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特表2022-536215角度フィルタ、及び角度フィルタを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】角度フィルタ、及び角度フィルタを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20220805BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220805BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20220805BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220805BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
H01L27/146 D
B32B37/14 Z
B32B7/023
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021502934
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(85)【翻訳文提出日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2019069454
(87)【国際公開番号】W WO2020016392
(87)【国際公開日】2020-01-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513257535
【氏名又は名称】イソルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】プシュカ,アガーテ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,ウィルフリッド
(72)【発明者】
【氏名】ベルデュッチ,ティンダラ
(72)【発明者】
【氏名】ブティノン,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
4M118
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA12
2H042AA20
2H042AA21
4F100AK02
4F100AK25
4F100AK42
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DC11
4F100DC11B
4F100DC11D
4F100EJ33B
4F100EJ52A
4F100EJ52B
4F100GB48
4F100JD06
4F100JD06A
4F100JD06B
4F100JD06D
4F100JD10
4F100JD10A
4F100JD10B
4F100JN01
4F100JN18
4F100JN30A
4F100JN30B
4F100JN30C
4F100YY00B
4F100YY00D
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA02
4M118CA14
4M118CB20
4M118FA06
4M118GB03
4M118GB11
4M118GB13
4M118HA25
(57)【要約】
【解決手段】本明細書は、第1の基本角度フィルタ及び第2の基本角度フィルタの積層体を有する角度フィルタ(22)を備えた光学系(20)を製造する方法に関する。この方法では、第1の基本角度フィルタを通してポジ型レジストの層(40)を露出し、層の露出部分(46)を除去して、層を横切る孔(42)を形成し、孔が横切る層は第2の基本角度フィルタを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基本角度フィルタ(F1)及び第2の基本角度フィルタ(F2)の積層体を有する角度フィルタ(22)を備えた光学系(20)を製造する方法であって、
前記第1の基本角度フィルタ(F1)を通してポジ型レジストの層を露出し、
前記層の露出部分(46)を除去して、前記層を横切る孔(42)を形成し、
前記孔が横切る前記層は前記第2の基本角度フィルタ(F2)を形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光学系は、第1の放射線(6) を受ける表面(26)を有し、
前記層(40)は前記第1の放射線(6) を通さず、
前記角度フィルタ(22)は、前記表面に直交する方向に対する入射角が閾値より大きい前記第1の放射線の光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さい前記第1の放射線の光線を通すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
露出する際、前記第1の基本角度フィルタ(F1)を通して前記層(40)を第2の放射線(44)に露出し、前記ポジ型レジストは前記第2の放射線に対して感光性を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の放射線(6) は可視域及び/又は赤外域の放射線であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の基本角度フィルタ(F1)及び前記第2の基本角度フィルタ(F2)は、孔(32, 42)が横切る層(30, 40)を夫々有していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
第1の基本角度フィルタ(F1)及び第2の基本角度フィルタ(F2)の積層体を有する角度フィルタ(22)を備えており、
前記第2の基本角度フィルタ(F2)は、ポジ型レジストの層(40)及び前記層を横切る孔(42)を有していることを特徴とする光学系(20)。
【請求項7】
第1の放射線(6) を受ける表面(26)を有しており、
前記層(40)は前記第1の放射線(6) を通さず、
前記角度フィルタ(22)は、前記表面に直交する方向に対する入射角が閾値より大きい前記第1の放射線の光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さい前記第1の放射線の光線を通すように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の光学系。
【請求項8】
前記ポジ型レジストは、第2の放射線(44)に対して感光性を有することを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第1の基本角度フィルタ(F1)及び前記第2の基本角度フィルタ(F2)の間に配置されて、前記第1の放射線(6) を少なくとも部分的に通す追加の層(35)を更に備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光学系。
【請求項10】
前記表面(26)に垂直に測定された前記第1の基本角度フィルタ(F1)、前記追加の層(35)及び前記第2の基本角度フィルタ(F2)の厚さの合計対前記表面と平行に測定された前記孔の幅(w) の比が、前記孔(42)毎に1より大きく、好ましくは1~10の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の光学系。
【請求項11】
前記孔(42)は行及び列に配置されており、同一の行又は同一の列の隣り合う孔間のピッチ(p) が1μm~100 μmの範囲内であることを特徴とする請求項7~10のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項12】
前記表面(26)に直交する方向に沿って測定された各孔(42)の高さ(h1)が、1μm~50μmの範囲内であることを特徴とする請求項7~11のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項13】
前記表面(26)と平行に測定された各孔(42)の幅(w) が、1μm~100 μmの範囲内であることを特徴とする請求項7~12のいずれか1つに記載の光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、角度フィルタ、及び角度フィルタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像取得システムは一般に画像センサ及び光学系を備えており、光学系は、画像センサの高感度部分と撮像対象との間に配置されており、撮像対象の鮮明な画像を画像センサの高感度部分に形成することができる。光学系は、特に複数のレベルのレンズを有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ある場合には、このような光学系を画像センサの高感度部分と撮像対象との間に配置することができない。画像センサが1平方センチメートルより大きい有効表面積を占め、撮像対象と画像センサの高感度部分との距離が1センチメートルより小さい場合、この問題が特に当てはまる。
【0004】
画像センサの高感度部分に形成される画像が十分鮮明であるように、撮像対象を画像センサに最も近い場所に置く必要がある。しかしながら、撮像対象と画像センサとの間に距離がある場合があるため、画像センサの高感度部分に形成される画像の鮮明さが、ある用途、例えば指紋の取り込みには不十分な場合がある。
【0005】
複雑な光学系がない状態で画像取得システムの画像センサによって取得される画像の鮮明さを高めるために、一可能性として、孔が横切る不透明な膜によって形成された角度フィルタを備えた単純な構造の光学系で画像センサを覆うことがある。しかしながら、ある用途では、適切な角度フィルタを得るために、角度フィルタの開口部のアスペクト比、すなわち膜の厚さ対各開口部の横寸法の比が1より大きいべきである。
【0006】
工業規模で使用される場合がある着色材料、例えば着色樹脂を直接成形する方法でこのようなアスペクト比を実現するのは困難である。
【0007】
実施形態の目的は、角度フィルタ及び角度フィルタの前述した製造方法の不利点の少なくとも一部を完全に又は部分的に克服することである。
【0008】
実施形態の目的は、複数の開口部の深さ対各開口部の横寸法の比が1より大きいことを可能にする複数の開口部を備えた角度フィルタを製造する方法を提供することである。
【0009】
実施形態の別の目的は、角度フィルタの製造方法を工業規模で実施可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、実施形態は、第1の基本角度フィルタ及び第2の基本角度フィルタの積層体を有する角度フィルタを備えた光学系を製造する方法であって、前記第1の基本角度フィルタを通してポジ型レジストの層を露出し、前記層の露出部分を除去して、前記層を横切る孔を形成し、前記孔が横切る前記層は前記第2の基本角度フィルタを形成することを特徴とする方法を提供する。
【0011】
実施形態によれば、前記光学系は、第1の放射線を受ける表面を有し、前記層は前記第1の放射線を通さず、前記角度フィルタは、前記表面に直交する方向に対する入射角が閾値より大きい前記第1の放射線の光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さい前記第1の放射線の光線を通すように構成される。
【0012】
実施形態によれば、露出する際、前記第1の基本角度フィルタを通して前記層を第2の放射線に露出し、前記ポジ型レジストは前記第2の放射線に対して感光性を有する。
【0013】
実施形態によれば、前記第1の放射線は可視域及び/又は赤外域の放射線である。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の基本角度フィルタ及び前記第2の基本角度フィルタは、孔が横切る層を夫々有している。
【0015】
実施形態は、第1の基本角度フィルタ及び第2の基本角度フィルタの積層体を有する角度フィルタを備えており、前記第2の基本角度フィルタは、ポジ型レジストの層及び前記層を横切る孔を有していることを特徴とする光学系を更に提供する。
【0016】
実施形態によれば、前記光学系は、第1の放射線を受ける表面を有しており、前記層は前記第1の放射線を通さず、前記角度フィルタは、前記表面に直交する方向に対する入射角が閾値より大きい前記第1の放射線の光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さい前記第1の放射線の光線を通すように構成されている。
【0017】
実施形態によれば、前記ポジ型レジストは、前記第2の放射線に対して感光性を有する。
【0018】
実施形態によれば、前記光学系は、前記第1の基本角度フィルタ及び前記第2の基本角度フィルタの間に配置されて、前記第1の放射線を少なくとも部分的に通す追加の層を更に備えている。
【0019】
実施形態によれば、前記表面に垂直に測定された前記第1の基本角度フィルタ、前記追加の層及び前記第2の基本角度フィルタの厚さの合計対前記表面と平行に測定された前記孔の幅の比が、前記孔毎に1より大きく、好ましくは1~10の範囲内である。
【0020】
実施形態によれば、前記孔は行及び列に配置されており、同一の行又は同一の列の隣り合う孔間のピッチが1μm~100 μmの範囲内である。
【0021】
実施形態によれば、前記表面に直交する方向に沿って測定された各孔の高さが、1μm~50μmの範囲内である。
【0022】
実施形態によれば、前記表面と平行に測定された各孔の幅が、1μm~100 μmの範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0024】
図1】角度フィルタを備えた画像取得システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図2図1に示されている角度フィルタを示す断面図である。
図3図1及び図2に示されている角度フィルタを製造する方法の実施形態の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図4図1及び図2に示されている角度フィルタを製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図5図1及び図2に示されている角度フィルタを製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図6図1及び図2に示されている角度フィルタを製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図7図1及び図2に示されている角度フィルタを製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態に共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有してもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよい。
【0026】
明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、画像センサの構造は当業者に広く知られており、以下に詳細に記載されない。
【0027】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を表す用語、又は「水平方向」、「垂直方向」などの方向を表す用語を参照するとき、特に指定されていない場合、この用語は図面の向き又は通常の使用位置での光学系を指す。
【0028】
「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。
【0029】
以下の記載では、層又は膜を通る放射線の透過率が10%未満であるとき、その層又は膜は放射線を通さないとする。以下の記載では、層又は膜を通る放射線の透過率が10%を超えるとき、その層又は膜は放射線を通すとする。
【0030】
図1及び図2は、放射線6 を受ける画像取得システム5 の実施形態を垂直断面に沿って示す部分的な断面略図である。画像取得システム5 は、図1の下から上に、
- 上面15を有する画像センサ10と、
- 上面15を覆う光学系20と
を備えている。
【0031】
画像センサ10は、支持体12と、支持体12及び光学系20間に配置された、光検出器とも称される光子センサ14のアレイとを有している。光検出器14は、不図示の透明な保護被覆体で覆われてもよい。画像センサ10は、導電性トラックと、光検出器14の選択を可能にする不図示のスイッチング素子、特にトランジスタとを更に有している。光検出器14は有機材料で形成されてもよい。光検出器14は、有機フォトダイオード(OPD) 又は有機フォトレジスタに相当してもよい。光学系20に対向して光検出器14を含む画像センサ10の表面積は1cm2より大きく、好ましくは5cm2より大きく、より好ましくは10cm2より大きく、特には20cm2より大きい。画像センサ10の上面15は実質的に平面であってもよい。
【0032】
実施形態によれば、各光検出器14は、400 nm~1,100 nmの波長領域の電磁放射線を検出することができる。全ての光検出器14は、同一の波長領域の電磁放射線を検出可能であってもよい。変形例として、光検出器14は、異なる波長領域の電磁放射線を検出可能であってもよい。
【0033】
光学系20は、図1の下から上に、
- 角度フィルタ22と、
- 角度フィルタ22を覆って上面26を有する被覆体24と
を有している。
【0034】
画像取得システム5 は、例えばマイクロプロセッサを有する、画像センサ10によって出力される信号を処理するための手段(不図示)を更に備えている。
【0035】
特に各光検出器14が、45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは20°未満、更により好ましくは10°未満の最大入射角より小さい、上面26に垂直な軸芯に対する入射角を有する光線のみを受けるように、画像センサ10を覆う角度フィルタ22は、上面26に対する入射放射線の入射角に応じて入射放射線をフィルタ処理することができる。角度フィルタ22は、上面26に垂直な軸芯に対する入射角が最大入射角より大きい入射放射線の光線を遮断することができる。
【0036】
本実施形態では、角度フィルタ22は、中間層35によって分離された2つの不透明層30, 40を有している。孔32が不透明層30を横切っており、孔42が不透明層40を横切っている。図2の断面は、角度フィルタ22の不透明層40のレベルの断面である。不透明層30, 40は夫々、光検出器14によって検出される放射線を通さず、例えば光検出器14によって検出される放射線を吸収及び/又は反射する。実施形態によれば、不透明層30, 40は、可視域及び/又は近赤外域及び/又は赤外域の放射線を夫々吸収する。以下、不透明層30の厚さを「h1」と称し、不透明層40の厚さを「h2」と称し、中間層35の厚さを「H」と称する。不透明層30の厚さ「h1」及び不透明層40の厚さ「h2」は同一であってもよく、異なってもよい。
【0037】
実施形態によれば、孔32の数は孔42の数と等しい。各孔32は孔42の内の1つと関連付けられている。実施形態によれば、各孔32は、好ましくは上面26に垂直な所与の方向に沿って孔42の内の1つと整列している。図2には、孔42が円形の断面で示されている。一般に、孔32, 42の平面視での断面は、円形、楕円形又は多角形、例えば三角形、正方形若しくは矩形であってもよい。実施形態によれば、各孔32の断面は、各孔32が整列する孔42の断面と同一である。更に図1では、孔32, 42は不透明層30, 40の厚さ全体に亘って一定の断面で示されている。しかしながら、各孔32, 42が不透明層30, 40の厚さに亘って異なる断面を有してもよい。
【0038】
実施形態によれば、孔32は行及び列に配置されており、孔42は行及び列に配置されている。孔32の大きさは実質的に同一であってもよく、孔42の大きさは実質的に同一であってもよい。行方向又は列方向に沿って測定される孔32又は孔42の幅を「w」と称する。孔の断面が円形である場合、幅wは孔32, 42の直径に相当する。実施形態によれば、孔32, 42は行及び列に沿って規則的に配置されている。孔32又は孔42のピッチ、つまり、行又は列の2つの連続する孔32又は孔42の中心間の平面視での距離を「p」と称する。全ての孔32又は孔42の幅wは同一であってもよい。変形例として、孔32及び孔42の幅wは異なってもよい。実施形態によれば、孔32の幅wは孔42の幅と実質的に等しい。実施形態によれば、孔32のピッチpは孔42のピッチpと実質的に等しい。
【0039】
孔32を有する不透明層30は第1の基本角度フィルタF1を形成しており、孔42を有する不透明層40は第2の基本角度フィルタF2を形成している。第1の基本角度フィルタF1の孔32のアスペクト比はh1/wであり、第2の基本角度フィルタF2の孔42のアスペクト比はh2/wである。中間層35を第1の基本角度フィルタF1及び第2の基本角度フィルタF2間に配置して第1の基本角度フィルタF1及び第2の基本角度フィルタF2を積層することにより得られた構造は、孔のアスペクト比が(h1+h2+H)/wである一般的な角度フィルタ22の均等物である。従って、角度フィルタ22は、上面26に対する入射角が、以下の関係式(1)によって定められる最大入射角αより小さい入射放射線の光線のみを通す。
tanα=w(h1+h2+H) (1)
【0040】
実施形態によれば、光検出器14は行及び列に分散してもよい。実施形態によれば、孔42のピッチpは、画像センサ10の光検出器14のピッチより小さい。この場合、複数の孔42が同一の光検出器14に対向して配置されてもよい。実施形態によれば、孔42のピッチpは、画像センサ10の光検出器14のピッチと同一である。そのため、各孔42が光検出器14に対向するように、角度フィルタ22は画像センサ10と整列していることが好ましい。実施形態によれば、孔42のピッチpは、画像センサ10の光検出器14のピッチより大きい。この場合、複数の光検出器14が同一の孔42に対向して配置されてもよい。
【0041】
(h1+h2+H)/wの比は1~10の範囲内であってもよく、10より大きくてもよい。ピッチpは1μm~100 μmの範囲内であってもよく、例えば約15μmであってもよい。h1+H+h2の高さは1μm~1mmの範囲内であってもよく、好ましくは10μm~100 μmの範囲内であってもよい。高さh1又は高さh2は1μm~50μmの範囲内であってもよい。高さHは1μm~100 μmの範囲内であってもよい。幅wは1μm~100 μmの範囲内であってもよく、例えば約10μmであってもよい。
【0042】
実施形態によれば、不透明層30, 40全体が、角度的にフィルタ処理される波長を少なくとも吸収する材料で夫々形成されている。実施形態によれば、不透明層30, 40の内の少なくとも1つはポジ型レジストで形成されており、すなわち、放射線に露出するレジスト層の部分が現像剤に可溶性になり、放射線に露出しないレジスト層の部分が現像剤に不溶性のままであるレジストで形成されている。不透明層30, 40の内の少なくとも1つは、着色樹脂、例えば着色又は黒色のDNQ-Novolack樹脂又はDUV (深紫外)レジストで形成されてもよい。DNQ-Novolack樹脂は、ジアゾナフトキノン(DNQ )及びノボラック樹脂(フェノールホルムアルデヒド樹脂)の混合物に基づいている。DUV レジストは、ポリヒドロキシスチレンに基づくポリマーを含んでもよい。更に、一例によれば、不透明層30, 40は、可視域又は可視域の一部及び近赤外域の放射線を吸収する黒色樹脂で夫々形成されてもよい。別の例によれば、画像センサ10が所与の色の光のみを感知可能である場合、又は画像センサ10が可視光を感知可能であり、所与の色のフィルタが角度フィルタ22と検出対象との間に配置されている場合、不透明層30, 40は更に、所与の色の可視光、例えば青色の光を吸収する着色樹脂で夫々形成されてもよい。
【0043】
孔32又は孔42に空気が充填されてもよく、又は光検出器14によって検出される放射線を少なくとも部分的に通す材料、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)が充填されてもよい。変形例として、角度フィルタ22によって角度的にフィルタ処理される光線を色彩的にフィルタ処理するために、部分的に吸収する材料が孔32又は孔42に充填されてもよい。そのため、角度フィルタ22は色フィルタの機能を更に果たしてもよい。このため、角度フィルタ22とは異なる色フィルタが設けられる場合に対して画像取得システム5 の厚さを減少させることが可能になる。部分的に吸収する充填材料は、PDMSのような着色樹脂又は着色されたプラスチック材料であってもよい。
【0044】
孔32の充填材料は、屈折率を角度フィルタ22と接する被覆体24と適合させるため、又は構造を堅くして角度フィルタ22の機械抵抗を高めるために選択されてもよい。
【0045】
別の実施形態によれば、第1の基本角度フィルタF1に関して、不透明層30は、光検出器14によって検出される放射線を少なくとも部分的に通す第1の材料で形成されているコアであって、光検出器14によって検出される放射線を通さない、例えば光検出器14によって検出される放射線を吸収及び/又は反射する被覆体で覆われたコアを有している。第1の材料は樹脂であってもよい。第2の材料は、金属、例えばアルミニウム(Al)若しくはクロム(Cr)、金属合金又は有機材料であってもよい。
【0046】
中間層35は、光検出器14によって取り込まれる放射線を少なくとも部分的に通す。中間層35は、透明なポリマーで形成されてもよく、特にポリ(エチレンテレフタレート)PET 、ポリ(メチルメタクリレート)PMMA、シクロオレフィンポリマー(COP) で形成されてもよい。中間層35は更に、可視スペクトル及び/又は赤外スペクトルの一部をフィルタ処理するために着色材料で形成されてもよい。
【0047】
被覆体24は、光検出器14によって取り込まれる放射線を少なくとも部分的に通す。被覆体24は、樹脂、表面を堅くするための硬質被覆体、又は角度フィルタ22を上層に組み立てることを可能にする光学透明接着剤(OCA) であってもよい。被覆体24の厚さは0.1 μm~10mmの範囲内であってもよい。上面26は実質的に平面であってもよい。
【0048】
実施形態によれば、画像取得システム5 は、角度フィルタ22を覆って、例えば角度フィルタ22と被覆体24との間に配置されているマイクロレンズのアレイを更に備えてもよい。
【0049】
図3~7は、図1及び図2に示されている光学系20を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0050】
図3は、第1の基本角度フィルタF1を中間層35上に形成した後に得られた構造を示す。変形例として、第1の基本角度フィルタF1は中間層35とは異なる支持体上に形成され、次に中間層35上に移されてもよい。
【0051】
不透明層30全体が不透明な材料で形成される場合の第1の基本角度フィルタF1を製造する方法の実施形態は、
- 厚さh1の不透明な樹脂層30を中間層35上に堆積させる工程、
- フォトリソグラフィにより樹脂層30に孔32のパターンを印刷する工程、及び
- 樹脂層を現像して孔32を形成する工程
を有する。
【0052】
不透明層30全体が不透明な材料で形成される場合の第1の基本角度フィルタF1を製造する方法の別の実施形態は、
- 孔32の所望の形状に相補的な形状を有する型を、フォトリソグラフィにより形成する工程、
- 孔32を形成する材料を型に充填する工程、及び
- 得られた構造を型から取り除く工程
を有する。
【0053】
不透明層30全体が不透明な材料で形成される場合の第1の基本角度フィルタF1を製造する方法の別の実施形態では、厚さh1の不透明な膜、例えばPDMS膜、PMMA膜、PEC 膜、COP 膜を穿孔する。孔32の所望の大きさ及びピッチを得るために、例えば微小針を有する微小穿孔ツールを使用して穿孔を行ってもよい。
【0054】
第1の基本角度フィルタF1が、光検出器14によって検出される放射線を少なくとも部分的に通す第1の材料で形成されているコアであって、光検出器14によって検出される放射線を通さない被覆体で覆われたコアを有する場合、第1の基本角度フィルタF1を製造する方法の実施形態は、
- 不透明層30のコアを形成する透明な樹脂層を中間層35上に、例えばスピンコーティング又はスロットダイコーティングによって堆積させる工程、
- 樹脂のコアに孔32のパターンをフォトリソグラフィにより印刷する工程、
- 樹脂のコアを現像して孔32を形成する工程、及び
- 特には透明な樹脂のコア及び特に孔32の側壁上にのみ第2の材料を選択的に堆積させる、例えば蒸着させることにより、又は透明な樹脂のコア及び孔32の底部の中間層35上に第2の材料の層を堆積させて、中間層35上にある第2の材料を除去することにより、透明な樹脂のコア上に被覆体を形成する工程
を有する。
【0055】
図4は、被覆体24を第1の基本角度フィルタF1上に形成した後に得られた構造を示す。実施形態によれば、被覆体24を形成する際に、第1の基本角度フィルタF1上に膜を積層してもよい。この場合、孔32に充填材料を予め充填してもよい。変形例として、被覆体24を形成する材料の液体層又は粘性層を第1の基本角度フィルタF1上に堆積させることにより、被覆体24を形成してもよい。このようにして、液体層は孔32を充填する。この層は、好ましくは自己平坦化する。すなわち、この層は実質的に平面の自由表面を自動的に形成する。その後、液体層を硬化させて被覆体24を形成する。これは、被覆体24を形成する材料を架橋結合する工程を有してもよい。
【0056】
図5は、第1の基本角度フィルタF1と反対側に不透明層40を中間層35上に形成した後に得られた構造を示す。不透明層40を液相成長法、カソードスパッタリング法又は蒸着法によって堆積させてもよい。スピンコーティング、スプレーコーティング、写真製版、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、フレキソ印刷又はシルクスクリーンのような方法を特に使用してもよい。実施される堆積法に応じて、堆積材料を乾燥させる工程を有してもよい。
【0057】
図6は、第1の基本角度フィルタF1を横切る放射線44に、孔42の所望の位置で不透明層40の一部46を露出する工程中に得られた構造を示す。不透明層40を露出するために使用される放射線は、使用されるレジストに応じて決められる。例として、放射線44は、DNQ-Novolack樹脂の場合には略300 nm~450 nmの範囲内の波長を有する放射線であり、DUV レジストでは紫外線である。不透明層40を放射線44に露出する継続時間は、特に使用されるポジ型レジストのタイプに応じて決められ、不透明層40の露出部分46が不透明層40の厚さ全体を横切って延びるのに十分である。
【0058】
不透明層40の露出を、第1の基本角度フィルタF1を通して行う。実施形態によれば、第1の基本角度フィルタF1に達する入射放射線44は、実質的に平行にされた放射線である。上面26に対する放射線44の傾斜が、画像取得システム5 の通常使用中に光検出器14によって取り込まれる放射線6 と上面26とによって形成される平均傾斜に実質的に相当することが好ましい。別の実施形態によれば、上面26を放射線44に露出する条件は、上面26全体に亘って非均一であってもよい放射線44の傾きで、通常の使用で放射線6 によって上面26に照射する条件に実質的に相当する。この場合、露出部分46は、互いに対する大きさに関して異なってもよく、各露出部分46と関連する孔32との相対位置は孔32毎に異なってもよい。
【0059】
図7は、入射放射線44に露出した不透明層40の部分46を現像剤に溶解させて孔42を形成する、不透明層40の現像工程中に得られた構造を示す。このようにして、第2の基本角度フィルタF2が得られる。現像剤の組成は、使用されたポジ型レジストの性質に応じて決められる。
【0060】
この方法は、孔42を充填材料で充填し、このようにして得られた光学系20 を画像センサ10に接合する工程を含むその後の工程を有してもよい。
【0061】
孔42に対する孔32の位置合わせを、孔42を形成する方法自体によって自動的に行うことが有利である。
【0062】
様々な実施形態及び変形例が述べられている。当業者は、これらの実施形態のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に容易に想起される。
【0063】
最後に、本明細書に記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上記に与えられる機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0064】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第18/56709 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】