(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】PHAターポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20220803BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220803BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220803BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L101/00
C08K3/013
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515973
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020033950
(87)【国際公開番号】W WO2020242874
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514831
【氏名又は名称】メレディアン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン・トランプ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】イートン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】グラブス,ジョー・ビー,ザサード
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB013
4J002AB022
4J002AB042
4J002AB052
4J002AB053
4J002AE054
4J002BB032
4J002BB122
4J002BD042
4J002BE022
4J002BF022
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4J002CF032
4J002CF062
4J002CF181
4J002CF182
4J002CF192
4J002CF194
4J002CH024
4J002DA046
4J002DA056
4J002DE137
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4J002DJ007
4J002DJ017
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4J002EH008
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4J200AA04
4J200BA12
4J200BA15
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4J200CA01
4J200CA06
4J200CA09
4J200DA24
4J200EA07
(57)【要約】
本開示は生分解性高分子組成物に関する。より詳細には、本開示は少なくとも3種のモノマー単位を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA’s)のコポリマー、すなわちPHAターポリマーを含む生分解性高分子組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生分解性コポリマーが
約55から約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基と、
4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される二級モノマーのモノマー残基と、および
6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される三級モノマーのモノマー残基、
を含んでなる第1の生分解性コポリマーを含んでなる高分子組成物であって、
二級モノマーおよび三級モノマーを合わせたモノマー残基が、第1の生分解性コポリマーの約1から約35モルパーセントを構成する、
前記高分子組成物。
【請求項2】
二級モノマーが3-ヒドロキシバレレートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
二級モノマーが4-ヒドロキシブチレートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項4】
二級モノマーが4-ヒドロキシバレレートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項5】
二級モノマーが5-ヒドロキシバレレートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項6】
三級モノマーが3-ヒドロキシヘキサノエートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項7】
三級モノマーが3-ヒドロキシオクタノエートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項8】
三級モノマーが3-ヒドロキシデカノエートを含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項9】
第1の生分解性コポリマーが、
約0.01モルパーセントから約20モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および
約1モルパーセントから約35モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基
を含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項10】
第1の生分解性コポリマーが、
約1モルパーセントから約35モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および
約0.01モルパーセントから約20モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基、を含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項11】
第1の生分解性コポリマーが、
約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基と、
4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレート、
および5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約1.0モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基と、および
6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートのモノマーからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基、
を含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項12】
第1の生分解性コポリマーが、
約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基と、
4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレート、および5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基と、および
6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートのモノマーからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約1.0モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基、
を含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項13】
第1の生分解性コポリマーが、約50,000から約7.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項14】
第1の生分解性コポリマーが、約350,000から約1.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項15】
高分子組成物が、約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーを含んでなり、そしてさらにポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリ乳酸、メソラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、澱粉、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリマレイン酸、2から18個の炭素原子を有するジオールのコポリエステル、および2から18個の炭素原子を有する二酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントから約50重量パーセントの第2の生分解性ポリマーを含んでなる、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項16】
第1の生分解性コポリマーが第2の生分解性ポリマーとブレンドされるか、または反応押出し成形される請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項17】
第1の生分解性コポリマーが追加のポリヒドロキシアルカノエートとブレンドされるか、または反応押出し成形される請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項18】
高分子組成物が、約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーを含んでなり、そしてさらにポリビニルクロライド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントから約50重量パーセントの非生分解性ポリマーを含んでなる、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項19】
高分子組成物が、(1)直方晶構造を有する化合物、(2)六方晶構造を有する化合物、(3)正方晶構造を有する化合物、(4)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する同素要素、(5)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する多形化合物、および(6)それらの混合物からなる群から選択される、約0.0
1重量パーセントから約20重量パーセントの核形成剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項20】
高分子組成物が、クレイ、炭酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、シリカ、キチン、二酸化チタン、ナノクレイ、ナノセルロース、またはそれらの混合物からなる群から選択される約1.0重量パーセントから約40重量パーセントの充填材をさらに含んでなる請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項21】
高分子組成物が、セバシン酸塩、クエン酸塩、アジピン酸、コハク酸およびグルカル酸の脂肪酸エステル、乳酸塩、約2から約12個の炭素原子の主炭素鎖を有するアルキルジエステル、アルキルメチルエステル、ジベンゾエート、プロピレンカーボネート、約200から約10,000の重量平均分子量を有するカプロラクトンジオール、約400から約10,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールジオール、植物油のエステル、約10から約20個の炭素原子を有する長鎖アルキル酸、グリセロール、イソソルビド誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される約0.5重量パーセントから約25重量パーセントの可塑剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項22】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなる成型品。
【請求項23】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなる押出し品。
【請求項24】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなるファイバーまたはフィラメント。
【請求項25】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなる高分子フィルム。
【請求項26】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなる発泡品。
【請求項27】
少なくとも50重量パーセントの請求項1に記載の高分子組成物を含んでなる分散物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性高分子組成物に関する。より詳細には、本開示は少なくとも3種のモノマー単位を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA’s)のコポリマー、すなわちPHAターポリマーを含む生分解性高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリマーは、商業的に関心が集まっている分野である。有利には、生分解性ポリマーは化石燃料よりむしろ再生可能なバイオマス資源から誘導できる。さらに生分解性ポリマー製品は生分解性であり、典型的な埋め立て廃棄後に分解に数百年もかかる可能性がある従来の石油系ポリマーとは対照的である。
【0003】
重要な種類の生分解性ポリマーはポリヒドロキシアルカノエートすなわちPHAsである。PHAは生分解性の脂肪族ポリエステルであり、一般に大規模な細菌発酵により生産される。ホモポリマーおよびコポリマー形の両方を含むPHAポリマーの種類の中には広範な種類のポリマー構造が存在する。
【0004】
生分解性であることは望ましいが、多くのPHAsの機械的特性は理想に届かないことが分かった。場合によっては、PHAsは引張強度、曲げ強さ、衝撃強さ、硬度、および/または破断点伸びに関して理想に届かないことが分かった。これらの欠点は添加剤を包含することによりある程度改質できるが、改善された機械的特性を本質的に現すPHAの形を識別することが好ましい。
【0005】
このように改善された機械的特性を現すPHAsの具体的形態を提供し、しかもそのようなPHAsから製造される種々の物品を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0006】
前記および他のニーズは、本開示に従う高分子組成物により満たされる。1つの態様によれば、この高分子組成物は少なくとも第1の生分解性コポリマーを含む。この第1の生分解性コポリマーは、それ自体が:(1)約55から約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、(2)4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される二級モノマーのモノマー残基、および(3)6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される三級モノマーのモノマー残基から構成される。
【0007】
特定の態様では、二級モノマーが好ましくは3-ヒドロキシバレレートである。しかし他の態様では、二級モノマーが好ましくは4-ヒドロキシブチレートである。さらに別の態様では、二級モノマーが好ましくは4-ヒドロキシバレレートまたは5-ヒドロキシバレレートである。
【0008】
特定の態様では、三級モノマーが好ましくは3-ヒドロキシヘキサノエートである。幾つかの他の態様では、三級モノマーが好ましくは3-ヒドロキシオクタノエートである。さらに他の態様では、三級モノマーが好ましくは3-ヒドロキシデカノエートである。
【0009】
特定の態様では、第1の生分解性コポリマーが好ましくは約0.01モルパーセントから約20モルパーセント(好ましくは0.01モルパーセントから5モルパーセント)の二級モノマーのモノマー残基、および約1モルパーセントから約35モルパーセントの三
級モノマーのモノマー残基から構成される。特定の態様によれば、より好ましくは第1の生分解性コポリマーが:(1)約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、(2)4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約1.0モルパーセントのモノマー残基、および(3)6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基から構成される。
【0010】
しかし他の態様では、第1の生分解性コポリマーは約1モルパーセントから約35モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および約0.01モルパーセントから約20モルパーセント(好ましくは0.01モルパーセントから約5モルパーセント)の三級モノマーのモノマー残基から構成されることが好ましい。幾つかの場合では、より好ましくは第1の生分解性コポリマーが:(1)約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、(2)4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および(3)6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約1.0モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基から構成される。
【0011】
特定の態様では、第1の生分解性コポリマーが、約50,000から約7.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、第1の生分解性コポリマーが約450,000から約3.0ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する。最も好ましくは、第1の生分解性コポリマーは約350,000から約1.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する。
【0012】
特定の態様では、高分子組成物は約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーを含む。さらに高分子組成物はまた、好ましくはポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(ブチレンアジペート)共重合体、ポリ乳酸、メソラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、澱粉、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリマレイン酸、2から18個の炭素原子を有するジオールのコポリエステル、および2から18個の炭素原子を有する二酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントから約50重量パーセントの第2の生分解性ポリマーを含む。
【0013】
幾つかの態様では、第1の生分解性コポリマーが第2の生分解性ポリマーとブレンドされるか、または反応押出し成形されることが好ましい。
【0014】
他の場合では、第1の生分解性コポリマーが追加のポリヒドロキシアルカノエートとブレンドされるか、または反応押出し成形されることが好ましい。
【0015】
特定の態様では、高分子組成物が約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーを含む。さらに高分子組成物は、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される約5重量パーセントから約50重量パーセントの非生分解性ポリマーを含むことが好ましい。
【0016】
特定の態様では、高分子組成物はまた、(1)直方晶構造を有する化合物、(2)六方
晶構造を有する化合物、(3)正方晶構造を有する化合物、(4)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する同素要素、(5)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する多形化合物、および(6)それらの混合物からなる群から選択される約0.01重量パーセントから約20重量パーセントの核形成剤を含む。例えば核形成剤は、幾つかの態様では人工甘味料、窒化ホウ素、チミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アナターゼ、モリブデン鉛鉱、アラゴナイト、硫黄、セレニウム、リンおよびベンズアミドからなる群から選択されることができる。
【0017】
幾つかの態様では、高分子組成物はまたクレイ、炭酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、シリカ、キチン、二酸化チタン、ナノクレイ、ナノセルロース、またはそれらの混合物からなる群から選択される約1.0重量パーセントから約40重量パーセントの充填材も含む。
【0018】
特定の態様では、高分子組成物はまたセバシン酸塩、クエン酸塩、アジピン酸、コハク酸およびグルカル酸の脂肪酸エステル、乳酸塩、約2から約12個の炭素原子の主炭素鎖を有するアルキルジエステル、アルキルメチルエステル、ジベンゾエート、プロピレンカーボネート、約200から約10,000の重量平均分子量を有するカプロラクトンジオール、約400から約10,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールジオール、植物油(大豆、菜種、トウモロコシ、綿実、ヒマワリおよび落花生の油のような)のエステル、約10から約20個の炭素原子を有する長鎖アルキル酸、グリセロール、イソソルビド誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される約0.5重量パーセントから約25重量パーセントの可塑剤も含む。
【0019】
本開示の高分子組成物から様々な物品を形成することができる。例えば本開示の1つの態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成された成型品が提供される。
【0020】
本開示の異なる態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成された押出し品が提供される。
【0021】
本開示の別の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成されたファイバーまたはフィラメントが提供される。
【0022】
本開示の別の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成された高分子フィルムが提供される。
【0023】
本開示のさらに別の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成された発泡品が提供される。
【0024】
本開示のさらなる態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成された分散物、一般に水性分散物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示に従い、高分子組成物が提供される。1つの態様によれば、この高分子組成物は少なくとも第1の生分解性コポリマーを含む。
【0026】
第1の生分解性コポリマーはそれ自体、一般に少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)コポリマーから、そしてより詳細には少なくとも3種のモノマー残基から構成されているPHAコポリマー、すなわちPHAターポリマーから構成されている。
【0027】
モノマー残基の第1の基は一級モノマーから形成され、これは一般に3-ヒドロキシブチレートである。すなわちこれらのモノマー残基は構造:
【化1】
を有する。
【0028】
3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基は、一般に約55モルパーセントから約99.5モルパーセントのPHAモノマー残基を第1の生分解性コポリマー中に構成する。
【0029】
モノマー残基の第2の基は二級モノマーから形成され、これは一般に4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される。すなわちこれら二級モノマー残基は以下の構造の1つを有する:
【表1】
【0030】
このように幾つかの場合では、二級モノマーは好ましくは3-ヒドロキシバレレートである。他の場合では、二級モノマーは4-ヒドロキシブチレートであることが好ましい。さらに別の場合では、二級モノマーは4-ヒドロキシバレレート、または5-ヒドロキシ
バレレートであることが好ましい。さらなる態様では、二級モノマーは4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートの混合物から作られることができる。
【0031】
モノマー残基の第3の基は三級モノマーから形成され、これは一般に6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される。すなわちこれらの三級モノマー残基は構造:
【化2】
を有し、
【0032】
式中、各RはC3-C19アルキル基である。
【0033】
幾つかの場合では、三級モノマーは3-ヒドロキシヘキサノエートであることが好ましい。他の場合では、三級モノマーは3-ヒドロキシオクタノエートまたは3-ヒドロキシデカノエートであることが好ましい。
【0034】
本開示による特に好適な態様では、一級モノマーが3-ヒドロキシブチレート、二級モノマーが3-ヒドロキシバレレート、そして三級モノマーが3-ヒドロキシヘキサノエートである。
【0035】
幾つかの場合では、第1の生分解性コポリマー中の二級モノマー残基のモル量は、三級モノマー残基のモル量よりも少なくなる。例えば第1の生分解性コポリマーは、約0.01モルパーセントから約20モルパーセント(好ましくは0.01モルパーセントから5モルパーセント)の二級モノマーのモノマー残基、および約1モルパーセントから約35モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基から構成されることができる。より好ましくは第1の生分解性コポリマーが:(1)約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、(2)4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約1.0モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および(3)6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基から構成される。
【0036】
しかしながら幾つかの場合では、第1の生分解性コポリマー中の二級モノマー残基のモル量は、三級モノマー残基のモル量よりも多くなる。例えば第1の生分解性コポリマーは、約1モルパーセントから約35モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および約0.01モルパーセントから約20モルパーセント(好ましくは0.01モルパーセントから5モルパーセント)の三級モノマーのモノマー残基から構成されることができる。より好ましくは第1の生分解性コポリマーが:(1)約84モルパーセントから約99.5モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、(2)4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび5-ヒドロキシバレレートからなる群から選択される約0.4モルパーセントから約15モルパーセントの二級モノマーのモノマー残基、および(3)6から22個の炭素原子を有するヒドロキシアルカノエートモノマーからなる群から選択される約0.1モルパーセントから約10モルパーセントの三級モノマーのモノマー残基から構成される。
【0037】
幾つかの場合では、第1の生分解性コポリマーが好ましくは第2の生分解性コポリマーとブレンドされるか、または反応押出し成形される。
【0038】
他の場合では、第1の生分解性コポリマーが好ましくは追加のポリヒドロキシアルカノエートとブレンドされるか、または反応押出し成形される。
【0039】
第1の生分解性コポリマーの分子量は、本開示に従い幾分変動してもよい。しかし一般には第1の生分解性コポリマーは約50,000から約7.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する。より好ましくは、第1の生分解性コポリマーは一般に約350,000から約1.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する。最も好ましくは、第1の生分解性コポリマーは約350,000から約1.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有する。
【0040】
有利には、本開示による第1の生分解性コポリマーは従来のヒドロキシアルカノエートコポリマーと比較して改善された機械特性を現わす。幾つかの場合では、本開示による第1の生分解性コポリマーは、従来のたった1もしくは2種のモノマー残基から構成されたポリヒドロキシアルカノエートホモポリマーおよびコポリマーと比べてより低いガラス転移温度(Tg)および/または融点(Tm)を有することができる。幾つかの場合では本開示による第1の生分解性コポリマーは、ここでも従来のポリヒドロキシアルカノエートホモポリマーおよびコポリマーと比べた時に、経時的なおよび/または高温への暴露によるポリマーの分解に対しても、より耐性があることになる。第1の生分解性コポリマーのポリマー充填密度(packing density)および結晶性は、従来のポリヒドロキシアルカノエートホモポリマーおよびコポリマーと比べて下げることができる。
【0041】
また第1の生分解性コポリマーを包含している高分子組成物は全体的にも、ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーでの改善に由来する改良された機械的特性を現わすことができる。特に第1の生分解性コポリマーの包含で、高分子組成物全体に含まれることになる追加の可塑剤の必要性を下げることができる。
【0042】
第1の生分解性コポリマーに加えて、高分子組成物は1もしくは複数の追加のポリマーを含んでもより場合がある。例えば幾つかの態様では、高分子組成物は第2の生分解性ポリマーを含むことができる。この第2の生分解性ポリマーは、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリ乳酸、メソラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド、澱粉、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリマレイン酸、2から18個の炭素原子を有するジオールのコポリエステル、および2から18個の炭素原子を有する二酸、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0043】
そのような態様では、高分子組成物は約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーおよび約5重量パーセントから約50重量パーセントの第2の生分解性ポリマーを含むことができる。
【0044】
あるいは他の態様では、高分子組成物は非生分解性ポリマーを含むことができる。この非生分解性ポリマーは例えば、ポリビニルクロライド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されることができる。これらの態様では、高分子組成物は約50重量パーセントから約95重量パーセントの第1の生分解性コポリマーおよび約5重量パーセントから約50重量パーセントの非生分解性ポリマーを含むことができる。
【0045】
他の種々の添加剤も、少量で高分子組成物に含むことができる。
【0046】
例えば特定の態様では、高分子組成物は、(1)直方晶構造を有する化合物、(2)六方晶構造を有する化合物、(3)正方晶構造を有する化合物、(4)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する同素要素、(5)直方、六方または正方である少なくとも1つの結晶形を有する多形化合物、および(6)それらの混合物からなる群から選択される約0.01重量パーセントから約20重量パーセントの核形成剤を含むことができる。例えば核形成剤は、幾つかの態様では、人工甘味料、窒化ホウ素、チミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アナターゼ、モリブデン鉛鉱、アラゴナイト、硫黄、セレニウム、リンおよびベンズアミドからなる群から選択されることができる。
【0047】
また幾つかの場合では、高分子組成物はクレイ、炭酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、シリカ、キチン、二酸化チタン、ナノクレイ、ナノセルロース、またはそれらの混合物からなる群から選択される約1.0重量パーセントから約40重量パーセントの充填材も含むことができる。
【0048】
さらにまた高分子組成物は、セバシン酸塩、クエン酸塩、アジピン酸、コハク酸およびグルカル酸の脂肪酸エステル、乳酸塩、約2から約12個の炭素原子の主炭素鎖を有するアルキルジエステル、アルキルメチルエステル、ジベンゾエート、プロピレンカーボネート、約200から約10,000の重量平均分子量を有するカプロラクトンジオール、約400から約10,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールジオール、植物油(大豆、菜種、トウモロコシ、綿実、ヒマワリおよび落花生の油のような)のエステル、約10から約20個の炭素原子を有する長鎖アルキル酸、グリセロール、イソソルビド誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される約0.5重量パーセントから約25重量パーセントの可塑剤を含むことができる。
【0049】
高分子組成物の様々な成分は高性能ミキサーでブレンドされるか、またはより好ましくは二軸押出し機のような押出し機内で合わせられ、そしてブレンドされる。一般に混合は約100から約210℃の温度で行われる。幾つかの場合では、第1の生分解性コポリマーが第2(またはさらに第3、4または5)の生分解性ポリマーと、あるいは前記のような追加のポリヒドロキシアルカノエートと反応押出し成形されることができる。
【0050】
多くの製造業の製品が本開示による高分子組成物から形成され得る。例えば本開示の1つの態様では、フォーク、ナイフ、スプーン、ボトル、スプラッシュスティックまたはコーヒーカプセルのような成型品を形成することができ、これは少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成される。
【0051】
第2の態様では、ストロー、コーヒースターラー、管、フィルムまたはシートのような押出し品を形成することができ、これは少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成される。
【0052】
第3の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成されるファイバーまたはフィラメントを形成することができる。
【0053】
第4の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成されるポリマー(polymeric)を形成することができる。
【0054】
さらに別の態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成される発泡品を形成することができる。
【0055】
さらなる態様では、少なくとも50重量パーセントの前記高分子組成物から構成される分散物、一般には水性分散物を形成することができる。
【0056】
本発明に関する好適な態様の前記説明は、具体的説明および記載の目的で提示した。それらは網羅的であること、または開示する厳密な形態に本発明を限定することを意図していない。明らかな修飾または変更が、前記教示に照らして可能である。態様は本発明の原理の最も良い説明、およびその実践的応用を提供するために、そしてそれにより当業者が本発明を様々な態様で、様々な修飾を用いて意図する特定の使用に適するように利用できるようにするために選択し、そして記載するものである。すべてのそのような修飾および変更は、それらが適正に、合法的かつ公平に権利を与えられる幅に従い解釈される場合に、添付する請求の範囲により定められる本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】