(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】周辺観測に基づく測位
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220804BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G08G1/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573396
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020064987
(87)【国際公開番号】W WO2020249408
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019208504.0
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】バスケビシウス,ナルナス
(72)【発明者】
【氏名】ビーバー,ペーター
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181AA27
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF03
5H181FF10
5H181FF22
5H301AA01
5H301BB14
(57)【要約】
車両(1a)、ロボット(1b)および/またはモバイル機器(1c)に配置された少なくとも1つのセンサ(3)を用いて、車両(1a)、ロボット(1b)または前記モバイル機器(1c)の周辺環境(2)から測定データ(4)を取得するステップ(110)と、測定データ(4)を圧縮データ(4a)に圧縮するステップ(120)と、圧縮データ(4a)をマップ(5)内で検索するステップ(130)であって、このマップ(5)は圧縮データ(4a)と、少なくとも2次元または3次元空間内の位置または姿勢(5a)と、を関連付けるステップと、圧縮データ(4a)が前記マップ(5)内で検索されることに応答して、マップ(5)によって圧縮データ(4a)に関連付けられた位置または姿勢(5a)を、車両(1a)、ロボット(1b)またはモバイル機器(1c)の位置または姿勢(6)を特定するために使用するステップ(140)と、を有する測位方法(100)。車両(1a)、ロボット(1b)、またはモバイル機器(1c)が、マップ(5)が測位可能となる所定の領域(50)内の様々な測定位置(51~53)に移動するステップ(210)と、各測定位置(51~53)において、車両(1a)、ロボット(1b)、またはモバイル機器(1c)の周辺環境(2)から測定データ(4)を取得するステップ(220)と、測定データ(4)を圧縮データ(4a)に圧縮するステップ(230)と、圧縮データ(4a)を、少なくとも測定位置(51~53)と関連付けてマップ(5)に保存するステップ(240)と、を有する、測位するためのマップ(5)の作成方法(200)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1a)、ロボット(1b)および/またはモバイル機器(1c)の測位方法(100)であって、
- 前記車両(1a)、前記ロボット(1b)および/または前記モバイル機器(1c)に配置された少なくとも1つのセンサ(3)を用いて、前記車両(1a)、前記ロボット(1b)または前記モバイル機器(1c)の周辺環境(2)から測定データ(4)を取得するステップ(110)と、
- 前記測定データ(4)を圧縮データ(4a)に圧縮するステップと(120)、
- 前記圧縮データ(4a)をマップ(5)内で検索するステップ(130)であって、前記マップ(5)は前記圧縮データ(4a)と、少なくとも2次元または3次元空間内の位置または姿勢(5a)と、を関連付けるステップと、
- 前記圧縮データ(4a)が前記マップ(5)内で検索されることに応答して、前記マップ(5)によって前記圧縮データ(4a)に関連付けられた前記位置または前記姿勢(5a)を、前記車両(1a)、前記ロボット(1b)または前記モバイル機器(1c)の位置または姿勢(6)を特定するために使用するステップ(140)と、
を有する方法。
【請求項2】
前記特定された位置または姿勢(6)は、別の方法で特定された少なくとも1つの位置または姿勢(7)と結合されるおよび/または妥当性検査される(150)、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記位置または前記姿勢(6)に加えて、この位置または姿勢(6)の不確実性(6a、6a’)も特定される(140a、150a)、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記特定された位置または姿勢(6、6’)に基づいて、前記車両(1a)または前記ロボット(1b)の動的システムに作用する少なくとも1つのアクチュエータ(1d)が、駆動制御信号(10)で駆動制御される(160)、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項5】
- 前記特定された位置または姿勢(6、6’)は、前記車両(1a)または前記ロボット(1b)の実軌道(8)を特定するために用いられ(170)、
- 前記特定された実軌道(8)の目標軌道(9)からの偏差Δが計算され(180)、
- 前記駆動制御信号(10)であって、前記車両(1a)または前記ロボット(1b)の動的システムに作用する前記少なくとも1つのアクチュエータ(1d)に供給されると、さらなる走行および/または移動時に、前記偏差の減少につながると期待される前記駆動制御信号(10)が特定され(190)、
- 前記少なくとも1つのアクチュエータ(1d)は前記駆動制御信号(10)で駆動制御される(195)、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項6】
車両(1a)、ロボット(1b)および/またはモバイル機器(1c)を測位するためのマップ(5)の作成方法(200)であって、
- 前記車両(1a)、前記ロボット(1b)、または前記モバイル機器(1c)が、前記マップ(5)が測位可能となる所定の領域(50)内の様々な測定位置(51~53)に移動するステップ(210)と、
- 各測定位置(51~53)において、前記車両(1a)、前記ロボット(1b)、または前記モバイル機器(1c)の周辺環境(2)から測定データ(4)を取得するステップ(220)と、
- 前記測定データ(4)を圧縮データ(4a)に圧縮するステップ(230)と、
- 前記圧縮データ(4a)を、少なくとも前記測定位置(51~53)と関連付けて前記マップ(5)に保存するステップ(240)と、
を有する方法。
【請求項7】
前記圧縮データ(4a)は、前記マップ内の前記測定データ(4)の取得時に、前記車両(1a)、前記ロボット(1b)または前記モバイル機器(1c)の姿勢(51a~53a)と関連付けて保存される(250)、請求項6に記載の方法(200)。
【請求項8】
前記測定データ(4)および前記マップ(5)に基づいて、請求項1から5のいずれか1項に記載された方法(100)によって決定された位置または姿勢(6)が、前記測定データ(4)の取得時に、前記車両(1a)、前記ロボット(1b)または前記モバイル機器(1c)の前記測定位置(51~53)および/または前記姿勢(51a~53a)の特定に使用される(260)、請求項6または7に記載の方法(200)。
【請求項9】
前記測定データ(4)は、前記周辺環境(2)の電磁照会放射への応答として受信された電磁放射の強度を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項10】
所定の閾値を超える強度、および/または強度勾配を示す前記測定データ(4)が、前記圧縮データを形成するために選択される、請求項9に記載の方法(100、200)。
【請求項11】
前記測定データ(4)、または前記圧縮データ(4a)の個々の値を、それらが由来する2次元または3次元空間内の場所にそれぞれ割り当てることによって、前記測定データ(4)、および/または前記圧縮データ(4a)は点群に変換される(115、225)、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項12】
前記測定データ(4)、および/または前記圧縮データ(4a)は、前記マップ(5)が静止している座標系に変換される(111、121、221、231)、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項13】
- 前記測定データ(4)は、所定の期間にわたって、および/または所定の距離にわたって収集され、
- 前記収集された測定データ(4)は、前記マップ(5)が静止している前記座標系に変換され(111、221)、
- 前記圧縮データ(4a)は、前記変換された測定データから形成される(120)、
請求項12に記載の方法(100、200)。
【請求項14】
前記マップ(5)と前記圧縮データの両方が点群として表される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法(100、200)。
【請求項15】
1つまたは複数のコンピュータ上で実行されると、前記コンピュータに請求項1から14のいずれか1項に記載の方法(100、200)を実行させる、機械読み取り可能な命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラムを備えた機械読み取り可能なデータキャリアおよび/またはダウンロード製品。
【請求項17】
請求項15に記載のコンピュータプログラム、および/または請求項16に記載の機械読み取り可能なデータキャリアおよび/もしくはダウンロード製品を備えたコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定されたインフラに依存せず、周辺の観測から車両、ロボット、またはモバイル機器の位置または姿勢を特定することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両やロボットが自律的に移動する場合、空間におけるそれ自体の位置や向きについて、常に正しく知ることが重要である。これは、自律移動のために計画された軌道が、実際現実に追跡され、車両やロボットが、周辺認識によればそこに存在しないはずの物体に衝突していないことの前提条件である。ここでは、約30cmから数cmに達する精度が要求される。
【0003】
衛星ナビゲーションシステムは、良好な受信条件のもとでしか、このような精度を提供できない。市街地での多重伝搬や、家屋や樹木による衛星への自由な視界の遮蔽は、精度を低下させる可能性がある。
【0004】
そのため、米国特許出願公開第2017/053060号明細書、米国特許第8699755号明細書、米国特許第9644975号明細書には、衛星や他の固定されたインフラからの信号がなくても車両の位置を特定する方法が開示されている。ここで、路面標識などの構造物を認識し、デジタルロードマップと比較する。ロードマップはこの過程で拡張および更新することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、車両、ロボット、および/またはモバイル機器の測位方法を開発した。モバイル機器は、例えばスマートフォンであってもよい。この方法では、車両、ロボットおよび/またはモバイル機器に配置された少なくとも1つのセンサを用いて、車両またはモバイル機器の周辺から測定データを取得する。この測定データを圧縮して圧縮データにする。
【0006】
圧縮データへの圧縮は、特に、所定の基準に従って、取得された測定データの部分集合の選択を含んでもよい。そして、所定の基準を満たす測定データのみが圧縮データに含まれる。
【0007】
代替的に、またはこれと組み合わせて、圧縮データへの圧縮は、例えば、測定データを互いに計算することによる集約を含んでもよい。このような計算には、例えば、平均値や中央値の形成を含んでもよい。
【0008】
さらに、圧縮データへの圧縮は、例えば変分オートエンコーダによって行ってもよい。このようなオートエンコーダは、入力された測定データから次元を大幅に削減した表現を生成し、続いてこの表現を逆変換する人工ニューラルネットワークである。オートエンコーダは、元々入力された測定データを逆変換後に可能な限り再現するように学習されている。オートエンコーダ内部で生成された次元を減らした表現は、入力された測定データの圧縮データとして利用することができる。
【0009】
圧縮データはマップ内で検索され、このマップは、圧縮データを、少なくとも2次元または3次元空間における位置または姿勢と関連付ける。ここで、「姿勢」という用語は、位置と空間的な向きの組み合わせのことである。
【0010】
ここで、この検索は、圧縮データがマップに同一形態で出現しなければならないということに限定されない。例えば、圧縮データのスケール版、回転版、および/または遠近が歪曲した版をマップ内で検索してもよい。例えば、圧縮データをマップの領域と一致させるスケール、回転、および/または歪みのパラメータを、車両、ロボット、もしくはモバイル機器の位置または姿勢を決定するために使用することができる。
【0011】
圧縮データがマップで検索されることに応答して、マップによって圧縮データに関連付けられた位置または姿勢が、車両またはモバイル機器の位置または姿勢を特定するために使用される。
【0012】
この目的のために使用される測定データは、例えば、電磁照会(Abfragestrahlung)放射に対する周辺環境の応答として受信された電磁放射の強度を含んでもよい。電磁照会放射は、例えば、周辺環境によってスキャンされる光線またはレーダビームであってもよい。測定データは、例えば、照会(Abfragestrahlung)放射の反射強度をそれぞれ測定する周辺環境のライダスキャンまたはレーダスキャンを含んでよい。
【0013】
ただし、照会放射は必ずしも車両、ロボット、またはモバイル機器から送出される必要はない。例えば、太陽や月も照会放射として光を送出することができ、周辺環境からの反射光を画像の形態の応答として記録することができる。
【0014】
圧縮データを形成し、この圧縮データに基づいてマップ内での検索を行うことで、測定データの取得が有する不確実性や状況に応じた変化に対して、マップにおける再認識を行うことが認識されている。すなわち、圧縮データは、同じ風景で異なる時刻に取得された測定データ間のこのような差異を平準化した抽象的な形態の測定データである。
【0015】
測定データが受信した電磁波の強度を含む場合、例えば、所定の閾値を超える強度、および/または強度勾配を示す測定データを、圧縮データを形成するために選択することができる。圧縮データは、電磁照会放射に対する応答のうち、周辺環境に存在する風景の支配的特徴に由来する部分のみを含む。例えば、建物、その他の固定物、路面標識、芝生とアスファルトの境界線、その他の任意の特徴物が考えられる。
【0016】
例えば、太陽光の下で撮影された画像と、月明かりの下で撮影された同じ風景の画像は大きく異なるが、圧縮データへの適切な圧縮処方により、圧縮データに含まれる上記の支配的特徴の内容表示は両画像についてほぼ同一となり得る。
【0017】
ここで、従来技術とは異なり、グラウンドマークのような測定データ中の個々の特徴を予め識別し、分類することなく、圧縮データへの圧縮を「一括して」行えることが重要である。これにより、マップ内でどの支配的特徴を再認識に利用できるかは、予め確定していない。
【0018】
例えば、グラウンドマークが基本的に唯一の不変の特徴である港湾地域の自律走行を制御する用途では、主にグラウンドマークを支配的特徴として用いてよい。ただし、消火栓やマンホールの蓋、電線の床下遮断弁などの固定構造物がある場所は、その存在を事前に知らなくても自動的に考慮することができる。
【0019】
測定データに基づいて車両、ロボット、またはモバイル機器の空間的な向きを検知する手段は、測位が常にアクティブでない場合に特に有利である。例えば、衛星ナビゲーションシステムは、空間的な方位に関する直接的な情報を提供しない。その代わりに、最後に追跡した移動の方向からこの向きを推定する。しかし、車両やロボットの電源が切断されていたなどの理由で、測位がしばらくの間アクティブでなかった場合、再びシステムを起動する際に、最後に特定した姿勢がまだ合っている保証はない。例えば、車両やロボットは、電源が切断された状態で手によって動かされたり、自軸を中心に回転したりしている場合がある。そのため、再起動後はできる限り早く向きに関する更新情報が必要である。この情報は、既に衝突が発生している可能性のある初期動作を最初に行うことなく、測定データから取得することができる。
【0020】
特に有利な形態では、特定された位置または姿勢は、他の方法で特定された少なくとも1つの位置または姿勢と結合され、および/または妥当性検査が行われる。このように、様々な位置特定の方法の特有の利点を組み合わせることができる。
【0021】
例えば、人工的な構造物のない屋外では、圧縮データに入り、マップ内で再認識することができる支配的特徴が少ない。その一方で、屋外での衛星ナビゲーションシステムは、より多くの衛星を直接見ることができるため、より高い精度を提供することができる。
【0022】
反対に、港湾地域や空港、ホールなどでは、圧縮データに入り込む人工的なグラウンドマークが多く、同時に衛星の視界が建物によって少なくとも部分的に陰になる。
【0023】
また、異なる位置特定方法の妥当性を相互に検査することで、運用の確実性をさらに高めることができる。例えば、測定データの記録に使用するセンサが日常の動作中に汚れたり、位置がずれたりした場合や、その他の理由で測定データの取得に系統的な誤差が生じた場合に、この方法で気づくことができる。
【0024】
同様に、例えば衛星に基づくナビゲーションシステムの精度が突然落ちた場合にも気づくことができる。例えば、セキュリティ当局の指示により、ユーザに警告することなく、この精度を人為的に低下させることができる。
【0025】
代替的に、または衛星航法と組み合わせて、オドメトリ、慣性航法、通常のLIDAR(light detection and ranging)によるスキャンマッチングなどを測位のさらなる方法として使用してもよい。
【0026】
特に有利な形態では、位置または姿勢に加えて、この位置または姿勢の不確実性も特定される。この情報は、特に様々な手法で特定された位置や姿勢を結合(マージ)する際に有益である。様々な方法で特定された位置や姿勢は、特に、異なる物理的測定方法で収集された測定データに基づく場合、異なる不確実性を伴う。
【0027】
例えば、マップ内の圧縮データを再認識するアルゴリズムは、圧縮データを正しい向きでマップ内の正しい位置に移行させる変換に加えて、関連する共分散行列を提供することができる。
【0028】
さらなる特に有利な形態では、車両またはロボットの動的システムに作用する少なくとも1つのアクチュエータが、特定された位置または姿勢に基づいて駆動制御される。つまり、特定された位置や姿勢は、車両やロボットが最終的に行う動作に影響を与える。これにより、これらの動作の自動実行時の作動安全性を高めることができる。冒頭で説明したように、実際の動作の実行が、根本的な動作計画と異なる前提条件に基づく確率が低下する。
【0029】
さらなる特に有利な形態では、特定された位置または姿勢は、車両またはロボットの実軌道を特定するために使用される。特定された実軌道と目標軌道との偏差が算出される。そこで、車両またはロボットの動的システムに作用する少なくとも1つのアクチュエータに供給されると、さらなる走行および/または移動の際に偏差の減少につながると予想される駆動制御信号が特定される。最後に、この駆動制御信号でアクチュエータが駆動制御される。
【0030】
アクチュエータを同じように制御しても、外部からの影響により、状況に応じて車両やロボットが最終的に行う動きに異なる影響を与えることが認識されている。
【0031】
例えば、通常、車両が直進するためには、ハンドル旋回することなく車輪を直進させる必要があるが、横風が強い場合には、車両の軌道を維持するために転舵が必要になる場合がある。ここで転舵の強さは、例えば、車両に荷重がかかっていて横風を受ける面積が大きいかどうかによる。同様に、ブレーキシリンダ内のブレーキ圧が同じでも、路面状況によって車両の減速度が異なる。
【0032】
ロボットの操作についても、同様の不確定性がある。例えば、重いものを扱うときに、ロボットが傾いたり撓んだりすることがあり得る。アクチュエータを適切に駆動制御することにより、この傾きや撓みを補正し、予め計画した箇所に正確に体重をかけることができる。例えば、棚にある所定の収納部に対象物をしまうために、ロボットを使用することができる。そして、動作計画には、収納部の床面直上の部分に対象物を素早く移動させ、その後、床面に置くことを予定している場合がある。ここでの傾きや撓みは、対象物が横から収納部の床面にぶつかり、対象物と棚の両方が破損する可能性がある。これに対し、上記の方法でロボットの向きを取得し、アクチュエータを駆動制御して適宜補正すれば、このような衝突を回避することができる。
【0033】
圧縮データが検索されるマップは、任意のソースであってよい。例えば、車両、ロボット、またはモバイル機器と共に提供されたり、ダウンロードで入手したり、あるいはインターネットなどのネットワーク経由で参照してもよい。そのようなマップの商業提供者がアクセスできない施設やホールでは、既製のマップが利用できない場合がある。
【0034】
したがって、本発明は、車両、ロボットおよび/またはモバイル機器の測位ためのマップの作成方法にも関する。
【0035】
この方法では、車両、ロボット、またはモバイル機器を、マップが測位可能となる所定の領域内の異なる測定位置に移動する。各測定位置において、車両、ロボット、またはモバイル機器などの周辺環境からの測定データを取得する。測定データは、圧縮データに圧縮される。圧縮データは、少なくとも測定位置と関連付けてマップに保存される。
【0036】
測定位置の密度と分布は、マップが測位可能となる領域が、完全に取得されるように選択することが有利である。したがって、個々の測定位置でそれぞれ測定データが取得される全ての取得領域の合併集合は、上記領域を完全にカバーすることが有利である。例えば、この領域を手動で測定走行してもよい。
【0037】
どのデータを測定データとして使うか、どのように圧縮して圧縮データにするかという具体的な構成は、上述の方法に関連して述べたことが全て準用される。
【0038】
特に有利な形態では、圧縮データは、測定データの取得時に、車両、ロボット、またはモバイル機器の姿勢と関連付けてマップに保存される。圧縮データがマップ内で同一に再認識された場合、車両、ロボット、またはモバイル機器の位置に加えて、空間的な向きを直接取得することができる。
【0039】
さらなる特に有利な形態では、測定データおよびマップに基づいて、冒頭で説明された方法を用いて特定された位置または姿勢は、測定データの取得時に、車両、ロボット、もしくはモバイル機器の測定位置および/または姿勢を特定するために使用される。すなわち、マップは既に作成時に自己矛盾なく測位に利用されており、いわゆるSLAM法(「Simultaneous Localization and Mapping」)などに匹敵することができる。特に、この方法で既存のマップを改良したり、更新したりすることができる。
【0040】
2つの方法のさらなる特に有利な形態では、測定データおよび/または圧縮データの個々の値を、それらが由来する2次元または3次元空間内の場所に割り当てることによって、測定データまたは圧縮データを点群に変換する。
【0041】
特に、これはある一定期間の測定データの集計を大幅に簡略化し、取得精度を向上させることが認識されている。測定データは、特別な計算を必要とすることなく、期間中、点群に単に加算して追加するだけでよい。例えば、同じ場所に複数の異なる測定値が次々と割り当てられた場合、点群は測定値ごとに別々の点を含み、同一の位置座標を有する点が存在する。ここで生じる多義性は、その後の圧縮および/または後続の評価で解決することができる。
【0042】
これにおいて、点群のデータ型は、圧縮データの形成と共同で作用する。測定データを圧縮することで、通常、取得された情報の大部分は破棄される。そのため、車両、ロボット、またはモバイル機器の位置について信頼性の高い記述を行うためには、最初に大量の測定データを投入することが有利でなる。まさにこれが、点群によって容易化される。
【0043】
さらに、点群を特に有機的に圧縮して圧縮データにすることができる。例えば、所定の条件を個々の点ごとに別々に検査することができる。そして圧縮データは、元の点群のうち、条件に該当する点のみを含む部分集合となる。最終的に、圧縮データへの圧縮時にデータ型が変更されることはない。
【0044】
さらに、点群から形成される圧縮データに対して個別に、特に有用なマッチングアルゴリズムが利用可能であり、これを用いてマップ中の圧縮データを再認識することができる。つまり、マップと圧縮データの両方を点群の形で表現し、点群のマッチングによってマップ内の圧縮データを検索すれば、測位の効率と精度をさらに向上させることができる。例えば、点群に対して、少なくとも区分的に連続した、微分可能な確率密度を提供する正規分布変換(NDT:Normal Distributions Transform)を行うことができる。このような確率密度は、例えばニュートンアルゴリズムに匹敵する。
【0045】
さらに有利な形態では、測定データおよび/または圧縮データは、マップが静止している座標系に変換される。これにより、複数の測定の測定データを集計することがさらに容易になる。
【0046】
さらなる特に有利な形態では、測定データは、所定の期間にわたって、および/または所定の距離にわたって収集される。収集された測定データは、マップが静止している座標系に変換される。変換された測定データから圧縮データが形成される。
【0047】
圧縮データは、時間または距離にわたって結合され、このための間隔は、時間または距離において、圧縮データへの圧縮が行われる可能性のある周期的なサイクルとは無関係である。例えば、5メートルの移動距離ごとに新しい圧縮データが形成され、前の10メートルの移動距離の測定データが考慮される。
【0048】
このようにして、測位の信頼性をさらに高めることができる。特に、車両、ロボット、またはモバイル機器の周囲の風景は、圧縮データを形成する前に複数の視点から記録することができる。これは特に、1つの視点のみを使用した場合に発生する多義性を解消するのに有効である。
【0049】
収集中に、車両、ロボット、またはモバイル機器の姿勢は連続的に変化する。したがって、測定データが取得される座標系が常に変化する。それでも全ての測定データを共通の座標系に移行するために、例えば、車両、ロボット、またはモバイル機器の相対的な移動情報を収集中に取得し、共通の座標系への変換に使用することができる。
【0050】
これにおいて、この状況は長期露光による天体写真に匹敵する。そこでは、最後に一つの良好な画像を得るために、測定データをある一定期間にわたってマージし、共通の座標系に移行する。地球の自転により、現在の画像への寄与が撮影される座標系は連続的に変化する。これは通常、カメラの機械的な追跡によって補われる。
【0051】
本方法は、特に全部または一部をコンピュータで実現することができる。そのため、本発明は、1つまたは複数のコンピュータで実行されると、コンピュータに、上述した方法の1つを実行させる、機械読み取り可能な命令を含むコンピュータプログラムにも関する。この意味で、機械読み取り可能な命令を実行することができる車両用制御装置や技術装置用組み込みシステムも、コンピュータと見なしてよい。
【0052】
同様に、本発明は、機械読み取り可能なデータキャリアおよび/またはコンピュータプログラムを備えるダウンロード製品にも関する。ダウンロード製品とは、データネットワークを介して転送可能な、すなわちデータネットワークのユーザによってダウンロード可能なデジタル製品であり、例えばオンラインショップですぐにダウンロードできるように販売できるものである。
【0053】
さらに、コンピュータは、コンピュータプログラム、機械読み取り可能なデータキャリア、またはダウンロード製品を搭載していてもよい。
【0054】
本発明を改善するさらなる手段を、本発明の好ましい実施例の説明と共に、図を参照して以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図3】測位のための領域50における測定位置51~53および姿勢51a~53aの例示的な選択である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、測位方法100の一実施形態のフローチャートである。ステップ110では、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cの周辺環境2からの測定データ4が、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cに配置された少なくとも1つのセンサ3で取得される。ブロック111によれば、この測定データ4を、測位に用いるマップ5が静止している座標系に変換することができる。任意選択的に、測定データ4は、ステップ115でさらに点群に変換されてもよい。
【0057】
ステップ120では、測定データ4は圧縮データ4aに圧縮される。
ブロック121によれば、圧縮データ4aを、マップ5が静止している座標系に再び変換することができる。
【0058】
マップ5は、圧縮データ4aに対して位置または姿勢5aを割り当てる。ステップ130では、圧縮データ4aがマップ5内で検索される。探索が成功した場合、ステップ140において、圧縮データ4aに割り当てられた位置または姿勢5aを用いて、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cの探索された位置または姿勢6が特定される。ステップ140aでは、さらに、この位置または姿勢の不確実性6aを決定してもよい。
【0059】
位置または姿勢6は、ステップ150において、別の方法で特定された位置または姿勢7と結合および/または妥当性検査することができる。ここで、位置または姿勢6を補正された位置または姿勢6’に変更することができる。
【0060】
図1に示す例では、この補正された位置または姿勢6’は、車両1aまたはロボット1bのダイナミクスに具体的に影響を与えるために使用される。ただし、ステップ140で特定された位置または姿勢6を直接この目的に使用してもよい。
【0061】
ステップ160では、位置または姿勢6、6’から駆動制御信号10が形成される。この駆動制御信号10は、車両1aまたはロボット1bのダイナミクスに作用するアクチュエータ1dを駆動制御する。
【0062】
代替的に、またはこれと組み合わせて、ステップ170において、位置または姿勢6、6’は、車両1aまたはロボット1bの実軌道8を特定するために用いられる。この実軌道8は、ステップ180において目標軌道9と比較される。このようにして特定された偏差Δに基づいて、ステップ190では、アクチュエータ1dに適用された場合に、さらなる走行および/または移動中に偏差Δの減少につながると期待される駆動制御信号10が特定される。すなわち、駆動制御信号10は、偏差Δを補償するように算定されている。ステップ195では、この駆動制御信号10でアクチュエータ1dを駆動制御する。
【0063】
図2は、マップ5の作成方法200の実施例のフローチャートを示す。ステップ210では、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cは、マップ5が測位可能となる領域50内の様々な測定位置51~53に移動する。その際、特に車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cは、空間においてそれぞれ他の向きをとることができる。特に、例えば、測定位置51~53の1つにおいて、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cは、それ自身の軸を中心とした回転によって新しい向きになることができるため、同じ測定位置51~53において新しい姿勢51a~53aが生成される。
【0064】
各測定位置51~53、または各姿勢51a~53aにおいて、車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cの周辺環境から測定データ4が取得される。ここで、ブロック221によれば、測定データ4を、マップ5が静止している座標系に変換することができる。任意選択的に、測定データ4は、ステップ225で点群に変換されてもよい。
【0065】
ステップ230では、測定データ4は圧縮データ4aに圧縮される。
ブロック231によれば、この圧縮データ4aを、マップ5が静止している座標系に再び変換することができる。
【0066】
ステップ240では、圧縮データ4aは、少なくとも測定位置51~53と関連付けてマップ5に保存される。測定データ4の取得時に車両1a、ロボット1b、またはモバイル機器1cの姿勢51a~53aが分かっている場合、ステップ250において、圧縮データ4aを完全な姿勢51a~53a、すなわち測定データ4の取得時に、位置および向きと関連付けて、マップ5に保存することができる。
【0067】
ステップ260では、方法100で測定データ4とマップ5を用いて決定した位置または姿勢6を、測定データの取得時に測定位置51~53、および/または姿勢51a~53aを特定するために用いてもよい。そして、方法200は、SLAM法(Simultaneous Localization and Mapping)と同様に動作することができる。
【0068】
図3は、先に説明した方法100、200を適用できる、港湾地域内の例示的な領域50を示す。領域50には固定された特徴はなく、向きを示すためのグラウンドマークがあるのみである。これは、
図3の例では、停車禁止マーク61a、61b、コンテナ位置のマーク62a、62b、路面標識63a~63d、駐車禁止マーク64a、64bである。
【0069】
例示的に、3つの測定位置51~53が記載されている。これらの測定位置51~53のそれぞれで、周辺環境2を観測し、測定データ4を記録する。
図3では、車両1a、ロボット1bまたはモバイル機器1cのセンサ装置で見ることができる周辺環境2の部分のみが、各測定位置51~53にマークされている。この部分は、車両1a、ロボット1bまたはモバイル機器1cのそれぞれの向きにも依存する。向きは、それぞれの完全な姿勢51a~53aに含まれている。
【国際調査報告】