い分子量の化合物ではさらに困難である。スラミンの分子量は、およそ1300g/molである。血液脳関門を通過する送達を最大化することを試みる経路は、鼻腔内送達を使用して、脳に近接した血流に薬物を入れることを目的として、鼻粘膜でより高い濃度の薬物を提供することである。
驚くべきことに、ある種の透過促進剤を用いると、抗プリン作動薬であるスラミンを安全かつ効果的に鼻腔内投与して、脳組織で適切な濃度の薬物を実現することができる可能性があることが本発明で見出された。具体的には、驚くべきことに、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどの透過促進剤が、粘膜組織の透過が改善された鼻腔内スラミン製剤の調製に特に有用であることが見出された。また、これらの組成物には、脳組織を標的にしながら、スラミン活性薬物の全身の血中濃度を最小限に抑えるというさらに予想外の利点もある。したがって、これらの組成物は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、慢性疲労症候群(CFS)、および心的外傷後ストレス症候群(PTSD)を含むがこれらに限定されない神経発達症状を処置するために有用であると思われる。
【0015】
発明の要旨
認知、社会、または行動障害、および神経発達障害、例えば自閉症スペクトラム障害、FSX、FXTAS、CFS、およびPTSDなどの処置のための方法および組成物について説明する。より具体的には、本発明は、治療有効量の抗プリン作動薬、例えばスラミンと、その薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグを含む、鼻腔内投与、すなわち鼻腔経路を介した送達のための組成物を提供する。有用な組成物の例は、治療上有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ、薬学的に許容される担体を含む鼻腔内投与用の組成物、および自閉症スペクトラム障害を処置するために治療上有効な濃度のスラミン活性物質を脳に送達するための透過補助剤を含む。これらの組成物は、脳組織を標的にしながらスラミンの全身濃度を最小限に抑えるため、潜在的な薬物毒性および望ましくない副作用を最小限に抑えるのに役立つと考えられている。
【0016】
本発明は、インビトロアッセイで測定されたスラミンの経粘膜透過が、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどのさまざまな透過促進剤を含む製剤から送達された場合に著しく高かったという驚くべき発見に基づいている。本発明の組成物は、マウスに投与すると、スラミンを脳組織に送達するのに効果的であることが見出され、脳組織/血漿分配比が実証された。これらの組成物は、全身濃度を約3マイクロモル濃度未満の血漿中濃度および約0.5マイクロモル濃度未満に最小化しながら、血液脳関門を越えて脳組織にスラミン活性物質を送達するように設計されている。
【0017】
本発明の方法は、単一用量の抗プリン作動薬の鼻腔内投与を含む方法によって達成することができる。あるいは、複数回用量をさまざまな処置レジメンに従って投与することができる。
【0018】
また、抗プリン作動薬のエアゾールスプレー組成物を含む鼻腔用スプレー吸入器を含む、抗プリン作動薬の患者投与または自己投与のための装置が本発明において提供される。この組成物は、抗プリン作動薬と薬学的に許容される分散剤または溶媒系を含むことができ、装置は、抗プリン作動薬の用量を含むスプレーを形成することにより、一定量のエアゾール製剤を分与させるように設計されている(あるいは計量されている)。他の実施形態では、吸入器は、抗プリン作動薬を微粉末として、さらに粒子状の分散剤および希釈剤と組み合わせて、あるいは分散剤の粒子内に組み込むため、または粒子状の分散剤をコーティングするために抗プリン作動薬を組み合わせて含むことができる。
【0019】
本発明は、治療有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に鼻腔内送達することを含む、認知、社会、または行動障害を処置するための方法を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、患者がヒトである方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害が、自閉症スペクトラム障害、FSX、FXTAS、CFS、およびPTSDから選択される方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害が自閉症スペクトラム障害である方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害がFSXである方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害がFXTASである方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害がCFSである方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、認知、社会、もしくは行動障害または神経発達障害がPTSDである方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩から選択される方法を提供する。
【0029】
別の態様では、本発明は、前記塩がナトリウム塩である方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、前記塩が六ナトリウム塩である方法を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、前記組成物が水性組成物である方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、前記組成物が透過促進剤をさらに含む方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、前記透過促進剤が、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、およびそれらの組合せからなる群から選択される方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、前記透過促進剤がメチルβ-シクロデキストリンである方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、前記透過促進剤がカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドである方法を提供する。
【0036】
別の態様では、本発明は、前記透過促進剤が2-(2-エトキシエトキシ)エタノールである方法を提供する。
【0037】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも1日1回は投与される方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも1日2回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも週に2回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0040】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも週に1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも隔週に1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、前記組成物が少なくとも月1回、または少なくとも4週間に1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、前記組成物が約41日~約78日ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、前記組成物が約50日ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、前記組成物がスラミンの平均半減期に基づく間隔ごとに少なくとも1回は送達される、すなわち投薬される方法を提供する。
【0046】
別の態様では、本発明は、スラミンの量が、1297.26グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を使用して、スラミン有効成分(すなわち、化学物質)に基づいている方法および組成物を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、患者におけるスラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約3マイクロモル濃度(μM)未満に維持される方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約2.75マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約2.5マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約2マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約1マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約0.5マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が約1ng/ml~約1000ng/mlである方法を提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約1ng/mlである方法を提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約10ng/mlである方法を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約50ng/mlである方法を提供する。
【0057】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約100ng/mlである方法を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約250ng/mlである方法を提供する。
【0059】
別の態様では、本発明は、スラミンの脳組織内濃度が少なくとも約500ng/mlである方法を提供する。
別の態様では、本発明は、脳組織/血漿分配比が少なくとも約0.05である方法を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、脳組織/血漿分配比が少なくとも約0.1である方法を提供する。
【0061】
別の態様では、本発明は、脳組織/血漿分配比が少なくとも約0.25である方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本発明は、脳組織/血漿分配比が少なくとも約0.50である方法を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約200mgのスラミンを含む方法を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約100mgのスラミンを含む方法を提供する。
【0065】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約50mgのスラミンを含む方法を提供する。
【0066】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約25mgのスラミンを含む方法を提供する。
【0067】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質に基づいて、単位投与量あたり約0.01mg~約10mgのスラミンを含む方法を提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、1週間あたり約0.1mg/kg~約20mg/kgのスラミンを含む方法を提供する。
【0069】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約0.025mg/kg~約10mg/kgのスラミンを含む方法を提供する。
【0070】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約0.05mg/kg~約6mg/kgのスラミンを含む方法を提供する。
【0071】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重(質量)に基づいて、単位投与量あたり約0.0476mg/kg~約5.720mg/kgのスラミンを含む方法を提供する。
【0072】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約1mg/kg未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約0.5mg/kg未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0074】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約0.25mg/kg未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体重に基づいて、単位投与量あたり約0.1mg/kg未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約400mg/m2未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0077】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約200mg/m2未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0078】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約100mg/m2未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0079】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約50mg/m2未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0080】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約25mg/m2未満のスラミンを含む方法を提供する。
【0081】
別の態様では、本発明は、組成物が、スラミン活性物質と患者の体表面積(BSA)に基づいて、単位投与量あたり約10mg/m2~約300mg/m2のスラミンを含む方法を提供する。
【0082】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約80μg*日/L未満である方法を提供する。
【0083】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約75μg*日/L未満である方法を提供する。
【0084】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約50μg*日/L未満である方法を提供する。
【0085】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約25μg*日/L未満である方法を提供する。
【0086】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のAUCが、約10μg*日/L未満である方法を提供する。
【0087】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のCmaxが、薬物組成物の用量あたり約75マイクロモル濃度未満である方法を提供する。
【0088】
別の態様では、本発明は、患者にスラミン活性物質の血漿中濃度のCmaxが、薬物組成物の用量あたり約7.5マイクロモル濃度未満である方法を提供する。
【0089】
別の態様では、本発明は、患者に対して活性のあるスラミンの血漿中濃度のCmaxが、約0.1マイクロモル濃度未満である方法を提供する。最小のCmaxは存在しないが、その量は一般に薬物組成物の用量あたり約0.01マイクロモル濃度以上であり得る。
【0090】
別の態様では、本発明は、前記組成物が、鼻腔用スプレー、すなわち鼻腔内投与用のスプレーの形態である方法を提供する。
【0091】
別の態様では、本発明は、各単位投与量が、約0.01ml~約0.5mlの液体を含む方法を提供する。
【0092】
別の態様では、本発明は、各単位投与量が、約0.1mlの液体を含む方法を提供する。
【0093】
別の態様では、本発明は、組成物が、培養ヒト気道組織を通して、スラミン活性物質に基づいて、1時間あたり約1マイクログラム/cm2~1時間あたり約200マイクログラム/cm2のスラミンの透過速度を示す、すなわち提供可能である方法を提供する。
【0094】
別の態様では、本発明は、組成物が、浸透圧制御のために選択された薬剤をさらに含む方法を提供する。
【0095】
別の態様では、本発明は、組成物が浸透圧制御のために選択された薬剤をさらに含み、前記薬剤が、例えば塩化ナトリウムなどの塩から選択される方法を提供する。
【0096】
別の態様では、本発明は、組成物が増粘剤をさらに含む方法を提供する。
【0097】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群からなる群から選択される方法を提供する。
【0098】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、コミュニケーション困難、他者との交流困難、および反復行動から選択される1またはそれを超える症候を含む方法を提供する。
【0099】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置することが、前記投与前の前記患者の症候と比較して1またはそれを超える(more or more)症候を改善することを含み、前記1またはそれを超える症候が、コミュニケーション困難、他者との交流困難、および反復行動から選択される方法を提供する。
【0100】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置することが、前記投与前の前記患者のスコアと比較して、前記患者の評価スコアを改善することを含む方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本発明は、前記患者の評価スコアが、前記投与前の前記患者のスコアと比較して、10%またはそれを超えて改善される方法を提供する。
【0102】
別の態様では、本発明は、評価スコアが、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択される方法を提供する。
【0103】
別の態様では、本発明は、患者のADOSスコアが、前記投与前のスコアと比較して1.6またはそれを超えて改善されるか、または同様の試験で対応する性能が改善される方法を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、前記ADOSスコアまたは同様の試験の改善のp値が0.05またはそれ未満である方法を提供する。
【0105】
別の態様では、本発明は、前記ADOSスコアまたは同様の試験の改善のサイズ効果が約1またはそれを超えている方法を提供する。
【0106】
別の態様では、本発明は、前記ADOSスコアまたは同様の試験の改善のサイズ効果が約2.9またはそれを超えている方法を提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、治療有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とするヒトに投与することを含む、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するための方法であって、抗プリン作動薬の血漿中濃度が、約3マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持される方法を提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、以下を含む、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するための鼻腔内送達医薬組成物を提供する:
(a)治療有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ、および
(b)透過促進剤。
【0109】
別の態様では、本発明は、(c)水をさらに含む組成物を提供する。
【0110】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである組成物を提供する。
【0111】
別の態様では、本発明は、組成物が、それを必要とするヒトに投与されると、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約3マイクロモル濃度未満に維持されるような組成物を提供する。
【0112】
別の態様では、本発明は、組成物が、それを必要とするヒトに投与されると、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持されるような組成物を提供する。
【0113】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする患者、例えばヒトにおいて自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するための、治療有効量のスラミンの鼻腔内送達のための医薬の製造における、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0114】
別の態様では、本発明は、スラミンの血漿中濃度が、スラミン活性物質に基づいて約3マイクロモル濃度未満、または約1マイクロモル濃度未満、または約0.5マイクロモル濃度未満に維持されるような使用を提供する。
【0115】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬を含む組成物を投与するための鼻腔用スプレー吸入器を含む、自己投与および患者以外の個人による患者への投与から選択される投与を含む、患者への投与のための装置を提供し、この装置は、処置を必要とする患者において自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置するために一定量の抗プリン作動薬を分与させるように設計されている(あるいは計量されている)。
【0116】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、溶液、乳濁液、または粉末から選択される組成物を含む装置を提供する。
【0117】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】
図1は、3種類の異なる透過促進剤を含む水性スラミン組成物と、透過促進剤を含まない対照組成物の累積薬物透過量(mg)の、時間(時間)に対するプロットを示す。
【0119】
【
図2】
図2は、5種類の異なる透過促進剤を含む水性スラミン組成物と、透過促進剤を含まない対照組成物の累積薬物透過量(mg)の、時間(時間)に対するプロットを示す。
【0120】
【
図3】
図3は、マウスに週1回、20mg/kgの腹腔内(IP)注射を9週齢から4週間継続して投与した場合(すなわち、9、10、11および12週齢時に投与)の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)のプロットを示す。
【0121】
【
図4】
図4は、28日間毎日鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から28日間(28日の間に合計56回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0122】
【
図5】
図5は、28日間、2日に1回、鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、2日に1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から28日間(28日の間に合計28回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0123】
【
図6】
図6は、4週間にわたって週1回鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織内のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。 INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、週1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から4週間(28日間)(28日の間に合計8回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0124】
【
図7】
図7は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの血漿中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0125】
【
図8】
図8は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの脳組織中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0126】
【
図9】
図9は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの血漿中と脳組織中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0127】
【
図10】
図10は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスにけるスラミンの脳組織と血漿の分配比を比較したプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0128】
定義
本明細書において使用される場合、以下の用語および略語は、それとは反対の意味が明示的に述べられていない限り、示された意味を有する。
【0129】
本明細書で使用される「ABC」という用語は、「異常行動チェックリスト」として知られている、自閉症を評価するための評価尺度である。
【0130】
本明細書で使用される「ADOS」という用語は、「自閉症診断観察スケジュール」としても知られており、自閉症を診断および評価するための手段である。プロトコールは、試験者と評価対象者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクで構成されている。
【0131】
本明細書で使用される「ATEC」という用語は、「自閉症治療評価尺度」としても知られており、自閉症研究所で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは本来、自閉症処置の有効性を評価するためにデザインされたものであるが、スクリーニングツールとしても使用されている。
【0132】
「曲線下面積」としても知られている、本明細書で使用される「AUC」という用語は、薬理学、特に薬物動態学で標準的な用語である。この用語は、血漿中の薬物濃度の変化を時間の関数として表す曲線の定積分を指す。実際には、薬物濃度は特定の個別の時点で測定され、台形公式を使用してAUCが推定される。AUCはバイオアベイラビリティの尺度を与え、全身に吸収された薬物の割合を指す。これを知っていると、薬物のクリアランスを決定することもできる。AUCは、ある用量の薬物の投与後の薬物に対する実際の身体の曝露を反映し、通常はmg*h/Lまたはμg*h/Lで表される(「h」は時間を表す)。あるいは、AUCは、mg*日/Lまたはμg*日/Lで表すことができる。
【0133】
本明細書で使用される「スラミン活性物質に基づいて」という用語は、1297.26グラム/モルのスラミン分子量(すなわち、モル質量)に基づいてスラミンの量を決定または計算するための基準を提供することを意味する。これは、スラミンが例えば1429.15グラム/モルの分子量(すなわちモル質量)を有する六ナトリウム塩など、異なる総分子量を有する塩または他の形態として送達される場合のスラミンの量を決定するための重要な考慮事項である。
【0134】
本明細書で使用される「CARS」という用語は、「小児自閉症評価尺度」としても知られる、自閉症の診断および評価を助けることを目的とする行動評価尺度である。
【0135】
本明細書で使用される「CFS」という用語は、「慢性疲労症候群」としても公知である。
【0136】
本明細書で使用される「CGI」という用語は、「臨床全般印象度」評価尺度としても知られており、心理的障害をもつ患者の処置研究における症候の重症度、処置反応および処置の有効性の尺度である。
【0137】
本明細書で使用される「Cmax」という用語は、薬物が投与された後、2回目の用量が投与される前に、身体の特定の区画または試験領域で薬物が達成する最大(またはピーク)血清濃度を定義するための薬理学、特に薬物動態学における標準的な用語である。
【0138】
本明細書で使用される「FXS」という用語は、脆弱X症候群を意味する。
【0139】
本明細書で使用される「FXTAS」という用語は、脆弱X関連振戦/運動失調症候群を意味する。
【0140】
本明細書において使用される「IN」という用語は、鼻腔内を意味する。
【0141】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書では、本発明の組成物、すなわち製剤に関して、また、スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグに関して使用される。本発明の医薬組成物は、治療有効量のスラミンと、薬学的に許容される担体を含む。これらの担体は、広範囲の賦形剤を含むことができる。薬学的に許容される担体は、許容される安全性プロファイルを有する従来より公知の担体である。組成物は、一般的な製剤技術を使用して作られている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,edited by Alfonso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA,17th edition,1985を参照されたい。薬学的に許容される塩に関して、これらは以下に記載されている。
【0142】
本明細書で使用される「PTSD」という用語は、「心的外傷後ストレス症候群」としても知られている。
【0143】
本明細書で使用される「SRS」という用語は、本明細書で使用される「対人応答性尺度」としても知られており、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
【0144】
「被験体」という用語は、自閉症スペクトラム障害の処置または介入を必要とするヒト患者または動物を意味する。
【0145】
「治療上有効」という用語は、処置を必要とするヒト患者などの被験体に、医師が理解する、有意義なまたは実証可能な利益を提供するために必要なスラミンの量を意味する。処置の対象となる症状には、例えば、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群が含まれる。例えば、有意義なまたは実証可能な利益は、さまざまな臨床パラメータを用いて評価するかまたは定量化することができる。利益の実証には、限定されるものではないが、インビトロモデル、インビボモデル、および動物モデルを含むモデルによって提供されるものも含まれ得る。そのようなインビトロモデルの例は、鼻粘膜の透過をシミュレートするために、培養ヒト気道組織(EpiAirway AIR-100)を使用して試験された活性薬物の透過である。
【0146】
医薬組成物およびその中の活性物質に関して本明細書において使用される「鼻腔内」(「IN」)という用語は、鼻腔内の粘膜を横切って送達するために鼻を通して投与される組成物を意味する。この膜は、よく血管形成された薄い粘膜である。さらに、この粘膜は脳に非常に近接しており、血液脳関門を通過する薬物の輸送を最大にする手段を提供する。血液脳関門は、脳からの循環血液を中枢神経系の細胞外液から分離する、選択性の高い半透性の境界である。治療薬を脳の特定の領域に送達することは、多くの脳障害の処置に課題を提示する。経粘膜投与は、局所投与および経皮投与とは異なることに留意する必要があろう。米国食品医薬品局は、薬物の幅広い投与経路、すなわち「投与経路」の基準を提供している。例えば、副鼻腔内、脳内、鼻腔内、経鼻、局所、経皮、および経粘膜の薬物投与経路について、以下の定義がFDAによって提供されている。本発明において有用な投与経路は、鼻粘膜を介した経粘膜送達も意図されることを認識し、副鼻腔内、鼻腔内、および鼻腔内が含まれる。これらの投与経路は、肺および気管支に薬物を送達することを目的とする吸入とは区別される。例えば、活性薬物を鼻腔内に投与するための方法および組成物の例を開示している、2014年7月22日に発行されたCharneyらに対する米国特許第8,785,500号を参照されたい。
【表4】
*米国国立癌研究所
https://www.fda.gov/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/FormsSubmissionRequirements/ElectronicSubmissions/DataStandardsManualmonographs/ucm071667.htmを参照されたい。
【0147】
本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語には、予防的および/または治療的のいずれかの、症状、例えば自閉症および他の中枢神経系障害の緩和、軽減または改善、あるいは症状に罹患するリスクもしくは症状の症候を示すリスクの予防または低減、症候の根本原因の寛解または予防、症状の抑制、症状の発生の阻止、症状の緩和、症状の退行の誘発、あるいは症状の症候の停止が含まれる。
【0148】
さまざまな実施形態におけるスラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは本発明の医薬組成物を使用する処置方法はまた、例えば自閉症スペクトラム障害などの所望の処置のための医薬の製造における、スラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用も含む。
【0149】
スラミン
本発明は、治療有効量の抗プリン作動薬スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ、透過促進剤、また、薬学的に許容される担体を、自閉症スペクトラム障害を処置するための鼻腔内投与を提供するために利用する。
【0150】
スラミンはスルホン酸の薬剤化合物であり、CAS登録番号145-63-1およびChemSpider ID5168に対応している。スラミンの化学名の1つは、1,3,5-ナフタレントリスルホン酸、8,8’-[カルボニルビス[イミノ-3,1-フェニレンカルボニルイミノ(4-メチル-3,1-フェニレン)カルボニルイミノ]]ビス-である。この化合物は、アフリカ睡眠病および河川盲目症を処置するために使用される薬剤であり、Antrypol、309F、309 Fourneau、Bayer205、Germanin、Moranyl、Naganin、およびNaganineという商品名で公知である。しかし、この薬物は米国FDAに承認されていない。この薬物は、静脈注射によって投与される。スラミンは、自閉症のマウスモデルおよび第I/II相ヒト試験で研究されたことが報告されている。Naviaux,J.C.ら、’’Reversal of autism-like behaviors and metabolism in adult mice with single-dose antipurinergic therapy’’.Translational Psychiatry.4(6):e400(2014)を参照されたい。また、Naviaux,R.K.ら、’’Low-dose suramin in autism spectrum disorder:a small,phase I/II,randomized clinical trial’’,Annals of Clinical and Translational Neurology,2017 May26:4(7):491-505も参照されたい。
【0151】
スラミンの半減期は約41日~78日の間で、平均は50日と報告されている。Phillips,Margaret A.;Stanley,Jr,Samuel L.(2011).’’Chapter 50:Chemotherapy of Protozoal Infections:Amebiasis,Giardiasis,Trichomoniasis,Trypanosomiasis,Leishmaniasis,and Other Protozoal Infections’’.In Brunton,Laurence L.Chabner,Bruce A.;Knollmann,Bjorn Christian(eds.).Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(12th ed.).McGraw Hill.pp.1437-1438を参照されたい。
【0152】
スラミンの化学式は、C
51H
40N
6O
23S
6である。したがって、スラミンの分子量(すなわち、モル質量)は1297.26グラム/モルである。スラミンは、通常、分子量(すなわちモル質量)が1429.15グラム/モルである六ナトリウム塩などのスルホン酸ナトリウム塩として送達される。なお、これらの分子量値は、どのような原子量値を計算に用いるかによって少し変動することになる。スラミンの化学構造を直下に示す。
【化1】
【0153】
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物に有用である。本明細書において、「薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグ」とは、スラミンの誘導体をさす。薬学的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。アンモニウム塩、NH4+それ自体を調製することができるほか、様々なモノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、およびテトラアルキルアンモニウム塩を調製することができる。また、そのようなアンモニウム塩の1またはそれを超えるアルキル基を、ヒドロキシ基などの基でさらに置換して、アルカノールアミンのアンモニウム塩を得ることができる。1,2-ジアミノエタンなどのジアミンに由来するアンモニウム塩が本明細書で検討されている。スラミンの六ナトリウム塩が本明細書では有用である。
【0154】
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。一般に、塩は、化合物の遊離酸形態を化学量論的量の適切な塩基と水中または有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。スラミンのエステルは、親化合物をアルコールと反応させ、反応から形成された水を除去することによって調製することができる。あるいは、他の方法を使用することもできる。スラミンのスルホン酸基の1つから6つすべてまでをどこでもエステル化して、モノエステルからヘキサエステルまでを形成することできる。これらのエステルの例としては、メシル酸塩(メタンスルホン酸塩)、CH3SO3-;トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸塩)、CF3SO3-;エタンスルホン酸塩(エシラート(esilate)、エシラート(esylate))、C2H5SO3-;トシレート(p-トルエンスルホン酸塩)、CH3C6H4SO3-;ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、C6H5SO3-;クロシレート(closilate)(クロシレート(closylate)、クロロベンゼンスルホン酸塩)、ClC6H4SO3-;カンファースルホン酸塩(カンシル酸塩(camsilate)、カンシル酸塩(camsylate))、(C10H15O)SO3-;ピプシレート(p-ヨードベンゼンスルホン酸塩誘導体);およびノシラート(p-ニトロベンゼンスルホン酸塩誘導体(derivate))が挙げられる。
【0155】
スラミンの溶媒和物とは、1またはそれを超える溶媒分子が1またはそれを超えるスラミン分子と会合していることを意味し、それには例えば0.5溶媒和物および2.5溶媒和物などの画分溶媒和物が含まれる。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。スラミンのプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を使用して調製することができる。プロドラッグは、投与後に代謝され(すなわち、体内で変換され)て、薬理学的に活性な薬物になる薬物または化合物である。プロドラッグは、薬物自体の胃腸管からの吸収が不十分な場合に、バイオアベイラビリティを向上させるように設計することができる。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与されると、インビボで本発明の活性な親薬物を放出する、共有結合した担体を含むことを目的としている。いくつかの分類では、エステルは、本明細書に記載されるスラミンのエステルなどのプロドラッグと見なされる。他の種類のプロドラッグには、スルホンアミド誘導体および無水物が含まれ得る。
【0156】
さらに、さまざまなエステルおよびプロドラッグは、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)誘導体および混合誘導体を作製するためのさらなる誘導体化を含むことができ、その例はペグ化誘導体である。
【0157】
投与量
アフリカ睡眠病を処置するために、スラミンは一般に処置レジメンに従って、20mg/kgの薬物を3~7日ごとに5回、合計4週間にわたって静脈内注射で投与される。アフリカ睡眠病処置するためのこのスラミンの投与量が比較的高いことと、処置レジメンが比較的頻繁な投薬を必要とすることは、どちらも薬物毒性と有害反応を引き起こす可能性があることに注意されたい。このような毒性と有害反応の可能性は、急性で生命を脅かす可能性のあるアフリカ睡眠病と比較して、特に小児において、自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTASなどの症状の処置にはあまり許容されない。
【0158】
自閉症スペクトル障害を処置するための本発明の場合、投与される組成物中のスラミンの投与量は、スラミン活性物質に基づいて、1用量あたり約0.01mgから約200mgの範囲、または1用量あたり約0.01mgから約100mg、例えば鼻腔用スプレーの用量などであり、投与される各スプレー用量は、約0.1mlの液体を含むであろう。
【0159】
組成物は、重量を基準に決定することもできる。一実施形態では、ここで有用な組成物は、スラミン活性物質の重量に基づいて、約0.01%から約60重量%のスラミンまたはその薬学的な塩、エステル、溶媒和物またはプロドラッグを含む。もう一つの実施形態では、ここでのこれらの組成物は、スラミン活性物質の重量に基づいて、約0.1%から約25重量%のスラミンまたはその薬学的な塩、エステル、溶媒和物またはプロドラッグを含む。
【0160】
指定された量もしくは重量百分率のスラミンを含むこれらの前述の組成物について、スラミンの量もしくは重量百分率は、スラミン部分の実際の量に基づいて決定または計算され、1297.26グラム/モルのモル質量を有し、スラミン塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグが使用される場合に対イオン、またはエステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ部分によって与えられる追加の重量を含まない。言い換えれば、組成物は、スラミン化学部分の量または重量百分率に基づいている。
【0161】
さらに、本発明は鼻腔内送達組成物に関連するので、全身曝露を制限することは非常に望ましいため、単位投与量は、スラミンの全身血漿中濃度を制限するように製剤化され得る。一般に、スラミン血漿中濃度を約3マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿中濃度を約2マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿中濃度を約1マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿中濃度を約0.1マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿中濃度を約0.05マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。さらなる実施形態では、スラミン血漿中濃度を約0.01マイクロモル濃度未満の濃度に維持することが望ましいであろう。適切な脳の血中濃度および組織内濃度が維持されている限り、スラミンの最小の全身血漿中濃度は必要ではないかもしれないが、一般に、スラミンの血漿中濃度は約1ナノモルよりも大きいことが望ましい場合がある。
【0162】
さらに、本発明は鼻腔内組成物および処置方法に関連するため、薬物毒性および望ましくない副作用の可能性を最小限に抑え、適切な安全ウィンドウを維持するために、スラミンの全身曝露を制限することが非常に望ましい。全身濃度のこの制限は、PK/PDプロファイルを制御することで達成することができる。一部の実施形態では、単位投与量は、その単位投与量の送達について、以下の血漿薬物動態パラメータの少なくとも1つを証明するべきである:Cmaxが約75マイクロモル濃度(すなわち、μM)未満、または約7.5マイクロモル濃度未満、または約0.1マイクロモル濃度未満、あるいはAUCが約80μg*日/L未満、または約75μg*日/L未満、または約50μg*日/L未満、または約25μg*日/L未満、または約10μg*日/L未満。Cmaxは、少なくとも約0.01マイクロモル濃度以上であり得る。Cmax値は、マイクロモル濃度からng/mlに変換することができ(1297.26グラム/モルの分子量を使用して、スラミン活性物質に基づく)、これは1マイクロモル濃度が1297.26ng/mlに相当することを意味する。六ナトリウム塩に基づく量が必要な場合は、1429.15グラム/モルの値を変換計算に使用することができる。
【0163】
処置の方法および投薬レジメン
本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、またはFXTAS、および他の神経学的症状を処置するために、治療有効量のスラミンまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を利用する。
【0164】
この方法は、治療有効量のスラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、またはプロドラッグを、それを必要とするヒト患者に経鼻投与することを含む。
【0165】
医師または他の開業医の技術と知識に基づいて、さまざまな投薬レジメンを処方し、使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の単位投与量は、少なくとも1日1回適用することができる。他の実施形態では、組成物の単位投与量は、少なくとも1日2回、または少なくとも週1回、または少なくとも週2回適用することができる。スラミンの薬物動態学的および薬力学的パラメータに基づいて、投薬量および投薬レジメンを適切に変化させることができる。スラミンは血清中で約99~98%のタンパク質と結合し、半減期は41~78日であり、平均は50日である。
【0166】
治療は、所望の治療効果が得られるまで、医師または開業医の判断で継続することができる。場合によっては、長期または維持治療を継続することが望ましい場合がある。
【0167】
処置の評価
本発明は、前記自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDが、コミュニケーション困難、他者との交流困難、破壊的で反復的な行動から選択される1またはそれを超える症候を含む方法を提供する。自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFS、またはPTSDの患者は、障害の重症度のレベルと、処置の投与による改善または変化を判断するために、さまざまな評価尺度を使用して評価することができる。
【0168】
例えば、本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFSまたはPTSDを処置することが、治療前の症候と比較して、患者のますます多くの症候を改善することを含む方法を提供する。改善は、患者の症候の評価スコアを、前記投与前の患者の症候のスコアと比較することによって決定することができる。処置の投与の前に、患者のスコアと比較して10%またはそれを超える改善をもたらすことが望ましい。
【0169】
自閉症スペクトラム障害を評価するための評価尺度の例には、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI、およびSRSから選択されたものが含まれる。
【0170】
「ABC」という用語は、「異常行動チェックリスト」として知られている、自閉症を評価するための評価尺度である。「ADOS」という用語は、「自閉症診断観察スケジュール」としても知られている。プロトコールは、試験者と評価対象者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクで構成されている。「ATEC」という用語は、「自閉症治療評価尺度」としても知られており、自閉症研究所で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは本来、自閉症処置の有効性を評価するためにデザインされたものであるが、スクリーニングツールとしても使用されている。「CARS」という用語は、「小児自閉症評価尺度」としても知られる、自閉症の診断および評価を助けることを目的とする行動評価尺度である。「CGI」という用語は、「臨床全般印象度」評価尺度としても知られており、心理的障害をもつ患者の処置研究における症候の重症度、処置反応および処置の有効性の尺度である。「SRS」という用語は、本明細書で使用される「対人応答性尺度」としても知られており、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
【0171】
例えば、本発明は、患者のADOSスコアが、処置投与前のスコアと比較して1.6またはそれを超えて改善されるか、または同様の試験で対応する性能が改善される方法を提供する。さらに、本発明は、ADOSスコアまたは同様の試験の改善のp値が0.05またはそれ未満である方法を提供する。別の態様では、本発明は、ADOSスコアまたは同様の試験の改善のサイズ効果が約1またはそれを超えているか、または約2.9またはそれを超えている方法を提供する。
【0172】
鼻腔内投与および透過促進剤のための製剤
本発明の組成物の標的適応症は、自閉症、FXS、FXTAS、および他の中枢神経系疾患に関連している。そのため、血液脳関門を通過することで脳領域に容易に到達することができる製剤を提供するための努力が払われている。実現可能な投与経路は、経鼻薬物送達システム、すなわち鼻腔内(IN)製剤スプレーによる鼻腔を介した送達である。
【0173】
鼻腔内送達に有用な組成物は、鼻腔用スプレーの形態であり得る。これらの組成物は、水性組成物の形態で活性を有することができる。他の実施形態では、活性剤は微粉末であり得、さらに粒子状分散剤および希釈剤と組み合わせて、または代替的に組み合わせて粒子状分散剤を形成またはコーティングすることができる。これらの組成物は、一般に、約0.01mlから約0.5mlのオーダーであり、目標体積はスプレーあたり約0.1mlである。1~2回のスプレーを適用することで、単位投与量を提供することができる。
【0174】
本明細書の医薬組成物は、透過促進剤を含むことができる。驚くべきことに、次の透過促進剤がスラミンの経粘膜組織透過を増加させることが見出された:メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノール。材料のメチルβ-シクロデキストリン(メチル-β-シクロデキストリン)は、CAS登録番号128446-36-6および商品名メチルベータデクスでも知られている。材料のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドは、CAS登録番号85536-07-8、および商品名Labrasol(登録商標)により、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドおよびPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドとしても知られている。材料の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、CAS登録番号111-90-0、および商品名Carbitol(商標)およびTranscutol(登録商標)Pによってジエチレングリコールエチルエーテルとしても知られている。
【0175】
透過促進剤は、一般に、組成物の約40重量%で使用される。他の有用な範囲は、組成物の約0.1%から約90重量%、または組成物の約1%から約80重量%、または組成物の約10%から約75重量%、または組成物の約25%から約50重量%である。
【0176】
組成物中の水は通常QSである。略語QSはQuantum satisの略であり、目的の結果を達成するために、成分(この場合は水)を必要なだけ加えるが、それ以上は加えないという意味である。
【0177】
他の成分には、浸透圧制御のためのさまざまな塩および増粘剤を含めることができる。
【0178】
一部の実施形態では、組成物は、以下の機能性成分を含むことができる:
1.有効成分:スラミン、濃度10~200mg/mL
2.溶媒/担体、例えば水
3.組織透過促進剤
4.1つまたは複数の防腐剤
5.スプレー溶液の粘度を変更するための増粘剤、および
6.緩衝剤(pH調整剤)または浸透圧剤。
【0179】
これらの製剤は、製薬および製剤分野の当業者によく知られている標準的な製剤および混合技術を使用して作製することができる。
【0180】
一実施形態では、本発明の組成物または製剤は、スラミンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ、および薬学的に許容される担体を含む。これらの製剤は、製薬および製剤分野の当業者によく知られている標準的な製剤および混合技術を使用して作製することができる。
【0181】
一態様では、医薬組成物は、スプレーまたはエアロゾルとして投与するための溶液、懸濁液、または分散液から選択される。他の態様では、製剤は、スポイトによって液滴として送達されるか、または鼻腔に直接適用され得る。他の医薬組成物は、鼻腔に塗布されるゲル、軟膏、ローション、乳濁液、クリーム、泡、ムース、液体、ペースト、ゼリー、またはテープからなる群から選択される。
【0182】
本明細書において有用なのは、薬学的に許容される担体が、水または水と他の水混和性成分との混合物から選択される組成物である。乳濁液の場合、成分は水と混和性である必要はない。
【0183】
他の実施形態では、組成物は、薬物製剤のpHを維持するための緩衝液、薬学的に許容される増粘剤、保水剤および界面活性剤を含むことができる。本発明での使用に適した緩衝液には、例えば、塩酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびリン酸塩の緩衝液が含まれる。
【0184】
本発明の組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して所望の濃度に維持することができる。本発明に従って使用することができる増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース(Na CMC)およびそれらの混合物が含まれる。増粘剤の濃度は、選択した薬剤と所望の粘度に依存する。
【0185】
本発明の組成物はまた、粘膜(保水剤)の乾燥を低減または防止し、その刺激作用を防ぐための耐性向上剤を含む。本発明で使用することができる適した耐性向上剤には、例えば、保水剤、ソルビトール、プロピレングリコール、鉱油、植物油およびグリセロール、無痛化剤、膜調整剤、甘味料およびそれらの混合物が含まれる。本組成物中の1または複数の耐性向上剤の濃度もまた、選択した薬剤とともに変化することになる。
【0186】
鼻粘膜を介した薬物の吸収を増強するために、治療上許容される界面活性剤を鼻腔内製剤に添加することができる。本発明に従って使用することができる適した界面活性剤としては、例えば、ソルビトール無水物の脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体、例えば、Tween(登録商標)80、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、フシダート、胆汁酸塩およびオクトキシノールなどが挙げられる。適した界面活性剤には、非イオン性、陰イオン性および陽イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、約0.001%から約20重量%の範囲の濃度で鼻腔内製剤中に存在することができる。
【0187】
本発明では、他の任意の成分も、薬物の作用を妨害しない、または鼻粘膜を横切る薬物の吸収を著しく低下させないという条件で、経鼻送達系に組み込まれてもよい。そのような成分には、例えば、薬学的に許容される賦形剤および防腐剤が含まれ得る。本発明に従って使用することができる賦形剤には、例えば、生体接着剤および/または膨潤/増粘剤が含まれる。
【0188】
本発明では、当技術分野で公知の他の適した吸収促進剤も使用されてよい。
【0189】
防腐剤も本組成物に添加することができる。本組成物と共に使用することができる適切な防腐剤には、例えば、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよびベンザルコニウムが含まれ、塩化ベンザルコニウムが好ましい。一般に、防腐剤は、本組成物中に最大約2重量%の濃度で存在することになる。しかし、防腐剤の正確な濃度は、使用目的に応じて異なり、当業者であれば容易に確認することができる。
【0190】
吸収促進剤には、(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウムを含む);(iii)リン脂質添加剤、混合ミセル、またはリポソーム;(iv)アルコール(上述のようなポリオール、例えば、プロピレングリコールまたはPEG3000などのポリエチレングリコールを含む);(v)エナミン;(vi)一酸化窒素供与体化合物;(vii)長鎖両親媒性分子;(viii)小分子疎水性取込み促進剤;(ix)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体;(x)アセト酢酸のグリセロールエステル;(xi)シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体;(xii)中鎖または短鎖(例えばC1~C12)脂肪酸;および(xiii)キレート剤;(xiv)アミノ酸またはその塩;および(xv)N-アセチルアミノ酸またはその塩が含まれる。
【0191】
溶解性促進剤は、製剤中の薬物またはその薬学的に許容される塩の濃度を増加させ得る。有用な溶解性促進剤には、例えば、アルコールおよびポリアルコールが挙げられる。
【0192】
等張化剤は、鼻腔内の製剤の耐性を改善し得る。一般的な等張化剤はNaClである。好ましくは、製剤が等張性の鼻腔内投薬製剤である場合、それは液体担体の水性部分に約0.9%のNaCl(v/v)を含む。
【0193】
増粘剤は、組成物の全体的な粘度を、好ましくは鼻粘膜の値に近い値に改善することができる。適した増粘剤には、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone)、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびキトサンが挙げられる。
【0194】
保水剤または抗刺激剤は、組成物の反復使用における忍容性を改善する。適した化合物としては、例えばグリセロール、トコフェロール、鉱油、およびキトサンが挙げられる。
【0195】
本発明の組成物では、さまざまな追加の成分を使用することができる。組成物は、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤または湿潤剤、皮膚軟化薬、膜形成剤、または粘度調整剤から選択される1またはそれを超えるさらなる成分を含むことができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0196】
一態様では、防腐剤を含めることができる。別の態様では、抗酸化剤を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、皮膚軟化薬を含めることができる。別の態様では、粘度調整剤を含めることができる。別の態様では、界面活性剤または湿潤剤を含めることができる。別の態様では、膜形成剤を含めることができる。別の態様では、医薬組成物は、ゲル、軟膏、ローション、乳濁液、クリーム、液体、スプレー、懸濁液、ゼリー、泡、ムース、ペースト、テープ、分散液、エアロゾルからなる群から選択される形態である。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。
【0197】
驚くべきことに、メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノールなどの透過促進剤が、粘膜組織の透過が改善された鼻腔内スラミン製剤の調製に特に有用であることが見出された。
【0198】
別の態様では、少なくとも1つの防腐剤は、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含む)、アセトン重亜硫酸ナトリウム、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エデト酸、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、イソプロピルアルコール、モノチオグリセロール、ペンテト酸、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、硝酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、プロピルパラベンナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、チメロサール、酸化亜鉛、およびN-アセチルシステイン、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0199】
別の態様では、少なくとも1つの抗酸化剤は、アセトン重亜硫酸ナトリウム、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸一水和物、没食子酸ドデシル、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、マンニトール、ソルビトール、モノチオグリセロール、没食子酸オクチル、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、チモール、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、およびN-アセチルシステイン、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0200】
別の態様では、少なくとも1つの乳化剤は、アカシア、寒天、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヘクトライト、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒプロメロース、ラノリン、ラノリンアルコール、ラウリン酸、レシチン、リノール酸、酸化マグネシウム、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油、モノエタノールアミン、ミリスチン酸、オクチルドデカノール、オレイン酸、オレイルアルコール、パーム油、パルミチン酸、ペクチン、リン脂質、ポロキサマー、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン(polyoxyehtylene)ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、サポナイト、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物(dehydrate)、乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンエステル、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸スクロース、トラガカント、トリエタノールアミン、トロメタミン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、蝋、およびキサンタンガム、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0201】
別の態様では、少なくとも1つの皮膚軟化薬は、アーモンド油、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ブチル、カノーラ油、ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、コレステロール、ココナッツ油、シクロメチコン、オレイン酸デシル、セバシン酸ジエチル、ジメチコン、ステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、ラノリンアルコール、レシチン、鉱油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、パーム核油、パーム油、ワセリン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ベニバナ油、スクアレン、ヒマワリ油、トリカプリリン、トリオレイン、蝋、キシリトール、酢酸亜鉛、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から60重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0202】
別の態様では、少なくとも1つの粘度調整剤は、アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸アンモニウム、アタパルガイト、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、乳酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロース カルシウム、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、カラゲナン、セルロース、セラトニア、セレシン、セトステアリルアルコール、パルミチン酸セチル、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、コーンシロップ固形物、シクロメチコン、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヘクトライト、疎水性コロイドシリカ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒプロメロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、パーム油、ペクチン、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、糖、スルホブチルエーテル(sulfoburylether)β-シクロデキストリン、トラガカント、トレハロース、およびキサンタンガム、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から60パーセントまでの範囲になり得る。
【0203】
別の態様では、少なくとも1つの膜形成剤は、アルギン酸アンモニウム、キトサン、コロフォニー、コポビドン、エチレングリコールとビニルアルコールのグラフト共重合体、ゼラチン、ヒドロキシプロピル セルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ポリメタクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニル分散液、ポリビニルアセテートフタラート、ポリビニルアルコール、ポビドン、プルラン、ピロキシリン、およびセラックまたはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0204】
別の態様では、少なくとも1つの界面活性剤または湿潤剤は、ドクサートナトリウム、リン脂質、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、αトコフェロール、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチルアルコール、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステル、ステアリン酸スクロース、トリカプリリン、およびビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0205】
別の態様では、緩衝剤を含めることができる。別の態様では、皮膚軟化薬を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、乳濁液安定化剤を含めることができる。別の態様では、ゲル化剤を含めることができる。別の態様では、保水剤を含めることができる。別の態様では、軟膏基剤または油性ビヒクルを含めることができる。別の態様では、懸濁剤を含めることができる。別の態様では、酸味料を含めることができる。別の態様では、アルカリ化剤を含めることができる。別の態様では、生体接着材料を含めることができる。別の態様では、着色剤を含めることができる。別の態様では、マイクロカプセル化剤を含めることができる。別の態様では、硬化剤を含めることができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0206】
有効成分を粉末として送達する場合、粉末状の材料は粉末状の分散剤と組み合わせる場合が多い。他の実施形態では、活性物質を分散剤と組み合わせて、活性物質と分散剤の両方を含有する粒子を形成することができる。さらに他の実施形態では、活性物質を分散剤の表面にコーディングすることができる。分散剤の例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖を含む幅広い成分が挙げられる。
【0207】
製薬および製剤分野の当業者であれば、本発明の組成物の必須および任意の成分の適切な濃度を決定することができる。
【0208】
スラミン組成物を調製する方法もまた、本発明の一部として意図されており、標準的な製剤および混合技術を使用する製薬および製剤分野の当業者には明らかであろう。
【0209】
また、本発明では、抗プリン作動薬のエアゾールスプレー製剤と薬学的に許容される分散剤または溶媒系を含む鼻腔用スプレー吸入器を含む、抗プリン作動薬の患者投与または自己投与のための装置が提供され、この装置は、抗プリン作動薬の用量を含むスプレーを形成することにより、一定量のエアゾール製剤を分与させるように設計されている(あるいは計量されている)。他の実施形態では、吸入器は、抗プリン作動薬を微粉末として含むことができ、さらに粒子状の分散剤および希釈剤と組み合わせて、または代替的に組み合わせて粒子状の分散剤を形成またはコーティングすることができる。
【実施例】
【0210】
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに説明し、実証する。実施例は、説明目的のためにのみ与えられるものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその多くの変形が可能であるため、本発明の限定として解釈されるものではない。
【0211】
実施例1
鼻腔内送達のための組成物
以下の組成物は、標準的な装置および手順を用いて調製される。
【表A】
*分子量1429.15グラム/モルのスラミン六ナトリウム塩に基づく
【0212】
スラミンナトリウム塩を穏やかに混合しながら水に溶解する。シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液は、使用する前に2時間静置する。
【0213】
組成物は、鼻腔内投与用にスプレーボトルに包装することができる。
【0214】
あるいは、組成物は、メチルβ-シクロデキストリンを等重量のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドまたは2-(2-エトキシエトキシ)エタノールで置き換えて調製される。
【0215】
組成物は、自閉症スペクトラム障害を処置するのに有用である。
【0216】
実施例2:鼻腔内送達のための組成物
以下の組成物は、標準的な装置および手順を用いて調製される。
【表B】
*分子量1429.15グラム/モルのスラミン六ナトリウム塩に基づく
【0217】
スラミンナトリウム塩を穏やかに混合しながら水に溶解する。塩化ナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合しながら添加する。シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液は、使用する前に2時間静置する。
【0218】
組成物は、鼻腔内投与用にスプレーボトルに包装することができる。
【0219】
あるいは、組成物は、メチルβ-シクロデキストリンを等重量のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドまたは2-(2-エトキシエトキシ)エタノールで置き換えて調製される。
【0220】
組成物は、自閉症スペクトラム障害を処置するのに有用である。
【0221】
実施例3:スラミンの組織透過
実施例1および2の方法を使用して4種類の製剤A~Dを調製し、25℃で少なくとも4週間、相対湿度60%で3か月間安定していることが見出された。
製剤A-水中100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩(賦形剤なし)
製剤B-水中100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩と40%メチルβ-シクロデキストリン(メチルベータデクス)
製剤C-水中100mg/mLのスラミン六ナトリウム塩と40%HP(ヒドロキシルプロピル)-シクロデキストリン
製剤D-水中160mg/mLのスラミン六ナトリウム塩(賦形剤なし)
【0222】
製剤には、溶液増粘剤として0.1%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(すなわち、Dow ChemicalsのHPMCE5)および浸透圧剤として0.75%の塩化ナトリウムも含まれていた。
【0223】
これらの4つの製剤を、確立された薬物透過性プロトコール(EpiAirway(商標)薬物透過プロトコール、MatTek Corporation、2014)に従って、培養ヒト気道組織(EpiAirway AIR-100、MatTek Corporationから購入)を使用したインビトロ透過試験で評価した。EpiAirwayは、気管から一次気管支まで伸びる上気道を表すものであるため、経鼻投与用製剤からの薬物送達を測定するために使用される。
【0224】
レシーバー液の調製には、EpiAirwayアッセイ培地を37℃に予熱する。滅菌技術を使用して、0.3mLの培地を滅菌24ウェルプレートの各ウェルにピペットで移す。ウェルにラベルを付ける。0.2mLのドナー溶液を組織に使用する。
【0225】
透過性実験:一晩平衡化した後、細胞培養インサートを1時間のウェルに移し、ドナー溶液を組織にピペットで移す。プレートをインキュベーターに戻す。透過時間が30分経過した後、組織を2時間のウェルに移す。同様に、2.0、3.0、4.0および6.0時間の合計経過時間の後に組織を移す。ドナー溶液を補充する必要はない。あるいは、適切なタイミングでレシーバー溶液を完全に除去し、予め温めた新鮮なレシーバー液と交換してもよい。この溶液を、HPLCを用いて分析し、238nmで検出した。
【0226】
次の表1は、透過したスラミンの平均累積量(mg)を時間の関数として示す。
【表1】
【0227】
試験の結果は、
図1にもグラフで示され、透過した薬物の累積量(mg)が時間(時間)に対してプロットされている。
【0228】
これらのデータは、メチルβ-シクロデキストリン(メチルベータデクス)を含有する製剤Bが、組織透過アッセイの製剤A、C、およびDと比較して、大幅に優れた透過をもたらすことを示している。また、製剤AとDの比較から分かるように、より高い薬物濃度を有することは、透過を向上させるのに有利であり得る。
【0229】
実施例4:スラミンの組織透過
6つの製剤A~Fが実施例1および2の方法を使用して調製され、周囲条件で少なくとも4週間安定であることが見出された。
製剤A-水中200mg/mLのスラミン(賦形剤なし)
製剤B-水中140mg/mLのスラミンと40%ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)
製剤C-水中140mg/mLのスラミンと40%メチルβ-シクロデキストリン(メチルベータデクス)
製剤D-水中140mg/mLのスラミンと40%スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(カプチゾール)
製剤E-水中140mg/mLのスラミンと40%2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol P)
製剤F-水中140mg/mLのスラミン(Labrasol)
【0230】
実施例3の方法を使用して組織透過性試験を行った。
【0231】
次の表2は、透過したスラミンの平均累積量(mg)を時間の関数として示す。
【表2】
【0232】
試験の結果は、
図2にもグラフで示されており、透過した薬物の累積量(mg)が時間(時間)に対してプロットされている。これらのデータは、メチルβ-シクロデキストリン(メチルベータデクス)を含有する製剤C、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol P)を含有する製剤E、およびカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド(Labrasol)を含有する製剤Fが、組織透過アッセイにおいて、製剤A、B、およびDと比較して著しく優れた透過を提供することを示す。
【0233】
さらに、実施例3および4の結果は驚くべきである。
【0234】
シクロデキストリンは、さまざまなサイズの環で結合した糖分子である。具体的には、糖の単位は、グルコピラノシドと呼ばれ、ピラノース(6員)環構造で存在するグルコース分子である。6、8、または10個のグルコピラノシドは、互いに結合して、それぞれ、α-、β-、およびγ-シクロデキストリンを形成する。シクロデキストリンは、複数のヒドロキシル基を両端に有するトロイド(円錐台)構造を形成する。これにより、水への溶解性を失うことなく、疎水性化合物をカプセル化できる 他の用途の中でも、シクロデキストリンは、疎水性の薬物分子を組織透過促進剤として生体系に運ぶために使用することができる。シクロデキストリンは、さまざまな疎水性薬物と包接複合体を形成し、それによって組織膜への分配性および溶解性を高めることが報告されている。メチルβ-シクロデキストリン(ベータデクス)は、シクロデキストリンの一種である。メチルベータデクスは、少なくとも1つの市販の鼻腔内製品であるエストラジオール(Aerodiol)中で使用され、薬物分子であるエストラジオール(MW=272.4)の経組織透過性を促進する。サイズが小さいため(MW=272.4)、エストラジオール分子はシクロデキストリン環の中に容易に封入することができ、したがって生体組織への送達の強化が実現される。
【0235】
しかし、本発明者らは、メチルβ-シクロデキストリンも、一般に適合性があると考えられているよりもはるかに大きな分子であるスラミンを封入できる方法を発見した。メチルベータデクスがスラミンに効くのを見出すのは驚くべきことである。当業者は、そのような大きな分子がシクロデキストリン環に封入され得るとは予想しなかったであろう。
【0236】
もう一つの有用な透過促進剤は、Transcutol P(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)である。これは、さまざまな局所/経皮製剤中の一部の小分子薬物化合物の皮膚透過性を高めることが報告されている賦形剤である。それにもかかわらず、それが鼻腔内製品の賦形剤として使用されたことはない。また、スラミンなどの高分子を促進するためにあまり使用されていない。
【0237】
もう一つの有用な透過促進剤は、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド)である。これは、一部の局所/経皮製剤中の一部の薬物化合物の皮膚透過性を高めることが報告されている賦形剤である。これが鼻腔内製品の賦形剤として使用されたことはない。
【0238】
実施例5:血漿および脳組織中のスラミンの測定
以下の実施例は、異なる処置レジメンに従って腹腔内(IP)または鼻腔内(IN)に投与された場合の血漿および脳組織へのスラミンの送達を測定するために実施されたマウス試験を説明する。試験のために、雄のFmr1-ノックアウトB6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスをメイン州バーハーバーのジャクソン研究所より購入した。これらのマウスは約8週齢であった。これらのマウスは、脳の複数の領域で樹状突起棘の異常を示す。これらのマウスにFMRPが存在しないと、樹状突起の形態とシナプス機能に重要な役割を果たすRho GTPaseサブファミリーのタンパク質であるRAC1の過剰活性化が誘導される。これらのB6.129P2-Fmr1tm1Cgr/J TGマウスは、認知能力障害および神経発達障害の動物モデルを提供する。
【0239】
マウスは、グループケージ(処置グループに基づいてケージあたり6匹のマウス)の中で、制御された環境(温度:21.5±4.5℃、相対湿度:35~55%)で、標準的な12時間明/12時間暗の照明サイクル(06:00に点灯)下で維持された。マウスは研究施設におよそ1週間収容された。すべてのマウスの体重は、健康モニタリングの目的で記録された。
【0240】
マウスを以下の5つの試験グループに分け、グループあたり6匹のマウスとした。
グループ1:動物に9週齢から4週間継続して週1回投与される(すなわち、9、10、11、および12週齢時に投与される)スラミン20mg/kgの腹腔内(IP)注射。スラミンは通常の生理食塩水で製剤化した。
グループ2:動物に9週齢から4週間継続して週1回投与される(すなわち、9、10、11、および12週齢時に投与される)、生理食塩水5mL/gの腹腔内(IP)注射。これは対照群であった。
グループ3:スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)、9週齢から28日間(28日の間に合計56回のスプレー)投与される(すなわち、9、10、11および12週齢の間1日1回投与される)、下記のスラミン製剤の鼻腔内(IN)投与。
グループ4:スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、鼻孔あたり1回のスプレーとして、隔日に1回、9週齢から28日間(28日の間に合計28回のスプレー)投与される(すなわち、9、10、11および12週齢の間、隔日1回投与される)、下記のスラミン製剤の鼻腔内(IN)投与。
グループ5:スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、鼻孔あたり1回のスプレーとして、毎週1回、9週齢から4週間(28日間)(28日の間に合計8回のスプレー)投与される(すなわち、9、10、11および12週齢の間、週1回投与される)、下に記載されるスラミン製剤の鼻腔内(IN)投与。
【0241】
以下は、上記のグループ3、4、および5に投与されたスラミンの鼻腔内(IN)製剤である。
【表5】
*HPMC E5は、デュポンから入手可能な水溶性セルロースエーテルポリマー[ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)]である。
【0242】
上記の製剤は、スラミンナトリウム塩を水に穏やかに混合して溶解することによって作製されている。シクロデキストリンを除く残りの成分は、混合しながら添加される。次に、シクロデキストリンを、溶解するまで混合しながら添加する。得られた溶液は、使用する前に2時間静置する。
【0243】
血液試料は、12週齢の終わりのすべてのマウスから収集された。脳組織は、13~14週齢で犠牲したすべてのマウスから回収された。標準的な試料の調製および分析技術を用いてデータを取得した。
【0244】
この試験の結果を表3に示す。データは、各動物グループの平均血漿中濃度(ng/mlとμMの両方)および平均脳組織濃度(ng/gとmmol/gの両方)として表される。また、各グループの平均脳組織対血漿分配比も示されている。スラミンが脳組織で検出されず、血漿中濃度が小さいことは本質的に分析方法からのノイズであるため、このような計算は生理食塩水対照を投与したグループ(グループ2)には適用できないことに注意すること。
【表3】
1BQLは、定量化可能な制限を下回ることを意味する。
2NAは該当なしを意味する。
3分配比は、表に示されている平均ではなく、生データから直接計算される。
【0245】
試験の結果は、
図3から10のプロットにも示されている。
【0246】
図3は、マウスに週1回、20mg/kgの腹腔内(IP)注射を9週齢から4週間継続して投与した場合(すなわち、9、10、11および12週齢時に投与)の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)のプロットを示す。
【0247】
図4は、28日間毎日鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、1日1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から28日間(28日の間に合計56回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0248】
図5は、28日間、2日に1回、鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織中のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、2日に1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から28日間(28日の間に合計28回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0249】
図6は、4週間にわたって週1回鼻腔内(IN)投与した場合の、マウスの血漿中と脳組織内のスラミンの総濃度(ng/ml)を比較したプロットを示す。INスラミンを含む本発明の組成物は、スプレーあたり100mg/mL×6mLの濃度で、週1回、鼻孔あたり1回のスプレーとして(各適用の間隔は、吸収を確実にするために約2分)9週齢から4週間(28日間)(28日の間に合計8回のスプレー)投与された(すなわち、9、10、11および12週齢の間毎日投与)。
【0250】
図7は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの血漿中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0251】
図8は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの脳組織中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0252】
図9は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスの血漿中と脳組織中のスラミンの合計パーセンテージを比較したプロットを示す。
【0253】
図10は、腹腔内(IP)注射を週1回4週間(28日間)、鼻腔内に(IN)毎日28日間、鼻腔内に(IN)2日に1回28日間、および鼻腔内に(IN)週1回4週間(28日間)投与した場合のマウスにけるスラミンの脳組織と血漿の分配比を比較したプロットを示す。
【0254】
これらの結果は、スラミンなどの抗プリン作動薬を鼻腔内に送達して血漿および脳組織中の濃度を達成することができること、および脳組織対血漿分配比の変動を観察することができることを示している。これらの結果は、スラミンなどの抗プリン作動薬が、鼻腔内(IN)投与によって哺乳動物の脳に送達され得ることを示している。
【0255】
参照による組み込み
本明細書において言及される、補正証明書、特許出願文書、科学記事、政府報告書、ウェブサイト、および他の参考文献を含む、各特許文書の完全な開示は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。用語に矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0256】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態で具体化することができる。前述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。本発明の方法および組成物の様々な実施形態において、含むという用語が、列挙された方法のステップまたは組成物の成分に関して使用される場合、その方法および組成物は、列挙されたステップまたは成分から本質的になること、またはそれからなることも企図される。さらに、本発明が動作可能である限り、ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションを同時に実行することもできる。
【0257】
本明細書において、単数形は、文脈上明らかに示されている場合を除き、複数形も含む。別に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0258】
さらに、混合すると特定の成分はさらに反応するかまたは追加の材料に変換される可能性があるため、特定の例では、組成物は混合前の成分で構成されていると説明され得ることが認識されるはずである。
【0259】
本明細書で使用されるすべての百分率および比率は、特に明記しない限り、重量による。物体の質量は、日常的な使用法において、また最も頻度の高い科学目的では、その重量と呼ばれる場合が多いが、その質量は技術的には物体の物質の量を指し、重量は物体が重力によって受ける力を指すと認識される。また、一般的な使用法では、物体の「重量」(質量)は、秤または天びんで物体の「重さを測る」(質量を測る)ときに決定されるものである。
【国際調査報告】