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特表2022-536384溶接電極および該溶接電極の使用方法
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  • 特表-溶接電極および該溶接電極の使用方法 図1
  • 特表-溶接電極および該溶接電極の使用方法 図2
  • 特表-溶接電極および該溶接電極の使用方法 図3
  • 特表-溶接電極および該溶接電極の使用方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】溶接電極および該溶接電極の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/10 20060101AFI20220805BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B23K35/10
B23K11/30 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574171
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2020065857
(87)【国際公開番号】W WO2020249518
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019115955.5
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019134727.0
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508375561
【氏名又は名称】フリードリヒ・アレクサンダー・ウニヴェルジテート エアランゲン・ニュルンベルク
(71)【出願人】
【識別番号】521544159
【氏名又は名称】ウェルドストーン・コンポーネンツ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WELDSTONE COMPONENTS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ロシヴァル・ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツ・マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムライヒ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エンデマン・アンドレアス
(57)【要約】
【課題】板金間において多数の抵抗溶接継手や長いシーム長を可能にする汎用的な溶接電極を提供する。
【解決手段】抵抗溶接用の溶接電極は、少なくとも一部が第1の金属からなる溶接用ツールで構成されている。同溶接用ツールは、溶接対象のワーク9と接触する接触面1を有する。接触面1は、ホウ素および/またはリンがドープされたダイヤモンドで形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が第1の金属からなる溶接用ツールで構成された抵抗溶接用の溶接電極であって、前記溶接用ツールが、溶接対象のワーク(9)と接触する接触面(1)を有する、溶接電極において、
前記接触面(1)は、ホウ素および/またはリンがドープされたダイヤモンドで形成されていることを特徴とする、溶接電極。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンドは、500~20,000ppmのホウ素がドープされている、溶接電極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンドが、CVD工程でダイヤモンド層(2)として作製されている、溶接電極。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンド層(2)の厚さが、0.5~50μmであり、好ましくは1~10μmである、溶接電極。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンド層(2)の表面粗さが、平均粗さ深さRz>1μmである、溶接電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記接触面(1)の50%超が、ダイヤモンド結晶、好ましくはダイヤモンド単結晶の、(111)面または(001)面を形成するファセットで構成されている、溶接電極。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンド層(2)のうちの、前記接触面(1)とは反対側の成長領域が、中間層(4)と接している、溶接電極。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記ダイヤモンド結晶(7)が、前記中間層(4)から前記接触面(1)へと[111]または[110]方向に延在している、溶接電極。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記中間層(4)が、前記第1の金属の炭化化合物および/もしくは窒化化合物および/もしくはホウ化化合物、または前記第1の金属とは異なる第2の金属の炭化化合物および/もしくは窒化化合物および/もしくはホウ化化合物で形成されている、溶接電極。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記第1の金属および/または第2の金属が、800℃の温度まで安定な炭化化合物および/または窒化化合物および/またはホウ化化合物を形成している、溶接電極。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記第1の金属および/または第2の金属が、Cr、Ti、Nb、Mo、WおよびTaの少なくとも1種の元素で構成されている、溶接電極。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記溶接用ツールの一部が、第3の金属で形成されている、溶接電極。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の溶接電極において、前記第3の金属が、主成分としてCuを含有している、溶接電極。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の溶接電極の使用方法であって、金属酸化物のパッシベーション層(10)を有する第4の金属からなるワーク(9)間に抵抗溶接継手を作製するための使用方法。
【請求項15】
請求項14に記載の使用方法において、前記抵抗溶接継手が、抵抗スポット溶接、抵抗プロジェクション溶接、または抵抗シーム溶接によって作製される、使用方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の使用方法において、前記第4の金属が、Al、Mg、Ni、Ti、Zn、Cr、Fe、Nb、TaおよびCuからなる群から選択される、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載されているとおり、抵抗溶接用の溶接電極に関する。本発明は、さらに、このような溶接電極の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、J.F. Key, T.H. Courtney: Refractory Metal Composite Tips for Resistance-Spot Welding of Galvanized Steel, Welding Research Supplement, 261-266, 1974(非特許文献1)から、抵抗溶接用、特には抵抗スポット溶接用の、溶接電極が知られている。
【0003】
抵抗スポット溶接用の溶接電極は、通常、抵抗スポット溶接装置の電極ホルダに差し込まれることが可能なキャップを、溶接用ツールとして具備している。ロールシーム溶接には、溶接用ツールとしてディスクが使用される。鋼板間に溶接継手を作製する場合、このような溶接電極は、例えば、焼結CuAl系合金、焼結CuCr系合金、焼結CuCrZr系合金等から構成される。
【0004】
近年、アルミニウム板間に溶接継手を作製したいという需要が、特に自動車産業において存在する。従来の溶接電極では、特にスポット溶接継手の作製において、溶接対象のアルミニウム板に溶着(スティック)してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.F. Key, T.H. Courtney: Refractory Metal Composite Tips for Resistance-Spot Welding of Galvanized Steel, Welding Research Supplement, 261-266, 1974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の不都合な点を解消することである。特には、板金間において多数の抵抗溶接継手や長いシーム長を可能にする汎用的な溶接電極を提供する。本発明の他の目的では、該溶接電極の使用方法を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1および請求項14の構成によって解決される。従属請求項に、本発明の実用的な実施形態を示す。
【0008】
本発明では、ホウ素および/またはリンがドープされたダイヤモンドで接触面が形成された抵抗溶接用の溶接電極を提案する。本提案の溶接電極を用いることにより、驚くべきことに、溶着を起こすことなく板金間、特にはアルミニウム板間に1,400箇所を超える溶接継手、特にはスポット溶接継手を作製することが可能である。具体的に述べると、現時点で分かっている範囲では、2枚のアルミニウム板間にスポット溶接継手を作製する場合、本発明にかかるダイヤモンド層により、当該アルミニウム板の表面に形成されたAlのパッシベーション層の少なくとも一部を機械的に突き破ることで、同ダイヤモンド層が金属アルミニウムに直に接触するようになると考えられる。結果として、前記溶接電極と前記アルミニウム板との接触抵抗を大幅に低減させることが可能になる。これにより、前記溶接電極の前記接触面側の領域で前記アルミニウム板が溶融しなくなるので、前記溶接電極との溶着が阻止される。
【0009】
有利な一実施形態において、前記ダイヤモンドは、500~20,000ppmのホウ素、好ましくは2,000~10,000ppmのホウ素がドープされている。これに加えて又はこれに代えて、前記ダイヤモンドは、500~20,000ppmのリンがドープされていてもよい。これにより、抵抗溶接工程を30kA/cm以上の電流密度で実施することが可能になる。これは、板金溶接の従来の抵抗溶接方法と比べて約30倍の電流密度に相当する(従来の方法で用いられる電流密度は、通常、1kA/cmである)。用いる電流密度を極めて高くできるので、抵抗溶接継手を高速で実現することが可能になる。特に、溶接対象のワークが広い領域にわたって不所望に加熱されてしまうことがなくなる。
【0010】
さらなる有利な実施形態において、前記ダイヤモンドは、CVD工程でダイヤモンド層として作製されている。CVD工程では、前記溶接電極に対して、前記ダイヤモンド層を気相からin-situで堆積させる。このようにして作製されたダイヤモンド層は、抵抗溶接の極限条件下でも驚くほど良好な耐久性を示すということが分かっている。
【0011】
有利には、前記ダイヤモンド層の厚さは、0.5~50μmであり、好ましくは1~10μmである。有利には、前記ダイヤモンド層の表面粗さは、平均粗さ深さRz>1μmである。これらのパラメータを有するダイヤモンド被膜の特徴として、前記溶接電極の寿命の向上が挙げられる。
【0012】
さらなる有利な実施形態において、前記接触面の50%超が、ダイヤモンド結晶、好ましくは共に成長したダイヤモンド単結晶の、(111)面または(001)面を形成するファセットで構成されている。好適には、前記ダイヤモンド層のうちの、前記接触面とは反対側の成長領域が、キャップ側の中間層と接している。特には、前記ダイヤモンド単結晶が、前記中間層から前記接触面へと主に[111]または[110]方向に延在しているものとされる。すなわち、前記ダイヤモンド単結晶は、前記中間層から前記接触面へと、結晶粒界が主に前記接触面と略直交するようにして延在している。本提案の構造のダイヤモンド層の特徴として、優れた電気伝導率及び熱伝導率が挙げられる。
【0013】
さらなる有利な実施形態において、前記中間層は、前記第1の金属の炭化金属化合物および/もしくは窒化金属化合物および/もしくはホウ化金属化合物、または前記第1の金属とは異なる第2の金属の炭化金属化合物および/もしくは窒化金属化合物および/もしくはホウ化金属化合物で形成されている。特には、前記第1の金属および/または第2の金属が、800℃の温度まで安定な炭化化合物および/または窒化化合物および/またはホウ化化合物を形成している。前記第1の金属および/または第2の金属は、特には、Cr、Ti、Nb、Mo、WおよびTaの少なくとも1種で構成されていてもよい。前記中間層は、CVD工程においてin-situで直に形成されたものであってもよいし、あるいは、600℃~1,050℃の温度で別途形成されたものであってもよい。
【0014】
例えば、前記第1の金属は、合金成分としてCuを含有するWであり得る。このとき、前記中間層は、前記ダイヤモンド層を堆積させるCVD工程で直に形成されてもよい。この場合、WCが前記中間層として形成される。また、例えば、前記第1の金属は、合金成分としてFeを含有するWで構成されていてもよい。このとき、第1のCVD工程において、前記第1の金属上に中間層としてTiN層が堆積される。この層には、Bがドープされていてもよい。次に、第2のCVD工程において、前記中間層上に前記ダイヤモンド層が堆積される。
【0015】
好ましくは、前記第1の金属は、合金成分としてCuまたはFeを含んでいてもよく、あるいは、Agを含んでいてもよい。
【0016】
前記溶接用ツールは、前記第1の金属のほかに、一部が第3の金属で形成されていてもよい。前記第3の金属は、主成分としてCuを含有し得る。すなわち、前記溶接用ツールは、前記接触面を形成する少なくとも一部が、例えばW系合金、Mo系合金等で形成されていてもよい。他にも、該溶接用ツールは、例えばCu系合金等の別の金属によって構成されていてもよい。このような溶接用ツールは、比較的安価に製造することができる。
【0017】
前記溶接用ツールは、抵抗スポット溶接装置の電極ホルダに嵌装されるキャップであり得る。しかしながら、前記溶接用ツールは、ローラーシーム溶接装置のディスクとすることも可能である。
【0018】
本発明のさらなる態様では、本発明にかかる溶接電極の使用方法であって、金属酸化物のパッシベーション層を有する第4の金属からなるワーク間に溶接継手を作製するための使用方法を提案する。
【0019】
本発明の意味での「金属」という用語は、一般的な解釈がなされるべきである。すなわち、「金属」は、合金も指し得る。
【0020】
「第4の金属」は、空気と接触することで表面上に酸化物層を自発的に形成する金属であると解釈されたい。好ましくは、前記第4の金属は、Al、Mg、Ni、Ti、Zn、Cr、Fe、Nb、TaおよびCuからなる群から選択される。具体的に述べると、アルミニウムは、表面上にAlのパッシベーション層を自発的に形成する。Alは、電気絶縁性を示すと共に、高い硬度(ビッカース硬さ:約2,000)を有する。本発明にかかる溶接電極に設けられたダイヤモンド層は、それよりも高い硬度、すなわち、7,000~10,000のビッカース硬さを有する。その結果、本発明にかかる溶接電極は、例えばアルミニウム板等に形成するパッシベーション層を突き破ることができるので、前記ダイヤモンド層と同パッシベーション層の下にある金属的導電部分との直接的な電気的接触が確立されることになる。結果として、本発明にかかる溶接電極は、溶接対象の板金に溶着することなく溶接継手を作製することができる。この効果は、金属酸化物のパッシベーション層を形成する他の第4の金属(例えば、Al、Mg、Ni、Ti、Zn、Cr、Fe、Nb、Ta、Cu等)にも当てはまる。
【0021】
好都合には、前記溶接継手は、抵抗スポット溶接によって作製される。しかしながら、本発明にかかる溶接電極の設計を対応させることにより、例えば、直線状の溶接継手を作製することも想定され得る。
【0022】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】溶接キャップの上面図である。
図2図1の切断線A-A’による前記溶接キャップの断面図である。
図3図1の底面図である。
図4】溶接キャップの表面と溶接対象の板金とについての概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から図3に、キャップ又は溶接キャップの形態の溶接電極を示す。同溶接電極は、ダイヤモンド層2の自由表面を形成している接触面1を有する。参照符号3は、例えばW、Mo、又はMoもしくはWを主成分として含有する合金等で形成された部位を示す。参照符号4は、中間層を示す。本具体例において、中間層4は、実質的にWC又はMoCで形成されている。中間層4は、ダイヤモンド層2の作製時にCVD工程によりin-situで形成することが可能である。
【0025】
参照符号5は、前記溶接キャップの基部を示す。基部5は、部位3を形成する第1の金属とは異なる第3の金属で形成してもよい。基部5を作製するための第3の金属としては、部位3の作製に用いられる前記第1の金属よりも安価な金属が選択されてもよい。例えば、基部5は、純銅または銅系合金(特には、CuAl系合金、CuCr系合金もしくはCuCrZr系合金)で形成されてもよい。当然ながら、基部5を省略し、前記キャップを、部位3を形成する前記第1の金属からなるものとしてもよい。
【0026】
図示しないさらなる実施形態では、部位3を省略することも可能である。この場合の前記溶接キャップは、例えば、従来どおり銅系合金からなる。この場合、中間層4を別途付与する必要がある。前記中間層は、炭化物形成金属で形成され得る。例えば、前記中間層は、Tiを含有し得る。その場合、CVD工程により、そのような中間層4上にダイヤモンド層2が堆積され得る。
【0027】
図4に、W系またはMo系合金で形成された部位3を概略的に示す。同合金は、結晶粒界に粒界相6を有し得る(同図には、結晶粒界の一部のみを例示している)。粒界相6は、例えば、Fe、Ni、Co、またはCu等で構成されている。in-situ成膜の場合、エッチングおよび/または粒子ブラストにより粒界相6を表面的に除去するのが好都合である。これにより、ダイヤモンド層2と中間層4との結合強度が向上する。
【0028】
中間層4から延出するダイヤモンド結晶7は、50%超がダイヤモンド単結晶である。参照符号8で示すダイヤモンド結晶7のファセットは、(111)面または(001)面で構成されている。参照符号Pは、ダイヤモンド層2内の電流方向を表す矢印を指している。同電流は、ダイヤモンド結晶7の[111]方向と平行に、また[110]方向と平行に流れる。
【0029】
ダイヤモンド層2の接触面1は、ファセット8全体によって形成されている。接触面1は、例えばアルミニウム系合金からなる溶接対象のワーク9に対向して設けられている。ワーク9は、その表面に金属酸化物層10を有する。
【0030】
図示しないが、前記溶接用ツールは、キャップではなくディスクからなるものとされてもよい。このようなディスクは、ローラーシーム溶接装置に使用される。この場合の接触面1は、同ディスクの周縁部に形成されることになる。同ディスクでは、部位3および場合によっては基部5も、図1図3に図示した前記キャップと同様の順序で内径側位置に設けられる。
【0031】
ワーク9と別のワーク(図示せず)との間に溶接継手を作製するために、ダイヤモンド層2が金属酸化物層10に押し付けられる。5~60kA/cmの範囲内、好ましくは10~20kA/cmの範囲内の電流密度が生じることになる。この工程では、ワーク9が、対向して設けられた別のワーク(図示せず)であって、本発明にかかる追加の溶接電極(図示せず)により当該ワーク9に押し付けられた別のワークに溶接される。
【0032】
本提案の溶接電極により、特にアルミニウム板に対し、同溶接電極と当該アルミニウム板との間に溶着を生じさせることなく1,000箇所を超えるスポット溶接を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 接触面
2 ダイヤモンド層
3 部位
4 中間層
5 基部
6 粒界相
7 ダイヤモンド結晶
8 ファセット
9 ワーク
10 金属酸化物層
P 矢印
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】