(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】分散型台帳を使用した一意的なアイテムの作成
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/38 20120101AFI20220804BHJP
G06F 21/64 20130101ALI20220804BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06F21/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529089
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 US2019062673
(87)【国際公開番号】W WO2020106991
(87)【国際公開日】2020-05-28
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521193865
【氏名又は名称】ヴェローナ ホールディングス エスイーズィーシー
(71)【出願人】
【識別番号】520380794
【氏名又は名称】ヤンティス, ジョナサン
(71)【出願人】
【識別番号】521218445
【氏名又は名称】キグリー,ウィリアム
(71)【出願人】
【識別番号】521193887
【氏名又は名称】スリュカ,ウーカシュ ヤクブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンティス,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】キグリー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スリュカ,ウーカシュ ヤクブ
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA72
(57)【要約】
デジタルアイテムを管理するための方法及び装置は、分散型台帳及びそれに関連するスマートコントラクトを使用して実装することができる。ユーザは、スマートコントラクトと対話して、様々な種類のデジタルアイテムを生成し、所有権を管理し、移転することができる。デジタルアイテムは、システムの各実装に特有の特性によって定義される。特性に対するいくつかの値は、それらの特性に対する他の値と比較して発生する可能性が低く、従って、いくつかの希少なデジタルアイテム及びより一般的なデジタルアイテムを生成することができる。デジタルアイテムは、現実世界のアイテムに対応する場合もあれば、仮想的にしか存在しない場合もある。また、スマートコントラクトは、デジタルアイテムを現実世界の物理的なアイテムへ交換するために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型台帳を用いたデジタルアイテム管理方法であって、
アイテム空間を実装するスマートコントラクトをデプロイするステップと、
前記スマートコントラクトによって、デジタルアイテムを管理するクライアントアカウントからトランザクションを受信するステップであって、前記トランザクションが、前記アイテム空間内のデジタルアイテムに対するアクションを要求するステップと、
前記スマートコントラクトの少なくとも一部を実行して、前記トランザクションによって要求された前記アクションを起こすステップと、
前記スマートコントラクトによって、前記トランザクションに関する出力を前記クライアントアカウントへ送信するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記トランザクションは、アイテム生成トランザクションであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム生成トランザクションに応答してデジタルアイテムを生成し、該デジタルアイテムを前記分散型台帳に記録することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アイテム生成トランザクションは、更に、デジタルアイテムの生成に使用される情報を示す1つ以上の変数を含むことを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記生成されるデジタルアイテムは、現実世界に既に存在する実在のアイテム、或いは、アルゴリズムに従って生成される一意的なアイテムを表すものであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アイテム生成トランザクションは、サードパーティサーバに関連付けられたクライアントアカウントからのものであり、
前記アイテム生成トランザクションは、前記スマートコントラクトに、現実世界の物理的アイテムを表す特性を有するデジタルアイテムを生成させ、前記物理的アイテムが、前記現実世界に現在存在するか、又は前記現実世界で生成可能なものであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記アイテム生成トランザクションは、サードパーティサーバに関連付けられたクライアントアカウントからのものであり、
前記アイテム生成トランザクションは、前記スマートコントラクトに、前記サードパーティサーバに関連付けられたゲーム内で使用するための仮想オブジェクトであるデジタルアイテムを生成させることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記トランザクションは、アイテム移転トランザクションであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム移転トランザクションに応答して、アイテムの所有権を異なるクライアントアカウントへ移転し、新しい所有権を前記分散型台帳に記録することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記トランザクションは、アイテム交換トランザクションであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム交換トランザクションに応答して、前記デジタルアイテムを現実世界の物理的アイテムへ交換することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記アイテム空間は、デジタルアイテムの1つ以上の特性を定義し、前記特性が名前及びデータタイプを更に含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記データタイプは、前記特性に対する可能な値のリストを更に含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、該プロセッサに分散型台帳を使用したデジタルアイテム管理方法を実行させる命令を有するプログラムを記憶した、不揮発性の機械読取可能な媒体を含む装置であって、
前記プログラムの前記命令は、
アイテム空間を実装するインプリメンタを含むスマートコントラクトをデプロイし、
前記スマートコントラクトにより、デジタルアイテムを管理するクライアントアカウントからトランザクションを受信し、該トランザクションがデジタルアイテムに対するアクションを要求するものであり、
前記スマートコントラクトの少なくとも一部を実行して、前記トランザクションによって要求された前記アクションを起こし、
前記スマートコントラクトにより、前記トランザクションに関する出力を前記クライアントアカウントへ送信するためのものであることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記トランザクションは、アイテム生成トランザクションであることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム生成トランザクションに応答してデジタルアイテムを生成し、該デジタルアイテムを前記分散型台帳に記録することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記トランザクションは、アイテム移転トランザクションであることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項18】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム移転トランザクションに応答して、アイテムの所有権を異なるクライアントアカウントへ移転し、新しい所有権を前記分散型台帳に記録することを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記トランザクションは、アイテム交換トランザクションであることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項20】
前記スマートコントラクトは、前記アイテム交換トランザクションに応答して、前記デジタルアイテムを現実世界の物理的アイテムへ交換することを特徴とする請求項19記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2018年11月21日に出願された、「Unique Item Creation Using a Distributed Ledger」と題された、米国仮特許出願第62/770,620号及び第62/770,624号の優先権の利益を主張するものである。また、本出願は、2019年11月1日に出願されたPCT国際出願US2019/059389号の優先権の利益を更に主張するものである。各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、デジタルアイテムの分野のものである。より具体的には、そのデジタルアイテムは、様々な特性を有し、所有権、取引、及びその他の方法での所有者間での交換に適している。デジタルアイテムは、仮想の又は架空のアイテムに関連していてもよい。また、デジタルアイテムは、現実世界に存在する物理的なアイテムを表していてもよく、そのような場合、デジタルアイテムの所有者が物理的なアイテムと交換することができる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載のシステム及び方法は、分散型台帳又はハッシュ技術に基づく、デジタルアイテムの生成、管理、移転、交換、及び共有を提供する。実施形態において、本システムは、一意的(unique)であって様々なアイテムの間で希少性が異なる可能性がある、動的に生成されたアイテムの大規模なセットを作成する。いくつかの実施形態において、本システムは、一意的な物理的又はデジタルアイテムにマッピングできるデジタルアイテムを生成するが、そのようなマッピングは、システムの全ての実施形態で必要なものではない。本システムは、大規模なアイテム群のアイテム空間において、各アイテムの希少性、不変性、及び所有権を確保する、アルゴリズム的に安全な方法を提供する。デジタルアイテムは、エンティティ間で取引、贈与、又はその他の方法で移転されてもよく、デジタルアイテムの物理的リプレゼンテーションと交換されてもよい。本システムのいくつかの実施形態では、アイテムの所有権及び移転を安全に追跡及び検証するために分散型台帳が利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】一実施形態において、分散型台帳を使用してデジタルアイテムを作成するシステムを示す例示的なブロック図である。
【0005】
【
図2】
図1のスマートコントラクトを更に詳細に例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
様々な実施形態において、本発明のシステムは、ノンファンジブル・トークン(NFT)の生成を管理する分散型サーバの、ピアツーピア・ネットワーク上で動作する分散型アプリケーションである。NFTは、特性のランダムな分布を提供するように設計されたアルゴリズムに基づいて、本システムによって生成される。アイテムの特性は、本システムの様々な実施形態及び実装において変化する。いくつかの特性は、それが発生する頻度、視覚的な魅力などに基づいて、本システムのユーザにとってより好ましいものとなる可能性がある。ある特性はより頻繁に発生し、他の特性は非常に稀である。
【0007】
本明細書に記載のシステムは、様々な実施形態で存在する可能性があり、それらの実施形態は、異なる方法で必要な機能を提供し、異なるタイプのコンピュータハードウェアを使用し、異なるソフトウェアモジュールを実行する。その様々な実施形態に加えて、各実施形態は、デジタルアイテムの生成及び移転、並びに物理的な現実世界のアイテムに関するデジタルアイテムの管理を、サポートするための必要な機能を備えた1つ又は複数のアイテム空間を作成するために、ユーザによって実装されてもよい。発明のシステム、実施形態、及び実装の概念は、ワードプロセッサソフトウェアと、ワードプロセッサとして機能するように作成された実際のソフトウェアプログラムと、コンピュータプロセッサ上で機能するインストールされたワードプロセッサソフトウェアプログラムとの、概念間の違いに類似している。
【0008】
本システムの実施形態の各実装において、アイテム空間は、本システムのインプリメンタ(implementor)によって設計及び定義される。アイテム空間の定義は、アイテム空間内のアイテムの特性を決定し、また、それらがシステムによってどのように生成されるかを決定する。本システムは、本システムの各実施形態で選択されたアイテム空間で許可されている場合を除き、アイテムをコピー、偽造、又は複製できないように設計されている。本システムのいくつかの実施形態において、本システムの各実施形態によって生成された各アイテムは、その実施形態のアイテム空間内で一意的である。様々な実施形態において、本システムは、アイテム空間及びその設計によって定義された統計的分布内で、デジタルアイテムをランダムに生成する。
【0009】
本システムの様々な実施形態において、アイテム空間は、収集品、靴、車、又は花などの現実世界のアイテムや、他の物理的アイテムをリストアップする。アイテム空間は、そのような現実世界のアイテムのデジタル特性を識別し、その現実世界のアイテムを、現実世界のアイテムの一意的な特性を含むデジタルアイテムによって定義することを可能にする。
【0010】
本システムの様々な実施形態において、アイテム生成は、所定のブロックチェーンアドレスへの支払いを受けるスマートコントラクトの実行を通じて行われる。同様に、アイテムの所有権又は制御権は、スマートコントラクトの実行によって移転される。アイテム生成及び移転のトランザクションは不変であり、元に戻すことはできない。
【0011】
(分散型台帳)
【0012】
分散型台帳システムは、サードパーティ間のトランザクションを安全に文書化するための技術である。この台帳は、複数の、関連のない、独立したサードパーティが管理する処理システム上で動作し、保存されるという意味で、「分散型」である。多くの分散型台帳システムは、安全な方法で分散型台帳を実装するために「ブロックチェーン」技術を利用している。ブロックチェーン技術は、分散型台帳を実装するための1つの方法に過ぎないことを理解しておく必要がある。以下の説明では、分散型台帳とブロックチェーンとの用語が互換的に使用されている。
【0013】
ブロックチェーン技術の基礎は、データブロックのリンクされたリストである。各ブロックは、データ(暗号化されていてもいなくてもよい)と、チェーン内の先行ブロックへのリンクとを含んでいる。ブロックチェーンシステムのいくつかの実装において、データは、本明細書に記載された発明システムが企図するデジタルアイテムを記述するのに必要なデータ構造、デジタル通貨の交換を文書化したトランザクションデータ、実行可能なデジタルコントラクト(スマートコントラクトとも呼ばれる)などのソフトウェア、及び特定の当事者によるデジタルコントラクトの使用に関連するデータを含むことができるが、以下で更に詳細に説明するように、他のタイプのデータを含むこともできる。ブロックチェーン内の各ブロックのデータは、ブロックチェーン内の先行ブロックを識別すると共に、修正しようとする試みを防止する手段として、チェーン内の先行ブロックのハッシュを含んでいる。
【0014】
ブロックチェーン技術の多くの実装では、ブロックチェーンの管理及び拡張が、本システムに計算能力を寄与する多数の無関係なエンティティによって運営されるコンピュータシステム上に、分散及び分配される。これらの分散されたコントリビュータ(contributors)は、ブロックチェーンのコピーを保存すること、及び、トランザクションを処理し、それらをブロックチェーン上の新しいブロックにデプロイ(deploy)し、それらのブロックをシステムの他の部分に分配するために、必要なアルゴリズムを実行することで、ブロックチェーンシステムのインフラを提供している。ブロックチェーンのセキュリティの重要な側面は、ブロックがブロックチェーンに追加され、メインブランチに受け入れられた後に、ブロックを修正することが困難であることであるが、ブロックチェーンは一時的に競合するブランチを有している。
【0015】
分散型台帳内のデータは、データへのアクセスを希望する人なら誰でも自由に利用できることがある。分散型台帳技術の多くの実装は、公開鍵/秘密鍵の暗号化技術を利用しているので、分散型台帳のエントリは、公開鍵データを使用する誰もがレビューすることができる。しかしながら、ユーザは、秘密鍵がなければ、データの所有権を移転したり、そのアドレスからデジタル通貨を送金したりするなど、記録されたデータを変更することはできない。
【0016】
(スマートコントラクト)
【0017】
ブロックチェーン技術は、スマートコントラクトの概念によって強化されている。スマートコントラクトは、スマートコントラクトの開発者によって、ブロックチェーンのブロック内のデータへコンパイルされる、実行可能なコンピュータプログラムである。スマートコントラクトがブロックチェーンに導入されると、ブロックチェーンの他のユーザは、それが悪意のある第三者によって変更されていないことを確信して、スマートコントラクトを実行することができる。これらの実行可能なコンピュータプログラムは、デジタル通貨や他の種類の資産の移転に関する様々な当事者間の合意を表し、実行するために使用される可能性があるため、「スマートコントラクト」と呼ばれるが、契約上の取り決めを表す必要はない。ソフトウェア開発者は、JavaScript、Solidityなどのスクリプト言語、Javaなどのオブジェクトコーディング言語、CやC++などのマシンコーディング言語を使用して、プログラムコードを記述することで、スマートコントラクトを開発する。
【0018】
スマートコントラクトがブロックチェーンにデプロイされると、プログラムコードは、ブロックチェーン上の他のトランザクションと同様に、システムのコントリビュータの1つによってブロック内へ処理される。スマートコントラクトをデプロイするプロセスには、プログラムコードをバイトコード、オブジェクトコード、バイナリコード、又はその他の実行可能な形式にコンパイルすることが含まれる。スマートコントラクトがブロックチェーンに正常にデプロイされると、他のブロックチェーントランザクションと同じ方法でアドレスが割り当てられる。このアドレスは、スマートコントラクトにアクセスし、その中で提供される機能を実行するために使用される。通常、スマートコントラクトの様々な機能をユーザが利用できるように、アプリケーション・プログラミング・インタフェースに類似したアプリケーション・バイナリ・インタフェース(ABI)情報が、コントラクトのユーザへ、又はコントラクトとのインタフェースをとるソフトウェア(ウォレット・アプリケーションなど)へ提供される。ABIは、スマートコントラクトの一部として提供される様々な機能及び方法を、ユーザ又はユーザのソフトウェアがアクセスできるように説明している。
【0019】
ブロックチェーンへデプロイされたコントラクト/プログラムは、その後、ブロックチェーン上にコントラクトのアドレスを有する誰もが使用することができる。本明細書で請求されるシステムのいくつかの実施形態において、スマートコントラクトは、後でより詳細に説明するように、契約の当事者間で暗号通貨の方式又は他のタイプの支払いで支払いを転送するだけでなく、デジタルアイテムの所有権を生成又は移転したり、デジタルアイテムの物理的な現実世界のアイテムへの交換を開始したりすることができる。コントラクト又はその一部を実行しても、コントラクトのそのステップの一部としてブロックチェーンの更新が必要とされない限り、必ずしも手数料は発生しない。コントラクト/プログラムが適切に実装されていれば、多くの異なるユーザが、自分の特定の契約又はトランザクションを管理するために、コントラクト/プログラムを同時に利用することができる。
【0020】
スマートコントラクトは、コントラクトに対する異なる当事者によって実行又は完了される複数のステップを有することができる。例えば、コントラクト/プログラムは、あるコントラクトのコピーをインスタンス化することによって、第2の当事者又は潜在的な契約当事者のグループに申し出をするために、第1の当事者によって呼び出されることがある。第2の当事者(又はグループの1人)は、コントラクトのインスタンスに「署名」することで応答することができる。コントラクトに「署名」するプロセスは、コントラクトの一部として定義されたプログラムメソッドを呼び出すことで構成される場合がある。コントラクトによっては、買い手、売り手、貸し手、借り手、エスクローエージェント、トランスファーエージェントなどの、複数の当事者が規定されている場合があり、これらの当事者は全て、コントラクトの特定のインスタンスと独立して対話し、コントラクトに署名したり、特定の種類のコントラクトに関連する他のアクションを取ったりすることができる。
【0021】
スマートコントラクトは、デジタル資産を含むコントラクト、或いは、契約当事者、ブロックチェーン、デジタル資産、及びインターネット上又はその他の方法でコントラクトにデジタル的に接続されたリソースの間での、プログラム的な相互作用を介して完全に実行される可能性のあるコントラクトによく適している。例えば、スマートコントラクトは、デジタル資産(暗号通貨、又は本明細書で説明する作成されたデジタルアイテムなど)の制御及び所有権を、自動的に移転することができる場合がある。また、スマートコントラクトは、PayPal又は銀行口座又は他の電子決済システムと連携して運営されるオラクルなど、ネットワークのサードパーティへ送信されるトランザクションを経て、ACH又は他の電子決済システムを介して、PayPal又は銀行口座間の送金を開始することができる場合がある。外部システムが提供するアプリケーション・プログラミング・インタフェースは、デジタル契約が、非プログラム的なプロセスなしで、当事者間の資産又は資金の実際の移転を実行するための方法を提供する。
【0022】
(クライアントアカウント/デジタルウォレット)
【0023】
ブロックチェーン技術に基づく分散型台帳は、それがスマートコントラクト、暗号通貨、又は台帳に保存された他のタイプのデータであるか否かに関わらず、台帳に記録されたデータのアドレスを提供する。以下で更に詳細に説明するように、分散型台帳に格納されたデータは、本明細書に開示されたシステムによって生成されたアイテムなどのデジタル資産を含むことができる。
【0024】
ブロックチェーンに格納された任意のデータを所有又は管理する者は、そのデータのアドレスを、デジタルウォレットを含む及び/又はデジタルウォレットである、クライアントアカウントに格納してもよい。クライアントアカウント及び/又はデジタルウォレットは、公開されている分散型台帳に格納されたデータに関連する秘密鍵及び公開鍵の格納場所である。
【0025】
いくつかのケースでは、これらの秘密鍵及び公開鍵が、暗号通貨に関連付けられている。そのようなケースでは、暗号通貨の分散型台帳のエントリに関連付けられた秘密鍵の保有者のみが、暗号通貨を別のアドレスに移転することができる。同様に、この秘密鍵/公開鍵の機能を利用して、本明細書に記載されているようなデジタルアイテムの移転を制御することもできる。クライアントアカウントに関連付けられた公開鍵は、デジタルアイテム又は暗号通貨が別の当事者によってその当事者の秘密鍵を使用して送信される可能性のある、公開可能なアドレスを提供する。
【0026】
公開鍵/秘密鍵の技術を分散型台帳と組み合わせて使用することで、ある公開鍵アドレスから別の公開鍵アドレスへのデジタルアイテムの移転が行われ、その移転が台帳のブロックチェーン内のブロックへエンコードされると、それを元に戻すことができないことが保証される。ある公開鍵アドレスに関連付けられた秘密鍵が失われた場合、その公開鍵アドレスに関連付けられたアイテムを別の公開鍵アドレスに移転することはできない。暗号通貨の場合、失われた公開鍵アドレスに関連付けられた通貨は、秘密鍵なしでは決して使用できないため、失われたとみなされる。同様に、公開鍵アドレスに関連付けられたデジタルアイテムは、秘密鍵へのアクセスなしに別の公開鍵アドレスへ移転することはできない。
【0027】
(アイテム空間の定義)
【0028】
本システムの各実施形態は、異なるインプリメンタによって異なる処理システム上で何度も実装される可能性がある。本システムの実施形態の各実装は、システムの実施形態によって提供される機能を使用して、インプリメンタによって定義された特定のアイテム空間の実装を実行する。
【0029】
アイテム空間の設計は、本システムの特定の実装によって生成されるアイテムの特性の定義を含む。その特性の定義は、少なくとも、特性の名前と特性のデータタイプとを含む。データタイプは、整数値、10進数、固定長又は可変長の文字列、ブール値、バイナリデータ(画像など)、又はデータ処理アプリケーションで使用される他のデータタイプなど、任意の所望のデータタイプから選択することができる。いくつかの実施形態において、インプリメンタは、許容可能な値の列挙型リスト(enumerated list)、様々なプリミティブデータタイプを含む他のデータタイプの組み合わせに基づく複合データタイプ、使用定義されたデータオブジェクト、ソース又はコンパイルされた形式の実行可能コード、又はデータ処理アプリケーションで利用される他のタイプのデータ構造など、他の基礎的なデータタイプに基づいてデータタイプを定義することができる場合がある。
【0030】
システムの実装のための特性のリストの例が、表1に示されている。本システムの実施形態のこの実装例において、各アイテムは、識別子(ID)、列挙型リストから選択された値からなるタイプを含む、4つの特性を有する。
【表1】
【0031】
アイテム空間内の潜在的なアイテムの数が、特性に対する値の一意的な組み合わせの数に等しいので、特性及びデータタイプの選択は、アイテム空間内の潜在的なアイテムの数を決定する。例えば、表1の特性を使用する実装では、その特性の列挙型リストの中で、タイプに対して1000の異なる値を持つことができる。例示の実装において、タイプのデータ値は、武器の種類、車両の種類、花の種類、食品、スポーツカード、記念品、又は他の任意の消費者製品などの、製品の識別を表すことができる。特性のタイプとして花を例にとると、タイプの値のリストは、様々な種類のバラ、ユリ、カーネーション、スナップドラゴンなどの、花束の名前のリストで構成されていてもよい。また、特性のタイプとして武器を例にとると、タイプの値のリストは、様々な種類のナイフ、銃、手榴弾、ミサイル、戦車などの、武器の名前のリストで構成されていてもよい。タイプに車両のリストを有する実装の例では、列挙された値が、車両のメーカーやモデルのリストであってもよい。これらの例において、スタイルの特性は、列挙型リストにある花束、車両、武器の画像又はそれらに関連する画像で構成されていてもよい。
【表2】
【0032】
表2の例が、異なる種類の花、アドオン(風船やカードなど)、又は花束の種類の他の詳細を含む、タイプの数千の値を有すると仮定すると、タイプ、クオリティ、及びスタイルの特性の多数の組み合わせがあり、それらの組み合わせのそれぞれに関連付けるための数百万の一意的な整数がある。また、表2の例では、異なる口径、メーカー、又は武器の種類のその他の詳細を含む、数千の値を有する武器のタイプがある場合、タイプ、クオリティ、及びスタイルの特性には多数の組み合わせがあり、それらの組み合わせのそれぞれに関連付けられる数百万の一意的な整数がある。
【0033】
多数の許容可能な値を有する複数の特性を選択することにより、本システムの実装では、数百万又は数十億のオーダーで、アイテム空間に非常に多くのアイテムを有することができる。いくつかの実装では、アイテム空間内のアイテムの多くが、アイテムを一意に保存する目的でアイテムに割り当てられたID特性を除いて、同一であってもよい。例えば、タイプ=「バラ」、クオリティ=「小さいつぼ(small vased)」、及びスタイルについて同じデータを有するが、異なるID値を有する、多くのアイテムを生成するような実装が考えられる。
【0034】
アイテム空間の定義の他の例が、表3に示されている。この例では、本システムが、乗り物に似た特性を備えるデジタルアイテムを生成するように設計されている。他のシステムでは、ビデオゲームのキャラクター、惑星、動物、プロスポーツ選手などを対象とした、アイテム定義を実装することができる。
【表3】
【0035】
更に、現実世界の物理的アイテムの製造者は、他の消費者が利用可能なアイテムを購入又は選択して、現実世界の物理的アイテムを表すデジタルアイテムを得ることができるように、利用可能なアイテムと、関連するID、タイプ、メーカー、モデル、クオリティ、及びスタイルとを、アイテム空間に格納することができる。
【0036】
(アイテム生成)
【0037】
ユーザがアイテム空間内のアイテムを取得したい場合、ユーザは本システムと対話して、アイテム空間内に新しいアイテムを生成させる。本システムは、各実装のために設計されたアルゴリズムを実行することによって、アイテム空間内に一意的なアイテムを生成する。本システムのいくつかの実施形態において、アイテム生成アルゴリズムは、ブロックチェーンベースのデジタル台帳に格納されたスマートコントラクトのコンテキストで実行される。いくつかの実施形態において、スマートコントラクトは、生成アドレスと呼ばれるブロックチェーンアドレスへの支払いを要求する。生成アドレスへ送信される支払い額は、アイテム空間の設計に応じて、固定又は可変とすることができる。生成アドレスが必要な支払いを受け取ったことをスマートコントラクトが確認すると、スマートコントラクトは、本システムの特定の実装のために定義されたアルゴリズムに基づいてアイテムを作成する。いくつかの実装では、特性のランダムな組み合わせが、アイテム空間のアイテムから選択される。
【0038】
スマートコントラクトがアイテムを生成すると、スマートコントラクトは、そのアイテムデータを、アイテムを購入した人、又はシステムによってアイテムを生成させた人に送信することができる。デジタルアイテム自体を構成するデータは、ブロックチェーン構造上の他のデータと同様に、分散型台帳に記録され、アドレスが与えられてもよい。本システムのいくつかの実施形態では、デジタルアイテムのブロックチェーンアドレスと受取人の公開鍵アドレスとを組み込んだトランザクションを、ブロックチェーンベースの分散型台帳に追加することで、アイテムが受取人に届けられる。いくつかのケースでは、生成されたデジタルアイテムを記録するのと同じトランザクションで所有者のアドレスが指定及び記録される場合などに、初期所有権を定義する分散型台帳への別のトランザクションが必要ない。
【0039】
いくつかの実施形態において、特性に対する特定の値、又は特性のサブセットに対する値の組み合わせは、本システムの実装によって生成されるアイテムにおいて、より一般的であるか、又はより一般的でないかもしれない。新しいアイテムを生成する際の、特性に対する値の選択における確率のこの不均等な分布は、特定の望ましい特性を有するアイテムの希少性をもたらす。特定の特性に対して他の値を有するアイテムは、はるかに一般的であるかもしれない。
【0040】
上述で使用したスポーツカードの例を参照すると、本システムの実装は、アイテム生成時に、タイプについての所定の選手A(デレク・ジーターなど)の値が、「選手A」よりも一般的であるかもしれない他のあまり人気のない選手の値よりも、はるかに少ない頻度で選択されるように設計されてもよい。このような特性の頻度の偏りが、「選手A」というタイプの値を有するアイテムの希少性を生み出している。従って、より人気のある選手のタイプを有するアイテムは、より人気のない選手と同じタイプを有するアイテムよりもはるかに少ないので、前者のアイテムは後者のアイテムよりもより希少でより望ましいものとなる。例えば、タイプが「デレク・ジーター」、クオリティが「3年目」、そしてスタイルが同じデータであるが、IDの値が異なるアイテムを多数生成するような実装が考えられる。追加の例として、同じ実装でも、タイプが「デレク・ジーター」でスタイルがデレク・ジーターのルーキー時代のビットマップ画像である組み合わせのアイテムは、タイプが「デレク・ジーター」でスタイルがメジャーリーグ5年目のデレク・ジーターの画像で、その実装が生成するアイテムの数よりも、多く生成される可能性がある。確かに希少で望ましい特性を有するアイテムの希少性は、その特性を有するアイテムが生成される可能性に基づいて、アイテムに対する暗黙の価値を生み出す。
【0041】
従って、スマートコントラクトは、既存のアイテム(デジタル又は物理的な現実世界のアイテム)のカテゴリ又はプールにマッピングされる、特性のための特定の値又は特性のサブセットのための値の組み合わせを生成する、アイテム作成アルゴリズムを含むことができる。この作成アルゴリズムは、アイテムがそのようなプールから消費され、そのアイテムの所有者が有する新しく造られたトークンと関連付けられるまで完了しない。この作成方法により、アイテム空間は、スマートコントラクト内の重み付けアルゴリズム(例えば、作成アルゴリズム)によって達成された特定の希少性の特性を、そのような特定の特性に合致するアイテムの既存のリストにマッピングし、生成されたトークンに関連付けることでそのようなアイテムのトークン化を促進することができ、そのトークンの受信者が所有することになる。例えば、デジタルトークンのプールは、メジャーリーグ5年目のデレク・ジーターのような「A選手」を表すカードのリストを含む、「A選手」カテゴリを表すものとして作成することができる。スマートコントラクト内のその作成アルゴリズムは、「A選手」カテゴリの特定の選手にマッピングされて生成された場合、メジャーリーグ5年目のデレク・ジーターのカードが新しいトークンに割り当てられ、そのトークンの受信者が所有することを誘発する、特性の重み付け分布を有することができる。
【0042】
(アイテムトランザクション)
【0043】
本発明システムの様々な実施形態及び実装では、本システムによって生成されたアイテムを保存、交換、及びセキュリティを確保するために、様々な技術を利用することができる。これらの技術は、単純なファイルの保存から、サードパーティによって管理される保存及び交換のシステムまで、多岐にわたってよい。上述したように、本システムのいくつかの実施形態では、公開-秘密鍵技術を利用して、本システムによって生成されたデジタルアイテムを関連付ける「クライアントアカウント」(又は「ウォレット」)を識別して保護する。生成されたデジタルアイテムは、その後、所有するクライアントがそのクライアントアカウント及び関連するデジタルアイテムのためのトランザクションを生成することを可能にする秘密鍵を使用して、関連するクライアントアカウントによってアクセス可能となる。
【0044】
ブロックチェーンに保存されているデジタルアイテムは、ブロックチェーンの分散型台帳に別のレコードを挿入することによってのみ、新しい所有者へ移転することができる。このエントリは、移転を開始するために、デジタルアイテムの現在の所有者の秘密鍵を必要とする。新しいエントリがブロックチェーンに記録されると、デジタルアイテムのアドレスと新しい所有者の公開鍵のアドレスとを提供することができる。
【0045】
図1は、ある実施形態において、分散型台帳を使用して、デジタルアイテムを作成し、現実世界の物理的アイテムを取得することを開始するための、システム100を示す例示的なブロック図である。システム100は、上述した「アイテム生成」、「アイテムトランザクション」、及び「アイテム空間」の概念に従って、アイテム生成、及びアイテム空間で生成されたアイテムのユーザ間のアイテムトランザクションを容易にする。そうするように指示された場合、システム100はまた、所定のユーザによって、デジタルアイテムによって表される現実世界の物理的アイテムの取得を開始する。
【0046】
システム100は、トランザクションを処理し、トランザクション情報を分散型台帳104に格納する、複数のノードから形成されるネットワーク102を含む。分散型台帳104は、例えば、上述したようなブロックチェーンである。有向非巡回グラフのような、他の形式の分散型台帳104が実装されてもよい。
図1には1つの分散型元帳104しか示されていないが、分散型元帳104のコピーがネットワーク102内の各(又は少なくとも複数の)ノードに配布され、各ノードが分散型元帳104の同一のコピーを格納するように、ノードが分散型元帳104にブロックを追加する如く動作することを理解すべきである。ネットワーク102は、プルーフ・オブ・ワーク、プルーフ・オブ・ステーク、及び/又は投票システムを含む、任意のタイプのコンセンサスを使用して、ブロックチェーンに新しいブロックを作成するように、分散型元帳104を検証してもよい。
【0047】
ネットワーク102は、1つ又は複数のクライアントアカウント108(デジタルウォレットであってもよく、及び/又はデジタルウォレットを含む)を介して、ユーザ106にアクセス可能である。クライアントアカウント108(1)は、ユーザ106(1)によって所有/運用され、デバイス110(1)を使用してユーザ106(1)によってアクセスされる。クライアントアカウント108(2)は、ユーザ106(2)によって所有/運用され、デバイス110(2)を使用してユーザ106(2)によってアクセスされる。デバイス110は、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチなど、それぞれのユーザ106及びネットワーク102とインタフェースするように構成された任意のコンピューティングデバイスであってもよい。各クライアントアカウント108は、ネットワーク102上でそのアカウントを識別する固有のアドレス112を有する。また、各デバイス110は、1つ又は複数の対応するクライアントアカウント108にアクセスして制御し、それに関連するデータを転送及び/又は受信するための、1つ又は複数の秘密鍵を格納している。
【0048】
ネットワーク102はまた、1つ又は複数のスマートコントラクト114を含んでもよく、そのうち1つのスマートコントラクト114のみが
図1に示されている。各スマートコントラクト114は、ネットワーク102上でそのコントラクトを識別する固有のアドレス116を含んでもよい。スマートコントラクト114は、分散型台帳104と共に、ネットワーク102上の各ノードへ配布されてもよい。スマートコントラクト114は、その中にアイテム空間118を実装するインプリメンタであってもよい。各クライアントアカウント110は、対応するトランザクション120を送信することで、スマートコントラクト114と対話する。スマートコントラクト114は、例えば、トランザクション120のいずれかを受信したことに応答して実行されるスクリプトである。受信したトランザクション120は、以下でより詳細に説明するように、スマートコントラクト114の実行動作を決定するデータを含む。スマートコントラクト114は、その実行の一部として、1つ又は複数の出力122を、クライアントアカウント108の1つ又は複数へ送信してもよい。
【0049】
スマートコントラクト114に関して生成されたトランザクション120は、スマートコントラクト114上で動作して、(スマートコントラクト114の制約によって示されるように)様々な機能を実行する。例えば、ユーザ106(1)は、アカウント108(1)と対話して、スマートコントラクト114にデジタルアイテムを作成させるトランザクション120を生成してもよい。別の例として、サードパーティアイテムサーバ130を運営するサードパーティが、(直接又はサードパーティアイテムサーバ130を介して)アカウント108(3)と対話して、スマートコントラクト114に、現実世界に現在存在する又は現実世界で生成可能な現実世界の物理的アイテム150を表す特性を有するデジタルアイテムを作成させる、トランザクション120を生成してもよい。その後、生成されたデジタルアイテムは、分散型台帳104に記録され、分散型台帳104の次の配布でネットワーク102の全てのノードに送信され、それによって、生成されたデジタルアイテム及びそれらに関連する特性の不変的な記録が作成される。別の例として、ユーザ106(1)がアカウント108(1)と対話して、スマートコントラクト114にデジタルアイテム(複数)の所有権を(ギフト、トレード、交換、売却などのいずれかを介して)ユーザ106(2)へ移転させるトランザクション120を生成してもよい。この所有権移転106(2)は、その後、分散型台帳104に記録され、分散型台帳104の次の配布においてネットワーク102の全てのノードへ送信され、それにより、所有者106(2)と106(1)との間のトランザクションの不変的な記録が作成される。
【0050】
別の例として、ユーザ106(1)は、アカウント108(1)と対話して、スマートコントラクト114がサードパーティサーバ130と(スマートコントラクト14から、サードパーティアイテムサーバ130によって又はそれと関連して運営されるアカウント108(3)への、別のトランザクションの送信を介して)対話し、デジタルアイテムの現実世界の物理的アイテム150への交換を開始するトランザクション120を生成することができる。現実世界の物理的アイテム150が現実世界で既に存在していない場合、新たな現実世界の物理的アイテム150が作成されてもよい。デジタルアイテムの現実世界のアイテム150への交換を開始するトランザクション120で定義されたデジタルアイテム208の特性を有する、現実世界の物理的アイテム150は、その後、所有者106(1)及びアカウント108(1)によって生成された所有者106(1)(又はトランザクション120でそのように示された場合は別の当事者)へ、(郵便、FedEx、UPSなどを介して)配送されてもよい。
【0051】
サードパーティサーバ130は、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)132を介して、クライアントアカウント108(3)とインタフェースしてもよい。一例において、サードパーティアイテムサーバ130は、1つ又は複数のデジタルアイテム208を表す現実世界の物理的アイテム150を作成することができる(又は以前に作成した)製造業者に関連付けられている。一例では、API132がHTTPサービスレイヤである。API132が、本明細書の範囲から逸脱することなく、他のサービスプロトコルを使用して実装されてもよいことを理解すべきである。特定の実施形態において、API132は、SSL暗号化(HTTPS)を使用して、ネットワーク102とサードパーティアイテムサーバ130との間の接続を保護する。従って、サードパーティアイテムサーバ130は、API132を介して、ネットワーク102と通信して、定義された受取人に対して現実世界の物理的アイテム150を開始及び送信するために利用される、分散型台帳104内の情報を取得することができる。
【0052】
図2は、
図1のスマートコントラクト114を更に例示的に詳細に描いたものである。スマートコントラクト114は、関連するデータ202及び命令204を含む。データ202は、所定の特性210を有するアイテム208のリストと、所定のアイテム208に対する権利を有する関連する所有者212とを含む、アイテムレジスタ206を含む。所有者リスト212は、所定のアイテム208に対する権利を所有するユーザ(例えば、
図1のユーザ106)の、クライアントアカウント(例えば、
図1のクライアントアカウント108)のアドレス(例えば、
図1のアドレス112)を特定してもよい。アイテムレジスタ206は、
図1のアイテム空間118の全て又は少なくとも一部の例である。データ202は、スマートコントラクト114で受信したトランザクション220と、スマートコントラクト114から送信された出力222とを更に含んでもよい。トランザクション220は、単一のトランザクションであってもよいし、
図1に示す1つ以上のトランザクション120の例である複数の個別のトランザクションであってもよい。出力222は、単一の出力であってもよいし、1つ以上の出力122の例である複数の個別の出力であってもよい。トランザクション220及び出力222は、以下に説明する命令204の1つ又は複数によって開始するか、又は開始されてもよい。
【0053】
命令204は、アイテム生成部214を含んでもよい。アイテム生成部214は、1つ又は複数のデジタルアイテム208と、関連する特性210とを生成するように動作することができる。一実施形態において、スマートコントラクト114は、ユーザ106がアイテムの入手を望むことを示すアイテム生成トランザクション240を、クライアントアカウント108から受信する。アイテム生成トランザクション240は、ユーザ106が取得を希望する特定のアイテムと、所有者(例えば、ユーザ106、又はユーザ106が彼らに代わってアイテムを贈与又は取得している場合は他のユーザ)、アイテムの特性(色、サイズ、スタイルなど)、レアリティ値を高めるためにユーザ106が選択したオプションを示すレアリティ変数、及び生成される正確なアイテムを決定するために使用される他の情報の、いずれか1つ以上などの、関連する変数とを示すことができる。アイテム生成部214は、次に、特定の特性210を有するアイテム208を生成して保存し、その特定のアイテムの権利を所有者212として要求したユーザ106(又は、トランザクション240がそのように示している場合には別のユーザ106)へ割り当てるように開始される。
【0054】
生成されたアイテム208は、現実世界内のアイテム(例えば、現実世界に既に存在する実際のアイテムの特性を表す特性210を定義する、受信したトランザクション240に応じて作成されたアイテム)であってもよく、或いは、アイテム生成の各実装のために設計されたアルゴリズムをアイテム生成部214が実行することによって生成された、固有のアイテムであってもよい。アイテム208を生成するためにアイテム生成部214によって使用されるアルゴリズムは、アイテム生成部214を手引きする受信したアイテム生成トランザクション240によって定義されるように、ユーザ106(又は、サードパーティアイテムサーバ130を介して、製造者などのサードパーティ)によって設定された変数を含んでもよい。例えば、アイテム生成トランザクション240は、ユーザ106が希少なアイテムを欲しており、それに応じてより多くの価値(例えば、暗号通貨、トークンなど)を放出したことを示していてもよい。そのような例において、アイテム生成部214によって使用されるアルゴリズムは、生成されたアイテム208がより高い希少性を有することを保証する、又はその可能性を高くする、重みを含んでもよい。更に、別の例として、アイテム特性210の全て又は一部は、アイテム生成部214によってランダムに生成されてもよい。
【0055】
アイテム生成部214によるアイテム生成の別の例として、アイテム生成部214によって生成されたデジタルアイテム208が現実世界内のアイテムを表し、現実世界内のアイテムの特性の一部又は全てに一致する特性210によって定義される場合などに、アイテム特性210の全てがアイテム生成トランザクション240内で定義されてもよい。いくつかの実施形態では、スマートコントラクト114が、要求ユーザから生成アドレスへの支払いを示すアイテム生成トランザクション240を受信しない限り、アイテム生成部214は開始されない。例えば、
図1を参照すると、要求ユーザはユーザ106(1)であり、生成アドレスはアドレス112(3)であり、生成されたデジタルアイテム208は、生成されたデジタルアイテム208の所有者が望む場合に、現実世界の物理的アイテム150へ交換することが可能である。いくつかの実施形態において、アイテム生成部214は、現実世界に既に存在する物理的アイテム150に対応するデジタルアイテム208を生成してもよい。いくつかの実施形態において、アイテム生成部214によって生成されたデジタルアイテム208は、デジタルアイテム208の生成時点で、対応する現実世界内の物理的アイテム150を有していない。そのような実施形態では、後述するアイテム交換部218の開始後に、サードパーティが運営するサードパーティアイテムサーバ130によって、現実世界内の物理的アイテム150が生成される。生成アドレスに送られる支払い額は、アイテム空間設計に応じて、固定であっても可変であってもよい。
【0056】
また、アイテム生成部214は、複数のデジタルアイテム208を組み合わせて、それらの組み合わせである新たなデジタルアイテム(又は現実世界の物理的アイテム150)を作成してもよい。例えば、アイテム生成トランザクション240は、第1のデジタルアイテムを第2のデジタルアイテムと組み合わせて、新たなデジタルアイテムを生成することを指示してもよい。また、例えば、1人のユーザ108が2つのデジタルアイテム208を所有し、一方が赤いバラの花束又は12本の赤いバラを表すものであり、もう一方が12本のピンクのバラの花束を表すものであってもよい。所有者106は、2つのデジタルアイテムのそれぞれを、24本の赤いバラとピンクのバラとの花束の特性を有する単一のアイテムへと結合することを示す、アイテム生成トランザクション240を生成してもよい。
【0057】
デジタルアイテム208の生成時に、アイテム生成部214は、生成アイテム出力250を生成してもよい。生成アイテム出力250は、デジタルアイテム208の所有者と、デジタルアイテム208を現実世界の物理的アイテム150へ交換することができるサードパーティ130とへ、送信されるメッセージであってもよい。更に、生成アイテム出力250は、分散型台帳104に記録されて、その不変的な記録を作成してもよい。生成アイテム出力250は、従来の電子商取引方法と比較して多くの利点を提供する。第1に、デジタルアイテム208の所有者は、その受領についての知識を有しており、その現実世界の物理的アイテム150のバージョンを有していなくても、デジタルアイテム208を利用することができる。生成アイテム出力250を受信すると、関連するデジタルアイテム208の所有者は、デジタルアイテム208を販売することができ、彼らは、デジタルアイテム208を包装して発送することに対処することなく、デジタルアイテム208を別のデジタルアイテムと交換することができる。特定の実施形態において、所有者は、生成アイテム出力250を別の人へ転送することによって(又は、後述するアイテム移転トランザクション242を生成することによって)、デジタルアイテム208を別の人へ贈ることができる。受信者は、その後、転送されたメッセージを開き、デジタルアイテム208を見ることができる。例えば、デジタルアイテム208が花束である場合、生成アイテム出力250は、所有者がソーシャルメディアで宣伝することができるような、花束の3次元画像を含んでもよい。受信者が望む場合、受信者は、デジタルアイテム208を何らかの他のデジタルアイテムと交換したり、デジタルアイテム208を販売したり、或いは、デジタルアイテム208を現実世界の物理的アイテム150へ交換したりすることができる。
【0058】
従って、生成アイテム出力250は、デジタルアイテム208の所有者のクライアントデバイスに表示される、様々なアクションボタン252を含んでもよい。或いは、アクションボタン252は、生成アイテム出力250の受信時に、デジタルアイテム208の所有者のクライアントデバイスで生成されてもよい。そのようなアクションボタン252は、「アイテム転送ボタン」、「配送(deliver)ボタン」を含む。アクションボタン252は、スマートコントラクト114の機能を実装する追加のトランザクション220(例えば、トランザクション120)を、自動的に生成してもよい。例えば、アクションボタン252がアイテム転送ボタンを含む場合、アイテム移転トランザクション242(詳細は後述する)がスマートコントラクト114へ送信されてもよい。別の例として、アクションボタン252が「配送ボタン」を含む場合、アイテム交換トランザクション244(詳細は後述する)が生成され、スマートコントラクト114へ送信されてもよい。
【0059】
命令204は、更に、アイテム移転部216を含んでもよい。アイテム移転部216は、1人以上のユーザ間で所有権を移転することができる。例えば、スマートコントラクト114は、生成されたアイテム208をユーザ106(1)からユーザ106(2)へ移転することを、ユーザ106(1)が望むことを示すアイテム移転トランザクション242を、アカウント108(1)から受信してもよい。これに応答して、アイテム移転部216は、移転されたアイテム208の所有者212を更新してもよい。次に、アイテム移転部216は、アイテム移転出力254を生成してもよく、このアイテム移転出力254は、分散型台帳104に記録され、分散型台帳104の次の配布時にネットワーク102の全てのノードへ配布される。また、アイテム移転出力254は、アイテム移転トランザクション242に応答して実施された移転に関連する当事者(例えば、ユーザ106)の、アカウント108に関連するクライアントデバイスに表示されるアラート(例えば、SMSメッセージ又は他のプロンプト)を生成してもよい。
【0060】
アイテム移転部216は、生成されたアイテム208に関連するサードパーティとインタフェースすることもできる。例えば、
図1を参照すると、デジタルアイテムサーバ130は、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)132を介して、クライアントアカウント108とインタフェースしてもよい。1つの例において、デジタルアイテムサーバ130は、プレイヤーがゲーム内の仮想オブジェクト又は人物に関連付けられたスキンを変更することができるゲームに関連付けられており、生成された各アイテム208がゲーム内のスキンである。一例では、API132がHTTPサービスレイヤである。API132は、ゲームサーバとプレイヤーとの間でアイテム(例えば、アイテム208)を生成、配布、移転、その他をするために必要な、全てのエンドポイントを提供してもよい。また、API132は、ユーザ及びゲームサーバの認証を扱ってもよい。特定の実施形態において、API132は、SSL暗号化(HTTPS)を用いて、ネットワーク102とデジタルアイテムサーバ130(例えば、ゲームサーバ)との間の接続を保護する。従って、デジタルアイテムサーバ130は、API132を介して、ネットワーク102と通信して、デジタルアイテムサーバ130がホストするゲームに表示されるアイテムを定義するために利用される、分散型台帳104内の情報を取得してもよい。
【0061】
アイテム生成部214によるアイテム208の生成(及び、いくつかの実施形態では、デジタルアイテムサーバ130に関連付けられたゲームで生成されたアイテム208を使用することを示す、所有ユーザ106からのトランザクション122の受信)に応じて、アイテム移転部216は、クライアントアカウント108(3)のアドレス112(3)へアイテム208を送信してもよい。これに応答して、API132は、受信したアイテムを分析し、デジタルアイテムサーバ130がホストする仮想世界でそのアイテムを使用できるようにする。いくつかの実施形態において、各ユーザ106は、クライアントアカウント108を取得し、ネットワーク102、分散型台帳104、及びスマートコントラクト14のうちの1つ以上を利用するために、彼らの関連する所有者ID136を入力することを要求される。
【0062】
更に、命令204は、アイテム交換部218を含んでもよい。アイテム交換部218は、ネットワーク102及びサードパーティサーバ130とインタフェースして、デジタルアイテム208の現実世界の物理的アイテム150への交換を開始する。アイテム交換部218は、デジタルアイテム208を現実世界の物理的アイテム150へ交換することを示す、アカウント108から受信するアイテム交換トランザクション244を受信したときに開始してもよい。そのようなアイテム交換トランザクション244は、配送情報(時間、住所、受取人など)を含んでもよい。アイテム交換部218は、(例えば、アドレス112(3)のアカウント108(3)を介して)サードパーティアイテムサーバ130へ送信される、交換アイテム出力256を生成する。従って、交換アイテム出力256は、アイテム交換トランザクション244に関連付けられたデジタルアイテム208を表す現実世界の物理的アイテム150を配送するように、サードパーティアイテムサーバ130、又はそれに関連する製造業者を手引きしてもよい。特定の実施形態では、現実世界の物理的アイテム150が、サードパーティサーバ130に関連する製造業者によって入手可能であることが確認されると、サードパーティサーバ130は、アイテム交換確認246を(アカウント108(3)を介して)スマートコントラクト114へ送信してもよい。アイテム交換確認246の受信に応答して、アイテム交換部218は、現実世界の物理的アイテム150の受取人へ送信される、交換アイテム確認出力258を生成してもよい。交換アイテム確認出力258は、現実世界の物理的アイテム150の追跡情報及び配送情報を含んでもよい。
【0063】
本明細書の議論は、「送信(transmit)」及び「受信(receive)」という用語を含む。これらの用語は、データ又はデータパケットを、あるエンティティ又はデバイスから別のエンティティ又はデバイスへ、直接送信することを含んでもよい。代替的又は追加的に、これらの用語は、分散型台帳にラインアイテムを記録し、次に、受信又は送信エンティティ/デバイスが分散型台帳を解析して、それに割り当てられた分散型台帳内のデータアイテムを識別することを含む。
【0064】
本明細書の範囲から逸脱することなく、上記の方法、装置、及び構造に変更を加えることができる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、図示された様々な構成要素、及び図示されていない構成要素の、多くの異なるアレンジが可能である。本発明の実施形態は、制限的ではなく例示的であることを意図して記述されている。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない代替の実施形態が明らかになるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の改良を実施するための代替手段を開発することができる。
【0065】
特定の特徴及びサブコンビネーションは実用性があり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照せずに採用することができ、特許請求の範囲内で企図されることが理解されるであろう。様々な図に記載されている全てのステップが、記載されている特定の順序で実施される必要はない。
【符号の説明】
【0066】
104:分散型台帳、108:クライアントアカウント、114:スマートコントラクト、118:アイテム空間、120:トランザクション、122:出力、130:サードパーティアイテムサーバ、150:現実世界の物理的アイテム、204:命令、208:デジタルアイテム、210:特性、220:トランザクション、222:出力、240:アイテム生成トランザクション、242:アイテム移転トランザクション、244:アイテム交換トランザクション
【国際調査報告】