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特表2022-536224セラミック歯科補綴部品を製造するための方法、CAD/CAM機械加工ステーション、コンピュータプログラム、及び最終強度の歯科用セラミックで作製されたブランク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】セラミック歯科補綴部品を製造するための方法、CAD/CAM機械加工ステーション、コンピュータプログラム、及び最終強度の歯科用セラミックで作製されたブランク
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20220805BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
A61C13/083
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526495
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 US2019061939
(87)【国際公開番号】W WO2020102794
(87)【国際公開日】2020-05-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ハンス-クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】セイバート,ヘルムット
(72)【発明者】
【氏名】ハッセンザール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】モルゲンロート,マチアス
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159GG04
4C159GG07
(57)【要約】
本発明は、CAD/CAM機械加工ステーションによってセラミック歯科補綴部品を製造するための方法であって、最終強度を有する円盤形のセラミックブランクを提供するステップと、ブランクをCAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置内に取り付けるステップと、研削ツールの縦軸(13)を中心とした回転により研削ツールとブランクの接触面(21)全体で相対運動が生じるようにブランクと研削ツールとの最初の接触を確立するべく、CAD/CAM機械加工ステーションを制御するステップと、セラミック歯科補綴部品を製造するべく、最初の接触から進んで回転研削ツールによりブランクを機械加工するステップと、を含む方法に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAD/CAM機械加工ステーション(2)によってセラミック歯科補綴部品を製造するための方法であって、
円盤形のセラミックブランク(7)を提供するステップと、
前記ブランクを前記CAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置(6)内に前記ブランクの周縁が囲まれるように取り付けるステップと、
研削ツールの縦軸(13)を中心とした回転により前記研削ツールと前記ブランクの接触面(21)全体で相対運動が生じるように前記ブランクと前記研削ツールとの最初の接触を確立するべく、前記CAD/CAM機械加工ステーションを制御するステップと、
セラミック歯科補綴部品を製造するべく、前記最初の接触から進んで回転する前記研削ツールにより前記ブランクを機械加工するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ブランクが最終強度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マウント装置が、前記ブランクに向かって開口している少なくとも1つの凹部(24)を有し、前記研削ツールが、前記研削ツールを前記ブランクに送るべく前記凹部に導入され、前記最初の接触のために前記凹部の開口を通して前記ブランクに移動される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブランクが、前記ブランクに向かって開口している少なくとも1つの凹部を有するアダプタによって前記マウント装置に取り付けられ、前記研削ツールが、前記研削ツールを前記ブランクに送るべく前記凹部に導入され、前記最初の接触のために前記凹部の開口を通して前記ブランクに移動される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブランクが、前記セラミックブランクよりも軟質の材料で作製された、特に木材又はプラスチック材料で作製されたアダプタによって前記マウント装置に取り付けられ、前記研削ツールが前記アダプタに導入され、前記研削ツールが、前記ブランクとの前記最初の接触のために前記アダプタを通して前記ブランクに移動される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブランクが、前記ブランクの厚さ全体にわたって延びる少なくとも1つの凹部(28)を有し、前記研削ツールが、前記研削ツールを前記ブランクに送るべく前記凹部に導入され、次いで、前記最初の接触のために前記ブランクに移動される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブランクが、前記ブランクの両方の側部に少なくとも1つの凹部(24.1、24.2)を有し、前記凹部の深さが合計すると少なくとも前記ブランクの厚さに対応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記研削ツールと前記ブランクの前記最初の接触が、前記円盤形のブランクの角度設定の結果として前記研削ツールの回転中心から移動する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記研削ツールを前記円盤形のブランクの高さ方向に移動させることによって通り穴があけられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記円盤形のブランク内で前記研削ツールをジャイロ運動で移動させることによって通り穴があけられる、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記研削ツールが前記ブランクに対してロッキング運動で移動し、前記研削ツールは回転中心を通過するときに前記ブランクに対して上昇する、請求項8、請求項9、又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CAD/CAM機械加工ステーションが、それぞれの歯科補綴部品の最終寸法を指定する、製造する歯科補綴部品のCADファイルを受信し、前記CADファイルで指定された最終寸法に応じて前記ブランクが機械加工される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
円盤形ブランク(7)のためのマウント装置(6)、研削ツール(12)、及び制御ユニット(11)を備えるCAD/CAM機械加工ステーションであって、
前記研削ツールの縦軸(13)を中心とした回転により前記研削ツールと前記ブランクの接触面(21)全体で相対運動が生じるように前記ブランクと前記研削ツールとの接触を確立するべく、前記CAD/CAM機械加工ステーションを制御するステップと、
セラミック歯科補綴部品を製造するべく、最初の接触から進んで回転する前記研削ツールにより前記ブランクを機械加工するステップと、
を実行するように構成される、CAD/CAM機械加工ステーション。
【請求項14】
前記マウント装置が、前記ブランクに向かって開口している少なくとも1つの凹部(24)を有し、前記制御ユニットが、前記研削ツールを、最初の送りのために前記凹部に導入し、前記最初の接触のために前記凹部の開口を通して前記ブランクに移動させるように構成される、請求項13に記載のCAD/CAM機械加工ステーション。
【請求項15】
凹部の位置を記憶するメモリ(15)を備え、前記制御ユニットが前記凹部の位置で前記研削ツールを前記ブランクに入れるように構成される、請求項13又は請求項14に記載のCAD/CAM機械加工ステーション。
【請求項16】
前記マウント装置に対する前記ブランク及び/又は前記凹部の位置を感知するための光学センサ(31)を備え、前記制御ユニットが前記凹部の位置で前記研削ツールを前記ブランクに入れるように構成される、請求項13、請求項14、又は請求項15に記載のCAD/CAM機械加工ステーション。
【請求項17】
前記ブランクを前記マウント装置内に取り付けるためのアダプタを備え、前記アダプタが、前記セラミックブランクよりも軟質の材料で作製され、特に木材又はプラスチック材料で作製され、前記制御ユニットが、前記ブランクと前記研削ツールとの接触を確立するべく前記研削ツールを前記アダプタに入れるように構成される、請求項13~請求項16のいずれか一項に記載のCAD/CAM機械加工ステーション。
【請求項18】
請求項13~請求項17のいずれか一項に記載のCAD/CAM機械加工ステーションと、製造するセラミック歯科補綴部品の最終寸法を指定するCADファイルを生成するためのデバイス(3)とを備える、CAD/CAM機械加工システム。
【請求項19】
請求項13~請求項18のいずれか一項に記載のCAD/CAM機械加工ステーションの制御ユニットによる実行のための実行可能プログラム命令を備えるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる、2018年11月15日に出願されたEP特許出願第18206460.0号の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、CAD/CAM機械加工ステーションによってセラミック歯科補綴部品を製造するための方法、対応するCAD/CAM機械加工ステーション、及びCAD/CAM機械加工ステーションを制御するためのコンピュータプログラム、並びに最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランクに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
焼結されていない形態又は最終的な焼結がまだ行われていない形態で存在する円盤形ブランクが加工される、歯科修復物の製造方法が、WO2004/086999A1から公知である。この既に知られている方法によれば、最終強度のブランクを加工することはできない。
【0004】
対照的に、本発明の目的は、セラミック歯科補綴部品を製造するための改良された方法、及び対応するCAD/CAM機械加工ステーション、コンピュータプログラム、及びブランクをもたらすことである。
【0005】
本発明の根底にある目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の実施形態は、従属請求項で説明される。
【0006】
本明細書での「歯科補綴部品」は、修復歯科医学分野でのクラウン又はブリッジなどのセラミック歯科補綴物を意味すると理解されるものとする。
【0007】
本明細書での「円盤形のセラミックブランク」は、特に、例えば、円筒形、特に円柱形、平円盤形、又は長方形の輪郭、或いは人間の顎に似た輪郭を有することができる、いわゆる円形ブランクを意味すると理解されるものとする(https://www.amanngirrbach.com/index.php?id=23&news=UWC9bNZ4&no_cache=1&L=2参照)。本明細書で理解される「円盤形のセラミックブランク」はまた、円形、長方形、三角形、又は他の多角形、或いは湾曲した又は楕円形の周縁を有し得る、円盤形、プレート形、又はスライス形のセラミックブランクを包含し、これは、プレス嵌め及び/又はフォームフィットにより、その周縁がマウント装置によって解放可能に保持されるように構成される。
【0008】
例えばDE 20 2008 018 342 U1及びEP 2 016 922 B1から公知の「サブブランク84」と呼ばれるブロック形のブランクとは対照的に、本発明に係るこのような円盤形のセラミックブランクは、CAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置によってその周縁が囲まれることを意図されているため、ブランクに取り付けられたホルダ(EP 2 016 922 B1に「支持体86」として示される)を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ブロック形のブランクに比べて、円盤形ブランクの特別な特徴は、機械加工の目的で円盤形ブランクがマウント装置に全周又はほぼ全周を囲まれていることであり、より具体的には、機械加工中に、一般に片側のみを、例えば接着して取り付けられたブロックホルダによって、取り付けられているブロック形のブランクとは対照的である。
【0010】
円盤形ブランクの使用は、メカニカルレバーがそれなりに高いので、例えば接着剤での片側での、ブロックホルダによる取り付けは不利であるというブロック形のブランクの欠点が回避されるため、歯科用ブリッジなどのロングスパンの補綴物に特に有利である。
【0011】
「円盤形のセラミックブランク」の場合、ブロック形のブランクとは対照的に、ブランクの厚さと直径の比は、1:1とは相当異なり、ブランクの厚さと直径の比は、例えば1:10から1:4の間の範囲であり得る。直径は、少なくとも40mmを超える、好ましくは90mmを超える、好ましくは200mm未満、特に95mmから110mmの間である。このようなブランクには、ホルダがない、つまり、接着剤結合などによってブランクにホルダが取り付けられておらず、ブランクは、マウント装置に好ましくは圧力嵌めで及び/又はフォームロック式にその周縁に沿って取り付けられることを意図されている。マウントは、全周に沿って行われてよく、又は周縁に沿った凹部によって間断されてもよい。
【0012】
例えば、直径98.5mm、厚さ12、14、18、又は25mmの標準形態を有する円形ブランクが様々なセラミック材料で市販されている。しかしながら、円形ブランクは、105mmなどの異なる直径を有していてもよい。円形ブランクは、人間の上顎の形状に基づく輪郭などの非円形の形状を有していてもよい。
【0013】
本発明の実施形態によれば、ブランクは、CAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置内にその周縁が囲まれるように取り付けられる。本明細書における「その周縁が囲まれる」とは、特に、包囲がブランクの全周、又は少なくとも1つの凹部を有するブランクの周縁の一部に沿って行われることを意味すると理解されるものとし、少なくとも1つの凹部は、ブランク及び/又はアダプタ及び/又はマウント装置に実装される可能性がある。
【0014】
ブランクは、マウント装置に取り外し可能に囲まれており、包囲は、圧力嵌めで及び/又はフォームロック式に行われ得る。
【0015】
本明細書での「CAD/CAM機械加工ステーション」は、特に、歯科補綴部品を製造するべくブランクを機械加工するためのプログラムで制御されるマシンを意味すると理解されるものとする。
【0016】
「研削ツール」は、特に、ミリングカッターとは対照的に、画定された回転切れ刃を含まないが研磨作業面によって形成される画定されていないブレードを含む、CAD/CAM機械加工ステーション用のツールを意味すると理解されるものとする。例えば、作業面は、特定の粒径を有するダイヤモンドなどの研磨粒子を含んでいてもよく、それにより、画定されていないブレードが形成される。
【0017】
本発明の実施形態は、円盤形のセラミックブランクの周縁がマウント装置に囲まれており、結果的に切削力に対するマウンティングの耐性が増すため、特に有利であり、これは、高い力及びトルクの下で接着が剥がれると機械加工中にホルダから落下する可能性があるブロックの機械加工に比べて有利である。
【0018】
本発明の実施形態は、最終強度のブランクからセラミック歯科補綴部品の直接の製造が可能となるので特に有利である。最新技術とは対照的に、製造する歯科補綴部品の寸法を指定するCADファイルを生成する際に、最終的な焼結に起因して生じる収縮を考慮に入れる必要はなく、CADファイルは、製造する歯科補綴部品の所望の最終寸法を直接示すことができる。
【0019】
歯科補綴部品をブランクから機械加工した後の加工ステップ、すなわち、他の方法で必要とされる最終的な焼結が排除されるという点で、機械加工の複雑さも低減される。これは、実験室での適用といわゆるチェアサイドでの適用との両方に有利である。
【0020】
別の利点は、ミリングの代わりに研削による機械加工を使用することにより、その幾何学的寸法に関して、特に表面粗さが小さいという点で精度が向上した歯科補綴部品の製造が可能となることである。
【0021】
機械加工後の焼結プロセスが排除される結果として、不正確な収縮率などの潜在的な誤差の原因が排除されることは、これに関してさらに有利であり得る。さらに、本発明の実施形態は、これをツールの交換なしに、すなわち研削ツールのみを使用して行うことができるので、特に有利である。
【0022】
本発明の実施形態によれば、研削ツールの縦軸を中心とした回転によるブランクに対する運動が研削ツールとブランクとの間の接触面全体で起こるようにブランクと研削ツールとの最初の接触が確立されることで、最終強度のセラミックブランクの、ミリングではなく研削による機械加工が可能となる。
【0023】
言い換えれば、研削ツールは、最初に研磨作業面とブランクとの接触面が形成されるようにブランクに移動され、研削ツールの回転の中心となる縦軸の位置合わせは、研磨作業面のすべての点が接触面でブランクに対して相対運動を生じるようにブランクに対して選択され、それにより、接触面全体でブランクから材料が除去される。これは、有利なことに、摩耗を低く抑えながら、研削ツールを使用して最終強度のセラミックブランクの機械加工作業を行うことを可能にする。
【0024】
本発明の実施形態によれば、接触面の幾何学的形状は、接触面全体で同じ相対速度が達成されるように選択される。このようにして、特に均一な除去、低いツール摩耗、並びに製造された表面の高い品質及び精度が可能となる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、CAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置は、ブランクに向かって開口している凹部を有する。凹部は、研削ツールを導入するのに十分な大きさの断面を有する軸方向に延びる溝であり得る。溝をできるだけ小さく設計することは、ブランクとマウント装置との接触面及びそれに伴うマウントの安定性が実質的に低下せずに、局所的な表面圧力を低く保つことができるという利点を有する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、研削ツールを対応する複数の場所でブランクに送ることができるように、マウント装置の周縁に沿って複数の凹部を分布させることができる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、研削ツールは、マウント装置の凹部のうちの1つに、より具体的にはマウント装置又はブランクと接触せずに導入される。研削ツールがブランクの厚さ又は凹部の深さに対応する範囲で軸方向に導入された後にのみ、研削ツールがブランクの機械加工を開始するべく最初の接触のために半径方向にブランクに移動される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ブランクは、例えば環状設計を有することができるアダプタによってマウント装置に取り付けられる。この実施形態では、少なくとも1つの凹部は、マウント装置にではなくアダプタに形成される。これは、従来のマウント装置を備えるCAD/CAM機械加工ステーションを本発明に係る方法で用いることができるという利点を有する。
【0029】
一実施形態によれば、アダプタは、金属又はプラスチック材料などの材料で作製され、これにより、ブランクをマウント装置内に十分にしっかりと保持することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、アダプタがブランクの最終強度のセラミックよりも軟質の1つの材料で作製され、結果として研削ツールで摩耗なしに又はほとんど摩耗なしに機械加工することができる場合、アダプタの凹部は不要であり得る。アダプタは、例えばここではプラスチックリングとすることができる。この実施形態では、研削ツールの端面をアダプタ材料へ予め下げることによって、ケーシング側でブランクにアクセスすることができる。ツール交換器を備えるCAD/CAM機械加工ステーションの場合、このケーシング側でのアクセスは、例えばプラスチックミリングカッターなどにより、歯科用セラミックの機械加工を意図されたツール以外の研削ツールで行うこともできる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、研削ツールのケーシング側でのブランクへのアクセスは、ブランクは半径方向に平坦な領域を有し、これはツールがケーシング側で係合するのに十分な凹部を提供するということで実装される。このような凹部は、ブランクの製造中に、例えばセラミックのプレス加工中に、又は後で、例えば表面研削マシンによりブランクのケーシング領域から材料を除去することによって作製することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、ブランクは、最初の接触のために研削ツールを送ることができるように、ブランクの厚さ全体にわたって延びる少なくとも1つの凹部を有する。そしてまた、このような凹部は、ブランクの製造中にプレス加工によって、又は機械加工技術を用いる前処理ステップで実装することができる。
【0033】
凹部を有する前述の実施形態では、ブランクは同様に周縁が囲まれ、この包囲は、各凹部の領域で間断する。これらの周縁に沿った間断の合計は、好ましくは、周縁に沿って間断があるにもかかわらずブランクに導入された応力が過度に変動しないように、周縁の長さよりも実質的に小さい。例えば、これらの間断の合計は、周縁の80%、60%、40%、30%、又は20%未満であり、凹部のうちの少なくとも1つは、接触せずに研削ツールを導入するのに十分に大きい。
【0034】
代替として、少なくとも1つの凹部はまた、研削ツールの直径よりも小さい直径を有することができる。この場合、研削ツールが凹部に導入されるときに機械加工作業が行われ、研削ツールの回転軸は、凹部を通って、好ましくはその中心を通って延びる。このようにして、この場合でも、回転軸(縦軸)は凹部と位置合わせされるので、ブランクと研削ツールとの最初の接触が確立されるときに研削ツールとブランクとの接触面全体でブランクに対する相対運動が生じることが保証される。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、ブランクの製造中に、ブランクは、
-プレスされる、
-静水圧プレスされる、
-熱間静水圧プレスされる、又はヒップされる、
-キャストされる、及び/又は
-事前粉砕、事前ミル、事前旋削、又は事前焼結される。
【0036】
ヒップされた(熱間静水圧プレスされた)ブランクは、特に硬い、したがって、高品質の歯科補綴物を供給するので、特に有利である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、ブランクは、最終強度の歯科用セラミックで作製され、ブランクは、特に長石、特に二ケイ酸リチウムガラスセラミックでできている長石様のガラスセラミック、特に酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムでできている結晶セラミックである。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、研削ツールの縦軸を中心とした回転に基づいて研削ツールとブランクとの接触面全体でブランクに対する相対運動を生じるように構成される制御ユニットを備えるCAD/CAM機械加工ステーションに関する。この最初の接触に続いて、ブランクはさらに、所望のセラミック歯科補綴部品を製造するべく、例えば事前に計算された軌道に沿って、研削ツールによって機械加工される。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、CAD/CAM機械加工ステーションを適宜制御するためのコンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムは、メモリ媒体、例えば、特にデータキャリア上に存在してよく、又はコンピュータプログラムは、例えばインターネットを介してサーバからダウンロードして入手できる状態に保たれ得る。コンピュータプログラムは、例えばいわゆるファームウェア更新を使用してCAD/CAM機械加工ステーション上にインストールすることができる。
【0040】
さらなる概念において、本発明は、最終強度の歯科用セラミックよりも軟質の材料、特に木材又はプラスチック材料で作製されたケーシングをその側面上に有する、最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランク、特に円形ブランクとして知られているものに関する。特に、このような円形ブランクは、対応する標準的なマウント装置にクランプできるように標準的な寸法を有することができる。最初の横方向の接触のために研削ツールをブランクに横方向に送るべく、研削ツールをケーシングへ予め下げることで準備することができる。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランク、特に、ブランクの厚さ全体にわたって延びる凹部を有する円形ディスクに関し、凹部は通り穴とすることができ、又は凹部はブランクの縁に配置される。次いで、研削ツールを、この凹部を通してブランクに送ることができる。
【0042】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】CAD/CAM機械加工ステーションと複数のCADデバイスとを備えるCAD/CAM機械加工システムのブロック図である。
図2】研削ツールが導入された後の、図1に係る実施形態のCAD/CAM機械加工システムを示す図である。
図3】ブランクと研削ツールの最初の接触後の、図1及び図2に係る実施形態のCAD/CAM機械加工システムを示す図である。
図4a】研削ツールを縁側で送る場合の、CAD/CAM機械加工システムのブロック図である。
図4b】ブランクのマウント装置、アダプタ、又はケーシングの可能な幾何学的形状の一実施形態を示す図である。
図4c】ブランクのマウント装置、アダプタ、又はケーシングの可能な幾何学的形状の別の実施形態を示す図である。
図4d】ブランクのマウント装置、アダプタ、又はケーシングの可能な幾何学的形状の別の実施形態を示す図である。
図5a】端面又は横側の最初の接触の概略図である。
図5b】端面又は横側の最初の接触の別の概略図である。
図6】両方の側部にブランクの凹部を有するCAD/CAM機械加工システムの一実施形態のブロック図である。
図7】通り穴又はキャビティを有するブランクの一実施形態の上面図である。
図8】側面又はケーシング側に凹部を有するブランクの一実施形態の上面図である。
図9】偏心通り穴を有するブランクを備えるCAD/CAM機械加工システムのブロック図である。
図10】偏心通り穴及びマーキングを有するブランクの上面図である。
図11】円錐形の研削ツールを含む一実施形態を示す図である。
図12】球形の研削ツールを含む一実施形態を示す図である。
図13】球形の研削ツールを含む別の実施形態を示す図である。
図14】球形の研削ツールを含む別の実施形態を示す図である。
図15】球形の研削ツールを含む別の実施形態を示す図である。
図16】球形の研削ツールを含む別の実施形態を示す図である。
図17】球形の研削ツールを含む別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の実施形態の互いに対応する又は同一の要素は、それぞれ同じ参照番号で示される。
【0045】
図1は、セラミック歯科補綴部品を製造するためのCAD/CAM機械加工ステーション2を備えるCAD/CAM機械加工システム1を示す。CAD/CAM機械加工システム1は、製造する歯科補綴部品のうちの1つ又は複数の最終寸法を指定するCADファイル4.1を生成するための少なくとも1つのCADデバイス3.1を備える。
【0046】
例えば、CADデバイス3.1は、患者から3D測定データを取得するためのスキャナを含む。代替として、3D測定データは、歯科医からデジタル形式で受信することができる。CADデバイス3.1は、製造する歯科補綴部品を指定するCADファイル4.1を生成するべくCADソフトウェアを実行するために用いられる。Dentsply SironaからのinEos X5などの適切なスキャナが市販されている。
【0047】
CADファイル4.1は、インターネットなどの通信ネットワーク5を介して機械加工ステーション2に送信することができる。本質的に同じ設計を有するさらなるCADデバイス3.2、3.3などが、さらなる歯科補綴部品の最終寸法を指定するさらなるCADファイル4.2、4.3などを生成するべく、対応するCADファイルを、通信ネットワーク5を介して機械加工ステーション2に送信することができる。
【0048】
機械加工ステーション2は、ブランク7を機械加工ステーション2内に取り付けるためのマウント装置6を備える。例えば、マウント装置6は、ブランク7の周縁をマウント装置6内にクランプするように設計される。マウント装置6は、ベアリング8、9によってY軸を中心として回転可能に保持される。Y軸を中心とした回転は、制御ユニット11で制御可能なマウント装置6の駆動ユニット10によってもたらされる。Y軸を中心としたマウント装置6の回転位置合わせに加えて、駆動ユニット10は、XY平面内で位置決めを行うように設計することができ、その目的のために、駆動ユニット10を制御ユニット11で適宜制御することができる。
【0049】
機械加工ステーション2は、ここで説明する実施形態ではピン形状を有する研削ツール12を受け入れるためのスピンドルモータ16をさらに備える。スピンドルモータ16は、縦軸13を中心として研削ツール12を回転させるために用いられる。ここで説明する実施形態では、スピンドルモータ16は、さらなる駆動ユニット14によってマウント装置6に対して位置決めすることができ、その目的のために、駆動ユニット14を制御ユニット11で制御することができる。例えば、スピンドルモータ16は、駆動ユニット14で3つのすべての空間方向X、Y、及びZに位置決めすることができる。
【0050】
機械加工ステーション2の制御ユニット11は、CADデバイス3.1、3.2、3.3などから受信したCADファイル4.1、4.2、4.3などを格納するための少なくとも1つの電子メモリ15を備える。
【0051】
制御ユニット11は、例えばプログラムコンポーネント18及び19を含むコンピュータプログラムを実行するための少なくとも1つのマイクロプロセッサ17をさらに備える。
【0052】
プログラムコンポーネント18は、CADファイル4.1、4.2、4.3などから軌道を計算するために用いられ、この軌道に沿って、研削ツール12は、指定された歯科補綴部品を製造するためにブランク7を機械加工する必要がある。
【0053】
プログラムコンポーネント19は、プログラムコンポーネント18によって計算された軌道に従ってブランク7を機械加工するために、駆動ユニット10及び14の、そしてまたスピンドルモータ16の、制御コマンドを生成する。
【0054】
ここで説明する実施形態では、ブランク7は通り穴20を有し、これは研削ツール12を、ブランク7と接触せずに、通り穴20に軸方向に、ここではZ軸に沿って、完全に導入できるように設計される。例えば、通り穴20は、研削ツール12の直径より大直径の、円柱形の形状を有する。他の幾何学的形状も可能である。
【0055】
例えば、通り穴20は、研削ツールが通り穴に導入されるときに研磨研削作用が生じるように、研削ツール12を受け入れるほどには十分な大きさではない形状を有することができる。
【0056】
図2は、コンピュータプログラムによって軌道及び制御コマンドが計算された後の及び研削ツール12がブランク7に送られた後のCAD/CAM機械加工システム1を示し、ここでは、ブランク7と研削ツール12は、駆動ユニット10及び/又は14によって、研削ツール12が通り穴12に接触せずに完全に導入された状態に、相対的な位置が変化している。縦軸13を中心として研削ツール12を回転させるためにスピンドルモータ16が既にオンに切り換えられているかどうかは無関係である。
【0057】
図3は、図2に示されているブランク7と研削ツール12の相対的な位置から開始して、より具体的にはブランク7と研削ツール12との最初の接触を確立するために駆動ユニット10及び/又は14の制御によって別の相対的な移動が行われた後のCAD/CAM機械加工システム1を示す。この目的のために、研削ツール12は、研削ツールが通り穴20と接触面21で接触するまで、通り穴20の軸方向の縁23に垂直なy方向に移動される。次いで、研削ツール12は、スピンドルモータ16によって縦軸13を中心として回転させられる。研削ツール12は、特定の粒径を有するダイヤモンドなどの研磨要素を含む側面22を有し、それにより、接触面21で材料が除去される。研削ツール12の端面26には負荷がかからない。
【0058】
したがって、ここでのブランク7と研削ツール12の最初の接触は、例えば軸方向にすなわちZ方向に延びる通り穴12の縁23に対して、研削ツール12の側面22が垂直にすなわちy方向に移動することで起こり、したがって、この最初の接触が確立されるときに側面22がZ方向の厚さの全体にわたって縁23と接触し、これにより接触面21が生じる。
【0059】
縦軸13を中心とした側面22の回転により、接触面全体に沿って研削ツール12の研磨要素の相対運動が生じ、それにより、接触面21全体に沿って本質的に同じ相対速度でブランク7から材料が除去される。
【0060】
次いで、この最初の接触から進んで、制御ユニット11は、CADファイル4.1、4.2、4.3などで指定された歯科補綴部品がブランク7から機械加工されるように、制御コマンドによって駆動ユニット10及び/又は14を制御する。これは、研削による機械加工により、特に高い精度で、特に高い表面品質で、ツール交換又はその後の焼結の必要なしに行われるという点で、ここでは特に有利である。このようにして製造された歯科補綴部品は、さらなる処理ステップなしに、歯科医が患者に直接使用することができる。
【0061】
図4Aは、マウント装置6が凹部24を備える、CAD/CAM機械加工システム1の一実施形態を示す。これらの凹部24は、図1図2、及び図3と同様に、研削ツール12がブランク7の縁25にアクセスすることを可能にする。したがって、ここで説明する実施形態では存在する必要がないブランク7の通り穴20に導入される代わりに、研削ツール12は、マウント装置6の凹部24のうちの1つに導入され、次いで、側面22がブランク7の縁25に対して移動され、そこで接触面21と同様に接触面を形成する。
【0062】
この実施形態は、通り穴20のない標準的なブランクを使用することができるという利点を有する。
【0063】
図4Bは、例えば図1図2、及び図3に係る実施形態で使用され得る、凹部24のない環状のマウント装置6の幾何学的形状を示す。
【0064】
図4Cは、マウント装置の周縁に均等に分布し、それぞれマウント装置6にクランプされるブランク7の縁25への半径方向のアクセスを提供する複数の凹部24を有するマウント装置6の幾何学的形状を示す。
【0065】
図4Dは、4つの凹部24が、均等に配置されていないが曲線形状を有する、図4Cに係るマウント装置6の代替的な実施形態を示す。
【0066】
マウント装置6の代わりに、ブランク7のアダプタ又はケーシングが、図4A図4B図4C、又は図4Dに係る幾何学的形状を有することもできる。
【0067】
図5A及び図5Bは、ブランクと側面22との最初の接触の利点を再び示している。図5Aに示すように、最初の接触が研削ツール12の側面22ではなく端面26で確立される場合、研削ツール12とブランク7との接触点での縦軸13を中心とした回転中心で相対運動は起こらず、したがって、研削ツール12でブランク7から材料をほとんど除去することができないか又は摩耗が多いだけである。
【0068】
対照的に、最初の接触が、図1図4に係る実施形態と同様にブランク7と研削ツール12の側面22とで起こる場合、研磨要素がブランク7に対して相対運動する接触面21が形成され、それにより、高い表面品質及び高い精度でツールに優しい材料除去が可能となる。
【0069】
図6は、2つの凹部24.1及び24.2を有するブランク7の一実施形態のためのCAD/CAM機械加工システム1のさらなる実施形態を示す。
【0070】
凹部24.1及び24.2は、それぞれ止り穴として設計することができる。これらの止り穴の深さは、合計すると少なくともブランク7の厚さとなる。このようにして、以下のような機械加工が可能となる:
1.最初に、研削ツール12を凹部24.1に導入し、次いで、凹部24.1の縁で最初の接触面21.1を形成する。
2.凹部24.2に向かう方向に、ここではY方向に研削ツール12を移動させることにより、図6に示す階段状の幾何学的形状の通り穴20が作製される。
3.凹部24.1及び24.2がこのようにつながれば、作製された通り穴20に研削ツール12を導入することができ、図1図2図3に係る実施形態と同様にさらなる機械加工を行うことができる。
【0071】
図7は、マウント装置6内に配置されたブランク7の上面図である。ブランク7は、例えばブランク7にプレス加工することによってブランク7の製造中に形成される通り穴20を有することができる。代替として、ブランク7は、通り穴20なしで製造することもできる。その場合、通り穴20は、ブランク7が製造された後に、ミリング、特にドリリングによって、後であけられる。
【0072】
通り穴20の代替として、上部が開口しているキャビティ、すなわち凹部24.1及び24.2を、ブランク7の両方の側部に形成又はミリングすることができる(図6参照)。
【0073】
図8は、マウント装置6内のブランク7のさらなる実施形態を示し、ブランク7はその縁27上に凹部28を有し、これはブランク7とマウント装置8の間に空間を形成する。この実施形態では、この空間を介してブランク7の縁27に軸方向にアクセスすることができ、この空間を介して研削ツール12を最初の接触のためにブランク7に移動させることができる。
【0074】
図9は、偏心通り穴20を有するブランク7を含むCAD-CAM機械加工システム1のさらなる実施形態を示す。マウント装置6に対する通り穴20の位置を定義するためにブランク7上又は内にマーキング29を設けることができ、対応するマーキング30をマウント装置6上又は内に設けることができる。ブランク7をマウント装置6にクランプするときに、ユーザは、マーキング29及び30を互いに位置合わせし、したがって、通り穴は、制御ユニット11による移動に用いることができる所定の位置Pをとることになる。
【0075】
代替として又は加えて、制御ユニット11は、マウント装置6に対する通り穴20の位置Pを自動的に検出することができる。この目的のために、機械加工ステーション2は、通り穴20の位置Pを検出する光学センサなどのセンサ31を備える。その場合、この位置Pを示す適切なデータ32はメモリ15に記憶される。マイクロプロセッサ17は、プログラムコンポーネント33を実行して、位置Pを確認することができ、データ32を格納することができる。次いで、プログラムコンポーネント18及び/又は19が、軌道の開始点を指定するこの位置Pを考慮に入れて、軌道を計算し、制御コマンドを生成する。代替として又は加えて、センサがマーキング29の位置を、したがって、間接的に通り穴の位置も、確かめることができる。
【0076】
図10は、図9に係る実施形態のブランク7の上面図である。
【0077】
さらなる実施形態によれば、通り穴20は、円筒形円盤形ブランク7の中心を通って軸方向に延びることもでき、したがって、この場合、マーキング29、30を省くことができる。これは図10に点線で示されている。
【0078】
さらなる実施形態によれば、ブランク7の縁とマウント装置6との機械的インターフェースは、事前定義された位置でのみブランク7をマウント装置6にクランプできるように設計することができる。この目的のために、例えば、回転をロックするための、すなわち回転を防止するためのガイド溝をマウント装置6に設けることができる。
【0079】
図11は、円筒形の研削ツール12の代わりに円錐部34を有する研削ツール12が用いられる本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、円錐形の形状に基づいて同じく図11に示されている所望の接触面が生じるため、通り穴20などの凹部は不要である。
【0080】
この目的のために、ブランク7と研削ツール12の円錐面34は、ブランク7の表面上で円錐面34との最初の接触がなされてそこに接触面21が生じるような角度設定で、制御ユニット11によって相対的な位置が決定される。角度設定は、研削ツールの回転中心に対して行われる。したがって、ブランク7と研削ツール12のz方向の相対的な送りによって、ブランク7を貫通する通り穴20をあけることができ、そこから進んで、軌道に沿ってさらなる機械加工が行われる。z方向の送りに加えて、随意的に、好ましくはそれぞれz方向の送りよりも小さい、x方向及び/又はy方向の送り成分が存在してもよい。
【0081】
さらなる実施形態によれば、円錐形の研削ツールの代わりに円錐台を有する研削ツールが使用され、最初の接触面21は、円錐台の上面とではなく側面と形成され、したがって、研磨粒子の相対運動が同様に接触面全体で生じる。
【0082】
図12図17は、球形の作業面を有する研削ツール12が使用されるさらなる実施形態を示す。図12図17は、ブランク7内の通り穴20の作製を示す。
【0083】
ここでは、最初の接触は、研削ツールがブランク7の表面に直角にではなくブランク7の表面法線に対して傾斜して配置されることで確立される。これにより、接触面21の各点と研削ツール12の球形の作業面上の研磨粒子との相対運動が確実に生じる。
【0084】
次いで、図12図17に示すように、研削ツール12は、作製される通り穴の輪郭内で揺れ動くように前後に移動され、研削ツール12は、この前後の移動中にブランクに対して垂直になる位置に到達すると上昇する。研削ツール12が前述の位置に上昇することにより、その回転中心では相対運動は存在しない接触面が束の間に形成されることが回避される。そのような接触面の形成は、駆動ユニット10及び/又は14の適切な制御により制御ユニット11が研削ツール12を前後の移動中に僅かに上昇させることで回避される。
【0085】
実施形態は、特許請求される主題と任意の組み合わせで組み合わせることができる以下の特徴の組み合わせのうちの1つ又は複数を含み得る:
A.CAD/CAM機械加工ステーション(2)によってセラミック歯科補綴部品を製造するための方法であって、
円盤形のセラミックブランク(7)を提供するステップと、
ブランクをCAD/CAM機械加工ステーションのマウント装置(6)内にブランクの周縁が囲まれるように取り付けるステップと、
研削ツールの縦軸(13)を中心とした回転により研削ツールとブランクの接触面(21)全体で相対運動が生じるようにブランクと研削ツールとの最初の接触を確立するべく、CAD/CAM機械加工ステーションを制御するステップと、
セラミック歯科補綴部品を製造するべく、最初の接触から進んで回転研削ツールによりブランクを機械加工するステップと、
を含む、方法。
【0086】
B.ブランクが円形であることを特徴とする、項Aに記載の方法。
【0087】
C.凹部が、ブランクの製造中にプレス加工によってブランクに形成される、項A又は項Bに記載の方法。
【0088】
D.凹部が、ブランクの前処理ステップ中に切削技術によって機械加工される、項A、項B、又は項Cに記載の方法。
【0089】
E.凹部を空間的に配置できるように円盤形ブランクにマーキング(29)が設けられる、前記項のいずれかに記載の方法。
【0090】
F.ブランクが、長石、特に二ケイ酸リチウムガラスセラミックでできている長石様のガラスセラミック、特に酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムでできている結晶セラミックである、前記項のいずれかに記載の方法。
【0091】
G.ブランクが、十分に焼結された、特にヒップされたセラミックで作製される、前記項のいずれかに記載の方法。
【0092】
H.最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランクであって、最終強度の歯科用セラミックの周囲を囲むケーシングを備え、ケーシングが最終強度のセラミックよりも軟質の材料で作製される、特に木材又はプラスチック材料で作製される、円盤形ブランク。
【0093】
I.ブランクの厚さ全体を通して延びる少なくとも1つの凹部(24、28)を備える、最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランク。
【0094】
J.凹部(28)がブランクの縁に配置される、項Iに記載の円盤形ブランク。
【0095】
K.凹部が、ブランクを貫通する通り穴(20)である、項Jに記載の円盤形ブランク。
【0096】
L.最終強度の歯科用セラミックで作製された円盤形ブランクであって、最終強度の歯科用セラミックのそれぞれの凹部(24.1、24.2)がブランクの両方の側部に配置され、凹部の深さが合計すると少なくともブランクの厚さになる、円盤形ブランク。
【0097】
M.ブランクの回転位置決めのためのマーキングを備える、項H~項Lのいずれか一項に記載の円盤形ブランク。
【符号の説明】
【0098】
1 CAD/CAM機械加工システム
2 CAD/CAM機械加工ステーション
3.1 CADデバイス
3.2 CADデバイス
3.3 CADデバイス
4.1 CADファイル
4.2 CADファイル
4.3 CADファイル
5 通信ネットワーク
6 マウント装置
7 ブランク
8 ベアリング
9 ベアリング
10 駆動ユニット
11 制御ユニット
12 研削ツール
13 縦軸
14 駆動ユニット
15 メモリ
16 スピンドルモータ
17 マイクロプロセッサ
18 プログラムコンポーネント
19 プログラムコンポーネント
20 通り穴
21 接触面
22 側面
23 縁
24 凹部
25 縁
26 端面
24.1 凹部
24.2 凹部
27 縁
28 凹部
29 マーキング
30 マーキング
31 センサ
32 データ
33 プログラムコンポーネント
34 円錐面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】