(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】回転電気機械の回転子位置を決定するための方法およびそのような方法を実施するための回転電気機械
(51)【国際特許分類】
H02P 6/18 20160101AFI20220804BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220804BHJP
【FI】
H02P6/18
H02M7/48 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572870
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020062706
(87)【国際公開番号】W WO2020249329
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019208497.4
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】レツァー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
5H560
5H770
【Fターム(参考)】
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA14
5H560DC12
5H560EB01
5H560XA12
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA11
5H770HA02Y
5H770HA07Z
(57)【要約】
本発明は、PWM制御インバータ(40)によって給電される回転電気機械(10)の回転子位置を決定するための方法に関する。調節器(50)によって決定され、設定電圧(ucontrol)および高周波電圧(uhf)から構成される注入電圧(uinj)が、相応のPWMデューティ比に変換され、これに相応してインバータ(40)がこのPWMデューティ比で制御される。続いて相電流(ia、ib、ic)の電流推移が、少なくとも第1の相電流(ia)および第2の相電流(ib)の測定によって確定され、この測定は、PWM周期内でそれぞれ消極的スイッチ状態の時間的に最後の3分の1で行われる。続いて、確定された電流推移と、供給された高周波電圧(uhf)とに依存して、回転子位置が決定される。本発明はこれに加え、本発明による方法を実施するために適応された電気機械(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM制御インバータ(40)によって給電される少なくとも三相の回転電気機械(10)の回転子位置を決定するための方法であって、
a.調節器サンプリング周期中に注入電圧(u
inj)を決定し、前記注入電圧が、前記電気機械(10)を制御するための調節器(50)によって設定された電圧(u
control)と、追加的な高周波電圧(u
hf)とから構成されているプロセスステップと、
b.消極的スイッチ状態がそれぞれPWM周期の真ん中(t
PWM,M)でおよび/またはPWM周期の終わり(t
PWM,E)に終了するように、前記プロセスステップaで決定された前記注入電圧(u
inj)に依存してPWMデューティ比を決定するプロセスステップと、
c.前記調節器サンプリング周期の後の少なくとも1つのPWM周期において、前記電気機械(10)を相応に制御するため、前記プロセスステップbで決定された前記PWMデューティ比で前記インバータ(40)を制御するプロセスステップと、
d.前記電気機械(10)のすべての相電流(i
a、i
b、i
c)のそれぞれの電流推移を得るために、少なくとも第1の相電流(i
a)およびそれぞれ同時に第2の相電流(i
b)をPWMに同期して測定し、前記測定が、前記少なくとも1つのPWM周期内でそれぞれ前記消極的スイッチ状態の時間的に最後の3分の1で行われるプロセスステップと、
e.前記プロセスステップdで得られた前記電流推移と、前記プロセスステップaで供給された高周波電圧(u
hf)とに依存して、回転子位置を決定するプロセスステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記プロセスステップdで、少なくとも前記第1の相電流(i
a)および前記第2の相電流(i
b)の前記測定が、それぞれ前記消極的スイッチ状態の終わりに行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセスステップdでの測定がなされるべき前記消極的スイッチ状態の時間が最大限に長いように、前記プロセスステップbで前記PWMデューティ比が決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれ1つの消極的スイッチ状態が、前記PWM周期の真ん中(t
PWM,M)でおよび前記PWM周期の終わり(t
PWM,E)に終了するように、ならびに前記プロセスステップdで、少なくとも前記第1の相電流(i
a)および前記第2の相電流(i
b)の前記測定が、前記PWM周期内で消極的スイッチ状態ごとにそれぞれ1回行われるように、前記プロセスステップbで前記PWMデューティ比が決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスステップdでの測定がなされるべき前記両方の消極的スイッチ状態の時間が実質的に同じ長さであるように、前記プロセスステップbで前記PWMデューティ比が決定されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのPWM周期内の、すべての相の前記PWMデューティ比の正のPWMパルスが、共通垂直軸対称性を有するように、前記プロセスステップbで前記PWMデューティ比が決定されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記第1の相電流(i
a)および前記第2の相電流(i
b)が測定されるべき2つの相次ぐ前記消極的スイッチ状態の終わりの間の時間が一定であるように、前記プロセスステップbで前記PWMデューティ比が決定されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセスステップdで、少なくとも前記第1の相電流(i
a)および前記第2の相電流(i
b)の前記測定が、各々の測定すべき相のための少なくとも1つの電流センサ(55)によって、および少なくとも1つのアナログデジタル変換器によって行われ、前記アナログデジタル変換器が、前記相電流(i
a、i
b)の1回の測定がそれぞれ所定の一時点で可能になるように形成されており、前記アナログデジタル変換器がとりわけSARアナログデジタル変換器であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも三相に形成され、かつPWM制御インバータ(40)によって給電される回転電気機械(10)において、前記電気機械(10)が、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するために適応されていることを特徴とする電気機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気機械の回転子位置を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば公開明細書DE102009039672A1に開示されている。ここでは、ポジションセンサを使用せずに回転子ポジションを確定しようとするセンサレス制御が開示されている。この場合、低回転数では、機械の磁気異方性を介して回転子位置を決定するいわゆる異方性に基づく方法が用いられている。
【0003】
高ダイナミックな駆動装置では、電気機械の調整可能な相電圧を生成するため、一般的にインバータがパルス幅変調(PWM)と共に使用される。インバータの制御信号は、調節によって確定された設定電圧をPWMデューティ比に換算する空間フェーザ変調を使って計算される。PWMデューティ比は、典型的には真ん中にセンタリングされて出力される。設定電圧は、例えば、回転子位置および捕捉された相電流ならびに電気機械への何らかの要求、例えば回転数またはトルクに依存して、調節器によって決定される。
【0004】
一般に行われている異方性に基づく方法では、調節によって設定される電圧に加えて高周波電圧が誘導されることで、設定電圧の的確な変更により、位置依存の電流変化がもたらされる。こうして生じている電流変化は、その後、特定の時点での電気機械のそれぞれの相電流の電流測定によって捕捉され得る。続いて、例えば上で挙げた公開明細書で開示されているように、捕捉された相電流と、供給された高周波電圧とに依存して、回転子位置が決定され得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、PWM制御インバータによって給電される少なくとも三相の回転電気機械の回転子位置を決定するための方法に関する。この方法は、
a.調節器サンプリング周期中に注入電圧を決定し、この注入電圧が、電気機械を制御するための調節器によって設定された電圧と、追加的な高周波電圧とから構成されているプロセスステップ、
b.インバータの消極的スイッチ状態がそれぞれPWM周期の真ん中でおよび/またはPWM周期の終わりに終了するように、プロセスステップaで決定された注入電圧に依存してPWMデューティ比を決定するプロセスステップ、
c.この調節器サンプリング周期の後の少なくとも1つのPWM周期において、電気機械を相応に制御するため、プロセスステップbで決定されたPWMデューティ比でインバータを制御するプロセスステップ、
d.電気機械のすべての相電流のそれぞれの電流推移を得るために、少なくとも第1の相電流およびそれぞれ同時に第2の相電流をPWMに同期して測定し、この測定が、少なくとも1つのPWM周期内でそれぞれ消極的スイッチ状態の時間的に最後の3分の1で行われるプロセスステップ、
e.プロセスステップdで得られた電流推移と、プロセスステップaで供給された高周波電圧とに依存して、回転子位置を決定するプロセスステップを含んでいる。
【0006】
インバータとは、例えばB6ブリッジのことであり、このB6ブリッジもまた3つのハーフブリッジから構成されている。ハーフブリッジの各々が、電気機械の相応の相のためのセンタータップを有しており、それぞれこのセンタータップから、それぞれ1つの半導体スイッチを介して正および負の電位と接続している。
【0007】
注入電圧は調節器を使って決定される。ここで、この注入電圧は、電気機械を制御するための調節器によって設定されて相応の基本波電流を生成する電圧と、追加的な高周波電圧とから構成される。これに関し基本波電流は、例えば所定の回転数または設定されたトルクによる機械の所望の動作をもたらす。さらに高周波電圧により、位置依存の電流変化を達成でき、この電流変化から、電気機械の回転子位置が帰納的に推論され得る。
【0008】
調節器サンプリング周期とは、ここでは2つの調節器サンプリングステップの間の時間のことであり、この調節器サンプリングステップは、電気機械に印加すべき注入電圧の決定に役立つ。これに関し、1つの調節器サンプリング周期は、1つのPWM周期時間より大きく選択でき、これにより、複数のPWM周期が1つの調節器サンプリング周期に属している。
【0009】
インバータは、調節器サンプリング周期の後の少なくとも1つのPWM周期において、所定のPWMデューティ比で制御される。この場合、この制御期間は既に次の調節器サンプリング周期に属しており、その調節器サンプリング周期中には、その調節器サンプリング周期内に測定された相電流に基づいて、その調節器サンプリング周期の後続周期ための注入電圧が決定される。
【0010】
相電流の同時の測定とは、ここでは、電流が同じ一時点でサンプリングされるということである。これに関し、サンプリング時点は、測定公差またはそれに類することに基づいて互いにごく僅かに相違し得るが、それでもなお「同時」の概念に属している。
【0011】
消極的スイッチ状態とは、電気機械のすべての相が同じ電位にあり、したがって短絡していることである。これに相応してその反対は積極的スイッチ状態である。
このような消極的スイッチ状態は、同じ電位にある相の少なくとも1つの電圧が切り替わるとすぐに終了する。
【0012】
電気機械内の磁束の経時的変化は、この機械の導電性材料中で渦電流を誘導する。低回転数では、磁束は、主として、異なる相がインバータの異なる電位と接続している積極的スイッチ状態で変化する。
【0013】
電気機械内の渦電流により、各相電流が、磁束形成に寄与しない電流部分を含むことになる。これは、相電流も渦電流も磁束を生成することに原因がある。この両方の磁束部分が反対方向に作用し、よって部分的に相殺し合う。渦電流が減衰している場合、磁束を形成しない電流部分は無視できるほど小さい。
【0014】
これに対し電気機械の相が短絡している期間は、電気機械内の磁束の変化は非常に小さい。したがってこの期間には渦電流が減衰する。
さらに、渦電流は温度に強く依存する。
【0015】
電気機械の定格回転数の10%未満の値がだいたい低回転数と見なされ得る。回転数がそれより高い場合は、回転子位置を決定するために、古典的な基本波に基づく方法が適用され得る。
【0016】
ここでは、渦電流がほぼまたは完全に減衰している時点で相電流測定が実施され得るように、PWMデューティ比が決定され得ることが有利である。これにより、そのような渦電流に基づく、回転子位置の決定の際の誤りが最小限に抑えられ得る。特にこのような異方性に基づく方法では、測定された相電流における小さな相違が、回転子位置の決定の際の重大な誤りに至り得る。供給される高周波電圧に基づく電流変化が小さく、したがって高周波電圧による電流変化との比較で渦電流が無視できないので、このことがとりわけ当てはまる。
【0017】
さらに、この方法の温度依存性が減少し得る。
異方性に基づく方法により、とりわけ、動作中の電気機械の特性を、無視できる程度にしか悪化させない回転子位置のセンサレス決定が行われ得る。そのうえ本発明によれば、この方法により、存在している回転子位置センサの結果の有効性を確認することもできる。
【0018】
本発明による方法の一形態では、プロセスステップdで、少なくとも第1の相電流および第2の相電流の測定が、それぞれ消極的スイッチ状態の終わりに行われることが企図される。
【0019】
この場合、消極的スイッチ状態の終わりには既に渦電流が可能な限り強く減衰していることが有利である。
本発明による方法の一形態によれば、プロセスステップdでの測定がなされるべき消極的スイッチ状態の時間が最大限に長いように、プロセスステップbでPWMデューティ比が決定されることが企図される。
【0020】
この場合、相電流測定の前に、可能な限り長い消極的スイッチ状態が隣接しており、これにより渦電流が減衰のための時間を十分に得ることが有利である。
本発明による方法の一形態では、それぞれ1つの消極的スイッチ状態が、PWM周期の真ん中でおよびPWM周期の終わりに終了するように、ならびにプロセスステップdで、少なくとも第1の相電流および第2の相電流の測定が、PWM周期内で消極的スイッチ状態ごとにそれぞれ1回行われるように、プロセスステップbでPWMデューティ比が決定されることが企図される。
【0021】
この場合、PWM周期ごとに複数の相電流の測定値が存在しているので、回転子位置の決定がより精密に行われ得ることが有利である。
本発明による方法の一形態によれば、プロセスステップdでの測定がなされるべき両方の消極的スイッチ状態の時間が実質的に同じ長さであるように、プロセスステップbでPWMデューティ比が決定されることが企図される。
【0022】
この実質的にとは、例えば外部からの妨害的影響または製造に由来する交差に起因する数パーセントの相違のことである。
この場合、相電流測定の際に均一な結果を得るため、渦電流が両方の消極的スイッチ状態で同じ強さで減衰し得ることが有利である。これに加え、両方の消極的スイッチ状態は、一方はすべての相が正電位と、一方はすべての相が負電位と接続しているように選択され得る。したがって両方の消極的スイッチ状態の時間が同じ長さである場合、これにより、インバータの中間回路コンデンサに最小限の負荷がかかる。
【0023】
本発明による方法の一形態によれば、少なくとも1つのPWM周期内の、すべての相のPWMデューティ比の正のPWMパルスが、共通垂直軸対称性を有するように、プロセスステップbでPWMデューティ比が決定されることが企図される。
【0024】
この場合、インバータの1つまたは複数の中間回路コンデンサの負荷が減少することが有利である。
本発明による方法の一形態によれば、少なくとも第1の相電流および第2の相電流が測定されるべき2つの相次ぐ消極的スイッチ状態の終わりの間の時間が一定であるように、プロセスステップbでPWMデューティ比が決定されることが企図される。
【0025】
この場合、相電流の一定のサンプリング周波数が達成され、この一定のサンプリング周波数により、異方性に基づく方法の簡略化、したがって簡略化された回転子位置の決定が可能になることが有利である。
【0026】
本発明による方法の一形態によれば、プロセスステップdで、少なくとも第1の相電流および第2の相電流の測定が、各々の測定すべき相のための少なくとも1つの電流センサによって、および少なくとも1つのアナログデジタル変換器によって行われ、このアナログデジタル変換器は、相電流の1回の測定がそれぞれ所定の一時点で可能になるように形成されており、このアナログデジタル変換器はとりわけSARアナログデジタル変換器であることが企図される。
【0027】
この場合、これが、それぞれの相電流の簡単かつ精密な決定を可能にすることが有利である。とりわけ、SAR-AD変換器により相電流が任意の時点でサンプリングされ得る。
【0028】
この場合、マルチプレクサを使ってすべての相に対して1つのAD変換器を利用してもよく、または相ごとにそれぞれ1つの別々のAD変換器を利用してもよい。
これに加えて本発明は、回転電気機械であって、本発明による方法を実施するために適応されており、少なくとも三相に形成され、かつPWM制御インバータによって給電される回転電気機械に関する。
【0029】
この場合、電気機械の回転子位置を決定する際に、渦電流に基づく誤りが最小限に抑えられ得ることが有利である。さらに、この決定の際の温度依存性が減少し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】回転電気機械の回転子位置を決定するための本発明による方法の1つの例示的実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による方法を実施するために適応された本発明による回転電気機械の1つの例示的実施形態を示す図である。
【
図3a】決定されたPWMデューティ比の様々な可能性の1つを示す図であり、ここでは現況技術に基づく真ん中にセンタリングされたPWMが示されている。
【
図3b】決定されたPWMデューティ比の様々な可能性の1つを示す図であり、
図3aに対し、本発明によるPWMデューティ比が示されている。
【
図3c】決定されたPWMデューティ比の様々な可能性の1つを示す図であり、
図3aに対し、本発明によるPWMデューティ比が示されている。
【
図3d】決定されたPWMデューティ比の様々な可能性の1つを示す図であり、
図3aに対し、本発明によるPWMデューティ比が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、回転電気機械の回転子位置を決定するための本発明による方法の1つの例示的実施形態を示している。
これに関し例えば
図2による電気機械10は、コイル群30と、コイル群30の給電のためのPWM制御インバータ40とを有している。
【0032】
図1による例示的実施形態で示した方法では、スタートSの後にプロセスステップaで、調節器サンプリング周期中に注入電圧u
injが決定され、この注入電圧u
injは、電気機械10を制御するための調節器50によって設定された電圧u
controlと、追加的な高周波電圧u
hfとから構成されている。調節器サンプリング周期の時間、したがって第1の調節器サンプリングステップと第2の調節器サンプリングステップの間の時間は、とりわけ、この時間がPWM周期時間T
PWMより何倍も大きいように選択され得る。
【0033】
プロセスステップaに続いてプロセスステップbでは、消極的スイッチ状態がそれぞれPWM周期の真ん中tPWM,Mでおよび/またはPWM周期の終わりtPWM,Eに終了するように、プロセスステップaで決定された注入電圧uinjに依存してPWMデューティ比が決定される。このためにPWMユニット70が、決定された注入電圧uinjをPWMデューティ比に換算する。
【0034】
続いてプロセスステップcでは、この調節器サンプリング周期の後の少なくとも1つのPWM周期において、電気機械10を相応に制御するため、プロセスステップbで決定されたPWMデューティ比でインバータ40が制御される。
【0035】
次いでプロセスステップdでは、すべての相電流ia、ib、icのそれぞれの電流推移を得るために、少なくとも第1の相電流iaおよび第2の相電流ibがPWMに同期してそれぞれ同時に測定され、この測定は、少なくとも1つのPWM周期内でそれぞれ消極的スイッチ状態の時間的に最後の3分の1で行われる。これに関してはとりわけ、相電流ia、ibの測定がそれぞれの消極的スイッチ状態の終わりに行われる。測定はこれに加え、2つの調節器サンプリングステップの間に行われ、つまりプロセスステップaの調節器サンプリング周期に続く調節器サンプリング周期中に行われる。
【0036】
三相に形成された電気機械10では、例えば第1の相電流iaおよび第2の相電流ibだけが測定されれば、第3の相電流icは、キルヒホッフの第一法則を使って第1の相電流iaおよび第2の相電流ibから決定され得る。
ic=-ia-ib
その代わりに、第3の相電流icも測定され得る。
【0037】
続いてプロセスステップeでは、プロセスステップdで得られた電流推移と、供給された高周波電圧uhfとに依存して、電気機械10の回転子位置が決定され、続いてこの方法が終了される。
【0038】
この場合、回転子位置は、とりわけ、プロセスステップaでの設定電圧ucontrolの変更によって生じた電流変化を決定することによって決定され得る。この電流変化の決定は、プロセスステップdで得られた相電流ia、ib、icの電流推移と、供給された高周波電圧uhfとに依存して行われる。このために、プロセスステップdで得られた電流推移が、設定電圧ucontrolの変更なく流れたであろう第1の電流と、設定電圧ucontrolの変更によって生成された第2の電流とに区分される。第2の電流は、例えばプロセスステップdで得られた相電流ia、ib、icの差を求めることで決定され得る。さらに第1の電流は、例えばプロセスステップdで得られた相電流ia、ib、icの平均値を求めることで決定され得る。
【0039】
代替的な図示されていない1つの例示的実施形態では、継続的に電気機械の回転子位置を決定するため、この方法が定期的に新たにスタートされ得る。
図2は、本発明による方法を実施するために適応された本発明による回転電気機械の1つの例示的実施形態を示している。
【0040】
電気機械10が示されている。電気機械10は、コイル群30に取り囲まれた永久磁石の回転子15を有している。ここでは電気機械10がとりわけ三相に形成されているが、それは図示されていない。コイル群30は、図示されていない固定子上に配置されている。
【0041】
さらにコイル群30は、コイル群30に通電させるインバータ40と接続しており、インバータ40は例えばB6ブリッジとして形成され得る。インバータ40はまた、インバータ40を制御するPWMユニット70と接続している。ここでPWMユニット70は、調節器50からの設定電圧ucontrolと、高周波励起ユニット80からの高周波電圧uhfとを受け取り、この高周波電圧uhfは設定電圧ucontrolに加えられ、その後、注入電圧uinjとして、PWMユニット70により相応のPWMデューティ比に換算される。
【0042】
電気機械10は、少なくとも第1の相および第2の相のためにそれぞれ1つの電流センサ55を有しており、これに関しては1つの電流センサ55だけが例として示されている。この電流センサ55により、それぞれ1つの相応の相電流ia、ib、icがサンプリングされ得る。電気機械10はこれに加え、アナログデジタル変換器をさらに有しており、このアナログデジタル変換器はここでは図示されているのではなく電流センサ55に組み込まれている。アナログデジタル変換器は、とりわけ、相電流ia、ibの1回の測定が所定の一時点で可能になるように形成されており、このアナログデジタル変換器はとりわけSARアナログデジタル変換器である。電流センサ55は、例えば測定抵抗体としてまたはホールセンサとして形成され得る。
【0043】
この場合、捕捉された相電流ia、ib、icの値は、調節器50にも回転子位置ユニット90にも提供される。ここで回転子位置ユニット90は、相電流ia、ib、icの相応の電流推移と、高周波電圧uhfとに依存して回転子15の回転子位置を決定するために、ならびにこの回転子位置をなかでも調節器50に伝えるために適応されている。調節器50は、相電流ia、ib、icの電流推移と、得られた回転子位置とに依存して、設定電圧ucontrolを決定するために適応されている。この設定電圧ucontrolはその後、高周波電圧uhfと合わされ、その合計が、上で既に説明したように、決定された注入電圧uinjとしてPWMユニット70に送られる。
【0044】
図3a~
図3dは、決定されたPWMデューティ比の様々な可能性を示している。
図3aでは、ここでは現況技術に基づく真ん中にセンタリングされたPWMが示されている。
図3b~
図3dではこれに対し、本発明によるPWMデューティ比が示されている。
【0045】
図3aでは、ここでは現況技術に基づく真ん中にセンタリングされたPWMが示されている。PWM周期時間T
PWMを有する1つの完全なPWM周期と、その前のPWM周期の終わりおよび後ろのPWM周期の始めとが示されている。ここでは個々の相電圧u
a、u
b、およびu
cのPWMデューティ比が時間tと共に示されており、かつPWM周期の真ん中t
PWM,Mにセンタリングされるよう選択されている。相電流i
a、i
b、i
cの測定は、典型的にはPWM周期の真ん中t
PWM,Mでおよび/またはPWM周期の終わりt
PWM,Eに行われる。
【0046】
図3bでは例示的に、PWM周期時間T
PWMごとに1つだけの消極的スイッチ状態を有するPWMデューティ比が示されており、この消極的スイッチ状態はPWM周期の終わりt
PWM,Eに終了している。PWMデューティ比の相応の決定により、消極的スイッチ状態の時間がとりわけ最大に選択されており、この場合、調節器50によって決定された注入電圧u
injが達成される。
【0047】
これに関し、第1および第2の相電流ia、ibを消極的スイッチ状態の最後の3分の1以内で捕捉することができ、この最後の3分の1では、注入電圧uinjの供給によりPWMデューティ比に基づいて生じた渦電流が既に減衰されている。とりわけ、相電流測定はPWM周期の終わりtPWM,Eに行われ、これにより渦電流は可能な限り強く減衰されている。
【0048】
さらに、少なくとも1つのPWM周期内の、すべての相のPWMデューティ比の正のPWMパルスが、共通垂直軸対称性を有することが明らかである。
図3cおよび
図3dではこれに対し、PWM周期時間T
PWMごとに2つの消極的スイッチ状態を有するPWMデューティ比が示されている。この場合、第1の消極的スイッチ状態はそれぞれPWM周期の真ん中t
PWM,Mで終了しており、第2の消極的スイッチ状態はそれぞれPWM周期の終わりt
PWM,Eに終了している。この場合、相電流i
a、i
bをPWM周期ごとに2回、それぞれの消極的スイッチ状態の最後の3分の1以内で測定することができ、ただし、とりわけ1回はPWM周期の真ん中t
PWM,Mで、1回は周期の終わりt
PWM,Eに、したがって消極的スイッチ状態のそれぞれの終わりに測定することができる。PWMデューティ比の相応の決定により、両方の消極的スイッチ状態の時間は、とりわけ実質的に同じ長さである。
【0049】
さらにここでも、少なくとも1つのPWM周期内の、すべての相のPWMデューティ比の正のPWMパルスが、共通垂直軸対称性を有することが明らかである。
とりわけ、PWMデューティ比は、少なくとも第1の相電流iaおよび第2の相電流ibが測定されるべき2つの相次ぐ消極的スイッチ状態の終わりの間の時間が一定であるようにも選択されており、したがって相電流測定の際に一定のサンプリング周波数が達成され得る。このためにもちろん、相次ぐ相電流測定の時点も相応に選択されるべきである。
【国際調査報告】