(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】グラフェン膜を製作するための装置、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/194 20170101AFI20220805BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20220805BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220805BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220805BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C01B32/194
B01D71/02
B01D69/12
B01D69/10
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564265
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CA2020050789
(87)【国際公開番号】W WO2020248048
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521470847
【氏名又は名称】2599218 オンタリオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリント、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン、レイモンド
【テーマコード(参考)】
4D006
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MC05
4D006MC11
4D006MC30
4D006MC48
4D006MC62
4D006NA45
4D006NA49
4D006NA73
4G146AA01
4G146AB07
4G146CB01
4G146CB17
5H050BA08
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA13
5H050GA03
5H050GA29
5H050HA06
(57)【要約】
グラフェン膜を製作するための装置は、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容するための第1の流体チャンバを有する第1のセクションを含む。第2のセクションは、第1のセクションに隣接して配置可能である。第2のセクションは、第2の流体チャンバと、多孔性基板を支持するための第2の流体チャンバに収容される多孔性支持体と、を有する。第1のセクションが第2のセクションに隣接して配置され、多孔性基板が多孔性支持体によって支持されるときに、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバは、多孔性基板を介して流体連通する。装置は、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバ間の圧力差を生み出し、それによって多孔性基板を通って第2の流体チャンバの中に流体を押し込み、グラフェン・プレートレットを多孔性基板の細孔内に係留するための加圧器を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容するための第1の流体チャンバを有する第1のセクションと;
前記第1のセクションに隣接して配置可能な第2のセクションであって、第2の流体チャンバと、多孔性基板を支持するための前記第2の流体チャンバに収容される多孔性支持体と、を有し、前記第1のセクションが前記第2のセクションに隣接して配置され、前記多孔性基板が前記多孔性支持体によって支持されるときに、前記第1の流体チャンバ及び前記第2の流体チャンバは、前記多孔性基板を介して流体連通する、第2のセクションと;
前記第1の流体チャンバと前記第2の流体チャンバとの間の圧力差を生じさせ、それによって、前記流体を、前記多孔性基板を通って前記第2の流体チャンバの中に押し込み、前記グラフェン・プレートレットを前記多孔性基板の前記細孔内に係留する、加圧器と、
を含む、グラフェン膜を製作するための装置。
【請求項2】
前記多孔性支持体は、
第1のサイズの細孔を有する第1の層と、
前記第1のサイズよりも大きい第2のサイズの細孔を有する第2の層と、
前記第2のサイズよりも大きい第3のサイズの細孔を有する第3の層と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の層は、セルロース、ファブリック及びポリマーのうちの少なくとも1つのシートを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の層は、第1のサブ層及び第2のサブ層を含む、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記加圧器は、前記第1の流体チャンバを加圧するように構成される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記加圧器は、液圧シリンダ、圧縮空気シリンダ又は高圧水ポンプを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記加圧器は、前記第2の流体チャンバに真空を生み出すための真空装置を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の流体チャンバ内の超音波トランスデューサを更に含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
基板支持枠を更に含み、
前記多孔性基板は、前記基板支持枠に固定可能であり、
前記基板支持枠は、前記多孔性基板を前記多孔性支持体に配置するために操作可能である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のセクションが前記第2のセクションに隣接して配置され、前記多孔性基板が前記多孔性支持体によって支持されるときに、前記基板支持枠は、前記第1の流体チャンバ及び前記第2の流体チャンバの機外にある、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記懸濁液及び/又は前記流体及び/又は前記グラフェン・プレートレットのパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサを更に含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
a)多孔性支持体を横切って多孔性基板を配置するステップであって、前記多孔性基板は、第1の表面及び第2の表面を有し、前記多孔性基板は、前記第1の表面が前記多孔性支持体の反対側に面して前記第2の表面が前記多孔性支持体の方に面するように配置される、ステップと、
b)前記多孔性基板の前記第1の表面を前記懸濁液と接触させるために、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を第1の流体チャンバに適用するステップと、
c)前記グラフェン・プレートレットを前記多孔性基板の前記細孔の中に押し込み前記流体に前記多孔性基板を通り抜けさせるために、前記多孔性基板を横切って圧力差を適用するステップと、
を含む、グラフェン膜を製作する方法。
【請求項13】
ステップc)は、前記第1の流体チャンバを加圧することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)は、前記多孔性支持体に真空を適用することを含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)及び/又はステップc)中に前記懸濁液を超音波処理することを更に含む、請求項12から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、ステップa)より前に、前記多孔性基板を基板支持枠に装着することを更に含み、
ステップa)は、前記多孔性支持体を横切って前記多孔性基板を配置するために前記基板支持枠を操作することを含む、請求項12から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップc)後に前記基板支持枠及び前記多孔性基板を前記多孔性支持体から除去することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップc)中に前記懸濁液及び/又は前記流体のパラメータを検知することを更に含む、請求項12から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)は、前記流体に前記多孔性支持体の第1の層、第2の層、及び第3の層を通過させることを含む、請求項12から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容するための第1の流体チャンバを有する第1のセクション、
(ii)前記第1のセクションに隣接して配置可能な第2のセクションであって、第2の流体チャンバと、多孔性基板を支持するための前記第2の流体チャンバに収容される多孔性支持体と、を有し、前記第1のセクションが前記第2のセクションに隣接して配置され、前記多孔性基板が前記多孔性支持体によって支持されるときに、前記第1の流体チャンバ及び前記第2の流体チャンバは、前記多孔性基板を介して流体連通する、第2のセクション、
(iii)前記懸濁液及び/又は前記流体のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサ、及び
(iv)前記第1の流体チャンバ及び前記第2の流体チャンバ間の圧力差を生み出し、それによって、前記流体を、前記多孔性基板を通って前記第2の流体チャンバの中に押し込み、前記グラフェン・プレートレットを前記多孔性基板の前記細孔内に係留する、加圧器、を含む装置と、
前記センサから情報を受信して、前記受信した情報に基づいて前記装置を制御するための制御サブシステムと、
を含む、グラフェン膜を製作するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書は、グラフェン膜に関する。より詳細には、本文書は、グラフェン膜を製作するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2016/0339160号(A1)(Bedworthら)は、グラフェンなどの2次元材料に関する様々なシステム及び方法を開示する。膜は、複数の架橋されたグラフェン・プレートレットを含む架橋されたグラフェン・プレートレットポリマーを含む。架橋されたグラフェン・プレートレットは、グラフェン部分と架橋部分とを含む。架橋部分は、4~10の原子リンクを包含する。架橋されたグラフェン・プレートレットポリマーは、エポキシド官能化グラフェン・プレートレットと、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド官能化架橋剤との反応によって生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0339160号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の発明の概要は、詳細な説明の様々な観点を読者に案内することを意図するが、本発明を何ら限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
グラフェン膜を製作するための装置が開示される。幾つかの態様によれば、グラフェン膜を製作するための装置は、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容するための第1の流体チャンバを有する第1のセクションを含む。第2のセクションは、第1のセクションに隣接して配置可能である。第2のセクションは、第2の流体チャンバと、多孔性基板を支持するための第2の流体チャンバに収容される多孔性支持体と、を有する。第1のセクションが第2のセクションに隣接して配置され、多孔性基板が多孔性支持体によって支持されるときに、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバは、多孔性基板を介して流体連通する。装置は、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバ間の圧力差を生み出し、それによって多孔性基板を通って第2の流体チャンバの中に流体を押し込み、グラフェン・プレートレットを多孔性基板の細孔内に係留するための加圧器を更に含む。
【0006】
幾つかの実例では、多孔性支持体は、第1のサイズの細孔を有する第1の層と、第1のサイズよりも大きい第2のサイズの細孔を有する第2の層と、第2のサイズよりも大きい第3のサイズの細孔を有する第3の層と、を含む。第1の層は、セルロース、ファブリック、及びポリマーのうちの少なくとも1つのシートを含むことができる。第2の層は、焼結ポリマー又は多孔性金属の第1のサブ層と、焼結ポリマー又は多孔性金属の第2のサブ層と、を含むことができる。
【0007】
幾つかの実例では、加圧器は、第1の流体チャンバを加圧するように構成される。加圧器は、液圧シリンダ、圧縮空気シリンダ、又は高圧水ポンプを含むことができる。
【0008】
幾つかの実例では、加圧器は、第2の流体チャンバに真空を生み出すための真空装置を含む。
【0009】
幾つかの実例では、装置は、第1の流体チャンバ内の超音波トランスデューサを更に含む。
【0010】
幾つかの実例では、装置は、第1の部片及び第2の部片を有する基板支持枠を更に含む。多孔性基板は、第1の部片及び第2の部片間で固定可能とすることができる。基板支持枠は、多孔性基板を多孔性支持体に配置するために操作可能とすることができる。
【0011】
幾つかの実例では、第1のセクションが第2のセクションに隣接して配置され、多孔性基板が多孔性支持体によって支持されるときに、基板支持枠は、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバの機外にある。
【0012】
幾つかの実例では、装置は、懸濁液及び/又は流体及び/又はグラフェン・プレートレットのパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサを更に含む。
【0013】
グラフェン膜を製作するための方法も開示される。幾つかの態様によれば、グラフェン膜を製作するための方法は、a)多孔性支持体を横切って多孔性基板を配置するステップを含む。多孔性基板は、第1の表面及び第2の表面を有し、多孔性基板は、第1の表面が多孔性支持体の反対側に面して第2の表面が多孔性支持体の方に面するように配置される。方法は、b)多孔性基板の第1の表面を懸濁液と接触させるために、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を第1の流体チャンバに適用するステップと、c)グラフェン・プレートレットを多孔性基板の細孔の中に押し込み流体に前記多孔性基板を通り抜けさせるために、多孔性基板を横切って圧力差を適用するステップと、を更に含む。
【0014】
幾つかの実例では、ステップc)は、第1の流体チャンバを加圧することを含む。幾つかの実例では、ステップc)は、多孔性支持体に真空を適用することを含む。
【0015】
幾つかの実例では、方法は、ステップb)及び/又はステップc)中に懸濁液を超音波処理することを含む。
【0016】
幾つかの実例では、方法は、ステップa)より前に、多孔性基板を基板支持枠に装着することを更に含む。ステップa)は、多孔性支持体を横切って多孔性基板を配置するために基板支持枠を操作することを含むことができる。方法は、ステップc)後に基板支持枠及び多孔性基板を多孔性支持体から除去することを更に含むことができる。
【0017】
幾つかの実例では、方法は、ステップc)中に懸濁液及び/又は流体のパラメータを検知することを更に含む。
【0018】
幾つかの実例では、ステップc)は、流体に多孔性支持体の第1の層、第2の層、及び第3の層を通過させることを含む。
【0019】
グラフェン膜を製作するためのシステムも開示される。幾つかの態様によれば、グラフェン膜を製作するためのシステムは、装置及び制御サブシステムを含む。装置は、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容するための第1の流体チャンバを有する第1のセクションを含む。装置は、第1のセクションに隣接して配置可能で、第2の流体チャンバと、多孔性基板を支持するための第2の流体チャンバに収容される多孔性支持体と、を有する第2のセクションを更に含む。第1のセクションが第2のセクションに隣接して配置され、多孔性基板が多孔性支持体によって支持されるときに、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバは、多孔性基板を介して流体連通する。装置は、懸濁液及び/又は流体のパラメータを検知するための少なくとも1つのセンサを更に含む。装置は、第1の流体チャンバ及び第2の流体チャンバ間の圧力差を生み出し、それによって多孔性基板を通って第2の流体チャンバの中に流体を押し込み、グラフェン・プレートレットを多孔性基板の細孔内に係留するための加圧器を更に含む。制御サブシステムは、センサから情報を受信でき、受信した情報に基づいて装置を制御できる。
【0020】
本明細書で含まれる図面は、本明細書の物品、方法、及び装置の様々な実例を例証するためであり、何らかの方法で教示されるものの範囲を限定することを意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】グラフェン膜を製作するためのシステムの斜視図である。
【
図2】
図1のシステムの基板支持枠の斜視図である。
【
図3】
図1の3-3線に沿って採った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な装置又はプロセス或いは組成物は、特許請求された主題の一実施例の実例を提供するために、以下で説明されるであろう。以下で説明される実施例は、どれも請求項を限定せず、どの請求項も、以下で説明されるそれらと異なるプロセスや装置或いは組成物をカバーできる。請求項は、以下で説明される任意の1つの装置又はプロセス或いは組成物の特徴の全てを有する装置又はプロセス或いは組成物に、或いは、以下で説明される装置又はプロセス或いは組成物の複数又は全てに共通する特徴に、限定されない。以下で説明される装置又はプロセス或いは組成物が、本特許出願の発行によって付与される任意の独占権の一実施例ではない可能性がある。本特許出願の発行によって独占権が付与されていない下で説明される任意の主題は、別の保護手段、例えば、継続特許出願の主題である可能性があり、出願人ら、発明者ら又は所有者らは、本文書におけるその開示によって任意のそういった主題を放棄すること、棄権すること、又は公衆に捧げることを意図していない。
【0023】
概して本明細書で開示されるのは、グラフェン膜を製作するための装置、方法、及びシステムである。より具体的には、本明細書で開示される、グラフェン膜を製作するための装置、方法、及びシステムでは、グラフェン膜は、多孔性基板と、多孔性基板の細孔内に係留及び/又は多孔性基板の表面の層として堆積されるグラフェン・プレートレットと、を含む。そういったグラフェン膜は、例えば、国際公開第2020/000086号(Flintら)、米国特許出願第16/542,456号(Flintら)、米国特許出願第16/810,918号(Oguntuase)に開示され、それらの個々は、参照によってその全体が本明細書に援用される。そういったグラフェン膜は、例えば、水濾過及び浄化で或いは(例えば、バッテリに使用するための)伝導表面を形成するために、使用できる。
【0024】
一般に、本明細書で開示される装置は、多孔性基板に適用されるべき流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を可能にし、多孔性基板を横切って生み出されるべき圧力差を可能にし、従って、懸濁液は、多孔性基板の細孔の中に押し込まれる。流体は、細孔を通って通行でき、その間、グラフェン・プレートレットは、細孔内に捕捉されて膜を生み出す(即ち、そこでは膜は、多孔性基板と、多孔性基板の細孔内に係留及び/又は多孔性基板の表面の層として堆積されるグラフェン・プレートレットと、を含む)。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「プレートレット」は、1枚又は複数枚(例えば、少なくとも2枚で最大9枚)のグラフェン・シートを含む構造を指す。好ましくは、プレートレットは、2枚又は3枚のグラフェン・シートを含む。プレートレットは、例えば、最大15ナノメートルの厚さで最大100ミクロンの直径とすることができる。本明細書で使用されるとき、用語「グラフェン・プレートレット」は、純粋グラフェン(即ち、非官能基化グラフェン)のプレートレット、及び/又は、官能基化グラフェンのプレートレットを指す場合がある。官能基化グラフェンは、例えば、ヒドロキシル化グラフェン(酸化グラフェンとも呼ばれる)、アミノ化グラフェン、及び/又は、水素化グラフェンを含むことができる。グラフェンの官能基化は、グラフェンに細孔を生み出すことができ、濾液の流れを可能にし、グラフェン・シート間に所望の間隔を生み出すことができる。例えば、非官能基化グラフェンのプレートレットでは、中間層の間隔は、約0.34nmであることがある。官能基化グラフェン、例えば、ヒドロキシル化グラフェン(酸化グラフェンとしても知られる)として官能基化されるグラフェンのプレートレットでは、中間層の間隔は、約0.83nmであることがある。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「多孔性基板」は、それを通ってそれの第1の表面からそれの第2の表面まで延びる細孔を有するシート様の材料を指す。細孔は、例えば、0.03ミクロンより小さいか又は等しい直径を有することができる。好ましくは、細孔は、グラフェン・プレートレットの直径よりも最大で5倍大きい直径である。基板は、例えば、1mmよりも小さい厚さ(即ち、第1の表面と第2の表面の間)を有することができる。幾つかの実例では、基板は、それらに限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))、ポリスルホン(PsF)(ポリエーテルスルホンとも呼ばれる)、セルロース及び/又はポリエステルなどのポリマーである。幾つかの実例では、基板は、酸処理されたポリマー、例えば、硫酸で処理されたポリスルホンである。幾つかの実例では、基板は、酸処理されてイオン処理されたポリマーであり、例えば、ポリスルホンは、硫酸で、次いで、金属イオンの溶液(例えば、アルミニウム又はカルシウムイオン)で処理されることがある。幾つかの実例では、基板は、製織コットンなどの非ポリマーである。
【0027】
グラフェン膜を製作するための装置の第1の実例は、以下に説明されるであろう。
図1を参照すると、装置100は、第1のセクション102、第2のセクション104、加圧器106、及び基板支持枠108を概して含む。示された実例では、第1のセクション102は、上側セクションであり、第2のセクション104は、下側セクションであるが、代替の実例では、第1のセクション102及び第2のセクション104は、別のやり方で(例えば、左側セクションと右側セクションとして)配置されることがある。
【0028】
図2も参照すると、使用時、多孔性基板110(最終的にグラフェン膜の一部になる)は、基板支持枠108によって支持される。基板支持枠108は、第1の部片112及び第2の部片114を有し、それらの間には、多孔性基板110が、(例えば、ボルトを用いて)固定可能である。基板支持枠108は、多孔性基板110の取扱いを容易化するために、また、多孔性基板110に対する物理的な損傷を防止又は最小化するために、使用できる。基板支持枠108は、多孔性基板110を平らに概して保持する(即ち、曲げ、折り、及び/又はクリンプを防止できる)。
【0029】
図1に戻って参照すると、使用時、基板支持枠108は、第1のセクション102及び第2のセクション104間の多孔性基板110の配置を容易化でき、従って、多孔性基板110は、第1のセクション102及び第2のセクション104間に挟まれ、多孔性基板110の第1の表面116は、第1のセクション102の方に、第2のセクション104とは反対側に向き、多孔性基板110の(
図3及び
図4に示された)第2の表面118は、第2のセクション104の方に、第1のセクション102とは反対側に向いている。
【0030】
ここで
図3を参照すると、第1のセクション102は、流体チャンバ122(本明細書では、「第1の流体チャンバ」とも呼ばれる)を画定する外壁120(本明細書では、「第1の外壁」とも呼ばれる)を含む。使用時、更に詳細に下で説明されるであろうように、流体チャンバ122は、流体中にグラフェン・プレートレットの懸濁液を収容する。
【0031】
示された実例では、第1のセクション102は、一対の流体入口ポート126及び空気脱出ポート127を含む。代替の実例では、第1のセクション102は、1つの流体入口ポートなどの別の幾つかの流体入口ポートを含むことがあり、流体入口ポートは、別の配置にあることがある。流体入口ポート126は、弁(図示せず)によって開動及び閉動されることがある。更にまた、第1のセクション102は、2つ以上の空気脱出ポートなどの別の幾つかの空気脱出ポートを含むことがあり、空気脱出ポートは、別の配置にあることがある。空気脱出ポート127は、弁(図示せず)によって開動及び閉動されることがある。
【0032】
第1のセクション102は、グラフェン・プレートレットの懸濁液を超音波処理するために超音波トランスデューサ(図示せず)を更に含むことができ、それは(更に詳細に下で説明されるように)多孔性基板110の細孔の中にグラフェン・プレートレットを詰め込むのに役立つ場合がある。
【0033】
やはり
図3を参照すると、第2のセクション104は、流体チャンバ(本明細書では、「第2の流体チャンバ」とも呼ばれる)を規定する外壁128(本明細書では、「第2の外壁」とも呼ばれる)を含む。第2の流体チャンバは、下で説明される多孔性支持体136で満たされているので、図では見えない。使用時、第2のセクション104は、第1のセクション102に隣接して配置可能であり、従って、第1の外壁120は、多孔性基板110を介して、第2の外壁128に対して支えている。第2のセクション104は、例えば、第1の外壁120を第2の外壁128にクランプ又はボルト留めすることによって、第1のセクション102に更に固定できる。
【0034】
やはり
図3を参照すると、第2の流体チャンバは、排出ポート134を有する。代替の実例では、追加の排出ポート(例えば、4つの排出ポート)が、設けられる場合がある。
【0035】
やはり
図3を参照すると、第2のセクション104は、第2の流体チャンバの内部に収容される多孔性支持体136を更に含む。使用時、グラフェン膜の製作中に、多孔性支持体136は、グラフェン膜の多孔性基板110を支持し、従って、圧力差が多孔性基板110を横切って適用されるときに、多孔性基板は、破れず、裂けず、壊れず、伸びず、そうでなければ損傷を負わない。更にまた、使用時、第1のセクション102が第2のセクション104に隣接して配置され、多孔性基板110が多孔性支持体136によって支持されるとき、第1の流体チャンバ122及び第2の流体チャンバは、多孔性基板110を介して流体連通する。
【0036】
示された実例では、多孔性支持体136は、幾つかの層、即ち、第1の層138、第2の層140、及び第3の層142を含む。各層は、多孔性であり、細孔サイズは、多孔性基板110のそれよりも大きく、第1の層138から第3の層142の方に大きくなっている。例えば、第1の層138は、ミクロンの尺度での細孔サイズを有することがあり、第2の層140は、ミリメートルの尺度での細孔サイズを有することがあり、第3の層142は、インチの尺度での細孔サイズを有することがある。
【0037】
幾つかの実例では、第1の層138は、例えば、セルロース、ファブリック、及び/又は様々なポリマーや他の材料のシートを含む。幾つかの実例では、第1の層138は、2つ以上の材料シートを含む。第1の層138は、グラフェン膜の製作中に多孔性基板110と接触して物理的に支持できる。
【0038】
示された実例では、第2の層140は、2つのサブ層、即ち、第1のサブ層144及び第2のサブ層146を含む。第1のサブ層144及び第2のサブ層146は、例えば、焼結ポリマー、焼結金属、ゼオライト、及び/又はセラミックスなどの多孔性材料を含むことができる。幾つかの特定の実例では、第1のサブ層144及び第2のサブ層146は、それを貫くドリル加工された孔を備えたプレキシガラスシートを個々が含み、第1のサブ層144の孔は、第2のサブ層146の孔よりも小さい。使用時、第2の層140は、第1の層138に接触して物理的に支持し、圧力差によって引き起こされる力を分配(より詳細に下で説明される)し、多孔性基板110から反対側に(即ち、示された実例では下向きに)流体を方向付けできる。
【0039】
示された実例では、第3の層142は、第2の層140を排出するのに概して役立ち、また、ドリル加工されたプレキシガラスなどの大きめの細孔を有する様々な材料から作製できる。
【0040】
図3を参照すると、加圧器106は、任意のデバイス、装置、又は組立体である場合があり、使用時、第1のセクション102及び第2のセクション104間(即ち、多孔性基板110を横切って第1の流体チャンバ122及び第2の流体チャンバ間)の圧力差を生み出すことができ、懸濁液の流体を、多孔性基板110を通って第2の流体チャンバの中に押し込み、グラフェン・プレートレットを多孔性基板110の細孔内に係留する。示された実例では、加圧器106は、液圧シリンダ(概略示された)であり、第1のセクション102の流体チャンバ122を加圧するために、第1のセクション102に接続され、他方、第2の流体チャンバは、大気圧(例えば、真空装置を使用して、大気圧より下)のままである。代替の実例では、加圧器は、例えば、圧縮空気シリンダ、又は機械式ねじ、又は高圧水ポンプ、又は圧縮機とすることができる。代替として、加圧器は、真空装置である場合があり、真空を第2の流体チャンバ内に生み出すことができ、他方、第1の流体チャンバ122は、大気圧(又は大気圧より上)のままである。示された実例では、液圧シリンダは、第1の流体チャンバ122を加圧するために鉛直に動くが、代替の実例では、液圧シリンダは、水平に動くことができる。
【0041】
図1に戻って参照すると、示された実例では、装置100は、制御サブシステム148を含むシステムの一部である。制御サブシステム148は、装置100から情報を受信、及び/又は、装置100を制御できる。例えば、装置100は、圧力センサ及び/又はpHセンサ及び/又は導電率センサ及び/又は流量センサなどの様々なセンサを含むことができる。制御サブシステム148は、センサから情報を受信できる。そういった情報は、例えば、多孔性基板110を横切った圧力差、第1の流体チャンバ122及び/又は第2の流体チャンバの内部の懸濁液中のイオンの濃度、第1の流体チャンバ122及び/又は第2の流体チャンバの内部の懸濁液の導電率、多孔性基板110を横切った流量、及び/又は、多孔性基板110の導電率に関係する場合がある。更にまた、制御サブシステム148は、受信した情報に基づいて装置100を制御できる。例えば、制御サブシステム148は、加圧器106によって誘導される圧力差、及び/又は、情報に基づく上側流体チャンバの中への流体の侵入を制御できる。示された実例では、センサは、
図3に150で概略示される。
【0042】
グラフェン膜を製作する方法は、以下に説明されるであろう。本方法は、装置100を参照して説明されるであろうが、本方法は、装置100に限定されず、装置100は、本方法による動作に限定されない。概して、本方法は、a)第1の表面116が多孔性支持体136の反対側に面して第2の表面118が多孔性支持体136の方に面するように、多孔性支持体136を横切って多孔性基板110を配置すること、b)多孔性基板110の第1の表面116を懸濁液と接触させるために、流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液を第1のセクション102の流体チャンバ122に適用すること、及び、c)グラフェン・プレートレットを多孔性基板110の細孔の中に押し込み流体に多孔性基板110を通り抜けさせるために、多孔性基板110を横切って圧力差を適用すること、を含むことができる。
【0043】
より具体的には、使用時、多孔性基板110は、
図2に示されたように、基板支持枠108の第1の部片112及び第2の部片114間に多孔性基板110を固定することによって、基板支持枠108に最初に装着できる。装置100は、次いで、
図3に示されたように組み立てられることがあり、基板支持枠108は、第1の流体チャンバ122及び第2の流体チャンバの機外に配置され、多孔性基板110は、第1の外壁120及び第2の外壁128間に挟まれて、多孔性支持体136によって支持される。これは、装置100を開動すること(即ち、第1のセクション102及び第2のセクション104を分離すること)、多孔性基板110を第2のセクション104に置くように基板支持枠108を操作すること、装置100を閉動すること(第1のセクション102を第2のセクション104に隣接して配置すること)、第1のセクション102を第2のセクション104に固定すること、によって達成できる。
【0044】
流体中のグラフェン・プレートレットの懸濁液は、次いで、懸濁液が多孔性基板110の第1の表面116に接触するように、第1の流体チャンバ122に適用できる。例えば、懸濁液は、流体入口ポート126の1つを介して第1の流体チャンバ122の中に装填できる。
【0045】
上で述べられたように、懸濁液は、流体中に懸濁されたグラフェン・プレートレットを含む。流体は、例えば、液体又はガスとすることができる。例えば、流体は、水、アルコール、及び/又は有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))などの液体であるか又はそれを含むことができる。代替として、流体は、窒素ガス、二酸化炭素、希ガス、水蒸気、及び/又は水素ガスなどのガスであるか又はそれを含むことができる。グラフェン・プレートレットに加えて、様々な他の材料は、流体中に懸濁又は溶解される場合がある。追加の材料は、マイクロサイズやナノサイズとすることができる。例えば、懸濁液は、炭素(例えば、グラファイト及び/又はカーボンナノチューブ)、セラミックス(酸化物、炭化物、炭酸塩、及び/又はリン酸塩などの)、金属(アルミニウム及び/又は鉄などの)、半導体、脂質、及び/又は、ポリマーを含むことができる。
【0046】
圧力差は、次いで多孔性基板110を横切って適用される場合がある。上で述べられたように、これは、第1の流体チャンバ122を加圧すること、及び/又は、第2の流体チャンバに真空を適用すること、によって達成できる。示された実例では、加圧器106は、第1の流体チャンバ122を加圧する。
図4を参照すると、圧力差が適用されると、懸濁液は、第2のセクション104に向けて押し込まれるであろう。特に、圧力差が適用されると、懸濁液の(概略示された)流体152は、多孔性基板110の細孔154を通過するであろうし、他方、グラフェン・プレートレット156は、細孔154の内部に係留されるようになって、グラフェン膜を残すであろう(即ち、多孔性基板110を含む膜であって、グラフェン・プレートレット156が多孔性基板の細孔154内部及び/又は第1の表面116上に係留される)。任意選択で、圧力差が適用されている間、懸濁液は、細孔154内部でのグラフェン・プレートレット156の密な詰め込みを容易化する目的で、超音波処理できる。
【0047】
細孔154を通過後に、流体152は、第2のセクション104の中に入って多孔性支持体136の第1の層138、第2の層140、及び第3の層142を通過するであろう。流体は、次いで排出ポート134を介して排出できる。
【0048】
任意選択で、加圧中に、制御サブシステム148は、装置100から情報を受信するため及び/又は装置100を制御するために使用できる。
【0049】
任意選択で、追加の懸濁液は、基板に適用できる。例えば、第1のタイプのグラフェン・プレートレット(例えば、アミノ化グラフェン・プレートレット)の第1の懸濁液は、多孔性基板110に適用できる。次いで、第2のタイプのグラフェン・プレートレット(例えば、酸化グラフェン・プレートレット)の第2の懸濁液は、多孔性基板に適用できる。これは、グラフェンの幾つかのサブ層を含むグラフェン膜をもたらす場合がある。
【0050】
膜の製作の完了時(例えば、懸濁液の流体152の全てが第1の流体チャンバ122から第2の流体チャンバの中に通行したとき)に、装置100は、分解(即ち、第1のセクション102及び第2のセクション104を分離することによって)でき、基板支持枠108及びグラフェン膜(多孔性支持体110を含み、グラフェン・プレートレット156が多孔性基板110の細孔154内部に係留及び/又は多孔性基板110に層として堆積される)は、第1のセクション102及び第2のセクション104から共に除去できる。膜は、次いで、任意選択で、基板支持枠108から除去でき、又は、更なる処理ステップのために基板支持枠108に残ることができる。
【0051】
幾つかの実例では、懸濁液を第1の流体チャンバ122の中に装填するというよりも寧ろ、懸濁液は、第1の流体チャンバ122内に作製できる。例えば、流体及びグラフェン・プレートレットは、第1の流体チャンバ122に別々に付加し、次いで、第1の流体チャンバ122内で結合できる。
【0052】
上記はグラフェン膜を製作するためのバッチプロセスを説明しているが、装置100は、連続的な作業を近似又は模倣するセミバッチ式で代替的に動作できる。例えば、多孔性基板110及び基板支持枠108は、第1のセクション102及び第2のセクション104を通って多孔性支持体136を横切って動くことができる。更にまた、装置100の幾つかは、並列や直列で動作できる。直列で動作する場合、各後続の装置100は、追加のグラフェン・プレートレット156を多孔性基板110の上/中に堆積させるか又は追加の材料を多孔性基板110の上/中に堆積させるために、使用できる。例えば、直列での第1の装置は、アミノ化グラフェン・プレートレットを多孔性基板110の中/上に堆積でき、他方、直列での第2の装置は、酸化グラフェン・プレートレットを多孔性基板110の中/上に堆積できる。
【0053】
任意選択で、装置100の様々な部分は、除去、交換、及び掃除のために構成できる。
【0054】
上の説明は、1つ又は複数のプロセス又は装置或いは組成物の実例を提供するが、他のプロセス又は装置或いは組成物が添付の特許請求の範囲の範囲内にあり得ることを理解されたい。
【0055】
先の又は別の任意の技術に関して(任意の親、兄弟、又は子を含む、この又は任意の関連する特許出願又は特許において)既に行われた任意の補正、特徴付け、又は他の主張が、本出願の本開示によってサポートされる任意の主題について放棄として解釈される可能性のある範囲で、本出願人は、ここに、そういった放棄を破棄及び撤回する。本出願人は、任意の親、兄弟、又は子を含む、任意の関連する特許出願又は特許において既に考慮された任意の先行技術が、再考されるべきことを要し得ることをも謹んで述べる。
【国際調査報告】