(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】径方向に偏心した力の経路を形成する少なくとも1つの軸方向力伝達部品を備える遊星減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20220804BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220804BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20220804BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20220804BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20220804BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20220804BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20220804BHJP
F16D 125/50 20120101ALN20220804BHJP
【FI】
F16H25/24 B
B60T13/74 G
F16D65/18
F16H25/20 Z
F16H1/46
F16D121:24
F16D125:40
F16D125:50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572111
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 FR2020050936
(87)【国際公開番号】W WO2020245534
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375151
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アヤシュ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】パケ,シエリー
【テーマコード(参考)】
3D048
3J027
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3D048BB45
3D048BB60
3D048HH18
3D048HH58
3D048PP02
3J027FA36
3J027FA37
3J027FB01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA78
3J058BA46
3J058BA68
3J058CC15
3J058CC35
3J058CC62
3J058FA01
3J062AA01
3J062AB06
3J062AB24
3J062BA12
3J062BA16
3J062CD03
3J062CD22
3J062CD54
(57)【要約】
本発明は、電動パーキングブレーキ用の減速機(1)に関し、上記減速機(1)は、駆動シャフト(3)と、少なくとも1つの減速段と、円筒体(14)を備え、上記円筒体(14)は、上記減速機の外遊星歯車(2)と共に、スクリューナット機構を形成する。上記減速機(1)は、上記駆動シャフト(3)の軸受リング(20)または円筒体(14)のいずれかを介して加わる軸方向力を、上記軸受リング(20)または上記円筒体(14)のいずれかに伝達するために、上記軸受リング(20)と上記円筒体(14)の間に位置する少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16、11)を備える。かかる軸方向力伝達部品(16、11)は、径方向に偏心した軸方向力の伝達経路を規定することによって、駆動シャフト(3)の座屈を防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動されるように構成された駆動シャフト(3)であって、前記長手方向の軸(A1)を軸に回転するように構成された内部太陽歯車(4)を備える、駆動シャフト(3)と、
雌ねじを形成する内歯(5)を備える外部太陽歯車(2)であって、前記長手方向の軸(A1)を軸に回転可能なように固定された外部太陽歯車(2)と、
1つまたは複数の遊星キャリア(6,11)および前記1つまたは複数の遊星キャリア(6,11)によって担持される1つまたは複数の遊星歯車(9,12)を備える歯車と、
前記駆動シャフト(3)を前記長手方向の軸(A1)を軸に回転させると、前記歯車によって前記長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動されるように構成された円筒体(14)であって、この円筒体(14)が前記長手方向の軸(A1)を軸に回転すると、前記外部太陽歯車(2)が前記長手方向の軸(A1)に沿って並進駆動されるように、前記外部太陽歯車(2)の前記雌ねじと協働する雄ねじ(15)を備える円筒体(14)と、
を備える、減速機(1)であって、
前記駆動シャフト(3)が、前記内部太陽歯車(4)の径方向外側に軸受リングを形成する肩部(20)を備え、前記軸受リング(20)および前記円筒体(14)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リング(20)および前記円筒体(14)のうちのもう一方に伝達するために、減速機(1)が、前記軸受リング(20)と前記円筒体(14)の間に差し挟まれる少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)を備える、減速機(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)が、一方で、前記軸受リング(20)に対して、好ましくは摩擦ワッシャー(23)を介して、他方では一つ以上の歯車の遊星キャリアの一方を圧迫する、請求項1に記載の減速機(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)が、1つまたは複数の径方向の開口部を含み、前記径方向の開口がそれぞれ、前記歯車の各遊星歯車(9)のためのハウジングを形成している、請求項1または2に記載の減速機(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)がアーム(18)を備え、前記アーム(18)は、それらの間に前記径方向の開口を画定する、請求項3に記載の減速機(1)。
【請求項5】
前記歯車が、第1の遊星キャリア(6)および第2の遊星キャリア(11)を備え、前記軸受リング(20)および前記第1のキャリア(6)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リング(20)および前記第1の遊星キャリア(6)のうちのもう一方に伝達するために、前記減速機(1)が、前記軸受リング(20)と前記第1の遊星キャリア(6)の間に差し挟まれる第1の軸方向力伝達部品(16)を備え、前記第1の遊星キャリア(6)および前記円筒体(14)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記第1の遊星キャリア(6)および前記円筒体(14)のうちのもう一方に伝達するために、前記第2の遊星キャリア(11)が、前記第1の遊星キャリア(6)と前記円筒体(14)の間に差し挟まれる第2の軸方向力伝達部品を形成する、請求項1~4のいずれかに記載の減速機(1)。
【請求項6】
前記長手方向の軸(A1)を軸に回転可能なように前記外部太陽歯車(2)と一体になっているリング歯車(13)を備え、前記第2の遊星キャリア(11)が、前記リング歯車(13)の内歯と前記円筒体(14)の内歯の両方と噛合する遊星歯車(12)を担持する自由ケージを形成し、前記リング歯車(13)の前記内歯が、前記円筒体(14)の前記内歯の歯数とは異なる歯数を有する、請求項5に記載の減速機(1)。
【請求項7】
前記第2の軸方向力伝達部品(11)が、一方で好ましくは摩擦ワッシャ(28)を介して前記第1の遊星キャリア(6)を圧迫し、もう一方で好ましくは摩擦ワッシャ(29)を介して前記円筒体(14)の軸受面を圧迫する、請求項5または6に記載の減速機(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の減速機(1)と、前記駆動シャフト(3)を前記長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動するように構成された電動モータとを備える、電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載の電動ブレーキアクチュエータを備える、好ましくはフローティングキャリパブレーキである、ディスクブレーキ。
【請求項10】
請求項9に記載のディスクブレーキを備える自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車車両の電動パーキングブレーキアクチュエータ用の、遊星減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフローティングキャリパ電動パーキングブレーキが、特許文献1および本明細書の
図1に開示されている。
【0003】
既知の方式それ自体により、
図1のブレーキは遊星減速機を備え、その外部太陽歯車が、長手方向の軸A100に沿って並進移動可能なピストン100を形成する。電動モータによって生成された入力トルクは、
図2に個別に示されている駆動シャフト200と、直列に連結された遊星歯車列とを介して、上記ピストン100に伝達される。上記減速機の出力遊星キャリア300が雄ねじを備える。この雄ねじは、ピストン100の雌ねじ400が形成する雌ねじと協働して、遊星キャリア300の回転を、長手方向の軸A100に沿ったピストン100の並進に変換する。かかる並進により、ピストン100に面して配設されたキャリパのフィンガ500と協働することによって、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けることが可能になる。
【0004】
この従来の減速機では、駆動シャフト200が太陽歯車600を担持し、太陽歯車600は第1の歯車列の遊星歯車700と噛合する。上記第1の歯車列の遊星キャリア900が太陽歯車950を担持し、太陽歯車950は第2の歯車列の遊星歯車970と噛合する。駆動シャフト200は下流部分800を備え、この下流部分800は、遊星キャリア900および太陽歯車950の開口を通過し、したがってその片端が出力遊星キャリア300の空洞内に収容される。これにより、上記シャフト200が、遊星キャリア300および900に対してと、太陽歯車950に対して回転することが可能になる。
【0005】
この構成では、制動中にピストン100に機械的な力が加わると、その力を駆動シャフト200が回収する。この力が、シャフト200の座屈を招く可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、特にかかる遊星減速機の駆動シャフトの直径の縮小を可能にするために、その駆動シャフトの座屈のリスクを一定限度にとどめることである。
【0008】
より一般的には、本発明は、かかる遊星減速機の質量およびコストの低減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明の1つの対象は、
モータによって長手方向の軸を軸に回転駆動され得る駆動シャフトであって、前記長手方向の軸を回転軸として有する内部太陽歯車を備える、駆動シャフトと、
雌ねじを形成する内歯を備える外部太陽歯車であって、前記長手方向の軸を軸に回転可能なように固定された外部太陽歯車と、
1つまたは複数の遊星キャリアおよび前記1つまたは複数の遊星キャリアによって担持される1つまたは複数の遊星歯車を備える歯車と、
前記駆動シャフトを前記長手方向の軸を軸に回転させると、前記歯車によって前記長手方向の軸を軸に回転駆動されるように構成された円筒体であって、前記円筒体が前記長手方向の軸を軸に回転すると、前記外部太陽歯車が前記長手方向の軸に沿って並進駆動されるように、前記外部太陽歯車の前記雌ねじと協働する雄ねじを備える円筒体と、
を備える、遊星減速機である。
【0010】
本発明によると、前記駆動シャフトが、前記内部太陽歯車の径方向外側に軸受リングを形成する肩部を備え、前記支承リングおよび前記円筒体のうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リングおよび前記円筒体のうちのもう一方に伝達するために、前記減速機が、前記軸受リングと前記円筒体の間に差し挟まれる少なくとも1つの軸方向力伝達部品を備える。
【0011】
前記少なくとも1つの伝達部品は、例えば前記減速機がブレーキアクチュエータに属する場合のブレーキ時に、前記駆動シャフトの負担を軽減するために、前記減速機が受けた軸方向に加わる力の一部の回収を可能にする。
【0012】
こうして本発明により、駆動シャフトの、特にその軸受リングに隣接する部分の直径を縮小させることによって、従来の減速機と比較して、前記減速機の質量およびコストを低減することが可能になる。
【0013】
一実施形態では、前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品が、一方で好ましくは摩擦ワッシャを介して、前記軸受リングを圧迫し、もう一方で前記歯車の前記遊星キャリアのうちの1つを圧迫し得る。
【0014】
一実施形態では、前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品が、1つまたは複数の径方向の開口を含み得て、前記径方向の開口がそれぞれ、前記歯車の各遊星歯車のためのハウジングを形成する。
【0015】
一実施形態では、前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品がアームを備え、前記アームは、それらの間に前記径方向の開口を画定する。
【0016】
一実施形態では、前記歯車が、第1の遊星キャリアおよび第2の遊星キャリアを備え、前記軸受リングおよび前記第1の遊星キャリアのうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リングおよび前記第1の遊星キャリアのうちのもう一方に伝達するために、前記減速機が、前記軸受リングと前記第1の遊星キャリアの間に差し挟まれる第1の軸方向力伝達部品を備え、前記第1の遊星キャリアおよび前記円筒体のうちの一方に加わる軸方向力を、前記第1の遊星キャリアおよび前記円筒体のうちのもう一方に伝達するために、前記第2の遊星キャリアが、前記第1の遊星キャリアと前記円筒体の間に差し挟まれる第2の軸方向力伝達部品を形成する。
【0017】
一実施形態では、前記減速機が、前記長手方向の軸を軸に回転可能なように前記外部太陽歯車と一体になっているリング歯車を備え、前記第2の遊星キャリアが、前記リング歯車の内歯と前記円筒体の内歯の両方と噛合する遊星歯車を担持するフリーケージを形成し、前記リング歯車の前記内歯が、前記円筒体の前記内歯の歯数とは異なる歯数を有する。
【0018】
一実施形態では、前記第2の軸方向力伝達部品が、一方で好ましくは摩擦ワッシャを介して、前記第1の遊星キャリアを圧迫し、もう一方で好ましくは摩擦ワッシャを介して、前記円筒体の軸受面を圧迫し得る。
【0019】
本発明の他の対象は、以上に記載の減速機と、前記駆動シャフトを前記長手方向の軸を軸に回転駆動するように構成された電動モータとを備える、電動ブレーキアクチュエータである。
【0020】
本発明の他の対象は、以上に記載の電動ブレーキアクチュエータを備える、好ましくはパーキングブレーキまたはサービスブレーキなどのフローティングキャリパブレーキである、ディスクブレーキである。
【0021】
本発明の他の対象は、以上に記載のディスクブレーキを備える自動車車両である。
【0022】
本発明の他の利点および特徴は、以下の詳細な非限定的説明から明らかになるであろう。
【0023】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、既知のタイプの遊星減速機を備える電動パーキングブレーキの概略部分縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のブレーキ減速機の駆動シャフトの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明による遊星減速機の概略部分縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の減速機の軸方向力伝達部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図3および5は、本発明による遊星減速機1を示している。この減速機1が使用され得るのは、自動車分野の、例えば、ディスクブレーキ、特にフローティングキャリパ型のディスクブレーキに取り付けられる電動ブレーキなどであり、またはより一般的には、回転運動を並進運動に変換するための電気機械アクチュエータである。
【0026】
図3を参照すると、減速機1は、長手方向の軸A1に沿って並進式に移動可能なピストンを形成する外部太陽歯車2を備える。このピストン2は、任意の従来の手段によって、例えば、ブレーキキャリパに属するピンをピストン2に作られた対応するノッチに挿入することによって、上記長手方向の軸A1を軸にした回転が固定されている。
【0027】
長手方向の軸A1に沿ったピストン2の並進式の移動は、入力トルクを減速機1の駆動シャフト3に伝達する電動モータ(図示せず)によって引き起こされる。軸A1を軸にしたこのシャフト3の回転運動は、以下に説明する歯車および運動変換部材を介して、ピストン2の並進運動に変換される。
【0028】
より具体的には、この実施例では、駆動シャフト3は、電動モータに接続されるように適合されており、その接続は、上記モータのシャフトが軸A1を軸に回転すると、駆動シャフト3が軸A1を軸に回転駆動されるようになっている。
【0029】
駆動シャフト3は、軸A1を軸に回転可能なようにこのシャフト3と一体になっている第1の内部太陽歯車4を備える。この実施例では、太陽歯車4とシャフト3は単一部品として形成されている。
【0030】
外部太陽歯車2は内歯5を備え、内歯5は、遊星歯車と噛合するために周方向に間隔を空けて配置された長手方向の溝を形成する一方で、上記運動変換部材(以下を参照)の雄ねじと協働するように構成された雌ねじを形成する。
【0031】
減速機1は、第1の遊星キャリア6を備え、第1の遊星キャリア6は、軸A1に対して偏心して互いに120°をなす3つの開口部7を含む。これらの開口部7はそれぞれ、各遊星歯車9の回転を確実に案内するために、その各遊星歯車9を担持するジャーナル8を受ける(
図5を参照)。
【0032】
上記遊星歯車9は、第1の内部太陽歯車4と、外部太陽歯車2の内歯5によって形成された上記長手方向の溝との両方と噛合する。したがってその結果、シャフト3の太陽歯車4の軸A1を軸にした回転が、各遊星歯車9を、そのジャーナル8を軸に回転駆動させる一方で、各郵政歯車9は、軸A1を軸にした円周軌道に沿って回転駆動し、したがって第1の遊星キャリア6を、軸A1を軸に回転駆動する。
【0033】
こうして減速機1により、駆動シャフト3の回転速度よりも低速の回転速度で、第1の遊星キャリア6を、長手方向の軸A1を軸に回転駆動することが可能になる。
【0034】
図3および5の実施例では、減速機1は、第2の減速段を備える。その入力は、第1の遊星キャリア6によって担持される第2の内部太陽歯車10で構成される。この太陽歯車10は、軸A1を軸に回転可能なように遊星キャリア6と一体になっている。この実施例では、太陽歯車10と遊星キャリア6は単一部品として形成されている。
【0035】
図3および5の減速機1は、第2の遊星キャリア11を備える。第2の遊星キャリア11は、この実施例では3つの遊星歯車12を担持する自由ケージを形成する。既知の方式により、ケージ11は、略管状の形状を有し、軸方向中央部分にそれぞれ広がる径方向の開口を含み、したがって、各径方向の開口は、ケージの両側面の各軸方向端部分によって、軸方向に画定される。これらの径方向の開口はそれぞれ、遊星歯車12のうちの1つのためのハウジングを形成する。各遊星歯車12を担持し、それらの回転を確実に案内するために、それぞれのシャフトが各開口に軸方向に通される。これらのシャフトは、ケージの両軸方向端部分にある対応する穴に受けられ、それによってケージに連結される。
【0036】
図3を参照すると、減速機1は、外歯と内歯を備えるリング歯車13を備える。この外歯は、外部太陽歯車2の内歯5によって形成された上記長手方向の溝に係合する。したがって、リング歯車13と外部太陽歯車2は、軸A1を軸に回転可能なように互いに一体になっている。リング歯車13の内歯は、外部太陽歯車2の内歯5に対して径方向内側に位置する接触点を規定して、遊星歯車12と噛合するように構成される。すなわち、リング歯車13の内歯は、減速機1の径方向内側に、外部太陽歯車2の内歯5によって形成される長手方向の溝をオフセットするように構成される。
【0037】
この実施例では、遊星歯車12が運動変換部材14の空洞に形成された歯とも噛合することにより、上記径方向のオフセットが必要となる。この空洞は、外部太陽歯車2の径方向の内側の寸法よりも小さい径方向の寸法を有する(
図3および以下を参照)。
【0038】
この実施例では、運動変換部材14は、雄ねじ15を備える円筒体の形をとっている。雄ねじ15は、外部太陽歯車2の内歯5によって形成される雌ねじと協働する。この協働の結果、円筒体14が軸A1を軸に回転移動すると、外部太陽歯車2が軸A1に沿って並進移動する。こうして円筒体14とピストン2は、可逆のスクリューナット機構を形成する。
【0039】
円筒体14の上記空洞は、ケージ11の一部分を収容するように構成され、その収容は、遊星歯車12が、その第1の軸方向部分を介して、この空洞に形成された歯と噛合するようになっている。
【0040】
リング歯車13は、円筒体14に軸方向に隣接しており、したがって遊星歯車12は、その第2の軸方向部分を介して、リング歯車13の内歯と噛合する。
【0041】
かかる構成のおかげで、太陽歯車10が軸A1を軸に回転すると、各遊星歯車12が、それ自体の回転軸を軸に回転駆動される一方で、軸A1を軸にした円周軌道に沿って駆動され、その結果、自由ケージ11が、軸A1を軸に回転駆動される。
【0042】
リング歯車13の内歯の数が円筒体14の空洞に形成された歯の数と同じである場合、軸A1を軸にした太陽歯車10の回転は、円筒体14をその軸A1を軸に回転駆動させない。実際、その場合、円筒体14の歯は、リング歯車13の内歯と軸方向に整列しており、そのため遊星歯車12は、回転時、円筒体14の歯の中で単に転動するだけである。
【0043】
したがって、この実施例では、リング歯車13は、円筒体14の空洞に形成された歯の数よりも少ない内歯数を有し、それにより、比較的大きい減速率を達成する。
【0044】
こうして減速機1により、太陽歯車10の回転速度よりも低速であり、駆動シャフト3と比べれば尚更低速である回転速度で、長手方向の軸A1を軸にして円筒体14を回転駆動することが可能になる。
【0045】
したがって、減速機1は、トルクを高めることによって回転速度を下げる。
【0046】
本発明は、例えばピストン2が制動力を発揮するときに、上記減速機1に加わる軸方向力の回収を可能にする。
【0047】
このために、減速機1は、
図4に示すような力伝達部品16を備える。
【0048】
この実施例では、上記部品16は、略管状の形状を有し、この形状は、駆動シャフト3が通過するよう、かつ部品16に対するシャフト3の相対的回転を可能にするように寸法決めされた中心開口19を画定する。
【0049】
この実施形態では、力伝達部品16は、環状の周方向に中実な第1の部分17と、軸方向に延びる3つのアーム18を備える第2の部分とを備える。アーム18は、それらの間に径方向の開口を画定し、各開口はそれぞれの遊星歯車9のハウジングを形成する。
【0050】
力の回収を実現するために、駆動シャフト3は、内部太陽歯車4の径方向外側に軸受リングを形成する肩部20を備える。
【0051】
部品16は、シャフト3の肩部20によって形成された上記軸受リングと遊星キャリア6との間に差し挟まれる。これは、遊星キャリア6に加わる軸方向力を軸受リング20に、または軸受リング20から遊星キャリア6に伝達すると同時に、この軸方向力が、シャフト3の径方向中心部分、特に肩部20の軸方向の両側に位置する部分を通過するのを防ぐためである。その結果、減速機1を使用する際の駆動シャフト3の座屈のリスクが大幅に低減または排除される。
【0052】
より正確には、力伝達部品16の上記第1の部分17が、軸受面21を形成し、その軸受面21が、軸受リング20によって形成された軸受面22を、摩擦ワッシャ23を介して圧迫する。力伝達部品16の軸方向アーム18は、遊星キャリア6の軸受面25を圧迫する軸受面24を画定する。
【0053】
摩擦ワッシャ23は、軸受リング20と力伝達部品16が互いに相対的に回転する際のそれらの摩耗を一定限度にとどめることを可能にする。
【0054】
さらに、フリーケージ11の上記両軸方向端部分はそれぞれ、軸受面26を形成し、一方は、摩擦ワッシャ28を介して、遊星キャリア6の軸受面27を圧迫し、もう一方は、摩擦ワッシャ29を介して、円筒体14の上記空洞の底部によって形成される軸受面を圧迫する。
【0055】
こうして遊星キャリア6と円筒体14との間に差し挟まれるフリーケージ11は、第2の軸方向力伝達部品を形成し、この第2の軸方向力伝達部品により、円筒体14に加わる軸方向力を遊星キャリア6に伝達することが可能になり、または逆に、遊星キャリア6に加わる軸方向力を円筒体14に伝達することが可能になる。
【0056】
摩擦ワッシャ28および29は、遊星キャリア6、フリーケージ11および部材14が互いに相対的に回転する際のそれらの摩耗を一定限度にとどめることを可能にする。
【0057】
こうして
図3の実施形態により、例えばピストン2が制動力を受けた場合などに、円筒体14に加わる軸方向力を、軸受リング20と円筒体14との間に差し挟まれる2つの軸方向力伝達部品11および16を介して、軸受リング20に伝達すると同時に、この軸方向力の経路が、長手方向の軸A1、したがって駆動シャフト3の、その肩部20の直径と比較して相対的に小さい直径を有する部分を、通過するのを防ぐことが可能になる。この偏心した経路を経由した力の伝達機能は、もう一方の方向、つまり、軸方向力が軸受リング20に加わるときにも確保される。その場合、2つの軸方向力伝達部品11および16は、軸受リング20に加わる軸方向力が円筒体14に伝達されることを可能にする。
【0058】
上述の説明は例として提示しており、決して限定するものではない。例えば、ここに示していない実施形態では、減速機1は、単一の減速段階を備え得る。この場合、遊星キャリア6は、第2の内部太陽歯車10を備えず、円筒体14に直接連結され、したがって円筒体14と遊星キャリア6は、軸A1を軸に回転可能なように互いに一体になっている。当然ながら、かかる単段階減速の実施形態では、減速機1は自由ケージ11、遊星歯車12、および摩擦ワッシャ28および29を含まない。
【0059】
ここに示していない他の実施形態では、減速機1は、
図3に例として提示したものとは異なる第2の減速段階を備える。例えば、遊星歯車12が、自由ケージ11によってではなく、部材14によって直接担持される。遊星キャリア6とこの部材14との間の軸方向力の回収を確実にするために、この場合、減速機1は、遊星キャリア6と部材14との間に差し挟まれる、部品16と同様の追加の軸方向力伝達部品を備え得る。
【符号の説明】
【0060】
A100 長手方向の軸
100 外部太陽歯車/ピストン
200 駆動シャフト
300 出力遊星キャリア
400 外部太陽歯車の内歯
500 キャリパのフィンガ
600 太陽歯車
700 遊星歯車
800 駆動シャフトの下流部分
900 第1の歯車列の遊星キャリア
A1 長手方向の軸
1 遊星減速機
2 外部太陽歯車/ピストン
3 駆動シャフト
4 第1の内部太陽歯車
5 外部太陽歯車の内歯
6 第1の遊星キャリア
7 第1の遊星キャリアのジャーナルのための開口部
8 第1の遊星キャリアのジャーナル
9 第1の遊星キャリアの遊星歯車
10 第2の内部太陽歯車
11 第2の遊星キャリア/フリーケージ/第2の軸方向力伝達部品
12 第2の遊星キャリアの遊星歯車
13 リング歯車
14 円筒体/運動変換部材/スクリュー
15 円筒体の雄ねじ
16 (第1の)軸方向力伝達部品
17 軸方向力伝達部品の第1の部分/中実部分
18 軸方向力伝達部品の第2の部品/アーム
19 軸方向力伝達部品の中心開口部
20 駆動シャフトの肩部/軸受リング
21 軸方向力伝達部品の軸受面
22 軸受リングの軸受面
23 摩擦ワッシャ
24 軸方向力伝達部品の軸受面
25 第1の遊星キャリアの軸受面
26 第2遊星キャリアの軸受面
27 第1の遊星キャリアの軸受面
28 摩擦ワッシャ
29 摩擦ワッシャ
【手続補正書】
【提出日】2022-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動されるように構成された駆動シャフト(3)であって、前記長手方向の軸(A1)を軸に回転するように構成された内部太陽歯車(4)を備える、駆動シャフト(3)と、
雌ねじを形成する内歯(5)を備える外部太陽歯車(2)であって、前記長手方向の軸(A1)を軸に回転可能なように固定された外部太陽歯車(2)と、
1つまたは複数の遊星キャリア(6,11)および前記1つまたは複数の遊星キャリア(6,11)によって担持される1つまたは複数の遊星歯車(9,12)を備える歯車と、
前記駆動シャフト(3)を前記長手方向の軸(A1)を軸に回転させると、前記歯車によって前記長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動されるように構成された円筒体(14)であって、この円筒体(14)が前記長手方向の軸(A1)を軸に回転すると、前記外部太陽歯車(2)が前記長手方向の軸(A1)に沿って並進駆動されるように、前記外部太陽歯車(2)の前記雌ねじと協働する雄ねじ(15)を備える円筒体(14)と、
を備える、減速機(1)であって、
前記駆動シャフト(3)が、前記内部太陽歯車(4)の径方向外側に軸受リングを形成する肩部(20)を備え、前記軸受リング(20)および前記円筒体(14)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リング(20)および前記円筒体(14)のうちのもう一方に伝達するために、減速機(1)が、前記軸受リング(20)と前記円筒体(14)の間に差し挟まれる少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)を備える、減速機(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)が、一方で、前記軸受リング(20)
を圧迫する、請求項1に記載の減速機(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)が
、一方で摩擦ワッシャ(23)を介して前記軸受リング(20)を圧迫し、もう一方で前記歯車の前記遊星キャリアのうちの1つ(6)を圧迫する、請求項
2に記載の減速機(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)が
、1つまたは複数の径方向の開口部を含み、前記径方向の開口がそれぞれ、前記歯車の各遊星歯車(9)のためのハウジングを形成する、請求項
1~3に記載の減速機(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの軸方向力伝達部品(16)がアーム(18)を備え、前記アーム(18)は、それらの間に前記径方向の開口を画定する、請求項4に記載の減速機(1)。
【請求項6】
前記歯車が、第1の遊星キャリア(6)および第2の遊星キャリア(11)を備え、前記軸受リング(20)および前記第1のキャリア(6)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記軸受リング(20)および前記第1の遊星キャリア(6)のうちのもう一方に伝達するために、前記減速機(1)が、前記軸受リング(20)と前記第1の遊星キャリア(6)の間に差し挟まれる第1の軸方向力伝達部品(16)を備え、前記第1の遊星キャリア(6)および前記円筒体(14)のうちの一方に加わる軸方向力を、前記第1の遊星キャリア(6)および前記円筒体(14)のうちのもう一方に伝達するために、前記第2の遊星キャリア(11)が、前記第1の遊星キャリア(6)と前記円筒体(14)の間に差し挟まれる第2の軸方向力伝達部品を形成する、請求項1~
5のいずれかに記載の減速機(1)。
【請求項7】
前記長手方向の軸(A1)を軸に回転可能なように前記外部太陽歯車(2)と一体になっているリング歯車(13)を備え、前記第2の遊星キャリア(11)が、前記リング歯車(13)の内歯と前記円筒体(14)の内歯の両方と噛合する遊星歯車(12)を担持する自由ケージを形成し、前記リング歯車(13)の前記内歯が、前記円筒体(14)の前記内歯の歯数とは異なる歯数を有する、請求項
6に記載の減速機(1)。
【請求項8】
前記第2の軸方向力伝達部品(11)が、一方で好ましくは前記第1の遊星キャリア(6)を圧迫し、もう一方で前記円筒体(14)の軸受面を圧迫する、請求項6または7に記載の減速機(1)。
【請求項9】
前記第2の軸方向力伝達部品(11)が、一方で摩擦ワッシャ(28)を介して前記第1の遊星キャリア(6)を圧迫し、もう一方で前記円筒体(14)の軸受面を圧迫する、請求項8に記載の減速機(1)。
【請求項10】
前記第2の軸方向力伝達部品(11)が、一方で前記第1の遊星キャリア(6)を圧迫し、もう一方で摩擦ワッシャ(29)を介して前記円筒体(14)の軸受面を圧迫する、請求項8または9に記載の減速機(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の減速機(1)と、前記駆動シャフト(3)を前記長手方向の軸(A1)を軸に回転駆動するように構成された電動モータとを備える、電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項12】
請求項11に記載の電動ブレーキアクチュエータを備える、好ましくはフローティングキャリパブレーキである、ディスクブレーキ。
【請求項13】
請求項12に記載のディスクブレーキを備える自動車両。
【国際調査報告】