(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電気化学的プロセス用の電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20220805BHJP
C25B 11/02 20210101ALI20220805BHJP
【FI】
C25C7/02 305
C25C7/02 302G
C25B11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021570829
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020065324
(87)【国際公開番号】W WO2020245179
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518600
【氏名又は名称】ペルマスカンド・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】PERMASCAND AKTIEBOLAG
【住所又は居所原語表記】Folkets Husvaegen 50,840 10 Ljngaverk,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン、エーリク
(72)【発明者】
【氏名】アルムロート、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】フェーデル、ペール・マグヌス
【テーマコード(参考)】
4K011
4K058
【Fターム(参考)】
4K011CA13
4K011DA02
4K058BB04
4K058ED06
4K058ED10
4K058FA08
(57)【要約】
本発明は、電流供給装置(2、3)と、第1の端部及び第2の端部(10、12)を備える細長い電流分配棒(4~7)と、電流分配棒に取り付けられ、縦方向の広がりと横方向の広がりとを有するシート状電極基板(8、9)と、を備える電気化学的プロセス用の電極アセンブリ(1)に関する。電流分配棒は、電流供給装置に取り付けられた第1の部分(14)と、電極基板に沿って延在する第2の部分(15)と、第1の部分と第2の部分との間に延在する第3の部分(16)と、を備える。電流分配棒は、その第1の端部と第2の端部との間で曲げられており、電流供給装置は、電極基板を横方向及び縦方向に越えて配置されている。第2の部分は、電極基板に沿って縦方向に少なくとも部分的に延在する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的プロセス用の電極アセンブリ(1)であって、
電流供給装置(2、3)と、
第1の端部及び第2の端部(10、12)を備える細長い電流分配棒(4~7)と、
前記電流分配棒に取り付けられ、縦方向の広がりと横方向の広がりとを有するシート状電極基板(8、9)と、
を備え、
前記電流分配棒は、前記電流供給装置に取り付けられた第1の部分(14)と、前記電極基板に沿って延在する第2の部分(15)と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に延在する第3の部分(16)と、を備え、前記電流分配棒は、その第1の端部と第2の端部との間で曲げられており、前記第2の部分は、前記電極基板に沿って縦方向に少なくとも部分的に延在し、前記電流供給装置は、前記電極基板を横方向及び縦方向に越えて位置している、電極アセンブリ。
【請求項2】
前記第3の部分(16)は、前記電極基板の縦方向の中心線(A-A)から離れる方向に少なくとも部分的に延在する、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項3】
前記電流供給装置(2、3)は、少なくとも1つの凹穴(23)を備え、前記電流分配棒の前記第1の部分は、前記凹穴内に着脱可能に受容される、請求項1又は2に記載の電極アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の部分(14)は、圧入係合で前記凹穴(23)内に受容される、請求項3に記載の電極アセンブリ。
【請求項5】
前記電流供給装置(2、3)は、前記第1の部分(14)の周りに着脱可能にクランプされている2つの半体を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
【請求項6】
前記電流分配棒は、コア(46)と外層(47)とを備え、前記コアは、前記外層によって完全に覆われている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
【請求項7】
前記外層(47)は、前記コア(46)の長手方向に延在する表面のクラッドと、前記コアの横断端面を覆う第1の端層及び第2の端層(50)と、を備える、請求項6に記載の電極アセンブリ。
【請求項8】
いくつかの電流供給装置(2、3)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
【請求項9】
いくつかの電流分配棒(4、5、6、7)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
【請求項10】
各電流分配棒(27、28)には、個別の電流供給部(32、34、35)が設けられている、請求項9に記載の電極アセンブリ。
【請求項11】
前記電流分配棒(27)の前記第1の部分(29)に配置された支持要素(26)を備え、ここで、前記支持要素は、電解槽に装着されたときに前記電極アセンブリを支持するように配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の電極アセンブリ(25)。
【請求項12】
前記電流供給装置(31)は、前記電流供給装置への個別の電流給電のための電流ケーブル端子(34)を備える、請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項13】
2つの電極基板(8、9)の間に空間が設けられるように、前記電流分配棒(4~7)の両側において前記電流分配棒に取り付けられた前記2つの電極基板を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
【請求項14】
前記いくつかの電流分配棒(4~7)は、前記電極基板(8、9)の対向する側縁部(11、13)に配置された2つの電流分配棒を備える、請求項9に記載の電極アセンブリ。
【請求項15】
前記電極基板(8、9)の前記対向する側縁部(11、13)に配置された第1の電流供給装置及び第2の電流供給装置(2、3)を備え、ここで、前記2つの電流分配棒のうちの一方の電流分配棒(4、5)は、前記第1の電流供給装置(2)に接続されており、前記2つの電流分配棒のうちの他方の電流分配棒(6、7)は、前記第2の電流供給装置(3)に接続されている、請求項14に記載の電極アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の分野に関し、より具体的には、電気化学的プロセスにおいて使用するための電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
電解採取は、金属をイオン形態で担持する溶液から金属を回収することができる電気化学的プロセスの一例である。これらのプロセスは、交互に配置され、溶液に浸漬された1つ又は複数の陰極及び1つ又は複数の陽極の形態の電極を備える電解槽中で行われる。電解槽に電流を流すと、所望の金属が陰極上にめっきされる。
【0003】
このような電気化学的プロセスの別の例が、電解槽による塩素の生成であり、ここで、溶液は食塩水である。
【0004】
このような電気化学的プロセス用の、米国特許第8038855号に示される電極アセンブリ等の典型的な電極アセンブリは、多くの場合ハンガーバーと呼ばれる電流供給棒を備え、該電流供給棒は、電解槽にわたって水平に延在するように配置される。更に電極アセンブリは、電流供給棒に取り付けられ、そこから垂直に延在する電流分配棒を備え、電流分配棒に電気化学的に活性な電極基板が、例えば溶接によって取り付けられている。電極基板は、多くの場合、ベース構造及びベース構造に塗布された電気化学的に活性なコーティングから構成される。ベース構造及びコーティングの材料、並びに電流分配棒の材料は、電極アセンブリが使用されるプロセスに適合されている。電流分配棒は、ハンガーバーから電極基板に電流を伝導するための導電性材料から構成される。一例として、電解採取において使用される陽極の場合、一般に使用される導電性材料は、銅及びアルミニウムである。これらの材料の、例えば腐食に対する耐性が低いことに起因して、使用される電解質溶液に対して化学的に耐性のある金属のクラッドを施す必要がある。陽極の場合、典型的には、チタンクラッド又は別の弁金属のクラッドが使用される。弁金属は、多くの場合、電極基板のベース構造にも使用される。これらの金属は、電極アセンブリが動作することが予想される電解液中で電極として接続されたときに不動態酸化膜を迅速に形成する特性を有する成膜金属として知られており、この膜は、下にある金属を電解液による腐食から保護する。
【0005】
電流供給棒及び電流分配棒の他の代替は、固体チタン、固体ニッケル、又は固体鉄等の、単一の固体金属である。
【0006】
国際公開第2014/047689号には、導電棒と、導電棒に取り付けられたプレートと、を有する電極アセンブリが開示されている。棒及びプレートは、ステンレス鋼製である。導電棒は中空であり、その内部で銅製の導電部材がこの棒に溶接される。導電棒は、プレートの上縁部に沿って延在し、一実施形態では、プレートのより多くの部分が電解液に浸漬されることを可能にするために、その端部において部分的に曲げられている。
【0007】
持続可能性の問題を考慮して、回復プロセスを行うことによって電極アセンブリを再利用するための技法が開発されている。しかしながら、典型的に、電流供給棒は、電流分配棒と同様には腐食から保護されておらず、これは、そのような再利用を妨げる長期的な問題を引き起こす。
【発明の概要】
【0008】
アセンブリ全体の回復及び再利用により良く適合された電極アセンブリを提供することが望ましい。
【0009】
この問題により良く対処するために、本発明の第1の態様では、電流供給装置と、第1の端部及び第2の端部を備える細長い電流分配棒と、電流分配棒に取り付けられ、縦方向の広がりと横方向の広がりとを有するシート状電極基板と、を備える電気化学的プロセス用の電極アセンブリが提示される。電流供給装置は、電極基板を横方向及び縦方向に越えて配置されている。電流分配棒は、その第1の端部と第2の端部との間で曲げられている。電流分配棒は、電流供給装置に取り付けられた第1の部分と、電極基板に沿って延在する第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に延在する第3の部分と、を備える。第2の部分は、電極基板に沿って縦方向に少なくとも部分的に延在する。この構造では、電解液の上方には、もはやいかなるハンガーバーも存在しないが、その代わりに、電流分配棒は、それが電流供給装置に接続されているその第1の部分が、電極基板が電解液に浸漬されたときに、電解液の側方に到達するように形成されている。電流分配棒は、従来のハンガーバーを置き換え、更に、従来の電流分配棒と同様に電極基板の縦方向に延在して、電流を電極基板に効率的に分配する。
【0010】
電極アセンブリの一実施形態によれば、第3の部分は、電極基板の縦方向の中心線から離れる方向に少なくとも部分的に延在する。
【0011】
電極アセンブリの一実施形態によれば、電流供給装置は、少なくとも1つの凹穴を備え、電流分配棒の第1の部分は、凹穴内に着脱可能に受容される。これにより、柔軟性のある取り付けが提供され、これは、電流供給装置における電流分配棒の円滑な装着及び取り外しを可能にする。
【0012】
電極アセンブリの一実施形態によれば、電流分配棒の第1の部分は、圧入係合で凹穴内に受容される。圧入は、迅速な取り付け、剛性保持及び良好な着脱性を提供する。
【0013】
電極アセンブリの一実施形態によれば、電流供給装置は、第1の部分の周りに着脱可能にクランプされている2つの半体を備える。
【0014】
電極アセンブリの一実施形態によれば、電流分配棒は、コアと外層とを備え、前記コアは、外層によって完全に覆われている。
【0015】
電極アセンブリの一実施形態によれば、外層は、コアの長手方向に延在する表面のクラッドと、コアの横断端面を覆う第1の端層及び第2の端層と、を備える。これにより、コアは、典型的に露出される端部においても、クラッドによって完全に囲まれている。
【0016】
電極アセンブリの一実施形態によれば、それは、いくつかの電流供給装置を備える。
【0017】
電極アセンブリの一実施形態によれば、それは、いくつかの電流分配棒を備える。
【0018】
電極アセンブリの一実施形態によれば、各電流分配棒には、個別の電流供給部が設けられている。これは、例えば、各電流分配棒につき1つずつ、電流供給装置において別個の接続部分を設けることによって、又は電流分配棒ごとに1つの電流供給装置を設けることによって、得られ得る。
【0019】
電極アセンブリの一実施形態によれば、それは、電流分配棒の第1の部分に配置された支持要素を備え、ここで、支持要素は、電極アセンブリを電解槽に装着されたときに支持するように配置されている。
【0020】
電極アセンブリの一実施形態によれば、電流供給装置は、電流供給装置への個別の電流給電のための電流ケーブル端子を備える。
【0021】
電極アセンブリの一実施形態によれば、それは、2つの電極基板の間に空間が設けられるように、電流分配棒の両側において電流分配棒に取り付けられた2つの電極基板を備える。
【0022】
電極アセンブリの一実施形態によれば、いくつかの電流分配棒は、電極基板の対向する側縁部に配置された2つの電流分配棒を備える。
【0023】
電極アセンブリの一実施形態によれば、それは、電極基板の対向する側縁部に配置された第1の電流供給装置及び第2の電流供給装置を備え、ここで、前記2つの電流分配棒のうちの一方の電流分配棒は、第1の電流供給装置に接続されており、前記2つの電流分配棒のうちの他方の電流分配棒は、第2の電流供給装置に接続されている。
【0024】
次に本発明について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明に係る電極アセンブリの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電極アセンブリを備える電解槽の断面図である。
【
図3】
図3は、電解槽と本発明に係る電極アセンブリの別の実施形態との一部の破断図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る電極アセンブリの別の実施形態の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照すると、電解槽で使用するための、電気化学的プロセス用の電極アセンブリ1の第1の実施形態が提示されている。電極アセンブリ1は、2つの電流供給装置2、3と、4つの電流分配棒4、5、6、7と、2つの電極基板8、9と、を備える。最も単純な実施形態では、電極アセンブリは、1つの電流供給装置と、1つの電流分配棒と、1つの電極基板と、のみを備えるが、一般に、いくつかの電流分配棒、及びいくつかの電流供給装置が設けられている。本実施形態は、典型例である。各電極基板8、9は、シート状であり、
図1及び
図2に示されるように、装着された向きにおいて垂直である縦方向の広がりと、装着された向きにおいて水平である横方向の広がりと、を有する。各電極基板8、9は、対向する第1の側縁部11及び第2の側縁部13と、上縁部18と、対向する下縁部21と、を有し、ここで、これら縁部は、装着された向き、即ち、
図2に示されるように、電極アセンブリ1が電解槽内に装着されたときに関連して示されている。電流分配棒4~7は、互いに離れて並んで配置されており、電極基板8、9は、電極基板8、9の間に空間が設けられるように、例えば、溶接によって、電流分配棒4~7の両側に取り付けられている。電極基板8、9は、互いに平行に配置されている。このように、電極基板8、9は、電流分配棒4~7の厚さ分だけ離れているので、その空間は狭い。電流供給装置2、3は、電極基板8、9の各側縁部11、13に1つずつ配置されており、その結果、それらは、電極基板8、9を横方向及び縦方向に越えて配置されている。換言すれば、各電流供給装置2、3は、電極基板8、9に対して、これら基板8、9の上方及び側方の位置まで、横方向に、即ち水平に、並びに、縦方向に、即ち垂直に変位されている。4つの電流分配棒4~7のうちの第1の電流分配棒4及び第2の電流分配棒5は、一方の側縁部11において、電流供給装置2、3のうちの第1の電流供給装置2に接続されており、これら電流分配棒4~7のうちの第3の電流分配棒6及び第4の電流分配棒7は、他方の反対側の側縁部13において、電流供給装置2、3のうちの第2の電流供給装置3に接続されている。
【0027】
各電流分配棒4~7は、細長く、第1の端部10及び第2の端部12を有し、その第1の端部10と第2の端部12との間で曲げられている。しかしながら、
図1では、第3の電流分配棒6及び第4の電流分配棒7の第1の端部10のみが示され、表されている。更に、各電流分配棒4~7は、第1の部分14を有し、これは、電極基板8、9を横方向及び縦方向の両方に越えて位置する。この実施形態では、第1の部分14は、電流分配棒4~7の第1の端部10を含む。第1の部分14は、電流供給装置2、3に取り付けられている。より具体的には、第1の電流分配棒4及び第2の電流分配棒5の第1の端部は、第1の電流供給装置2に取り付けられており、第3の電流分配要素6及び第4の電流分配要素7の第1の端部10は、第2の電流供給装置3に取り付けられている。
【0028】
各電流分配棒4~7は、電極基板8、9に沿って、即ち、電極基板8、9の表面の少なくとも一部に沿った任意の方向に、その縁部において又はその縁部の内側で延在する第2の部分15を備える。典型的に、第2の部分15は、電極基板8、9に沿って、少なくとも部分的に、及び、典型的に、少なくとも実質的に縦方向に、即ち、装着された状態において垂直に延在する。更に、各電流分配棒4~7は、第2の部分15と第1の部分14との間に延在する第3の部分16を備える。第3の部分16は、電極基板8、9の縦方向の中心線A-Aから離れる方向に少なくとも部分的に延在する。
【0029】
従って、例えば、第1の電流分配棒4の第2の部分15は、第1の電極基板8の第1の側縁部11に沿って延在する。第1の電流分配棒4の第2の部分15は、第3の部分16に含まれる、第1の電極基板8の上縁部18での突出部分19になる。従って、突出部分19は、第1の電極基板8と第2の電極基板9の間の空間から出て、それらを縦方向に越えて突出している。突出部分19の端部において、第1の分配棒4は、少なくとも部分的に第3の部分16に含まれていながら、第1の部分14へと90度曲がり、該第1の部分14は、電極基板8から横方向に離れる方へ、従って、縦方向の中心線A-Aから横方向に離れる方へ延在する。第1の部分14は、電流供給装置2内へと延在し、そこで着脱可能に取り付けられている。第2の部分15に含まれる、第1の電流分配棒4の端部部分20が、その第2の端部12において、第1の電極基板8の縦方向の中心線A-Aと下縁部21とに向かって斜めに延在する。
【0030】
第2の電流分配棒5の第2の部分15の大部分が、電極基板8、9の縦方向に、且つ、第1の電流分配棒4の第2の部分15の対応する部分と平行に延在し、それに対して中心線A-Aに向かって横方向に変位されている。しかしながら、第2の電流分配棒5の第2の端部12において、第2の部分15は、第2の端部12まで真っ直ぐに続いている。各電極基板8、9の上縁部18の近くで、第2の電流分配棒5は、第2の部分15の一部が、基板8、9の縦方向の中心線A-Aから離れる方へ、第2の部分15の大部分に対してある角度をなして延在するように曲げられている。上縁部18から、第2の電流分配棒5の第3の部分16は、同じ斜め方向に続き、更に曲がった後、第3の部分16は、横方向に延在する第1の部分14になる。より具体的には、第2の電流分配棒5は、下縁部21から上縁部18に向かって真っ直ぐに延在し、第1の電極基板8の上縁部18から少し離れたところで曲げられ、縦方向の中心線A-Aから離れる方へ斜めに延在し、第1の電極基板8及び第2の電極基板9を越えて突出するその一部が再び曲げられ、第1の電流供給装置2内へと横方向に、即ち水平に延在する第1の部分14によって終わる。第2の電流分配棒5の第1の部分14は、第1の電流分配棒4の第1の部分14と平行に延在し、これもまた、第1の電流供給装置2に着脱可能に接続されている。当業者によって理解されるように、現在の分配棒を曲げる多くの異なる方法、例えば、異なる数の曲げ、分配棒の他の位置における曲げ、異なる曲げ角度等があることに留意されたい。しかしながら、電流分配棒の要件は、電流供給装置が電解液の上方に配置されないように、それらが、電解槽内に装着されたときに、電解液の側方且つ上方まで延在すべきであるということである。
【0031】
第3の電流分配棒6及び第4の電流分配棒7は、それぞれ第2の電流分配棒5及び第1の電流分配棒4の複製であり、縦方向の中心線A-Aにおいて線対称になるように配置され、第2の電流供給装置3に接続されている。従って、第4の電流分配棒7は、電極基板8、9の第2の側縁部13に位置し、第3の電流分配棒6は、第2の側縁部13と縦方向の中心線A-Aとの間で、第4の電流分配棒7から横方向に離れて位置する。その結果、電極アセンブリ1は、先行技術の電極アセンブリにおける従来のハンガーバーと類似し得るいかなる細部も備えてない。実際、電極基板8、9の上方、即ち、電解液の真上には、電流分配棒に給電するいかなる電流供給棒も存在しない。電流供給装置2、3は、電解液の脇に位置する。
【0032】
各電流供給装置2、3は、少なくとも1つの凹穴23を備え、電極アセンブリ1のこの実施形態では、各電流供給装置2、3は、2つの凹穴23を備える。凹穴23は、貫通穴である。しかしながら、別の実施形態では、図示されていないが、少なくとも1つの凹穴は貫通穴ではない。電流分配棒4~7の第1の部分14は、凹穴23内に着脱可能に受容されている。更に、この実施形態では、第1の部分14は、圧入係合で凹穴23内に受容されるが、依然として着脱可能である。
【0033】
更に、電極アセンブリ1は、その下部領域において、電極アセンブリ1の各側縁部に1つずつ、2つのスペーサ51を備える。スペーサ51は、電極基板8、9のパックよりも厚く、いくつかの電極アセンブリ1が電解槽内に配置されたときに、それらが互いから適切に離間されることを確実にする。
【0034】
図2に示されるような、電解槽40は、電解液を収容した液槽41と、液槽41に浸漬された、いくつかの電極アセンブリ1と、を備える。各電極アセンブリ1は、液槽41の口部の両側に設けられた水平支持面42、43に吊り下げられている。より具体的には、各支持面42、43は、2つの電流レール44、45、即ち、内側電流レール44及び外側電流レール45を備え、これらは、支持面42、43に沿って並んで延在し、支持面の周囲部分より僅かに上に突出する。電極アセンブリ1の電流供給装置2、3は、それぞれ1つの内側レール44上に載置される。外側レール45は、図示されていない他の種類の電極アセンブリによって使用される。例えば、図示された電極アセンブリ1が陽極であると仮定すると、陰極は、外側電流レール45上に載置される。陰極の構造も同様であり得るが、それはまた、従来のハンガーバー・クラッド棒構造のように、異なり得る。従って、電流分配棒4~7は、電流レール44を介して電流給電される。
【0035】
電極アセンブリ25の第2の実施形態は、
図3に示されるように、液槽41内に電極アセンブリを吊り下げること及び電流供給装置のための解決策を除いて、第1の実施形態に類似する。電極アセンブリ25は、電極アセンブリの各側に、電流分配棒27、28の第1の部分29、30において配置された支持要素26を備える。より具体的には、各支持要素は、ブロック形状であり、2つの半体を備え、これらは、電流分配棒27、28の第1の部分29、30において、それらの周りで互いに接合され、第1の部分29、30が互いに離れて延在するように固定する。支持要素26は、プラスチック等の非導電性材料で作られ、それによって、電流分配棒27、28を互いに絶縁し、液槽41の支持面43上に載置される。更に、電極アセンブリ25は、各電流分配棒4~7につき1つずつ、4つの電流供給装置を備える。しかしながら、電極アセンブリ25の一方の側のみが示されているので、
図3には2つの電流供給装置31、32のみが示されている。理解されるように、電極アセンブリ25のこの第2の実施形態は、第1の実施形態と全く同様に対称である。各電流供給装置31、32は、それぞれの電流分配棒27、28の第1の端部に近接して、支持要素26と第1の端部との間に配置されている。各電流供給装置31、32は、ブロック形状であり、電流分配棒27、28の周りに接合された2つの半体で作製されている。より具体的には、電流分配棒27、28は、これら半体の間にクランプされ、これは、順に、2つのねじ33によって接合されている。しかしながら、第1の実施形態とは異なり、電流供給装置31、32は、支持面41上に載置されず、その間に空間がある。支持面における電流レールを介して電流給電されるのではなく、各電流供給装置31、32には、少なくとも1つ、及びこの実施形態では2つの電流ケーブル端子34が設けられており、それぞれの電流ケーブル35がそれらの各々に取り付けられている。従って、電極アセンブリ25は、電流ケーブル35を介して、電流ケーブル端子34に個別に電流を給電され得る。容易に理解されるように、各支持要素26は、全体としての電極アセンブリ25の設計に依存して、2つより多くの、並びに2つより少ない電流分配棒を保持し得る。
【0036】
電極アセンブリの第3の実施形態は、
図4に示されるように、電流分配棒36の第1の端部を除いて、第2の実施形態に類似する。
図4では、1つの電流分配棒36の端部部分及び電流供給装置37の縦断面を示しており、従って、その半分が示されている。長手方向穿孔48(longitudinal boring)は、電流分配棒36の第1の端部38からその長手方向軸線に沿って、電流分配棒36の中へとある距離だけ延在する。カバーねじ39が、穿孔にねじ込まれている。カバーねじは、電流分配棒36の直径を超える直径を有する一体型座金49を有する。
【0037】
電極アセンブリの上記の全ての実施形態では、特に
図4に示されるように、電流分配棒4~7、27、28、36は、コア46及び外層47から構成されている。コア46は、例えば、銅、アルミニウム及び銀等の導電性材料で作られている。このような材料は、多くの場合、電極アセンブリ1、25が使用される処理環境、即ち、電解槽40の電解質溶液に対して反応性がある。従って、電流分配棒36は、例えば、コア46の深刻な腐食を引き起こし得、よって、電極アセンブリの耐久性が短くなることをもたらす、例えば電解液等の処理環境とコア46が化学的に反応することを防止するように配置された外層47を更に備える。ここで、コア46は、処理環境において不活性である材料から選択される外層47においてクラッドされている。陽極として使用される電極アセンブリ1、25の一実施形態では、例えば、外層47は、好ましくは、限定はしないが、チタン及びタンタル等の弁金属の群から選択される。現在好ましい実施形態では、外層47はチタン製であり、コア46は銅製である。
【0038】
電極アセンブリ1、25の第1及び第2の実施形態では、外層47は、電流分配棒4~7、27、28のコアを、その端面を含め完全に覆い、即ち、
図1に最もよく示されているように、クラッドキャップ50が、コア46の対応する端面上に溶接されている。このようなクラッドキャップ50は、好ましくは、電流分配棒6、7のクラッド47の残りの部分と同じ材料でできている。当業者は、外端層が、コアの端面に溶接されるキャップとは異なる方法で設けられ得ることを理解する。例えば、外端層9は、締結要素、はんだ付け、又は導電性接着剤によって締結され得る。
【0039】
しかしながら、第3の実施形態では、カバーねじ39が、クラッド層の代替として設けられている。ねじの座金49は、緊密な係合を確保するように外層47の最端面と係合し、それによって、電解液がコア材料に到達するのを防止する。
【0040】
図示の実施形態では、各電流供給装置2、3、31、32、37は、長方形の断面を有する。しかしながら、電流供給装置の断面は、例えば、正方形、円形、又は楕円形等の任意の他の好適な形状であり得る。電流供給装置2、3、31、32、37は、好ましくは、限定はしないが、銅、アルミニウム、銀、及び亜鉛等の導電性材料から作られている。好ましい実施形態では、電流供給装置2、3、31、32、37は銅製である。
【0041】
本発明について、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明したが、そのような例示及び説明は、例示的又は実例的なものであって限定的なものではないとみなすべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。本発明は、概して、コア及び外層を有する電流分配棒を備える電極アセンブリを使用する、いかなるプロセスにも適用可能である。係るプロセスの例には、電解採取、電気亜鉛めっき、電解遊離、クロルアルカリダイアフラムプロセス、及びモノポーラ塩素酸塩陽極を使用するプロセスがある。
【0042】
開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、請求項に記載の発明を実施するにあたり当業者が理解及び達成することができる特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。単にある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということだけでは、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
電気化学的プロセス用の電極アセンブリ(1)であって、
電流供給装置(2、3)と、
第1の端部及び第2の端部(10、12)を備える細長い電流分配棒(4~7)と、
前記電流分配棒に取り付けられ、
装着された向きにおいて垂直である縦方向の広がりと
、前記装着された向きにおいて水平である横方向の広がりとを有するシート状電極基板(8、9)と、
を備え、
前記電流分配棒は、前記電流供給装置に取り付けられた第1の部分(14)と、前記電極基板に沿って延在する第2の部分(15)と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に延在する第3の部分(16)と、を備え、前記電流分配棒は、その第1の端部と第2の端部との間で曲げられており、前記第2の部分は、前記電極基板に沿って縦方向に少なくとも部分的に延在し、前記電流供給装置は、前記電極基板を横方向及び縦方向に越えて位置している、電極アセンブリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、請求項に記載の発明を実施するにあたり当業者が理解及び達成することができる特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。単にある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということだけでは、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 電気化学的プロセス用の電極アセンブリ(1)であって、
電流供給装置(2、3)と、
第1の端部及び第2の端部(10、12)を備える細長い電流分配棒(4~7)と、
前記電流分配棒に取り付けられ、縦方向の広がりと横方向の広がりとを有するシート状電極基板(8、9)と、
を備え、
前記電流分配棒は、前記電流供給装置に取り付けられた第1の部分(14)と、前記電極基板に沿って延在する第2の部分(15)と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に延在する第3の部分(16)と、を備え、前記電流分配棒は、その第1の端部と第2の端部との間で曲げられており、前記第2の部分は、前記電極基板に沿って縦方向に少なくとも部分的に延在し、前記電流供給装置は、前記電極基板を横方向及び縦方向に越えて位置している、電極アセンブリ。
[2] 前記第3の部分(16)は、前記電極基板の縦方向の中心線(A-A)から離れる方向に少なくとも部分的に延在する、[1]に記載の電極アセンブリ。
[3] 前記電流供給装置(2、3)は、少なくとも1つの凹穴(23)を備え、前記電流分配棒の前記第1の部分は、前記凹穴内に着脱可能に受容される、[1]又は[2]に記載の電極アセンブリ。
[4] 前記第1の部分(14)は、圧入係合で前記凹穴(23)内に受容される、[3]に記載の電極アセンブリ。
[5] 前記電流供給装置(2、3)は、前記第1の部分(14)の周りに着脱可能にクランプされている2つの半体を備える、[1]~[3]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
[6] 前記電流分配棒は、コア(46)と外層(47)とを備え、前記コアは、前記外層によって完全に覆われている、[1]~[5]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
[7] 前記外層(47)は、前記コア(46)の長手方向に延在する表面のクラッドと、前記コアの横断端面を覆う第1の端層及び第2の端層(50)と、を備える、[6]に記載の電極アセンブリ。
[8] いくつかの電流供給装置(2、3)を備える、[1]~[7]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
[9] いくつかの電流分配棒(4、5、6、7)を備える、[1]~[8]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
[10] 各電流分配棒(27、28)には、個別の電流供給部(32、34、35)が設けられている、[9]に記載の電極アセンブリ。
[11] 前記電流分配棒(27)の前記第1の部分(29)に配置された支持要素(26)を備え、ここで、前記支持要素は、電解槽に装着されたときに前記電極アセンブリを支持するように配置されている、[1]~[10]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ(25)。
[12] 前記電流供給装置(31)は、前記電流供給装置への個別の電流給電のための電流ケーブル端子(34)を備える、[11]に記載の電極アセンブリ。
[13] 2つの電極基板(8、9)の間に空間が設けられるように、前記電流分配棒(4~7)の両側において前記電流分配棒に取り付けられた前記2つの電極基板を備える、[1]~[12]のいずれか一項に記載の電極アセンブリ。
[14] 前記いくつかの電流分配棒(4~7)は、前記電極基板(8、9)の対向する側縁部(11、13)に配置された2つの電流分配棒を備える、[9]に記載の電極アセンブリ。
[15] 前記電極基板(8、9)の前記対向する側縁部(11、13)に配置された第1の電流供給装置及び第2の電流供給装置(2、3)を備え、ここで、前記2つの電流分配棒のうちの一方の電流分配棒(4、5)は、前記第1の電流供給装置(2)に接続されており、前記2つの電流分配棒のうちの他方の電流分配棒(6、7)は、前記第2の電流供給装置(3)に接続されている、[14]に記載の電極アセンブリ。
【国際調査報告】