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特表2022-536064急速加水分解ポリラクチド樹脂組成物
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  • 特表-急速加水分解ポリラクチド樹脂組成物 図1
  • 特表-急速加水分解ポリラクチド樹脂組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】急速加水分解ポリラクチド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20220804BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20220804BHJP
   C09K 8/508 20060101ALI20220804BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220804BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08G63/08
C09K8/508
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571662
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020034449
(87)【国際公開番号】W WO2020251745
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/861,047
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504438060
【氏名又は名称】ネイチャーワークス・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンタイン,ジェームズ ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,ジョセフ デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,クラッグ エリス
(72)【発明者】
【氏名】ナタル,マニュエル エー.ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】パラーディ,オリバー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J002CF19W
4J002CF19X
4J029AA02
4J029EH03
4J200AA04
4J200AA08
4J200BA14
4J200EA11
(57)【要約】
速い加水分解速度を示し、少量の残量物を残すポリラクチド樹脂組成物は、ポリ(メソ-ラクチド)及び第2のポリラクチドを含む。このポリラクチド樹脂組成物は、低~中程度の高温下にて急速な加水分解が望まれる用途、例えば特定の石油及びガス井戸処理用途で有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有するメソ-ラクチドの少なくとも1つのポリマー又はコポリマーであって、乳酸単位を少なくとも90重量%含有し、前記乳酸単位の少なくとも80%がメソ-ラクチドの重合によって形成され、且つ少なくとも1.1~2.0までのL-乳酸単位とD-乳酸単位のブロックの平均長さを有する、メソ-ラクチドの前記ポリマー又はコポリマーを、組成物中のすべてのポリラクチドの重量に対して50~95重量%と、
b)ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのポリラクチドを、前記組成物中のすべてのポリラクチドの重量に対して5~50重量%、L-乳酸単位とD-乳酸単位が≧65:35又は≦35:65の比である乳酸単位を少なくとも95重量%と、
の融解物又は溶液ブレンドを含むポリラクチド樹脂組成物。
【請求項2】
成分a)がガラス転移温度38~50℃を有する、請求項1に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項3】
成分a)が、少なくとも1.1から1.75までの、L-乳酸単位及びD-乳酸単位のブロックの平均長さを有する、請求項1又は2に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項4】
成分b)の前記乳酸単位が、75:25~100:0又は0:100~25:75の比のL-乳酸単位及びD-乳酸単位である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項5】
成分b)の前記乳酸単位が、86:14~92:8又は8:92~14:86の比のL-乳酸単位及びD-乳酸単位である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項6】
前記組成物中のすべてのポリラクチドの重量に対して、成分a)を65~90重量%含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項7】
炭素原子6~30個を有するc)有機カルボン酸をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機カルボン酸が、炭素原子8~18個を有する直鎖状又は分岐状アルカン酸である、請求項7に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリラクチド樹脂組成物中の成分c)とすべてのポリラクチドの合計重量に対して、成分c)を2~12重量%含有する、請求項7又は8に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項10】
グリコリド若しくはグリコール酸のホモポリマー又はコポリマーをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリラクチド樹脂組成物中のグリコリド若しくはグリコール酸の前記ホモポリマー又はコポリマーとすべてのラクチドの合計重量に対して、グリコリド若しくはグリコール酸の前記ホモポリマー又はコポリマーを0.1~50重量%含有する、請求項10に記載のポリラクチド樹脂組成物。
【請求項12】
地下フォーメーションを処理する方法であって、
a)粒子の塊(mass)が、地下のフォーメーションに沈着するように、液相及び請求項1から9のいずれかに記載のポリラクチド組成物の粒子を含有する処理流体を前記地下フォーメーション内に導入することと、次に
b)沈着粒子が、加水分解によって、その出発質量の少なくとも50%を失うように、水性媒体及び高温に前記沈着粒子をさらすことにより、前記地下フォーメーションにおける前記沈着粒子を加水分解することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中で急速に加水分解するポリラクチド樹脂組成物に関する。
【0002】
ポリラクチド樹脂は、水の存在下にて加水分解することが知られている。十分な時間を与えると、ポリラクチド樹脂は最終的に加水分解して、水に可溶性であるか、又は微生物によって消費され得る低分子量種を形成することができる。ポリラクチド樹脂は、このように加水分解する能力があるためにコンポスト可能である。
【背景技術】
【0003】
ポリラクチドの一部の用途では、この特性を利用することが探求されている。かかる用途の一例は、石油及び/又はガス生産井戸における分解性化学的ダイバータとしての例である。ダイバータは、処理区間にわたって処理流体の均一な分布を確保するために、注入処理において使用される。注入された流体は、最小抵抗の経路をたどる傾向があり、場合により、最小透過性領域が生じて、不適切な処理を受ける。ダイバータは、処理流体を有するフォーメーション(formation)内に注入される。据え付けられる場合、ダイバータは、注入処理からそのフォーメーションの特定の領域を一時的に遮断し、そうでなければ適切に処理されないかもしれない低透過性領域へと処理をそらす。効果的にするために、処理が完了した際には、井戸のフル生産を保持することができるように、転換作用は一時的でなければならない。井戸における湿度及び温度の条件下にて加水分解し、溶解するか、又は洗い流される低分子量種が形成され、その結果、井戸が生産に入った時に、フォーメーションの遮断領域が再び開くことから、ポリラクチド樹脂は、必要とされる一時的な遮断作用を提供する。
【0004】
この問題は、加水分解が、求められるよりも遅く進み、ダイバータが定位置で長く留まりすぎることである。この問題は特に、低い温度のフォーメーション(37~66℃など)において深刻である。
【0005】
ポリラクチド加水分解速度は、結晶化度に関連する。より高い結晶質のポリラクチドは、比較的ゆっくりと加水分解する傾向がある。このため、いわゆる「非晶質」ポリラクチドグレードは、より速い加水分解速度が求められる場合には好ましかった。「非晶質」ポリラクチドグレードは、結晶化が困難なポリラクチド樹脂であり、結晶化したとしても、容易に結晶化するポリラクチド樹脂よりも融点の低い微結晶をごく少量しか生成しない。
【0006】
一般に、結晶化するポリラクチド樹脂の能力は、その立体化学に強く依存する。市販のポリラクチド樹脂はほぼ常に、ランダムに分布するL-(S)及びD-(R)乳酸単位を含有するコポリマーである。立体化学的純度が高いほど、結晶化する能力が高くなることと相関する。いわゆる「非晶質」グレードは、優勢な鏡像異性体(通常、市販のグレードでのL-乳酸鏡像異性体)を80~92%も含有し得て、他の鏡像異性体を8~20%含有し得る。ダイバータ用途で使用されるポリラクチド樹脂の具体的な例は、D-乳酸単位を12%含有する、L-ラクチド、メソ-ラクチド、及び任意にD-ラクチドのランダムコポリマーである。
【0007】
一部の市販の非晶質グレードでさえ、一部の井戸条件下にて加水分解するのが遅すぎることが判明している。
【0008】
ポリラクチドダイバータは、他の重要な特性を有するはずである。これらのダイバータは、異なる重量比で、及び場合によっては異なる密度で、粒子、つまり小ペレット、粉末、繊維、及び/又はフレークの混合物の形状をとる。粒子は、乾燥条件下にて(つまり、水分又は液状の水の非存在下にて)、凝集又は「ブロッキング」に対して抵抗性であるはずであり、そのため、凝集物の形成を軽減するために温度調節(climate-controlled)容器を必要とすることなく、輸送及び貯蔵することができる。ダイバータが、周囲条件下にて現場で保管されるため、テキサス州西部のパーミアンのような石油及びガス生産する盆地において夏に暑い気候で時に遭遇する、45℃又は50℃と高い温度で保管される場合に、ポリラクチドダイバータはブロッキングに抵抗性であるべきである。残念なことに、急速に加水分解する傾向がある高非晶質ポリラクチド樹脂は、容易にブロッキングする傾向もある。したがって、より速い加水分解及び質量損失に有利なポリラクチド樹脂に改良を加えると、ブロッキングも促進される傾向がある。
【0009】
さらに、トランスファーダウンホール(transfer downhole)中にポリラクチドダイバータが挙動する手法が重要である。ダイバータは、そこで分流が望まれる破損にダイバータが移送されるため、凝集性、粘着性の大きな塊が形成するため、加水分解するのが速すぎるべきではない。井戸が生産に入った際の、粘着性の加水分解残留物の表面への移行が、生産装置の表面にファウリングを引き起こし得る。好ましいシステムでは、ダイバータ粒子は、凝集しないか、又はそれらが水と混合され、ダウンホールにポンプ注入される場合に、その表面にて機械的に容易に分解することができる、軽く凝集された粒子の塊(mass)が形成されるだけである。
【0010】
さらに他の重要な特性は、ダイバータ粒子が経験する質量損失の程度である。PLA中の非晶質相は、結晶相よりもかなり急速に加水分解することが知られている。非晶質PLAグレードでさえ、加水分解中に、特に加水分解が110℃未満の温度で行われた場合には、あるレベルの結晶化度を生じることも知られている。これらの温度条件下にて、非晶質相の加水分解及びオリゴマー生成物の可溶化は、結晶相に勝り、そのポイントでは、明らかなプラトーに達し、更なる質量損失が非常に遅くなる。このプラトーに達すると、残りの塊(時に、「残留物」と呼ばれる)は可能な限り小さいほうがよく、好ましくは元のダイバータの塊の25%以下であるべきである。一部の用途に対して加水分解が遅すぎることに加えて、ダイバータ用途で使用されているポリラクチド樹脂は、望まれるよりも多い「残留物」を有する傾向があり、つまり、質量損失速度は、ダイバータの元の塊の50~60%と多く残る場合には非常に遅くなる。加水分解が、高温ではなく低温(≦66℃)で行われる場合、残留物がしばしば認められる傾向がある。
【0011】
特に温度37~66℃で急速に加水分解し、且つ生成される残留物が少量である、ポリラクチド樹脂組成物が望まれる。かかる組成物が、乾燥条件下にて、特に40~50℃などの中程度の高温にてブロッキングに対して抵抗性である場合、より望ましいだろう。この組成物は好ましくは、同様な温度で湿潤状態である場合、ブロッキングに抵抗性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
a)ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有するメソ-ラクチドの少なくとも1つのポリマー又はコポリマーであって、乳酸単位を少なくとも90重量%含有し、その乳酸単位の少なくとも80%がメソ-ラクチドの重合によって形成され、少なくとも1.1~2.0までのL-乳酸単位とD-乳酸単位のブロックの平均長さを有する、メソ-ラクチドの少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを、組成物中のすべてのポリラクチドの重量に対して50~95重量%と、
b)ポリスチレン標準に対してGPCによって測定される、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのポリラクチドを、組成物中のすべてのポリラクチドの重量に対して5~50重量%、L-乳酸単位とD-乳酸単位を≧65:35又は≦35:65の比で含有する乳酸単位を、少なくとも90重量%と、の融解物若しくは溶液ブレンドを含むポリラクチド樹脂組成物である。
【0013】
便宜上、ラクチドの上述のポリマー又はコポリマーは、本明細書において「ポリ(メソ-ラクチド)」又は「PMLA」と呼ばれ、上記のパラグラフb)における前述のポリラクチドは「ポリラクチド(b)」と呼ばれる。
【0014】
本発明のポリラクチド樹脂組成物は、いくつかの驚くべき、さらには重要な利点を提供する。それは、市販のポリラクチド樹脂グレードと比較して、37~66℃など中程度の温度でさえ、加水分解の速い速度を示す。加水分解の速い速度は、産業コンポスト化において、及び特定の最終用途において、例えば組成物が、石油及び/又はガス生産井戸においてダイバータとして使用される場合に、大きな利点である。この速い加水分解速度は、組成物の元の量の大部分が失われ、「残留物」が少なくなるまで続く。
【0015】
さらに、加水分解の速度は、PMLA及びポリラクチド(b)の比を変えることによって、さらに以下により完全に説明されるように様々な添加剤を含有させる、又は排除することによって(及び、存在する場合にはその量を変えることによって)、広い範囲にわたって「調節可能」である。
【0016】
本発明のポリラクチド樹脂組成物は、40~50℃などの中程度に高い温度まで乾燥条件下にてブロッキングに耐える。
【0017】
さらに、ポリラクチド樹脂組成物の粒子の塊は、特に有益な方法で、特に低い又は中程度の温度(100℃未満など)で加水分解される場合に、加水分解する(及び、かかる加水分解によって質量を損失する)傾向がある。加水分解が進行するにつれて、粒子は、粘着性の塊へとブロッキング又は凝集することなく、その粒状性質を維持する傾向がある。以下に記載のように、粒子のかかる塊は、加水分解の中間段階中に軽い凝集塊を形成し得るが、粒子は大部分が、その粒状同一性をずっと維持する。より多くの質量が失われると、粒子の残り部分は、著しい量の結晶化度を生じる傾向があり、そのポイントで、もう一度、目立たなくなり、非凝集となる、又はそれにほぼ近くなる。かかる結晶質残留物の分子量は一般に、かなり低く、通常は5000g/モル未満(ポリスチレン標準に対してGPCによって測定された)であり、したがって機械的強度がほとんどなく、脆い。ダイバータ用途において、これによって、透過性の保持に影響を与えず、井戸表面にて装置のファウリングが低減されて、残留物をフォーメーションから容易に除去することが可能となる。PMLAは一般に結晶化に適していないため、それ自体でかなりの結晶化度を生じることは意外であり、ポリラクチド(b)は、仮にそうだとしても、単独で少ない程度のみ結晶化するグレードであり得る。
【0018】
これらの特性のために、本発明のポリラクチド組成物は、地下フォーメーションにおけるダイバータとしての使用に特によく適応される。したがって、他の態様において、本発明は、地下フォーメーションを処理する方法であって、
a)粒子の塊が、地下フォーメーションに沈着するように、液相及び第1態様のポリラクチド組成物の粒子を含有する処理流体を地下フォーメーション内に導入することと、次に
b)沈着粒子が、加水分解のためにその出発質量の少なくとも50%を失うように、水性媒体及び高温に沈着粒子をさらすことによって、地下フォーメーションにおける沈着粒子を加水分解することと、
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のポリラクチド樹脂組成物の質量損失を例示するグラフである。
図2】実施例13のポリラクチド樹脂組成物の質量損失を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
PMLA
乳酸は、1つのキラル中心を有する分子であり、そのため2つの鏡像異性体型:いわゆるD-(又はR-)鏡像異性体及びL-(又はS-)鏡像異性体で存在する。乳酸の2分子が水2分子の脱離で縮合して、明細書において「ラクチド」と呼ばれる3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオンを形成し得る。ラクチドは、それぞれが以下の構造:
【化1】
を有する2つの「乳酸単位」で構成されると考えることができる。
【0021】
ラクチド分子における各乳酸単位は、1つのキラル中心を含有し、且つD型又はL型のいずれかで存在する。ラクチド分子は、2つの形態:3S,6S-3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(L-ラクチド)、3R,6R-3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(D-ラクチド)、及び3R,6S-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(メソ-ラクチド)のうちの1つをとり得る。これらは以下の構造を有する:
【化2】
【0022】
L-ラクチド及びD-ラクチドは、鏡像異性体のペアであり、メソ-ラクチドは、1つのL-乳酸単位と1つのD-乳酸単位を有する立体異性体である。さらに、L-ラクチド約50%とD-ラクチド50%の混合物が、ラセミ-ラクチド(又は「rac-ラクチド」)として知られる高融点物質を形成する。メソ-ラクチド及びrac-ラクチドの加水分解によって、どちらもL-乳酸50%とD-乳酸50%の混合物が生じ得る。
【0023】
メソ-ラクチドは、それが単独重合すると、ポリマーにおいて生成される連続したL-乳酸単位及びD-乳酸単位の数が最低で1又は最高で2になることから、ラクチドの種々の形態の中でも独特である。L-ラクチドとD-ラクチドの混合物の重合は、ポリマーにおける偶数の乳酸単位のセグメントを組込み、その平均ブロック長さは、供給原料中に存在するモノマーの比によって決定され得る。重合プロセス中に成長中のポリマーの最後に付加した場合に、メソ-ラクチドの分子は、その鎖末端に単一のL-乳酸単位と単一のD-乳酸単位を導入する。メソ-ラクチドが「頭-尾(head-to-tail)」形式(つまり、D-乳酸単位がポリマー鎖上の末端L-乳酸単位に付加される、又は逆の場合も同様)で重合した場合、以下の形態:
(D-L-D-L)
を有する立体規則性ポリマーが生成され、DはD-乳酸単位を表し、LはL-乳酸単位を意味する。この立体配置を有するPMLAは時に、「シンジオタクチック」と呼ばれる。この立体配置において、連続したD-及びL-乳酸単位の数は常に1である。逆に、メソ-ラクチドが「頭-頭(head to head)」形式で重合した場合(つまり、D-乳酸単位が末端L-乳酸単位に付加される場合)、以下の形態:
(D-L-L-D)
を有するポリマーが代わりに生成される。この構造を有するPMLAは時に、「ヘテロタクチック」と呼ばれる。この場合には、連続したD-及びL-乳酸単位の数は常に2である。メソ-ラクチドがランダムに重合する場合、連続したD-及びL-乳酸単位の数は時に1であり、時に2であり、平均値は1~2である。
【0024】
本発明のPMLAは、メソ-ラクチドのホモポリマー、或いは少なくとも80%のメソ-ラクチドと20%までのラクチドとのコポリマー、好ましくは少なくとも88%のメソ-ラクチドと12%までの他のラクチド、又は少なくとも90%のメソ-ラクチドと10%までの他のラクチドとのコポリマーである。コポリマーである場合、次いでそのコポリマーはランダム及び/又はブロックコポリマーであり得る。他のラクチドは、L-ラクチド、D-ラクチド、若しくはrac-ラクチド、又はそのいずれか2つ以上の混合物を含む、いずれかの他のラクチドであり得る。
【0025】
PMLAの重量の少なくとも90%又は少なくとも95%が乳酸単位で構成される。乳酸単位の40~60%がL-乳酸単位であり、それに応じて乳酸単位の60~40%がD-乳酸単位である。
【0026】
PMLAはさらに、ラクチドと共重合性の他のモノマー、例えばアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等を含む)、環状ラクトン、又はカーボネートから形成される反復単位を含有し得る。これらの他のモノマーから誘導される反復単位は、ブロック及び/又はランダム配置で存在し得る。これらの他の反復単位は適切には、ポリラクチドの10重量%まで、好ましくは0~5重量%、特に約0~2重量%を構成し、また存在しなくてもよい。
【0027】
PMLAは、分子量制御を提供するために重合プロセス中に使用されることが多い、開始剤化合物の残留物も含有し得る。適切なかかる開始剤としては、例えば、水、アルコール、種々のタイプのポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、他のグリコールエーテル、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキシル末端ブタジエンポリマー等)、ポリカルボキシ含有化合物、及び少なくとも1つのカルボキシルと1つのヒドロキシル基を有する化合物(乳酸又は乳酸オリゴマーなど)が挙げられる。開始剤が、乳酸又は乳酸オリゴマーの残留物であり、PMLAに対していずれかの比率を構成し得る場合を除いては、開始剤残留物は、好ましくは、PMLAの重量に対して5%以下、特に2%以下を構成する。
【0028】
PMLAは、長鎖分枝(炭素原子を3個以上有する)を有し得る。長鎖分枝は、アクリレートポリマー又はコポリマー上に存在するエポキシド基と、ポリラクチド上のカルボキシル基を反応させることによってなど、様々な方法でポリラクチドに導入することができる。アクリレートポリマー又はコポリマーは、平均約2~約15の遊離エポキシド基/分子(例えば、約3~約10個又は約4~約8個の遊離エポキシド基/分子)を含有し、23℃で固体であることを特徴とし、且つ少なくとも1つのエポキシ官能性アクリレート又はメタクリレートモノマーの重合生成物であり、好ましくは少なくとも1つの更なるモノマーと共重合されることを特徴とする。アクリレートポリマー又はコポリマーは適切には、200~500又は200~400g/molなど、約150~約700の数平均分子量/エポキシド基を有する。アクリレートポリマー又はコポリマーは適切には、約1500~5000又は約1800~3000g/molなど、1000~6000の数平均分子量を有する。長鎖分枝を導入する他のアプローチが、米国特許第5,359,026号及び米国特許第7,015,302号、及び国際公開第06/002372A2号に記載されている。
【0029】
好ましい実施形態において、PMLAは、長鎖分枝を欠く。
【0030】
ポリスチレン標準に対してGPCによって測定されるPMLAの数平均分子量は、例えば5000~200,000g/molの範囲であり得る。数平均分子量約30,000~130,000g/molが好ましい。
【0031】
一部の実施形態において、PMLAは、30℃にて毛管粘度計でクロロホルム標準に対してクロロホルム中の1%(重量/体積)ポリラクチド樹脂を使用して測定される、相対粘度1.1~6、1.25~5、又は1.5~3.5を有することを特徴とする。
【0032】
PMLAはヘテロタクチック、又は一部シンジオタクチック及び一部ヘテロタクチックであり得る。PMLAにおけるL-乳酸単位及びD-乳酸単位のブロックの平均長さは、例えば少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.25、又は少なくとも1.3に等しく、例えば2まで、1.75まで、1.5まで又は1.4までであり得る。平均ブロック長さは、Coates et al.によりJ. American Chemical Society 2002, 124, 1316に記載のようにpmを決定する方法及び以下の関係式:
平均ブロック長さ=1+P/(1+(1-P))
を用いて、プロトンNMRによって決定することができる。
【0033】
一部の実施形態において、PMLAは、ガラス転移温度38~50℃を有する。
【0034】
PMLAは、非晶質PLAグレードであることを特徴とする。「非晶質グレード」とは、空気中で110℃にて1時間加熱された後に、PMLAが5J/g以下の微結晶を含有することを意味する。試料を予め少なくとも220℃に加熱して、微結晶を融解し、次いで急速に室温(23±3℃)に冷却することによってクエンチする。クエンチされた試料を次いで、110℃で1時間加熱し、再び室温に冷却してクエンチする。次いで、好都合なことに示差走査熱量測定(DSC)法を使用して、結晶化度を測定する。かかる結晶化度の量は、本明細書においてJ/gによって表され、つまり、試料中のポリラクチドの重量(グラム)で割られた、試料中のポリラクチド結晶の融解エンタルピー(ジュール)で表される。DSC測定を行う簡便な試験プロトコルは、STARe V.16ソフトウェアで実施されるMettler Toledo DSC3+カロリーメーター、又は同等な装置で、空気下にて20℃/分にて25℃から225℃まで、試料5~10ミリグラムを加熱することである。
【0035】
PMLAは、メソ-ラクチド自体を重合することによって、或いはランダム及び/又はブロック形式でメソ-ラクチドと他のラクチドを共重合することによって生成される。重合は、バッチ式、半連続又は連続で行われ得る。
【0036】
適切な重合温度は好ましくは、モノマー又はモノマー混合物の融解温度を超え、その温度未満で著しいポリマー劣化が生じる。温度範囲は、例えば60℃と低い、又は225℃と高い温度であり得る。
【0037】
分子量及び転化は、重合時間及び温度、遊離ラクチドとポリマーの間の平衡によって、並びに開始剤化合物の使用によって制御される。一般に、モル基準で開始剤化合物の量が増加すると、生成物ポリマーの分子量が減少する傾向がある。米国特許第6,277,951号に記載のように分子量制御剤を添加して、所望の分子量を得ることもできる。
【0038】
重合触媒の存在下で重合を行うことが好ましい。これらの触媒の例としては、種々のスズ化合物、例えばSnCl、SnBr、SnCl、SnBr、SnO、スズ(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)、ブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)、水和モノブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウラート、テトラフェニルスズ等;PbO、亜鉛アルコキシド、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムアルコキシドなどの化合物、三酢酸アンチモン及びアンチモン(2-エチルヘキサノエート)などの化合物、ビスマス(2-エチルヘキサノエート)などの化合物、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、McLainらによる米国特許第5,208,667号に記載のような特定のイットリウム及び希土類化合物、Macromol. Chem. Phys. 1996, 197, 2627-2637に記載のキラル(R)-(SalBinap)-AlOCH錯体、JACS 1999, 121, 11583-11584に記載の単一部位β-ジイミデート亜鉛アルコキシド触媒、Macromolecules 1995, 28, 3937-3939及びPolymer 1999, 40, 5455-5458に記載のリチウムt-ブトキシド凝集体;JACS 2002, 124, 1316-1326に記載のアルミニウム及びイットリウムベースの触媒複合体、Macromolecules 2016, 49, 909-919に記載の複核(dinuclear)インジウム触媒等が挙げられる。触媒は、特定の触媒にいくらか依存する触媒有効量で使用されるが、通常、モノマー3000~50,000モルにつき触媒1モルの範囲で使用される。
【0039】
触媒及び重合温度の選択はそれぞれ、PMLAの立体化学に影響し得る。一般に、より高い重合温度、特に120℃以上、特に150℃以上の選択は、PMLAにおける立体特異性を低くし、1を超え2未満の平均ブロック長さが生じることが判明している。同様に、スズベースの触媒もまた、立体特異性を低くする傾向がある。一部の実施形態において、PMLAは、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも150℃、225℃まで、より好ましくは190℃までの温度でスズ触媒を使用して重合される。
【0040】
得られたPMLA樹脂は、金属触媒残留物を含有し、それは好ましくは、不活性化剤とPMLA樹脂と接触させることによって不活性化される。
【0041】
重合条件下での滞留時間は、所望の分子量及び/又はモノマーの所望の転化率のポリマーが生成されるように選択される。
【0042】
PMLAは残留ラクチドを含有し得る。存在する場合、ラクチドは、PMLAの重量の20%まで、15%まで、10%まで、5%まで、又は2%までを構成し得る。
【0043】
ポリラクチド(b)
ポリラクチド(b)は、ポリスチレン標準に対してGPCによって測定される、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、例えば200,000g/molまでであり得る。PMLAと同様に、約30,000~130,000g/molの数平均分子量が好ましい。
【0044】
ポリラクチド(b)は一部の実施形態において、30℃にて毛管粘度計でクロロホルム標準に対してクロロホルム中の1%(重量/体積)ポリラクチド樹脂を使用して測定される、相対粘度1.1~6、例えば1.25~5、又は1.5~3.5を有することを特徴とする。
【0045】
乳酸単位は、ポリラクチド(b)の少なくとも90%重量又は少なくとも95重量%を構成する。PMLAと同様に、ポリラクチド(b)の残りの重量は、たとえあったとしても、開始剤化合物の残留物及び/又はラクチドと異なる1つ若しくは複数のモノマーを重合することによって生成される反復単位を含み得る。
【0046】
ポリラクチド(b)における乳酸単位は、≧65:35又は≦35:65の比でL-乳酸単位及びD-乳酸単位からなる。この比は、例えば75:25~100:0、80:20~100:0、85:15~100:0、86:14~100:0、25:75~0:100、20:80~0:100、15:85~0:100、又は14:86~0:100であり得る。L-乳酸単位及びD-乳酸単位はランダムに配置されることが好ましい。
【0047】
一部の実施形態において、ポリラクチド(b)は半結晶質グレードであり、L-乳酸単位:D-乳酸単位の比は92:8~100:0又は8:92~0:100である。
【0048】
他の実施形態において、ポリラクチド(b)は非晶質グレードであり、L-乳酸単位:D-乳酸単位の比は86:14~92:8又は8:92~14:86である。
【0049】
ポリラクチド(b)は一部の実施形態において、L-ラクチドのホモポリマー、又はメソ-ラクチド、D-ラクチド、及びrac-ラクチドのうちの1つ又は複数とL-ラクチドとのランダムコポリマーである。後者の場合には、種々のラクチドの比率は、65:35~99.9:0.1のL-乳酸単位:D-乳酸単位比が得られるように選択される。この比は、一部の実施形態において、75:25~99.9:0.1、80:20~99.9:0.1、86:14~99.9:0.1、92:8~99.9:0.1又は86:14~92:8である。
【0050】
ポリラクチド(b)は一部の実施形態において、D-ラクチドのホモポリマー、又はメソ-ラクチド、L-ラクチド、及びrac-ラクチドのうちの1つ又は複数とD-ラクチドとのランダムコポリマーである。後者の場合には、種々のラクチドの比率は、35:65~0.1:99.9のL-乳酸単位:D-乳酸単位比が得られるように選択される。この比は、一部の実施形態において、25:75~0.1:99.9、20:80~0.1:99.9、14:86~0.1:99.9、8:92~0.1:99.9又は15:85~8:92である。
【0051】
ポリラクチド(b)は好ましくは、L-乳酸単位:D-乳酸単位の比が65:35以上であるポリラクチドと、L-乳酸単位:D-乳酸単位の比が35:65以下であるもう1種類のポリラクチドの両方とも含まない。
【0052】
ポリラクチド(b)は一部の実施形態において、ガラス転移温度55~65℃及び結晶質融解温度(半結晶質であれば)95~195℃を有する。
【0053】
ポリラクチド(b)の他の特性、及びそれが製造される手法は、PMLAに関して上述のとおりである。
【0054】
ポリラクチド樹脂組成物
ポリラクチド樹脂組成物は、ポリラクチド樹脂の混合物を含む。ポリラクチド樹脂は、構成成分ポリラクチドの別々の粒子の物理的混合物であるよりも、融解物又は溶液ブレンドである。PMLAは、すべてのポリラクチドの全重量の50~95重量%を占める。一部の実施形態において、PMLAは、すべてのポリラクチドの全重量の少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%を占める。一部の実施形態においてPMLAは、すべてのポリラクチドの90%まで、85%まで、又は80%までを占める。
【0055】
ポリラクチド(b)は、すべてのポリラクチドの全重量の5~50重量%を占める。一部の実施形態において、ポリラクチド(b)は、すべてのポリラクチドの全重量の少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%を占める。一部の実施形態においてポリラクチド(b)は、すべてのポリラクチドの40%まで、35%まで、又は30%までを占める。
【0056】
他のポリラクチドが存在してもよいが、存在する場合、構成成分ポリラクチドの全重量の10%以下、5%以下、2%以下を占め、また存在しなくてもよい。
【0057】
ポリラクチド樹脂組成物の加水分解速度及び質量損失速度は、PMLA及びポリラクチド(b)の比で異なる。PMLAの比率が多いほど、加水分解及び質量損失の速度が速くなる傾向があり、逆の場合も同様である。したがって、この比は可変であり、それによって、組成物の加水分解及び質量損失速度を上方及び下方に調節することができる。PMLAの比率が大きいほど、残留物が少なくなる傾向もある。
【0058】
加水分解及び質量損失の速度はさらに、ポリラクチド樹脂組成物中に炭素原子6~30個、特に炭素原子8~22個を有する有機カルボン酸、及び/又は1種若しくは複数種のかかる酸の無水物を含有することによって促進することができる。有機カルボン酸は、1、2又はそれ以上の数のカルボキシル基を有し得る。中でも適切な有機酸としては、n-ヘキサン酸、n-オクタン酸、n-デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の直鎖アルカン酸;2-、3-、及び/又は4-メチル吉草酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ブチルオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-エチルオクタン酸、2-エチルデカン酸、及び2-エチル酪酸などの分岐状アルカン酸;2ヘキセン酸、ウンデシレン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸等の一価及び/又は多価不飽和アルカン酸;安息香酸、ヒドロ桂皮酸、4-イソプロピル安息香酸、及びイブプロフェンなどの芳香族置換酸;及びモノブトリン(monobutrin)などの他の脂肪族カルボン酸が挙げられる。さらに、1つ若しくは複数のハロゲン及び/又はヒドロキシル基で置換された上述のいずれかが適している。上述のいずれか1つ又は複数の相当する無水物も有用である。好ましい有機酸としては、炭素原子8~18個を有する直鎖状又は分岐状アルカン酸が挙げられる。ラウリン酸が特に好ましい。
【0059】
存在する場合、有機カルボン酸の量は、ポリラクチド樹脂組成物における有機カルボン酸+すべてのポリラクチドの合計重量の0.1~20%であり得る。加水分解及び質量損失の速度は、酸の量の増加に伴って増加する。したがって、酸の量は、他の変数を表し、それによって、加水分解及び質量損失の速度を上方及び下方に調節することができる。存在する場合、有機酸の好ましい量は、上記に基づいて少なくとも1%又は少なくとも2%、及び12%まで、10%まで、又は8%までである。
【0060】
ポリラクチド樹脂組成物は、それが使用されるであろう特定の最終用途に有用であるように他の材料を含有し得る。これらは、例えば、ポリラクチド以外のポリマー、つまり非ポリラクチドポリマーを含み得る。かかるポリマーは、それ自体が加水分解性及び/又は生分解性であり得る。かかる場合には、かかるポリマーは少なくとも一部機能して、加水分解挙動又はポリラクチド組成物をさらに修飾し得る。かかる加水分解性ポリマーの一例はポリグリコール酸、つまりグリコリド若しくはグリコール酸のポリマー又はコポリマーであり、存在する場合には、ポリラクチド樹脂組成物の加水分解及び質量損失速度を促進し得る。
【0061】
存在する場合には、非ポリラクチドポリマーは、非ポリラクチドポリマーとポリラクチドの合計量の例えば0.1~50%、1~25%又は1~10%を構成し得る。
【0062】
ポリラクチド樹脂組成物中に存在し得る他の任意の材料としては、微粉固体などの結晶化核剤;着色剤;耐衝撃性改良剤;内部及び/又は外部潤滑剤、ブロッキング防止剤、及び押出し成形加工助剤等が挙げられる。本発明のポリラクチド樹脂組成物を、強化充填剤又は繊維の様々なタイプと配合して、強化複合材料を生成することができる。
【0063】
ポリラクチド樹脂組成物を発泡して、ポリラクチドのかさ密度未満にその密度が低減され得る。これは、例えばポリラクチドの溶融物が減圧下にて発泡剤と合わせられる、種々の押出し成形プロセスによって行われ得る。次いで、溶融物が低い圧力の領域に移行され、その結果、ポリラクチドが冷却されるにしたがって揮発し、それによって組成物が発泡される。種々の泡立ち及びビーズ形成法など他の発泡方法を使用することができる。一過性(fugitive)材料化合物と固形ブレンドポリラクチド樹脂組成物を製造して、続いて一過性材料を除去し、組成物においてボイドを形成することができる。低減された密度は、少なくとも0.1g/cm、少なくとも0.25g/cm、又は少なくとも0.5g/cm及び、例えば1.2g/cmまで、1.1g/cmまで、1g/cmまで又は0.9g/cmまでであり得る。密度の低減によって、場合によっては望ましい浮力特性が付与される。
【0064】
ポリラクチド樹脂組成物は、その結晶性がほとんどない、又は低いことが必要とされる、従来のポリラクチド組成物と同じ様式で有用である。それは、ペレットへの押出し成形、押出し発泡、吹込み成形、射出延伸ブロー成形、熱成形、射出成形、溶融紡糸、貼合せなどのプロセスによって溶融加工することができる。それは、コーティング用途のための種々の分散液へと形成することができる。使用中又は使用後(廃棄処分時など)のいずれかで、ポリラクチド樹脂組成物が加水分解することが望まれる用途が、特に興味の対象となる用途である。特に、37~66℃など、低~中程度の高温にて、本発明のポリラクチド樹脂組成物によって示される、加水分解及び質量損失の速い速度は、本発明の重要な利点である。
【0065】
ポリラクチド樹脂組成物は、液状の水(若しくは他の水溶液)及び/又は蒸気にさらされることによって加水分解し得る。加水分解中、ポリラクチド樹脂組成物は、例えば液状の水(若しくは他の水溶液)に浸される、又は接触され得て、或いは蒸気と接触され得る。その温度は加水分解及び質量損失速度に影響を及ぼし、温度が高いほど、速度が高くなる。過圧を用いて水が沸騰するのを防ぐ場合、又は加水分解が蒸気の圧力によって影響を受ける場合には、温度は、例えば0℃を超え100℃まで、又はそれ以上でさえあり得る。一部の実施形態において、コンポスト化用途など、その温度は例えば、0~50℃であり得る。他の実施形態において、加水分解は、温度40~66℃、48~66℃、又は48~60℃にて液状の水の存在下にて行われる。これらの後者の温度は、本発明のポリラクチド樹脂組成物がダイバータとして有用である、特定の石油及び/又はガス生産井戸に特有である。
【0066】
小さな粒子の表面及び小さな粒子内への水の質量輸送が相対的に速いことから、ポリラクチド組成物は、ペレット、ビーズ、粉末及び繊維などの小さな粒子状で、又は薄い物品として提供され得る。かかる粒子は、例えば、1cm以下、0.1cm以下又は1mm以下の断面積を有し得る。薄い物品は、2.54mm以下又は1mm以下の厚さ(最小寸法)を有し得る。コンポスト化用途については、大きな物品が磨砕、細断、粉末化されて、或いは粉砕されて、厚さ又は断面積が低減されて、より速い加水分解及び質量損失が促進され得る。
【0067】
粒子状である場合、本発明のポリラクチド樹脂組成物は、一定の温度条件下にて加水分解された場合、加水分解生成物がまだ、加水分解媒体中での溶解性に必要とされる低分子量<1000g/molに到達していないため、加水分解は起こるが、質量損失がほとんど、又は全く見られない誘導期を示す傾向がある。誘導時間の観察は、水の拡散速度が、エステル加水分解の速度を超える、PLAのバルク加水分解メカニズムと一致する。
【0068】
この誘導期には、ポリラクチド樹脂の温度及び組成などの因子(PMLAとポリラクチド(b)の比及び、もしあれば有機酸の量を含む)に応じて、数時間又は数日必要とされ得る。粒子は通常、この誘導期の間その粒状性質を維持する。
【0069】
低分子量加水分解生成物が形成し、溶解するその時点まで加水分解が進むため、この誘導期は、比較的速い質量損失の期間を伴う。この期間中に質量が損失するため、粒子のサイズが低減する。場合によっては、特に質量損失期間の初期段階中に、粒子はわずかに凝集し得る。この期間中の質量損失は、ポリラクチド樹脂組成物の出発総質量の例えば、50~95%を占め得る。特定の実施形態において、出発質量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%がこの段階で失われる。
【0070】
ポリラクチド樹脂組成物中の残留ポリラクチド樹脂のD-乳酸含有量は、質量が損失するために変化することが判明している。一般に、優勢ではない乳酸単位鏡像異性体の割合は、加水分解が進み、質量が損失されるにしたがって、低減する傾向がある。例えば、ポリラクチド(b)が主にL-乳酸単位を含有する場合、加水分解の開始時でのポリラクチド樹脂組成物は、D-乳酸単位に対して少し優勢にL-乳酸単位も含有するだろう。質量が損失されるため、残りの材料におけるL-乳酸単位は、ますます優勢となる傾向がある。本発明はいずれの理論にも限定されないが、これはポリラクチド(b)と比較して、PMLAのより速い加水分解及び質量損失に少なくとも一部起因し得ると考えられる。
【0071】
かなり驚くべきことに、ポリラクチド樹脂組成物の残りの粒子は、質量が損失されるにしたがって、かなりの量の結晶化度を生じる傾向があることも判明している。珍しいことに、生じる結晶化度は、ポリラクチド(b)単独で結晶化することによって得られる結晶化度の程度を超え得る。一部の実施形態において、ポリラクチド(b)は、それ自体で結晶化することはできない、又はほとんど結晶化することはできず、質量損失段階中の本発明のポリラクチド組成物は、微結晶の20J/g以上又は30J/g以上など、非常に著しい量の結晶化度を形成することが判明している。いずれかの理論に本発明を制限することなく、残りのポリラクチド樹脂の分子量が低減されるために、結晶化度が形成し、加水分解前にポリラクチド(b)が緩やかに結晶化するか、全く結晶化しない場合でさえ、容易に結晶化することができるオリゴマーが形成されると考えられる。
【0072】
粒子がより結晶質になるにしたがって、初期に見られる少量の凝集が失われる傾向があり、粒子は、再び易流動性及び非凝集となる傾向がある。
【0073】
その初期質量の50~95%が失われた後に、ポリラクチド樹脂組成物の質量は、プラトーに達する傾向があり、更なる質量損失が非常にゆっくりと起こる。この質量損失プラトーは、残りの組成物の高度な結晶質の性質に起因し得て、加水分解は非常にゆっくりと進行する。この時点でのポリラクチド樹脂組成物の残りの質量の結晶化度は、少なくとも40J/g、少なくとも45J/g、又は50J/g又はそれ以上であり得る。本発明の利点は、出発ポリラクチド樹脂組成物の質量の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%が失われるまで、このプラトーに達しない場合が多いことである。それに対応して、残留物は、ポリラクチド樹脂組成物の出発重量の25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下でさえある場合が多い。時間及び十分な濃度の水を付与すると、これらの微結晶はさらに加水分解し、最終的に加水分解媒体に溶解し得る。
【0074】
以下の実施例セクションにより完全に述べられる、2種類のポリラクチド樹脂組成物の質量損失挙動を図1及び2に図示する。
【0075】
本発明のポリラクチド樹脂組成物は通常、乾燥ブロッキング、つまり以下の実施例に記載の試験法を用いて決定される、約44℃以上の温度に、液状の水の非存在下にて空気中で加熱した場合のブロッキングに対して耐性がある。乾燥ブロッキングする傾向は、エチレンビス(ステアルアミド)、種々の脂肪酸エステル、塩及びアミド、種々のシリコーン潤滑剤等の潤滑剤をポリラクチド樹脂組成物粒子の表面に適用することによって低減することができる。かかる潤滑剤の簡便な量は、例えば、粒子100万重量部(ppm)当たりに潤滑剤100~10,000重量部である。かかる潤滑剤を適用すると、粒子が乾燥ブロッキングに耐える温度を高めることができる。
【0076】
本発明のポリラクチド樹脂組成物は、井戸処理作業においてダイバータとして特に有用である。かかる作業において、粒状ポリラクチド樹脂組成物が、処理流体と共に井戸内に導入される。粒子は、様々な寸法を有し得る。処理流体は通常、水性である。処理流体は一般に、フォーメーション内にそれが流れる際に、最小抵抗の経路をとる。ポリラクチド樹脂組成物は、処置流体と共に運ばれ、破損を埋め、そのため、そこにダイバータが沈着されている、そのセクションを通る処理流体の更なる流れに物理的バリアが提供される。したがって、処理流体の更なる流れが、フォーメーションの到達性が低い領域内へと押しやられる。分解性ダイバータを使用する主な理由は、所定のフォーメーションの刺激(stimulated)リザーバー体積を増加することである。
【0077】
ダイバータは、ダイバータによって占められるフォーメーションのそれらのセクションを通って、炭化水素の回収をブロックしないように、一時的に所定の位置にとどまるべきである。したがって、ダイバータはフォーメーションに据え付けられると同時に、水、好ましくは高温にさらされることによって加水分解条件にかけられる。高温は、例えば40~66℃、48~66℃、又は48~60℃であり得る。ポリラクチド樹脂組成物の出発質量の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%が加水分解のために失われるまで、加水分解条件が維持され得る。これには、一部の実施形態において、特定のポリラクチド樹脂組成及び加水分解条件などの因子(例えば、PMLAとポリラクチド(b)の比、ポリラクチド(b)の選択、加水分解促進剤の存在及び量など)に応じて、例えば少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、又は少なくとも14日間必要とされ得る、
【0078】
一部の実施形態において、本発明の粒状ポリラクチド樹脂組成物を含むダイバータは、密閉バイアル内で温度54.4℃(130°F)にて脱イオン水に粒子を浸すことによって加水分解した場合に、20日以下、15日以下、12日以下、又は10日以下のt1/2(質量損失50%に達する時間)を示す。この試験プロトコルにしたがって、t1/2は好ましくは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、又は少なくとも8日である。
【0079】
以下の実施例は本発明を例証するが、それに限定することを決して意図するものではない。別段の指定がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量による。
【0080】
PMLA1は、スズ触媒の存在下にて160~180℃でメソ-ラクチド約90%とL-ラクチド10%の混合物を重合することによって製造される直鎖状コポリマーである。乳酸単位は、PMLA1の全重量の98%を超える量を占める。乳酸単位の45%はD-乳酸単位であり、55%はL-乳酸単位である。PMLA1は、ポリスチレン標準に対してGPCによって測定される、数平均分子量68,000g/mol及び重量平均分子量131,000g/molを有する。PMLA1は、L-乳酸単位及びD-乳酸単位のブロックの平均長さ1.1~1.75を有する。
【0081】
ポリスチレン標準に対してGPCによって測定される、数平均分子量が31,000g/molであり、重量平均分子量が75,000g/molであることを除いては、PMLA2は、PMLA1と類似の直鎖状コポリマーである。PMLA1は、L-乳酸単位及びD-乳酸単位のブロックの平均長さ1.1~1.75を有する。
【0082】
ポリラクチド(b-1)は、L-ラクチド約76%、D-ラクチド約1.5%、及びメソ-ラクチド約22.5%の直鎖状ランダムコポリマーである。乳酸単位は、ポリラクチド(b-1)の全重量の98%を超える量を占める。乳酸単位の約12%はD-乳酸単位であり、約88%はL-乳酸単位である。ポリラクチド(b-1)は、相対粘度2.5を有する。相対粘度は、30℃にて毛管粘度計を使用して測定される、クロロホルム標準に対するクロロホルム中のポリラクチド樹脂の1%(重量/体積)溶液の粘度の比である。ポリラクチド(b-1)は、空気中で110℃にて数時間加熱した場合に、微結晶をほとんど、又は全く形成しない非晶質グレードである。
【0083】
ポリラクチド(b-2)は、L-ラクチド、メソ-ラクチド及び少量のD-ラクチドの直鎖状ランダムコポリマーである。乳酸単位は、ポリラクチド(b-2)の全重量の98%を超える量を占める。乳酸単位の約1.4%はD-乳酸単位であり、約98.6%はL-乳酸単位である。ポリラクチド(b-2)は、相対粘度2.5を有する。ポリラクチド(b-2)は、空気中で110℃にて数時間加熱した場合に、容易に結晶化する半結晶質グレードである。
【0084】
質量損失実験を以下のプロトコルにしたがって実施する。試料2g及び脱イオン水20mLを複数のバイアルそれぞれに入れる。バイアルを密閉する。次いで、バイアルを制御温度環境内に置く。時間の経過にしたがって、一定間隔をあけてバイアルを1つずつ取り出す。取り出したバイアルを反転させ、残存する固形物を確認することによって、ブロッキング/凝集を評価する。固形物が自由に流動しない場合には、次いでバイアルの壁面を軽く叩き、凝集塊が分解するように試みる。濾過によって、残存する固形物から液相を分離し、次いで固形物を少なくとも一晩、40℃の真空下にて乾燥させ、次いで計量して質量損失を決定する。出発質量の50%が失われる時点をt1/2と報告する。残存する質量が、更なる質量損失がほとんどない、又は全くないプラトーに達するまで試験を続ける。残留物の質量(プラトーに達した際の残りの質量)を測定する。
【実施例
【0085】
実施例1~2及び比較試料A~C
二軸スクリュー押出機において表1に示す成分を溶融ブレンドし、得られたブレンドのストランドを押し出すことによって、ポリラクチド(b-1)及びPMLA1とラウリン酸とのブレンドを調製し、水中で2.5mm~4.0mmペレットへとペレット化する。それぞれの場合に、ポリラクチド(b-1):PMLA1の比は30/70(重量比)である。
【0086】
【表1】
【0087】
同様に、ポリラクチド(b-1)とラウリン酸の溶融ブレンドを98:2及び92:8の比で調製し、ペレットへと形成する。0%、2%、及び8%ラウリン酸とポリラクチド(b-1)とのブレンドをそれぞれ、比較試料A、B、及びCと指定する。
【0088】
質量損失の評価を実施例1において温度50℃(122°F)にて実施する。質量損失の測定に加えて、様々な時点後に採取された残りの固形物を、示差走査熱量測定による結晶化度及び結晶質融解温度、GC/FIDによるラウリン酸含有量、及び乳酸誘導体の鏡像異性体を分離することができるGC/FID法を用いたD-乳酸鏡像異性体の%について評価した。結果を図1に図示する。
【0089】
図1に示すように、出発試料は、D-乳酸鏡像異性体(すべての乳酸単位に対して)を34.7%含有する(ポイントA)。それは、結晶化度を含有せず、したがって測定可能な融解温度を持たない。
【0090】
6日前に重量損失は見られず、結晶化度又は鏡像異性体比の有意な変化もその時点で検出されない(ポイントB)。質量損失は約7日の時点で開始すると見られる。比較的急速な質量損失の期間が後に続き、その期間中に、出発質量の約80%が約28日間の期間にわたって失われ;t1/2は15~16日である。ポイントC、D、及びEで示されるように、D-乳酸鏡像異性体の比率はこの時間にわたって着実に減少し、24日後にわずか9.2%に落ちる(ポイントD)。その時点で、残りの固形物は高度な結晶質となっており、融解温度112℃を示す。ラウリン酸濃度も、この期間中に増加する。
【0091】
これらの結果から、PMLAは、比較的急速な質量損失のこの期間中に優先的に加水分解し、試料から失われることが示唆される。特にポイントD及びEの間での結晶化度の大きな増加からも、ポリラクチド(b-1)も、たとえ室温でもゆっくりと加水分解していることが示唆される。ポイントCと同様に早期に生じる結晶化度は、ポリラクチド(b-1)自体で生じ得るよりも著しく高いことが留意される。ポリラクチド(b-1)が加水分解するにしたがって、それは、L-乳酸鏡像異性体が非常に豊富なオリゴマー、及びL-鏡像異性体とD-鏡像異性体の両方のかなりの比率を有する他のオリゴマーを形成すると考えられる。形成されたオリゴマーは、容易に結晶化すると考えられ、加水分解が進行するにしたがって試料の多量の結晶化度を生じる。鏡像異性的純粋性が低いオリゴマーは、更なる加水分解を受ける可能性が高く、水相に溶解し、それによって質量損失をもたらすとも考えられる。
【0092】
更なる質量損失は28日後には緩慢である。ポイントF及びGによって示されるように、質量損失は、次の28日間にわたって80%から、約83%へとわずかに増加する。残留物中のD-乳酸鏡像異性体の比率は、下がり続け、結晶化度及びラウリン酸含有量はほぼ一定のままである。したがって、実施例1の残留物はおよそ20%である。
【0093】
実施例2及び比較試料A、B、及びCを同じ手法で50℃にて質量損失について評価する。T1/2及び残留物(指定時間での)を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2の結果から、比較試料A~Cと比較して、本発明の実施例の加水分解速度が大幅に増加するだけでなく、残留物も大幅に減少することが実証されている。
【0096】
質量損失は、実施例2及び比較試料A、B、及びCについて54.4℃で決定し、実施例2及び比較試料B及びCについては60℃で決定される。その結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
同様な結果が、より高い加水分解温度で見られる。本発明のポリラクチド樹脂組成物は、かなり急速に加水分解し、残される残留物もかなり少なくなる。
【0099】
実施例3~6
表4に示す成分から、上述の実施例に記載の手法で、PMLA-1、ポリラクチド(b-1)及びラウリン酸の溶融ブレンドを製造する。質量損失は54.4℃にて評価され;t1/2及び残留物を表4に報告する。
【0100】
【表4】
【0101】
実施例3~6はそれぞれ、速い速度の質量損失及び少ない残留物を示す。
【0102】
実施例7及び8
表5に示す成分から、上述の実施例に記載の手法で、PMLA-2、ポリラクチド(b-1)、及びラウリン酸の溶融ブレンドを製造する。質量損失は50℃にて評価され;t1/2及び残留物を表5に報告する。
【0103】
【表5】
【0104】
実施例9~13
上述の方法を用いて、表6に示す成分を溶融ブレンドすることによって、ポリラクチド樹脂組成物を製造する。加水分解温度54.4℃にて上述の手順を用いて、これらの実施例のそれぞれについて、質量損失を決定する;それぞれの場合におけるt1/2は表6に報告されるとおりである。
【0105】
【表6】
【0106】
ポリラクチド(b-2)が、ゆっくりと加水分解すると考えられる半結晶質グレードであるにも関わらず、非常に速い速度の質量損失が再び見られる。
【0107】
実施例13については、実施例1に関して記載のように、種々の時点で採取された残存固形物を結晶化度及び結晶質融解温度について評価する。その結果を図2に図示する。
【0108】
図2に示すように、加水分解から3日後の試料は、D-乳酸鏡像異性体を約33%(すべての乳酸単位に対して)含有する(ポイントA)。重量減少は見られない。その試料は、半結晶質ポリラクチドグレード(ポリラクチド(b-2))が存在するために、結晶化度24.7J/gを含有する。融解温度は147℃である。実施例1とは異なり、この試料は、加水分解プロセスにおいて容易に結晶化度を生じることが分かる。
【0109】
質量損失が、約4日目に開始することが確認される。比較的急速な質量損失がそれに続き、その期間中に出発質量の約70%が約22~24日間にわたって失われ、t1/2は約11日である。ポイントB、C、D、及びEで示されるように、D-乳酸鏡像異性体の比率はこの時間にわたって着実に減少し、22日後にわずか1.5%に下がる(ポイントE)。結晶化度は、22日後に58J/gに増加する(ポイントE)。
【0110】
22日後の更なる質量損失は緩慢である。ポイントF及びGによって示されるように、質量損失は、その後の48日間にわたって70%から約75~78%へとわずかに増加する。ポイントF及びGによって示されるように、残留物中のD-乳酸鏡像異性体の比率は、下がり続け、結晶化度はほぼ一定のままである。したがって、実施例2の残留物はおよそ22~25%である。
【0111】
質量損失実験の経過中に、ブロッキング挙動に関して、実施例11~13を観察する。実施例11は、質量損失実験の経過全体を通して易流動性の粒状のままである。実施例12及び13は軽い凝集塊を形成し、それはバイアルの壁面を軽く叩くか、又は軽く攪拌するとばらばらになる。
【0112】
実施例12及び13を乾燥ブロッキングについて評価する。各場合における少量のペレットを50mLポリプロピレン遠心管に入れる。各管内のペレットの上部に金属シリンダーを加えて、頭部圧力約1psig(6.89kPa)をシミュレートする。上記で定義される管アセンブリをオーブン内で24時間、様々な温度で加熱し、次いで金属シリンダーを取り除き、ペレットが室温に冷却された後に、ペレットの流動挙動について調べる。ペレットがブロッキングすることが確認されない場合には、管アセンブリをさらに24時間オーブンに戻し、ペレットのブロッキングが確認されるまで、2℃刻みで温度を上昇させる。
【0113】
このように35℃で試験した場合に、実施例12は易流動性粒状のままである。40℃で試験した場合には、バイアルの外側を叩くと容易にばらばらになる軽い凝集塊が形成される。エチレンビス(ステアルアミド)(EBS)1000ppmが粒子表面に適用された場合、粒子は44℃まで易流動性のままであり、50℃までの温度で容易に分解される軽く凝集塊のみが形成される。
【0114】
EBSで未処理の実施例13は、実施例12と同様に実施される。EBS1000ppmが粒子表面に適用された場合、粒子は44℃まで易流動性のままであり、46℃で容易に分解する軽い凝集塊のみ形成する。
図1
図2
【国際調査報告】