IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーバイク システムズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図1
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図2
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図3
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図4
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図5
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図6
  • 特表-電動支援ペダル自転車 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】電動支援ペダル自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/65 20100101AFI20220804BHJP
   B62M 6/45 20100101ALI20220804BHJP
【FI】
B62M6/65
B62M6/45
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571841
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 GB2020051353
(87)【国際公開番号】W WO2020245591
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】1908042.3
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527152
【氏名又は名称】イーバイク システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴング,リナン
(57)【要約】
電動アシスト自転車10の形態のための自転車の駆動システムは、自転車のペダル(40)から駆動を受け取り、軸1を中心に回転する入力2を有する。出力100が、軸1を中心に回転して、自転車の車輪(30)を駆動する。電気機械5、6が、出力100にモータ駆動を提供する。駆動トレインが、電気機械5、6およびペダル(40)から駆動を受け取り、駆動を出力100に伝達する。駆動トレインは、太陽歯車11、21、遊星キャリヤ13、23、複数の遊星歯車12、22、および環状歯車14、24を各々が備える、第1および第2のエピサイクリック歯車セットEP-1、EP-2を備える。両方の環状歯車14、24は、出力100に接続され、それとともに回転する。両方の太陽歯車11、21は、電気機械5、6によって駆動される。第1のエピサイクリック歯車セットEP-1は、その遊星キャリヤ13が固定位置にある状態で、その太陽11からその環14に駆動を伝達する。第2のエピサイクリック歯車セットEP-2は、ペダル(40)からその環24にその遊星キャリヤ23を介して駆動を伝達する。任意選択的に、サイクリストがペダリングしているときとサイクリストがペダリングしていないときとの両方で、電動支援が提供され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動支援ペダル自転車のための駆動システムであって、
使用中、前記自転車のペダルから駆動を受け取り、軸を中心に回転する入力と、
使用中、前記軸を中心に回転して、前記自転車の従動輪に駆動を提供する出力と
使用中、前記出力にモータ駆動を提供する電気機械と、
使用中、前記電気機械および前記ペダルから駆動を受け取り、駆動を前記出力に伝達する駆動トレインと、を備え、
前記駆動トレインが、第1のエピサイクリック歯車セットと第2のエピサイクリック歯車セットとを備え、
前記エピサイクリック歯車セットの各々が、太陽歯車、遊星キャリヤ、複数の遊星歯車、および環状歯車を備え、前記遊星歯車が、前記遊星キャリヤに取り付けられ、前記太陽歯車および前記環状歯車の両方と咬合しており、前記環状歯車が、前記出力に接続されて、使用中、前記出力とともに回転し、
前記太陽歯車の両方が、前記電気機械によって駆動されるように接続されており、
前記第1のエピサイクリック歯車セットが、使用中、その遊星キャリヤが固定位置にある状態で、その太陽からその環へ駆動を伝達し、
前記第2のエピサイクリック歯車セットが、使用中、ペダルからその環へ、その遊星キャリヤを介して、駆動を伝達する、駆動システム。
【請求項2】
前記第2のエピサイクリック歯車セットの前記遊星キャリヤと環との間に一方向クラッチをさらに備え、前記遊星キャリヤが、前記第2のエピサイクリック歯車セットの前記環よりも速く回転するのを防止する、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記自転車の前記ペダルと従動輪との間で動作するフリーホイール機構をさらに備える、請求項1または2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記電気機械が、発電機またはモータとして選択的に動作するように構成され、前記システムが、前記電気機械を、第1の期間には発電機として、次いで第2の期間にはモータとして交互に動作させるコントローラをさらに備え、前記コントローラが、発電機出力の関数として内側ハブに加えられたトルクの指標を取得し、次いで、示された前記トルクの関数として、前記モータに電力を印加する、先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記軸が、前記ペダルの回転軸である、前記自転車の中間位置に位置する、先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項6】
前記軸が、従動輪がそれを中心に回転する輪軸の軸である、前記自転車の前記従動輪のハブに位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記従動輪が、前記自転車の後輪である、請求項6に記載の駆動システム。
【請求項8】
前記第1のエピサイクリック歯車セットの前記太陽歯車と前記第2のエピサイクリック歯車セットの前記太陽歯車とが、共通太陽歯車として設けられている、先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項9】
前記第1のエピサイクリック歯車セットの前記太陽歯車と前記第2のエピサイクリック歯車セットの前記太陽歯車とが、別個の歯車であり、それらのうちの一方が、前記自転車を後方に押すのを容易にするために、一方向ベアリングを介して前記モータ駆動を受け取るように接続されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項10】
前記第1および第2のエピサイクリック歯車セットが、異なる変速比を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項11】
前記第1および第2のエピサイクリック歯車セットが、前記電気機械の反対側に配置されている、先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項12】
前記第1および第2のエピサイクリック歯車セットが、前記電気機械の同じ側に配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に記載の駆動システムを有する電動支援ペダル自転車。
【請求項14】
サイクリストがペダリングしているときにのみ電動支援が提供される電動アシスト自転車である、請求項13に記載の電動支援ペダル自転車。
【請求項15】
前記サイクリストがペダリングしているときと、前記サイクリストがペダリングしていないときとの両方で、電動支援が利用可能である、請求項13に記載の電動支援ペダル自転車。
【請求項16】
サイクリストが所望の量の電動支援をスロットル制御によって適用または重畳することができるスロットル制御を有する、請求項15に記載の電動支援ペダル自転車。
【請求項17】
モータ駆動を前記自転車の従動輪に、電気機械によって、および第1のエピサイクリック歯車セットを介して、提供するステップと、ペダル駆動を前記自転車の前記従動輪に第2のエピサイクリック歯車セットを介して提供するステップとを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の電動支援ペダル自転車を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動支援ペダル自転車に関する。
【0002】
様々な形態のペダル自転車が存在する。1つの従来の形態のペダル自転車は、サイクリストがペダルに力を加えることによってのみ駆動されるものであり、そのような自転車は「プッシュバイク」と称されることもある。別の、より最近の形態のペダル自転車は、現在一般に「eバイク」として知られている電動支援ペダル自転車であり、この自転車では、乗り手の労力を支援また置き換えるために、電動力が使用される。従来のペダル自転車およびeバイクの両方が、2つ、3つ、または4つ、場合によってはそれ以上の車輪を有し得る。本文書では、「ペダル自転車」という用語は、従来のペダル自転車とeバイクとの両方を含んで使用される。
【0003】
前述したように、eバイクでは、乗り手の労力を支援するため、または場合によっては置き換えるために、電動力が使用される。したがって、eバイクは、バッテリなどの電気エネルギーを貯蔵するための手段および、ペダル入力と組み合わせて、またはペダル入力を置き換えるかのいずれかで推進するように構成された電気モータを含む。バッテリは、主電源からのコンセントなどの電気エネルギーの電源にプラグを差し込むことによって、場合によっては回生ブレーキによって自転車の動きからエネルギーを回収することによっても、他にも、直列ハイブリッド構成における発電によって、再充電することができる回生ブレーキの原理は、当業者にはよく知られている。
【0004】
その結果、サイクリストがeバイクをペダリングするのに通常必要とされる労力全体は、従来の自転車よりも少ないか、または存在しない。eバイクは、2つのグループうちの一方に判別することができる。
【0005】
第1のグループは、サイクリストがペダリングしているか否かに関係なく、自転車は、いつでもオンデマンドで電動支援を提供することができるものである。このグループの自転車は、一般的に電動モペットと同等であると考えることができる。ペダル入力は、めったに使用されないか、またはバッテリが放電されたときの「リンプホーム」機能としてのみ使用され得る。第2のグループの自転車は、サイクリストがペダリングしているときにのみ電動支援を提供する。これらは「電動アシスト自転車」と称される。
【0006】
現在、英国を含むすべての欧州連合諸国、および他の多くの国で、電動アシスト自転車は事実上、従来の二輪車として法的に分類されており、したがって、運転免許証または保険なしで乗ることができ、電動支援を提供することは、25kphの速度で止まる(但し、速度制限が45kphの別のカテゴリの「スピード電動アシスト自転車」は、免許証および保険の必要要件を有する)。したがって、電動アシスト自転車を所有および操作することへの障壁はほとんどない。
【0007】
近年、eバイクで使用されている、電気機械駆動構成ならびに、関連するエネルギー貯蔵および回収デバイスに、技術的な進歩がある。これらの進歩により、より効率的に、したがってずっと容易に、サイクリストが操作することができるeバイクがもたらされた。
【0008】
上記のすべての理由により、eバイクは、世界中でますます人気が高まっている。
【0009】
背景として、読者は、eバイクに関する多くの情報が提供されているPCT刊行物WO2010/092345、W02017/021715、およびW02018/020259を参照されたい。電動アシスト自転車における無段変速機(CVT)の使用について、特に言及されている。
【0010】
電動アシスト自転車におけるCVTの使用は、最近のものであり、非常に使いやすいという利点が特徴である。それにもかかわらず、電動アシスト自転車における直接駆動システムの早期の採用を考えると、CVTの乗り心地は、標準となっている直接駆動と同様に動作し、感じられるように適合させる必要がある。これには、CVTの機械的構成を改変して、発進時と、高トルク要件状況下とで、追加ブースト機能を提供することが含まれる。すると、その追加電動支援が、どのようにして、制御されたスムーズな方法で切り替えられるかについて疑問が生じる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、乗り手にとって可能な限り自然に感じる乗り心地をもたらすために、電動力ブーストが予測可能かつ反復可能な方法で提供され得る、電動アシスト自転車およびそれらのための駆動システムを提供することを目的とする。本発明の実施形態は、CVT変速機における3分岐動力組み合わせエピサイクリック変速機(2つの入力および1つの出力)の使用において特に効果的であり得る。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、サイクリストがペダリングしているときにのみ電動支援が提供される電動アシスト自転車に関するが、電動支援は、サイクリストがペダリングしていないときにも任意選択的に提供され得る。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、電動支援ペダル自転車用のための駆動システムであって、
使用中、自転車のペダルから駆動を受け取り、軸を中心に回転する入力と、
使用中、該軸を中心に回転して、自転車の従動輪に駆動を提供する出力と、
使用中、該出力にモータ駆動を提供する電気機械と、
使用中、電気機械およびペダルから駆動を受け取り、駆動を該出力に伝達する駆動トレインと、を備え、
駆動トレインが、第1のエピサイクリック歯車セットと第2のエピサイクリック歯車セットとを備え、
エピサイクリック歯車セットの各々が、太陽歯車、遊星キャリヤ、複数の遊星歯車、および環状歯車を備え、遊星歯車が、遊星キャリヤに取り付けられ、太陽歯車および環状歯車の両方と咬合しており、環状歯車が、該出力に接続されて、使用中、該出力とともに回転し、
両方の太陽歯車が、電気機械によって駆動されるように接続されており、
第1のエピサイクリック歯車セットが、使用中、その遊星キャリヤが固定位置にある状態で、その太陽からその環に駆動を伝達し、
第2のエピサイクリック歯車セットが、使用中、駆動をペダルからその環に、その遊星キャリヤを介して伝達する、駆動システムが提供される。
【0014】
好ましくは、駆動システムが、第2のエピサイクリック歯車セットの遊星キャリヤと環との間に一方向クラッチをさらに備え、遊星キャリヤが第2のエピサイクリック歯車セットの環よりも速く回転するのを防止する。
【0015】
好ましくは、フリーホイール機構が、自転車のペダルと従動輪との間で動作する。
【0016】
好ましくは、電気機械が、発電機またはモータとして選択的に動作するように構成され、システムが、電気機械を、第1の期間には発電機として、次いで第2の期間にはモータとして交互に動作させるコントローラをさらに備え、コントローラが、発電機出力の関数として内側ハブに加えられたトルクの指標を取得し、次いで、示されたトルクの関数として、電力をモータに印加する。
【0017】
上記のような駆動システムは、自転車の中間位置に位置し得、その場合、該軸は、ペダルの回転軸である。
【0018】
上記のような駆動システムは、自転車の従動輪のハブに位置し得、その場合、該軸は、従動輪がそれを中心に回転する輪軸の軸である。
【0019】
該従動輪は、自転車の後輪であり得る。
【0020】
第1のエピサイクリック歯車セットの太陽歯車と第2のエピサイクリック歯車セットの太陽歯車とは、共通太陽歯車として提供され得る。
【0021】
第1のエピサイクリック歯車セットの太陽歯車と第2のエピサイクリック歯車セットの太陽歯車とは、別個の歯車であり得、それらのうちの一方は、自転車を後方に押すことを容易にするために、一方向ベアリングを介して該モータ駆動を受け取るように接続されている。
【0022】
好ましくは、第1および第2のエピサイクリック歯車セットは、異なる変速比を有する。
【0023】
第1および第2のエピサイクリック歯車セットは、電気機械の反対側に配置され得る。
【0024】
第1および第2のエピサイクリック歯車セットは、電気機械の同じ側に配置され得る。
【0025】
発明は、発明の前述の態様のうちのいずれかによる駆動システムを有する電動支援ペダル自転車に拡張される。
【0026】
そのような電動支援ペダル自転車は、好ましくは、サイクリストがペダリングしているときにのみ電動支援が提供される電動アシスト自転車である。
【0027】
任意選択的には、サイクリストがペダリングしているときとサイクリストがペダリングしていないときとの両方で、電動支援が利用可能である。
【0028】
サイクリストが所望の量の電動支援をスロットル制御によって適用または重畳することができるスロットル制御が提供され得る。
【0029】
さらなる態様では、発明は、そのような電動支援ペダル自転車を動作させる方法であって、該電気機械によって、および該第1のエピサイクリックギアセットを介して、自転車の従動輪にモータ駆動を提供するステップと、該第2のエピサイクリックギアセットを介して、自転車の従動輪にペダル駆動を提供するステップと、を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
発明をより良く理解するために、かつ発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、ここで、例として、添付の概略図を参照する。
【0031】
図1】電動アシスト自転車の側面図である。
図2】電動アシスト自転車の駆動システムの大部分が断面の図である。
図3】第1のエピサイクリック歯車セットの歯車の動きを示す。
図4】第2のエピサイクリック歯車セットの歯車の動きを示す。
図5】電動アシスト自転車の代替駆動システムの大部分が断面の図である。
図6】電動アシスト自転車のための別の代替駆動システムの大部分が断面の図である。
図7】連続する時間単位を参照して、図2の駆動システムが異なる条件下でどのように動作するかの例を示す表である。
【0032】
図において、同様の参照番号は、同様のまたは対応する部品を示す。
【0033】
以下に説明され、かつ/または図面に示されている様々な特徴は、好ましいが、必須ではないことを理解されたい。説明および/または図示された機能の組み合わせが、唯一の可能な組み合わせであるとは見なされない。反対に述べられていない限り、個々の特徴は、添付の特許請求の範囲内で、実用的である場合、省略、変更、または異なる組み合わせで組み合わせられ得る。
【0034】
図1は、二輪車10の形態の電動アシスト自転車を示す。二輪車10は、前部に操舵可能な車輪20を有し、後部に駆動可能な車輪30を有するという点で、従来の二輪車と同様である。二輪車10はまた、チェーン70によって後部スプロケット80に接続された前部歯付き歯車60を駆動するクランクアーム50上に、従来の構成のペダル40を有し、後部スプロケットは、後輪30と同軸に取り付けられている。しかしながら、二輪車10は、後部スプロケット80が、後輪を直接駆動するための後輪30のハブ100に固定的に取り付けられていないという点で、従来の二輪車とは異なる。代わりに、後部スプロケット80は、乗り手の動力入力を、ハブ100内に配置されている駆動システムへ提供する。
【0035】
制御ハウジング90およびバッテリハウジング92が、二輪車10のフレームに取り付けられている。
【0036】
駆動システムが、ハブ100内に取り付けられ、図2を参照して以下のように説明される。説明を容易にするために、ハブ100は、以下では外側ハブ100と称し、システムの出力を提供する。外側ハブ100は、典型的には、スポークによって、または任意の他の接続によって、後輪30の外側に接続されて、後輪30に駆動を提供する。
【0037】
上述したように、スプロケット80は、普通の二輪車の場合のように、外側ハブ100に直接接続されてはいない。代わりに、それは、二輪車のフレームに固定されている、固定輪軸1を中心とする回転のためにベアリングに取り付けられている内側ハブ2(断面図には示されていない)に接続されている。スプロケット80は、多くの普通の二輪車に見られるように、フリーホイール機構を組み込んでいる。外側ハブ100は、ほぼ円筒形であり、内側ハブ2の第1の端部に、一方向クラッチKを介して取り付けられている。外側ハブ100の反対側の端部は、輪軸1に、ベアリング101によって取り付けられている。外側ハブ100および内側ハブ2は、輪軸1の軸である共通軸を中心に回転可能である。
【0038】
モータとして動作可能な電気機械は、輪軸1に固定的に取り付けられた固定子5と、輪軸1を中心とする回転に好適なベアリングに取り付けられた分割シャフト7A、7B(断面図には示されていない)に取り付けられた回転子6とを備える。第1のエピサイクリック歯車セットEP-1が、シャフト7Aを外側ハブ100に接続する。第2のエピサイクリック歯車セットEP-2が、シャフト7Bを外側ハブ100に接続する。輪軸1は、中空であり、コントローラ91(およびバッテリ93)を駆動システムの構成要素に接続するためのケーブルを受容する。
【0039】
一変形態様では、一方向クラッチを回転子6と分割シャフト7Bとの間に取り付けて、矢印Aの方向から見た場合に時計回りに回転することを回転子6が強要されたならば、分割シャフト7Bを回転子6から切り離すことができるようにすることができる。
【0040】
第1のエピサイクリック歯車セットEP-1は、モータ5、6の一方の側のシャフト7Aに取り付けられている太陽歯車11と、遊星キャリヤ13に取り付けられている3つの遊星歯車12と、外側ハブ100に固定されている環またはリング歯車14とを備える。遊星キャリヤ13は、輪軸1に一方向クラッチVを介して接続されている。したがって、エピサイクリック歯車セットEP-1は、電気機械の回転子6と外側ハブ100との間に駆動を提供する。
【0041】
第2のエピサイクリック歯車セットEP-2は、モータ5、6の他方の側のシャフト7Bに取り付けられている太陽歯車21と、遊星キャリヤ23に取り付けられている3つの遊星歯車22と、外側ハブ100に固定されている環状歯車24とを備える。遊星キャリヤ23は、内側ハブ2に接続されて、それとともに回転する。したがって、エピサイクリック歯車セットEP-2は、電気機械の回転子6と外側ハブ100との間に駆動を提供する。それはまた、スプロケット80と外側ハブ100との間にも駆動を提供する。
【0042】
第2のエピサイクリック歯車セットEP-2は、ペダル40からの物理的労力を、スプロケット80および遊星キャリヤ23を介して、後輪30の動きに変換する。一方向クラッチKは、遊星キャリヤ23が環24および外側ハブ100よりも速く回転するのを防止する。
【0043】
図3を参照すると、回転子6からのモータ駆動は、太陽歯車11を(図2の左側から矢印Aの方向で見て)時計回りに駆動することにより、ブーストするために使用される。遊星キャリヤ13も時計回りに回転する傾向があるが、それはクラッチVを介して輪軸1に固定されており、遊星キャリヤ13が反時計回り方向にのみ回転することを可能にする。したがって、遊星歯車12は、反時計回りに回転し、乗車方向において、環状歯車14、したがって外側ハブ100の反時計回りの回転を引き起こす。
【0044】
図4を参照すると、外側ハブ100、したがって環24が静止しているとき、遊星キャリヤ23の回転が、遊星22の反時計回りの回転を引き起こし、したがって、乗車方向において、環24および外側ハブ100を反時計回りに回転させる傾向がある。同様に、太陽21が回転子シャフト7Bによって時計回りに駆動される場合、それは、遊星22、したがって環24および外側ハブ100の反時計回りの回転を引き起こす。
【0045】
ペダル40からの乗り手による動力入力は、スプロケット80を介して遊星キャリヤ23に伝達され、したがって、外側ハブ100に伝達されて、後輪20を駆動する。回転子6からの電動支援は、太陽21を介して供給される。それにより、EP-2は、無段変速機(CVT)をもたらす。そのようなCVTの例は、上記の本発明者らのWO刊行物に記載されている。
【0046】
出発すると、電動ブーストが、EP-1によって提供される。遊星キャリヤ13がロックされると、直接駆動が回転子6から太陽11へ提供され、それにより、歯車トレインを通して外側ハブ100へ提供される。電動ブーストは、他にも、例えば丘を登るなど、必要に応じて利用可能である。ペダリングが停止する、および/または二輪車10のブレーキがかけられると、これが検出され、コントローラ91は、モータ5、6への電力供給を停止する。
【0047】
図7は、図2の駆動システムが様々な条件下でどのように動作し得るかの例を、連続時間単位1~7を参照して示す、表1を含む。デュプレックスクランク速度センサ(例えばホールセンサ)が、コントローラ91に接続されている。EP-1の変速比は1:5であり、すなわち回転子6の角速度mは外側ハブ100の角速度nの5倍である。EP-2の典型的な変速比は1:8であり、すなわち回転子6の角速度mは外側ハブ100の角速度nの8倍である。
【0048】
システムは、m/8<n<=m/5のバッファゾーンを有し、このバッファゾーン内で、モータ5、6はブーストでき、一方、EP-2のキャリヤ23は、フリーホイールであるか、または、環/ハブ部材100の速度がEP-1のキャリヤ13をオーバーランするまで、追加動力をシステムに付加する。
【0049】
コントローラ91が応答するトルクセンサを採用することにより、モータは、静止状態から始動し、ハブ100がEP-1をオーバーランするまでブーストすることができる。
【0050】
図2の設計の利点は、固定輪軸1に接続することにより、キャリヤEP-1を基底接続するクラッチVが、実際にはクランク後方運動防止装置であり、クランク50がモータ5、6によって後方に回転されるリスクを排除できることである。別の利点は、丘を登ることが、以前に提案されたCVT駆動よりもはるかに優れているであろうことである。さらなる利点は、ハブ100へのトルク付加が、片側に集中しないことである。図示の構成により、ハブ100をブロックすることなく、二輪車10を押し歩きモードで押すことを可能にする。押している間、幾分かのモータ支援が提供され得る。例えば、EUの規制によれば、電動アシスト自転車を押している間、車両を押している人は、バイク速度6km/時間までの追加トルクを提供するために、歩行支援ボタンを使用してモータを作動させることができる。
【0051】
選択肢として、電気機械5、6は、発電機またはモータとして選択的に動作するように構成され得、コントローラ91は、電気機械5、6を、第1の期間には発電機として、次いで第2の期間にはモータとして交互に動作させ、コントローラ91は、発電機出力の関数として内側ハブ2に加えられたトルクの指標を取得し、次いで、示されたトルクの関数として、モータ5、6に電力を加える。そのような構成は、本発明者らの刊行物W02017/021715に開示されている。
【0052】
図5は、図2のものと同様に動作するが、異なる物理的構成を有する駆動システムを示す。
【0053】
図5では、固定子5は、ポータル構造200に取り付けられ、ポータル構造200は、輪軸1に固定され、したがって静止したままである。回転子6は、固定子5内に配置され、シャフト7Bに取り付けられ、シャフト7Bは、前と同様に、輪軸1を中心とする回転の好適なベアリングに取り付けられている。両方の太陽歯車11、21が、シャフト7Bに取り付けられており、したがって回転子6とともに回転する。図5では、第1の遊星キャリヤ13は、静止ポータル構造200に接続され、したがって、一方向ベアリングまたはクラッチVを介して「基底」に接続されている。ベアリングが、ポータル構造200の(見られるように)右側に設けられて、シャフト7Bと係合している。
【0054】
図5の駆動システムは、図2に示されたものに概ね対応する構成要素を有し、同様の方法で動作することが理解されよう。2つのエピサイクリック歯車セットEP-1およびEP-2は、互いに隣り合って位置しているので、2つの別個の太陽歯車11、21の代わりに、共通の拡張太陽歯車を共有することができる。図5の構成は、自転車の後部の従動輪のハブとして使用するのにとても好適であり得る。
【0055】
図5に示されたデバイスを後輪ハブ駆動ユニットとして使用する構成では、乗り手は時々、車両を後方に押すことがあり得、その間、太陽歯車11および21は、(方向Aで見て)反時計回りに回転することが強要される。EP-1およびEP-2の基本比は異なる場合があるので、太陽歯車うちの一方は、理論的に、もう一方とは異なる速度を有し得る。一方、それらが結合されていると、異なる回転速度を有することが不可能になる可能性があり、したがって、バイクが後方に押されている間に、ハブがブロックされ、車輪が路面を滑る。この不便で不自然な現象が発生するのを防止するために、太陽歯車を別個にしたままにし、太陽歯車のうちの一方に、一方向ベアリングを組み込んで、反時計回りにおいてはそれを切り離し、したがって、バイクを自由に後方に押すことができる。
【0056】
図6に示された駆動システムも、図2および図5のシステムと同様に動作する。しかしながら、図6の変形態様は、2つのペダルクランク50を接続するスピンドルを中心に、中央または中間駆動位置として使用するように構成されている。
【0057】
ペダル40からの駆動は、EP-2に、その遊星キャリヤ23を介して伝達され、この場合、遊星キャリヤ23は、ペダルクランク50とともに回転駆動されるシャフト150に固定されている。したがって、シャフト150は、入力を提供する。
【0058】
モータ5、6は、140で自転車のフレームに固定されているハウジング130に取り付けられた固定子5を有する。ハウジング130は、シャフト150と係合するベアリング101を一端に有し、出力部材100と他端で係合するベアリング103を有し、そして、出力部材100は、シャフト150と係合するベアリング上に取り付けられ、出力を提供する。出力部材100およびシャフト150は、ペダルクランク50の回転軸である共通軸を中心に回転可能である。ハウジング130は、モータ5、6の周りにエンクロージャを形成するための中間壁131を有する。
【0059】
回転子6は、出力シャフト7に取り付けられ、そして、出力シャフト7は、ベアリングを介してシャフト150に取り付けられている。EP-1およびEP-2に共通である共通太陽歯車121が、シャフト7に取り付けられている。第1の遊星キャリヤ13は、ハウジング130の中間壁131に、クラッチまたはベアリングVを一方向に基底接続する一方向クラッチまたはベアリングVを介して接続されている。両方の環状歯車14、24は、共通出力部材100に接続されている。一方向クラッチKは、第2の遊星キャリヤ23と共通出力部材100との間で有効である。
【0060】
使用中、ペダルクランク50からの入力は、EP-2に、その遊星キャリヤ23を介して適用される。モータ駆動は、共通太陽歯車121を介してEP-1およびEP-2の両方に提供される。出力部材100からの駆動は、従動輪に、従動輪の駆動スプロケットに接続するチェーン輪60を介して、典型的にはフリーホイール機構を介して伝達される。
【0061】
構成の変更以外では、図6の駆動システムは、図2および図5のものと同様に動作する。しかしながら、それは、ペダルクランク50およびそれらの接続スピンドルに隣接する、中央または中間駆動としての位置により好適である。
【0062】
本発明の実施形態の特に興味深い特徴には、以下が含まれる。1つのモータが2つの異なる歯車セットを同時に駆動することを意味する、双頭太陽歯車(または並列な2つの太陽歯車)。低速で直接駆動するためのスロットと、より高度のヒト入力を用いてより高速のCVT駆動への移行とを作り出す、2つの異なる変速比の組み合わせ。(発進時または低速時の)ローギアでのダイレクトブーストと、ギアをローからハイに変更する間の、そのCVT機能のハイブリッドブーストとを提供する、非常に単純な変速システム。例えば交通信号機で車両が停止したときに、その最低ギアに切り替えるギアリングシステム(比較すると、交通信号機での変速式バイクの再発進は困難であり、停止する前にギアを高く設定しすぎると多大な労力が必要になる可能性がある。)
【0063】
したがって、上に例示および説明された発明の実施形態は、乗り手にとって可能な限り自然に感じる乗り心地をもたらすために、電動力ブーストが、予測可能かつ再現可能な方法で提供され得る、電動アシスト自転車およびそれらのための駆動システムを提供し得る。実施形態は、CVT変速機における3分岐動力組み合わせエピサイクリック変速機(2つの入力および1つの出力)の使用において特に効果的であり得る。
【0064】
上記の説明は、サイクリストがペダリングしているときにのみ電動支援が提供される電動アシスト自転車を参照して与えられている。現時点では、多くの国で、前述したように、電動アシスト自転車に乗るのに免許は必要ないので、電動アシスト自転車は商業的に魅力的である。しかしながら、国によって免許制度が異なり、一部の国では、サイクリストがペダリングしていないときに電動支援が提供される場合でも、電動支援ペダル自転車に、免許なしで乗ることができる。したがって、サイクリストがペダリングしていないときに電動支援を含むように上記の実施形態の動作を変更する選択肢が存在する。
【0065】
そのような選択肢は、上記の駆動システムの機械的構成の変更を必要としない。それは、ユーザに、スロットル制御、例えば自転車のハンドルバーに組み込まれたツイストグリップ制御を提供することにより、達成することができる。例として図2を参照すると、スロットル制御の出力は、コントローラ91に接続される。通常の電動アシスト自転車モードでは、コントローラ91は、モータ5、6を制御するためのコマンドとしてPWM値をリアルタイムで計算するアルゴリズムを実行する。このPWM値は、どれくらいの電流がモータに適用されるかと、どんな速度でモータが動作するかを決定する。乗り手が速度を上げたい場合、乗り手は、スロットル制御を使用して、単純に、乗り手の意志でPWM値を上げる。典型的には、スロットル制御は、コントローラ91のアルゴリズムを完全にバイパスすることはないが、意図的かつ効果的にモータ出力を増加させることができ、すなわち、事前決定されたパラメーターに基づいてアルゴリズムが計算して、モータに提供するように命令するよりも多くの出力を、モータが、即座に提供することを可能にする。スロットル制御によって設定されたPWM値がアルゴリズムによって設定される実際のPWM値よりも高い場合、より高い値が、モータの電流/速度を制御するために使用される。別の考えられるスロットルアルゴリズムは、スロットルが、通常の電動アシスト自転車動作のためにコントローラ91のアルゴリズムによって計算されるPWM値の上に追加されるPWMオフセット値を提供するものである。
【0066】
したがって、スロットル制御は、前述のCVT変速機に効果的に重畳することができる。
【0067】
本明細書では、動詞「comprise」は、その通常の辞書の意味を有し、非排他的な包含を示す。つまり、1つまたはそれ以上の特徴を含めるための「comprise」という語(またはその派生語のうちのいずれか)の使用は、さらなる特徴も含める可能性を排除するものではない。「好ましい」という語(またはその派生語のうちのいずれか)は、好ましいが必須ではない1つまたはそれ以上の特徴を示す。
【0068】
添付の特許請求の範囲内で、(いかなる添付の請求項、要約、および図面を含む)本明細書に開示されている特徴のすべてもしくはいずれか、および/またはそのように開示されているいかなる方法もしくはプロセスのステップのすべてもしくはいずれかを、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせ得る。
【0069】
添付の特許請求の範囲内で、(いかなる添付の請求項、要約、および図面を含む)本明細書に開示されている各特徴は、特に明記しない限り、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替の特徴で置き換えられ得る。したがって、特に明記しない限り、開示されている各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0070】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、添付の特許請求の範囲内で、(いかなる添付の請求項、要約、および図面を含む)本明細書に開示されている特徴の任意の新規のもの、もしくは任意の新規の組み合わせに、またはそのように開示されているいかなる方法もしくはプロセスのステップの任意の新規のもの、もしくは任意の新規の組み合わせに拡張される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】