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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】フルクトフィリック乳酸産生細菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/02 20060101AFI20220805BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220805BHJP
   C12P 7/54 20060101ALI20220805BHJP
   C12P 7/52 20060101ALI20220805BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220805BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20220805BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220805BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C12N1/02 ZNA
C12N1/20 A
C12P7/54
C12P7/52
C12Q1/02
A61K35/742
A61P3/04
A61P1/16
A61P29/00
A61P3/10
A61P9/00
A61P3/06
A61P9/12
A61P19/06
A61P31/00
A61P31/04
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568485
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 US2019031965
(87)【国際公開番号】W WO2020231397
(87)【国際公開日】2020-11-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】アリ フルカン
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム シヴァクマール
(72)【発明者】
【氏名】マジード シャヒーン
(72)【発明者】
【氏名】ビーディ キランクマール
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ06
4B063QR75
4B063QS40
4B063QX10
4B064AD04
4B064AD05
4B064AD06
4B064CA02
4B064CB18
4B064CD09
4B064CD22
4B064CE08
4B064CE10
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AC05
4B065BD36
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087BC64
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA42
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZB11
4C087ZB32
4C087ZB35
4C087ZC31
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、新規フルクトフィリック乳酸産生細菌バチルス・コアグランス菌株FF-7(MTCC 25235)および前記細菌の単離および特性評価の方法を開示する。本発明はまた、食品からのフルクトースの利用の増加、および高フルクトース摂取に関連する障害の管理における、フルクトフィリック乳酸産生細菌の生物学的用途/治療的使用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂蜜から新規フルクトース利用プロバイオティクス細菌を単離および同定するための方法であって、
f)蜂蜜を生理食塩水と1:10w/vの比率で混合して、懸濁液を得るステップと、
g)ステップa)の懸濁液を十分に混合し、胞子を選択的に分離するために50~70℃で30分間熱ショックを与えるステップと、
h)ステップb)からの懸濁液1~2mlを、フルクトースを含む適切な培養培地中35~37℃で48時間インキュベートすることにより、細菌コロニーを単離するステップと、
i)炭素源としてフルクトースを含む適切な培地中で、形態学的に異なるコロニーを選択およびインキュベートすることにより、細菌単離株を精製するステップと、
j)生化学的分析および16S rRNA配列決定により、細菌株を受託番号MTCC 25235を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)菌株FF7として同定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
蜂蜜が、生蜂蜜、ろ過蜂蜜、アカシア蜂蜜、アルファルファ蜂蜜、アスター蜂蜜、アボカド蜂蜜、バスウッド蜂蜜、ブナノキ蜂蜜、ブルーベリー蜂蜜、ブルーガム蜂蜜、ソバ蜂蜜、クローバー蜂蜜、タンポポ蜂蜜、ユーカリ蜂蜜、ファイアウィード蜂蜜、ヘザー蜂蜜、アイアンバーク蜂蜜、ジャラ蜂蜜、レザーウッド蜂蜜、リンデン蜂蜜、マカデミア蜂蜜、マヌカ蜂蜜、オレンジブロッサム蜂蜜、パインツリー蜂蜜、サワーウッド蜂蜜、セージ蜂蜜、およびチュペロ蜂蜜を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養培地が、MRS(De Man、RogosaおよびSharpeによる寒天)、GYA(グルコース酵母エキス寒天)、TSB(トリプトン大豆ブロス)、胞子形成培地およびミューラーヒントン寒天を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単離されたプロバイオティック菌株が、生化学的試験カタラーゼ、オキシダーゼ、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、ラクトース、キシロース、マルトース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、ラフィノース、トレハロース、メロビオース、スクロース、アラビノース、マンノース、イヌリン、グルコン酸ナトリウム、サリシン、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、メチルグルコシド、ラムノース、セロビオース、ONPG、エスクリン加水分解に対して陽性になり、生化学的試験ソルボースマロネート利用、クエン酸塩利用、キシリトール、メチルマンノシド、メレジトース、エリスリトール、アドニトール、イノシトール、ダルシトール、グリセロール、血液溶血、クエン酸塩およびインドールに対して陰性になる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フルクトースに富む食品からのフルクトースの利用を増加させるために蜂蜜から単離された、バチルス属のフルクトフィリックプロバイオティクス細菌。
【請求項6】
グラム陽性である、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項7】
フルクトフィリック細菌の増殖についての最適pHおよび温度が、それぞれ7.5および40℃である、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項8】
胆汁耐性、胃酸抵抗性であり、乳酸を産生する、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項9】
バチルス・コアグランスである、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項10】
バチルス・コアグランス菌株がバチルス・コアグランスMTCC 25235である、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項11】
フルクトースに富む食品が、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項12】
高フルクトース摂取に関連する障害の治療管理に使用される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項13】
肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、心血管合併症、糖尿病、高脂血症、高血圧、炎症および高尿酸血症を含む群から選択される、請求項12に記載の高フルクトース摂取に関連する障害。
【請求項14】
前記フルクトフィリックプロバイオティクス細菌が、接種物、凍結乾燥粉末、微粉末、錠剤、カプセル、懸濁液、溶液、エマルジョン、グミ、チュアブルまたは食用食品の形態で存在し、単独で、または高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択されるフルクトースに富む食品と組み合わせて投与される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項15】
病原性微生物を阻害する方法であって、前記微生物をフルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235と接触させるステップを含む、方法。
【請求項16】
病原性微生物が、サルモネラ・アボニー(Salmonella abony)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)を含む群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
短鎖脂肪酸を産生する方法であって、フルクトース、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー種子繊維、フラクトオリゴ糖(FOS)からなる群から選択される植物繊維と共に、フルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235を培養することによる、方法。
【請求項18】
短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸およびプロピオン酸を含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、フルクトフィリック(fructophilic)乳酸産生細菌に関する。より具体的には、本発明は、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の単離、特性評価、および生物学的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスならびに健康および多くの障害の予防におけるその重要性はすでに報告されている。フルクトフィリック乳酸菌(FLAB)は、増殖基質としてフルクトースを利用する乳酸菌の特別なグループである。グルコースでの生育が悪く、酸素を好むというそのユニークな特性から、それらは「型破りな」乳酸菌(LAB)と見なされる。それらの異常な増殖特性は、二機能性アルコール/アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(adhE)をコードする不完全な遺伝子によるものである。その結果、NAD/NADHのバランスが崩れ、グルコースを代謝するための追加の電子受容体が必要となる。酸素、フルクトース、ピルビン酸が電子受容体として使用される。FLABは、特に、完全なホスホトランスフェラーゼシステム(PTS)トランスポータが欠如しているため、他のLABよりも炭水化物代謝の遺伝子が顕著に少ない。FLABは元来、リューコノストック属(Leuconostoc species)として分類され、その後、FLABの系統発生的位置ならびに生化学的および形態学的特徴に基づいてフルクトバシルス属(Fructobacillus species)として再分類された(Endo A, Okada S. 2008. Reclassification of the genus Leuconostoc and proposals of Fructobacillus fructosus gen. nov., comb. nov., Fructobacillus durionis comb. nov., Fructobacillus ficulneus comb. nov. and Fructobacillus pseudoficulneus comb. nov. Int J Syst Evol Microbiol 58:2195-2205)。
【0003】
フルクトースの代謝は、肝臓の酵素フルクターゼから始まる。フルクトースの負荷は、腸細胞および肝臓で乳酸塩に変換される。さらに、肝臓の過剰フルクトースは、末梢組織に向けられ、脂肪組織に存在するインスリン依存性グルコーストランスポーター、GLUT4によって取り込まれ、脂肪酸に変換される。GLUT4は、フルクトース誘発性肝脂肪症および脂質異常症の発症に重要な役割を果たすと報告されている。さらに、NASH、NAFLD、脂質異常症、肝臓および骨格筋における異所性脂質沈着、尿酸代謝、高血圧、ミネラル代謝のような、いくつかのフルクトース誘発性代謝障害が報告されている。(Prasanthi Jegatheesan and Jean-Pascal De Bandt, Fructose and NAFLD: The Multifaceted Aspects of Fructose Metabolism, Nutrients. 2017 Mar; 9(3): 230; Bidwell AJ, Chronic Fructose Ingestion as a Major Health Concern: Is a Sedentary Lifestyle Making It Worse? A Review, Nutrients. 2017 Jun; 9(6): 549)。フルクトースの過剰摂取は、心血管リスクの増加にも関連している。フルクトース摂取の増加は、血中のpHを過度に低下させることにより、乳酸アシドーシスを引き起こす可能性もある。
【0004】
プロバイオティクスは、腸のフルクトースの代謝に重要な役割を果たす。経口摂取される低用量のフルクトースは、腸に到達し、さまざまな酵素や固有の微生物叢の存在下で代謝される。しかしながら、高用量のフルクトースの存在下では、フルクトースの負荷が腸から肝臓に溢流する。腸から肝臓へのフルクトースの溢流を減らすために、プロバイオティクスはフルクトースをSCFA(短鎖脂肪酸)に変換する重要な役割を果たす。
FLABは、果物や野菜、ヒトの便培養物、天然抗菌剤、チーズ、ケフィア粒、乳製品および非乳製品、発酵乳および生乳、授乳を受けている乳児の便、授乳中の乳、羊、水牛乳および牛乳、ヨーグルト、飲料、家禽供給源、動物ルーメン内容物、ペンギング・ダック(Pengging Duck)の盲腸、鶏の腸と糞の試料、鶏の飼料、酵素、発酵米、凝乳、肉エキスおよび酵母エキス、グルコースおよびスクロース、ヒトの消化管、ヒトのコロニー上皮細胞、ヒトおよび動物の膣および口腔抽出物、ヒト乳児のおむつ、パイナップルの廃棄物、工業用ソーセージ、アイスクリーム、子豚の小腸、コーンスラリー、作物および腸のアヒル(intensinal ducks)のような、さまざまな供給源から単離されている。異なるFLABの単離については、以下の先行技術文献に記載されている。
【0005】
1. Akihito Endo, Fructophilic lactic acid bacteria inhabit fructose-rich niches in nature, Microb Ecol Health Dis. 2012; 23
2. Akihito Endo, Shintaro Maeno, Yasuhiro Tanizawa, Wolfgang Kneifel, Masanori Arita, Leon Dicks, Seppo Salminen, Fructophilic Lactic Acid Bacteria, a Unique Group of Fructose Fermenting Microbes, Minireview, Applied and Environmental Microbiology, October 2018 Volume 84 Issue 19 e01290-18
3. Arshad F, Mehmood R, Hussain S, Khan MA, Khan MS (2018) Lactobacilli as Probiotics and their Isolation from Different Sources. Br J Res 5 (3): 43
【発明の概要】
【0006】
プロバイオティクスの生物学的効果は菌株特異的であり、全ての菌株および種に一般化できるわけではないことを考えると(Guidelines for the evaluation of probiotics in food, Joint FAO/WHO Working Group Report on Drafting Guidelines for the Evaluation of Probiotics in Food、ロンドン、オンタリオ、カナダ、2002年4月30日および5月1日、「現況の証拠は、プロバイオティクス効果が菌株特異的であることを示唆している。菌株を特定の健康効果に関連付けるには、ならびに正確なサーベイランスおよび疫学研究を可能とするためにも、菌株の同定が重要である。」を示すセクション3.1を参照されたい)、生物学的機能を改善された優れたフルクトフィリックプロバイオティクス細菌を見つける必要が依然としてある。本発明は、新規フルクトフィリック乳酸菌バチルス・コアグランスMTCC 25235を開示することにより、上記課題を解決するものである。
【0007】
本発明の主な目的は、新規フルクトフィリック乳酸産生細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235およびその単離方法を開示することである。
本発明の別の目的は、フルクトフィリック乳酸産生細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235による短鎖脂肪酸の産生を開示することである。
本発明のさらなる別の目的は、フルクトフィリック乳酸産生細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235の抗菌効果を開示することである。
本発明は、上記の目的を解決し、さらに関連する利点を提供する。
生物学的材料の寄託
本出願において述べられる、受託番号MTCC 25235を有する生物学的材料バチルス・コアグランス菌株FF7の寄託は、2019年2月28日に、CSIR-微生物技術研究所、セクター39-A、チャンディーガル-160036、インドのMicrobial Type Culture Collection & Gene Bank(MTCC)で為された。
【0008】
本発明は、フルクトフィリック乳酸産生細菌を開示する。本発明は、フルクトフィリック乳酸産生細菌の単離、特性評価、および生物学的応用/治療的使用の方法をさらに開示する。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、例として本発明の原理を説明する以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
本特許または出願書類には、カラーで行われた少なくとも1つの図面が含まれる。カラー図面を有する本特許または特許出願公開公報のコピーは、リクエストおよび必要な料金の支払いに応じて、庁から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A-1D】バチルス・コアグランスMTCC 25235の位相差顕微鏡画像(倍率1000倍)(図1A)、胞子を有する細胞のウェットマウント(図1B)、栄養細胞のグラム染色(図1C)、胞子形成細胞の胞子染色、および(図1D)、GYE寒天プレート上で増殖したコロニーを示す図である。
図2】炭素源としてフルクトースとデキストロースの存在下でのバチルス・コアグランスFF7、MTCC 25235、およびB.コアグランスATCC 31284の増殖パターンの比較のグラフ図である。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図3】培地およびフルクトースに富む食品(蜂蜜、フルーツジュース)の存在下で24時間インキュベートした後のバチルス・コアグランスMTCC FF7、25235によるフルクトースの利用のグラフ図である。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図4】バチルス・コアグランスFF7の相対位置を示す16S rRNAの配列に基づく系統樹を示す図である。
図5】B.コアグランスFF7、MTCC 25235、およびB.コアグランスATCC 31284の増殖に対する異なるpHの影響を示すグラフ図である。増殖に最適なpHは、それぞれpH7.5およびpH6.5であることがわかった。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図6】B.コアグランスMTCC FF7、25235およびB.コアグランスATCC 31284の増殖に対する異なる温度の影響のグラフ図である。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図7】インビボ条件を模倣したインビトロ実験での胃処理後のB.コアグランスMTCC 25235の生存率に対するGIT過酷条件の影響を示すグラフ図である。滅菌生理食塩水を未処理の対照として採用した。
図8】バチルス・コアグランスMTCC 25235のBSH活性を示す図である。(図8A)牛胆汁(0.3%、w/v)およびCaCO3(0.3%、w/v)を補充したMRS軟寒天を用いた測定を行い、胆汁塩を含まないMRS寒天を陰性対照とした(図8B)。空洞区域は、B.コアグランスMTCC 25235のBSH活性を示唆している。
図9】胃液緩衝液中のさまざまなpH値(1.5~8.0)でのバチルス・コアグランスMTCC FF7、25235の生存のグラフ図である。値はLog10胞子/gで表される。データは実行した2つの異なる実験の平均と標準偏差(±SD)を表す。
図10】B.コアグランスFF7、MTCC 25235、およびB.コアグランスATCC 31284の増殖に対する牛胆汁塩のインビトロ効果のグラフ図である。B.コアグランスMTCC 25235およびB.コアグランスATCC 31284のオーバーナイト増殖新鮮培養物を牛胆汁塩(0.1、0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、0.9および1%、w/v)有りおよび無し(%、w/v)のMRSブロスに接種した。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図11】研究された6×109(調製物1)および15×109cfu/g(調製物2)に相当する2つの標準化調製物の存在下での、B.コアグランスFF7、MTCC 25235によるL-乳酸の産生のグラフ図である。値は3つの独立した測定からの平均(±SD)である。
図12A-12C】フルクトース、FOS、クランベリー種子繊維、フェヌグリーク種子繊維の発酵中の、バチルス・コアグランスMTCC 25235からの酢酸(図12A)、酪酸(図12B)およびプロピオン酸(図12C)産生のグラフ図である。試料は、発酵の4、8、12、18および24時間後に収集された。値は、2つの異なる機会に実行された3反復の平均であり、mg/gで表される。
図13】温度40±2℃、RH60%±5%で保存中のB.コアグランスMTCC 25235の生存のグラフ図である。15×109(調製物1)および6×109cfu/g(調製物2)に相当する2つの標準化調製物を研究した。胞子生存数の平均はlog10 cfu/gで表される。各時点は、2反復で実行された3つの異なる実験の平均Log10標準偏差(±SD)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最も好ましい実施形態において、本発明は、蜂蜜から新規フルクトース利用プロバイオティクス細菌を単離および同定するための方法であって、以下のステップ:
a)蜂蜜を生理食塩水と1:10w/vの比率で混合して、懸濁液を得るステップと、
b)ステップa)の懸濁液を十分に混合し、胞子を選択的に分離するために50~70℃で30分間熱ショックを与えるステップと、
c)ステップb)からの懸濁液1~2mlを、フルクトースを含む適切な培養培地中35~37℃で48時間インキュベートすることにより、細菌コロニーを単離するステップと、
d)炭素源としてフルクトースを含む適切な培地中で、形態学的に異なるコロニーを選択およびインキュベートすることにより、細菌単離株を精製するステップと、
e)生化学的分析および16S rRNA配列決定により、細菌株を受託番号MTCC 25235を有するバチルス・コアグランス菌株FF7として同定するステップと
を含む、方法を開示する。
【0013】
関連する態様では、蜂蜜は、生蜂蜜、ろ過蜂蜜、アカシア蜂蜜、アルファルファ蜂蜜、アスター蜂蜜、アボカド蜂蜜、バスウッド蜂蜜、ブナノキ蜂蜜、ブルーベリー蜂蜜、ブルーガム蜂蜜、ソバ蜂蜜、クローバー蜂蜜、タンポポ蜂蜜、ユーカリ蜂蜜、ファイアウィード蜂蜜、ヘザー蜂蜜、アイアンバーク蜂蜜、ジャラ蜂蜜、レザーウッド蜂蜜、リンデン蜂蜜、マカデミア蜂蜜、マヌカ蜂蜜、オレンジブロッサム蜂蜜、パインツリー蜂蜜、サワーウッド蜂蜜、セージ蜂蜜、およびチュペロ蜂蜜を含むがこれらに限定されない群から選択される。別の関連する態様では、培養培地は、MRS(De Man、RogosaおよびSharpeによる寒天)、GYA(グルコース酵母エキス寒天)、TSB(トリプトン大豆ブロス)、胞子形成培地およびミューラーヒントン寒天を含む群から選択される。
【0014】
別の関連する態様において、単離されたプロバイオティック菌株は、生化学的試験カタラーゼ、オキシダーゼ、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、ラクトース、キシロース、マルトース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、ラフィノース、トレハロース、メロビオース、スクロース、アラビノース、マンノース、イヌリン、グルコン酸ナトリウム、サリシン、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、メチルグルコシド、ラムノース、セロビオース、ONPG、エスクリン加水分解に対して陽性になり、生化学的試験ソルボースマロネート利用、クエン酸塩利用、キシリトール、メチルマンノシド、メレジトース、エリスリトール、アドニトール、イノシトール、ダルシトール、グリセロール、血液溶血、クエン酸塩およびインドールに対して陰性になる。
【0015】
別の好ましい実施形態において、本発明は、フルクトースに富む食品からのフルクトースの利用を増加させるために蜂蜜から単離された、バチルス属の新規プロバイオティクス細菌を開示する。別の関連する態様では、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌はグラム陽性である。さらに別の態様では、フルクトフィリック細菌の増殖について記録された最適pHおよび温度は、それぞれ7.5および40℃である。別の態様では、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌は、胆汁耐性、胃酸抵抗性であり、乳酸を産生する。関連する態様では、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌は、バチルス・コアグランスである。さらに別の関連する実施形態において、バチルス・コアグランス菌株は、バチルス・コアグランスMTCC 25235である。関連する態様において、フルクトースに富む食品は、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択される。関連する態様では、高フルクトース摂取に関連する障害の治療管理に、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌が使用される。関連する態様では、高フルクトース摂取に関連する疾患は、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、心血管合併症、糖尿病、高脂血症、高血圧、炎症および高尿酸血症を含むがそれらに限定されない群から選択される。別の関連する態様では、フルクトフィリックプロバイオティクス細菌は、接種物、凍結乾燥粉末、微粉末、錠剤、カプセル、懸濁液、溶液、エマルジョン、グミ、チュアブルまたは食用食品の形態で存在し、単独で、または高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択されるフルクトースに富む食品と組み合わせて投与される。
【0016】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、病原性微生物を阻害する方法であって、前記微生物をフルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235と接触させるステップを含む、方法を開示する。関連する態様では、病原性微生物は、サルモネラ・アボニー(Salmonella abony)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)を含む群から選択される。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本発明は、短鎖脂肪酸を産生する方法であって、フルクトース、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー種子繊維、フラクトオリゴ糖(FOS)からなる群から選択される植物繊維と共に、フルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235を培養することによる、方法を開示する。
【0018】
本明細書の以下に含まれる特定の実施例は、本発明の前述の最も好ましい実施形態を示している。
【実施例
【0019】
実施例1:フルクトフィリック細菌の単離および同定
方法
本研究においては、胞子を形成するフルクトフィリック乳酸菌を単離するために、ろ過されていない生の蜂蜜を使用した。本研究においては、フルクトフィリック細菌の単離のために、MRS(de Man、RogosaおよびSharpe)(デキストロースをフルクトースに置き換えたもの)を使用した(表1)。
【0020】
【表1】

1gmの未ろ過の生蜂蜜を10mlの生理食塩水を含む試験管に入れた。これをよく混合して、胞子の選択的単離のため、70℃で30分間熱ショックを与えた。細菌の単離は、上記の試料1mlを各希釈液からフルクトースを含むMRS寒天プレートへ加えることによって行った。プレートをさらに37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、細菌単離株のさらなる試験と精製のために、形態学的に異なるコロニーをピックアップした。バチルス・コアグランスMTCC 25235を単離し、フルクトースを炭素源として含む他のMRS寒天培地プレートにストリークした。
【0021】
フルクトフィリック細菌の生化学的特性評価
細菌単離株は、MRSA(de Man、RogosaおよびSharpeによる寒天)に37℃で24時間増殖させた。細菌接種物は、1~3個の十分に単離されたコロニーを採取することにより調製し、滅菌生理食塩水中の均一な懸濁液を調製した。懸濁液の濃度は620nmで≧0.5ODであった。この接種物(50μl)を使用し、キット製造業者(HiMedia、ムンバイ、インド)の取扱説明書に従って試験を実行した。バチルス・コアグランスMTCC 25235およびB.コアグランスATCC 31284の生化学的特性評価は、記載されている方法で実行した(Majeed, M., Nagabhushanam, K., Natarajan, S., Sivakumar, A., Eshuis-de Ruiter, T., Booij-Veurink, J., Janine Booij-Veurink, Ynte P. de Vries, Ali, F. (2016); Evaluation of genetic and phenotypic consistency of Bacillus coagulans MTCC 5856: A commercial probiotic strain. World Journal of Microbiology & Biotechnology, 32,60)。HiCarbohydrate(商標)キット(コード-KB009)はHiMedia、ムンバイ、インドから調達し、試験は、製造業者の取扱説明書に従って実行した。バチルス・コアグランスMTCC 25235およびB.コアグランスATCC 31284の細菌懸濁液は、上記のセクションで述べたように調製した。さらに、B.コアグランスATCC 31280のIMViC(インドール、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、クエン酸塩利用)試験、オキシダーゼおよびグラム染色は、Majeedら、(2016);(Cappucino G and Natalie Sherman. Microbiology: A Laboratory manual 5th edition. 1998)の方法に従って実行した。
【0022】
16S rDNA配列決定
B.コアグランスMTCC 5856の16S rDNA配列決定用のゲノムDNAは、(William J. Bruno, Nicholas D. Socci, and Aaron L. Halpern (2000). Weighted Neighbor Joining: A Likelihood-Based Approach to Distance-Based Phylogeny Reconstruction, Mol. Biol. Evol. 17 (1): 189-197)によって以前に記載されたように調製した。16S rDNA遺伝子の断片は、以前記載されたようにABI 3500遺伝子アナライザ自動DNAシーケンサを使用して配列決定した(Heyrman and Swings 2001)。使用した配列決定プライマーは、5-AGHGTBTGHTCMTGNCTCAS-3(フォワードプライマー)および5-TRCGGYTMCCTTGTWHCGACTH-3(リバースプライマー)であった。およそ1.5kbの増幅されたDNA断片を1%アガロースゲルで分離し、Qiagenスピンカラムを使用することにより精製した。精製された断片は、DNA配列決定に直接使用した。この配列は、BLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で使用した。
【0023】
バチルス・コアグランスMTCC 25235の増殖条件
バチルス・コアグランスMTCC 25235の増殖条件の最適化を、異なる温度とpHについて分析した。MRSB培地を調製し、2N HClと2N NaOHでpHを4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0に調整した。オーバーナイト増殖培養液(1%、v/v)をpH調整培地に接種し、振とうインキュベータ内で120rpm、24時間インキュベートした。増殖は、分光光度計(Shimadzu Corporation、京都、日本)を使用して600nmでの吸光度を測定することにより、6時間間隔でモニタした。MRSB培地は、pHを6.5に調整して調製し、オーバーナイト増殖培養物(1%、v/v)を用いて接種した。さらに、フラスコは、振とうインキュベータ内で120rpm、24時間、異なる温度(20、30、37、40、50および60℃)でインキュベートした。増殖は、分光光度計(Shimadzu Corporation、京都、日本)を使用して600nmでの吸光度を測定することにより、6時間間隔でモニタした。
【0024】
結果
フルクトフィリック細菌の同定
バチルス・コアグランスMTCC 25235の胞子は楕円形の端在性胞子であり(図1A)、栄養細胞はグラム染色で示されるようにグラム陽性の棒状であった(図1B)。B.コアグランスMTCC 25235のコロニーを培地上で増殖させ、栄養棒状細胞を含む均一で直径1~3mm、白色からクリーム色の滑らかなコロニーを得た(図1CおよびD)。単離された細菌の増殖は、デキストロースに富む培地よりもフルクトースに富む培地で良好であったが(図2)、これは、他のバチルス・コアグランス菌株と比較した場合、そのフルクトフィリックな性質およびフルクトース利用の可能性を示している。この細菌の増殖は、フルクトースに富む食品でも試験され、フルクトース含有量の減少を示した(図3)が、これは、この細菌が、増殖と成長のためにフルクトースを炭素源として利用していることを暗示している。このように、この細菌は、食品中の過剰なフルクトースをその代謝のために利用することにより、高フルクトース摂取に関連する障害の管理および予防に使用することができる。この細菌は、単独で、または高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含むフルクトースに富む食品と組み合わせて投与することができる(Braverman J、List of Foods high in fructose、https://www.livestrong.com/article/30454-list-foods-high -fructose/、2019年5月3日閲覧)
【0025】
生化学的特性評価
バチルス・コアグランスMTCC 25235およびB.コアグランスATCC 31284の生化学的特性評価は、記載される方法によって実行した(Majeed, M., Nagabhushanam, K., Natarajan, S., Sivakumar, A., Eshuis-de Ruiter, T., Booij-Veurink, J., Janine Booij-Veurink, Ynte P. de Vries, Ali, F. (2016); Evaluation of genetic and phenotypic consistency of Bacillus coagulans MTCC 5856: A commercial probiotic strain. World Journal of Microbiology & Biotechnology, 32,60)。結果を市販のB.コアグランスATTCC 3128菌株と比較し、表2に示した。
【0026】
【表2】


【0027】
結果は、単離されたプロバイオティック菌株が生化学的試験カタラーゼ、オキシダーゼ、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、ラクトース、キシロース、マルトース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、ラフィノース、トレハロース、メロビオース、スクロース、メロビオース、アラビノース、マンノース、イヌリン、グルコン酸ナトリウム、サリシン、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、メチルグルコシド、ラムノース、セロビオース、ONPG、エスクリン加水分解に陽性であり、生化学的試験ソルボースマロネート利用、クエン酸塩利用、キシリトール、メチルマンノシド、メレジトース、エリスリトール、アドニトール、イノシトール、ダルシトール、グリセロール、血液溶血、クエン酸塩およびインドールに陰性であることを示した。
【0028】
16S rDNA配列決定
細菌の16S rDNAを配列決定して配列情報(配列番号)を以下のように得た:
【0029】
遺伝子座 seq_FF7 1437 bp
開始点
1 ACTTGCAAGT CGTGCGGCCC TTTTTTAAAA GCTTGCTTTT TAAAAGGTTA GCGGCGGACG
61 GGTGAGTAAC ACGTGGGCAC CCTGCCTGTA AGATCGGGAT AACGCCGGGA AACCGGGGCT
121 AATACCGGAT AGTTTTTTCC TCCGCATGGA GGAAAAAGGA AAGACGGCTT CTGCTGTCAC
181 TTACAGATGG GCCCGCGGCG CATTAGCTAG TTGGTGGGGT AACGGCTCAC CAAGGCAACG
241 ATGCGTAGCC GACCTGAGAG GGTGATCGGC CACATTGGGA CTGAGACACG GCCCAAACTC
301 CTACGGGAGG CAGCAGTAGG GAATCTTCCG CAATGGACGA AAGTCTGACG GAGCAACGCC
361 GCGTGAGTGA AGAAGGCCTT CGGGTCGTAA AACTCTGTTG CCGGGGAAGA ACAAGTGCCG
421 TTCGAACAGG GCGGCGCCTT GACGGTACCC GGCCAGAAAG CCACGGCTAA CTACGTGCCA
481 GCAGCCGCGG TAATACGTAG GTGGCAAGCG TTGTCCGGAA TTATTGGGCG TAAAGCGCGC
541 GCAGGCGGCT TCTTAAGTCT GATGTGAAAT CTTTGCGGGC TCACCCGCAA GCGGTCATTG
601 GAAACTGGGA GGGCTTTGAG TGCAAGAAAG AGGAGAGTGG AATTTCCACG TGTAGCGGTG
661 AAATGCGTAA AGATGTGGAG GAACACCAGT GGCGAAGGCG GCTCTCTGGT CTGTAACTGA
721 CGCTGAGGCG CGAAAGCGTG GGGAGCAAAC AGGATTAGAT ACCCTGGTAG TCCACGCCGT
781 AAACGATGAG TGCTAAGTGT TAGAGGGTTT CCGCCCTTTA GTGCTGCAGC TAACGCATTA
841 AGCACTCCGC CTGGGGAGTA CGGCCGCAAG GCTGAAACTC AAAGGAATTG ACGGGGGCCC
901 GCACAAGCGG TGGAGCATGT GGTTTAATTC GAAGCAACGC GAAGAACCTT ACCAGGTCTT
961 GACATCCTCT GACCTCCCTG GAGACAGGGC CTTCCCCTTC GGGGGACAGA GTGACAGGTG
1021 GTGCATGGTT GTCGTCAGCT CGTGTCGTGA GATGTTGGGT TAAGTCCCGC AACGAGCGCA
1081 ACCCTTGACC TTAGTTGCCA GCATTCAGTT GGGCACTCTA AGGTGACTGC CGGTGACAAA
1141 CCGGAGGAAG GTGGGGATGA CGTCAAATCA TCATGCCCCT TATGACCTGG GCTACACACG
1201 TGCTACAATG GATGGTACAA AGGGCTGCGA GACCGCGAGG TTAAGCCAAT CCCAGAAAAC
1261 CATTCCCAGT TCGGATTGCA GGCTGCAACC CGCCTGCATG AAGCCGGAAT CGCTAGTAAT
1321 CGCGGATCAG CATGCCGCGG TGAATACGTT CCCGGGCCTT GTACACACCG CCCGTCACAC
1381 CACGAGAGTT TGTAACACCC GAAGTCGGTG AGGTAACCTT ACGGAGCCAG CCGCCGA
//
上記の配列を用いてBLAST(Basic local alignment search tool;基本的局所アラインメント検索ツール)検索を実行し、最初の10個のアラインメント配列の結果を表3に示す。
【0030】
【表3】


この結果は、単離された生物がバチルス・コアグランス菌株55-LR4と98.96%の同一性を有するバチルス・コアグランスの新しい菌株であることを示した。系統発生分析の結果も、生物がバチルス・コアグランスの新しい菌株であることを示した(図4)。
【0031】
フルクトフィリック細菌の最適な増殖条件
フルクトフィリック細菌の増殖について記録された最適pHおよび温度は、それぞれ7.5および40℃であった(図5および図6)。
【0032】
実施例2:インビトロでのバチルス・コアグランスMTCC 25235のプロバイオティクス評価
胃酸への抵抗性
バチルス・コアグランスMTCC 25235胞子の生存については、1mlの懸濁液を0.01%リゾチーム(Sigma-Aldrich)および0.3%ペプシン(Sigma-Aldrich)を含む100mlの滅菌電解質溶液(6.2g/L NaCl、2.2g/L KCl、0.22g/L CaCl2、および1.2g/L NaHCO3)に添加して、5分間インキュベートすることによって研究した。さらに、pHを1.5、3、4、5、6、7および8に調整した(1N NaOHおよび1N HClを使用して調整した)。インキュベーション温度は、37℃で4時間モニタした。0、1.0、2.0、3.0および4.0時間の異なる時間間隔で、1mlの試料を採取した。インキュベーション後、滅菌生理食塩水(0.89%w/v)中に連続希釈し、生菌数は、グルコース酵母エキス寒天(HiMedia)にプレーティングすることによって計数された。実験は、2つの異なる機会に3反復で実行した。
【0033】
胆汁塩耐性
バチルス・コアグランスMTCC 25235細胞の胆汁耐性は、既報の方法(Gilliland et al. 1984; Hyronimus et al. 2000)によって決定された。MRSブロス(HiMedia)におよそ106cfu mL-1のバチルス・コアグランスMTCC 25235オーバーナイト増殖培養液を接種し、その後、(0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5および2.0%、w/v)胆汁塩を補充し、胆汁塩を補充しないものを実験の対照とした。試料を120rpmでの振とうと共に24時間、37℃でインキュベートした。対照(胆汁無し)および異なる濃度の胆汁での試験培養物の増殖を、分光光度計(Shimadzu Corporation、京都、日本)を使用して600nmでの吸光度を測定することにより毎時間モニタした。
【0034】
乳酸の産生
バチルス・コアグランスMTCC 25235による乳酸産生は、Megazymeキットを使用して推定した。バチルス・コアグランスMTCC 25235のオーバーナイト増殖培養物の1白金耳量をグルコース酵母エキスブロス(HiMedia)に加え、37℃で18時間、120rpmでインキュベートした。インキュベーション後、ブロスを0.22μ(Sartorius、インド)に通してろ過し、取扱説明書に従ってMegazymeキット(K-DLATE 10/04)を使用して乳酸含有量を分析した(Megazyme International Ireland、IDA Business Park、Wicklow、アイルランド)。アッセイではGYE培地をブランクとして使用した。
【0035】
人工胃液耐性
口腔消化条件を示すために、バチルス・コアグランスMTCC 25235胞子の生存を研究した。1mLのバチルス・コアグランスMTCC 25235懸濁液を、pH6.8±0.2に調整された、KCl(0.8946g/l)、CO(NH22(0.1981g/L)、Na2SO4(0.5681g/L)、NaHCO3(1.680g/L)、NaH2PO4(0.8878g/L)からなる人工唾液内容物に供し、37℃で5分間インキュベートした。さらに、9g/Lの塩化ナトリウムおよび3g/Lのペプシン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、米国)を加えることにより人工胃液を調製し、その後、2N HClを使用してpHを無菌状態で3.0±0.2に調整した。試料を37℃で3時間、低r.p.m.でさらにインキュベートした。3時間のインキュベーション後、2N NaOHを使用してpHを無菌的に7.0に調整した。牛胆汁(5g/L)を37℃で24時間、さらにインキュベートした。人工消化プロセスの最終ステップの後、試料を収集し、バチルス・コアグランスMTCC 25235の胞子生存について評価した。グルコース酵母エキス寒天培地(HiMedia)を使用した連続希釈法により計数を行った(図7)。
【0036】
抗生物質抵抗性パターン
MICは、臨床研究基準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute;CLSI 2012)のガイドラインに従って決定された。バチルス・コアグランスMTCC 25235懸濁液は、18時間増殖細菌培養物を滅菌標準生理食塩水(0.89%NaCl wt/vol;Himedia、ムンバイ インド)に懸濁して調製した。細菌懸濁液の濁度を0.5のMcFarland標準液(1.5×108コロニー形成単位(CFU)/mlに相当)に調整した。抗生物質ストック溶液はCLSIガイドラインに従って調製し、2倍連続希釈液を、96ウェルU底マイクロタイタプレート(BD Labware、NJ USA)内に100μlの容量で、ブロス培地(グルコース酵母エキスアセテートブロス[バチルス・コアグランスMTCC 25235についてはGYEA、HiMedia、ムンバイ インド、スタフィロコッカス・アウレウスについてはMueller Hinton Broth[MHB、Difco Laboratories、Detroit,Mich USA])中に調製した。上に述べた細菌懸濁液をMHB中にさらに希釈し、この希釈した接種物の100μl容量をプレートの各ウェルに加えて、ウェル内に5×105CFU/mlの最終接種物とし、抗生物質の最終濃度は0.0078~4μg/mlの範囲であった。本研究では、S.アウレウス ATCC 6538を参照培養物として使用した。プレートを37℃で24時間インキュベートし、濁りの有無について目視した。濁りを示さない化合物濃度の最小濃度をMICと記録した。
【0037】
AMES試験
実験のデータは、B.コアグランスMTCC 25235胞子が、S9代謝活性化系の有無にかかわらず、陰性対照と比較して、5つのサルモネラ菌株(TA98、TA100、TA102、TA1535およびTA1537)の復帰変異体の数を増加させなかったことを示唆した。さらに、B.コアグランスMTCC 25235胞子(最大5000μg/プレート)によって用量依存的な変異原性効果は生じなかった。B.コアグランスMTC 25235胞子は、実験条件下で変異原性活性を示さなかった。
【0038】
BSH活性
牛胆汁および炭酸カルシウムを含む寒天プレート上でバチルス・コアグランスMTCC 25235の増殖を観察したが、これは牛胆汁に対する耐性とBSH活性の存在を示している。(図8Aおよび8B)に示すように、軟寒天プレートには19±2mmの透明区域があったが、これはBSH活性の存在を示した。
【0039】
ヒト病原体に対する抗菌活性
抗菌活性は、わずかな修正を加えた、以前に記載されたウェル拡散アッセイによって実行した(Cintas LM, Rodriguez JM, Fernandez MF, Sletten K, Nes IF, Hernandez PE, Holo H (1995) Isolation and characterization of pediocin L50, a new bacteriocin from Pediococcus acidilactici with a broad inhibitory spectrum. Appl Environ Microbiol 61:2643-2648)。簡単に説明すると、106cfu mL-1の指示菌株(S.エピダーミディス ATCC 14990、S.ミュータンス MTCC 1943、S.アウレウス ATCC 29213、B.セレウス ATCC 14579、P.アクネス ATCC 11827、大腸菌 ATCC 25922、P.エルギノーサ ATCC 9027、M.ルテウス NCIM 216およびS.アボニー NCIM 2257)を含む、5mL菌叢の軟(0.7%寒天)グルコース酵母エキス(HiMedia、インド)を、強化した硬(1.5%寒天)トリプシン大豆寒天(HiMedia、インド)の頂上に注いだ。1白金耳量のオーバーナイト増殖培養液B.コアグランスMTCC 25325をMRS培地に加え、120rpmで24時間、37℃でインキュベートした。24時間後、培養液を遠心分離(10,000×9g)して細胞を除去し、上清を回収し、凍結乾燥により10倍に濃縮し、0.22μフィルタ(Sartorius、インド)に通してろ過滅菌した。濃縮した上清(50μL)を、固化2層寒天に穴を開けた6mmウェルに加えた。冷蔵庫(4±2℃)で5時間プレートを保存し、試料を寒天中に拡散させた後、37℃で18~20時間インキュベートした。インキュベーション後、阻害区域を測定し、mm単位で記録した。
【0040】
短鎖脂肪酸の産生
バチルス・コアグランスMTCC 25235を用いたインビトロ発酵を、McBurneyおよびThompson(1987)に記載された方法にいくつかの修正を施した以下の方法によって行った。簡単に説明すると、2.0gのフルクトース、フェヌグリーク種子、クランベリー種子繊維、FOSを100mlの脱イオン水に添加した。pHを7.0±0.2に調整し、121℃で20分間オートクレーブした。滅菌後、酸素還元酵素オキシラーゼ(Oxyrase(登録商標)for Broth、Oxyrase,Inc、OH、USA)を各フラスコに加えて、嫌気性条件を誘導した。5%のオーバーナイト増殖バチルス・コアグランスMTCC 25235培養物を全てのフラスコに接種し、37℃で穏やかに振とうさせたrpmで24時間インキュベートした。ボトルをきつく閉じ、パラフィルムで密封して、酵素補充によって生成された嫌気性条件を維持した。インキュベーション0時間および発酵後(24時間)のpH値も記録された。1mlの硫酸銅(10g/L)を各試料に加えて、さらなる微生物の増殖を阻害した(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)。さらに、5.0mlの試料を5mlの蒸留水に加え、3M H2SO4を使用してpHを1.5に調整した。10mlの冷却ジエチルエーテル(-20℃)を試料に加え、1分間ボルテックスした。塩化ナトリウムを加え、3000×gで10分間、遠心分離した。遠心分離後、有機層を分離し、新しいバイアルに移した。これを使用してSCFAを定量した。SCFA標準はSigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入し、同様に処理した。SCFA産生(酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩)は、DB-FFAP(テレフタル酸修飾ポリエチレングリコール)カラムを含む、Agilent technologies 6890Nガスクロマトグラフ(Stevens Creek Blvd Santa Clara、CA、USA)を使用したガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。カラム温度は200℃であった。インジェクターおよび検出器ポートの温度は250℃であった。キャリアガスは、1.0ml/分の流量のN2であった。SCFA標準はSigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入した。SCFA(酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩)濃度は、フェヌグリーク種子からのガラクトマンナン1g当たりのmg数で表した。
【0041】
結果
胃酸への抵抗性
4時間までの研究で、初期の胞子数と比較して、pH3からpH8.0での胞子数に有意な差(2~5%)はなかった(図9)。しかしながら、pH1.5では、1および4時間でそれぞれ0.44および2.036 log10の減少が観察された。研究の結果は、酸性ならびにアルカリ性pH条件でのバチルス・コアグランスMTCC 25235胞子の安定性を確認するものであった。
【0042】
胆汁耐性試験
胆汁塩(1%w/v)を含む寒天プレートでバチルス・コアグランスMTCC 25235の増殖が観察され、胆汁塩に対する耐性を示した。さらに、異なるフラスコ内に(0.1~2.0%)牛胆汁をMRSブロスに補充することによって胆汁耐性アッセイを実行した。バチルス・コアグランスMTCC 25235の増殖が、最大2%、w/vの牛胆汁の存在下および非存在下で観察された。一方で、B.コアグランスATCC 31284の増殖が0.8%w/vで見られた(図10)。同様に、胆汁塩の存在下および非存在下で、バチルス・コアグランスMTCC 25235およびB.コアグランスATCC 31284の生存率に有意な差はなかった。
乳酸の産生
バチルス・コアグランスMTCC 25235による乳酸産生は、Megazymeキットを使用して推定した。バチルス・コアグランスMTCC 25235によって産生された乳酸の総量は4.487g/Lであった。L型乳酸は4.12g/Lであった。一方、バチルス・コアグランスMTCC 25235によるD型乳酸は0.367g/Lである(図11)。
【0043】
抗生物質抵抗性
クリンダマイシン、カナマイシン、アンピシリン、ストレプトマイシン、バンコマイシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリンおよびクロラムフェニコールの、バチルス・コアグランスMTCC 25235およびS.アウレウス ATCC 6538に対するMICの結果を表4に示す。試験した全ての抗生物質は、バチルス・コアグランスMTCC 25235に対して0.0078~1.0μg/mlのMIC範囲を示した。全ての試験した抗生物質は、S.アウレウス ATCC 6538に対して0.031~2μg/mlのMIC範囲を示した。
【0044】
【表4】



抗菌活性
B.コアグランスMTCC 25235の抗菌活性を評価した。抗菌活性は、Cintasら(1995)に記載されるように、ウェル拡散アッセイによって決定した。結果は、プロバイオティクス細菌がサルモネラ・アボニー、ミクロコッカス・ルテウス、大腸菌、シュードモナス・エルギノーサ、バチルス・セレウス、プロピオニバクテリウム・アクネス、ストレプトコッカス・ミュータンス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピダーミディスに対して効果的な抗菌剤であることを示した。
【0045】
【表5】


データは、3反復で実行された3回の独立した実験の平均±SDを表す
【0046】
短鎖脂肪酸の産生
分析の結果を図12A、12B、および12Cに示す。酢酸の産生は、B.コアグランスMTCC 25235についてはFOSで高く、続いて、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー繊維およびフルクトースであった(図12A)。同様に、酪酸の産生は、B.コアグランスMTCC 25235についてはフルクトースで高く、続いて、FOS、フェヌグリーク種子繊維およびクランベリー繊維であった(図12B)。プロピオン酸の産生は、フルクトース、FOSおよびクランベリー種子繊維と共に培養したB.コアグランスMTCC 25235について同様であったが、フェヌグリーク種子繊維についてはより低かった(図12C)。
保存および生存率
15×109(調製物1)および6×109cfu/g(調製物2)に相当する2つの標準化調製物を研究した。B.コアグランスMTCC 25235は、温度40±2℃、RH60%±5%で保存する間、生存率の向上を示した(図13)。
本発明に対する他の修正および変形は、前述の開示および教示から当業者には明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態のみが本明細書に具体的に記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これに多数の変更を加えることができることが明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
【配列表】
2022536252000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂蜜から新規フルクトース利用プロバイオティク細菌を単離および同定するための方法であって、
)蜂蜜を生理食塩水と1:10w/vの比率で混合して、懸濁液を得るステップと、
)ステップa)の懸濁液を十分に混合し、胞子を選択的に分離するために50~70℃で30分間熱ショックを与えるステップと、
)ステップb)からの懸濁液1~2mlを、フルクトースを含む適切な培養培地中35~37℃で48時間インキュベートすることにより、細菌コロニーを単離するステップと、
)炭素源としてフルクトースを含む適切な培地中で、形態学的に異なるコロニーを選択およびインキュベートすることにより、細菌単離株を精製するステップと、
)生化学的分析および16S rRNA配列決定により、細菌株を受託番号MTCC 25235を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)菌株FF7として同定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
蜂蜜が、生蜂蜜、ろ過蜂蜜、アカシア蜂蜜、アルファルファ蜂蜜、アスター蜂蜜、アボカド蜂蜜、バスウッド蜂蜜、ブナノキ蜂蜜、ブルーベリー蜂蜜、ブルーガム蜂蜜、ソバ蜂蜜、クローバー蜂蜜、タンポポ蜂蜜、ユーカリ蜂蜜、ファイアウィード蜂蜜、ヘザー蜂蜜、アイアンバーク蜂蜜、ジャラ蜂蜜、レザーウッド蜂蜜、リンデン蜂蜜、マカデミア蜂蜜、マヌカ蜂蜜、オレンジブロッサム蜂蜜、パインツリー蜂蜜、サワーウッド蜂蜜、セージ蜂蜜、およびチュペロ蜂蜜からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養培地が、MRS(De Man、RogosaおよびSharpeによる寒天)、GYA(グルコース酵母エキス寒天)、TSB(トリプトン大豆ブロス)、胞子形成培地およびミューラーヒントン寒天からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単離されたプロバイオティック菌株が、生化学的試験カタラーゼ、オキシダーゼ、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、ラクトース、キシロース、マルトース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、ラフィノース、トレハロース、メロビオース、スクロース、アラビノース、マンノース、イヌリン、グルコン酸ナトリウム、サリシン、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、メチルグルコシド、ラムノース、セロビオース、ONPG、エスクリン加水分解に対して陽性になり、生化学的試験ソルボースマロネート利用、クエン酸塩利用、キシリトール、メチルマンノシド、メレジトース、エリスリトール、アドニトール、イノシトール、ダルシトール、グリセロール、血液溶血、クエン酸塩およびインドールに対して陰性になる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フルクトースに富む食品からのフルクトースの利用を増加させるために蜂蜜から単離された、バチルス属のフルクトフィリックプロバイオティク細菌。
【請求項6】
グラム陽性である、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項7】
フルクトフィリック細菌の増殖についての最適pHおよび温度が、それぞれ7.5および40℃である、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項8】
胆汁耐性、胃酸抵抗性であり、乳酸を産生する、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項9】
バチルス・コアグランスである、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項10】
バチルス・コアグランスがバチルス・コアグランスMTCC 25235である、請求項に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項11】
フルクトースに富む食品が、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムゼリー、エナジードリンク、調味料、及びアイスクリームからなる群から選択される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項12】
高フルクトース摂取に関連する障害の治療管理に使用される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項13】
前記障害が、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、心血管合併症、糖尿病、高脂血症、高血圧、炎症および高尿酸血症からなる群から選択される、請求項12に記載のプロバイオティック細菌
【請求項14】
前記フルクトフィリックプロバイオティク細菌が、接種物、凍結乾燥粉末、微粉末、錠剤、カプセル、懸濁液、溶液、エマルジョン、グミ、チュアブルまたは食用食品の形態で存在し、単独で、または高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムゼリー、エナジードリンク、調味料、及びアイスクリームからなる群から選択されるフルクトースに富む食品と組み合わせて投与される、請求項5に記載のプロバイオティック細菌。
【請求項15】
病原性微生物を阻害する方法であって、前記微生物をフルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235と接触させるステップを含む、方法。
【請求項16】
病原性微生物が、サルモネラ・アボニー(Salmonella abony)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、及びスタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
短鎖脂肪酸を産生する方法であって、フルクトース、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー種子繊維、及びフラクトオリゴ糖(FOS)からなる群から選択される植物繊維と共に、フルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235を培養することによる、方法。
【請求項18】
短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸およびプロピオン酸からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
短鎖脂肪酸の産生
分析の結果を図12A、12B、および12Cに示す。酢酸の産生は、B.コアグランスMTCC 25235についてはFOSで高く、続いて、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー繊維およびフルクトースであった(図12A)。同様に、酪酸の産生は、B.コアグランスMTCC 25235についてはフルクトースで高く、続いて、FOS、フェヌグリーク種子繊維およびクランベリー繊維であった(図12B)。プロピオン酸の産生は、フルクトース、FOSおよびクランベリー種子繊維と共に培養したB.コアグランスMTCC 25235について同様であったが、フェヌグリーク種子繊維についてはより低かった(図12C)。
保存および生存率
15×109(調製物1)および6×109cfu/g(調製物2)に相当する2つの標準化調製物を研究した。B.コアグランスMTCC 25235は、温度40±2℃、RH60%±5%で保存する間、生存率の向上を示した(図13)。
本発明に対する他の修正および変形は、前述の開示および教示から当業者には明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態のみが本明細書に具体的に記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これに多数の変更を加えることができることが明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕蜂蜜から新規フルクトース利用プロバイオティクス細菌を単離および同定するための方法であって、
f)蜂蜜を生理食塩水と1:10w/vの比率で混合して、懸濁液を得るステップと、
g)ステップa)の懸濁液を十分に混合し、胞子を選択的に分離するために50~70℃で30分間熱ショックを与えるステップと、
h)ステップb)からの懸濁液1~2mlを、フルクトースを含む適切な培養培地中35~37℃で48時間インキュベートすることにより、細菌コロニーを単離するステップと、
i)炭素源としてフルクトースを含む適切な培地中で、形態学的に異なるコロニーを選択およびインキュベートすることにより、細菌単離株を精製するステップと、
j)生化学的分析および16S rRNA配列決定により、細菌株を受託番号MTCC 25235を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)菌株FF7として同定するステップと
を含む、方法。
〔2〕蜂蜜が、生蜂蜜、ろ過蜂蜜、アカシア蜂蜜、アルファルファ蜂蜜、アスター蜂蜜、アボカド蜂蜜、バスウッド蜂蜜、ブナノキ蜂蜜、ブルーベリー蜂蜜、ブルーガム蜂蜜、ソバ蜂蜜、クローバー蜂蜜、タンポポ蜂蜜、ユーカリ蜂蜜、ファイアウィード蜂蜜、ヘザー蜂蜜、アイアンバーク蜂蜜、ジャラ蜂蜜、レザーウッド蜂蜜、リンデン蜂蜜、マカデミア蜂蜜、マヌカ蜂蜜、オレンジブロッサム蜂蜜、パインツリー蜂蜜、サワーウッド蜂蜜、セージ蜂蜜、およびチュペロ蜂蜜を含む群から選択される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕培養培地が、MRS(De Man、RogosaおよびSharpeによる寒天)、GYA(グルコース酵母エキス寒天)、TSB(トリプトン大豆ブロス)、胞子形成培地およびミューラーヒントン寒天を含む群から選択される、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕単離されたプロバイオティック菌株が、生化学的試験カタラーゼ、オキシダーゼ、メチルレッド、フォーゲス・プロスカウエル、ラクトース、キシロース、マルトース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、ラフィノース、トレハロース、メロビオース、スクロース、アラビノース、マンノース、イヌリン、グルコン酸ナトリウム、サリシン、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、メチルグルコシド、ラムノース、セロビオース、ONPG、エスクリン加水分解に対して陽性になり、生化学的試験ソルボースマロネート利用、クエン酸塩利用、キシリトール、メチルマンノシド、メレジトース、エリスリトール、アドニトール、イノシトール、ダルシトール、グリセロール、血液溶血、クエン酸塩およびインドールに対して陰性になる、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕フルクトースに富む食品からのフルクトースの利用を増加させるために蜂蜜から単離された、バチルス属のフルクトフィリックプロバイオティクス細菌。
〔6〕グラム陽性である、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔7〕フルクトフィリック細菌の増殖についての最適pHおよび温度が、それぞれ7.5および40℃である、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔8〕胆汁耐性、胃酸抵抗性であり、乳酸を産生する、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔9〕バチルス・コアグランスである、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔10〕バチルス・コアグランス菌株がバチルス・コアグランスMTCC 25235である、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔11〕フルクトースに富む食品が、高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択される、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔12〕高フルクトース摂取に関連する障害の治療管理に使用される、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔13〕肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、心血管合併症、糖尿病、高脂血症、高血圧、炎症および高尿酸血症を含む群から選択される、前記〔12〕に記載の高フルクトース摂取に関連する障害。
〔14〕前記フルクトフィリックプロバイオティクス細菌が、接種物、凍結乾燥粉末、微粉末、錠剤、カプセル、懸濁液、溶液、エマルジョン、グミ、チュアブルまたは食用食品の形態で存在し、単独で、または高フルクトースコーンシロップ、蜂蜜、アガベ、メープルシロップ、ココナッツシュガー、パームシュガー、糖蜜、ソーダ、キャンディー、甘味ヨーグルト、冷凍食品、缶詰食品、シリアル、フルーツジュース、コーヒークリーマ、ジャムおよびゼリー、エナジードリンク、調味料、アイスクリームを含む群から選択されるフルクトースに富む食品と組み合わせて投与される、前記〔5〕に記載のプロバイオティック細菌。
〔15〕病原性微生物を阻害する方法であって、前記微生物をフルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235と接触させるステップを含む、方法。
〔16〕病原性微生物が、サルモネラ・アボニー(Salmonella abony)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)を含む群から選択される、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕短鎖脂肪酸を産生する方法であって、フルクトース、フェヌグリーク種子繊維、クランベリー種子繊維、フラクトオリゴ糖(FOS)からなる群から選択される植物繊維と共に、フルクトフィリックプロバイオティック細菌バチルス・コアグランスMTCC 25235を培養することによる、方法。
〔18〕短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸およびプロピオン酸を含む群から選択される、前記〔17〕に記載の方法。
【国際調査報告】