(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】無潤滑遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20220805BHJP
F04D 25/06 20060101ALI20220805BHJP
F04D 29/058 20060101ALI20220805BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
F04D29/28 L
F04D25/06
F04D29/058
F16C32/04 B
F16C32/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021527079
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 US2019062465
(87)【国際公開番号】W WO2020106879
(87)【国際公開日】2020-05-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520488126
【氏名又は名称】スマート イー, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMART E, LLC
【住所又は居所原語表記】850 New Burton Road, Suite 201, Dover, Delaware 19904 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エステバン ホセ エチェニケ
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ ラボリタ
【テーマコード(参考)】
3H130
3J102
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC30
3H130BA24E
3H130BA24G
3H130BA91E
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3H130BA97E
3H130BA97G
3H130CB07
3H130DB01X
3H130DB02X
3H130DB10X
3H130DD01X
3H130DF01X
3J102AA01
3J102BA02
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3J102DB26
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3J102GA06
3J102GA10
(57)【要約】
a)一つ又は複数の遠心圧縮機と、b)高速軸流永久磁石同期電動モータとを備える小型ガス圧縮装置。前記電動モータと前記圧縮機は、単一軸上で直接結合され、受動型磁気軸受と電気力学的軸受によって支持され、潤滑は行われない。前記装置は、ロータがガスの圧力容器内部に配置されているため、メカニックシールを使用していない。前記装置は、潤滑流体の冷却、濾過、分離又は供給のための補助システムを必要としない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数の遠心圧縮機インペラ(1)と電動モータ(2)とによって形成されたモータ-インペラ回転アセンブリを備える小型ガス圧縮装置であって、
前記一つ又は複数の圧縮機インペラは、前記電動モータ(2)に直接且つ単一軸(5)上で結合され、
前記電動モータ(2)は、軸流同期永久磁石モータである、小型ガス圧縮装置。
【請求項2】
前記モータ-インペラ回転アセンブリの前記軸(5)は、前記軸(5)の半径方向位置を固定するための二つ又は複数の磁気ラジアル軸受(6、7)と、前記軸の軸方向位置を固定するための一つ又は複数の受動型電気力学的スラスト軸受(8、9)と、によって支持され、
前記磁気ラジアル軸受(6、7)及び前記一つ又は複数の電気力学的スラスト軸受(8、9)は、潤滑剤及び補助制御システムを全く使用せずに動作する、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項3】
前記一つ又は複数の電動モータ(2)の各々は、前記軸(5)に固定された一つ又は複数の回転アセンブリ(3)の間に配置された一つ又は複数のステータ・アセンブリ(4)によって形成され、
前記ステータ・アセンブリ(4)は、一つ又は複数のコイル(10)を含み、
前記回転アセンブリ(3)は、一つ又は複数の永久磁石(12)の対を含む、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項4】
前記一つ又は複数のステータ・アセンブリ(4)は、強磁性コア(11)の一部をさらに備える、請求項4に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項5】
前記一つ又は複数の回転アセンブリ(3)のいくつかは、強磁性コア(11)を有する、請求項3に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項6】
前記一つ又は複数のコイルは、前記磁石(12)の位置を監視する制御電子装置(19)によって活性化される電流パルスを受信する、請求項3に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項7】
前記制御装置(19)が、とりわけMOSFET、IGBT、SSRを含むグループの半導体を含む、請求項3に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項8】
前記磁気ラジアル軸受(6、7)の各々は、
前記軸(5)に固定され、リング形状を有する一つ又は複数の永久磁石を備える回転部と、
前記回転部を円周方向に取り囲み、リング形状又はシリンダ形状を有する一つ又は複数の永久磁石によって形成されたステータ部と、
によって形成され、
両部は、磁気反発の弾性力によって離れている、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項9】
前記電気力学的スラスト軸受(8、9)の各々は、
前記軸(5)に固定され、永久磁石及び強磁性コアを含む二つ又は複数のディスク(8)によって形成された回転部と、
前記装置のハウジングに固定され、両方の回転ディスク(8)の間に配置され、導電材料を含む中実又は有孔の導電ディスク(9)によって形成された静止部と、
によって形成され、
前記回転ディスク(8)と前記導電材料との間の相対運動が、前記磁石に対する反発力を生成する電流を誘導する、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項10】
前記電気力学的スラスト軸受の各々は、
前記装置のハウジングに固定され、永久磁石及び強磁性コアを含む二つ又は複数のディスクによって形成された静止部と、
前記装置の前記回転軸に固定される回転部であって、前記静止ディスクの間に配置され、導電材料を含む中実又は有孔の導電ディスクによって形成された前記回転部と、
によって形成され、
前記静止ディスクと前記導電材料との間の相対運動が、前記磁石に対する反発力を生成する電流を誘導する、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項11】
前記モータ-インペラ回転アセンブリ、前記磁気ラジアル軸受(6、7)及び前記電気力学的スラスト軸受(9、10)は、メカニカル・シールがない完全に水密の容器内で、プロセスガス(16)の圧力容器内に配置される、請求項1又は2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項12】
同一の前記プロセスガスが、前記電動モータ(2)及び前記磁気ラジアル軸受(6、7)及び前記電気力学的スラスト軸受(8、9)のための冷却剤として使用される、請求項1又は2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項13】
同一の前記プロセスガスが、前記電動モータを駆動する前記パワー電子装置(19)の冷却剤として使用される、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項14】
前記装置は、いかなる種類の潤滑剤の冷却、濾過、分離又は供給のための補助システムも含まない、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項15】
前記装置は、圧縮機インペラ(1)と、電動モータ(2)とを備える、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項16】
前記装置は、二つ又は複数の圧縮機インペラ(1)と一つの電動モータ(2)とを備える、請求項1に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項17】
前記モータ-インペラ回転アセンブリは、二つの磁気ラジアル軸受(6、7)と、受動型電気力学的スラスト軸受(9、10)とによって支持された軸(5)上に取り付けられている、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項18】
前記モータ-インペラ回転アセンブリは、二つの磁気ラジアル軸受(6、7)と、二つ又は複数の受動型電気力学的スラスト軸受(9、10)とによって支持された軸(5)上に取り付けられている、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【請求項19】
前記モータ-インペラ回転アセンブリは、三つ以上の磁気ラジアル軸受(6、7)と、二つ又は複数の受動型電気力学的スラスト軸受(9、10)とによって支持された軸(5)上に取り付けられている、請求項2に記載の小型ガス圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月19日に出願された米国仮出願第62/769,323号の優先権を主張し、これは、参照により、本明細書に完全に記載されているものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ガス圧縮装置の分野に関する。特に、本発明は、ガス圧力を高めるために遠心圧縮機を使用する小型電気装置又は機器に言及する。
【背景技術】
【0003】
機械的手段によるガス圧縮は、現在、数年前から広く普及し、試されている様々な技術によって実施されている。最も使用されている方法の中には、遠心式、軸流式、往復式及びスクリュ式の圧縮機がある。
【0004】
往復式又はピストン式の圧縮機は、内燃機関と構造が類似している。ピストン又はプランジャは、一連のシールが配置されたシリンダ内で交互に長手方向に変位する。一組のバルブは、シリンダ及びプランジャによって形成されたチャンバの膨張ステージ中にガスの流入を可能にし、プランジャは戻る。プランジャが再び前進すると、プランジャは、ガスが配置されているチャンバの容積を減少させ、従って、それに続く所望の圧力増加をもたらす。最後に、別の一組のバルブにより、高圧のガスを逃がすことができる。これらの圧縮機は中小規模の用途に広く使用されている。それらは簡単な構造であり、その効率は比較的高い。それらは、多数の可動部品を有するが、互いに低速で移動するので、それらのシール及び軸受に従来の潤滑剤を使用することができる。低速(約1,000~5,000rpm)で機能することによって、それらは、通常、ギア・アセンブリなしで、直接的に電動モータ又は燃焼エンジンに連結される。
【0005】
この技術の主な欠点は、プランジャとシリンダの間の密封性、バルブの完全性と水密性を保証し、軸受の損傷を避けるために必要な潤滑システムが必要とする、集中的なメンテナンスである。適切なメンテナンスにより、往復式圧縮機は長年にわたり不都合なく機能し得る。しかしながら、最適な潤滑条件に維持されている場合でも、上述の部品はすべて機械的摩耗を受け、定期的に交換する必要がある。関係する機構の数が原因で、往復式圧縮機は、記載されている4種類の中で最もかさばる(そして、比出力が低い)。
【0006】
スクリュ圧縮機は、往復式と同様に、「容積式機械」と呼ばれる機械群に属する。即ち、ガス圧力の変化は、それを収容するチャンバの容積の変化によって達成される。スクリュ圧縮機では、互いに平行に配置された二つのスクリュ形状の螺旋軸が、互いに対して、統一的に回転する。両方の螺旋体は、それらのねじ山の縁部に非常に近い壁を有するチャンバ内にあり、従って、潤滑剤を用いて、又は用いずに、メカニカル・シールを形成する。チャンバに対するスクリュの回転は、気密性をもって(hermetically)隔離された、ガスを含む体積を発生し、それは、吸入ポートから排出ポートに変位しながら、次第にそのサイズを減少させる。
【0007】
このタイプの圧縮器は、典型的には、中規模の用途で使用され、小型化及び高圧縮率といったいくつかの利点を示す。機械部品は、中程度の速度(例えば、3,000~10,000rpm)で回転し、従って、それらは、通常は低速の電動モータ又は燃焼エンジンに連結するための、ギア・アセンブリを必要とする場合がある。反対に、それらは、往復式圧縮機より少ない可動部品を有している。従って、機械的摩耗は、メンテナンスに関してあまり重要ではない。主な欠点は、固体粒子が存在しないように維持され、常に冷却されるべきであるという潤滑システム要件にある。潤滑剤は、螺旋体間のシールとして作用し、機械的摩擦なしに螺旋体間でトルクを伝達する手段として、重要な役割を果たす。さらに、圧縮チャンバ内の潤滑剤は、圧縮ガスと混合され(特に、それらが両方とも炭化水素のような同様の流体である場合)、分離され、特定の装置セット内で再利用される必要がある。これらの理由により、スクリュ圧縮機の小型化は、付随する多数の補助システムによって相殺される。
【0008】
遠心圧縮機は、軸流圧縮機、タービン及び遠心ポンプとともにターボ機械のグループに属する。遠心圧縮機では、まずガス速度を加速させ、次にこの運動エネルギーを位置エネルギーに変換することによって、ガス圧力の上昇が間接的に達成される。ブレードを備えたインペラと呼ばれるディスクは、低圧でガスを受け取り、ガスを回転加速すると同時に、ガスを周囲へ変位させる。高速ガスがロータから出ると、ディフューザと呼ばれる別の固定された部品が徐々にガスを減速し、その圧力を上昇させる役割を担う。
【0009】
遠心圧縮機は、容積式技術に勝るいくつかの重要な利点を示す:第一に、同じ用途(流量及び圧力)について、それらのサイズは、往復式又はスクリュ式の圧縮機よりもはるかに小さい(遠心圧縮機は、高い比出力を有する)。第二に、それらは防水チャンバを生成するためにシールを使用しないので、インペラのような内部部品は機械的摩耗を受けない。これらの圧縮機に使用される潤滑剤の機能は、外部シール及び/又は軸受などの補助部品の摩擦を低減することである。
【0010】
これらの圧縮機が直面する問題は、それらのインペラが回転すべき高速度(典型的には20,000~100,000rpmの間)に関連している。従って、電動モータ又は燃焼エンジンのような駆動源の速度を倍増させるためにギア・アセンブリを使用する必要がある。ギア・アセンブリは、それらに伴う機械的摩耗とエネルギー損失の両方のために、重要な構成要素である。別の問題は、プロセスガスを大気から隔離した状態に保つシールに見られる。シールは、ロータ軸とギア・アセンブリとの間を連通させ、従って、圧縮機本体内部のガス圧力を高く維持し、外部の圧力を低く維持する。シールは、摩耗に関して重要な部品であり、潤滑が重要な役割を果たす。
【0011】
上記の複雑さから、遠心圧縮機の使用は大規模用途に限られている。しかしながら、近年、高速電気エンジン等の技術の実現により、中小規模に適した遠心圧縮機が開発されている。例えば、企業のAerzen(登録商標)は、半径流電動モータが圧縮機のロータと同じ軸に取り付けられている空気圧縮機を提供している。このようにして、ギア・アセンブリの必要性とそれに付随する操作上の困難が排除される。
【0012】
高速半径流モータの使用に見られる主な欠点は、ステータに存在する大量の強磁性材料にある。高速で使用される高い電気周波数は、寄生電流及び磁気ヒステリシスとしての、当該コアにおける巨大なエネルギー損失を意味する。この技術の代替案は、一連の有利な構成上の特徴により近年大きな関心を得ている、軸流電動モータのものである。
【0013】
第一に、軸流モータの形状により、半径流モータよりも高い比出力を有する機械を得ることができる。即ち、同出力を得るために、半径流モータよりも小さいサイズでよく、それに伴って軽量化、低コスト化される。また、半径流モータと同様に、軸流モータは、誘導型であって、「かご形」と同等の巻線導体を使用するか、又は、同期型であって永久磁石を使用してもよい。後者は、全ての可能な構成の中で最も高いパワー密度を示す。
【0014】
第二に、そして本発明の適用に関してより関連性があることには、軸流モータのコイルの配置が必要とする、コアにおける強磁性材料の使用は、半径流モータのものよりもはるかに少ない。高電気周波数用途(高スピニング速度)において、強磁性材料の減少は、磁気ヒステリシス及び寄生電流によるエネルギー損失の減少を意味し、従って、機械の性能を著しく向上させ、冷却要件を低下させる。現在の技術ではあまり知られていない高速用途での軸流同期電動モータを工業的に使用することによって、サイズの減少及びエネルギー効率の向上に関する重要な改善が約束される。
【0015】
企業のICR Turbine Corporation(登録商標)(米国特許公開第US20140306460号)は、システムの全体的な性能を高め、独立タービンに結合された半径流発電機をブーストするために、いくつかの圧縮ステージ及び膨張ステージを実施するコンパクトなブレイトン・サイクルを開発した。圧縮ステージ及び膨張ステージの各々は、半径流圧縮機及び半径流タービンを備え、これらは共に単一軸上に取り付けられている。各半径流圧縮機の後方には、システムの始動を可能にする小型の軸流モータが取り付けられており、従って、ロータをその最低保持速度まで駆動する。これらのエンジンは誘導型であり、巻線ステータと平面かご形ロータを備えている。
【0016】
更に、いくつかの技術が開発され、潤滑油を使用する必要無しに、モータ-圧縮機回転アセンブリを支持し、従って、これらの機械の高速性に付随するその他の複雑さを排除する。その一つは「空気フォイル軸受」又は単に「フォイル軸受」として知られており、同じプロセスガスが潤滑流体として使用される。フォイル軸受は、典型的には、Aerzen(登録商標)製のもののような空気圧縮機に使用される。
【0017】
もう一つのより有望な技術は磁気軸受の一つである。この場合、回転体のセットは磁場によって支持され、従来の場合のように流体力学的には支持されず、従って、システムをプロセス流体から独立させる。例えば、企業のDanfoss(登録商標)は、ガスを冷却するための「Turbocor(登録商標)」圧縮機を提供し、アクティブ磁気軸受(AMB)によってその内部でロータが吊り下げられている(suspended)。エンジン圧縮機アセンブリは、プロセスガスを収容する水密チャンバ内に配置されているため、メカニカル・シールも不要である。この技術のもう一つの例は、エンジンと圧縮機を同じ軸に取り付けて同じ圧力容器に収納する大型遠心圧縮機を開発した、企業のSIEMENS(登録商標)(スペイン国特許第2309173号明細書)にある。SIEMENS(登録商標)の場合、軸受もAMBタイプであり、モータの冷却にも同じプロセスガスが使用される。
【0018】
AMBによって示される複雑さは、軸方向位置センサ・セット及び、軸受を外部から励磁し、指令する能動制御電子システムを必要とすることにある。制御システムのエネルギー供給の中断が発生した場合、回転軸は支持を失い、高速で回転しているステータと接触し、重大で永久的な損傷を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、潤滑システム、速度増倍システム及びメカニカル・シールを使用せず、通常、非常に高速の回転速度で動作する、中規模及び小規模用途のための小型サイズの遠心圧縮機を含む。
【0020】
この圧縮機は、駆動源として、高速・高電気周波数で同期動作する軸流式及び永久磁石式の電動モータを用いる。当該モータは、そのステータ内の強磁性コアが同等の半径流モータよりも少ないため、高速で効率的に動作する。実際、このモータはステータ内に強磁性コアがなくても効率良く動作する。圧縮機インペラは、単一軸上でモータに直接連結され、装置の単一の可動部分を形成する。軸流モータの高効率及び増速ギアがないことは、現行技術に比べてより高い信頼性及び全体的なエネルギー効率を本発明に付与する。
【0021】
モータ-インペラ回転アセンブリは、ステータとの機械的接触がないように、磁気ラジアル軸受と電気力学的スラスト(又はアキシャル)軸受との組み合わせによって支持される。当該軸受は永久受動型磁石を使用するので、制御システム、センサ、及び外部エネルギー供給を必要としない。これにより、現行技術のものよりも、より高い動作の単純性及び信頼性を本発明に付与する。
【0022】
モータ-インペラ・アセンブリと磁気軸受及び電動軸受によって形成される完成ロータは、圧縮機のステータに静圧的に(pressostatically)リンクされ、同じプロセスガスで満たされた防水チャンバの内側に配置される。このようにして、メカニカル・シールの使用は、その使用に伴う摩擦による摩耗と共に回避され、これは、本発明に、他の類似の現行技術の機器よりも必要なメンテナンスが少ないという特徴を与える。
【0023】
軸受、ギア及びシールのための潤滑を必要としないことにより、本発明の装置は、潤滑剤の冷却、濾過、分離及び供給のための補助システムを使用しない。これにより、現行技術の他の同様の装置よりも、本発明がより単純で、より小さなサイズであること可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】モータのモータ-インペラ回転アセンブリとステータコイルのみを示す本発明の実施形態の側面図である。
【
図2a】軸流モータの主要構成要素の断面側面図である。
【
図2b】軸流モータの主要構成要素の分解斜視図である。
【
図3】装置の全ての構成要素を含む本発明の実施形態の断面図である。
【
図4】装置の実施形態の全体の斜視図と、同じ装置の二つの二面図であり、二面図は、寸法基準のための平均的な成人のシルエットと比較される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、いかなる種類の潤滑剤も使用しない、軸流同期電動モータによって駆動されるガス圧縮用の小型装置である。
【0026】
図1は、モータ-インペラ回転アセンブリ(以下、ロータ)の単一の可動片を示す。当該ロータは、当該プロセスガスに運動エネルギーを伝達する役割を担う遠心インペラ1を有する。
図1の実施形態では、一つのインペラのみが示されているが、二つ以上のインペラが使用されてもよい。当該インペラは、軸5に取り付けられ、それに固定される。二つ以上のインペラが使用される場合、それらの全ては、同じ軸に取り付けられ、固定されてもよい。
【0027】
軸流同期永久磁石電動モータ2は、固定ステータ部と回転部とによって形成される。当該モータのステータ部は、コイルと支持のために様々な補助部品を含み、任意で、当該強磁性コアの一部を含むことができる。当該部は、回転部のアセンブリ間に配置された一つ又は複数のアセンブリによって形成されてもよい。
図1の実施形態では、二つのステータ・アセンブリ4が、回転アセンブリ03の間に位置して示されている。他の実施形態では、これは、三つ以上のステータ・アセンブリに適用することができ、又は一つのステータ・アセンブリのみが用いられてもよい。
【0028】
図2a及び
図2bは、単一のステータ・アセンブリ4から構成される軸流電動モータの実施形態を示す。当該アセンブリは、コイル10と強磁性コア11の異なる部分とを含む。当該アセンブリ4は、永久磁石12を含む二つの回転ディスク3の間に配置され、任意に、強磁性コア13の別の部分を含んでもよい。これらのディスクは、軸流モータの回転部3を形成する。当該回転部は、軸5(
図1参照)上に取り付けられ、それに固定される。
【0029】
磁気流は、対向する一対の永久磁石12のそれぞれの間に確立され、これらの永久磁石は、引力構成で配置される。当該磁気流は、モータが浸されている空気又は任意の他の手段(means)を通ってコイルを通過する。ステータ・アセンブリが強磁性コア11の部分を含む場合、磁気流はこれらを通って集中される。ロータ・アセンブリ3が強磁性コア13を有する場合、その隣接する磁石の対向面の間の磁気流は、そこを通って閉じられる。外部電子装置は、コイル10に関して磁石12の相対位置を監視し、コイル10に電流を注入する一連の半導体(例えば、MOSFET、IGBT、SSRなど)を活性化する。電流パルスのモーメント及び電流パルスの持続時間は非常に大きいため、磁場との相互作用が永久磁石に力を誘起し、その結果、軸5(
図1参照)にトルクが印加される。モータ04のステータ部は、電気的に独立であるか、又は互いにリンクされた一つ又は複数のコイル10を含むことができる。
【0030】
図1では、第1の磁気ラジアル軸受6の回転部が、リング形状を有する一つ又は複数の永久磁石によって形成され、軸5の一端部又はその一端部の近くに取り付けられていることが分かる。第2の磁気ラジアル軸受7の回転部は、リング形状を有する一つ又は複数の磁石によって形成され、軸5の反対側の端部又はその反対側の端部の近くに取り付けられている。ラジアル軸受の当該回転部は、当該ロータの一部である。各軸受について、第2のステータ部は、回転部を円周方向に囲み、ハウジング(図示せず)に固定されるリング形状又はシリンダ形状を有する永久磁石によって形成されている。磁石は、同じ極性であり、大きな磁場強度を有しており、各回転部とその対となるステータ部との間の磁気相互作用によって、磁気反発力が発生し、ロータを半径方向に支持して、残りの部分との機械的接触を回避することができる。
図1の実施形態では、二つの磁気ラジアル軸受が示されており、各端部に一つの軸受であるが、ロータ支持部をより強固にするために、三つ以上の軸受を軸5の異なる区域に取り付けることができる。ラジアル軸受6及び7は受動型であり、制御システム、センサ及び外部エネルギー源を介在させずに作動する。AlNiCo、SmCo、又はNdFeBのような高強度の受動型磁石に基づく磁気軸受の製造のための材料は、当技術分野でよく知られており、市場で入手可能である。
【0031】
剛性の力学における概念は、物体が外力による変形や変位に抵抗する能力を参照する。物体の剛性が高いほど、同じ程度の変形に対して生じる力は高くなる。通常、ばねや軸受のような弾性系に適用されるこの概念は、能動型及び受動型の磁気軸受の機械的性質を説明するためにも頻繁に使用される。上述の物体の剛性に起因する力が大きく、これらの力の原因である変形又は変位を補償する傾向がある場合、負の剛性を有すると言われる。磁気軸受の場合、正の剛性とは、変位に起因する力が、変位を減少させる代わりに増加させやすい、という特定の性質を指す。本発明のいくつかの要素の機能を説明するために、このことを以下で使用するので、正の剛性の概念に注目することが有用である。
【0032】
図1に示すロータ・アセンブリは、半径方向に負の剛性を与えるため、受動型ラジアル軸受によって支持され、安定化されている。即ち、軸5が横方向(半径方向)に変位すると、軸を中心位置に戻す逆の弾性力を発生させることによって、当該軸受が反応する。しかし、アーンショー定理で述べられているように、この形式の軸受は軸方向に正の剛性を与える。即ち、軸5がその軸方向に沿って変位した場合、当該軸受は、同じ方向に力を発生させ、変位を増大させようとすることによって反応し、従って、これらの軸受は、軸5をその位置から軸方向に押し出す傾向があるという問題が生じる。従って、完全に受動的な性質に起因するこれらの軸受の大きな利点は、正の軸剛性を示すという欠点を含んでいるので、アセンブリの単一の回転リンクとして使用することはできない。この影響を打ち消すために、永久磁石間の相互作用とは異なる物理的原理によって動作し、軸5の軸方向の位置を固定する付加的な機構を実装すべきである。軸方向の制限リンクの種類を変えた種々の試験の後、電気力学的スラスト軸受を用いることにより最良の結果が得られた。
【0033】
図1において、電気力学的スラスト軸受8の回転部は、永久磁石と強磁性コアを有する二つのディスクによって形成されることが分かるであろう。当該回転部は、軸5に取り付けられ、それに固定され、従って、ロータの一部を形成する。中実又は有孔の導体ディスク9は、当該回転ディスクの間に配置され、ハウジング(図示せず)に連結されたスラスト軸受のステータ部を形成する。回転部の磁石とステータ部の導体材料との間の相対的な移動は、後者に電流を誘起し、当該電流は、当該磁石に対して反発力を発生させる。
図1に示す配置では、当該反発力は、軸方向に負の剛性を与える。このようにして、軸5が軸方向に変位すると、電気力学的スラスト軸受は、元の位置を再構築しようとする反対方向の力を発生する。
【0034】
電気力学的スラスト軸受は、完全に受動的な方法で作動し、補助制御システムを必要としない。しかしながら、当該機能は、部品間に相対運動がある場合、即ちロータが回転している場合にのみ生じる。最小回転速度を超えると、電気力学的スラスト軸受は、磁気ラジアル軸受の正の軸剛性を打ち消すのに十分な負の軸剛性をロータに提供する。磁石支持ディスク8を回転部とし、導体ディスク9を静止部として、あるいはその逆に配置することができる。
図1の実施形態では、一つのスラスト軸受のみが示されているが、ロータに対してより高い軸剛性を提供するために二つ以上を重ねることができる。ロータが水平に配向されていない用途では、その重量の軸方向成分の一部又は全部が、磁気軸受の同じ正の剛性によって相殺されてもよい。このようにして、電気力学的スラスト軸受は、アセンブリに負の剛性のみを提供しなければならず、その重量を支持するためには使用されない。
【0035】
電気力学的スラスト軸受と磁気ラジアル軸受の組合せは、特定の最小回転速度を超えると、ロータをその軸方向位置及び半径方向位置に完全に支持することを可能にし、従って、装置の残りの部分との機械的接触を回避する。能動型磁気軸受(AMB)とは対照的に、本発明における受動部品の組み合わせは、たとえ電気供給が完全に中断されても、外部エネルギー又は制御要件無しにその機能を保証する。この新規な組み合わせは、多量の熱エネルギー及び停止エネルギーを発生させ得る摩擦力がないために、摩耗を受けることなく、遠心圧縮機のインペラによって必要な速度で装置を回転させることを可能にする。
【0036】
図3は、上述のロータが水平に配置され、装置の固定構造を形成する本体(以下、ステータ)の内部に配置された本発明の実施形態を示す。ロータの配向は、本実施形態で示されるものとは異なる水平、垂直、又は任意の他の配向とすることができる。フランジ接続部又は任意の他のタイプの接続部15によって、低圧プロセスガスが、主要ステータ壁16と、それらに対してシールされた他の部品、例えば高圧コレクタ17又は軸エンドキャップ21、とによって形成された水密チャンバに流入する。当該水密チャンバを形成する部品の数及び配置は、
図3に示されるものとは異なっていてもよいが、それらは常にロータ全体を内部に収容し、従って、ガスケット、Oリングなどの固定シールによってガスの水密特性を保証する。
【0037】
軸流モータ2が位置し、4つのステータ・アセンブリのスタッキングとして
図3に示されている区域は、回転部に対応する区域であって、この区域を低圧低温ガスが横切る。このガスの流れによって、モータで発生する熱を除去することができ、冷却剤として機能する。次いで、ガスは、インペラ1とそれに対応するディフューザによって形成される第1の圧縮ステージに入る。
図3の実施形態では、ロータは、第1のインペラの直後にガスが横切る第2のインペラ14を含む。各圧縮ステージにおいて、ガスは、高圧コレクタ17に入り、ステータの排出接続部に案内されるまで、その圧力及び温度を上昇させる。本発明の他の実施形態は、各特定の用途に応じて、より多くのインペラ又はより少ないインペラ、並びに軸流モータを形成するより多くのアセンブリ又はより少ないアセンブリを含んでいてもよい。
【0038】
図3に示す実施形態では、入口のガス温度は、電動モータを指令する役割を担うパワー電子装置の冷却剤として作用するのに十分低い。一連のパワー電子装置19は、ガス圧容器16の外に配置され、これに熱的にリンクされる。当該電子部品は、同じプロセスガスで冷却される圧力容器を形成する金属の熱伝導性を利用する。最後に、キャップ18がパワー電子装置を外部から覆い、埃や周囲の湿気から保護する。本発明の他の実施形態は、当該電子部品を、プロセスガスで溢れる圧力容器の内部に直接配置することができる。他の異なる実施形態は、圧縮機の入口のガス温度が極端に高い場合に、パワー電子装置を冷却するための、他の従来の方法及び独立した方法を使用することができる。
【0039】
図4は、ロータが水平に配向された、本発明の実施形態の等角図を示す。当該図は、ロータと同軸に配置されたガス用のフランジ付き入口接続部を示しており、ロータは圧力容器内にあり見えていない。この実施形態では、高圧ガス排出部は、上記のロータ軸に対して横方向及び垂直に配置される。
図4はまた、装置の代表的なサイズを可視化するために、圧縮機の側面図及び別の正面図を平均的な人物図とともに示す。本発明の他の実施形態は、サイズ及び比率を変えることができ、ガスの入口接続部及び出口接続部を、例えば、両方ともロータ軸と同軸、又は両方とも横方向など、他の向きに配置することができる。
【0040】
本装置の革新的な技術的特徴は以下の特徴を含む。
1.遠心圧縮機のインペラと同じ軸に取り付けられた駆動力として永久磁石を備えた軸流同期電動モータを使用する。このタイプのモータは、高速半径流モータよりも効率が高く、電力密度が高いので、現行技術に比べて優れた全体性能とより小さな物理的サイズをこの装置に与える。
2.エネルギー供給、補助システム、監視及び制御システムを必要としない受動型磁気軸受と受動型電気力学的軸受を使用している。この特性は、突発的な電気供給故障の場合でも、装置に高い動作信頼性を与える。さらに、制御補助システムがないことは、そのコンパクトなサイズに寄与する。
3.ロータ・アセンブリはプロセスガスと同じ圧力容器の内側に完全に配置されているため、メカニカル・シールを使用しない。メカニカル・シールは摩擦による摩耗を受け、特に高速の用途では頻繁なメンテナンスを必要とする。その不存在は、この装置に、他の従来技術の装置よりも必要なメンテナンスが少ないという特徴を与える。さらに、メカニカル・シールがないことは、装置の包括的なエネルギー効率に寄与する。
4.シール、ギア、軸受には、いかなる種類の潤滑剤も使用していない。この特性は、冷却器、フィルタ、セパレータ、又はポンプのような潤滑剤の処理のための補助システムを必要としないので、装置の低メンテナンス要求に寄与し、またその小型化にも寄与する。
5.通常の条件下では、新規でかつ接触の無い回転支持システムにより、アセンブリは機械的摩耗を受けることなく、圧縮機のインペラと同じ速度で回転する。
【国際調査報告】