(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】直接選別によるT細胞の製造方法およびその組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220804BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220804BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220804BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220804BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220804BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20220804BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220804BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220804BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220804BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220804BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20220804BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220804BHJP
C07K 14/545 20060101ALN20220804BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20220804BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20220804BHJP
C07K 14/535 20060101ALN20220804BHJP
C07K 14/56 20060101ALN20220804BHJP
C07K 14/565 20060101ALN20220804BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20220804BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/21
A61K38/20
A61K38/19
A61K31/675
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/519
A61K35/76
C12Q1/04
C07K16/00
C07K14/545
C07K14/55
C12M1/34 B
C07K14/535
C07K14/56
C07K14/565
C12N15/117 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571966
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020036398
(87)【国際公開番号】W WO2020247802
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】102019129341.3
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520184664
【氏名又は名称】イマティクス ユーエス,アイエヌシー.
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】アルパート,アミール
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】スミス,アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】モハメド,アリ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA04
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ36
4B063QR48
4B063QS32
4B063QS33
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065BA22
4B065BD39
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA14
4C084DA16
4C084DA19
4C084DA21
4C084DA22
4C084DA23
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086DA35
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA03
4H045DA04
4H045DA12
4H045DA16
4H045DA17
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、患者またはドナーから得られた血液サンプルからCD8+T細胞を単離するステップと、単離されたCD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含有する多量体と、T細胞表面分子に結合する少なくとも1つの結合剤とを接触させるテップと、接触されたCD8+T細胞を選別し、第1および第2の検出可能薬剤について陽性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップとを含み、その中では、多量体が第1の検出可能な薬剤で標識され、結合剤が第2の検出可能な薬剤で標識される、T細胞を調製するための方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる第1の多量体と、MHC分子との複合体中の無関係のペプチドを含んでなる第2の多量体とを接触させるステップと、
前記接触されたCD8+T細胞を選別し、前記第1の検出可能薬剤について陽性と検出され、前記第2の検出可能薬剤について陰性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、
前記収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップと
を含んでなる、T細胞を調製する方法であって、
前記第1の多量体が第1の検出可能薬剤で標識され、前記第2の多量体が第2の検出可能薬剤で標識され、
前記第1の検出可能な薬剤が、前記第2の検出可能な薬剤と異なり、
前記無関係のペプチドが、前記標的ペプチドと50%未満の配列同一性を有する、方法。
【請求項2】
前記接触させるステップが、前記第1の検出可能薬剤に結合する第1の結合剤および/または前記第2の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の結合剤および前記第2の結合剤が抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触させるステップが、約4℃~約37℃で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させるステップが、タンパク質キナーゼ阻害剤(PKI)の存在下で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PKIが、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダサチニブ、エヌトレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選別、前記収集、および前記増殖が、閉鎖系で実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的ペプチドが、配列番号141のアミノ酸配列からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記無関係のペプチドが、配列番号1~140および142~161からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記無関係のペプチドが、配列番号16、18、105、118、および161から選択される少なくとも1つである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、
培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる第1の多量体と、MHC分子との複合体中の無関係のペプチドを含んでなる第2の多量体とを接触させるステップと、
前記接触されたCD8+T細胞を選別し、前記第1の検出可能薬剤について陽性と検出され、前記第2の検出可能薬剤について陰性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、前記収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップと
を含んでなる、T細胞を調製する方法であって、
前記第1の多量体が第1の検出可能薬剤で標識され、前記第2の多量体が第2の検出可能薬剤で標識され、
前記第1の検出可能な薬剤が、前記第2の検出可能な薬剤と検出可能に異なる、方法。
【請求項12】
前記血液サンプルが、末梢血単核細胞(PBMC)または白血球アフェレーシス産物である、請求項11に記載の方法
【請求項13】
前記血液サンプルが患者から得られる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項14】
前記血液サンプルがドナーから得られる、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのサイトカインが、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-7、IL-10、IL-15、IL-17、IL-21、およびIL-23から選択される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記多量体多量体が四量体である、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記MHC分子がクラスIMHC分子である、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1および前記第2の検出可能薬剤が、それぞれ蛍光化合物を含んでなる、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記選別および前記収集が、マイクロチップベースの細胞選別装置を使用して実行される、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロチップベースの細胞選別装置が、単回使用、使い捨て、および完全に閉じたマイクロ流体チップ細胞選別装置である、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記増殖させるステップが、少なくとも1つのサイトカインの存在下で実施される、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-1、IL-2、IL-7、IL-10、IL-15、IL-17、IL-21、およびIL-23から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記選別、前記収集、および前記増殖が、閉鎖系で実行される、請求項11~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記接触させるステップが、前記第1の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤および/または前記第2の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤の存在下で実施される、請求項11~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の結合剤および前記第2の結合剤が抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触させるステップが、約4℃~約37℃で実施される、請求項11~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記無関係のペプチドが、配列番号1~161からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項11~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
MHC分子との複合体中の前記無関係のペプチドが、MHC分子との複合体中の前記標的ペプチドと同じT細胞に結合しない、請求項11~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記接触させるステップが、タンパク質キナーゼ阻害剤(PKI)の存在下で実施される、請求項11~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記PKIが、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダサチニブ、エヌトレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記接触させるステップが、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる、第3の多量体の存在下で実施される、請求項11~30のいずれか一項に記載の方法であって、前記第3の多量体が第3の検出可能薬剤で標識され、前記第3の検出可能薬剤が、前記第1および前記第2の検出可能薬剤と、検出可能に異なり、前記選別するステップが、前記第1および前記第3の検出可能薬剤について陽性と検出され、前記第2の検出可能薬剤について陰性と検出された、前記選別されたCD8+T細胞を収集するステップを含んでなる、方法。
【請求項32】
前記多量体が、前記接触させるステップで使用される前に、濾過される、請求項11~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記血液サンプルが、約0.1×10
6個の細胞/ml~約1000×10
6個の細胞/ml、約1×10
6個の細胞/ml~約900×10
6個の細胞/ml、約5×10
6個の細胞/ml~約800×10
6個の細胞/ml、約10×10
6個の細胞/ml~約700×10
6個の細胞/ml、約20×10
6個の細胞/ml~約600×10
6個の細胞/ml、約25×10
6個の細胞/ml~約500×10
6個の細胞/ml、約30×10
6個の細胞/ml~約400×10
6個の細胞/ml、約35×10
6個の細胞/ml~約300×10
6個の細胞/ml、約40×10
6個の細胞/ml~約200×10
6個の細胞/ml、約45×10
6個の細胞/ml~約150×10
6個の細胞/ml、約50×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約55×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約60×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約65×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約70×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約75×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約80×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約85×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約90×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、または約95×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/mlの濃度の細胞を含んでなる、請求項11~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記T細胞を調製するための前記方法が、前記単離されたT細胞を培養するステップに先だってまたはその最中に、前記T細胞を活性化するための抗原提示細胞の使用、またはCD3、CD28、CD134、CD278、またはCD137に対する作動薬の使用を含まない、請求項11~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記増殖したT細胞を単離するステップと取得するステップの間の期間が、約7日~約14日、約7日~約21日、約7日~約28日、約14日~約21日、約14日~約28日、または約21日~約28日である、前記増殖したT細胞を取得するステップをさらに含んでなる、請求項11~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、CD8+T細胞でなくCD4+T細胞を単離するステップ、またはCD4+T細胞とCD8+T細胞の双方を単離するステップを含んでなる、請求項11~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記単離されたCD8+T細胞を培養するステップが、前記単離されたCD8+T細胞が活性化されないように、T細胞活性化剤の非存在下で実行される、請求項11~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
血液サンプルと、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる、第1の検出可能薬剤で標識された第1の多量体と、
MHC分子との複合体中の前記標的ペプチドと異なる無関係のペプチドを含んでなる、第2の検出可能薬剤で標識された第2の多量体と
を接触させるステップと、
前記接触された細胞を選別し、前記第1の検出可能薬剤について陽性と検出され、第2の検出可能薬剤前記について陰性と検出された前記選別された細胞を収集するステップと、
前記収集されたT細胞を増殖させるステップとを含んでなる、T細胞を調製する方法であって、
前記第1および前記第2の検出可能薬剤が、検出可能に異なる検出可能薬剤である、方法。
【請求項39】
前記血液サンプルが、末梢血単核細胞(PBMC)または白血球アフェレーシス産物である、請求項38に記載の方法
【請求項40】
前記血液サンプルが患者から得られる、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記血液サンプルがドナーから得られる、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記接触させるステップが、前記第1の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤および/または前記第2の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤の存在下で実施される、請求項38~41のいずれか一項に記載の1に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の結合剤および前記第2の結合剤が抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記接触させるステップが、約4℃~約37℃で実施される、請求項38~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記無関係のペプチドが、配列番号1~161からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
MHC分子との複合体中の前記無関係のペプチドが、MHC分子との複合体中の前記標的ペプチドと同じT細胞に結合しない、請求項38~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記接触させるステップが、タンパク質キナーゼ阻害剤(PKI)の存在下で実施される、請求項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記PKIが、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダサチニブ、エヌトレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記接触させるステップが、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる、第3の多量体の存在下で実施される、請求項38~48のいずれか一項に記載の方法であって、前記第3の多量体が第3の検出可能薬剤で標識され、前記第3の検出可能薬剤が、前記第1および前記第2の検出可能薬剤と、検出可能に異なり、前記選別するステップが、前記第1および前記第3の検出可能薬剤について陽性と検出され、前記第2の検出可能薬剤について陰性と検出された、前記選別されたCD8+T細胞を収集するステップを含んでなる、方法。
【請求項50】
前記多量体が、前記接触させるステップで使用される前に、フィルターを通して濾過される、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記T細胞を調製するための前記方法が、前記単離されたT細胞を培養するステップに先だってまたはその最中に、前記T細胞を活性化するための抗原提示細胞の使用、またはCD3、CD28、CD134、CD278、またはCD137に対する作動薬の使用を含まない、請求項38~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記増殖したT細胞を単離するステップと取得するステップの間の期間が、約7日~約14日、約7日~約21日、約7日~約28日、約14日~約21日、約14日~約28日、または約21日~約28日である、前記増殖したT細胞を取得するステップをさらに含んでなる、請求項38~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記血液サンプルが、約0.1×10
6個の細胞/ml~約1000×10
6個の細胞/ml、約1×10
6個の細胞/ml~約900×10
6個の細胞/ml、約5×10
6個の細胞/ml~約800×10
6個の細胞/ml、約10×10
6個の細胞/ml~約700×10
6個の細胞/ml、約20×10
6個の細胞/ml~約600×10
6個の細胞/ml、約25×10
6個の細胞/ml~約500×10
6個の細胞/ml、約30×10
6個の細胞/ml~約400×10
6個の細胞/ml、約35×10
6個の細胞/ml~約300×10
6個の細胞/ml、約40×10
6個の細胞/ml~約200×10
6個の細胞/ml、約45×10
6個の細胞/ml~約150×10
6個の細胞/ml、約50×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約55×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約60×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約65×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約70×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約75×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約80×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約85×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、約90×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/ml、または約95×10
6個の細胞/ml~約100×10
6個の細胞/mlの濃度の細胞を含んでなる、請求項38~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~53のいずれか一項に記載の方法によって調製された前記ペプチド特異的T細胞を含んでなる、組成物。
【請求項55】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記アジュバントが、抗CD40抗体、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、インターフェロン-α、インターフェロン-β、CpGオリゴヌクレオチド、ポリ-(I:C)、RNA、シルデナフィル、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLG)を含む粒子状製剤、ビロソーム、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、IL-23から選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
請求項54~56のいずれか一項に記載の組成物を前記患者に投与することを含んでなる、がんを有する特許を治療する方法であって、前記がんが、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん(BRCA)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、および子宮がん(UEC)から選択される、方法。
【請求項58】
患者におけるがんの治療で使用するための、請求項37~39のいずれか一項に記載の組成物であって、前記組成物が、前記患者に投与され、前記がんが、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん(BRCA)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、および子宮がん(UEC)から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、養子免疫療法のためのT細胞を製造する方法に関する。本開示は、T細胞およびT細胞集団を使用する方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法(ACT)は、宿主に生産的免疫応答を生じさせる。T細胞は、患者の血液または腫瘍から採取され、次に生体外培養システム内で成長および増殖するように刺激されてもよい。十分な生体外増殖後、これらの細胞は宿主に再注入されてもよく、そこで理想的には腫瘍破壊を媒介する。したがって、このプロセスは、介入前には生産的な抗がん応答を保有しないように見える、がん患者の大多数に適用可能である。
【0003】
様々な形態の抗原と刺激細胞とを抗原提示細胞(APC)として用いるインビトロ法は、以前の抗原への生体内曝露によって宿主中でプライミングされた、例えば、ウイルス特異的な、生体外メモリーT細胞を増殖させるのに有効であることが示されている。
【0004】
非特許文献1は、腫瘍特異的CD8+T細胞クローンが、単球由来樹状細胞(DC)による患者由来(自系)またはドナー由来(同種異系)のT細胞の抗原特異的刺激を繰り返すことで、生体外で生成されてもよいこと、およびウィルムス腫瘍抗原1(WT1)ペプチド特異的CD8+T細胞の成功裏の増殖が、細胞培養条件に、より大きく依存するようであることを教示する。しかし、Ho et al.,は、増殖前に活性化または刺激されなかったT細胞を増殖させることによる、腫瘍特異的CD8+T細胞クローンの生成は教示していない。
【0005】
非特許文献2は、同種異系造血幹細胞移植後に再発した白血病患者におけるWT1に対する活性を有する、同種異系CD8+T細胞の使用を開示している。クローンは、ヒト白血球抗原(HLA)適合ドナー細胞の白血球アフェレーシスと、例えば、樹状細胞などのペプチドパルス自己APCによる数ヶ月にわたる反復刺激とによって、生成されてもよい。養子移入されたリンパ球は、患者の血液中で長期間検出可能なままであり、これらの高再発リスク患者の2/11で一過性の応答が観察され、別の3人では安定した疾患が観察された。しかし、Chapuis et al,は、増殖前に活性化または刺激されなかったT細胞を増殖させることによる、WT1特異的CD8+T細胞クローンの生成は教示していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ho et al. J Immunol Methods 2006;31040-52
【非特許文献2】Chapuis et al. Sci Transl Med 2013;5:174ra27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ACTのためのT細胞を製造するための、簡単で効率的で費用効果の高い方法に対する必要性がある。この技術的問題の解決策が、本明細書で提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示は、患者またはドナーから得られた血液サンプルからCD8+T細胞を単離するステップと、単離されたCD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含有する多量体と、T細胞表面分子に結合する少なくとも1つの結合剤とを接触させるテップと、接触されたCD8+T細胞を選別し、第1および第2の検出可能な薬剤について陽性と検出された選別されたCD8+T細胞を収集し、収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップとを含む、T細胞を調製するための方法に関し、その中では、多量体は第1の検出可能な薬剤で標識され、結合剤は第2の検出可能な薬剤で標識され、その中では、第1の検出可能な薬剤は、第2の検出可能な薬剤と検出可能に異なる。
【0009】
別の態様では、多量体は、一価または多価の様式で関心のある標的ペプチドを含有する、HLA複合体、分子、またはペプチド配列であってもよい。
【0010】
別の態様では、接触させるステップは、MHC分子との複合体中に無関係のペプチドを含有する、多量体の存在下で実施されてもよい。
【0011】
別の態様では、単離されたCD8+T細胞を培養させるステップは、単離されたCD8+T細胞が活性化されないように、T細胞活性化剤の非存在下であってもよい。
【0012】
別の態様では、培養されたCD8+T細胞を接触させるステップは、多量体の存在下で、結合剤の非存在下であってもよい。
【0013】
別の態様では、少なくとも1つの結合剤は、抗体であってもよい。
【0014】
別の態様では、結合剤は、例えば、デキストラマーなどの多量体であってもよい。
【0015】
別の態様では、この方法は、収集されたCD8+T細胞を選別し、増殖前に第1および第2の検出可能な薬剤について陽性と検出された収集されたCD8+T細胞を得るステップをさらに含んでもよい。
【0016】
別の態様では、血液サンプルは、末梢血単核細胞(PBMC)または白血球アフェレーシス産物であってもよい。
【0017】
別の態様では、血液サンプルは、患者から得られてもよい。
【0018】
別の態様では、血液サンプルは、ドナーから得られてもよい。
【0019】
別の態様では、少なくとも1つのサイトカインは、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびIL-23から選択されてもよい。
【0020】
別の態様では、多量体は、四量体であってもよい。
【0021】
別の態様では、MHC分子は、クラスIMHC分子であってもよい。
【0022】
別の態様では、第1および第2の検出可能薬剤はそれぞれ、蛍光化合物を含んでもよい。
【0023】
別の態様では、T細胞表面分子は、TNAIVE細胞表面マーカーを含んでもよい。
【0024】
別の態様では、TNAIVE細胞表面マーカーは、CD45、CD197、CD28、CD27、IL-7受容体(IL-7Rα)、CD57、CD95、CD127、およびCD62Lから選択されてもよい。
【0025】
別の態様では、選別は、例えば、BD(Becton, Dickinson) FACS(Fluorescence-activated cell sorting)(登録商標)選別装置などの任意の細胞選別装置を用いて実施されてもよい。
【0026】
別の態様では、増殖は、少なくとも1つのサイトカインの存在下で実施されてもよい。
【0027】
別の態様では、選別、収集、および増殖は、閉鎖系で実施されてもよい。
【0028】
別の態様では、閉鎖としては、CliniMACS Prodigy(商標)、WAVE(XURI(商標))バイオリアクター、BioSafe Sepax(商標)IIと組み合わされたWAVE(XURI(商標))バイオリアクター、G-Rex/GatheRex(商標)閉鎖系、またはBioSafe Sepax(商標)IIと組み合わされたG-Rex/GatheRex(商標)閉鎖系が挙げられてもよい。
【0029】
一態様では、本開示は、患者またはドナーから得られた血液サンプルからCD8+T細胞を単離するステップと、単離されたCD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中のペプチドを含有する第1の多量体と、MHC分子との複合体中のT細胞表面分子に結合する第1の結合剤、第1の多量体に含有されるペプチドとは異なる無関係のペプチドを含有する第2の多量体と、第1の多量体に結合する第2の結合剤とを接触させるステップと、接触されたCD8+T細胞を選別し、第1のおよび第2の検出可能薬剤について陽性と検出され、第3の検出可能薬剤について陰性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップとを含む、T細胞を調製するための方法に関し、その中では、第1の多量体は第1の検出可能な薬剤で標識されてもよく、第1の結合剤は第2の検出可能な薬剤で標識され、その中では、第2の多量体は、第3の検出可能薬剤で標識されもよく、その中では、第1、第2、および第3の検出可能薬剤は、検出可能薬剤と検出可能に異なってもよい。
【0030】
別の態様では、第2の結合剤は、第1の検出可能薬剤に結合する。
【0031】
別の態様では、第1の検出可能薬剤は、少なくとも2つの蛍光色素を含んでなる。
【0032】
別の態様では、接触させるステップは、タンパク質キナーゼ阻害剤(PKI)の存在下で実施されてもよい。
【0033】
別の態様では、PKIは、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダサチニブ、エヌトレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、バンデタニブ、またはベムラフェニブから選択されてもよい。
【0034】
別の態様では、T細胞活性化剤の除外は、抗原提示細胞の除外を含んでもよい。
【0035】
別の態様では、T細胞活性化剤の除外は、抗CD3抗体および抗CD28抗体の除外を含んでもよい。
【0036】
一態様では、本開示は、本開示の方法によって調製された、ペプチド特異的T細胞を含有する組成物に関する。
【0037】
別の態様では、組成物は、アジュバントをさらに含有してもよい。
【0038】
別の態様では、アジュバントは、抗CD40抗体、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、インターフェロン-α、インターフェロン-β、CpGオリゴヌクレオチド、ポリ-(I:C)、RNA、シルデナフィル、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLG)を含む粒子状製剤、ビロソーム、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、およびIL-23から選択されてもよい。
【0039】
一態様では、本開示は、本開示の組成物を患者に投与するステップを含む、がんを有する患者を治療する方法に関し、その中では、前記がんは、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん(BRCA)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、および子宮がん(UEC)から選択されてもよい。
【0040】
別の態様では、接触させるステップは、約1nM~約1000nM、約1nM~約900nM、約1nM~約800nM、約1nM~約700nM、約1nM~約600nM、約1nM~約500nM、約1nM~約400nM、約1nM~約300nM、約1nM~約200nM、約1nM~約100nM、約5nM~約100nM、約10nM~約100nM、約20nM~約100nM、約30nM~約100nM、約40nM~約100nM、約50nM~約100nM、約60nM~約100nM、約70nM~約100nM、約10nM~約250nM、約20nM~約200nM、約30nm~約150nm、または約50nM~約120nMの濃度のPKIの存在下で実施されてもよい。
【0041】
別の態様では、本開示は、患者またはドナーから得られた血液サンプルからCD8+T細胞を単離するステップと、単離されたCD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる第1の多量体と、MHC分子との複合体中の無関係のペプチドを含んでなる第2の多量体とを接触させるステップと、接触されたCD8+T細胞を選別し、第1の検出可能薬剤について陽性と検出され、第2の検出可能作用物質について陰性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップとを含む、T細胞を調製するための方法に関し、その中では、第1の多量体は第1の検出可能薬剤で標識され、第2の多量体は第2の検出可能薬剤で標識され、その中では、第1の検出可能な薬剤は、第2の検出可能な薬剤と検出可能に異なる。
【0042】
一態様では、本開示は、CD8+T細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、培養されたCD8+T細胞と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含有する多量体と、T細胞表面分子に結合する少なくとも1つの結合剤とを接触させるテップと、接触されたCD8+T細胞を選別し、第1および第2の検出可能薬剤について陽性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップと、収集されたCD8+T細胞を増殖させるステップとを含む、T細胞を調製するための方法に関し、その中では、多量体が第1の検出可能な薬剤で標識され、結合剤が第2の検出可能な薬剤で標識され、その中では、第1の検出可能な薬剤は、第2の検出可能な薬剤と検出可能に異なる。
【0043】
別の態様では、本開示は、血液サンプルと、MHC分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる、第1の検出可能薬剤で標識された第1の多量体と、MHC分子との複合体中の標的ペプチドと異なる無関係のペプチドを含んでなる第2の多量体とを接触させるステップと、接触された細胞を選別し、第1の検出可能薬剤について陽性と検出され、第2の検出可能薬剤について陰性と検出された選別された細胞を収集するステップと、収集されたT細胞を増殖させるステップとを含む、T細胞を調製するための方法に関し、ここで第2の多量体は、第2の検出可能薬剤で標識され、その中では、第1および第2の検出可能薬剤は、検出可能に異なる検出可能薬剤である。
【0044】
別の態様では、接触させるステップは、第1の検出可能薬剤に結合する第1の結合剤および/または第2の検出可能薬剤に結合する第2の結合剤の存在下で実施されてもよい。
【0045】
別の態様では、第1の結合剤および第2の結合剤は、抗体であってもよい。
【0046】
別の態様では、接触させるステップは、約4℃、室温、約37℃、約2℃~約8℃、約18℃~約26℃、または約32℃~約38℃で実施されてもよい。
【0047】
別の態様では、無関係のペプチドは、配列番号1~161からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0048】
別の態様では、接触させるステップは、MHC分子との複合体中に標的ペプチドを含有する、第3の多量体の存在下で実施されてもよく、その中では、第3の多量体は、第3の検出可能薬剤で標識され、その中では、第3の検出可能薬剤は、第1および第2の検出可能薬剤と検出可能に異なってもよく、その中では、選別するステップは、第1および第3の検出可能薬剤について陽性と検出され、第2の検出可能薬剤について陰性と検出された、選別されたCD8+T細胞を収集するステップを含んでなる。
【0049】
別の態様では、多量体は、接触させるステップで使用される前に、フィルターを通して濾過されてもよい。
【0050】
別の態様では、血液サンプルは、約0.1×103個の細胞/ml~約1000×104個の細胞/ml、約5×105個の細胞/ml~約900×105個の細胞/ml、約2×105個の細胞/ml~約800×105個の細胞/ml、約10×105個の細胞/ml~約700×105個の細胞/ml、約20×105個の細胞/ml~約600×105個の細胞/ml、約25×105個の細胞/ml~約500×105個の細胞/ml、約30×105個の細胞/ml~約400×105個の細胞/ml、約35×105個の細胞/ml~約300×107個の細胞/ml、約40×105個の細胞/ml~約200×106個の細胞/ml、約45×106個の細胞/ml~約150×106個の細胞/ml、約50×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約55×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約60×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約65×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約70×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約75×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約80×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約85×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、約90×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/ml、または約95×106個の細胞/ml~約100×106個の細胞/mlの濃度の細胞を含有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】従来のT細胞製造プロセスと、本開示の一実施形態による直接選別T細胞製造との比較を示す。
【
図2】A-D MLAペプチド選別のためのCD8+細胞単離を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、MLA選別の結果を示す。
【
図6】A 本開示の一実施形態による、出発物質中のT細胞の記憶表現型を示す。 B 本開示の別の実施形態による、MLA直接選別後のT細胞の記憶表現型を示す。
【
図7】四量体陽性前駆体の大部分がT
NAIVE細胞である、直接選別後の記憶表現型を示す。
【
図8】四量体陽性前駆体の大部分がCD27およびCD62Lを発現するT
NAIVE細胞である、直接選別後の記憶表現型を示す。
【
図9】A-D MAGEA1選別のためのCD8+細胞単離を示す。
【
図10】本開示の一実施形態によるMAGEA1選別を示す。
【
図11】本開示の別の実施形態によるMAGEA1選別を示す。
【
図12】本開示の別の実施形態によるMAGEA1選別を示す。
【
図13】本開示の別の実施形態によるMAGEA1選別を示す。
【
図14】本開示の別の実施形態によるMAGEA1選別を示す。
【
図15】A MLAおよびMAGEA1直接選別されたT細胞のREP1後の細胞数、生存率、および倍数増殖を示す。 B MLAおよびMAGEA1直接選別されたT細胞のREP2後の細胞数、生存率、および倍数増殖を示す。
【
図16】A-B MLAおよびMAGEA1で直接選別されたT細胞のREP1後およびREP2後のCD3+CD8+細胞をそれぞれ示す。
【
図17】A-B MLAおよびMAGEA1で直接選別されたT細胞のREP1後およびREP2後のTet+CD8+細胞をそれぞれ示す。
【
図19】A REP1後のAg001-002のフローサイトメトリーデータを示す。 B REP2後のAg001-002のフローサイトメトリーデータを示す。
【
図20】A MLA直接選別されたT細胞のT2殺滅アッセイを示す。 B MAGEA1直接選別されたT細胞のT2殺滅アッセイを示す。
【
図21】A 37℃でのダサチニブの存在下での細胞選別を示す。 B 室温でのダサチニブの非存在下での細胞選別を示す。
【
図22】A 本開示の一実施形態による、αCol6A3 T細胞染色のフローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の一実施形態による、αMLA T細胞染色のフローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の一実施形態による、染色αCol6A3 T細胞および染色αMLA T細胞の混合物のフローサイトメトリーデータを示す。
【
図23】A 本開示の一実施形態による、二重染色四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の一実施形態による、単一染色四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の一実施形態による、二重染色四量体および単一染色四量体のR二乗値を示す。
【
図24】A 本開示の別の実施形態による、二重染色四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の別の実施形態による、単一染色四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の別の実施形態による、二重染色四量体および単一染色四量体のR二乗値を示す。 D 本開示の別の実施形態による、二重染色四量体および単一染色四量体のR二乗値を示す。
【
図25】A 本開示の一実施形態による、単一染色四量体および抗蛍光色素抗体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の別の実施形態による、単一染色四量体および抗蛍光色素抗体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の一実施形態による、二重染色四量体および抗蛍光色素抗体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 D 本開示の別の実施形態による、二重染色四量体および抗蛍光色素抗体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 E 二重染色四量体および抗蛍光色素抗体で染色された対照細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
【
図26】本開示の一実施形態による、スパイクされたサンプルのフローサイトメトリーデータを示す。
【
図27】本開示の一実施形態による、二重染色四量体およびブロッキング剤を用いたフローサイトメトリーデータを示す。
【
図28】A 本開示の一実施形態による、室温(RT)での二重染色四量体および無関係のペプチド四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の一実施形態による、37℃での二重染色四量体および無関係のペプチド四量体を用いたフローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の一実施形態による、染色に対する無関係のペプチド四量体の効果を示す。
【
図29】本開示の一実施形態による、染色に対するダサチニブ(DAS)の効果を示す。
【
図30】本開示の一実施形態による、染色に対する温度の効果を示す。
【
図31】A 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図32】本開示のいくつかの実施形態による染色条件の染色指数を示す。
【
図33】A 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図34】A 本開示の一実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図35】A 本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図36】A 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 C
図36Aおよび
図36Bに示されるデータの棒グラフを示す。
【
図37】A 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示の一実施形態による、細胞染色におけるDAS処理ありとなしとの比較を示す。 C 本開示の一実施形態による、平均蛍光強度(MFI)におけるDAS処理ありとなしとの比較を示す。
【
図38】本開示の一実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図39】本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図40】A 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 B 本開示のいくつかの実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。 C 本開示の一実施形態による、特定のT細胞の頻度におけるDAS処理ありとなしとの比較を示す。 D 本開示の別の実施形態による、平均蛍光強度(MFI)におけるDAS処理ありとなしとの比較を示す。 E 本開示の一実施形態による、染色に対する濾過された四量体の効果を示す。
【
図41】本開示の一実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図42】本開示の別の実施形態による染色条件から得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図43】本開示の一実施形態による選別ストラテジーから得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【
図45】本開示の別の実施形態による選別ストラテジーから得られた、フローサイトメトリーデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
養子細胞療法(ACT)は、患者への細胞の移動であり、個別化された複数標的化ACTアプローチであり、その中では、T細胞製品は、特定の腫瘍タイプおよび/または個々の患者の腫瘍プロファイルに関連する腫瘍抗原のパネルから選択される、少なくとも1つの標的に対して腫瘍が陽性である患者のための、関連する腫瘍標的ペプチド抗原に対して製造されてもよい。例えば、本明細書の表1を参照されたい。
【0053】
疾患の治療または予防のためのACTは、体外で選択、操作、または改変された細胞を投与することによって実施されてもよい。より多くの細胞ベースの治療製品が、臨床試験および商業化に向けて進むにつれて、現在の製造管理および品質管理に関する基準(CGMP)に準拠したバイオプロセスの開発は困難になってきている。これは、最終製品がモノクローナル抗体のような伝統的な生物学的(分泌)分子ではなく、細胞それ自体であるためであってもよい。そのため、細胞純度の重要性とCGMP規制へのプロトコル遵守に関連する特殊な考慮事項のために、1つの焦点は細胞単離に当てられている。
【0054】
例えば、T細胞などの細胞ベースの製品の従来の製造のための一般的なステップは、収穫、減量、および単離、例えば、活性化、増殖、および/または遺伝子改変などの生体外操作、および凍結保存を含んでもよい。生体外でT細胞を生成するために、いくつかの方法が使用されてもよい。例えば、自系腫瘍浸潤性リンパ球が、細胞傷害性T細胞(CTL)を生成するために使用され得る。その内容全体が参照により本明細書に援用される、Plebanski et al.(Eur.J lmmunol 25(1995):1783-1787)は、T細胞の調製において自系末梢血リンパ球(PLB)を利用した。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自系T細胞の生成も可能である。B細胞もまた、自系T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己細胞の調製において使用されてもよい。その内容全体が参照により本明細書に援用される、S.Walter et al.(J lmmunol 171(2003)4974-4978)は、これもまた選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法である、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用した、T細胞の生体外プライミングを記載する。例えば、ポリスチレン粒子(マイクロビーズ)の表面に、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体をビオチン:ストレプトアビジンの生化学的手法で結合させることにより、aAPCが生成されてもよい。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にしてもよく、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答の選択的誘発を可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性を有するその他のタンパク質を保有してもよい。さらに、このようなaAPCベースのシステムは、例えば、インターロイキン12のようなサイトカインなどの適切な可溶性因子を含んでいてもよい。
【0055】
図1(左側フローチャート)は、PBMC単離およびCD25枯渇を含んでもよい、T細胞製造のための従来のプロセスと、それに続く(1)樹状細胞(DC)の1週間の生成、(2)DCによるT細胞の1週間の第1の刺激(Stim 1)、(3)DCによるStim 1 T細胞の1週間の再刺激(Stim 2)、(4)刺激された細胞の選別(5)選別された細胞の第1の「急速増殖プロトコル」(REP1)による2週間の増殖、および(6)REP1で増殖されたT細胞の2週間の増殖(REP2)を示す。
【0056】
本開示は、T細胞産物を生成する改善された方法を提供する。
図1(右側フローチャート)は、CD8+T細胞の単離、単離されたCD8+T細胞の刺激を含んでもよい、T細胞製造のための直接プロセスと、それに続く(1)刺激された細胞の選別(2)選別された細胞の第1の「急速増殖プロトコル」(REP1)による2週間の増殖、および(3)REP1で増殖されたT細胞の2週間の増殖(REP2)の一実施形態を示す。代案としては、選別されたT細胞は、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体などのアンタゴニスト抗体、または人工抗原提示細胞でのT細胞の刺激によって増殖されてもよい。
【0057】
一態様では、本明細書に記載の直接選別プロセスは、従来のプロセスよりも大幅に短い時間で、生存可能なT細胞の生成を提供する。例えば、
図1は、従来のプロセスが、例えば、完了するまでに約52日など、約50日~約55日かかってもよいことを示す一方で、直接選別は、例えば、完了するまでに約7日~約14日、約7日~約21日、約7日~約28日、約14日~約21日、約14日~約28日、または約21日~約28日、約30日以下など、完了するまでに30日以下、または例えば、REPの1回だけの実行など、完了するまでに約16日以下かかってもよい。
【0058】
別の態様では、直接選別プロセスは、CD8+T細胞単離を含んでもよい。CD8+T細胞は、正常組織、例えば腫瘍などの罹患組織、全血、PBMC、白血球アフェレーシス産物、および/または治療を受ける患者または健常ドナーから得られた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から単離されてもよい。
【0059】
別の態様では、CD8+T細胞の純度は、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であってもよい。
【0060】
別の態様では、直接選別プロセスは、例えば、CD8+細胞単離なしで、出発物質としてPBMCを使用して実行されてもよい。
【0061】
別の態様では、単離されたCD8+T細胞胞は、サイトカインの存在下または非存在下で組織培養中に休止させてもよい。本明細書の用法では、休止T細胞は、分裂中でないか、またはサイトカインを産生していないT細胞を意味する。休止T細胞は、活性化T細胞(およそ12~15ミクロン)と比較して、サイズが小さい(およそ6~8ミクロン)。
【0062】
一態様では、以前に生体外で活性化されていない単離されたCD8+T細胞は、サイトカインの存在下または非存在下で休止させてもよい。休止は、約0.5時間~約120時間、約0.5時間~約108時間、約0.5時間~約96時間、約0.5時間~約84時間、約0.5時間~約72時間、約0.5時間~約60時間、約0.5時間~約48時間、約0.5時間~約36時間、約12時間~約96時間、約24~72時間、約12~約60時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約2~約8時間、約3時間~約6時間、または約1時間~約5時間内に実行されてもよい。
【0063】
別の態様では、休止は、例えば、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、またはそれらの組み合わせであり得る。IL-7やIL-7IL-15などの、サイトカイン非存在下またはサイトカイン存在下で、約0.5時間~約48時間、約0.5時間~約36時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約6時間、約2時間~約5時間、約3時間~約5時間、約4時間~6時間、約1時間~約24時間、約2~約24時間、約12~約48時間、約0.5時間~約120時間、約0.5時間~約108時間、約0.5時間~約96時間、約0.5時間~約84時間、約0.5時間~約72時間、または約0.5時間~約60時間、約4~約6時間、約12時間~約96時間、約24~72時間、約12~約60時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、または約2~約8時間であってもよい。
【0064】
一態様では、直接選別プロセスは、選別前に、単離されたCD8+T細胞を活性化するステップを含まない。例えば、単離されたCD8+T細胞は、ペプチドパルスDCまたはペプチド特異的aAPCによるシグナル1を介して;および/またはCD3(例えば、抗CD3抗体)、CD28(例えば、または抗CD28抗体)、OX40(CD134)、ICOS(CD278)、および/または4-1BBL(CD137)に対する作動薬によるシグナル2を介して、活性化されなくてもよい。
【0065】
細胞選別
本発明は、細胞選別技術を利用してCD8+T細胞を単離する、より効率的な方法を包含する。表面マーカーに基づく細胞選別は、典型的には、関心のある細胞表面の特徴を特異的に認識して結合する抗体またはその他の試薬を用いる、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、パンニング、リセットなどをはじめとするが、これらに限定されるものではない、1つまたは複数の技術によって実行されてもよい。細胞内マーカーに基づく細胞選別は、細胞を固定化および透過処理し、それに続く例えば、細胞内マーカーに特異的な標識抗体での染色による、FACSを使用して実行されてもよい。リンパ球は、FACSを使用して、例えば、BD Biosciences FACS Aria IIIまたはBD Biosciences Influx(カリフォルニア州サンホセのBD Biosciences)などの市販の機器、および製造業者のプロトコルおよびキットを使用して、関心のあるサブセットに選別されてもよい。Τ細胞受容体またはΒ細胞受容体のどちらかの抗原特異性に基づくリンパ球の選別または分離は、FACSを用いて、またはFACSとMACSなどのその他の技術との組み合わせを用いて、実行されてもよい。FACS Aria(BD)などの細胞選別装置は、全ての実験毎に使い捨てることは意図されない、複雑な流体ラインを備えた圧力ポンプを使用する。これらの細胞選別装置の使用者は、相互汚染を避けるために、各実験の間に厳密な洗浄ステップを実施してもよい。
【0066】
細胞選別はまた、マイクロチップを使用して実施されてもよい。マイクロチップ上の細胞選別は、必要な機器のサイズを縮小し、潜在的バイオハザードのエアロゾルを排除し、細胞選別に一般的に関連する複雑なプロトコルを簡略化することにより、従来法に比べて多数の利点を提供する。さらに、マイクロチップデバイスは並列化に良好に適合していてもよく、細胞の単離、分析、および実験処理のための完全なラボオンチップデバイスを可能にする。
【0067】
一態様では、単離されたCD8+T細胞は、例えば、圧力ポンプまたはシリンジポンプを使用して選別のための一定の流量を有する、MACSQuant(登録商標)Tyto(登録商標)細胞選別装置(Miltenyi Biotec)およびOn-Chip Sortt(On-chip Biotechnologies)などのマイクロチップベースの細胞選別装置を使用する多重パラメータ選別を用いた引き続く選別のために、例えば、フルオロフォアなどの検出可能薬剤によってタグ付けされた四量体などのペプチド/MHC多量体で標識されてもよい。マイクロチップベースの細胞選別装置は、一般に、完全に閉じた滅菌カートリッジシステムを利用した使いやすい卓上選別装置である。そのため、チップの選別は細胞に対して非常に穏やかであり、生存率を損なうことなく複数の連続した選別が可能である。
【0068】
一態様では、直接選別プロセスは、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の前駆体TNAIVEを含有する、増殖前および選別後のペプチド四量体陽性T細胞を生成してもよい。
【0069】
一態様では、直接選別プロセスは、従来のプロセスで生成された最終製品に増殖される前および純度選別後と同様の百分率の前駆体TNAIVE細胞を生成してもよい。
【0070】
一態様では、直接選別によって得られる選別されたT細胞は、少なくとも1周期の「迅速増殖プロトコル」(REP)を用いて増殖されてもよい。本明細書で使用される「迅速増殖プロトコル」(REP)という用語は、その内容全体が参照により援用される、Riddell et al.(J.Immunol.Methods 128,189)で以前記載されたように、REPプロトコルを用いて生体外で増殖された、例えば、TILおよびCD8+T細胞などのT細胞のクローン集団を指す。例えば、およそ5×104個のCD8+T細胞(または96ウェルクローニングプレートからの単一細胞コロニー)が、5×106個の照射TM-LCL、25×106個の照射同種異系PBMC、30ng/mlのOKT3、および50IU/mlのIL-2を含む、CTL培地からなる、25mlのクローニング混合物を含有する、T25組織培養フラスコに添加されてもよい。4日間の培養後に培養物が採取され、50IU/mlのIL-2を添加した等容積の新鮮なCTL培地に再懸濁されてもよい。培養液は、3~4日毎に培地の半量を新鮮なCTL培地と最終濃度50IU/mlのIL-2で置き換えることによって供給されてもよい。細胞は多量体染色による分析またはクロム放出アッセイのために、培養の12日目以降に採取されてもよい。
【0071】
一態様では、選別されたT細胞は、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、および/またはIL-21などのサイトカインの存在下で増殖されてもよい。
【0072】
一態様では、IL-2の濃度は、約10IU/ml~1000IU/ml、約20IU/ml~900IU/ml、約30IU/ml~800IU/ml、約40IU/ml~700IU/ml、約50IU/ml~600IU/ml、約50IU/ml~550IU/ml、約50IU/ml~500IU/ml、約50IU/ml~450IU/ml、約50IU/ml~400IU/ml、約50IU/ml~350IU/ml、約50IU/ml~300IU/ml、約50IU/ml~250IU/ml、約50IU/ml~200IU/ml、約50IU/ml~150IU/ml、または約50IU/ml~100IU/mlであってもよい。
【0073】
別の態様では、IL-7の濃度は、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~90ng/ml、約1ng/ml~80ng/ml、約1ng/ml~70ng/ml、約1ng/ml~60ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約1ng/ml~40ng/ml、約1ng/ml~30ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約2ng/ml~10ng/ml、約4ng/ml~10ng/ml、約6ng/ml~10ng/ml、または約5ng/ml~10ng/mlであってもよい。
【0074】
別の態様では、IL-12の濃度は、約1ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~90ng/ml、約1ng/ml~80ng/ml、約1ng/ml~70ng/ml、約1ng/ml~60ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約1ng/ml~40ng/ml、約1ng/ml~30ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約2ng/ml~10ng/ml、約4ng/ml~10ng/ml、約6ng/ml~10ng/ml、または約5ng/ml~10ng/mlであってもよい。
【0075】
一態様では、IL-15の濃度は、約5ng/ml~500ng/ml、約5ng/ml~400ng/ml、約5ng/ml~300ng/ml、約5ng/ml~200ng/ml、約5ng/ml~150ng/ml、約5ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~100ng/ml、約20ng/ml~100ng/ml、約30ng/ml~100ng/ml、約40ng/ml~100ng/ml、約50ng/ml~100ng/ml、約60ng/ml~100ng/ml、約70ng/ml~100ng/ml、約80ng/ml~100ng/ml、約90ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約5ng/ml~50ng/ml、約10ng/ml~50ng/ml、または約20ng/ml~50ng/mlであってもよい。
【0076】
一態様では、IL-21の濃度は、約5ng/ml~500ng/ml、約5ng/ml~400ng/ml、約5ng/ml~300ng/ml、約5ng/ml~200ng/ml、約5ng/ml~150ng/ml、約5ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~100ng/ml、約20ng/ml~100ng/ml、約30ng/ml~100ng/ml、約40ng/ml~100ng/ml、約50ng/ml~100ng/ml、約60ng/ml~100ng/ml、約70ng/ml~100ng/ml、約80ng/ml~100ng/ml、約90ng/ml~100ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約5ng/ml~50ng/ml、約10ng/ml~50ng/ml、または約20ng/ml~50ng/mlであってもよい。
【0077】
一態様では、直接選別プロセスは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の細胞生存率を含有するT細胞を増殖後に生成してもよい。
【0078】
一態様では、直接選別プロセスは、少なくとも50倍、100倍、150倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、または10000倍の増殖を達成するT細胞を増殖後に生成してもよい。
【0079】
本開示の利点としては、(1)生存率を損なうことなく複数の連続した選別を可能にする、細胞に非常に穏やかな影響を与えるマイクロチップベースの選別、(2)約8ml/時間(標準カートリッジの約2倍の速度)で選別できる高速カートリッジ、(3)複数の標的に対する高純度の抗原特異的T細胞をもたらす、2×107個の細胞/ml~4×107個の細胞/mlの範囲の細胞濃度での一連の選別と、それに続く純度を高めるための迅速な選別、(4)従来のAPC刺激によるものと同様の表現型の抗原特異的T細胞を産生する、サイトカインやフィーダー細胞の存在下で高い細胞数まで迅速に増殖する、選別された細胞、(5)迅速増殖段階全体を通じて、汚染CD4+T細胞の増殖を最小限に抑え、製品の純度を維持する、最初のCD8+T細胞と四量体の選別、(6)T細胞製品の製造に必要な時間が50%近く短縮され、APCの利用可能性、またはそれに対して製品が生成され得る腫瘍標的の数に制限されない、本開示の短縮されたプロセス、(7)臨床グレードの自動CD8選択、完全に閉じた選別カートリッジと、それに続く閉鎖系増殖技術の任意の選択を使用して、CGMPの下で製造するための閉鎖系に簡単に変換できるプロセス、および(8)所望の標的ペプチドに類似した(しかし同一ではない)配列を有するペプチドに対する交差反応性が低下した、それらの所望の標的ペプチドに高度に特異的なT細胞を提供する、標的ペプチド選択的T細胞をするための方法が挙げられてもよい。
【0080】
腫瘍特異的T細胞を単離および選択するための従来のプロセスでは、単離された細胞はT細胞活性化を受ける。例えば、抗CD3/CD28の使用は、Τ細胞集団に活性化シグナルを提供する。Τ細胞は、活性化のために少なくとも2つのシグナルを必要としてもよい。シグナル1(シグナル-1)は抗原特異的であり、抗原提示細胞(APC)によって提示され、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体を介して受信されるペプチド/主要組織適合遺伝子複合体(MHC)複合体によって惹起される。シグナル2(シグナル-2)(抗原非特異的)もまた、抗原提示細胞によって送達され、その受容体の候補分子の1つはΤ細胞抗原CD28である。TCR/CD3とCD28の双方のΤ細胞受容体が適切なリガンドによって占有されると、Τ細胞は刺激を受けて増殖し、IL-2(Τ細胞増殖に不可欠なサイトカイン)を産生する一方で、Τ細胞受容体が単独で占有されると、Τ細胞のアネルギーまたはアポトーシスが促進されると考えられている。生体外では、固相に固定化された抗CD3抗体(例えば、ビーズまたは組織培養プレート)でΤ細胞を培養し、可溶性CD28抗体を添加することによって、Τ細胞増殖およびサイトカイン産生が刺激され得ることが示されている。さらに、CD3抗体とCD28抗体の双方を同じ固相に、または異なる固相に共固定化することで、Τ細胞の増殖が誘導され得ることが示されている。
【0081】
TCRはTリンパ球(またはT細胞)の表面に見られる分子であり、それは一般に主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識する役割を担っている。T細胞の95%は、αおよびβ鎖からなるヘテロ二量体であるが、T細胞の5%は、γおよびδ鎖からなるTCRを有する。TCRと抗原およびMHCとの係合は、関連する酵素、共受容体、および特殊なアクセサリー分子によって媒介される一連の生化学的事象を介して、そのTリンパ球の活性化をもたらす。免疫学では、CD3抗原(CDは分化抗原群(cluster of differentiation)の略である)は、哺乳類では4つの異なる鎖(CD3-γ、CD3δ、2つのCD3ε)から構成されるタンパク質複合体であり、T細胞受容体(TCR)として知られる分子およびζ鎖と結びついて、Tリンパ球で活性化シグナルを発生させる。TCR、ζ鎖、およびCD3分子は、一緒にTCR複合体を含有する。CD3-γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖は、単一細胞外免疫グロブリンドメインを含有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3鎖の膜貫通領域は負に帯電しており、これは、これらの鎖が正に帯電したTCR鎖(TCRαおよびTCRβ)に結合できるようにする特性である。CD3分子の細胞内尾部は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(TAM)として知られる単一の保存モチーフを含有し、これはTCRのシグナル伝達能力に不可欠である。
【0082】
CD28はT細胞上で発現される分子の1つであり、それはT細胞活性化に必要な共刺激シグナルを提供する。CD28は、B7.1(CD80)およびB7.2(CD86)の受容体である。Toll様受容体リガンドによって活性化されると、B7.1発現が抗原提示細胞(APC)において上方制御される。抗原提示細胞上のB7.2発現は、構成的である。CD28は、ナイーブT細胞上で構成的に発現される唯一のB7受容体である。TCRに加えてCD28を介した刺激は、様々なインターロイキン(特にIL-2およびIL-6)の産生のために、T細胞に強力な共刺激シグナルを提供し得る。
【0083】
生体外でT細胞を生成するための従来のプロセスでは、その他のいくつかの方法が使用されている。例えば、自系腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLを生成するために使用され得る。例えば、自系末梢血リンパ球(PBL)が、T細胞の調製で使用されてもよい。さらに、樹状細胞(DC)をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自系T細胞の生成も可能である。B細胞もまた、自系T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己T細胞の調製において使用されてもよい。さらに、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用した、T細胞の生体外プライミングもまた、選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法であってもよい。例えば、ポリスチレン粒子(マイクロビーズ)の表面に、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体をビオチン:ストレプトアビジンの生化学的手法で結合させることにより、aAPCが生成されてもよい。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答の選択的誘発を可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性を有するその他のタンパク質を保有すべきである。さらにこのようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0084】
しかし、内因性T細胞を使用した固形がんのACTは、抗原提示細胞(APC)の使用を要する長期にわたる複雑なプロセスであってもよい。APCを使用した抗原特異的T細胞の刺激は、製造プロセスに、処理ステップ、時間、および費用を追加することにより、変動して煩雑になってもよい。したがって、本開示の実施形態は、より直接的なアプローチを使用することを含む。例えば、新鮮な白血球アフェレーシス産物からの、または新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)からの選別された低頻度の抗原特異的前駆体から始めて、APCおよび/または抗CD3抗体および抗CD28抗体などのT細胞活性化剤に対する必要性を排除することによって、製造時間およびプロセスが大幅に短縮されてもよい。
【0085】
ペプチド/MHC複合体
本発明の一態様では、直接選別プロセスは、CD8+T細胞と、主要組織適合性複合体(MHC)分子との複合体中の標的ペプチドを含んでなる多量体と、T細胞表面分子に結合する少なくとも1つの抗体とを接触させるステップを含んでなる。T細胞に基づく免疫療法は、MHCの分子によって提示される、腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的タンパク質に由来するペプチドエピトープを標的化する。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわち、それらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それぞれの腫瘍細胞において発現され、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0086】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は、ペプチドとの非共有結合相互作用のために用いられる結合溝をもたらす。MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見られる。それらは、主に、内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見られる。この非古典的様式のクラスI提示は、交差提示と称される。MHCクラスII分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)上に主に見いだされ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCによって取り込まれ引き続いてプロセシングされる、外因性タンパク質または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0087】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0088】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答を誘導し維持する上で重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である腫瘍部位では、Tヘルパー細胞は、細胞傷害性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境をサポートし、例えば、CTL、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける。
【0089】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、および樹状細胞などの、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが判明している。本明細書の伸長された(より長い)ペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0090】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を取りまとめるのに重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0091】
例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であっても、インターフェロンγ(IFN-γ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された。CD4陽性T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある。
【0092】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかしDengjel et al.は、腫瘍からいくつかのMHCクラスIIエピトープを直接同定することに成功した(その内容全体が参照により援用される、国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0093】
CD8依存性とCD4依存性の双方のタイプの応答は、共同して相乗的に抗腫瘍効果に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0094】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多型性とに依存する。MHCクラス1結合ペプチドは、通常、長さが8~12アミノ酸残基であり、通常、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する「結合モチーフ」を有する。
【0095】
MHCクラスI依存免疫反応において、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特異的T細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0096】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で使用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、健常組織と比較して、腫瘍細胞によって過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、ある種の腫瘍に存在するだけでなく、高い濃度(すなわち、それぞれのペプチド細胞あたりのコピー数)で存在することもさらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が上方制御されてもよく、したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列内にエピトープが存在することが必須である。
【0097】
したがって、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではない、T細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍と正常組織との間の示差的転写プロファイルまたは示差的ペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現され、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。それは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRを有するT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本明細書の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能的および/または増殖性T細胞が見いだされる、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが重要である。このような機能的T細胞は、特異的抗原での刺激時にクローン増殖され得て、エフェクター機能を果たすことができるT細胞(「エフェクターT細胞」またはTEM)と定義される。
【0098】
一態様では、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できる腫瘍関連抗原(TAA)ペプチドとしては、例えば、米国特許出願公開第20160187351号明細書、米国特許出願公開第20170165335号明細書、米国特許出願公開第20170035807号明細書、米国特許出願公開第20160280759号明細書、米国特許出願公開第20160287687号明細書、米国特許出願公開第20160346371号明細書、米国特許出願公開第20160368965号明細書、米国特許出願公開第20170022251号明細書、米国特許出願公開第20170002055号明細書、米国特許出願公開第20170029486号明細書、米国特許出願公開第20170037089号明細書、米国特許出願公開第20170136108号明細書、米国特許出願公開第20170101473号明細書、米国特許出願公開第20170096461号明細書、米国特許出願公開第20170165337号明細書、米国特許出願公開第20170189505号明細書、米国特許出願公開第20170173132号明細書、米国特許出願公開第20170296640号明細書、米国特許出願公開第20170253633号明細書、米国特許出願公開第20170260249号明細書、米国特許出願公開第20180051080号明細書、米国特許出願公開第20180164315号明細書、米国特許出願公開第20180291082号明細書、米国特許出願公開第20180291083号明細書、米国特許出願公開第20190255110号明細書、米国特許第9,717,774号明細書、米国特許第9,895,415号明細書、米国特許出願公開第20190247433号明細書、米国特許出願公開第20190292520号明細書、米国特許出願公開第20200085930、米国特許第10,336,809号明細書、米国特許第10,131,703号明細書、米国特許第10,081,664号明細書、米国特許第10,081,664号明細書、米国特第10,093,715号明細書、米国特許第10,583,573号明細書、および米国特許出願公開第20200085930号明細書に記載されるTAAペプチドが挙げられ、これらの各出版物の内容およびその中に記載されている配列リストは、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0099】
一態様では、本明細書に記載されるT細胞は、上記の特許および刊行物の1つまたは複数に記載されるTAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0100】
別の態様では、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できるTAAは、配列番号1~配列番号161から選択される少なくとも1つを含む。一態様では、T細胞は、配列番号1~161に記載される、または本明細書に記載の特許または出願のいずれかに記載される、TAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0101】
表1.アミノ酸の一覧
【0102】
【0103】
T細胞の起源
T細胞は、腫瘍(腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes)、TIL)、末梢血(末梢血リンパ球(peripheral blood lymphocy)、PBMC)、または白血球アフェレーシス産物のいずれかから採取されてもよい。TILは、培養前に優先的に腫瘍特異的であるため、非特異的に増殖され得る。対照的に、腫瘍特異性は、抗原特異的増殖または遺伝子操作のどちらかを介して、PBMCおよび白血球アフェレーシス産物中で誘導されてもよい。
【0104】
T細胞の増殖および遺伝子修飾前に、T細胞源が健常または罹患対象から得られてもよい。一態様では、対象はヒトを含んでもよい。別の態様では、対象としては、例えば、ヒト化マウスなどのマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、およびサルが挙げられてもよい。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍をはじめとするいくつかの起源から得られ得る。特定の実施形態では、当該技術分野で利用できる任意の数のT細胞株が使用されてもよい。特定の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に知られている任意の数の技術を用いて、対象から採取された血液の単位から得られ得る。好ましい一実施形態では、個人の循環血液からの細胞は、血液成分分離によって得られてもよい。血液成分分離製品は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞をはじめとするリンパ球、その他の有核白色血液細胞、赤血球、および血小板を含有する。血液成分分離によって採取された細胞は、洗浄されて血漿画分が除去され、後続の処理ステップのために適切な緩衝液または培地に入れられてもよい。細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄されてもよく、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いてもよく、または全部でないとしても多くの二価の陽イオンを欠いてもよい、洗浄液で洗浄されてもよい。カルシウムの非存在下での初期活性化ステップは、拡大された活性化をもたらし得る。当業者は容易に理解するであろうように、洗浄ステップは、製造業者の使用説明に従って、半自動化「通過型」遠心分離機(例えば、Cobe 2991 ceil processor、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)などを使用することによって、当業者に知られている方法によって達成されてもよい。洗浄後、細胞は、例えば、Ca2+非含有、Mg2+非含有PBS、PlasmaLyte Aなどの様々な生体適合性緩衝液に、または緩衝液ありまたはなしでその他の生理食塩水に再懸濁されてもよい。代案としては、血液成分分離サンプルの望ましくない成分が除去され、細胞が培養液に直接再懸濁されてもよい。
【0105】
別の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解して、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通じた心分離によって、または向流遠心分離水簸によって、単球を枯渇させることで、末梢血リンパ球から単離されてもよい。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45+、およびCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、正または負の選択技術によってさらに単離され得る。正の選択プロトコルでは、所望の細胞は標的細胞である。例えば、一実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の正の選択のために、ダイナビーズ(登録商標)M-450CD3/CD28Tなどの抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)共役ビーズとのインキュベーションによって単離されてもよい。
【0106】
負の選択プロトコルでは、所望されないT細胞、すなわち、負に選択された細胞が除去された後、所望のT細胞がサンプル中に残る。例えば、負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負に選択された細胞に固有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成され得る。1つの方法は、負に選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負磁気免疫付着またはフローサイトメトリーを介した、細胞選別および/または選択であってもよい。例えば、負の選択によってCD4+を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含んでもよい。特定の実施形態では、典型的には、CD4+、CD25+、CD62L1、GITR+、およびFoxP3+を発現してもよい調節T細胞を濃縮すること、または正に選択することが望ましくあってもよい。代案としては、特定の実施形態では、T調節細胞は、抗CD25共役ビーズまたはその他の類似した選択方法によって枯渇されてもよい。
【0107】
別の態様では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から得られてもよい。1つのACTストラテジーは、腫瘍転移の腫瘍断片または単一細胞酵素消化物から生体外で増殖された、自系TILの移植を伴う。腫瘍のT細胞浸潤物は、本質的にポリクローナルであり、複数の腫瘍抗原を集合的に認識する。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med.(1988)319:1676-1680を参照されたい。
【0108】
例示的なTIL ACTプロトコルでは、腫瘍は患者から切除され、滅菌条件下で、小さな(例えば、3~5mm2)断片に刻まれてもよい。断片は、成長培地と共に培養プレートまたはフラスコに入れられ、高用量IL-2で処理されてもよい。この初期TIL増殖相(「プレREP」相としても知られる)は、典型的には、約3~約5週間持続し、その間、約5×107個以上のTILが生産されてもよい。次に、得られたTILはさらに増殖され(例えば、急速増殖プロトコル(REP)に従って)、対象への注入に適したTILが生産されてもよい。プレREPTILは、より後の増殖のために冷凍保存され得て、またはそれらは即座に増殖されてもよい。またプレREP TILをスクリーニングして、増殖前の抗腫瘍反応性の高い培養物が識別され得る。典型的なREPは、例えば、照射PBMCフィーダー細胞の存在下で、抗CD3 mAbなどのT細胞刺激抗体を使用して、TILを活性化することを伴ってもよい。フィーダー細胞は、患者対象から、または健常ドナー対象から得られ得る。IL-2が約6,000U/mLの濃度でREP培養物に添加され、迅速なTIL細胞分裂が促進されてもよい。この様式でのTILの増殖は約2週間以上かかり得て、約100億~1500億個のTILのプールがもたらされる。増殖された細胞は、洗浄およびプールされてもよく、患者への注入に適していてもよい。患者は、典型的には、109~1011個の細胞の1回または2回(1~2週間隔離で)の注入を受けてもよい。患者には、注入後のTIL細胞の支持を助けるために、高用量のIL-2療法(例えば、約2日から約3日間にわたる8時間毎の7.2×105IU/kg)が投与される。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Rosenberg et al.,Nat.Rev.Cancer(2008)8:299-308を参照されたい。注入前に、患者は、任意選択的に、シクロホスファミド(Cy)およびフルダラビン(Flu)を使用してリンパ球除去され得る。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Dudley et al.,Science(2003)298:850-854を参照されたい。さらに、内因的調節T細胞(Treg)の再出現を防ぐために、全身照射(TBI)がリンパ球枯渇と共に使用されており、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Dudley et al.,J.Clin.Oncol.(2008)26(32):5233-5239を参照されたい。
【0109】
T細胞表現型
T細胞の活性化中、TCRは抗原提示細胞のMHC複合体上に提示される抗原と相互作用する。TCRによる抗原-MHC複合体の認識は、T細胞刺激をもたらし、それは次に、Tヘルパー細胞(CD4+)と細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)の双方のメモリーリンパ球およびエフェクターリンパ球への分化をもたらす。次に、これらの細胞はクローン様式で増殖し、1つの特定の抗原に反応できるT細胞集団全体の中に、活性化された亜集団を与え得る。
【0110】
T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAの発現が増加し、CD45ROの発現が減少している)、メモリーT細胞(TM)(抗原経験があり長寿命)、およびエフェクター細胞(TE)(抗原経験あり、細胞傷害性)であり得る。TM細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM、ナイーブT細胞と比較してCD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、およびCD95の発現が増加し、CD54RAの発現が減少している)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM、ナイーブT細胞またはTCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現が減少し、CD127の発現が増加している)のサブセットにさらに分類され得る。特定の実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD4+、CD44Hi、およびCD62LHi T細胞またはCD8+、CD44Hi、およびCD62LHi T細胞である。なおもさらなる実施形態では、T細胞は、CD44Lo CD45RAHi CD62LHi CD95Hi CD122Hi sca-1+の表現型を有し、それ自体を維持しながらTCMおよびTEMサブセットを生成できる、メモリーT幹細胞(TMSC)を含む。エフェクターT細胞(TE)は、TCMと比較してCD62L、CCR7、CD28の発現が減少しており、グランザイムおよびパーフォリンについて陽性である、抗原経験があるCD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。ヘルパーT細胞(TH)は、サイトカインを放出することによってその他の免疫細胞の活動に影響を及ぼすCD4+細胞である。CD4+T細胞は、適応免疫応答を活性化および抑制し得て、どの作用が誘導されるかはその他の細胞およびシグナルの存在に依存する。T細胞にはまた、γδT細胞、MAIT T細胞、およびTregも含まれるT細胞は、既知の技術に従って収集され得て、様々な亜集団またはそれらの組み合わせは、抗体への親和性結合、フローサイトメトリー、または免疫磁気選択などの既知の技術によって富化または枯渇され得る。例えば、特定の実施形態では、CD8+またはCD4+T細胞が、CD62LHi(ナイーブおよびセントラルメモリーT細胞)またはCD62LLo T細胞(エフェクターメモリーおよびエフェクターT細胞)に選別され得る。
【0111】
CD8+T細胞または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、腫瘍細胞を殺滅するのに不可欠であると考えられている。これらの細胞は、典型的には、抗原提示細胞によってMHC複合体上に以前提示されていた抗原をがん細胞が表面に提示したときに、がん細胞におけるアポトーシスを誘導できる。通常は、CTLは標的細胞に対する作用に続いて、細胞の脅威が除去されるとアポトーシを起こしてもよく、リンパ球のサブセットが残って、これはさらにメモリーT細胞に分化し、身体が再び抗原にさらされた場合に備えて存続する。メモリーリンパ球のプールは、非常に不均一であってもよい。エフェクターメモリーT細胞(CD45RA-CCR7-、CD62L-)と、二次リンパ器官のT細胞領域でのホーミングに必要な2つの分子であるCCR7とCD62Lの発現によって特徴付けられる、CD45RA陰性細胞であるセントラルメモリーT細胞との2種類のメモリーT細胞が同定されている。抗原刺激に際して、セントラルメモリーT細胞は、IL-4およびIFN-γなどのエフェクターサイトカインを低レベルで、IL-2を高レベルで産生し、迅速で一貫した増殖を維持できる。抗原に遭遇すると、セントラルメモリーT細胞は以下を受ける:1)それらのプールを増やすことを目的とした自動再生プロセスをもたらす増殖、および2)低い増殖能によって特徴付けられるが、炎症を起こした非リンパ組織に移動して免疫応答のエフェクター段階を仲介できる、エフェクターメモリーT細胞の生成をもたらす分化。
【0112】
CD8+T細胞の単離
正または負の選択による所望の細胞集団の単離では、細胞濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)が変化され得る。特定の実施形態では、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、その中でビーズと細胞が共に混合されてもよい体積を著しく減少させる(すなわち、細胞濃度を増加させる)ことが望ましくあってもよい。例えば、一実施形態では、20億個の細胞/mlの濃度が使用されてもよい。一実施形態では、10億個の細胞/mlの濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1億個の細胞/mlを超える濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用されてもよい。なおも別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個の細胞/mlの細胞濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高い濃度を使用することで、細胞収量、細胞活性化、および細胞増殖の増加がもたらされ得る。さらには、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞などの関心のある標的抗原を弱く発現してもよい細胞の、または数多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白血病性血液、腫瘍組織など)からの細胞の、より効率的な捕捉を可能にしてもよい。このような細胞の集団は、治療的価値を有してもよく、取得することが望ましいであろう。例えば、高濃度の細胞を使用して、通常であればより弱いCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にしてもよい。関連する実施形態では、より低い濃度の細胞を使用することが望ましくあってもよい。(例えば、ビーズなどの粒子を使用することによって)T細胞と表面との混合物を著しく希釈することによって、粒子と細胞の間の相互作用が最小化されてもよい。これにより、粒子に結合されるべき所望の抗原を多量に発現する細胞が選択てもよい。
【0113】
本開示の実施形態は、新鮮な白血球アフェレーシス産物から、または新鮮なPBMCから単離された、CD8+陽性の選択されたT細胞を利用することを含んでもよい。一実施形態では、細胞集団は、CD8+T細胞について濃縮されてもよい。T細胞培養物は、例えば、CD8マイクロビーズ分離を使用して、CD4+細胞が枯渇されCD8+細胞について濃縮されてもよい(例えば、Clini-MACSPplus CD8マイクロビーズシステム(Miltenyi Biotec(商標)を使用して)。CD8+T細胞の濃縮は、CD4+T調節細胞を除去することによってACTの予後を改善してもよい。
【0114】
ペプチド/MHC多量体
例えば、ペプチド/MHC四量体(Tet)などのペプチド/MHC多量体は、ストレプトアビジン(SAまたはSa)によって形成されてもよい。ストレプトアビジンは、細菌ストレプトミセス・アビディニイ(Streptomyces avidinii)細菌に由来する四量体タンパク質である。SAは、その天然リガンドであるビオチン(Kd-10-15mol/L)に対して四面体に配置された、並外れた親和性と4つの固有の結合部位を有する。ストレプトアビジンのビオチンに対するモル結合能は、4:1のビオチン:SAである。SAは、(例えば、ビオチン相互作用などを介して)結合分子に特異的に結合する必要はないが、一態様では、ストレプトアビジン、結合分子(例えば、MHC分子)がビオチン化され、タンパク質-リガンド対SAとの四量体アセンブリが可能になり得る。いくつかの実施形態では、結合分子はまた、共有結合(アミドカップリングなど)を介してSAに結合され得て、したがって、必ずしもビオチン-SA相互作用を介する必要はない。当業者は、選択された実験計画に基づいて、最も適切な結合を同定できるであろう。本開示のいくつかの実施形態では、SAが使用されて、ペプチド/MHCモノマーが四量体にアセンブルされてもよい。例えば、MHC鎖は、酵素BirAでビオチン化され、例えば、TAAなどの関心のある抗原ペプチドで再折りたたみされてもよい。ビオチンは、ストレプトアビジンと強力な結合を形成する、小型タンパク質である。フルオロフォアでタグ付けされたストレプトアビジンは、バイオエンジニアリングされたMHCモノマーに添加されてもよく、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用は、4つのMHCモノマーをストレプトアビジンに結合させ、四量体が生成される。ペプチド/MHC四量体が、例えば、CD8+T細胞などのサンプと混合されると、それらは、例えば、TAA特異的TCRなどの、TAA/MHC複合体に結合する適切な抗原特異的受容体(TAA特異的TCRなど)を発現するCD8+T細胞に結合する。結合していないあらゆるMHC四量体は、フローサイトメトリーで分析される前に、サンプルから洗い流される。
【0115】
蛍光活性化細胞選別(FACS)解析
生存細胞のFACSは、蛍光標識に基づいて、細胞集団を亜集団に分離する。選別は、非選別分析よりも、フローサイトメーター内のより複雑な機序を伴う。フルオロフォアタグ付きペプチド/MHC四量体および/またはフルオロフォア共役抗体を使用して染色された細胞は、それらを染色したフルオロフォアに応じて互いに分離され得る。例えば、1つの細胞マーカーを発現する細胞が、そのマーカーを認識するイソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)共役抗体を使用して検出されてもよく、異なるマーカーを発現する別の細胞種が、そのマーカーに特異的なフィコエリトリン(PE)共役抗体を使用して検出され得る。
【0116】
FACSによって生成されたデータは、ヒストグラムを作成するために一次元でプロットされても、二次元ドットプロットでプロットされても、三次元でプロットされてもよい。これらのプロット上の領域は、「ゲート」と称される一連のサブセット抽出を作成することによって、蛍光強度に基づいて順次分離され得る。特に血液学に関連して、診断および臨床目的のために特定のゲーティングプロトコルが存在してもよい。例えば、シングルゲーティングは、狭く集束されたレーザー光線を介した「飛行時間」(「パルス幅」としても示される)によって、個々の単一細胞を細胞ダブレットまたはより高い凝集体と区別することを可能にしてもよい。投棄ゲーティングを使用して、分析に関係のない細胞が低減されてもよい。プロットは、対数目盛で作成されてもよい。異なる蛍光色素の発光スペクトルは重複しているため、検出器での信号は電子的にも計算的にも補正する必要がある。フローサイトメーターを使用して蓄積されたデータは、ソフトウェアを使用して解析され得る。ひとたびデータが収集されると、フローサイトメーターに接続したままにする必要はなく、別のコンピューターで解析が実施されてもよい。
【0117】
治療法
一態様では、養子細胞移入または治療法(ACT)は、細胞がドナーから取り出され、生体外で培養および/または操作され、疾患の治療のために患者に投与される、治療方法を含んでもよい。いくつかの実施形態では、移入された細胞は自系細胞であってもよく、これは、患者が自らのドナーの役割を果たすことを意味する。いくつかの実施形態では、移入された細胞は、例えば、T細胞などのリンパ球であってもよい。いくつかの実施形態では、移入された細胞は、患者への投与前に遺伝子改変されてもよい。例えば、移入された細胞は操作されて、関心のある抗原に対する特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現し得る。一実施形態では、移入された細胞は操作されて、キメラ抗原受容体(CAR)を発現してもよい。特定の実施形態では、移入された細胞は操作されて(例えば、形質移入またはコンジュゲーションによって)、サイトカイン(IL-2、IL-12)、抗アポトーシス分子(BCL-2、BCL-X)、またはケモカイン(CXCR2、CCR4、CCR2B)などの細胞の抗腫瘍活性を促進する分子を発現してもよい。特定の実施形態では、移入された細胞は操作されて、CARと、抗腫瘍活性または細胞の持続性を促進する分子との双方を発現してもよい。
【0118】
一態様では、本明細書に記載の増殖され操作されたT細胞は、異常なアポトーシスまたは分化プロセス(例えば、がんなどの細胞の増殖障害または細胞の分化障害)に関連した障害を治療するのに有用である。本発明の方法を用いた治療に適していてもよいがんの非限定的例が、以下に記載される。
【0119】
細胞の増殖および/または分化障害の例としては、がん(例えば、がん腫、肉腫、転移性障害、または例えば白血病などの造血性新生物障害)が挙げられてもよい。転移性腫瘍は、前立腺、結腸、肺、乳房、および肝臓の腫瘍をはじめとするが、これに限定されるものではない、多数の原発腫瘍型から発生し得る。したがって、本開示の組成物(例えば、最小限に生体外で増殖され操作されたT細胞)は、がんを有する患者に投与され得る。
【0120】
自系細胞の投与
自系細胞は、当技術分野で公知の任意の適切な経路によって投与され得る。好ましくは、細胞は、約30~約60分間持続する、動脈内または静脈内注入として投与されてもよい。その他の例示的な投与経路としては、腹腔内、クモ膜下腔内、およびリンパ管内が挙げられてもよい。
【0121】
同様に、自系細胞の任意の適切な用量が投与され得る。例えば、一実施形態では、約1.0×108個の細胞~約1.0×1012個の細胞が投与されてもよい。一実施形態では、平均で約5.0×1010個のT細胞で、約1.0×1010個の細胞~約13.7×1010個のT細胞が投与されてもよい。代案としては、別の実施形態では、約1.2×1010~約4.3×1010個のT細胞が投与されてもよい。
【0122】
一実施形態では、ACTのために使用される自系細胞は、例えば、T細胞などのリンパ球であってもよい。一実施形態では、T細胞は、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,383,099号明細書に記載されるように、例えば、19~35日齢の間の「若い」T細胞であってもよい。若いT細胞は、古いT細胞より長いテロメアを有すると考えられており、場合によっては、より長いテロメア長は、ACTに続く臨床転帰の改善に関連してもよい。
【0123】
ACTレジメンを受けている対象に、本開示の直接選別によって得られた増殖Tet+CD8+T細胞を注入することは、移入された細胞の持続性を促進し、移入された細胞の持続性、増殖、および生存を刺激し、および/または腫瘍の退縮を改善してもよい。
【0124】
本開示の実施形態は、IL-2での、または例えば、IL-1、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、およびIL-23などの共通γ鎖に結合するその他のサイトカインでの刺激によって、選別されたCD8+T細胞を増殖させることを含んでもよい。一態様では、選別されたCD8+T細胞は、少なくとも1周期の「迅速増殖プロトコル」(REP)によって増殖されてもよく、その中では、T細胞は、例えば、IL-2またはIL-15、OKT-3によって、およびFc-γI受容体(FcγRI)を発現するアクセサリー細胞を含む、照射されたフィーダー細胞としての同種異系末梢血単核細胞(PBMC)によって、増殖されてもよい。OKT-3抗体をはじめとする免疫グロブリン(Ig)G2aサブクラスマウス抗体のFc部分は、ヒトフィーダー細胞上のFcγRIに結合する。Fcに結合した抗CD3抗体γRIは、固体表面上に固定化された抗CD3/CD28よりも、CD8+T細胞に対してより最適な増殖/分化シグナルを誘導する。これは、抗CD3T細胞受容体(TCR)架橋と、T細胞およびFcγRIアクセサリー細胞間の細胞間相互作用によって提供される共刺激との二重の利点を反映していてもよい。別の態様では、選別されたCD8+T細胞は、ビーズ上に固定化された抗CD3および抗CD28抗体の存在下で増殖され、シグナル1および共刺激シグナル2が同時に送達されて、アネルギーまたは早期アポトーシスを誘発することなく、T細胞増殖が誘導されてもよい。
【0125】
細胞培養閉鎖系
本開示の直接選別は、T細胞製品を製造するための任意の細胞培養閉鎖系と組み合わせて実行されてもよい。細胞培養閉鎖系としては、例えば、CliniMACS Prodigy(商標)(Miltenyi)、単独のまたはBioSafe Sepax(商標)IIと組み合わされたWAVE(XURI(商標))バイオリアクター(GE Biosciences)、および単独のまたはBioSafe Sepax(商標)IIと組み合わされたG-Rex/GatheRex(商標)閉鎖系(Wilson Wolf)などの市販のシステムが挙げられてもよい。G-Rex(商標)閉鎖系は増殖容器であり、GatheRex(商標)は濃縮および収穫用ポンプである。
【0126】
CliniMACS Prodigy(商標)(Miltenyi)
CliniMACS Prodigy(商標)とTCTプロセスソフトウエアおよびTS520管材料セットは、細胞の濃縮、形質導入、洗浄、および増殖のための閉鎖系処理を可能にしてもよい。例えば、MACS-CD4およびCD8-マイクロビーズを濃縮のために使用してもよく、例えば、CD3/CD28試薬などのTransACTビーズを活性化のために使用してもよく、組換えTCRを発現するレンチウイルスベクターを形質導入のために使用してもよく、TexMACS培地-3%-HS-IL2を培養のために使用してもよく、リン酸緩衝生理食塩水/エチレンジアミン四酢酸緩衝液を洗浄のために使用してもよい。このシステムは、約4~5×109個の細胞をもたらしてもよく、チャンバーの最大充填量約300mLでの製造のための自動化されたプロトコルを含み、10日~14日間かけて選択と活性化(TransACTビーズ)、導入、増殖を実施する。
【0127】
WAVE(Xuri(商標))バイオリアクター(GE Biosciences)
WAVE(Xuri(商標))バイオリアクターは、灌流ありおよび/またはなしで、例えば、Xuri Cellbagsなどの培養バッグ内でT細胞を培養できるようにする。栄養供給のための中型バッグは、5リットルのHyclone Labtainerであってもよい。老廃物バッグは、Mbag(GE Healthcareから購入された)であってもよい。このシステムは、約15~30×109個の細胞をもたらし、培養制御とモニタリングを可能にするunicornソフトウエアを使用して、約0.3リットル~約25リットルを保持するロッキングトレーを含み、ガス交換を媒介して新鮮な培地およびサイトカインを細胞培養に導入しながら、灌流機能を果たして培養容積を維持してもよい。
【0128】
WAVE(Xuri(商標))バイオリアクターは、増殖のためのXuriバッグ、解凍および休止のためのSaint Gobain’s VueLifeバッグ、および活性化のためのVueLife SCバッグを含んでもよい。WAVE(Xuri(商標))バイオリアクターは、培養洗浄および減容化ステップのために、例えば、Sepax(商標)細胞分離システム(GE Biosciences)などのその他の技術と組み合わせて使用してもよい。滅菌ウェルダー(Terumo BCT(商標))は、溶液移送用の滅菌バッグの接続、および管材料を封着するためのヒートシーラーで使用されてもよい。
【0129】
Sepax(商標)細胞分離システムは、シリンジチャンバーの回転による分離(遠心分離)と、シリンジピストンの転置による成分移送との双方を提供する、分離チャンバーに依存する。光学的センサーは、分離された成分の吸光度を測定し、正しい排出容器内への各成分の流れ方向を管理し、例えば、血漿、バフィーコート、および赤血球が、このようにして血液サンプルから分離され採取されてもよい。
【0130】
定義
「活性化」という用語は、刺激されて、検出可能な細胞増殖を誘導するT細胞の状態を指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能に関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、増殖中のT細胞を指す。T細胞の完全な活性化のためには、TCRを介して生成されたシグナルだけでは不十分であり、1つまたは複数の二次的シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要である。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体を介した一次刺激シグナルと、1つまたは複数の二次的共刺激シグナルを含む。共刺激は、CD3/TCR複合体を介したまたはCD2を介した刺激などの一次活性化シグナルを受信したT細胞による、増殖および/またはサイトカイン産生によって証明され得る。例えば、抗CD3抗体、抗CD2抗体、またはタンパク質キナーゼC活性化剤をカルシウムイオノフォアと併用して、T細胞集団が活性化されてもよい。
【0131】
活性化は、休止状態と比較して差示的に発現される、遺伝子発現シグネチャの任意の表現型によって検出され得る。このような変化は、T細胞増殖、エフェクター機能、および/または細胞周期状態の変化を誘発する、既知のマイトジェンまたはバイオシミラーとの培養によって誘発されてもよい。
【0132】
増殖を誘導するために、活性化T細胞集団と、T細胞の表面上のアクセサリー分子を刺激する第2の薬剤とが接触されてもよい。例えば、T細胞の表面上のCD28分子を対象とする抗CD28抗体を用いて、CD4+T細胞集団が刺激され増殖され得る。代案としては、CD4+T細胞は、B7-1およびB7-2などのCD28に対する天然リガンドで刺激され得る。天然リガンドは、細胞膜上で可溶性であるか、または固相表面に共役され得る。CD8+T細胞集団の増殖は、活性化T細胞上に存在する約27kDの分子量を有するアクセサリー分子CD9に結合する、モノクローナル抗体ES5.2D8の使用によって達成されてもよい。代案としては、活性化T細胞集団の増殖は、CD28などのアクセサリー分子のライゲーションに起因する、1つまたは複数の細胞内シグナルの刺激によって誘導され得る。
【0133】
一次活性化シグナルを提供する薬剤および共刺激剤を提供する薬剤は、可溶性形態で添加されるか、または固相表面に共役され得る。好ましい実施形態では、2つの薬剤が同じ固相表面に共役されてもよい。このような環境におけるT細胞の培養は、同族の受容体を発現する全てのT細胞の無差別な活性化をもたらす。
【0134】
T細胞の表面上のアクセサリー分子の活性化と刺激に続いて、細胞内で作用してアクセサリー分子によって媒介される経路をシミュレートする、リガンドまたはその他の薬剤への継続的な曝露に応答したT細胞の増殖の進行が、モニターされてもよい。T細胞の増殖速度が低下した場合、追加的な抗CD3抗体および共刺激性リガンドなどを用いて、T細胞を再活性化して再刺激し、さらなる増殖が誘導されてもよい。一実施形態では、T細胞の増殖速度は、細胞サイズを調べることによってモニターされてもよい。代案としては、T細胞増殖は、CD28またはCD27などのリガンドまたはその他の薬剤への曝露に応答した細胞表面分子の発現をアッセイすることによって、モニターされてもよい。持続的な増殖についてT細胞のモニタリングと再刺激を繰り返し、元のT細胞集団よりも約100倍~約100,000倍に増加したT細胞集団が生成されてもよい。
【0135】
一態様では、本明細書に記載の活性化は、約1時間~約120時間、約1時間~約108時間、約1時間~約96時間、約1時間~約84時間、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約2時間~約24時間、約4時間~約24時間、約6時間~約24時間、約8時間~約24時間、約10時間~約24時間、約12時間~約24時間、約12時間~約72時間、約24時間~約72時間、約6時間~約48時間、約24時間~約48時間、約6時間~約72時間、または約1時間~約12時間の期間内に実行されてもよい。
【0136】
本開示の方法を使用して、感染性疾患またはがんの治療で使用するための選択されたT細胞集団が増殖され得る。得られたT細胞集団は遺伝的に形質導入されて、免疫療法に使用され得るか、または感染性因子の生体外分析のために使用され得る。T細胞集団の十分な数への増殖に続いて、増殖T細胞は個人に戻されてもよい。本開示の方法はまた、T細胞の再生可能な供給源を提供してもよい。したがって、個人からのT細胞を生体外で増殖させ得て、増殖した集団の一部が個人に再投与され得て、別の部分は長期保存および引き続く増殖と個人への投与のためにアリコートで冷凍され得る。同様に、がんに罹患した個人から腫瘍浸潤性リンパ球の集団が得られ、T細胞を刺激して十分な数に増殖されて個人に戻され得る。
【0137】
一態様では、増殖させるステップは、約1日~2日、約1日~3日、約1日~約4日、約1日~約5日、約1日~6日、約1日~7日、約1日~8日、約1日~9日、約1日~10日、約2日~3日、約2日~4日、約2日~5日、約2日~6日、約2日~7日、約2日~8日、約2日~9日、約2日~10日、約3日~4日、約3日~5日、約3日~6日、約3日~7日、約3日~8日、約3日~9日、約3日~10日、約4日~5日、約4日~6日、約4日~7日、約4日~8日、約4日~9日、約4日~10日、約5日~6日、約5日~7日、約5日~8日、約5日~9日、または5日~10日にわたり実施されてもよい。
【0138】
「迅速増殖」という用語は、抗原特異的T細胞の数が、1週間で少なくとも約3倍(または4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、または9倍)、より好ましくは1週間で少なくとも約10倍(または20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、または90倍)、最も好ましくは1週間で少なくとも約100倍に増加することを意味する。例えば、抗CD3抗体(例えば、30ng/mL)およびIL-2(例えば、6000IU/mL)を添加した完全培地(CM)中で、照射された(例えば40Gy)同種異系末梢血単核「フィーダー」細胞と共に、抗原特異的T細胞を培養することによって、その内容が参照により援用される、以前記載されたような迅速増殖プロトコル(REP)(Dudley et al.J.Immunother.26:332-42(2003)、およびRiddell et al.J.Immunol.Methods 128:189-201(1990)が用いられてもよい。
【0139】
「T細胞受容体(TCR)」という用語は、本明細書の用法では、アルファ(α)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるT細胞上のタンパク質受容体を指すが、ただしいくつかの細胞では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。いくつかの実施形態では本開示のTCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびγδT細胞をはじめとする、TCRを有する任意の細胞上で修飾されてもよい。
【0140】
「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含んでもよい。特定の実施形態で使用するのに適した例示的なT細胞集団としては、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、または任意のその他のT細胞のサブセットが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態で使用するのに適したその他の例示的なT細胞集団としては、マーカー:CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD197、およびHLA-DRの1つまたは複数を発現するT細胞が挙げられるが、これらに限定されず、所望ならば、正または負の選択技術によってさらに単離され得る。
【0141】
一態様では、「無関係のペプチド」は標的ペプチドでないペプチドであり、選別プロセスにおけるその使用は、非標的特異的T細胞の排除を容易にする。無関係のペプチドは、無関係のペプチド/MHC複合体が、所望のT細胞応答をもたらさないような、目的でないペプチドとして定義されてもよい。例えば、無関係のペプチドとは、標的ペプチドとの配列同一性が、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%未満であり、無関係のペプチド/MHC複合体が、標的ペプチド/MHC複合体と同じT細胞に結合しないようなペプチドを指してもよい。さらなる例では、無関係のペプチドとは、標的ペプチドとの配列同一性が、例えば、30%未満など、30%未満、40%未満、50%未満であり、無関係のペプチド/MHC複合体が、標的ペプチド/MHC複合体と同じT細胞に結合しないようなペプチドを指してもよい。無関係のペプチドのアミノ酸配列は、典型的には、8~16アミノ酸長を含んでなる。無関係のペプチドは、ハウスキーピング遺伝子によってコード化されてもよい。このように、潜在的な無関係のペプチドを除外しながらのTCR標的ペプチド複合体の選択は、その中で、無関係のペプチド/MHC複合体が、所望のT細胞応答をもたらさない。標的類似ペプチドは、典型的には8~16アミノ酸長、好ましくは8~11アミノ酸長を含んでなり、標的ペプチドのアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の類似性を有する。典型的には、標的類似ペプチドは、標的ペプチドのアミノ酸配列に関して、5アミノ酸以下、4アミノ酸以下、3アミノ酸以下、または1アミノ酸の置換によって異なる。さらに、好ましい標的ペプチド/MHC結合T細胞は、標的類似ペプチド/MHC複合体に結合せず、主にまたは唯一、標的ペプチド/MHC複合体に結合する。これは、標的ペプチド/MHC複合体と標的類似ペプチド/MHC複合体の双方に結合するT細胞が、望まれないT細胞応答を示す、すなわち、「オンターゲット/オフ腫瘍」の副作用、健常組織上の標的類似ペプチドとの交差反応性などの副作用をもたらすこともあるという事実に起因する(Lowdell et al.,Cytotherapy,2018;00:1-17)。
【0142】
末梢血単核細胞(PBMC)は、丸い核を有する任意の血液細胞(すなわち、リンパ球、単球、またはマクロファージ)を指す。これらの血球は、感染症と戦い、侵入者に適応するための免疫系の重要な構成要素である。リンパ球集団は、CD4+およびCD8+T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞、CD14+単球、および好塩基球/好中球/好酸球/樹状細胞からなる。これらの細胞は、血液の層を分離して血漿の層の下に単球およびリンパ球がバフィーコーを形成する親水性多糖類であるFICOLL(商標)を使用して、全血またはLeukoPakから分離されることが多い。一実施形態では、「PBMC」は、少なくともT細胞、および任意選択的にNK細胞、および抗原提示細胞を含有する、細胞集団を指す。
【0143】
本明細書で使用される細胞選別技術は、本開示に限定されることなく、当該技術分野で一般に使用される方法または機器を使用することによって、達成され得る。表面マーカーが、これらの技術、方法、および機器において細胞を選別するために使用される限り、細胞を選別するための任意の技術、方法、および機器が本開示で使用されてもよい。例えば、磁気選別技術またはフローサイトメトリーが使用され得る。磁気分離技術またはフローサイトメトリーなどの細胞選別技術の実験プロセスは、様々な科学文献に見いだされ得て、または機器または装置の製造業者によって提供される、取扱い説明書または推奨プロトコルに従って実施されてもよい。当業者であれば、これらの特定の実験プロセスまたはプロトコルを取得する能力を有するであろう。
【0144】
本明細書で使用される「直接選別」という用語は、選別前のT細胞のクローン培養(すなわち、開始細胞を複数の継代培養に分割する培養)に依存しない、任意の選別活動を指す。例えば、T細胞を直接選別すること、例えば、非クローン培養T細胞から単離されたCD8+T細胞などは、CD45、CD197、CD28、CD27、IL-7受容体(IL-7Rα)、CD57、CD95、CD127、CD62LなどのT細胞表面分子に結合する、例えば、四量体などのフルオロフォアタグ付きペプチド/MHC多量体(例えば4量体)およびその他のフルオロフォアタグ付き抗体を使用することによって、選別されてもよい。このようにして直接選別によって得られるT細胞は、主に低頻度の抗原特異的前駆体T細胞を含有してもよい。
【0145】
本明細書の用法では、「がん」(または「がん性」)、「過剰増殖性」、および「新生物性」という用語は、自律的増殖能力(すなわち、急速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態または病状)を有する細胞を指すために使用されてもよい。過剰増殖性および新生物性疾患状態は、病理的(すなわち、病態を特徴付けまたは構成する)として分類されてもよく、またはそれらは、非病的として(すなわち、正常からの逸脱であるが、病態とは関連していないとして)分類されてもよい。用語には、組織病理学的タイプまたは侵襲段階にかかわりなく、全てのタイプのがん性増殖または発がんプロセス、転移組織または悪性に形質転換した細胞、組織、または臓器が含まれることが意図される。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖によって特徴付けられる疾患状態で発生してもよい。非病的過剰増殖性細胞の例としては、創傷修復に関連した細胞の増殖が挙げられてもよい。
【0146】
「がん」または「新生物」という用語は、肺、乳房、甲状腺、リンパ腺およびリンパ組織、胃腸器官、および尿生殖路に影響を及ぼすものをはじめとする、様々な器官系の悪性腫瘍を指すために、ならびにほとんどの結腸がん、腎細胞がん、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞がん、小腸がん、および食道がんなどの悪性腫瘍を含むと一般に考えられる腺がんを指すために、使用されてもよい。発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん;肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん;頸部、胆嚢、または胸膜のがん;鼻、鼻腔、または中耳のがん;外陰のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん;腹膜、網、および腸間膜のがん;咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、軟部組織がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、膀胱がん;および例えば、食道がん、胃がん、膵臓がん、胃がん、小腸がん、消化管カルチノイド腫瘍などの消化管がん;口腔のがん、結腸がん、および肝胆道がんのいずれかをはじめとする、任意のがんであり得る。
【0147】
「がん腫」という用語は、呼吸器系がん腫、消化器系がん腫、泌尿生殖器系がん腫、精巣がん腫、乳がん腫、前立腺癌、内分泌系がん腫、および黒色腫をはじめとする、上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。例示的ながん腫としては、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸、および卵巣組織から形成するものが挙げられる。この用語には、がん性肉腫および肉腫性組織からなる悪性腫瘍をはじめとする、がん肉腫もまた含まれてもよい。「腺がん」は、腺組織に由来するがん腫、またはその中で腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成するがん腫を指す。
【0148】
増殖障害の追加的な例としては、造血性新生物障害が挙げられてもよい。本明細書の用法では、「造血性新生物障害」という用語は、例えば、骨髄系、リンパ系または赤血球系、またはそれらの前駆細胞から生じる、造血器起源の過形成細胞/新生物細胞を伴う疾患を含んでもよい。好ましくは、疾患は、不十分に分化した急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)から生じてもよい。追加的な例示的骨髄性障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit.Rev.in Oncol./Hemotol.11:267-97で概説される);B系統ALLおよびT系統ALL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含めた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)をはじめとするが、これらに限定されないリンパ系悪性腫瘍が挙げられてもよいが、これらに限定されない。悪性リンパ腫の追加的な形態としては、非ホジキンリンパ腫およびその変異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、およびリード・シュテルンベルク病が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0149】
腫瘍の増殖およびサイズを減少させるのに十分な増殖され操作されたT細胞の量、または治療的有効量は、特定の選択された組成物だけでなく、投与経路、治療される病状の性質、および患者の年齢および病状によっても変動してよく、最終的には、患者の医師または薬剤師の裁量となることが、当業者によって理解されるであろう。本方法において、使用される最小限に増殖され操作されたT細胞が与えられる時間の長さは、個々のベースで変化する。治療法に関する本明細書における参照は、記載されたがんおよび症状の予防法ならびに治療法に及ぶことが、当業者によって理解されるであろう。
【実施例】
【0150】
実施例1
直接選別プロセスと従来のプロセスとの比較
図1は、PBMC分離から始めて、1週間の樹状細胞(DC)生成;周期毎に1週間の2周期の刺激(Stim1およびStim2);選別;および周期毎に2週間の2周期の迅速増殖プロトコル(REP)、すなわち、REP1およびREP2がそれに続く、従来のプロセスを使用してT細胞製品を調製するのに、約52日かかってもよいことを示す。対照的に、CD8+T細胞単離から始めて、選別と、周期毎に2週間の2周期の増殖(REP1およびREP2)とがそれに続く、直接選別を使用すると、約30日以下で完了してもよい。したがって、直接選別は、従来のプロセスと比較して、T細胞の製造を完了するのに約3週間の時間を節約してもよい。
【0151】
実施例2
改善されたゲーティングストラテジーによる直接選別
MLA直接選別
CD8+T細胞選択
【0152】
CD8+T細胞は、ドナー2から得られた新鮮なLeuko Paksから単離した(StemExpress(登録商標))。
図1および
図2A~2Dは、ドナー2からのMLA直接選別のために使用される、CD8+T細胞の純度を示す。
図2Aは、単離されたCD8+T細胞に存在するリンパ球の97.3%を示す。
図2Bは、リンパ球の94.1%(8.5×10
8個の細胞)がCD8について陽性であったことを示し、すなわち、純度は約94%である。CD8陰性画分では、
図2Cは、リンパ球の83.9%を示す。
図2Dは、リンパ球の0.27%がCD8陽性であることを示す。
【0153】
選別#1
CD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養し、直接選別がそれに続いた。「陰性投棄」では、すなわち、無関係のペプチドTet、CD56、CD19、およびCD14について陰性と検出されたCD8+T細胞の投棄では、それらを選別し、MLA Tet陰性またはCD45陰性CD8+T細胞を除去した。
図3は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、選別#1の後に、399,516個のMLA Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0154】
表2:選別#1の結果
【0155】
【表2】
理論純度は25.6%である
投入濃度= 31.8×10
6個の細胞/mlおよび0.21%の標的
SAΔ = 自己認識予測-Quantからの実際の結果
自己認識予測は、高バックグラウンド細胞濃度およびトリガーストラテジーがあるので、正確であることが期待される。
【0156】
選別#2
選別#1と同様に、単離されたCD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養した後、直接選別がそれに続いた。「陰性投棄」では、すなわち、無関係のペプチドTet、CD56、CD19、およびCD14について陰性と検出されたCD8+T細胞の投棄では、それらを減量し、MLA Tet陰性またはCD45陰性CD8+T細胞を除去した。
図4は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、減量選別後に、462,168個のMLA Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0157】
表3:選別#2の結果
【0158】
【表3】
理論純度は23.7%である
投入濃度= 約30×10
6個の細胞/mlおよび0.21%の標的
【0159】
選別#3
引き続く直接選別のために、選別#1および選別#2から得られたMLA Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞を合わせた。
図5は、純度選別後に、陰性対照(右側パネル)と比較して、662,650個のMLA Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(左側パネル)が回収されたことを示す。
【0160】
表4.選別#1~選別#3後の結果
【0161】
【0162】
記憶表現型(増殖前および純度選別後)
図6Aは、例えば、MLA Tet陽性CD8+T細胞の濃縮が、出発物質の0.34%から直接選別細胞中の95.75%に増加し、T
NAIVEが、出発物質の41.7%から直接選別細胞中の80.2%に増加したことを示す。
【0163】
図6Bは、例えば、CD27+CD8+T細胞の濃縮が、出発物質の81.1%から直接選別細胞中の99.9%に増加し、CD127+CD8+T細胞が、出発物質の11.4%から直接選別細胞中の96.4%に増加し、CD62L+CD8+T細胞が、出発物質の53.6%から直接選別細胞中の92.8%に増加したことを示す。
【0164】
図7は、直接選別されたMLA Tet陽性CD8+T細胞が、MLA Tet陰性CD8+T細胞と比較して、より多数のT
ナイーブ、より多数のT
CM、より少数のT
EM、およびより少数のT
EFFを含有することを示す。矛盾なく、
図8は、MLA Tet陽性CD8+T細胞が、MLA Tet陰性CD8+T細胞と比較して、例えば、CD27、CD62L、CD127などのT
NAIVE細胞マーカをより多く発現することを示す。
【0165】
MAGEA1直接選別
CD8+T細胞選択
CD8+T細胞は、ドナー3から得られた新鮮なLeuko Paksから単離した(StemExpress(登録商標))。
図3および
図9A~9Dは、ドナー3からのMAGEA1直接選別のために使用される、CD8+T細胞の純度を示す。
図9Aは、単離されたCD8+T細胞に存在するリンパ球の98.8%を示す。
図9Bは、リンパ球の99.4%(1.1×10
9個の細胞)がCD8について陽性であったことを示し、すなわち、純度は約99%である。CD8陰性画分では、
図9Cは、91.0%の細胞がリンパ球および単球であったことを示し、
図9Dは、これらの細胞の0.78%がCD8について陽性であったことを示している。
【0166】
選別#1
CD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養し、直接選別がそれに続いた。「陰性投棄」では、すなわち、無関係のペプチドTet、CD56、CD19、およびCD14について陰性と検出されたCD8+T細胞の投棄では、それらを減量し、MAGEA1 Tet陰性またはCD45陰性のCD8+T細胞を除去した。
図10は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、減量選別後に、12,144個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0167】
表5.選別#1に続くMAGEA1
【0168】
【表5】
理論純度は23.7%である
投入濃度= 34.0×10
6個の細胞/mlおよび0.04%の標的
SAΔ = 自己認識予測-Quantからの実際の結果
自己認識予測は、高バックグラウンド細胞濃度およびトリガーストラテジーがあるので、正確であることが期待される。
【0169】
選別#2
選別#1と同様に、単離されたCD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養した後、直接選別がそれに続いた。「陰性投棄」では、すなわち、無関係のペプチドTet、CD56、CD19、およびCD14について陰性と検出されたCD8+T細胞の投棄では、それらを減量し、MAGEA1 Tet陰性またはCD45陰性のCD8+T細胞を除去した。
図11は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、減量選別後に、10,846個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0170】
表6.選別#2に続くMAGEA1
【0171】
【表6】
理論純度は23.7%である
投入濃度= 約30×10
6個の細胞/ml
【0172】
選別#3
CD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養し、直接選別がそれに続いた。投棄ゲーティングを使用せずに、CD8+T細胞を減量し、MAGEA1 Tet陰性またはCD45陰性のCD8+T細胞を除去した。
図12は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、減量選別後に、17,646個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0173】
表7.選別#3後のMAGEA1
【0174】
【表7】
理論純度は23.7%である
*より低い純度は、ダンプゲーティングの不在に起因してもよい。
投入濃度= 約30×10
6個の細胞/ml
【0175】
選別#4
選別#3と同様に、単離されたCD8+T細胞をIL-7の存在下で一晩培養した後、直接選別がそれに続いた。投棄ゲーティングを使用せずに、CD8+T細胞を減量し、MAGEA1 Tet陰性またはCD45陰性のCD8+T細胞を除去した。
図13は、投入(左側パネル)および陰性対照(右側パネル)と比較して、減量選別後に、7,064個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞(中パネル)が回収されたことを示す。
【0176】
表8:選別#4後のMAGEA1
【0177】
【表8】
理論純度は23.7%である
*より低い純度は、ダンプゲーティングの不在に起因してもよい。
投入濃度=約20×10
6個の細胞/ml
【0178】
選別#5
選別#1~選別#4で得られたMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性のCD8+T細胞を引き続く選別#5で合わせた。
図14は、選別#5後に、陰性対照(右側パネル)と比較して、33,605個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性CD8+T細胞(左側パネル)が回収されたことを示す。
【0179】
表9: 選別#1~選別#4に従った直接選別に続くMAGEA1
【0180】
【0181】
純度選別から得られた33,605個のMAGEA1 Tet陽性およびCD45陽性CD8+T細胞を2つのREP、すなわち、PEP1ウェルあたり16,802個の細胞に分割した。
【0182】
MLAおよびMAGEA1で選別された細胞の細胞生存率と倍数増殖
純度選別されたCD8+T細胞の細胞生存率および倍数増殖を測定するために、AOPI、すなわち、細胞膜を越えて容易に拡散し、ひいては生きている細胞のDNAを染色し得るアクリジンオレンジ(AO)と、膜が損傷した細胞にのみ侵入して、死細胞を染色し得るヨウ化プロピジウム(PI)とで細胞を染色する。
【0183】
図15Aは、REP1後、MLA Tet選別された、およびMAGEA1 Tet選別されたCD8+T細胞における、生存可能なT細胞の総数(上側パネル)および倍数増殖(下側パネル)を示す。
【0184】
図15Bは、REP22後、MLA Tet選別された、およびMAGEA1 Tet選別されたCD8+T細胞における、生存可能なT細胞の総数(上側パネル)および倍数増殖(下側パネル)を示す。
【0185】
図16Aは、REP1後、MLA Tet選別された、およびMAGEA1選別されたCD8+T細胞における、CD3+CD8+T細胞の百分率を示す。
【0186】
図16Bは、REP2後、MLA Tet選別された、およびMAGEA1選別されたCD8+T細胞における、CD3+CD8+T細胞の百分率を示す。
【0187】
図17Aは、REP1後、MLA Tet選別されたCD8+T細胞の中のMLA Tet+CD8+T細胞の百分率と、MAGEA1 Tet選別CD8+T細胞の中のMAGEA1 Tet+CD8+T細胞の百分率を示す。
【0188】
図17Bは、REP2後、MLA Tet選別されたCD8+T細胞の中のMLA Tet+CD8+T細胞の百分率と、MAGEA1 Tet選別CD8+T細胞の中のMAGEA1 Tet+CD8+T細胞の百分率を示す。
【0189】
【0190】
【0191】
図19Aは、Ag001-02 Tet選別されたCD8+T細胞のREP1後のフローサイトメトリーデータを示す。
【0192】
図19Bは、Ag001-02 Tet選別されたCD8+T細胞のREP2後のフローサイトメトリーデータを示す。
【0193】
MLA Tet選別されたCD8+T細胞およびMAGEA1 Tet選別されたCD8+T細胞の細胞傷害性活性を測定するために、MLA Tet選別されたCD8+T細胞またはMAGEA1 Tet選別されたCD8+T細胞を例えば、それぞれ、0(対照)、0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、および10μg/mlのMLAペプチドまたはMAGEA1ペプチドなど、濃度を上げながらパルス化されたT2細胞と共にインキュベートすることによって、T2殺滅アッセイを実施した。
【0194】
MLA Tet選別されたCTL(
図20A)およびMAGEA1 Tet選別されたCTL(
図20B)は、濃度依存様式でMLAペプチドまたはMAGEA1ペプチドでパルスされたT2細胞を殺滅した。
【0195】
実施例3
染色条件の比較
TCRは、同族抗原と係合した後、トリガーして内部移行することが知られている。pMHC四量体は、これらの細胞が同族抗原に曝露された後、T細胞を染色できない可能性がある。染色強度を高める1つの方法は、ペプチド/MHC(pMHC)多量体染色の前に、例えば、ダサチニブなどのタンパク質キナーゼ阻害剤(PKI)でこれらの細胞を処理することによって、TCR内部移行を阻害することであってもよい(その内容全体が参照により援用される、Lissina et al.,J Immunol Methods 2009;340:11-24)。
【0196】
pMHC多量体染色に対するPKIおよび温度の影響を比較するために、健常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)を50nMダサチニブ(
図21A)で前処理し、または未処理のままにし(
図21B)、次に、37℃(
図21A)または室温(RT)(
図21B)のどちらかで30分間、2つのCol6A3-002ペプチド(FLDGSANV(配列番号141))(Col)の四量体(2Dtet)にストレプトアビジンBV421とPEを共役させたもの、および5つの異なるの無関係のAPCの四量体(ペプチド1、ペプチド2、ペプチド3、ペプチド4、ペプチド5)を共役させたもので染色した。四量体染色に続いて、4℃でPEおよびAPCに対する四量体安定化抗体染色でサンプルを対比染色し、4℃での抗CD45 PE-Cy7抗体での染色がそれに続いた。
【0197】
図21A(パネルA1)および21B(パネルB1)は、四量体なしで染色されたサンプルにおけるバックグラウンドゲーティングストラテジーを示す。
【0198】
図21A(パネルA2)および21B(パネルB2)は、Q2で表される関心のある細胞での2Dtet染色を示す。37℃でのダサチニブ処理は、0.027%のCol Tet+T細胞をもたらし、これは、RTでのダサチニブ処理なしで得られたものと類似しており、すなわち0.0095%である。
【0199】
図21A(パネルA3)および21B(パネルB3)は、無関係のAPC四量体(ペプチド1、ペプチド2、ペプチド3、ペプチド4、およびペプチド5)に対する
図21A(パネルA2)および21B(パネルB2)からのQ2象限を示し、Q1象限は関心のある細胞を表す。37℃でのダサチニブ処理は、0.93%のCol Tet+T細胞をもたらし、これは、RTでのダサチニブ処理なしで得られたものと類似しており、すなわち3.35%である。
【0200】
図21A(パネルA4)および
図21B(パネルB4)は、
図21A(パネルA3)および
図21B(パネルB3)からのQ1細胞の位置を
図21A(パネルA2)および
図21B(パネルB2)に重ね合わせて示す。全ての細胞は、CD45+単一細胞リンパ球からゲートされた。最終的な頻度と染色感度は、37℃でのダサチニブ処理は、4×10
5個のCD45+細胞中に1つのCol Tet+T細胞をもたらすことを示し、これは、RTでのダサチニブ処理なしで得られたもの、すなわち、3×10
5個のCD45+細胞中の1つのCol Tet+T細胞と類似している。
【0201】
実施例4
パネル最適化
T細胞染色に対する単一(1D)および二重(2D)蛍光色素共役pMHC多量体の影響を比較するために、細胞表面にCol6A3-002ペプチド/MHC複合体を提示する細胞に特異的に結合するT細胞である、約5×106個の細胞/mlのCol6A3 REP1(αCol6A3 T細胞)細胞、および陰性対照として、細胞表上にMLAペプチド/MHC複合体を提示する細胞に特異的に結合するT細胞である、約5×106個の細胞/mlのαMLA T細胞を表10に示される条件下で染色した。全ての細胞は、CD45+単一細胞リンパ球からゲートされた。
【0202】
【0203】
図22A(パネルA1)は、抗CD45抗体(αCD45)染色されたαCol6A3 T細胞のバックグラウンドAPC/PE染色を示す。パネルA2(Q1)は、αCD45+αCol6A3 T細胞の37.7%が、Col6A3-PEについて陽性に染色されたことを示す。パネルA3(Q3)は、αCD45+αCol6A3 T細胞の33.5%が、Col6A3-APCについて陽性に染色されたことを示す。パネルA4(Q2)は、αCD45+αCol6A3 T細胞の33.5%が、Col6A3-PEとCol6A3-APCの双方について陽性に染色されたことを示す。陰性対照として、
図22Bは、αCD45染色αMLA T細胞(パネルB1)、Col6A3-PE染色αMLA T細胞(0.48%)(パネルB2、Q1)、Col6A3-APC染色αMLA T細胞(1.48%)(パネルB3、Q3)、Col6A3-PEおよびol6A3-APC二重染色αMLA T細胞(0.024%)(パネルB4、Q2)のバックグラウンドAPC/PE染色を示す。
図22Cは、染色された陰性対照αMLA T細胞と、二重染色されたαCol6A3 T細胞とを10:1の比率で混合することで、0.39%(Q2)のαCol6A3 T細胞もまた検出され得ることを示す。
【0204】
低頻度のペプチド特異的T細胞の検出における1D四量体と2D四量体の能力を比較するために、二重染色αMLA T細胞と、二重染色(APC/PE)αCol6A3 T細胞とを3:1、30:1、および90:1の希釈比で混合またはスパイクし、フロー解析がそれに続いた。染色条件は、表11に示される。
【0205】
【0206】
図23Aは、二重Col6A3-PE/APC染色を用いて、αCD45+αCol6A3 T細胞が、3:1(9.51%)(パネルA1、Q2)、30:1(1.38%)(パネルA2、Q2)、および90:1(0.66%、パネルA3、Q2)の希釈比で検出され得ることを示す。対照的に、
図23Bは、単一のCol6A3-PE染色を用いて、αCD45+αCol6A3 T細胞が、3:1(13.5%)(パネルB1、Q1)、30:1(2.32%)(パネルB2、Q1)、および90:1(1.06%、パネルB3、Q1)の希釈比で検出され得ることを示す。
図23Cは、試験された希釈範囲内でαCol6A3 T細胞を検出する際に、1D四量体染色(R
2=0.8756)と比較して、2D四量体染色が改善された直線性(R
2=0.9394)を有してもよいことを示す。
【0207】
低頻度のペプチド特異的T細胞の検出における1D四量体と2D四量体の能力をさらに比較するために、二重染色αMLA T細胞と、二重染色(APC/PE)αCol6A3 T細胞とを3:1、9:1、27:1、81:1、243:1、および729:1の希釈率で混合またはスパイクし、フロー解析がそれに続いた。染色条件は、表12に示される。
【0208】
【0209】
図24Aは、二重Col6A3-PE/APC染色を用いて、αCD45+αCol6A3 T細胞が、3:1(9.86%)(パネルA1、Q2)、9:1(3.40%)(パネルA2、Q2)、27:1(1.92%)(パネルA3、Q2)、81:1(0.88%)(パネルA4、Q2)、243:1(0.31%)(パネルA5、Q2)、および729:1(0.19%、パネルA6、Q2)の希釈比で検出され得ることを示す。対照的に、
図24Bは、単一Col6A3-PE染色を用いて、αCD45+αCol6A3 T細胞が、3:1(16.5%)(パネルB1、Q1)、9:1(6.15%)(パネルB2、Q1)、27:1(2.92%)(パネルB3、Q1)、81:1(1.39%)(パネルB4、Q1)、243:1(0.83%)(パネルB5、Q1)、および729:1(0.96%、パネルB6、Q1)の希釈比で検出され得ることを示す。
図24Cは、試験された希釈範囲内でαCol6A3 T細胞を検出する際に、1D四量体染色(R
2=0.7021)よりも、2D四量体染色が改善された直線性(R
2=0.7265)を有してもよいことを示す。
図24Dは、αCol6A3 T細胞の検出において、例えば、64:1~1024:1などの低希釈範囲で、1D四量体染色(R2=0.5381)よりも、2D四量体染色が優れた直線性(R2=0.8758)を有することを示す。これらの結果は、低頻度のペプチド特異的T細胞の検出において、2D四量体染色が1D四量体染色よりも優れていてもよいことを示す。
【0210】
それぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、Tungatt et al.(J Immunol 2015,194:463-474)およびDolton et al.(Immunology 2015,146:11-22)は、染色中に抗蛍光色素非共役抗体を添加すると、pMHC四量体およびデキストラマーと、PE、APC、またはFITCベースの試薬との双方で、蛍光強度が大幅に向上したことを開示している。
【0211】
ペプチド特異的T細胞の1D Tet染色に対する、抗蛍光色素非共役抗体の効果を判定するために、αCD45+αCol6A3 T細胞を(i)1D Tet(APC)±抗APC一次抗体、または(ii)1D Tet(PE)Tet±抗PE一次抗体で染色した。
図25A(パネルA1、Q3)は、抗APC一次抗体の添加が、αCD45+APC-Tet染色αCol6A3 T細胞の検出を、抗APC一次抗体なしでの46.3%から63.8%(パネルA2、Q3)まで増強することを示す。
図25Bは、抗PE一次抗体の添加が、PE-Tet染色αCD45+αCol6A3 T細胞の検出を、抗APC一次抗体なしでの39.1%(パネルB1、Q1)から60.6%(パネルB2、Q1)まで増強することを示す。
【0212】
ペプチド特異的T細胞の2D Tet染色に対する、抗蛍光色素非共役抗体の効果を判定するために、αCD45+αCol6A3 T細胞を(i)2D Tet(APC+PE)±抗APC一次抗体および抗PE一次抗体、または(ii)2D Tet(BV421+PE)±抗PE一次抗体で染色した。
図25C(パネルC1、Q2)は、抗APC一次抗体および抗PE一次抗体の添加が、αCD45+2D Tet(APC+PE)染色αCol6A3 T細胞の検出を、抗APC一次抗体および抗PE一次抗体なしでの12.0%から39.2%まで増強することを示す(パネルC2、Q2)。
図25Dは、抗PE一次抗体の添加が、2D Tet(BV421+PE)染色αCD45+αCol6A3 T細胞の検出を、抗APC一次抗体なしでの20.8%から(パネルD1、Q6)39.5%(パネルD2、Q6)まで増強することを示す。陰性対照として、
図25Eは、抗APC一次抗体および抗PE一次抗体の添加が、2D Tet(APC+PE)染色αMLA T細胞を検出せず(パネルE1、Q2)、抗PE一次抗体検出2D Tet(BV421+PE)染色αMLA T細胞の添加もまた、検出しなかったことを示す(パネルE2、Q6)。陰性対照は、
図25Cに示される。これらの結果は、抗蛍光色素非共役抗体の添加が、ペプチド特異的T細胞の1D Tetおよび2D Tet染色における、ペプチド特異的T細胞の検出を増強し得ることを示す。
【0213】
2D Tet(PE+BV421)および2D Tet(APC+PE)の間で検出感度を比較するために、2D Tet(PE+BV421)染色αCol6A3 T細胞を2D Tet(PE+BV421)染色αMLA T細胞中に、抗PE一次抗体の存在下で、1:10、1:100、1:1000、および1:10000の希釈比でスパイクした(
図26、上部パネル)。2D Tet(PE+BV421)染色の陰性対照は、
図25E(E2)に示される。同様に、2D Tet(APC+PE)染色αCD45+αCol6A3 T細胞を2D Tet(APC+PE)染色αMLA T細胞中に、抗APC一次抗体および抗PE一次抗体の存在下で、1:10、1:100、1:1000、および1:10000の希釈比でスパイクした(
図26、下部パネル)。2D Tet(APC+PE)染色の陰性対照は、
図25E(E1)に示される。これらの結果は、それぞれの希釈比における、2D Tet(APC+PE)染色αCol6A3 T細胞(上部パネルのQ6)の検出と、2D Tet(PE+BV421)染色αCol6A3 T細胞(下部パネルのQ2)の検出とが同等であることを示し、2D Tet(APC+PE)および2D Tet(PE+BV421)の同等の感度が示唆される。しかし、2D Tet(PE+BV421)を使用することで、例えば、2D Tet(PE+BV421)を染色するために、例えば、抗PE一次抗体などの1つの抗蛍光色素非標識抗体を使用することと、2D Tet(APC+PE)の染色のために例えば、抗APC一次抗体と抗PE一次抗体の2つの抗蛍光色素非標識抗体を使用することの比較で、試薬の要求量を低減させてもよい。
【0214】
未染色のT細胞を検出する際のバックグラウンドブロック剤、例えば牛乳の能力を検証するために、0.5%のTween 20を含有する洗浄液に5%の牛乳緩衝液を添加した。例えば、未染色のαCol6A3 T細胞、αMLA T細胞、およびPBMC T細胞は、5%の牛乳と0.5%のTween 20を含有する溶液で洗浄するか、牛乳なしで0.5%のTween 20を含有する溶液で洗浄した。
図27は、洗浄液への牛乳の添加が、牛乳なしの洗浄液に比べて、αCol6A3 T細胞(左下パネルのQ6)およびαMLA T細胞(中央下パネルのQ6)の自己蛍光を増強することを示す(それぞれ左上パネル(Q6)および中央上パネル(Q6)。洗浄液への牛乳の添加が、PBMC T細胞の自己蛍光を増強しないこともある(右上および右下パネル)。
【0215】
染色に対する、PKI、無関係のペプチド四量体、温度の影響
最も低いバックグラウンドと最も低い偽陽性率を提供してもよい染色条件を判定するために、例えば、ダサチニブ(DAS)などのPKI処理ありまたはなしで、異なる四量体染色温度で、無関係のペプチド四量体の混合物ありまたはなしでPBMCを染色した(その内容全体が本明細書に参照により援用される、Hadrup et al.,Nat.Methods,2009,6:520-526)。例えば、PBMC細胞を、例えば、5種類の無関係のペプチド(YLMDDFSSL(配列番号16))、MAG-003(KVLEHVVRV(配列番号118))、MAGEC2-001(TLDEKVAEL(配列番号161))、MXRA5-003(LLWGHPRVALA(配列番号18))、およびMAGEA1-003(KVLEYVIKV(配列番号105))APC四量体などの無関係のペプチド四量体混合物の存在下または非存在下、±DAS処理によって、37℃または室温(RT)で、2D Tet(PE+BV421)で染色した。DAS処置は37℃で実施した。
【0216】
この解析では、最低でも0.5×10
6回のイベントを取得した。DAS処理ありでは、
図28Aの左上パネルは、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下でのRTでの染色、2D Tet(PE+BV421)によるPBMC染色中の8.04E-3%(Q2)CD45+Col6A3特異的T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、95.2%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約4.76%のAPC陰性およびBV421陽性細胞は、真のCol6A3特異的T細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)。無関係のペプチドAPC四量体混合物の非存在下では、右下パネル(Q2)は、左下パネルのQ2(7.17E-3%)で検知されたBV421/PE二重陽性細胞中の0%の無関係のペプチド陽性T細胞を示す。したがって、左下パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞中の100%の細胞は、真のCol6A3特異的T細胞であるように見る(右下パネルのQ1)。これらの結果は、RTでの四量体染色への無関係のペプチド四量体混合物の添加が、PBMC中の偽陽性ペプチド特異的T細胞の検出率を、例えば、無関係のペプチドAPC四量体混合物の非存在下での100%から、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下での4.76%まで、低下させ得ることを示す。
【0217】
図28Aに示される実験を37℃で実施して、同様の結果を観察した。
図28Bの左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、0.055%(Q2)のCD45+Col6A3特異的T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、98.2%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約1.78%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のCol6A3特異的T細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)。対照的に、無関係のペプチドAPC四量体混合物の非存在下では、右下パネル(Q2)は、左下パネルのQ2(0.19%)で検知されたBV421/PE二重陽性細胞中の0%の無関係のペプチド陽性T細胞を示す。したがって、左下パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞中の100%の細胞は、真のCol6A3特異的T細胞であるように見る(右下パネルのQ1)。これらの結果は、37℃での四量体染色への無関係のペプチド四量体混合物の添加が、PBMC中の偽陽性ペプチド特異的T細胞の検出率を、例えば、無関係のペプチドAPC四量体混合物の非存在下での100%から、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下での1.78%まで、低下させ得ることを示す。
【0218】
図28Cは、無関係のペプチドAPC四量体混合物の添加が、PBMC中の無関係のペプチド陰性細胞および2D Tet陽性細胞の検出を、例えば、無無関係のペプチドAPC四量体混合物の非存在下での平均(n=4)99.3±1.14%から、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下での3.77±2.7%まで、有意に減少させることを示す。これらの結果は、無関係のペプチド四量体混合物が偽陽性2D Tet染色ペプチド特異的T細胞を減少させ得ることを示す。
【0219】
図29は、DAS処理が、DAS処理なしと比較して、PBMC中のCD45+2D Tet陽性細胞の検出を有意に増加させなくてもよい(n=4、T検定、p=0.527373)ことを示す。
【0220】
図30は、RTでの染色と比較して、37℃での2D Tet染色が、PBMC中のバックグラウンドCD45+2D Tet陽性細胞の検出を増加させる傾向がある(n=4、T検定、p=0.063954)ことを示す。
【0221】
無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下、DAS処理ありでRTで染色を実施した場合、
図31Aの左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、8.04E-3%(Q2)CD45+Col6A3特異的T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、95.2%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約4.76%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のCol6A3特異的T細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)。DAS処理なしでは、右下パネルは、左下パネルのQ2(5.51E-3%)で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、無関係のペプチド陽性T細胞の92.9%(Q2)を示す。したがって、左下パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、APC陰性/BV421陽性細胞の7.14%は、真のCol6A3特異的T細胞に相当してもよい(右下パネルのQ1)。
【0222】
無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で37℃で染色を実施した場合にも、同様の結果が観察された。DAS処理ありでは、
図31Bの左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、0.055%(Q2)のCD45+Col6A3特異的T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、98.2%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約1.78%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のCol6A3特異的T細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)。DAS処理なしでは、右下パネルは、左下パネルのQ2(0.027%)で検出された、BV421/PE二重陽性細胞における、98.6%(Q2)の無関係のペプチド陽性T細胞、すなわちAPC/BV421二重染色細胞を示す。
【0223】
陽性に染色された細胞と陰性に染色された細胞の分離が良好で、偽陰性率が低いことを示す、より高い染色指数(SI)を提供してもよい染色条件を判定するために、迅速増殖プロトコル(REP)によって調製されたCol6A3 REP1細胞を±DAS処理(37℃)、±無関係のペプチド四量体混合物、RTまたは37℃で染色した。
【0224】
染色指数(SI)は、式(I)を用いて計算してもよい:SI=(平均PE+平均BV421 2Dtet+)-(平均PE+平均BV421 2Dtet-)/2×(SD PE+SD BV421 2Dtet-)。
図32は、DAS処理が、DAS処理なしと比較して、SIを例えば、P=0.006101など、有意に上昇させることを示す。対照的に、染色温度および無関係のペプチド混合物は、例えば、RT対37℃(P=0.316695)、および±無関係のペプチド四量体混合物(P=0.597223))など、SIに有意な影響を与えなくてもよい。
【0225】
DAS処理ありでは、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下でRTで染色を実施した場合、
図33Aの左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色された55.8%(Q2)のCD45+Col6A3 REP1細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、21.6%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約78.4%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のCol6A3 REP1細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)(SI=24.0)。37℃で染色を実施した場合、右下パネル(Q2)は、左下パネルのQ2(54.4%)で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、6.38%の無関係のペプチド陽性T細胞を示す。したがって、約93.6%の細胞は、真のCol6A3 REP1細胞に相当してもよい(右下パネルのQ1)(SI=19.0)。これらの結果は、DAS処理ありで、無関係のペプチド四量体混合物の存在下での37℃の四量体染色温度が、偽陰性T細胞を、例えば、RTでの21.6%から37℃での6.38%に低下させてもよいことを示す。
【0226】
DAS処理なしで、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で染色を実施した場合、
図33Bの左上パネルは、RTで2D Tet(PE+BV421)で染色された59.2%(Q2)のCD45+Col6A3 REP1細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。右上パネルは、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、12.4%(Q2)の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約87.6%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のCol6A3 REP1細胞に相当してもよい(右上パネルのQ1)(SI=15.9)。37℃で染色を実施した場合、
図33の右下パネル(Q2)は、左上のパネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、4.12%の無関係のペプチド陽性T細胞を示す。したがって、約95.9%の細胞は、真のCol6A3 REP1細胞に相当してもよい(右下パネルのQ1)(SI=9.49)。これらの結果は、DAS処理なしで、無関係のペプチド四量体混合物の存在下での37℃での四量体染色が、偽陰性T細胞を、例えば、RTでの12.4%から37℃での4.12%に低下させ得ることを示す。
【0227】
2つの染色条件の比較
条件#1:DAS処理あり+無関係のペプチド四量体混合物あり、37℃での染色。
【0228】
以下のサンプル#1~#3は、条件#1で染色した。
【0229】
サンプル#1:αCol6A3 T細胞
図34Aの左側パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色された25.1%(Q2)のCD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した(SI=15.6)。右側パネル(Q2)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、3.18%の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約96.9%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のαCol6A3 T細胞に相当してもよい(右側パネルのQ1)。
【0230】
サンプル#2:PBMC中にスパイクされたαCol6A3 T細胞(1:1×10
5)、約2×10
6個のCD45+細胞の取得
図34BのB2パネルは、2D PE/BV421 Tetで染色されたPBMC(1:1×10
5)中にスパイクされた0.035%(Q2)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。
図34BのB3パネルは、B2パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、97.4%(Q2)のBV421/APC二重陽性の無関係のペプチドT細胞の検出を示す。したがって、約2.58%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、PBMC中にスパイクされた真のαCol6A3 T細胞に相 当してもよい(B3パネルのQ1)。未染色のPBMC(B1パネル)が、陰性対照として機能する。B4パネルは、B3パネルのQ1をB2パネルに重ねたものである。これらの結果は、取得された2×10
6個のCD45+細胞における、18個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出、すなわち、1×10
5個のCD45+細胞における、約1個のαCol6A3 T細胞の検出を示す。
【0231】
サンプル#3:PBMC(5×10
6個の細胞)のみ、約2×10
6個のCD45+細胞の取得
図34CのC2パネルは、2D Tet(PE/BV421)で染色されたPBMCにおける、0.027%(Q2)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。C3パネルは、C2パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、99.1%(Q2)のBV421/APC二重陽性で無関係のペプチドT細胞の検出を示す。したがって、約0.93%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、PBMC中の真のαCol6A3 T細胞に相当してもよい(C3パネルのQ1)。未染色のPBMC(C1パネル)が、陰性対照として機能する。C4パネルは、C3パネルのQ1をC2パネルに重ねたものである。結果は、取得された2×10
6個のCD45+細胞における、5個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性の細胞の検出、すなわち、4×10
5個のCD45+細胞における、約1個のαCol6A3 T細胞の検出を示す。
【0232】
条件2:DAS処理なし+無関係のペプチド四量体混合物、RTでの染色
以下のサンプル#4~#6は、条件#2で染色した。
【0233】
サンプル#4:αCol6A3 T細胞
図35Aの左側パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色された35.5%(Q2)のCD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した(SI=10.2)。右側パネルは、左側パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、2.60%(Q2)の無関係のペプチド陽性T細胞の検出を示す。したがって、約97.4%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、真のαCol6A3 T細胞に相当してもよい(右側パネルのQ1)。
【0234】
サンプル#5:PBMC中にスパイクされたαCol6A3 T細胞(1:1×10
5)、約2×10
6個のCD45+細胞の取得
図35BのB2パネルは、2D PE/BV421 Tetで染色されたPBMCにスパイクされた0.012%(Q2)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。
図35BのB3パネルは、B2パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、93.7%(Q2)のBV421/APC二重陽性の無関係のペプチドT細胞の検出を示す。したがって、約6.32%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、PBMC中にスパイクされた真のαCol6A3 T細胞に相当してもよい(B3パネルのQ1)。未染色のPBMC(B1パネル)が、陰性対照として機能する。B4パネルは、B3パネルのQ1をB2パネルに重ねたものである。結果は、取得された2×10
6個のCD45+細胞における、12個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性の細胞の検出、すなわち、1.7×10
5個のCD45+細胞における、約1個のαCol6A3 T細胞の検出を示す。
【0235】
サンプル#6:PBMC(5×10
6個の細胞)のみ、約2×10
6個のCD45+細胞の取得
図35CのC2パネルは、2D PE/BV421 Tetで染色されたPBMCにおける、9.54E-3%(Q2)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。C3パネルは、C2パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、96.6%(Q2)のBV421/APC二重陽性で無関係のペプチドT細胞の検出を示す。したがって、約3.35%のAPC陰性/BV421陽性細胞は、PBMC中の真のαCol6A3 T細胞に相当してもよい(C3パネルのQ1)。未染色のPBMC(C1パネル)が、陰性対照として機能する。C4パネルは、C3パネルのQ1をC2パネルに重ねたものである。結果は、取得された2×10
6個のCD45+細胞における、6個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性の細胞の検出、すなわち3.3×10
5個のCD45+細胞における、約1個のαCol6A3 T細胞の検出を示す。
【0236】
上述したように、
図34Aの左側パネルは、DAS処理ありで、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下37℃での染色で、2D Tet(PE+BV421)で染色された、25.1%(Q2)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。
図35Aの左側パネルは、DAS処理なしで、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下、RTでの染色で、2D Tet(PE+BV421)で染色された、35.5%(Q45)CD45+αCol6A3 T細胞の検出を示す。表13に示されるように、条件A~Gで2D Tet染色を実行することによって、DAS処理なし(35.5%)よりもDAS処理あり(25.1%)での予想よりも低い2D Tet(PE+BV421)染色の観察を調査した。
【0237】
【0238】
図36Aは、2D Tet(PE+BV421)染色±DAS処理を無関係のペプチド四量体混合物の存在下で、卓上インキュベーション(例えば、氷上)と4℃での遠心分離を行った場合(パネルC~GのQ2)には、いかなるステップも4℃で実施されない場合(パネルAおよびBのQ2)と比較して、PE/BV421二重染色されたCD45+Col6A3 REP1細胞の検出が一般的に増加することを示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。DAS処理ありで、
図36BのパネルD(13.7%、Q2)は、4℃で2D Tet(PE+BV421)染色、卓上インキュベーション、および遠心分離を実施した場合には、37℃で実施された(パネルC、2.01%、Q2)またはRTで実施された(パネルF、3.07%、Q2)2D Tet(PE+BV421)染色と比較して、BV421/APC二重陽性の無関係のペプチドT細胞のバックグラウンド染色が増加することを示す。DAS処置なしで、パネルG(5.48%、Q2)は、4℃で2D Tet(PE+BV421)染色、卓上インキュベーション、および遠心分離を実施した場合には、RTで実施された2D Tet(PE+BV421)染色(パネルE、2.80%、Q2)と比較して、BV421/APC二重陽性の無関係のペプチドT細胞のバックグラウンド染色が増加することを示す。
【0239】
図36Cは、特異的染色(
図36AのQ2)および非特異的染色(
図36BのQ2)の棒グラフを示す。1×10
6個のCD45+細胞あたりのペプチド特異的T細胞の数を示すフロー%に基づく1×10
6個あたりの推定値は、以下の式で算出されてもよい:(2Dtet+%×1×10
6/100)-((2Dtet+%×1×10
6/100)×無関係のペプチド四量体混合物+%/100))。表14は、染色条件A~G下での推定値を要約する。DAS処理は、37℃で30分間実施した。
【0240】
【表14】
*(2Dtet+%×1×10
6/100)- ((2Dtet+%×1×10
6/100)×無関係のペプチド 四量体混合物 +%/100))。
【0241】
これらの結果は、例えば、染色条件DおよびGなど、4℃で全ての染色、スピン(遠心分離)、および/または洗浄を実施することが、その他の条件、すなわち、A、B、C、E、およびFよりも高い、1×106個のCD45+細胞あたりのペプチド特異的T細胞の推定数、すなわち、それぞれ6.75×105個および7.06×105個の検出に基づいて、好ましくあってもよいことを示す。
【0242】
条件DおよびGでのPBMC染色を調べるために、4人のドナーから得たPBMC(12.5×106個の細胞/ml)を染色した±DAS処理(50nM、37℃)、Col6A3-002 BV421四量体(3μg/ml)およびCol6A3-002 PE四量体(2.5μg/ml)、例えばPE-Cy7マウス抗ヒトCD45(BD Biosciences)などの蛍光色素標識抗CD45抗体、Col6A3-002 BV421四量体(3μg/ml)、およびAPC無関係のペプチド(n=5、例えば、Col6A3-015(YLMDDFSSL(配列番号16))、MAG-003(KVLEHVVRV(配列番号118))、MAGEC2-001(TLDEKVAEL(配列番号161))、MXRA5-003(LLWGHPRVALA(配列番号18))、およびMAGEA1-003(KVLEYVIKV(配列番号105))の四量体混合物(3μg/ml)、全ての染色、スピン、および洗浄は4℃で実施した。
【0243】
DAS処理ありでは、
図37Aの左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、4.23E-3%(Q2)のCD45+Col6A3陽性T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/PE二重染色細胞を検出した。中央上パネル(枠内)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、46.5%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右上パネルは、中央上パネルの枠内領域を左上パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された4.78×10
6個のリンパ球における、94個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0244】
DAS処理ありでは、
図37Aの左下パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、4.38E-3%(Q2)のCD45+Col6A3陽性T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/PE二重染色細胞を検出した。中央下パネル(枠内)は、左下パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、34.4%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右下パネルは、中央下パネルの枠内領域を左下パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された4.11×10
6個のリンパ球における、62個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0245】
要約すると、
図37Bは、DAS処理が、全てての染色、スピン(遠心分離)、および洗浄を4℃で実施した場合、DAS処理なしと比較して、PDMC中の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を増加させることを示す。
図37Cは、DAS処理が、全ての染色、スピン(遠心分離)、および洗浄を4℃で実施した場合、DAS処理なしと比較して、2D Tet(PE+BV421)+PEおよび2D Tet(PE+BV421)+BV421の平均蛍光強度(MFI)を減少させることを示す。
【0246】
図37A~37Dに示される実験を、例えば、PE-Cy(商標)7マウス抗ヒトCD45(BD Biosciences)などの異なる蛍光色素標識抗CD45抗体を使用して繰り返した。4人のドナーから得たPBMC(10×10
6個の細胞/ml)を染色した、DAS処理(50nM、37℃)ありまたはなし、BV421(3μg/ml)、Col6A3-002 2D Tet(PE+BV421)(2.5μg/ml)、PerCP-Cy(商標)5.5マウス抗ヒトCD45(BD Biosciences)、Col6A3-002 BV421四量体(3μg/ml)、およびAPC(n=5)無関係の四量体混合物(3μg/ml)、全ての染色、スピン、および洗浄は4℃で実施した。
【0247】
DAS処理なしで、
図38の左側パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色されたPBMCにおける、0.012%(Q2)のCD45+Col6A3陽性T細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/PE二重染色細胞を検出した。中央パネル(枠内)は、左側パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、7.62%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右側パネルは、中央パネルの枠内領域を左側パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された1.09×10
7個のリンパ球における、100個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0248】
対照としてCol6A3 PEP1細胞を使用して、
図38に示す実験を繰り返した。DAS処理ありでは、
図39の左上パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色された68.9%(Q2)のCD45+Col6A3 PEP1細胞が検出されたことを示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/PE二重染色細胞を検出した。中央上パネル(枠内)は、左上パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、95.8%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右上パネルは、中央上パネルの枠内領域を左上パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された206055個のリンパ球における、135941個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0249】
DAS処理なしで、
図39の左下パネルは、2D Tet(PE+BV421)で染色された62.5%(Q2)のCD45+Col6A3 PEP1細胞が検出されたことを示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/PE二重染色細胞を検出した。中央下パネル(枠内)は、左下パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、97.6%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右下パネルは、中央下パネルの枠内領域を左下パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された294752個のリンパ球における、179819個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0250】
取得されたPBMCの数が多い場合と少ない場合の2D Tet検出への影響を調べるために、例えば、数が多い場合(S1とS2)と少ない場合(S3とS4)の4つのサンプルを染色した。PBMCの数が多い場合、
図40A(左上パネル)は、S1(DAS処理あり)で取得された1.29×10
7個のリンパ球における、128個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。右上パネルは、S1(DAS処理なし)で取得された1.09×10
7個のリンパ球における、100個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。左下パネルは、S2(DAS処理あり)で取得された6.09×10
6個のリンパ球における、68個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。右下パネルは、S2(DAS処理なし)で取得された6.37×10
6個のリンパ球における、65個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。
【0251】
PBMCの数が少ない場合、
図40B(左上パネル)は、S3(DAS処理あり)で取得された9.71×10
5個のリンパ球における、23個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。右上パネルは、S3(DAS処理なし)で取得された9.48×10
5個のリンパ球における、11個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。左下パネルは、S4(DAS処理あり)で取得された5.35×10
6個のリンパ球における、80個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。右下パネルは、S4(DAS処理なし)で取得された6.42×10
6個のリンパ球における、66個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。
【0252】
図40Cは、2D Tet染色におけるDAS処理が、DAS処理なしと比較して、2D Tet陽性細胞の検出頻度を増大させる傾向があることを示している。
【0253】
図40Dは、2D Tet染色におけるDAS処理が、DAS処理なしと比較して、2D PE/BV421Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性細胞の検出において、2D Tet+BV421のMFIを減少させる傾向があり、2D Tet+PEのMFIに影響を与えなくてもよいことを示す。
【0254】
濾過されたおよび濾過されていない2D Tetが染色に及ぼす影響を調べるために、2D PE/BV421 Tet溶液を作業希釈し、0.2uMフィルターで濾過した。αCol6A3 T細胞は、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で、濾過されたおよび濾過されていない2D PE/BV421Tetで染色した。αCol6A3 T細胞の染色において濾過されていない2D PE/BV421 Tetを使用すると、
図40E(パネルA~E)は、パネルDおよびEの矢印で示されるように、染色凝集体を示している。対照的に、αCol6A3 T細胞染色において濾過された2D PE/BV421 Tetを使用すると、
図40E(パネルF~J)は、パネルIおよびJの矢印で示されるように、染色凝集体の減少を示す。濾過された2D四量体は、APC、BV421、PEなどの試験された全ての蛍光色素で、「凝集体」染色の減少を示す。
【0255】
要約すると、染色プロセス全体を通じて温度を4℃に下げると、染色%と染色強度が高められてもよい。DAS処理サンプルの1/4がMFIの約2倍の増加を示すことから、DAS処理もまた染色感度を高めてもよい。したがって、染色条件の好ましい一実施形態としては、(1)4℃での染色、(2)37℃でのDAS処理、(3)BV421に共役したペプチド特異的四量体、(4)PEに共役したペプチド特異的四量体、(5)APCに共役した無関係のペプチド四量体、および(6)例えば、PE-Cy(商標)7マウス抗ヒトCD45(BD Biosciences)などの蛍光色素標識抗CD45抗体を含んでもよい。例えば、最適化されたパネルとしては、(1)2D PE(2.5ug/mL)+BV421(3ug/mL)特異的四量体、(2)無関係の混合物(n=5、例えば、Col6A3-015(YLMDDFSSL(配列番号16))、MAG-003(KVLEHVVRV(配列番号118))、MAGEC2-001(TLDEKVAEL(配列番号161))、MXRA5-003(LLWGHPRVALA(配列番号18))、およびMAGEA1-003(KVLEYVIKV(配列番号105))APC四量体(3ug/mL)(配列類似ペプチドが使用されてもよい)、(3)抗APC+抗PE四量体安定化抗体(1:50希釈液=それぞれ10ug/mL)、(4)37℃で30分間のDAS(50nM)処理、(5)試験管を氷上に保ち、4℃で遠心沈殿させ、全ての染色中に4℃で染色し(例えば、冷蔵庫内)、これにより最大の感度が達成されてもよく、(6)全ての蛍光色素の「凝集体」染色を低減するために濾過された四量体を含んでもよい。
【0256】
実施例5
選別最適化
選別ストラテジーにおける様々なパネルを比較するために、PBMC(4~5×106個の細胞/ml)を、2D PE/BV421 Tetおよび無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で、例えばCD45PE-Cy7などの±抗CD45抗体で染色した。表15に結果を要約する。
【0257】
【0258】
15に示すように、抗CD45抗体ありでは、BV421トリガーとPEトリガーの純度はそれぞれ75.2%と77.2%であり、例えば、それぞれ73.8%と71.9%の純度など、抗CD45抗体なしよりもわずかに高い。既知の標的陽性百分率のモデルシステムを使用して、ポアソン分布に基づいて計算された理論純度よりも低い純度が観察されたのは、寛大な2D Tet陽性細胞ゲーティングに起因してもよい。この低純度は、連続選別ステップを含む選別ストラテジーにとって許容可能であってもよい。
【0259】
純度に対する細胞濃度の影響を調べるために、例えば、0.13%の2D PE/BV421 Tet陽性細胞がスパイクされた23×106個の細胞/ml、0.14%の2D PE/BV421 Tet陽性細胞がスパイクされた44×106個の細胞/ml、0.09%の2D PE/BV421 Tet陽性細胞がスパイクされた76×106個の細胞/ml、および0.12%の2D PE/BV421 Tet陽性細胞がスパイクされた87×106個の細胞/mlなどの約0.1%の2D PE/BV421 Tet陽性細胞がスパイクされた4つの異なる濃度のPBMCを分析した。表16に結果を要約する。
【0260】
【0261】
表16は、細胞濃度が低いほど純度が高くなることを示す。しかし、純度は全例で理論純度より13~25%低かった。上述したように、理論上の純度よりも低い純度が観察されたのは、寛大な2D Tet陽性細胞ゲーティングに起因してもよい。
【0262】
純度を向上させるために、2つの選別ストラテジーを用いた。ストラテジー#1:1つのカートリッジのみを使用し、すなわち、全細胞を1つのカートリッジに装填し、同じカートリッジを使用して選別プロセスを3回繰り返した。900×106個の細胞を処理することによって、約0.0004%の2D Tet陽性細胞を検出し得ると仮定すると、87×106個の細胞/mlの濃度で65%の選別効率を基準に、同じカートリッジを使って3回繰り返し選別することによって、95.7%の総選別効率が得られてもよい。
【0263】
ストラテジー#2では、4つのカートリッジを使用して、例えば、900×106個の細胞を3つのカートリッジに分割し、各カートリッジは1回だけ使用した。選別効率は、92.8%(25×106個の細胞/mlの場合と同様)から79.2%(50×106cells/mlの場合と同様)までと仮定する。例えば、それぞれのカートリッジが10mlを保持する場合、1×109個の細胞、2×109個の細胞、または3×109個の細胞をストラテジー#2によって処理し、それぞれ33×106個の細胞/ml、66×106個の細胞/ml、または100×106個の細胞/mlの濃度を選別に使用する。選別プロセスが完了するまでに、約5時間かかってもよい。
【0264】
選別における選別効率を最大化するために、サンプル全体を1つのカートリッジを使用して90~100×10
6個の細胞/mLで処理した(ストラテジー#1)。対照として、
図41の左側パネルは、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で2D Tet(PE+BV421)で染色された、76.0%(Q2)のCol6A3 PEP1細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。中央パネル(枠内)は、左側パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、98.9%の2D Tet(PE+BV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右側パネルは、中央パネルの枠内領域を左側パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された126690個のリンパ球における、95315個の2D PE/BV421 Tet陽性で無関係のペプチドAPC四量体陰性のイベントの検出を示す。
【0265】
図42は、ゲーティングストラテジーの一例を示す。
図42の左側パネルは、無関係のペプチドAPC四量体混合物の存在下で2D Tet(PE+BV421)で染色したPBMC(7.09×10
6単一細胞)における2.62E-3%(Q2)のBV421/PE二重陽性細胞の検出を示す。これらのQ2細胞をさらに分析し、無関係のペプチド陽性T細胞、すなわち、APC/BV421二重染色細胞を検出した。央パネル(枠内)は、左側パネルのQ2で検出されたBV421/PE二重陽性細胞における、40.2%(単一細胞の頻度=6.91E-4)の2D Tet(PE+BV421)陽性細胞および無関係のペプチド陰性細胞の検出を示す。右側パネルは、中央パネルの枠内領域を左側パネルに重ねたものを示す。これらの結果は、取得された4.66×10
6個のリンパ球(リンパ球の頻度=1.05E-3)における、49.0個の2D PE/BV421 Tet陽性および無関係のペプチドAPC四量体陰性イベントの検出を示す。
【0266】
図43は、供試サンプル(左側パネル、0.001%(49/4.66×10
6))から、最終選別(右側パネル、97.3%(73/75))に至る、2DTet+APC-の連続枯渇の一例を示す。1,877個の2D Tet(PEBV421)陽性および無関係のペプチド陰性イベントが選別され、536個の2D Tet(PEBV421)陽性および無関係のペプチド陰性細胞が廃棄物中にあった。
【0267】
図44は、供試サンプルからの2DTet+APC-の連続枯渇後における、2D Tet(PE+BV421)陽性細胞および無関係のペプチド陰性細胞を約92,000倍に濃縮(0.001%から97.3%への)する選別性能を示す。
【0268】
PBMCパネルの染色からのCD8細胞の完全選別をモデル化するために、PBMC(1×10
9個の細胞)を染色し、分析した。
図45は、PBMC中の54.7%のリンパ球の(パネルA)が収集され、98.3%の生きている細胞がパネルBに示されていることを示す。パネルCは、収集されたリンパ球中の35.3%のCD3+細胞を示す。パネルDは、CD3+細胞中の49.1%のCD3+CD8+細胞を示す。
【0269】
【0270】
表17は、1×109個のPBMCから分離された9.3%のCD8を示す。単離されたCD8+細胞をさらに選別して、約1,440個のCol6A3-002特異的CD8+T細胞をもたらし得る。これらの観察に基づいて、1×109個のCD8+細胞から始めると、その約85%がCD8+細胞であると予測される。そうであれば、1×109個のCD8+細胞中に、約13,161個のCol6A3-002特異的CD8+T細胞が検出されると予測される。したがって、同じ数の細胞から始めて、CD8+細胞から始める選別は、PBMCで始めるよりもペプチド特異的T細胞のより高い収量を達成してもよい。
【0271】
要約すると、細胞選別では、PEトリガーはBV421トリガーより優れていてもよい。例えば、1×108個の細胞/mlを超えるなどの高濃度の細胞を使用した選別を改善するために、高流量フィルターカートリッジおよび/または純粋なCD8開始集団を使用してもよい。
【0272】
本明細書で言及される全ての参考文献は、各参考文献が参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。あらゆる参考文献の引用は、出願日より前のその開示に対するものであり、本開示が、先行発明の性質上、そのような参照を先取りする権利を有していないことを認めるものとして、解釈されるべきではない。
【配列表】
【国際調査報告】