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  • 特表-地熱再注入井用の腐食抑制剤配合 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】地熱再注入井用の腐食抑制剤配合
(51)【国際特許分類】
   C23F 14/02 20060101AFI20220805BHJP
   C23F 11/167 20060101ALI20220805BHJP
   C09K 8/54 20060101ALI20220805BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C23F14/02
C23F11/167
C23F14/02 A
C09K8/54
C09K3/00 108E
C09K3/00 107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573533
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 US2020034850
(87)【国際公開番号】W WO2020251772
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/859,850
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ジョティバス シータラマン
(72)【発明者】
【氏名】サンタヌ バナルジー
(72)【発明者】
【氏名】ディネーシュ マントリ
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062BA05
4K062BB25
4K062CA03
4K062CA05
4K062FA06
(57)【要約】
【課題】地熱システムと接触する金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。
【解決手段】この方法は、組成物を地熱プロセス水に添加することによって、金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得る。腐食抑制剤組成物は、有機ホスホネート、オルトホスフェート、および亜鉛またはその塩を含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱システムと接触している金属表面の腐食を抑制する方法であって、
前記金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み、前記腐食抑制剤組成物が、有機ホスホネート、オルトリン酸塩、および亜鉛またはその塩で構成されている、方法。
【請求項2】
前記有機ホスホネートが、2,2’-(ヒドロキシホスホリル)ジコハク酸(PSO)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)、((ジメチルアミノ)メチレン)ビス(ホスホン酸)(DMAMDP)、N,N-ジメチル-1,1-ジホスホノメタンアミンオキシド(DMAMDPO)、(モルホリノメチレン)ビス(ホスホン酸)(MMDP)、4-(ジホスホノメチル)モルホリン4-オキシド(MMDPO)、ヒドロキシホスホノ酢酸(HPA)、ホスフィノカルボン酸(PCA)、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腐食抑制剤組成物が、約1重量%~約20重量%の前記有機ホスホネートを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記腐食抑制剤組成物が、約10重量%~約40重量%の前記オルトリン酸塩を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記腐食抑制剤組成物が、約2重量%~約15重量%の前記亜鉛またはその塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記腐食抑制剤組成物が、蛍光トレーサーをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記腐食抑制剤組成物が、約0.01重量%~約0.5重量%の前記蛍光トレーサーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属表面を前記腐食抑制剤組成物で不動態化することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属表面が、約50ppm~約400ppmの前記腐食抑制剤組成物を含む水性媒体と接触している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属表面が、約4~約8のpHを有する水性媒体と接触している、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記腐食抑制剤組成物が、約0.01ppm~約500ppmの投与速度で前記水性媒体に添加される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属表面が、鉄、銅、鉄合金、銅合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅および約10%のニッケル、約80%の銅および約20%のニッケル、約70%の銅および約30%のニッケル、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、有鉛ネーバル青銅、リン青銅、炭素、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属表面が、鉄を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属表面が、軟鋼または炭素鋼である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属表面の腐食速度が、約3mpy未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属表面の腐食速度が、約1mpy未満である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記腐食抑制剤組成物が、水混和性共溶媒を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記水混和性共溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ギ酸、ホルムアミド、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腐食抑制剤組成物が、追加の腐食抑制剤、処理ポリマー、抗菌剤、スケール防止剤、着色剤、充填剤、緩衝剤、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤、分散剤、脱臭剤、マスキング剤、脱酸素剤、指示染料、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記腐食抑制剤組成物が、有機ホスホネート、オルトホスフェート、および亜鉛またはその塩を含む、地熱システムにおいて水性媒体と接触している金属表面の腐食を抑制するための腐食抑制剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に腐食抑制に関する。より詳細には、本開示は、地熱システムにおける腐食を抑制するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱エネルギーは、地球内部内の熱の形態のエネルギーであり、地熱井を使用して開発することができる。地球内部は、莫大な供給量の熱を含有するが、エネルギー生成のための熱の抽出には課題が残っている。地熱エネルギーは、岩盤を通じた熱伝導によって、地表に向かって移動している。熱エネルギーはまた、溶岩の移動、または相互接続した亀裂および孔を通じた流体(蒸気もしくは水としてのHO)の循環によって、地表に向かって伝達され得る。いずれの場合も、地熱井は、比較的深い井戸である。
【0003】
地熱ブラインおよび蒸気は、一般に、エネルギー源として使用される。地熱ブラインは、発電、加熱、および電気のプロセスにおいて使用される。地熱蒸気の温度は、約185℃~約370℃(約365°F~約700°F)の範囲である。蒸気は、フラッシングユニットを使用してブラインから分離される。低温ブラインはまた、電気二元ユニット(二次流体ユニット)を生産するためにも使用することができる。地熱ブラインは、約1000ppm未満~数十万ppmの塩分、および約6パーセントまでの非凝縮性ガスの含有量を有し得る。塩含有量および用途に応じて、地熱流体は、直接的に、または二次流体サイクルを介して、使用することができる。他のエネルギー源の存在量が減り、それらがより高価になるにつれて、エネルギー源としての地熱エネルギーの使用は、重要性を増している。これは、持続可能で再生可能なエネルギー源であり、他の再生可能エネルギー源とは異なり、地熱エネルギーは、常に利用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水性媒体中の金属表面の腐食は、地熱産業における問題である。例えば、地熱操作は、塩水などの腐食性成分が存在する金属表面を接触させることを含む。これらの過酷な条件は、表面の孔食、脆化、および一般的な金属の損失によって証明されるように、激しい腐食を引き起こす可能性がある。金属表面は、クロム鋼、フェライト合金鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、析出-45硬化ステンレス鋼、および高ニッケル含有鋼を含む高合金鋼で構成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
地熱システムと接触する金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。この方法は、金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得る。腐食抑制剤組成物は、有機ホスホネート、オルトホスフェート、および亜鉛またはその塩を含み得る。
【0006】
いくつかの態様において、有機ホスホネートは、2,2’-(ヒドロキシホスホリル)ジコハク酸(PSO)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)、((ジメチルアミノ)メチレン)ビス(ホスホン酸)(DMAMDP)、N,N-ジメチル-1,1-ジホスホノメタンアミンオキシド(DMAMDPO)、(モルホリノメチレン)ビス(ホスホン酸)(MMDP)、4-(ジホスホノメチル)モルホリン4-オキシド(MMDPO)、ヒドロキシホスホノ酢酸(HPA)、ホスフィノカルボン酸(PCA)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0007】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約1重量%~約20重量%の有機ホスホネートを含み得る。
【0008】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約10重量%~約40重量%のオルトリン酸塩を含み得る。
【0009】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約2重量%~約15重量%の亜鉛またはその塩を含み得る。
【0010】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、蛍光トレーサーをさらに含み得る。
【0011】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約0.01重量%~約0.5重量%の蛍光トレーサーを含み得る。
【0012】
いくつかの態様において、この方法は、腐食抑制剤組成物で金属表面を不動態化することを含み得る。
【0013】
いくつかの態様において、金属表面は、約50ppm~約400ppmの腐食抑制剤組成物を含む水性媒体と接触し得る。
【0014】
いくつかの態様において、金属表面は、約4~約8のpHを有する水性媒体と接触し得る。
【0015】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約0.01ppm~約500ppmの投与速度で水性媒体に添加され得る。
【0016】
いくつかの態様において、金属表面は、鉄、銅、鉄合金、銅合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅および約10%のニッケル、約80%の銅および約20%のニッケル、約70%の銅および約30%のニッケル、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、有鉛ネーバル青銅、リン青銅、炭素、ならびにそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0017】
いくつかの態様において、金属表面は、鉄を含み得る。
【0018】
いくつかの態様において、金属表面は、軟鋼または炭素鋼であり得る。
【0019】
いくつかの態様において、金属表面の腐食速度は、約3mpy未満であり得る。
【0020】
いくつかの態様において、金属表面の腐食速度は、約1mpy未満であり得る。
【0021】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、水混和性共溶媒を含み得る。
【0022】
いくつかの態様において、水混和性共溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ギ酸、ホルムアミド、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0023】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、追加の腐食抑制剤、処理ポリマー、抗菌剤、スケール防止剤、着色剤、充填剤、緩衝剤、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤、分散剤、脱臭剤、マスキング剤、脱酸素剤、指示染料、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加剤を含み得る。
【0024】
また、地熱システムにおいて水性媒体と接触している金属表面の腐食を抑制するための腐食抑制剤組成物の使用も提供される。腐食抑制剤組成物は、有機ホスホネート、オルトホスフェート、および亜鉛またはその塩を含み得る。
【0025】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解できるように、本開示の特徴および技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示される概念および具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような等価の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことが、当業者により認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書において以下に説明する。
【0027】
図1】地熱再注入井水の化学物質および冶金についての腐食データを示す図である。
【0028】
図2】無処理と比較したさまざまな化学物質についての経時的な腐食速度をmpyで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
さまざまな実施形態が以下に説明される。実施形態のさまざまな要素の関係性および機能は、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解され得る。しかし、実施形態は、以下に例解されるものに限定されない。特定の例では、本明細書に開示される実施形態の理解のために必要ではない詳細は、省略することができる。
【0030】
地熱システムと接触する金属表面の腐食を抑制する方法が提供される。この方法は、金属表面を腐食抑制剤組成物と接触させることを含み得る。腐食抑制剤組成物は、有機ホスホネート、オルトホスフェート、および亜鉛またはその塩を含み得る。
【0031】
いくつかの態様において、有機ホスホネートは、2,2’-(ヒドロキシホスホリル)ジコハク酸(PSO)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)、((ジメチルアミノ)メチレン)ビス(ホスホン酸)(DMAMDP)、N,N-ジメチル-1,1-ジホスホノメタンアミンオキシド(DMAMDPO)、(モルホリノメチレン)ビス(ホスホン酸)(MMDP)、4-(ジホスホノメチル)モルホリン4-オキシド(MMDPO)、ヒドロキシホスホノ酢酸(HPA)、ホスフィノカルボン酸(PCA)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0032】
いくつかの態様において、有機ホスホネートは、PSOであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、PBTCであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、DMAMDPであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、DMAMDPOであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、MMDPであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、MMDPOであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、HPAであり得る。いくつかの態様において、有機ホスホネートは、PCAであり得る。
【0033】
腐食抑制剤組成物は、腐食抑制を最大化するために有効量の有機リン酸塩を含み得る。組成物中の有機ホスホネートの量は、約1重量%~約20重量%の有機ホスホネートであり得る。いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物中の有機ホスホネートの量は、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、または約19重量%であり得る。
【0034】
腐食抑制剤組成物は、腐食抑制を最大化するために有効量のオルトリン酸塩を含み得る。腐食抑制剤組成物は、約10重量%~約40重量%のオルトリン酸塩を含み得る。いくつかの態様において、組成物中のオルトリン酸塩の量は、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%であり得る。
【0035】
腐食抑制剤組成物は、腐食抑制を最大化するために有効量の亜鉛またはその塩を含み得る。いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約2重量%~約15重量%の亜鉛またはその塩を含み得る。いくつかの態様において、組成物中の亜鉛の量は、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%であり得る。
【0036】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、蛍光トレーサーをさらに含み得る。いくつかの態様において、組成物は、不活性トレーサーを含むことで、それを、TRASAR(登録商標)技術(Nalco(登録商標)Company,Naperville,Ill.,USAから入手可能)などの蛍光追跡技術と適合するようにし得る。他の態様において、不活性蛍光トレーサーは、投与量レベルを決定する手段を提供するために、組成物中に含まれ得る。既知の割合の蛍光トレーサーは、腐食抑制剤と同時にまたは連続して添加され得る。有効な不活性蛍光トレーサーは、系内の他の成分と化学的に非反応性であり、かつ経時的に著しく劣化しない物質を含み得る。
【0037】
代表的な不活性蛍光トレーサーには、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体;ローダミンまたはローダミン誘導体;ナフタレンスルホン酸(モノ、ジ、トリなど);ピレンスルホン酸(モノ、ジ、トリ、テトラなど);スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む);ビフェニルスルホン酸;フェニルアラニン;トリプトファン;チロシン;ビタミンB2(リボフラビン);ビタミンB6(ピリドキシン);ビタミンE(a-トコフェロール);エトキシキン;カフェイン;バニリン;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー;フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物;リグニンスルホン酸;多環芳香族炭化水素;アミン官能基、フェノール官能基、スルホン酸官能基、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する(多)環芳香族炭化水素;N、O、またはSを有する(多)複素環芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、またはスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つの部分を含有するポリマーが含まれる。
【0038】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約0.01重量%~約0.5重量%の蛍光トレーサーを含み得る。組成物中の、または組成物とは別に添加される蛍光トレーサーの量は、水系中の腐食抑制剤の投与量レベルを追跡するのに十分であり得る。
【0039】
いくつかの態様において、金属表面は、鉄、銅、鉄合金、銅合金、アドミラルティ黄銅、約90%の銅および約10%のニッケル、約80%の銅および約20%のニッケル、約70%の銅および約30%のニッケル、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅、有鉛ネーバル青銅、リン青銅、炭素、ならびにそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの態様において、金属表面は、鉄を含み得る。いくつかの態様において、金属表面は、軟鋼または炭素鋼であり得る。
【0040】
いくつかの態様において、この方法は、腐食抑制剤組成物で金属表面を不動態化することを含み得る。金属表面を不動態化することは、組成物を金属表面に直接添加すること、または組成物を水系に一定期間より高い投与量で添加し、次いで投与量を維持用量に低減することを含み得る。
【0041】
いくつかの態様において、金属表面は、約50ppm~約400ppmの腐食抑制剤組成物を含む水性媒体と接触し得る。
【0042】
いくつかの態様において、腐食抑制剤は、約1ppm~約1000ppm、約1ppm~約800ppm、約1ppm~約600ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約400ppm、約1ppm~約200ppm、約5ppm~約1000ppm、約5ppm~約800ppm、約5ppm~約600ppm、約5ppm~約500ppm、約5ppm~約400ppm、または約5ppm~約200ppmの濃度で水性媒体に添加することができる。いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、約0.01ppm~約500ppmの投与速度で水性媒体に添加され得る。
【0043】
いくつかの態様において、金属表面は、約4~約8のpHを有する水性媒体と接触し得る。いくつかの態様において、水性媒体のpHは、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、または約7.5である。
【0044】
本明細書に開示される組成物は、地熱システムにおいて水性媒体と接触する金属表面の腐食速度を低減することができる。金属表面の腐食速度は、約3mpy未満であり得る。いくつかの態様において、金属表面の腐食速度は、約2.5mpy、約2mpy、1.5mpy、または約1mpy未満であり得る。
【0045】
いくつかの態様において、腐食抑制剤組成物は、水混和性共溶媒を含み得る。水混和性共溶媒の例には、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ギ酸、ホルムアミド、プロピレングリコール、またはエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
腐食抑制剤組成物は、添加剤を含み得る。添加剤の例には、追加の腐食抑制剤、処理ポリマー、抗菌剤、スケール防止剤、着色剤、充填剤、緩衝剤、界面活性剤、脱酸素剤、キレート剤、分散剤、脱臭剤、マスキング剤、脱酸素剤、指示染料、または消泡剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの態様において、この方法は、地熱システムで使用されるプロセス水に消泡剤を添加することを含み得る。プロセス水は、地熱冷却水または地熱凝縮物であり得る。消泡剤の例には、C-C25アルキルアルコール、C-C25アルキルアルコールエトキシレート、一塩基性ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサン、ソルビタンモノステアレート、水和シリカ、エトキシ化ソルビタンモノステアレート、キサンタンガム、およびアモルファスシリカが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、消泡剤には、水、ポリジメチルシロキサン、およびモノステアリン酸ソルビタンが含まれ得る。他の態様において、消泡剤は、水、ポリジメチルシロキサン、モノステアリン酸ソルビタン、水和シリカ、エトキシル化ソルビタンモノステアレート、およびキサンタンガムからなり得る。
【0048】
いくつかの態様において、消泡剤は、約0.001ppm~約100ppmの量でプロセス水に添加され得る。いくつかの実施形態において、消泡剤は、約0.001ppm~約10ppm、約0.001ppm~約5ppm、約0.01ppm~約10ppm、約0.05ppm~約5ppm、約0.05ppm~約2ppm、約0.05ppm~約10ppm、または約0.1ppm~約1ppmの量でプロセス水に添加され得る。
【0049】
特定の態様において、鉄触媒は、プロセス水に添加され得る。他の態様において、鉄触媒は、プロセス水に添加されない。鉄触媒は、鉄塩、鉄錯体、またはそれらの組み合わせを含むことができる。鉄触媒は、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、グルコン酸第一鉄、硝酸第二鉄、水酸化鉄(III)[FeO(OH)]、塩化第一鉄、ヨウ化第一鉄、硫化鉄、鉄4-シクロヘキシル-酪酸、酸化第二鉄、臭化第二鉄、フッ化第一鉄、鉄粉、酢酸第一鉄、シュウ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄などであり得る。
【0050】
特定の態様において、過酸化水素は、プロセス水に添加され得る。他の態様において、過酸化水素は、プロセス水に添加されない。
【0051】
組成物中に含まれ得るか、またはプロセス水に別々に添加され得る追加の腐食抑制剤には、C14~C22飽和および不飽和脂肪酸などのモノマーまたはオリゴマー脂肪酸、ならびにそのような脂肪酸のうちの1つ以上を重合することによって得られるダイマー、トリマー、およびオリゴマー生成物が含まれる。腐食抑制剤は、トリアゾールであってもよい。トリアゾールの例には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロ-トリルトリアゾール、またはニトロ化トリアゾールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、追加の腐食抑制剤は、2-置換ベンズイミダゾールであり得る。
【0052】
いくつかの態様において、追加の腐食抑制剤は、ベンジル-(C12~C16アルキル)-ジメチル-塩化アンモニウムを含むことができる。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は、ベンジル-(C12~C16アルキル)-ジメチル-アンモニウムクロリド、エトキシル化アルコールホスフェート塩、イミダゾリン塩、2-メルカプトエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メタノール、2-ブトキシエタノール、および水を含む。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は、グルコン酸ナトリウムを含む。
【実施例
【0053】
実施例1
【0054】
これらの例で使用される化合物には、ホスホネート(CAS番号770734-50-4)、リン酸(CAS番号7664-38-2)、塩化亜鉛(CAS番号7646-85-7)、および蛍光トレーサー(CAS番号59572-10-0)が含まれる。組成物1は、PSO、リン酸、塩化亜鉛、および蛍光トレーサーを含む。組成物2は、トール油の酢酸イミダゾリン、四級アンモニウム化合物、および置換カルボン酸を含む。
【0055】
腐食抑制剤としてモリブデン酸塩(MoO)を含有する組成物を、地熱再注入井水を模倣した条件で試験した。しかしながら、許容できる腐食抑制を達成するには、高用量のモリブデン酸塩が必要であった。予期せぬことに、ホスホネート、リン酸、および亜鉛を含有する組成物が、地熱再注入井において約5~6.5のpHであっても最良の腐食抑制を提供することが発見された。Gamry腐食データは、より低いpHでの再注入井条件を模倣することによって実施した。測定された腐食速度は、約1mpy未満であった。
【0056】
図1は、異なる化学物質についての腐食速度を示している。ブランクの平均腐食速度は、7.35mpyであった。組成物1は、0.67mpyの腐食速度で他の化学物質を上回った(クーポンは、いかなる腐食もなく透明に見えた)。金属クーポンは、約100ppmの組成物1を使用して18時間不動態化し、次いで、用量は、24時間で約15ppmに下げた。MoOで処理したクーポンは、目に見えて腐食し始めていた。平均腐食速度は、30ppmのMoOについては2.1mpyであり、50ppmのMoOについては1.32mpyであった。MoO処理したクーポンを100ppmのMoOを使用して、18時間不動態化し、次いで、用量は、30ppmおよび50ppmのMoOに下げた。
【0057】
実施例2
【0058】
Ca1.3ppm、Mg0.1ppm、CaCOとしてアルカリ性68ppm、およびイオンとしての硫酸塩93ppmを含有する水を調製して、地熱再注入井水をシミュレートした。希硫酸を使用して水のpHを6.3に調整した。表1に従って、約1リットルの水をガムリーセルに添加し、不動態化のために抑制剤を添加し、腐食速度を約18時間測定した。次いで、その水を抑制剤を維持投与した真水に交換し、約40℃に加熱した。pHは、約24時間、約6~6.3に維持した。
【表1】
【0059】
金属は、軟鋼であり、組成物1は、約15ppmの用量で最良の腐食制御を提供した。組成物1で処理したクーポンには腐食は、観察されなかった。平均腐食速度は、約0.6mpyであった。図2は、経時的な異なる試験についての腐食速度を示している。
【0060】
50ppmの投与量でのMoOについての平均腐食速度は、約1.3mpyであったが、クーポンは、腐食し始めたが、これは30ppmのMoOよりも比較的良好であった。組成物2で処理した金属クーポンは、100pmの不動態化ステップ中に腐食し始め、平均腐食速度は、4.0mpyであった。ブランク腐食速度は、室温でも約5mpyを超えていた。
【0061】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される化合物/成分のうちのいずれかを含むか、それから成るか、または本質的にそれからなり得る。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」などの語句は、特許請求の範囲の範囲を、特定の材料またはステップ、および特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、引用された値の5%以内を指す。
【0063】
本明細書に開示される任意の方法は、本明細書に開示される任意の方法ステップ、または本明細書に開示される方法ステップのうちの2つ以上の任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなり得る。
【0064】
特に明記されていない限り、本明細書で言及されるすべての分子量は、重量平均分子量であり、すべての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて25℃で測定した。
【0065】
本明細書で開示および特許請求される組成物および方法のすべては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製および実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、明示的に反対の言及がない限り、「a(ある1つの)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの分散剤」は、「少なくとも1つの分散剤」または「1つ以上の分散剤」を含むことを意図する。
【0066】
絶対項または近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲およびパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(すべての小数値および全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0067】
さらに、本発明は、本明細書に記載のさまざまな実施形態の一部または全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対するさまざまな変更および修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】