(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】がん免疫療法の皮下投与のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20220803BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220803BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220803BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220803BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220803BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220803BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220803BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220803BHJP
C07D 475/08 20060101ALN20220803BHJP
C07D 239/553 20060101ALN20220803BHJP
C07D 487/14 20060101ALN20220803BHJP
C07D 519/04 20060101ALN20220803BHJP
C07D 305/14 20060101ALN20220803BHJP
C07H 17/04 20060101ALN20220803BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220803BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K9/19
A61K31/675
A61K31/519
A61K31/513
A61K31/407
A61K31/475
A61K31/337
A61K33/24
A61K31/282
A61K31/7048
A61K38/20
C07D475/08
C07D239/553 A
C07D487/14
C07D519/04
C07D305/14
C07H17/04
C07K19/00
C07K14/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573569
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020066234
(87)【国際公開番号】W WO2020249693
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512274344
【氏名又は名称】アルカームス ファーマ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー・シー・ロージー
(72)【発明者】
【氏名】ジャレッド・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】レイ・サン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ジェイ・ウィンクイスト
【テーマコード(参考)】
4C050
4C057
4C072
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA04
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞(Treg)増大に対する最小の効果を伴ってCD8+T細胞の増強した活性化をもたらし、増強した抗腫瘍有効性を実現すると同時に、更にT細胞不活性化/疲弊を軽減する、がん患者への配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投与を含む、がんを処置するための組成物、方法、及び処置レジメンを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんを処置する方法であって、患者にある用量の配列番号1の融合タンパク質を定期的に皮下投与する工程を含み、定期的投薬が約3日ごとに1回~約60日ごとに1回である、方法。
【請求項2】
定期的投薬が約3日ごとに1回~約21日ごとに1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
定期的投薬が3日ごとに1回、4日ごとに1回、7日ごとに1回、14日ごとに1回、又は21日ごとに1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
用量が、配列番号1の融合タンパク質に関して約0.1mg~約30mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
用量が、1mg、3mg、6mg、10mg、15mg、20mg、又は30mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
用量が、約0.1mg~約30mg、或いは約1μg/kg~約500μg/kg、或いは約60~約70kgの成人に基づくか又は約12kg~約50kg若しくはそれ以上の小児に基づく対応する固定用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
定期的皮下投与が、毎日の皮下投与と比較して循環CD8+T細胞のより大きな増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
循環CD8+T細胞の増加がベースラインに対して少なくとも2倍である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
CD8+T細胞のCD4+制御性T細胞(Treg)に対する増加の比がより大きい、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
処置されるがんが、腎細胞癌(RCC)、リンパ腫、黒色腫、肝細胞癌(HCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、乳がん、膵がん、前立腺がん、結腸及び直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、甲状腺がん、食道がん、口がん、中皮腫、並びに非黒色腫皮膚がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者がより低いT細胞疲弊のリスクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者がより低い毛細血管漏出症候群(CLS)又はサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
患者がより低い体重減少のリスクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
患者に治療有効量の治療剤を共投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
治療剤が、PARP阻害剤、免疫チェックポイントタンパク質阻害剤、細胞毒性剤、又は化学療法剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1とPD-L1との相互作用を阻害する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
免疫チェックポイント阻害剤がペムブロリズマブである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約2倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約5倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して約2倍~約5倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIL-6の増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して約2分の1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
処置されるがんが固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
固形腫瘍が、癌腫、肉腫、又はリンパ腫である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
処置されるがんが血液がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
血液がんが、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ペムブロリズマブが、配列番号1の融合タンパク質の投与の前、それと同時、又はその後に共投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
ペムブロリズマブが配列番号1の融合タンパク質と別個の組成物において共投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ペムブロリズマブが200mgの量でI.V.注射又は注入によって投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ペムブロリズマブが、配列番号1の融合タンパク質の投与の第1日に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ペムブロリズマブが週に約1回投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ペムブロリズマブが3週間ごとに約1回投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
用量が、皮下投与のために製剤化された医薬組成物として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
医薬組成物が直ちに投与できる安定な水溶液である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
医薬組成物が凍結乾燥されている、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
医薬組成物が注射に好適な薬学的に許容されるビヒクルを用いて再構成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
用量が、配列番号1の融合タンパク質に関して約1mg~約30mgを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
用量が、配列番号1の融合タンパク質に関して約1mg、3mg、10mg、又は30mgを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
患者におけるがんを処置する方法であって、患者に、配列番号1の少なくとも約20アミノ酸~最大で全長までの連続した配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するある用量の融合タンパク質を定期的に皮下投与する工程を含み、定期的投薬が約3日ごとに1回~約60日ごとに1回である、方法。
【請求項40】
定期的皮下投与が、毎日の皮下投与と比較してCD8+T細胞のCD4+T
regに対するより大きな比をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
循環CD8+細胞の増加がベースラインに対して少なくとも2倍である、請求項7に記載の方法。
【請求項42】
循環CD8+細胞の増加の比が循環CD4+Treg細胞の増加の比に比べて大きい、請求項7に記載の方法。
【請求項43】
患者がより低いT細胞疲弊のリスクを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
患者がより低い毛細血管漏出症候群(CLS)又はサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
患者がより低い体重減少のリスクを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の同じ用量の静脈内投与と比較して少なくとも約2倍大きい、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約5倍大きい、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比が、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約7倍大きい、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIL-6の増加の比が、同等の同じ用量の静脈内投与と比較して約2分の1以下である、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIL-6の増加の比が、IFNγの増加の比未満である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
処置されるがんが固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
固形腫瘍が、癌腫、肉腫、又はリンパ腫である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
処置されるがんが血液がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
血液がんが、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
固形腫瘍のサイズが減少する、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
患者においてがんが再び生じるか又は新たながんが発生する場合に配列番号1の融合タンパク質の投与を反復する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
患者において腫瘍が再び生じるか又は新たな腫瘍が発生する場合に配列番号1の融合タンパク質の投与を反復する工程を更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
患者に少なくとも部分奏効をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγのベースラインからの平均変化倍率が患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIL-6のベースラインからの平均変化倍率よりも大きいという結果を生じる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月11日に出願された米国仮出願第62/860,182号、2019年11月7日に出願された同第62/932,160号、及び2019年10月22日に出願された同第62/924,356号の利益を主張する。上記出願の教示全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
配列番号1の融合タンパク質は、中親和性インターロイキン-2(IL-2)受容体であるIL-2Rβγの選択的結合のために設計されたヒトインターロイキン-2(IL-2)バリアント融合タンパク質である。配列番号1の融合タンパク質の選択性は、IL-2受容体のIL-2Rα鎖(CD25)と融合する循環置換型(circularly permutated; cp)IL-2の安定した融合によって達成される。
【0003】
配列番号1の融合タンパク質は、IL-2Rβγに対する選択的標的化及び活性化がCD8+T細胞及びNK細胞のサブセットの選択的活性化をもたらし、抗腫瘍免疫応答を駆動することができるという点で、治療薬として天然IL-2に勝る利点を有する。配列番号1の融合タンパク質の投与は、CD8+メモリーT細胞を増加させる一方でCD4+制御性T細胞(Treg)の免疫抑制効果を低下させ、それによって患者自身の免疫系を動員してがん細胞を取り除くため、がん患者に有益である。配列番号1の融合タンパク質はまた、投与後に持続する効果を呈し、それによって患者の処置に対する応答を更に向上させる。
【0004】
融合タンパク質は、多くの場合、製剤が血流中で直接利用可能となるように静脈内(IV)投与によって投与される。しかしながら、医薬が皮下投与可能である場合、それは好都合となり得る。皮下投与は低侵襲の投与方法だからである。皮下送達の簡便性及び速度は、患者の服薬遵守の増加、及び必要とされる場合におけるより短時間での医薬品の利用を可能にする。皮下(SC)投与はまた、短期及び長期療法のために使用することができる最も用途の広い投与方法でもある。皮下投与は、皮膚の表面下への注射又は持続性若しくは徐放性放出デバイスの植込みによって実施することができる。注射又はデバイスの部位は、複数の注射又はデバイスが必要とされる場合、ローテーションさせることができる。皮下製剤は、とりわけ薬物処置が患者の生涯にわたって定期的に行われなければならない場合もあるため、通例、患者にとって取り扱うのがはるかに容易である。
【0005】
ある特定のタンパク質の皮下投与は、IV投与と比較して低いCmaxと長いTmaxとを実現する一方、2つの投与経路間で同等の薬力学的効果をもたらすことが示された。配列番号1の融合タンパク質のIV送達と比較して薬物動態(PK)及び薬力学(PD)、忍容性プロファイル、並びに免疫原性プロファイルと等しいか又はそれを凌ぎさえする配列番号1の融合タンパク質の皮下製剤及び処置レジメンが同定可能である場合、それは望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/184942号
【特許文献2】米国特許第8,728,474号明細書
【特許文献3】米国特許第9,073,994号明細書
【特許文献4】欧州特許第1537878号明細書
【特許文献5】米国特許第8,952,136号明細書
【特許文献6】米国特許第8,779,105号明細書
【特許文献7】米国特許第8,008,449号明細書
【特許文献8】米国特許第8,741,295号明細書
【特許文献9】米国特許第9,205,148号明細書
【特許文献10】米国特許第9,181,342号明細書
【特許文献11】米国特許第9,102,728号明細書
【特許文献12】米国特許第9,102,727号明細書
【特許文献13】米国特許第8,927,697号明細書
【特許文献14】米国特許第8,900,587号明細書
【特許文献15】米国特許第8,735,553号明細書
【特許文献16】米国特許第7,488,802号明細書
【特許文献17】米国特許第9,273,135号明細書
【特許文献18】米国特許第7,943,743号明細書
【特許文献19】米国特許第9,175,082号明細書
【特許文献20】米国特許第8,552,154号明細書
【特許文献21】米国特許第8,217,149号明細書
【特許文献22】米国特許第5,811,097号明細書
【特許文献23】米国特許第5,855,887号明細書
【特許文献24】米国特許第6,051,227号明細書
【特許文献25】米国特許第6,984,720号明細書
【特許文献26】米国特許第6,682,736号明細書
【特許文献27】米国特許第7,311,910号明細書
【特許文献28】米国特許第7,307,064号明細書
【特許文献29】米国特許第7,109,003号明細書
【特許文献30】米国特許第7,132,281号明細書
【特許文献31】米国特許第6,207,156号明細書
【特許文献32】米国特許第7,807,797号明細書
【特許文献33】米国特許第7,824,679号明細書
【特許文献34】米国特許第8,143,379号明細書
【特許文献35】米国特許第8,263,073号明細書
【特許文献36】米国特許第8,318,916号明細書
【特許文献37】米国特許第8,017,114号明細書
【特許文献38】米国特許第8,784,815号明細書
【特許文献39】米国特許第8,883,984号明細書
【特許文献40】国際(PCT)公開第98/42752号
【特許文献41】国際公開第00/37504号
【特許文献42】国際公開第01/14424号
【特許文献43】欧州特許第1212422号明細書
【特許文献44】米国特許第7,247,301号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2008/0138336号明細書
【特許文献46】米国特許第7,923,221号明細書
【特許文献47】国際公開第01/64870号
【特許文献48】米国特許第7,402,431号明細書
【特許文献49】米国特許出願公開第2006/0057121号明細書
【特許文献50】米国特許第5,126,132号明細書
【特許文献51】米国特許第6,255,073号明細書
【特許文献52】米国特許第5,846,827号明細書
【特許文献53】米国特許第6,251,385号明細書
【特許文献54】米国特許第6,194,207号明細書
【特許文献55】米国特許第5,443,983号明細書
【特許文献56】米国特許第6,040,177号明細書
【特許文献57】米国特許第5,766,920号明細書
【特許文献58】米国特許出願公開第2008/0279836号明細書
【特許文献59】米国特許出願公開第2008/0058322号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wangら、Science. 2005;310(5751):1159~1163. doi:10.1126/science.1117893
【非特許文献2】Smith及びWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482(1981)
【非特許文献3】Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol. 48:443(1970)
【非特許文献4】Pearson及びLipman、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)
【非特許文献5】Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995補遺)
【非特許文献6】Remington's The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A. R. Gennaro(Lippincott, Williams & Wilkins社、Baltimore、Md.、2006
【非特許文献7】「Current protocols in molecular biology」(Ausubel編、2008、John Wiley & Son社)
【非特許文献8】Weinerら、Nature Rev. Immunol 2010;10:317~27
【非特許文献9】Overwijkら、Journal of Experimental Medicine 2008;198:569~80
【非特許文献10】Gendlerら、J Biol Chem 1990;265:15286~15293
【非特許文献11】Mercer及びPritchard、Biochim Biophys Acta(2003)1653(1):25~40
【非特許文献12】Sharkeyら、Cancer Res.(2004)64(5):1595~1599
【非特許文献13】Jiangら、Cancer Metastasis Rev. 2008;27:263~72
【非特許文献14】Zhangら、Nature Reviews: Cancer 2009;9:28~39
【非特許文献15】Keppら、Cancer and Metastasis Reviews 2011;30:61~9
【非特許文献16】Sambrookら、1989 Current Protocols in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Press社、New York
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、配列番号1の毎日のSC又はIV送達と比較した場合、がん処置を必要とする患者に配列番号1の融合タンパク質を送達することに関するある特定の利点を提供する、本発明の配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投与のための組成物、方法、及び処置レジメンを提供する。予期せぬことに、配列番号1の融合タンパク質の定期的SC投与はまた、制御性T細胞増大に対する最小の効果を伴ってCD8+T細胞の増強した活性化を実現し、増強した抗腫瘍活性をもたらすと同時に、更にT細胞不活性化/疲弊を軽減することが発見された。
【0009】
したがって、本発明は、患者におけるがんを処置する方法であって、患者にある用量の配列番号1の融合タンパク質を定期的に皮下投与する工程を含み、定期的投薬が約3日ごとに1回~約60日ごとに1回である、方法を提供する。好ましくは、定期的投薬は約3日ごとに1回~約21日ごとに1回である。好ましくは、定期的投薬は3日ごとに1回、4日ごとに1回、7日ごとに1回、14日ごとに1回、又は21日ごとに1回である。
【0010】
好ましくは、本発明は、約0.1mg~約30mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む皮下投与のための医薬組成物を提供する。好ましくは、本発明は、約0.1mg~約30mg、約0.3mg~約30mg、約0.3mg~約25mg、約0.3mg~約20mg、約0.3mg~約15mg、約0.3mg~約10mg、約0.3mg~約3mg、約0.3mg~約1mg、約1mg~約30mg、約1mg~約25mg、約1mg~約20mg、約1mg~約15mg、約1mg~約10mg、約1mg~約3mg、約3mg~約30mg、約3mg~約25mg、約3mg~約20mg、約3mg~約15mg、約3mg~約10mg、約10mg~約30mg、約10mg~約25mg、約10mg~約20mg、又は約10mg~約15mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む皮下投与のための医薬組成物を提供する。
【0011】
好ましくは、皮下投与のための配列番号1の用量は、多くの場合小児科患者の体重に基づいて用量を算出するのに好ましいが成人の体重に基づいて用量を算出するのにも有用であるμg/kg単位で表される。μg/kg単位での皮下投与のための配列番号1の好ましい用量は、約1μg/kg~約500μg/kg、約1μg/kg~約250μg/kg、約1μg/kg~約100μg/kg、約1μg/kg~約50μg/kg、約1μg/kg~約25μg/kg、約1μg/kg~約15μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約1μg/kg~約5μg/kg、約5μg/kg~約500μg/kg、約5μg/kg~約250μg/kg、約5μg/kg~約100μg/kg、約5μg/kg~約50μg/kg、約5μg/kg~約25μg/kg、約5μg/kg~約15μg/kg、約5μg/kg~約10μg/kg、約15μg/kg~約500μg/kg、約15μg/kg~約250μg/kg、約15μg/kg~約100μg/kg、約15μg/kg~約50μg/kg、約15μg/kg~約25μg/kg、約50μg/kg~約500μg/kg、約50μg/kg~約250μg/kg、約50μg/kg~約100μg/kg、約150μg/kg~約500μg/kg、約150μg/kg~約250μg/kg、約200μg/kg~約500μg/kg、約250μg/kg~約350μg/kg、約300μg/kg~約500μg/kg、約300μg/kg~約400μg/kg、約400μg/kg~約500μg/kg、又は例えば60~70kgの成人に基づくその対応する固定用量、又は小児、例えば約12kg~約50kg若しくはそれ以上の小児に基づく対応する固定用量の範囲である。
【0012】
好ましくは、μg/kg単位での配列番号1の皮下用量は、約5μg/kg、約16μg/kg、約50μg/kg、若しくは約500μg/kg、又は例えば60~70kgの成人に基づくその対応する固定用量、又は小児、例えば約12kg~約50kg若しくはそれ以上の小児に基づく対応する固定用量である。
【0013】
好ましくは、定期的皮下投与は、毎日の皮下投与と比較して大きいCD8+T細胞増大をもたらす。好ましくは、定期的皮下投薬は、毎日の皮下投与と比較して大きいCD8+T細胞のTregに対する比をもたらす。好ましくは、循環CD8+T細胞の増加は、患者への配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投与前のベースラインに対して少なくとも2倍である。好ましくは、処置されるがんは、腎細胞癌(RCC)、リンパ腫、黒色腫、肝細胞癌(HCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、乳がん、膵がん、前立腺がん、結腸及び直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、甲状腺がん、食道がん、口がん、中皮腫、並びに非黒色腫皮膚がんである。好ましくは、患者はより低いT細胞疲弊のリスクを有する。好ましくは、患者はより低い毛細血管漏出症候群(CLS)又はサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクを有する。好ましくは、患者はより低い体重減少のリスクを有する。好ましくは、患者に治療有効量の治療剤を共投与する工程を更に含む。好ましくは、治療剤は、PARP阻害剤、免疫チェックポイントタンパク質阻害剤、細胞毒性剤、又は化学療法剤である。好ましくは、治療剤は免疫チェックポイントタンパク質阻害剤である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1とPD-L1との相互作用を阻害する。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。好ましくは、皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比は、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約2倍大きい。好ましくは、皮下投与の結果として生じる患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比は、同等の用量の静脈内投与と比較して少なくとも約5倍大きい。好ましくは、皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIFNγの増加の比は、同じ用量に正規化した静脈内投与と比較して少なくとも約7倍大きい。好ましくは、皮下投与の結果として生じる場合の患者の末梢血、血清、又は血漿に存在するIL-6の増加の比は、同等の用量の静脈内投与と比較して約2分の1以下である。好ましくは、処置されるがんは固形腫瘍である。好ましくは、固形腫瘍は、癌腫、肉腫、又はリンパ腫である。好ましくは、処置さ
れるがんは血液がんである。好ましくは、血液がんは、白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫である。好ましくは、ペムブロリズマブは、配列番号1の融合タンパク質の投与の前、それと同時、又はその後に共投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは配列番号1の融合タンパク質と別個の組成物において共投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは200mgの量でI.V.注射又は注入によって投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは、配列番号1の融合タンパク質の投与の第1日に投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは週に約1回投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは3週間ごとに約1回投与される。好ましくは、用量は、皮下投与のために製剤化された医薬組成物として提供される。好ましくは、医薬組成物は直ちに投与できる安定な水溶液である。好ましくは、医薬組成物は凍結乾燥されている。好ましくは、医薬組成物は注射に好適な薬学的に許容されるビヒクルを用いて再構成される。好ましくは、医薬組成物は約1mg~約30mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む。好ましくは、医薬組成物は約1mg、3mg、10mg、又は30mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む。好ましくは、融合タンパク質は、配列番号1の少なくとも20アミノ酸~最大で全長までの配列番号1の連続した区間と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む配列番号1の融合タンパク質のバリアントである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】配列番号1の融合タンパク質(パネルA)及びその選択的結合性中親和性IL-2受容体(パネルB)の構造モデルの図である。パネルA及びパネルBの構造モデルは、ヒトIL-2が三量体高親和性受容体に結合した四次複合体の実験的に決定された結晶構造(Wangら、Science. 2005;310(5751):1159~1163. doi:10.1126/science.1117893)を使用して生成された。
【
図2】配列番号2の定期的SC投与を3日おきに1回行った場合及び4日おきに1回行った場合、並びに5日間の連日SC投与と2日間の休薬(off)を行った場合のFVBマウスにおける、全CD8+ T細胞の増大を比較するプロットグラフである。
【
図3】配列番号2の定期的SC投与を3日おきに1回行った場合、4日おきに1回行った場合、及び5日間の連日SC投与と2日間の休薬を行った場合のFVBマウスにおける、CD8+ T細胞のT
regsに対する細胞比を比較するプロットグラフである。
【
図4】配列番号2の定期的SC投与を3日おきに1回行った場合及び4日おきに1回行った場合、並びに5日間の連日SC投与と2日間の休薬を行った場合のFVBマウスにおける、記憶表現型CD8+ T細胞の増大を比較するプロットグラフである。
【
図5】配列番号2の定期的SC投与を3日おきに1回行った場合、4日おきに1回行った場合、及び5日間の連日SC投与と2日間の休薬を行った場合のFVBマウスにおける、記憶表現型CD8+ T細胞のT
regsに対する細胞比を比較するプロットグラフである。
【
図6A】配列番号2の定期的SC投与を2つの異なる用量(1.5mg/kg及び3mg/kg)で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍C57Bl/6マウスにおける抗腫瘍有効性を、5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図6B】配列番号2の定期的SC投与を2つの異なる用量(1.5mg/kg及び3mg/kg)で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍マウスの生存率を、5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図7】配列番号2の定期的SC投与を2つの異なる用量(1.5mg/kg及び3mg/kg)で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍マウスの平均体重を、5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図8】本発明に係る様々なIV用量又はSC用量の配列番号1の融合タンパク質を投与したヒト患者における、ベースラインに対するIFNγの最大変化倍率を比較するグラフである。
【
図9】本発明に係る様々なIV用量又はSC用量の配列番号1の融合タンパク質を投与したヒト患者における、ベースラインに対するIL-6の最大変化倍率を比較するグラフである。
【
図10】配列番号2の定期的SC投与を様々な用量で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍C57Bl/6マウスにおける抗腫瘍有効性を、7日おきに1回(q7d)行った場合、及び5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図11】配列番号2の定期的SC投与を様々な用量で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍C57Bl/6マウスの平均体重を、7日おきに1回(q7d)行った場合、及び5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図12】配列番号2の定期的SC投与を様々な用量で3日おきに1回(q3d)行ったMC38担腫瘍C57Bl/6マウスの生存率を、7日おきに1回(q7d)行った場合、及び5日間の連日SC投与(qd×5)と2日間の休薬を行った場合のものと比較するグラフである。
【
図13】配列番号1の初回SC投与後の進行性固形腫瘍患者における配列番号1の血清中濃度(ng/mL)の平均(±標準偏差)を比較するグラフである。
【
図14】配列番号1の初回SC投与後の進行性固形腫瘍患者における最高血清中濃度(C
max)及び0時点から最終測定可能濃度までの濃度対時間曲線下面積(AUC
last)の平均(±標準誤差)を比較するグラフである。
【
図15】q7d又はq21dでの配列番号1のSC投与後の進行性固形腫瘍患者における全NK細胞、全CD8+ T細胞、及びT
regsの絶対数(細胞/μL血液)の平均(±標準誤差)を比較するグラフである。
【
図16】q7d又はq21dでの配列番号1のSC投与後の進行性固形腫瘍患者における全NK細胞、全CD8+ T細胞、及びT
regsの絶対数(細胞/μL血液)のベースラインからの変化倍率の平均(±標準誤差)を比較するグラフである。
【
図17】配列番号1の初回SC投与後の進行性固形腫瘍患者におけるIFNγ及びIL-6の血清中濃度(pg/mL)の平均(±標準誤差)を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
当業者は、単に慣例的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するか又は確かめることができるだろう。本発明の範囲は、以下の記載に限定されると意図されるものではなく、添付の特許請求の範囲に示される通りである。
【0016】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」等の冠詞は、反対のことが指示されず、別段のことが文脈から明白でもない限り、1つ又は1つよりも多いことを意味し得る。ある群の1つ又は複数の要素間に「又は」を含む請求項又は記述は、反対のことが指示されず、別段のことが文脈から明白でもない限り、その群の要素の1つ、2つ以上、又は全てが所与の生成物又はプロセスに存在するか、用いられるか、又はそうでなければ関連する場合、満たされていると見なされる。本発明は、群の正確に1つの要素が所与の生成物又はプロセスに存在するか、用いられるか、又はそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、群の要素の2つ以上又は全てが所与の生成物又はプロセスに存在するか、用いられるか、又はそうでなければ関連する実施形態を含む。
【0017】
「含む(comprising)」という用語は、非限定的であり、追加の要素又は工程の包含を許容するが必要としないことを意図していることにもまた注意されたい。したがって、「含む(comprising)」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる」という用語もまた包含され、開示される。
【0018】
範囲が与えられる場合、端点は含まれる。更に、別段の指示がなく、別段のことが文脈及び当業者の解釈から明白でもない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態において、明記される範囲内の任意の具体的な値又は部分範囲を、文脈上別段の指示が明確にない限り、その範囲の下限の単位の小数第1位まで想定することができると理解されるべきである。
【0019】
本明細書で使用する場合、1つ又は複数の目的の値に適用される「約」又は「およそ」という用語は、明記される参照値と類似した値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、別段の記述がなく、別段のことが文脈から明白でもない限り、明記される参照値のいずれかの方向(より大きいか又はより小さい)の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下に収まる値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0020】
本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴又は特性の全て又はほぼ全ての範囲又は程度を呈する定性的条件を指す。生物学分野の当業者は、生物学的及び化学的現象が、完了する及び/又は完全な状態まで進むことも、絶対的な結果を達成又は回避することも、たとえあったとしてもまれであることを理解するだろう。したがって、「実質的に」という用語は、本明細書では、多くの生物学的及び化学的現象に固有の、完全性の潜在的な欠如を表すために使用される。
【0021】
「薬学的に許容される」という用語は、好ましくは、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局又は米国以外の国の対応する当局によって承認されているか又は承認可能であるか、或いは米国薬局方又は他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0022】
「タンパク質」又は「ペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、ペプチド結合によって一緒に連結した少なくとも2個以上のアミノ酸残基を指す。タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列は標準的な形式、すなわちアミノ末端(N末端)からカルボキシル末端(C末端)まで示される。
【0023】
「融合タンパク質」という用語は、別のタンパク質又はペプチドと、それぞれのN末端アミノ酸残基とC末端アミノ酸残基との間若しくはC末端アミノ酸残基とN末端アミノ酸残基との間のペプチド結合によって、又は第1のタンパク質若しくはペプチドの第2のタンパク質若しくはペプチドの内部領域への、挿入されるタンパク質若しくはペプチドのN及びC末端の2つのペプチド結合による挿入によって、連結したタンパク質又はペプチドを示す。ペプチド結合は、あるアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミン基との間で形成される共有化学結合である。融合タンパク質は、第1のタンパク質又はペプチドのコード配列が第2のタンパク質又はペプチドのコード配列と連結している融合タンパク質遺伝子の発現宿主での発現によって産生される。
【0024】
「配列番号1の融合タンパク質」は、本明細書では「cpIL-2:IL-2Rα」とも称され、国際公開第2013/184942号に記載されている。配列番号1の融合タンパク質は、IL-2受容体のIL-2Rα部分の細胞外ドメインと融合した循環置換型(cp)IL-2バリアントであり、以下のアミノ酸配列:
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQGSGGGSELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTG(配列番号1)
を有する。
【0025】
本発明はまた、配列番号1の約20アミノ酸~最大で全長までの連続した区間に対して約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、配列番号1の融合タンパク質のバリアントの使用を企図する。配列番号1のバリアントは、規定の長さの連続したアミノ酸(例えば「比較ウィンドウ」)にわたって配列番号1と比較した場合に規定の配列同一性を有し得る。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知である。比較に最適な配列のアラインメントは、例えば、Smith及びWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package、Madison、Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は手動アラインメント及び目視検査(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995補遺)を参照のこと)によって行うことができる。
【0026】
一例として、配列番号1の融合タンパク質のバリアントは、配列番号1の少なくとも20アミノ酸、好ましくは約20アミノ酸~約40アミノ酸、約40アミノ酸~約60アミノ酸、約60アミノ酸~約80アミノ酸、約80アミノ酸~約100アミノ酸、約100アミノ酸~約120アミノ酸、約120アミノ酸~約140アミノ酸、約140アミノ酸~約150アミノ酸、約150アミノ酸~約155アミノ酸、約155アミノ酸~最大で全長までの配列番号1の連続した区間と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0027】
「IL-2療法」という用語には、IL-2に基づく免疫療法の投与、並びにそれと関連する免疫療法としての生物学的機能、例えば、これらに限定されないが、CD4+制御性T細胞の維持及びCD4+T細胞の様々なサブセットへの分化と、CD8+T細胞及びNK細胞の細胞傷害活性の促進と、ヘルパーT17(Th17)分化を阻害する一方でヘルパーT1(Th1)及びヘルパーT2(Th2)細胞へのナイーブCD4+T細胞分化を促進する、抗原に応答するT細胞分化プログラムの調節とが含まれる。したがって、本明細書で使用する場合、「IL-2療法」には、これらに限定されないが、rhIL-2又はrhIL-2のバリアント、例えば配列番号1の融合タンパク質を用いる免疫療法が含まれる。
【0028】
「高用量IL-2」及び「HD IL-2」という用語には、約若しくは少なくとも約600,000国際単位(IU)/kg体重(kg)/用量、又は約若しくは少なくとも約720,000IU/kg/用量の用量のインターロイキン-2(IL-2)が含まれる。
【0029】
「低用量IL-2」及び「LD IL-2」という用語には、約600,000IU/kg体重/用量未満、例えば約60,000又は約72,000IU/kg/用量、例えば約60,000~約72,000IU/kg/用量の用量のインターロイキン-2(IL-2)が含まれる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「対象」又は「患者」という用語は、本開示の組成物が、例えば、実験、診断、予防、及び/又は治療目的で投与され得るあらゆる生物を指す。典型的な対象としては動物(例えば哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒト)並びに/又は植物が挙げられる。好ましくは、「患者」とは、処置を求めているか若しくは必要としていると考えられるか、処置を必要とするか、処置を受けているか、処置を受ける予定であるヒト対象、又は特定の疾患若しくは状態のために熟練した専門家による治療下にある対象を指す。「患者」は小児(1歳超~17歳)であってもよい。更に他の実施形態では、患者は乳児(1歳以下)であってもよい。また更に他の実施形態では、患者は小児科患者であってもよく、「小児科」という用語は当業者によって理解される通りに使用される。例えば、小児科患者には乳児、小児、及び青年が含まれる。
【0031】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、適切な医学的判断の範囲内において、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適で、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題又は合併症も伴わない、合理的なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。
【0032】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本開示の化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は担体を指す。薬学的に許容される賦形剤は全体として、薬理学的組成物に添加されるか又はそうでなければ薬剤の投与を容易にするためにビヒクル、担体、若しくは希釈剤として使用され且つ薬剤と適合性である、不活性物質等の非毒性で、生物学的に忍容され、その他の点では対象への投与に生物学的に好適な物質である。賦形剤の例としては、所望される特定の剤形に適する、水、任意の及び全ての溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散若しくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘若しくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤等が挙げられる。Remington's The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A. R. Gennaro(Lippincott, Williams & Wilkins社、Baltimore、Md.、2006;参照によって本明細書に組み込まれる)は、医薬組成物を製剤化する場合において使用される様々な賦形剤及びその調製のための公知の技法を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が、例えば任意の望ましくない生物学的効果を生じるか又はそうでなければ医薬組成物の任意の他の成分と有害に相互作用することによって、物質又はその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は本開示の範囲内であると企図される。
【0033】
「組換え産生」という用語は、組換え、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、in vitro変異誘発、及び直接DNA合成を含む、2つ以上のDNA配列を操作して1つに組み合わせるための技法を指す。これらの技法は、「Current protocols in molecular biology」(Ausubel編、2008、John Wiley & Son社)を含む多数の公開されている書籍及びマニュアルに記載されている。
【0034】
本明細書で使用する場合、「組合せ」、「組み合わされた療法」、及び/又は「組み合わされた処置レジメン」の任意の形態の投与又は共投与とは、別個の製剤若しくは複合製剤のいずれかにおいて同時に、又は数分、数時間、若しくは数日空けた異なる時間で逐次に投与又は共投与され得る少なくとも2種類の治療上活性な薬剤を指す。全般に、各薬剤は、その薬剤に関して決定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「非経口」という用語は、注射又は注入としての投与が意図されている剤形を指し、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、及び筋肉内注射、並びに通例静脈内経路による注入注射を含む。
【0036】
「治療剤」という用語は、症状又は疾患の処置を必要とする個体における症状又は疾患を処置するために、配列番号1に加えて又はそれと組み合わせて投与される任意の薬剤を包含する。そのような追加の治療剤は、処置される特定の適応症に好適な任意の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する有効成分を含んでもよい。好ましくは、追加の治療剤は抗炎症剤である。
【0037】
「化学療法剤」という用語は、がん細胞と相互作用し、それによって、例えば細胞分裂若しくはDNA合成を障害するか又はDNAを損傷させることによって、細胞の増殖状況を抑制及び/又は細胞を死滅させることができる、短時間で分裂する細胞を効果的に標的とする化合物又はその誘導体を指す。化学療法剤の例としては、これらに限定されないが、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート(MTX)、5-フルオロウラシル、又はそれらの誘導体)、置換ヌクレオチド、置換ヌクレオシド、DNA脱メチル化剤(代謝拮抗薬としても公知、例えばアザシチジン)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド等が挙げられる。そのような薬剤としては、これらに限定されないが、抗がん剤トリメトトレキセート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソウレア類、すなわちニトロソウレア(アラビノピラノシル-N-メチル-N-ニトロソウレア(アラノース)、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、クロロゾトシン、エチルニトロソウレア(ENU)、フォテムスチン、ロムスチン(CCNU)、ニムスチン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)、ラニムスチン(MCNU)、セムスチン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、シタラビン、及びカンプトテシン、又はそれらの任意の治療誘導体を更に挙げることができる。
【0038】
「治療有効量」又は「有効な量」という語句は、単独又は医薬組成物の部分としての、及び単回用量又は一連の用量の部分としての対象への薬剤の投与であって、対象に投与した場合に、疾患、障害、又は状態の任意の症状、態様、又は特徴に対して任意の検出可能な良い効果を及ぼすことができる量での、投与を指す。治療有効量は、関連する生理学的効果を測定することによって確かめることができ、投薬レジメン及び対象の状態の診断分析等に関連して調整することができる。例として、投与後に産生される炎症性サイトカインの量の測定は、治療有効量が使用されたか否かを示すことができる。がん又は制御されない細胞分裂に関連する病態との関連では、治療有効量は、(1)腫瘍のサイズを減少させる(すなわち腫瘍縮小)、(2)異常な細胞分裂、例えばがん細胞分裂を阻害する(すなわち、ある程度緩慢にする、好ましくは停止させる)、(3)がん細胞の転移を防止若しくは抑制する、及び/又は(4)例えばがんを含む制御されない若しくは異常な細胞の分裂に関連するか若しくは部分的にはそれによって引き起こされる病態と関連する1つ若しくは複数の症状をある程度緩和する(か若しくは、好ましくは取り除く)効果を有する量を指す。
【0039】
「有効な量」はまた、本発明の治療上活性な組成物の投与時に望ましいPD及びPKプロファイル並びに望ましい免疫細胞プロファイリングをもたらす量である。
【0040】
疾患(又は状態若しくは障害)を「処置すること」又はそれの「処置」という用語は、本明細書で使用する場合、疾患に罹りやすくなっていると考えられるが未だ疾患の症状を経験しても呈してもいないヒト対象又は動物対象に疾患が生じるのを防止すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発症を緩慢にするか又は停止させること)、疾患の症状又は副作用の緩和を実現すること(対症処置を含む)、及び疾患の後退を引き起こすことを指す。「処置する」、「処置すること」、「処置」、「治療的」、及び「療法」という用語は、疾患又は状態の完全な治癒又は消滅を必ずしも意味しない。疾患又は状態の望ましくないいかなる徴候又は症状のいかなる程度のいかなる軽減も、処置及び/又は療法と見なすことができる。更に、処置には、患者の全体的な幸福感又は外観を悪化させ得る行為が含まれ得る。がんに関して、これらの用語はまた、がんに罹患した個体の平均余命が増加し得ること、又は疾患の1つ若しくは複数の症状が低減し得ることを意味する。がんに関して、「処置すること」にはまた、対象における抗腫瘍応答を増強又は延長することが含まれる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「防止すること」という用語は、感染症、疾患、障害、及び/若しくは状態の開始を部分的若しくは完全に遅延させること、特定の感染症、疾患、障害、及び/若しくは状態の1つ若しくは複数の症状、特色、若しくは臨床所見の開始を部分的若しくは完全に遅延させること、特定の感染症、疾患、障害、及び/若しくは状態の1つ若しくは複数の症状、特色、若しくは所見の開始を部分的若しくは完全に遅延させること、感染症、特定の疾患、障害、及び/若しくは状態からの進行を部分的若しくは完全に遅延させること、並びに/又は感染症、疾患、障害、及び/若しくは状態と関連する病態を発症するリスクを低減することを指す。
【0042】
「無増悪生存期間(PFS)」とは、本明細書に記載されるがんの文脈で使用する場合、がんの処置中及び処置後の、客観的な腫瘍進行又は患者の死亡までの時間の長さを指す。処置は、理学的検査、神経学的検査、又は精神評価の結果を含む客観的又は主観的パラメータによって評価することができる。好ましい態様では、PFSは盲検下画像中央判定によって評価することができ、任意選択で、ORR又は盲検下独立中央判定(BICR)によって更に確認されてもよい。
【0043】
「全生存(OS)」は、ある特定の時点(例えば1年及び2年)でのOS率に基づいてカプラン・マイヤー法によって評価することができ、対応する95%CIは、各腫瘍型に対する研究処置ごとに、グリーンウッドの式に基づいて導出される。OS率は、その時点で生存している参加者の割合として定義される。参加者のOSは、最初の投薬日から任意の原因による死亡日までの時間として定義される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「完全奏効」(CR)とは、処置に応答したがんの全ての徴候の消失である。完全奏効は本明細書では「完全寛解」と称される場合もある。
【0045】
本明細書で使用する場合、「部分奏効」(PR)という用語は、処置に応答した身体における腫瘍のサイズ又はがんの範囲の低減を意味する。部分奏効は本明細書では「部分寛解」と称される場合もある。
【0046】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語には、異常な細胞が抑制されずに分裂する疾患に対する一般的な用語としての通常の意味が与えられるものとする。
【0047】
「腫瘍を減少させること」又は「腫瘍縮小」という用語は、本明細書で使用する場合、腫瘍塊のサイズ又は体積の減少、対象における転移した腫瘍の数の減少、がん細胞の増殖状況(がん細胞が増幅している程度)の減少等を指す。
【0048】
「増強すること」という用語は、本明細書で使用する場合、対象又は腫瘍細胞が本明細書に開示される処置に応答する能力を向上することを可能にすることを指す。例えば、増強した応答は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%、又はそれ以上の応答性の増加を含み得る。本明細書で使用する場合、「増強すること」はまた、化学療法、薬物耐性免疫担当細胞、及び免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せ療法等の処置に応答する対象の数を増強することを指すこともできる。例えば、増強した応答は、処置に応答する対象の合計百分率を指してもよく、百分率は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%、又はそれ以上である。
【0049】
「免疫チェックポイントタンパク質」は免疫系におけるT細胞機能を制御する。T細胞は細胞媒介免疫において中心的な役割を果たす。免疫チェックポイントタンパク質は、シグナルをT細胞に送る特異的リガンドと相互作用し、本質的にT細胞機能のスイッチをオフにするか又はT細胞機能を阻害する。がん細胞は、その表面に免疫チェックポイントタンパク質の高レベルの発現を駆動することによってこのシステムを利用し、結果として、腫瘍微小環境に進入する、その表面に免疫チェックポイントタンパク質を発現するT細胞の抑制をもたらし、そのようにして抗がん免疫応答を抑制する。したがって、本明細書では「免疫チェックポイント阻害剤」又は「チェックポイント阻害剤」と称される薬剤による免疫チェックポイントタンパク質の阻害は、T細胞機能及びがん細胞に対する免疫応答の回復をもたらし得る。免疫チェックポイントタンパク質の例としては、これらに限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンド、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、OX40、A2aR、B-7ファミリーリガンド、又はそれらの組合せであり得る免疫チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、これらに限定されないが、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、CTLA-4アンタゴニスト、アデノシンA2A受容体アンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、BTLAアンタゴニスト、KIRアンタゴニスト、LAG3アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、又はTIGITアンタゴニスト由来のものが挙げられる。
【0050】
配列番号1の融合タンパク質
国際公開第2013/184942号に記載されている組換えヒトIL-2バリアント融合タンパク質は、IL-2受容体のIL-2Rα部分の細胞外ドメインと融合した循環置換型(cp)IL-2バリアントであり、本明細書では「配列番号1の融合タンパク質」と称され、以下のアミノ酸配列:
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQGSGGGSELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTG(配列番号1)
を有する。
【0051】
配列番号1に密接に関連する融合タンパク質、例えば配列番号1の少なくとも約20アミノ酸~最大で全長までの連続した配列に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性の配列同一性を有する融合タンパク質もまた本発明の方法に従った投与に好適であり得ることが企図される。
【0052】
配列番号1の融合タンパク質(
図1、パネルA)は、高親和性IL-2R(
図1、パネルB)ではなく中親和性IL-2R(
図1、パネルB)に選択的に結合しそれを活性化するように設計される。配列番号1の融合タンパク質のIL-2Rαドメインは、配列番号1の融合タンパク質の高親和性IL-2Rへの結合を立体的に妨げるが中親和性IL-2Rへの結合は依然として可能とするのに役立つ。
【0053】
in vitro及びin vivo非臨床薬力学的(PD)データは、NK細胞及びCD8+T細胞等のエフェクター細胞の選択的活性化及び増大を引き起こすと同時に免疫抑制性制御性T細胞(Treg)の活性化及び増大を最小化する配列番号1の融合タンパク質による中親和性IL-2受容体を介した選択的シグナル伝達を支持する。加えて、マウスのin vivoにおいて、配列番号1の融合タンパク質のマウスサロゲートは、Tregに比べて同等か又は大きいエフェクター細胞の増大を誘発する用量で、rhIL-2に比べて向上した忍容性を示す。
【0054】
同時係属中の米国仮出願第62/860,182号に記載されるヒト臨床データにおける第1のものは、配列番号1の融合タンパク質がTregの最小の非用量依存的な活性化を伴って(すなわちTregの用量依存的な活性化の非存在下で)CD8+T細胞及びNK細胞の増大を用量依存的に活性化することを示す。したがって、配列番号1の融合タンパク質は、高用量rhIL-2に匹敵する濃度でヒト患者に投薬して、例えば高用量rhIL-2と比較して同等か又は大きいNK細胞及びCD8+T細胞の増大を、しかし高用量rhIL-2と比較してはるかに小さい(2分の1以下の)免疫抑制性Tregの相対的増大を伴って、誘発することができる(表2)。
【0055】
以下の実施例に記載される非臨床及びヒト臨床データは、例えば、配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投薬がT細胞疲弊とCD4+制御性T細胞集団がCD8+T細胞の細胞傷害作用を圧倒する可能性との両方を回避することを実証する。
【0056】
医薬組成物
配列番号1の融合タンパク質は、好ましくは、患者への注射を介した皮下投与のために製剤化される。全般に、そのような組成物は、配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の薬学的に許容されるか又は生理学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤とを含む「医薬組成物」である。
【0057】
本発明の医薬組成物は皮下投与と適合性となるように製剤化される。医薬組成物はまた、本開示によって企図される疾患、障害、及び状態を処置又は防止ために、本明細書に記載される他の治療上活性な薬剤又は化合物と組み合わせた投与に好適となるように製剤化されてもよい。
【0058】
皮下投与のための医薬組成物は典型的には、治療有効量の配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の薬学的及び生理学的に許容される製剤用薬剤とを含む。
【0059】
医薬組成物は、皮下投与のために製剤化された後、好ましくは、液剤、懸濁剤、ゲル、エマルション、固体、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアルに保存することができる。そのような製剤は、直ちに使用できる形態、使用前に再構成を必要とする凍結乾燥形態、使用前に希釈を必要とする液体形態、又は他の許容される形態のいずれかにおいて保存することができる。
【0060】
好ましくは、医薬組成物は単回使用容器(例えば、単回使用バイアル、アンプル、シリンジ、又は自動注射器において提供されるが、他の実施形態では多回使用容器(例えば多回使用バイアル)が提供される。任意の薬物送達装置、例えば、その全てが当業者に周知である植込み体(例えば植込型ポンプ)、並びにカテーテルシステム、緩徐注射ポンプ及びデバイスが、医薬組成物を送達するために使用することができる。一般に皮下又は筋肉内投与されるデポ注射剤もまた、本明細書に開示されるポリペプチドを規定の時間期間にわたって放出するために利用することができる。デポ注射剤は通例固体型又は油性のいずれかであり、全体として、本明細書に記載される製剤成分のうちの少なくとも1つを含む。当業者はデポ注射剤の可能性のある製剤及び使用に精通している。
【0061】
医薬組成物は滅菌注射用水性又は油性懸濁剤の形態であり得る。この懸濁剤は、本明細書で言及される好適な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用液剤又は懸濁剤であり得る。用いられ得る許容される希釈剤、溶媒、及び分散媒としては、水、リンガー液、等張塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF社、Parsippany、N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、並びにそれらの好適な混合物が挙げられる。加えて、滅菌固定油は溶媒又は懸濁媒体として従来用いられている。合成モノ又はジグリセリドを含むいかなる無刺激固定油も用いることができる。オレイン酸等の脂肪酸には注射剤の調製における用途がある。特定の注射用製剤の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン)を含めることによって達成することができる。
【0062】
皮下送達のための製剤における配列番号1の融合タンパク質の濃度は、大きく変更することができ(例えば、質量で約0.1%未満、通例約2%又は少なくとも約2%から最大20%~50%又はそれ以上)、通例、例えば選択される特定の投与方法に従って、液量、粘度、及び対象に基づく因子に主に基づいて選択される。
【0063】
好ましくは、本発明は、約0.1mg~約30mg、約0.3mg~約30mg、約0.3mg~約25mg、約0.3mg~約20mg、約0.3mg~約15mg、約0.3mg~約10mg、約0.3mg~約3mg、約0.3mg~約1mg、約1mg~約30mg、約1mg~約25mg、約1mg~約20mg、約1mg~約15mg、約1mg~約10mg、約1mg~約3mg、約3mg~約30mg、約3mg~約25mg、約3mg~約20mg、約3mg~約15mg、約3mg~約10mg、約10mg~約30mg、約10mg~約25mg、約10mg~約20mg、又は約10mg~約15mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む皮下投与のための医薬組成物を提供する。
【0064】
好ましくは、本発明は、少なくとも約0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.5mg、0.8mg、0.9mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、10.5mg、11mg、11.5mg、12mg、12.5mg、13mg、13.5mg、14mg、14.5mg、15mg、15.5mg、16mg、16.5mg、17mg、17.5mg、18mg、18.5mg、19mg、19.5mg、20mg、20.5mg、21mg、21.5mg、22mg、22.5mg、23mg、23.5mg、24mg、24.5mg、25mg、25.5mg、26mg、26.5mg、27mg、27.5mg、28mg、28.5mg、29mg、29.5mg、又は30mgの用量の配列番号1の融合タンパク質を含む皮下投与のための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は任意選択で薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0065】
好ましくは、本発明は、多くの場合小児科患者における用量を算出するのに好ましいが成人のための用量を算出するのにも有用であるμg/kg単位での用量、好ましくは、約1μg/kg~約500μg/kg、約1μg/kg~約250μg/kg、約1μg/kg~約100μg/kg、約1μg/kg~約50μg/kg、約1μg/kg~約25μg/kg、約1μg/kg~約15μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約1μg/kg~約5μg/kg、約5μg/kg~約500μg/kg、約5μg/kg~約250μg/kg、約5μg/kg~約100μg/kg、約5μg/kg~約50μg/kg、約5μg/kg~約25μg/kg、約5μg/kg~約15μg/kg、約5μg/kg~約10μg/kg、約15μg/kg~約500μg/kg、約15μg/kg~約250μg/kg、約15μg/kg~約100μg/kg、約15μg/kg~約50μg/kg、約15μg/kg~約25μg/kg、約50μg/kg~約500μg/kg、約50μg/kg~約250μg/kg、約50μg/kg~約100μg/kg、約150μg/kg~約500μg/kg、約150μg/kg~約250μg/kg、約200μg/kg~約500μg/kg、約250μg/kg~約350μg/kg、約300μg/kg~約500μg/kg、約300μg/kg~約400μg/kg、約400μg/kg~約500μg/kgの用量、又は例えば60~70kgの成人に基づくその対応する固定用量、又は小児、例えば約12kg~約50kg若しくはそれ以上の小児に基づく対応する固定用量の配列番号1の融合タンパク質を含む皮下投与のための医薬組成物を提供する。
【0066】
皮下投薬レジメン
配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下(SC)投与経路は、静脈内(IV)投与経路と比較して、延長曝露プロファイルを伴うより低い血清中最大薬物濃度を生じると予期され、したがって、IV投与経路と比較して向上した忍容性をもたらし得る。加えて、SC投与経路は、リンパ節への直接送達を容易にすると予期され、IV投薬に比べて増強した免疫学的効果をもたらし得る。定期的SC投薬スケジュール(すなわち、q3d、q4d、q7d、q14d、又はq21d)は、毎日のSC又はIV投薬に対するより簡便な代替手段を提供し得る。
【0067】
配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投与は、Tregにおける最小の差を伴って、毎日の皮下投薬レジメン(例えばqd×5)と比較して大きい循環CD8+T細胞の増大をもたらし、結果としてより大きい抗腫瘍有効性及び最小のT細胞疲弊をもたらすことが発見された。
【0068】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、約3日ごとに1回(q3d)~約60日ごとに1回(q60d)、好ましくは3日ごとに1回(q3d)~約21日ごとに1回(q21d)、好ましくは、4日ごとに1回(q4d)、7日ごとに1回(q7d)、14日ごとに1回(q14d)、又は21日ごとに1回(q21d)、定期的に投与される。
【0069】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は約0.1~30mgの用量で皮下投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、約0.1mg~約30mg、約0.3mg~約30mg、約0.3mg~約25mg、約0.3mg~約20mg、約0.3mg~約15mg、約0.3mg~約10mg、約0.3mg~約3mg、約0.3mg~約1mg、約1mg~約30mg、約1mg~約25mg、約1mg~約20mg、約1mg~約15mg、約1mg~約10mg、約1mg~約3mg、約3mg~約30mg、約3mg~約25mg、約3mg~約20mg、約3mg~約15mg、約3mg~約10mg、約10mg~約30mg、約10mg~約25mg、約10mg~約20mg、又は約10mg~約15mgの用量で皮下投与される。
【0070】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、多くの場合小児科患者における用量を算出するのに好ましいが成人のための用量を算出するのにも有用であるμg/kg単位で表される用量、好ましくは、約1μg/kg~約500μg/kg、約1μg/kg~約250μg/kg、約1μg/kg~約100μg/kg、約1μg/kg~約50μg/kg、約1μg/kg~約25μg/kg、約1μg/kg~約15μg/kg、約1μg/kg~約10μg/kg、約1μg/kg~約5μg/kg、約5μg/kg~約500μg/kg、約5μg/kg~約250μg/kg、約5μg/kg~約100μg/kg、約5μg/kg~約50μg/kg、約5μg/kg~約25μg/kg、約5μg/kg~約15μg/kg、約5μg/kg~約10μg/kg、約15μg/kg~約500μg/kg、約15μg/kg~約250μg/kg、約15μg/kg~約100μg/kg、約15μg/kg~約50μg/kg、約15μg/kg~約25μg/kg、約50μg/kg~約500μg/kg、約50μg/kg~約250μg/kg、約50μg/kg~約100μg/kg、約150μg/kg~約500μg/kg、約150μg/kg~約250μg/kg、約200μg/kg~約500μg/kg、約250μg/kg~約350μg/kg、約300μg/kg~約500μg/kg、約300μg/kg~約400μg/kg、約400μg/kg~約500μg/kgの用量、又は例えば60~70kgの成人に基づくその対応する固定用量、又は小児、例えば約12kg~約50kg若しくはそれ以上の小児に基づく対応する固定用量で皮下投与される。
【0071】
好ましくは、配列番号2の融合タンパク質の定期的皮下投与の結果として生じる循環CD8+T細胞の増加は、ベースラインと比較して少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、約9倍、約10倍、又はそれ以上である。好ましくは、配列番号2の融合タンパク質の定期的皮下投与の結果として生じる循環CD8+T細胞の増加の比は、循環制御性T細胞の増加の比に比べて大きい。
【0072】
しかしながら、これまでのがん免疫療法(例えばアルデスロイキン)の一般的な制約は、免疫療法による連続的刺激に起因するT細胞の疲弊である。がん免疫療法によるCD4+T細胞及びCD8+T細胞の連続的活性化は、機能的に不活性化した/「疲弊した」状態又は細胞死さえもたらすおそれがある。T細胞疲弊をもたらす過剰刺激は望ましくなく、治療応答の規模又は持続時間を潜在的に限定し得る。がん免疫療法はまた、CD8+T細胞の細胞傷害作用を停止するように作用する制御性T細胞集団の、処置に関連する増加によって損なわれ得る。本発明の配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投薬は、T細胞疲弊と制御性T細胞集団がCD8+T細胞の細胞傷害作用を圧倒する可能性との両方を回避し得る。
【0073】
本発明の定期的投薬レジメンが例えばNK細胞よりもCD8+T細胞の増大に対して全体的な優先性を示したこともまた発見された。末梢及び腫瘍環境におけるCD8+T細胞の増加は免疫療法に対する良好な応答の予後徴候であることが公知である。
【0074】
配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投薬の別の驚くべき利益は、同等か又はより良好な抗腫瘍有効性を達成し、T細胞疲弊を回避すると同時に、より高い全用量を、向上した忍容性及びより少ない回数の投薬で送達可能だということである。
【0075】
驚くべきことに、配列番号1の融合タンパク質の皮下投与は、約0.3~30mgの用量で約3日ごとに1回(q3d)~約60日ごとに1回(q60d)、好ましくは3日ごとに1回(q3d)~約21日ごとに1回(q21d)、好ましくは、4日ごとに1回(q4d)、7日ごとに1回(q7d)、14日ごとに1回(q14d)、又は21日ごとに1回(q21d)、定期的に投与される場合、他の望ましく且つ予期せぬPD、PK、及び免疫細胞プロファイル結果、例えば、q7d皮下投与後の患者の血清において測定した、ベースラインに対するIFNγサイトカインレベルの最大変化倍率が、同等の用量の配列番号1の融合タンパク質のqd×5静脈内投与に関する最大変化倍率よりも少なくとも2倍大きい、好ましくは2倍~5倍大きいという結果をもたらすこともまた発見された。
【0076】
q7d皮下投与後の患者の血清において測定した、ベースラインに対するIL-6サイトカインレベルの最大変化倍率は、同等の用量の配列番号1の融合タンパク質のqd×5静脈内投与に関する最大変化倍率の少なくとも2分の1以下、好ましくは2分の1~5分の1の間である。
【0077】
IFNγは抗腫瘍特性及び免疫調節特性を有する多機能(pleiotropic)サイトカインである。IFNγは、細胞傷害性CD8+T細胞差次的シグナルとして直接作用し、細胞傷害性T細胞前駆体増殖の誘導に不可欠である。IFNγはまた、APCの細胞表面MHCクラスIIを上方制御し、したがってCD4+制御性T細胞のペプチド特異的活性化を促進する。加えて、IFNγはマクロファージを炎症誘発性プロファイル、すなわち抗腫瘍プロファイルのために活性化する。
【0078】
他方、IL-6はがん性細胞を含む腫瘍微小環境中の様々な細胞によって放出される炎症誘発性サイトカインである。IL-6は腫瘍細胞の増大及び分化において決定的な役割を果たす。血清及び腫瘍部位におけるIL-6のレベルの増加はいくつかのがんにおいて実証されている。通例、この増加は予後不良及びより低い生存率を伴う。IL-6の下方制御はがん処置に対するより良好な応答と相関する。
【0079】
好ましくは、本発明の投薬レジメンは、配列番号1の融合タンパク質を含む医薬組成物を約3日ごと(q3d)、約4日ごと(q4d)、約5日ごと(q5d)、約6日ごと(q6d)、約7日ごと(q7d)、約8日ごと(q8d)、約9日ごと(q9d)、約10日ごと(q10d)、約11日ごと(q11d)、約12日ごと(q12d)、約13日ごと(q13d)、約14日ごと(q14d)、約15日ごと(q15d)、約16日ごと(q16d)、約17日ごと(q17d)、約18日ごと(q18d)、約19日ごと(q19d)、約20日ごと(q20d)、約21日ごと、約22日ごと、約23日ごと、約24日ごと、約25日ごと、約26日ごと、約27日ごと、又は約28日ごとに皮下投与する工程を提供する。
【0080】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、約0.1mg、1mg、3mg、6mg、10mg、又は30mgの用量において3日ごとに約1回(q3d)、4日ごとに約1回(q4d)、7日ごとに約1回(q7d)、14日ごとに約1回(q14d)、又は21日ごとに約1回(q21d)、皮下投与される。
【0081】
好ましくは、融合タンパク質の投与のための投薬レジメンは1つ又は複数の処置コースを提供する。第1のコースの処置は、1~90日の範囲の日数の期間にわたり行われ得る。好ましくは、単一の処置コースは、7日、14日、21日、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、又はそれ以上の期間に及ぶ。処置コースは、配列番号1の融合タンパク質の皮下投与を処置コース中に1回又は複数回伴い得る。1つ又は複数の連続するコースの処置が存在してもよく、例えば第1の処置コースの後に第2のコースの処置が続き、好ましくは、2つのコースの処置の間に1日~1年等の時間期間を有する。
【0082】
好ましくは、第1のコースの処置は、配列番号1の融合タンパク質を2~3週間の間3日ごとに1回、2~3週間の間4日ごとに1回、2~3週間の間7日ごとに1回、又は21日ごとに1回皮下投与する工程であって、2又は3回反復され得る、工程を含む。
【0083】
SC投与に好適な配列番号1の融合タンパク質を含む製剤及び医薬組成物並びにこれらの使用に効果的な量は、疾患又は状態の重症度、及び患者の健康の全身状態に依存し得る。製剤の単回又は複数回投与は、患者によって必要とされ且つ忍容される投薬量及び回数に応じて投与され得る。
【0084】
全般に、配列番号1の融合タンパク質を用いる単独療法又は本明細書に記載される任意の組合せ療法の投薬パラメータは、投薬量が対象に不可逆的に毒性となり得る量(すなわち最大忍容量、「MTD」)未満且つ対象に対して測定可能な効果を生じるために必要とされる量以上となることを指示する。そのような量は、例えばADMEに伴う薬物動態パラメータ及び薬力学的パラメータによって、投与経路及び他の因子を考慮して決定される。
【0085】
有効量(ED)とは、薬剤を投与されているある比率の対象において治療応答又は所望の効果を生じる薬剤の用量又は量である。薬剤の「半有効量」又はED50とは、薬剤が投与される集団の50%において治療応答又は所望の効果を生じる薬剤の用量又は量である。ED50は、薬剤の効果の合理的な予測の基準として一般的に使用されているが、臨床医が関連する全ての因子を考慮して適切と見なし得る用量では必ずしもない。したがって、一部の状況では、有効な量は算出されたED50超である可能性があり、他の状況では、有効な量は算出されたED50未満である可能性があり、更に他の状況では、有効な量は算出されたED50と同じである可能性がある。
【0086】
加えて、配列番号1の融合タンパク質の有効量は、単回又は複数回用量において対象に投与される場合、健康な対象に対する所望の結果を生じる量であり得る。例えば特定の障害を経験している対象の場合、有効量は、その障害の診断パラメータ、測定、マーカー等を、100%が正常な対象によって呈される診断パラメータ、測定、マーカー等として定義される場合に少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は90%超向上する量であり得る。
【0087】
好ましくは、患者は、初回処置後にがんが再び生じた場合、配列番号1の融合タンパク質を再び投与される。例えば、患者が固形腫瘍に対して初回処置され、腫瘍が再発するか又はより多くの腫瘍が発生する場合、患者は配列番号1を、例えば別のコース又は一連のコースの配列番号1として投与される。
【0088】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、反復又は連続注射のために患者の同じ部位に皮下注射される皮下注射によって投与される(例えば、上腕、大腿の前面、下腹部、又は上背に投与される)。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は患者の異なる部位又はローテーションさせる部位に投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は皮下植込デバイスによって投与される。好ましくは、植込デバイスは配列番号1の融合タンパク質の徐放性放出を実現する。好ましくは、植込デバイスは配列番号1のタンパク質の連続放出を実現する。
【0089】
本発明は「単位剤形」に含有される投薬量を提供する。「単位剤形」という語句は、各単位が所定の量の配列番号1の融合タンパク質を単独で又は所望の効果を生じるのに十分な1種若しくは複数種の追加の補完的治療剤(例えば免疫チェックポイント阻害剤)と組み合わせて含有する、物理的に別々の単位を指す。単位剤形のパラメータは特定の薬剤及び達成すべき効果に依存し得ることが理解されるだろう。
【0090】
免疫チェックポイントタンパク質阻害剤を用いる組合せ療法
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、以下に記載される別の治療剤及び/又は抗がん剤と共に投与される。好ましくは、治療剤は免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブである。好ましくは、ペムブロリズマブは配列番号1の融合タンパク質と別個の組成物において投与され、配列番号1の注入の前、その後、又は同時に投与される。好ましくは、ペムブロリズマブは約200μgの用量において、又は標準的な処方推奨事項に従って投与され、これは通例21日ごとに約1回行われる。好ましくは、ペムブロリズマブは、各コースの処置の第1日に配列番号1と共に投与される。例示的な処置レジメンを
図2に示す。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質をペムブロリズマブと共投与する場合、配列番号1を用いる第1のコースの処置とその後の全てのコースの処置とは、全体として、配列番号1の融合タンパク質が3、4、7、10、14、又は21日ごとに1回のみ皮下投与され、ペムブロリズマブが21日ごとに1回投与される約21日のコースである。
【0091】
本発明の及び上に記載した全ての投薬レジメンは、好ましくは、制御性T細胞の増大に対する最小の効果を伴って患者における循環NK細胞及びCD8+T細胞の増加をもたらす。好ましくは、本発明の全ての投薬レジメンは、患者における循環Treg細胞の増加の比に比べて大きいCD8+T細胞の増加の比をもたらす。高用量又は低用量rhIL-2療法と比較した場合、本発明の全ての投薬レジメンは、高用量又は低用量rhIL-2の1日当たり3回の投薬を投薬することと比較して少ない回数の投薬を必要とする。
【0092】
好ましくは、様々な疾患、障害、及び状態(例えばがん)を処置及び/又は防止する1種又は複数種の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされる配列番号1の融合タンパク質及びその医薬組成物は、個々の療法の単独での投与と関連する任意の有害作用を最小化するのに役立つ特定の投薬パラメータを利用することによってもたらされる。例として、免疫チェックポイント阻害剤(例えばペムブロリズマブ)を含む処置レジメンにおける配列番号1の融合タンパク質の定期的皮下投与の追加は、治療目標を達成するために必要とされる免疫チェックポイント阻害剤の量の減少を可能にし、したがって、ある特定の免疫チェックポイント阻害剤(例えばペムブロリズマブ)に対する「ブラックボックス」警告を要求するようにFDAに促した重度及び致死的な免疫介在性有害反応を軽減する(か又は取り除きさえする)可能性がある。
【0093】
本発明の処置レジメンは、患者が治癒するまで、又は患者がもはや処置レジメンから恩恵を受けなくなるまで患者に投与される。
【0094】
向上した安全性プロファイル
毎日の皮下又は静脈内投与に勝る定期的皮下投薬の潜在的な利点としては、(i)がん免疫療法に伴う連続的T細胞刺激と関連するT細胞疲弊のリスクを低下させること、(ii)がん免疫療法の結果としてのCD8+T細胞刺激を圧倒する制御性T細胞刺激のリスクを低下させること、(iii)より軽度の安全性プロファイル及び向上した忍容性をもたらし得る、延長曝露プロファイルを伴うより低いピーク血清薬物濃度、(iv)直接的な免疫学的効果を容易にし得るリンパ吸収、(v)毎日の入院患者静脈内投薬よりも簡便な投薬スケジュール、(vi)より低い患者体重減少のリスク、vii)より少ない回数の投薬での、配列番号1の融合タンパク質のより高い効果的な投薬、並びにviii)上昇した炎症誘発性サイトカイン産生の低下したリスクが挙げられる。本発明の方法は、IL-2療法の所望の治療活性を維持すると同時に、通例高用量IL-2療法(例えばアルデスロイキン)と関連する副作用のリスクを減少させるだけでなく、多くの場合IV投与又は毎日のSC投薬と関連する副作用のリスクも減少させる。そのような副作用としては、これらに限定されないが、毛細血管漏出症候群(CLS)、並びにサイトカイン放出症候群(CRS)、多くの場合CLSに伴う及び/又はCLSと重複するサイトカインを用いる免疫療法と関連する別の症候群が挙げられる。
【0095】
また、本明細書で使用する場合、「向上した安全性プロファイル」、又は「より低い副作用のリスク」、又は「低下した副作用の頻度又は重症度」は、通常IL-2療法と関連する副作用又は症状の所見の約1%の減少、約2%の減少、約3%の減少、約4%の減少、約5%の減少、約6%の減少、約7%の減少、約8%の減少、約9%の減少、約10%の減少、約20%の減少、約30%の減少、約40%の減少、約50%の減少、約60%の減少、約70%の減少、約80%の減少、約90%の減少、約100%の減少であり得、配列番号1のIV又は毎日のSC投与の結果であり得る効果を軽減する。
【0096】
好ましくは、本発明の配列番号1の融合タンパク質の投薬レジメンは、本明細書では血管漏出症候群(VLS)とも称される毛細血管漏出症候群(CLS)の頻度及び重症度を低下させる。他の副作用のリスクとしては、これに限定されないが、サイトカイン放出症候群(CRS)が挙げられる。CRSは、CLSの症状と臨床的に重複し得る症状を有するが、CRSと全く異なる症状を引き起こす場合もある免疫療法の重篤な副作用である。CRSは、IL-6、IFN-γ、TNF、IL-2、IL-2受容体a、IL-8、IL-10、及びGM-CSFを含む大量のサイトカインを放出するT細胞を増殖する結果として生じると考えられている。CRSを有する患者は、体温上昇、頻脈、低血圧、不整脈、心臓駆出率の低下を含む心血管症状、浮腫、低酸素、呼吸困難、及び間質性肺炎を含む肺症状、通例腎灌流の低下によって引き起こされる急性腎障害、血清トランスアミナーゼ及びビリルビンの上昇、下痢、大腸炎、悪心、並びに腹痛を含む肝及び胃腸症状、血球減少、例えばグレード3~4の貧血、血小板減少症、白血球減少症、好中球減少症、及びリンパ球減少症を含む血液学的症状、プロトロンビン時間及び活性化部分トロンボプラスチン時間(PTT)の延長、Dダイマー上昇、低フィブリノーゲン、播種性血管内凝固症候群、マクロファージ活性化症候群(MAS)、出血、B細胞形成不全、並びに低ガンマグロブリン血症を含む凝固機能異常、菌血症、サルモネラ食中毒、尿路感染症、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、及び帯状疱疹ウイルス等のウイルス感染症を含む感染性疾患、クレアチンキナーゼの上昇、筋肉痛、及び脱力を含む筋骨格症状、せん妄、錯乱、及びてんかん発作を含む神経学的症状、のいずれか1つ又は複数を経験し得る。
【0097】
MASは、肝脾腫、リンパ節腫脹、汎血球減少症、肝機能不全、播種性血管内凝固症候群、低フィブリノーゲン血症、高フェリチン血症、及び高トリグリセリド血症を経験する可能性がある対象に関してCRSと臨床的に重複する。CRSと同様に、MASを有する対象は、IFN-γ及びGMCSFを含む上昇したレベルのサイトカインを呈する。好ましくは、本発明の配列番号1の融合タンパク質の投薬レジメンは、MASの頻度及び重症度を低下させる。
【0098】
IL-2療法を含む免疫療法の別の副作用は腫瘍崩壊症候群(TLS)であり、これは、大半の場合リンパ腫及び白血病に対する細胞死を引き起こす療法の結果として細胞の内容物が放出される場合に生じる。TLSは血中イオン及び代謝産物不均衡を特徴とし、症状としては、悪心、嘔吐、急性尿酸腎症、急性腎不全、てんかん発作、心不整脈、及び死亡が挙げられる。好ましくは、本発明の配列番号1の融合タンパク質の投薬レジメンは、TLSの頻度及び重症度を低下させる。
【0099】
神経毒性はIL-2療法を含む免疫療法の結果として生じる場合があり、症状としては、脳浮腫、せん妄、幻覚、不全失語症、無動性無言症、頭痛、錯乱、覚醒状態の変化、運動失調症、失行、顔面神経麻痺、振戦、測定障害、及びてんかん発作を挙げることができる。好ましくは、本発明の配列番号1の融合タンパク質の投薬レジメンは、神経毒性の頻度及び重症度を低下させる。
【0100】
IL-2免疫療法を経る患者は、貧血、失語症、不整脈、関節痛、背部痛、血液及び骨髄障害、血液及びリンパ系障害、心障害、悪寒、凝固障害、大腸炎、錯乱状態、全身症状、咳、食欲減退、下痢、見当識障害、めまい、呼吸困難、脳症、疲労、体温上昇、胃腸障害、全身性心血管障害、出血、肝障害、高血糖症、低カリウム血症、甲状腺機能低下症、ALTの増加、ASTの増加、C反応性タンパク質の増加、感染発熱性好中球減少症、白血球減少症、倦怠感、異常な代謝臨床検査結果、代謝栄養障害、粘膜炎症、筋骨格障害、筋肉痛、悪心、神経系障害、神経学的障害、好中球減少症、浮腫、疼痛、手掌足底発赤知覚不全、異常感覚、肺炎、掻痒、肺障害、発熱、発疹、腎泌尿生殖器障害、呼吸器障害、皮膚及び皮下組織障害、傾眠、言語障害、発汗、胸郭縦隔障害、血小板減少症、振戦、腫瘍フレア、腫瘍崩壊症候群、血管障害、並びに嘔吐を含む、CLS、CRS、MAS、又はTLSによって引き起こされるわけでは必ずしもない1つ又は複数の副作用又は症状を経験し得る。好ましくは、本発明の配列番号1の融合タンパク質の投薬レジメンは、これらの他の副作用の頻度及び重症度を低下させる。
【0101】
がん適応症
配列番号1の融合タンパク質を使用する本発明の処置レジメンは、多くの種類のがんの処置に有用である。本明細書で使用する場合、「がん」という用語には、異常な細胞が抑制されずに分裂する疾患に対する一般的な用語としての通常の意味が与えられるものとする。特に、本発明の複数の実施形態の文脈では、がんは血管新生関連がんを指す。がん細胞は、近くの組織に浸潤することができ、血流及びリンパ系を介して身体の他の部分へ拡散することができる。いくつかの主要な種類のがんが存在し、例えば、癌腫は、皮膚、又は内臓の内側若しくは外側を覆う組織において開始するがんである。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又は他の結合若しくは支持組織において開始するがんである。白血病は、骨髄等の血液形成組織において開始するがんであり、多数の異常な血液細胞を産生させ、血流に進入させる。リンパ腫は、免疫系の細胞において開始するがんである。
【0102】
正常細胞が規定の抑制及び統合された単位として振る舞う能力を喪失する場合、腫瘍が形成される。全体として、固形腫瘍とは、嚢胞も液体部分も通例含有しない異常な組織塊である(一部の脳腫瘍は液体で満たされた嚢胞及び中心壊死部を有する)。単一腫瘍は、種々のプロセスが間違って進んだために、その内部に細胞の異なる集団を有する場合さえある。固形腫瘍は良性(がん性ではない)であっても悪性(がん性)であってもよい。異なる種類の固形腫瘍はそれらを形成する細胞の種類に関して命名される。固形腫瘍の例には、肉腫、癌腫、及びリンパ腫がある。白血病(血液のがん)は全体として固形腫瘍を形成しない。
【0103】
代表的ながんとしては、これらに限定されないが、とりわけ、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄球性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性腫瘍;肛門がん;星細胞腫、小児小脳;星細胞腫、小児脳;胆管がん、肝外;膀胱がん;膀胱がん、小児;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;膠芽腫、小児;膠芽腫、成人;脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星細胞腫、小児;脳腫瘍、脳星細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;脳腫瘍、視路及び視床下部神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳がん;乳がん及び妊娠;乳がん、小児;乳がん、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児:カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、消化管;癌腫、副腎皮質;癌腫、島細胞;原発不明癌;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳星細胞腫、小児;脳星細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;腱鞘の明細胞肉腫;結腸がん;結腸直腸がん、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜がん;上衣腫、小児;上皮がん、卵巣;食道がん;食道がん、小児;ユーイングファミリー腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管がん;眼がん、眼内黒色腫;眼がん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃がん;胃がん、小児;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛性腫瘍;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児視路及び視床下部;有毛細胞白血病;頭頸部がん;肝細胞(肝)がん、成人(原発性);肝細胞(肝)がん、小児(原発性);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部及び視路神経膠腫、小児;眼内黒色腫;島細胞癌(膵内分泌);カポジ肉腫;腎がん;咽頭がん;咽頭がん、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄球性、成人;白血病、急性骨髄球性、小児;白血病、慢性リンパ性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;口唇及び口腔がん;肝がん、成人(原発性);肝がん、小児(原発性);肺がん、非小細胞;
肺がん、小細胞肺がん、リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発性);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン;小児;リンパ腫、ホジキン、妊娠中;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、非ホジキン、妊娠中;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム;男性乳がん;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;転移性原発不明扁平上皮性頸部がん;多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄球性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性障害、慢性;鼻腔及び副鼻腔がん;上咽頭がん;上咽頭がん、小児;神経芽腫;神経線維腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口がん、小児;口腔及び口唇がん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん、小児;卵巣上皮がん;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵がん;膵がん、小児;膵がん、島細胞;副鼻腔及び鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;褐色細胞腫;松果体及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠及び乳がん;妊娠及びホジキンリンパ腫;妊娠及び非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝がん、成人;原発性肝がん、小児;前立腺がん;直腸がん;腎細胞(腎)がん;腎細胞がん、小児;腎盂及び尿管、移行細胞がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;唾液腺がん、小児;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児;セザリー症候群;皮膚がん;皮膚がん、小児;皮膚がん(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫、成人;軟部組織肉腫、小児;原発不明扁平上皮性頸部がん、転移性;胃がん;胃がん、小児;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣がん;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状
腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂及び尿管の移行細胞がん;絨毛性腫瘍、妊娠性;小児の原発部位不明がん;小児の希少がん;尿管及び腎盂、移行細胞がん;尿道がん;子宮肉腫;膣がん;視路及び視床下部神経膠腫、小児;外陰がん;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;並びにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0104】
腫瘍は悪性又は良性として分類することができる。いずれの場合においても、細胞の異常な集合及び増殖が存在する。悪性腫瘍の場合、これらの細胞はより活動的に振る舞い、増加した浸潤性という特性を獲得する。最終的に、腫瘍細胞は、それらが生じた微視的環境から離脱し、身体の別の領域(通常ではそれらの成長に貢献しない非常に異なる環境)に拡散し、この新たな場所において急速な成長及び分裂を継続する能力を得る場合さえある。これは転移と呼ばれる。悪性細胞が転移した場合、治癒を達成することはより困難となる。良性腫瘍はより少ない浸潤する傾向を有し、転移する可能性がより少ない。
【0105】
「腫瘍を減少させること」という用語は、本明細書で使用する場合、腫瘍塊のサイズ又は体積の減少、対象における転移した腫瘍の数の減少、がん細胞の増殖状況(がん細胞が増幅している程度)の減少等を指す。
【0106】
本発明の処置レジメンは、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、並びに進行固形腫瘍、及び抗がん療法を用いて以前に処置されたが以前の療法に抵抗性のままである腫瘍を含むがこれらに限定されない固形腫瘍を処置するのに特に適している。
【0107】
補完免疫療法及び他の組合せ療法
配列番号1の融合タンパク質は本発明の処置レジメンにおいて単独療法として使用することができるが、本発明の文脈では、配列番号1の融合タンパク質と他の抗がん処置との組合せもまた企図される。他の治療処置レジメンは、他の治療免疫療法、例えば、養子細胞移入レジメン、抗原特異的ワクチン接種、DNA修復タンパク質の阻害(例えば核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼの阻害剤[「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」PARP阻害剤」)、並びに免疫チェックポイント阻害分子の遮断薬、例えば細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)及びプログラム死1(PD-1)抗体を含む。
【0108】
免疫チェックポイントタンパク質は免疫系におけるT細胞機能を制御する。T細胞は細胞媒介免疫において中心的な役割を果たす。免疫チェックポイントタンパク質は、シグナルをT細胞に送る特異的リガンドと相互作用し、本質的にT細胞機能のスイッチをオフにするか又はT細胞機能を阻害する。がん細胞は、その表面にチェックポイントタンパク質の高レベルの発現を駆動することによってこのシステムを利用し、結果として、腫瘍微小環境に進入する、その表面に免疫チェックポイントタンパク質を発現するT細胞の抑制をもたらし、そのようにして抗がん免疫応答を抑制する。したがって、本明細書では「免疫チェックポイントタンパク質(ICP)阻害剤」と称される薬剤による免疫チェックポイントタンパク質の阻害は、T細胞機能及びがん細胞に対する免疫応答の回復をもたらし得る。免疫チェックポイントタンパク質の例としては、これらに限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンド、又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、OX40、A2aR、B-7ファミリーリガンド、又はそれらの組合せであり得る免疫チェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、生物学的治療薬又は低分子である。好ましくは、免疫チェックポイントタンパク質阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、又はそれらの組合せである。好ましくは、PD1免疫チェックポイントタンパク質阻害剤は、ニボルマブ及びペムブロリズマブを含む1種又は複数種の抗PD-1抗体を含む。
【0109】
本明細書に記載される組合せ療法の方法は、少なくとも1種のチェックポイントタンパク質阻害剤を配列番号1の融合タンパク質と組み合わせて投与する工程を含む。チェックポイントタンパク質阻害剤が単独療法として又は配列番号1の融合タンパク質と組み合わせて有効な量投与される場合に標的チェックポイントタンパク質の1つ又は複数の活性を阻害する限り、本発明はいかなる特定のチェックポイントタンパク質阻害剤にも限定されない。場合によっては、例えば相乗効果のために、配列番号1の存在下では、チェックポイントタンパク質阻害剤によるチェックポイントタンパク質の最小の阻害が充分となり得る。多くのチェックポイントタンパク質阻害剤が当技術分野で公知である。
【0110】
例示的なPD-1/PD-L1に基づく免疫チェックポイント阻害剤としては抗体に基づく治療薬が挙げられる。PD-1/PD-L1に基づく免疫チェックポイント阻害を利用する例示的な処置方法は、米国特許第8,728,474号明細書及び同第9,073,994号明細書、並びに欧州特許第1537878号明細書に記載されており、例えば抗PD-1抗体の使用を含む。例示的な抗PD-1抗体は、例えば、米国特許第8,952,136号明細書、同第8,779,105号明細書、同第8,008,449号明細書、同第8,741,295号明細書、同第9,205,148号明細書、同第9,181,342号明細書、同第9,102,728号明細書、同第9,102,727号明細書、同第8,952,136号明細書、同第8,927,697号明細書、同第8,900,587号明細書、同第8,735,553号明細書、及び同第7,488,802号明細書に記載されている。例示的な抗PD-1抗体としては、例えば、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Co.社)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck Sharp & Dohme Corp.社)、PDR001(Novartis Pharmaceuticals社)、及びピジリズマブ(CT-011、Cure Tech社)が挙げられる。例示的な抗PD-L1抗体は、例えば、米国特許第9,273,135号明細書、同第7,943,743号明細書、同第9,175,082号明細書、同第8,741,295号明細書、同第8,552,154号明細書、及び同第8,217,149号明細書に記載されている。例示的な抗PD-L1抗体としては、例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標)、Genentech社)、デュルバルマブ(AstraZeneca社)、MEDI4736、アベルマブ、及びBMS936559(Bristol Myers Squibb Co.社)が挙げられる。
【0111】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法又は組成物はCTLA-4阻害剤と組み合わせて投与される。CTLA-4経路において、T細胞のCTLA-4と抗原提示細胞(がん細胞ではない)の表面のそのリガンド(例えば、B7-1としても公知のCD80、及びCD86)との相互作用はT細胞阻害を引き起こす。例示的なCTLA-4に基づく免疫チェックポイント阻害法は、米国特許第5,811,097号明細書、同第5,855,887号明細書、同第6,051,227号明細書に記載されている。例示的な抗CTLA-4抗体は、米国特許第6,984,720号明細書、同第6,682,736号明細書、同第7,311,910号明細書、同第7,307,064号明細書、同第7,109,003号明細書、同第7,132,281号明細書、同第6,207,156号明細書、同第7,807,797号明細書、同第7,824,679号明細書、同第8,143,379号明細書、同第8,263,073号明細書、同第8,318,916号明細書、同第8,017,114号明細書、同第8,784,815号明細書、及び同第8,883,984号明細書、国際(PCT)公開第98/42752号、同第00/37504号、及び同第01/14424号、並びに欧州特許第1212422号明細書に記載されている。例示的なCTLA-4抗体としてはイピリムマブ又はトレメリムマブが挙げられる。
【0112】
好ましくは、本発明の方法又は組成物は、(i)PD-1又はPD-L1阻害剤、例えば本明細書に開示されるPD-1又はPD-L1阻害剤、及び(ii)CTLA-4阻害剤、例えば本明細書に開示されるCTLA-4阻害剤と組み合わせて投与される。
【0113】
FDA承認された免疫チェックポイントタンパク質阻害剤の例としては、
・ イピリムマブ(YERVOY(登録商標))
・ ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))
・ アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))
・ デュルバルマブ(IMFINZ(登録商標))
・ アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))
・ ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))
が挙げられる。
【0114】
本発明の好ましい処置レジメンは、本発明に従って皮下投与される配列番号1の融合タンパク質を免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブと組み合わせる。好ましくは、ペムブロリズマブは本発明の処置レジメンの各処置サイクルの第1日に投与される。好ましくは、200mgのペムブロリズマブが製造業者の推奨事項に従って、全体として3週間又は21日ごとに1回投与される。
【0115】
本発明の配列番号1の融合タンパク質を用いる処置レジメンはまた、免疫チェックポイント阻害剤に加えて又はその代わりに他の治療剤及び/又は抗がん剤と組み合わせてもよい。好ましくは、治療剤及び/又は抗がん剤は抗体である。好ましくは、治療剤は治療タンパク質である。好ましくは、治療剤は低分子である。好ましくは、抗がん剤は抗原である。好ましくは、治療剤は細胞の集団である。好ましくは、治療剤は治療抗体である。好ましくは、治療剤は別の細胞毒性剤及び/又は化学療法剤である。「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞の機能を阻害若しくは防止する、及び/又は細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。「化学療法剤」にはがんの処置に有用な化学化合物が含まれる。
【0116】
抗体
好ましくは、配列番号1の皮下投与は治療抗体と組み合わせてもよい。抗体及びその抗原結合断片を作製する方法は当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第7,247,301号明細書、米国特許出願公開第2008/0138336号明細書、及び米国特許第7,923,221号明細書に開示されており、これらの全てはそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の方法において使用することができる治療抗体としては、これらに限定されないが、使用に関して承認されているか、臨床試験中か、又は臨床使用のために開発中の当技術分野で認識されている治療抗体のいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、2種類以上の治療抗体が本発明の組合せ療法に含まれ得る。
【0117】
治療抗体の非限定的な例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
・ HER-2/neu陽性乳がん又は転移性乳がんを処置するために使用されるトラスツズマブ(Genentech社、South San Francisco、Calif.によるHERCEPTIN(商標))、
・ 結腸直腸がん、転移性結腸直腸がん、乳がん、転移性乳がん、非小細胞肺がん、又は腎細胞癌を処置するために使用されるベバシズマブ(Genentech社によるAVASTIN(商標))、
・ 非ホジキンリンパ腫又は慢性リンパ性白血病を処置するために使用されるリツキシマブ(Genentech社によるRITUXAN(商標))、
・ 乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん、又は卵巣がんを処置するために使用されるペルツズマブ(Genentech社によるOMNITARG(商標))、
・ 結腸直腸がん、転移性結腸直腸がん、肺がん、頭頸部がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、膵がん、食道がん、腎細胞がん、前立腺がん、子宮頸がん、又は膀胱がんを処置するために使用することができるセツキシマブ(ImClone Systems Incorporated社、New York、N.Y.によるERBITUX(商標))、
・ 結腸直腸がん、頭頸部がん、及び他の潜在的ながん標的を処置するために使用されるIMC-1C11(ImClone Systems Incorporated社)、
・ その疾患がリツキシマブに抵抗性であり化学療法後に再燃した、形質転換を伴う及び伴わないCD20陽性濾胞性非ホジキンリンパ腫であり得る非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるトシツモマブ並びにトシツモマブ及びヨウ素I131(Corixa Corporation社、Seattle、Wash.によるBEXXAR(商標))、
・ 再燃濾胞性リンパ腫、再燃若しくは抵抗性の低悪性度若しくは濾胞性非ホジキンリンパ腫、又は形質転換B細胞非ホジキンリンパ腫を含むことができるリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるIn111イブリツモマブチウキセタン、Y90イブリツモマブチウキセタン、I111イブリツモマブチウキセタン、及びY90イブリツモマブチウキセタン(Biogen Idec社、Cambridge、Mass.によるZEVALIN(商標))、
・ 非小細胞肺がん又は子宮頸がんを処置するために使用されるEMD7200(EMD Pharmaceuticals社、Durham、N.C.)、
・ ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるSGN-30(Seattle Genetics社、Bothell、Wash.によるCD30抗原を標的とする遺伝子操作モノクローナル抗体)、
・ 非小細胞肺がんを処置するために使用されるSGN-15(Seattle Genetics社による、ドキソルビシンとコンジュゲートするルイスγ関連抗原を標的とする遺伝子操作モノクローナル抗体)、
・ 急性骨髄球性白血病(AML)及び骨髄異形成症候群(MDS)を処置するために使用されるSGN-33(Seattle Genetics社によるCD33抗原を標的とするヒト化抗体)、
・ 多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるSGN-40(Seattle Genetics社によるCD40抗原を標的とするヒト化モノクローナル抗体)、
・ 非ホジキンリンパ腫を処置するために使用されるSGN-35(Seattle Genetics社による、アウリスタチンEとコンジュゲートするCD30抗原を標的とする遺伝子操作モノクローナル抗体)、
・ 腎がん及び上咽頭癌を処置するために使用されるSGN-70(Seattle Genetics社によるCD70抗原を標的とするヒト化抗体)、
・ SGN-75(Seattle Genetics社による、SGN70抗体及びアウリスタチン誘導体で構成されるコンジュゲート)、並びに
・ 黒色腫又は転移性黒色腫を処置するために使用されるSGN-17/19(Seattle Genetics社による、メルファランプロドラッグとコンジュゲートする抗体及び酵素を含有する融合タンパク質)。
【0118】
本発明の方法において使用される治療抗体は本明細書に記載されるものに限定されない。例えば、以下の承認された治療抗体もまた本発明の方法において使用することができる:未分化大細胞型リンパ腫及びホジキンリンパ腫のためのブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(商標))、黒色腫のためのイピリムマブ(MDX-101、YERVOY(商標))、慢性リンパ性白血病のためのオファツムマブ(ARZERRA(商標))、結腸直腸がんのためのパニツムマブ(VECTIBIX(商標))、慢性リンパ性白血病のためのアレムツズマブ(CAMPATH(商標))、慢性リンパ性白血病のためのオファツムマブ(ARZERRA(商標))、急性骨髄性白血病のためのゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(商標))。
【0119】
本発明の使用のための抗体はまた、免疫細胞によって発現される分子を標的とすることができ、例えば、これらに限定されないが、トレメリムマブ(CP-675,206)及びイピリムマブ(MDX-010)はCTLA4を標的とし、腫瘍拒絶、再負荷からの保護、及び増強した腫瘍特異的T細胞応答の効果を有し、OX86はOX40を標的とし、腫瘍部位における抗原特異的CD8+T細胞を増加させ、腫瘍拒絶を増強し、CT-011はPD1を標的とし、腫瘍特異的メモリーT細胞を維持及び増大する効果を有し、NK細胞を活性化し、BMS-663513はCD137を標的とし、定着腫瘍の後退、並びにCD8+T細胞の増大及び維持を引き起こし、ダクリズマブ(ZENAPAX(商標))はCD25を標的とし、CD4+CD25+FOXP3+Tregの一過性枯渇を引き起こし、腫瘍縮小を増強し、エフェクターT細胞の数を増加させる。これらの抗体のより詳細な議論は、例えばWeinerら、Nature Rev. Immunol 2010;10:317~27に見出すことができる。
【0120】
好ましくは、抗体は、抗TNF抗体、抗IL-1Ra受容体標的抗体、抗IL-1抗体、抗IL-6受容体抗体、及び抗IL-6抗体を含むがこれらに限定されない、炎症誘発性及び/又は腫瘍形成促進性サイトカイン標的抗体である。好ましくは、抗体としては、炎症誘発性ヘルパーT17型細胞(TH17)を標的とする抗体が挙げられる。
【0121】
治療抗体は、抗体の断片であっても、抗体を含む複合体であっても、抗体を含むコンジュゲートであってもよい。抗体は任意選択で、キメラ抗体であっても、ヒト化抗体であっても、完全ヒト抗体であってもよい。
【0122】
治療タンパク質及びポリペプチド
好ましくは、本発明の方法は、治療タンパク質又はペプチドと組み合わせた本発明の処置レジメンに従った配列番号1の融合タンパク質の皮下投与を含む。がんを処置するのに効果的な治療タンパク質は当技術分野で周知である。好ましくは、治療ポリペプチド又はタンパク質は、単独で又は他の化合物の存在下で細胞死を引き起こす「自殺タンパク質」である。
【0123】
そのような自殺タンパク質の代表例は単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼである。追加の例としては、水痘帯状疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ、細菌遺伝子シトシンデアミナーゼ(5-フルオロシトシンを高度に毒性の化合物5-フルオロウラシルに変換する)、p450オキシドレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、ベータ-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、ニトロレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼA、リナマラーゼ(β-グルコシダーゼとも称される)、大腸菌(E. coli)gpt遺伝子、及び大腸菌Deo遺伝子が挙げられるが、他も当技術分野で公知である。一部の実施形態では、自殺タンパク質はプロドラッグを毒性化合物に変換する。
【0124】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」とは、毒性、すなわち腫瘍細胞に毒性の生成物に変換され得る、本発明の方法に有用な任意の化合物を意味する。プロドラッグは自殺タンパク質によって毒性の生成物に変換される。そのようなプロドラッグの代表例としては、チミジンキナーゼに対するガンシクロビル、アシクロビル、及びFIAU(1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル);オキシドレダクターゼに対するイホスファミド;VZV-TKに対する6-メトキシプリンアラビノシド;シトシンデアミナーゼに対する5-フルオロシトシン;ベータ-グルクロニダーゼに対するドキソルビシン;ニトロレダクターゼに対するCB1954及びニトロフラゾン;並びにカルボキシペプチダーゼAに対するN-(シアノアセチル)-L-フェニルアラニン又はN-(3-クロロプロピオニル)-L-フェニルアラニンが挙げられる。プロドラッグは当業者によって容易に投与することができる。当業者であれば、プロドラッグの投与に最も適切な用量及び経路を容易に決定することができるだろう。
【0125】
好ましくは、治療タンパク質又はポリペプチドは、がん抑制因子、例えばp53若しくはRb、又はそのようなタンパク質若しくはポリペプチドをコードする核酸である。当業者は、多種多様なそのようながん抑制因子、並びにそれら及び/又はそれらをコードする核酸を取得する方法について理解している。
【0126】
抗がん/治療タンパク質又はポリペプチドの他の例としては、アポトーシス促進性治療タンパク質及びポリペプチド、例えば、p15、p16、又はp21WAF-1が挙げられる。
【0127】
サイトカイン及びサイトカインをコードする核酸もまた治療タンパク質及びポリペプチドとして使用することができる。例としては、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子);TNF-アルファ(腫瘍壊死因子アルファ);IFN-アルファ及びIFN-ガンマを含むがこれらに限定されないインターフェロン;並びにインターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-ベータ(IL-ベータ)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-14(IL-14)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-16(IL-16)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-23(IL-23)、インターロイキン-24(IL-24)を含むがこれらに限定されないインターロイキンが挙げられるが、他の実施形態も当技術分野で公知である。
【0128】
細胞破壊遺伝子の追加の例としては、これに限定されないが、変異したサイクリンG1遺伝子が挙げられる。例として、細胞破壊遺伝子はサイクリンG1タンパク質のドミナントネガティブ変異であり得る(例えば国際公開第01/64870号)。
【0129】
ワクチン
好ましくは、本発明の治療レジメンは、がんに対する宿主免疫を生成するためにがん特異的免疫応答、例えば自然及び獲得免疫応答を刺激するためのがんワクチンの投与と組み合わせた配列番号1の融合タンパク質の皮下投与を含む(例えばOverwijkら、Journal of Experimental Medicine 2008;198:569~80を参照のこと)。例証的なワクチンとしては、これらに限定されないが、例えば、抗原ワクチン、全細胞ワクチン、樹状細胞ワクチン、及びDNAワクチンが挙げられる。ワクチンの特定の種類に応じて、ワクチン組成物は、対象のワクチンに対する免疫応答を増強することが公知の1種又は複数種の好適なアジュバントを含んでもよい。
【0130】
ワクチンは、例えば細胞ベース、すなわち、抗原を同定及び取得するために患者自身のがん細胞由来の細胞を使用して作製してもよい。例示的なワクチンとしては腫瘍細胞ベース及び樹状細胞ベースワクチンが挙げられ、ここで、対象由来の活性化免疫細胞は他のタンパク質と共に同じ対象に送達して戻し、腫瘍抗原によってプライミングされたこれらの免疫細胞の免疫活性化を更に容易にする。腫瘍細胞ベースワクチンは全腫瘍細胞及び遺伝子改変腫瘍細胞を含む。全腫瘍細胞ワクチンは任意選択で、例えば腫瘍細胞又は腫瘍溶解物のいずれかの照射によって)抗原提示を増強するために処理されてもよい。ワクチン投与はまた、用いられるワクチンの種類に応じてカルメット・ゲラン桿菌(BCG)又はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のアジュバントを伴ってもよい。プラスミドDNAワクチンもまた使用される場合があり、直接注射を介するか又は微粒子銃により投与することができる。ペプチドワクチン、ウイルス遺伝子移入ベクターワクチン、及び抗原改変樹状細胞(DC)もまた使用に関して企図される。
【0131】
好ましくは、ワクチンは治療がんペプチドベースワクチンである。ペプチドワクチンは、公知の配列を使用して作製することも、対象自身の腫瘍から単離した抗原から作製することもでき、新抗原及び改変抗原を含むことができる。例証的な抗原ベースワクチンとしては、抗原が腫瘍特異的抗原であるものが挙げられる。例えば、腫瘍特異的抗原は、とりわけ、がん精巣抗原、分化抗原、及び広く存在する過剰発現腫瘍関連抗原から選択され得る。腫瘍関連抗原由来のペプチドをベースとする組換えペプチドワクチンは、本方法において使用する場合、アジュバント又は免疫調節薬と共に投与又は製剤化され得る。ペプチドベースワクチンにおける使用のための例証的な抗原としては、以下の一覧は純粋に例証的であることが意図されているためこれらに限定されないが、以下のものが挙げられる。例えば、ペプチドワクチンは、成体組織では通常サイレンシングされているが腫瘍細胞では転写再活性化している遺伝子によってコードされるがん精巣抗原、例えば、MAGE、BAGE、NY-ESO-1、及びSSX-2を含み得る。或いは、ペプチドワクチンは、組織分化関連抗原、すなわち、正常組織起源であり、正常組織と腫瘍組織の両方によって共有される抗原を含み得る。例えば、ワクチンは、黒色腫関連抗原、例えば、gp100、Melan-A/Mart-1、MAGE-3、若しくはチロシナーゼを含み得るか、又は前立腺がん抗原、例えば、PSA若しくはPAPを含み得る。ワクチンは、乳がん関連抗原、例えばマンマグロビンAを含み得る。本方法における使用のためのワクチンに含まれ得る他の腫瘍抗原としては、例えば、CEA、MUC-1、HER1/Nue、hTERT、ras、及びB-rafが挙げられる。ワクチンにおいて使用され得る他の好適な抗原としては、がん幹細胞又はEMTプロセスと関連するSOX-2及びOCT-4が挙げられる。
【0132】
抗原ワクチンには、多抗原及び単一抗原ワクチンが含まれる。例示的ながん抗原は、約5~約30アミノ酸、又は約6~25アミノ酸、又は約8~20アミノ酸を有するペプチドを含み得る。
【0133】
上に記載したように、免疫刺激アジュバント(RSLAIL-2と異なる)はワクチン、特に腫瘍関連抗原ベースワクチンにおいて、効果的な免疫応答を生じさせるのを補助するために使用され得る。例えば、ワクチンは免疫を向上するのを補助する病原体関連分子パターン(PAMP)を組み込み得る。更なる好適なアジュバントとしては、モノホスホリルリピドA又は他のリポ多糖;toll様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、イミキモド、レシキモド(R-848)、TLR3、IMO-8400、及びリンタトリモド等が挙げられる。使用に好適な更なるアジュバントとしては熱ショックタンパク質が挙げられる。
【0134】
遺伝子ワクチンは典型的には、発現カセットを保有するウイルス又はプラスミドDNAベクターを使用する。投与されると、それらのベクターは炎症性応答の一部として体細胞又は樹状細胞にトランスフェクトし、それによってクロスプライミング又は直接抗原提示を生じる。好ましくは、遺伝子ワクチンは1回の免疫化で複数の抗原の送達を実現するワクチンである。遺伝子ワクチンとしては、DNAワクチン、RNAワクチン、及びウイルスベースワクチンが挙げられる。
【0135】
本方法における使用のためのDNAワクチンは腫瘍抗原を送達及び発現するために構築される細菌プラスミドである。DNAワクチンは任意の好適な投与方法、例えば皮下又は皮内注射によって投与され得るが、リンパ節に直接注射することもできる。更なる送達方法としては、例えば、遺伝子銃、電気穿孔、超音波、レーザー、リポソーム、微小粒子、及びナノ粒子が挙げられる。
【0136】
好ましくは、ワクチンは1つの新抗原又は複数の新抗原を含む。好ましくは、ワクチンは新抗原ベースワクチンである。好ましくは、新抗原ベースワクチン(NBV)組成物は複数のがん新抗原をタンデムにコードしてもよく、ここで、各新抗原はがん細胞において変異したタンパク質に由来するポリペプチド断片である。例えば、新抗原ワクチンは、それぞれがん細胞において変異したタンパク質の断片である、複数の免疫原性ポリペプチド断片をコードする核酸構築物を含む第1のベクターを含んでもよく、ここで、各免疫原性ポリペプチド断片は、本来のタンパク質由来の様々な数の野生型アミノ酸に隣接する1つ又は複数の変異したアミノ酸を含み、各ポリペプチド断片は頭尾結合して免疫原性ポリペプチドを形成する。免疫原性ポリペプチドを形成する免疫原性ポリペプチド断片のそれぞれの長さは異なり得る。
【0137】
ウイルス遺伝子移入ベクターワクチンもまた使用することができ、そのようなワクチンでは、組換え操作されたウイルス、酵母、細菌等ががん特異的タンパク質を患者の免疫細胞に導入するために使用される。腫瘍溶解性であっても非腫瘍溶解性であってもよいベクターに基づく手法では、ベクターは、例えばその固有の免疫刺激特性のためにワクチンの効率を高めることができる。例証的なウイルスベースベクターとしては、ポックスウイルス科、例えば、ワクシニア、改変ワクシニア株アンカラ、及び鳥ポックスウイルス由来のものが挙げられる。複製可能ワクシニアプライミングベクター及び複製不能鶏痘ブースティングベクターを含有するがんワクチン、すなわちPROSTVACもまた使用に好適である。各ベクターは、PSA並びに3つの共刺激分子、すなわちまとめてTRICOMと称されるCD80、CD54、及びCD58のための導入遺伝子を含有する。他の好適なベクターベースがんワクチンとしては、Trovax並びにTG4010(MUC1抗原及びIL-2をコードする)が挙げられる。使用のための更なるワクチンとしては、組換えリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の細菌及び酵母ベースワクチンが挙げられる。
【0138】
前述のワクチンは、有効性を高めるためにアジュバント及び他の免疫ブースターと組み合わせる及び/又はそれらと共に製剤化することができる。特定のワクチンに応じて、投与は腫瘍内であっても非腫瘍内(すなわち全身性)であってもよい。
【0139】
ワクチン接種において使用することができる他のがん抗原としては、これらに限定されないが、(i)腫瘍特異的抗原、(ii)腫瘍関連抗原、(iii)腫瘍特異的抗原を発現する細胞、(iv)腫瘍関連抗原を発現する細胞、(v)腫瘍の胎児性抗原、(vi)自家腫瘍細胞、(vii)腫瘍特異的膜抗原、(viii)腫瘍関連膜抗原、(ix)増殖因子受容体、(x)増殖因子リガンド、及び(xi)がんと関連する任意の他の種類の抗原又は抗原提示細胞又は材料が挙げられる。
【0140】
がん抗原は、上皮がん抗原(例えば、乳、胃腸、肺)、前立腺特異的がん抗原(PSA)若しくは前立腺特異的膜抗原(PSMA)、膀胱がん抗原、肺(例えば小細胞肺)がん抗原、結腸がん抗原、卵巣がん抗原、脳がん抗原、胃がん抗原、腎細胞癌抗原、膵がん抗原、肝がん抗原、食道がん抗原、頭頸部がん抗原、又は結腸直腸がん抗原であり得る。
【0141】
別の実施形態では、がん抗原は、リンパ腫抗原(例えば非ホジキンリンパ腫若しくはホジキンリンパ腫)、B細胞リンパ腫がん抗原、白血病抗原、骨髄腫(すなわち多発性骨髄腫若しくは形質細胞骨髄腫)抗原、急性リンパ芽球性白血病抗原、慢性骨髄球性白血病抗原、又は急性骨髄性白血病抗原である。記載されるがん抗原は例示的なものに過ぎず、いかなるがん抗原も本発明において標的とすることができる。
【0142】
好ましくは、がん抗原は、多発性骨髄腫及び一部のB細胞リンパ腫を含む全てのヒト腺癌、例えば、膵臓腺癌、結腸腺癌、乳腺癌、卵巣腺癌、肺腺癌、前立腺癌、頭頸部腺癌において見出されるムチン-1タンパク質又はペプチド(MUC-1)である。クローン病又は潰瘍性大腸炎のいずれであれ、炎症性腸疾患を有する患者は、結腸直腸癌を発症するリスクが増加している。MUC-1はI型膜貫通糖タンパク質である。MUC-1の主要な細胞外部分は、免疫原性エピトープを含む20アミノ酸からなる多数のタンデムリピートを有する。一部のがんでは、細胞外部分は、免疫系によって認識される非グリコシル化形態において曝露される(Gendlerら、J Biol Chem 1990;265:15286~15293)。
【0143】
別の実施形態では、がん抗原は、黒色腫及び結腸がんと関連する変異したB-Raf抗原である。これらの変異の大多数は、ヌクレオチド1796においてT-Aの一塩基変化を示し、結果として、B-Rafの活性化セグメント内の残基599においてバリンからグルタミン酸への変化をもたらす。Rafタンパク質はまた、その発がん形態が全てのヒトがんのうちのおよそ3分の1に存在する活性化Rasタンパク質のエフェクターとして、がんと間接的に関連する。正常な変異していないB-Rafは細胞シグナル伝達に関与し、細胞膜からのシグナルを核に伝える。このタンパク質は通例、シグナルを伝えるために必要とされる場合にのみ活性である。対照的に、変異型B-Rafは、常に活性であり、シグナルの伝達を妨害することが報告されている(Mercer及びPritchard、Biochim Biophys Acta(2003)1653(1):25~40;Sharkeyら、Cancer Res.(2004)64(5):1595~1599)。
【0144】
好ましくは、がん抗原はヒト上皮増殖因子受容体-2(HER-2/neu)抗原である。HER-2/neuを過剰発現する細胞を有するがんはHER-2/neu+がんと称される。例示的なHER-2/neu+がんとしては、前立腺がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、膵がん、皮膚がん、肝がん(例えば肝細胞腺癌)、腸がん、及び膀胱がんが挙げられる。
【0145】
HER-2/neuは、上皮増殖因子受容体(EGFR)と40%の相同性を有するおよそ645aaの細胞外結合ドメイン(ECD)、高度に疎水性の膜貫通アンカードメイン(TMD)、及びEGFRと80%の相同性を有するおよそ580aaのカルボキシ末端細胞内ドメイン(ICD)を有する。HER-2/neuのヌクレオチド配列はGENBANK(商標)受託番号AH002823(ヒトHER-2遺伝子、プロモーター領域及びエクソン1)、M16792(ヒトHER-2遺伝子、エクソン4)、M16791(ヒトHER-2遺伝子、エクソン3)、M16790(ヒトHER-2遺伝子、エクソン2)、並びにM16789(ヒトHER-2遺伝子、プロモーター領域及びエクソン1)において入手可能である。HER-2/neuタンパク質のアミノ酸配列はGENBANK(商標)受託番号AAA58637において入手可能である。これらの配列に基づいて、当業者であれば、効果的な免疫応答を生じさせる適切なエピトープを見出すための公知のアッセイを使用して、HER-2/neu抗原を開発することができるだろう。
【0146】
例示的なHER-2/neu抗原としては、p369-377(HER-2/neu由来HLA-A2ペプチド)、dHER2(Corixa Corporation社)、li-Key MHCクラスIIエピトープハイブリッド(Generex Biotechnology Corporation社)、ペプチドP4(アミノ酸378~398)、ペプチドP7(アミノ酸610~623)、ペプチドP6(アミノ酸544~560)及びP7の混合物、ペプチドP4、P6、及びP7の混合物、HER2[9754]等が挙げられる。
【0147】
好ましくは、がん抗原は上皮増殖因子受容体(EGFR)抗原である。EGFR抗原はEGFRバリアント1抗原、EGFRバリアント2抗原、EGFRバリアント3抗原、及び/又はEGFRバリアント4抗原であり得る。EGFRを過剰発現する細胞を有するがんはEGFRがんと称される。例示的なEGFRがんとしては、肺がん、頭頸部がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、胃がん、卵巣がん、脳がん、及び膀胱がんが挙げられる。
【0148】
好ましくは、がん抗原は血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)抗原である。VEGFRはがん誘導血管新生の制御因子であると考えられている。VEGFRを過剰発現する細胞を有するがんはVEGFR+がんと呼ばれる。例示的なVEGFR+がんとしては、乳がん、肺がん、小細胞肺がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、白血病、及びリンパ性白血病が挙げられる。
【0149】
好ましくは、がん抗原は、アンドロゲン非依存性前立腺がんにおいて広く発現する前立腺特異的抗原(PSA)及び/又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。
【0150】
好ましくは、がん抗原はGp-100である。糖タンパク質100(gp100)は黒色腫と関連する腫瘍特異的抗原である。
【0151】
好ましくは、がん抗原はがん胎児性(CEA)抗原である。CEAを過剰発現する細胞を有するがんはCEA+がんと称される。例示的なCEA+がんとしては、結腸直腸がん、胃がん、及び膵がんが挙げられる。例示的なCEA抗原としては、CAP-1(すなわちCEA aa571~579)、CAP1-6D、CAP-2(すなわちCEA aa555~579)、CAP-3(すなわちCEA aa87~89)、CAP-4(CEA aa1~11)、CAP-5(すなわちCEA aa345~354)、CAP-6(すなわちCEA aa19~28)、及びCAP-7が挙げられる。
【0152】
好ましくは、がん抗原は炭水化物抗原10.9(CA19.9)である。CA19.9は、ルイスA血液型物質に関連するオリゴ糖であり、結腸直腸がんと関連する。
【0153】
好ましくは、がん抗原は黒色腫がん抗原である。黒色腫がん抗原は黒色腫を処置するのに有用である。例示的な黒色腫がん抗原としては、MART-1(例えば、MART-1 26~35ペプチド、MART-1 27~35ペプチド)、MART-1/Melan A、pMel17、pMel17/gp100、gp100(例えば、gp100ペプチド280~288、gp100ペプチド154~162、gp100ペプチド457~467)、TRP-1、TRP-2、NY-ESO-1、p16、ベータ-カテニン、mum-1等が挙げられる。
【0154】
好ましくは、がん抗原は変異型又は野生型rasペプチドである。変異型rasペプチドは、変異型K-rasペプチド、変異型N-rasペプチド、及び/又は変異型H-rasペプチドであり得る。rasタンパク質における変異は、典型的には12位(例えばグリシンを置換したアルギニン若しくはバリン)、13位(例えばグリシンを置換したアスパラギン)、61位(例えばグルタミンからロイシン)、及び/又は59位において起こる。変異型rasペプチドは、肺がん抗原、胃腸がん抗原、肝臓がん抗原、骨髄がん抗原(例えば、急性白血病、骨髄形成異常)、皮膚がん抗原(例えば、黒色腫、基底細胞、扁平上皮)、膀胱がん抗原、結腸がん抗原、結腸直腸がん抗原、及び腎細胞がん抗原として有用であり得る。
【0155】
本発明の別の実施形態では、がん抗原は変異型及び/又は野生型p53ペプチドである。p53ペプチドは、結腸がん抗原、肺がん抗原、乳がん抗原、肝細胞癌がん抗原、リンパ腫がん抗原、前立腺がん抗原、甲状腺がん抗原、膀胱がん抗原、膵がん抗原、及び卵巣がん抗原として使用することができる。
【0156】
がん抗原は、細胞、タンパク質、ペプチド、融合タンパク質、ペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA、ペプチド若しくはタンパク質をコードするRNA、糖タンパク質、リポタンパク質、ホスホタンパク質、炭水化物、リポ多糖、脂質、それらの2つ以上の化学的に連結した組合せ、それらの2つ以上の融合物、又はそれらの2つ以上の混合物、又はそれらの2つ以上をコードするウイルス、又はそれらの2つ以上をコードする腫瘍溶解性ウイルスであり得る。別の実施形態では、がん抗原は、約6~約24アミノ酸、約8~約20アミノ酸、約8~約12アミノ酸、約8~約10アミノ酸、又は約12~約20アミノ酸を含むペプチドである。一実施形態では、がん抗原は、MHCクラスI結合モチーフ又はMHCクラスII結合モチーフを有するペプチドである。別の実施形態では、がん抗原は1つ又は複数の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープに対応するペプチドを含む。
【0157】
細胞療法
好ましくは、本発明の方法は、治療細胞療法の投与と組み合わせた配列番号1の融合タンパク質の投与を含む。がんを処置するのに有用である細胞療法は周知であり、例えば米国特許第7,402,431号明細書に開示されている。好適な実施形態では、細胞療法はT細胞移植である。好ましい方法では、T細胞は対象への移植前にex vivoでIL-2と共に増大される。細胞療法のための方法は、例えば、米国特許第7,402,431号明細書、米国特許出願公開第2006/0057121号明細書、米国特許第5,126,132号明細書、米国特許第6,255,073号明細書、米国特許第5,846,827号明細書、米国特許第6,251,385号明細書、米国特許第6,194,207号明細書、米国特許第5,443,983号明細書、米国特許第6,040,177号明細書、米国特許第5,766,920号明細書、及び米国特許出願公開第2008/0279836号明細書に開示されている。
【0158】
放射線療法
好ましくは、本発明の治療レジメンは、放射線療法と更に組み合わせた配列番号1の融合タンパク質の投与を含む。「放射線療法」という用語は、「放射療法」という用語と交換可能に使用され得、がん細胞を死滅させるために強力なエネルギーのビームを使用するがん処置の種類である。放射線療法は大半の場合X線を使用するが、ガンマ線、電子線、又は陽子もまた使用することができる。「放射線療法」という用語は、大半の場合、体外照射療法を指す。この種類の放射の間は高エネルギービームが、患者の身体外の、ビームを身体の正確な一点に向ける機械から生じる。各セッションは短時間且つ無痛で、約15分続く。本明細書で使用する場合、「セッション」又は「処置のセッション」という用語は各放射療法処置を指す。放射線療法「レジメン」又は「スケジュール」は通例、がんの種類及びステージに応じて一定期間にわたって与えられる特定の回数の処置からなる。
【0159】
低分子
好ましくは、本発明の治療レジメンは、抗がん低分子の投与と組み合わせた配列番号1の融合タンパク質の皮下投与を含む。がんを処置するのに効果的な低分子は当技術分野で周知であり、腫瘍成長に関与する因子、例えば、EGFR、ErbB2(Her2としても公知)、ErbB3、ErbB4、又はTNFのアンタゴニストが挙げられる。非限定的な例としては、1つ又は複数のチロシンキナーゼ受容体、例えば、VEGF受容体、FGF受容体、EGF受容体、及びPDGF受容体を標的とする低分子受容体型チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)が挙げられる。
【0160】
バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVA(商標))、OSI-7904、ZD6474(ZACTIMA(商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(SUTENT(商標))、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、MLN-518、CEP-701、PKC-412、ラパチニブ(GSK572016)、VELCADE(商標)、AZD2171、ソラフェニブ(NEXAVAR(商標))、XL880、及びCHIR-265を含むがこれらに限定されない多くの治療低分子RTKIが当技術分野で公知である。低分子タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、例えばJiangら、Cancer Metastasis Rev. 2008;27:263~72に開示されているものもまた本発明の方法を実施するのに有用である。そのような阻害剤は、例えば、HSP2、PRL、PTP1B、又はCdc25ホスファターゼを標的とすることができる。
【0161】
Bcl-2/Bcl-XLを標的とする低分子、例えば米国特許出願公開第2008/0058322号明細書に開示されているものもまた本発明の方法を実施するのに有用である。本発明における使用のための更なる例示的な低分子はZhangら、Nature Reviews: Cancer 2009;9:28~39に開示されている。特に、アントラサイクリン等の免疫原性細胞死をもたらす化学療法剤(Keppら、Cancer and Metastasis Reviews 2011;30:61~9)はPK延長IL-2との相乗効果に充分適していると考えられる。
【0162】
他の細胞毒性剤及び化学療法剤
好ましくは、本発明の方法は、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、他の抗腫瘍抗生物質、及び植物由来薬剤を含むがこれらに限定されない化学療法剤を用いる投与と組み合わせた配列番号1の融合タンパク質の皮下投与を含む。
【0163】
アルキル化剤とは、生物学的に重要な分子におけるアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、及びリン酸基と共有結合を形成することによって細胞機能を障害する薬物である。最も重要なアルキル化部位は、DNA、RNA、及びタンパク質である。アルキル化剤は活性を細胞増殖に依存するが細胞周期特異的ではない。本発明における使用に好適なアルキル化剤としては、これらに限定されないが、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えばチオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソウレア類(例えば、BCNU、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(例えば、アルトレタミン、ダカルバジン、及びプロカルバジン)、並びに白金化合物(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びシスプラチン)が挙げられる。
【0164】
アドリアマイシン等の抗腫瘍抗生物質は、グアニン-シトシン及びグアニン-チミン配列においてDNAにインターカレートし、自発酸化、及び鎖切断を引き起こす酸素フリーラジカルの形成をもたらす。本発明における使用に好適な他の抗生剤としては、これらに限定されないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、並びにプリカトマイシンが挙げられる。
【0165】
本発明における使用に好適な代謝拮抗剤としては、これらに限定されないが、フロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、及びゲムシタビンが挙げられる。
【0166】
植物由来薬剤には、イチイ植物の針状葉から抽出した前駆体の半合成誘導体であるタキサン類が含まれる。これらの薬物は新規14員環であるタキサンを有する。微小管分解を引き起こすビンカアルカロイドと異なり、タキサン類(例えばタキソール)は微小管集合及び安定性を促進し、したがって有糸分裂の細胞周期を阻止する。他の植物由来薬剤としては、これらに限定されないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、及びドセタキセルが挙げられる。
【0167】
組合せ療法のための組成物
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、1種又は複数種の追加の治療剤又は他の治療剤、例えば治療抗体と組み合わせて(同時又は逐次)投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体の投与の前に皮下投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体の投与と同時に皮下投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は、1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体の投与の後に皮下投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体とは同時に投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体とは逐次に投与される。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体とは互いに1、2、又は3日以内に投与される。
【0168】
好ましくは、本発明は、融合タンパク質を薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントと共に含む別個の医薬組成物、並びに1種又は複数種の治療剤、例えば治療抗体を薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントと共に含む別の医薬組成物を提供する。
【0169】
好ましくは、本発明は、配列番号1の融合タンパク質と1種又は複数種の治療剤又は抗がん剤とを、薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントと一緒に同じ組成物に含む医薬組成物を提供する。
【0170】
組換え産生
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は組換え技法を使用して産生される。配列番号1の融合タンパク質は、任意の好適な構築物、及び原核細胞又は真核細胞、例えばそれぞれ細菌(例えば大腸菌)又は酵母宿主細胞であり得る任意の好適な宿主細胞を使用して、細胞内タンパク質又は分泌タンパク質として産生することができる。宿主細胞として使用することができる真核細胞の他の例としては、昆虫細胞、哺乳動物細胞、及び/又は植物細胞が挙げられる。哺乳動物宿主細胞が使用される場合、哺乳動物宿主細胞としては、ヒト細胞(例えば、HeLa、293、H9、及びJurkat細胞)、マウス細胞(例えば、NIH3T3、L細胞、及びC127細胞)、霊長類細胞(例えば、Cos1、Cos7、及びCV1)、並びにハムスター細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)を挙げることができる。
【0171】
ポリペプチドの発現に好適な様々な宿主-ベクター系は、当技術分野で公知の標準的な手順に従って用いることができる。例えば、Sambrookら、1989 Current Protocols in Molecular Biology、Cold Spring Harbor Press社、New York;及びAusubelら編、1995 Current Protocols in Molecular Biology、Wiley and Sons社を参照のこと。遺伝子材料の宿主細胞への導入のための方法としては、例えば、形質転換、電気穿孔、コンジュゲーション、リン酸カルシウム法等が挙げられる。移入のための方法は、導入されるポリペプチドコード核酸の安定した発現を実現するように選択され得る。ポリペプチドコード核酸は、遺伝性エピソーム要素(例えばプラスミド)として提供することもゲノム的に組み込むこともできる。目的のポリペプチドの産生における使用に適切な様々なベクターは市販されている。
【0172】
ベクターは、宿主細胞において染色体外維持を実現することも宿主細胞ゲノムへの組込みを実現することもできる。発現ベクターは、転写及び翻訳制御配列を提供し、コード領域が転写開始領域並びに転写及び翻訳終結領域の転写抑制下で作動可能に連結する場合、誘導発現又は恒常的発現を実現することができる。全般に、転写及び翻訳制御配列としては、これらに限定されないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列を挙げることができる。プロモーターは、構成的又は誘導性のいずれであってもよく、強力な構成的プロモーター(例えばT7)であってもよい。
【0173】
発現構築物は全体として、目的のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を可能にする簡便な制限部位がプロモーター配列付近に位置している。発現宿主において機能する選択マーカーが、ベクターを含有する細胞の選択を容易にするために存在してもよい。更に、発現構築物は追加の要素を含むことができる。例えば、発現ベクターは1つ又は2つの複製系を有することができ、それにより生物、例えば、発現のための哺乳動物又は昆虫細胞、並びにクローニング及び増幅のための原核宿主における維持が可能となる。加えて、発現構築物は形質転換した宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含有することができる。選択可能な遺伝子は当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞に応じて異なり得る。
【0174】
タンパク質の単離及び精製は当技術分野で公知の方法に従って遂行することができる。例えば、タンパク質は、恒常的に及び/若しくは誘導時にタンパク質を発現するように遺伝子改変された細胞の溶解物から、又は免疫親和性精製による合成反応混合物から単離することができ、単離は、全体として、試料を抗タンパク質抗体と接触させる工程、洗浄して非特異的に結合した物質を除去する工程、及び特異的に結合したタンパク質を溶出する工程を伴う。単離したタンパク質は、透析、及びタンパク質精製に通常用いられる他の方法によって更に精製することができる。一実施形態では、タンパク質は、金属キレートクロマトグラフィー法を使用して単離することができる。タンパク質は単離を容易にする改変を含有してもよい。
【0175】
配列番号1の融合タンパク質は、実質的に純粋な又は単離された形態(例えば他のポリペプチドを含まない)で調製することができる。ポリペプチドは、存在し得る他の成分(例えば他のポリペプチド又は他の宿主細胞成分)に比べてポリペプチドが濃縮されている組成物に存在し得る。例えば、精製融合タンパク質は、他の発現したタンパク質を実質的に含まない、例えば、約90%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満である組成物に存在するように提供することができる。
【0176】
好ましくは、配列番号1の融合タンパク質は生物学的組換え発現系を使用して産生することができ、典型的には、細胞に配列番号1の融合タンパク質をコードする鋳型を含有するDNAベクターをトランスフェクトする工程、並びに次いで細胞を、融合タンパク質を転写及び翻訳するように培養する工程を伴う。典型的には、次いで、細胞を溶解して、発現したタンパク質をその後の精製のために抽出する。原核生物in vivoタンパク質発現系と真核生物in vivoタンパク質発現系の両方は使用に好適である。好ましくは、配列番号1の融合タンパク質はCHO細胞において産生される。
【0177】
キット
SC投与のために製剤化される配列番号1の融合タンパク質、及び任意選択で任意の他の化学療法剤又は抗がん剤を含むキットもまた提供される。キットは全体として、以下に記載されるように様々な構成要素を収容する物理的構造体の形態であり、例えば上に記載した方法を実施するのに利用することができる。キットは、対象への投与に好適な医薬組成物の形態であり得る配列番号1の融合タンパク質(例えば滅菌容器において提供される)を含むことができる。医薬組成物は、直ちに使用できる形態で提供されても、例えば投与前に再構成又は希釈を必要とする形態で提供されてもよい。組成物が使用者による再構成を必要とする形態である場合、キットはまた、配列番号1の融合タンパク質と一緒又は別個に包装される緩衝液、薬学的に許容される賦形剤等を含み得る。組合せ療法(例えば、配列番号1の融合タンパク質及び免疫チェックポイント阻害剤が企図される場合、キットは数種類の薬剤を別個に含有しても、それらがキットにおいて既に組み合わされていてもよい。同様に、追加の補完療法が必要とされる場合(例えば、配列番号1の融合タンパク質、免疫チェックポイント阻害剤、及び追加の補完療法又は薬剤)、キットは数種類の薬剤を別個に含有しても、2種類以上の薬剤がキットにおいて既に組み合わされていてもよい。
【0178】
本発明のキットは、収容される構成要素を適切に維持するために必要な条件(例えば冷蔵又は冷凍)に合わせて設計することができる。キットは、キット中の構成要素の識別情報及び使用のための説明書(例えば、投薬パラメータ、有効成分の臨床薬理学、例えば、作用機序、薬物動態及び薬力学、有害作用、禁忌等)を含むラベル又は添付文書を含有することができる。
【0179】
キットの各構成要素は個々の容器に封入することができ、様々な容器の全ては単一のパッケージに収めることができる。ラベル又は文書には製造者情報、例えばロット番号及び使用期限を含めることができる。ラベル又は添付文書は、例えば、構成要素を収容する物理的構造体と一体化されていても、物理的構造体に別個に含有されていても、キットの構成要素(例えば、アンプル、シリンジ、又はバイアル)に添付されていてもよい。
【0180】
ラベル又は文書としては、コンピュータ可読媒体、例えば、ディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリーディスク)、光学ディスク、例えば、CD若しくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープ、又は電子記憶媒体、例えばRAM及びROM、又はこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光記憶媒体、FLASHメディア、若しくはメモリー型カードを更に挙げることができる、或いはラベル又は文書はこれらに組み込むことができる。一部の実施形態では、実際の説明書はキットに存在せず、例えばインターネットサイトを介して離れた供給源から説明書を取得するための手段が提供される。
【実施例】
【0181】
(実施例1)
T細胞の疲弊/不活性化を制限するための動物モデルにおける定期的皮下投与。
序論/論拠
CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の活性化は、機能的に不活性化/「疲弊」した状態又は更には細胞死につながりうる。アルデスロイキン等の免疫腫瘍学療法において、T細胞の疲弊をもたらす過剰刺激は、アウトカムに甚大な影響を与え、治療奏効の大きさ又は期間を制限する可能性がある。更に、免疫療法は、CD8+ T細胞の細胞傷害性作用をサイレンシングするように作用する制御性T細胞(Treg)集団の治療関連増加によって最小限に抑えられうる。ここに記載する前臨床実験は、配列番号1の融合タンパク質のげっ歯類ホモログ(げっ歯類ホモログは配列番号2と同定されている)が、定期的投与レジメン後に、げっ歯類ホモログ又は組換えIL-2の定常(すなわち連日)投与レジメンと比較して向上した薬力学的プロファイルを呈するかどうかを決定するためのものである。マウスの同系腫瘍モデルにおける、投与後の細胞(CD8+ T細胞及びNK細胞)及びサイトカイン(IFNγプロファイル)並びに抗腫瘍有効性の評価を含めた、IL-2治療の薬力学的マーカーの妥当性検証を行った。
【0182】
更に、アルデスロイキンの臨床使用の安全性/副作用制限は、血管漏出症候群である。したがって、配列Iのげっ歯類ホモログの定期的投与と定常投与の両レジメン後のマウスにおいて、血管漏出症候群のサロゲートマーカーである肺の湿質量も評価した。
【0183】
実験方法
配列番号1の融合タンパク質のげっ歯類ホモログである配列番号2の定期的投与レジメンをマウスに投与し、血液/組織サンプルを複数の時点で採取して、記憶表現型CD8+ T細胞、NK細胞、Tregsの数(すなわち、増大)、及びサイトカイン(例えばIFNγ、TNFα及びIL-6)の循環レベルに対する効果を評価した。投与レジメンは、3日おきに1回(Q3D)、4日おきに1回(q4d)、及び7日おきに1回/1週1回(q7d)で2~3週間の化合物の投与を含んだ。連日投与レジメンは、2週間をカバーするように繰り返される、1日1回5日間(qd×5)の投与とその後2日間の「休薬」からなった。体重は試験中連日測定した。試験完了時に肺組織を全動物から切除し、1回秤量し(「湿」)、乾燥工程後に再度秤量して、「肺の湿質量」と呼ばれる水分による正味質量を算出した。
【0184】
担腫瘍マウス(MC38腫瘍モデル)でも実験を実施して、異なる投与レジメンでの抗腫瘍有効性を評価した。皮下移植した腫瘍細胞が100mm3の平均腫瘍サイズまで成長したときに投与を開始した。ビヒクル投与群と化合物投与群の両方(全ての処置群で典型的にn=10)において腫瘍サイズをモニターした。試験した投与レジメンは次のとおりである。
【0185】
【0186】
配列番号2のデザイン:
マウスのIL-2及びIL2Raの各配列を取得し(それぞれUniProtKB-P04351及びP01590)、マウス配列及びヒト配列(UnitProtKB P60568及びP01589)の配列アラインメントを使用して、マウス配列を配列番号1の循環置換型ヒトIL-2配列に対してマッピングした。
【0187】
結果として生じる配列番号2のマウスオルソログは、次のアミノ酸配列を有する:
SKSFQLEDAENFISNIRVTVVKLKGSDNTFECQFDDESATVVDFLRRWIAFCQSIISTSPQGGSSSTQQQQQHLEQLLMDLQELLSRMENYRNLKLPRMLTFKFYLPKQATELKDLQCLEDELGPLRHVLDLTQGSGGGSELCLYDPPEVPNATFKALSYKNGTILNCECKRGFRRLKELVYMRCLGNSWSSNCQCTSNSHDKSRKQVTAQLEHQKEQQTTTDMQKPTQSMHQENLTGHCREPPPWKHEDSKRIYHFVEGQSVHYECIPGYKALQRGPAISICKMKCGKTGWTQPQLTCVDGSHHHHHH(配列番号2)
【0188】
配列番号2のC末端のHisタグは精製に使用され、発現されるタンパク質中に存在してもよく、又は任意で除去してもよい。タンパク質を組換え的に産生するために使用されるコンストラクトは、シグナルペプチド、例えば、次のアミノ酸配列:MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号3)を有するシグナルペプチドを任意に含んでもよい。
【0189】
結果
概して、全ての投与レジメンが良好に忍容され、定期的投与レジメンはQD×5投与レジメンに比して忍容性の測度の向上をもたらした。定期的投与レジメン(Q3D、Q4D、Q7D)は、連日SC投与レジメンと比較して統計学的により大きな、全CD8
+ T細胞の増加(
図2)及びCD8+ T細胞のT
regsに対する比の増加(
図3)と関連付けられた。定期的投与レジメン(Q3D、Q4D、Q7D)は、連日投与レジメンと比較して統計学的により大きな、記憶表現型CD8
+ T細胞の増加(
図4)及び記憶表現型CD8+ T細胞のT
regsに対する比の増加(
図5)と関連付けられた。更に、定期的投与は、連日投与レジメンと比較して同等又はより大きな抗腫瘍有効性をもたらした(
図6)。5~10%の体重減少を示し、最低体重が試験6日目に観察されたQD×5レジメンとは異なり、これらの定期的投与レジメンは、有意な体重減少を示さなかった(
図7)。注目すべきことに、より高い合計量の配列番号2を、向上した忍容性で、より低頻度の投与で送達することができる(例えば、0.4~0.8mg/kgのQD×5投与では、マウス1匹当たり合計2~4mg/kgが所与の1週間に送達されることになり、3mg/kg Q3Dでは、合計9mg/kgが1週間に投与されることになり、3mg/kg Q4Dでは、合計6mg/kgが1週間に送達されることになり、6mg/kg Q7Dは、1週間で6mg/kgと同等である)。
【0190】
Table 1(表1)に記載した担腫瘍マウス(MC38腫瘍モデル)における投与レジメンの結果(
図10~
図12)は、連日投与レジメンと比較して向上した忍容性及び向上した抗腫瘍有効性も示した。
【0191】
結論
配列番号1のげっ歯類ホモログの定期的投与レジメンは、げっ歯類ホモログ又はrIL-2の定常投与レジメンと比較して、循環中の薬力学的マーカーの細胞プロファイルとサイトカインプロファイルの両方における著明な向上と関連付けられる。重要なことに、この向上した薬力学的プロファイルは、忍容性及び抗腫瘍有効性の測度における向上と関連付けられた。これらの所見は、配列番号1及びそのげっ歯類ホモログである配列番号2の定期的又は断続的な曝露が、より定常な投与又は持続的な曝露と比較して、予期せぬ追加の抗腫瘍利益をもたらすという作業仮説と一致している。
【0192】
(実施例2)
ヒトにおける配列番号1のSQ投与とIV投与との比較。
試験プロトコール(実施例3に記載するフェーズ1/2試験のコホート1)
配列番号1の漸増連日IV投与と配列番号1の定期的(q7d)皮下投与とを比較する試験を行った。実施例3に記載するように血清中のIFNγレベル及びIL-6レベルを測定した。
【0193】
配列番号1を投与した対象の霊長類及びヒトのPK及びPD評価の事後解析で得られた静脈内曝露と皮下曝露との比較により、IV及びSCの等価用量を決定した。簡潔に述べると、米国特許出願第62/860,182号に記載されている配列番号1のIV投与を受けた進行固形腫瘍患者における現在進行中のヒト初回臨床試験によるPKデータと、サルのPKデータに基づいて推定されたIVからSCへのスケーリング係数とを使用して、ヒトにおけるSC投与後の配列番号1のPKを予測した。配列番号1のIV及びSC投与後のカニクイザルで評価された配列番号1の単回投与PKを使用して、サルにおけるPKパラメータを推定し、IVからSCへのスケーリング係数を推定した。
【0194】
予測されたPKパラメータを使用して、配列番号1のSC投与後のヒトにおける配列番号1のPKプロファイルをシミュレートした。0.3mgのSC投与後の配列番号1のピーク濃度(Cmax)は、1μg/kgのIV投与後のヒトで観察される20ng/mLの平均Cmaxと比較して、2.6ng/mLであると予測される。0.3mgのSC投与後の第1週の総全身曝露量(AUC0-168h)は、1日1回5日間の1μg/kg/日のIV投与後の399ng*h/mLのAUC0-168hと比較して、150ng*h/mLであると予測される。
【0195】
更に、ヒトにおける配列番号1のSC投与では、長い吸収相の後に緩徐な排泄相が予測され、Cmaxには12時間で達すると予想され(Tmax)、終末相半減期(t1/2)は約30時間と予想される。対照的に、配列番号1のIV投与では30分間の注入の終わりにTmaxが観察され、その後、約5時間の終末相半減期で血清中濃度レベルが急速に低下した。まとめると、1週1回又はそれ未満の頻度の投与スケジュールで0.3mgをSC投与すると、1μg/kg/日の配列番号1を1日1回連続5日間IV投与する場合よりも低いピーク濃度及び1週間の総曝露量がもたらされると予測される。
【0196】
結果及び考察
実施例3に記載する現在進行中のフェーズ1/2単独療法臨床試験プロトコールのコホート1からのデータは、配列番号1のqd×5 IV投与の等価用量の1μg/kgと比較した、3mgの配列番号1のq7d皮下投与による、IL-6のごくわずかな上昇を伴う血清中IFNγの一過性上昇を示した。
【0197】
q7d皮下投与後に患者の血清中で測定されたIFNγサイトカインレベルのベースラインに対する最大変化倍率は、配列番号1の融合タンパク質の等価用量のqd×5静脈内投与のものと比べて少なくとも2倍高い(
図8)。
【0198】
q7d皮下投与後に患者の血清中で測定されたIL-6サイトカインレベルのベースラインに対する最大変化倍率は、配列番号1の融合タンパク質の等価用量のqd×5静脈内投与のものと比べて少なくとも2倍低い(
図9)。
【0199】
IFNγは、抗腫瘍特性及び免疫調節特性を有する多機能サイトカインである。IFNγは、細胞傷害性CD8+ T細胞の分化シグナルとして直接作用し、細胞傷害性T細胞前駆体の増殖の誘導に不可欠である。IFNγはまた、APCにおける細胞表面MHCクラスIIを上方制御し、したがってCD4+制御性T細胞のペプチド特異的活性化を促進する。更に、IFNγは、マクロファージを炎症促進性プロファイル、抗腫瘍プロファイルへと活性化させる。
【0200】
一方でIL-6は、がん性細胞を含む腫瘍微小環境の様々な細胞によって放出される炎症促進性サイトカインである。IL-6は、腫瘍細胞の増大及び分化において重要な役割を果たす。血清及び腫瘍部位におけるIL-6のレベル上昇が数種類のがんで証明されている。通常、この上昇には予後不良及び生存率低下が付随する。IL-6の下方制御は、がん治療に対するより良好な奏効と相関付けられている。
【0201】
(実施例3)
進行性固形腫瘍を有する対象に配列番号1の融合タンパク質を単独療法及びペムブロリズマブとの併用で皮下投与する現在進行中のフェーズ1/2試験。
配列番号1の融合タンパク質は、IL-2Rβ及びγからなる中親和性IL-2Rを選択的に活性化して、細胞傷害性CD8+ T細胞及びNK細胞を活性化するようにデザインされた、循環置換型IL-2及びIL-2受容体α(IL-2Rα)の融合体である。中親和性IL-2Rは、抗腫瘍免疫応答を駆動する際に重要な役割を果たすエフェクターリンパ球で主に発現する。野生型IL-2は、IL-2Rα、β、及びγcからなる高親和性IL-2Rを活性化し、中親和性IL-2Rを有するエフェクター細胞が活性化される濃度を下回る濃度で免疫抑制性Treg細胞の増大を駆動する。中親和性IL-2Rの選択的活性化は、腫瘍殺傷を向上させる可能性があり、マウスモデルにおいて、IL-2に比して向上した抗腫瘍活性を有することが示された。
【0202】
略語及び用語の定義の一覧
【0203】
【0204】
プロトコール配列番号1-
【0205】
【0206】
全体的な試験デザイン及び計画
これは、現在進行中のフェーズ1/2試験である。本試験は2つのフェーズで実施されている。フェーズ1は、複数の上昇用量のSC配列番号1をリードイン単独療法として用いた後にペムブロリズマブとの併用を行う用量漸増フェーズである。フェーズ2は、SC配列番号1をRP2D(フェーズ1から決定される)でペムブロリズマブと併用投与する用量拡大フェーズである。
【0207】
フェーズ2では、4つの特定の腫瘍タイプ及び1つの特定の腫瘍組織学的所見に基づいて、対象を5つのコホートのうちの1つに登録する。対象は、病態進行の確定、SC配列番号1に対する不耐症、治験担当医師による打ち切り、対象による要請、又は試験中止の他の規準のいずれかが生じるまで、試験治療を継続することができる。最低でも、対象が臨床的利益を得られる限り、対象は試験レジメンでの治療を受けるのに適格である。
【0208】
フェーズ1用量漸増
配列番号1の血清中PK及び配列番号1に対する抗体の有無を決定した。更に、配列番号1のPD効果を、試験全体を通して、血液中の循環CD8+ T細胞、Tregs、及びNK細胞、並びに特定のサイトカインの血清中レベルの測定に基づいて評価した。安全性評価は、AE、バイタルサイン、臨床検査、及び心電図に基づくものであった。AEの重篤度は、NCI CTCAEバージョン5.0を使用して評価した。
【0209】
フェーズ1では、21日間のスクリーニング期間後、対象を6週間の単独療法リードイン期間に登録した。2つの異なる投与スケジュール(q7d及びq21d)のうちの1つにおいて、対象をSC配列番号1で治療した。6週間の単独療法リードイン治療後、対象が配列番号1を忍容していれば、ペムブロリズマブ200mgを3週間おきに用いる治療を現在進行中のSC配列番号1レジメンに追加する。SC配列番号1及びペムブロリズマブによる併用治療を受けている対象は、対象が臨床的利益を得ている限り、又は治療中止若しくは試験中止の他の規準のいずれかが発生するまで、試験レジメンの治療を継続して受ける。
【0210】
単独療法の開始用量及びレジメンは、0.3mg q7d(コホート1)であった。最初の3名の評価可能な対象においてDLTが観察されなかった場合、又は最初の6名の評価可能な対象において2例以上のDLTが観察されなかった場合、コホートA2(1.0mg q7d)及びコホートB2(1.0mg q21d)への登録を開始した。
【0211】
対象がコホートA2及びB2に登録した時点以降、2つの投与スケジュールコホートトラック(すなわち、q7d及びq21d)への登録は独立して進行する。コホートトラックに沿った用量漸増は、上述のように、そのトラックにおける先行用量が充分に忍容可能であると決定された後でのみ行われる。
【0212】
各コホートについて、対象4~7名の過剰登録を許容し、1コホート当たり少なくとも3名の評価可能な対象が規定の用量及びスケジュールで配列番号1のSC投与を受ける3+3試験デザインを使用して、安全性及び忍容性を評価する。最高用量レベルのコホート(q7d又はq21d)は、最大6~7名の対象を登録する。
【0213】
後続のコホートにおける用量は、
図3に示すように、30mg/注射まで、又はRP2Dが同定されるか若しくは最大忍容量(MTD)に達するまで増大する。SC投与1回当たり3mgまでの用量漸増に関するデータは、実施例4で提示する。
【0214】
用量制限毒性は、SC配列番号1リードイン単独療法の最初の28日間で観察される、SC配列番号1に関連する可能性がある、その可能性が高い、又はその可能性がきわめて高い次の事象のいずれかによって定義される:
・グレード4の好中球数の減少(好中球減少症)で、次に予定されている投与の前にグレード2(≧1000細胞/mm3)まで回復しないもの、又は緊急介入(例えば、造血性コロニー刺激因子の使用)を必要とするもの、又は臨床的に重要な感染に関連するもの。緊急介入又は臨床的に重要な感染がなければ、現行のサイクルにおけるSC配列番号1の投与が好中球減少症のために停止されることはない。
・発熱性好中球減少症(好中球絶対数[ANC]<1000細胞/mm3で体温>38.3℃[101°F])で、48時間を超えて持続するもの、又は緊急介入(例えば、造血性コロニー刺激因子の使用)を必要とするもの、又は臨床的に重要な感染に関連するもの。
・次の投与前にグレード2以下まで回復しないグレード4の血小板減少症。
・血小板数<30,000で臨床的に重要な出血を伴う血小板減少症。
・いずれかのグレード3の心毒性又は中枢神経系毒性。
・8×ULNより高い肝トランスアミナーゼ上昇又は6×ULNより高い総ビリルビンで、1週間以内にグレード2以下又はベースラインまで回復しないもの。
・グレード4の低アルブミン血症。
・現在進行中の感染に関連しない、24時間を超えて持続する40℃超の発熱。
・昇圧薬(例えば、血圧を上昇させる目的で投与されるフェニレフリン又はドパミン)の使用を必要とする低血圧又は医療介入を必要とする低血圧のための長期入院(>48時間)。
・以下の規準を満たすアミラーゼ又はリパーゼの増加。
・>3×ULNで重度の急性腹痛あり(グレード3の他の軽度症状はDLTと見なされない)。
・最大限の対症療法にもかかわらず48時間よりも長く持続するグレード3又はそれ以上の悪心、嘔吐、又は下痢。
・疲労又は食欲不振以外の、96時間以内にグレード2以下まで回復しない、あらゆる他のグレード4の非造血系毒性又はあらゆる他のグレード3の非造血系毒性。疲労又は食欲不振はDLTと見なされない。
・上記に定義されていないあらゆる他の毒性又はAEで、治験担当医師による対象の試験打ち切り又は投与の恒久的中止をもたらすもの(サイクル2又はそれ以降における投与遅延はDLTと見なされない)。
【0215】
上述のDLT規準を満たす検査値はいずれも、DLT規準を満たすには第2の結果によって確定されなければならない。
【0216】
PK、PD、予備的な抗腫瘍活性、及び安全性データ(最初の4週間のDLT観察期間後に観察されたAEを含む)の解釈に基づいて、SC配列番号1治療の単回用量レベル(すなわち、mg/注射)及び投与スケジュール(すなわち、q7d又はq21d)を選択し、試験の拡大フェーズ(すなわち、RP2D)でペムブロリズマブとの併用を更に評価する。RP2Dは、MTDと等しいか又はそれ未満である。
【0217】
提唱される用量範囲内でRP2Dに達しなければ、更なる用量漸増を検討し、プロトコールの修正によって試験に追加する。DLTレベル未満の用量レベルを用いる更なるコホートを評価して、各投与スケジュール(すなわち、q7d及びq21d)のMTDを決定してもよい。用量漸増を行う前に、対象を試験に登録した治験責任医師、スポンサーの医療モニター、及び特定の他のスポンサー代表者(安全性審査委員会[SRC])が現行のコホートの安全性データを審査し、用量漸増が正当化されるかどうかを判断する。
【0218】
投与スケジュールコホートトラックのうちの一方(すなわち、q7d又はq21d)における用量漸増は、他方の投与スケジュールが優れた忍容性、抗腫瘍活性、及び/又はPD応答を示す場合は中止される。
【0219】
試験のフェーズ1に参加する個々の対象は、対象が特定の規準を満たせばその用量の漸増(すなわち、対象内用量漸増)を許可されうる。そのような漸増は、対象の用量を、対象の現行用量レベルより1レベル高い、プロトコールで定義された用量レベルまで増加させる。
【0220】
DLT評価期間中にプロトコールで規定された数よりも少ない回数(すなわち、q7dレジメンで4回未満、又はq21dレジメンで2回未満)の投与を受け、DLTのない対象は、そのコホートが評価可能な対象の最低数に達していなければ、同じ用量レベルで置き換えられる。しかしながら、リスク/利益比が許容可能であると治験担当医師が考える場合には、その対象は試験を継続することができる。
【0221】
最初の4週間のDLT観察期間後も、安全性及び忍容性は引き続き入念にモニターされる。DLT規準を満たしているが対象のDLT観察期間が終了した後に生じた有害事象は、SRCによって審査されてよく、単独療法リードインフェーズにおける更なる用量漸増を終わらせる及び/又は併用フェーズでの用量を漸減させる判断につながる場合がある。
【0222】
MTD/RP2Dが定義されたら、フェーズ2の開始前に安全性拡大コホートが追加されうる。追加で最大12名の対象を治療して、サイクル1第1日から開始する配列番号1とペムブロリズマブの同時併用投与を評価することができる。このMTD/RP2D拡大コホートの目的は、併用レジメンの安全性及び忍容性の特性評価を行うこと、並びに対象をフェーズ2拡大コホートに登録する前にRP2Dを確定することである。MTD拡大コホートで治療された対象のおよそ3分の1以上がDLTを経験すれば、又は統合したコホート評価に価値があれば、より低い用量レベルが評価されうる。
【0223】
コホート内の最後の患者が28日間のDLT観察期間を完了した後、スポンサー及び臨床研究組織医療モニター及び治験担当医師が会合して、全ての利用可能な安全性データを審査する。この審査に基づき、投与スケジュール(q7d又はq21d)の一方又は両方について以下の措置のうちのいずれかを講じて、更なる安全性データを得ることができる:
・プロトコールによる定義に従って用量漸増を停止又は継続する
・投与スケジュールの一方又は両方で現行用量レベルを拡大する
・開始用量レベルより低い用量(例えば、0.1mg又は0.2mg)まで漸減させる
・現行用量と先行用量レベルとの中間である用量を探索する
・現行用量と、プロトコールに定義されている次に高い用量レベルとの中間である用量を探索する。
【0224】
用量漸増の終了時に、q7d又はq21dのいずれかのスケジュールが、利用可能なデータの安全性審査委員会による審査に基づいて、次に進める(go-forward)スケジュールとして選択される。
【0225】
フェーズ2用量拡大
フェーズ2では、21日間のスクリーニング期間後、以下の腫瘍タイプ及び特定の組織学的所見を有する対象を、以下のコホートに登録する:
・NSCLC
・SCCHN
・扁平上皮臓器横断的(Squamous tumor agnostic)
・HCC
・SCLC。
【0226】
対象は、フェーズ1で同定されたSC配列番号1のRP2D及び推奨投与スケジュールを3週間おきにペムブロリズマブ200mgと併用した治療を受ける。SC配列番号1及びペムブロリズマブの併用治療を受ける対象は、対象が臨床的利益を得られる限り、試験レジメンでの治療を継続して受ける。
【0227】
試験薬の用量及び投与
試験サイトは、対象への投与中に実地にいることが必要とされる医療従事者、緊急事態を(発生した場合に)処理するのに必要な機器及び薬剤の利用可能性、並びに対象を必要に応じて医療施設に搬送するためのプロセスを詳述した手順の書面を整備していなければならない。緊急蘇生装置が利用可能であるべきである。
【0228】
配列番号1の用量及び投与
フェーズ1の単独療法リードインにおいて、配列番号1レジメンは、q7d(±1日)又はq21d(±1日)のいずれかのSC配列番号1の治療日1日からなる。フェーズ1又は2の併用療法では、全ての治療サイクルが3週間おきである。q7d投与スケジュールの場合、SC配列番号1を各サイクルの第1日、第8日、及び第15日の一定期間内(±1日)に投与し、ペムブロリズマブを各サイクルの第1日(±1日)に投与する。q21d投与スケジュールの場合、SC配列番号1及びペムブロリズマブを各q3wサイクルの第1日(±3日)に投与するが、SC配列番号1投与はペムブロリズマブと常に並行しなければならない。
【0229】
配列番号1をSC注射によりq7d及びq21dで投与し、対象が臨床的利益を得られる限り継続する。注射部位の場所は腕の裏側、大腿、又は腹部を含む。
【0230】
単独療法リードイン期間の第1日目、SC配列番号1の注射後には、8時間の観察期間が必要である。後続の注射では、より短い時間にわたって対象を観察してもよい。
【0231】
フェーズ1又は2において、SC配列番号1をペムブロリズマブと併用投与する日には、配列番号1はペムブロリズマブ注入の60~90分前にSC注射として投与すべきである。ペムブロリズマブの投与前には、少なくとも1時間にわたり、配列番号1に対する潜在的な急性反応について対象をモニターする。
【0232】
ペムブロリズマブの用量及び投与
ペムブロリズマブは、処方情報(Keytruda USPI)に従って、対象が臨床的利益(すなわち、客観的奏効又は安定病態[SD])を得られる限り、200mgの用量で30分間のIV注入として3週間おきに投与するものとする。ペムブロリズマブは、凍結乾燥粉末又は溶液のいずれかの単回用量バイアルとして入手可能である。
【0233】
注入部位及び注射部位の反応
SC注射によって投与される配列番号1は、局所注射部位反応に関連することがある。注射部位反応は、治験担当医師の裁量により治療されるべきである。グレード3の注射部位反応を経験する対象には、医療モニターとの協議の後、SC配列番号1を再負荷してもよい。グレード4の注射部位反応の場合には、SC配列番号1を再負荷してはならない。
【0234】
ペムブロリズマブの使用に関連する注入関連反応は、ペムブロリズマブの処方情報(Keytruda USPI)に従って管理すべきである。配列番号1の薬剤は、2mg、10mg、及び30mgの単回用量バイアルで供給され、これらを再構成すると、それぞれ1mg/mL、5mg/mL、及び15mg/mLの配列番号1の透明無色の溶液が得られる。
【0235】
配列番号1は、無菌で白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末として供給され、再構成のための無菌の0.32%塩化ナトリウム希釈剤(SC食塩水希釈剤)が別途供給される。
【0236】
フェーズ1のSC配列番号1単独療法リードイン期間の完了後、対象が療法を忍容していれば、ペムブロリズマブを追加する。ペムブロリズマブは、200mgの用量で30分間のIV注入として3週間おきに投与する。またフェーズ2では、ペムブロリズマブをSC配列番号1と共に投与する。ペムブロリズマブは、商業的供給源から試験サイトの薬局から取得するか、又はペムブロリズマブが未承認である国ではスポンサーによって提供される。使用説明書が試験施設に配布され、詳細な用量調製、取り扱い、及び投与に関する説明書が提供される。
【0237】
有効性の評価
有効性の主要エンドポイント
フェーズ2中、5つのコホート(NSCLC、SCCHN、扁平上皮臓器横断的、HCC、及びSCLC)のそれぞれについて、RECISTによってORRを決定する。
【0238】
有効性の副次的エンドポイント
腫瘍の評価
ベースライン及びおよそ9週間おきに新生物疾患の程度を測定することにより、抗腫瘍活性を決定する(サイクル10後は、これを12週間おきに減らすべきである)。適切な放射線学的手法(コンピュータ断層撮影スキャニング、磁気共鳴イメージング、及び放射性核種イメージング)を実施して、新生物疾患の領域を評価すべきである。表在性皮膚腫瘍はキャリパーで測定し、撮影して評価する。最初の測定方法を試験過程全体で維持することが求められる。奏効の決定は、標準的なRECIST規準並びにiRECISTに従って実施する。腫瘍は、完全奏効(CR)/免疫CR(iCR)、部分奏効(PR)/免疫PR(iPR)、SD/免疫SD(iSD)、又は病態進行/免疫病態進行(iPD)と評価される。これらの腫瘍評価のそれぞれの定義については、RECIST及びiRECISTのガイドラインを参照されたい。本試験の目的では、対象が少なくとも12週間にわたってSD/iSDの定義を満たさなければ、SD/iSDの評価を決定することはできない。
【0239】
免疫療法薬を用いる試験では、RECIST規準によって疾患進行として特性評価される腫瘍量の増加後までは、CR、PR、又はSDが起こらないことがある。RECIST等の従来の奏効規準は、免疫療法薬の活性を充分に評価しない場合がある。免疫療法への奏効は従来のPDの後に起こりうるので、放射線学的に評価された病態進行は治療の失敗を意味しない場合がある。免疫療法の場合、測定可能な抗腫瘍活性の出現には、細胞傷害性療法よりも長い時間がかかりうる。
【0240】
免疫療法薬を用いる場合、対象が免疫療法に奏効していても起こりうる、他の応答性病変の存在下での小さな新病変と定義される、臨床的に重要でない疾患進行を許容すべきである。安定病態は、iRECISTでの抗腫瘍活性を表す場合もある。したがって、SC配列番号1に対する腫瘍の応答のより包括的な評価を確かにするために、RECIST及びiRECISTを使用する。
【0241】
抗腫瘍活性は、RECIST及びiRECISTに基づいて、ORR又は免疫ORR(iORR)と表現される。標的及び非標的病変は全て、エックス線写真によって、又は表在性皮膚腫瘍の写真を使用することによって測定する。全腫瘍奏効率を決定する。ORR/iORRは、CR/iCR又はPR又はiPRを呈する対象の数を、抗腫瘍活性について評価可能な対象の数で割ったものである。奏効期間も決定する。ORR/iORRは、試験の用量漸増部分の対象と、試験の用量拡大併用療法フェーズ(フェーズ2)の対象とで別々に算出する。
【0242】
PK、PD、及び免疫原性の評価
薬物動態
SC配列番号1のPK評価のための血清サンプルを所定の時点で取得する。妥当性が確認された電気化学発光方法を使用して、ヒト血清中の配列番号1を定量化する。ノンコンパートメントPK解析を行って、配列番号1のPKパラメータを推定する。フェーズ2の予定されたPK採血中に得られた残りの血清PKサンプルは、後日ペムブロリズマブ濃度について解析されうる。
【0243】
免疫原性
配列番号1に対する抗体の存在に関するデータを、治療コホート/用量レベルによってまとめる。残りの血清サンプルは、後日の抗ペムブロリズマブ抗体誘導の潜在的な解析のために保管する。
【0244】
薬力学及びバイオマーカー
試験の全対象から収集された血液及び血清サンプルにおいて、様々なバイオマーカーのPD応答を評価する。フェーズ2では、血漿サンプルも循環腫瘍DNA(ctDNA)の単離のために対象から収集する。これらの10mLサンプルは、スクリーニング時、サイクル1第8日の投与前、サイクル2第1日の投与前、サイクル3第1日の投与前、治療終了時、及びCR、PR、又はSDを経験した対象における進行時に採取する。PD-L1発現を含む更なるバイオマーカー解析を腫瘍組織サンプルに行ってもよい。フェーズ2の対象から収集したベースラインの便サンプル中のDNAも単離し、相関性解析に使用してよい。
【0245】
血液ベースのバイオマーカー
末梢血中の循環CD8+ T細胞、Tregs、及びNK細胞によって測定されるSC配列番号1のPD効果の評価のための血液サンプルを、各対象から所定の時点で取得する。妥当性が確認されたバイオマーカーアッセイを使用して、末梢血中の循環CD8+ T細胞、Tregs、及びNK細胞の数並びに活性を測定する。免疫細胞におけるIL-2受容体の発現についても評価する。
【0246】
血漿から単離された循環腫瘍DNAを遺伝子解析及びエピジェネティクス解析に供してもよい。更に、血清中サイトカインレベルの評価のための血清サンプルを各対象から所定の時点で取得する。妥当性が確認されたサイトカインアッセイキットを使用して、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、IL-1、IL-6、及びIL-10を含む複数の炎症促進性サイトカインの濃度を決定する。
【0247】
腫瘍組織バイオマーカー
腫瘍生検
試験中、生検による新鮮な腫瘍サンプルの収集は任意であるが、奨励される。到達可能な腫瘍を有し、生検を受ける意思のある対象は、スクリーニング時(両フェーズ)、並びに治療中は単独療法リードイン期間の第29日~第33日(フェーズ1のみ)及び併用療法期間のサイクル2第8日~第14日(両フェーズ)にサンプルを提供する必要がある。これらのサンプルを、免疫組織化学及び/又は免疫蛍光により、免疫活性化のマーカーについて解析する。これらは、NanoString等の方法を使用した遺伝子発現解析にも使用することができる。腫瘍微小環境に対する薬理学的影響を証明するために、治療下とベースラインの結果の比較を使用してもよい。ベースラインの腫瘍組織の解析は相関性解析に使用する。腫瘍サンプルの取り扱い及び処理に関する情報については、実験マニュアルを参照されたい。
【0248】
(実施例4)
フェーズI用量漸増試験の結果
実施例3に詳解したように、q7d及びq21dで投与される最大3mg用量までの用量漸増から初期の結果が得られており、ここで3mgコホートは2名を含み、最大7名が現在登録を進めている。得られたデータは、
図13~
図17に示すデータを含む。
【0249】
配列番号1の皮下(SC)投与後の薬物動態
配列番号1の初回SC投与(単独療法リードインサイクル1第1日)後の配列番号1の血清中濃度対時間プロファイルが
図13に示されている。0.3mg~3mgの用量範囲にわたる配列番号1の平均ピーク(C
max)及び総血清曝露量(AUC
last)が
図14に示されている。配列番号1の単回SC投与後、配列番号1の血清中濃度は、投与後8~24時間でピークに達し、その後ゆっくりと低下し、3mg用量では投与の168時間(7日)後まで測定可能な濃度があった。配列番号1への全身曝露(C
max及びAUC
last)は、用量増加と共に増加した。0.3mg~3mgの用量範囲において、C
maxの増加はほぼ用量比例的であり、AUC
lastの増加は用量比例性を上回った。
【0250】
配列番号1のSC投与後の薬力学的効果
配列番号1の7日おきに1回(Q7D)又は21日おきに1回(Q21D)のSC投与後の末梢血中の全NK細胞、全CD8
+ T細胞、及び制御性T細胞(T
reg)の細胞集団の時間経過が
図15に示されている。対応する、全NK細胞、全CD8
+ T細胞、及びT
regのベースラインからの変化倍率が
図16に示されている。
【0251】
配列番号1は、Tregに対するごくわずかな効果と共に、循環NK細胞及びCD8+ T細胞の用量依存的増加を誘導した。
【0252】
配列番号1の初回SC投与後(単独療法リードインサイクル1第1日)のインターフェロンガンマ(IFNγ)及びIL-6の血清中濃度対時間プロファイルが
図17に示されている。
【0253】
IFNγ及びIL-6の血清中濃度の一過性上昇がSC投与後に観察され、3mgではより著明であった。IFNγ及びIL-6のピーク濃度は投与後24時間で観察され、投与後72時間までにベースラインレベルに戻った。実施例2に詳解したように、IFNγは、望ましい抗腫瘍特性及び免疫調節特性を有する多機能サイトカインである。一方でIL-6は、がん性細胞を含む腫瘍微小環境の様々な細胞によって放出される炎症促進性サイトカインである。IL-6の下方制御は、がん治療に対するより良好な奏効と相関付けられている。
【0254】
本明細書において参照される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立するものである。本明細書において引用される米国特許及び公開済み又は非公開の米国特許出願は全て、参照により本明細書に組込まれる。本明細書において引用される公開済みの外国特許及び特許出願は全て、参照により本明細書に組込まれる。本明細書において引用される他の公開済み参考文献、文書、原稿、及び科学文献は全て、参照により本明細書に組込まれる。
【0255】
本発明の好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に示し、説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、その形態及び詳細に様々な変更が行われ得ることが理解されよう。また、本明細書に記載される実施形態が相互排他的ではないことと、様々な実施形態の特徴が本発明に従って全体的又は部分的に組み合わされ得ることも理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】