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特表2022-536286流体搬送構造物の保守装置、システム及び方法
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  • 特表-流体搬送構造物の保守装置、システム及び方法 図1
  • 特表-流体搬送構造物の保守装置、システム及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】流体搬送構造物の保守装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20220805BHJP
   F17D 5/02 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G01M3/04 Z
F17D5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571927
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 NO2020050155
(87)【国際公開番号】W WO2020251370
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】20190720
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521528436
【氏名又は名称】プロセンス アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルテ フローデ
(72)【発明者】
【氏名】リエン カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブレランド アムンド
【テーマコード(参考)】
2G067
3J071
【Fターム(参考)】
2G067AA02
2G067AA11
2G067AA44
2G067CC02
2G067CC03
2G067CC04
2G067DD02
2G067DD27
3J071DD36
3J071EE37
3J071FF01
(57)【要約】
本願では、流体搬送用構造物を保守する方法及び装置について述べる。更に、流体を搬送する構造物からの漏れを検出する方法、装置及びシステムについても述べる。本方法は、流体を搬送する構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットを設け、そのジャケットによって、インレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成するステップと、そのインレットを通る流れの態でそのポケット内に駆逐流体を注入するステップと、注入された駆逐流体の流れで以てそのポケット内の潜在的有害流体をそのアウトレット経由でそのポケット外に移動させるステップと、を有する。本方法に更に、そのポケットよりも下流にある検出器を用いその潜在的有害流体を検出するステップを、設けてもよい。その潜在的有害流体が、その構造物から漏れた漏れ流体であってもよい。本願記載の装置及び/又はシステムを以て、本方法を1回又は複数回実行する装置/システムとしてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体搬送用の構造物を保守する方法であって、
上記構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットを設け、そのジャケットによって、インレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成するステップと、
上記インレットを通る流れの態で上記ポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
注入された駆逐流体の流れで以て、上記ポケット内の潜在的有害流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に移動させるステップと、
を有する方法。
【請求項2】
流体搬送用の構造物を保守する装置であって、
上記構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットであり、インレット及びアウトレットを有するポケットが自ジャケットとその構造物との間に形成されるジャケットと、
上記ポケット内に注入され、そのポケット内の潜在的有害流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に駆逐する駆逐流体を、提供する流体源と、
上記流体源を上記インレットに連結することで上記ポケットに至る駆逐流体用経路を提供する第1管と、
を備える装置。
【請求項3】
請求項1に係る方法であって、
上記アウトレットの下流にある検出手段を用い上記潜在的有害流体を検出するステップを有する方法。
【請求項4】
請求項2に係る装置であって、
上記潜在的有害流体を検出する検出手段を備えており、その検出手段が、上記ポケットの下流に配置されていてそのポケットと通流状態にある装置。
【請求項5】
請求項2又は3に係る装置であって、上記ジャケットが、上記構造物のうち少なくとも一部分を覆っており、且つインレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成しており、更に上記流体源が第1管を介しそのポケットと通流状態にある装置。
【請求項6】
請求項5に係る装置であり、上記検出手段と第2管とを有する装置であって、その検出手段がその第2管を介し上記ポケットと通流状態にある装置。
【請求項7】
漏れを検出する方法であって、
流体を搬送する構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットを設け、そのジャケットによって、インレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成するステップと、
上記インレットを通る流れの態で上記ポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
注入された駆逐流体の流れで以て、上記ポケット内の漏れ流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に移動させるステップと、
上記アウトレットの下流にある検出手段を用い上記漏れ流体を検出するステップと、
を有する方法。
【請求項8】
漏れを検出する装置であって、
流体を搬送する構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットであり、それら構造物・ジャケット間にポケットを形成し且つそのポケット内へのインレット及びそのポケットからのアウトレットを提供するジャケットと、
上記ポケット内に駆逐流体を注入する流体源と、
上記流体源を上記ポケットのインレットに連結し上記駆逐流体をそのポケット内に導く第1管と、
上記ポケットのアウトレットに連結されており上記漏れ流体及び上記駆逐流体をそのポケット外に導く第2管と、
上記漏れ流体を検出する検出手段であり、上記ポケットの下流に配置されていて、第2管を介しそのポケットと通流状態にあり、且つその漏れ流体を検出しうるよう構成されている検出手段と、
を備え、上記流体源から上記ポケット経由で駆逐流体流を供給することで、そのポケットから上記検出手段へと漏れ流体を駆逐し、その検出手段にてその漏れ流体を検出するよう、構成されている装置。
【請求項9】
請求項2、4、5、6及び8のうち何れかに係る装置であって、上記ジャケットが気密素材及び/又は熱保護素材を備える装置。
【請求項10】
請求項2、4、5、6、8及び9のうち何れか一項に係る装置であって、第1管と通流状態にある圧力センサを備え、それによりその第1管内の流体圧を監視する装置。
【請求項11】
請求項6、8、9及び10のうち何れか一項に係る装置であって、第2管と通流状態にある圧力センサを備え、それによりその第2管内の流体圧を監視する装置。
【請求項12】
請求項2、4、5、6、8、9、10及び11のうち何れか一項に係る装置であって、上記ポケット内に配置された液体検出デバイスを備え、それによりそのポケット内における液体の存在を検出する装置。
【請求項13】
漏れを検出するシステムであって、
流体を搬送する構造物のうち少なくとも一部分をそれぞれ覆う複数枚のジャケットであり、それら構造物・ジャケット間にポケットを形成し且つそのポケット内へのインレット及びそのポケットからのアウトレットを提供する複数枚のジャケットと、
上記ポケットそれぞれの内部に駆逐流体を注入する流体源と、
上記流体源を上記ポケットそれぞれのインレットに連結し上記駆逐流体を各ポケット内に導く複数本の第1管と、
上記漏れ流体及び上記駆逐流体を上記複数個のポケットの外へと導く複数本の第2管と、
漏れを検出する複数個の検出手段であり、上記複数本の第2管を介し上記複数個のポケットと通流状態にあり且つ上記漏れ流体を検出しうるよう構成されている複数個の検出手段と、
を備え、上記流体源から上記ポケットそれぞれを介し駆逐流体流を供給することで、それらポケットのうち何れか1個から上記複数個の検出手段のうち少なくとも1個へと漏れ流体を駆逐し、その検出手段にてその漏れ流体を検出するよう、構成されているシステム。
【請求項14】
請求項13に係る検出システムであって、上記構造物のうち1個からの漏れ流体を検出する複数個の検出手段と、それら複数個の検出手段に接続されたプロセッサと、を備え、当該複数個の検出手段に属する検出手段それぞれが1個のポケット又は1個のポケット群に連結されており、
上記プロセッサが、上記複数個の検出手段のうちどの検出手段により上記漏れ流体が検出されたかを識別することで、どのポケット又はポケット群内にその漏れ流体が漏れたかを識別するよう、構成されている検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のある態様は、流体を搬送する構造物、例えばパイプ、コンテナ、チャンバ等の保全に関する。本発明の別の態様は、その構造物からの漏れ流体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を搬送する構造物、例えばオイル、ガス、水等を搬送するパイプ、コンテナ等が、産業用施設、商用建築物、居住用建築物等で広く用いられている。それら構造物は腐食等による損傷を被りやすい。そうした損傷があると、或いは単にそうした損傷のリスクがあるだけでも、厳格で高価なメンテナンス(保守)計画が必要となりうるし、そうしなければ小規模な事故、更には大規模な事故さえ生じかねない。
【0003】
流体の移送及び貯留は、とりわけその流体が可燃性、爆発性、有毒性その他、潜在的に有害なものである場合、危険なこととなりうる。
【0004】
危険な流体移送の一例に、炭化水素抽出施設上でのパイプライン経由移送があり、例えば海洋リグでは、通常、生産された炭化水素流体を高圧且つ大流量にてパイプラインを介し生産源から処理システムへと移動させている。そうしたリグ上では、パイプラインからの炭化水素ガス漏れが潜在的に大事故につながりうるし、破滅的な結果を呈するかもしれない。
【0005】
別の例としては、居住用建築物における炭化水素ガスのパイプライン経由分配、例えば暖房目的で用いられるガスの分配がある。居住用建築物におけるガス漏れ事故は火災や爆発、ひいては人命の損失及び資産の破損につながりかねない。
【0006】
従来から知られている通り、漏れは例えば赤外線ポイントセンサ、超音波センサ、電気化学式ガスセンサ等を用い、検出することができる。
【0007】
流体搬送用構造物、とりわけ炭化水素等の潜在的危険流体を搬送する構造物のなかには、遮断(絶縁)層で覆われているものがある。ポケットが構造物・遮断ジャケット間に形成され、その内部に腐食性流体が捕われることがある。遮断ジャケットと危険流体搬送パイプ等との間のポケット内に捕われた腐食性流体はとりわけ問題的であり、何故かといえば、遮断ジャケットのカバー下に捕われたその問題流体を検出するのは困難であろうし、そのポケットからその問題流体を一掃するのは更に過酷であろうし、またその搬送流体が危険でありその漏れが大事故を引き起こしかねない場合に付随リスクが更に大きくなるからである。先に言及した従来の漏れ検出方法は、遮断ジャケットのカバー下に捕われた漏れ流体に関しては有効たりえない。
【0008】
特許文献1にはより先進的な漏れ検出システム、即ち搬送パイプが管状の外ジャケットによりくるまれていてそれら外ジャケット・搬送パイプ間に環状空間が生じるシステムが示されている。搬送パイプに対し概ね平行なその環状空間内には臭気探知パイプ(スニッファ)があり、その臭気探知パイプには複数個の孔が設けられており、その孔がそのパイプの壁を貫き径方向に延び且つ軸方向に沿い互いに間隔配置されている。その臭気探知パイプの一端には吸引装置が結合されており、他端は閉鎖されている。搬送パイプから漏れたガスが何れも臭気探知パイプの開口内に吸引され、その臭気探知パイプを介しガス検出器へと吸引されるため、その漏れガスを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0037596号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では従来技術に代わる有利な代替物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、流体搬送用構造物を保守する方法であって、
上記構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットを設け、そのジャケットによって、インレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成するステップと、
上記インレットを通る流れの態で上記ポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
注入された駆逐流体の流れで以て、上記ポケット内の潜在的有害流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に移動させるステップと、
を有する方法に関する。
【0012】
本発明の第2態様は、流体搬送用構造物を保守する装置であって、
上記構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットであり、インレット及びアウトレットを有するポケットが自ジャケットとその構造物との間に形成されるジャケットと、
上記ポケット内に注入され、そのポケット内の潜在的有害流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に駆逐する駆逐流体を、提供する流体源と、
上記流体源を上記インレットに連結することで上記ポケットに至る駆逐流体用経路を提供する第1管と、
を備える装置に関する。
【0013】
上記潜在的有害流体に該当しうるものに、もしそれが上記ポケット内に残っていると上記構造物が経時的に損傷するであろう、或いは少なくともそうなりかねない、腐食性流体がある。上記潜在的有害流体に該当しうるものに、上記構造物から漏れた流体、その構造物以外の源泉から上記ポケット内にまぎれ込んだ流体、濃縮により生じた流体等がある。上記潜在的有害流体に該当しうるものに、もしそれが上記ポケット内に残っていると小事故又は大事故が生じ又はそれに巻き込まれることとなりかねない危険流体、例えば有毒流体、酸性流体、潜在的爆発性流体、可燃流体その他の種類の危険流体がある。上記潜在的有害流体には液体のものや気体のものがある。上記潜在的有害流体には様々な分子の混合物が含まれうる。上記潜在的有害流体には、例えばO、HO、HS及び/又はCOや、及び/又は、構造物にとり潜在的に有害となりうるその他の気体又は液体全般が含まれうる。
【0014】
なお、流体を「搬送する」とは、例えば、その流体を貯留、保持、移送、通流、運搬等することである。上掲の構造物とは、例えば、ガス用のパイプ、セパレータ、コンテナ等のことである。なお、「パイプ」はパイプラインの一断片又は一部分のことを指している。この文脈に沿う幾つかの実施形態では、フランジ及び/又は弁又はその他のポイントを備えるパイプラインの一断片又は一部分であり、比較的漏れが生じやすいパイプライン部分又は断片のことを、「パイプ」と呼んでいる。
【0015】
第1態様に係る方法に、上記アウトレットよりも下流に配置された検出手段を用い上記潜在的有害流体を検出するステップを、設けてもよい。
【0016】
本発明の第2態様に係る装置に、上記潜在的有害流体を検出する検出手段を設けてもよい。その検出手段を上記アウトレットの下流に配置してもよい。上記流体源を上記インレットに連結する管を以て第1管としてもよい。本装置に、更に第2管を設けてもよい。その第2管を上記ポケットのアウトレットに連結し、上記アウトレットからの潜在的有害流体をその第2管により導くようにしてもよい。上記検出手段を、例えばその第2管内に、そのアウトレットと通流状態となるよう配置してもよい。
【0017】
更に、漏れを検出する方法、漏れを検出する装置、並びに漏れを検出するシステムについても記述する。
【0018】
本発明の第3態様は、漏れを検出する方法であって、
流体搬送構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットを設け、そのジャケットによって、インレット及びアウトレットを有するポケットをそれらジャケット・構造物間に形成するステップと、
上記インレットを通る流れの態で上記ポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
注入された駆逐流体の流れで以て、上記ポケット内の漏れ流体を上記アウトレット経由でそのポケット外に移動させるステップと、
上記アウトレットの下流にある検出手段を用い上記漏れ流体を検出するステップと、
を有する方法に関する。
【0019】
上掲の注入流体のことを「駆逐流体」と呼べるのは、それを用い上記漏れ流体を上記ポケットから移動させ/駆逐することができるためである。漏れ流体とは潜在的有害流体等のことである。
【0020】
本発明の第4態様は、漏れを検出する装置であって、
流体搬送構造物のうち少なくとも一部分を覆うジャケットであり、それら構造物・ジャケット間にポケットを形成し且つそのポケット内へのインレット及びそのポケットからのアウトレットを提供するジャケットと、
上記ポケット内に駆逐流体を注入する流体源と、
上記流体源を上記ポケットのインレットに連結し上記駆逐流体をそのポケット内に導く第1管と、
上記ポケットのアウトレットに連結されており上記漏れ流体及び上記駆逐流体をそのポケット外に導く第2管と、
上記漏れ流体を検出する検出手段であり、上記ポケットの下流に配置されていて、上記第2管を介しそのポケットと通流状態にあり且つその漏れ流体を検出しうるよう構成されている検出手段と、
を備え、上記流体源から上記ポケット経由で駆逐流体流を供給することで、そのポケットから上記検出手段へと漏れ流体を駆逐し、その検出手段にてその漏れ流体を検出するよう、構成されている装置に関する。
【0021】
以下、本発明の第2態様に係る装置や本発明の第4態様に係る装置のことを指し、本装置と呼ぶことがある。以下、本発明の第1態様に係る方法や本発明の第3態様に係る方法のことを指し、本方法と呼ぶことがある。
【0022】
本装置に、上記駆逐流体を供給する流体源と、その流体源を上記ポケットのインレットに連結する第1管とを設けてもよい。本装置に更に、上記ポケットのアウトレットに連結された第2管を設け、それにより上記ポケットから上記流体又は流体群を排出させるようにしてもよい。本装置にて、そのアウトレットの下流に上記検出手段を配置してもよい。その検出手段を第2管の一部分とし又はそれにつなげ、上記ポケットから排出されてくる流体をその検出手段により検出するのでもよい。
【0023】
本方法に、本発明の第2態様に係る装置又は本発明の第4態様に係る装置を提供するステップを設けてもよい。
【0024】
本発明の第5態様は、複数個の構造物のうち1個からの流体の漏れを検出する検出システムであって、
構造物のうち少なくとも一部分をそれぞれ覆う複数枚のジャケットであり、それら構造物・ジャケット間にポケットを形成し且つそのポケット内へのインレット及びそのポケットからのアウトレットを提供する複数枚のジャケットと、
上記ポケットそれぞれの内部に駆逐流体を注入する流体源と、
上記流体源を上記ポケットそれぞれのインレットに連結し上記駆逐流体を各ポケット内に導く複数本の第1管と、
上記漏れ流体及び上記駆逐流体を上記複数個のポケット外に導く複数本の第2管と、
漏れを検出する複数個の検出手段であり、上記複数本の第2管を介し上記複数個のポケットと通流状態にあり且つ上記漏れ流体を検出しうるよう構成されている複数個の検出手段と、
を備え、上記流体源から上記ポケットそれぞれを介し駆逐流体流を供給することで、それらポケットのうち何れか1個から上記複数個の検出手段のうち少なくとも1個へと漏れ流体を駆逐し、その検出手段にてその漏れ流体を検出するよう、構成されているシステムに、関する。
【0025】
本発明には幾つかの長所がある。駆逐流体を上記ポケット内に注入することで、そのポケット内の環境に影響を及ぼすこと/その環境を制御することができる。本装置に、例えばその駆逐流体の清浄性及び乾燥性を確保する手段を設け、例えばその駆逐流体と接することがありうる弁及び/又はセンサに対し、その手段により肯定的な効果を及ぼすようにしてもよい。第2態様及び/又は第4態様に係る装置及び/又は第5態様に係るシステムに更に、例えばその駆逐流体の温度を制御する手段を設け、その温度制御手段の使用を通じそのポケット内の温度に影響を及ぼすこと、及び/又は、実施形態によってはそのポケット付近の温度に影響を及ぼすこともできる。
【0026】
上記ジャケットは上記構造物のうち少なくとも一部分を覆うものであり、通常は、それによりその構造物の外面のうち少なくとも一部分を覆えばよい。そのジャケットにより構造物を周沿いに、即ちその構造物のほぼ全体を覆うのでもよいし、構造物の小部分のみ、例えば漏れがとりわけ生じやすい部分を覆うのでもよい。
【0027】
上記構造物に漏れが生じそうな状況が起きる見込みがあるなら、本発明により、上記潜在的有害/漏れ流体を食い止め、制御し及び/又は排出させ及び/又は検出する手段を設けた方がよい。その検出手段の近接性、上記ポケットのサイズ、並びに上記駆逐流体の流量次第では、その漏れをごく速やかに検出することができる。その駆逐流体によりそのポケットから潜在的有害/漏れ流体を駆逐することで、上首尾にも、その潜在的有害/漏れ流体により高濃縮潜在的有害/漏れ流体の大きな塊が形成されないように、することができる。その潜在的有害/漏れ流体を駆逐流体と混ぜ合わせること、ひいてはそれにより得られ潜在的有害/漏れ流体及び駆逐流体からなる混合物をその潜在的有害/漏れ流体の濃縮塊よりも危険/有害でないものにすることができる。
【0028】
上記ジャケットが気密素材を備えていてもよい。そのジャケットを気密とすることができる。そのジャケットを、構造物のうち少なくとも一部分を覆うように装着したときに気密となるようにすることや、上記アウトレット及び/又はインレット以外の流体脱出路が全く生じないよう構成することができる。これは、潜在的有害/漏れ流体の食い止めに関わる目的上、及び/又は、その潜在的有害/漏れ流体の精密検出上、非常に有利なことでありうる。
【0029】
上記ジャケットが、熱的保護及び/又は絶縁を担う素材を備えていてもよい。危険流体搬送用構造物では熱的保護が必要なことが多かろう。熱的保護は、構造物内流体を外的要因から保護するため、例えばその構造物付近が火事になった場合に例えば熱から保護し或いはその構造物内流体が凍結しないよう寒冷から保護するためか、その構造物内流体が非常に熱く又は非常に冷たい場合に非常に熱く又は非常に冷たい構造物から例えば人間を保護するためか、何れかで必要とされよう。
【0030】
上記駆逐流体を例えば温暖流体としてもよいし、比較的高温な流体、例えば25℃超、30℃超、35℃超又は50℃超或いは100℃超の温度の流体としてもよい。その比較的高温な流体を、例えば、コンプレッサからの比較的高温な空気を含むものとしてもよい。その高温空気を用い、上記構造物、その構造物付近の空気、及び/又は、その構造物内の流体を加熱してもよい。実施形態によっては、その駆逐流体がより冷たく例えばその温度が25℃未満のもの、例えば20℃のもの、10℃のもの、0℃のもの、或いは0℃よりも僅かに又はかなり低温なもの、例えばマイナス10℃即ち-100℃のものとされることもある。
【0031】
上記ジャケットを、更に又はそれに代え、他の保護素材を備えるものとすることで、例えば損傷なく爆発に耐えうるジャケットとしてもよい。
【0032】
上記ジャケットをラバー素材等で作成してもよいし、或いは鋼等の金属素材で作成してもよい。そのジャケットを例えば鋼製箱としてもよい。
【0033】
上記ジャケットを、Velcro(登録商標)のフォームを備えるものとし、それを用いそのジャケットを上記構造物付近に係留固定してもよい。
【0034】
本装置に、上記第1管における流体圧を監視すべくその第1管に関連付けて配置された圧力センサ、及び/又は、上記第2管における流体圧を監視すべくその第2管に関連付けて配置された圧力センサを、設けてもよい。これは、本装置の無欠性に関する情報を提供する上で、例えば本装置に漏れがあることを伝え又は上記構造物からの漏れがあることを伝える上で、有利たりうる。
【0035】
本装置に、上記第1管に関連付けて配置された第1圧力センサ、並びに上記第2管に関連付けて配置された第2圧力センサが共に設けられている場合、第1圧力センサにより検出された圧力よりも高い圧力が第2圧力センサにより検出されたことを以て、上記構造物からの漏れであると示す一方、第1圧力センサにより検出された圧力よりも低い圧力が第2圧力センサにより検出されたことを以て、本装置のうちそれら2個の圧力センサの間のどこかからの流体漏れであると示すことができる。
【0036】
本装置に、上記ポケット内における液体の存在を検出する液体検出デバイスを設けてもよい。上記構造物内の流体は液体で構成されることがある。その流体がその構造物からポケット内に漏れた場合、その液体のうち少なくとも一部分が、上記駆逐流体によりそのポケットから搬送されず、そのジャケット内のポケットのうち底部に集まることとなりうる。こうした状況でも、そのポケット内に配置された液体検出デバイスにより、その液体を上首尾に検出することができる。
【0037】
更に、本装置に、管内圧力を低下させる減圧弁を設けてもよい。例えば、本装置に連結され及び/又は本装置の一部分を構成しているコンプレッサシステム等の流体源にて不調が生じた場合に、この主減圧弁によりシステム圧を低下させることで、高圧の駆逐流体による破壊に抗し本装置を保護することができる。
【0038】
本装置に流量調整弁を設けてもよい。この流量調整弁をうまく用いることで、本装置の1個又は複数個のポケット内に注入される駆逐流体の量を調整することができる。
【0039】
本装置に圧力スイッチを設けてもよい。この圧力スイッチを用い、例えば電力不足又は停電時のシャットダウン中等、急な計画外流体圧降下の際に信号を送ることで、1個又は複数個の流体源による流体の配給をある十分な圧力にて停止させることができる。
【0040】
本装置のある種の実施形態によれば、上記駆逐流体向けのフィルタを設け、上記ポケット内に注入される駆逐流体の清浄性及び/又は乾燥性を達成することができる。清浄で乾燥している流体で以て、例えば、その流体の影響を弁及びセンサに十分に及ぼせるようにすることは、有益たりうる。
【0041】
更に、本装置に流量計測デバイス及び/又は流量調整弁を設けてもよい。その流量が適切な範囲内にない場合に、その流量計測デバイスにて警報を発するようにしてもよい。その流量が計測されるので、例えば、流量増加を検出することにより上記ポケット内への漏れを検出することや、流量減少を検出することによりそのポケットからの漏れを検出することができる。流量調整弁を、例えば実装後に用い、ポケット内へ又は複数個のポケット内への適正流量を設定することができる。
【0042】
本装置にプロセッサを設け、それを本装置の1個又は複数個の検出器及び/又はその他の部分に接続してもよい。その検出器を、漏れが検出された場合にそのプロセッサに信号を送るよう、構成してもよい。本装置に更に警報器を設け、それをそのプロセッサか1個又は複数個の検出器に接続することで、例えば、漏れが検出された場合にアラーム信号が発せられるようにしてもよい。
【0043】
本装置を閉止手段につなげ、漏れが検出された場合にその閉止手段を動作させることで上記構造物に向かう流体流又はその構造物内の流体流を止めるよう、本装置を構成してもよい。
【0044】
上記システムが本装置を備えていてもよい。そのシステムが漏れ検出装置を複数個備えていてもよいし、或いは少なくとも、本装置のある部分を複数個備えると共に本発明の他部分をより少数備えるのでもよい。そのシステムを、例えば、構造物のうち少なくとも一部分をそれぞれ覆う複数枚のジャケット、例えば4枚、8又は13枚のジャケットと、複数枚あるジャケット毎に1個又は複数個のガス検出器と、複数枚あるジャケット毎に1本の第1管及び1本の第2管とを備える一方、駆逐流体を提供するより少数の流体源、例えば1個、2個又は3個の流体源を備えるものとしてもよい。
【0045】
上記システムに複数個の流体源を設け、その流体源それぞれにより、1枚又は複数枚のジャケットにより形成される1個又は複数個のポケット内へと駆逐流体を注入するようにしてもよい。
【0046】
上首尾なことに、上記システムに複数個の検出手段を設けてもよい。あるとりわけ上首尾なシステムによれば、そのシステムを、ポケット毎に少なくとも1個の検出手段を備えるものとし、その検出手段を1個のポケット又は1個のポケット群のみにつなげることで、漏れが発生した場所の精密検出を行えるようにすることができる。ある種の実施形態によれば、そのシステムを、ポケット群毎に検出手段を1個備えるものとし、その検出手段を、そのポケット群に属するポケットのうち何れかに漏れがあることを検出しうるよう構成することができる。
【0047】
他種実施形態によれば、上記システムを、検出器を1個だけ備えるものとすることができる。そのシステムに備わる検出器が1個だけの場合、以下のステップ、即ち
複数個の弁を閉止させることでそれら複数個のポケット内への駆逐流体の注入を停止させるステップと、
その上で、ポケット毎に、いちどきに1個のポケットに係る弁を開くことで、そのポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
その検出器を用い、そのポケット内への漏れ流体の漏れがあるか否かを検出するステップと、
その検出器の使用により漏れ流体が検出されたときに、何れのポケットからその検出器が流体を受け取ったのかを識別するステップと、
を本方法に組み込み漏れを検出することで、複数個のポケットのうち何れにて漏れが生じたのかを識別することができる。
【0048】
複数個の検出器を備える一方、複数個のポケットが各検出器につながる諸実施形態にて、同様の方法を用いることができる。本方法は、その場合、
複数個の弁を閉止させることで、それら複数個のポケットのうち漏れが検出された検出器につながるものへの駆逐流体の注入を停止させるステップと、
その上で、その検出器につながるポケット毎に、いちどきに1個のポケットに係る弁を開くことで、そのポケット内に駆逐流体を注入するステップと、
その検出器を用い、そのポケット内への漏れ流体の漏れがあるか否かを検出するステップと、
その検出器の使用により漏れ流体が検出されたときに、何れのポケットからその検出器が流体を受け取ったのかを識別するステップと、
を有するものとなりうる。
【0049】
検出器を1個有する実施形態や、ポケットの個数に比し少数の検出器を有する実施形態は、例えば、上記システムの設置に関わる時間及び複雑性並びに機器のコストが節約されうる点で、有利であろう。ここで言う「少数の検出器」は、ポケットの個数よりも検出器の個数の方が少ない、という意味である。設ける検出器を、例えば、ポケット5個毎に1個、ポケット10個毎に1個、ポケット15個毎に1個、ポケット25個毎に1個、或いはポケット50個毎に1個としてもよい。
【0050】
上記システムに制御ユニットを設け、それにより例えば弁の開閉を制御し、弁のうち何れの1個又は複数個が開いているかを識別することでポケットのうち何れの1個又は複数個が開き駆逐流体を受け取っていて検出器に流体を通流させているのかを識別し、弁・検出器間で通信させ、自システムのオペレータに情報を提示し、アラームシステムにアラーム信号を送る等、してもよい。その制御ユニットが上記プロセッサを備えていてもよい。その制御ユニットが更に、例えばそのプロセッサを動作させ、そのプロセッサと通信し、そのプロセッサを動作させ、及び/又は、そのプロセッサからの情報を表示する手段を、備えていてもよい。
【0051】
上記システムにおける1個又は複数個のポケットに、その又はそれらのポケット内の液体を検出する液体検出手段を設けてもよい。
【0052】
上記システムに複数個の圧力センサ、例えば少なくとも個々の第1管及び個々の第2管につながるものを設け、それにより第1管及び第2管における流体圧を検出してもよい。それら圧力センサにより、そのポケット内への及び/又はそのポケットからの漏れがあるか否かに関する情報をもたらすことができる。
【0053】
上記駆逐流体は、流体源から第1管経由で上記ポケットに供給すればよい。その駆逐流体は、例えば空気その他、その目的に適した何れの種類の流体であってもよい。習熟者には、多くの流体が採用可能な代替物となりうることがわかるであろう。
【0054】
上記流体源が、流体を加圧するコンプレッサを備えていてもよい。その流体源が更に、そのコンプレッサからもたらされる加圧流体を貯留するタンクを備えていてもよい。停電時でさえもその貯留流体を上記駆逐流体として注入することができ、ひいてはその停電中に漏れが生じた場合でも漏れ流体を排出することができるので、加圧流体を貯留することは有利たりうる。
【0055】
本発明の第1態様に係る方法に、本発明の第2又は第4態様に係る装置及び/又は本発明の第5態様に係るシステムを提供するステップを設けてもよい。本発明の第3態様に係る方法に、本発明の第4態様又は本発明の第5態様に係る装置を提供するステップを設けてもよい。
【0056】
本方法に、駆逐流体を複数個のポケット内に注入するステップを設けてもよい。本方法に、1個又は複数個の検出器を用い複数個のポケットのうち1個又は複数個から潜在的有害/漏れ流体を検出するステップを、設けてもよい。
【0057】
本方法に、本装置に備わる液体検出デバイスを用い漏れ液体を検出するステップを設けてもよい。本方法に更に、上記ポケットの上流及びそのポケットの下流における圧力を監視しそれら圧力監視結果を比べることで漏れを検出するステップを、設けてもよい。
【0058】
本方法に、漏れが検出された場合に信号を送るステップを設けてもよい。その信号を、検出器から本装置のプロセッサへの信号としても、及び/又は、検出器又はプロセッサからアラームデバイスへの信号としても、及び/又は、検出器又はプロセッサから閉止デバイス、即ち上記構造物に向かう又は上記構造物内の流体流を閉止するデバイスへの信号としてもよい。その信号をアラーム信号とし、アラームデバイスから送ることで、一人又は複数人に漏れのことを通知することができる。
【0059】
本方法に更に、駆逐流体の供給をスイッチオフさせ又はその圧力を低下させるステップを設けてもよい。そのスイッチオフ又は圧力低下ステップを、検出された漏れ、圧力センサによる駆逐流体圧力監視結果の過剰高圧、或いはその駆動圧力に反応する圧力スイッチ等への応答たる、自動的又は手動的なステップとしてもよい。
【0060】
なお、本装置にて採用可能な特徴として言及した諸特徴の何れも、上記システムの特徴となりうるものであり、その逆も成り立つ。そうした特徴の使用を通じ、その特徴の使用による潜在的効果を達成することは、本方法の一部分たりうる。例えば、本方法に、上記流体フィルタを用いその流体の乾燥性及び/又は清浄性を高めるステップを設けてもよいし、及び/又は、本方法に、上記液体検出手段を用い上記ポケットにおける液体の存在を検出するステップを設けてもよいし、及び/又は、本方法に、流量調整弁を用いポケット内に向かう駆逐流体流を調整するステップを設けてもよい。
【0061】
本願記載の装置及び/又はシステムを以て、本方法を1回又は複数回実行する装置/システムとすることができる。
【0062】
以下、添付図面に描かれている好適実施形態の一例について記述する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の第5態様に係るシステムの一実施形態を模式的に描いた図である。
図2】本発明の第2態様に係る装置の一実施形態を模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
なお、図面に描かれているのは第5態様に係るシステム及び本発明の第2態様に係る装置の例である。これら図面は本発明の模式的表現であり、本発明の幾つかの特徴を描出することのみを意図している。
【0065】
図1に示すシステム1は構造物91からの漏れを検出するシステムであり、本実施形態ではその構造物91が2本のパイプ91を備えている。図示のシステム1は2枚のジャケット11を備えており、そのそれぞれがパイプ91のうち1本の一部分を周沿いに覆うことで、都合2個のポケット12が形成されている。それらポケット12には、2本の分岐管141,142を有する第1管14を介し流体源13が連結されている。本発明のこの実施形態における流体源13は、ポケット12内へとまたそのポケット12を介し空気流を供給する空気供給源13とされている。
【0066】
図示の第1管14は、第1管14を通る空気供給源13用流路を開閉するための分離弁15を有している。本実施形態における第1管14はドレイン付エアフィルタ16及び減圧弁17をも有しており、空気供給源13から来る空気の圧力を減圧弁17により規制・安定化することができる。
【0067】
更に、図示の第1管14は、第1管14内の空気圧がある閾値に達した場合にその空気供給源13を遮断する圧力スイッチ18を有している。本実施形態では、その第1管が更に、第1管14内の圧力を監視するための圧力トランスミッタ19を有している。
【0068】
言及済の通り、図示実施形態における第1管14は2本の分岐管141,142へと分岐しており、それらがそれぞれ2個のポケット12のうち1個へと導かれている。各分岐管141,142は、減圧弁17、アナログ圧力トランスミッタ18及び流量調整弁20を備えている。各分岐管141,142には空気圧弁21も備わっており、それによって、ポケット12への給気と排気用アウトレットへの空気退出との間での切換、例えばメンテナンス(保守)の際のそれとの間での切換を行うことができる。
【0069】
図示実施形態におけるジャケット11は気密素材で作成されており、ジャケット11・パイプ91間に形成されるポケット12が気密となるようパイプ91に被着されている。本システム1は、各ポケットのインレット22内に空気を注入しうるよう、且つその注入空気を含め気体を各ポケットのアウトレット23経由で退出させうるよう、構成されている。
【0070】
その注入気体は、上で「駆逐流体」と称したものの一例である。本発明の他の諸実施形態では、他の流体が駆逐流体として用いられることもある。
【0071】
2本のパイプ91のうち一方から漏れた流体は、2枚のジャケット11のうち1枚によりそのパイプ91が周縁被覆されていることから、本システム1により封じ込められることとなる。漏れ流体がポケット12内に漏れるけれども、アウトレット23経由以外ではそこから逃れられないのである。空気供給源13からの空気流があるので、この漏れ流体は、蓄積して大きな濃縮気体雲になることがなく、その代わりにアウトレット23経由で退出していくこととなる。
【0072】
本システム1は、更に、それを介し漏れ流体及び空気が退出していく第2管24を有している。第2管24は、流量計測デバイス25及び流量調整弁26と、マルチガス検出器27とを有しており、排気を安全ゾーンに導いている。
【0073】
マルチガス検出器27にて、第2管24内における漏れ流体の存在を検出することができる。図1には示されていないが、ガス検出器27を制御ユニットに接続し、及び/又は、アラームデバイスに直結することで、検出の通知を容易に行うことができる。そのガス検出器を更に、弁その他のパイプ91内流体流停止手段に直接、或いは制御ユニット等を介して、接続することができる。本発明によれば、漏れ検出、漏れ通知、及び/又は、漏れが起こっているパイプ91を通る流体流の遮断を、実質的に即時に、行うことができる。
【0074】
図2に、本発明の第2態様に係る装置100の単純な実施形態を示す。本装置100は、パイプ91の一部分を取り巻くよう配置されたジャケット11を備えており、それによってジャケット11・パイプ91間にポケット12が形成されている。ポケット12は、そこからポケット12内へと駆逐流体を注入させるインレット22と、それを介し潜在的有害流体を駆逐流体と共にポケット12から脱出させること、即ちその駆逐流体で以てそのポケット12から駆逐することができるアウトレット23とを有している。本装置100は、更に、駆逐流体の供給元たる流体源13と、ポケット12から脱出又は駆逐されつつある流体又は流体群をそのポケット12から離れたところに導く第2管24とを備えている。
【0075】
本発明の第2態様に係る装置100は、他の諸実施形態によれば、これに限られるものではないが、例えば減圧弁17、アナログ圧力トランスミッタ18、分離弁15及び/又は流量調整弁26、及び/又はマルチガス検出器27等、システム1の諸特徴のうち何れか1個又は複数個を有するものと、することができる。
【0076】
本装置100は、ポケット12内に残留していたら例えば構造物91が腐食し、そのリスクが増し或いは爆発が生じかねず、ひいてはその構造物91が損傷し又は破壊されかねない潜在的有害流体を除去することで、流体搬送用の構造物91を保守するのに、非常に有益たりうる。本装置100を用いることで、職員等にとり有害となりかねない流体、例えば有毒流体を除去し又はその濃度を下げることもできよう。ポケット12から排出/駆逐されていく流体を検出する検出手段を付加することで、本装置100を、本発明の第4態様に係る装置と同じく、構造物91から潜在的有害流体を検出することが可能な装置100とすることができよう。
【0077】
注記すべきことに、上述の諸実施形態は本発明を限定ではなく描出するものであり、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、添付する特許請求の範囲の技術的範囲から離隔することなく、多くの代替的実施形態を設計することができる。諸請求項中の何れの括弧付参照符号も、その請求項を限定するものとして解すべきではない。動詞「備える」及びその諸活用形の使用により、請求項中で宣明されているもの以外の要素又はステップの存在が排除されるわけではない。要素に頭記されている冠詞「a」又は「an」により、そうした要素複数個の存在が排除されるわけではない。
【0078】
注記されることに、本願にて用いられているところの「流体」には、定義上、気体及び液体の双方が包含される。
【0079】
ある種の手段が互いに異なる従属形式請求項にて言及されているという単純な事実があったとしても、それは、それらの手段の組合せを有利に用いることができないことを、示すものではない。
図1
図2
【国際調査報告】