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特表2022-536412「冷たい腫瘍」を標的とすることによるがんの治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-16
(54)【発明の名称】「冷たい腫瘍」を標的とすることによるがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220808BHJP
   C07D 401/04 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K31/7048
A61P37/02
C07D401/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573248
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020037521
(87)【国際公開番号】W WO2020252331
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/861,094
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508027464
【氏名又は名称】セルジーン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】アロンチック,イーダ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】フィルバロフ,エレン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC29
4C063DD10
4C063EE01
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086EA11
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(式(I)の化合物)またはその医薬的に許容される塩、およびリシン特異的脱メチル化酵素-1(LSD-1)の阻害に有用な化合物を含む医薬組成物を、必要な患者に投与することによる、がんまたは新生物疾患などの治療方法を提供する。さらに、本明細書に記載の組成物をRCOR2が発現している新生物細胞を有する患者に投与する方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療が必要な患者におけるがんの治療方法であって、
(a)「冷たい腫瘍」と診断されるがん腫瘍を有する患者の同定;および
(b)式(I):
【化1】
の構造を有する化合物、またはその医薬的に許容される塩を、治療上有効量含む組成物の患者への投与
を特徴とする、方法。
【請求項2】
患者は、
(a)単一のチェックポイント阻害剤(CPI)治療が奏功しなかった者、CPI治療で最小限の応答しか見られなかった者、またはCPI治療による治療効果が得られなかった者であり;および
(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRESTコリプレッサー2(RCOR2)遺伝子発現の中央値よりも、相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する者である、
請求項1の方法。
【請求項3】
患者は、
(a)CPI治療が初めての者であり;および
(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRESTコリプレッサー2(RCOR2)遺伝子発現の中央値よりも、相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する者である、
請求項1の方法。
【請求項4】
RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位25%である、請求項2の方法。
【請求項5】
RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位10%である、請求項2の方法。
【請求項6】
(a)CPI治療には、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD1)治療および/またはプログラム死リガンド1(PD-L1)治療を含み;および
(b)患者のがん細胞が、高いRCOR2の遺伝子発現を示す、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)患者のがんが、「冷たい腫瘍」の特性を示し;および
(b)患者のがん細胞が、高いRCOR2の遺伝子発現を示す、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
「冷たい腫瘍」の特性が、
(a)腫瘍内へのCD8 T細胞の浸潤が少ないまたは無いこと;
(b)腫瘍内のT細胞の存在に基づいて、T細胞が活性化されていない、またはT細胞が除外されていることが示されること
により定義される、請求項7の方法。
【請求項9】
腫瘍内のT細胞の存在が、バルクRNAプロファイリングデータにおけるT細胞マーカーの遺伝子発現レベルにより測定または推定される、請求項8の方法。
【請求項10】
患者のがん細胞が、次の遺伝子、AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCKの1以上の遺伝子発現の増加を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法であって;ここで、遺伝子発現の増加とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較した増加である。
【請求項11】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約10%または少なくとも約15%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10の方法。
【請求項12】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、または少なくとも約35%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10の方法。
【請求項13】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または少なくとも約55%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10の方法。
【請求項14】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10の方法。
【請求項15】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約80%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10の方法。
【請求項16】
患者のがん細胞が、1以上のインターフェロン応答遺伝子の遺伝子発現の減少を示す、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、遺伝子発現の減少とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較した減少である。
【請求項17】
インターフェロン応答遺伝子が、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1から選択される、請求項16の方法。
【請求項18】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定したインターフェロン応答遺伝子の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%が遺伝子発現の減少を示す、請求項13または14の方法。
【請求項19】
(a)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤であり;および/または
(b)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1に対する可逆性アンタゴニストであり;および/または
(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1の可逆性阻害剤である、
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
LSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、その結果、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19の方法。
【請求項21】
脱メチル化ヒストン複合体によりLSD-1が阻害され、その結果、T細胞の浸潤が可能となり、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19または20の方法。
【請求項22】
LSD-1が、RCOR2と共に機能性タンパク質複合体を形成することを阻害され、その結果、T細胞の浸潤が可能となり、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19または20の方法。
【請求項23】
対象のがんが、高い非同義遺伝子変異量を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(a)患者を、治療上有効量の少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で同時に治療する;および/または
(b)患者を、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物、および少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で連続的に治療する;および/または
(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、さらに、少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物、
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(i)治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、および(ii)少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物を用いた組合せ治療により、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物単体またはCPI単体の投与と比較して、患者の生存率の増加および/または腫瘍増殖の遅延に繋がる、請求項24の方法。
【請求項26】
臨床的に公知の任意の方法によって測定する腫瘍増殖が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%遅延する、請求項25の方法。
【請求項27】
患者の生存率が、組成物単体および/または抗PDL1治療剤および/または抗PD1治療剤単体を投与した患者の示した平均生存期間と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%増加する、請求項25または26の方法。
【請求項28】
CPIが、
(a)ニボルマブ;
(b)ペムブロリズマブ;
(c)セミプリマブ;
(d)スパルタリズマブ;
(e)カムレリズマブ;
(f)シンチリマブ;
(g)チスレリズマブ;
(h)トリパリマブ;
(i)AMP-224;
(j)MEDI0680;
(k)デュルバルマブ;および
(l)チスレリズマブ
からなる群から選択される抗PD1治療剤である、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
CPIが、
(a)アテゾリズマブ;
(b)アベルマブ;
(c)デュルバルマブ;
(d)KN035;
(e)CK-301;
(f)CA-170;および
(g)BMS-986189
からなる群から選択される抗PDL1治療剤である、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(a)組成物は、さらに治療上有効量のエトポシドを含むか;または
(b)治療上有効量のエトポシドを含む別の組成物を投与する、
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
(a)組成物は、さらにシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択される、治療上有効量の白金製剤を適宜含んでもよいか;または
(b)シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から適宜選択される、治療上有効量の白金製剤を適宜含む別の組成物が投与される、
請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
患者が、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経膠腫、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、辺縁帯リンパ腫、膵臓がん、膵臓腺がん(PAAD)、膵管腺がん(PDAC)、膵神経内分泌腫瘍(PNET)、低悪性度神経膠腫(LGG)、頸部扁平上皮癌および子宮頸部腺がん(CESC)、精巣生殖細胞腫瘍(TGCT)、淡明細胞型腎細胞がん(KIRC)、乳頭状腎細胞がん(KIRP)、および食道がん(ESCA)からなる群から選択されるがんを有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
患者が、黒色腫、転移性非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、びまん性扁平上皮癌(CSCC)、根治目的手術または根治目的放射線治療を行っていない局所進行性CSCC、固形腫瘍およびリンパ腫、再発性または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、固形腫瘍および血液がんからなる群から選択されるがんを有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物が、少なくとも週に1回投与される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物が、毎日、隔日、3日に1回、4日に1回、5日に1回、週に1回、週に2回、週に3回、隔週、またはその他任意の適切な投与間隔で投与される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、注射用溶液の形態である、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、静脈内注射として投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、経口投与用に調製される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年6月13日出願の米国仮出願番号第62/861,094号に対する優先権を米国特許法第119条(e)の下に主張するものであって、その全てを参照により本明細書に組み込むものである。
【0002】
(技術分野)
本明細書に記載の実施態様は、良性および悪性腫瘍の両方を含む新生物疾患を治療する組成物、製剤、および方法を提供し、その治療にはリシン特異的脱メチル化酵素-1(LSD-1)阻害剤を投与することを特徴とする治療を含む。一部の態様において、LSD-1阻害剤は、RE1転写抑制因子(REST)コリプレッサー2(RCOR2)を上方調節する新生物細胞を有する対象を含む特定の患者集団の新生物疾患を治療するために投与される。
【背景技術】
【0003】
がん(例えば、基底細胞がん、再発性または難治性非ホジキンリンパ腫(NHL)、多形神経膠芽腫、退形成性星細胞腫、またはその他進行性固形腫瘍)を患う対象を治療する組成物、製剤、および方法に対する需要は残っている。
【0004】
多くのがんの治療法が過去20年間にわたって確立されてきているものの、現在の治療法で全てのがんが対処できるわけではない。有望ながん治療の1つに、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)の使用がある。CPI治療とは、がんの免疫治療の形態である。該治療では、免疫チェックポイントを標的とする。免疫チェックポイントは免疫ホメオスタシスを維持し、自己免疫を防ぐ。一部のがんは、免疫チェックポイント経路を活性化することで免疫監視を逃れ、抗腫瘍免疫応答を抑制する。チェックポイント阻害剤は、この免疫系の「ブレーキ」を開放することで腫瘍細胞の排除を促進させる。しかしながら、全てのがんがCPI治療に応答するわけではない。
【0005】
多くのがんにおいてCPIの臨床的価値は注目に値するものの、その応答率は低い(10~30%まで)。当該分野では、特に現在の療法では対処出来ないがん患者集団に対する新規な新生物疾患の治療方法が望まれている。本開示はこの需要を満たすものである。
【発明の概要】
【0006】
一部の態様において、本開示は、治療が必要な対象におけるがんの治療方法を示し、該方法は以下:(a)「冷たい腫瘍」と診断されるがん腫瘍を有する患者を同定する;および(b)該患者に式(I):
【化1】
の構造を有する化合物、またはその医薬的に許容される塩を治療上有効量含む組成物を投与することを特徴とする。
【0007】
一部の態様において、患者は、(a)単一のチェックポイント阻害剤(CPI)治療が奏功しなかった者、CPI治療に対して最小限の応答しか得られなかった者、またはCPI治療による治療の効果が見られなかった者であり;および(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRESTコリプレッサー2(RCOR2)遺伝子発現の中央値よりも相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する者である。
【0008】
一部の態様において、患者は、(a)CPI治療が初めての者であり;および(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRCOR2遺伝子発現の中央値よりも相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する。一部の態様において、RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位25%である。一部の態様において、RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位10%である。
【0009】
一部の態様において、(a)CPI治療には、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD1)および/またはプログラム死リガンド1(PD-L1)治療を含み;および(b)患者のがん細胞は高いRCOR2の遺伝子発現を示す。一部の態様において、(a)患者のがんは、「冷たい腫瘍」の特性を示し;および(b)患者のがん細胞はRCOR2の遺伝子を高く発現する。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特性は以下のように定義される:(a)腫瘍内へのCD8 T細胞の浸潤が少ないまたは無い;(b)腫瘍内にT細胞が存在しないことからT細胞が活性化されていないまたは除外されている。一部の態様において、腫瘍内のT細胞の存在は、バルクRNAプロファイリングデータのT細胞マーカーの遺伝子発現レベルにより測定または推定されている。
【0010】
一部の態様において、患者のがん細胞は、1以上の次の遺伝子の遺伝子発現の増加を示す: AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCK。ここで、遺伝子発現の増加とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較した増加である。
【0011】
一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約10%または少なくとも約15%が遺伝子発現において増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、または少なくとも約35%が遺伝子発現において増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または少なくとも約55%が遺伝子発現において増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%が遺伝子発現において増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約80%が遺伝子発現において増加を示す。
【0012】
一部の態様において、患者のがん細胞は、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較して、1以上のインターフェロン応答遺伝子の遺伝子発現の減少を示す。一部の態様において、インターフェロン応答遺伝子は以下から選択される: AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1。
【0013】
一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定したインターフェロン応答遺伝子の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%が遺伝子発現の減少を示す。
【0014】
一部の態様において、(a)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤であり; および/または(b)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1に対する可逆性アンタゴニストであり; および/または(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1の可逆性阻害剤である。
【0015】
一部の態様において、LSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、その結果、T細胞阻害を阻止することで抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、その結果、腫瘍増殖を遅らせるおよび/または腫瘍サイズを縮小させる。一部の態様において、脱メチル化ヒストン複合体がLSD-1を阻害し、それによりT細胞の浸潤が可能となり、その結果腫瘍増殖を遅らせるおよび/または腫瘍サイズを縮小させる抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となる。一部の態様において、LSD-1はRCOR2と機能性タンパク質複合体を形成することが阻害され、それによりT細胞の浸潤が可能となり、その結果腫瘍増殖を遅らせるおよび/または腫瘍サイズを縮小させる抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となる。
【0016】
一部の態様において、対象のがんは非同義遺伝子変異量が高い。一部の態様において、(a)患者は治療上有効量の少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で同時に治療され;および/または(b)患者は式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物、および少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で連続して治療され;および/または(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、さらに少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物である。
【0017】
一部の態様において、(i)治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、および(ii)少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物の治療剤の組合せは、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物単体またはCPI単体の投与と比較して、患者の生存率の増加および/または腫瘍増殖の遅延に繋がる。
【0018】
一部の態様において、臨床的に公知の任意の方法によって測定する腫瘍増殖は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%遅れる。一部の態様において、患者の生存率は、組成物単体および/または抗PDL1および/または抗PD1治療剤単体を投与した患者が示した平均生存期間と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%増加する。
【0019】
一部の態様において、CPIは、(a)ニボルマブ;(b)ペムブロリズマブ;(c)セミプリマブ;(d)スパルタリズマブ;(e)カムレリズマブ;(f)シンチリマブ;(g)チスレリズマブ;(h)トリパリマブ;(i)AMP-224;(j)MEDI0680;(k)デュルバルマブ;および(l)チスレリズマブからなる群から選択される抗PD1治療剤である。一部の態様において、CPIは、(a)アテゾリズマブ;(b)アベルマブ;(c)デュルバルマブ;(d)KN035;(e)CK-301;(f)CA-170;および(g)BMS-986189からなる群から選択される抗PDL1治療剤である。
【0020】
一部の態様において、(a)組成物はさらに治療上有効量のエトポシドを含む;または(b)治療上有効量のエトポシドを含む別の組成物が投与される。一部の態様において、(a)組成物は、さらに治療上有効量の白金製剤を含み、白金製剤は、適宜シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択され得るか;または(b)治療上有効量の白金製剤を含む別の組成物が投与され、ここで白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から適宜選択される。
【0021】
一部の態様において、患者は、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPVネガティブ頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経膠腫、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、辺縁帯リンパ腫、膵臓がん、膵臓腺がん(PAAD)、膵管腺がん(PDAC)、膵神経内分泌腫瘍(PNET)、低悪性度神経膠腫(LGG)、子宮頸部扁平上皮癌および子宮頸部腺がん(CESC)、精巣生殖細胞腫瘍(TGCT)、淡明細胞型腎細胞がん(KIRC)、乳頭状腎細胞がん(KIRP)、および食道がん(ESCA)からなる群から選択されるがんを有する。
【0022】
一部の態様において、患者は、黒色腫、転移性非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、びまん性扁平上皮癌(CSCC)、根治外科手術または根治放射線治療を行っていない局所進行性CSCC、固形腫瘍およびリンパ腫、再発性または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、固形腫瘍および血液がんからなる群から選択されるがんを有する。
【0023】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物は、少なくとも週に1回投与される。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物は、毎日、隔日、3日毎、4日毎、5日毎、週に1回、週に2回、週に3回、隔週、またはその他任意の適切な投与間隔で投与される。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、注射用溶液の形態である。
【0024】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、静脈内注射として投与される。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、経口投与用に調製される。
【0025】
前述の概要および以下の図の説明および詳細な説明は、例示および解説であり、請求する対象の詳しい説明を提供するためのものである。その他のこと、長所、および新規特徴は、本明細書下記の[図面の簡単な説明」および[発明を実施するための形態]から当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
特許または出願書類には、少なくとも1つのカラーで作成された図面を含む。カラー図面を含む本特許または公開特許公報のコピーは、申請および必要手数料の支払いにより庁から提供される。
【0027】
図1図1は、「冷たい」腫瘍と「熱い」腫瘍の特徴の比較であり、Ramos et al., "Mechanisms of Resistance to Immune Checkpoint Antibodies." Handb. Exp. Pharmacol. (Mar. 18, 2017)から再度作成した。
【0028】
図2図2は、本明細書に記載の方法で、免疫チェックポイント阻害剤として表される「CPI」と共に治療する好ましい患者集団を視覚的に明確に示した。ベン図は、小細胞肺がん(SCLC)腫瘍から得た免疫組織化学染色(IHC)の結果を基に、遺伝子RCOR2が高く発現する患者集団を示している。これはT細胞の存在量が少ない患者のサブセットであり、CPIへの応答が良好でない患者のサブセットである。
【0029】
図3図3は、本明細書に記載の方法で治療される好ましい患者集団を視覚的に明確に示した。図3は、RCOR2を高頻度で発現するか、または高い前神経スコアを有する好ましい患者集団をx軸で示し、CPI単体の治療に応答しない、T細胞の浸潤の少なさをy軸で示す。
【0030】
図4図4は、卵巣(1,583個の遺伝子)、膀胱癌(2,673個の遺伝子)、および黒色腫(1,617個の遺伝子)の各腫瘍タイプにおける、「冷たい」腫瘍の遺伝子の共通部分(遺伝子セット)を、「冷たい」腫瘍の変動遺伝子数で特定する遺伝子セットのエンリッチメント解析の結果を示す。OV(卵巣)=GBM前神経特性、神経新生特性、軸索誘導シグナル伝達、およびヘッジホッグシグナル伝達。BLCA(膀胱癌)=GBM前神経特性、神経新生特性、軸索誘導シグナル伝達、WNTシグナル伝達、およびエフリンAシグナル伝達。SKCM(黒色腫)=GBM前神経特性、神経新生特性、軸索誘導シグナル伝達、WNTシグナル伝達、およびエフリンAシグナル伝達。3つの腫瘍タイプ全てにわたって共通の、T細胞浸潤およびインターフェロン応答遺伝子に関する、特徴的なコア105個の前神経遺伝子が重複している。
【0031】
図5図5は、特徴的な前神経T細胞排除遺伝子が、正常な脳に濃縮されていることを示す。図5の色分け図は、105個の前神経T細胞排除遺伝子を示す(各横列は遺伝子、各縦列はGTExの正常組織サンプルである。色は、サンプル中の該遺伝子の相対的な発現量を示す)。
【0032】
図6図6Aは、がん細胞株百科事典(CCLE)から得られるがん細胞株のサブセットの「冷たい」腫瘍およびインターフェロン応答遺伝子の階層的クラスタ分析の色分け図を示す。図は「冷たい」遺伝子の特性を有するがん細胞株のサブセットが、「冷たい」腫瘍の遺伝子の発現が高く(図の左の赤いラインの遺伝子で著しい)、インターフェロン応答遺伝子の発現が低い(図の左の青いラインの遺伝子で著しい)ことを示す。これは、少なくとも培養がん細胞株中で、「冷たい」腫瘍の遺伝子の発現の高さと、インターフェロン応答遺伝子の発現の低さが関係することを示す証拠である。高低の表現は、他のサンプルまたはコントロールサンプルのセットと比較したものである。
【0033】
図7図6Bは、細胞株のCCLEデータセットにおける前神経排除対IFNG応答のグラフを示す。
【0034】
図8図7Aおよび7Bは、正常組織および腫瘍組織における、RCOR2(図7Bの青色)の発現および、LSD-1としても知られるKDM1Aの発現(図7Bの橙色)を示す。ほとんどの通常組織ではRCOR2の発現レベルは低く(図7A)、がん組織では発現レベルが高い(図7B)。対して、LSD1は、通常組織ではRCOR2よりは高く発現し(図7A)、がん組織では通常組織と比較すると控えめに発現する(図7B)。
【0035】
図9図8は、おおよそ3分の1のLUSCサンプルは特徴的な前神経遺伝子の発現が高く("排除特性が高い"とも言う)、IFNG応答遺伝子およびT細胞による発現遺伝子の発現が低いことを証明する色分け図を示す。各横列は遺伝子、各縦列はLUSCサンプルを示す。色は、サンプル中の該遺伝子の相対的な発現量を示す。高発現は赤、低発現は緑である。
【0036】
図10-11】図9Aおよび9Bは、様々な腫瘍組織タイプ(SCLC等)において、RCOR2がT細胞浸潤(図9A)およびIFNG応答(図9B)に反相関することを示す。
【0037】
図12-14】図10A、10B、および10Cは、3つのタイプのがん(SCLC(n=99)(図10A)、OV(n=430)(図10B)、およびLUSC(n=501)(図10C))の前神経特性およびIFNγ応答のグラフを示す。これらの色分け図は、様々な遺伝子の特性とそれらの遺伝子を比較した(負および正の)相関関係を示す。図中で最も強い負の相関関係は、前神経特性遺伝子とIFNG応答の免疫特性、ならびに前神経特性遺伝子と炎症応答の免疫特性である。
【0038】
図15図11は、SCLC中の様々な遺伝子の特性とそれらの遺伝子を比較した(負および正の)相関関係を示す色分け図である。この図は図10Aとは異なり、より多くの105個の特徴的な前神経遺伝子の20個の遺伝子のサブセットを用いて導かれるスコア標識されたSCLC 20を含む。SCLC 20は、免疫経路(炎症応答およびIFNG応答)に対して、RCOR2単体の免疫経路の相関関係よりも強い負の相関関係を示している。参考として、105個の特徴的な前神経遺伝子は免疫経路と最も強い負の相関関係があることも示されている。"SCLC 20"と表されるこれらの20個の遺伝子は、RCOR2と共発現する20個の遺伝子である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
I. 概要
過去数十年間にわたるCPI治療の誕生は、広範囲の腫瘍タイプにおけるがん治療を変化させた。治療の困難ながん組織において、新規な持続性のある臨床反応が見られていた。しかしながら、これらの有望な長期的奏功にもかかわらず、大多数の患者は一次抵抗性を示し、免疫チェックポイント阻害剤に応答しない。さらに、初めの治療に応答する多くの患者は、最終的に耐性を獲得し、再発する。自然耐性および獲得耐性は両方とも、がん細胞と免疫系間の複雑かつ絶え間ない相互作用の発展の結果である。
【0040】
腫瘍が適応免疫応答を誘起出来るかは、がん細胞を異物と認識するかにかかっている。遺伝子変異量(TMB)の高さによるネオアンチゲン発現の増加は、抗腫瘍免疫において重要な役割を果たす。PD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤に対する異なる腫瘍タイプの応答率は、それに対応するTMBに比例する傾向がある。しかしながら、TMBの似た腫瘍でもCPIへの応答は大きく異なり得り、免疫チェックポイント阻害剤への応答は複雑かつ不均一で、一貫性がないことを示しており、別のメカニズムが進行していることが示唆される。PD-L1発現の増加は免疫応答に相関しており、小細胞肺がんおよび尿路上皮癌におけるCPI治療のバイオマーカーとして用いられる。さらに、応答するがんでは、腫瘍に浸潤するリンパ球の数が増加することが示されている。Fares et al., American Society of Clinical Oncology Educational Book, 39:147-164 (2019)を参照のこと。
【0041】
がんの免疫治療の分野における最も挑戦的な課題の1つに、複雑な耐性メカニズムを理解し、耐性を克服し、効果的な組合せ治療を確立することがある。発生時期によって、耐性は患者が永遠に応答出来ない自然耐性であり得るか、または一定期間の応答後に起こる獲得耐性であり得る。さらに、耐性は腫瘍細胞に対して内因性か外因性かに分類され得る。内因性耐性は、がん細胞が免疫認識、細胞シグナル伝達、遺伝子発現、およびDNA損傷応答に関する経路を変える場合に見られる。外因性耐性は、T細胞活性化の過程を経て腫瘍細胞とは無関係に起こる。
【0042】
徐々に一部の腫瘍タイプがPD1/PD-L1チェックポイント阻害剤治療に対する耐性を獲得している。本明細書に記載の化合物は、LSD1を阻害し、それにより抗PD1剤への腫瘍応答性を増加させる。LSD1は、RCOR2との機能性複合体であるため、RCOR2の発現は、活性化LSD1を有する腫瘍の標識となり、特にCPIと組合せて投与される場合、本明細書に記載の化合物に応答することが期待される。
【0043】
本開示は、CPI耐性となった腫瘍を含む、「冷たい」腫瘍と称される腫瘍タイプを有し、本明細書に記載の化合物および製剤に反応する患者および患者集団を同定するための複数の標識の発見を説明するものである。
【0044】
腫瘍は、「熱い」もの(免疫細胞が浸潤している、または活性化している)または「冷たい」もの(免疫細胞浸潤が排除されている、または「免疫砂漠」)に分類され得る。多くの腫瘍タイプでは免疫細胞(例えばT細胞)の腫瘍への浸潤が前兆であり、チェックポイント阻害剤治療に対する応答への予測因子であり、適応T細胞治療を効果的に行うために必要である。その他の免疫細胞は一般に、腫瘍中のT細胞の存在量に相関する。腫瘍中のT細胞の量は、バルクRNAデータ中のT細胞マーカーの遺伝子発現により推定され得る。「熱い」腫瘍はT細胞などの免疫細胞の充足と関係している一方、「冷たい」腫瘍はT細胞などの免疫細胞の不足と関係している。Ramos et al., Handb. Exp. Pharmacol., 249:109-128 (2017)および図1を参照のこと。
【0045】
本明細書で詳述されている通り、「冷たい」腫瘍を確認するための複数の指標は、例えばインターフェロンの応答が低い特徴がある遺伝子、腫瘍免疫浸潤が少ないこと、特徴的な前神経排除遺伝子が多いこと、および/またはRCOR2発現が高いことなどにより特定される。一部の態様において、「低い」または「高い」とは、適当な実験的または臨床的コントロールとの比較をいう。さらに、「冷たい」腫瘍と診断された腫瘍を本明細書に記載の化合物(式(I)の化合物およびそのベシル酸塩)で治療することにより、これらの腫瘍に対する免疫細胞(例えばT細胞)の浸潤が促進されることが期待され、このことは特に「冷たい」腫瘍を有し、それ故T細胞浸潤の増加が必要な対象に有益であると期待される。
【0046】
本明細書に記載の方法のある態様において、本明細書に記載の1以上のがん患者集団は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)での治療に特によく応答すると期待される。
【0047】
一部の態様において、治療は、1以上のCPIと組み合わせられ、ここでがん患者集団は、(i)CPIに応答すると期待されない(ii)CPI治療が奏功しなかった(例えば、抗PD1、抗PD1、および/または抗PDL1が以前ほど効かない)、および/または(iii)高いRCOR2遺伝子発現プロファイルを示す患者と定義される。一部の態様において、治療は、1以上のCPIと組み合わせられ、ここでがん患者集団は、(i)CPIに応答すると期待されない(ii)CPI治療が奏功しなかった(例えば、抗PD1、抗PD1、および/または抗PDL1が以前ほど効かない)、および(iii)高いRCOR2遺伝子発現プロファイルを示す患者と定義される。一部の態様において、治療は、1以上のCPIと組み合わせられ、ここでがん患者集団は、(i)CPI治療が初めてである、(ii)高いRCOR2遺伝子発現プロファイルを示す、および(iii)T細胞浸潤が低いまたは検知出来ない(「冷たい」腫瘍を有する)患者と定義される。
【0048】
一部の態様において、がん患者集団は、(1)インターフェロンの応答が低い特性の遺伝子である、(2)免疫細胞の浸潤が少ない、(3)RCOR2遺伝子発現が高い、および/または(4)前神経特性遺伝子の発現が高いと診断される1以上のがん腫瘍を有する患者であると認識される。
【0049】
一部の態様において、本明細書に記載の1以上のがん患者集団は、特に化合物がCPIと組合せて投与された場合に、本明細書に記載の化合物を用いる治療に有効に応答すると期待される。
【0050】
II. 式(I)の化合物
一部の態様において、本開示は一般に治療が必要な患者のがんの治療方法であって、(a)本明細書に記載の「冷たい」腫瘍細胞を有するがん患者を同定し;(b)式(I):
【化2】
の構造を有する治療上有効量のLSD1阻害剤化合物、またはその医薬的に許容される塩(例えばベシル酸塩)を含む組成物を患者に投与することを特徴とする、方法を提供する。
【0051】
上記化合物の化学名は、4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルであり、化学式:C23H21F2N5O2、分子量:437.44、およびCAS番号:1821307-10-1である。4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリルは、米国特許US 9,255,097にて説明されている。
【0052】
別の態様において、LSD1阻害剤とは、式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩としても知られる)である。
【0053】
本明細書の方法は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、およびリシン特異的脱メチル化酵素-1(LSD-1)の阻害に有用な化合物を含む医薬組成物を用いた、再発性および/または難治性固形腫瘍(神経内分泌癌(NEC)など)および非ホジキンリンパ腫(NHL)などの治療方法を提供する。ある態様において、本明細書に記載の好ましいがん患者集団は、本明細書に記載の方法で治療される。
【0054】
式(I)の化合物は、米国特許第9,255,097号、2016年1月5日出願の米国出願番号14/988,022、2016年2月8日出願の米国出願番号15/018,814、および国際特許出願番号PCT/US2015/028635にて説明されており、それらの全ては2014年5月1日出願の米国出願番号61/987,354に対する優先権を主張するものであり、2015年11月5日出願の米国出願番号62/251,507にも述べられている。本明細書に記載の方法に用いられる化合物に関する背景技術は、米国特許第9,255,097号および第10,328,077号にて説明されている。これらの出願のそれぞれ全ての内容は、あらゆる目的のために具体的に参照により組み込まれる。
【0055】
一部の実施態様において、本開示の化合物は、生物サンプルに式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を接触させることで、生物サンプル中のLSD-1活性を阻害できる。一部の実施態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、生物サンプルにおけるヒストン-4リシン-3メチル化のレベルを調節できる。一部の実施態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、生物サンプル中のヒストン-3リシン-9メチル化のレベルを調節できる。
【0056】
特に、本明細書に記載の化合物がLSD1を阻害することで、抗PD1剤に対する応答が増大することが期待される。LSD1は、RCOR2との機能性複合体であるため、RCOR2の高発現は、活性化LSD1を有する腫瘍の標識になり、特にCPIと組み合わせて投与される場合、本明細書に記載の化合物に応答することが期待される。
【0057】
LSD1は、ポリアミンオキシダーゼおよびモノアミンオキシダーゼと構造の大部分が類似しており、アミノ酸同一性/ホモロジーを有し、それらの全て(すなわち、MAO-A、MAO-BおよびLSD-1)が、窒素-水素結合および/または窒素-炭素結合の酸化を触媒するフラビン依存性アミンオキシダーゼである。LSD1は、N末端SWRIMドメインも含む。選択的スプライシングにより2つのLSD1の転写バリアントが得られる。
【0058】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、重大なMAO-AまたはMAO-B抑制活性が欠如している。一部の実施態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、MAO-Aおよび/またはMAO-B抑制活性よりもLSD1抑制活性をかなりの程度阻害する。
【0059】
いかなる理論にもとらわれることを意図するものではないが、本明細書に記載の化合物がLSD1の発現を阻害するとは考えられない。
【0060】
III. 免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイントは、免疫系に元々備わっている多数の抑制経路をいい、これらは、正常な生理的条件下では、病原性感染症に対する応答に付随する組織損傷を最小限に抑えるために、自己免疫寛容の維持および末梢組織における生理学的免疫応答の持続時間および応答の大きさの調整において極めて重要である。しかしながら、免疫チェックポイントタンパク質の発現は、重要な免疫耐性および免疫逃避機構として、しばしば腫瘍により調整が乱される。
【0061】
多くの免疫チェックポイントがリガンド-受容体相互作用により開始されるため、それらは抗体により直ちに阻害されるか、またはリガンドまたは受容体の組み換えにより調整される。それ故、これらの経路の阻害は、治癒のための抗腫瘍免疫を活性化させる有望な手法であるように思われる。例えば、細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)抗体は、米国食品医薬品局(FDA)の認可が得られた、初めての免疫治療剤であった。別の免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤(例えばプログラム細胞死タンパク質1(PD1))を用いた予備的な臨床所見では、持続的な臨床反応をもたらす可能性を有し、抗腫瘍免疫を強化する、幅広く多様な可能性を示した。
【0062】
治療のために内因性抗腫瘍免疫を操作するため、T細胞があらゆる細胞内に存在するタンパク質由来のペプチドを選択的に認識する能力、(細胞障害性T細胞(CTL)とも知られるCD8陽性エフェクターT細胞による)標的細胞を直接認識し、攻撃する能力、ならびに(CD4陽性ヘルパーT細胞による)獲得および自然エフェクター機構を統合し、多様な免疫応答を調整する能力を有することから、免疫チェックポイント阻害を介したT細胞の活性化が主に注力されている。それ故、共刺激受容体のアゴニストまたは抑制性シグナルのアンタゴニストは、その両方が抗原特異的T細胞応答を増大させ、臨床試験において目下関心を集める物質である。
【0063】
表1. 免疫チェックポイントの標的リスト(以下に限定されない)
CPIの例には、以下に限らないが、抗PDL1剤および/または抗PD1剤が挙げられる。
【表1】
【0064】
現在承認済みまたは開発段階の免疫CPIには、以下に限らないが、YERVOY(登録商標)(イピリムマブ)、OPDIVOTM(ニボルマブ)、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)、トレメリムマブ、ガリキシマブ、MDX-1106、BMS-936558、MEDI4736、MPDL3280A、MEDI6469、BMS-986016、BMS-663513、PF-05082566、IPH2101、KW-0761、CDX-1127、CP-870、CP-893、GSK2831781、MSB0010718C、MK3475、CT-011、AMP-224、MDX-1105、IMP321、およびMGA271、ならびに表1に記載の免疫チェックポイントタンパク質を対象とする多くの他の抗体および/または融合タンパク質が挙げられる。チェックポイント阻害剤(CPI)に標的とされ得る一般的な免疫チェックポイントタンパク質には、以下に限らないがB7.1、B7-H3、LAG3、CD137、KIR、CCR4、CD27、OX40、GITR、CD40、CTLA4、PD-1、およびPD-L1が挙げられる。
【0065】
一部の態様において、CPI治療は、抗PD-1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3、抗B7.1、抗B7H3、抗B7H4、抗TIM3、抗VISTA、抗CD137、抗OX40、抗CD40、抗CD27、抗CCR4、抗GITR、抗NKG2D、および抗KIRの1つ以上から選択される。
【0066】
IV. 「冷たい」腫瘍の兆候
一部の態様において、好ましいがん患者集団とは、(1)インターフェロン特性が低い、(2)免疫細胞の浸潤が少ない、(3)RCOR2の発現が高い、および/または(4)前神経特性遺伝子の発現が高いと診断される、1以上の「冷たい」がん腫瘍を有するがん患者である。一部の態様において、好ましいがん患者集団は、RCOR2の発現が高いおよび/または前神経特性遺伝子の発現が高いと診断される1以上の「冷たい」がん腫瘍を有する患者と認識される。一部の態様において、好ましいがん患者集団は、RCOR2の発現を高く示すがんを有する患者と認識される。一部の態様において、好ましいがん患者集団は、前神経特性遺伝子の発現が高いがんを有する患者と認識される。一部の態様において、好ましいがん患者集団は、RCOR2の発現が高く、前神経特性遺伝子の発現が高いがんを有する患者と認識される。
【0067】
一部の態様において、好ましいがん患者集団は、同じ腫瘍タイプを有する他の患者の腫瘍のRCOR2遺伝子発現の平均値と比べてRCOR2の遺伝子発現が高いと診断される患者と認識される。一部の態様において、好ましいがん患者集団は、同じ腫瘍タイプを有する他の患者の腫瘍のRCOR2の遺伝子発現の中央値と比べてRCOR2の遺伝子発現が高いと診断される患者と認識される。一部の態様において、RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同じ腫瘍タイプを有する他の患者の腫瘍の発現の上位5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、または95%である。一部の態様において、RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同じ腫瘍タイプを有する他の患者の腫瘍の発現の上位50%である。
【0068】
一部の態様において、図2および3は、本明細書に記載の方法で治療する好ましい患者集団を視覚的に明確に示している。図2は、T細胞が多く、CPI単体の治療に応答する「熱い」腫瘍を有する患者集団と、一方で、T細胞の浸潤が低い/無く、CPI単体の治療には応答しない「冷たい」腫瘍を有する患者集団を示す。RCOR2の発現が高いがん細胞を有する患者は、LSD1阻害剤である式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)での治療により、効果を得うる。これはLSD1阻害剤がLSD1の可逆性アンタゴニストであり、T細胞を浸潤させ、それによりがん細胞に対するCPI(例えば抗PD1化合物)の活性が強められる効果が期待されるからである。同様に、図3の図表では、RCOR2特性の発現が高く、それ故T細胞の浸潤が低く、CPI単体の治療に応答しない、好ましい患者集団を示す。
【0069】
下記の実施例に述べるように、TCGA RNA配列データを用いて、T細胞排除(TCE)に関連する遺伝子を同定した(「冷たい」腫瘍)。様々な腫瘍タイプの「熱い」および「冷たい」腫瘍サンプルは、IO治療に対する応答率が異なり、データ上では多数の卵巣がん(OV、n=430)、膀胱癌(BLCA、n=411)、および黒色腫(SKCM、n=368)の患者に利用された。各腫瘍タイプのうち、サンプルをCD8A遺伝子単体の発現によりランク分けすると、第一四分位数の(発現が最も少ない)標識された「冷たい」腫瘍と、第四四分位数の(発現が最も多い)標識された「熱い」腫瘍に分類された。図4を参照のこと。(図4は、3つの腫瘍タイプにおける発現遺伝子の重複を示す。T細胞排除に関するコア105個の前神経特性遺伝子は、3つの腫瘍タイプ全てにわたって共通であることが判明した。)
【0070】
第一四分位数および第四四分位数のサンプル間の発現変動遺伝子解析では、各腫瘍タイプの2つの遺伝子セット(「熱い」遺伝子(例えば、「熱い」サンプルの発現が有意に高い遺伝子(CD8Aが高い))および「冷たい」遺伝子(例えば、「冷たい」サンプルの発現が有意に高い遺伝子(CD8Aが低い)))を特定した。パスウェイ解析および特定遺伝子解析を各遺伝子リストに対して実施すると、特徴的な105個の前神経T細胞排除遺伝子が複数の腫瘍タイプにわたって共通であった。それ故、3つの腫瘍タイプ(OV、BLCA、およびSKCM)全てにおいて、特徴的なコア105個の前神経遺伝子が見られた。図4を参照のこと。
【0071】
図5は、特徴的な前神経T細胞排除遺伝子が、正常な脳に濃縮されていることを示す。図5の色分け図は、105個の前神経T細胞排除遺伝子を示す(各横列は遺伝子、各縦列はGTExの正常組織サンプルである。色は、サンプル中の該遺伝子の発現の相対値を示す)。遺伝子の50%は脳で最も高く発現し、遺伝子の60%は他のGBMサブタイプ(TCGA、データ無し)と比較して前神経GBMで高く発現することを示す。図6Aは、がん細胞株のサブセットは、前神経特性の発現が高く、インターフェロン応答遺伝子の発現が低いことを示す色分け図を示し、図6Bは、前神経排除対IFNG応答のグラフを示す。
【0072】
図7Aは、KDM1A(LSD-1)は、RCOR2と比較して通常組織により多く発現することを示す。図7Bでは、がんのタイプが異なっても、LSD1よりRCOR2が多く測定されることを示す。
【0073】
表2. 「冷たい」腫瘍に関係する他の遺伝子は、ヒストンおよびDNAメチル化の制御に関係する。
【化3】
【0074】
105個の前神経特性遺伝子には、以下の105個の遺伝子が挙げられる: AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCK。105個の前神経特性遺伝子は神経膠芽腫(GBM)の前神経特性遺伝子に類似しており、175個の前神経遺伝子を含む。
【0075】
一部の態様において、特徴的な前神経遺伝子には、以下の141個の遺伝子が挙げられる: CASKIN1、CBX2、CHD7、CHRNB2、CHRNG、EFNB3、FREM2、KCNMB2、KDM1A、KDM5B、KIAA1549、KIF1A、LRP4、MEX3A、MSI1、NKAIN1、ONECUT2、OTUD3、RCOR2、RIMKLA、SBK1、SOCS7、TET3、TMEFF1、WNK2、ACVR2B、ADAM11、ADAMTS20、ALX3、ANKRD13B、ATP7B、B4GALNT4、C16orf3、C1orf192、CCDC108、CCDC150、CCDC169、CCDC181、CDH8、CECR2、CENPV、CNTNAP5、COL28A1、COL6A4P1、CTTNBP2、DNAH2、DNAJB7、EPO、FAM171A2、FAM183A、FAM227A、FAM84A、FAM86B2、FGD5P1、FGF12、FGFR3、FKBP6、FLJ13197、FLRT1、FLRT3、FSIP2、GAS2、GDF11、GOLGA6L10、GPR125、GPR98、GPX2、GUSBP9、HOXC13、HS6ST2、IGDCC3、IGSF11、IGSF5、IGSF9、INA、IRS1、ISM2、KC6、KIAA1804、KLHL11、KLHL23、LINC00470、LINC00622、LOC100379224、LOC100631378、LOC148709、LOC641515、LOC646903、LONRF2、LPHN3、MCIDAS、MED12L、MS4A8、MUM1L1、MYRF、NKPD1、NRG4、NXPH4、OCLM、PACRG、PANK1、PAR5、PARD6G、PCDHB11、PCDHGA1、PCDHGC4、PDIA2、PGAP1、PIANP、PLA2G4F、PLCB1、PLCE1、PNCK、PPFIA4、PPM1L、SAMD13、SEMA6A、SERPINB12、SIM2、SLC10A4、SLC30A10、SLC9A4、SLCO1A2、SOSTDC1、STOX2、SYT14、SYT2、TAS2R5、TMEM151B、TOX3、TRIM45、TTC23L、TTYH1、UBE2Q2P2、USP49、VN1R1、WDR72、WDR93、ZBTB12、ZNF663、およびZNF850。
【0076】
一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約10%または少なくとも約15%が遺伝子発現の増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、または少なくとも約35%が遺伝子発現の増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%が遺伝子発現の増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約85%が遺伝子発現の増加を示す。一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約90%が遺伝子発現の増加を示す。
【0077】
一部の態様において、本明細書で「SCLC 20」と呼ぶ前神経特性遺伝子のサブセットは、「冷たい」腫瘍タイプの指標として利用される。SCLC 20の前神経遺伝子は、RCOR2、NKAIN1、MSI1、CBX2、IGDCC3、GPC2、CECR2、KLHL23、TMEFF1、MEX3A、KIAA1549、FAM171A2、CENPV、INA、TMEM151B、KIF1A、SYT14、ONECUT2、KDM1A、およびCHRNB2が挙げられる。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特徴には、1以上のSCLC 20前神経特性遺伝子の発現が高いか、または増加していることが含まれる。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特徴には、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20のSCLC 20前神経特性遺伝子の発現が高いか、または増加していることが含まれる。一部の態様において、SCLC 20の発現は、コントロールサンプルと比較して高いか、または増加している。一部の態様において、コントロールサンプルには「冷たい」腫瘍細胞がない。
【0078】
一部の態様において、サブセット1と呼ばれる前神経特性遺伝子のサブセットは、RCOR2、MSI1、CBX2、IGDCC3、TMEFF1、MEX3A、KIAA1549、FAM171A2、KIF1A、KDM5B、SBK1、LRP4、TET3、CASKIN1、NKAIN1、KDM1A、CECR2、KLHL23、CENPV、TMEM151Bを含むか、またはこれらから成る。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の指標には、1以上のサブセット1の特徴的前神経遺伝子の発現が高くなっているか、または増加していることが含まれる。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の指標には、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、または20のサブセット1の特徴的前神経遺伝子の発現が高くなっているか、または増加していることが含まれる。一部の態様において、サブセット1の特徴的前神経遺伝子の発現が、コントロールサンプルと比較して高くなっているかまたは増加している。一部の態様において、コントロールサンプルは「冷たい」腫瘍細胞がない。
【0079】
一部の態様において、特徴的な各遺伝子のRNA配列から導かれる発現値は、例えばシングルサンプル遺伝子セットエンリッチメント解析(ssGSEA)[Barbie et al. (2009) Systematic RNA interference reveals that oncogenic KRAS-driven cancers require TBK1. Nature, 462: 108-112.]、GSVA Rパッケージ[Haenzelmann et al., (2013). "GSVA: gene set variation analysis for microarray and RNA-Seq data." BMC Bioinformatics, 14, 7. doi: 10.1186/1471-2105-14-7, [www.biomedcentral.com/1471-2105/14/7]]などの方法を用いて凝集複合スコアを作成するために、組合せて用いられる。一部の態様において、前神経特性が特徴の「冷たい」がん腫瘍とは、-0.05以上の凝集前神経ssGSEAスコアを有する腫瘍である。一部の態様において、前神経特性が特徴の「冷たい」がん腫瘍とは、少なくとも-0.05、少なくとも-0.06、少なくとも-0.07、少なくとも-0.08、少なくとも-0.09、少なくとも-0.1、少なくとも-0.15、少なくとも-0.2、少なくとも-0.25、少なくとも-0.3、少なくとも-0.35、少なくとも-0.4、少なくとも-0.45、少なくとも-0.5、少なくとも-0.55、少なくとも-0.6、少なくとも-0.65、少なくとも-0.7、少なくとも-0.75、少なくとも-0.8、少なくとも-0.85、少なくとも-0.9、または少なくとも-0.95の凝集前神経ssGSEAスコアを有する腫瘍である。一部の態様において、前神経特性が特徴の「冷たい」がん腫瘍とは、-0.05~-0.95、-0.05~-0.55、-0.55~-0.95、-0.1~-0.25、-0.25~-0.55、または-0.75~-0.95の間の凝集前神経ssGSEAスコアを有する腫瘍である。
【0080】
一部の態様において、凝集前神経ssGSEAスコアは下記のサブセットAのインターフェロン応答遺伝子を基に計算される。一部の態様において、凝集前神経ssGSEAスコアは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のサブセットAのインターフェロン応答遺伝子を基に計算される。
【0081】
一部の態様において、凝集前神経ssGSEAスコアは、下記の200個のインターフェロン応答遺伝子を基に計算される。一部の態様において、凝集前神経ssGSEAスコアは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の200個の下記のインターフェロン応答遺伝子を基に計算される。
【0082】
GSEAは、2つの明確に定められたサンプルのグループ間でセットを形成する、機能的に関与する遺伝子の協調挙動を評価するために設計された方法であって、この場合はRNA配列データに基づく。興味を引く"遺伝子リスト"ではなく遺伝子の完全な順位に基づいているため、GSEAは、機能的に関与する遺伝子の特定のセットにおいて、協調的に作動する小さな遺伝子発現変動を見つけるための感度がより強いことが示された。ssGSEAは、遺伝子セットエンリッチメントスコアを、遺伝子セットの内側および外側の遺伝子発現順位の経験累積的分布関数を正規化した差として、サンプル毎に計算できる。
【0083】
一部の態様において、一部の「冷たい」細胞株は、(1)前神経特性の発現、(2)SCLC 20前神経特性の発現、および/または(3)サブセット1の前神経特性の発現が高く、インターフェロン応答遺伝子の発現が少ない。
【0084】
インターフェロン応答遺伝子には、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1が挙げられる。
【0085】
一部の態様において、サブセットAと呼ばれるインターフェロン応答遺伝子のサブセットには、B2M、APOL6、CD86、IL15、IRF1、LCP2、CASP1、PSMB10、HLA-DMA、CD74、IL15RA、HLA-DRB1、FGL2、HLA-B、KLRK1、IL7、STAT4、CIITA、IL10RA、およびSAMD9Lが挙げられる。
【0086】
一部の態様において、インターフェロン応答遺伝子および/またはインターフェロン応答遺伝子のサブセットAの発現が少ないとは、シングルサンプル遺伝子セットエンリッチメント解析(ssGSEA)の凝集スコアが0.2未満のことである。一部の態様において、インターフェロン応答遺伝子および/またはインターフェロン応答遺伝子のサブセットAの発現が少ないとは、ssGSEAの凝集体スコアが、0.2未満、0.175未満、0.15未満、0.125未満、0.1未満、0.075未満、0.05未満、0.025未満、または0.001未満のことである。一部の態様において、インターフェロン応答遺伝子および/またはインターフェロン応答遺伝子のサブセットAの発現が少ないとは、ssGSEA凝集スコアが、0.001~0.2、0.001~0.175、0.001~0.15、0.001~0.125、0.001~0.1、0.001~0.075、0.001~0.025、0.025~0.2、0.025~0.175、0.025~0.15、0.025~0.125、0.025~0.1、0.025~0.075、0.025~0.05、0.05~0.2、0.05~0.175、0.05~0.15、0.05~0.125、0.05~0.1、0.05~0.075、0.075~0.2、0.075~0.15、0.075~0.1、0.1~0.2、0.1~0.175、0.1~0.15、0.1~0.125、0.125~0.2、0.125~0.175、0.125~0.15、0.15~0.2、0.15~0.175、および0.175~0.2の間であることである。
【0087】
一部の態様において、1以上のインターフェロン応答遺伝子の発現欠損とは、タンパク質発現およびRNAを決定する任意の方法で測定した結果、測定可能なタンパク質/mRNA(例えばAC124319.1)の発現が無いことを指す。
【0088】
一部の態様において、患者のがん細胞は、発現レベル測定箇所のインターフェロン応答遺伝子の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%の遺伝子発現の減少を示す。
【0089】
一部の態様において、好ましいがん患者集団は、1以上の腫瘍で免疫細胞浸潤が少ないと診断される1以上の「冷たい」腫瘍を有する患者として認識される。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、リンパ球の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、樹状細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、脊髄細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、NK細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、マクロファージの減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、T細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、CD8陽性T細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、CD4陽性T細胞の減少または欠如のことである。一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、CD4陽性/CD8陽性T細胞の減少または欠如のことである。
【0090】
一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、リンパ球、TIL、樹状細胞、脊髄細胞、マクロファージ、T細胞、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、および/またはCD8+/CD4陽性T細胞の減少または欠如のことである。
【0091】
一部の態様において、免疫細胞浸潤が少ないとは、1以上の腫瘍において免疫細胞浸潤の量が少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%減少することをいう。一部の態様において、減少量は、「熱い」または「冷たくない」コントロール腫瘍と比較して測定される。
【0092】
一部の態様において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とはCD4陽性リンパ球を指す。一部の態様において、TILとはCD8陽性リンパ球を指す。一部の態様において、TILとはCD4陽性リンパ球およびCD8陽性リンパ球の両方を指す。一部の態様において、TILとはCD4陰性T細胞を指す。一部の態様において、TILとはCD8陰性TILを指す。一部の態様において、TILとはCD4陰性/CD8陰性を指す。
【0093】
一部の態様において、腫瘍内の免疫細胞浸潤は、バルクRNAプロファイリングデータ内のT細胞マーカーの遺伝子発現レベルにより測定または推定される。一部の態様において、腫瘍内の免疫細胞浸潤は、細胞選別法により測定される。一部の態様において、免疫細胞浸潤は免疫組織化学染色により測定される。一部の態様において、免疫細胞浸潤は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)を利用した免疫組織化学染色により測定される。
【0094】
一部の態様において、好ましいがん患者集団は、RCOR2の発現が診断されるか、またはコントロール組織または「冷たくない」腫瘍と比較してRCOR2の発現が増加している、1以上の「冷たい」がん腫瘍を有する患者として認識される。RESTコリプレッサー2(CoREST2)としても知られるRCOR2は、「冷たい」腫瘍タイプに分布するT細胞排除遺伝子と最も大きく相関することが分かった。一部の態様において、通常組織に関しては、RCOR2は、脳で最も多く発現し、具体的には皮質、特に前神経神経膠芽腫で多く発現を示す。RCOR2-LSD1複合体は、ヒストンH3リシン4脱メチル化を制御することで知られる。
【0095】
一部の態様において、1以上の腫瘍が、コントロール組織と比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約300%、約400%、または約500%のRCOR2の発現の増加を示す。
【0096】
一部の態様において、RCOR2の発現は、(例えばRNAシークエンシングまたはQuantiGeneを用いた)バルクmRNA発現により測定される。一部の態様において、RCOR2の発現は、QuantiGeneを用いたバルクRNA発現により測定される。一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍とは、RCOR2 mRNAスコアが0.055超であることにより定義される。一部の態様において、RCOR2 mRNAスコアをコントロール遺伝子の幾何平均に正規化する。一部の態様において、RCOR2 mRNAスコアをSCLC細胞株のコントロール遺伝子:PPIB、GUSB、HPRT1の幾何平均に正規化する。一部の態様において、RCOR2ポジティブ腫瘍は、RCOR2 mRNAスコアが少なくとも0.055、少なくとも0.06、少なくとも0.065、少なくとも0.070、少なくとも0.075、少なくとも0.080、少なくとも0.085、少なくとも0.090、少なくとも0.095、少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2、少なくとも0.225、少なくとも0.25、少なくとも0.275、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、または少なくとも0.95であることにより定義される。一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍とは、RCOR2 mRNAスコアが0.055~0.95、0.055~0.1、0.1~0.95、0.1~0.5、0.25~0.95、0.25~0.5、0.5~0.95、0.5~0.75、0.75~0.95の間であることと定義される。
【0097】
一部の態様において、コントロール遺伝子とはハウスキーピング遺伝子(例えばGAPDH、ACTBなど)である。一部の態様において、コントロール遺伝子は、タンパク質発現、mRNAなどにおいて発現が高い、低いまたは変化がないことを相対的に決定するために利用される。
【0098】
一部の態様において、RCOR2の発現は、タンパク質発現(例えば免疫組織化学染色(IHC)または免疫蛍光測定法)により測定される。
【0099】
一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍とは、RCOR2タンパク質発現値(コアHスコア)が60超であることにより定義される。一部の態様において、RCOR2タンパク質発現値は、免疫組織化学染色で決定される。一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍は、RCOR2タンパク質発現値が少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、または少なくとも95を示す。一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍は、RCOR2タンパク質発現値が60~95、60~90、60~85、60~80、60~75、60~70、60~65、65~90、65~85、65~80、65~75、65~70、70~95、70~90、70~85、70~80、70~75、75~95、75~90、75~85、75~80、80~95、80~90、80~85、85~95、85~90、または90~95の間を示す。
【0100】
一部の態様において、Hスコア(0~300の範囲)は、各強度の値にその強度の細胞のパーセンテージを掛けた値の合計であり、腫瘍細胞で100%を占めるようにしたものである。
【0101】
Hスコアは(1+の%)*1+(2+の%)*2+(3+の%)*3で表される(0=負、1=弱、2=中程度、3=強)。一部の態様において、Hスコアとは、メジアンHスコアである。
【0102】
一部の態様において、RCOR2陽性の腫瘍とは、GAPDHでの発現量で規格化されたRNAシークエンシングから得られるRCOR2バルクmRNA発現値が-7.5(RCOR2 log2 TPM - GAPDH log2 TPM)より大きいものと定義される。TPMとは100万分の1の転写産物カウントである。
【0103】
V. 医薬組成物
ある態様において、本明細書に記載の方法で用いられる化合物は、式(I):
【化4】
の構造を有する化合物である。
【0104】
別の態様において、本明細書に記載の方法で用いられる化合物は、医薬的に許容される塩、例えば以下に限らないが、式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩としても知られる)である。
【0105】
一部の態様において、本開示の組成物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む、または本質的に含む。一部の態様において、本開示の組成物は、式(I)の化合物およびその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む、または本質的に含む。一部の態様において、本開示の組成物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む、または本質的に含む。一部の態様において、本開示の組成物は、式(I)の化合物およびその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む、または本質的に含む。
【0106】
その他の態様において、本明細書に記載の化合物は、例えば、REMINGTON: THE SCIENCE & PRACTICE OF PHARMACY(Gennaro, 21st Ed. Mack Pub. Co., Easton, PA (2005))に記述されるような、選択された投与経路および標準的な医薬基準に基づいて選択される、医薬的に適切または許容される担体(本明細書では医薬的に適切な(または許容される)賦形剤、生理学的に適切な(または許容される)賦形剤、または生理学的に適切な(または許容される)担体としても称される)と組み合わせられる。
【0107】
本明細書は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)と共に1以上の医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。許容される、または適切な担体(または賦形剤)とは、該担体が組成物の他の成分と適合し、組成物のレシピエント(すなわち対象)に有害でないものである。
【0108】
ある実施態様は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0109】
ある実施態様において、式(I)の化合物は、例えば、1以上のステップの合成方法において、他の有機低分子(例えば未反応中間体または生成された合成副生成物)の含有量が約5%未満、または約1%未満、または約0.1%未満である点で実質的に純粋である。
【0110】
一部の態様において、医薬組成物は経口投与用または注射投与用に製剤化される。一部の態様において、適切な経口投与形態には、例えば、錠剤、丸剤、小袋、またはハードあるいはソフトゼラチン、メチルセルロースあるいは消化管で容易に溶解する別の適切な物質のカプセルが挙げられる。一部の態様において、適切な注射投与形態は、本明細書に記載の1以上の化合物を含む注射用溶液である。一部の態様において、注射用溶液は、静脈内注射のための注射用溶液である。
【0111】
一部の実施態様において、適切な無毒固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが用いられる。(例えば、REMINGTON: THE SCIENCE & PRACTICE OF PHARMACY(Gennaro, 21st Ed. Mack Pub. Co., Easton, PA (2005)を参照のこと)。
【0112】
一部の態様において、(a)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤であり;および/または(b)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、LSD-1に対する可逆性アンタゴニストであり;および/または(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、LSD-1の可逆性阻害剤である。一部の態様において、LSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。一部の態様において、LSD-1は脱メチル化ヒストン複合体に阻害され、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。一部の態様において、LSD-1はRCOR2と共に機能性タンパク質複合体を形成することが阻害され、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。一部の態様において、対象のがんは非同義変異遺伝子を多く有する。
【0113】
一部の態様において、(a)組成物は、さらに治療上有効量のエトポシドを含むか;または(b)治療上有効量のエトポシドを含む別の組成物が投与される。一部の態様において、(a)組成物は、さらに治療上有効量の白金製剤を含み、ここで白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から任意に選択されるか;または(b)治療上有効量の白金製剤を含む別の組成物が投与され、ここで白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から任意に選択される。
【0114】
VI. 「冷たい」と診断される腫瘍の治療
一部の態様において、本開示は、がんの治療が必要な患者に、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を投与することを特徴とする、がんの治療方法を示す。本明細書に記載の全ての方法において、CPIがさらに対象に投与され得る。一部の態様において、治療が必要な患者とは、本明細書に記載の兆候:(1)RCOR2発現の増加、(2)インターフェロン応答特性遺伝子が少ない、(3)腫瘍免疫浸潤が少ないまたは皆無、および/または(4)前神経特性遺伝子が多いことによって同定される、1以上の「冷たい」腫瘍を有すると診断された患者である。一部の態様において、治療が必要な患者とは、RCOR2発現の増加および/または前神経特性の高い遺伝子によって同定される、1以上の「冷たい」腫瘍を有すると診断される患者である。
【0115】
一部の態様において、「冷たい」腫瘍を有する患者に式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することで、「冷たい」腫瘍が「熱い」腫瘍に変化する。一部の態様において、「冷たい」腫瘍から「熱い」腫瘍に変化すると、腫瘍内に免疫細胞浸潤が促され、腫瘍の成長の遅延、腫瘍の大きさ/体積の縮小、および/または腫瘍の破壊に繋がる。一部の態様において、「冷たい」腫瘍から「熱い」腫瘍に変化すると、元々CPI治療に対して無反応だった腫瘍タイプまたはCPI治療に対して反応しなくなった腫瘍タイプにおいても、1以上のCPI(例えばPD1)との併用治療が効果的になる。
【0116】
さらなる態様において、リシン特異的脱メチル化酵素-1(LSD-1)の阻害に有用な式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、およびそれらを含む医薬組成物を用いた、再発性および/または難治性固形腫瘍(神経内分泌癌(NEC)、褐色細胞腫、およびメルケル細胞がん等)および非ホジキンリンパ腫(NHL)などの治療方法を提供する。再発性とは、改善の期間後に、疾患が再発または疾患の徴候および症状が再発することをいう。難治性とは、治療に応答しない疾患または症状をいう。難治性がんとは、治療に応答しないがんであって、治療の初期に耐性を有し得るがんまたは治療中に耐性を得たがんをいう。
【0117】
がんおよび新生物疾患の例には、例えば、進行性固形腫瘍、再発性または難治性固形腫瘍(神経内分泌癌(NEC)および非ホジキンリンパ腫など)、多形性神経膠芽腫、退形成性星細胞腫、基底細胞がん、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、癌(SARC)、前立腺がん、および辺縁帯リンパ腫が挙げられる。
【0118】
一部の態様において、患者は、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、および辺縁帯リンパ腫からなる群から選択されるがんを有する。
【0119】
一部の態様において、患者は、黒色腫、転移性非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、びまん性扁平上皮癌(CSCC)、根治目的手術または根治目的放射線治療を行っていない局所進行性CSCC、固形腫瘍およびリンパ腫、再発性または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、固形腫瘍および血液がんからなる群から選択されるがんを有する。
【0120】
一部の態様において、細胞または対象者の遺伝子転写を制御する方法が記載され、該方法は、リシン特異的脱メチル化酵素-1を式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)に曝露することでリシン特異的脱メチル化酵素-1活性を阻害することを特徴とする。
【0121】
一部の態様において、細胞または対象者の脱メチル化を調節する、一般的な標的遺伝子または1以上の特定の標的遺伝子に対する方法が記載される。脱メチル化は、以下に限らないが、分化、増殖、アポトーシス、腫瘍形成、白血病誘発またはその他発がん性形質転換、脱毛、または性分化などの様々な細胞機能の制御を調節する。
【0122】
一部の態様において、本開示は、がん治療が必要な患者に対する治療方法を記載しており、がん患者が、(1)RCOR2発現の増加、(2)インターフェロン応答特性遺伝子が少ない、(3)腫瘍免疫浸潤が少ないまたは皆無、および/または(4)前神経特性遺伝子が多いことを示す細胞を含む「冷たい」腫瘍を有すると認識され、本開示の組成物を患者に投与することを特徴とする方法を記載する。一部の態様において、該組成物は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む。上記方法はさらにCPIを投与することを含み得る。
【0123】
一部の態様において、(1)RCOR2発現の増加、(2)インターフェロン応答特性遺伝子が少ない、(3)腫瘍免疫浸潤が少ないまたは皆無、および/または(4)前神経排除特性遺伝子が多いことを示すがん細胞を同定する方法は、がん細胞またはがん細胞を含むサンプルの単離を含む。一部の態様において、サンプルとは、血液サンプル、リンパ液サンプル、および/または組織サンプルである。一部の態様において、RCOR2発現、インターフェロン応答特性遺伝子、および/または前神経排除特性遺伝子の決定とは、(1)RCOR2、(2)インターフェロン応答特性遺伝子、および/または(3)前神経排除特性遺伝子をコードするmRNAの量の決定である。一部の態様において、RCOR2発現、インターフェロン応答特性遺伝子、および/または前神経排除特性遺伝子の決定とは、(1)RCOR2発現、(2)インターフェロン応答遺伝子特性遺伝子の遺伝子産物、および/または(3)前神経排除遺伝子特性遺伝子の遺伝子産物の量の決定である。一部の態様において、遺伝子産物とは、タンパク質である。
【0124】
一部の態様において、がんの治療が必要な患者の治療方法は、RCOR2をよく発現するまたはRCOR2をコードするmRNAの転写がよく起こるがん細胞を有するがん患者の同定、および治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物の患者への投与を特徴とする。上記方法は、さらにCPIを投与することを特徴とする。
【0125】
一部の態様において、がんの治療が必要な患者の治療方法は、インターフェロン応答特性遺伝子またはインターフェロン応答特性遺伝子をコードするmRNA転写の遺伝子産物の発現を示すがん細胞を有するがん患者の同定、および治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物の患者への投与を特徴とする。上記方法は、さらにCPIを投与することを特徴とする。
【0126】
一部の態様において、がんの治療が必要な患者の治療方法は、前神経特性遺伝子または前神経特性遺伝子をコードするmRNAの転写の遺伝子産物の発現を示すがん細胞を有するがん患者の同定、および治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物の患者への投与を特徴とする。上記方法は、さらにCPIを投与することを特徴とする。
【0127】
一部の態様において、がんの治療が必要な患者の治療方法は、「熱い」腫瘍または「冷たくない」腫瘍と比較して腫瘍免疫浸潤が少ないまたは皆無であることを示すがん細胞を有するがん患者の同定、および治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物の患者への投与を特徴とする。上記方法は、さらにCPIを投与することを特徴とする。
【0128】
一部の態様において、がん細胞とは、1以上の次のがん:肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、および辺縁帯リンパ腫である。
【0129】
一部の態様において、対象または患者は、CPI(例えば抗プログラム細胞死タンパク質1(PD1)治療)による1以上の治療が奏功していない。一部の態様において、対象または患者は、CPI(例えば抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)治療)による1以上の治療が奏功していない。一部の態様において、対象または患者のがんが治療または処置に応答しない場合、治療または処置は奏功しない。一部の態様において、対象または患者のがんが、元々治療または処置に応答するが、その後の治療においてがんの治療または処置に効果が無くなるかまたは大幅に効果が減少する場合、治療または処置は奏功しない。
【0130】
一部の態様において、CPIは、(a)ニボルマブ;(b)ペムブロリズマブ;(c)セミプリマブ;(d)スパルタリズマブ(e)カムレリズマブ;(f)シンチリマブ;(g)チスレリズマブ;(h)トリパリマブ;(i)AMP-224;(j)MEDI0680;(k)デュルバルマブ;および(l)チスレリズマブからなる群から選択される。一部の態様において、抗PDL1治療剤は、(a)アテゾリズマブ;(b)アベルマブ;(c)デュルバルマブ;(d)KN035;(e)CK-301;(f)CA-170;および(g)BMS-986189からなる群から選択される。
【0131】
一部の態様において、患者のがんは、「冷たい腫瘍」の特性を示す。一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せる。
【0132】
一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがん細胞は、RCOR2をよく発現するか、またはRCOR2をコードするmRNAのの転写がよく起こる。
【0133】
一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せる。一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがん細胞は、インターフェロン応答特性遺伝子またはインターフェロン応答特性遺伝子をコードするmRNAの転写の遺伝子産物の発現を示す。
【0134】
一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがん細胞は、前神経特性遺伝子または前神経特性遺伝子をコードするmRNAの転写の遺伝子産物の発現を示す。
【0135】
一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがん細胞は、「熱い」腫瘍または「冷たくない」腫瘍と比較して、腫瘍免疫浸潤が減少しているか、または検出不能である。
【0136】
一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがんは、1つ以上の「冷たい」腫瘍の特性を示す。一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがんは、2つ以上の「冷たい」腫瘍の特性を示す。一部の態様において、患者のがんは、単体のCPI治療に応答しないか、または最小限の応答を見せ、患者のがんは、3つ以上の「冷たい」腫瘍の特性を示す。
【0137】
一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特性は、腫瘍内にCD8 T細胞浸潤が少ないまたは皆無であることにより定義される。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特性は、腫瘍内のT細胞の存在に基づく、T細胞の非活性化状態またはT細胞の排除状態により定義される。一部の態様において、「冷たい腫瘍」の特性は、腫瘍内のCD8 T細胞浸潤が少ないまたは皆無であること、および腫瘍内のT細胞の存在に基づく、T細胞の非活性化状態またはT細胞の排除状態により定義される。
【0138】
一部の態様において、腫瘍内のT細胞の存在は、RNAプロファイリングデータまたはバルクRNAプロファイリングデータから得たT細胞マーカーの遺伝子発現レベルを測定または推定することにより決定される。
【0139】
一部の態様において、患者のがん細胞は、1以上の次の遺伝子: AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCKの発現の増加を示す。一部の態様において、上記遺伝子の発現の増加は、コントロール遺伝子の上記遺伝子の発現と比較したものである。
【0140】
一部の態様において、患者のがん細胞は、1以上の次の遺伝子: RCOR2、NKAIN1、MSI1、CBX2、IGDCC3、GPC2、CECR2、KLHL23、TMEFF1、MEX3A、KIAA1549、FAM171A2、CENPV、INA、TMEM151B、KIF1A、SYT14、ONECUT2、KDM1A、およびCHRNB2の発現の増加を示す。
【0141】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、列記された遺伝子の数の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の増加である。
【0142】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、列記された遺伝子の数の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の増加である。
【0143】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、列記された遺伝子の数の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の増加である。
【0144】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、または少なくとも約500%の増加である。
【0145】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、または少なくとも500%の増加である。
【0146】
一部の態様において、1以上の遺伝子の発現の増加とは、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、または約500%の増加である。
【0147】
一部の態様において、患者のがん細胞は、1以上のインターフェロン応答遺伝子の遺伝子発現の減少を示し、ここで遺伝子発現の減少とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較したものである。一部の態様において、インターフェロン応答遺伝子は、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM 21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1から選択される。
【0148】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答遺伝子の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の遺伝子発現の減少を示す。
【0149】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答遺伝子の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の遺伝子発現の減少を示す。
【0150】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答遺伝子の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の遺伝子発現の減少を示す。
【0151】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答の遺伝子発現において少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の減少を示す。
【0152】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答の遺伝子発現において少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の減少を示す。
【0153】
一部の態様において、患者のがん細胞は、インターフェロン応答の遺伝子発現において約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の減少を示す。
【0154】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤である。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、LSD-1に対する可逆性アンタゴニストである。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、LSD-1の可逆性阻害剤である。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤、LSD-1に対する可逆性アンタゴニスト、および/またはLSD-1の可逆性阻害剤である。
【0155】
一部の態様において、LSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。
【0156】
一部の態様において、脱メチル化ヒストン複合体によりLSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。一部の態様において、LSD-1はRCOR2と共に機能性タンパク質複合体を形成することが阻害され、それによりT細胞の浸潤が可能となり、CPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)が適用され、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる。
【0157】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、「冷たい」腫瘍と診断される腫瘍においてT細胞の浸潤が見られる。ここでT細胞浸潤とは、投与前またはプラセボ投与前と比較して、T細胞浸潤が少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%増加することである。
【0158】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、「冷たい」腫瘍と診断される腫瘍においてT細胞の浸潤が見られる。ここでT細胞浸潤とは、投与前またはプラセボ投与前と比較して、T細胞浸潤が少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、または少なくとも1000%増加することである。
【0159】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、「冷たい」腫瘍と診断される腫瘍においてT細胞の浸潤が見られる。ここでT細胞浸潤とは、投与前またはプラセボ投与前のT細胞浸潤と比較して、約10%、約25%、約75%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、または約1000%増加することである。
【0160】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、腫瘍増殖が阻害される。一部の態様において、腫瘍増殖の阻害とは、腫瘍増殖率の減少、腫瘍増殖の完全阻害、腫瘍拡大の減少、および/または腫瘍拡大の完全阻害である。
【0161】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、腫瘍サイズが縮小される。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、腫瘍サイズが少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%縮小する。
【0162】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、腫瘍サイズが少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%縮小する。
【0163】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDLI治療剤であり得る)CPIを投与することにより、腫瘍サイズが約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%縮小する。
【0164】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)の投与は、治療上有効量の少なくとも1つのCPIと同時に投与され、ここでCPIは抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る。
【0165】
一部の態様において、患者は、治療量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および治療上有効量の少なくとも1つのCPIを同時に投与され、ここでCPIは抗PDL1および/または抗PDI治療剤であり得る。
【0166】
一部の態様において、患者は、治療量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および治療上有効量の少なくとも1つのCPIを連続して投与され、ここでCPIは抗PDL1および/または抗PDI治療剤であり得る。
【0167】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物は、さらに少なくとも1つのCPIを含み、ここでCPIは抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る。
【0168】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、またはCPI単体を含む組成物の投与と比較して、(i)治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(ii)少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物を用いた組み合わせ治療により、患者の生存率の増加および/または腫瘍増殖の遅延に繋がる。
【0169】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、腫瘍増殖スピードが遅くなる。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、腫瘍増殖スピードが少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%遅くなる。
【0170】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、腫瘍増殖スピードが少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%遅くなる。
【0171】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、腫瘍増殖スピードが約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%遅くなる。
【0172】
一部の態様において、組成物単体および/またはCPI単体が投与された患者の平均生存期間と比較して、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、患者の生存期間が、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%長くなる。
【0173】
一部の態様において、組成物単体および/またはCPI単体が投与された患者の平均生存期間と比較して、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、患者の生存期間は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%長くなる。
【0174】
一部の態様において、組成物単体および/またはCPI単体が投与された患者の平均生存期間と比較して、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIの投与により、患者の生存期間は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%長くなる。
【0175】
一部の態様において、抗PD1治療剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMT-224、MEDI0680、デュルバルマブ、およびチスレリズマブからなる群から選択される。
【0176】
一部の態様において、抗PDL1治療剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、CA-170、およびBMS-986189からなる群から選択される。
【0177】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、およびCPIを含む組成物は、さらに有効量のエトポシドを含む。
【0178】
一部の態様において、必要な患者に、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIを含む組成物を投与することは、さらに有効量のエトポシドを投与することを含む。
【0179】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIを含む組成物は、さらに治療上有効量の白金製剤を含む。一部の態様において、白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択される。
【0180】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIを含む組成物が投与される患者は、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、および辺縁帯リンパ腫からなる群から選択されるがんを有する。
【0181】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(抗PD1治療剤および/または抗PDL1治療剤であり得る)CPIを含む組成物が投与される患者は、黒色腫、転移性非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、びまん性扁平上皮癌(CSCC)、根治目的手術または根治目的放射線治療を行っていない局所進行性CSCC、固形腫瘍およびリンパ腫、再発性または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、固形腫瘍および血液がんからなる群から選択されるがんを有する。
【0182】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物は、少なくとも週に1回投与される。
【0183】
一部の態様において、(a)患者は、治療上有効量の少なくとも1つのCPI(例えば抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を同時に投与される;および/または(b)患者は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物、および少なくとも1つのCPI(例えば抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を連続して投与される;および/または(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物は、さらに少なくとも1つのCPI(例えば抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む。
【0184】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)単体、またはCPI単体を含む組成物の投与と比較して、(i)治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)、および(ii)少なくとも1つのCPI(例えば抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物を用いた組み合わせ治療により、患者の生存率が増加および/または腫瘍増殖が遅延する。
【0185】
一部の態様において、臨床的に認知された任意の方法により測定する腫瘍増殖が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%遅延する。
【0186】
一部の態様において、組成物単体および/またはCPI単体が投与された患者の平均生存期間と比較して、患者の生存期間が約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%長くなる。
【0187】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物は、毎日、隔日、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回、週に2回、週に3回、隔週、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、1ヶ月に4回、隔月、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、またはその他任意の適切な投与間隔で投与される。
【0188】
一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物は、錠剤、丸剤、小袋、またはカプセル剤の形態で投与される。一部の態様において、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物は、経口投与用に調製される。
【0189】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩(例えばそのベシル酸塩)を含む組成物の投与量は、患者(例えばヒト)の状態、つまり、疾患のステージ、一般的な健康状態、年齢およびその他の要因により異なる。
【0190】
医薬組成物は、治療(または予防)する疾患に対して適当な方法で投与される。適当な投与量および適切な持続時間および投与頻度は、患者の症状、患者の疾患のタイプおよび重症度、活性成分の具体的な形態、および投与方法などの要因により決定される。一般に、適当な投与量および治療レジメンでは、治療および/または予防効果(臨床結果の向上:例えば完全または部分寛解率の向上、または無病期間および/または全生存期間の延長、または症状の重症度軽減)をもたらす十分な量の組成物を処方する。適当な投与量とは、一般に実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定される。適当な投与量は、患者の体格、体重、または血液量によって異なる。
【0191】
経口投薬量は一般に、約1.0mg~約1000mgの範囲であり、1日1~4回またはそれ以上の回数で投与される。
【0192】
VII. 定義
以下の定義は、本明細書を通して用いられる特定の用語の理解を促進するために記載される。
【0193】
特に定義されていない限り、本明細書で用いる専門用語および科学用語は、当業者に理解される一般的な意味を有する。当業者に公知の任意の適切な物質および/または方法論は、本明細書に記載の方法を用いて利用され得る。
【0194】
本明細書および添付の請求項で用いる単数形表現は、明確に記載されていない限り、複数の対象を含む。それ故、例えば、「薬剤」は複数の薬剤を含み、「細胞」は1以上の細胞(または複数の細胞)を指し、その当量は当業者などに公知である。ここで用いる範囲が物理的特性(例えば分子量)、または化学的特性(例えば化学式)である場合、その範囲および特定の実施態様のあらゆる組み合わせおよびサブコンビネーションが含まれることが意図される。
【0195】
用語「約」が数または数に関する範囲を指す場合は、示された数または数に関する範囲が、実験による変動の範囲内(または統計による実験誤差の範囲内)の近似値を意味し、場合によっては、数または数に関する範囲は、記載した数または数に関する範囲の1%~15%の間で変化する。用語「含む」(およびその関連用語:例えば「有する」または「包含する」)は、他の特定の実施態様、例えば本明細書に記載の任意の物質の組み合わせ、組成物、方法、または過程などの実施態様において、記載した特徴「から成る」または記載した特徴「を本質的に含む」ことを除外することを意図しない。
【0196】
本明細書で用いる用語「投与」は、投与の指示ならびに実際の投与、および治療対象者または他の者による物理的投与を含む。
【0197】
本明細書で用いるフレーズ「1以上の『冷たい』腫瘍と診断される」とは、下記の「冷たい」腫瘍の兆候を1以上の示す腫瘍または腫瘍を有する患者をいう: RCOR2発現が増加する、インターフェロン応答遺伝子特性を示す、前神経遺伝子特性を示す、および/または、腫瘍免疫細胞浸潤の低下を示す、あるいは腫瘍免疫細胞浸潤が検出されない。
【0198】
本明細書で用いる、「インターフェロン応答特性遺伝子」は、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM 21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1をいう。
【0199】
本明細書で用いる「インターフェロン応答特性サブセットA」は、B2M、APOL6、CD86、IL15、IRF1、LCP2、CASP1、PSMB10、HLA-DMA、CD74、IL15RA、HLA-DRB1、FGL2、HLA-B、KLRK1、IL7、STAT4、CIITA、IL10RA、およびSAMD9Lをいう。
【0200】
本明細書で用いる「前神経特性遺伝子」または「前神経特性」は、本明細書に記載の105個の遺伝子のリストおよび141個の遺伝子のリストを指す。特定のリストを指す場合、「105個の遺伝子リスト」または「141個の遺伝子リスト」が指定される。
【0201】
105個の前神経特性遺伝子を以下に列記する: K056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCK。
【0202】
141個の前神経特性遺伝子を以下に列記する: CASKIN1、CBX2、CHD7、CHRNB2、CHRNG、EFNB3、FREM2、KCNMB2、KDM1A、KDM5B、KIAA1549、KIF1A、LRP4、MEX3A、MSI1、NKAIN1、ONECUT2、OTUD3、RCOR2、RIMKLA、SBK1、SOCS7、TET3、TMEFF1、WNK2、ACVR2B、ADAM11、ADAMTS20、ALX3、ANKRD13B、ATP7B、B4GALNT4、C16orf3、C1orf192、CCDC108、CCDC150、CCDC169、CCDC181、CDH8、CECR2、CENPV、CNTNAP5、COL28A1、COL6A4P1、CTTNBP2、DNAH2、DNAJB7、EPO、FAM171A2、FAM183A、FAM227A、FAM84A、FAM86B2、FGD5P1、FGF12、FGFR3、FKBP6、FLJ13197、FLRT1、FLRT3、FSIP2、GAS2、GDF11、GOLGA6L10、GPR125、GPR98、GPX2、GUSBP9、HOXC13、HS6ST2、IGDCC3、IGSF11、IGSF5、IGSF9、INA、IRS1、ISM2、KC6、KIAA1804、KLHL11、KLHL23、LINC00470、LINC00622、LOC100379224、LOC100631378、LOC148709、LOC641515、LOC646903、LONRF2、LPHN3、MCIDAS、MED12L、MS4A8、MUM1L1、MYRF、NKPD1、NRG4、NXPH4、OCLM、PACRG、PANK1、PAR5、PARD6G、PCDHB11、PCDHGA1、PCDHGC4、PDIA2、PGAP1、PIANP、PLA2G4F、PLCB1、PLCE1、PNCK、PPFIA4、PPM1L、SAMD13、SEMA6A、SERPINB12、SIM2、SLC10A4、SLC30A10、SLC9A4、SLCO1A2、SOSTDC1、STOX2、SYT14、SYT2、TAS2R5、TMEM151B、TOX3、TRIM45、TTC23L、TTYH1、UBE2Q2P2、USP49、VN1R1、WDR72、WDR93、ZBTB12、ZNF663、およびZNF850。
【0203】
本明細書で用いる「対象」、「患者」または「個人」は、任意の対象、患者、または個人をいい、該用語は本明細書にて同義で用いられる。ただし、用語「対象」、「患者」および「個人」には、哺乳動物、および特にヒトを含む。「(それが)必要な」と共に用いられる場合、用語「対象」、「患者」または「個人」は、特定の症状または障害を有するまたはリスクがある、任意の対象、患者、または個人を意味する。
【0204】
本明細書で用いるフレーズ「治療上有効」または「有効」は、「用量」または「量」の文脈で用いる場合、投与される1つの化合物または複数の化合物が特定の薬理学的効果を与える用量または量を意味する。治療上の有効量は、当業者により治療上の有効量であると判断された量であっても、投与した対象に意図した効果を与えることにおいて常に効果的であるとは限らないことが強調される。便宜上、投与量の例が本明細書に記載される。当業者は、特定の症状または疾患を患う特定の対象を治療するために、本開示の方法に従って投与量を調節できる。治療上の有効量は、投与経路および剤形によって変化してもよい。
【0205】
用語「治療」、「治療する」またはそれに関する用語には、(i)1以上の特定の症状および/または(ii)特定の疾患の1以上の症状または影響の緩和、改善、または排除が含まれる。用語「予防」、「予防する」またはそれに関する用語には、(i)1以上の特定の症状および/または(ii)特定の疾患の1以上の症状または影響が進行する危険性の抑制、改善、または排除が含まれる。
【0206】
用語「4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル」は、以下の構造を有する式(I)の化合物をいう。
【化5】
【0207】
式(I)の化合物は、米国出願特許第9,255,097号にて説明されている。
【0208】
「医薬的に許容される塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。本明細書に記載の置換ヘテロ環式誘導体化合物の任意の1つの医薬的に許容される塩は、あらゆる医薬的に適切な塩を包含することが意図される。本明細書に記載の化合物の好ましい医薬的に許容される塩は、医薬的に許容される酸付加塩および医薬的に許容される塩基付加塩である。
【0209】
「医薬的に許容される酸付加塩」は、生物学的有効性および遊離塩基特性を有し、生物学的に望ましく、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、リン酸など)と形成される塩をいう。また、有機酸(例えば脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸など、および例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と形成される塩も含まれる。それ故、塩の例にはピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。また、アミノ酸塩(例えばアルギニン酸塩、グルコン酸塩、およびガラクツロン酸塩(例えば、Berge S.M. et al., Pharmaceutical Salts, J. Pharma. Sci. 66:1-19 (1997)参照))も検討される。一部の実施態様において、塩基化合物の酸付加塩は、当業者に周知の方法および技術に従って、遊離塩基を十分な量の所望の酸と反応させて得られる。
【0210】
「医薬的に許容される塩基付加塩」は、生物学的有効性および遊離酸特性を有する塩をいい、生物学的に望ましいものである。これらの塩は、遊離酸に無機塩基または有機塩基を付加することにより製造される。一部の実施態様において、医薬的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン(例えばアルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミン)と形成される。無機塩基由来の塩には、以下に限らないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基由来の塩には、以下に限らないが、一級、二級、および三級アミンの塩、天然置換アミン、環状アミンなどの置換アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられる。(Berge et al., supra.を参照のこと)
【0211】
本明細書で用いる、「治療」または「処置」または「緩和」または「改善」は、同義で用いられる。これらの用語は、効果的または所望の結果(以下に限らないが治療効果および/または予防効果など)を得るための方法をいう。「治療効果」とは、治療する原因疾患の根絶または改善を意味する。また、患者は原因疾患を患っているにも関わらず、患者において改善が観測されるような、原因疾患に関する1以上の生理学的症状の根絶または改善の治療効果がもたらされる。一部の実施態様において、組成物は、予防効果を得るために、ある疾患の診断がなされていなくても、特定の疾患の発病のリスクがある患者、または疾患の1以上の生理学的症状が報告されている患者に投与される。
【0212】
本明細書で用いる「非同義遺伝子変異量」とは、患者/対象の腫瘍ゲノム中の非同義変異塩基の総数を、全体のゲノムのMbで除したものである。非同義遺伝子変異量の高低は、同じタイプまたは分類の腫瘍を有する他の患者/対象の非同義遺伝子変異量と比較して決定される。それ故、高低の決定は実験的/臨床的コントロールとの相対値である。Fernandez et al., (2019), JCO Precis Oncol, 3:10.1200/PO/18.00400)を参照のこと。
【0213】
(実施例)
特に断りが無い限り、試薬および溶媒は市販の供給源から受け取ったものをそのまま用いた。無水溶媒およびオーブンで乾燥させたガラス容器を、湿気および/または酸素に敏感な合成変換に用いた。収量は最適化されていない。反応時間はおおよそであり、最適化されていない。特に断りが無い限り、シリカゲルでカラムクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。スペクトルはppm(δ)で与えられ、カップリング定数(J)はHertzで記載した。プロトンスペクトルでは、溶媒ピークを基準ピークとして用いた。
【0214】
実施例1
この実施例の目的は、以下の構造:
【化6】
を有する4-[2-(4-アミノ-ピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシ-フェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリミジン-4-イル]-2-フルオロ-ベンゾニトリル(式(I)の化合物)の製造方法を説明することである。
【0215】
N-[1-[4-(4-シアノ-3-フルオロフェニル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1-メチル-6-オキソピリミジン-2-イル]ピペリジン-4-イル]カルバン酸tert-ブチル(5.2g、9.44mmol)/EA(20mL)の溶液に、1N HCl/EA(30mL)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、表題生成物をHCl塩として得た(4.05g、88%)。1H NMR(400MHz、CD3OD): δ 1.77-1.79 (m, 2H), 2.02-2.04 (m, 2H), 2.99-3.04 (m, 2H), 3.26-3.00 (m, 1H), 3.38 (s, 3H), 3.73 (s, 3H), 3.73-3.75 (m, 2H), 6.67-6.68 (m, 1H), 6.84-6.95 (m, 2H), 7.12-7.14 (m, 1H), 7.24-7.36 (m, 1H) , 7.46-7.50 (m, 1H); C24H23F2N5O2 [M+H]理論値:452; 観測値: 452
【0216】
実施例2: T細胞排除特性および「冷たい」腫瘍のバイオマーカーとしてのRCOR2
この実施例の目的は、「冷たい腫瘍」のバイオマーカーとしてのRCOR2の機能性の評価である。上記マーカーは、がんの治療方法においてRCOR2発現の標的に用いられ得る。
【0217】
RNA配列データは、T細胞排除(TCE)に関連する遺伝子(「冷たい」腫瘍)を同定するために用いられた。「熱い」および「冷たい」腫瘍サンプルの範囲の腫瘍タイプは、IO治療に対する応答率が異なり、データ上では多数の卵巣がん(OV、n=430)、膀胱癌(BLCA、n=411)、および黒色腫(SKCM、n=368)の患者に利用された。各腫瘍タイプのうち、サンプルをCD8A遺伝子単体の発現によりランク分けすると、第一四分位数(発現が最も少ない)の標識された「冷たい」腫瘍と第四四分位数(発現が最も多い)の標識された「熱い」腫瘍に分類された。
【0218】
第一四分位数および第四四分位数のサンプル間の発現変動遺伝子解析では、各腫瘍タイプの2つの遺伝子セット(「熱い」遺伝子(例えば、「熱い」サンプルの発現が有意に高い遺伝子(CD8Aが高い))および「冷たい」遺伝子(例えば、「冷たい」サンプルの発現が有意に高い遺伝子(CD8Aが低い)))を特定した。パスウェイ解析および特定遺伝子解析を各遺伝子リストに対して実施すると、特徴的な105個の前神経T細胞排除遺伝子が複数の腫瘍タイプにわたって共通であった。それ故、3つの腫瘍タイプ(OV、BLCA、およびSKCM)全てにおいて、特徴的なコア105個の前神経遺伝子が見られた。
【0219】
特徴的な105個の前神経遺伝子には、以下の105個の遺伝子が挙げられる: AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCK。
【0220】
105個の前神経特性遺伝子は神経膠芽腫(GBM)の前神経特性遺伝子に類似しており、175個の前神経遺伝子を含む。「冷たい」細胞株のサブセットは、前神経特性の発現が高く、インターフェロン応答遺伝子の発現が低い。インターフェロン応答遺伝子には、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM 21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1が挙げられる。
【0221】
RCOR2は、「冷たい」腫瘍タイプにおけるT細胞排除遺伝子と最も高く相関することが分かった。さらに、通常組織に関しては、RCOR2は脳で最も多く発現し、具体的には皮質、特に前神経神経膠芽腫で多く発現する。さらに、RCOR2-LSD1複合体は、ヒストンH3リシン4脱メチル化を調節することで知られる。
【0222】
RCOR2および前神経特性の評価により、RCOR2および前神経特性は、IFNG応答におけるT細胞浸潤と反相関することが分かった。
【0223】
実施例3: 小細胞肺がん(SCLC)におけるRCOR2および前神経T細胞特性
本実施例の目的は、効果的ながん治療を最適化する方法として、小細胞肺がん(SCLC)中のRCOR2および前神経T細胞特性を標的とする能力を評価することである。
【0224】
小細胞肺がんにおいて、RCOR2は、T細胞浸潤(図9A)およびインターフェロンガンマ(IFNGまたはIFNγ)応答(図9B)と反相関する。SCLC中の発現相関関係を同定する色分け図において、前神経特性およびRCOR2は、IFNγ応答に対して強い反相関関係を示し(図10A)、前神経特性スコアは、一般には、RCOR2単体のみよりもさらに強い関係を示す。
【0225】
RCOR2共発現遺伝子に基づいた排除特性のサブセットは、RCOR2単体(図11)のみより強い反相関関係を有する。この減少特性遺伝子は、RCOR2、NKAIN1、MSI1、CBX2、IGDCC3、GPC2、CECR2、KLHL23、TMEFF1、MEX3A、KIAA1549、FAM171A2、CENPV、INA、TMEM151B、KIF1A、SYT14、ONECUT2、KDM1A、およびCHRNB2からなる。
【0226】
特定の実施態様は図示および記載されるが、これにより、以下の請求項で定義される、より広い態様の技術範囲から離れることなく、その変更および調整が当業者によりなされ得ると理解されるべきである。
【0227】
本明細書に記載の具体的な実施態様は、本開示で具体的に記載されていない、任意の1要素または複数の要素、1つの制限または複数の制限がない限り、適切に実施され得る。それ故、例えば、用語「含む」、「有する」、「含有する」などは、広範囲かつ無制限に理解されるものとする。さらに、本明細書で用いる用語および表現は、説明のための用語であって、制限のための用語として用いられるものではなく、これらの用語および表現の使用において、記載された特徴またはその一部の任意の同質物を除外する意図はなく、請求する技術の範囲内で様々な変更が可能であると認識される。さらにフレーズ「を本質的に含む」は、具体的に列挙される要素および請求する技術の基本的特徴および新規特徴に実質的に影響しない付随の要素を含むと理解される。フレーズ「からなる」は、具体的ではない任意の要素を除外する。
【0228】
本開示は、本出願に記載された特定の実施態様によって制限されるものではない。多くの変更版および変形版は、当業者に明らかなように、その発明の精神および範囲から離れることなく製造され得る。本明細書に列記された方法および組成物に加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および組成物は、前述の明細書から当業者に明らかである。その変更版および変形版は、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図される。本開示は、添付の請求項と、権利化される請求項に同等の物の全ての範囲の用語によってのみ制限される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、または組成物に限定されるものではなく、それらは当然変化し得るものと理解されるべきである。また、本明細書で用いられる専門用語は特定の実施態様を記載する目的のみであり、制限を意図するものではないと理解されるべきである。
【0229】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載される場合、当業者は、それによって本開示の任意の個々の要素または要素のサブグループがマーカッシュ形式で記載されることを認識する。
【0230】
当業者に理解されるように、あらゆる目的に対して、特に記載の説明を提供する観点から、本開示の全ての範囲は、あり得る全ての部分的な範囲およびその部分的な範囲の組み合わせも含み、その終点も含む。任意に列記された範囲は、少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに等しく分解した範囲を十分に説明および実現しているものと容易に認識され得る。以下に限らないが、本明細書に記載の各範囲は、容易に下部3分の1、中部3分の1および上部3分の1などに分割され得る。当業者に理解されるように、例えば「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの全ての用語は、引用した数字を含み、上記のように部分的な範囲に分割され得る範囲をいう。最終的な範囲には、当業者に理解されるように、それぞれの要素が含まれる。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療が必要な患者におけるがんの治療方法に用いる組成物であって、
(a)該組成物は、式(I):
【化1】
の構造を有する化合物、またはその医薬的に許容される塩を、治療上有効量含み;および
(b)該方法は、「冷たい腫瘍」と診断されるがん腫瘍を有する患者を同定し、該組成物を患者投与することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
患者は、
(a)単一のチェックポイント阻害剤(CPI)治療が奏功しなかった者、CPI治療で最小限の応答しか見られなかった者、またはCPI治療による治療効果が得られなかった者であり;および
(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRESTコリプレッサー2(RCOR2)遺伝子発現の中央値よりも、相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する者である、
請求項1に用いる組成物
【請求項3】
患者は、
(a)CPI治療が初めての者であり;および
(b)同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍のRESTコリプレッサー2(RCOR2)遺伝子発現の中央値よりも、相対的に高いRCOR2の遺伝子発現を示す腫瘍細胞を有する者である、
請求項1に用いる組成物
【請求項4】
RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位25%である、請求項2に用いる組成物
【請求項5】
RCOR2の遺伝子発現が高いのは、同腫瘍タイプを有する他の患者における腫瘍の発現の上位10%である、請求項2に用いる組成物
【請求項6】
(a)CPI治療には、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD1)治療および/またはプログラム死リガンド1(PD-L1)治療を含み;および
(b)患者のがん細胞が、高いRCOR2の遺伝子発現を示す、
請求項2~5のいずれか一項に用いる組成物
【請求項7】
(a)患者のがんが、「冷たい腫瘍」の特性を示し;および
(b)患者のがん細胞が、高いRCOR2の遺伝子発現を示す、
請求項1~6のいずれか一項に用いる組成物
【請求項8】
「冷たい腫瘍」の特性が、
(a)腫瘍内へのCD8 T細胞の浸潤が少ないまたは無いこと;
(b)腫瘍内のT細胞の存在に基づいて、T細胞が活性化されていない、またはT細胞が除外されていることが示されること
により定義される、請求項7に用いる組成物
【請求項9】
腫瘍内のT細胞の存在が、バルクRNAプロファイリングデータにおけるT細胞マーカーの遺伝子発現レベルにより測定または推定される、請求項8に用いる組成物
【請求項10】
患者のがん細胞が、次の遺伝子、AK056486、NKAIN1、FAM183A、SAMD13、LINC00622、CHRNB2、MEX3A、IGSF9、C1ORF192、CCDC181、OCLM、PPFIA4、PANK1、B4GALNT4、GAS2、MS4A8、MYRF、RCOR2、FLRT1、AK313893、NXPH4、BC073932、MSI1、CCDC169、FREM2、ATP7B、AF339817、AK124233、GPX2、PAR5、PLA2G4F、IGDCC3、GOLGA6L10、UBE2Q2P2、WDR93、PDIA2、CASKIN1、AK096982、TOX3、AK057689、C16ORF3、AK127378、EFNB3、DNAH2、ANKRD13B、SOCS7、RAMP2-AS1、FAM171A2、ADAM11、METAZOA_SRP_75、CBX2、ZNF850、LOC100379224、TTYH1、VN1R1、MEIS1-AS3、LONRF2、BC022892、KLHL23、AX747067、CCDC108、IRS1、KIF1A、FLRT3、SIM2、IGSF5、CECR5-AS1、FAM227A、AX747137、FGD5P1、ACVR2B、LOC646903、FGFR3、FLJ13197、SLC10A4、TTC23L、MCIDAS、GUSBP9、GPR98、SEMA6A、PCDHGC4、USP49、TMEM151B、AK125212、PACRG、AK123300、COL28A1、SOSTDC1、AK098769、FKBP6、DPY19L2P4、EPO、CTTNBP2、KIAA1549、TAS2R5、FAM86B2、DQ595103、CHD7、AK094577、WNK2、TMEFF1、AL390170、MUM1L1、HS6ST2、およびPNCKの1以上の遺伝子発現の増加を示す、請求項1~9のいずれか一項に用いる組成物であって;ここで、遺伝子発現の増加とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較した増加である。
【請求項11】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約10%または少なくとも約15%の遺伝子発現において増加を示す、請求項10に用いる組成物
【請求項12】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、または少なくとも約35%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10に用いる組成物
【請求項13】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または少なくとも約55%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10に用いる組成物
【請求項14】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10に用いる組成物
【請求項15】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定した遺伝子の少なくとも約80%が遺伝子発現において増加を示す、請求項10に用いる組成物
【請求項16】
患者のがん細胞が、1以上のインターフェロン応答遺伝子の遺伝子発現の減少を示す、請求項1~15のいずれか一項に用いる組成物であって、ここで、遺伝子発現の減少とは、コントロール遺伝子の遺伝子発現と比較した減少である。
【請求項17】
インターフェロン応答遺伝子が、AC124319.1、ADAR、APOL6、ARID5B、ARL4A、AUTS2、B2M、BANK1、BATF2、BPGM、BST2、BTG1、C1R、C1S、CASP1、CASP3、CASP4、CASP7、CASP8、CCL2、CCL5、CCL7、CD274、CD38、CD40、CD69、CD74、CD86、CDKN1A、CFB、CFH、CIITA、CMKLR1、CMPK2、CMTR1、CSF2RB、CXCL10、CXCL11、CXCL9、DDX58、DDX60、DHX58、EIF2AK2、EIF4E3、EPSTI1、FAS、FCGR1A、FGL2、FPR1、GBP4、GBP6、GCH1、GPR18、GZMA、HELZ2、HERC6、HIF1A、HLA-A、HLA-B、HLA-DMA、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-G、ICAM1、IDO1、IFI27、IFI30、IFI35、IFI44、IFI44L、IFIH1、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFITM2、IFITM3、IFNAR2、IFL10RA、IL15、IL15RA、IL18BP、IL2RB、IL4R、IL6、IL7、IRF1、IRF2、IRF4、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、ISG15、ISG20、ISOC1、ITGB7、JAK2、KLRK1、LAP3、LATS2、LCP2、LGALS3BP、LYSE、LYSMD2、1-MAR、METTL7B、MT2A、MEHFD2、MVP、MX1、MX2、MYD88、NAMPT、NCOA3、NFKB1、NFKBIA、NLRC5、NMI、NOD1、NUP93、OAS2、OAS3、OASL、OGFR、P2RY14、PARP12、PARP14、PDE4B、PELI1、PFKP、PIM1、PLA2G4A、PLSCR1、PML、PNP、PNPT1、PSMA2、PSMA3、PSMB10、PSMB2、PSMB8、PSMB9、PSME1、PSME2、PTGS2、PTPN1、PTPN2、PTPN6、RAPGEF6、RBCK1、RIPK1、RIPK2、RNF31、RSAD2、RTP4、SAMD9L、SAMHD1、SECTM1、SELP、SERPING1、SLAMF7、SLC25A28、SOCS1、SOCS3、SOD2、SP110、SPPL2A、SRI、SSPN、ST3GAL5、ST8SIA4、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、TAP1、TAPBP、TDRD7、TNFAIP2、TNFAIP3、TNFAIP6、TNFAIP10、TOR1B、TRAFD1、TRIM14、TRIM21、TRIM25、TRIM26、TXNIP、UBE2L6、UPP1、USP18、VAMP5、VAMP8、VCAM1、WARS、XAF1、XCL1、ZBP1、およびZNFX1から選択される、請求項16に用いる組成物
【請求項18】
患者のがん細胞が、発現レベルを測定したインターフェロン応答遺伝子の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%が遺伝子発現の減少を示す、請求項16または17に用いる組成物
【請求項19】
(a)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、リシン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD-1)の阻害剤であり;および/または
(b)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1に対する可逆性アンタゴニストであり;および/または
(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、LSD-1の可逆性阻害剤である、
請求項1~18のいずれか一項に用いる組成物
【請求項20】
LSD-1が阻害される場合、それによりT細胞の浸潤が可能となり、その結果、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19に用いる組成物
【請求項21】
脱メチル化ヒストン複合体によりLSD-1が阻害され、その結果、T細胞の浸潤が可能となり、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19または20に用いる組成物
【請求項22】
LSD-1が、RCOR2と共に機能性タンパク質複合体を形成することを阻害され、その結果、T細胞の浸潤が可能となり、抗PDL1および/または抗PD1治療が可能となり、腫瘍増殖の遅延および/または腫瘍サイズの縮小に繋がる、請求項19または20に用いる組成物
【請求項23】
対象のがんが、高い非同義遺伝子変異量を有する、請求項1~22のいずれか一項に用いる組成物
【請求項24】
(a)患者を、治療上有効量の少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で同時に治療する;および/または
(b)患者を、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物、および少なくとも1つのCPI治療(抗PDL1および/または抗PD1治療であり得る)で連続的に治療する;および/または
(c)式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、さらに、少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物、
請求項1~23のいずれか一項に用いる組成物
【請求項25】
(i)治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩、および(ii)少なくとも1つのCPI(抗PDL1および/または抗PD1治療剤であり得る)を含む組成物を用いた組合せ治療により、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物単体またはCPI単体の投与と比較して、患者の生存率の増加および/または腫瘍増殖の遅延に繋がる、請求項24に用いる組成物
【請求項26】
臨床的に公知の任意の方法によって測定する腫瘍増殖が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%遅延する、請求項25に用いる組成物
【請求項27】
患者の生存率が、組成物単体および/または抗PDL1治療剤および/または抗PD1治療剤単体を投与した患者の示した平均生存期間と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%増加する、請求項25または26に用いる組成物
【請求項28】
CPIが、
(a)ニボルマブ;
(b)ペムブロリズマブ;
(c)セミプリマブ;
(d)スパルタリズマブ;
(e)カムレリズマブ;
(f)シンチリマブ;
(g)チスレリズマブ;
(h)トリパリマブ;
(i)AMP-224;
(j)MEDI0680;
(k)デュルバルマブ;および
(l)チスレリズマブ
からなる群から選択される抗PD1治療剤である、請求項24~27のいずれか一項に用いる組成物
【請求項29】
CPIが、
(a)アテゾリズマブ;
(b)アベルマブ;
(c)デュルバルマブ;
(d)KN035;
(e)CK-301;
(f)CA-170;および
(g)BMS-986189
からなる群から選択される抗PDL1治療剤である、請求項24~27のいずれか一項に用いる組成物
【請求項30】
(a)組成物は、さらに治療上有効量のエトポシドを含むか;または
(b)治療上有効量のエトポシドを含む別の組成物を投与する、
請求項1~29のいずれか一項に用いる組成物
【請求項31】
(a)組成物は、さらにシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択される、治療上有効量の白金製剤を適宜含んでもよいか;または
(b)シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、およびサトラプラチンからなる群から適宜選択される、治療上有効量の白金製剤を適宜含む別の組成物が投与される、
請求項1~30のいずれか一項に用いる組成物
【請求項32】
患者が、肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、肺扁平上皮癌(LUSC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、HPV陰性頭頸部扁平上皮癌(HNSC HPV neg)、膀胱癌(BLCA)、膀胱尿路上皮癌、黒色腫、皮膚びまん性黒色腫(SKCM)、乳がん、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、卵巣がん(OV)、胃癌、胃腺がん(STAD)、肉腫(SARC)、神経膠腫、神経内分泌腫瘍、進行性固形腫瘍、前立腺がん、辺縁帯リンパ腫、膵臓がん、膵臓腺がん(PAAD)、膵管腺がん(PDAC)、膵神経内分泌腫瘍(PNET)、低悪性度神経膠腫(LGG)、頸部扁平上皮癌および子宮頸部腺がん(CESC)、精巣生殖細胞腫瘍(TGCT)、淡明細胞型腎細胞がん(KIRC)、乳頭状腎細胞がん(KIRP)、および食道がん(ESCA)からなる群から選択されるがんを有する、請求項1~31のいずれか一項に用いる組成物
【請求項33】
患者が、黒色腫、転移性非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、びまん性扁平上皮癌(CSCC)、根治目的手術または根治目的放射線治療を行っていない局所進行性CSCC、固形腫瘍およびリンパ腫、再発性または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、固形腫瘍および血液がんからなる群から選択されるがんを有する、請求項1~31のいずれか一項に用いる組成物
【請求項34】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物が、少なくとも週に1回投与される、請求項1~33のいずれか一項に用いる組成物
【請求項35】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む組成物が、毎日、隔日、3日に1回、4日に1回、5日に1回、週に1回、週に2回、週に3回、隔週、またはその他任意の適切な投与間隔で投与される、請求項1~33のいずれか一項に用いる組成物
【請求項36】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、注射用溶液の形態である、請求項1~35のいずれか一項に用いる組成物
【請求項37】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、静脈内注射として投与される、請求項1~36のいずれか一項に用いる組成物
【請求項38】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩が、経口投与用に調製される、請求項1~35のいずれか一項に用いる組成物
【国際調査報告】