(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】圧力センサ用の複合構造及び圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
G01L1/20 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573505
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 SG2020050325
(87)【国際公開番号】W WO2020251473
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】10201905267P
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517435434
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール
【氏名又は名称原語表記】National University of Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】ティー,チー ケオン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ハイシェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ポンジュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェン
(57)【要約】
圧力センサ用の複合構造、圧力センサ、圧力センサを使用する圧力検知の方法、及び圧力センサ用の複合構造の製造方法。圧力センサ用の複合構造を製造する方法は、エラストマー材料から作製された微細構造のアレイを形成する工程と、微細構造の表面形態が微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持されるように、微細構造のアレイ上に可撓性導電性コーティングを形成する工程とを含み、導電性コーティングは、エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサ用の複合構造であって、
エラストマー材料から作られた微細構造のアレイと、
前記微細構造のアレイ上に形成された可撓性導電性コーティング――それにより前記微細構造のアレイの表面形態が前記微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持される――と、
を備え、
前記可撓性導電性コーティングは、前記エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す
ことを特徴とする複合構造。
【請求項2】
前記可撓性導電性コーティングの前記ヤング率は、前記エラストマー材料の前記ヤング率よりも約1桁又はそれ以上高いことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記可撓性導電性コーティングは、低次元の電子活性材料システムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合構造。
【請求項4】
前記低次元の電子活性材料システムは、電子トンネル特性を示すことを特徴とする請求項3に記載の複合構造。
【請求項5】
前記低次元の電子活性材料システムは、均一な層を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の複合構造。
【請求項6】
前記低次元の電子活性材料システムは、2D材料構造を含むことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項7】
前記2D材料構造は、ナノフレークを含むことを特徴とする請求項6に記載の複合構造。
【請求項8】
前記微細構造のための基板をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項9】
前記可撓性導電性コーティングの均一性を改善するための、前記微細構造のアレイと前記可撓性導電性コーティングとの間の中間層をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の前記複合構造を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項11】
前記微細構造のアレイの前記エラストマー材料の粘弾性と比較した前記複合構造の弾性に基づいて、減少したヒステリシスを示すことを特徴とする請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項12】
実質的に周波数に依存しない圧力応答を示すことを特徴とする請求項10又は11に記載の圧力センサ。
【請求項13】
実質的に温度に依存しない圧力応答を示すことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項14】
実質的に湿度に依存しない圧力応答を示すことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項15】
前記微細構造のコーティングされたアレイの表面の一部を含む電気経路の抵抗を測定するために、前記微細構造のコーティングされたアレイ上に配置された複数の電極をさらに備えることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項16】
前記複数の電極は、2つのインターデジタル電極を含むことを特徴とする請求項15に記載の圧力センサ。
【請求項17】
前記抵抗は、圧力下での前記微細構造のコーティングされたアレイの圧縮結果として変化することを特徴とする請求項15又は16に記載の圧力センサ。
【請求項18】
前記抵抗は、圧力の増加とともに減少することを特徴とする請求項17に記載の圧力センサ。
【請求項19】
圧力センサ用の複合構造を製造する方法であって、
エラストマー材料から作られた微細構造のアレイを形成することと、
前記微細構造のアレイ上に形成された可撓性導電性コーティング――それにより前記微細構造のアレイの表面形態が前記微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持される――を形成することと、
を含み、
前記可撓性導電性コーティングは、前記エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記可撓性導電性コーティングを形成することは、前記微細構造のアレイ上に第1材料をドロップキャスティングすることを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1材料をドロップキャスティングする前に、前記微細構造のアレイ上に第2材料をブレーディングすることを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1材料は、低次元の電子活性材料システムを含むことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記低次元の電子活性材料システムは、電子トンネル特性を示すことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記低次元の電子活性材料システムは、均一な層を含むことを特徴とする請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記低次元の電子活性材料システムは、2D材料構造を含むことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項26】
前記2D材料構造は、ナノフレークを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記微細構造のコーティングされたアレイの表面の一部を含む電気経路の抵抗を測定するために、前記微細構造のコーティングされたアレイ上に複数の電極を配置することをさらに含むことを特徴とする請求項19乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項10乃至18のいずれか一項に記載の前記圧力センサを用いた圧力検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ用の複合構造、圧力センサ、圧力センサを用いた圧力検知方法、及び、圧力センサ用の複合構造を製造する方法に広く関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体にわたる先行技術のいかなる言及、及び/又は、議論も、この先行技術が当分野において周知であるか、又は、共通の一般知識の一部を形成することを容認するものとして、いかなる形でも考慮されるべきではない。
【0003】
Sunらは、階層的に構造化されたセンサを作るために、グラフェン及びポリジメチルシロキサン(PDMS)を利用した(非特許文献1参照)。グラファイトを最初にPDMS及び立方晶塩化ナトリウム(NaCl)と混合した。NaClを洗い流した後、多孔質複合フィルムが得られた。モールドとしてサンドペーパーを使用することによって、この複合材料の表面形態も微細構造化することができる。開発したセンサは、多くの触覚センサに共通し、一般的に圧力を加えたときの抵抗の変化を測定するピエゾ抵抗作動原理に基づいて圧力を検出するために使用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sun, Q. et al. Fingertip-Skin-Inspired Highly Sensitive and Multifunctional Sensor with Hierarchically Structured Conductive Graphite / Polydimethylsiloxane Foams. 1808829, 1-11 (2019)
【非特許文献2】B. C. K. Tee, A. Chortos, R. R. Dunn, G. Schwartz, E. Eason, Z. Bao, Adv. Funct. Mater. 2014, 24, 5427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、得られた多孔質微細構造は、非特許文献1に記載の製造方法では不規則であり、したがって、センサは、特別な用途のために所望の性能に調節することができない。
【0006】
本発明の実施形態は、上記の問題の少なくとも1つに対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、エラストマー材料から作られた微細構造のアレイと、前記微細構造のアレイ上に形成された可撓性導電性コーティング――それにより前記微細構造のアレイの表面形態が前記微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持される――と、を備え、前記可撓性導電性コーティングは、前記エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す圧力センサ用の複合構造が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の複合構造を含む圧力センサが提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、エラストマー材料から作られた微細構造のアレイを形成することと、前記微細構造のアレイ上に形成された可撓性導電性コーティング――それにより前記微細構造のアレイの表面形態が前記微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持される――を形成することと、を含み、前記可撓性導電性コーティングは、前記エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す圧力センサ用の複合構造を製造する方法が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、第2の態様の圧力センサを用いた圧力検知方法が提供される。
【0011】
本発明の実施形態は、例としてのみ及び図面と併せて記載された以下の説明から、よりよく理解され、当業者には容易にわかるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】例示的な実施形態による、ナノ構造PDMSフィルム上にグラフェン/グラフェン酸化物層を調製するプロセスの概略図を示す図である。
【
図1b】例示的な実施形態による、交差指電極上に中心整列された微細構造/センサアレイを示す概略上面図を示す図である。
【
図1c】例示的な実施形態による、交差指電極上に中心整列された微細構造/センサアレイを図示する概略断面図を示す図である。
【
図2a】GO及び上澄みGrのブレード方法を用いた、重合体試料上の調製したままのGr―GOの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【
図2b】GO及び上澄みGrのブレード法を用いた、重合体試料上の調製したままのGr―GOの別のSEMによる画像を示す図である。
【
図2c】GO及び上澄みGrのブレード方法を用いた、重合体試料上の調製したままのGr―GOの別のSEMによる画像を示す図である。
【
図2d】底部Grを用いた重合体試料上の調製したままのGr―GOのSEMによる画像を示す図である。
【
図2e】GO層が存在しない重合体試料上の調製したままのGrのSEM画像を示す図である。
【
図2f】例示的な実施形態による、ブレーディングによってコーティングされたGOの薄層を有する、重合体試料上の調製されたままのGr―GOのSEMによる画像を示す図である。
【
図2g】GOの厚層及びGOの滴下キャスティングによって形成されたバックルを有する重合体試料上の調製したままのGr―GOのSEMによる画像を示す図である。
【
図3a】例示的な実施形態によるグラフェンセンサの抵抗対圧力、前方及び後方対応のグラフを示す図である。挿入グラフは、感度対圧力の関係を示す。
【
図3b】様々な実施形態によるグラフェンセンサの圧力応答を示す図である。
【
図3c】例示的な実施形態による、調整可能な圧力応答に対するGr濃度の効果を示すグラフを示す図である。
【
図4a】例示的な例示的な実施形態によるグラフェンセンサの歪速度独立性を示すグラフを示す図である。圧力応答は、異なる歪み速度で同一である。
【
図4b】例示的な実施形態によるグラフェンセンサの温度独立性を示すグラフを示す図である。圧力応答は、温度が室温から60℃に上昇したとき、わずかな変化を示す。
【
図5a】第1サイクルから第10000サイクルまでの例示的な実施形態によるセンサの圧レスポンスを示すグラフを示す図である。
【
図5b】10000サイクル後の例示的な実施形態によるセンサのローディング及びアンローディング対応を示す図であり、ヒステリシスが依然として低い程度に留まっていることを示している。
【
図5c】1000サイクルにわたる例示的な実施形態による、センサのセンサ性能の連続測定を示す図である。
【
図5d】製造から8週間後の一実施形態によるグラフェンセンサの装填及び取り出し対応を示す図である。
【
図6a】「センサ内の電極」設計である例示的な実施形態によるグラフェンセンサの当量表面抵抗のシミュレーションを示す概略図である。
【
図6b】「電極内のセンサ」設計である例示的な実施形態によるグラフェンセンサの当量表面抵抗のシミュレーションを示す概略図である。
【
図7a】例示的な実施形態によるグラフェンセンサの等価回路の概略図を示す図である。
【
図7b】0kPaの負荷荷重下の例示的な実施形態によるグラフェンセンサのI-V曲線部を示す図である。
【
図7c】13.6kPaの負荷荷重下の例示的な実施形態によるグラフェンセンサのI-V曲線部を示す図である。
【
図7d】26.6kPaの負荷荷重下の例示的な実施形態によるグラフェンセンサのI-V曲線部を示す図である。
【
図8】例示的な実施形態によるセンサによる変化する小さな重みの連続的な検出を示す上側のグラフと、例示的な実施形態によるセンサによる同じ小さな重みの連続的な検出を示す下側のグラフとを示す図である。
【
図9a】例示的な実施形態によるグラフェンセンサを用いて振動を検出するためのセットアップの概略図を示す図である。
【
図9b】500Hz、1000Hz及び1500Hzの周波数を有する動的外力の例示的な実施形態に従ったグラフェンセンサを用いた検出結果を示すグラフである。
【
図9c】周波数500Hzの動的外力の例示的な実施形態に従ったグラフェンセンサを用いた検出結果の高速フーリエ変換(FFT)を示す図である。
【
図9d】1000Hzの周波数を有する動的外力の例示的な実施形態に従ったグラフェンセンサを用いた検出結果の高速フーリエ変換(FFT)を示す図である。
【
図9e】1500Hzの周波数を有する動的外力の例示的な実施形態に従ったグラフェンセンサを用いた検出結果の高速フーリエ変換(FFT)を示す図である。
【
図10】例示的な実施形態による、複合構造に使用されるGrナノフレーク均一層の端部の原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す図である。
【
図11】例示的な実施形態による、圧力センサ用の複合構造を製造する方法を示すフローチャート1100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、センサ性能において減衰粘度を有する高感度触覚センサとしての微細構造複合材料を提供する。微細構造化された軟質エラストマーの優れた変形性を利用して、高感度及び広い感度範囲を達成する。高いヤング率(例えば、エラストマー微細構造の10倍を超える)及び可撓性(例えば、グラフェン)の両方を有し、1TPaまでの高いヤング率を有するが、依然として可撓性及び伸縮性を有する、剛性であるが可撓性のコーティング層は、粘弾性効果によって引き起こされる問題を低減するために、例示的な実施形態によるエラストマーの表面上に設計される。その結果、例示的な実施形態によるセンサは、1つの例示的な実施形態において、140kPaの広い検知範囲で、少なくとも106Ω・kPa-1までの高感度を達成することができる。低ヒステリシス、温度及び歪速度独立性も観測した。例示的な実施形態によるセンサは、信頼性が高く、無数のサイクルの後、及び長時間の後にも、一貫した性能を維持することができる。接触抵抗と量子トンネル効果の変化に基づいて、例示的な実施形態によるセンサのセンシング機構を解析するための解析モデルを提案した。例示的な実施形態によるセンサは、小さな圧力(例えば、8Pa)及び高周波数信号(少なくとも1500Hz)を検出するために適用することができる。
【0014】
本発明の実施形態は、調整可能なパラメータ、例えば、マイクロピラミッドのサイズ及び密度を有する、ランダムな幾何学的形状と比較して、より規則的な幾何学的形状の微細構造を使用する。また、本発明の実施形態は、接触抵抗の変化に基づく構造を使用し、高弾性率(例えば、微細構造よりも少なくとも1桁高い)、及びグラフェンの良好な可撓性(約1テラパスカル)を利用して、粘度低下センサ性能を達成する。
【0015】
例示的な実施形態による微細構造化PDMSフィルムの作製
シリコンエラストマーと架橋剤を10:1の重量比で混合し、続いて2500rpmの速度で2分間激しく混合した。混合物を、各ピラミッド構造のカスタム設計可能なサイズ及び間隔を有するマイクロピラミッドアレイでパターン化された、処理された非粘着層(例えば、「Tosyl」)シリコンモールド上にスピンコーティングした。例示的な実施形態で使用されるパターン形成方法の細部については、非特許文献2を参考にされたい。次いで、サンプルをデシケーター中で30分間脱気して、混合中に発生した気泡を除去した。ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材として選択し、O2プラズマで処理して、PDMSとの良好な接着のために表面を親水性にした。脱気後、プラズマ処理された基板を、型上のPDMS混合物の上にプレスし、80℃で少なくとも4時間硬化させた。最後に、モールドを剥がし、さらなる試験のために微細構造化PDMSフィルムを基板上に残した。
【0016】
微細構造PDMSフィルム上のグラフェン/グラフェン酸化物層の作製
図1aは、例示的な実施形態による、ナノ構造PDMSフィルム上にグラフェン/グラフェン酸化物層を調製するプロセスの概略図を示す。
【0017】
具体的には、
図1aは、例示的な実施形態による試料調製のための概略図を提供する。グラフェンオキシド(GO)は、符号100で示されるように、1時間の超音波処理によって水(例えば、10mg/ml)中に容易に分散させることができ、分散液の品質は、凝集及び沈殿なしに長時間にわたって良好に維持することができる。次に、GOは、符号102で示されるように、微細構造化PDMS106を有するO
2プラズマ処理エラストマー、ここではPET、基板104上に転写され、その後、符号108で示されるように、より均一な蒸着のために、及び均一なGO層110に寄与する余分なGOを除去するために、ブレーディングが続けられた。
【0018】
ナノグラフェン(Gr)粉末を、最初にN―メチル―2―ピロリドン(NMP)溶液(10mg/ml)中に分散させ、続いて、符号112で示すように2時間超音波処理した。好ましい実施形態例による10mg/mlの濃度の選択を以下に記載する。符号113で示される1時間の沈降プロセスが、超音波処理の後に使用され、これは、不均一に分散されたGrが最上層から重力をかけることを可能にし、一方、微細に分散された上澄みGrナノフレークは、符号114で示されるように、GO層110上にドロップキャストされ、そして80℃のオーブン中で30分間乾燥されて、均一な可撓性導電性Gr被覆115を形成した。
図10は、Gr被覆115及び中間層110の端部の原子間力顕微鏡画像を示しており、例示的な実施形態による約600nmの全高を示している。
【0019】
例示的な実施形態による上述の方法のようにNMPを使用する場合、センサの基材は、好ましくはNMPと反応せず、例えば、本明細書に記載の実施形態ではPETフィルムが使用されたことに留意されたい。NMPは、他の実施形態では、基板の範囲を拡張するために置き換えることができる。
【0020】
図2は、重合体試料上の調製したままのGr―GOのSEM画像を示しており、(a)―(c)は、GO及び上澄みGrについて上記したブレード法を用いたときであり、(d)は、底部Grを用いたときであり、(e)は、GO層が存在しないときであり、(f)は、上記したブレード法によってGOの薄層をコーティングしたときであり、(g)は、GOの厚い層及びバックルをGOの滴下キャスティングによって形成したときである。
【0021】
具体的には、
図2a~2cは、微細構造複合の走査電子顕微鏡画像を示す。例示的な実施形態によれば、複合構造の品質に影響を及ぼすことができるいくつかの重要な因子が存在する。まず、沈殿後、底部Grを滴下鋳造に用いれば、
図2dのSEM画像から分かるように、感受性を担うすべての微細構造を覆い、加圧すると容易に層間剥離することができるほど、皮膜は凹凸があり、非常に緻密であることがわかった。第2に、もしGO層が存在しなければ、
図2eのSEM画像で見られるように、Grナノフレークは凝集しやすく、堆積は不均一になる。好ましい実施形態によれば、ポリマーとGrとの間の界面層として働く薄いGO層は、主にπ-π相互作用により、Grに対してより良好な親和性を提供し、より良好な均一性を有するGr層の形成に寄与すると考えられる。また、GO層の厚さを制御することが好ましい。
図2f及び2gは、それぞれ、ブレーディング及び滴下キャスティングによって調製されたPDMSサンプル上のGOを示す。
図2f及び2gの走査電子顕微鏡画像からわかるように、好ましい実施形態によるブレーディングによってコーティングされたGO層は、微細構造化PDMSの表面形態を維持するのに十分に薄かったが、滴下キャストGOは、本来の微細構造を有意に変化させ、マイクロピラミッドの側縁に空隙を残し、また座屈も残した。したがって、PDMS微細構造上に高品質のGr―GO層を形成するためには、上澄みGr及びブレーディングコーティングされたGOを使用することが好ましい。
【0022】
例示的な実施形態によるGOとPDMSとの間の接着性の改善
ファンデルワールス力によってのみGOがPDMSと相互作用することを可能にする実施形態では、強い剪断力、曲げ力、又は接着力が与えられる場合、フィルムは分離されてもよい。GOとPDMSとの間の接着を改善するために、いくつかの方法を好ましい実施形態に従って実施することができる。1つの方法は、PDMS上に薄層銅をスパッタリングし、続いてGO堆積し、120℃で2時間アニーリングすることであってよい。これは、接着強度を増強するための銅とGOとの間の化学結合の形成に寄与した。別の方法は静電相互作用に焦点を当てている。GOは負に帯電しているので、表面処理をPDMS表面上で行い、それを正に帯電させることができる。この戦略は、GOとPDMSとの間に強い静電力を発生させて、接着性を大幅に向上させることができる。
【0023】
種々の実施形態による感圧複合材料用の材料の変化量
なお、本発明は、上記実施形態で用いた材料に限定されるものではない。
【0024】
様々な実施形態では、本発明は、例えば、グラファインなどの他の炭素同素体、及びボロフェン、セレン化タングステン、シリセンなどの他の添加された2D材料から作製されたコーティングなどであるが、これらに限定されない、可撓性導電性コーティングのための他の低次元電子活物質系にも適用することができる。これらの活性2D材料は、
図1aを参照して上述したのと同じ方法を用いて、適切な分散剤中に分散させ、エラストマー微細構造の表面上にコーティングすることができる。エラストマー表面に形成された導電性経路は、加圧されると抵抗の変化につながる可能性がある。
【0025】
他のエラストマー材料としては、様々な要件に対して広い範囲の選択的機械的性能を提供する、他のポリマー、例えば(スチレン―エチレン―ブチレン―スチレン)、シリコン系、及びポリウレタンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
例示的な実施形態によるセンサ特性評価
エラストマーは、その低い弾性係数のため通常良好な変形能を示し、感圧素子の設計に有利である。他方、それらの性能は、粘弾性効果、例えばヒステリシスによって強く影響される。しかしながら、実施形態例によるセンサは、有利には、外側グラフェン層の特性を利用して、禁止的粘弾性効果を低減し、代わりに、検知性能(例えば、高感度、広感度範囲)を犠牲にすることなく、低いヒステリシス、弱い温度依存性、及び弱い歪速度依存性を示すことができる。主検知機構としての接触抵抗変化に基づいて、例示的な実施形態によるセンサの電気的性能は、外層の圧力応答に大きく依存する。したがって、粘度に関連する問題は、より弾性的な物件を示す例示的な実施形態によるグラフェン被覆によって補償することができる。例示的な実施形態によるセンサの特徴付けは、低減された粘弾性効果を実証し、以下に記載される。
【0027】
以下に特徴付けられる例示的な実施形態では、各マイクロピラミッドは、50μmの基底サイズ及び35.3μmの高さを有する。2つのピラミッドの間隔は50μmである。なお、本発明はこれらの大きさに限定されるものではない。
【0028】
グラフェン層の厚さは450nm、酸化グラフェン層の厚さは150nmである。本発明は、これらの厚さ及び材料に限定されないことに留意されたい。
【0029】
特性評価のために、例示的な実施形態によると、例示の実施形態による複合材料は、グラフェンセンサ120として、被覆微細構造115に対向する基板(図示せず)表面上に形成された設計交差指電極116、118を用いて組み立てられた。
図1a~1c参照。
【0030】
具体的には、微細構造/センサアレイ115は、交差指状電極116、118(
図1b及び
図1c参照)上で、被覆ピラミッド先端115(比較
図1a)を有し、本実施形態では、下向きにして、電極116、118と接触した。市販の生体適合性テープを使用して、電極116、118上のセンサアレイをシールすることができる。
【0031】
例示的な実施形態では、交差指電極116、118は、標準的なリソグラフィプロセスを使用して製造された。フォトレジストを基板上にコーティングし、フォトマスク下でUV光に露光した。フォトマスクにはくし型電極パターンがあり、現像後にフォトレジストに転写された。次に、チタン(Ti)と金(Au)をフォトレジスト上にスパッタした。リフトオフ後、基板上に残された交差指パターン化金属を電極として、過剰フォトレジストと金属を洗い出した。
【0032】
設計された交差指電極116、118は、
図1bに概略的に示すように、以下の理論的解析の節で議論される、例示的な実施形態によるより堅牢な性能のために、センサ自身よりもわずかに大きい領域を覆う。圧縮圧(140kPa)を歪速度5μm/sの特注リニアステージシステムを用いてセンサに印加すると、抵抗は10
6Ωのオーダーから10
1Ωのオーダーに変化した。
【0033】
図3は、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの抵抗対圧力のグラフを示している。ここで、
図3aは前方及び後方対応である。挿入グラフは、感度対圧力の関係を示す。
図3bは様々な実施形態によるグラフェンセンサの圧力応答である。
図3cは例示的な実施形態による調整可能な圧力応答に対するGr濃度の効果である。
【0034】
具体的には、
図3aは、例示的な実施形態による印加圧力に対応する抵抗変化を示す。ローディングとアンローディングの両方の結果が示される。以前に報告した圧電抵抗センサと比較して小さな電気ヒステリシスのみが観測され、正確なセンシング応用に大きな可能性を示した。この低減されたヒステリシスは、センサに有利なことに、より多くの弾性特性を付与する、例示的な実施形態によるグラフェンコーティングの高い弾性率に起因する。
【0035】
図3aの挿入グラフは、圧力と感度の関係を示す。感度の定義はS=δR/δPであり、圧力の非常に小さい変化内の抵抗変化を指す。本発明によるグラフェンセンサの感受性は、印加圧が小さければ少なくとも10
6Ω・kPa
-1まで上昇することができ、微小な力を良好に検出することができることを示している。圧力が上昇すると、感度は予想通りに低下する。圧力-感度曲線は、感度の定義を通じて、圧力-抵抗曲線の差異から達成され得るので、感度対圧力の平滑で一貫した関係は、例示的な実施形態によるセンサ性能の安定性を示す。
図3bは、サンプル1~7として示される、例示的な実施形態による複数のグラフェンセンサの電気的圧力応答を示す。比較可能な結果は、例示的な実施形態による、製造方法及び結果として生じるセンサの信頼性を示す。さらに、コーティングに使用されるGr濃度は、センサの圧力応答に影響を及ぼす重要な要因であることが分かった。例示的な実施形態によれば、センサ性能は、Grの濃度を調整することによって調整することができる。
図3cに示すように、様々な例示的な実施形態によれば、「C10T1」(濃度10mg/ml及び単一被覆を意味する)は、「C5T1」及び「C2T1」(濃度5mg/ml及び2mg/mlをそれぞれ意味する)と比較して最大の感受性範囲を示す。
【0036】
図4aは、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの歪速度独立性を示すグラフを示す図である。圧力応答は、異なる歪み速度で同一である。
図4bは、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの温度独立性を示すグラフを示す。圧力応答は、温度が室温から60℃に上昇したとき、わずかな変化を示す。
【0037】
PDMSのような粘弾性材料の場合、その粘性効果はニュートンの法則に従うので、荷重と応答との間の関係は周波数の関数である。圧力が異なる歪み速度で印加される場合、PDMSの対応する応答は異なることが予想される。しかしながら、可撓性及び高い弾性率のために、例示的な実施形態による外側でコーティングされたグラフェン層は、主に弾性特性を示しながら、内部PDMSとともに容易に変形することができ、これはフックの法則の順守を指す。例示的な実施形態によれば、電極とグラフェン層との間の接触領域は、振動数によって視覚的に影響されず、印加された荷重に応じたセンサの歪速度に依存しない抵抗変化をもたらす。
図4aは、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの電気的応答が、異なる歪み速度でほぼ同一であることを示している。その結果、実施形態例に係るセンサは、様々な周波数で負荷が加わっても確実に動作することができ、これは、実施形態例に係るセンサは、振動を検出する大きな可能性を有することも示している。以下、これについてより詳細に説明する。
【0038】
温度の影響については、グラフェンは、温度が上昇したときのPDMSと比較して、はるかに小さい熱膨張係数を有しており、これは、温度変化中のセンサ構造の幾何学的膨張によって誘発されるセンサ応答のシフトを有利に減少させることができる。一方、グラフェンの抵抗率の温度係数(TCR)は極めて小さく、これはグラフェンの抵抗率が不純物に支配され、温度とともにゆっくりと変化することを示している。これら2つの理由は、以前に報告された研究と比較して、例示的な実施形態(
図4b参照)によるグラフェンセンサの温度依存性が最小限であることに寄与している。既存のセンサの性能は、温度に大きく依存するが、例示的な実施形態によるセンサは、異なる作業条件でより強いロバスト性を示す、温度変化にかかわらず、より確実に動作することが有利である。
【0039】
図5は、長期間にわたって周期的な圧縮を受けた場合の、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの信頼性を示すグラフである。ここで、
図5aは、第1周期から第1,000,000周期までの圧力応答である。
図5bは、1,000,000サイクル後のローディング及びアンローディング応答であり、ヒステリシスがまだ低い程度にとどまっていることを示している。
図5cは、1000サイクルを超えるセンサ性能の連続測定である。
図5dは、製造から8週間後の例示的な実施形態によるグラフェンセンサのローディング及びアンローディング応答であり、数日にわたる例示的な実施形態によるセンサの良好な信頼性を示す。
【0040】
具体的には、繰り返し負荷中のセンサの信頼性を特徴付けるために、例示的な実施形態に係るグラフェンセンサは、140kPaの繰り返し圧力を1,000,000回受けた。
図5aは、第1サイクルから第1,000,000サイクルまでの対応するセンサ性能を示している。感受性及び感受性範囲の両方は、1,000,000サイクル後に安定かつ一貫したままであった。1,000,000回の圧縮前後のほとんど同等のセンサ応答は、グラフェンセンサの良好な信頼性と圧縮性を示している。特に最初の100サイクルの間に観察される抵抗のわずかなシフトは、コーティング層の種々のグラフェンフレーク間のより成形体接触によって誘発され得る。この状況は
図5cにも現れており、これらの非コンパクトなグラフェン薄片によって生じる量子トンネル現象については、後述する。例示的な実施形態によるグラフェンセンサのローディング及びアンローディング応答は、第1,000,000圧迫で
図5bにプロットされた。低いヒステリシスは、無数のサイクルの後でも維持され、例示的な実施形態に従ったセンサの信頼できる性能及び高精度を示す。さらに、例示的な実施形態によるGr―GOとPDMSとの間の良好な接着も明らかにされ、外側層は、その独特の可撓性のために、無数のサイクルの後に劣化又は損傷されないであろう。さらに、
図5cは、圧縮の最初の1000サイクルにわたるセンサ応答の連続測定結果を表示する。一定振幅(140kPa)の負荷中、センサの最大コンダクタンスは、グラフェンフレークのより成形体積層のために、最初にわずかに増加した。その後、それは変化せず、サイクルにわたって安定したままであった。特性評価結果から良好なセンサ信頼性を図示した。
【0041】
PEDOT:PSS被覆微細構造センサを研究する以前の研究では、センサ性能は時間と共に劣化し、感度が低くなった。劣化の理由は、PSS部分が水と反応し、縮退につながるからである。しかしながら、グラフェンは非常に不活性であり、水及び酸素の拡散に対する腐食バリアとして有利に働くことができる。この場合、例示的な実施形態によるGr―GOでコーティングされたセンサは、長期間の後でさえ、その検知能力を維持することができる。
図5dは、製造から8週間後の例示的な実施形態によるグラフェンセンサの圧力応答(ローディング及びアンローディングの両方)を示す図である。良好な感受性、広い感受性の範囲及び低ヒステリシスは、依然として劣化なしに示される。この物件は、ウェアラブル装置及び健康監視システムのようなアプリケーションにおける例示的な実施形態によるセンサの使用にとって重要である。
【0042】
例示的な実施形態によるインターデジタル電極
図6は、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの当量表面抵抗のシミュレーションを示す概略図を示し、
図6aは「センサ内の電極」設計であり、
図6bは「電極内のセンサ」設計である。
図7aは、例示的な実施形態によるグラフェンセンサの等価回路の概略図を示す。
【0043】
好ましい実施形態によるインターデジタル電極を利用する理由は、センサと電極との間のコンタクト領域を増大させ、起こり得る不均一に分布した被覆欠陥の影響を低減するためである。いくつかの例示的な実施形態によれば、電流がマイクロピラミッドの表面を通過するとき、Gr―GO被覆を有する各構造は、1つの抵抗器と見なすことができる。マイクロピラミッドのアレイの等価回路は、直列及び並列接続の多数の抵抗器である。このソフトウェアTINAは、その等価抵抗を達成するために、この回路(電極の設計を含む)の抵抗のモデリングと解析に利用された。電極をシミュレートするとき、いくつかのパラメータ、例えば、電極のサイズ、長さ、変位、及び位置を考慮した。電極のサイズが重要であることが分かった。各種例示的実施形態によれば、サイズの異なる設計は、センサ性能の異なる特性評価結果をもたらすことができる。
【0044】
電極よりも表面領域が大きい場合を指す「センサ内の電極」のデザインについては、電極の長さや位置、センサの寸法などの他の要因に加えて、センサの抵抗も影響する(
図6a参照)。
図6aにおいて、センサのより遅い表面領域は、センサ抵抗回路網602内の電極、例えば600の長さが、センサ抵抗回路網602の対応する長さ604よりも短いことによって示される。
【0045】
しかし、電極がセンサよりも表面領域が大きい場合を指す「電極内センサ」のデザインについては、電極の位置ずれと長さのみが予想内に耐に影響することがわかった(
図6b参照)。
図6bにおいて、電極のより大きな表面領域は、センサ抵抗回路網608内の電極、例えば606の長さが、センサ抵抗回路網608の長さ610と同じであるか、又はそれよりも大きいことによって示される。調査結果は、センサ特性評価の間、回路をよりロバストにすることができる。したがって、後者の設計は、好ましい実施形態のために選択された。抵抗は二つの電極の変位の増加と共に増加し、電極の長さの増加と共に減少した。この現象は、等価回路を「m×n」の抵抗回路網(
図7a参照)にさらに単純化することができる。ここで、mは電極の長さに比例し、nは変位に比例する。
【0046】
例示的な実施形態による検知機構
図7b-dは、異なる負荷荷重(それぞれ0kPa、13.6kPa、及び26.6kPa)下の一実施形態によるグラフェンセンサのI-V曲線部を示す。この非線形関係は、例示的な実施形態に係るセンサにおける量子トンネル効果を示す。
【0047】
図1bを参照すると、Gr―GO/PDMS複合体が、例示的な実施形態によるセンサ120を形成するために電極と組み立てられる場合、一対のインターデジタル電極116、118が、試験のために使用される。インターデジタル電極116、118は、金属の2つのインターロック櫛形アレイからなり、電極116、118は、基板の同じ表面上で互いに隣接して配置される。電流は、1つの電極116から流れ、微細構造、例えばマイクロピラミッドの表面上のGr―GO被覆を通過し、次いで他の電極118に流れる。実施形態によるセンサの全抵抗は、電極抵抗(R
e)、コンタクト抵抗(R
c)、及びGr層の表面抵抗(R
s)の3つの部分によって寄与される。R
eは圧力によって変化しない。R
cは、主に接点領域の変化により、また積層グラフェンフレークからの量子トンネル効果により、気圧と共に著しく変化する。R
sは、コンプレッション中のサーフェス領域の変化により、プレッシャーと共にわずかに変化するが、この変化はR
cの変化に比べるとわずかである。
【0048】
図7aに簡略化された回路が示されており、R
sは、ほぼ一定の抵抗を有する抵抗回路網の集合体とみなされる。R
cは、微細構造、ここでは電極と接触し、圧力誘起抵抗変化を有するマイクロピラミッドの集合体である。各マイクロピラミッドは、同じレジスタンス、及び負荷中の同じレジスタンス変化を有するとみなされる。数kは、電極の領域、及びマイクロピラミッドの密度にも関係する。
図7b~7dは、異なる負荷荷重(それぞれ0kPa、13.6kPa、及び26.6kPa)下の一実施形態によるグラフェンセンサのI-V曲線部を示す。抵抗は印加電圧の増加と共に減少し、例示の実施形態によるグラフェンセンサに存在する量子トンネル効果を示している。トンネル効果はグラフェンフレーク間のナノスケールギャップから生じる。各ギャップの距離は、増加した圧力で減少するので、トンネル効果は、より高い圧力での圧縮の間、減衰するであろう。これは、圧力が増加したときに観測されるI-V関係の減少した非線形性を通して、
図7b~7dに示されている。
【0049】
例示的実施形態によるセンサ実証
図8a及び8bは、例示的な実施形態による、センサによる小さな重量の連続的な検出を示す図である。具体的には、本実施形態に係るグラフェンセンサは、触圧を敏感かつ安定して検知することができるため、小重量の連続検出実験を行った。例示的な実施形態による6mm×6mmの寸法を有するセンサは、100mg、50mg、及び30mgの小さい重量を検出するように作製された。最低圧力は約8Paに相当した。
図8aに示すように、例示的な実施形態によるセンサは、約3秒の持続時間にわたって良好な安定性でこれらの小さな重りを連続的に検出することができる。
図8bに示すように、例示的な実施形態によるセンサは、同じ小さいものについて一貫した抵抗変化を出力することができ、これは、持続的に超小型の触覚信号を検知するその良好な能力を示す。以前の研究から、人間の指先上のタッチレセプターは、100Pa~100kPaのおおよその範囲で圧を検知することができる。そのような要求と比較して、例示的な実施形態によるセンサは、電子皮膚において利用される良好な可能性を有し、1つの例示的な実施形態では、8Paから140kPaの検知範囲を示す。
【0050】
広い検知範囲に加えて、触覚センサにも高時間分解能が望まれており、これは例えば振動のような高周波数の信号を識別する能力を指す。本質的に、スパイダによって紡糸されたタンパク質繊維は、高い引張強度と良好な伸長性との独特の組み合わせを示す。これらのスパイダシルクを用いたネットワーク構造はスパイダウェブの優れた振動検出機能に寄与する。例示的な実施形態によるセンサの場合、グラフェンはまた、非常に高い弾性率を有し、構造及び特性の両方の点でスパイダウェブと同様に、特定の可撓性を同時に有する。これらの類似性のために、高速時間対応は、有利には、高周波数を検出する能力を提供する、例示的な実施形態によるグラフェンセンサによって示される。このように、例示的な実施形態によるセンサは、振動を検出するために適用することができる触圧に対する大きな時間分解能を認識することができる。
【0051】
図9aは、例示的な実施形態によるグラフェンセンサを用いて振動を検出するためのセットアップの概略図を示す。音波を利用して、高い周波数の動的外力を発生させた。
図9bは、周波数500Hz、1000Hz、及び1500Hzの動的外力の検出結果を示すグラフを示す。
図9c~9eは、
図9bにおけるそれぞれの検出結果の高速フーリエ変換(FFT)を示し、センサが検出した対応する周波数901~903を示す。
【0052】
図9aを参照すると、実験装置において高周波信号を提供するために、スピーカ910を利用して、カスタム調整可能な周波数を有する音波を生成した。例示的な実施形態によると、音波は、動的外力を誘導するために、センサ912の表面上に垂直に印加された。センサ912が動的な力を受け取ると、それは、迅速に圧縮され、対応して動的な電気的応答を与えるために解放されるであろう。例示的な実施形態によるグラフェンセンサ912は、周波数に依存しない圧力応答を有するため、異なる周波数は、センサ応答の振幅に影響を及ぼさない。この特性は、他の要因を持ち込まずに振動の検出と周波数の正確な認識に有益である。一実施形態によるセンサ912は、少なくとも1500Hzの高周波数を有する振動を検出できることが示され、
図9bは、500Hz、1000Hz及び1500Hzの周波数を有する振動の検出結果を与える。高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて、センサ出力を通しての電気応答を解析することにより、振動の周波数を認識できる。
図9cから9eは、これらの信号(それぞれ500Hz、1000Hz、1500Hz)のFFT解析結果を示している。
【0053】
例示的な実施形態では、圧力センサのための複合構造が提供され、複合構造は、エラストマー材料から作製された微細構造のアレイと、微細構造のアレイの表面形態が微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持されるように微細構造のアレイ上に形成された可撓性導電コーティングとを含み、導電コーティングは、エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す。
【0054】
ヤング率は、エラストマー材料のヤング率よりも約1桁高くてもよく、又はそれ以上であってもよい。
【0055】
可撓性の導電性コーティングは、低次元の電子活性材料システムを含んでもよい。低次元の電子活性材料システムは電子トンネル特性を示す可能性がある。
【0056】
低次元の電子活性材料システムは、均一な層を含む。
【0057】
低次元の電子活性材料システムは、2D材料構造を含むことができる。2D材料構造は、ナノフレークを含んでもよい。
【0058】
複合構造は、微細構造のアレイのための基材をさらに含むことができる。
【0059】
複合構造は、可撓性導電性被覆の均一性を改善するために、微細構造のアレイと可撓性導電性被覆との間の中間層をさらに含んでもよい。
【0060】
例示的な実施形態では、上記実施形態の複合構造を含む圧力センサが提供される。
【0061】
圧力センサは、微細構造のアレイのエラストマー材料の粘弾性特性と比較して、複合構造の弾性特性に基づいて低減されたヒステリシスを示すことができる。
【0062】
圧力センサは、実質的に周波数に依存しない圧力応答を呈することができる。
【0063】
圧力センサは、実質的に温度に依存しない圧力応答を呈することができる。
【0064】
圧力センサは、実質的に湿度に依存しない圧力応答を呈することができる。
【0065】
圧力センサは、微細構造のコーティングされたアレイの表面の部位を含む電気経路の抵抗を測定するために、微細構造のコーティングされたアレイ上に配置された電極をさらに含んでもよい。電極は、2つのインターデジタル電極を含むことができる。
【0066】
抵抗は、圧力下の微細構造のコーティングされたアレイの圧縮の結果として変化し得る。抵抗は、圧力が増加するにつれて減少し得る。
【0067】
図11は、例示的な実施形態による、圧力センサ用の複合構造を製造する方法を示すフローチャート1100を示す。ステップ1102において、エラストマー材料から作製された微細構造のアレイが形成される。ステップ1104において、微細構造の表面形態が微細構造のコーティングされたアレイについて実質的に維持されるように、可撓性導電性コーティングが微細構造のアレイ上に形成され、導電性コーティングは、エラストマー材料のヤング率よりも高いヤング率を示す。
【0068】
可撓性被覆を形成することは、微細構造のアレイ上に第1の材料をドロップキャスティングすることを含むことができる。
【0069】
この方法は、第1の材料をドロップキャスティングする前に、微細構造のアレイ上に第2の材料をブレードするステップを含むことができる。
【0070】
第1の材料は、低次元の電子活性材料システムを含むことができる。
【0071】
低次元の電子活性材料システムは電子トンネル特性を示す可能性がある。
【0072】
低次元の電子活性材料システムは、均一な層を含むことができる。
【0073】
電子活性材料システムは、2D材料構造を含んでもよい。2D材料構造は、ナノフレークを含んでもよい。
【0074】
当該方法は、微細構造のコーティングされたアレイの表面の部位を含む電気経路の耐性を測定するために、微細構造のコーティングされたアレイ上に電極を配置することをさらに含んでもよい。
【0075】
例示的な実施形態では、上述の実施形態のプレッサセンサを使用して圧力検知する方法が提供される。
【0076】
本発明の実施形態は、以下の特徴及び関連する利益/利点のうちの1つ又は複数を有することができる:
【0077】
【0078】
本発明の実施形態は、限定ではなく例として、以下の用途を有することができる:
- パルスや他の健康監視アプリケーションを長期間検出するための高感度圧力センサ
- 圧力と振動の両方を検出するための電子スキン。
【0079】
電気信号の信号処理など、本明細書に記載されるシステム及び方法の態様は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルアレイロジック(PAL)装置、電気的プログラマブルロジック及びメモリ装置、及び標準セルベース装置、ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)などの、プログラマブルロジック装置(PLD)のいずれかにプログラムされる機能として実施されてもよい。システムの側面を実装するための他の可能性としては、メモリを備えたマイクロコントローラ(電子的に消去可能なプログラマブル読出し専用メモリ(EEPROM)など)、組み込みマイクロプロセッサ、ファームウェア、ソフトウェアなどがある。さらに、システムの態様は、ソフトウェアベースの回路エミュレーション、離散論理(シーケンシャル及びコンビナトリアル)、カスタムデバイス、ファジー(ニューラル)論理、量子デバイス、及び上記のデバイスタイプのいずれかのハイブリッドを有するマイクロプロセッサにおいて具現化され得る。もちろん、基礎となるデバイス技術は、様々なコンポーネントタイプ、例えば、相補型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)技術、エミッタ結合論理(ECL)のようなバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマー及び金属共役ポリマー-金属構造)、混合アナログ及びデジタル等で提供され得る。
【0080】
システム及び方法の例示された実施形態の上記の説明は、網羅的であること、又はシステム及び方法を開示された正確な形態に限定することを意図していない。システム構成要素及び方法の特定の実施形態及び例示的な実施形態は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、システム、構成要素及び方法の範囲内で様々な同等の修正が可能である。本明細書で提供されるシステム及び方法の教示は、上述のシステム及び方法だけでなく、他の処理システム及び方法にも適用することができる。
【0081】
上述の様々な実施形態の元素及び動作は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。上記の詳細な説明に照らして、これら及び他の変更をシステム及び方法に加えることができる。
【0082】
概して、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態にシステム及び方法を限定するように解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に基づいて動作するすべての処理なシステムを含むように解釈されるべきである。したがって、システム及び方法は、本開示によって限定されず、代わりに、システム及び方法の範囲は、特許請求の範囲によって完全に決定されるべきである。
【0083】
文脈が別途明確に要求しない限り、明細書及び特許請求の範囲を通じて、「備える」、「備える」などの語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきであり、すなわち、「含むがこれに限定されない」という意味で、単数又は複数を使用する語は、それぞれ、複数又は単数を含む。さらに、用語「本明細書」、「以下」、「上」、「下」、及び同様の意味の用語は、本出願全体を指し、本出願の特定の部位を指すものではない。単語「又は」が、2つ以上の項目のリストに関して使用される場合、その単語は、単語の以下の解釈、すなわち、リスト内の項目のいずれか、リスト内の項目のすべて、及びリスト内の項目の任意の組合せのすべてを包含する。
【国際調査報告】