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特表2022-536284家禽の内臓除去方法、前内臓除去装置、内臓除去システム、及び回収装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】家禽の内臓除去方法、前内臓除去装置、内臓除去システム、及び回収装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/06 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
A22C21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571914
(86)(22)【出願日】2020-06-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2020066417
(87)【国際公開番号】W WO2020249810
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】19180134.9
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521528207
【氏名又は名称】マレル・ペーエムイエー・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MAREL PMJ B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・フェルト,コルネリス バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーステン,エヒベルトゥス マルティヌス
(57)【要約】
本発明は、胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に、鴨のような水鳥の内臓除去方法に関する。前記の方法は、家禽の頸の背面で家禽の皮を損傷させるa工程と、家禽の頭において、又は、家禽の頭の近くにおいて、家禽の食道を損傷させるb工程と、家禽の頸から皮を外す工程であって、食道が皮と共に外されるc工程と、c工程で家禽の頸から外された食道と共に、家禽から内臓群を除去するd工程とを含む。さらに、本発明は、家禽の内臓群を回収するための回収装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に、鴨のような水鳥の内臓除去方法であって、
前記家禽の頸の背面で前記家禽の皮を損傷させるa工程と、
前記家禽の頭において、又は、前記家禽の頭の近くにおいて、前記家禽の食道を損傷させるb工程と、
前記家禽の頸から前記皮を外す工程であって、前記食道が前記皮と共に外されるc工程と、
前記c工程で前記家禽の頸から外された前記食道と共に、前記家禽から内臓群を除去するd工程と、
を含む、内臓除去方法。
【請求項2】
前記a工程は、前記皮に、前記家禽の頸の長手方向に平行な方向に切れ目又はスリットを入れる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記b工程は、前記家禽の頸の前面に、前記家禽の長手方向に垂直な方向に切れ目又はスリットを入れる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記c工程において、前記頸から前記皮を外した後に、前記皮と前記頸との間に残存する前記食道以外の任意の組織接続部が切断される、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記c工程において、前記家禽の頭が固定される、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記b工程において、気管が損傷させられ、
好ましくは、前記c工程において、前記気管は、前記皮と共に引っ張られる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記d工程において、肺と前記気管とが前記家禽内に残存する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥を、内臓除去のために準備するための前内臓除去システムであって、
前記家禽の頸の背面で前記家禽の皮を損傷させるための第1切断装置と、
前記家禽の頭において、又は、前記家禽の頭の近くにおいて、前記家禽の食道を損傷させるための第2切断装置と、
前記家禽の頸から前記皮を外すことによって、外された前記皮と共に前記食道を引っ張るための皮剥き装置と、
を備える、前内臓除去システム。
【請求項9】
胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥の内臓を除去するための内臓除去システムであって、
請求項8に記載の前内臓除去システムと、
前記皮剥き装置において前記皮と共に外された前記食道と共に、前記家禽から内臓群を除去するための内臓除去装置と、
を備える、内臓除去システム。
【請求項10】
前記第1切断装置と前記第2切断装置とは、単一の切断機にまとめられている、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
胴体を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥から内臓群を回収するための回収装置であって、
回収装置を前記家禽に対して移動及び位置決めするための操作部と、
前記操作部と反対に配置され、前記家禽の内臓群に掛かる回収部と、
を備え、
前記回収部は、第1凹部と、第2凹部とを有し、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、回収装置の長手方向に整列し、
前記第1凹部は、前記操作部に対して前記第2凹部よりも近くに配置され、
前記回収部は、前記第1凹部と前記第2凹部との間の壁に、前記第1凹部から前記第2凹部に延びる渡し凹部を更に有する、
回収装置。
【請求項12】
前記回収部は、前記回収部の自由端部に、前記回収装置の長手方向において前記自由端部から前記第2凹部に延びるスリットを更に有する、請求項11に記載の回収装置。
【請求項13】
前記第1凹部と前記第2凹部との間の壁は、前記第1凹部のV字形状の側壁を形成する、請求項11又は12に記載の回収装置。
【請求項14】
前記第2凹部は、第1深さを有する第1部分と、第2深さを有する第2部分とを有し、
前記第1深さは、前記第2深さよりも小さく、
前記第1部分は、前記第1凹部に対して前記第2部分よりも近い、
請求項11~13のいずれか1つに記載の回収装置。
【請求項15】
前記スリットは、前記自由端部から前記第2凹部のうち第2部分のみに延びる、請求項14に記載の回収装置。
【請求項16】
前記回収部の前記家禽に掛かる縁部は、丸みを帯びている、請求項11~15のいずれか1つに記載の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽、特に鴨などの水鳥の内臓除去方法、当該方法を行うための装置及びシステム、又は当該装置及び当該システムの一部に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の方法において、家禽は、胴体、頸、及び頭を有する屠体(carcass)を含む。回収装置は、肛門端部(vent end)において胴体に挿入され、体腔内で、例えば、心臓、素嚢、胃、肝臓、腸などの内臓群(viscera pack)に掛かる。その後、回収装置は、前記の内臓群を体腔から除去するために後退する。
【0003】
食道は、体腔から内臓群と共に除去されることが好ましい。しかし、現在の方法は、食道が除去されるか又は少なくとも部分的に家禽内に残存するかということが制御不能であるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本発明の目的は、家禽から食道を制御可能且つより確実に除去する、家禽の内臓除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様によれば、胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に、鴨のような水鳥の内臓除去方法が提供される。前記の方法は、
家禽の頸の背面で家禽の皮を損傷させるa工程と、
家禽の頭において、又は、家禽の頭の近くにおいて、家禽の食道を損傷させるb工程と、
家禽の頸から皮を外す工程であって、食道が皮と共に外されるc工程と、
c工程で家禽の頸から外された食道と共に、家禽から内臓群を除去するd工程と、
を含む。
【0006】
本発明の第1態様は、始めに家禽の頸から食道を分離することで、食道を制御可能且つより確実に家禽から除去することができ、その後、内臓除去時に食道を引っ張ることで、食道の破損なく皮から食道を剥がすことができるという発明者の洞察に基づく。食道は、頸から皮を外すことによって、頸から容易に分離されることができる。本方法の更なる利点は、頸と頭とが更なる処理、例えば、頸からの肉の除去のために、同時に準備されることである。
【0007】
ここで、損傷という用語の使用は損害を受けた部分が十分に脆くなる任意の処理を指すことが明示される。したがって、皮に関して損傷とは、皮が頸から外されるときに、皮が損害を受けた部位で裂けるか、又は、既に裂けており、頸の両側に沿って外され得るというように解釈されるべきである。食道に関して損傷とは、皮が頸から食道と共に外されるときに、食道が損害を受けた部位で破れるか、又は、既に破れているというように解釈されるべきである。
【0008】
実施形態では、a工程は、皮に、家禽の頸の長手方向に平行な方向に切れ目又はスリットを入れる工程を含む。このことの利点は、頸の全長(ほぼ全長)に亘って頸の両側の皮を外すことができ、より確実に皮及び食道を除去することができることである。
【0009】
実施形態では、皮の切れ目又はスリットの長さは、頸の長さの30%以上、好ましくは頸の長さの50%以上、より好ましくは頸の長さの60%以上、最も好ましくは頸の長さの75%以上である。
【0010】
実施形態では、b工程は、家禽の頸の前面に、家禽の長手方向に垂直な方向に切れ目又はスリットを入れる工程を含む。
【0011】
実施形態では、c工程では、頸から皮を外した後に、皮と頸との間に残存する食道以外の任意の組織接続部が切断される。皮と頸との間に残存する組織接続部の切断は、皮から食道をより確実に剥がすことにつながるので、有利であり得る。切断は、皮と頸とを互いから離れるように引っ張ること、皮と頸との間で切断部品を移動させることによって任意の残存する組織接続部を破損又は切断すること、及び残存する組織接続部を焼失させるか又は化学的に侵食(chemically attacking)することを含む様々な方法で行われ得るが、これに限定されない。皮と頸とを互いから離れるように引っ張ることには、皮を頸から離すように引っ張ること、頭又は頸を皮から離れるように引っ張ること、及びこれらの組合せが含まれる。
【0012】
実施形態では、c工程では、家禽の頭が固定されるか、又は、少なくとも頭の動きが制限される。このことにより、皮は頸から外されることができる。固定又は頭の動きの制限は、頸と平行な方向に、好ましくは頸から皮を外す方向にもなされることが好ましい。頸から皮を外す方向は、頸に垂直である。このことにより、皮と頸との間に十分な空間を空けることが可能になる。
【0013】
実施形態では、b工程では気管が損傷させられる。c工程では、気管も皮と共に引っ張られることが好ましい。気管の除去と食道の除去とを組み合わせることは、特に家禽において気管と食道とが互いに近くに配置されている場合に有利であり得る。しかしながら、気管及び肺を屠体の処理中の別のときに除去することもできる。
【0014】
さらに、本発明の第1態様は、胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥、例えば鴨を、内臓除去のために準備するための前内臓除去システムに関する。前記の前内臓除去システムは、
家禽の頸の背面で家禽の皮を損傷させるための第1切断装置と、
家禽の頭において、又は、家禽の頭の近くにおいて、家禽の食道を損傷させるための第2切断装置と、
家禽の頸から皮を外すことによって、外された皮と共に食道を引っ張るための皮剥き装置と、
を備える。
【0015】
また、本発明の第1態様は、胴体、頸、及び頭を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥、例えば鴨の内臓除去するための内臓除去システムに関する。当該システムは、
家禽の頸の背面で家禽の皮を損傷させるための第1切断装置と、
家禽の頭において、又は、家禽の頭の近くにおいて、家禽の食道を損傷させるための第2切断装置と、
家禽の頸から皮を外すことによって、外された皮と共に食道を引っ張るための皮剥き装置と、
皮剥き装置において皮と共に外された食道と共に、家禽から内臓群を除去するための内臓除去装置と、
を備える。
【0016】
実施形態では、第1切断装置と第2切断装置とは、単一の切断機にまとめられている。
【0017】
本発明の第2態様によれば、胴体を有する屠体を備えた家禽、特に水鳥から内臓群を回収するための回収装置が提供される。前記の回収装置は、
回収装置を家禽に対して移動及び位置決めするための操作部と、
前記操作部と反対に配置され、家禽の内臓群に掛かる回収部と、
を備え、
回収部は、第1凹部と、第2凹部とを有し、
当該第1凹部と当該第2凹部とは、回収装置の長手方向に整列し、
第1凹部は、操作部に対して第2凹部よりも近くに配置され、
回収部は、第1凹部と第2凹部との間の壁に、第1凹部から第2凹部に延びる渡し凹部(bridging recess)を更に有する。
【0018】
実施形態では、第1凹部と第2凹部との間の壁は、回収装置の幅方向に延びている。回収装置の幅方向は、回収装置の長手方向に垂直である。長手方向は、代替的に長さ方向と呼ばれてもよい。幅方向は、代替的に横方向と呼ばれてもよい。
【0019】
厚さ方向は、回収装置の長手方向と幅方向との両方に対して垂直な方向として定義されてもよい。
【0020】
当業者にとって明らかであるように、長さ、幅、厚さなどの寸法は、それぞれ長手方向、幅方向、及び厚さ方向のものである。厚さとは対照的に、対象物(feature)の深さは、対象物又はすぐ周りのものによって定義される平面に対して垂直な方向に沿った寸法であってもよい。
【0021】
実施形態では、回収部は、120~200mmの間の長さ、好ましくは130~190mmの間の長さ、より好ましくは135~185mmの間の長さを有する。
【0022】
実施形態では、回収部は、30~150mmの間の幅、好ましくは35~135mmの間の幅、より好ましくは40~120mmの間の幅を有する。
【0023】
実施形態では、回収部は、40~90mmの間の厚さ、好ましくは50~80mmの間の厚さ、より好ましくは52~79mmの間の厚さを有する。
【0024】
実施形態では、第1凹部は、10~70mmの間の深さ、好ましくは15~60mmの間の深さ、より好ましくは20~50mmの間の深さを有する。
【0025】
実施形態では、第2凹部は、5~20mmの間の深さ、好ましくは7~17mmの間の深さ、より好ましくは9~14mmの間の深さを有する。
【0026】
実施形態では、第1凹部は、15~130mmの間の幅、好ましくは20~115mmの間の幅、より好ましくは24~100mmの間の幅を有する。
【0027】
実施形態では、渡し凹部は、4~15mmの幅、好ましくは6~12mmの幅を有する。
【0028】
該当する場合には、前記の特徴は、組み合わされて、回収装置を使用して処理される家禽の特定のサイズの範囲に回収装置を最適化することを可能にしてもよい。したがって、回収装置を家禽の特定の種に最適化することができる。しかしながら、回収装置を家禽の単一の種における異なるサイズの範囲に最適化することもできる。
【0029】
実施形態では、回収部は、回収部の自由端部に、回収装置の長手方向において自由端部から第2凹部に延びるスリットを更に有する。
【0030】
実施形態では、スリットは、4~15mmの幅、好ましくは6~12mmの幅を有する。スリットの幅は、渡し凹部の幅と実質的に等しいことが好ましい。
【0031】
実施形態では、第1凹部と第2凹部との間の壁は、第1凹部のV字形状の側壁を形成する。
【0032】
実施形態では、第2凹部は、第1深さを有する第1部分と、第2深さを有する第2部分とを有する。第1深さは、第2深さよりも小さい。第1部分は、第1凹部に対して第2部分よりも近い。第2部分は、好ましくは、自由端部に前記のスリットの部分を有する。すなわち、スリットは、第1部分には延びていない。このことにより、スリットは、自由端部から第2凹部のうち第2部分のみに延びている。
【0033】
実施形態では、第1深さは、第2深さの80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、最も好ましくは50%以下である。
【0034】
実施形態では、回収部の家禽に掛かる縁部は、丸みを帯びている。
【0035】
ここで、本発明の第1態様と第2態様とは互いに組み合わせられてもよいことが明示される。例えば、本発明の第2態様に係る回収装置は、家禽から内臓群を除去するために、本発明の第1態様に係る内臓除去システムにおいて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、添付図面を参照しながら非限定に説明される。添付図面において、同様の部品は、同様の参照符号によって示されている。
【0037】
図1図1は、本発明の第1態様の実施形態に係る方法が施される前に逆さまに吊された鴨を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の鴨を模式的に示す断面図である。
図3図3は、頸に長手方向の切れ目を有する図1の鴨の背面を模式的に示す図である。
図4図4は、頭の近くに横方向の切れ目を有する図1の鴨の前面を模式的に示す図である。
図5図5は、頸から皮を外した後の図1の鴨を模式的に示す側面図である。
図6図6は、内臓群及び食道の除去中における図5の鴨を模式的に示す側面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る前内臓除去システムを模式的に示す斜視図である。
図8図8は、図7の前内臓除去システムにおける切断機を模式的に示す正面図である。
図9図9は、図7の前内臓除去システムにおける切断機を模式的に示す背面図である。
図10図10は、図7の前内臓除去システムにおける切断機を模式的に示す断面図である。
図11図11は、図7の前内臓除去システムにおける第2ステーションを模式的に示す正面図である。
図12A図12Aは、図7の前内臓除去システムにおける第2ステーションを模式的に示す断面図である。
図12B図12Bは、図12Aの一部を模式的に示す詳細図である。
図13図13は、内臓除去装置の回収装置を模式的に示す斜視図である。
図14A図14Aは、他の実施形態に係る内臓除去装置の回収装置を模式的に示す断面図である。
図14B図14Bは、図14Aの回収装置を模式的に示す正面図である。
図15A図15Aは、更なる実施形態に係る内臓除去装置の回収装置を模式的に示す断面図である。
図15B図15Bは、図15Aの回収装置を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の第1態様の実施形態に係る方法が施される前に、逆さまに(すなわち、頭を下にして)吊された鴨1を模式的に示す斜視図である。
【0039】
鴨1は、脚3と、胴体4と、頸5と、頭6と、翼7とを有する屠体(carcass)を備えている。鴨1は、当技術分野において公知の家禽の足かせ(poultry shackle)2に脚3を介して吊され、種々の処理装置に沿って移送される。種々の処理装置は、次の処理のうち1つ以上を行うように構成されている。
- 生きている鳥の取扱い
- 屠殺
- 羽のむしり取り(plucking)
- ワックスによる脱毛(waxing)
- 内臓除去
- 冷却
- 等級付け(grading)
- 切断
- 包装
【0040】
前記の処理は、前記の処理装置を使用して自動的に行われてもよい。しかしながら、前記の処理は、手動で行われてもよく、及び/又は、処理ラインには存在するが、例えば、供給される家禽の状態に応じて、必要ならば回避可能であってもよい。
【0041】
以下の説明では、内臓除去処理に焦点が当てられる。図2を参照しながら以下に説明するように、本発明の第1態様にとって、本事例では鴨1である家禽が体腔内に内臓群を有する胴体4、頸5、及び頭6を備えた屠体として供給されることは重要である。脚3や翼7の存在は、本発明に必須ではない。
【0042】
図2は、図1の鴨を模式的に示す断面図である。断面図は、鴨1の中心を通る鴨1の正中面を示す。脚3の一部及び頭6は、図2では見えていない。次の部分は、参照符号と共に提示されている。
- 脚3
- 胴体4
- 頸5
- 体腔8
- 肛門又は総排泄腔9
- 脊椎10
- 胸ヒレ肉11
- 腸12
- 砂嚢14
- 肝臓15
- 心臓16
- 頸の皮17
- 食道18
- 肺19
- 気管20
【0043】
臓器の全体は、内臓群25として特定される。内臓群25のほとんどは、体腔8内に位置している。鴨1の背面は、参照符号21で示されている。鴨1の肛門端部(vent end)は、参照符号22で示されている。鴨1の前面は、参照符号23で示されている。図1及び図2は、肛門端部22が開かれた屠体を示している。当技術分野で一般的であるように、体腔8は、内臓除去処理の開始前に、例えば、上流の肛門開放装置によって、肛門端部22において開放される。この肛門開口部24は、図1に部分的に見られる。
【0044】
本発明の第1態様では、内臓群の除去前に、皮17及び食道18を損傷させることが必要である。図3は、鴨1の頸5の背面21において鴨1の皮17を損傷させる工程を経た後における、図1の鴨1の頸5の背面21を模式的に示す。鴨1の頸5の背面21における鴨1の皮17は、頸5に切れ目30が入れられることによって損傷する。切れ目30は、頸5の長手方向の軸に平行な方向、すなわち、本実施形態ではZ軸に平行な方向に入れられ、好ましくは皮17を貫いている。
【0045】
図4は、鴨1の頭6の近くにおいて鴨1の食道18を損傷させる工程を経た後における、図1の鴨1の頸5の前面23を模式的に示す。鴨1の頭6の近傍における鴨1の食道18は、頸5に切れ目31が入れられることによって損傷する。切れ目31は、頸5の長手方向の軸に直交する方向、すなわち、本実施形態ではZ軸に直交しX軸に平行な方向に入れられる。切れ目31は、好ましくは皮17を貫き、好ましくは食道18を貫いている。
【0046】
切れ目30は、代替的に長手方向の切れ目と呼ばれてもよい。切れ目31は、代替的に横方向の切れ目と呼ばれてもよい。切れ目30,31の入れられる順序は重要ではなく、切れ目30,31は、同時に入れられることもできる。より重要なことは、切れ目30,31による損傷が後の工程中に頸5の皮と食道18との両方に対して確かな引き裂き部位又は破損部位を提供することであり、その結果が図5に示されている。
【0047】
図5は、頸5から皮17を外した後の図1の鴨1を模式的に示す側面図である。皮17は、前面23に向かって引っ張られる。背面21の長手方向の切れ目30の利点は、皮17が頸5の後ろに一部を残すことなく頸5の両側で引っ張られることにある。前面23で皮17と繋がっている食道18は、横方向の切れ目31の結果、皮17と共に引っ張られる。同一のことが、気管20にもあてはまる。
【0048】
皮17は、頸5から外される。しかし、皮17は、頸5の基部5aにおいて、又は、頸5の基部5aの近くにおいて、屠体に繋がったままであることが好ましい。このことにより、食道18は砂嚢14に繋がったままとなり、気管20は肺19に繋がったままとなる。
【0049】
皮17の外した後に皮17と頸5との間に存在し得る任意の組織接続部17aは、例えば、工具を使用して、又は、単に皮17と頸5との間の距離を大きくすることにより組織接続部17aを破壊するまで伸ばして、切断されることが好ましい。
【0050】
皮17を食道18と共に頸5から外すことにより、食道18を内臓群と共に屠体から除去することができる。図6は、内臓群25を除去した後の鴨1を模式的に示す側面図である。内臓群は、全体として除去されることが好ましい。内臓群の全体は、少なくとも食道18に繋がった臓器、すなわち、腸12及び砂嚢14を含み、好ましくは肝臓15及び心臓16も含み、気管20及び/又は肺19を含み得る。
【0051】
内臓群は、例えば、手動除去のための手又は機械除去のための回収装置1310を体腔内に入れ、内臓群に掛けて、肛門開口部24を介して体腔外に上向きに引くことにより、肛門開口部24を介して除去される。また、内臓群の上向きの移動によって、食道18にも牽引力がかかる。食道18は、食道が頸5から外された結果として、皮17から剥がされる。
【0052】
図7は、内臓除去される図1の鴨1を準備する、すなわち、内臓群25を除去する前の準備工程を行うための前内臓除去システム100を模式的に示す。前内臓除去システム100は、第1ステーションとしての切断機200と、切断機200の下流にある皮剥ぎのための第2ステーション300とを有する。このことにより、足かせ2から逆さまに吊された鴨1は、皮剥ぎのための第2ステーションに続く、切断のための切断機200に沿って搬送されることができる。
【0053】
図8は、図7の前内臓除去システム100における切断機200を模式的に示す正面図である。図9は、図7の前内臓除去システム100における切断機200を模式的に示す背面図である。図10は、図9に示す平面A-A’に対応する切断機200の断面図である。
【0054】
切断機200は、ドラム210を有する。ドラム210は、ドラム210に沿って移動する足かせ2に吊された鴨1の頸5を受け入れる螺旋状の溝部211をドラム210に有する。螺旋状の溝部211は、頸5を捉えて受け入れるために、ドラムの進入側において比較的幅広く始まっている。ドラム210の進入側は、図8に示すドラム210の左側である。溝部の幅は、ドラムの中央部に向かって減少し、ドラム210の出口側に向かって再び増加する。出口側は、入口側と反対にあり、図8におけるドラム210の右側である。螺旋状の溝部の入口側及び出口側が比較的幅広いことによって、鴨1の頸5の受け入れ及び解放を容易かつ円滑な方式で行うことができる。一方、ドラムの中央部における螺旋状の溝部は、以下に説明するように長手方向の切れ目30及び横方向の切れ目31を入れることができるように、鴨の頸5を正確に配置し保持するように構成されている。
【0055】
本実施形態では、鴨1の頸5は、頸の背面21がドラムの方を向き、頸5の前面23がドラムから離れる方を向くように、螺旋状の溝部211内に受け入れられる。図10の断面図に明確に示されているように、ドラム210には、第1切断装置220が設けられている。第1切断装置220は、ドラム210と共に回転するように螺旋状の溝部211内に配置された切断刃221を有する。このことにより、頸5が螺旋状の溝部内にある状態でドラムを通過すると、鴨1の頸5の背面21に長手方向の切れ目が入れられる。
【0056】
鴨1の頸5は、3つの案内棒212,213,214によって、螺旋状の溝部内の正しい位置に保持される。案内棒212は、鴨1の頸に掛かる。案内棒213は、鴨の胴体において、又は、鴨の胴体の近くにおいて、案内棒212の上方で鴨の頸に掛かる。案内棒214は、鴨の胴体に掛かる。刃は、頸を螺旋状の溝部の外に付勢し得る。そのため、案内棒212,213は、特に切れ目30が入れられる間に鴨の頸が螺旋状の溝部から押し出されることを防止する。
【0057】
切断機200は、第2切断装置230を更に有する。第2切断装置230は、駆動装置232によって回転可能に駆動され得る回転可能な切断刃231を有する。切断刃231は、鴨の頸がドラムの螺旋状の溝部内に保持されている間にドラムと切断刃との間を通過し、切断刃231が横方向の切れ目31を入れることができるように配置されている。さらに、案内棒212,213,214は、切れ目が入れられる間、頸を螺旋状の溝部と共に適切な位置に保持する。
【0058】
第1切断装置220及び第2切断装置230で使用される「第1」及び「第2」という用語は、鴨の頸が切断装置を通過する順序を指すものではなく、単に2つの切断装置を区別するために使用されるものである。実際に、図8図10に示す実施形態では、鴨の頸は、横方向の切断が第1切断装置による長手方向の切断よりも先に行われるように、第2切断装置230を先に通過する。
【0059】
したがって、要約すると、切断機は、第1切断装置と、第2切断装置とを有する。第1切断装置は、家禽の頸の背面で家禽の皮を損傷するように構成されている。第2切断装置は、家禽の頭において、又は、家禽の頭の近くにおいて、家禽の食道を損傷するように構成されている。本実施例では、第1切断装置と第2切断装置とは、単一の切断機にまとめられているが、別々に及び/又は任意の順序で設けられてもよい。
【0060】
前内臓除去システム100は、第2ステーション300を更に有する。図11は、第2ステーション300を模式的に示す正面図である。図12Aは、図11に示す平面B-B’に対応する第2ステーション300の断面図である。図12Bは、第2ステーションのうち図12Aに矩形Cで示した部分を模式的に示す詳細図である。
【0061】
第2ステーション300は、実質的に直立した回転軸311を軸として回転するように構成された回転台310を有する。回転台310は、台板315に設けられた複数の皮剥ぎ装置320を有する。複数の皮剥ぎ装置320によって、足かせ2から吊された複数の鴨1を多かれ少なかれ同時に処理することが可能になる。そのために、足かせ2は、回転台310と同期して移動する。鴨1は、切断機200から搬送路301に沿って第2ステーション300に向かって移送される。鴨1は、第2ステーション300に到達すると、静止した上部案内棒313及び静止した下部案内棒314に掛かる。静止した上部案内棒313及び静止した下部案内棒314は、鴨1、特に頸5を、回転台上の皮剥ぎ装置320に向かって案内する。
【0062】
回転台310は、皮剥ぎ装置320と共に回転する頸捕捉板312と、凹部317とを有する。凹部317は、鴨の視点から見たときに頭のすぐ下方の位置、すなわち、逆さまに吊されている鴨を見る外部の観察者の視点から見て頭のすぐ上方の位置で、鴨1の頸を受け入れる。下部案内棒314は、鴨の頸を凹部317に案内するために使用される。凹部317は、鴨の頭が頸の長手方向の軸に平行な方向に凹部を通過できないような寸法にされることが好ましい。このことにより、下部案内棒314及び頸捕捉板312は、鴨1の処理中に、鴨の頭を捕捉し、皮剥ぎ装置320に対して適切な位置に保持する。
【0063】
上部案内棒313は、頸を案内するように構成されている。上部案内棒313は、始めは頸が案内棒313に配置された案内板316に到達するまで、頸と皮剥ぎ装置320との間の距離を適切に保つ。案内板316は、頸を皮剥ぎ装置に接触させて頸から皮を外す前記の皮剥ぎ工程を開始させるように、皮剥ぎ装置320に向かって延びる。
【0064】
回転台上の各皮剥ぎ装置320は、第1ローラ321と、第2ローラ322と、第3ローラ323とを含む3つのローラを有する。第1ローラ321、第2ローラ322、及び第3ローラ323の全ては、直立した回転軸を軸として回転するように回転可能に配置されている。好ましくは、本実施形態のように、比較的大きな歯車を駆動する単一の駆動装置が設けられ、当該歯車は皮剥ぎ装置320の全ての第1ローラ321の回転を駆動するように構成される。第1ローラ321と第2ローラ322とは、第1ローラが第2ローラの回転を駆動するように互いに順に接続されている。第2ローラ322は、第2ローラが第3ローラの回転を駆動するように第3ローラ323に順に接続されている。
【0065】
本実施形態では、第1ローラ、第2ローラ、及び第3ローラは、はすば歯車として実現されている。当該はすば歯車において、第2ローラと第3ローラとは、第2ローラが第3ローラの回転を駆動できる一方、第2ローラと第3ローラとの間に、皮を捕らえて第2ローラと第3ローラとの間を第2ローラと第3ローラとのペアの反対側に移動させることのできる十分な空間があるように噛み合っている。
【0066】
図12Bの視点に対応して上方から見ると、第3ローラ323が時計回りに回転する一方で、第2ローラは反時計回りに回転する。この観点から、第3ローラが右回りのはすば歯車である一方で、第2ローラは左回りのはすば歯車である。
【0067】
また、第1ローラ321は、時計回りに回転する。第1ローラが第3ローラと同様に右回りのはすば歯車であるので、第1ローラと第2ローラとのペアは、第2ローラと第3ローラとのペアと同様の動作原理を有する。したがって、鴨の頸の皮は、まず第2ローラと第3ローラとのペアによって捕らえられ、その後に第1ローラと第2ローラとのペアに向かって移動する。また、第1ローラと第2ローラとのペアは、皮を捕らえ、皮と頸との間の距離を増大させて、皮が第2ローラと第3ローラとのペアによって捕らえた後もなお皮と頸との間に存在する任意の組織接続部を切断する。
【0068】
図13は、本発明の第2態様による実施形態に係る回収装置1310を示す。回収装置1310は、回収装置1310において反対側に配置された操作部1320及び回収部1330を有する。
【0069】
操作部1320は、回収装置を内臓除去機に接続する部分である。操作部1320により、回収装置を家禽の屠体に対して操作、すなわち、位置決め及び移動することが可能になる。当該操作は、Z方向に平行な上下移動及び/又はX方向に平行な回転軸を軸とする回転を含んでもよい。
【0070】
回収部1330は、回収装置1310の一部であって、胴体4から内臓群を除去するために、例えば、肛門開口部24を介して、屠体の胴体内に挿入され、内臓群25に掛かる部分である。
【0071】
本実施形態では、回収部1330は、第1凹部1350と、第2凹部1360とを有する。第1凹部1350と第2凹部1360とは、回収装置1310の長手方向に整列している。図13における長手方向は、Z方向と実質的に平行に延びる。第1凹部1350は、操作部1320に対して第2凹部1360よりも近くに配置されている。
【0072】
第1凹部1350は、内臓群のうち少なくとも砂嚢、腸、及び肝臓を保持するように構成されている。一方、第2凹部1360は、少なくとも心臓を保持するように構成されている。第1凹部と第2凹部との間には、第1凹部1350から壁1380を通じて第2凹部1360に延びる渡し凹部(bridging recess)1370が設けられている。渡し凹部1370の利点は、渡し凹部1370が家禽からの食道の受け入れを可能にすることで、内臓群の除去中に食道を損傷させるおそれの小さい状態で、食道を第1凹部1350内の砂嚢から渡し凹部1380を介して第2凹部1360に延在可能にすることにある。
【0073】
回収部1330は、その自由端部に、第2凹部1360に延びるスリット1390を更に有する。スリット1390により、食道を第2凹部から回収装置の下方に延在させることが可能になる。したがって、回収部1330により、食道の他の中間部位における損傷の変化が小さい状態で、前記のように家禽の頭又は家禽の頭の近くにある損傷部位に至るまで食道を除去することが可能になる。
【0074】
壁1380は、内臓群のうち第1凹部に受け入れられるべき部分を適切に保持可能とするV字形状の側壁を第1凹部に形成することが好ましい。
【0075】
第2凹部1360は、2つの部分、すなわち、第1深さを有する第1部分1361と、第2深さを有する第2部分1362とを有することが好ましい。第1深さは、第2深さよりも小さい。第2部分1362は、スリット1390を有することが好ましい。第1深さは、第1凹部及び/又は渡し凹部の対応する深さと等しいか又は実質的に等しいことが好ましい。
【0076】
回収部の家禽に掛かる全ての縁部は、内臓群への損傷を小さくするために、丸みを帯びていることが好ましい。
【0077】
図6も参照される。図6は、第1凹部1350、第1部分1361及び第2部分1362を有する第2凹部1360、並びに渡し凹部1370を有する側壁1380を有する回収装置1310を示す断面図である。図6には、家禽からの内臓群25の除去後に回収装置1310と協働し、内臓群が回収装置の第1凹部及び第2凹部から出るのを防止する対向部品1400も示されている。対向部品1400は、更なる処理のために回収装置から内臓群を最終的に受け入れる箱であってもよい。
【0078】
図14A及び図14Bは、本発明の第2態様による他の実施形態に係る回収装置1410を示す。図14Bは、正面図である。図14Aは、図14Bに破線A-Aで示す平面に沿った断面図である。
【0079】
回収装置1410は、回収装置1410において反対側に配置された操作部1420及び回収部1430を有する。
【0080】
操作部1420は、回収装置1410を内臓除去機に接続する部分である。操作部1420により、回収装置1410を家禽の屠体に対して操作、すなわち、位置決め及び移動することが可能になる。当該操作は、Z方向に平行な上下移動及び/又はX方向に平行な回転軸を軸とする回転を含んでもよい。
【0081】
回収部1430は、回収装置1410の一部であって、胴体4から内臓群を除去するために、例えば、肛門開口部24を介して、屠体の胴体内に挿入され、内臓群25に掛かる部分である。
【0082】
回収部1430は、第1凹部1450と、第2凹部1460とを有する。第1凹部1450と第2凹部1460とは、回収装置1410の長手方向に整列している。図14A及び図14Bにおける長手方向は、Z方向と実質的に平行に延びる。第1凹部1450は、操作部1420に対して第2凹部1460よりも近くに配置されている。
【0083】
第1凹部1450は、砂嚢、腸、肝臓など、内臓群の一部を保持するように構成されている。一方、第2凹部1460は、少なくとも心臓を保持するように構成されている。第1凹部1450と第2凹部1460との間には、第1凹部1450から壁1480を通じて第2凹部1460に延びる渡し凹部1470が設けられている。
【0084】
回収部1430は、その自由端部に、第2凹部1460に延びるスリット1490を有する。スリット1490により、食道を第2凹部1460から回収装置1410の下方に延在させることが可能になる。したがって、回収部1430により、家禽の頭又は家禽の頭の近くにある前記のような損傷部位に至るまで食道を除去することが可能になる。
【0085】
図13の実施形態との重要な差異は、図13の実施形態が深さの異なる2つの部分を有する一方で、図14A及び図14Bの実施形態における第2凹部1460が平坦な底面を有することである。
【0086】
他の差異は、操作部のサイズが同一又は少なくとも同様であると仮定すると、回収部1430が回収部1330よりも大きいことにより、回収装置1410がより大きな家禽の内臓群の除去に更に適することであり得る。
【0087】
また、回収部1430の家禽に掛かる全ての縁部は、内臓群への損傷を小さくするために、丸みを帯びていることが好ましい。
【0088】
図15A及び図15Bは、本発明の第2態様による更なる実施形態に係る回収装置1510を示す。図15Bは、正面図である。図15Aは、図15Bに破線A-Aで示す平面に沿った断面図である。
【0089】
回収装置1510は、回収装置1510において反対側に配置された操作部1520及び回収部1530を有する。
【0090】
操作部1520は、回収装置1510を内臓除去機に接続する部分である。操作部1520により、回収装置1510を家禽の屠体に対して操作、すなわち、位置決め及び移動することが可能になる。当該操作は、Z方向に平行な上下移動及び/又はX方向に平行な回転軸を軸とする回転を含んでもよい。
【0091】
回収部1530は、回収装置1510の一部であって、胴体4から内臓群を除去するために、例えば、肛門開口部24を介して、屠体の胴体内に挿入され、内臓群25に掛かる部分である。
【0092】
回収部1530は、第1凹部1550と、第2凹部1560とを有する。第1凹部1550と第2凹部1560とは、回収装置1510の長手方向に整列している。図15A及び図15Bにおける長手方向は、Z方向と実質的に平行に延びる。第1凹部1550は、操作部1520に対して第2凹部1560よりも近くに配置されている。
【0093】
第1凹部1550は、砂嚢、腸、肝臓など、内臓群の一部を保持するように構成されている。第2凹部1560は、少なくとも心臓を保持するように構成されている。第1凹部1550と第2凹部1560との間には、第1凹部1550から壁1580を通じて第2凹部1560に延びる渡し凹部1570が設けられている。
【0094】
回収部1530は、その自由端部に、第2凹部1560に延びるスリット1590を有する。スリット1590により、食道を第2凹部1560から回収装置1510の下方に延在させることが可能になる。したがって、回収部1530により、家禽の頭又は家禽の頭の近くにある前記のような損傷部位に至るまで食道を除去することが可能になる。
【0095】
第2凹部1560は、2つの部分、すなわち、第1深さを有する第1部分1561と、第2深さを有する第2部分1562とを有する。第1深さは、第2深さよりも小さい。
第2部分1562は、スリット1590を有する。すなわち、スリット1590は、第1部分1561まで延びていない。
【0096】
図13の実施形態との主な差異は、操作部のサイズが同一又は少なくとも同様であると仮定すると、回収部1530が回収部1330よりも小さいことにより、回収装置1510がより小さい家禽の内臓群の除去に適することであり得る。
【0097】
また、回収部1530の家禽に掛かる全ての縁部は、内臓群への損傷を小さくするために、丸みを帯びていることが好ましい。
【0098】
したがって、実施形態では、内臓除去装置は、示された回収装置のうち任意のものと共に使用されてもよい。図15A及び図15Bの回収装置1510は、小形の家禽に使用される。図13の回収装置1310は、中形の家禽に使用される。図14A及び図14Bの回収装置1410は、大形の家禽に使用される。回収装置は、家禽が同種であって、種における大きさのばらつきに対応するように使用されてもよく、種の異なる家禽に使用されてもよい。
【0099】
あり得る変形の一例として、図13図15B並びに上述した小形の家禽、中形の家禽、及び大形の家禽の区別を参照しながら、複数の寸法について論ずる。
【0100】
回収装置の回収部の長さは、図14A及び図15Aに参照符号Lで示すように、長手方向における回収部の自由端部と第1凹部の始端部(beginning)との間の寸法として定義されてもよい。ここでは、長手方向はZ方向に平行である。
【0101】
回収装置の回収部の幅は、図14B及び図15Bに参照符号W1で示すように、幅方向における寸法として定義されてもよい。ここでは、幅方向はX方向に平行である。
【0102】
回収装置の回収部の厚さは、図14A及び図15Aに参照符号Tで示すように、厚さ方向における寸法として定義されてもよい。ここでは、厚さ方向はY方向に平行である。
【0103】
回収部の第1凹部の深さは、図14A及び図15Aに参照符号D1で示すように、第1凹部の底部と隣り合う面との間の、隣り合う面に垂直な寸法として定義されてもよい。
【0104】
回収部の第2凹部の深さは、図14A及び図15Aに参照符号D2で示すように、第2凹部の底部と隣り合う面との間の、隣り合う面に垂直な寸法として定義されてもよい。
【0105】
回収部の第1凹部の幅は、図14B及び図15Bに参照符号W2で示すように、幅方向における寸法として定義されてもよい。ここでは、幅方向はX方向に平行である。
【0106】
回収部の渡し凹部の幅は、図14B及び図15Bに参照符号W3で示すように、幅方向における寸法として定義されてもよい。ここでは、幅方向はX方向に平行である。
【0107】
回収部のスリットの幅は、図14B及び図15Bに参照符号W4で示すように、幅方向における寸法として定義されてもよい。ここでは、幅方向はX方向と平行である。
【0108】
以下、表には、異なる回収装置に対する例示的な範囲を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
図13図15A、及び図15Bの回収装置の場合のように、回収装置の第2凹部が2つの異なる深さ、すなわち、第1部分の第1深さ及び第2部分の第2深さを有する2つの部分を有する場合、第1深さと第2深さとの比(第1深さ/第2深さ)は、0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、最も好ましくは0.5以下である。
【0111】
本発明の第2態様に必須ではないが、操作装置は、図13図14B、及び図15Bに参照符号H1を用いて示す穴部を有してもよい。穴部は、各回収装置の降下及び持ち上げに使用されてもよい。また、穴部は、各回収装置をX方向とZ方向との両方に対して垂直に延びるY方向を軸に回転可能にするような回転軸を設けるために使用されてもよい。
【0112】
本発明の第2態様に必須ではないが、操作装置は、図13図14A、及び図15Aに参照符号H2を用いて示す1つ以上の穴部を有してもよい。穴部は、各回収装置の降下及び持ち上げに使用されてもよい。また、穴部は、各回収装置をX方向を軸にして回転可能にするような回転軸を設けるために使用されてもよい。
【0113】
本発明の第2態様に必須ではないが、操作装置は、図13図14A及び図15Aに参照記号H3を用いて示す1つ以上の穴部又は凹部を有してもよい。穴部又は凹部は、操作装置のうち1つ以上の穴部又は凹部H3を有する部分をY方向に移動させるために、例えば、前記の穴部H2によって提供され得るX方向を軸として各回収装置を回転させるために、使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【国際調査報告】