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特表2022-536401析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法
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  • 特表-析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(54)【発明の名称】析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/05 20060101AFI20220805BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20220805BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C22C19/05 Z
C22F1/10 H
C22F1/00 630A
C22F1/00 640A
C22F1/00 650A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691A
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574769
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2020095908
(87)【国際公開番号】W WO2020249107
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】201910515324.1
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520455014
【氏名又は名称】西安熱工研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xi’an Thermal Power Research Institute CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.136 Xingqing Road,Beilin District,Xi’an City,Shaanxi Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】厳靖博
(72)【発明者】
【氏名】谷月峰
(72)【発明者】
【氏名】袁勇
(72)【発明者】
【氏名】楊征
(72)【発明者】
【氏名】張醒興
(57)【要約】
本発明は、析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法に関する。成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiであることを満たす。調製された合金は、合金母液に製錬され、エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却し、合金母液はインゴットに凝固される。均質化処理した後、圧延および熱処理する。析出強化の合金設計コンセプトを採用して、合金内部に均一に分散して分布された多数の二次強化相の析出を促進することにより、合金は良好な強度性能を得ると同時に、合金構造の安定性を確保することを前提として、合金はCr元素の含有量が高くなり、さらに優れた耐酸化および耐食性能が得られる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金であって、
前記合金成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、Ti/Al<2.5である、ことを特徴とする析出強化型ニッケル基高クロム超合金。
【請求項2】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法であって、
前記方法は、
1)合金成分が質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、Ti/Al<2.5である合金の調製ステップ、
2)調製された合金を合金母液に製錬した後、エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却することによって、合金母液をインゴットに凝固する、製錬ステップ、
3)超合金インゴットを得るために均質化処理するステップ、
4)総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、超合金インゴットを圧延する熱間圧延ステップ、
5)圧延後の合金を1110℃~1130℃で4時間保温して再結晶処理を行い、室温まで空冷した後750℃~770℃で7~9時間保温し、その後840℃~870℃まで昇温して1.5~2.5時間保温し、その後室温まで空冷する熱処理ステップを含む、ことを特徴とする析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項3】
ステップ2)において、真空製錬炉の内部で製錬が行われ、製錬中の真空度は1.0×10-4MPa以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項4】
ステップ2)において、インゴットへの凝固中に温度が900℃に達する前に、冷却速度が15℃/minを超えないように制御し、インゴットへの凝固中に温度が900℃に達した後、10℃/minを超える冷却速度で室温まで冷却する、ことを特徴とする請求項2に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項5】
ステップ2)において、合金母液がインゴットに凝固してから室温まで冷却するまでの時間は15minを超えない、ことを特徴とする請求項4項に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項6】
ステップ3)の具体的な過程は、インゴットを取出し、その後インゴットを1030℃~1070℃まで加熱し30分間保温した後、1170℃~1200℃まで昇温された熱処理炉の内部で継続して20~24時間保温し、最後に室温まで冷却する、ことを特徴とする請求項2項に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項7】
ステップ3)において、インゴットを1030℃~1070℃に加熱する場合、昇温速度は10℃/minを超えず、1170℃~1200℃まで昇温する場合、昇温速度は5℃/min以下である、ことを特徴とする請求項6項に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【請求項8】
ステップ5)において、10℃/minを超えない昇温速度で室温から1110℃~1130℃まで昇温し、10℃/minを超えない昇温速度で室温から750℃~770℃まで昇温し、さらに10℃/minを超えない昇温速度で840℃~870℃まで昇温する、ことを特徴とする請求項2項に記載の析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用合金材料分野に属し、具体的に、析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の電力需要が増加し続けることに従って、エネルギー不足と環境汚染問題が益々顕著になり、高効率、省エネ、環境に優しい発電方法を発展させる必要性が益々緊迫になっている。火力発電は、中国で長い間最も重要な発電技術として、ユニットの蒸気パラメータを改善することは、上記の問題を解決するための最も効果的な方法であると考えられている。従来の多くの実践により、キーコンポーネント材料のサービス性能は、ボイラユニットの蒸気パラメータの向上を制約する最も重要な原因であることが示されている。火力発電ユニットボイラの最も厳しいサービス条件のキーコンポーネントの1つとして、過熱器/再熱器パイプは材料のサーボス性能に対して非常に高い要件を提出している。過熱器/再熱器は、サービス期間に高温クリープ、熱疲労、酸化および高温煙道ガス腐食などの複数の要因の影響に耐える。火力発電ユニットの主蒸気パラメータの大幅な向上に伴い、火力発電業界では、高パラメータユニットの過熱器/再熱器パイプの使用性能の要件を満たすことができる超合金材料の開発が急務となっている。
【0003】
火力発電ユニットボイラで最も厳しいサービス条件のコンポーネントである過熱器/再熱器は、その候補材料の持続強度および耐食性に対して非常に高い要件を提出している。優れた耐久性能は、合金が高温条件下で長時間サービスする重要な保証であり、主な強化方法としての固溶体強化は、多くの場合、より大きなコストの向上および構造の不安定などの問題をもたらす。したがって、現在の候補合金は、主に合金の主な強化方法として析出強化を採用している。また、耐酸化性および耐食性も合金のサービス性能に重要な影響を及ぼし、合金中のCr元素の含有量は、その耐酸化性および耐食性を決定する決定的な要素であるが、その含有量の増加に伴って、合金構造の安定性と機械的特性が著しく低下する。高パラメータボイラの再熱器パイプの材料使用性能に対する要求に応じて、現在海外で、一連のニッケル基変形超合金材料、例えば、アメリカの特殊金属会社(American Special Metals Company)により開発されたInconel740H、アメリカハステロイ会社(American Hastelloy Company)により開発されたHaynes282、ドイツのティッセンクルップ会社(Geman Thyssen Krupp Company)により開発されたCCA617、イギリスのロールスロイス(British Rolls-Royce Company)会社により開発されたNimonic263、日本の日立会社により開発されたFENIX700、日本の東芝会社により開発されたTOS1X、日本の三菱会社により開発されたLTESR700などのニッケル基変形超合金などが開発されている。Cr含有量が高くなると合金強度が低下し、構造の安定性が悪化するため、現在慣用の析出強化型ニッケル基超合金中のCr元素の含有量は、多くの場合、より低い範囲に制御されているが、同時にその耐食性に大きな影響を及ぼしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、析出強化の合金設計コンセプトを採用し、合金内部に均一に分散して分布された多数の二次強化相の析出を促進することによって、合金が良好な強度性能を得ると共に、合金構造の安定性を確保することを前提として、合金に高いCr元素の含有量を有させ、さらに優れた耐酸化および耐食性を実現させる、析出強化型ニッケル基高クロム超合金およびその製造方法を提供することである。
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下のような技術案を採用する。
【0006】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金において、前記合金成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0007】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法は、以下のステップを含む。
【0008】
1)合金の調製ステップ:合金成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0009】
2)製錬ステップ:調製された合金を合金母液に製錬し、その後エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却することによって、合金母液をインゴットに凝固する。
【0010】
3)超合金インゴットを得るために均質化処理ステップを行う。
【0011】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、超合金インゴットを圧延する。
【0012】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を1110℃~1130℃で4時間保温して再結晶処理を行い、室温まで空冷した後750℃~770℃で7~9時間保温し、その後840℃~870℃まで昇温して1.5~2.5時間保温し、その後室温まで空冷する。
【0013】
本発明のさらなる改善は、ステップ2)において、真空製錬炉の内部で製錬が行われ、製錬中の真空度が1.0×10-4MPa以下であるという点にある。
【0014】
本発明のさらなる改善は、ステップ2)において、インゴットへの凝固中に温度が900℃に達する前に、冷却速度が15℃/minを超えないように制御し、インゴットへの凝固中に温度が900℃に達した後に、10℃/minを超える冷却速度で室温まで冷却するという点にある。
【0015】
本発明のさらなる改善は、ステップ2)において、合金母液がインゴットに凝固してから室温まで冷却するまでの時間が15minを超えないという点にある。
【0016】
本発明のさらなる改善は、ステップ3)の具体的な過程において、インゴットを取出し、その後インゴットを1030℃~1070℃に加熱し30分間保温した後、1170℃~1200℃まで昇温した熱処理炉の内部で継続して20~24時間保温し、最後に室温まで冷却する点にある。
【0017】
本発明のさらなる改善は、ステップ3)において、インゴットを1030℃~1070℃に加熱する場合、昇温速度が10℃/minを超えず、1170℃~1200℃まで昇温する場合、昇温速度が5℃/minを超えないという点にある。
【0018】
本発明のさらなる改善は、ステップ5)において、10℃/minを超えない昇温速度で室温から1110℃~1130℃に昇温し、10℃/minを超えない昇温速度で室温から750℃~770℃に昇温し、さらに10℃/minを超えない昇温速度で840℃~870℃に昇温する点にある。
【0019】
本発明は、従来技術と比較して有益な効果を有する。
【0020】
本発明は、析出強化の合金設計コンセプトに基づいて、Al、Ti含有量の高い新型超合金を開発すると同時に、合金中のCr元素の含有量が高いため、その優れた耐酸化および耐食性も保証される。
【0021】
本発明に記載の方法に従って調製された合金は、優れた強度性能および耐食性を有し、ならびに良好な溶接および加工性能を有する。合金マトリックスは、無秩序な面心構造のオーステナイトであり、平均結晶粒サイズは100ミクロン未満である。オーステナイトの粒界には、不連続に分布された炭化物(NbCおよびCr23C6)が存在し、オーステナイトの体積分率は約5%~20%を占め、オーステナイト結晶の内部には、サイズが50nm以下の微細な球状のNi3Al析出相が、均一に分散される。合金の室温および850℃の引張降伏強度は、それぞれ750MPaおよび500MPaより高く、高温煙道ガス環境(N-15%CO-3.5%O-0.1%SO)で500時間腐食された後の合金の重量変化は0.3mg/cm未満である。また、合金は850℃での熱暴露期間に優れた構造安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1の熱処理状態の合金の微細構造を示す図である。
図2】実施例1の熱暴露状態(850℃/1000h)の合金の微細構造を示す図である。
図3】比較例の熱処理状態の微細構造を示す図である。
図4】比較例の熱暴露状態(850℃/1000h)の合金の微細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、実施例を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明の析出強化型合金は、ニッケル基超合金材料である。
【0025】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金において、合金成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0026】
析出強化型ニッケル基高クロム超合金の製造方法は、以下のステップを含む。
【0027】
1)合金の調製ステップ:合金成分は、質量百分率に関して、Cr:25%~28%、Co:10%~15%、Ti:2.5%~3.5%、Al:1.0%~1.5%、W:1.5%~5%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:0.5%~1.5%、C:0.03%~0.08%、Fe:0.5%~1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0028】
2)製錬ステップ:調製された合金を合金母液に製錬した後、エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却することによって、合金母液をインゴットに凝固した後、インゴット温度が900℃に達する前に、冷却速度が15℃/minを超えないように制御し、インゴット温度が900℃に達した後に、10℃/minを超える冷却速度で室温まで冷却する。合金母液がインゴットに凝固してから室温まで冷却するまでの時間は15分を超えない。
【0029】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後10℃/minを超えない昇温速度でインゴットを室温から1030℃~1070℃に加熱して30分間保温した後、継続して5℃/minを超えない昇温速度で1170℃~1200℃に昇温させ、熱処理炉の内部で20~24時間保温し、最後に室温まで冷却し、超合金インゴットを得る。
【0030】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0031】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minを超えない昇温速度で室温から1110℃~1130℃に昇温させて4時間保温し、再結晶処理を行い、室温まで空冷した後に10℃/minを超えない昇温速度で室温から750℃~770℃に昇温させ7~9時間保温し、その後10℃/minを超えない昇温速度で840℃~870℃に昇温させ1.5~2.5時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
【実施例1】
【0032】
本実施例の耐熱鋼材料は、質量百分率で計算して、Cr:28%、Co:15%、Ti:2.5%、Al:1.5%、W:1.5%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.04%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0033】
本実施例の製造方法は、以下のステップを含む。
【0034】
1)原料を調製するステップ:成分は、質量百分率で計算して、Cr:28%、Co:15%、Ti:2.5%、Al:1.5%、W:1.5%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.04%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0035】
2)製錬ステップ:セラミックるつぼと調製した原料とを同時に真空製錬炉の内部に入れ、真空誘導炉を使用して、1.0×10-4MPa以下の真空度で、調製した合金を合金母液に製錬し、合金母液が凝固すると、同時に、電気アークを用いてセラミックるつぼを低電力で予熱する。合金が完全に凝固してインゴットになった後、それを予熱したセラミックるつぼの内部に移動させ、合金インゴットと銅るつぼとが接触しないようにすることによって、その冷却速度が高すぎることを防止する。
【0036】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後、インゴットを10℃/minの速度で1050℃に加熱して30分間保温し、5℃/minの速度で1200℃まで加熱した熱処理炉の内部で継続して24時間保温し、最後に、室温まで冷却し、超合金インゴットを得る。
【0037】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0038】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minの速度で1120℃に加熱して4時間保温し、再結晶処理を行い、空冷した後に760℃で8時間保温し、その後860℃に昇温させ2時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
【0039】
実施例1で製造された合金の室温および850℃の降伏強度は、それぞれ785MPaおよび510MPaであり、850℃の高温煙道ガスで500時間腐食した後の重量変化は0.14 mg/cmである。
【実施例2】
【0040】
本実施例の耐熱鋼材料は、質量百分率で計算して、Cr:25%、Co:15%、Ti:2.5%、Al:1.5%、W:5%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.07%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0041】
本実施例の製造方法は、以下のステップを含む。
【0042】
1)原料を調製するステップ:成分は、質量百分率で計算して、Cr:25%、Co:15%、Ti:2.5%、Al:1.5%、W:5%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.07%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0043】
2)製錬ステップ:セラミックるつぼと調製した原料とを同時に真空製錬炉の内部に入れ、真空誘導炉を使用して1.0×10-4MPa以下の真空度で、調製した合金を合金母液に製錬し、合金母液が凝固すると、同時に電気アークを用いてセラミックるつぼを低電力で予熱する。合金が完全に凝固してインゴットになった後、それを予熱したセラミックるつぼの内部に移動させ、合金インゴットと銅るつぼとが接触しないようにすることによって、その冷却速度が高すぎることを防止する。
【0044】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後、インゴットを10℃/minの速度で1050℃に加熱して30分間保温し、5℃/minの速度で1200℃に加熱した熱処理炉の内部で継続して24時間保温し、最後に室温まで冷却し、超合金インゴットを得る。
【0045】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0046】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minの速度で1120℃に加熱して4時間保温し、再結晶処理を行い、空冷した後に760℃で8時間保温し、その後860℃に昇温させて2時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
【0047】
実施例2で製造された合金の室温および850℃の降伏強度は、それぞれ765MPaおよび525MPaであり、850℃の高温煙道ガスで500時間腐食した後の重量変化は0.16 mg/cmである。
【比較例】
【0048】
本比較例の耐熱鋼材料は、質量百分率で計算して、Cr:28%、Co:15%、Ti:2.7%、Al:1.3%、W:7%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.07%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0049】
本実施例の製造方法は、以下のステップを含む。
【0050】
1)原料を調製するステップ:成分は、質量百分率で計算して、Cr:28%、Co:15%、Ti:2.7%、Al:1.3%、W:7%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Nb:0.5%、C:0.07%、Fe:0.5%、マージンNiを含む。
【0051】
2)製錬ステップ:セラミックるつぼと調製した原料とを同時に真空製錬炉の内部に入れ、真空誘導炉を使用して1.0×10-4MPa以下の真空度で、調製した合金を合金母液に製錬し、合金母液が凝固すると、同時に電気アークを用いてセラミックるつぼを低電力で予熱する。合金が完全に凝固してインゴットになった後、それを予熱したセラミックるつぼの内部に移動させ、合金インゴットと銅るつぼとが接触しないようにすることによって、その冷却速度が高すぎることを防止する。
【0052】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後インゴットを10℃/minの速度で1050℃に加熱して30分間保温し、5℃/minの速度で1200℃に昇温した熱処理炉の内部で継続して24時間保温し、最後に室温まで冷却し、超合金インゴットを得る。
【0053】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%~70%で、各バス変形量を15%~25%範囲内に制御し、変形温度が1100℃~1170℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0054】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minの速度で1120℃に加熱して4時間保温し、再結晶処理を行い、空冷した後に760℃で8時間保温し、その後860℃に昇温させ2時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
【0055】
比較例で製造された合金の室温および850℃の降伏強度は、それぞれ855MPaおよび572MPaであり、850℃の高温煙道ガスで500時間腐食した後の重量変化は0.12 mg/cmである。
【0056】
図1図2図3および図4を参照すると、実施例1の2つの合金と比較例との比較から、本発明の合金は、850℃で優れた構造安定性を有し、高温での熱暴露期間にTCP相析出がないことが分かる。
【0057】
本発明により製造された合金マトリックスは、平均結晶粒サイズが約30~70ミクロンであり、微細なサイズの析出相が結晶粒の内部に均一に分散して分布されたFCC構造を備える。合金は優れた耐食性および強度性能を備え、その室温および850℃の高温降伏は750MPaおよび500MPa以上である。また、合金の重量増加は、850℃の煙道ガス腐食環境下で100時間後に0.3 mg/cmを超えない。
【実施例3】
【0058】
1)合金の調製:合金組成は、質量百分率に関して、Cr:26%、Co:10%、Ti:3.5%、Al:1.0%、W:2%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:1.5%、C:0.03%、Fe:1.0%、マージンがNiである範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0059】
2)製錬ステップ:調製された合金を合金母液に製錬し、その後エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却することによって、合金母液をインゴットに凝固させた後、インゴット温度が900℃に達する前に、冷却速度が15℃/minを超えないように制御し、インゴット温度が900℃に達した後に、10℃/minを超える冷却速度で室温まで冷却する。合金母液がインゴットに凝固してから室温まで冷却されるまでの時間は15分を超えない。
【0060】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後インゴットを10℃/minを超えない昇温速度で室温から1030℃に加熱して30分間保温し、継続して5℃/minを超えない昇温速度で1170℃に昇温させ、熱処理炉の内部で22時間保温し、最後に室温まで冷却し超合金インゴットを得る。
【0061】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が50%で、各バス変形量を15%に制御し、変形温度が1100℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0062】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minを超えない昇温速度で室温から1110℃に昇温させ4時間保温し、再結晶処理を行い、室温まで空冷した後10℃/minを超えない昇温速度で室温から750℃に昇温させ9時間保温し、その後10℃/minを超えない昇温速度で870℃に昇温させ1.5時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
【実施例4】
【0063】
1)合金の調製:合金組成は、質量百分率に関して、Cr:27%、Co:12%、Ti:3%、Al:1.3%、W:3%、Si:≦0.5%、Mn:≦0.5%、Nb:1%、C:0.08%、Fe:0.07%、マージンがNiの範囲要件を満たし、うち、Ti/Al<2.5である。
【0064】
2)製錬ステップ:調製された合金を合金母液に製錬し、その後エレクトロスラグ再溶解プロセスを用いて精練および冷却することによって、合金母液をインゴットに凝固した後、インゴット温度が900℃に達する前に、冷却速度が15℃/minを超えないように制御し、インゴット温度が900℃に達した後に、10℃/minを超える冷却速度で室温まで冷却する。合金母液がインゴットに凝固してから室温まで冷却するまでの時間は15min超えない。
【0065】
3)均質化処理ステップ:インゴットを取出し、その後インゴットを10℃/minを超えない昇温速度で室温から1070℃に加熱して30分間保温し、継続して5℃/minを超えない昇温速度で1180℃に昇温させ、熱処理炉の内部で20時間保温し、最後に室温まで冷却し、超合金インゴットを得る。
【0066】
4)熱間圧延ステップ:総変形量が70%で、各バス変形量を25%に制御し、変形温度が1170℃の条件で、インゴットを圧延する。
【0067】
5)熱処理ステップ:圧延後の合金を、10℃/minを超えない昇温速度で室温から1130℃に昇温させて4時間保温し、再結晶処理を行い、室温まで空冷した後、10℃/minを超えない昇温速度で室温から770℃に昇温させて7時間保温し、その後10℃/minを超えない昇温速度で840℃に昇温させて2.5時間保温し、完了後に室温まで空冷する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】