(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】処置レジメンを調節する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20220804BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20220804BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220804BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220804BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220804BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220804BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20220804BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20220804BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G01N33/574 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/675
A61K38/05
A61K33/243
A61K31/282
A61K31/69
A61K31/704
A61K31/513
A61K31/7068
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571865
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020065289
(87)【国際公開番号】W WO2020245155
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】521527761
【氏名又は名称】アソシアシオン・ジェルコル
(71)【出願人】
【識別番号】521527772
【氏名又は名称】ヴェラサイト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・エルミット
(72)【発明者】
【氏名】デヴィ・ヴェルネレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・エンリケス
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・タイエブ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・パジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ガロン
(72)【発明者】
【氏名】オーレリー・カトー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QR06
4B063QR08
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4C206MA01
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4C206NA05
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、癌に罹患している患者において化学療法剤を用いる処置レジメンを決定、調節、又は調整する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している患者において化学療法剤を用いた処置レジメンを決定、調節又は調整する方法であって、前記剤が、好ましくは免疫学的細胞死(ICD)を引き起こすことによって、腫瘍標的化免疫応答を活用するか、又は促進することができ、前記方法が、患者由来の腫瘍サンプルにおいてCD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化することを含む、方法。
【請求項2】
a) 患者由来の腫瘍サンプルにおいてCD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化する工程、及びb) a)で得られた値を予め決定した参照値と比較する工程、及びc)a)で得られた値が、予め決定した参照値を上回っている場合、用量、処置期間及び/又は投与頻度を上昇させることによって、化学療法剤に対する患者の暴露を上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍の中心(CT)におけるCD3+細胞の密度、腫瘍の中心(CT)におけるCD8+細胞の密度、浸潤性辺縁(IM)におけるCD3+細胞の密度、及び浸潤性辺縁(IM)におけるCD8+細胞の密度を定量化することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)が、患者を、
低Immunoscore (IS)が、25%未満の平均パーセンタイルに対応し、
中間ISが、25%~70%の平均パーセンタイルに対応し、
高ISが70%超の平均パーセンタイルに対応する
ように群(低、中間、又は高IS)に分類することを更に含み、
平均パーセンタイルが、CT及びIM領域におけるCD3細胞の密度並びにCT及びIM領域におけるCD8細胞の密度に対応する、4つのマーカー(CD3ct、CD8ct、CD3im、CD8im)の4つの個々のパーセンタイルの平均パーセンタイルを指す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処置期間を少なくとも6カ月、好ましくは少なくとも8カ月、更に好ましくは少なくとも1年間に調整することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
患者が、中間又は高IS群に属すると分類されている場合に、用量、処置期間及び/又は投与頻度を調節することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤が、白金、又は白金の塩、その誘導体又は類似体(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、又はカルボプラチン)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、アントラサイクリン、例えばドキソルビシンからなる群から、単独又は組合せで選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
化学療法剤が、単独、又は少なくとも他の治療剤、例えばフルオロピリミジン、例えば5-フルオロウラシル(5FU)、及び/又はカペシタビンと組み合わせた、白金又は白金の塩、その誘導体又は類似体、例えば、オキサリプラチンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化学療法剤が、任意選択で5-フルオロウラシル(5FU)及び/又はカペシタビンと組み合わせた、オキサリプラチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
癌が固形癌である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
癌が、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃癌、皮膚癌、黒色腫、肺癌、膀胱癌、乳癌、胆管癌、咽頭癌、下咽頭(hypolaryngeal)癌、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、口腔癌、口腔咽頭癌、及び唾液腺癌からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固形癌が、結腸直腸癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
癌が好ましくは結腸直腸癌であり、化学療法剤が、単独、又は他の治療剤、例えばフルオロピリミジン、例えば5-フルオロウラシル(5FU)及び/又はカペシタビンと組み合わせた、白金、又は白金の塩、その誘導体又は類似体(好ましくは、オキサリプラチン)であり、前記方法が、a) 患者由来の腫瘍サンプルにおいて、好ましくは患者のコア腫瘍(CT)及び浸潤性辺縁(IM)におけるCD3+及び細胞障害性CD8+ T細胞の密度を定量化することによって、CD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化する工程、及びb) a)で得られた値を予め決定した参照値と比較する工程、及びc) a)で得られた値が、予め決定した参照値を上回っている場合、用量、処置期間、及び/又は投与頻度を、好ましくは処置期間を少なくとも6カ月、及び/又は用量を少なくとも700mg/m
2の積算用量に調整することによって、調節する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程b)が、患者を、
低Immunoscore (IS)が、25%未満の平均パーセンタイルに対応し、
中間ISが、25%~70%の平均パーセンタイルに対応し、
高ISが70%超の平均パーセンタイルに対応する
ように群(低、中間、又は高IS)に分類することを更に含み、
平均パーセンタイルが、CT及びIM領域におけるCD3細胞の密度並びにCT及びIM領域におけるCD8細胞の密度に対応する、4つのマーカー(CD3ct、CD8ct、CD3im、CD8im)の4つの個々のパーセンタイルの平均パーセンタイルを指し、
工程c)が、患者が中間又は高IS群に属すると分類されている場合、用量、処置期間、及び/又は投与頻度を、好ましくは処置期間を少なくとも6カ月、及び/又は用量を少なくとも700mg/m
2の積算用量に調整することによって、調節することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌に罹患している患者において、化学療法剤を用いて処置レジメンを決定、調節又は調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Galonら(世界的なタスクフォースであるImmunoscoreを使用した癌分類J Transl Med. 2012; 10: 205)によって詳細に説明されているように、癌における臨床的な予後の予測は、原発性腫瘍の外科的な切除の間に得られた組織サンプルの組織病理学的な評価によって通常達成される。従来の腫瘍ステージ付け(AJCC/UICC-TNM分類)は、腫瘍重量(T)、流入及び局所リンパ節(N)内の癌細胞の存在、及び転移(M)についてのデータの概要を与えている。Galonらは、細胞障害性及びメモリーT細胞、Th1細胞、及びインターフェロンγ(IFN-γ)特性を伴う免疫活性又は免疫サイレントな腫瘍が、それぞれ長期生存又は急速な再発と相関していることを示している(Galonら、Science, 2006;313(5795):1960-4; Camusら、Cancer Res. 2009;69(6):2685-93)。炎症性及び非炎症性腫瘍の共通のImmunoscore(登録商標)分類が、近年、著しい臨床的意義を有するものとして世界的に検証された(Pagesら、Lancet. 2018;391(10135):2128-39)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J Transl Med. 2012; 10: 205
【非特許文献2】Galonら、Science, 2006;313(5795):1960-4
【非特許文献3】Camusら、Cancer Res. 2009;69(6):2685-93
【非特許文献4】Pagesら、Lancet. 2018;391(10135):2128-39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗腫瘍治療に対する患者の感度を決定する方法は提案されているが、医師が最も効率的な方法で治療を調節するのを補助するであろうツールは未だに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において、癌に罹患している患者において化学療法剤を用いた処置レジメンを決定、調節又は調整する方法が提供されており、前記剤は、好ましくは免疫学的細胞死(ICD)を引き起こすことによって、腫瘍標的化免疫応答を活用する(leverage)か、又は促進することができ、前記方法は、患者由来の腫瘍サンプルにおける、CD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化することを含む。
【0006】
より具体的には、前記方法は、腫瘍中心(CT)におけるCD3+細胞の密度、腫瘍中心(CT)におけるCD8+細胞の密度、浸潤性辺縁(IM)におけるCD3+細胞の密度、及び浸潤性辺縁(IM)におけるCD8+細胞の密度を定量化することを好都合に含んでいてもよい。
【0007】
前記方法は、典型的には、a)患者由来の腫瘍サンプルにおいてCD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量すること、及びb) a)で得られた値を予め決定した参照値と比較すること、及びc) a)で得られた値が、予め決定した参照値を上回っている場合、用量、処置期間及び/又は投与頻度を上昇させることによって、化学療法剤に対する患者の暴露を上昇させることを含んでいてもよい。
【0008】
好ましい実施形態において、工程b)は、患者を、
低Immunoscore (IS)が、25%未満の平均パーセンタイルに対応し、
中間ISが、25%~70%の平均パーセンタイルに対応し、
高ISが70%超の平均パーセンタイルに対応する
ように群(低、中間、又は高IS)に分類することを更に含み、ここで、
前記平均パーセンタイルは、CT及びIM領域におけるCD3細胞の密度並びにCT及びIM領域におけるCD8細胞の密度に対応する、4つのマーカー(CD3ct、CD8ct、CD3im、CD8im)の4つの個々のパーセンタイルの平均パーセンタイルを指す。
【0009】
本発明によれば、長期間の化学療法、例えば6カ月の化学療法の臨床的な利点は、ISが高くなるほどより重要になる。
【0010】
本発明の方法は、インビトロで、好ましくは患者が化学療法剤を投与される前に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Immunoscore(登録商標)算出方法。(A)専用のImmunoscore Analyzerソフトウェアを使用して、腫瘍の中心(CT)及び浸潤性辺縁(IM)においてCD3及びCD8の密度を定量化する(CD3ct、CD8ct、CD3im、CD8im)。密度は予め規定したパーセンタイルスケールで報告し、4つのマーカーの平均パーセンタイルを算出して、パーセンタイルImmunoscore (0~100)を決定する。ソフトウェアによって決定されたCT及びIM領域の例を左に示す。IHC染色(CD3)及び陽性細胞検出の例を右に示す。例において、患者は中間Immunoscore (60%)を有する。
【
図2A】ステージIII癌患者におけるImmunoscore(登録商標)の予測値(DFSのカプランマイヤー推定)。ISによって2カテゴリーに層別化された(低、対 中間+高)患者群間で、3年DFS率は、IS低、及びIS中間+高について、それぞれ66.80% [95%CI 62.23~70.95]、及び77.14% [95%CI 73.50~80.35]であった(p = 0.0001)。
【
図2B】ステージIII癌患者におけるImmunoscore(登録商標)の予測値(DFSのカプランマイヤー推定)。3カテゴリーのISによって、IS高の患者においては、IS低の患者についての67%に対して、85%の3年DFS率が観察された(p = 0.0001)NB:連続的な変数としてのISはまた、3年DFSと有意に相関していた(p<0.001)。
【
図2C】ステージIII癌患者におけるImmunoscore(登録商標)の予測値(DFSのカプランマイヤー推定)。DFSの観点におけるIS低の有害効果はT4腫瘍を有する患者よりも、T1~3の患者においてより高かった(p=0.0212)。
【
図3-1】
図3。Immunoscore(登録商標)状態による、3カ月対6カ月のmFOLFOX6治療の有効性。(A)3カ月-FOLFOX6レジメンと比較して、6カ月レジメンの有益な効果が、CD8 CD3 (中間+高)状態の患者において観察された(全患者、最上部のグラフ参照)。(B、C)この利点は、低危険性腫瘍(T1~T3及びN1)及び高危険性腫瘍(T4及び/又はN2腫瘍)においてこれらの患者で維持されていた(最上部グラフ参照)。対照的に、6カ月-FOLFOX6レジメンの有意な利点は、CD8 CD3(低)状態の患者においては、患者が高危険性であるか、又は低危険性であるかに関わらず、観察されなかった(最下部グラフ参照)。前記患者については、6カ月-FOLFOX6レジメンの軽度の利点が最初の3年では観察されたが、その後解消された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
癌
典型的には、本発明の方法は、癌起源の種々の器官(例えば、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌)及びまた種々の癌細胞種(腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、黒色種等)に適用しうる。
【0013】
典型的には、上記の方法に供された患者は、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、末梢癌(periphilar cancer)、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、骨芽細胞腫、骨軟骨腫(osteochrondroma)、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨の巨細胞腫瘍、脊索腫、多発性骨髄腫)、脳及び中枢神経系癌(例えば、髄膜腫、星状細胞腫(astocytoma)、乏突起神経膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例えば、子宮内膜腺癌、腺類癌(adenocanthoma)、乳頭状漿液性腺癌(papillary serous adnocarcinoma)、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば、絨毛癌、破壊性絨毛腺腫)、カポジ肉腫、腎臓癌(例えば、腎細胞癌)、喉頭及び下咽頭(hypopharyngeal)癌、肝臓癌(例えば、血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔癌及び副鼻腔癌(例えば、感覚神経芽腫、正中線肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例えば、胚性横紋筋肉腫、肺胞性横紋筋肉腫、多形横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えば、精上皮腫、非精上皮腫胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば、濾胞性癌、退形成性癌、低分化癌、髄様甲状腺癌)、膣癌、外陰部癌、及び子宮癌(例えば、子宮平滑筋肉腫)からなる群から選択される固形癌に罹患していてもよい。
【0014】
好ましい実施形態において、前記癌は結腸直腸癌である。
【0015】
サンプル
本明細書において使用する、「腫瘍組織サンプル」という用語は、患者由来の任意の組織腫瘍サンプルを意味する。前記組織サンプルは、インビトロ評価を目的として取得される。いくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは患者から切除した腫瘍から得てもよい。いくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは、患者の原発性腫瘍において行った、又は患者の原発性腫瘍から遠位の転移サンプルにおいて行った生検から得てもよい。例えば、結腸直腸癌に罹患した患者の腸において行った内視鏡生検である。典型的には、腫瘍組織サンプルをホルマリンで固定し、剛性の固定液、例えばパラフィン(ワックス)又はエポキシに包埋し、これをモールドに配置した後、硬化させてブロックを産生し、これは容易に切断される。材料の薄片を次いで、ミクロトームを用いて調製し、ガラススライド上に配置し、例えば、(染色スライドを得るために、IHC自動装置、例えばBenchMark(登録商標)XTを使用して)免疫組織化学法に供する。腫瘍組織サンプルは、組織マイクロアレイ(TMA)と呼ばれるマイクロアレイで使用しうる。TMAは、1000までの別個の組織コアをアレイ様式で組み立てたパラフィンブロックからなり、これにより多重組織化学的な解析が可能になっている。この技術により、DNA、RNA又はタンパク質レベルのいずれかにおける、組織試料における分子標的を同時に急速に可視化することが可能になる。TMA技術は、国際公開第2004000992号、米国特許第8068988号、Olliら、2001 Human Molecular Genetics, Tzankovら、2005, Elsevier; Kononenら、1198; Nature Medicineに記載されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、腫瘍組織サンプルは、(i)原発性腫瘍全体(全体として)、(ii)腫瘍の中心由来の組織サンプル、(iii)腫瘍の「浸潤性辺縁」とより具体的に名付けうる腫瘍を直接的に囲む組織由来の組織サンプル、(iv)腫瘍と近接しているリンパ球系島、(v)腫瘍に最近接して位置するリンパ節、(vi)外科手術前に(例えば、処置後の患者の経過観察のために)収集した腫瘍組織サンプル、及び(vii)遠位の転移を包含する。
【0017】
本明細書において使用する「浸潤性辺縁」は、当技術分野における一般的な意味を有し、腫瘍の周囲の細胞環境を指す。いくつかの実施形態において、腫瘍組織サンプルは、腫瘍の中心由来であるか、腫瘍の浸潤性辺縁由来であるか、又は最近接するリンパ節由来であるかに関わらず、腫瘍の中心、腫瘍周囲の浸潤性辺縁から除去された、例えば外科的な腫瘍切除後、又は生検のための組織サンプルの収集後の、組織の小片又は薄片を、1つ又はいくつかの生物学的マーカーの、特に組織学又は免疫組織化学的方法、フローサイトメトリー法及び遺伝子又はタンパク質発現解析方法、例えば、ゲノミクス及びプロテオミクス解析による更なる定量化のために含む。腫瘍組織サンプルは、当然のことながら、種々の、周知の収集後の調製及び保存技術(例えば、固定、保存、凍結等)に供しうる。前記サンプルは、新鮮であっても、凍結されていても、固定(例えば、ホルマリン固定)されていても、又は包埋(例えば、パラフィン包埋)されていてもよい。いくつかの実施形態において、腫瘍流入リンパ節の数の定量化を切除した腫瘍において行う場合、腫瘍組織サンプルは前記切除した腫瘍から得られ、腫瘍の中心、及び任意選択で腫瘍の浸潤性辺縁を含む。前記実施形態において、免疫適応応答のマーカーの定量化は、典型的には、下記に記載するように、免疫組織化学(IHC)によって行われる。いくつかの実施形態において、腫瘍流入リンパ節の数の定量化が行われ、画像によって決定される場合、腫瘍組織サンプルは生検から得られる。前記実施形態において、免疫適応応答のマーカーの定量化は、典型的には、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを決定することによって行われる。
【0018】
典型的には、腫瘍サンプルは、(i)原発性腫瘍全体(全体として)、(ii)腫瘍の中心由来の組織サンプル、(iii)腫瘍の「浸潤性辺縁」とより具体的に名付けうる腫瘍を直接的に囲む組織由来の組織サンプル、(iv)腫瘍又は腫瘍によって誘導される三次リンパ球系構造に最近接して位置するリンパ節、(v)任意の時点、典型的には外科手術の前に行われる腫瘍生検、及び(vi)遠位の転移からなる群から選択しうる。
【0019】
好ましい実施形態において、2つ以上の生物学的マーカーは、腫瘍の中心及び/又は腫瘍の浸潤性辺縁において定量化される。
【0020】
好ましい実施形態において、2つ以上の生物学的マーカーは、腫瘍の中心及び/又は腫瘍の浸潤性辺縁において定量化される。
【0021】
サンプルは、新鮮であっても、凍結されていても、固定(例えば、ホルマリン固定)されていても、又は包埋(パラフィン包埋)されていてもよい。特に好ましい実施形態において、腫瘍サンプルは、患者の腫瘍において行われる生検から得られる。
【0022】
例は、結腸直腸癌に罹患している、又は結腸直腸癌に罹患している疑いがある患者の腸において行われる内視鏡生検である。
【0023】
生物学的マーカー
本発明によれば、前記方法は、T細胞又はT細胞サブセットによって発現される、例えばCD3及びCD8を定量化することを含む。
【0024】
CD3抗原の発現、又はそのmRNAの発現は、全てのTリンパ球及びNKT細胞を含む、患者の適応免疫応答のレベルを示している。CD8抗原の発現、又はそのmRNAの発現は、細胞傷害性Tリンパ球を含む、患者の適応免疫応答のレベルを示している。
【0025】
本発明の方法は、少なくとも他の1つの生物学的マーカーを定量化することを更に含んでいてもよいが、CD3及びCD8のみを定量化すれば、本発明による処置レジメンを決定、調節又は調整するための方法を達成するのに十分でありうる。
【0026】
本明細書で意図する、「生物学的マーカー」は、腫瘍に対する患者抗原の免疫応答の状態を示す、任意の検出可能、測定可能、及び定量化可能なパラメーターからなる。
【0027】
生物学的マーカーは、腫瘍部位における免疫系由来の細胞の存在、又は数、又は密度を含む。
【0028】
生物学的マーカーはまた、腫瘍部位における免疫系由来の細胞によって特異的に産生されるタンパク質の存在、又は量を含む。
【0029】
生物学的マーカーはまた、腫瘍部位における、宿主の特異的な免疫応答の産生に関連する遺伝子の発現レベルを示す、任意の生物学的材料の存在、又は量を含む。したがって、生物学的マーカーは、腫瘍部位における、免疫系由来の細胞によって特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAから転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の存在、又は量を含む。
【0030】
生物学的マーカーは、したがって、腫瘍組織内で、又は近接して、例えば腫瘍の浸潤性辺縁内及び最近接リンパ節内にリクルートされる、免疫系由来の細胞、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、及びNK-DC細胞によって特異的に発現される表面抗原、或いは前記表面抗原をコードするmRNAを含む。
【0031】
例示的には、生物学的マーカーとして使用されるタンパク質としてはまた、免疫系由来の細胞によって特異的に産生される細胞溶解性タンパク質、例えば、パーフォリン、グラニュライシン及びまたグランザイムBが挙げられる。
【0032】
多数の特許出願が、本発明の方法で使用しうる免疫応答の状態を示す多数の生物学的マーカーを記載している。
【0033】
典型的には、国際公開第2015007625号、国際公開第2014023706号、国際公開第2014009535号、国際公開第2013186374号、国際公開第2013107907号、国際公開第2013107900号、国際公開第2012095448号、国際公開第2012072750号、及び国際公開第2007045996号(全て参照により組み込まれる)に記載されている免疫応答の状態を示す生物学的マーカーを使用しうる。
【0034】
典型的には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50の異なる生物学的マーカーの組合せ、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9又は10の生物学的マーカー、より好ましくは2、3、4、5又は6の生物学的マーカーの組合せを定量化しうる。
【0035】
好ましい実施形態において、免疫応答の状態を示す生物学的マーカーは、国際公開第2007045996号に記載されている。
【0036】
典型的には、使用しうる生物学的マーカーは、免疫系由来の細胞の細胞密度である。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、CD3+細胞の密度及びCD8+細胞の密度を定量化することを含む。
【0038】
本方法は、CD45RO+細胞の密度、GZM-B+細胞の密度及び/又はCD45RO+細胞の密度を定量化することを更に含みうる。B細胞の密度もまた測定しうる(国際公開第2013107900号、及び国際公開第2013107907号参照)。DC細胞の密度もまた測定しうる(国際公開第2013107907号参照)。
【0039】
好ましい実施形態において、免疫系由来の細胞密度を、腫瘍の中心及び/又は腫瘍の浸潤性辺縁において定量化する。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、特に前記マーカーの個別の定量化を腫瘍の中心(CT)及び浸潤性辺縁(IM)の両方において行う場合、目的のタンパク質マーカーのインサイチュの免疫組織化学的な検出によって行われる。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、腫瘍全体又は腫瘍の生検、又は腫瘍の中心(CT)、又は浸潤性辺縁(IM)のいずれかにおける、目的のタンパク質マーカー又は目的のmRNA遺伝子発現のインサイチュの免疫組織化学的な検出によって行われる。
【0042】
最も好ましい実施形態において、本方法は、腫瘍の中心におけるCD3+細胞の密度、腫瘍の中心におけるCD8+細胞の密度、浸潤性辺縁におけるCD3+細胞の密度、及び浸潤性辺縁におけるCD8+細胞の密度を定量化することを含む。
【0043】
密度は、「コールドスポット」、すなわち、密度が最も低い腫瘍サンプルの領域において、又は、密度が最も低い2~10の領域に対応する、2、3、4、5、6、7、8、9、10の「コールドスポット」において測定しうる。
【0044】
密度はまた、「ホットスポット」、すなわち、密度が最も高い領域において、又は密度が最も高い2~10の領域に相当する、2、3、4、5、6、7、8、9、10の「ホットスポット」において測定しうる。
【0045】
腫瘍サンプル全体についての平均密度を決定してもよい。
【0046】
典型的には、国際公開第2013/186374号、又は国際公開第2017/194556号に記載されている方法を、腫瘍サンプル中の免疫細胞の定量化に使用しうる。
【0047】
本明細書で使用する用語「マーカー」は、対象の適応免疫応答の状態を示す任意の検出可能、測定可能又は定量化可能なパラメーターからなる。いくつかの実施形態において、マーカーは、免疫系由来の細胞の存在、又は数、又は密度を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、免疫系由来の細胞によって特異的に産生されるタンパク質の存在又は量を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、宿主の特異的な免疫応答の産生に関連する遺伝子レベルを示す生物学的材料の存在、又は量を含む。したがって、いくつかの実施形態において、マーカーは、免疫系由来の細胞によって特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAから転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の存在、又は量を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、免疫系由来の細胞、例えばBリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、及びNK-DC細胞によって特異的に発現される表面抗原、或いは前記表面抗原をコードするmRNAを含む。本発明の方法を2つ以上の生物学的マーカーを使用して行う場合、定量化される異なる生物学的マーカーの数は、通常、100未満の異なるマーカーであり、殆どの実施形態においては、50未満の異なるマーカーであり、更に好ましくは20未満の異なるマーカーであり、より好ましくは15未満の異なるマーカーであり、更に好ましくは10未満の異なるマーカーである。
【0048】
免疫応答の状態を示しているために、定量化することができる更なるマーカーは、国際公開第2007045996号の表9に列挙されているタンパク質を含み、これは、18s、ACE、ACTB、AGTR1、AGTR2、APC、APOA1、ARF1、AXIN1、BAX、BCL2、BCL2L1、CXCR5、BMP2、BRCA1、BTLA、C3、CASP3、CASP9、CCL1、CCL11、CCL13、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCNB1、CCND1、CCNE1、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCRL2、CD154、CD19、CD1a、CD2、CD226、CD244、PDCD1LG1、CD28、CD34、CD36、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD40LG、CD5、CD54、CD6、CD68、CD69、CLIP、CD80、CD83、SLAMF5、CD86、CD8A、CDH1、CDH7、CDK2、CDK4、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEACAM1、COL4A5、CREBBP、CRLF2、CSF1、CSF2、CSF3、CTLA4、CTNNB1、CTSC、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CYP1A2、CYP7A1、DCC、DCN、DEFA6、DICER1、DKK1、Dok-1、Dok-2、DOK6、DVL1、E2F4、EBI3、ECE1、ECGF1、EDN1、EGF、EGFR、EIF4E、CD105、ENPEP、ERBB2、EREG、FCGR3A、CGR3B、FN1、FOXP3、FYN、FZD1、GAPD、GLI2、GNLY、GOLPH4、GRB2、GSK3B、GSTP1、GUSB、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HLA-B、HLA-C、HLA-、MA、HLA-DMB、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DPA1、HLA-DQA2、HLA-DRA、HLX1、HMOX1、HRAS、HSPB3、HUWE1、ICAM1、ICAM-2、ICOS、ID1、ifna1、ifna17、ifna2、ifna5、ifna6、ifna8、IFNAR1、IFNAR2、IFNG、IFNGR1、IFNGR2、IGF1、IHH、IKBKB、IL10、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL17、IL17R、IL17RB、IL18、IL1A、IL1B、IL1R1、IL2、IL21、IL21R、IL23A、IL23R、IL24、IL27、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL31RA、IL4、IL4RA、IL5、IL6、IL7、IL7RA、IL8、CXCR1、CXCR2、IL9、IL9R、IRF1、ISGF3G、ITGA4、ITGA7、インテグリンαE(抗原CD103、ヒト粘膜リンパ球、抗原1;αポリペプチド)、遺伝子hCG33203、ITGB3、JAK2、JAK3、KLRB1、KLRC4、KLRF1、KLRG1、KRAS、LAG3、LAIR2、LEF1、LGALS9、LILRB3、LRP2、LTA、SLAMF3、MADCAM1、MADH3、MADH7、MAF、MAP2K1、MDM2、MICA、MICB、MKI67、MMP12、MMP9、MTA1、MTSS1、MYC、MYD88、MYH6、NCAM1、NFATC1、NKG7、NLK、NOS2A、P2X7、PDCD1、PECAM-、CXCL4、PGK1、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、PLAT、PML、PP1A、CXCL7、PPP2CA、PRF1、PROM1、PSMB5、PTCH、PTGS2、PTP4A3、PTPN6、PTPRC、RAB23、RAC/RHO、RAC2、RAF、RB1、RBL1、REN、Drosha、SELE、SELL、SELP、SERPINE1、SFRP1、SIRPβ1、SKI、SLAMF1、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SMAD2、SMAD4、SMO、SMOH、SMURF1、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7、SOD1、SOD2、SOD3、SOS1、SOX17、CD43、ST14、STAM、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK36、TAP1、TAP2、TBX21、TCF7、TERT、TFRC、TGFA、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TIM-3、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF11A、TNFRSF18、TNFRSF1A、TNFRSF1B、OX-40、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF6、TOB1、TP53、TSLP、VCAM1、VEGF、WIF1、WNT1、WNT4、XCL1、XCR1、ZAP70、及びZIC2である。
【0049】
本明細書において、目的の遺伝子のそれぞれの名称は、国際的に認識されている遺伝子配列及びタンパク質配列データベース、例えばHUGO Gene Nomenclature Committeeのデータベースに見られるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指す。本明細書において、目的の遺伝子のそれぞれの名称はまた、国際的に認識された遺伝子配列データベースであるGenbankに見られるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指していてもよい。これらの国際的に認識された配列データベースを介して、本明細書に記載する目的の遺伝子のそれぞれに対する核酸は、当技術分野の当業者によって検索しうる。
【0050】
好ましい実施形態において、免疫応答の状態を示す更なる生物学的マーカーは、適応免疫応答を表す遺伝子若しくはタンパク質、又は免疫抑制応答を表す遺伝子若しくはタンパク質を含む。
【0051】
本明細書で使用する、「適応免疫応答を表す遺伝子」という表現は、腫瘍における適応免疫応答の作用因子である細胞によって発現されているか、又は腫瘍における適応免疫応答の定着に寄与する任意の遺伝子を指す。適応免疫応答は、「獲得免疫応答」とも称し、T細胞サブタイプの抗体依存的な刺激、B細胞活性化及び抗体産生を含む。例えば、適応免疫応答の細胞としては、細胞傷害性T細胞、TメモリーT細胞、Th1及びTh2細胞、活性化マクロファージ及び活性化樹状細胞、NK細胞及びNKT細胞が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、適応免疫応答を表す遺伝子は、典型的には、Th1適応免疫、細胞傷害性応答又はメモリー応答のために共調節される遺伝子のクラスターから選択されてもよく、Th1細胞表面マーカーである、インターロイキン(又はインターロイキン受容体)又はケモカイン(又はケモカイン受容体)をコードしていてもよい。
【0052】
特定の実施形態において、適応免疫応答を表す遺伝子は、
- CXCL13、CXCL9、CCL5、CCR2、CXCL10、CXCL11、CXCR3、CCL2、及びCX3CL1からなるケモカイン及びケモカイン受容体のファミリー、
- IL15からなるサイトカインのファミリー、
- IFNG、IRF1、STAT1、STAT4、及びTBX21からなるTH1ファミリー、
- ITGAE、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CD247、CD69、及びICOSからなるリンパ球膜受容体のファミリー、
- GNLY、GZMH、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、及びPRF1からなる細胞傷害性分子のファミリー、
及びキナーゼLTKからなる群から選択される。
【0053】
好ましいかかる遺伝子又は対応するそのタンパク質は、以下に開示する、
CCL5、CCR2、CD247、CD3E、CD3G、CD8A、CX3CL1、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、IFNG、IL15、IRF1、ITGAE、PRF1、STAT1、TBX21である。
【0054】
本明細書で使用する、「免疫抑制応答を表す遺伝子」という表現は、腫瘍における免疫抑制応答の作用因子である細胞によって発現されるか、又は腫瘍における免疫抑制応答の定着に寄与する任意の遺伝子を指す。例えば、免疫抑制応答は、
- T細胞サブタイプの抗原依存性刺激の共阻害:遺伝子CD276、CTLA4、PDCD1、CD274、TIM-3、又はVTCN1(B7H4)、
- マクロファージ及び樹状細胞の不活化及びNK細胞の不活化:遺伝子TSLP、CD1A、又はVEGFA、
- 癌幹細胞マーカーの発現、分化及び/又は発癌:PROM1、IHH、
- 腫瘍環境において産生される免疫抑制性タンパク質の発現:遺伝子PF4、REN、VEGFA
を含む。
【0055】
例えば、免疫抑制応答の細胞としては、未成熟な樹状細胞(CD1A)、調節性T細胞(Treg細胞)、及びIL17A遺伝子を発現するTh17細胞が挙げられる。
【0056】
したがって、適応免疫応答を表す遺伝子は、典型的には共調節された適応免疫遺伝子の群から選択されてもよく、一方、免疫抑制遺伝子は、免疫細胞(例えば、樹状細胞)の不活化を表していてもよく、免疫抑制応答の誘導に寄与していてもよい。
【0057】
免疫抑制応答を表す遺伝子又は対応するタンパク質は、以下に開示する、
CD274、CTLA4、IHH、IL17A、PDCD1、PF4、PROM1、REN、TIM-3、TSLP又はVEGFAである。
【0058】
好ましい実施形態において、適応免疫応答を表す遺伝子は、GNLY、CXCL13、CX3CL1、CXCL9、ITGAE、CCL5、GZMH、IFNG、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、LTK、PRF1、STAT1、CD69、CD247、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2、及びTBX21からなる群から選択され、免疫抑制応答を表す遺伝子は、PF4、REN、VEGFA、TSLP、IL17A、PROM1、IHH、CD1A、CTLA4、PDCD1、CD276、CD274、TIM-3、及びVTCN1 (B7H4)からなる群から選択される。
【0059】
いくつかの遺伝子は、1つの適応遺伝子と1つの免疫抑制遺伝子を組み合わせるとより頻繁に有意に見られるため、最も好ましい遺伝子は、
- 適応免疫応答を表す遺伝子:CD3G、CD8A、CCR2、及びGZMA、
- 免疫抑制応答を表す遺伝子:REN、IL17A、CTLA4、及びPDCD1である。
【0060】
免疫応答の状態を示す生物学的マーカーは、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2、及びTBX21;
又はGZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1及びVEGFAからなる群から選択される1つ又は複数の遺伝子の発現レベルを含みうる。
【0061】
本発明の方法はまた、国際公開第2012072750号に記載されているような、miR.609、miR.518c、miR.520f、miR.220a、miR.362、miR.29a、miR.660、miR.603、miR.558、miR519b、miR.494、miR.130a、又はmiR.639を含むmiRNAクラスターの発現レベルを定量化することを含みうる。
【0062】
生物学的マーカーを定量化する一般的な方法
本明細書に包含される、当技術分野の当業者に公知である、細胞型、タンパク質型、又は核酸型の生物学的マーカーを定量化する方法の任意の1つを、本発明の癌予後方法を行うのに使用してもよい。したがって、標準的及び非標準的(新しく現れた)な、当技術分野で周知された、サンプル中のタンパク質又は核酸を検出及び定量化するための技術のいずれか1つを容易に適用してもよい。
【0063】
本明細書に記載する生物学的マーカーの発現は、転写された核酸又はタンパク質の発現を検出するための広範の周知の方法のいずれかによって評価しうる。かかる方法の非限定的な例としては、分泌された、細胞表面、細胞質又は核のタンパク質を検出するための免疫学的な方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能又は活性アッセイ、及び核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写法、及び核酸増幅方法が挙げられる。
【0064】
好ましい一実施形態において、マーカーの発現は、マーカータンパク質又はその断片、例えば、正常な翻訳後修飾を全て又は一部受けたマーカータンパク質に特異的に結合する、抗体(例えば、放射性標識、発色団標識、フルオロフォア標識、ポリマー骨格抗体、又は酵素標識化抗体)、抗体誘導体(例えば、基質又は、タンパク質-リガンド対(例えばビオチン-ストレプトアビジン)のタンパク質又はリガンドとコンジュゲートした抗体)、又は抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離された抗体超可変ドメイン等)を用いて評価される。
【0065】
特定の実施形態において、生物学的マーカー、又は生物学的マーカーのセットは、当技術分野で公知の免疫組織化学的方法のいずれか1つを用いて定量化しうる。
【0066】
典型的には、更なる解析のために、1つの薄い腫瘍切片を最初に、目的の1つの生物学的マーカーに対する標識化抗体と共にインキュベートする。洗浄後、前記目的の生物学的マーカーに結合した標識化抗体を、標識化抗体が有する標識の種類、例えば放射活性、蛍光又は酵素標識によって適当な技術によって明らかにする。複数の標識化を同時に行ってもよい。
【0067】
免疫組織化学は、典型的には、以下の工程、i)腫瘍組織サンプルをホルマリンで固定する工程、ii)前記腫瘍組織サンプルをパラフィンに包埋する工程、iii)前記腫瘍組織を染色のために切片に切断する工程、iv)前記切片を、目的の免疫チェックポイントタンパク質に特異的な結合パートナーと共にインキュベートする工程、v)前記切片をリンスする工程、vi)前記切片を典型的にはビオチン化された二次抗体と共にインキュベートする工程、及びvii)典型的にはアビジン-ビオチンペルオキシダーゼ複合体によって抗原-抗体複合体を明らかにする工程を含む。したがって、腫瘍組織サンプルは、最初に、目的の免疫チェックポイントタンパク質に対する結合パートナーとインキュベーションする。洗浄後、目的の免疫チェックポイントタンパク質に結合した標識化抗体を、標識化抗体が有する標識の種類、例えば放射活性、蛍光又は酵素標識によって、適当な技術によって明らかにする。複数の標識化を同時に行ってもよい。或いは、本発明の方法は、(染色シグナルを強化するための)増幅系に結合した二次抗体及び酵素分子を使用しうる。かかる結合した二次抗体は、例えばDako, EnVision system社から市販されている。対比染色、例えばヘマトキシリン&エオシン、DAPI、ヘキストを使用してもよい。他の染色方法は、当技術分野の当業者には明らかである任意の適切な方法又は系、例えば自動化、半自動化、又は手動の系を使用して達成しうる。
【0068】
例えば、1つ又は複数の標識を抗体に結合させることにより、標的タンパク質(すなわち生物学的マーカー)の検出が可能になりうる。例示的な標識としては放射活性アイソトープ、フルオロフォア、リガンド、化学発光剤、酵素及びその組合せが挙げられる。一次及び/又は二次親和性リガンドとコンジュゲートしうる標識の非限定的な例としては、蛍光色素又は金属(例えば、フルオロセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレサミン)、発色団色素(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナル、イミダゾール)、及び生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。種々の他の有用な蛍光剤及び発色団は、Stryer L (1968) Science 162:526-533、及びBrand L and Gohlke J R (1972) Annu. Rev. Biochem. 41:843-868に記載されている。親和性リガンドはまた、酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βラクタマーゼ)、放射性アイソトープ(例えば、3H、14C、32P、35S、又は125I)及び粒子(例えば、金)によって標識化されていてもよい。異なる種類の標識を、種々の化学、例えばアミン反応、又はチオール反応を使用して、親和性リガンドにコンジュゲートすることができる。しかしながら、アミン及びチオール以外の他の反応基、例えばアルデヒド、カルボン酸及びグルタミンを使用してもよい。目的のタンパク質を検出するための、種々の酵素染色方法が当技術分野において公知である。例えば、酵素相互作用は、異なる酵素、例えばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又は異なる色素源、例えば、DAB、AEC、又はFast Redを用いて可視化しうる。いくつかの実施形態において、標識は、量子ドットである。例えば、量子ドット(Qdot)は、免疫組織化学、フローサイトメトリー、及びプレートベースアッセイを含む、増大している用途のリストにおける有用性が増しており、そのため、本発明と組み合わせて使用しうる。Qdotナノ結晶は、感度及び定量化のための極度に明るいシグナル、イメージング及び分析のための高い光安定性を含む特有の光学的な性質を有する。単一の励起源が必要であり、コンジュゲートの範囲が増大することによって、広範囲の細胞ベースの用途において有用になる。Qdot生物コンジュゲートは、利用可能な最も明るい色素と同等の量子収率によって特徴付けられる。更に、これらの量子ドットベースのフルオロフォアは、従来の色素よりも10~1000倍多くの光を吸収する。より多くの色素を同時に使用することができるにも関わらず、根底にあるQdot量子ドットからの放出は狭く対称的であり、これは、他の色素との重複が最小化されており、隣接する検出チャネルへの流出の最小化及びクロストークの減弱がもたらされる。他の例において、抗体は、標識化された結合パートナー又は抗体を介して検出しうるペプチド又はタンパク質にコンジュゲートしうる。間接的IHCアッセイにおいて、二次抗体又は二次結合パートナーが、一次結合パートナーの結合を認識するのに必要であり、これは一次結合パートナーが標識化されていないためである。
【0069】
いくつかの実施形態において、得られた染色された検体は、それぞれ検出可能なシグナルを見、染色のデジタル画像等の画像を獲得するための系を使用してイメージングする。画像獲得の方法は、当技術分野の当業者には周知されている。例えば、サンプルが一度染色されると、任意の視覚的又は非視覚的なイメージングデバイス、例えば正立又は倒立顕微鏡、走査型共焦点顕微鏡、カメラ、走査型又はトンネル電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡、及びイメージング赤外線検出器を使用して、染色又はバイオマーカー標識を検出することができる。いくつかの例において、画像をデジタルで捕捉することができる。取得した画像を、次いで、サンプル中の免疫チェックポイントタンパク質の量、又は目的のマーカーについて陽性な細胞の絶対数、又は目的のマーカーについて陽性な細胞の表面を定量的又は半定量的に決定するために使用しうる。IHCに使用するのに適切な種々の自動化サンプル処理、走査及び分析系は当技術分野において利用可能である。かかる系は、自動化染色及び顕微鏡走査、コンピューター画像分析、連続切片比較(サンプルの方向及びサイズの変動についての対照に対する)、デジタル報告作成、及びサンプル(例えば、組織切片が配置されているスライド)のアーカイブ化及び追跡を含みうる。慣用的な光学顕微鏡をデジタル画像処理系と組み合わせて、細胞及び組織、例えば免疫染色したサンプルにおいて定量的な解析を行う細胞イメージング系が市販されている。例えば、CAS-200系(Becton, Dickinson社)を参照のこと。具体的には、検出は、手動、又はコンピュータープロセッサー及びソフトウェアを伴う画像処理技術によって行うことができる。かかるソフトウェアを使用して、例えば、画像を、例えば染色品質又は染色強度を含む要素に基づいて、当技術分野の当業者に公知の手法を使用して、設定し、較正し、標準化及び/又は検証することができる(例えば、公開された米国特許公開第20100136549号を参照のこと)。画像を、サンプルの染色の強度に基づいて、定量的又は半定量的に分析し、スコア付けすることができる。定量的又は半定量的な組織化学は、組織化学を受けたサンプルを走査及びスコア付けし、特定のバイオマーカー(すなわち免疫チェックポイントタンパク質)の存在を特定及び定量化する方法を指す。定量的又は半定量的な方法は、染色の密度、又は染色の量を検出するためのイメージングソフトウェア、又は人の目によって染色を検出する方法を使用してよく、ここで、訓練を受けたオペレーターが結果を数字によってランク付けする。例えば、画像は、ピクセルカウントアルゴリズム及び組織認識パターン(例えば、Aperio Spectrum Software、Automated QUantitatative Analysisプラットフォーム(AQUA(登録商標)プラットフォーム)、又はIlastic及びCalopixソフトウェアを備えたTribvn)、及び染色の程度を測定、又は定量化、若しくは半定量化する他の標準的な方法を使用して定量的に解析することができる、例えば米国特許第8,023,714号、米国特許第7,257,268号、米国特許第7,219,016号、米国特許第7,646,905号、米国特許出願公開第20100136549号、及び第20110111435号;Campら(2002) Nature Medicine, 8:1323-1327; Bacusら(1997) Analyt Quant Cytol Histol, 19:316-328)を参照のこと。強力な陽性染色(例えば褐色染色)の全染色領域の総和に対する比率を算出し、スコア付けしてもよい。検出されたバイオマーカー(すなわち、免疫チェックポイントタンパク質)の量を定量化し、陽性ピクセルのパーセンテージ比率として及び/又はスコアとして示す。例えば、量は、陽性ピクセルのパーセント比率として定量化してもよい。いくつかの例において、量は、染色した面積のパーセント比率、例えば、陽性ピクセルのパーセント比率として定量する。例えば、サンプルは、全染色領域と比較して、少なくとも、又は少なくとも約、又は約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上の陽性ピクセルを有していてよい。例えば、量は、目的のマーカーについて陽性の細胞の絶対数として定量化しうる。いくつかの実施形態において、サンプルの組織化学的染色の強度又は量を数字的に表し、サンプル中に存在する標的バイオマーカー(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)の量を表すスコアがサンプルに示される。光学的な密度又は面積のパーセント比率の値を、例えば、整数スケールでスケール付けしたスコアで示してもよい。
【0070】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、i)生物学的マーカーに選択的に相互作用することができる結合パートナーを使用することによって、自動化スライド染色系によって得られた1つ又は複数の組織切片の免疫染色薄片を提供する工程、ii)工程i)のスライドを高解像度走査捕捉によって、デジタル化を行う工程、iii)デジタル画像上で組織切片の薄片を検出する工程、iv)同一表面を有する均一に分布された単位を有するサイズ参照グリッドを提供し、前記グリッドが、解析する組織切片のサイズに適合されている工程、及びv)各単位内の染色細胞の強度又は絶対数を検出、定量及び測定する工程からなる工程を含む。
【0071】
多重組織解析技術は、腫瘍組織サンプルにおけるいくつかの免疫チェックポイントタンパク質を定量化するのに特に有用である。いくつかの技術によって、少なくとも5つ、又は少なくとも10又はそれ以上のバイオマーカーの、単一の腫瘍組織サンプルからの測定が可能になっている。更に、癌細胞及び非癌細胞におけるバイオマーカーの局在を保存すること、及びバイオマーカーの存在を区別することができることは、前記技術の利点である。かかる方法は、層化免疫組織化学(L-IHC)、層化発現走査(LES)又は多重組織免疫ブロッティング(MTI)を含み、これらは、例えば、米国特許第6,602,661号、第6,969,615号、第7,214,477号、及び第7,838,222号、米国特許出願公開第2011/0306514号(参照により本明細書に組み込まれる)、及びChung & Hewitt, Meth Mol Biol, Prot Blotting Detect, Kurlen & Scofield, eds. 536: 139-148, 2009に教示されており、各参照文献は、8まで、9まで、10まで、11まで、又はそれ以上の、層化し、ブロッティングされたメンブレン、紙、及びフィルター等の上の組織切片の画像を作成することを教示している。L-IHC/MTIプロセスを実行するのに有用なコーティングしたメンブレンは、20/20 GeneSystems社(Rockville、MD)から入手可能である。
【0072】
いくつかの実施形態において、L-IHC方法は、新鮮であっても保存されていても、任意の種々の組織サンプルにおいて行うことができる。サンプルは、病理学部門において日常的に10%の通常の緩衝化ホルマリンで固定され、処理されたコア針生検を含んでいた。標準的な5μm厚の組織切片を、組織ブロックから、架電したスライド上に切り出し、これをL-IHCに使用した。したがって、L-IHCにより、組織切片から複数の、生物親和性コーティングしたメンブレンに転写した分子のコピーを得ることによって、組織切片における複数のマーカーを試験し、組織「画像」のコピーを本質的に作製することが可能になる。パラフィン切片の場合、組織切片は、当技術分野で知られているように、例えば、切片をキシレン又はキシレン代替物、例えばNEO-CLEAR(登録商標)及びグレード化エタノール溶液に暴露して、脱パラフィン化する。切片を、プロテイナーゼ、例えば、パパイン、トリプシン、及びプロテイナーゼK等によって処理することができる。次いで、積層を介して、例えばタンパク質等のチャネル組織分子まで0.4μm孔径のポアを有する10μm厚のコーティングしたポリマー骨格の複数のシートを含むメンブレン基板の積層を組織切片上に配置する。流体及び組織分子の運動は、メンブレン表面に本質的に垂直になるように構成されている。切片、メンブレン、スペーサー紙、吸収紙、及びおもり等のサンドイッチを、熱に暴露し、組織からメンブレン積層への分子の移動を促進しうる。組織のタンパク質の一部を積層の生物親和性コーティングしたメンブンレンのそれぞれで捕捉する(20/20 GeneSystems社、Rockville、MDから入手可能)。したがって、各メンブレンは、組織のコピーを含み、標準的な免疫ブロッティング技術を使用して異なるバイオマーカーについて探索することができ、これによって単一の組織切片上で行われるマーカープロファイルの制約のない拡張が可能になる。タンパク質の量は、積層中で組織から遠位になる程メンブレン上で低くなる可能性があり、これは例えば組織サンプル中の異なる量の分子、組織サンプルから放出された分子の異なる移動度、メンブレンへの分子の異なる結合親和性、移行の長さ等に生じうるものであるため、値の正規化、実行対照、及び組織分子等の移行レベルを評価すること等が、
メンブレン内、メンブレン間、及びメンブレンの中で生じる変化を訂正し、メンブレン内、メンブレン間、及びメンブレンの中の情報の直接的な比較を可能にするための手法に含まれてもよい。ここで、総タンパク質は、メンブレン当たり、例えば、タンパク質の定量化のための任意の手段、例えば、標準的な試薬及び方法を使用して、入手可能な分子、例えばタンパク質のビオチン化を使用し、次いで、メンブレンを、当業者に公知のように、標識化したアビジン又はストレプトアビジン、タンパク質染色液、例えばBlot fastStain、Ponceau Red、ブリリアントブルー染色液等に暴露することによって、結合したビオチンを明らかにすることによって、決定することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、バイオマーカーを測定するためのMTI(Multiplex Tissue Imprinting)技術を使用しており、ここで、前記方法は、複数のバイオマーカー、いくつかの場合には少なくとも6つのバイオマーカーを許容することによって、正確な生検組織を保存している。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明の一部としても使用しうる代替的な多重組織解析系が存在する。かかる一技術は、質量分析ベースの選択反応モニタリング(SRM)アッセイ系(OncoPlexDx社(Rockville、MD)から利用可能な「Liquid Tissue」)である。この技術は、米国特許第7,473,532号に記載されている。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、GE Global Research社(Niskayuna、NY)により開発された多重IHC技術を使用していた。前記技術は、米国特許技術出願公開第2008/0118916号及び第2008/0118934号に記載されている。ここで、連続的な解析を、複数の標的を含む生物学的サンプルにおいて行い、解析は、蛍光プローブをサンプルに結合させた後、シグナルを検出し、次いでプローブを不活化した後に、プローブの他の標的へ結合させ、検出及び不活化を行い、このプロセスを、全ての標的を検出するまで続ける。
【0076】
いくつかの実施形態において、多重組織イメージングは、蛍光(例えばフルオロフォア又は量子ドット)を使用して行うことができ、この場合、マルチスペクトルイメージング系を用いてシグナルを測定することができる。マルチスペクトルイメージングは、画像の各ピクセルにおける分光学的情報を収集し、得られたデータをスペクトル画像-処理ソフトウェアで解析する技術である。例えば、前記系は、電子工学的に連続して選択することができ、次いでかかるデータの取り扱い用に設計された解析プログラムを使用する、異なる波長における一連の画像を取得することができる。前記系は、したがって、色素のスペクトルが高度に重複している、又は共局在している、又はサンプル中の同じ点に生じる場合であっても、スペクトル曲線が異なっていれば、複数の色素から同時に定量的な情報を取得することができる。多くの生物学的物質は自己蛍光を発するか、又は高エネルギーの光によって励起されると、低エネルギーの光を発する。このシグナルにより、画像及びデータのコントラストが低くなる場合がある。マルチスペクトルイメージング能のない高感度のカメラは、蛍光シグナルと共に自己蛍光を上昇させるのみである。マルチスペクトルイメージングは、組織からの自己蛍光を分離、又は区別し、それによって、達成可能なシグナル対ノイズ比率を上昇させることができる。手短に述べると、定量化は以下の工程、i)患者から得た腫瘍組織マイクロアレイ(TMA)を供給する工程、ii)TMAサンプルを次いで目的の免疫チェックポイントタンパク質の特異性を有する抗抗体を用いて染色する工程、iii)腫瘍及び間質の自動セグメント化を補助するために、上皮細胞マーカーでTMAスライドを更に染色する工程、iv)前記TMAスライドを、次いでマルチスペクトルイメージング系を用いて走査する工程、v)走査した画像を、強力なパターン認識アルゴリズムによって特定の組織の検出、定量化及びセグメント化を可能にする自動化画像解析ソフトウェア(例えばPerkin Elmer Technology社)を用いて処理する工程、によって行うことができる。機械学習アルゴリズムは、典型的には、腫瘍を間質からセグメント化し、標識化した細胞を特定するように予め訓練されていた。
【0077】
患者から得た腫瘍サンプル中の遺伝子の発現レベルの決定は、当技術分野において周知された技術のパネルによって実施しうる。
【0078】
典型的には、遺伝子の発現レベルを、この遺伝子によって産生されるmRNAの量を決定することによって評価する。
【0079】
mRNAの量を決定するための方法は当技術分野において周知されている、例えば、サンプル(例えば、患者から調製した細胞又は組織)中に含まれる核酸を、最初に標準的な方法、例えば溶解酵素又は化学溶液を用いて抽出するか、又は製造者の指示にしたがって核酸結合樹脂によって抽出する。この方法で抽出したmRNAを、次いでハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット解析)及び/又は増幅(例えば、RT-PCR)によって検出する。好ましくは、定量的又は半定量的なRT-PCRが好ましい。リアルタイム定量的又は半定量的RT-PCRは特に好都合である。
【0080】
他の増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、TMA(transcription-mediated amplification)、SDA(strand displacement amplification)及び核酸配列ベース増幅(NASBA)、RNAの定量的次世代シーケンシング(NGS)が挙げられる。
【0081】
少なくとも10ヌクレオチドを含み、目的のmRNAに対して配列相補性又は相同性を示す核酸は、本明細書において、ハイブリダイゼーションのプローブ又は増幅プライマーとして有用である。かかる核酸は、同等のサイズの相同領域に、完全に同一である必要はないが、典型的には、少なくとも約80%同一であり、より好ましくは85%同一であり、より更に好ましくは90~95%同一である。特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションを検出するための適当な手段、例えば検出可能な標識と組み合わせて核酸を使用することが好都合であろう。広範の適切な指示薬が当技術分野において公知であり、蛍光、放射活性、酵素、又は他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)が含まれる。
【0082】
プローブは、典型的には、長さ10~1000ヌクレオチド、例えば、10~800、より好ましくは15~700、典型的には20~500ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。プライマーは、典型的には、増幅する目的の核酸に完全に、又は殆ど完全に適合するように設計された、長さ10~25ヌクレオチドのより短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的」である、すなわち、それらは好ましくは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(最高融解温度Tm、例えば50%ホルムアミド、5x又は6x SCCに相当。SCCは、0.15M NaCl、0.015M Na-クエン酸塩である)でハイブリダイズする。
【0083】
上記の増幅及び検出方法で使用しうる核酸プライマー及びプローブは、キットとして組み立ててもよい。かかるキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が起こったかを決定するために必要な構成要素も含む。キットは、また、例えば、PCR緩衝液及び酵素、陽性対照配列、反応対照プライマー、及び特定の配列を増幅及び検出するための指示書を含んでいてもよい。
【0084】
特定の実施形態において、本明細書に記載する生物学的マーカーの発現は、生物マーカー(そのDNA、RNA、又はタンパク質である)をデジタルオリゴヌクレオチドバーコードを用いてタグ付けすることによって、バーコードの数を測定又は計数して評価しうる。
【0085】
特定の実施形態において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを供給する工程、前記RNAを増幅及び特定のプローブに対するハイブリダイゼーションに、より具体的には定量的又は半定量的なRT-PCRを用いて供する工程を含む。
【0086】
開示する方法を使用して作製したプローブは、核酸検出、例えばインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)手法(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、発色性インサイチュハイブリダイゼーションCISH)及び銀インサイチュハイブリダイゼーション(SISH))、又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)に使用しうる。
【0087】
インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)は、中期又は間期染色体調製物(例えば、スライド上にマウントした細胞又は組織サンプル)の状況において、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)を含むサンプルを、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)に特異的にハイブリダイズできるか、又は特異的である標識化プローブに接触させることを伴う。スライドを、例えば、パラフィン、又は均一なハイブリダイゼーションを干渉しうる他の物質を除くために、任意選択で前処理してもよい。サンプル及びプローブを、例えば、二本鎖核酸を加熱変性させることによって共に処理する。プローブ(適切なハイブリダイゼーション緩衝液中で製剤化)及びサンプルを、ハイブリダイゼーションが生じる(典型的には、平衡に達する)のを可能にする条件下で十分な時間組み合わせる。染色体調製物を洗浄して過剰なプローブを除き、染色体標的の特異的な標識化の検出を、標準的な技術を使用して行う。
【0088】
例えば、ビオチン化されたプローブは、フルオロセイン標識化アビジン又はアビジン-アルカリホスファターゼを使用して検出しうる。蛍光色素検出のために、蛍光色素は直接的に検出しても、又はサンプルを、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートしたアビジンと共にインキュベートしてもよい。FITCシグナルの増幅は、必要に応じて、ビオチンコンジュゲートしたヤギ抗アビジン抗体と共にインキュベートし、洗浄し、FITCコンジュゲートしたアビジンと共に2回目のインキュベートを行うことによって行うことができる。酵素活性による検出のために、サンプルを、例えば、ストレプトアビジンと共にインキュベートし、洗浄し、ビオチンコンジュゲートしたアルカリホスファターゼと共にインキュベートし、再び洗浄し、前平衡化(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)緩衝液中)しうる。インサイチュハイブリダイゼーション手法の一般的な記述については、例えば、米国特許第4,888,278号を参照されたい。
【0089】
FISH、CISH、及びSISHについての多数の手法が当技術分野において公知である。例えば、FISHを行うための手法は、米国特許第5,447,841号、第5,472,842号、及び第5,427,932号、並びに、例えば、Pinkelら、Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986、Pinkelら、Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988、及びLichterら、Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9664-9668, 1988に記載されている。CISHは、例えば、Tannerら、Am. J. Pathol. 157:1467-1472, 2000、及び米国特許第6,942,970号に記載されている。更なる検出方法は、米国特許第6,280,929号に示されている。
【0090】
多数の試薬及び検出スキームを、感度、解像度、又は他の所望の性質を改善するために、FISH、CISH、及びSISH手法と組み合わせて使用しうる。上述のように、フルオロフォア(蛍光色素及びQUANTUM DOTS(登録商標)を含む)により標識化したプローブを、FISHを行う際に、任意選択で、直接的に検出してもよい。或いは、プローブは、非蛍光分子、例えばハプテン(例えば、以下の非限定的な例、ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、及び種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物、及びその組合せ)、リガンド、又は他の間接的に検出可能な実体を用いて標識化しうる。かかる非蛍光分子によって標識化したプローブ(及びそれらが結合する標的核酸配列)は、次いで、サンプル(例えば、プローブが結合する細胞又は組織サンプル)を、標識化した検出試薬、例えば選択したハプテン又はリガンドに特異的な抗体(又は受容体、又は他の特異的な結合パートナー)に接触させることによって検出しうる。検出試薬は、フルオロフォア(例えば、QUANTUM DOT(登録商標))、又は他の間接的に検出可能な実体によって標識化しても、又は、フルオロフォアによって標識化されていてもよい、1つ又は複数の更なる特異的な結合剤(例えば、二次又は特異的な抗体)と接触させてもよい。
【0091】
他の例において、プローブ又は特異的な結合剤(例えば、抗体、例えば、一次抗体、受容体、又は他の結合剤)を、蛍光発生性又は発色性組成物を、検出可能な蛍光、有色、又は他の方法で(例えば、SISHにおける検出可能な金属粒子の沈着のような)検出可能なシグナルに変換することができる酵素で標識化する。上記のように、酵素は、リンカーを介して関連するプローブ又は検出試薬に直接的又は間接的に結合させることができる。適切な試薬(例えば、結合試薬)及び化学(例えば、リンカー及び結合化学)の例は、米国特許出願公開第2006/0246524号、第2006/0246523号、及び第2007/0117153号に記載されている。
【0092】
標識化したプローブと特異的な結合剤の対を適切に選択することによって、多重検出スキームを、単一のアッセイ(例えば、単一の細胞若しくは組織サンプル、又は2つ以上の細胞若しくは組織サンプル)において複数の標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)の検出を促進するように作製することができることは当技術分野の当業者には理解されるであろう。例えば、第1の標的配列に対応する第1のプローブを、第1のハプテン、例えばビオチンを用いて標識化し、第2の標的配列に対応する第2のプローブを、第2のハプテン、例えばDNPを用いて標識しうる。サンプルをプローブに暴露した後、結合したプローブを、サンプルを第1の特異的な結合剤(この場合、第1のフルオロフォア、例えば、第1の、例えば、585mnで放出する、スペクトルが特徴的なQUANTUM DOT(登録商標)で標識化したアビジン)及び第2の特異的な結合剤(この場合、第2のフルオロフォア(例えば、705mnで放出する、スペクトルが特徴的なQUANTUM DOT(登録商標))で標識化した、抗DNP抗体、又は抗体断片)に接触させることによって検出することができる。他のスペクトルが特徴的なフルオロフォアを使用して多重検出スキームに更なるプローブ/結合剤の対を、追加してもよい。多数の直接的及び間接的(1ステップ、2以上のステップ)を想定することができ、それらは全て、開示するプローブ及びアッセイの状況において適切である。
【0093】
プローブは、典型的には、長さ10~1000ヌクレオチド、例えば、10~800、より好ましくは15~700、典型的には20~500ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。プライマーは、典型的には、増幅する目的の核酸に完全に、又は殆ど完全に適合するように設計された、長さ10~25ヌクレオチドのより短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的」である、すなわち、それらは好ましくは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(最高融解温度Tm、例えば50%ホルムアミド、5x又は6x SCCに相当。SCCは、0.15M NaCl、0.015M Na-クエン酸塩である)でハイブリダイズする。
【0094】
上記の増幅及び検出方法で使用する核酸プライマー及びプローブは、キットとして組み立てられてもよい。かかるキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が起こったかを決定するために必要な構成要素も含む。前記キットは、また、例えば、PCR緩衝液及び酵素、陽性対照配列、反応対照プライマー、及び特定の配列を増幅及び検出するための指示書を含んでいてもよい。
【0095】
特定の実施形態において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを供給する工程、前記RNAを増幅及び特定のプローブに対するハイブリダイゼーションに、より具体的には定量的又は半定量的なRT-PCRを用いて供する工程を含む。
【0096】
他の好ましい実施形態において、発現レベルをDNAチップ解析によって決定する。かかるDNAチップ又は核酸マイクロアレイは、マイクロチップ、ガラススライド又は微粒子サイズのビーズでありうる基板に化学的に結合した異なる核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスティック、樹脂、多糖、シリカ又はシリカベースの物質、炭素、金属、無機ガラス、又はニトロセルロースによって構成されていてもよい。プローブは、約10~約60塩基対でありうる核酸、例えばcDNA又はオリゴヌクレオチドを含む。発現レベルを決定するために、任意選択で逆転写に最初に供した、試験対象由来のサンプルを、標識化して、ハイブリダイゼーション状況下でマイクロアレイと接触させ、マイクロアレイ表面と結合したプローブ配列に相補的な標的核酸間の複合体の形成がもたらされる。標識化したハイブリダイズした複合体を次いで検出し、定量化又は半定量化しうる。標識化は、種々の方法、例えば放射活性又は蛍光標識を使用して達成しうる。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形は、当技術分野の当業者に利用可能である(例えば、Hoheiselによる総説、Nature Reviews, Genetics, 2006, 7:200-210を参照)。
【0097】
遺伝子の発現レベルは、絶対発現レベル又は基準化発現レベルとして表しうる。両方の種類の値を本発明の方法で使用しうる。遺伝子の発現レベルは、定量的PCRを、発現レベルの評価方法として使用する場合、基準化発現レベルとして表すことが好ましく、これは、試験の開始時のわずかな差異が、多数のサイクル後には大きな差異をもたらしうるためである。
【0098】
典型的には、発現レベルは、遺伝子の絶対発現レベルを、患者の癌ステージの決定に関連しない遺伝子、例えば恒常的に発現しているハウスキーピング遺伝子の発現と比較することによって補正することによって基準化する。基準化に適切な遺伝子としては、ハウスキーピング遺伝子、例えば、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1、及びTFRCが挙げられる。この基準化によって、1サンプル、例えば患者のサンプルの発現レベルを、他のサンプルの発現レベルと比較する、又は異なる入手源由来のサンプルを比較することが可能になる。
【0099】
治療剤
本明細書において、癌に罹患している患者において化学療法剤を用いた処置レジメンを決定、調節又は調整する方法を提供し、ここで、前記剤は、腫瘍標的化免疫応答を活用するか、又は促進することができる。
【0100】
前記処置は、ネオアジュバント療法(すなわち、原発性腫瘍の外科学的切除前の処置)のアジュバント療法(すなわち、原発性腫瘍の外科的切除後の処置)からなっていてもよい。
【0101】
「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を阻害するのに有効な化学物質を指す。
【0102】
Galluzziら、2016, Cancer Immunol Res, 4(11): 895-902、及びGalluzziら、2015, Cancer Cell Review, 28(6): 690-714に記載されているように、腫瘍標的化免疫応答を引き起こす剤は、悪性細胞の免疫原性(抗原性、又はアジュバント性)を上昇させるか(「オンターゲット」免疫刺激)、又は免疫エフェクター若しくは免疫抑制細胞集団と相互作用する(「オフターゲット」免疫刺激)。
【0103】
好ましい実施形態において、化学療法剤は、ICD(immunologic cell death)を引き起こすことができる。殆どが非免疫原性であるか、又は寛容原性ですらある、通常のアポトーシスとは異なり、癌細胞の免疫原性のアポトーシスは、樹状細胞(DC)の活性化及びそれに続く特異的なT細胞応答の活性化を介して効果的な抗腫瘍免疫応答を誘導しうる。
【0104】
最も好ましい実施形態において、化学療法剤は、白金又は白金の塩、誘導体又は類似体、例えばオキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチンであり、前記化学療法剤は、単独で使用しても、又は他の化学療法剤、例えばフルオロピリミジン、例えば5-フルオロウラシル(5FU)及び/又はカペシタビンと組み合わせて使用してもよい。好ましくは、化学療法剤はオキサリプラチンであり、単独で使用するか、又は5-フルオロウラシル(5FU)及び/又はカペシタビンと組み合わせて使用する。特定の実施形態において、治療は、FOLFOX(オキサリプラチン+5FU)、mFOLFOX6(オキサリプラチン+5FU+ロイコボリン)、又はCAPOX(オキサリプラチン+カペシタビン)である。
【0105】
或いは、腫瘍標的化免疫応答を活用する、又は促進することができる他の化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
ブレオマイシン
ボルテゾミブ
アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)
ダカルバジン
タキソイド(例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル)
アントラサイクリン、例えばドキソルビシン
フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル又はカペシタビン)
イリノテカン
ゲムシタビン
イダルビシン
メルファラン
ペメトレキセド
ビノレルビン。
【0106】
最も好ましくは、化学療法剤は、ICDを誘導することができ、例えば、白金、又は白金の塩、誘導体又は類似体、例えばオキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン、並びにブレオマイシン、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、又はアントラサイクリン、例えばドキソルビシンである。
【0107】
特定の実施形態において、化学療法剤は、他の治療剤、例えば免疫療法剤(例えば、抗体)と組み合わせうる。
【0108】
参照値
比較のために使用される予め決定した参照値は、本明細書に記載するように決定しうる「カットオフ」又は「閾値」の値を含みうる。目的の各遺伝子についての各参照(「カットオフ」)値は、
a) 癌を罹患している患者由来の腫瘍組織サンプルのコレクションを供給する工程、
b) 工程a)において供給されたコレクションに含まれている各腫瘍組織サンプルについての遺伝子又はタンパク質の発現レベルを決定する工程、
c) 前記発現レベルにしたがって腫瘍組織サンプルをランク付けする工程、
d) 発現レベルにしたがってランク付けしたメンバーの数を上昇、それぞれ低下させるサブセットの対に前記腫瘍組織サンプルを分類する工程、
e) 工程a)において供給された各腫瘍組織サンプルについて、対応する癌患者についての実際の臨床予後に関連する情報(すなわち、無病生存(DFS)又は全生存(OS)の期間、又は再発までの時間(TTR)又は両方)を供給する工程、
f) 腫瘍組織サンプルのサブセットの各対について、生存曲線のカプランマイヤーパーセント比率を得る工程、
g) 腫瘍組織サンプルのサブセットの各対について、両方のサブセット間の統計学的な有意性(p値)を算出する工程、
h) 発現レベルについての参照値として、p値が最小である発現レベルの値を選択する工程を含む方法を行うことによって、予め決定しうる。
【0109】
例えば、遺伝子Xの発現レベルを、100人の患者の100の癌サンプルについて評価した。100のサンプルを、その発現レベルにしたがってランク付けする。サンプル1は、最高の発現レベルを有し、サンプル100は最低の発現レベルを有する。第1の分類は、2つのサブセット、一方にサンプル番号1及びに99の他のサンプルを供給する。次の分類は、一方にサンプル1及び2、並びに他方に残りの98サンプルが提供される等であり、一方にサンプル1~99、他方にサンプル番号100が供給される最後の分類まで行う。対応する癌患者についての実際の臨床予後に関連する情報にしたがって、カプランマイヤー曲線を、2つのサブセットの99群のそれぞれについて作製する。また、99群のそれぞれについて、両方のサブセット間のp値を算出した。
【0110】
参照値を、最小p値の判定基準に基づいた識別が最も強くなるように選択する。言い換えれば、p値が最小である両方のサブセット間の境界に対応する発現レベルを参照値と考える。参照値は、必ずしも発現レベルの中間値ではないことは留意するべきである。
【0111】
日常的な業務において、参照値(カットオフ値)は、腫瘍サンプル、したがって対応する患者を識別するために本発明の方法において使用することができる。
【0112】
時間関数としての、生存のパーセント比率のカプランマイヤー曲線は一般的に、処置後の一定量の時間、生存している患者の割合を測定するものであり、当技術分野の当業者には周知である。
【0113】
当技術分野の当業者はまた、遺伝子の発現レベルの評価の同一の技術は、当然参照値を得、その後、本発明の方法に供された患者の遺伝子の発現レベルの評価のために使用するべきであることを理解する。
【0114】
かかる予め決定した発現レベルの参照値を、本明細書において規定する任意の遺伝子について決定しうる。
【0115】
例えば、国際公開第2017/194556号に記載するように、参照値は、前記癌に罹患している患者の参照群からのCD3及びCD8のそれぞれについて得られた値の分布でありうる。次いで、本発明の方法は、CD3及びCD8のそれぞれを定量化する場合に得られる値が対応する分布のパーセンタイルを決定すること、パーセンタイルの算術平均値又は中間値を算出すること、及び得られたパーセンタイルの算術平均値又は中間値を、パーセンタイルの予め決定した参照算術平均値又は予め決定した中央値と比較することを含む。
【0116】
患者が結腸直腸癌を有する患者である場合、予め決定した参照値は、Pagesら、Lancet 2018; 391: 2128-2139に記載されているものであってもよい。癌免疫療法学会によって主導されている、13の国の14センターの国際コンソーシアムは、TNMステージI~III結腸癌を有する患者においてImmunoscoreアッセイを評価した。患者をトレーニングセット、内部バリデーションセット、又は外部バリデーションセットに無作為に割り当てた。各患者由来の結腸腫瘍及び浸潤性辺縁のパラフィン切片を、免疫組織化学によって処理し、腫瘍及び浸潤性辺縁におけるCD3+及び細胞障害性CD8+T細胞の密度を、デジタルパソロジーによって定量化した。各患者についてのImmunoscoreは、4の密度パーセンタイルの平均から得た。最初のエンドポイントは、外科手術から疾患再発までの時間として定義される、再発までの時間についてのImmunoscoreの予後値を評価することであった。層別化多変量コックスモデルを、Immunoscoreと予後との間の相関を評価するのに使用し、潜在的な交絡因子について調整した。HarrellのC統計量を、モデル性能を評価するために使用した。
【0117】
特定の実施形態において、実施例において「Immunoscore (IS)」と称する、患者の免疫状態を2群(低、中間+高)、又は3群(低、中間、高)に以下のように分類しうる:
4つのマーカー(CD3ct、CD8ct、CD3im、CD8im)の4つの個々のパーセンタイルの平均パーセンタイルを決定し、これは、CT及びIM領域におけるCD3細胞の密度、及びCT及びIM領域におけるCD8細胞の密度に対応しており、
- 低ISは、25%未満の平均パーセンタイルに対応する、
- 中間ISは、25%~70%の平均パーセンタイルに対応する、
- 高ISは、70%超の平均パーセンタイルに対応する。
【0118】
処置レジメンを処理又は調節する方法
慣用的な化学療法レジメンによれば、抗癌薬を最大耐用量の付近又はその用量で、サイクルで投与し、これは患者の有害な薬剤反応からの回復を可能にする長期の薬物を使用しない期間と交互でありうる。
【0119】
例えば、典型的な結腸癌化学療法はカペシタビン、LV5FU2、CAPOX、FOLFOX4、又はmFOLFOX6であり、好ましくは次のレジメンにしたがって投与される:
・ カペシタビン:1日に2回、14日間(サイクル期間)投与される、1250mg/m2のカペシタビン、サイクルは3週間ごとに繰り返す、
・ LV5FU2:46時間(サイクル期間)投与される、400mg/m2の5-FUb (5-フルオロウラシル、ボーラス)及び2400の5-FUc(5-フルオロウラシル、連続)と組み合わせた、400mg/m2のAF(フォリン酸)、サイクルは2週間ごとに繰り返す、
・ CAPOX:14日間(サイクル期間)の1日目から、1日2回投与される、1000mg/m2のカペシタビンと組み合わせた、130mg/m2のオキサリプラチン、サイクルは3週間ごとに繰り返す、
・ FOLFOX4:1日目に投与される、85mg/m2のオキサリプラチン、400mg/m2のAF、400mg/m2の5-Fub、及び600mg/m2の5-FUc、その後、2日目(サイクル期間:2日間)に投与される、400mg/m2のAF、400mg/m2の5-Fub、600mg/m2の5-FUc、サイクルは2週間ごとに繰り返す、
・ mFOLFOX6:46時間(サイクル期間)投与される、85mg/m2のオキサリプラチン、400mg/m2のAF、400mg/m2の5-Fub、2400mg/m2の5-FUc、サイクルは2週間ごとに繰り返す。
【0120】
本発明のインビトロ方法に基づいて、本明細書において、当業者は、処置レジメンを、患者が前記処置からより利益を得やすくなるように決定、調節又は調整しうる。
【0121】
用量、投与の頻度(すなわちサイクル数)及び/又は処置期間を適宜適合させてもよい。
【0122】
本明細書において、癌に罹患している患者の、化学療法剤を用いた処置に対する感度を決定する方法を提供し、ここで、前記剤は、好ましくは免疫学的細胞死(ICD)を引き起こすことによって、腫瘍標的化免疫応答を活用するか、又は促進することができ、前記方法は、患者由来の腫瘍サンプルにおいてCD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化することを含む。
【0123】
本明細書において、また、癌に罹患している患者を処置する方法が提供されており、前記方法は、患者由来の腫瘍サンプルにおいてCD8及びCD3である少なくとも2つの生物学的マーカーを定量化すること、a)で得られた値を予め決定した参照値と比較すること、及びc)-a)で得られた値が、予め決定した参照値を上回っている場合、
癌に罹患している患者における化学療法剤用量、処置期間及び/又は投与頻度を標準的な処置参照と比較して調整することであって、前記剤が腫瘍標的化免疫応答を活用するか、又は促進することができること、又は
- 前記化学療法剤を含まない治療レジメンによって患者を処置すること
を含む。
【0124】
「積算用量」は、処置期間にわたって患者に投与される剤の量を指す。
【0125】
積算用量は、1つ又はいくつかのパラメーター、例えば投与頻度(例えば、2つの投与サイクル間の期間)、投与のサイクル期間、及び/又は各投与についての用量を扱うことによって調節しうる。
【0126】
特定の実施形態において、規則正しいプロトコルを実施することによって化学療法を調節することが考えられる。「規則正しい化学療法」は、最大耐用量(MTD)を下回る用量における、薬剤がない長期の中断期間がない、頻繁な化学療法剤の投与である。
【0127】
或いは、処置のサイクルは、予め決定した頻度(例えば、5日間~15日間、好ましくは5日間~10日間)で繰り返してもよい。(試験セクションで提示するように)処置の期間は延長してもよい。
【0128】
特定の例を下記に示す。
【0129】
オキサリプラチンベースの化学療法を投与する場合の典型的なレジメンは、サイクル性の投与(1~3日間、2週間又は3週間ごと)であり、3カ月の処置後の約400~500mg/m2の積算用量、又は6カ月の処置後の600~800mg/m2の積算用量をもたらす。本発明の方法によって、6カ月の過程にわたって、600~800mg/m2の積算用量で処置した場合に、中間又は高ISを示す患者に利益をもたらすことが可能になる。
【0130】
結腸直腸癌を有する患者が好ましい。
【0131】
化学療法剤は、任意の慣用的な経路、好ましくは静脈内経路によって投与してもよい。規則正しい化学療法を考える場合、経口経路が好ましい場合がある。
【0132】
実施例及び図面は、範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【実施例】
【0133】
略語:mFOLFOX6:改変FOLFOX6治療(注入5-フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン)、CAPOX:カペシタビン(capecitadine)+オキサリプラチンによる治療、IS: CD8及びCD3細胞密度に対応するImmunoscore(登録商標)状態、高:高IS値、低:高IS値、中間:中間IS値、IM:浸潤性辺縁、CT:腫瘍コア、MSI:マイクロサテライト不安定性、DFS:無病生存、RMST:境界内平均生存期間、TNM分類:米国癌合同委員会によって定義される腫瘍、リンパ節及び転移の癌ステージ(Green FL, Page D, Fleming ID: American Joint Cancer Committee Staging Handbook, 6th edition, New York, NY Springer, 2002)、T:原発性腫瘍ステージ(例えば、TX、T0、T1~T4)、N: N領域リンパ節(例えば、NX、N0、N1~N4)、M:転移ステージ(例えば、MX、M0、M1)。
【0134】
1.材料及び方法
ステージIIIの結腸癌(CC)に罹患しており、3カ月又は6カ月にわたってmFOLFOX6及び/又はCAPOX治療の投与を受けることを意図した1322人の患者を本解析に含めた。
【0135】
腫瘍サンプルを各患者について、処置前、処置間に2週間ごと、及びその後5年間にわたって6カ月ごとに収集する。
【0136】
Andreら、2018, J Clin Oncol 36.1-11に記載されているように、6カ月の期間において、患者ごとに投与される、オキサリプラチン(mFOLFOX6による)用量の中間値は、732.39mg/m2(平均:8.9サイクル)であった。
【0137】
対照的に、3カ月の期間において、患者ごとに投与される、オキサリプラチン用量の中間値は、494.22mg/m2(mFOLFOX6による)、又は504.44mg/m2(CAPOXによる)であった。
【0138】
患者ごとに1つのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックを、Immunoscore(登録商標) Sample Preparation Instructionsにしたがって、センター病理学研究室(Hopital Ambroise Pare, Boulogne, FR)において選択した。手短に述べると、4μm厚の隣接するFFPE切片から調製した、1つのFFPEブロック又は4つの非染色標識化スライドのいずれかを室温で2つの研究室に送り(HalioDx社、Marseille、France; Immunomonitoring Platform、Hopital Europeen Georges Pompidou AP-HP、INSERM、Paris、France)、ここで、Immunoscore(登録商標)試験(免疫組織化学(IHC)及び画像解析)、すなわちCD3及びCD8発現の測定を、臨床データに盲検的に行った。BenchMark XT (Ventana)における自動化免疫組織化学を、切片作製の4カ月以内に行った。切片を製造者が推奨するように、一次抗体、ウサギモノクローナル抗ヒトCD3(クローンHDx2 HalioDx社、Marseille、FR)及びマウスモノクローナル抗ヒトCD8(クローンHDx1 HalioDx社、Marseille、FR)と共に37℃においてインキュベートした。対比染色スライドをNanoZoomer XR(Hamamatsu)で、20xの倍率及び0.45μm/ピクセルの解像度においてデジタル化した。
【0139】
画像解析ソフトウェアを、自動組織検出(腫瘍、健常非上皮組織及び上皮)し、画像解析系に組み込んだソフトウェアアルゴリズム(Immunoscore(登録商標)Analyzer、HalioDx社、Marseille、FR)を使用して、腫瘍コア(CT)及び浸潤性辺縁(IM)の両方において、mm2当たりの細胞数によって、染色した免疫CD3+及びCD8+細胞の密度を定量化するのに使用した(Pagesら、Lancet 2018; 391: 2128-2139; Hermitteら、2016 ; 4: 57)。IMを、悪性細胞と腫瘍周囲の間質との間の領域の各側の360μmの幅の領域として定義し、これを自動に作製した。CD3+及びCD8+T細胞密度を、ステージI~IIIの結腸癌を有する患者について以前に開発されたアルゴリズムによって、予め規定したカットオフを用いてImmunoscore(登録商標)に変換した(Pagesら、上記、Hermitteら、2016 ; 4: 57)。Immunoscore(登録商標)は、標準化したパーセンタイル値(0~100%)を利用し、アルゴリズムは、連続的なImmunoscore(登録商標)を、IS0、IS1、IS2、IS3及びIS4にそれぞれ対応する[0~10%]、[>10~25%]、[>25~70%]、[>70~95%]、及び[>95~100%]の平均パーセンタイルによって、予め規定した密度スコアを使用して5群に分類する。3群分類は、それぞれ、Immunoscore(登録商標)低、中間及び高である、IS0~1、IS2、及びIS3~4に対応し、2群への分類は、それぞれ、Immunoscore(登録商標)低及び高である、IS0~1(平均パーセンタイル0~25%)及びIS2~3~4(平均パーセンタイル>25~100%)に対応する。
【0140】
FFPEブロックに問題がある場合、サンプル特定に問題がある場合、組織が裂けている又は折り畳まれている場合、IHC染色のバックグラウンドが高い場合、又は腫瘍領域(CT又はIM)が見られない場合、サンプルは適格ではなかった。Immunoscore(登録商標)解析の品質管理のために、腫瘍領域(CT又はIM)からCD3又はCD8カウント数が見られなかった場合、又は染色強度が低いと考えられた場合、サンプルを解析から除いた。
【0141】
2. 結果
2.1. 患者特性及びIS決定
処置前及び処置間の利用可能な腫瘍サンプルを有するステージIIIの結腸癌(CC)に罹患している、2010人のうちの計1322人の患者を解析に含めた。
【0142】
患者の集団全体と比較して、低リスクの患者のより低い集団(T1~T3N1)及び特にT1-ステージ腫瘍が、Immunoscore(登録商標)特性決定について利用可能なサンプルを有する患者において観察された(Table1(表1))。
【0143】
【0144】
利用可能なサンプルの中で、82のサンプルを前解析による非相似性によって除外した。専用のソフトウェアは、CD3及びCD8染色強度をモニターし、ISを決定した(
図1A)。内部品質管理を提供するこの手法によって、染色した細胞の計数についての一貫性(Pagesら、2018、上記)及びIS評価に関連する2つのセンター間のIS再現性が可能になった(
図1B)。全体として、1062の症例(85.6%)が、品質管理に達した。
【0145】
免疫密度の2カテゴリーISスコア付け系への翻訳後(
図1C)、IS低、及び中間+高が、それぞれ、n=599(43.6%)及びn=463(56.4%、47%中間及び9.4%高を含む)の患者において観察された。
【0146】
2.2. IS関連予後値
2カテゴリーにおけるISは、Tステージ、T/Nステージ(T1~3及びN1、対T4及び/又はN2)、及びマイクロサテライト不安定性(MSI)状態と有意に相関していた。
【0147】
試験の最初の目的は、満たされており、これは、患者集団において2カテゴリー(低vs中間+高)のISによって層別化した患者群間のDFSの有意な差が単変量解析によって証明されており(HR= 1.54 (95%CI 1.24-1.93); P=0.0001)、カプランマイヤー曲線によって例示されているためである(Table 3及び
図2A)。3年DFS率は、IS低及びIS中間+高のそれぞれについて、66.80%[95%CI 62.23~70.95]及び77.14% [95%CI 73.50~80.35]であった。連続的な変数としてのIS (Table 2(表2))もまた、DFSと有意に相関していた(P<0.0001)。
【0148】
【0149】
したがって、3カテゴリー(
図2B)及び5カテゴリーにおいて層別化したISによって、DFS時間について患者予後を更に識別する(ログランク検定、全てP<0.001)。ISを3カテゴリーに層別化すると、3年DFS率が、IS低の患者については67%であったのに対し、IS高の患者では85%が観察された。ISを5カテゴリーに層別化すると、最低のIS(IS0)の患者は、最高のIS(IS4)の群における100%(再発又は死亡なし)と比較して、55%の3年DFS率を示した。
【0150】
最後に、境界内平均生存期間(RMST)を、ISによる生存期間分布の代替的な尺度として更に試験した。RMSTは、IS高vs IS低サブグループに対するDFS解析において有意であり、ログランクP値及びHR解析と同様であった。例えば、再発又は死亡事象(DFS)についてのRMSTは、Immunoscore低の患者と比較して、Immunoscore高の患者では367日間増加していた。
【0151】
多変量解析において、ISは、性別、組織学的グレード、Tステージ、Nステージ及びMSI状態と組み合わせた際に、有意にかつ独立して、DFSと相関したままであった(Table 1(表1))。更に、ISは、T/Nステージ分類(高危険性T4及び/又はN2、低危険性T1~3及びN1)と組み合わせた際に、独立してDFSと相関したままであった。ISをT/Nステージに追加することによって、モデル識別能が有意に改善した[ブートストラップC指数平均差異0.022、95%CI 0.005~0.04]。
【0152】
2.3. T/NステージサブグループによるISの予後値
有意な相関が、IS2、3又は5のカテゴリーと、低危険性T1~3及びN1腫瘍を有する患者のサブグループにおける再発又は死亡の発生との間に見出された(ログランク検定)全てP<= 0.001)(
図3を参照のこと)。
【0153】
高危険性T4及び/又はN2腫瘍の患者において、IS分類は、有意には達しなかったが、最高ISは、事象の危険性が最低である患者において恒常的に観察され、再発又は死亡の危険性は、ISの低下に伴って徐々に上昇した(
図2))。
【0154】
2.4. 本発明によるアジュバントFOLFOX6化学療法の期間の間のISの予測値
3カ月及び6カ月アームでmFOLFOX6の投与を受けたそれぞれ492人及び481人の患者を解析した。高危険性腫瘍(T4及び/又はN2腫瘍)は、コホートの38.4%(n=408患者)を表していた。
【0155】
3カ月のFOLFOX6レジメンと比較して、6カ月レジメンの有益な効果が、(中間+高)ISの患者において観察された(HR=0.528; 95%CI 0.372~0.750、ログランクP=0.0004、
図3A)。この利点は、低危険性腫瘍(T1~T3及びN1; HR=0.467、ログランクP=0.010)及び高危険性腫瘍(T4及び/又はN2腫瘍、HR=0.542、ログランクP=0.0067)においても維持されていた(
図3A)。
【0156】
顕著なことに、6カ月-FOLFOX6レジメンの有意な利点が低ISの患者については観察されなかった(HR=0836、ログランクP=0.269、(
図3B)。これらの患者において、軽度の6カ月FOLFOX6レジメンの利点が最初の3年においては観察されたが、その後解消された。この傾向は、高危険性腫瘍の群ではより顕著であった(
図3B)。免疫浸潤の密度と6カ月化学療法の利点の間の関係性を更に検討するために、ISを連続的な変数として評価した。3年時のDFS率(%)を用いて評価した、6カ月の化学療法の臨床的な利点は、ISが高くなる程より重要になる。
【0157】
免疫浸潤の密度と6カ月化学療法の利点との関係を更に検討するために、ISを5カテゴリーに層別化した。結果は、6カ月の化学療法から最も利益を得る集団は、中間ISを有する患者であることを示している。
【0158】
3. 考察
Immunoscore(登録商標)(IS)試験は、以前に、ステージI~III結腸癌(CC)患者を予後的に分類することが示されている。本明細書において、この試験は、癌の仏国コホート試験において、種々の癌ステージ(TNMステージT1~T3、N1、T4、N2)にある患者における3カ月対6カ月のオキサリプラチンベースのアジュバント化学療法を試験するために評価した。
【0159】
各患者の腫瘍及び浸潤性辺縁におけるCD3+及び細胞障害性CD8+T細胞の密度を、デジタルパソロジーによって定量化し、測定したCD3及びCD8密度によって、予め規定した公開されているカットオフを使用してImmunoscore(登録商標)状態(高、低、中間)に変換した。Immunoscore(登録商標)の無病生存(DFS)を予測する性能を、各試験アームにおいて、改変した処置意図集団において評価し、多変量コックスモデルにおける関連する臨床的特性を用いて調整した。HarrellのC統計量を使用して、IS性能を検討した。
【0160】
ISの1062人(85.6%)の適格な患者における解析が成功した。2カテゴリーのIS解析において、低及び中間+高ISが、それぞれn=599 (43.6%)及びn=463 (56.4%)の患者において観察された。ISは、Tステージ、T/Nステージ(T1~3及びN1対T4及び/又はN2)及びマイクロサテライト不安定性状態と有意に相関していた。この試験はこれによって、低ISが、再発又は死亡の危険性がより高い患者を特定することを検証している[HR=1.54; 95%CI 1.24~1.93、p=0.0001]。3年DFS率は、低IS及び中間+高ISのそれぞれについて、66.80% [95%CI 62.23~70.95]及び77.14% [95%CI 73.50~80.35]であった。多変量解析について、ISは、T/Nステージと組み合わせた場合、独立してDFSとの相関を維持していた(p<0.0012)。ISをT/Nステージに追加することによって、モデル識別能が有意に改善した[ブートストラップC指標平均差異0.022; 95%CI 0.005~0.04]。更に、3カテゴリー(低、中間、高)における、及び連続的な変数としてのISもまた、共にDFSと有意に相関していた(全てp<0.001)。単変量解析において、ISはまた、6カ月アームにおいてDFSと相関しており(p<0.0001)、類似の傾向が3カ月アームにおいて観察された(p=0.09)。
【0161】
本試験は、低危険性(T1~T3、N1)及び高危険性(T4及び/又はN2)ステージIII群の両方において、3カ月と比較して、6カ月のmFOLFOX6治療からは、中間又は高IS状態を有する患者のみが、利益を得ることを示している。
【国際調査報告】