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特表2022-536177着脱式歯科用補綴物を洗浄するための組成物
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  • 特表-着脱式歯科用補綴物を洗浄するための組成物 図1
  • 特表-着脱式歯科用補綴物を洗浄するための組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】着脱式歯科用補綴物を洗浄するための組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/39 20060101AFI20220804BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/46 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220804BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20220804BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220804BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220804BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20220804BHJP
   A61Q 11/02 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C11D3/39
C11D1/04
C11D3/20
C11D3/46
C11D3/36
C11D3/28
C11D3/10
C11D3/06
C11D3/08
C11D3/04
C11D17/08
C11D17/06
A01P3/00
A01N59/00 A
A01N37/02
A61Q11/02
A61K8/22
A61K8/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573836
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020037616
(87)【国際公開番号】W WO2020252402
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】63/004,858
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,810
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513192166
【氏名又は名称】アーミス・バイオファーマ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ノブリット,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ニーズ,エドウィン
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB221
4C083AB281
4C083AB321
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC231
4C083AC271
4C083AC272
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC851
4C083AC891
4C083BB55
4C083CC42
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE31
4C083FF04
4H003AB02
4H003BA12
4H003BA15
4H003DA05
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA07
4H003EA08
4H003EA15
4H003EA16
4H003EA20
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB10
4H003EB20
4H003EB24
4H003ED02
4H003FA34
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB06
4H011BB18
(57)【要約】
過酸化水素、1又は複数のカルボン酸、及び1又は複数の過酸を含有する、歯科用補綴物及び歯科矯正装置のための水性洗浄組成物、並びに洗浄組成物を用いて歯科用補綴物及び他の歯科矯正装置から微生物及び汚れを除去するための方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約125重量ppm~約25重量%の範囲内の量の過酸化水素、
約150重量ppm~約30重量%の範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び
約100重量ppm~約20重量%の範囲内の量の1又は複数の過酸、
を含み、前記過酸のうちの少なくとも1つは、前記カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する、水性洗浄組成物。
【請求項2】
約1.25重量ppm~約5重量%の範囲内の1又は複数のC1~5アルキルヒドロペルオキシドをさらに含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記過酸化水素が、約125重量ppm~約20重量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記過酸化水素が、約10重量%~約20重量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記1又は複数のカルボン酸が、約150重量ppm~20重量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1又は複数のカルボン酸が、約12重量%~20重量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1又は複数のカルボン酸が、C2~10の脂肪酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、α-ケトカルボン酸、β-ケトカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1又は複数のカルボン酸が、前記組成物の総重量の約150ppm~20%の範囲内の酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1又は複数のカルボン酸が、前記組成物の総重量の約15%~約20%の範囲内の酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1又は複数のカルボン酸がさらに、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらのいずれかの混合物から成る群より選択される1又は複数のさらなる酸を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記1又は複数の過酸が、前記組成物の総重量の約100ppm~約12%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記1又は複数の過酸が、前記組成物の総重量の約6%~約12%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記過酸が、前記組成物の総重量の約100ppm~約12%の範囲内の量の過酢酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記過酸が、前記組成物の総重量の約6%~約12%の範囲内の量の過酢酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記過酸化水素が、約5重量%~約25重量%の範囲内であり、
前記1又は複数のカルボン酸が、約10重量%~約30重量%の範囲内であり、及び
前記1又は複数の過酸が、約4重量%~約20重量%の範囲内であり、
前記過酸のうちの少なくとも1つは、前記カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記過酸化水素が、約5重量%~約25重量%の範囲内であり、
前記カルボン酸が、約5重量%~約22重量%の範囲内の量の酢酸を含み、及び
前記過酸が、約0.25重量%~約14重量%の範囲内の量の過酢酸を含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記過酸化水素が、約125ppm~約625ppmの範囲内であり、
前記1又は複数のカルボン酸が、約150ppm~約750ppmの範囲内であり、及び
前記1又は複数の過酸が、約100ppm~約500ppmの範囲内である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記1又は複数のカルボン酸が、約375ppm~約500ppmの量の酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記1又は複数の過酸が、約150ppm~約350ppmの量の過酢酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の過酸濃度が、約125ppm~400ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記過酸化水素が、約125重量%~約3重量%の範囲内であり、
前記1又は複数のカルボン酸が、約150重量%~約3重量%の範囲内であり、及び
前記1又は複数の過酸が、約100ppm~約500ppmの範囲内であり、
前記過酸のうちの少なくとも1つは、前記カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記過酸化水素が、約55000ppm~約120000ppmの範囲内であり、
前記1又は複数のカルボン酸が、約70000ppm~約120000ppmの範囲内であり、及び
前記1又は複数の過酸が、約6500ppm~約22000ppmの範囲内である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記過酸濃度が、約100ppm~約25000ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記過酸化水素が、約5000ppm~約20000ppmの範囲内であり、
前記1又は複数のカルボン酸が、約5000ppm~約20000ppmの範囲内であり、及び
前記1又は複数の過酸が、約100ppm~約300ppmの範囲内であり、
前記過酸のうちの少なくとも1つは、前記カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
溶液、ゲル、又はフォームから成る群より選択される形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
さらに安定剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記安定剤が、エチドロン酸、ジピコリン酸、及びジピコリン酸Nオキシドから成る群より選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
さらに研磨助剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記研磨助剤が、炭酸カルシウム、シリカゲル、沈降シリカ、シリケート、アルミナ、ホスフェート、リン酸塩、水和酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
歯科用補綴物及び着脱式歯科矯正装置を洗浄するための方法であって、前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置を、請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項31】
前記組成物が、前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置の表面に対して前記組成物の加圧溶液を施すことによって、前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置と接触される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置の表面を前記組成物の溶液中に浸漬することによって、前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置と接触される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物の過酸濃度が、約100ppm~25000ppmである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、
約5000ppm~約20000ppmの範囲内の過酸化水素濃度、
約5000ppm~約20000ppmの範囲内のカルボン酸濃度、及び
約100ppm~約300ppmの範囲内の過酸濃度、
を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、
約125ppm~約20000ppmの範囲内の過酸化水素濃度、
約150ppm~約20000ppmの範囲内のカルボン酸濃度、及び
約100ppm~約300ppmの範囲内の過酸濃度、
を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置が、食品又は飲料品との接触によって汚れている、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
歯科用補綴物又は着脱式矯正装置を洗浄するための固体製品であって、前記固体製品は、請求項1に記載の水性組成物から水を除去することによって形成される、固体製品。
【請求項38】
前記カルボン酸のマグネシウム塩をさらに含む、請求項37に記載の固体製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科用補綴物及び歯科矯正装置から微生物を排除し、汚れを除去するための洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
着脱式の歯科用補綴物(義歯)及び他の口腔歯科用装具は、口内炎及び肺炎などの疾患を予防するために、定期的で頻繁な洗浄を行う必要がある。リテーナー及び他の着脱式歯科矯正装置に用いられる義歯ベースのアクリル樹脂及び他のポリマーは、義歯の下及び表面上にある粘膜中の口腔内在性細菌によって容易にコロニー形成される。この微生物の蓄積は、義歯に関連する口内炎、及び特に高齢者にとっては命に関わる感染症である誤嚥性肺炎の原因となり得る。
【0003】
歯科用補綴物を洗浄するためのより良好な製品が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本特許文書は、例えば義歯、キャップ、インレー、アンレー、及びブリッジ、さらにはリテーナー及び他の着脱式歯科矯正装置を含む歯科用補綴物から微生物を排除するための洗浄組成物を開示する。従来の製品と比較して、本明細書で述べる組成物は、細菌、ウィルス、及び真菌などの微生物を排除することができ、さらには、バイオフィルム、汚れ、及び他の汚染物を除去することができる。洗浄プロセスは、短時間で完了することができ、歯科用補綴物に対して明瞭な損傷を残すことがない。
【0005】
本開示の第一の態様は、約125重量ppm~約25重量%の範囲内の量の過酸化水素、約150重量ppm~約30重量%の範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100重量ppm~約20重量%の範囲内の量の1又は複数の過酸を含有する水性洗浄組成物を提供し、過酸のうちの少なくとも1つは、カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する。
【0006】
1つの実施形態では、組成物はさらに、約1.25重量ppm~約5重量%の範囲内の1又は複数のC1~5アルキルヒドロペルオキシドを含有する。
別の実施形態では、カルボン酸は、酢酸である。1つの実施形態では、酢酸の量は、約15重量%~約20重量%の範囲内である。別の実施形態では、酢酸の量は、約150重量ppm~約20重量%の範囲内である。
【0007】
別の実施形態では、過酸化水素の量は、約125重量ppm~約20重量%の範囲内である。別の実施形態では、過酸化水素の量は、約5重量%~約20重量%の範囲内である。
【0008】
さらなる実施形態では、1又は複数のカルボン酸の量は、約150重量ppm~20重量%の範囲内である。さらなる実施形態では、1又は複数のカルボン酸の量は、約5重量%~20重量%の範囲内である。なおさらなる実施形態では、1又は複数のカルボン酸は、C2~10のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、α-ケトカルボン酸、β-ケトカルボン酸、及びこれらの混合物から選択される。なおさらなる実施形態では、1又は複数のカルボン酸は、組成物の総重量の約7%~約20%の範囲内の量の酢酸である。
【0009】
異なる実施形態では、1又は複数のカルボン酸はさらに、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらのいずれかの混合物から選択される1又は複数のさらなる酸を含有する。
【0010】
1つの実施形態では、過酸は、過酢酸である。別の実施形態では、1又は複数の過酸は、組成物の総重量の約100ppm~約12%の量の範囲内である。別の実施形態では、1又は複数の過酸は、組成物の総重量の約6%~約12%の量の範囲内である。
【0011】
別の実施形態では、組成物は、約5重量%~約25重量%の範囲内の量の過酸化水素、約10重量%~約30重量%の範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約4重量%~約20重量%の範囲内の1又は複数の過酸を含有する。
【0012】
なお別の実施形態では、組成物は、約5重量%~約25重量%の範囲内の量の過酸化水素、約5重量%~約22重量%の範囲内の量の酢酸、及び約0.25重量%~約14重量%の範囲内の量の過酢酸を含有する。
【0013】
別の実施形態では、水性洗浄組成物は、約125ppm~約625ppmの範囲内の量の過酸化水素、約150ppm~約750ppmの範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100ppm~約500ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有する。
【0014】
別の実施形態では、1又は複数のカルボン酸は、約375ppm~約500ppmの量の酢酸である。さらなる実施形態では、組成物中の1又は複数の過酸は、約150ppm~約350ppmの量の過酢酸である。
【0015】
なおさらなる実施形態では、組成物の過酸濃度は、約125ppm~400ppmである。
なおさらなる実施形態では、組成物は、約100ppm~約25000ppmの過酸濃度まで水で希釈される。
【0016】
さらなる実施形態では、組成物は、約125~約3重量%の範囲内の量の過酸化水素、約150~約3重量%の範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100ppm~約500ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有し、過酸のうちの少なくとも1つは、カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する。
【0017】
1つの実施形態では、組成物は、約55000ppm~約120000ppmの範囲内の量の過酸化水素、約70000ppm~約120000ppmの範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約6500ppm~約22000ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有し、過酸のうちの少なくとも1つは、カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する。
【0018】
別の実施形態では、過酸濃度は、約100ppm~約25000ppmである。さらなる実施形態では、組成物は、約5000ppm~約20000ppmの範囲内の量の過酸化水素、約5000ppm~約20000ppmの範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100ppm~約300ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有し、過酸のうちの少なくとも1つは、カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する。
【0019】
本発明の態様のいずれの組成物も、5分間未満の微生物殺傷時間を有する。
別の実施形態では、本発明の態様のいずれの組成物も、C2~10のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、α-ケトカルボン酸、β-ケトカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択される1又は複数のカルボン酸を含有する。さらなる実施形態では、本発明のいずれの態様の組成物も、1又は複数のカルボン酸、並びにクエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらのいずれかの混合物から選択される1又は複数のさらなる酸を含有する。
【0020】
さらなる実施形態では、組成物は、溶液、ゲル、又はフォームから選択される形態である。なおさらなる実施形態では、本発明のいずれの態様の組成物も、安定剤をさらに含有する。なおさらなる実施形態では、安定剤は、エチドロン酸、ジピコリン酸、及びジピコリン酸Nオキシドから選択される。異なる実施形態では、本発明の態様のいずれの組成物も、研磨助剤をさらに含有する。1つの実施形態では、研磨助剤は、炭酸カルシウム、シリカゲル、沈降シリカ、シリケート、アルミナ、ホスフェート、リン酸塩、水和酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0021】
本発明の第二の態様は、歯科用補綴物及び着脱式歯科矯正装置の洗浄を、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置を本明細書で述べる組成物のいずれかと接触させることによって行うための方法を提供する。1つの実施形態では、本明細書で述べる希釈された組成物は、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置の表面に対して組成物の加圧溶液を施すことによって、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置と接触される。別の実施形態では、組成物は、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置の表面を本明細書で述べる組成物のうちの1つの溶液中に浸漬することによって、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置と接触される。
【0022】
本態様で開示される方法のさらなる実施形態では、組成物は、約7重量%~約25重量%の範囲内の量の過酸化水素、約7重量%~約22重量%の範囲内の量の酢酸、及び約0.1重量%~約14重量%の範囲内の量の過酢酸を含有する。
【0023】
開示される方法のさらなる実施形態では、組成物の過酸濃度は、約100ppm~約25000ppmである。
なおさらなる実施形態では、記載の方法で用いられる希釈された組成物は、約5000ppm~約20000ppmの範囲内の過酸化水素濃度、約5000ppm~約20000ppmの範囲内のカルボン酸濃度、及び約100ppm~約300ppmの範囲内の過酸濃度を有する。
【0024】
なおさらなる実施形態では、記載の方法で用いられる希釈された組成物は、約125ppm~約20000ppmの範囲内の過酸化水素濃度、約150ppm~約20000ppmの範囲内のカルボン酸濃度、及び約100ppm~約300ppmの範囲内の過酸濃度を有する。なおさらなる実施形態では、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置は、食品又は飲料品との接触によって汚れている。
【0025】
本発明の第五の態様は、本発明の水性組成物から水を除去することによって製造される、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置を洗浄するための固体製品を提供する。1つの実施形態によると、組成物は、水の除去後に本質的に同じ相対比である固体粉末である。別の実施形態では、固体粉末は、カルボン酸のマグネシウム塩を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に従う組成物で洗浄する前の、ワインで汚れた義歯及び汚れていないコントロールの写真である。
図2図2は、洗浄後の、同じワインで汚れた義歯及びコントロールの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の文書の様々な実施形態は、細菌、真菌、マイコバクテリア、及び芽胞を歯科用補綴物から排除するための水性洗浄組成物を提供する。この組成物は、バイオフィルムを予防及び/又は破壊し、その結果として表面のバイオフィルム中に存在するすべての微生物を短い時間で殺傷することが示された。従来の方法と比較したさらなる利点は、歯科用補綴物の外観及び耐久性に対する影響が最小限であることである。
【0028】
本開示のいくつかの例を、例示的な実施形態を参照して、以降でより詳細に記載する。実際、本開示の様々な態様は、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書で示される例に限定されるものとして解釈されるべきではない。そうではなく、これらの例は、本開示が、充分且つ完全となり、本開示の範囲を当業者に充分に伝えるように提供されるものである。
【0029】
冠詞の「a」及び「an」は、本明細書で用いられる場合、特に断りのない限り、「1又は複数の」又は「少なくとも1つの」を意味する。すなわち、不定冠詞「a」又は「an」による実施形態のいかなる要素又は成分の言及も、2つ以上の要素又は成分が存在する可能性を除外するものではない。
【0030】
「約」の用語は、本明細書で用いられる場合、言及される数字による指示と、その言及される数字による指示のプラス又はマイナス10%とを意味する。
「C1~5アルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、1、2、3、4、又は5個の炭素を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。同様に、「C1~10アルキル」の用語は、本明細書で用いられる場合、1~10個の範囲内の数の炭素を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。
【0031】
「過酸」の用語は、本明細書で用いられる場合、ベースとなる有機酸(一般的にはカルボン酸)の酸化形態を意味する。具体的には、過酸は、カルボン酸の-(C=O)OHから誘導される-(C=O)OOH基を有する。
【0032】
「アルキルヒドロペルオキシド」の用語は、水素がOOHで置き換えられた対応するアルカンの構造に基づく構造を意味する。
本特許文書の態様は、歯科用補綴物を洗浄するための水性組成物を提供する。組成物は、約125重量ppm~約25重量%の範囲内の過酸化水素、約150重量ppm~約30重量%の範囲内の1又は複数のカルボン酸、及び約100重量ppm~約20重量%の範囲内の1又は複数の過酸を含む。組成物はまた、組成物中に約1.25重量ppm~約5重量%の範囲内の1又は複数のC1~5アルキルヒドロペルオキシドを含有してもよい。組成物は、例えば溶液、フォーム、又はゲルを含む適切ないかなる形態であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、水溶液である。組成物の、成分溶解性、安定性、及び/又は有効性を改善するために、さらなる有機溶媒が添加されてもよい。
【0033】
本発明に従う組成物は、当業者に公知である従来の方法によって製造されてよい。例えば、30重量%の過酸化水素を、所望されるカルボン酸又はその塩若しくは無水物と反応させ、平衡化させてよい。従来の手段によって固体粉末として回収することができる組成物を製造するために、第II族のカルボン酸塩、特にマグネシウム塩が用いられてもよい。固体製品は、水は除去されるが、液体製品に含有されるものと本質的に同じ比で原料成分を含有し、但し、マグネシウムベースの固体の場合、有機酸のレベルが高く、過酸のレベルが低く、過酸化水素のレベルが著しく低くなる。
【0034】
既に記載したように、組成物は、過酸化水素を含有する。本明細書で開示される過酸化水素の量は、純物質の値として表されており、溶液状態の過酸化水素の量ではない。水性組成物中の水が、組成物の製造に用いられる過酸化水素水溶液から得られる水を含むことには留意されたい。適切ないかなる過酸化水素水溶液が組成物に用いられてもよく、例えば、30重量%までの又は50重量%までの過酸化水素を含有する水溶液などである。所望される最終製品に応じて、組成物中のより高い又はより低い過酸化水素濃度が用いられてよい。酸無水物との場合、より低い過酸化水素濃度が用いられ得る。出発物質の比は、最終製品中に所望される比の過酸化水素、カルボン酸、及び過酸を提供するように選択される。テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)を過酸化水素と反応させて、本発明の過酢酸組成物を製造してもよい。
【0035】
1つの実施形態によると、組成物は、約5重量%~約25重量%の範囲内の過酸化水素、約5重量%~約22重量%の範囲内の酢酸、及び約0.5重量%~約14重量%の範囲内の過酢酸を含有する。
【0036】
組成物中の個々の成分は、望ましくない微生物を排除し、歯科用補綴物の品質を維持する効果を確保するために調節される。いくつかの実施形態では、過酸化水素は、すべて重量基準で、約5%~約25%、約7%~約20%、約7%~約18%、又は約7%~約12%の範囲内である。
【0037】
カルボン酸は、C2~10のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、α-ケトカルボン酸、β-ケトカルボン酸、又はこれらの混合物であってよい。カルボン酸の限定されない例としては、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、1又は複数のカルボン酸は、個々に又は合計で、すべて組成物中の重量基準で約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約7%~約18%、又は約10%~30%の範囲内である。
【0039】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量の約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約4%~約20%、又は約7%~約19%の範囲内の酢酸を含有する。いくつかの実施形態では、組成物はさらに、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらのいずれかの混合物から選択される1又は複数のさらなる酸を含有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、1又は複数のさらなる酸は、存在する場合、個別に及び独立して、約0.001重量%~約0.2重量%、約0.001重量%~約0.15重量%、約0.002重量%~約0.15重量%、約0.02重量%~約0.15重量%、約0.02重量%~約0.10重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.06重量%~約0.08重量%、約0.07重量%~約0.08重量%、約0.002重量%~約0.02重量%、約0.003重量%~約0.015重量%、約0.004重量%~約0.015重量%、約0.010重量%~約0.02重量%、約0.010重量%~約0.015重量%、約0.010重量%~約0.013重量%、約0.011重量%~約0.013重量%、約0.003重量%~約0.02重量%、約0.003重量%~約0.01重量%、約0.003重量%~約0.008重量%、又は約0.004重量%~約0.006重量%の範囲内である。
【0041】
過酸の量は、カルボン酸と組み合わせて望ましい効果を実現するために適切な範囲に調節される。いくつかの実施形態では、過酸は、すべて組成物の重量基準で約0.1%~約20%、約0.25%~約14%、約0.5%~約12%、約0.75%~約10%、又は約1%~約10%の範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態では、過酸は、カルボン酸のうちの1つと同じ数の炭素を有する。いくつかの実施形態では、過酸は、過酢酸である。いくつかの実施形態では、組成物は、酢酸及び過酢酸を含む。
【0043】
組成物はまた、C1~5アルキルヒドロペルオキシドも含有し、それは例えば、メチルヒドロペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、プロピルヒドロペルオキシド、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよい。C1~5アルキルヒドロペルオキシドは、約1.25重量ppm~約5重量%、約0.05重量%~約5重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.2重量%~約2重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.3重量%~約1重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、約0.3重量%~約0.6重量%、又は約0.4重量%~約0.6重量%の範囲内である。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物はまた、約0.05重量%~約2重量%の範囲内のジェミナルジヒドロペルオキシ置換C3~10カルボン酸も含む。ジェミナルジヒドロペルオキシ置換C3~10カルボン酸の限定されない例としては、3,3-ビス(ヒドロペルオキシブタン酸、及び3,3-ビス(ヒドロペルオキシ)ペンタン酸が挙げられる。酸のさらなる例示的な範囲としては、約0.05重量%~約1重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約0.8重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物はまた、ジェミナルジヒドロペルオキシ置換C3~10アルキルも含む。ジェミナルジヒドロペルオキシ置換C3~10アルキルの限定されない例としては、2,2-ビス(ヒドロペルオキシ)プロパン、2,2-ビス(ヒドロペルオキシ)ブタン、及び2,2-ビス(ヒドロペルオキシ)ペンタンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ジェミナルジヒドロペルオキシ置換C3~10アルキルは、約0.005重量%~約0.2重量%、約0.005重量%~約0.1重量%、約0.01重量%~約0.2重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.01重量%~約0.05重量%、約0.01重量%~約0.03重量%、又は約0.02重量%~約0.03重量%の範囲内である。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、安定剤を含む。適切ないかなる安定剤が用いられてもよく、例えば、エチドロン酸、ジピコリン酸、又はジピコリン酸Nオキシドなどの酸である。安定剤は、約0.003重量%~約0.05重量%、約0.003重量%~約0.03重量%、約0.005重量%~約0.05重量%、約0.008重量%~約0.05重量%、約0.008重量%~約0.02重量%、約0.008重量%~約0.01重量%、又は約0.008重量%~約0.015重量%の範囲内の量で存在してよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、歯科用補綴物に損傷を引き起こすことなく、組成物の洗浄能力に寄与することができる研磨助剤を含む。適切ないかなる研磨助剤が用いられてもよく、例えば、炭酸カルシウム、シリカゲル、沈降シリカ、シリケート、アルミナ、ホスフェート、リン酸塩、水和酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、又はこれらの組み合わせなどである。具体例としては、オルソリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、水和アルミナ、ベータピロリン酸カルシウム、及び樹脂系研磨剤が挙げられる。
【0047】
本文書の別の態様は、歯科用補綴物の洗浄方法を含む。方法は、スラッジ、バイオフィルム、細菌、汚れ、及び他の汚染物を歯科用補綴物から除去又は破壊するために有効である。方法は、一般に、洗浄組成物を歯科用補綴物と接触させることを含む。溶液として用いられる場合、組成物の過酸濃度は、除去されるべき病原体又は汚染物に応じて調節することができる。水で希釈された溶液の典型的な過酸濃度は、約50~約25000ppmの範囲内である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約100ppm~約23000ppmである。
【0048】
1つの実施形態によると、過酸濃度は、約6500ppm~約23000ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約6500ppm~約11500ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約13000ppm~約22000ppmである。
【0049】
1つの実施形態によると、過酸濃度は、約1500ppm~約15000ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約2500ppm~約10000ppmである。別の実施形態によると、過酸濃度は、約3000~約8000ppmである。
【0050】
1つの実施形態によると、過酸濃度は、約50ppm~約3000ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約70ppm~約2500ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約90ppm~約1500ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約100ppm~約1000ppmである。
【0051】
1つの実施形態によると、過酸濃度は、5000ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、2500ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、1000ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、750ppm未満である。
【0052】
組成物は、希釈組成物の過酸濃度が500ppm未満となるように高度に希釈されていてもよい。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約100ppm~約500ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約100ppm~約300ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約125ppm~約400ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約150ppm~約300ppmである。1つの実施形態によると、過酸濃度は、約150ppm~約350ppmである。
【0053】
1つの実施形態によると、過酸濃度は、500ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、250ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸濃度は、100ppm未満である。
【0054】
1つの実施形態では、高度に希釈された組成物は、約5000ppm~約20000ppmの過酸化水素を含有していてよい。1つの実施形態によると、高度に希釈された組成物は、約5000ppm~約20000ppmのカルボン酸を含有していてよい。
【0055】
1つの実施形態では、希釈された洗浄組成物は、約5000ppm~約20000ppmの範囲内の量の過酸化水素、約5000ppm~約20000ppmの範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100ppm~約300ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有していてよい。
【0056】
別の実施形態では、水性洗浄組成物は、約125ppm~約625ppmの範囲内の量の過酸化水素、約150ppm~約750ppmの範囲内の量の1又は複数のカルボン酸、及び約100ppm~約500ppmの範囲内の量の1又は複数の過酸を含有する。
【0057】
1つの実施形態では、希釈組成物中のカルボン酸の濃度は、20000ppm未満であってよい。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、15000ppm未満であってよい。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、1000ppm未満であってよい。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、約5000ppm~約20000ppmである。
【0058】
1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、約250ppm~約750ppmである。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、約300ppm~約650ppmである。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、約350ppm~約600ppmである。
【0059】
1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、約300ppm~約550ppmである。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、750ppm未満である。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、650ppm未満である。1つの実施形態によると、カルボン酸濃度は、500ppm未満である。
【0060】
1つの実施形態では、過酸化水素の濃度は、700ppm未満であってよい。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、約125ppm~約625ppmである。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、約135ppm~約550ppmである。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、約145ppm~約450ppmである。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、約150ppm~約350ppmである。
【0061】
1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、625ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、550ppm未満である。1つの実施形態によると、過酸化水素濃度は、400ppm未満である。
【0062】
希釈された組成物は、約5分間未満の微生物殺傷時間を有し得る。
1つの実施形態では、希釈組成物は、C2~10のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、α-ケトカルボン酸、β-ケトカルボン酸、及びこれらの混合物から選択される1又は複数のカルボン酸を含有する。別の実施形態では、希釈組成物はさらに、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、マロン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、シトラマル酸、アセト酢酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びこれらのいずれかの混合物から選択される1又は複数のさらなる酸を含有する。1つの実施形態では、カルボン酸は、約375ppm~約500ppmの量の酢酸を含み得る。
【0063】
1つの実施形態では、組成物中の過酸は、約150ppm~約350ppmの量の過酢酸である。
別の実施形態では、希釈組成物はさらに、約1.25ppm~約125ppmの範囲内の量の1又は複数のC1~5アルキルヒドロペルオキシドを含有する。
【0064】
本発明の別の態様は、歯科用補綴物及び着脱式歯科矯正装置を洗浄するための方法を含み、歯科用補綴物又は着脱式歯科矯正装置を希釈組成物と接触させることを含む。
いくつかの実施形態では、接触時間は、約45分間未満、約30分間未満、約20分間未満、約15分間未満、約10分間未満、約5分間未満、又は約1分間未満である。接触時間は、バイオフィルムの除去及び/又は微生物の殺傷に有効な時間の長さであり得る。接触は、組成物の溶液を歯科用補綴物に噴霧することによって達成されてよく、例えば、溶液を高圧で施すウォーターピックを用いる。別の選択肢として、歯科用補綴物を溶液中に浸漬してもよい。必要に応じて、歯科用補綴物の表面をブラッシングする又はこする工程が追加されてもよい。超音波処理も、洗浄プロセスを促進するために所望に応じて行われてよい工程である。したがって、バイオフィルムを除去することによって、並びに酵母菌、ウィルス、及び細菌などの微生物を殺傷することによって歯科用補綴物を消毒する本明細書で述べる組成物の能力は、例えば歯肉炎、口内炎、及び口唇炎を含む疾患並びに病状に対するユーザーのリスクを有効に低減する。
【0065】
実施例
例1
汚染された義歯を、ウォーターフロッサーを用いて処方Iで識別される本発明の組成物で処理する実験を行った。処方Iは、19.6重量%の過酸化水素、16.8重量%の酢酸、10.3重量%の過酢酸、及び0.3重量%未満の他のカルボン酸を含有する水溶液であった。抽出された微生物はすべて識別され(表1)、4つの義歯に対する平均殺傷率は、15分間の処理後に99.9992パーセントであった(表2A(コントロール)及び表2B(処方Iによる処理)。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
加えて、本発明の組成物による義歯処理を市販の洗浄剤による処理と比較すると、現行の市販洗浄剤の方が、本発明と比較して低い細菌殺傷率であることが明確に実証された(表3と表4)。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
組成物による義歯に対する何らかの有害な影響について調べるために、1つの義歯を半分に切断した。一方の半分を水のコントロールに曝露し、他方の半分を、8000ppmの処方Iの溶液に15分間にわたって32回曝露した。処理後に、2つの半分の間で視認可能な差異は観察されなかった。
【0072】
組成物が義歯のワイン汚れを除去するかどうかを判断するために、脱色実験を開始した。清浄な義歯を半分に切断し、一方の半分をワインで汚した。ワインで汚した半分を、処方Iの溶液に15分間にわたって10回曝露したところ、義歯に明らかな損傷はなく、すべての汚れが除去された。結果を図1及び図2に示す。
【0073】
例2
表5に記載の組成物を用いて病原体を殺傷する時間について実験した。選択された微生物を殺傷する時間を特定し、表6に記録した。
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
上記の記述及び関連する図面に提示される教示内容の利益を有する本明細書で示される開示内容の多くの改変及び他の例は、本開示が属する分野の当業者であれば思い付くであろう。したがって、本開示は、開示される具体例に限定されるべきではないこと、及び改変及び他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれることを意図していることは理解されたい。
【0077】
さらに、上記の記述及び関連する実施形態は、構造的要素及び/又は機能のある特定の組み合わせ例に関する本開示の態様について記載しているが、要素及び/又は機能の異なる組み合わせが、添付の請求項の範囲から逸脱することなく別の選択肢としての実施形態によって提供され得ることは理解されるべきである。これに関して、例えば、明示的に上述されたものと異なる要素及び/又は機能の組み合わせも、添付の請求項のいくつかにおいて示され得るものとして考慮される。本明細書において特定の用語が用いられているが、それらは、一般的な記述的意味で用いられるだけであり、限定の目的で用いられるものではない。
図1
図2
【国際調査報告】