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特表2022-535987自己組織化単分子膜を用いて予備機能付与されたナノ粒子およびその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】自己組織化単分子膜を用いて予備機能付与されたナノ粒子およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/52 20170101AFI20220803BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20220803BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20220803BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20220803BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20220803BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20220803BHJP
   B22F 1/18 20220101ALN20220803BHJP
【FI】
A61K47/52
A61K48/00
A61K51/02 200
A61K51/02 100
B22F1/06
B22F1/054
B22F1/05
B22F1/00 K
B22F1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573785
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 FR2020051005
(87)【国際公開番号】W WO2020249912
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】1906224
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】521543060
【氏名又は名称】エコール ノーマル シューペリウール パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ノグ,クロードゥ
(72)【発明者】
【氏名】ブックル,マルコルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアル,ステファニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4K018
【Fターム(参考)】
4C076CC38
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA11
4C084AA13
4C084NA13
4C085HH01
4C085JJ20
4C085KA26
4C085KB01
4K018BA01
4K018BB01
4K018BB03
4K018BB05
4K018BB10
4K018BC26
4K018BC28
(57)【要約】
本発明は、予備機能付与されたナノ粒子(NP)の分野に関する。本発明はより詳細には自己組織化単分子膜(SAM)を用いて予備機能付与されたNPに関し、また、上記NPが溶液中で安定であるように生体分子を用いて機能付与されたNPに関する。これらのNPは多くの用途において、特に、診断ツール、溶液中の対象分子を枯渇させるためのツール、および治療ツールとして使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):HS(CH)n(OCHCH)mOHの分子Mのマトリクスによって形成される自己組織化保護単分子膜を用いて予備機能付与された金属表面を含むナノ粒子であって、
ここで、
nは、CHの数を表し、3≦n≦11であり、
mは、エチレングリコールの数を表し、1≦m≦12であり、
上記分子は、一方の末端にチオール官能基を有し、他方の末端が不活性であり、
上記単分子膜の被覆率Wは、1.5%~99%であることを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
上記ナノ粒子が、式(7):SH-CHCH(CHCHO)O-Fの少なくとも1つのL-PEG分子を用いてさらに機能付与されており、
ここで、
qは、エチレングリコールの数を表し、20≦q≦500であり、
Fは、CH、OH、COOHまたはNHなどの官能基を表し、
上記L-PEG分子の被覆率Xは、少なくとも1%であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
少なくとも1つのチオール化分子を用いてさらに機能付与されており、上記チオール化分子は、
式(8):HS(CH(OCHCHO-FのPEG-Fリンカー分子であって、
ここで、
rは、CHの数を表し、3以上の整数であり、
pは、エチレングリコールの数を表し、2≦p≦12であり、
Fは、CH、COOHまたはNHなどの官能基を表し、
上記リンカー分子は、一方の末端にチオール官能基を有し、他方の末端に生体分子と相互作用することができる活性基または反応性基を有する、PEG-Fリンカー分子;または、
チオール官能基を含む生体分子、のいずれかである、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
上記チオール化リンカー分子がPEG-F基であり、上記FがCOOH官能基であり、その被覆率Yが少なくとも1%であることを特徴とする請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
上記リンカー分子に結合した少なくとも1つの生体分子を用いてさらに機能付与されていることを特徴とする、請求項3または4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
上記チオール化生体分子がチオール化DNAであり、その被覆率Zが少なくとも10%であることを特徴とする請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項7】
上記ナノ粒子は、球状ナノ粒子、ナノロッド、立方体ナノ粒子、ナノトライアングル、コアシェル、またはナノアーチンである、先行する請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項8】
一方の末端にチオール官能基を有し、他方の末端が不活性である分子の溶液によって形成された自己組織化保護単分子膜を用いて予備機能付与された金属表面を含むナノ粒子を調製する方法であって、上記方法は以下の工程:
請求項1に規定されている式(1)の分子Mを付加し、1.5%~99%の被覆率Wを達成すること、
少なくとも5分間撹拌すること、を含む、方法。
【請求項9】
請求項2に規定されている式(7)のL-PEG分子の溶液を添加し、1%~10%の被覆率Xを達成する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項3に規定されている式(8)のPEG-Fリンカー分子から選択されるチオール化分子であって、生体分子またはチオール化生体分子と相互作用することができるチオール化分子を付加する工程をさらに含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
溶液、特に複合培地中の対象分子を検出するための方法であって、以下の工程:
請求項2~7のいずれかに記載の少なくとも1つの機能付与されたナノ粒子に溶液を接触させること、
SPR、ストリップ試験、または任意の他の適切な方法によって、生体分子が上記溶液の成分の1つと相互作用するときの特定のシグナルを検出すること、を含む、方法。
【請求項12】
溶液中、特に複合培地中に存在する対象分子を検出するための方法であって、上記方法は、以下の工程:
a)請求項2~7のいずれかに記載の少なくとも1つの機能付与されたナノ粒子に、上記対象分子を含む溶液を接触させること、
b)上記ナノ粒子の存在下で上記溶液をインキュベートすること
c)上記ナノ粒子を回収すること、
d)上記対象分子の溶液が無くなるまで、任意に工程a)~c)を繰り返すこと、を含む、方法。
【請求項13】
癌の治療、特に放射線療法、光線療法、および医薬品の調剤、ならびに医用画像診断におけるその使用のための、請求項2~7のいずれかに記載のナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、予備機能付与されたナノ粒子(NP)の分野に関する。本発明は、より詳細には自己組織化単分子膜(SAM)を用いて予備機能付与されたNP、ならびに生体分子を用いて機能付与されたNPであって、上記NPが溶液中で安定であるNPに関する。上記NPは、複数の用途において、特に診断ツール、溶液中の対象分子の枯渇または濃縮ツール、および治療ツールとして使用することができる。
【0002】
〔従来技術および欠点〕
SAMの分子膜によって覆われたナノ粒子が、文献に開示されている。例えば、Hurst K.M.らによる論文(Journal of Microelectromechanical Systems; Volume: 20, Issue: 2, April 2011)は、p-アミノフェニルトリメトキシシアン(APhTS)および3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)からなるSAMをNP上に固定化して、マイクロエレクトロメカニカルシステムのシリコーン処理された表面上の上記NPの接着を安定化させることを開示している。しかしながら、このようなNPは、生体分子を用いた機能付与には適していない。
【0003】
他の先行技術文献には、チオール化単分子膜で被覆されたナノ粒子が開示されている。
【0004】
Hurstら(2006)は、DNA分子が帯電している金ナノ粒子を開示しており、この研究の目的は、ナノ粒子の表面で最大のDNA分子を帯電させることである。著者らは塩分条件が制御下(0.7M NaCl)に置かれ、DNA分子がポリエチレングリコール(PEG)型のスペーサーを含む場合に、最大電荷が達成されることを実証している。
【0005】
Wangら(RSC Adv. 2017, 7. 3676-3679)は、PEGおよびチオール化DNAを含む混合単分子膜を用いて機能付与された球状金NPを開示している。上記ナノ粒子は、2つの工程:チオール化DNA分子を用いて機能付与すること、次いでチオール化PEGを用いてNPの全表面を覆うことによって調製される。
【0006】
Liら(Langmuir 2015, DOI: 10.1021/acs.iangmuir.5b01680)は、DNA分子を用いて機能付与されたナノロッド(NR)を開示している。金NRは正に荷電しているので、負に荷電したDNAの存在下では共に集まる傾向がある。著者らはチオール化DNAを添加する前に、PEGおよび界面活性剤のNR長分子上で格子形成することを提案している。
【0007】
文献US 2011/165077は、画像形成のための金ナノ粒子の使用を開示している。レポーター分子をNPの表面にグラフトし、次いでこれらを飽和点までPEG-SH保護分子膜で覆う。この分子膜は粒子の凝集を防止し、特異的プローブを用いて機能付与することができる。
【0008】
文献US 2019/142966は、癌の治療を目的とする金属NPの使用を開示している。これらのNPは単一工程でPEG-COOH分子で覆われ、次いで、カルボキシ基はSDSの存在下で、治療分子および標的分子で機能付与される。
【0009】
文献US 2016/243254は、癌の治療におけるセラノスティックツールとしてのナノプローブの調製を開示している。チオール化PEG-COOHの第1の分子膜がNPの表面にグラフトされ、この第1の分子膜はPEG-COOHが高分子量であるために、NPの表面の約30%を覆い、これは最大の被覆率である。チオール化DNA-ハーピン分子の第2の分子膜が付加され、PEG分子の間に挟まれる。この構成では、非特異的相互作用の出現のためには、部分的な被覆率とカルボキシ官能基とを組み合わせることが好ましい。
【0010】
生物学的プローブを固定するための支持体として使用されることが意図されるNPの分野においては、種々の制約が考慮されなければならない。第1に、予備機能付与された、または機能付与されたNPは溶液中で安定でなければならず、すなわち、凝集しなくてもよい。それらはまた、目的の特異的プローブ/分子相互作用を可能にしなければならない。
【0011】
〔発明の開示および利点〕
本発明は、低分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)の分子から形成され、その被覆が部分的である自己組織化単分子膜を用いているNPの予備機能付与によって、これらの課題に対する解決策を提供する。NPの表面上のこの予備膜の存在は、単独で、または他の分子と組み合わせて(機能付与)、溶液中で安定なNPを調製することを可能にする。この単分子膜は特に、低分子量(100~732ダルトンの間)を有する分子から構成され、その分子鎖は短く、表面の領域におけるバルクは最適であり、これにより、以下に記載されるそれらの革新的な特性を有するナノ粒子が提供される。
【0012】
NPの表面にグラフトされた要素の構成の説明を図1に示す。
【0013】
本発明による機能付与のストラテジーは表面化学であり、すなわち、非特異的相互作用の阻害および特異的相互作用の最適化によって、ナノ粒子の表面に固定化されたリガンド(生体分子)の数を制御し、これによって、金などの金属ナノ粒子、またはコアシェルの混成タイプのナノ粒子の、緩衝液および複合培地中における安定性を改善することができるものである。この技術は、プローブとして作用する1つ以上の生体分子の固定化に先立つ予備機能付与からなる。生体分子がNPの表面上へのそれらの直接固定化を可能にするチオール化基を含むか、または、生体分子の固定化が2つの工程:1)一方にチオールを有し、他方に反応性官能基を有するリンカー分子の固定化(前者は金属表面上へのそれらの固定化のためであり、後者は生体分子の固定化のためである)、そして2)リンカー分子上に存在する官能基と反応または相互作用することができる基を含む生体分子(プローブまたは活性分子)の付加で行われるか、のどちらかである。ここで説明した方法は、特に球状NP、ナノロッド、ナノキューブ、ナノトライアングル、およびナノアーチンに適している。
【0014】
さらに、この予備機能付与は、プローブの密度の最適化、プローブの均一な分布、および非特異的相互作用の不在を可能にする。特に、本発明は、高度の検出感度を達成するために、密度が低く最適化されたプローブを用いて機能付与されたNPを得ることを可能にする。また、プローブの各々について制御された密度および分布を維持しながら、複数の異なるプローブを組み合わせることも可能である。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の第1の対象は、一方の末端にチオール官能基を有し他方の末端が不活性である分子のマトリクスによって形成された自己組織化単分子膜(SAM)を用いて予備機能付与された金属表面を含むナノ粒子に関し、上記ナノ粒子は、上記単分子膜の被覆率Wが1.5%~99%であることを特徴とする。
【0016】
自己組織化単分子膜の特性は、それが機能付与の前にNPの表面に適用されること、およびそれが不飽和であることである。それは表面を保護する役割を果たす。この単分子膜は、式(I)の分子Mから形成される:
HS(CH)n(OCHCHOH
ここで、
nは、CHの数を表し、3≦n≦11であり、
mは、エチレングリコールの数を表し、1≦m≦12である。
【0017】
分子Mの分子量は100~732ダルトンである。
【0018】
総じて、SAM分子膜の効果を認めるために、最低1.5%の被覆率Wが必須である。低い被覆率は、NP表面における生体分子が高密度になることを許容し、これは例えば、2つの異なった生体分子が存在するときの目的になり得る。一方、被覆率Wは飽和点付近(例えば99%)に高くなり得、単一分子の付着を可能にするが、この手法の唯一の限界は、高感度の適切なツールがないことに起因する検出限界である。いずれにせよ、NPの表面を予備機能付与することは、制御された手法で生体分子を固定化すること、すなわち、固定化された生体分子間の平均距離を確実に均一にすることを可能にする。
【0019】
特定の実施形態では、被覆率Wは用途に応じて、3%~80%であり得、例えば10%~50%、または5%~30%であり、特に2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%であってもよい。
【0020】
本発明の意義の範囲内において、「被覆率」とは、理論的に初期段階の被覆率を意味するものであり、分子表面に対応し、次式(2)により算出される:
(nmで表される略号)×100/ナノ粒子の表面積
本発明の意義の範囲内において、「ナノ粒子」(NP)とは、球状ナノ粒子(NS)、ナノロッド(NR)、立方体ナノ粒子(NC)、またはナノトライアングル(NT)、またはナノアーチンであり得る。これらは、特に、直径が10~80nmである球状金ナノ粒子、アスペクト比が2.5~5であるナノロッド、および一辺が40nmであるナノキューブ、または一辺が30~100nmで厚みが10~40nmであるナノトライアングルであってもよい。NPはまた、例えば酸化型(例えば酸化鉄、酸化ケイ素)または金属の核、および金属シェル(例えば金)を含む、同じ形状の混成NP(球体、ナノロッドなど)であってもよい。コア-シェル混成ナノ粒子の金属表面は金属ナノ粒子の表面と同様であり、その表面を計算する方法は同一である。
【0021】
分子の表面積はその形状に依存し、被覆率を決定するために既知でなければならない。
【0022】
球状ナノ粒子では、表面積は次式(3):
4πr
であり、ここで、rはナノ粒子の半径である。
【0023】
ナノロッドの場合、表面積は、以下の式(4):
2πrl+2πr
であり、ここで、rはナノロッドの半径であり、lはその長さである。
【0024】
ナノキューブの場合、表面積は下記式(5):
6a
であり、ここで、aはナノキューブの一辺である。
【0025】
ナノトライアングルの場合、表面積は次式(6):
(ph/2)+b
であり、ここで、pは底面の周辺の長さであり、hは傾きの高さであり、bは底面の面積に対応する。
【0026】
NPの表面上にそれらの予備機能付与またはそれらの機能付与のために存在する分子は、上記で定義されるM分子、以下で定義されるL-PEGおよびPEG-F分子、ならびに二本鎖DNA(dsDNA)または一本鎖DNA(ssDNA)、RNA、抗体またはペプチドなどのタンパク質、アプタマーなど、から選択され得る。
【0027】
そして、被覆率を決定するためには、NPの表面に存在する分子の理論的略号を認識することも必要である:
略号MおよびPEG-F=0.23nm[1]
L-PEGの略号=0.45nm[2]
dsDNAの略号=3.14nm
【0028】
より好ましい実施形態では、本発明によって予備機能付与されたナノ粒子は、少なくとも1つのL-PEG分子を用いて機能付与されており、その被覆率Xは少なくとも1%、好ましくは1%~10%である。
【0029】
「L-PEG分子」とは、長い高さと高分子量とを有するチオール化ポリエチレングリコールの分子を意味する。
【0030】
L-PEG分子は、式(7):
SH-CHCH(CHCHO)O-F
であり得、ここで、
qはエチレングリコールの数を表し、20≦q≦500であり、
Fは、CH、OH、COOHまたはNHなどの官能基を表す。
【0031】
L-PEG分子の分子量は、800ダルトン以上である。
【0032】
L‐PEG分子を用いた機能付与は、特に、PBS溶液中のNPを安定化することを目的とする。それは、1つ以上の生体分子が吸着され得て「すぐに使用できる」NPを調製するために、分子Mを用いた予備機能付与と組み合わされ得る。
【0033】
さらに、F基がCHまたはOHではない場合、NPの表面上にプローブを付加するために、F基は生体分子と相互作用および/または反応し得る。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、本発明による予備機能付与されたナノ粒子は、少なくとも1つのチオール化分子を用いて機能付与され、上記チオール化分子は、
・一方の末端にチオール官能基を有し、他方の末端に生体分子と相互作用することができる活性基または反応性基を有するチオール化リンカー分子、または、
・チオール官能基を含む生体分子、
のいずれかである。
【0035】
上記ナノ粒子はさらに、上記のL-PEG分子を用いて機能付与することができる。
【0036】
好ましい実施形態では、チオール化リンカー分子は、PEG-F分子であり、ここで、FはCOOHなどの活性化可能な官能基であり、その被覆率Yは少なくとも1%である。NPの表面の総被覆率は、用途に応じて、部分的または全体(飽和)であってよい。好ましい実施形態では、全体の被覆は部分的である。
【0037】
「PEG-F」は、チオール化ポリエチレングリコールの分子を意味する。
【0038】
PEG-F分子は例えば、式(8):
HS(CH(OCHCHO-F
であってよく、ここで、
rは、CHの数を表し、3以上の整数であり、
pは、エチレングリコールの数を表し、2≦p≦12であり、
Fは、CH、COOHまたはNHなどの官能基を表す。
【0039】
PEG-F分子の分子量は低くても高くてもよく、800kDa超までに及ぶ。
【0040】
別の実施形態では、リンカー分子が活性化可能な官能基を含むL-PEG分子であってもよい。
【0041】
別の好ましい実施形態では、本発明によって予備機能付与されたナノ粒子は、核酸(DNA、RNA、PNAなど)、タンパク質(抗体、抗原、ホルモンなど)、ペプチド、ホルモン、糖、脂肪酸、あるいは実際に細胞全体などの、プローブ(「チオール化プローブ」と呼ばれる)として働くチオール化された生体分子を用いて機能付与される。
【0042】
別の目的の実施形態では、チオール化された生体分子は、薬物、サンドイッチまたは錯体形成などの小分子であり、ここでは「活性分子」と呼ばれる。これらの活性分子は、PEG-FまたはL-PEG分子上に存在する活性化可能な官能基によって結合されてもよい。
【0043】
チオール化分子が二本鎖または一本鎖DNAである場合、被覆率Zは少なくとも10%である。NPの表面の総被覆率は、用途に応じて、部分的または全体(飽和)であってよい。好ましい実施形態では、全体の被覆率は部分的である。
【0044】
好ましい実施形態において、PEG-Fが短い場合、L-PEG分子は、NPを安定化させるために1%の割合で付加される。
【0045】
本発明の意義の範囲内で、「チオール化プローブ」は、水性培地(例えば緩衝液)または複合培地(培地、生物学的培地、体液、そして血液、血漿、血清、尿、涙、細胞抽出物などの液体マトリクスなど)中に位置する対象分子と特異的に相互作用(捕捉)することができるプローブの役割を果たす生体分子を意味する。プローブとして機能する上記生体分子はNPの支持体に固定され、これは、(i)生体分子上に存在するチオール化基と、NPの表面との直接相互作用によるものか、あるいは(ii)一方の末端におけるチオール化分子および、他方の末端に「強い」結合(例えばアミド結合などの共有結合、キレート化、ストレプトアビジン-ビオチン結合などの「タグ」タイプの強い親和力)を生成することによって結合分子と反応(結合)することができる活性または反応性基を有することによるものか、のいずれかである。上記チオール化分子は、本明細書では「リンカー分子」と呼ばれる。
【0046】
一旦、基体が上記の保護分子膜SAMによって保護されると、チオール化プローブ付着のさらなる工程が、使用の直前または直前、数時間、数日、または数ヶ月後に続く。
【0047】
これらのチオール化プローブは、
・一般に低い濃度(マイクロモルオーダーの、またはより低い濃度)に依存する時間のインキュベーションを必要とする直接チオール化プローブ、
・反応性アミンまたはカルボキシル基、二重または三重炭素-炭素、エポキシ樹脂、クリック化学(click chemistry)などの結合を有するチオール化分子、
・例えばビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンなどのサンドウィッチを形成するために、相補的分子と相互作用する活性基を有するチオール化分子、
であり得る。
【0048】
本発明の第2の対象は、一方の末端にチオール官能基を有し、他方の末端は不活性である分子の溶液によって形成された自己組織化単分子膜(SAM)を用いて予備機能付与された金属表面を含むナノ粒子を調製する方法に関し、以下の工程:
・自己組織化単分子膜を形成することができる分子Mを付加し、1.5%~99%の被覆率Wを達成すること、
・少なくとも5分間撹拌すること、
を含む。
【0049】
この種の方法は、水中およびPBS中で安定な、予備機能付与されたNPを調製することを可能にする。このように調製されたNPは、使用するまで数ヶ月間、4℃で保存することができる。
【0050】
この方法を行う間に界面活性剤を添加することが可能である。使用される界面活性剤は、当業者に既知の全ての界面活性剤、特にSDS、CHARS、NP40、Tween20(SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、CHARS:3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)などから選択することができる。当業者は、溶液中のNPの調製のための界面活性剤の使用に精通している。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、さらに、1~10%の被覆率Yを達成するために、SAM分子膜を用いて予備機能付与されたNPの溶液にL-PEG分子の溶液を添加し、次いで、撹拌しながら最低5分間、一般的には5分間~1時間、インキュベーションを行う。
【0052】
分子Mを用いて予備機能付与され、任意選択でL-PEG分子を用いて機能付与されたNPは、チオール化分子および/または生体分子を用いてさらに機能付与することができる。代替の実施形態では、L-PEG分子がPEG-F分子の後に付加されてもよい。
【0053】
この種の調製方法は、以下の工程:
・生体分子またはチオール化生体分子と相互作用することができるチオール化リンカー分子から選択されるチオール化分子を付加すること、
・例えば5分~24時間、撹拌すること、
・チオール化分子が生体分子である場合、そのチオール化分子に適した緩衝液条件にそのチオール化分子を置くこと、
・例えば遠心分離などの手段によって、過剰のチオール化分子を除去すること、
・適切な溶液(蒸留水、界面活性剤を含む緩衝液等)中に再分散させること、
・チオール化分子が活性化可能な分子である場合は、活性化剤(例えばECD/NHSまたはPDEA)を添加し、少なくとも5分間インキュベートし、遠心分離し、そして固定化されるべき生体分子の既知の溶液と共にインキュベートする前に、緩衝溶液中に再分散させること、
・チオール化分子がチオール化リンカー分子である場合、続いて、任意に、リンカー分子の基と相互作用することができる生体分子の溶液を添加すること、
を含む。
【0054】
この方法は、実施される工程に応じて、異なる種類の機能付与されたNP:
NP 予備機能付与M
NP 予備機能付与M+L-PEG
NP 予備機能付与M+PEG-F
NP 予備機能付与M+L-PEG+PEG-F
NP 予備機能付与M+チオール化生体分子(例えばDNA)
NP 予備機能付与M+L-PEG+プローブとしての使用に適しているあらゆるタイプの生体分子を伴うチオール化生体分子など
を調製することを可能にする。
【0055】
実施形態を図1に示す。
【0056】
分子Mが異なる被覆率で予備機能付与されたNPの調製を起点とする方法の利点は、これに続く水中また緩衝溶液中で実施され得る機能付与工程においてNPが安定である点である。上記分子Mは、低分子量で不活性な小分子である。分子Mを用いた予備機能付与は、NPのサイズおよび形状にかかわらず、NPの表面全体にわたって機能付与が均一になることを確実にする。さらにそれは、固定化された生体分子が変性せず、溶液に向かって配向され、NPの表面に向かっては配向されないことを確実にする。さらに、分子Mは、非特異的な相互作用を防ぐ。
【0057】
本発明の第3の対象は、本発明によるナノ粒子の使用に関する。
【0058】
機能付与されたNPは、医療、農業食品、および環境分野の当業者に周知の多数の用途に使用され得る。
【0059】
それらは、特に、典型的には診断試験において、溶液中の対象分子を検出するために使用され得る。
【0060】
本発明は、したがって、溶液中、特に複合培地中の対象分子を検出するための方法に関し、以下の工程:
・上述の少なくとも1つの機能付与されたナノ粒子に溶液を接触させること、
・SPR、ストリップ試験、または任意の他の適切な方法によって、生体分子が上記溶液の成分の1つと相互作用するときの特定のシグナルを検出すること、
を含む。
【0061】
本発明による機能付与されたNPはまた、特定の分子を枯渇させるために、これらが回収されることが意図される対象分子であるか、または実際に排除されることが意図される望ましくない分子であるかにかかわらず、使用され得る。
【0062】
本発明はしたがって、溶液中、特に複合培地中に存在する対象分子を検出するための方法に関し、当該方法は、以下の工程:
a)上述の機能付与されたナノ粒子に、対象分子を含む溶液を接触させること、
b)上記ナノ粒子の存在下で上記溶液をインキュベートすること、
c)上記ナノ粒子を回収すること、
d)上記対象分子の溶液が無くなるまで、任意に工程a)~c)を繰り返すこと、
を含む。
【0063】
癌の治療において、標的細胞におけるそれらの標的化および/または治療化合物のグラフト化を可能にするために機能付与されたNPを使用することが、長い間想定されてきた。放射線治療において、X線によって活性化され得るこのNPは、制御されている腫瘍を破壊することを目的とした放射線治療の実践において、大きな進歩をもたらす可能性がある。NPはまた、癌と戦うための金ナノ粒子の最も有望な適用の1つである光熱療法のアプローチにおいて使用され得る。そのコンセプトは、患者の血液循環に金ナノ粒子を注入するというものである。それらの構造のために、上記ナノ粒子は癌性組織中に固定される傾向があるが、それらを特定の分子で覆う(機能付与)ことによって、それらを腫瘍にさらに特異的に指向させることが可能である。次に、レーザー光を用いてそれらを「加熱」する。NPから放出された熱によって、がん細胞に不可逆的な損傷が生じる。この技術は、現在、頭部または頸部の癌、または実際に肺および前立腺の癌を対象とした複数の臨床試験において試験されている。
【0064】
したがって本発明は、癌の治療、特に放射線療法または光熱療法による、本発明による機能付与されたNPの使用に関する。制御された光熱療法は、細胞または標的器官に影響を及ぼすことなく、ナノ粒子上に予めグラフトされた治療用分子の塩析を可能にし得る。
【0065】
本発明は、本発明によって機能付与されたNPの、医用画像診断のための使用に関する。
【0066】
NPが添加される溶液は、性質が変化し得る。それは、単純な培地(水、PBS、モデル培地)、または複合培地(体液、排水、流出液など)であってもよい。それはまた、より一般的には、NPがその中に、またはそれと接触して分散され得るマトリクスであり得る。このマトリクスは、ゲル、砂、またはその表面上に対象分子を含む可能性がある任意の平坦な表面であり得る。
【0067】
特定の実施形態では、溶液が細胞抽出物、細菌培養抽出物、生物学的ヒト試料(血清、血液、尿、羊水、涙などから選択される)、水性培地(廃水、汚染水または水(海水、水槽からの水などであり得る)から選択される)などの複雑な生物学的培地である。
【0068】
〔図面の簡単な説明〕
図1: NPの機能付与のための技術的方法の概観。A)分子M(短い黒い曲線で示す)のSAMを用いた予備機能付与;B)M+L-PEG(長い薄灰色の曲線で示す);C)M+PEG-Fまたは生体分子(中間の長さの灰色の曲線で示す);D)M+PEG-Fまたは生体分子+L-PEG。Fは官能基を示す。
図2: 界面活性剤の存在下または非存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。20nmの球状ナノ粒子;撹拌時間=4時間、M(n=11、m-4)。
図3: 界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNRの吸光度スペクトル。ナノロッドλ=800nm;撹拌時間=30分、M(n=11、m=4)、W=8%。
図4: 遠心分離後の、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。20nmのナノ粒子;被覆率1.6~80%;撹拌時間=5分、M(n=11、m=4)、PBS+0.005%界面活性剤。
図5: 界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。20nmのナノ粒子;被覆率1.6~80%;撹拌時間=4時間、M(n=11、m=4)、PBS+0.005%界面活性剤。
図6: 界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。40nmの市販のナノ粒子(ref:741981 Sigma Aldrich);被覆率0、1.6および16%;撹拌時間=4時間、M(n=11、m=12)、PBS+0.005%界面活性剤。
図7: 分子Mで予備機能付与されたNS、および分子Mで予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(X=0、1、10%)を有するPBS中に分散されたL-PEG(W=5%)で機能付与されたNPの吸光度スペクトル。40nmのナノ粒子(ref:741981 Sigma Aldrich)、インキュベーション時間 L-PEG=5分、M(n=11、m=4)、L-PEG分子量=6000、F=CH
図8: 異なる被覆率の分子M(W=0、1.6および16%)を有するPBS中に分散されたCOOH官能基を有するチオール化分子(Y=1.6%)で機能付与されたNSの吸光度スペクトル。20nmのナノ粒子。M(n=11、m=4)およびPEG-COOH(r=11、p=6)。
図9: 異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散された、分子Mによって予備機能付与され、L-PEG機能付与の存在に応じて機能付与されたPEG-COOHを有する(W=5%、Y=5%)、NSの吸光度スペクトル。NSサイズ=20nm、M(n=11、m=4)、L-PEG分子量=6000およびF=CH3、PEG-COOH(r=11、p=6)
図10: 異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散された、分子Mによって予備機能付与され、L-PEG機能付与の存在に応じて機能付与されたPEG-COOHを有する(W=5%、Y=5%)、NSの吸光度スペクトル。NSサイズ=市販品80nm(ref:742023 Sigma Aldrich)、M(n=11、m=4)、L-PEG分子量=6000、F=CH3、PEG-COOH(r=11、p=6)
図11: 分子Mによって予備機能付与され、機能付与されたDNAを有する(W=0または1.6%;Z=12.5%)、NSの吸光度スペクトル;M(n=11、m=4)、NSサイズ=20nm。
図12: 分子M(W=10%)によって予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散されたDNA(z=25%)によって機能付与されたNSの吸光度スペクトル。F=CH3;NSサイズ=20nm。市販品(ref:741965 Sigma Aldrich)。
図13: 分子M(W=10%)によって予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(Y=0または10%)を有するPBS中に分散されたDNA(Z=25%)によって機能付与されたNSの吸光度スペクトル、F=CH3;NSサイズ=80nm市販品(ref:742023 Sigma Aldrich)。
図14: インキュベーション時間に応じた、PBS+0.005%界面活性剤中の分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル;20nmのNS;撹拌時間=5、30、120、240および1440分、M(n=11、m=4)、W=40%。
図15: 3つの異なる実験に対応する、分子Mによって予備機能付与され、機能付与DNA(W=4%およびZ=50%)のNSの吸光度スペクトル。M(n=11,m=4)、NP 20nm。
図16: 3つの異なる実験に対応する、分子Mによって予備機能付与され、機能付与DNAを有する(W=4%およびZ=50%)、NSの最初の洗浄の上清の吸光度スペクトル。M(n=11、m=4)、NS 20nm。
図17: 調製および4℃での保存の1日後、3か月後および11か月後の、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。NS 20nm、M(n=11、m=4)、W=32%。
図18: 4℃での1日および2か月の保存後の、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNSの吸光度スペクトル。M(n=11、m=4)、W=0および16%、Z=12.5%。
図19: 4℃での1日および3か月の保存後の、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNP(W=32%およびZ=25%)の吸光度スペクトル。NSサイズ=20nm、M(n=11、m=4)。
図20: 100倍に希釈した細胞抽出物(点線)中で1時間インキュベートした後、細胞抽出物(実線)を添加する前に、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNP(W=30%、Z=12.5%)のUV-可視スペクトル。NSサイズ=20nm、M(n=11、m=4)。
図21: 100倍に希釈した細胞抽出物の吸光度スペクトル、および遠心分離後の3つの上清の合計(点線)。NSサイズ=20nm、M(n=11,m=4)(W=30%、Z=12.5%)。
図22: 左側の画像:相補的な蛍光DNAの位置を特定するためのCy5の蛍光の画像;右側の画像:ナノ粒子の位置を特定するためのゲルのコントラスト画像。NSサイズ=20nm、M(n=11、m=4)(W=0および16%、Z=12.5%)。
【0069】
〔実施例〕
(用語)
チオール化分子:「生体分子と相互作用することができるチオール化リンカー分子」または「チオール化生体分子」
Wは、分子Mから形成された予備膜の被覆率である。
【0070】
Xは、L-PEGの被覆率である。
【0071】
Yは、PEG-Fの被覆率である。
【0072】
Zはチオール化DNAの被覆率である。
【0073】
〔実施例1〕ナノ粒子の予備機能付与/機能付与のための一般的なプロトコル
いかなる予備機能付与前にも、ナノ粒子(NP)の溶液(水中で希釈)中の過剰な界面活性剤(例えば、クエン酸塩)を除去することが好ましい。これを達成するために、あらかじめNP溶液を遠心分離し、上清を除去し、同容量の蒸留水にNPケーキを再分散させる。遠心分離の速度および時間は、NPのサイズに応じて調整される。
【0074】
(機能付与された球状NPの調製例)
NP溶液(直径10~80nmのサイズ)から、以下の工程を実施する。
【0075】
a)分子Mを付加し、1.5%~99%の被覆率Wを達成する、
b)5分~4時間撹拌する、
c)L-PEG分子を任意に付加し、1%~10%の被覆率Yを達成する、
d)5~60分間撹拌する、
e)被覆率Yが少なくとも1%またはZ=少なくとも10%を達成するために、チオール化分子(生体分子と相互作用することができるチオール化リンカー分子、または、チオール化生体分子のいずれか)を付加する、
f)5分~24時間撹拌する、
g)チオール化分子が生体分子である場合、そのチオール化分子に適した緩衝液条件にそのチオール化分子を置く、
h)過剰のチオール化分子を除去するための遠心分離、
i)適切な溶液(蒸留水、界面活性剤を含む緩衝溶液等)中に再分散させる。
【0076】
〔実施例2〕分子Mを用いた金ナノ粒子表面の予備機能付与は、PBS溶液中での上記ナノ粒子の安定性を改善する
a)球状ナノ粒子の場合
分子M(W=24%)の溶液をナノ粒子の溶液に添加する。混合物を数時間(少なくとも4時間)撹拌し、次いで0および0.005%界面活性剤、pH7.4のリン酸緩衝液、ならびにNaClを添加する。次いで、NPを、0.005%界面活性剤の存在下または非存在下でPBS(リン酸塩10nM、pH=7.4、および0.1M NaCl)中に分散させる。
【0077】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図2に示す。
【0078】
分子Mがなければ、ナノ粒子は安定ではなく、凝集することが観察される。対照的に、分子Mの存在は、上記ナノ粒子を懸濁状態に保つことを可能にする。図2の吸光度スペクトルによれば、プラズモンバンドが精緻化(refine)されるので、界面活性剤の存在下でのPBS中のナノ粒子の安定性の改善が観察される。
【0079】
b)ナノロッドの場合
分子Mの溶液、次いで0.005%界面活性剤をナノロッド(NR)の溶液に添加する。混合物を30分間撹拌し、次いでpH7.4のリン酸緩衝液およびNaClを添加する。次いで、NPを、0.005%界面活性剤の存在下でPBS(リン酸塩10nM、pH=7.4、および0.1M NaCl)中に分散させる。
【0080】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図3に示す。分子Mがなければ、ナノ粒子は安定ではなく、凝集することが観察される。対照的に、分子Mの存在は、PBS+0.005%界面活性剤中で上記ナノ粒子を懸濁状態に保つことを可能にする。
【0081】
残りの実験は球状NPを用いて実施した。
【0082】
〔実施例3〕分子Mを用いて予備機能付与されたナノ粒子を洗浄し、界面活性剤の存在下でPBS溶液中に再分散させることができる
分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加する。混合物を5分間または4時間撹拌し、遠心分離し、0.005%界面活性剤の存在下でPBS1×の溶液中に再分散させる。
【0083】
「PBS1×」は、137mM NaCl、10mMリン酸塩、2.7mM KClを含み、pHが7.4である溶液を意味する。
【0084】
さまざまなプロトコルを試験した:
a)20nmの球状ナノ粒子を、分子Mの溶液中で5分間インキュベートした。
【0085】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図4に示す。
【0086】
b)20nmの球状ナノ粒子を、分子Mの溶液中で4時間インキュベートした。
【0087】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図5に示す。
【0088】
c)40nmの球状ナノ粒子を、分子Mの溶液中で4時間インキュベートした。
【0089】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図6に示す。
【0090】
これらの結果は、ナノ粒子の安定性が分子Mの溶液の被覆率と共に増加することを明らかに示している。
【0091】
〔実施例4〕L-PEG分子を用いた機能付与は、PBS溶液中での、分子Mを用いて予備機能付与されたナノ粒子の安定性を改善する
a)予備機能付与のみ
予備機能付与のみのために、W=1.6~80%の分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加した。混合物を数分間または数時間(5分~24時間)撹拌し、遠心分離し、適切な溶液に再分散させた。
【0092】
b)予備機能付与後のL-PEG分子を用いた機能付与
予備機能付与後のL-PEG分子を用いた機能付与のため、被覆率W=5%を達成するために、分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加する。少なくとも5分間撹拌した後、L-PEG溶液を0、1および10%の被覆率で添加する。混合物を再び15分間撹拌し、次いで遠心分離し、PBS(1×)の溶液中に再分散させる。
【0093】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図7に示す。
【0094】
これらの結果は、X=1%から、L-PEGの添加が、PBS中の分子Mの単分子膜によって被覆されたNPを、低い被覆率で安定化することを可能にすることを示す(本件の場合、W=5%)。実際、プラズモンバンドはL-PEGで精緻化され、安定性の改善が確認されている。
【0095】
〔実施例5〕分子Mを用いたナノ粒子の予備機能付与は、PBS溶液中での、チオール化分子を用いて機能付与された上記ナノ粒子の安定性を改善する
a)チオール化カルボキシル分子を用いた機能付与(予備機能付与なし)。
【0096】
被覆率Yが1.6%となるように、PEG-COOHの溶液をナノ粒子の溶液に添加した。混合物を30分間撹拌し、遠心分離し、H2OまたはPBS1×+0.005%界面活性剤のいずれかに再分散させた。
【0097】
b)予備機能付与後のチオール化カルボキシル分子を用いた機能付与
理論的初期被覆率Yが1.6%~80%となるように、分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加した。5分間撹拌した後、1.6%の被覆率Yを達成するために、PEG-COOHの溶液を添加した。混合物を30分間撹拌し、遠心分離し、蒸留水またはPBS1×+0.005%界面活性剤のいずれかに再分散させた。
【0098】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図8に示す。
【0099】
これらの結果は、PEG-COOHのみで機能付与されたNPがPBS中で凝集することを示す。分子Mの溶液を用いてNPを予備機能付与する事実は、特に被覆率W=1.6%から、溶液中のNPの安定性を改善することを可能にする。インキュベーション時間およびWを増加させることによって、すなわち、NPの表面における分子Mの密度を増加させることによって、安定性はさらに改善される(本件の場合、W=16%で最高の安定性を反映する曲線である)。
【0100】
〔実施例6〕L-PEG分子を用いた機能付与は、PBS溶液中での、分子Mを用いて予備機能付与され、チオール化分子を用いて機能付与されたNPの安定性を改善する
分子Mの溶液をNPの溶液に添加して、被覆率W=5%を達成した。次に、被覆率Xが0または10%となるように、L-PEGの溶液を添加した。次いで、被覆率Y=5%を達成するために、PEG-COOHの溶液を添加した。混合物を撹拌し、遠心分離し、蒸留水またはPBS1×+0.005%界面活性剤のいずれかに再分散させた。
【0101】
ナノ粒子の安定性に関するデータを、20nmの球状NPについては図9に、80nmの球状NPについては図10に示す。
【0102】
10%のL-PEGの添加は、予備機能付与され、さらに、チオール化分子(本件の場合、PEG-COOH)を用いて機能付与されたNPの安定性を、特に分子Mおよびチオール化分子の低い被覆率(それぞれ5%の被覆率)で増加させることに留意されたい。
【0103】
〔実施例7〕分子Mを用いた予備機能付与は、PBS溶液中での、チオール化分子を用いて機能付与したNPの安定性を改善する:チオール化DNA分子の場合
a)チオール化DNA分子を用いた機能付与(予備機能付与なし)
少なくとも12.5%の被覆率Zを達成するために、DNAの溶液をナノ粒子の溶液に添加した。混合物を1時間撹拌し、次いで0.005%界面活性剤、およびリン酸緩衝液、およびNaClを添加した。混合物を18時間撹拌し、遠心分離し、PBS1×に再分散させた。
【0104】
b)予備機能付与後のチオール化DNA分子を用いた機能付与
分子Mの溶液をNPの溶液に添加して、被覆率1.6および80%を達成した。次いで、少なくとも12.5%の被覆率Zを達成するために、DNAの溶液を添加した。1時間撹拌した後、0.005%界面活性剤、リン酸緩衝液、およびNaClを添加した。混合物を18時間撹拌し、遠心分離し、PBS1×に再分散させた。
【0105】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図11に示す。
【0106】
DNAで機能付与されたNPは、PBS中で凝集することに留意されたい。しかしながら、分子Mを用いる予備機能付与は、1.5%の被覆率Wから始まる安定性を改善する。インキュベーション時間およびWを増加させることによって、すなわち、NPの表面における分子Mの密度を増加させることによって、安定性はさらに改善され得る(データは示さず)。
【0107】
〔実施例8〕L-PEG機能付与は、PBS溶液中での、分子Mを用いて予備機能付与され、チオール化DNAを用いて機能付与されたNPの安定性を改善する
分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加し、1.6および80%の被覆率Wを達成した。次いで、1~10%の被覆率Xを達成するために、30分間のインキュベーション後にL-PEGの溶液を添加した。混合物を15分間撹拌した。次いで、少なくとも12.5%の理論的初期被覆率を達成するために、SH-DNAの溶液を添加した。DNA溶液の添加後、0.005%界面活性剤、pH7.4のリン酸緩衝液(最終濃度10mM)、およびNaCl(最終濃度0.1M)を添加した。混合物を18時間撹拌し、遠心分離し、PBS1×に再分散させた。
【0108】
ナノ粒子の安定性に関するデータを、20nmのNPについては図12に、80nmのNPについては図13に示す。
【0109】
NPの安定性の改善は、L-PEG分子を付加したときに認められる。特に、L-PEGの分子膜の存在は、低レベルの分子M(W=10%)を有するPBS溶液中で80nmのNPを安定化させることを可能にする。
【0110】
〔実施例9〕分子Mを含む溶液中でのNPのインキュベーション時間が安定性に及ぼす効果
分子Mの溶液をナノ粒子の溶液に添加する。混合物を数分間または数時間(5分~24時間)撹拌し、次に0.005%界面活性剤、pH7.4のリン酸緩衝液、およびNaClを添加する。次いで、NPを、0.005%界面活性剤の存在下でPBS(リン酸塩10nM、pH=7.4、および0.1M NaCl)中に分散させる。
【0111】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図14に示す。
【0112】
被覆率は時間の関数として増加し、インキュベーションの120~240分の間で最大に達することに留意されたい。この期間を越えてインキュベーションを続けることは、Wにさらなる影響を及ぼさない。
【0113】
〔実施例10〕ナノ粒子を安定化する方法の再現性
プロトコルの再現性を確認するために、プロトコルを異なる日に3回繰り返した。試料の安定性をUV-可視分光法によって特徴付けた。チオール化DNAのグラフト化に関して、過剰のDNAを除去するための洗浄工程の間、第1の上清を、UV-可視分光法によって分析した。
【0114】
結果を、機能付与されたNPの溶液の安定性に関しては図15に、非吸着DNAの洗浄の第1工程の間に得られた上清に関して図16に示す。
【0115】
UV-可視スペクトルは重ね合わせることができる微細なプラズモンバンドを含み、これは、上清の同一の吸光度強度が同数のDNAがNPに結合されていることを示唆しているのと同様に、分子Mを用いて予備機能付与され、DNAを用いて機能付与されたナノ粒子NPが安定であることを示唆している。結論として、これらの結果によって、試料の調製における再現性を確認する。
【0116】
〔実施例11〕分子Mを用いて予備機能付与されたNPは水中で数か月間安定である
上述のように、分子Mを用いて20nmのNPを予備機能付与し、次いで、4℃および暗所で数か月間保存した。安定性は、UV-可視分光法によって検討した。典型的には、1mLの溶液を取り出し、UVIKON分析計によって分析した。異なる時間で得られたスペクトルを比較した。
【0117】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図17に示す。
【0118】
分子Mを用いて予備機能付与されたNPの吸光度スペクトルの良好な相関が、1日および11か月後の保存に観察される。3つのスペクトルはプラズモンバンドのいかなる変位もない微細なプラズモンバンドを示し、4℃での11か月の保存後に、予備機能付与されたNPが依然として水中で安定であることを確認する。
【0119】
〔実施例12〕分子Mを用いて予備機能付与され、DNAを用いて機能付与されたNPは、PBS溶液中で数か月間安定である
上述のように、分子Mを用いて20nmのNPを予備機能付与し、DNAを用いて機能付与した後、4℃および暗所で数か月間保存した。安定性を、UV-可視分光法によって評価する。典型的には、1mLの溶液を取り出し、UVIKON分析計によって分析する。異なる保存時間で得られたスペクトルを比較する。
【0120】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図18および19に示す。
【0121】
第1に、分子Mの存在は、調製後および保存中のNPを安定化させることを可能にすることに留意されたい。これらの結果は、1日および2~3か月の保存後に得られたスペクトルと比較して、予備機能付与され、DNAを用いて機能付与されたNPのスペクトルの良好な相関を示す。2つのスペクトルはプラズモンバンドのいかなる変位もない2つの微細なプラズモンバンドを示し、4℃での2~3か月の保存後、NPは依然としてPBS中で安定であることを確認する。
【0122】
〔実施例13〕予備機能付与され、DNAを用いて機能付与されたNPは、複合培地中で安定である
10μlの細胞抽出物を、1nM(複合培地の希釈は×100である)で、分子Mを用いて予備機能付与し、チオール化DNAを用いて機能付与した1mlのNPの溶液に添加した。混合物を1時間撹拌し、次いで遠心分離し、PBS1×に再分散させた。NPの安定性および上清中の細胞培地の吸光度強度は、UV-可視分光法によって特徴付けられる。Beer-Lambertの法則によれば、吸光度強度は溶液中の濃度に関連する。細胞抽出物の吸光度強度が上清の吸光度強度と同様である場合、これは、細胞抽出物中に存在する生体分子がNPにおいて非特異的な態様で吸収されていないことを示す。
【0123】
ナノ粒子の安定性に関するデータを図20および21に示す。
【0124】
細胞抽出物の添加前および1時間のインキュベーション後の試料の吸光度スペクトルを比較した。複合培地中では凝集が起こらず、粒子が十分に保護されていることが示唆されることに留意されたい。非特異的な吸着があるかどうかを決定するために、細胞抽出物を除去するように粒子を遠心分離によって洗浄した。1時間のインキュベーション後の3つの上清の合計を、最初の細胞抽出物のスペクトルに重ね合わせた。スペクトルが重ね合わされていることを観察することが可能であり、このことは、機能付与されたNPの表面における細胞抽出物に由来するタンパク質の特異的な吸着がほとんどまたは全くないことを示唆した。
【0125】
〔実施例14〕分子MによるNPの予備機能付与は、複合培地中でのハイブリダイゼーションを改善する
100nMの相補的な蛍光DNA(Cy5)1μlを、1.5nMのNP200μlの溶液に添加し、分子Mを用いた予備機能付与を行った、または行っていないDNAを用いて機能付与した。したがって、相補的DNAの総濃度は500pMであった。ハイブリダイゼーションは、3つの異なる培地(PBS1×、細胞抽出物およびヒト血清)中、37℃で2時間インキュベートした。複合培地を100倍希釈する。蛍光DNA、DNAで機能付与されたNP、およびDNAで機能付与される前に予備機能付与されたNPを区別するために、試料を電気泳動用アガロースゲルに置いた。電気泳動は、ハイブリダイズしたナノ粒子および溶液中で遊離の相補的DNAを分離および区別することを可能にする。
【0126】
DNA分子のみを用いて機能付与されたNP、または、分子Mの単分子膜を用いて予備機能付与され、次いでDNA分子を用いて機能付与されたNPのいずれかである、2つのタイプのナノ粒子との相補的な蛍光鎖のハイブリダイゼーションを、3つの異なる培地(PBS、100倍に希釈された細胞抽出物、および100倍に希釈されたヒト血清中で検討した。用いたナノ粒子は使用2か月前に合成し、4℃で保存した。
【0127】
この実験の結果を図22に示す。
【0128】
フルオロフォアのみが励起されないので、ナノ粒子のみが可視であることが観察される。DNAを用いて機能付与されたナノ粒子NPの移動距離、およびDNAを用いた機能付与の前に予備機能付与されたNPの移動距離は、PBSおよび細胞抽出物中において影響を受けないようである。対照的に、ヒト血清において、機能付与の前に予備機能付与されたNPについて移動距離はわずかに変化するが、DNAを用いて機能付与されたNP(分子Mなし)についてはより有意に変化する。これはこれらのナノ粒子上での非特異的吸着の可能性を示唆する(NPのサイズの増加による移動の減速によって明らかである)。図の左側部分では、蛍光の放射のみが観察され(ゲル中の黒色バンド)、ゲル中の相補的DNAの位置を示す。図22におけるバンドの強度およびバンドの位置を比較すると、DNAの位置をゲル中のNPの位置と相関させることが可能であり、その結果、ハイブリダイゼーションの有効性を相関させることが可能である。PBS中では予備機能付与されたナノ粒子と予備機能付与されていないナノ粒子との間のハイブリダイゼーションの有効性は影響を受けないようであるが、複合培地では明らかな差が観察される。実際、分子Mを含まない試料(すなわち、DNAのみ)については、遊離DNAに対応する蛍光が有意により強い(より少ない相補的DNAがNPに結合したDNAにハイブリダイズしている)ので、ハイブリダイゼーションが影響を受けるようである。これらの結果は、予備機能付与された試料に対するハイブリダイゼーションの有効性が複合培地中の方が大きいことを示唆する。複合培地中において、DNAを用いて機能付与された(しかし、予備機能付与されていない)NP上のタンパク質の非特異的吸着が、相補的DNAとNPに結合したDNAとの間のハイブリダイゼーションを妨げると仮定することが可能である。
【0129】
〔実施例15〕様々な培地における標的の相補的なDNAの検出の評価
上記標的の相補的な蛍光DNA(Cy5)と、分子Mを用いて予備機能付与されたナノ粒子上に固定化されたDNAとの間のハイブリダイゼーションの有効性に従って、標的DNA(cDNA)の一本鎖の検出が可能になる。DNAがハイブリダイズしたら、NPの遠心分離前および遠心分離後に2つのゲル電気泳動を行った。遠心分離はNPの表面における相補的な蛍光DNAの可視化の改善を達成するために、NPを濃縮することを可能にする。
【0130】
ハイブリダイゼーションプロトコルを次に示す。1nMの相補的な蛍光DNA50pMを2nMのNPの懸濁液に添加した(NPのサイズ=20nm、M(n=11およびm=4)、W=16%およびZ=12.5%)。混合物を、PBS中、または市販のヒト血清(希釈100)(Thermofisher, Normal Human Serum, ref.31876)中のいずれかで、37℃で2時間インキュベートする。
【0131】
NPのゲル移動を行った(データは示さず)。「ナノ粒子の画像」部分はバイオコンジュゲートされたNPの位置を示し、「蛍光の画像」部分は、相補的な蛍光DNAの位置を示す。コントロールは遊離の相補的な蛍光DNAに相当する。異なる濃度を50pM~1nMにチャージ(charge)させた。
【0132】
蛍光がナノ粒子の位置に相関するため、これらの結果によってハイブリダイゼーションが起こったことを確認する。蛍光は、PBSまたはヒト血清中で、50pMまでの標的DNAの濃度範囲について観察される。複合培地の存在は、低濃度の標的DNAでさえ、ハイブリダイゼーションを妨げない。
【0133】
(結論)
DNAプローブのNP上でのハイブリダイゼーションは、PBSまたはヒト血清中、1nMで、50pMの相補的DNAを検出することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1】NPの機能付与のための技術的方法の概観。
図2】界面活性剤の存在下または非存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図3】界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNRの吸光度スペクトル。
図4】遠心分離後の、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図5】界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図6】界面活性剤の存在下での、PBS中の、被覆率に応じた、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図7】分子Mで予備機能付与されたNS、および分子Mで予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(X=0、1、10%)を有するPBS中に分散されたL-PEG(W=5%)で機能付与されたNPの吸光度スペクトル。
図8】異なる被覆率の分子M(W=0、1.6および16%)を有するPBS中に分散されたCOOH官能基を有するチオール化分子(Y=1.6%)で機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図9】異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散された、分子Mによって予備機能付与され、L-PEG機能付与の存在に応じて機能付与されたPEG-COOHを有する(W=5%、Y=5%)、NSの吸光度スペクトル。
図10】異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散された、分子Mによって予備機能付与され、L-PEG機能付与の存在に応じて機能付与されたPEG-COOHを有する(W=5%、Y=5%)、NSの吸光度スペクトル。
図11】分子Mによって予備機能付与され、機能付与されたDNAを有する(W=0または1.6%;Z=12.5%)、NSの吸光度スペクトル。
図12】分子M(W=10%)によって予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(X=0または10%)を有するPBS中に分散されたDNA(z=25%)によって機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図13】分子M(W=10%)によって予備機能付与され、異なるL-PEG被覆率(Y=0または10%)を有するPBS中に分散されたDNA(Z=25%)によって機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図14】インキュベーション時間に応じた、PBS+0.005%界面活性剤中の分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図15】3つの異なる実験に対応する、分子Mによって予備機能付与され、機能付与DNA(W=4%およびZ=50%)のNSの吸光度スペクトル。
図16】3つの異なる実験に対応する、分子Mによって予備機能付与され、機能付与DNAを有する(W=4%およびZ=50%)、NSの最初の洗浄の上清の吸光度スペクトル。
図17】調製および4℃での保存の1日後、3か月後および11か月後の、分子Mで予備機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図18】4℃での1日および2か月の保存後の、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNSの吸光度スペクトル。
図19】4℃での1日および3か月の保存後の、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNP(W=32%およびZ=25%)の吸光度スペクトル。
図20】100倍に希釈した細胞抽出物(点線)中で1時間インキュベートした後、細胞抽出物(実線)を添加する前に、分子Mで予備機能付与され、チオール化DNAで機能付与されたNP(W=30%、Z=12.5%)のUV-可視スペクトル。
図21】100倍に希釈した細胞抽出物の吸光度スペクトル、および遠心分離後の3つの上清の合計(点線)。
図22】左側の画像:相補的な蛍光DNAの位置を特定するためのCy5の蛍光の画像;右側の画像:ナノ粒子の位置を特定するためのゲルのコントラスト画像。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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【国際調査報告】