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▶ レスピラ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-16
(54)【発明の名称】担体ベースの製剤及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20220808BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220808BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220808BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/18
A61K45/00
A61P11/08
A61K31/573
A61P11/00
A61P11/06
A61P31/00
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P37/04
A61P7/00
A61K9/72
A61K31/58
A61K31/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573279
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020036944
(87)【国際公開番号】W WO2020251983
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/859,423
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513143320
【氏名又は名称】レスピラ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESPIRA THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ダンフォース ピー.
(72)【発明者】
【氏名】タララ、トーマス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアーズ、ジェフリー ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA32
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB22
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC26
4C076CC31
4C076DD51A
4C076FF02
4C076FF32
4C076GG02
4C076GG04
4C076GG08
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA43
4C084MA57
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA612
4C084ZA66
4C084ZB09
4C084ZB21
4C084ZB31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086DA10
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA43
4C086MA57
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZB09
4C086ZB21
4C086ZB31
(57)【要約】
本願で提供されるのは、吸入用の乾燥粉末として投与され、患者の気道内(例えば、下気道へ)の改善された標的化を可能にする担体ベースの乾燥粉末製剤である。本願に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、肺の領域への製剤の標的化送達を促進し、気道の他の領域(例えば、URT)での沈着に対する製剤中の薬物の損失を低減する所望のサイズ及び衝突パラメータを有する。上記製剤を製造する方法、上記製剤を作製する方法、及び上記製剤をエアロゾル化して疾患を治療するために使用する方法も本願で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する極微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【請求項2】
極微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が1000nm未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
極微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が約300~700nmである、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
極微細なロイシン担体粒子が90%を超える結晶化度を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
薬物粒子が3μm未満の質量中央径を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
薬物粒子が約20nm~500nmの質量中央径を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
薬物粒子が90%を超える結晶化度を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
薬物粒子が90%を超えるアモルファス含有量を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
薬物粒子が、アルバータ理想化咽喉において、放出用量の90%を超える総肺沈着量を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
薬物粒子が1つ以上のコルチコステロイド、1つ以上の気管支拡張剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%を超える量が、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標):NGI)のステージ4、5、及び6の少なくとも1つに送達される、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【請求項13】
微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が1μm~5μmである、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
微細なロイシン担体粒子が90%を超える結晶化度を有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
薬物粒子が3μm未満の質量中央径を有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項16】
薬物粒子が90%を超える結晶化度を有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項17】
薬物粒子が90%を超えるアモルファス含有量を有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項18】
薬物粒子が1つ以上のコルチコステロイド、1つ以上の気管支拡張剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の製剤。
【請求項19】
薬物粒子が、アルバータ理想化咽喉において、放出用量の70%を超える総肺沈着量を有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項20】
担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%を超える量が、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標):NGI)のステージ3、4、及び5の少なくとも1つに送達される、請求項12に記載の製剤。
【請求項21】
担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法であって:
ロイシン及び第1の溶媒を含む水溶液を調製すること;
水溶液を乾燥させて、1000nm未満の空気力学的中央径(D)を有する極微細なロイシン担体粒子を生成すること;
極微細なロイシン担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成すること;
前記非溶媒と混和性である第2の溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製すること;
非溶媒中の極微細なロイシン担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と極微細なロイシン担体粒子の共懸濁液を形成すること;及び、
非溶媒を除去して、極微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成することを含み、接着混合物は、50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する方法。
【請求項22】
第1の溶媒が水、エタノール、又はそれらの組み合わせである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1の溶媒中のロイシンの固形分が0.4%w/w~1.8%w/wである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
水溶液を乾燥させて極微細なロイシン担体粒子を生成することが、噴霧乾燥によって行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
非溶媒が過フッ素化液体又はフルオロカーボン-炭化水素ジブロックである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
非溶媒が、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクチルエタン、ペルフルオロヘキシルブタン、又はペルフルオロヘキシルデカンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
薬物粒子が90%を超える結晶化度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
薬物溶液が懸濁液に滴下添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
共懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末を生成することによって非溶媒を除去することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
共懸濁液を凍結乾燥して乾燥粉末を生成することによって非溶媒を除去することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
極微細なロイシン担体粒子が、300nm~700nmの(D)及び0.01g/cm~0.30g/cmのタップ密度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
第2の溶媒が2-プロパノールを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
共懸濁液中の薬物溶液のブレンド均一性が2%未満の標準偏差を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
対象の疾患を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする対象に、有効量の請求項1又は12に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤を投与することを含み、担体ベースの乾燥粉末製剤は吸入を介して対象に投与される方法。
【請求項35】
担体ベースの乾燥粉末製剤がエアロゾルとして投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
担体ベースの乾燥粉末製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、単回投与吸入器、又は複数単位投与吸入器を使用して投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
担体ベースの乾燥粉末製剤が、
入口及び出口を有する分散チャンバーを含む吸入器を提供することによって投与され、分散チャンバーは、分散チャンバーの長手方向軸に沿って振動するように構成されたアクチュエータを含むとともに、
出口チャネルを通る空気流を誘導して、空気及び担体ベースの乾燥粉末製剤を入口から分散チャンバーに入れ、アクチュエータを分散チャンバー内で振動させて、出口から患者へ送達するために、出口からの担体ベースの乾燥粉末製剤の分散を助ける、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
対象に投与される担体ベースの乾燥粉末製剤の70%超が対象の肺に送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
担体ベースの乾燥粉末製剤の一部が対象の肺の末梢領域に送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
疾患が肺疾患である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
疾患が、慢性閉塞性肺疾患、喘息、間質性肺疾患、気道感染症、結合組織疾患、炎症性腸疾患、骨髄又は肺移植、免疫不全、びまん性汎細気管支炎、細気管支炎、又はミネラルダスト気道疾患のうちの少なくとも1つである、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、担体ベースの乾燥粉末製剤及びそのような製剤を調製及び使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、肺、特に小気道への送達を改善するための担体ベースの乾燥粉末製剤、そのような製剤を調製するための方法、及びそのような製剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気道は、口、喉頭、及び咽頭を含む上気道(URT)と、気管及び肺を含む下気道(LRT)の2つの主要な領域に分けられる。気道はまた、吸入された空気が濾過され、温められ、湿らせられる導管域(鼻、咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支、及び終末細気管支)と、ガス交換が発生する場所である呼吸域(呼吸細気管支、肺胞管、肺胞)とに細分される場合がある。肺内では、導管域は最初の16次気管支を含み、呼吸域は17~23次気管支を含む。
【0003】
URTへの粒子の不必要な沈着は、口や喉に(例えば、日和見感染症、嗄声)、及び体循環に有害事象を引き起こし得る。粒子が肺末梢に沈着するためには、粒子は最初にURT及び大気道での慣性衝突を迂回する必要があり、その後、吐き出される前に小気道又は肺胞に堆積する必要がある。ストークス数(Stk)は、粒子が担体ガスの流線からそれ、慣性衝突によって気道に沈着する確率を定義する。これは、式1で示される:
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、d、ρ、及びdは、それぞれ粒子の直径、密度、及び空気力学的直径であり、u及びμは、担体ガスの線速度及び動的粘度であり、Dは、エアスペースの直径に等しい特性長スケールである。体積流量Qは、線速度を概算するためによく使用される。積d Qは、「衝突パラメータ」と呼ばれる。衝突パラメータが大きいほど、粒子が慣性衝突によって沈着し、肺末梢に到達しない可能性が高くなる。
【0006】
慣性衝突によって捕捉されない粒子は、「重力沈降」と呼ばれるプロセスにより、重力の作用下で気道に沈降する可能性がある。球形粒子の最終沈降速度vは、式2で示される:
【0007】
【数2】
【0008】
ここで、gは重力による加速度である。粒子が重力沈降によって沈着する確率は、粒子の空気力学的直径の2乗に伴い、及び気道内での滞留時間が長くなるにつれて高くなる。
喘息及びCOPDの治療のために現在市販されている乾燥粉末吸入器は、粗いラクトース担体粒子と微粉化薬物粒子の接着混合物(ラクトースブレンド、LB)、又は微粉化薬物粒子の粗い球状化凝集体(SPH)のいずれかで構成されている。これらの2つの製剤技術には、共通点が1つある。それは、乾燥粉末吸入器からの放出後に、担体に付着したままの、又は粒子の球状化凝集体中の微粉化薬物粒子がURTに沈着することである。
【0009】
ラクトースブレンドの場合、薬物と担体との間の接着力は、粉末充填プロセスを通じて、及びその貯蔵寿命にわたって貯蔵中に接着混合物を維持するのに十分強力であるが(すなわち、入れ物の中で、微細な微粉化薬物粒子と粗い担体粒子との間の分離がない)、乾燥粉末吸入器からのエアロゾル化中に担体から薬物を分散させるのに十分弱いものでなければならない。残念ながら、これらの製剤中の薬物の分散は不十分であり、URTでは放出用量の50~90%が失われる。慣性衝突はまた、大気道における有意な薬物沈着に寄与し、薬物のわずか5%~15%が肺末梢領域に到達する。
【0010】
成人のURTにおける衝突パラメータと沈着との間の経験的関係は、単分散エアロゾルに関してStahlhofenら(非特許文献1)によって確立された。衝突パラメータの関数としての単分散エアロゾルのURT沈着の実験データを図1にプロットし、データへの経験的適合は次の式3で示される:
【0011】
【数3】
【0012】
予想通り、d Qの増加は、対応するURT沈着の増加をもたらす。図1の影付きの領域は、微粉化薬物粒子(SPH)及びラクトースブレンド(LB)製剤の球状化された凝集体を含む現在市販されている製品で観察されたURTにおける50~90%の平均沈着をもたらすd Q値の範囲を表す(d Q=1452~5286μmL分-1)。これらのタイプの製剤は、二峰性の粒度分布を示し、微細モードは遊離微粉化薬物を含み、粗モードはSPH中の凝集した薬物粒子、又はLBの粗い担体粒子に付着した薬物を含む。図1の影付きの領域内で、URT沈着は約5%から95%まで変動し、d Q値に関するURT沈着の最大変動は約1500μmL分-1から3000μmL分-1の間である。残念ながら、この領域では、LB及びSPH粒子を含む市販の乾燥粉末製品の衝突パラメータが低下する。Newman(非特許文献2)は次のように意見を述べた:
「患者は治療計画を完全に順守しているかもしれないが、吸入器が正しく使用されていないため、何の利益も得ていない。逆に、患者は完璧な吸入技術を持っているかもしれないが、吸入器が十分に頻繁に使用されていないため、何の利益も得ていない。」
アルブテロールを含む単分散液滴の局所沈着に対する衝突パラメータの影響が、ガンマシンチグラフィーで評価された(非特許文献3)。図2に示すように、URT沈着はd Qの増加とともに増加する。500μmL分-1未満のd Q値では、小気道を含む末梢肺送達(P+EXHと表示)の有意な増加が観察される。
【0013】
残念ながら、担体と微粉化薬物の接着混合物を含む従来の乾燥粉末製剤は、500μmL分-1未満の平均d Q値を達成できず、URT沈着をほぼ回避するために必要なd Q値(すなわち、約100μmL分-1のd Q)を大きく下回る。本開示は、乾燥粉末製剤をLRT、特に小気道に効果的に送達するための衝突パラメータの目標値を達成する乾燥粉末製剤、及び前記製剤を調製する方法に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Stahlhofen et al.J Aerosol Med.1989;2:285-308
【非特許文献2】Newman,Exp Opin Drug Deliv.2014;11:365-378
【非特許文献3】Usmani et al.Am J Respir Crit Care Med.2005;172:1497-1504
【発明の概要】
【0015】
本願で提供されるのは、医薬組成物を含む製剤を肺の気道に送達するための製剤及び方法である。
いくつかの実施形態において、50~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(mass median impaction parameter:MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する微細な担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する極微細な担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態において、50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する極微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態において、500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、この方法は:3μm未満の空気力学的中央径(D)を含む担体粒子を調製すること;非溶媒を担体粒子に添加して懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製すること;非溶媒中の担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と担体粒子の共懸濁液を形成すること;及び、非溶媒を除去して、担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成することを含み、接着混合物は、50~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法が提供され、この方法は:ロイシンを含む水溶液を調製するステップ;水溶液を乾燥させて、1μm~3μmの空気力学的中央径(D)を有する微細なロイシン担体粒子を生成するステップ;微細なロイシン担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成するステップ;非溶媒と混和性である溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製するステップ;非溶媒中の微細なロイシン担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と微細なロイシン担体粒子の共懸濁液を形成するステップ;及び、非溶媒を除去して、微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成するステップを含み、接着混合物は、500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法が提供され、この方法は:ロイシンを含む水溶液を調製するステップ;水溶液を乾燥させて、1000nm未満の空気力学的中央径(D)を有する極微細なロイシン担体粒子を生成するステップ;極微細なロイシン担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成するステップ;非溶媒と混和性である溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製するステップ;非溶媒中の極微細なロイシン担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と極微細なロイシン担体粒子の共懸濁液を形成するステップ;及び、非溶媒を除去して、極微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成するステップを含み、接着混合物は、50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、対象の疾患を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態において、この方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の有効量の担体ベースの乾燥粉末製剤を投与することを含み、担体ベースの乾燥粉末製剤は、吸入を介して対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】衝突パラメータの関数としてのURT沈着のグラフを示す(非特許文献1)。
図2】成人喘息患者における単分散アルブテロールエアロゾルのURT及び肺末梢における粒子沈着に対する衝突パラメータの影響を示す(非特許文献3より)。d=1.5、3、6μm;Q=30、60L/分。上に傾斜する線はURTである。下に傾斜する線はP+EXHである。
図3】成人被験者において目標衝突パラメータ及びURT沈着を達成するために必要な空気力学的直径及び体積流量を示す。
図4】本開示の態様による、沈殿したシクレソニド及び未処理の出発物質のX線粉末パターンを示す。
図5】本開示の態様による1、10、及び20%w/wのシクレソニドを含む粉末のX線粉末回折パターンのオーバーレイを示す。
図6】本開示の態様による、高い相対湿度(75%RH)への曝露前後のシクレソニド原薬、ロイシン担体粒子、及び5%シクレソニド/ロイシンブレンドのX線粉末回折パターンのオーバーレイを示す。
図7】本開示の態様による、シクレソニド/ロイシンブレンドのアッセイ及びブレンド均一性(アッセイの%RSD)のグラフを示す。
図8】本開示の態様による、1%及び5%のフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む粉末のX線粉末回折パターンのオーバーレイを示す。
図9】本開示の態様による、理想化小児咽喉(Idealized Child Throat:ICT)又はアルバータ理想化(成人)咽喉(Alberta Idealized(adult)Throat:AIT)を使用して測定された肺沈着量の流量依存性を示す。ICTを使用して高RH(25℃/75%RH)で測定されたデータを除いて、すべての測定は実験室の周囲条件(例えば、約20℃/40%RH)で行われた。
図10】本開示の態様による、1%シクレソニド/ロイシンブレンド及びベンチマーク疎水性担体、DSPC:CaClの吸湿等温線のグラフを示す。両方の等温線は25℃で測定された。
図11】本開示の態様による、CPIを含む様々なICS含有製剤についての肺標的化(すなわち、TLD/URT沈着の比)のプロットを示す。
図12】本開示の態様による、ICTモデルにおける3つのICS製剤についてのデバイス、小児の咽喉、及び肺における沈着を示す表を提供する。
図13A図13A~13Fは、本開示の態様による様々なICS製剤について、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標):NGI)(Copley Scientific、ミネソタ州ショアビュー)で生成された空気力学的粒度分布(aPSD)のグラフを示す。
図13B】同上。
図13C】同上。
図13D】同上。
図13E】同上。
図13F】同上。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本開示全体及び添付の特許請求の範囲において、文脈上別段の必要がない限り、「担体ベースの乾燥粉末製剤」、「担体ベースの乾燥粉末組成物」、「担体ベースの製剤」、及び「担体ベースの組成物」という言葉は互換的に使用される。
【0026】
本明細書で使用される「有効成分」、「治療的に有効な成分」、「活性剤」、「薬物」又は「原薬」は、医薬品の有効成分を意味し、これは医薬品有効成分(API)としても知られている。
【0027】
本明細書で使用される「固定用量の組み合わせ」は、特定の固定用量で利用可能な単一の剤形で一緒に処方される2つ以上の有効成分を含む医薬品を指す。
本明細書で使用される「担体フリー」製剤は、薬物及び賦形剤が同じ粒子中に存在する複合粒子製剤を指す。
【0028】
本明細書で使用される「担体ベースの」製剤は、担体粒子に付着した薬物粒子の相互作用混合物から構成される。
本明細書に記載の担体粒子を指す場合の「微細」という用語は、2.5μm~5μmの幾何学的直径を有する粒子を指す。微細な担体粒子は、一次担体粒子の場合1.0μm~3.0μmの空気力学的中央径(D)を有する。
【0029】
本明細書に記載の担体粒子を指す場合の「極微細」という用語は、0.5μm~2.5μmの幾何学的直径を有する粒子を指す。極微細な担体粒子は、一次担体粒子の場合100nm~1000nmの空気力学的中央径(D)を有する。
【0030】
本明細書で使用される「アモルファス」は、材料が分子レベルで長距離秩序を欠き、温度に応じて、固体又は液体の物理的特性を示し得る状態を指す。通常、このような材料は特徴的なX線回折パターンを示さず、固体の特性を示しながら、より正式には液体として説明される。加熱すると、固体から液体のような特性への変化が「ガラス転移」で発生する。これは通常、二次相転移として定義される。
【0031】
本明細書で使用される「結晶」は、材料が分子レベルで規則的な秩序化された内部構造を有し、定義されたピークを有する特有のX線回折パターンを示す固相を指す。このような材料は、十分に加熱されると液体の特性も示すが、固体から液体への変化は、相変化、通常は一次相転移(「融点」)によって特徴付けられる。本発明の文脈において、結晶性活性成分とは、85%を超える結晶化度を有する活性成分を意味する。特定の実施形態において、結晶化度は適切には90%よりも大きい。他の実施形態において、結晶化度は95%よりも大きい。他の実施形態において、結晶化度は10%未満、又は5%未満である。
【0032】
本明細書で使用される「薬物負荷」は、製剤の総質量における質量基準の有効成分のパーセンテージを指す。
本明細書で使用される「衝突パラメータ」は、空気力学的直径の二乗と体積流量の積、すなわち、d Qを指す。
【0033】
本明細書で使用される「質量中央径」又は「MMD」又は「X50」は、典型的には多分散粒子集団における、すなわち、ある範囲の粒径からなる、複数の粒子の中央径を意味する。本明細書で報告されているX50値は、文脈上そうでないことが示されない限り、レーザ回折(Sympatec Helos、ドイツ、クラウスタール=ツェラーフェルト)によって決定される。
【0034】
「幾何学的直径」又は「d」という用語は、単一粒子の幾何学的直径を指す。本明細書で使用される場合、幾何学的直径は、粒子の物理的幾何学的サイズである。説明したように、X50は、粒子の集合の幾何学的中央径を表す。粒子の「空気力学的直径」、「d」は、幾何学的直径に粒子密度の平方根を掛けたものに等しい。
【0035】
本明細書で使用される「タップ密度」又はρタップは、USP<616>の粉末のかさ密度及びタップ密度に記載されているように、方法Iと同様の方法で測定された。タップ密度は、注入されたかさ密度よりも粒子密度に近い近似値を表し、測定値は実際の粒子密度よりも約20%低くなる。
【0036】
本明細書で使用される「一次粒子の空気力学的中央径」又はDは、一次粒子を生成するのに十分な分散圧力(例えば、0.4MPa(4bar))でのレーザ回折によって決定されたバルク粉末の質量中央径(x50)、及びそれらのタップ密度、すなわち:
【0037】
【数4】
【0038】
から計算される。本開示では、「担体粒子の空気力学的中央径」という用語は、「一次粒子の空気力学的中央径」と互換的に使用され、同じ定義を有する。
本明細書で使用される「質量中央値空気力学的直径」又は「MMAD」は、典型的には多分散集団における複数の粒子の空気力学的中央値サイズを指す。「空気力学的直径」は、一般に空気中で粉末と同じ沈降速度を有する単位密度球の直径であり、したがって、その沈降挙動の観点から、エアロゾル化粉末又は他の分散粒子又は粒子製剤を特徴付けるための有用な方法である。空気力学的粒度分布(aPSD)及びMMADは、本明細書では、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標))(Copley Scientific)を使用して、カスケードインパクションによって決定される。大抵の場合、粒子が空気力学的に大きすぎると、肺の特定の領域に到達する粒子は少なくなる。粒子が小さすぎると、より多くの割合の粒子が吐き出される可能性がある。対照的に、dは単一粒子の空気力学的直径を表す。
【0039】
本明細書で使用される「質量中央値衝突パラメータ」又は「MMIP」は、典型的には多分散集団における、複数の粒子の質量中央値衝突パラメータを指す。MMIPは、サイズカットオフとは対照的に、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標))における衝突パラメータカットオフを利用する。
【0040】
本明細書で使用される「名目用量」又は「ND」は、非リザーバーベースの乾燥粉末吸入器の容器(例えば、カプセルやブリスター)に装填された薬物の質量を指す。NDは、計量された用量とも呼ばれる。
【0041】
本明細書で使用される「放出用量」又は「ED」は、作動後の吸入装置からの乾燥粉末の送達、又は粉末ユニットからの分散イベントの指標を指す。EDは、名目用量又は計量された用量に対する吸入器によって送達される用量の比率として定義される。EDは実験的に決定されるパラメータであり、患者の投薬を模倣したin vitroデバイス設定を使用して決定することができる。EDは、送達用量(DD)と呼ばれることもある。
【0042】
本明細書で使用される「総肺沈着量」(total lung dose:TLD)は、アルバータ理想化咽喉(AIT)にも理想化小児咽喉(ICT)にも沈着せず、代わりに乾燥粉末吸入器からの粉末の送達後、咽頭後のフィルターに捕捉された有効成分のパーセンテージを指す。AITは、平均的な成人対象の上気道の理想的なバージョンを表す。ICTは、平均的な小児(6~14歳)の上気道の理想的なバージョンを表す。データは、名目用量又は放出用量のパーセンテージとして表すことができる。AIT及びICTに関する情報、ならびに実験の設定の詳細な説明は、www.copleyscientific.comから得られる。AITモデル及び実験の設定については、Finlay,WH、及びAR Martinの“Recent advances in predictive understanding respiratory tract deposition(気道沈着の予測的理解における最近の進歩)”、Journal of Aerosol Medicine、Vol.21:189-205(2008)に詳しく説明されている。ICTモデル及び実験の設定については、次の文献に詳しく説明されている:Golshahi,L、ML Noga、及びWH Finlay、“Deposition of inhaled micrometer-sized particles in oropharyngeal airway replicas of children at constant flow rates(一定の流量での小児の口腔咽頭気道レプリカにおける吸入マイクロメートルサイズの粒子の沈着)”、Journal of Aerosol Science、Vol.49:21-31(2012);Golshahi,L、ML Noga、RB Thompson、WH Finlay、“In vitro deposition measurement of inhaled micrometer-sized particles in extrathoracic airways of children and adolescents during nose breathing(鼻呼吸中の小児及び青年の胸腔外気道における吸入されたマイクロメートルサイズの粒子のin vitro沈着測定)”、Journal of Aerosol Science、Vol.42:474-488(2011);及びGolshahi,L、R Vehring、ML Noga、WH Finlay、“In vitro deposition of micrometer-sized particles in extrathoracic airways of children during tidal oral breathing(周期性口呼吸中の小児の胸腔外気道におけるマイクロメートルサイズの粒子のin vitro沈着)”、Journal of Aerosol Science、Vol.57:14-21(2013)。TLDは、ガンマシンチグラフィーやPETなどの手法を使用してin vivoで決定することもできる。in vitro咽喉モデルで実施された測定値とin vivo沈着測定値との間には、良好な相関関係が確立されている。
【0043】
本明細書で使用される「微粒子画分」(FPF)は、空気力学的サイズが5μm未満である放出用量中の有効成分のパーセンテージを指す。空気力学的粒度分布(aPSD)は、本明細書では、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標))を使用して、カスケードインパクションによって決定される。ステージのグループ化(つまり、衝突パラメータ)に基づく微粒子画分が報告されることが多い。例えば、FPFS5-F(すなわち、ステージ5からフィルターまでのステージグループ)は、d Q<165μmL分-1の粒子を表す。
【0044】
本明細書で使用される「湿度指数」は、約40%の相対湿度(RH)での微粒子用量に対する75%RHでの微粒子用量の比を指す。
本明細書で使用される「衝突パラメータ」は、上気道における慣性衝突を特徴付けるパラメータを指す。パラメータはストークスの法則から導き出され、d Qに等しい。ここで、dは空気力学的直径であり、Qは体積流量である。
【0045】
本明細書で使用される「固形分」は、噴霧乾燥される液体溶液又は分散液に溶解又は分散された有効成分及び賦形剤の濃度を指す。
「一次粒子」又は「一次担体粒子」は、凝集したバルク粉末中に存在する最小の分割可能な粒子を指す。一次粒子の粒度分布は、高圧でのバルク粉末の分散及びレーザ回折による一次粒子の粒度分布測定によって決定される。一定のサイズが達成されるまで、分散圧力の増加に対するサイズのプロットが作成される。この圧力で測定された粒度分布は、一次粒子の粒度分布を表す。
【0046】
「Qインデックス」は、医薬品エアロゾルの流量依存性の尺度を提供する。Qインデックスのインパクターバージョンは、サイズカットオフとは対照的に、1kPaと6kPaの圧力降下間のステージグループ(例えば、FPDS4-F)の正規化された差分を利用する。Qインデックスが40%を超える医薬品は、流量依存性が高く、15%<Qインデックス<40%では流量依存性が中程度であり、15%未満では流量依存性が低いと見なされる(Weers及びClark、Pharm Res.2017;34:507-528を参照)。あるいは、Qインデックスは、AIT又はICT咽喉モデルを使用してin vitroで決定することができる。
【0047】
「約」という用語は、吸入性製剤の当業者が通常遭遇する数値の変動を指し、本明細書に記載の数値のプラスマイナス0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の変動を含む。
【0048】
本明細書全体及び添付の特許請求の範囲において、文脈上別段の必要がない限り、「含む」という語、又は「含み」などの変形は、記載された整数又はステップ、あるいは整数又はステップのグループを含むことを意味するが、他の整数又はステップ、あるいは整数又はステップのグループを除外しないものとして理解されるべきである。
【0049】
特に明記されていない限り、又は文脈から明らかでない限り、数値範囲にはエンドポイントとその間の任意の値の両方が含まれる。
詳細な説明
本開示は、製剤、製剤を調製する方法、及び吸入用の乾燥粉末として投与され、患者の気道内(例えば、下気道へ)の乾燥粉末エアロゾルの改善された標的化を可能にするそのような製剤を使用する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製剤は、肺の末梢領域(例えば、小気道)への製剤の標的化送達を促進し、気道の他の領域(例えば、URT)での沈着に対する製剤中の薬物の損失を低減する所望のサイズ及び衝突パラメータを有する。例えば、本明細書に記載の極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤は、URT(例えば、口、咽喉、頭)への沈着を回避し、乾燥粉末製剤を大気道及び小気道に送達することができるが、肺胞への沈着を制限する。このようにして、疾患、特に喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患の治療(すなわち、安全性と有効性)を改善するために、気道の特定の領域で薬物粒子の標的送達を達成することができる。
【0050】
小気道(すなわち、8次気管支以降を含む内径2mm未満の気道)が喘息及びCOPDの病態生理学的及び臨床的発現に実質的に寄与するという証拠が増えている。小気道は健康な被験者の気流に対する全体的な抵抗の10%未満しか寄与しないが、小気道は喘息及びCOPDの患者の気道閉塞の主要な部位である。小気道は、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症)でも重要な役割を果たす。小気道は、様々な病因によって引き起こされる細気管支の炎症を治療するための治療標的でもある。小気道への改善された送達はまた、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む様々な形態の肺高血圧症の治療のために、肺動脈の前毛細血管領域への血管拡張剤のより効果的な標的化を可能にし得る。
【0051】
従来の乾燥粉末製剤で観察されるURT沈着の極端な変動性により、患者は吸入器を適切に使用し、治療レジメンを完全に順守するかもしれないが、患者の口の軟組織に解剖学的特徴があり、咽喉が高いURT沈着をもたらすのであれば、受け取る薬剤は治療量以下となる可能性がある。肺送達(TLD)の効率を改善すると、投与量を減らしてオフターゲット効果を減らすだけでなく、作用部位への用量送達に関連する変動を減らすことができる。すべての患者で肺への効果的かつ標的化された用量送達を確実に達成するために、本開示で提供される改善された製剤の特徴は、より低いd及びd Q値を有する。いくつかの実施形態において、下気道内の改善された標的化は、小気道への改善された送達、難溶性薬物の制御放出、及びいくつかの難溶性又は透過性APIの全身送達の効率の上昇を可能にし、これらの特徴は現行の吸入製品に非常に熱望されている。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象への肺投与時に気道内の様々な領域への改善された標的化を示す担体ベースの乾燥粉末製剤を提供する。特に、本明細書に記載の極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤は、URTにおける不要な粒子沈着を減少させ、それにより、総肺沈着量(TLD)を増加させ、LRT及び肺の末梢領域(すなわち、小気道及び/又は肺胞)への粒子の標的化を改善する。本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、気道内の薬物沈着の精度を高め、特定の細胞又は受容体への標的化を改善し、それにより、URT薬物曝露及び悪影響を減少させながら、LRT内での吸入薬物送達の効率、精度、及び有効性を高める。さらに、本明細書に記載の方法は、薬物含有担体粒子及びそれらの吸入可能な凝集物を肺の末梢領域に効率的に送達するための特定のサイズ及び空気力学的特性を有する極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤を生成する。
【0053】
いくつかの実施形態において、コルチコステロイド、気管支拡張剤、又はそれらの任意の組み合わせの小粒子エアロゾルの利用可能性は、気道の特定の領域におけるより高い総肺沈着量及びより良好な末梢肺浸透を可能にする。下気道内の改善された標的化は、従来の乾燥粉末製剤と比較して、追加の臨床的利益(例えば、小気道における炎症のより効果的な治療)を提供し、用量送達の変動性を減少させ、オフターゲットの有害事象を減少させる。
【0054】
さらに、担体粒子と薬物粒子の従来のブレンドは、肺への効果的な送達のために、吸入中に担体粒子から薬物粒子を分離することを必要とする。この点で、従来のブレンドは、充填中及び貯蔵中は接着混合物が維持され、しかし吸入中は担体からの薬物の分離が達成されるるように、薬物粒子と担体粒子との間の接着力の微妙なバランスを達成しなければならない。そうしないと、ブレンドが吸入器又はURTに沈着し、気道に効果的に送達されない。対照的に、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、肺に高効率で送達されるために、担体粒子からの薬物粒子の分離を必要としない。サイズが小さいため、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、非常に強い粒子間接着力を有する。それにもかかわらず、驚くべきことに、担体粒子のD値が本明細書に記載の特定の範囲内にある限り、一次担体粒子及びそれらの凝集物は、URTでの沈着を回避して肺に沈着するのに十分に微細であることが発見された。したがって、担体粒子及び薬物粒子を含む粒子凝集体の強力な接着力は、担体ベースの乾燥粉末製剤の送達に悪影響を及ぼさない。本開示の担体ベースの製剤が、肺に送達されるために担体から薬物を外すことを必要としないという事実は、URTを通過した薬物のLRTへのほぼ定量的な送達を可能にする。
【0055】
さらに、薬物と担体との間の強力な接着力はまた、処理中又は貯蔵中に担体から薬物が分離する可能性を低減する。担体からの薬物の分離は、不十分な粉末の流れ、エアロゾル性能の低下、及び投薬の均一性の低下につながる可能性がある。本開示の担体ベースの配合物は、粒子の分離がほとんど又は全くない、優れたブレンド均一性を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、本開示はまた、TLDのかなりの部分を小気道に沈着させながら、URTにおける沈着を効果的に回避する吸入コルチコステロイド(ICS)を提供する。ICSの標的化の改善により、局所的及び全身的両方の有害事象の可能性が減少する。ICSに関連する有害事象は、治療への順守を不十分にし、喘息症状の制御を不十分にすることが多いため、これは小児喘息患者にとって特に重要である。
【0057】
粗い粒子は主にURTに沈着するのに対し、極微細な粒子は肺の末梢領域に沈着するという主張は、粒子沈着に対する吸気流量の重要な影響を無視している。背景技術欄で説明したように、URT及び大気道での粒子沈着は主に慣性衝突によって引き起こされ、衝突パラメータd Qは、空気力学的直径のみよりも気道の局所沈着を理解するためのより良い測定基準である。
【0058】
図3は、シュタールホーフェンの関係(式3)を別の方法で再プロットし、目標衝突パラメータ値(d Q)及び平均上気道(URT)沈着を達成するために必要な流量と空気力学的直径の組み合わせを詳しく説明している。したがって、成人対象において10%未満の平均URT沈着を達成するために、エアロゾル化されたとき、乾燥粉末製剤は、約400μmL分-1未満のd Q値を有するべきである。いくつかの実施形態において、2%未満のURT沈着を達成するために、d Q値は約150μmL分-1未満である。図2に示すように、d Q値<150μmL分-1を達成すると、末梢肺送達が大幅に増加すると予想される。NGIのステージ5からフィルターまで(S5-F)の乾燥粉末エアロゾルの沈着は、粒子の質量にd Q値<165μmL分-1を提供する。このように、このステージのグループ化は、末梢肺送達の優れたin vitroによる代替物を提供する。
【0059】
図3に示すように、150μmL分-1以下のd Q値をもたらすd及びQの組み合わせが存在する(図3の一番下の曲線によって与えられる)。例えば、約3L分-1の流量で7μmの粒子を吸入すると、150μmL分-1以下の目標d Qを達成できる。
【0060】
これは単一の粒子では可能かもしれないが、凝集した乾燥粉末粒子の大きな集団では、このような低流量から生成されるエネルギーは粒子をこの空気力学的サイズに効果的に分散させるには不十分であるため、これを達成することはありそうにない。もう一方の極端な例では、約1000L分-1の流量で吸入された0.4μmの粒子について、150μmL分-1のd Q値を達成できる。この規模の流量は、ポータブル乾燥粉末吸入器(DPI)を使用している対象者では達成できない。したがって、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する際には、実際に達成可能なd及びQ値の範囲を考慮する必要がある。
【0061】
図3の影付きの領域は、現在市販されているDPIに見られる4kPaの圧力降下時のQ値の範囲を表している。閉塞性肺疾患の対象者を含む対象者の約95%は、2kPa~6kPaの圧力降下を達成でき、パッシブDPIを介して快適に吸入した場合の中央値は約3kPa~4kPaである。影付きの領域内では、許容可能なd値の範囲がかなり狭くなる。ClとSのラベルが付いたグラフに描かれている特定の点は、それぞれ低抵抗のConcept1吸入器と高抵抗のSimoon(商標)吸入器の流量を表している。図3は、より高い抵抗の吸入器が、より高い値のdで同等のURT沈着を可能にすることを示す。モデリングシミュレーションでは、10秒間の息止めがない場合、約3μm未満dの粒子で粒子の吐き出しが増加することが示唆されている。したがって、より高い抵抗のデバイスは、義務付けられた息止め動作を行わない患者における粒子の吐き出しの可能性を最小限に抑えながら、低URT沈着を可能にし得る。
【0062】
肺を効果的に標的にするために、吸入装置は、粉末を流動化及び分散させて、放出用量の大部分がURT沈着を回避できるような粒径にする必要がある。これには、一次担体粒子と担体粒子の凝集体の両方が含まれる。例えば、2%未満のURT沈着を達成するための1つの方針は、平均d値が1.0μm~2.0μmの担体粒子の集合及び担体粒子凝集体に基づいている。これは、市販のSPH及びLB製剤で観察された二峰性粒度分布の平均d値の範囲(例えば、d約4.0μm~9.2μm)よりも著しく小さいため、新しい製剤戦略が必要である。
【0063】
静止状態では、乾燥粉末は薬物含有粒子の凝集体として存在する。現在のDPIの分散エネルギーは、微粉化された薬物を球状化粒子及び大きな担体粒子から完全に分散させるには不十分である。SPHとLBの両方では、これらの凝集体は吸入可能なサイズではないため、デバイスとURTにかなりの沈着が生じる。これは、これらのタイプの製剤に固有の制限であり、デバイスの設計だけでは克服できそうにない。このことは、Spinhaler(商標)が導入されてから約50年間、DPIでのURT沈着の減少に大きな進展がなかったことによってさらに証明されている。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示は、一次粒子及び担体粒子凝集体の両方が吸入可能であり続けるように、低い粒子密度を有する極微細な粒子を利用することによってURT沈着を最小化する担体ベースの乾燥粉末製剤を提供する。上記のようにバルク粉末の目標空気力学的直径が1.0μm~2.0μmの場合(URT沈着が2%未満の場合)、粒子凝集体が目標サイズを達成できるようにするには、一次粒子の空気力学的サイズを1.0μmより大幅に小さくする必要がある。本明細書で述べられるように、一次粒子の推定空気力学的直径Dは、式4に基づいていた:
【0065】
【数5】
【0066】
ここで、x50は、レーザ回折装置を使用して高分散圧で得られた一次粒子の質量中央径であり、ρタップはバルク粉末のタップ密度である。タンパク質治療薬を含む無担体製剤の場合、D値が300~700nmの粒子は、放出用量の90%を超えるTLD値を達成することができた。
【0067】
図3と同様のプロットを、ICTモデルの沈着データを使用して小児向けに作成することができる。小児の咽喉の解剖学的サイズが小さいため(式1のD)、同等のTLD値を達成するために必要なd Q値ははるかに低くなる。実際、ICTで10%のURT沈着を達成するには、AITでのd Q値396μmL分-1と比較して、約59μmL分-1のd Q値が必要である。
【0068】
担体ベースの乾燥粉末製剤の場合では、必要なD値は担体粒子の要件を表している。つまり、Dは、担体粉末を含む完全に分散した一次粒子の中央径を表す。最終的に、薬物又は他の担体粒子が付着した担体粒子の凝集物は、吸入可能であり続けなければならない。
【0069】
いくつかの実施形態において、目標Dを有するこれらの極微細な担体粒子と付着した薬物粒子との接着混合物は、低いMMIP(約500μm-1分未満)を有し、したがって、URTにおける沈着を効果的に回避し、LRTに高効率で、特に小気道により高効率で送達されることが期待される。吸入可能な極微細な担体粒子又はその凝集体に付着した薬物粒子(ミクロンサイズ又はナノサイズ)も、これらの「極微細な」製剤における薬物と担体との間の接着力は強力であると予想されるため、肺及び小気道に効果的に送達されることが期待される。従来の担体ベースの乾燥粉末製剤とは異なり、本開示で提供される担体ベースの乾燥粉末製剤は、肺及び小気道への効果的な送達のために薬物が担体粒子から分離することを必要としない。URTでの沈着の回避により、口及び咽喉における軟組織の解剖学的差異によるURT沈着の変動に起因する肺送達の患者間変動も減少すると予想される。
【0070】
いくつかの実施形態において、上気道における粒子沈着に対する下気道における粒子沈着の比率は、肺標的化指数を表す。例えば、TLD/URT比で示される「肺標的化指数」は、ガンマシンチグラフィーによってin vivoで測定することも、AIT又はICT咽喉モデルを使用してin vitroで測定することもできる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤のTLD/URT比は、2.0超、例えば、3.0超、4.0超、5.0超、6.0超、7.0超、8.0超、9.0超、又は10.0超である。微粒子薬物を送達する従来の吸入剤は、1.0未満のTLD/URT比を有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤はまた、肺内から肺末梢への有意に改善された局所標的化を示す。気道沈着の「末梢肺指数」は、NGIのステージの比率によって次のように決められる:(S5-S6)/(S3-S4)。この値が高いほど、より小さな気道内で末梢沈着が多いことを表す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤は、1.0超、例えば、1.1超又は1.2超の末梢肺指数を有する。いくつかの実施形態において、極微細な担体ベースの乾燥粉末製剤は、ステージ4からフィルターまで(FPFS4-F)の名目用量のパーセンテージとして表すと、名目用量の少なくとも40%、例えば、名目用量の50%又は60%超である。
【0072】
場合によっては、肺胞への沈着を最小限に抑えること、すなわち、NGIでステージ7からフィルターまで(S7-F)の沈着を最小限に抑えることが有利な場合がある。空気力学的サイズが約2μmの粒子は、空気力学的直径が0.7μmの粒子よりも約8倍速く沈降するため、S7-Fでの粒子の沈着を最小限に抑えると、粒子の吐き出しも最小限に抑えることができる。「気道標的化指数」は、次の比率で決められる:(S3-S6)/(S7-F)。いくつかの実施形態において、気道標的化指数は、5超、例えば、10超又は20超でもよく、これにより、最適な気道標的化が得られる場合がある。
【0073】
いくつかの実施形態において、特定のMMIPを達成する担体ベースの乾燥粉末製剤は、気道における乾燥粉末の標的化送達を改善する。いくつかの態様では、MMIPは、粒子の衝突パラメータ分布を定義するためのサイズカットオフとは対照的に、NGI内の衝突パラメータカットオフを利用する。TLDのin vivo測定の流量非依存性は、MMIPが流量の変動に対して一定である場合に発生する(Weers et al.,Proc Respir Drug Deliv Europe 2019,1:59-66)。in vivoでの流量独立性は、流量の変動を伴う一定のFPD<5μmを有することとは相関していない。
【0074】
I.担体粒子
本明細書で提供されるのは、担体粒子に付着した薬物粒子の混合物を含む担体ベースの乾燥粉末製剤である。本明細書に記載の担体粒子は、吸入中に吸入器及び/又は上気道への沈着を回避することができ、吸入可能である従来の担体粒子よりも実質的に小さい幾何学的直径を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、対象への肺投与時に、URTから離れて肺への薬物送達を標的とし、LRT及び肺の末梢領域への標的化を向上させる。
【0075】
本開示で提供される製剤とは対照的に、薬物と担体の従来の接着混合物(例えば、ラクトースブレンド)の場合、担体粒子のゴールドスタンダードは、ラクトース一水和物及び他の炭水化物(例えば、マンニトール)である。長鎖リン脂質は、医薬品エアロゾルの担体として、及び担体を含まない製剤のシェル形成賦形剤としても利用されている。しかし、これらの材料の複雑な相挙動は、高湿度での環境ロバスト性の問題につながる可能性がある。さらに、「ラクトースブレンド」と呼ばれることもある従来の担体ベースの乾燥粉末製剤では、微粉化された薬物粒子が、幾何学的直径が60μm~200μmの粗いラクトース一水和物担体粒子に付着している。そのため、担体粒子に付着したままの薬物粒子は吸入可能ではなく、吸入中にデバイス及び/又は上気道に沈着する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、薬学的に許容される結晶性担体粒子を含む。例えば、担体粒子は、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超の結晶化度を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末組成物は、環境ロバスト性が改善された低密度の疎水性結晶性担体を利用する。いくつかの実施形態において、担体粒子は、疎水性アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、及びトリプトファンを含む。いくつかの実施形態において、担体粒子は、結晶性ロイシン担体粒子である。疎水性ロイシン粒子は、高湿度でのエアロゾル性能にほとんど又はまったく違いのない、優れた環境ロバスト性を備えている。いくつかの実施形態において、ロイシン担体粒子は、D-ロイシン、L-ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、ロイシンの様々な異性体又はエナンチオマー形態から選択され得る。いくつかの実施形態において、担体粒子は、ロイシンのオリゴマー又はペプチド、例えば、ジロイシン及びトリロイシンである。場合によっては、波形(corrugated)又は多孔質形態を有する噴霧乾燥ロイシン担体粒子が使用され、担体粒子のサイズ及び密度は、それらを調製するために利用される噴霧乾燥プロセスによって制御することができる。本開示の残りの部分を通して、担体粒子はしばしばロイシン担体粒子として説明される。しかしながら、本明細書に記載の代替の薬学的に許容される担体粒子は、本開示の態様及び実施形態においてロイシン担体粒子と交換することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、改善された環境ロバスト性を備えた疎水性の結晶性ロイシン担体粒子を含む。例えば、ロイシン担体粒子は、従来使用されているリン脂質と比較して、改善された環境ロバスト性を有し得る。いくつかの側面では、望ましい担体の環境ロバスト性は、微細な(X50が2.5μmから5μmの範囲)又は極微細(X50が2.5μm未満)なロイシン担体粒子を使用する場合に達成される。いくつかの実施形態において、担体粒子は、実質的に結晶性である(例えば、90%超又は95%超)ロイシン粒子を含む。いくつかの実施形態において、担体粒子は、0.5μm~2.5μmのX50、0.01g/cm~0.30g/cmのタップ密度、及び500μmL分-1未満のMMIPを有する極微細なロイシン粒子である。ロイシンは吸入乾燥粉末製剤で広く研究されており、粒子間凝集力(薬物-薬物)及び接着力(薬物-担体)を調節するための「力制御剤」として担体ベースの乾燥粉末製剤で利用されてきた。ロイシンは、吸入用の無担体製剤のシェル形成剤としても利用されてきた。しかしながら、ロイシン、及び上記の代替物は、本開示の前に、担体ベースの製剤における担体粒子として利用されていなかった。
【0078】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、水に難溶性である薬物に付着している。いくつかの実施形態において、担体粒子は、水に非常に溶けやすい薬物に付着している。これらの実施形態の両方において、薬物は、選択された非溶媒に難溶性である。いくつかの実施形態において、高溶解性薬物は、結晶形態である。いくつかの実施形態において、薬物はアモルファス形態である。いくつかの態様では、薬物は、高度に結晶性又は高度にアモルファスであり得る。いくつかの態様において、薬物は、薬物の高度に結晶性及び高度にアモルファスな形態の混合物ではない。薬物の物理的形態の選択は、薬物の性質と使用目的によって決まる。例えば、一部の薬物は親油性が高く、分子量が大幅に大きく、結合が回転しやすくなっている。したがって、これらの薬物は結晶化が難しく、アモルファス固体としてより安定している。
【0079】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、一次粒子の幾何学的中央径(X50)が2.5μm~5μmであり、例えば、2.5μm~4μm、2.5μm~3μm、3μm~5μm、又は4μm~5μmである「微細な」担体粒子である。
【0080】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、0.03g/cm~0.40g/cm、例えば、0.04g/cm~0.35g/cm、0.05g/cm~0.30g/cm、0.06g/cm~0.25g/cm、又は0.05g/cm~0.20g/cmのタップ密度を有する「微細な」担体粒子である。
【0081】
いくつかの実施形態において、一次「微細」担体粒子(D)の空気力学的サイズの中央値は、約1ミクロン(μm)~5μmの範囲、例えば、約1.1μm~4.8μm、1.2μm~4.6μm、1.4μm~4.5μm、1.5μm~4.4μm、1.6μm~4.2μm、1.8μm~4μm、2μm~3.8μm;又は、約1μm~3μm、1μm~25μm、又は1μm~2μmである。
【0082】
いくつかの実施形態において、「微細な」担体粒子と薬物粒子との接着混合物は、500~2500μmL分-1、例えば、500μmLmin~2250μmLmin、500μmLmin~2000μmLmin、550μmLmin~2000μmLmin、550μmLmin~1500μmLmin、600μmLmin~1250μmLmin、又は750μmLmin~100μmLminのMMIPを有する。微細な担体粒子により、現在の担体ベースの乾燥粉末製剤に比べて肺への送達が改善される。微細な担体粒子製剤は、大気道により高濃度の薬物をもたらすような局所沈着を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、0.5μm~2.5μm、例えば、0.5μm~1.5μm、0.5μm~1.0μm、1.0μm~2.5μm、又は1.0μm~2.0μm、又は1.0μm~1.5μmの一次粒子(X50)の幾何学的中央径を有する「極微細な」担体粒子である。
【0084】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、0.01g/cm~0.30g/cm、例えば、0.02g/cm~0.20g/cm、0.02g/cm~0.15g/cm、0.03g/cm~0.09g/cm、又は0.03g/cm~0.07g/cmのタップ密度を有する「極微細な」担体粒子である。
【0085】
いくつかの態様において、「極微細な」担体粒子の一次粒子の空気力学的中央径(D)は、1000ナノメートル(nm)未満、例えば、975nm未満、950nm未満、900nm未満、850nm未満、800nm未満、750nm未満、700nm未満、650nm未満、600nm未満、550nm未満、500nm未満、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満である。いくつかの実施形態において、「極微細な」担体粒子の一次粒子の空気力学的中央径(D)は、約300~700nmの範囲内、例えば、約350~700nm、400~700nm、450~700nm、500~700nm、550~700nm、600~700nm、650~700nm;又は約300~650nm、300~600nm、300~550nm、300~500nm、300~450nm、300~400nm;又は約350~650nm、350~600nm、350~550nm、350~500nm、350~450nm、350~400nm;又は約400~650nm、400~600nm、400~550nm、400~500nm、400~550nm;又は約500~650nm、500~600nm、又は500~550nmの範囲内にある。
【0086】
いくつかの実施形態において、「極微細な」担体粒子及び薬物粒子の接着混合物は、500μmL分-1未満、例えば、450μmL分-1未満、400μmL分-1未満、350μmL分-1未満、300μmL分-1未満、250μmL分-1未満、200μmL分-1未満、150μmL分-1未満、又は100μmL分-1未満のMMIPを有する。いくつかの実施形態において、「極微細な」担体粒子及び薬物粒子の接着混合物は、50μmLminから500μmLminまで、例えば、60μmLminから400μmLminまで、70μmLminから300μmLminまで、80μmLminから250μmLminまで、90μmLminから225μmLminまで、又は100μmLminから250μmLminのMMIPを有する。「極微細な」担体粒子は、URTにおける沈着を効果的に回避し、小気道を含む気道への送達を改善する担体ベースの乾燥粉末製剤を可能にする。
【0087】
いくつかの実施形態において、担体粒子(例えば、ロイシン担体粒子)は、粒子密度を低下させ、粒子間凝集力を低減し、肺へのエアロゾル送達を改善するためのざらざらした皺のある表面を有する。いくつかの実施形態において、ロイシン担体粒子は、2.0超、例えば、3.0超又は4.0超の粗度(rugosity)を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、乾燥粉末製剤における活性剤の必要な薬物負荷は、治療効果を達成するために治療有効量の活性剤を送達するために必要な量である。強力な喘息/COPD治療薬の場合、薬物負荷は非常に低くなり得、これにより、送達に必要な正確度及び精度を達成するためにレセプタクルに充填する必要のある粉末が最小質量になる。いくつかの実施形態において、本開示の乾燥粉末製剤の場合、最小充填質量は、約1mg~3mg、例えば、1mg、2mg、又は3mgである。1mg~3mgの最小充填質量では、薬物負荷は多くの場合、20%w/w未満、例えば、20%w/w未満、15%w/w未満、12%w/w未満、10%w/w未満、5%w/w未満、3%w/w未満、1%w/w未満、0.5%w/w未満、又は0.1%w/w未満である。
【0089】
いくつかの実施形態において、他の適応症において効力のより低い薬物では、より高い薬物負荷が必要とされ得る。しかし、担体の表面が完全に飽和するまでにブレンドで達成できる薬物負荷には限界がある。このような状況では、過剰な薬物が担体に付着することはないかもしれないが、代わりに、表面の薬物又は遊離の薬物粒子と凝集する可能性がある。LBの実際の制限は、約5%程度である可能性がある。ロイシン担体の表面積が大きく密度が低いため、許容可能な薬物負荷が大幅に高くなる可能性があり、分離又は他の形態の不安定性が現れる前に、おそらく20%w/w以上に近づく可能性がある。1回の吸入でレセプタクルから本開示の技術で送達することができるAPIの総肺沈着量は、10mg以下である。これは、最終的には、使用する乾燥粉末吸入器の性質と、その吸入器のレセプタクルの容量に依存する。約5%を超える薬物負荷の増加は、aPSDのある程度の粗大化につながると予想され得る。
【0090】
ラクトースブレンド(LB)及び微粉化薬物の球状化凝集体(SPH)製剤は、もともと、微粉化薬物粒子で見られる不十分な粉末流動特性を克服するために開発された。不十分な粉末の流れは、充填中又はリザーバーベースの乾燥粉末吸入器での薬物の計量中、バルク粉末の計量に大きな変動をもたらした。驚くべきことに、本開示で利用される極微細な担体粒子には、不十分な粉末流動特性を有するにもかかわらず、オーダーメイドのドラム充填剤(drum filler)を高精度かつ正確に充填できることが発見された。
【0091】
ナノロイシン担体粒子の有用性は、吸入コルチコステロイド(ICS)を用いて本明細書で実証及び実施されているが、これらの製剤を設計するために使用される概念は幅広い有用性を有すると考えられる。事実上すべての薬物は、製造プロセスで非溶媒として使用されるPFOB及びその他のフッ素化液体への溶解度が制限されている。そのため、このプロセスを使用して、ほとんどの薬物のナノ粒子を沈殿させることができると期待されている。したがって、ナノロイシン担体技術は、気道への強力な薬物の標的化送達のためのプラットフォーム技術を表している。
【0092】
II.製剤
本明細書で提供されるのは、担体粒子及び活性剤を含む担体ベースの乾燥粉末製剤である。例示的な活性剤(すなわち、薬物;API)は、本開示のセクションIIIに記載されている。いくつかの態様において、活性剤は薬物粒子である。粒子中に存在する薬物は、結晶性、アモルファス、又はそれらの組み合わせであり得る。難溶性の結晶性APIの場合、溶解性及び/又は溶解速度を上げることが望ましい場合がある。アモルファス薬物粒子の形成は、薬物動態の劇的な違いにつながる可能性があり、その結果、肺内での安全性及び有効性の違いにつながる可能性がある。対照的に、肺末梢に沈着する結晶性薬物粒子は、オプソニン化及び肺胞マクロファージによるクリアランスを回避する可能性があり、それにより、肺内で薬物を維持するためのメカニズムを提供する。製造プロセスは、製剤に存在するAPIのサイズ及び物理的形態を制御するように調整できる。
【0093】
いくつかの実施形態において、製剤は、複数の担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の薬物粒子が単一の担体粒子に付着している。いくつかの実施形態において、単一の薬物粒子が単一の担体粒子に付着している。いくつかの実施形態において、担体粒子のサブセットのみが薬物粒子に付着している。上記のように、薬物粒子に付着する担体粒子の数は、薬物負荷、ならびに製剤で使用される薬物及び担体粒子の相対的なサイズに依存する。
【0094】
ラクトースブレンドを含む従来の乾燥粉末製剤では、薬物粒子が肺に送達されるように、薬物粒子は担体粒子から分離しなければならない。これは、設計上、担体粒子が大きすぎて肺の領域に空気力学的に到達できないためである。したがって、薬物粒子は、効果的な送達のために担体粒子から分散されなければならない。対照的に、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、担体粒子から薬物粒子を分離することなく肺に送達させることができる。すなわち、担体粒子及び薬物粒子の凝集物が肺に到達することができ、効果的な送達のために分離を必要としない。担体粒子と薬物粒子の凝集体の接着力は非常に強く、これは従来の担体ベースの製剤では問題となることが見出された。しかしながら、提供された製剤の担体粒子及び薬物粒子の凝集体の空気力学的サイズのために、それらは依然として大小の気道に送達されることができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、製剤は、ミクロンサイズの薬物粒子を含む。したがって、いくつかの実施形態において、製剤は、約1μm~3μm、例えば、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、又は3μm、又は上記の値の間の任意の範囲のX50を有するミクロンサイズの薬物粒子を含む。特に明記しない限り、本明細書で提供される数値範囲は、範囲の上下限値及び範囲の上下限値間の任意の値を含むことが理解される。
【0096】
いくつかの実施形態において、製剤は、ナノサイズの薬物粒子を含む。場合によっては、ナノサイズの薬物粒子は、1000nm未満の少なくとも1つの寸法を有する。いくつかの実施形態において、製剤は、約1000ナノメートル(nm)未満、例えば、900nm未満、800nm未満、700nm未満、600nm未満、500nm未満、450nm未満、400nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満(ただし、1nm以上)のX50を有するナノサイズの薬物粒子を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約10nm~1000nm、例えば、10nm~1000nm、15nm~750nm、10nm~500nm、20nm~450nm、25nm~400nm、50nm~350nm、100nm~300nm、100nm~250nm、100nm~200nm、100nm~150nm、150nm~500nm、150nm~450nm、150~350nm、150~300nm、150~250nm、150~200nm、200nm~500nm、200nm~450nm、200nm~400nm、200nm~350nm、200nm~300nm、200nm~250nm、250nm~500nm、250nm~450nm、250~400nm、250~350nm、250nm~300nm、300nm~500nm、300nm~450nm、300nm~400nm、300nm~350nm、350nm~500nm、350nm~450nm、350nm~400nm、400nm~500nm、又は450nm~500nmのX50を有するナノサイズの薬物粒子を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、50nm~200nmのX50を有するナノサイズの薬物粒子を含む。特に明記しない限り、本明細書で提供される数値範囲は、範囲の上下限値及び範囲の上下限値間の任意の値を含むことが理解される。
【0097】
いくつかの実施形態において、ナノサイズの薬物粒子は、約20nm~200nm、例えば、約20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm又は200nm、又は記載した値の間の任意の範囲のX50を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、医薬品のすべての成分(すなわち、薬物及び担体)は、結晶形態で存在する。この実施形態において、本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、湿度の変化に対して非常にロバストであり得る。これにより、リザーバーベースの複数回投与ドライパウダー吸入器の使用が可能になり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、極微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子を含む接着混合物(すなわち、「医薬品」)は、例えば、放出用量(ED)の70~98%、例えば、EDの85~95%の総肺沈着量(TLD)を達成する。いくつかの実施形態において、医薬品は、50~500μmL分-1、例えば、100μmL分-1~300μmL分-1のMMIPを有する。いくつかの実施形態において、医薬品は、EDの30~60%の小気道への送達を表すFPFS5-F又はFPF(d Q<165)を有する。いくつかの実施形態において、医薬品は1.0μm~3.0μm、例えば1.5μm~2.5μmのMMADを有する。
【0100】
NGIは、ポータブル吸入器(ドライパウダー吸入器、定量吸入器、ソフトミスト吸入器など)及びネブライザーの試験に使用される高性能カスケードインパクターである。NGIは、衝突パラメータに従って粒子を分類する。連続する各段階は、より小さな衝突パラメータを表し、理論的には気道内への浸透をますます深くすることができる。単純なステージグループ化モデルでは、誘導ポートとNGIのステージ1及び2での沈着は、URT沈着に関連していると想定され、ステージ3及び4での沈着は大気道での粒子沈着、ステージ5及び6での沈着は小気道での沈着、ステージ7及びフィルター(MOC)での沈着は肺胞への粒子沈着に関連していると想定される。これらの割り当てに基づいて、領域沈着に関連する2つの新しい指標を定義することができる。
【0101】
肺胞に対する気道の沈着の比率ξは、ステージ7からフィルターの沈着に対するステージ3からステージ6の沈着の比率、すなわち(S3-S6)/(S7-F)で与えられる。本開示の目的のために、ξは>10、例えば、15より大きい。ξの増大により、肺胞沈着の減少及び粒子沈降速度の増加がもたらされ得るため、小気道での沈着を増加させ、粒子の吐き出しを減少させるのに好都合となり得る。
【0102】
大気道に対する小気道の沈着の比率θは、ステージ3からステージ4の沈着に対するステージ5からステージ6の沈着の比率、すなわち(S5-S6)/(S3-S4)で与えられる。本開示の目的のために、θは>1.0、例えば、1.5より大きいか又は2.0より大きい。θの比率が高いと、小気道の治療の改善に好都合となり得る。
【0103】
これらは、aPSDを説明するために使用できるin vitro測定項目である。それらは、in vivoでの所与のヒト対象の沈着パターンの正確な測定値であるとは期待されていない。in vivoでの所与の患者の沈着パターンは、単純なin vitroモデルでは再現できない多くの要因の影響を受ける。これには、対象の特定の解剖学的特徴、気道閉塞に対する疾患の影響、対象の吸気流プロファイル、及び慣性衝突以外の粒子の沈着とクリアランスに影響を与える他の多くのメカニズムが含まれる。しかしながら、これらのin vitro測定項目は、異なる製剤間の沈着パターンの違いを説明するのに役立つ。
【0104】
III.活性剤
本明細書に記載の製剤及び方法で使用される活性剤は、いくつかの薬理学的な、しばしば有益な効果を提供する薬剤、薬物、化合物、物質の組成物又はそれらの混合物を含む。本明細書で使用される場合、これらの用語はさらに、患者に局所的又は全身的な効果をもたらす任意の生理学的又は薬理学的に活性な物質を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、小気道の疾患を治療するために小気道に局所的な効果をもたらす任意の活性剤を、開示された技術で配合することができる。これらの疾患には、慢性閉塞性肺疾患及び喘息だけでなく、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症)、ならびに気道感染症、結合組織疾患、炎症性腸疾患、免疫不全、びまん性汎細気管支炎、及び骨髄と肺の移植を含む様々な経路によって引き起こされる気管支炎(すなわち、細気管支炎)が含まれる。
【0106】
いくつかの実施形態において、体循環において局所的な効果を生み出す任意の活性剤を、本明細書に記載の標的製剤を使用して配合することができる。いくつかの実施形態において、活性剤は、それらの経口バイオアベイラビリティを制限するか、又は投薬において相当な変動性をもたらす広範な初回通過、溶解性又は透過性の問題を有するが、これらは吸入送達で克服することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、全身効果の急速な発現から利益を得るであろう任意の活性剤は、本明細書に記載される標的製剤から利益を得ることができる。これには、例えば、鎮痛薬(片頭痛、群発性頭痛)、睡眠障害の薬、又は抗不安薬が含まれる。いくつかの実施形態において、活性剤は、心臓障害(例えば、不整脈)の標的治療のためのものであり得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬製剤に組み込むための活性剤は、末梢神経、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経エフェクター接合部位、内分泌及びホルモン系、免疫系、生殖系、ヒスタミン系、及び中枢神経系に作用する薬物を含むがこれらに限定されない無機又は有機化合物であり得る。適切な活性剤は、例えば、催眠薬及び鎮静剤、精神安定剤、呼吸器薬、喘息及びCOPDを治療するための薬物及びバイオ医薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン薬(ドーパミン拮抗薬)、鎮痛薬、抗炎症薬、抗不安薬(不安緩解薬)、食欲抑制薬、抗片頭痛薬、筋収縮薬、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、ワクチン)抗関節炎薬、抗マラリア薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、気管支拡張薬、サイトカイン、成長因子、抗がん剤、抗血栓薬、降圧薬、心血管薬、抗不整脈薬、抗酸化薬、抗喘息薬、避妊薬を含むホルモン薬、交感神経刺激薬、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン薬、抗寄生虫薬、抗凝固薬、新生物形成薬、抗腫瘍薬、血糖降下薬、ワクチン、抗体、診断薬、及び造影剤から選択することができる。活性剤は、吸入により投与され、局所的又は全身的に作用し得る。
【0109】
活性剤は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、タンパク質、多糖類、ステロイド、生理学的効果を誘発することができるタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質などを含むがこれらに限定されない、いくつかの構造クラスの1つに分類され得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、活性剤は、喘息及び/又はCOPDなどの炎症性又は閉塞性気道疾患の治療に有用な任意の活性医薬成分を含むことができる。適切な有効成分には、サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロール及びそれらの塩などの長時間作用型ベータ2アゴニスト、チオトロピウム及びグリコピロニウム及びそれらの塩などのムスカリンアンタゴニスト、ならびにブデソニド、シクレソニド、フルチカゾン、モメタゾン及びそれらの塩を含むコルチコステロイドが含まれる。適切な組み合わせには、(フマル酸ホルモテロール及びブデソニド)、(サルメテロールキシナホ酸塩及びフルチカゾンプロピオン酸エステル)、(サルメテロールキシナホ酸塩及び臭化チオトロピウム)、(インダカテロールマレイン酸塩及び臭化グリコピロニウム)、(インダカテロール及びモメタゾン)が含まれる。適切な活性剤には、ロフルミラストやCHF6001などのPDE4阻害剤も含まれる。
【0111】
いくつかの実施形態において、活性剤は、抗体、抗体フラグメント、ナノボディ、及び、以下を含むアレルギー性喘息の治療に使用され得る他の抗体フォーマットを含むことができる:抗lgE、抗TSLP、抗IL-5、抗IL-4、抗IL-13、抗CCR3、抗CCR-4、抗OX40L。
【0112】
いくつかの実施形態において、活性剤は、リザトリプタン、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、フロバトリプタン又はナラトリプタン、ロキサピン、アモキサピン、リドカイン、ベラパミル、ジルチアゼム、イソメテプテン、リスリドを含む抗片頭痛薬;又は、ブロムフェニラミン、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、アザタジン、クレマスチン、シプロヘプタジン、ロラタジン、ピリラミン、ヒドロキシジン、プロメタジン、ジフェンヒドラミンを含む抗ヒスタミン薬;又は、オランザピン、トリフルオペラジン、ハロペリドール、ロキサピン、リスペリドン、クロザピン、クエチアピン、プロマジン、チオチキセン、クロルプロマジン、ドロペリドール、プロクロルペラジン及びフルフェナジンを含む抗精神病薬;又は、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンを含む鎮静剤及び催眠薬;又は、クロルゾキサゾン、カリソプロドール、シクロベンザプリンを含む筋弛緩薬;又は、エフェドリン、フェンフルラミンを含む精神刺激薬;又は、ネファゾドン、ペルフェナジン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、トラニルシプロミン、シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルタゼピン、パロキセチン、セルトラリン、アモキサピン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、バルプロ酸、プロトリプチリン、ブプロピオンを含む抗うつ薬;又は、アセトアミノフェン、オルフェナドリン及びトラマドールを含む鎮痛薬;又は、ドラセトロン、グラニセトロン及びメトクロプラミドを含む制吐剤;又は、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ナルブフィン、ナロキソン、ブトルファノール、ヒドロモルフォン、オキシコドン、メタドン、レミフェンタニル、又はスフェンタニルを含むオピオイド;又は、ベンゾトロピン、アマンタジン、ペルゴリド、デプレニル、ロピニロールを含む抗パーキンソン化合物;又は、キニジン、プロカインアミド、及びジソピラミド、リドカイン、トカミド、フェニロイン、モリシジン、及びメキシレチン、フレカニド、プロパフェノン、及びモリシジン、プロプラノロール、アセブトロール、ソルタロール、エスモロール、チモロール、メトプロロール、及びアテノロール、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウム、イブチリド、E-4031(メタンスルホンアミド)、ベルナカラント、及びドフェチリド、ベプリジル、ニトレンジピン、アムロジピン、イスラジピン、ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル、及びジルチアゼム、ジゴキシン、及びアデノシンを含む抗不整脈化合物を含む。当然ながら、活性剤は、上記の薬学的及び製剤の適切な組み合わせを含み得る。
【0113】
特定の実施形態において、治療薬は腫瘍薬であり、これはまた、抗腫瘍薬、抗がん剤、腫瘍剤、抗新生物薬などと呼ばれることがある。使用できる腫瘍薬の例には、限定するものではないが、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、静脈内ブスルファン、経口ブスルファン、カペシタビン(キセローダ)、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、サイトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシドリン酸塩、エトポシド及びVP-16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フルオロウラシル、5-FU、ゲムシタビン(ジェムザール)、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン(カンプトスター、CPT-111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミソール、リトレチノイン、メガストロール、メルファラン、L-PAM、メトトレキサート、メトキシサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、窒素マスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI-571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾラミド、テニポシド、VM-26、トポテカン(ヒカムチン)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、及びビノレルビンが含まれる。使用できる腫瘍薬の他の例は、エリプチシン及びエリプチシンアナログ又は誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤及びカンプトテシンである。
【0114】
活性剤は、核酸、ペプチド、ポリペプチド(例えば、抗体)、サイトカイン、成長因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体及びそれらのリガンド、ホルモン、及び小分子であり得る。
【0115】
吸入によって送達され得る薬学的に活性な物質の例には、ベータ-2アゴニスト、グルココルチコステロイド(例えば、抗炎症剤)などのステロイド、抗コリン作動薬、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成阻害剤、一般の鎮痛剤及び抗炎症剤(ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症薬の両方を含む)などの痛み止めの薬、心臓グリコシドなどの心血管薬、呼吸器薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、抗がん剤、アルカロイド(例えば、エルゴットアルカロイド)又は片頭痛の治療などに使用可能なトリプタン、糖尿病及び関連障害の治療に有用な薬物(例えば、スルホニル尿素)、鎮静剤及び催眠剤を含む睡眠誘発薬、精神的活性剤、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗マラリア薬、抗てんかん薬、抗血栓薬、抗高血圧薬、抗不整脈薬、抗酸化薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、抗けいれん薬、抗催吐薬、抗感染薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌及び抗ウイルス剤、パーキンソン病などの神経障害の治療薬(ドーパミン拮抗薬)、アルコール依存症及び他の形態の中毒の治療薬、勃起不全又は肺動脈高血圧症の治療に使用する血管拡張薬などの薬物、筋弛緩薬、筋肉収縮剤、オピオイド、精神刺激薬、鎮静剤、マクロライド、アミノグリコシド、フルオロキノロン及びベータラクタムなどの抗生物質、ワクチン、サイトカイン、成長因子、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経刺激薬、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン薬、抗寄生虫薬、抗凝固薬、新生物形成薬、抗腫瘍薬、血糖降下薬、栄養剤及びサプリメント、成長サプリメント、抗腸炎薬、ワクチン、抗体、診断薬、及び造影剤及び上記の混合物(例えば、ステロイドとベータアゴニストの両方を含む喘息の併用治療)が含まれる。より具体的には、活性剤は、小分子(例えば、不溶性小分子)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ステロイド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質などを含むがこれらに限定されない、いくつかの構造クラスの1つに分類され得る。
【0116】
具体的な例としては、ベータ2アゴニストのサルブタモール(例えば、サルブタモール硫酸塩)及びサルメテロール(例えば、サルメテロールキシナホエート)、ステロイドブデソニド及びフルチカゾン(例えば、フルチカゾンプロピオン酸エステル)、心臓グリコシドジゴキシン、アルカロイド抗片頭痛薬メシル酸ジヒドロエルゴタミン及び他のアルカロイドエルゴタミン、パーキンソン病の治療に使用されるアルカロイドブロモクリプチン、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、フロバトリプタン、アルモトリプタン、ゾルマトリプタン、モルフィン及びモルフィンアナログフェンタニル(例えば、クエン酸フェンタニル)、グリベンクラミド(スルホニル尿素)、ジアゼパム、トリアゾラム、アルプラゾラム、ミダゾラム及びクロナゼパム(通常、催眠薬として、例えば不眠症やパニック発作を治療するために使用される)などのベンゾジアゼピン、抗精神病薬リスペリドン、勃起不全の治療に使用するアポモルフィン、抗感染薬アムホテリシンB、抗生物質トブラマイシン、シプロフロキサシン及びモキシフロキサシン、ニコチン、テストステロン、抗コリン作用性気管支拡張薬臭化イプラトロピウム、気管支拡張薬フォルモテロール、モノクローナル抗体及びタンパク質LHRH、インスリン、ヒト成長ホルモン、カルシトニン、インターフェロン(例えば、ベータ又はガンマインターフェロン)、EPO及び第VIII因子、ならびにそれぞれの場合において、それらの薬学的に許容される塩、エステル、アナログ及び誘導体(例えば、プロドラッグ形態)が挙げられる。
【0117】
適切な活性剤の追加の例には、限定するものではないが、アスパリギナーゼ、アムドキソビル(RAPD)、アンチド、ベカプレルミン、カルシトニン、シアノビリン、デニロイキンジフチトックス、エリスロポエチン(EPO)、EPOアゴニスト(例えば、長さが約10~40アミノ酸で、国際公開第96/40749号に記載されている特定のコア配列を含むペプチド)、ドルナーゼアルファ、赤血球生成促進タンパク質(NESP)、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、フォンウィルブランド因子などの凝固因子;セレダーゼ、セレザイム、アルファ-グルコシダーゼ、コラーゲン、シクロスポリン、アルファデフェンシン、ベータデフェンシン、エキセジン-4、顆粒球コロニー刺激因子(GCSE)、トロンボポイエチン(TPO)、アルファ-1プロテイナーゼ阻害剤、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、フィブリノーゲン、フィルグラスチム、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、GRO-ベータ、GRO-ベータ抗体、骨形態形成タンパク質-2、骨形態形成タンパク質-6、OP-1などの骨形態形成タンパク質;酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、CD-40リガンド、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンオメガ、インターフェロンタウなどのインターフェロン;インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2、インターロイキン-2融合タンパク質、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-12、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-17受容体などのインターロイキン及びインターロイキン受容体;ラクトフェリン及びラクトフェリンフラグメント、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、インスリン、プロインスリン、インスリンアナログ(例えば、米国特許第5,922,675号に記載されているモノアシル化インスリン)、アミリン、C-ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチンアナログ、バソプレシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インフルエンザワクチン、インスリン様成長因子(IGF)、インスリントロピン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、アルテプラーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、パミテプラーゼ、ラノテプラーゼ、及びテネテプラーゼなどのプラスミノーゲン活性化因子;神経成長因子(NGF)、オステオプロテゲリン、血小板由来成長因子、組織成長因子、形質転換成長因子-1、血管内皮細胞増殖因子、白血病抑制因子、ケラチノサイト成長因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、T細胞受容体、CD分子/抗原、腫瘍壊死因子(TNF)、単球走化性タンパク質-1内皮細胞増殖因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチド、ソマトトロピン、チモシンアルファ1、チモシンアルファ1 IIb/IIIa阻害剤、チモシンベータ10、チモシンベータ9、チモシンベータ4、アルファ-1アンチトリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA-4(最晩期抗原-4)、VLA-4阻害剤、ビスホスホネート、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシレイボヌクレアーゼ(DNase)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、及び抗CMV抗体が含まれる。例示的なモノクローナル抗体には、エタネルセプト(IgG1のFc部分に連結したヒト75kD TNF受容体の細胞外リガンド結合部分からなる二量体融合タンパク質)、アブシキシマブ、アフェリオモマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、ミツモマブ、ムロモナブ-CD3、ヨウ素131トシツモマブコンジュゲート、オリズマブ、リツキシマブ、及びトラスツズマブ(ハーセプチン)、アミフォスチン、アミオダロン、アンブリセンタン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、アントラサイクリン、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボセンタン、ブセレリン、ブスルファン、カベルゴリン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、カンプトテシン、13-シスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸;ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フェキソフェナジン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、エピネフリン、L-Dopa、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、イリノテカン、イトラコナゾール、ゴセレリン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミソール、ロムスチン、マシテンタン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトクロプラミド、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ナロキソン、ニコチン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロナート、ペントスタチン、ピルカマイシン、ポルフィマー、プレドニソン、プロカルバジン、プロクロルペラジン、オンダンセトロン、ラルチトレキセド、シルデナフィル、シロリムス、ストレプトゾシン、タクロリムス、タダラフィル、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、テトラヒドロカンナビノール、タリドミド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレプロスチニル、トレチノイン、バルルビシン、バルデナフィル、ビンブラスチン;ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドラセトロン、グラニセトロン;ホルモテロール、フルチカゾン、リュープロリド、ミダゾラム、アルプラゾラム、アムホテリシンB、ポドフィロトキシン、ヌクレオシド抗ウイルス薬、アロイルヒドラゾン、スマトリプタン;エリスロマイシン、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン、アジスロマイシン、フルリスロマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジスロマイシン、及びスウィノライドAなどのマクロライド;シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、及びシタフロキサシンなどのフルオロキノロン;ゲンタマイシン、ネチルマイシン、パラメシア、トブラマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ランポラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチメサートなどのアミノグリコシド;ポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネムなどのポリミキシン;ペニシリンG、ペニシリンVのようなペニシリナーゼ感受性剤を含むペニシリン;メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、ナフシリンなどのペニシリナーゼ耐性薬;アンピシリン、アモキシシリン、及びヘタシリン、シリン、及びガランピシリンなどのグラム陰性微生物活性剤;カルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリンなどの抗緑膿菌ペニシリン;セフポドキシム、セフプロジル、セフブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロル、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セフォラニド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジジム、ロラカルベフ、及びモキサラクタムなどのセファロスポリン、アズトレオナムのようなモノバクタム;イミペネム、メロペネム、ペンタミジンイセチオネート、硫酸アルブテロールなどのカルバペネム;リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、フルチカゾン、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、クロモリンナトリウム、及び酒石酸エルゴタミン;パクリタキセルなどのタキサン;SN-38、及びチルホスチンが含まれる。
【0118】
本明細書に記載の方法は、難溶性の疎水性薬物のミクロンサイズ又はナノサイズの結晶を生成するために適用することができる。疎水性薬物の例には、限定するものではないが、ROCK阻害剤、SYK特異的阻害剤、JAK特異的阻害剤、SYK/JAK又はマルチキナーゼ阻害剤、MTOR、STAT3阻害剤、VEGFR/PDGFR阻害剤、c-Met阻害剤、ALK阻害剤、mTOR阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤、p38/MAPK阻害剤、NSAID、ステロイド、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫剤、血圧降下剤、抗がん剤又は抗腫瘍剤、免疫調節剤(例えば、免疫抑制薬)、精神病薬、皮膚科薬、脂質低下薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗痛風薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗甲状腺剤、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、神経弛緩薬、ベータ遮断薬、強心薬、コルチコステロイド、利尿薬、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミンH受容体拮抗薬、脂質調節薬、硝酸塩及びその他の抗狭心症薬、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、性ホルモン、及び精神刺激薬が含まれる。
【0119】
IV.製剤の製造方法
一態様では、本開示は、担体ベースの乾燥粉末製剤、特に本開示のセクションIに記載されているものを調製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製するための方法は:(a)本開示のセクションIに記載される目標D値を有する担体粒子の調製;(b)薬物粒子の調製;(c)接着混合物を形成するための非溶媒中での薬物粒子と担体粒子との均一な混合;(d)液体の非溶媒を除去して乾燥粉末を形成することを含む。いくつかの実施形態において、薬物粒子に使用される活性剤は、本開示のセクションIIIに記載される1つ以上の薬物であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(b)及び(c)は、単一のプロセスステップで同時に起こり得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法は、ロイシンの溶液を噴霧乾燥することにより、Dが1000nm未満である極微細なロイシン担体粒子を調製すること;得られた極微細な担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である溶媒中の薬物の濃縮溶液を調製すること;ロイシン担体粒子の懸濁液に、薬物の溶液を混合しながら加えることであって、薬物粒子は非溶媒中で沈殿すると同時に、循環する担体粒子との共懸濁液を形成すること;凍結乾燥又は噴霧乾燥によって非溶媒を除去して、薬物粒子が極微細なロイシン担体粒子に付着した(すなわち、凝集体)担体ベースの乾燥粉末製剤を形成することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法は、ロイシンの溶液を噴霧乾燥することにより、1μm~5μmのDを有する微細なロイシン担体粒子を調製すること;得られた微細な担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である溶媒中の薬物の濃縮溶液を調製すること;ロイシン担体粒子の懸濁液に、薬物の溶液を混合しながら加えることであって、薬物粒子は非溶媒中で沈殿すると同時に、循環する担体粒子との共懸濁液を形成すること;凍結乾燥又は噴霧乾燥によって非溶媒を除去して、薬物粒子が微細なロイシン担体粒子に付着した担体ベースの乾燥粉末製剤を形成することを含む。
【0122】
担体粒子の調製。
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末組成物を調製する方法は、本開示のセクションIに記載される担体粒子を調製することを含む。例えば、この方法は、1000nm未満の空気力学的中央径(D)を含む極微細な担体粒子を調製することを含み得る。いくつかの実施形態において、極微細な担体粒子は、300nmから700nmのDを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、1.0μmから2.5μmまでのDを含む微細な担体粒子を調製することを含み得る。いくつかの態様では、Daは、一次担体粒子の空気力学的中央径(D)を表す。
【0123】
いくつかの実施形態において、微細な及び極微細な担体粒子は、粒子が沈殿して必要な(D)の粒子を形成する任意のボトムアップ製造プロセスによって調製することができる。いくつかの実施形態において、ボトムアッププロセスは、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、超臨界流体製造技術(例えば、急速膨張、貧溶媒など)、テンプレート法、微細加工、及びリソグラフィー(例えば、PRINT(商標)技術)、及び他の粒子沈殿技術(例えば、スピノーダル分解)を含み、これらは例えば、薬物の結晶化を確実にするために超音波エネルギーの存在下で行われる。いくつかの実施形態において、担体粒子は、噴霧乾燥プロセスを使用して調製される。いくつかの態様において、噴霧乾燥プロセス条件は、担体粒子のX50及び表面形態に影響を及ぼし得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、担体粒子はロイシンから構成される。いくつかの態様において、極微細な担体粒子を調製することは、ロイシンを溶媒(例えば、水、エタノール、又はそれらの任意の組み合わせ)に溶解して溶液を形成し、特定の条件下でその溶液を噴霧乾燥して、1000未満のDを含む極微細なロイシン担体粒子、又は1.0μm~2.5μmのDを含む微細なロイシン担体粒子を形成することを含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、担体粒子は、ロイシンの水溶液又は少量のエタノールを含む水中の溶液を噴霧乾燥することによって調製される。いくつかの実施形態において、少量のエタノール(例えば、20%w/w未満)を水性原料に添加して、100から500nmの範囲のD値を達成することができる。いくつかの態様において、噴霧乾燥プロセスは、粒径及び粒子形態の制御を可能にする。皺のある形態は、小さな空気力学的サイズの低密度粒子を提供する。噴霧乾燥プロセスは、以下を含むより小さな単位の操作に細分することができる:(a)原料の準備;(b)原料の噴霧化;(c)液滴の乾燥;及び(d)乾燥粒子の収集。ロイシン粒子の場合、噴霧器の性質と空気対液体比(ALR)が、噴霧化された液滴のサイズを制御し、最終的には沈殿したロイシン粒子のサイズを制御する。乾燥プロセスのタイムスケールは、結晶化度と粒子の形態を制御する。水性原料に少量のエタノール(例えば、20%w/w未満)を添加すると、100~500nmの範囲のD値の達成が容易になる場合がある。噴霧乾燥プロセスは、粒径だけでなく粒子形態も制御できるため、特に有利である。皺のある形態は、小さな空気力学的サイズの低密度粒子を提供する。粒子の粗度が増すと、担体粒子間の粒子間凝集力が減少する。
【0126】
いくつかの実施形態において、担体は、噴霧乾燥プロセス中に結晶性固体として沈殿する。例えば、分子量が200g/mol未満の疎水性アミノ酸は、噴霧乾燥プロセス中に結晶性固体として沈殿する可能性がある。ロイシンは低分子量であるため、噴霧乾燥プロセス中にそのアミノ酸は結晶性固体として沈殿する。製造工程には、溶解したロイシンを含む液体供給物の噴霧乾燥が含まれる。例えば、噴霧乾燥プロセスは、国際公開第特許第2014/141069号に記載されているように実施することができる。
【0127】
いくつかの態様において、溶液中の担体粒子の固形分は、担体粒子の空気力学的中央径に影響を及ぼし得る。溶液中の担体粒子の固形分濃度は、製剤に使用される特定の薬物又は賦形剤、及び製剤の投与に使用される装置を含むがこれらに限定されない要因に応じて変化し得る。例えば、ロイシン担体粒子のバッチを、水に溶解したロイシンを含む水性原料から調製することができる。この例では、固形分がロイシン担体粒子の粒径及び形態に影響を与え得る。いくつかの実施形態において、固形分(例えば、ロイシンの)は、300nmから700nmのDを有する極微細なロイシン担体粒子を生成するように、0.4%w/wから1.8%w/wであり得る。担体粒子の固形分濃度は、例えば、約0.4%w/w~1.8%w/w、0.5%w/w~1.7%w/w、0.6%w/w~1.6%w/w、0.7%w/w~1.5%w/w、0.8%w/w~1.5%w/w、0.9%w/w~1.4%w/w、又は1.0%w/w~1.4%w/wの範囲であり得る。いくつかの態様において、エタノールは、ロイシン担体粒子を含む水性原料に添加され得る。驚くべきことに、水性原料にエタノールを加えると、従来の担体粒子よりも小さいDを有する極微細なロイシン担体粒子を生成できることが見出された。
【0128】
いくつかの実施形態において、本開示のセクションIに記載される担体粒子は、非溶媒と組み合わされて、懸濁液を形成する。いくつかの実施形態において、非溶媒は、1つ以上の過フッ素化液体(例えば、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン)、ヒドロフルオロアルカン(例えば、ペルフルオロオクチルエタン、ペルフルオロヘキシルブタン、ペルフルオロヘキシルデカン)、炭化水素(例えば、オクタン、ヘキサデカン)、又はtert-ブチルアルコールを含み得る。場合によっては、非溶媒はペルフルオロオクチルブロミド(PFOB)である。特に、ロイシンの非常に安定した懸濁液は、いくつかの脂質懸濁液と比較して改善された均一性でPFOB中に形成することができる。いくつかの実施形態において、担体粒子は、環境ロバスト性を改善するために実質的に結晶性であり得る。いくつかの態様において、担体粒子は、90%を超える結晶化度を有する。いくつかの態様において、担体粒子は、95%を超える結晶化度を有する。
【0129】
いくつかの実施形態において、任意のUSPクラス3溶媒(米国薬局方規格2019)は、薬物が液体媒体に不溶性であり、ロイシン粒子が非溶媒中で「安定な」懸濁液を形成するという条件で、非溶媒として適切であり得る。適切な非溶媒の選択は、原薬の物理化学的特性に依存する。
【0130】
薬物粒子の調製。
いくつかの実施形態において、ミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子は、様々なトップダウン及びボトムアップの製造プロセスによって調製することができる。トップダウンプロセスでは、粗い薬物粒子を粉砕して、ミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子を形成する。適切な粉砕プロセスには、ジェットミリング、スパイラルジェットミリング、及びメディアミリングが含まれる。ジェットミリングはミクロンサイズの粒子により適している。メディアミリングはミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子の生成を可能にする。
【0131】
薬物粒子のサイズが小さくなると、薬物粒子は凝集する傾向が強くなる。メディアミリングでは、凝集体のサイズを最小限にするために分散剤がよく使用される。適切な分散剤には、チロキサポール、長鎖ホスファチジルコリン、Tween(登録商標)20、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0132】
いくつかの実施形態において、結晶性薬物粒子の粉砕は、粉砕された粒子の表面上にアモルファスドメインの形成をもたらす可能性がある。原薬の物理的及び化学的安定性に対するアモルファスドメインの影響は、分子に依存する。粉砕後の薬物粒子内のアモルファス含有量の最小化は、コンディショニングステップ(例えば、高湿度でのアモルファスドメインの再結晶化)で達成することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、薬物粒子は、薬物が溶液から沈殿するボトムアップ製造プロセスによって調製される。適切なボトムアッププロセスには、いくつかを挙げると、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、様々な形態の超臨界流体プロセス、テンプレート法、微細加工、リソグラフィー(例えば、PRINT(商標)技術)、スピノーダル分解などが含まれる。
【0134】
いくつかの実施形態において、薬物粒子は、噴霧乾燥によって調製される。噴霧乾燥に関する詳細な考慮事項を以下に詳述する。噴霧乾燥後の薬物の物理的形態(すなわち、結晶性又はアモルファス)は、薬物の分子量、薬物の回転可能な結合の数、及び他の化合物構造特性、及び噴霧乾燥条件に依存する。薬物の性質及び乾燥プロセスのタイムスケールに応じて、ボトムアッププロセス法は、物理的形態において実質的に結晶性(例えば、90%を超える結晶化度)又は実質的にアモルファス(例えば、90%を超えるアモルファス)である薬物をもたらし得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、ミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子は、スピノーダル分解によって調製される。このプロセスでは、薬物は最初に、選択された非溶媒と混和性である溶媒に溶解される。次に、薬物溶液を非溶媒に滴下して加えることにより、薬物を沈殿させる。いくつかの実施形態において、急速な沈殿は、典型的には、アモルファスなナノサイズの薬物粒子をもたらす。いくつかの態様において、沈殿した薬物粒子は、20nm~200nmのサイズである。
【0136】
いくつかの実施形態において、スピノーダル分解によって生成されたミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子は、沈殿プロセス中に超音波エネルギーの適用によって核形成及び結晶化され得る。薬物の分子量が十分に小さい場合、核形成の発生のために超音波エネルギーは必要とされない場合がある。
【0137】
いくつかの実施形態において、この方法は、1つ以上の薬物の溶液を調製することを含み得る。いくつかの実施形態において、溶液は、非溶媒と混和性である溶媒を含む。いくつかの態様において、溶液は、アルコール(例えば、エタノール、2-プロパノール)、アルカン(例えば、ヘキサン又はオクタン)、又はそれらの任意の組み合わせを含む溶媒を含む。薬物を溶解するために使用される溶媒は、薬物の物理化学的特性に依存する。いくつかの実施形態において、フッ素化された非溶媒が使用される場合、短鎖炭化水素-フルオロカーボンデブロック又は半フッ素化アルカンを溶媒として使用することができる。これらには、ペルフルオロブチルエタン(F)、ペルフルオロエチルブタン(F)、及びオクタンなどの分子が含まれる。いくつかの実施形態において、溶媒は室温で液体である。
【0138】
いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、クメン、ギ酸、又はペンタンなどのUSPクラス3溶媒であり得る。原薬の物理化学的性質によっては、これらの溶媒をプロセスの非溶媒として使用することもできる。
【0139】
いくつかの実施形態において、非溶媒の選択は、原薬の物理化学的特性に基づく。薬物は、非溶媒への溶解度が最小限であるだけでなく、非溶媒に効果的に分散して安定した懸濁液を形成する必要がある。非溶媒への薬物の溶解度は、0.1mg/ml未満、例えば0.01mg/ml未満である必要がある。溶解%は5%未満、例えば1%w/w未満である必要がある。いくつかの実施形態において、非溶媒はフッ素化液体であり、フッ素化液体は、ペルフルオロカーボン、ハロゲン化フルオロカーボン、又は半フッ素化アルカンである。いくつかの実施形態において、非溶媒は、例えばペルフルオロオクタンやペルフルオロデカリンなどの過フッ素化液体である。いくつかの実施形態において、非溶媒は、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロヘキシルブロミド、又はペルフルオロヘキシルクロリドなどのハロゲン化フルオロカーボンである。いくつかの実施形態において、非溶媒は、半フッ素化アルカン又はフルオロカーボン-炭化水素ジブロック、例えば、ペルフルオロオクチルエタン(F8H2)、ペルフルオロヘキシルエタン(F6H2)、ペルフルオロヘキシルプロパン(F6H3)、ペルフルオロヘキシルブタン(F6H4)、ペルフルオロヘキシルヘキサン(F6H6)、又はペルフルオロヘキシルデカン(F6H10)である。
【0140】
いくつかの実施形態において、6炭素テロマー(C化学)からの非溶媒の調製は、中間体のヨウ化テロマーからペルフルオロオクタン酸(PFOA)を形成する可能性が低いために有益である。Cテロマー化学への移行には、求められる物理化学的特性と、より短いフッ素化鎖による溶解力の向上の可能性との間のバランスを維持する必要がある。
【0141】
接着混合物を形成するための薬物と担体の均一な混合。
薬物及び担体粒子のサイズが細かくなるにつれて、乾燥粒子の標準的な高剪断及び低剪断混合プロセスによって、微細な及び極微細な担体粒子の均一な混合物を得ることがますます困難になる。したがって、いくつかの態様において、プロセスは、液体の非溶媒を利用して、薬物と微細又は極微細な担体粒子との効果的な混合及び均一な共懸濁液を可能にする。
【0142】
いくつかの実施形態において、薬物粒子及び担体粒子は、非溶媒に分散されている。薬物粒子及び担体粒子は、薬物及び担体の凝集体の共懸濁液を形成する。熱力学的に、薬物粒子が非溶媒から離れて移動することが有利であり、それにより、薬物粒子はロイシン担体粒子と凝集体を形成する。あるいは、非溶媒を除去して乾燥粉末を生成するときに、凝集物が形成され得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、薬物粒子及び担体粒子は、非溶媒中で混合される。いくつかの実施形態において、ロイシン担体粒子は、非溶媒(例えば、PFOB)に懸濁されて、高剪断ミキサーで均質な懸濁液を形成する。混合条件下で、溶液中の薬物は、非溶媒及びロイシン担体粒子を含む懸濁液に滴下することにより添加される。薬物は、スピノーダル分解によってミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子として沈殿し、共懸濁液を形成する。薬物粒子の大きな表面積と非溶媒との接触を減らすために、薬物粒子は循環する担体粒子と凝集体を形成する。高剪断混合のために、共懸濁液は、懸濁液全体にわたって均一な含有量を有する均一な混合物を形成する。用量含有量の均一性に関する相対標準偏差は、5%未満、例えば、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満である。
【0144】
いくつかの実施形態において、担体及び薬物粒子は、相互作用するプルームを備えたツイン流体ノズルを有する多頭口噴霧器からの別個の非溶媒流から混合されて、共懸濁液を形成することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、担体及び薬物粒子は、混合ノズルと組み合わせて、共懸濁液を形成することができる。
液体の非溶媒を除去して乾燥粉末を形成する。
【0146】
いくつかの実施形態において、凝集物が形成された後、非溶媒が除去される。非溶媒を除去し、乾燥粉末製剤を回収するために、様々な技術を使用することができる。いくつかの実施形態において、非溶媒は、薬物及び担体の接着混合物のマイクロメートル特性を保存する任意のプロセスによって除去することができる。非溶媒を除去し、乾燥粉末製剤を回収するのに適した技術の例には、蒸発、真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、液体非溶媒の除去は、噴霧乾燥によって行われる。いくつかの実施形態において、液体非溶媒の除去は、凍結乾燥によって行われる。
【0147】
非溶媒が使用されるいくつかの実施形態において、非溶媒を除去することによって乾燥粉末製剤を回収することが有益である可能性がある。例えば、担体及び薬物粒子は、スピノーダル分解プロセスによって、又は混合ティーや多頭ノズルを使用して非溶媒中で混合され、連続液相は、得られた液体供給物から除去されて、乾燥粉末を得ることができる。これは、噴霧乾燥や凍結乾燥など、様々な手法で行うことができる。
【0148】
噴霧化。
いくつかの実施形態において、原料は噴霧化される。一実施形態において、液体噴霧器は、噴霧乾燥機及び複数の噴霧ノズル(例えば、ツイン流体ノズル)との接続のために適合された構造体を有する。各噴霧ノズルは、液体の供給を分散させるように適合された液体ノズルと、ガスの供給を分散させるように適合されたガスノズルとを含む。ツイン流体ノズルを備えた例示的な噴霧器は、米国特許第8,524,279号及び第8,936,813号に記載されている。場合によっては、この方法は、商業的プラント規模での噴霧乾燥に適した分散条件下で液体を噴霧するための装置の使用を含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、この方法は、液体ビヒクル(例えば、供給原料)中に活性剤を含む供給原料を提供すること;中央ガスノズルを支持するハウジング及び中央ガスノズルの周りに複数の噴霧ノズルを含むマルチノズル噴霧器を提供すること(ここで、各噴霧ノズルは、液体ノズルと、液体ノズルを取り囲むキャップとして構成されたガスノズルとを含み、中央のガスノズルは、液体ノズルと関連づけられていない);マルチノズル噴霧器からの供給原料を噴霧して液滴スプレーを生成すること(ここで、供給原料は、ハウジングを通って、各噴霧ノズルの液体ノズルに供給される);及び、液滴スプレーを加熱されたガス流に流して、供給原料の液体ビヒクルを蒸発させ、活性剤を含む乾燥粒子の粉末を生成すること(ここで、乾燥粒子は5ミクロン未満の平均粒径を有する)を含む。活性剤は、セクションIIIに記載されている1つ以上の活性剤を含み得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、液滴の粒度分布の有意な広がりは、約1.5%w/w超の固体負荷で起こる。分布の尾部にあるより大きなサイズの液滴は、対応する粉末分布においてより大きな粒子をもたらす。結果として、いくつかの実施形態において、ツイン流体ノズルを使用して、概して固体負荷を1.5%w/w以下に、例えば、1.0%w/w又は0.75%w/wに制限する。
【0151】
いくつかの実施形態において、狭い液滴サイズ分布は、例えば、米国特許第7,967,221号及び第8,616,464号に開示されているように、平面フィルム噴霧器を用いてより高い固体負荷で達成することができる。いくつかの実施形態において、供給原料は、2%~10%w/w、例えば3%~5%w/wの固体負荷で噴霧化され得る。例えば、噴霧器は、第1の環状液体フローチャネル、第1の円形ガスフローチャネル、及びガス流を噴霧化するための第2の環状ガスフローチャネル、及び前記第1のガス流チャネルと垂直に連通している第3のガスフローチャネルを備えてもよい。第1の液体フローチャネルは、チャネル内の薄膜に液体を広げるために、0.51mm(0.020インチ)未満の直径を有するくびれを含み得る。第1の液体フローチャネルは、第1及び第2のガスフローチャネルの中間にあってもよく、第1及び第2のガスフローチャネルは、噴霧ガスが液体薄膜に衝突して液滴を生成するように配置することができる。第3のガス流路を出るガスの流れは、薄膜に対してそれに直角に衝突し得る。いくつかの実施形態において、噴霧器は、噴霧乾燥システムの一部であり得る。いくつかの実施形態において、噴霧乾燥システムは、噴霧器、液滴を乾燥させて粒子を形成するための乾燥チャンバー、及び粒子を収集するためのコレクターを含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、供給原料は、複数のツイン流体ノズルを備えた噴霧器を使用して噴霧される。個々のツイン流体噴霧器からのプルームは、相互作用する場合と相互作用しない場合がある。
【0153】
乾燥。
乾燥工程は、吸入によって投与される医薬品で使用するための噴霧乾燥粒子を調製するために使用される既製の装置を使用して実施することができる。市販の噴霧乾燥機には、Buechi AG及びNiro Corp.によって製造されたものが含まれる。
【0154】
いくつかの実施形態において、供給原料は、溶媒を蒸発させ、乾燥生成物をコレクターに運ぶ温かい濾過された空気の流れの中に噴霧される。その後、使用済み空気は蒸発した溶剤とともに排出される。必要な粒径、含水率、及び得られる乾燥粒子の生成収率を生成するために、入口及び出口温度、供給速度、噴霧圧力、乾燥空気の流量、及びノズル構成などの噴霧乾燥機の操作条件を調整することができる。適切な装置及び処理条件の選択は、本明細書の教示を考慮した当業者の範囲内であり、過度の実験なしに達成することができる。
【0155】
NIRO(商標)PSD-1(商標)スケールドライヤー(Niro Corp.)の設定例は次のとおりである。
(i)約80℃~約200℃(例えば、約80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200℃)、例えば約110℃~170℃の吸気口温度;
(ii)約40℃~約120℃(例えば、約40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、又は120℃)、例えば約60℃~100℃の排気口;
(iii)約30g/分~約120g/分(例えば、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、又は120g/分)、例えば約50g/分~100g/分の液体供給速度;
(iv)約3960l/分(約140標準立方フィート/分(scfm))~約6510l/分(約230scfm)(例えば、約140、150、160、170、180、190、200、210、220、又は230scfm)、例えば約4530l/分(約160scfm)~5950l/分(210scfm)の総気流;及び/又は
(v)約850l/分(約30scfm)~約2550l/分(約90scfm)(例えば、約30、40、50、60、70、又は80scfm)、例えば約1130l/分(約40scfm)~2270l/分(80scfm)の噴霧空気流量。
【0156】
粉末集団密度(powder population density:PPD)は、一次幾何学的粒径と相関することが確認されている。より具体的には、PPDは、供給原料中の固形分濃度に液体供給速度をかけ、総空気流量(噴霧器の空気+乾燥空気)で割ったものとして定義される。所与のシステム(噴霧乾燥装置と配合を考慮)について、噴霧乾燥粉末の粒径、例えばx50中央径は、PPDに正比例する。PPDは少なくとも部分的にシステムに依存するため、所与のPPD数がすべての条件で普遍的な値になるわけではない。いくつかの実施形態において、粒子集団密度又はPPDの値は、0.01×10~1.0×10、例えば、0.03×10~0.2×10である。
【0157】
いくつかの実施形態において、製剤は、約0.1重量%~約99.9重量%の任意の値、例えば、約0.5%~約99%、約1%~約98%、約2%~約95%、約5%~85%、約10%~80%、約20%~75%、約25%~70%、約30%~60%、約35%~55%、約40%~80%、約40%~70%、約45%~65%、約50%~90%、約55%~85%、又は約60%~75%の任意の値の活性剤を含む。いくつかの実施形態において、活性剤の量はまた、組成物に含まれる添加剤の相対量に依存するであろう。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、0.001mg/日~100mg/日の用量、又は0.01mg/日~75mg/日の用量、又は0.10mg/日~50mg/日、0.10mg/日~1mg/日、0.15mg/日~0.90mg/日の用量、又は0.20mg/日~40mg/日の用量、又は0.50mg/日~30mg/日の用量、又は1mg/日~25mg/日の用量、又は5mg/日~20mg/日の用量で送達される活性剤に特に有用である。2つ以上の活性剤を本明細書に記載の製剤に組み込むことができ、「薬剤」という用語の使用は、2つ以上のそのような薬剤(例えば、2つの異なる薬物粒子又はAPI)の使用を排除しないことを理解されたい。当業者には理解されるように、2つ以上の活性剤の組み込みは、デバイスの性質、レセプタクルサイズ、及び最小充填質量に依存するであろう。
【0158】
V.送達システム
別の態様では、吸入器及び本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤を含む送達システムが提供される。いくつかの態様において、担体ベースの乾燥粉末製剤は、経口吸入を介した肺への投与に適している。
【0159】
担体ベースの乾燥粉末製剤は、単回使用の乾燥粉末吸入器、単位用量の乾燥粉末吸入器(例えば、カプセルベース又はブリスターベース)、又は複数回投与の乾燥粉末吸入器(例えば、リザーバー又はブリスターベース)などの乾燥粉末吸入器で使用するために製剤化することができる。
【0160】
特定の実施形態において、本開示は、乾燥粉末吸入器と、1つ以上の活性剤を含む噴霧乾燥粒子を含む吸入用の乾燥粉末製剤とを含む送達システムに関するものであり、in vitroでの総肺沈着量は、名目用量の約40%~80%w/w(例えば、名目用量の約40%w/w、45%w/w、50%w/w、55%w/w、60%w/w、65%w/w、70%w/w、75%w/w、又は80%w/w)である。
【0161】
いくつかの実施形態において、本開示は、乾燥粉末吸入器と、治療的に有効な成分を含む噴霧乾燥粒子を含む吸入用の乾燥粉末製剤とを含む送達システムに関するものであり、in vitroでの総肺沈着量は、EDの85%~98%w/w(例えば、EDの約85%w/w、86%w/w、87%w/w、88%w/w、89%w/w、90%w/w、91%w/w、92%w/w、93%w/w、94%w/w、95%w/w、96%w/w、97%w/w、又は98%w/w)である。
【0162】
いくつかの実施形態において、適切な乾燥粉末吸入器(DPI)は単位用量吸入器を含み、ここに乾燥粉末がカプセル又はブリスターに入れられて保存され、患者は使用前にこのカプセル又はブリスターのうちの1つ以上をデバイスに装填する。あるいは、用量がホイル-ホイルブリスターに事前に包装されている場合、例えばカートリッジ、ストリップ、又はホイールでの複数回投与分の乾燥粉末吸入器が企図される。あるいは、いくつかの実施形態において、本発明の粉末の低い吸湿性は、リザーバーベースの乾燥粉末吸入器の使用を可能にし得る。乾燥粉末吸入器の任意の抵抗が企図されているが、高い装置抵抗(例えば、0.13cmH0.5L分-1超)を有する装置を使用することで流量を低下させ、それにより、所与のサイズの粒子の慣性衝突パラメータを低減することができる。
【0163】
低抵抗の乾燥粉末吸入器は、一般に、小児患者が薬剤を担体から効果的に分散させるのに十分な吸気流量を生成できるようにするため、これらの患者に好ましいと考えられている。より高い抵抗の乾燥粉末吸入器を使用する場合、患者はより高い圧力降下で吸入することが実証されている。高抵抗吸入器は通常、粉末の分散を改善するだけでなく、デバイスの抵抗を高める、デバイス内の分散要素(オリフィスなど)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、デバイス抵抗の増加は、より低い流量にもかかわらず、小児患者におけるより効果的な用量送達につながる患者の努力の増加を促進し得る。流量が少ないと、衝突パラメータも減少する。
【0164】
例示的な単回投与乾燥粉末吸入器には、AEROLIZER(商標)(Novartis、米国特許第3,991,761号(Cocozza)に記載)及びBREEZHALER(商標)(Novartis、米国特許第8,479,730号(Zieglerら)に記載)が含まれる。他の適切な単回投与吸入器には、米国特許第8,069,851号及び第7,559,325号に記載されているものが含まれる。
【0165】
一部の患者が1日1回の投与を必要とする薬剤を送達するために使用するのがより簡単かつより便利であると考える例示的な単位用量ブリスター吸入器には、米国特許第8,573,197号(Axfordら)に記載されている吸入器が含まれる。
【0166】
本発明の製剤の環境ロバスト性のために、これらの粉末をリザーバーベースのDPIで送達することが可能となり得る。適切なDPIには、いくつかを挙げると、タービュヘイラー(Turbuhaler)(登録商標)、Twisthaler(登録商標)、Starhaler(商標)、Genuair(登録商標)、NEXThaler(商標)、ディスクス(DISKUS)(登録商標)、ディスクヘラー(Diskhaler)(登録商標)などが含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、分散チャンバー内に含まれる振動アクチュエータを備えた呼吸作動式吸入器である。適切な呼吸作動式吸入器の例は、米国特許出願公開第2013/0340747号、第2013/0213397号、及び第2016/0199598号に記載されており、これらの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される製剤及び本明細書に開示される乾燥粉末吸入器の組み合わせは、肺への非常に効率的な送達(TLD>70%)と、小気道への高効率の送達(例えば、2500μm-1min未満のMMIP)を可能にする。
【0168】
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、呼吸作動式吸入器である。乾燥粉末吸入器は、入口チャネルからエアロゾル化された粉末薬剤を受け入れるように適合された第1のチャンバーを含み得る。第1のチャンバーの容積は、入口チャネルの容積よりも大きくてもよい。乾燥粉末吸入器は、第1のチャンバーからエアロゾル化された粉末薬剤の少なくとも一部を受け入れるように適合された分散チャンバーを含み得る。分散チャンバーは、長手方向軸に沿って分散チャンバー内で移動可能なアクチュエータを保持することができる。乾燥粉末吸入器は、空気及び粉末薬剤を吸入器から出して患者に送達させるための出口チャネルを含み得る。吸入器の形状は、アクチュエータを長手方向軸に沿って振動させ、振動アクチュエータが分散チャンバーに受け取られた粉末薬剤を、出口チャネルを介して患者に送達するために効果的に分散させることを可能にする流動プロファイルが分散チャンバー内で生成されるようなものであり得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、乾燥粉末吸入器である。乾燥粉末吸入器は、特定の生物学的及び化学的薬剤への曝露による治療に有効な粉末薬剤を保持するように構成された粉末貯蔵領域を含み得る。吸入器は、入口チャネルを含み得る。吸入器は、入口チャネルから空気及び粉末薬剤を受け取るように適合された分散チャンバーを含み得る。チャンバーは、分散チャンバー内で移動可能なアクチュエータを保持することができる。吸入器は、空気及びエアロゾル化された薬剤を吸入器から出して患者に送達させるための出口チャネルを含み得る。吸入器の形状は、アクチュエータを振動させる流動プロファイルが分散チャンバー内で生成されるようなものであり得る。これにより、振動時にアクチュエータが分散チャンバー内の粉末薬剤を細分化し、エアロゾル化して空気に同伴させ、出口チャネルを介して患者に送達できるようにし得る。
【0170】
場合によっては、乾燥粉末吸入器は、入口チャネルからエアロゾル化された粉末薬剤を受け入れるように適合された第1のチャンバーを含み得る。第1のチャンバーの容積は、入口チャネルの容積と等しくてもよいし、それより大きくても、又は小さくてもよい。乾燥粉末吸入器は、第1のチャンバーからエアロゾル化された粉末薬剤の少なくとも一部を受け入れるように適合された分散チャンバーを含み得る。分散チャンバーは、長手方向軸に沿って分散チャンバー内で移動可能なアクチュエータを保持することができる。乾燥粉末吸入器は、空気及び粉末薬剤が吸入器を出て患者に送達されるようにする出口チャネルを含み得る。吸入器の形状は、アクチュエータを長手方向軸に沿って振動させ、振動アクチュエータが分散チャンバーに受け取られた粉末薬剤を、出口チャネルを介して患者に送達するために効果的に分散させることを可能にする流動プロファイルが分散チャンバー内で生成されるようなものであり得る。アクチュエータの振動中に、アクチュエータはユーザへのフィードバックを目的とした可聴音を生成する場合がある。
【0171】
VI.使用方法
一態様では、本開示で提供される有効量の担体ベースの乾燥粉末製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の疾患を治療する方法が提供され、担体ベースの乾燥粉末製剤は、吸入を介して対象に投与される。製剤の特徴は、セクションI及び本開示全体に記載されている。いくつかの実施形態において、この方法は、製剤を対象の肺に投与することを含む。場合によっては、担体ベースの乾燥粉末製剤はエアロゾルとして投与される。いくつかの実施形態において、製剤は、本開示のセクションVに記載されている吸入器を使用してエアロゾルとして投与される。例えば、担体ベースの乾燥粉末製剤は、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、単回投与吸入器、又は複数単位投与吸入器を使用して投与される。場合によっては、ネブライザー又は加圧式定量吸入器を使用することができる。
【0172】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、喘息及び慢性閉塞性肺疾患などの閉塞性又は炎症性気道疾患の治療のための方法であり、その方法は、それを必要とする対象に、有効量の前述の乾燥粉末製剤を投与することを含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、全身性疾患の治療のための方法であり、この方法は、それを必要とする対象に、有効量の前述の乾燥粉末製剤を投与することを含む。
【0174】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、本開示のセクションIIIに記載されるような活性剤(例えば、医薬品)を含む製剤を肺の小気道に送達するための方法である。小気道への送達を改善するために、エアロゾル化された担体ベースの乾燥粉末製剤は、上気道(URT)及び大気道での沈着を効果的に回避する一方で、小気道(例えば、8~23次気管支)での沈着を大幅に改善する必要がある。いくつかの実施形態において、前述の担体ベースの乾燥粉末製剤は、8~23次、例えば、8~20、8~19、8~18、9~20、10~18、11~17、12~20次気管支の小気道の沈着を大幅に改善することができる。いくつかの態様において、担体ベースの乾燥粉末製剤は、肺胞管及び肺胞における実質的な沈着を制限するために、8~18次気管支の小気道に沈着する。
【0175】
いくつかの実施形態において、本開示で提供されるような担体ベースの乾燥粉末製剤をエアロゾル化する方法が提供される。例えば、担体ベースの乾燥粉末製剤は、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、単回投与吸入器、又は複数単位投与吸入器を使用してエアロゾル化することができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、担体ベースの乾燥粉末製剤は、対象に投与するか、又は入口及び出口を有する分散チャンバーを含む吸入器を使用してエアロゾル化することができる。分散チャンバーは、分散チャンバーの長手方向軸に沿って振動するように構成されたアクチュエータを含み得る。アクチュエータは、出口チャネルを通る空気の流れを誘発して、空気及び担体ベースの乾燥粉末製剤を入口から分散チャンバーに入れさせ、アクチュエータを分散チャンバー内で振動させて、出口を介して対象に送達するための担体ベース乾燥粉末組成物の出口からの分散を助けることができる。いくつかの態様では、疾患は肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、間質性肺疾患、気道感染症、結合組織疾患、炎症性腸疾患、骨髄又は肺移植、免疫不全、びまん性汎細気管支炎、細気管支炎、又はミネラルダスト気道疾患である。
【0177】
いくつかの実施形態において、微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤は、対象の肺への送達のためにエアロゾル化される。いくつかの実施形態において、対象に投与される微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%超、例えば、71%超、72%超、73%超、74%超、75%超、76%超、77%超、78%超、79%超、80%超、81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、又は95%を超が、対象の肺に送達される。
【0178】
いくつかの実施形態において、微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の実質的な部分(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、最大100%)が、NGIのステージ3、4、及び5の少なくとも1つに送達される(製剤のNGIへのエアロゾル化時)。いくつかの実施形態において、微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%超、例えば、71%超、72%超、73%超、74%超、75%超、76%超、77%超、78%超、79%超、80%超、81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、又は95%超が、NGIのステージ3、4、及び5の少なくとも1つに送達される。いくつかの態様において、担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の実質的な部分(例えば、70%から90%)がNGIのステージ3及び4に送達され、残りの少量の部分(例えば、0%から10%)がNGIのステージ5に送達される(製剤のNGIへのエアロゾル化時)。
【0179】
いくつかの実施形態において、極微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤は、対象の肺への送達のためにエアロゾル化される。いくつかの態様において、対象に投与される極微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の90%超、例えば、91%超、92%超、93%超、94%超、95超96%超、97%超、98%超、又は99%超が、対象の肺に送達される。
【0180】
いくつかの態様において、極微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の実質的な部分(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、最大100%)が、NGIのステージ4、5、及び6の少なくとも1つに送達される(製剤のNGIへのエアロゾル化時)。いくつかの実施形態において、極微細な担体粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%超、例えば、71%超、72%超、73%超、74%超、75%超、76%超、77%超、78%超、79%超、80%超、81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、又は95%超が、NGIのステージ4、5、及び6の少なくとも1つに送達される。
【0181】
いくつかの態様において、担体ベースの乾燥粉末製剤の一部は、肺の末梢領域に送達される。いくつかの態様において、担体ベースの乾燥粉末製剤の一部は、対象の肺胞に送達される。本明細書に記載の担体ベースの乾燥粉末製剤は、大粒子エアロゾル治療と比較して、より高い総肺沈着及びより良好な末梢肺浸透を可能にし、追加の臨床的利益を提供する。これは、小児喘息患者に特に有益となり得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、小気道(内径が2mm未満の気道)は、8~23次気管支の気道を含み、閉塞性気道疾患の重要な構成要素である。肺気腫は古典的に終末細気管支に関係するが、喘息でも、重症喘息の患者だけでなく軽度の疾患の患者においても小気道が関係することが認識されてきている。遠位気道の炎症及び機能不全は、夜間喘息、運動誘発性喘息、及びアレルギー性喘息などの別個の臨床的喘息表現型でも示されている。これらの表現型は、小気道への吸入薬物療法の標的化をサポートする。
【0183】
小気道はまた、肺動脈性肺高血圧症などの他の疾患の治療のために、間質腔を介して肺血管系の前毛細血管領域への経路を提供する。
本明細書に記載の製剤及びデバイスを使用して治療するために修正可能な(amendable)小気道疾患には、喘息、COPD、間質性肺疾患、気道感染症、結合組織疾患、炎症性腸疾患、骨髄又は肺移植、免疫不全、びまん性汎細気管支炎、又は、閉塞性細気管支炎、濾胞性細気管支炎、呼吸細気管支炎、又はミネラルダスト気道疾患から選択される細気管支炎が含まれる。
【0184】
場合によっては、活性剤を含む担体ベースの乾燥粉末製剤の送達は、活性剤の高い局所肺濃度を作り出すことにより、経口投与製剤よりも効率的である可能性がある。これにより、より迅速な作用の発現がもたらされる可能性があり、副作用は少なく、有効性は同等又は強化されている可能性が高い。肺への直接的な活性剤(例えば、API)の局所送達は、経口バイオアベイラビリティの低下を回避し、局所肺濃度を高くしつつ総用量曝露は低くして有効性を高めることにより、効果の選択性をさらに高めることができる。吸入による乾燥粉末製剤の投与もまた有利である。なぜなら、この投与経路は、広範な初回通過肝代謝及びCYP3A誘導剤/阻害剤との薬物間相互作用の回避を可能にするからである。肺疾患の治療に使用される多くの薬は、この酵素系を使用して代謝される可能性があるため、相互作用や禁忌の影響を受けやすくなっている。吸入送達は初回通過代謝を回避するため、これらの相互作用の深刻さを回避する可能性があり、同時に、より低い投与量(ただし、より高い肺組織沈着量)は相互作用の可能性を最小限に抑える可能性がある。場合によっては、提供される製剤は、口及び喉への沈着が少なく、飲み込む用量が少ないため、活性剤を肺の換気領域によりよく標的化し、それによって変動性を低減する。用量の変動を低減することにより、乾燥粉末製剤の名目用量を減らすことができる。
【0185】
場合によっては、(錠剤などの経口剤形と比較して)低用量の乾燥粉末製剤を対象に投与することができる。場合によっては、嚥下のための経口用量に使用されるのと同様の用量の乾燥粉末製剤を対象に投与することができる。この場合、薬物は標的部位に直接投与されるため、乾燥粉末吸入器製剤を用いたときの全身薬物レベルが低下し得る。これは、慢性的な毎日の使用に関連する全身毒性の低下につながる可能性がある。
【0186】
場合によっては、エアロゾル化効率が高い肺送達により、エアロゾル化及び対象による吸入時の口及び喉の沈着が少なくなる可能性がある。口と喉に沈着した薬物は嚥下され、経口投与された製剤と同様に吸収されるため、効率的なエアロゾル化を達成することによって嚥下を減らすことで、全身効果の発生率を減らすことができる。
【0187】
実施形態
実施形態1:50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する極微細な担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【0188】
実施形態2:50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する極微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【0189】
実施形態3:極微細な担体粒子又は極微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が1000nm未満である、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態4:極微細な担体粒子又は極微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が約300~700nmである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0190】
実施形態5:極微細な担体粒子又は極微細なロイシン担体粒子が90%を超える結晶化度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態6:500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する微細な担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【0191】
実施形態7:500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する粒子凝集体を形成する微細なロイシン担体粒子に付着した複数の薬物粒子を含む担体ベースの乾燥粉末製剤。
【0192】
実施形態8:微細な担体粒子又は微細なロイシン担体粒子の空気力学的中央径(D)が1μm~5μmである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態9:微細な担体粒子又は微細なロイシン担体粒子が90%を超える結晶化度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0193】
実施形態10:薬物粒子が3μm未満の質量中央径を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態11:薬物粒子が約20nm~500nmの質量中央径を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0194】
実施形態12:薬物粒子が90%を超える結晶化度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態13:薬物粒子が90%を超えるアモルファス含有量を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0195】
実施形態14:薬物粒子が1つ以上のコルチコステロイド、1つ以上の気管支拡張剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態15:薬物粒子が、アルバータ理想化咽喉において、放出用量の70%を超える総肺沈着量を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0196】
実施形態16:薬物粒子が、アルバータ理想化咽喉において、放出用量の90%を超える総肺沈着量を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態17:担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%を超える量が、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標):NGI)のステージ3、4、及び5の少なくとも1つに送達される(製剤のNGIへのエアロゾル化時)、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0197】
実施形態18:担体ベースの乾燥粉末製剤の放出用量の70%を超える量が、次世代インパクター(NEXT GENERATION IMPACTOR(商標):NGI)のステージ4、5、及び6の少なくとも1つに送達される(製剤のNGIへのエアロゾル化時)、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0198】
実施形態19:担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法であって:3μm未満の空気力学的中央径(D)を含む担体粒子を調製すること;非溶媒を担体粒子に添加して懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製すること;非溶媒中の担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と担体粒子の共懸濁液を形成すること;及び、非溶媒を除去して、担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成することを含み、接着混合物は、50~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する方法。
【0199】
実施形態20:担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法であって:ロイシン及び第1の溶媒を含む水溶液を調製すること;水溶液を乾燥させて、1μm~3μmの空気力学的中央径(D)を有する微細なロイシン担体粒子を生成すること;微細なロイシン担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である第2の溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製すること;非溶媒中の微細なロイシン担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と微細なロイシン担体粒子の共懸濁液を形成すること;及び、非溶媒を除去して、微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成することを含み、接着混合物は、500~2500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する方法。
【0200】
実施形態21:担体ベースの乾燥粉末製剤を調製する方法であって:ロイシン及び第1の溶媒を含む水溶液を調製すること;水溶液を乾燥させて、1000nm未満の空気力学的中央径(D)を有する極微細なロイシン担体粒子を生成すること;極微細なロイシン担体粒子に非溶媒を加えて懸濁液を形成すること;非溶媒と混和性である第2の溶媒及び薬物を含む薬物溶液を調製すること;非溶媒中の極微細なロイシン担体粒子の懸濁液に薬物溶液を混合しながら添加して薬物粒子を沈殿させることにより、非溶媒中の薬物粒子と極微細なロイシン担体粒子の共懸濁液を形成すること;及び、非溶媒を除去して、極微細なロイシン担体粒子に付着した薬物粒子の接着混合物を含む乾燥粉末を形成することを含み、接着混合物は、50~500μmL分-1の質量中央値衝突パラメータ(MMIP)値を有する方法。
【0201】
実施形態22:第1の溶媒が水、エタノール、又はそれらの組み合わせである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態23:第1の溶媒中の担体の固形分が0.4%w/w~1.8%w/wである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0202】
実施形態24:第1の溶媒中のロイシンの固形分が0.4%w/w~1.8%w/wである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態25:水溶液を乾燥させて担体粒子を生成することが、噴霧乾燥によって行われる、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0203】
実施形態26:水溶液を乾燥させて微細な又は極微細な担体粒子を生成することが、噴霧乾燥によって行われる、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態27:水溶液を乾燥させて微細なロイシン担体粒子を生成することが、噴霧乾燥によって行われる、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0204】
実施形態28:水溶液を乾燥させて極微細なロイシン担体粒子を生成することが、噴霧乾燥によって行われる、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態29:非溶媒が過フッ素化液体又はフルオロカーボン-炭化水素ジブロックである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0205】
実施形態30:非溶媒が、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクチルエタン、ペルフルオロヘキシルブタン、又はペルフルオロヘキシルデカンである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0206】
実施形態31:薬物粒子が90%を超える結晶化度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態32:薬物溶液が懸濁液に滴下添加される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0207】
実施形態33:共懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末を生成することによって非溶媒を除去することをさらに含む、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態34:共懸濁液を凍結乾燥して乾燥粉末を生成することによって非溶媒を除去することをさらに含む、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0208】
実施形態35:担体粒子が3μm未満の(D)及び0.01g/cm~0.40g/cmのタップ密度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態36:微細なロイシン担体粒子が1μm~3μmの(D)及び0.05g/cm~0.40g/cmのタップ密度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0209】
実施形態37:極微細なロイシン担体粒子が300nm~700nmの(D)及び0.01g/cm~0.30g/cmのタップ密度を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0210】
実施形態38:第2の溶媒が2-プロパノールを含む、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態39:共懸濁液中の薬物溶液のブレンド均一性が2%未満の標準偏差を有する、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0211】
実施形態40:前記方法は、それを必要とする対象に、先行又は後続の実施形態のいずれかの有効量の担体ベースの乾燥粉末製剤を投与することを含み、担体ベースの乾燥粉末製剤は吸入を介して対象に投与される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0212】
実施形態41:担体ベースの乾燥粉末製剤がエアロゾルとして投与される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態42:担体ベースの乾燥粉末製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、単回投与吸入器、又は複数単位投与吸入器を使用して投与される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0213】
実施形態43:担体ベースの乾燥粉末製剤が、入口及び出口を有する分散チャンバーを含む吸入器を提供することによって投与され、分散チャンバーは、分散チャンバーの長手方向軸に沿って振動するように構成されたアクチュエータを含むとともに、出口チャネルを通る空気流を誘導して、空気及び担体ベースの乾燥粉末製剤を入口から分散チャンバーに入れ、アクチュエータを分散チャンバー内で振動させて、出口から患者へ送達するために、出口からの担体ベースの乾燥粉末製剤の分散を助ける、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0214】
実施形態44:対象に投与される担体ベースの乾燥粉末製剤の70%超が対象の肺に送達される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態45:対象に投与される担体ベースの乾燥粉末製剤の90%超が対象の肺に送達される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0215】
実施形態46:担体ベースの乾燥粉末製剤の一部が対象の肺の末梢領域に送達される、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
実施形態47:疾患が肺疾患である、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0216】
実施形態48:疾患が、慢性閉塞性肺疾患、喘息、間質性肺疾患、気道感染症、結合組織疾患、炎症性腸疾患、骨髄又は肺移植、免疫不全、びまん性汎細気管支炎、細気管支炎、又はミネラルダスト気道疾患のうちの少なくとも1つである、先行又は後続の実施形態のいずれかの実施形態。
【0217】
実施例
実施例全体を通して、ロイシン担体粒子が利用されている。しかしながら、任意の薬学的に許容される担体粒子を利用することができると考えられる。
【0218】
例1:ロイシン担体粒子の調製
ロイシン担体粒子のバッチを、水に溶解したロイシンを含む水性原料から製造した。粒径及び形態に対する固形分含有量の影響を調査するために、ロイシン濃度を0.3%w/wから1.8%w/wの間で変化させた。原料は、入口温度110℃、出口温度65℃~70℃、吸引器設定100%、ガス(空気)圧力483kPa(70psi)を使用した二液噴霧器、及び液体供給速度5.0mL/分のBuechi B-191噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。特注の(Adams and Chittenden、カリフォルニア州バークレー)ガラスサイクロン(44.5mm(1.75インチ))を直径31.8mm(1.25インチ)×長さ203mm(8インチ)のコレクターで使用した。この収集システムを使用すると、ロイシン担体粒子のプロセス収率は通常50%~70%である。
【0219】
一次粒子の粒度分布を、レーザー回折(Sympatec GmbH、クラウスタール-ツェラーフェルト、ドイツ)で決定した。Sympatec H3296ユニットには、R2レンズ、ASPIROSマイクロドージングユニット、及びRODOS/M乾燥粉末分散ユニットが装備されていた。約2mg~5mgの粉末をチューブに充填し、密封して、400kPa(4bar)の分散圧力と6.5kPa(65mbar)の真空で動作するRODOSに5mm/sで供給した。粉末を約1%~5%の光学濃度で導入し、データを最大15秒の測定期間にわたって収集した。粒度分布を、機器ソフトウェアによってフラウンホーファーモデルを使用して計算した。
【0220】
タップ密度を、既知の体積(0.593cm)の円筒形の空洞を使用して決定した。マイクロスパチュラを使用して、このサンプルホルダーに粉末を充填した。次に、サンプルセルを台の上で軽くタッピングした。サンプル体積が減少するので、粉末をさらにセルに追加した。空洞が満たされ、粉末床がそれ以上タッピングしても固まらなくなるまで、タッピング及び粉末の添加ステップを繰り返した。タップ密度は、このタップされた粉末床の質量を空洞の体積で割ったものとして定義される。
【0221】
実施例1~7のロイシン担体バルク粉末の物理的特性を表1に示す。実施例1~7のそれぞれは、上記の噴霧乾燥プロセスによって調製された。0.4%w/w~1.8%w/wのロイシン固形分では、タップ密度は同程度であった(0.03g/cm~0.09g/cm)。対照的に、粒径は予想通りロイシン濃度とともに増加した。このデータを使用して、
【0222】
【数6】
【0223】
で表されるバルク粉末Dを構成する一次粒子の空気力学的サイズを推定できる。ここで、x50は、レーザ回折装置を使用して高分散圧で得られた一次粒子の質量中央径であり、ρタップはバルク粉末のタップ密度である。式1は、一次粒子とその凝集体の両方が吸入可能であり続けるように、粒子密度の低い極微細な粒子のエンジニアリングに基づいてURT沈着を最小限にするために選択されたアプローチを示す。実施例1~7の担体粒子のD値は、ロイシン濃度とともに増加し、すべてが1μm未満であり、400nmから670nmの範囲であった。空気力学的観点からそれらのサイズが小さいことを考えると、担体粒子は、以後「ナノロイシン担体粒子」と呼ばれる。
【0224】
【表1】
【0225】
表1に示されているように、ナノロイシン担体粒子の幾何学的サイズとタップ密度は、粗いラクトース担体粒子に付着した微粉化薬物粒子を含む従来の接着混合物で利用される特性値とは劇的に異なる。粗いラクトース担体粒子を利用する従来の接着混合物では、粗いラクトース粒子のX50は50mm~200mmであり、タップ密度は0.4g/cmより大きい。従来の担体ベースの乾燥粉末製剤では、微粉化薬物粒子は通常、粗いラクトース担体粒子とブレンドされることで、微細な薬物粒子の不十分な粉末流動特性のために用量送達の大きな変動をもたらす微粉化薬物粒子間の強い粒子間凝集力を克服する。これは、粒径が小さくなるにつれて、粉末の流れを制御する重力に対する凝集力の比率が増加し続けるためである。したがって、本明細書に記載のナノロイシン担体粒子の使用は、非常に強い接着力のために、接着混合物を含む製剤中の担体に許容できると一般に認識されている範囲外である。
【0226】
例2:吸入用シクレソニド粉末の原料調製
表2は、異なる一次粒径のナノロイシン担体粒子を使用して調製された1%シクレソニド/99%ロイシンブレンドの粒子特性を示す。シクレソニドナノ粒子とナノロイシン担体粒子の接着混合物を調製するための原料を、2つの別々のステップで準備した。
【0227】
まず、ペルフルオロオクチルブロミド(PFOB)をナノロイシン担体粒子にゆっくりと添加して、5%w/vの目標懸濁液濃度を達成した。5mm分散ツール(25000RPM)を備えたUltra-Turrax T10分散装置を使用して、ロイシン粒子とPFOBを完全に混合し、微粒子の乳白色の懸濁液を得た。次に、シクレソニドをイソプロピルアルコール(2-プロパノール)に112mg/mLの濃度で溶解させた。これは、溶解度の約50%である。次に、21ゲージの針を備えた精密な1.0mLの気密注射器(Hamilton 81301)と結合した注入ポンプ(Harvard Apparatus、PHD2000)を使用して、シクレソニド溶液をロイシン粒子の撹拌懸濁液に滴下により添加し(注入速度75μL/分)、1%シクレソニド/99%ロイシンの目標組成を達成した。超音波プローブ(Sonics Vibracell、モデルVC505、3mmステッププローブ)を滴下添加の場所の下に浸して、混合と核形成のためのエネルギーを提供した(振幅30%で動作させた)。
【0228】
合わせた液体媒体を蒸発させるために、例1で挙げた収集ハードウェアを使用して、原料をBuechi B-191噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスのパラメータは以下のとおりであった:入口温度100℃、出口温度75~80℃、吸引器設定100%、アトマイザーガス(空気)圧力483kPa(70psi)、及び液体供給速度1.0mL/分。
【0229】
接着混合物の一次粒径及びタップ密度を、例1に記載された方法を使用して決定した。アッセイ試験は、風袋を量った薬包紙に約20mgの製剤化したバルク粉末を秤量することにより実施した。計量した材料を記録し、USP<1251>メソッド3に従う25mLメスフラスコに分析用に移して、8μg/mLの目標シクレソニド濃度を達成した。サンプル希釈液(水:アセトニトリル(50:50)(v/v))を使用して、残留物をフラスコに洗い流した。ブレンドされたナノロイシンシクレソニド粉末の均一性を評価するために、3つの独立したサンプルを説明したように秤量した。これらのサンプルは、容器からの異なる空間位置を代表するものである。各サンプルのシクレソニド含有量の定量を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)とUV検出によって行った。使用した機器は、UV検出器を備えたAgilent 1260 InfinityシリーズモジュールHPLCシステムであった。分離は、40℃に維持したAgilent Infinity Lab Poroshell 120 EC-C18、3.0×150mm、2.7μmカラム(P/N 693975-302)で、水:トリフルオロ酢酸(0.025%、(v/v))及びアセトニトリル:トリフルオロ酢酸(0.025%、(v/v))を使用したグラジエント分離を0.6mL/分で動作させて達成した。オートサンプラーを2~8℃に維持し、40μLの注入量を使用した。シクレソニドの検出を242±2nmで行い、外部標準の応答係数(約20μg/mL原薬)との比較により定量化した。方法の直線性及び0.08~200μg/mLの定量範囲が確立された。応答係数が報告限界(0.05μg/mL)を超えるシクレソニドサンプルが定量された。
【0230】
すべてのエアロゾル試験で、サイズ3のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)透明カプセル(VCaps(商標)、Qualicaps)に手で充填し(つまり、ハンドドーセータ(hand dosator)を使用せずに)、5~7mgの充填質量を達成した。1%w/wのシクレソニド粉末の場合、約6mgの目標充填質量は60μgの名目用量を表す。空気力学的粒度分布(aPSD)は、USP誘導ポートを備えた次世代インパクター(NGI)を使用して決定された。薬物を結合させた操作されたナノロイシン担体粒子は吸入可能であり、空気力学的直径が5μm未満であるため、プレセパレータは使用しなかった。試験は、USP<601>Aerosols‘Aerodynamic Size Distribution, Apparatus 6 for Dry Powder Inhalers’及びPh.Eur.2.9.18‘Preparations for Inhalation;Aerodynamic Assessment of Fine Particles;Apparatus E’に従って行った。
【0231】
すべてのエアロゾル試験にはAOS(商標)DPIを使用した。AOSは、0.051kPa0.5-1minの抵抗を有する、携帯可能で受動的な単位用量のカプセルベースの乾燥粉末吸入器である。aPSDテストを、4kPaの圧力降下、及び実験室の周囲条件(約20%~40%RH)で4Lの体積で行った。インパクター内での粒子の再同伴を防ぐために、インパクターステージを、50%v/vエタノール、25%v/vグリセロール、22.5%v/v水、及び2.5%v/vTween(登録商標)20を含む溶液でコーティングした。誘導ポート(IP)、及びNGI(商標)ステージ2~7を、10mLのサンプル希釈液を使用して抽出した。NGI(商標)ステージ1、2、及びMOCを、5mLの希釈液を使用して抽出した。作動させたカプセルを2mLのサンプル希釈液で抽出し、デバイスを5mLのサンプル希釈液で抽出した。各抽出物のシクレソニド濃縮は、上記のようにRP-HPLCで行った。
【0232】
表2は、異なる一次粒径の担体粒子を使用して調製された1%シクレソニド/99%ロイシンブレンドの粒子特性を示す。表2に示すように、上記のアプローチを使用して、担体粒子のサイズの影響を調査した。実施例7のより大きな担体粒子は、実施例10のブレンドにおいてより大きなX50をもたらしたが、D値は、担体粒子サイズには影響を受けなかった。粒子のサイズは、製造プロセス中にいくらか減少した。実施例8及び10の場合、平均アッセイ値は目標組成(1%シクレソニド)を下回った。これは、実験室規模の装置で作成された小さいバッチでは珍しいことではない。標準偏差(例えば、0.01%w/w)に反映されるように、アッセイ測定値の変動性が低いことは、これらのナノロイシンシクレソニドブレンドにおける薬物の優れた均一性を反映している。
【0233】
【表2】
【0234】
表3は、実施例8~10の1%シクレソニド/99%ロイシンブレンドのエアロゾルデータ特性を提供する。実施例9の中サイズの担体から調製されたバッチ(実施例6の担体粒子を使用)は、微粒子用量(FPD)が最も高くなる。すべての場合において、カプセル及びデバイスに保持される名目用量のパーセンテージは低い。例えば、カプセルの保持率とデバイスの保持率は、合計で名目用量の7.5%未満である。同様に、USP誘導ポートに沈着する薬物の量も少ない。
【0235】
表3に示されるように、次世代インパクターのステージ4からフィルターまで(S4-F)の薬物質量によって測定される実施例8~10の微粒子用量9FPDは、放出用量の82%を超える。このデータは、実施例8~10の1%シクレソニド/99%ロイシンブレンドが、小気道の所望の標的位置に到達できることを示す。
【0236】
【表3】
【0237】
例3:正味のシクレソニド粒子
この急速な沈殿プロセスがアモルファスの薬物をもたらすのか、あるいは結晶性の薬物をもたらすのかを判断するために、シクレソニドをイソプロピルアルコール(2-プロパノール)に112mg/mlの濃度で溶解させた。これは、その溶解度の約50%である。次に、マグネチックスターラーを使用して絶えず撹拌しながら(1600RPM)、約2mlのシクレソニド溶液を20mlのPFOBに滴下した。1つ(ロットCic-B)には、超音波プローブ(Sonics Vibracell、モデルVC505、3mmステッププローブ、振幅設定=30%)を滴下添加位置の下に浸して、混合と核形成のためのエネルギーを提供した。
【0238】
PFOBの表面に粒子が蓄積していることから明らかなように、沈殿は自発的に発生した。沈殿したシクレソニドを、真空オーブンで一晩、乾燥空気(84.7kPa(25”Hg)圧力)をゆっくりとパージしながら、溶媒(主にPFOB)の蒸発により単離した。表4は、例1で説明した方法を用いて決定した、沈殿シクレソニドのタップ密度を示す。沈殿シクレソニドのタップ密度は0.16g/cm~0.17g/cmであり、ロイシン担体粒子の約3倍であった。
【0239】
【表4】
【0240】
沈殿シクレソニドのX線粉末パターンと原料(例えば、未処理の出発材料)のX線粉末パターンとの比較を図4に示す。ピークの位置は、沈殿した物質が、原料シクレソニドと同じ物理的形態(多形)であることを示す。この形態は、以前にFethらによって報告されている。(J Pharm Sci.2008,97:3765-3780)。このデータは、アモルファスバックグラウンド(「ハロー」)がないことからわかるように、沈殿シクレソニドの結晶性が高いことも示している。
【0241】
例4:吸入用1%シクレソニド粉末(CPI)の調製に対する混合条件の影響
沈殿中の混合条件の影響を評価するために、シクレソニド原料を例2のように準備したが、エネルギー入力の低いものから高いものの順に、3つの異なる混合条件のそれぞれを使用した:(1)400~600rpmのマグネチックスターラー、(2)5mm分散ツール(25000RPM)を備えたUltra-Turrax T10分散装置、及び(3)Ultra-Turrax T10及び振幅30%で動作させた超音波プローブ(Sonics Vibracell、モデルVC505、3mmステッププローブ)。これらの例では、各製剤は、実施例6で提供されたものと同じナノロイシン担体粒子を使用した。6(X50=2.21μm)。
【0242】
シクレソニド溶液を担体粒子懸濁液に添加した後、各原料をマグネチックスターラーで混合した。合わせた液体媒体を蒸発させるために、例1に記載された収集ハードウェアを使用して、原料をBuechi B-191噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスのパラメータは次のとおりであった:入口温度100℃、出口温度75~80℃、吸引器設定100%、アトマイザーガス(空気)圧力483kPa(70psi)、及び液体供給速度1.0mL/分。
【0243】
表5に提供されるように、1%シクレソニドを含む製剤化されたCPIは、例1及び2に記載された方法に従って、一次粒径、タップ密度、アッセイ、及びaPSDについて特徴解析された。表5に示すように、一次粒径、タップ密度、及びDは混合条件の影響を受けなかった。実施例11~13のそれぞれについて、平均アッセイ値は、目標組成物(例えば、1%シクレソニド)に近かった。標準偏差に反映されているように、アッセイ測定値における低い変動性は、低エネルギー混合条件(つまり、マグネチックスターラー)を使用して調製された場合でも、これらのブレンドにおける薬物の優れた均一性を反映している。
【0244】
【表5】
【0245】
表6は、実施例11~13に記載されている異なる混合条件を使用して調製された1%シクレソニド/99%ロイシンブレンドのエアロゾルデータ特性を示す。異なる混合条件を使用して調製された1%CPI製剤のエアロゾル性能は、例2に記載されているように評価された。表6に示されるように、次世代インパクターのステージ4からフィルター(FPD S4-F)の薬物質量によって測定される、実施例11~13の微粒子用量は、放出用量の89%を超えていた。混合のためにマグネチックスターラーを使用して調製された実施例11のバッチは、FPDが最も高かった。すべての場合において、カプセル及びデバイスに保持される名目用量のパーセンテージは低い。同様に、咽喉に沈着する薬物の質量も少ない。
【0246】
【表6】
【0247】
例5:1、5、10、及び20%w/wシクレソニドの調製
薬物負荷の影響を評価するために、シクレソニド原料を例2に記載されているように調製した。ただし異なる量の薬物を使用した。すべての場合において、2-プロパノール中の同じ濃度のシクレソニド(約112mg/mL)を使用した。薬物含有量は、担体粒子の撹拌懸濁液に注入する溶液の量を変えることによって制御した。5%シクレソニド組成を除いて、すべての製剤は1%w/v溶液から調製されたロイシン担体粒子を使用した。
【0248】
シクレソニド溶液の添加前、添加中、及び添加後に、担体粒子懸濁液をマグネチックスターラーで混合した。合わせた液体媒体を蒸発させるために、例1に記載された収集ハードウェアを使用して、原料をBuechi B-191噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスのパラメータは次のとおりであった:入口温度100℃、出口温度75~80℃、吸引器設定100%、アトマイザーガス(空気)圧力483kPa(70psi)、及び液体供給速度1.0mL/分。
【0249】
1%、5%、10%、及び20%のシクレソニドを含む製剤化されたCPIを、一次粒径、タップ密度、及びアッセイについて、例1及び2に記載された方法に従って特徴解析した。5%、10%、及び20%のシクレソニド製剤をさらに希釈して、それぞれ10μg/mL、16μg/mL、及び32μg/mLの目標シクレソニド濃度を達成した。表7は、様々な薬物負荷でのシクレソニド/ロイシンブレンドの粒子特性を示す。シクレソニド濃度10%w/w以下、Dは、薬物負荷の影響を受けないことが判明した。アッセイ値の平均及び標準偏差は、例6で述べられている。
【0250】
【表7】
【0251】
図5は、1%w/w、5%w/w、10%w/w、及び20%w/wシクレソニドを含む粉末のX線粉末回折パターンのオーバーレイを示す。実施例11及び14~16の異なる濃度のX線粉末回折パターンは、ブレンド中のシクレソニドが結晶性であることを示す。例えば、6.7°2θのピークは、シクレソニド濃度が5%w/wを超えるブレンドで検出できる。粉末パターンを拡大すると(図示略)、実施例11の1%w/wシクレソニド粉末の14°2θから15°2θのピークについて、弱い回折ピークを確認することができる。実施例11の1%w/wブレンドの場合、シクレソニドの濃度は、使用した(ベンチトップ)X線回折計の検出限界に近い。予想通り、シクレソニドのピークの回折強度は、薬物負荷とともに増加する。ピーク位置は、ブレンド中のシクレソニドが原料と同じ多形であることを示す。粉末パターンの定性的評価は、アモルファスバックグラウンド(「ハロー」)の欠如によって示されるように、ブレンド配合物の高度に結晶性の性質を示す。ただし、少量のアモルファス材料を、広く拡散したバックグラウンドの変化を介して検出することは困難である。アモルファスシクレソニドを検出する手段は、サンプルを高い相対湿度(RH)にさらし、回折ピークの強度の増加が存在するか否かを判断することである。5%シクレソニド/ロイシンブレンドを75%RHに約20時間さらした。これは、シクレソニドのガラス転移温度(T)を抑制し、再結晶化を誘発するのに十分な高さのRHである。図6に示されるように、曝露前後の実施例11及び14~16のXRPDパターンは変化しなかった。これは、この方法の検出範囲内で、シクレソニド/ロイシンブレンドにアモルファスシクレソニドが含まれていないことを示す。
【0252】
表8は、実施例11及び14~16の様々な薬物負荷でのCPIの正規化された放出用量を示す。
【0253】
【表8】
【0254】
例6:アッセイ及びブレンド均一性
図7は、相対標準偏差(RSD)の関数としてのシクレソニド/ロイシンブレンドのアッセイブレンド均一性を示す。多数のシクレソニドブレンドのアッセイデータをまとめたものを図7に示す。アッセイ結果は、1%及び5%ブレンドの薬物含有量が目標含有量に近いことを示す。より濃縮されたブレンドの含有量、10%w/w及び20%w/wは、目標含有量よりも多くなっている。アッセイ値のRSDは、各値が粉末の異なる空間領域から取得された独立したサンプルでの3回の測定結果を表すため、ブレンド均一性の尺度を提供する。すべての場合において、%RSDは1.5%未満である。これは、ブレンドが優れた空間的均一性を有することを示す。
【0255】
ミクロンサイズ又はナノサイズの薬物粒子と極微細な担体粒子との均一な混合を達成することは、低剪断又は高剪断ミキサーを使用して達成することは困難である。観察された優れたブレンド均一性は、担体粒子が液体非溶媒中で安定した懸濁液を形成する液体ベースのブレンドプロセスで達成可能な優れた混合を反映している。
【0256】
さらに、ロイシン担体粒子とシクレソニドナノ粒子のサイズには大きな違いがあるにもかかわらず、製剤化された粉末は保管中に分離する傾向がほとんどない。これは、薬物と担体の間の粒子間接着力が、分離をもたらす重力をはるかに超えているためである。また、薬物と担体との間の凝集力は、吸入器内の分散力を超えている可能性が高く、その結果、薬物は、吸入プロセス中に担体に付着したままである。
【0257】
例7:1%w/w及び5%w/wフルチカゾンプロピオン酸エステル製剤の調製
フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)を17mg/mlの濃度でアセトンに溶解させた(この溶媒への報告された溶解度の約50%)。原料は例5と同様に調製した。FP含有量は、担体粒子の撹拌懸濁液に注入する溶液の量を変えることによって制御した。すべての製剤は1%w/v溶液から調製されたロイシン担体粒子を使用した。
【0258】
FP溶液の添加前、添加中、及び添加後に、担体粒子懸濁液をマグネチックスターラーで混合した。合わせた液体媒体を蒸発させるために、例1に記載された収集ハードウェアを使用して、原料をBuechi B-191噴霧乾燥機で噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスのパラメータは次のとおりであった:入口温度100℃、出口温度75~80℃、吸引器設定100%、アトマイザーガス(空気)圧力483kPa(70psi)、及び液体供給速度1.0mL/分。
【0259】
一次粒径及びタップ密度を、例1に記載された方法を使用して決定した。各サンプルのフルチカゾンプロピオン酸エステル含有量の定量は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)とUV検出によって行った。使用した機器は、UV検出器を備えたAgilent 1260 InfinityシリーズモジュールHPLCシステムであった。分離は、40℃に維持したAgilent Infmity Lab Poroshell 120 EC-C18、3.0×150mm、2.7μmカラム(P/N 693975-302)で、水:トリフルオロ酢酸(0.025%、(v/v))及びアセトニトリル:トリフルオロ酢酸(0.025%、(v/v))を使用したグラジエント分離を0.6mL/分で動作させて達成した。オートサンプラーを2~8℃に維持し、40μLの注入量を使用した。フルチカゾンプロピオン酸エステルの検出を238±2nmで行い、外部標準の応答係数(約20μg/mL原薬)との比較により定量化した。
【0260】
表9は、1%及び5%ブレンドの薬物含有量が目標含有量に近いというアッセイ結果を示す。アッセイ値の相対標準偏差(RSD)は、各値が粉末の異なる空間領域から取得された独立したサンプルでの3回の測定結果を表すため、ブレンド均一性の尺度を提供する。すべての場合において、%RSDは2%未満である。これは、ブレンドが優れた空間的均一性を有することを示す。
【0261】
【表9】
【0262】
図8は、1%及び5%w/wのフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む粉末のX線粉末回折パターンのオーバーレイを示す。5%w/wFP粉末は、10.0°2θ、14.9°2θ、及び15.9°2θにピークが見られる結晶性フルチカゾンプロピオン酸エステルを含む。粉末パターンを拡大すると(図示略)、1%w/wFP粉末のピーク位置より上に弱いピークを確認することができる。シクレソニドで観察されたように、1%w/wFPブレンドのフルチカゾンピークの回折強度は、使用した(ベンチトップ)X線回折計の検出限界に近い。
【0263】
例8:吸入用シクレソニド粉末
以下の実施例では、吸入用のシクレソニド粉末の実施例11について、様々な市販の吸入コルチコステロイド(ICS)製剤との比較を行う。実施例11の吸入用の1%シクレソニド粉末の物理化学的特性を表10に詳述する。実施例11のエアロゾル特性は表11に詳述されている。
【0264】
【表10】
【0265】
【表11】
【0266】
例9:CPIの流量非依存性及び環境ロバスト性
例4で調製された1%シクレソニド製剤(実施例11)の総肺沈着量を、2つの解剖学的咽喉モデル、アルバータ理想化咽喉(AIT)及び理想化小児咽喉(ICT)を使用して評価した。これらのモデルはアルバータ大学のFinlayらによって開発されたものであり、CT又はMRIスキャンを使用して、それぞれ平均的な成人及び小児を模倣した粒子沈着パターンを提供する。
【0267】
AOS DPIを、カスタムマウスピースアダプター(MSP Corporation、米国)を使用してAIT/ICTモデルの入口に結合した。咽喉を迂回する用量を、Fast Screening Impactor、FSI(MSP Corporation、米国)のフィルターハウジングに取り付けられた直径76mmのフィルターA/Eタイプグラスファイバー1μm、(Pall Corp.、米国)により下流で収集した。咽喉の内面を、水和した中咽頭粘膜を模倣するとともに、粒子の再懸濁を防ぐために、50%v/vメタノール及び50%v/vTween(登録商標)20を含む15mLの溶液でコーティングした。咽喉を左右に傾けるためにロッキング又は回転運動を使用して、コーティング溶液でAITの内壁を濡らした。過剰なコーティング溶液は、使用前に5分間排出されるようにした。
【0268】
in vitroTLDを決定するために、充填されたカプセル(約6mgの充填質量;目標60μgのシクレソニド)をAOS DPI吸入器に装填し、穿刺した。CopleyモデルTPK2001クリティカルフローコントローラ、及びCopleyモデルHCP5真空ポンプを作動させた。これにより、吸入器から希望の圧力降下で空気を引き込んで総体積を2Lにし、フィルターにTLDを付着させる。フィルターをFast Screening Impactorから取り出し、ビニール袋に入れ、20mLのサンプル希釈液(水:アセトニトリル(50:50(v/v))を使用して抽出した。
【0269】
例4で調製された1%シクレソニド製剤(実施例11)の総肺沈着量を評価した。カプセルに手で充填し(つまり、ハンドドーセータを使用せずに)、5~7mgの充填質量を達成した。このシクレソニド粉末の場合、約6mgの目標充填質量は60μgの名目用量を表す。例2で説明したように、AOS(商標)DPIをすべてのエアロゾル試験に使用した。
【0270】
総肺沈着量(TLD)は、理想化小児咽喉(ICT)又はアルバータ理想化(成人)咽喉(AIT)のいずれかを迂回する薬剤の質量によって定められる。本明細書で報告されているように、この量は、デバイスから放出される薬物の質量によって正規化される(図9)。
【0271】
ICT及びAITモデルにおける実施例11のCPIバッチのTLD性能を表11に示す。TLDはAITで93.0%、ICTで86.5%であった。
図9は、ICTモデルにおける実施例11のCPIバッチのTLD性能が、1kPa、2kPa、4kPa、及び6kPaの圧力降下及び2Lの体積で評価されたことを示す。この範囲の圧力降下では、TLDにほとんど変化がなかった。流量依存の程度を定量化するための1つの測定項目はQインデックスと呼ばれ、これはTLD対ΔPのプロットの線形回帰から導出される。これは、6と1kPaの圧力降下間の、2つのTLD値の高い方で正規化されたTLDのパーセント差を表す。この範囲の圧力降下は、DPIを利用するときにほとんどの患者が達成するものを含む。我々は、低流量依存性を|Qインデックス|が0~15%の場合、中流量依存性を|Qインデックス|が15~40%の場合、高流量依存性を|Qインデックス|>40%の場合と定義する。
【0272】
担体又は球状化凝集体からの薬物の分散は、患者が吸入中に乾燥粉末吸入器を介して達成する圧力降下に決定的に依存する。これは、しばしば流量依存性と呼ばれる。許容可能な吸気圧を達成する能力は、患者の年齢に依存する。小児及び老齢の患者は筋力が低下しているため、効果的な薬物分散を達成するために必要な吸気圧を生成できない場合がある。
【0273】
TLDのQインデックス対ICTのΔPデータがわずか-1.0%(図6)であるとすれば、AOS DPIを使用してエアロゾル化された1%シクレソニドブレンドは、流量依存性が低いか、又は流量非依存性でさえある。
【0274】
エアロゾル性能に対する湿度の影響を評価するために、高RH(75%)でもTLDの決定も行った。実施例11の1%CPIバッチの環境ロバスト性は、75%RHで動作する環境チャンバー(Barnsted International、モデルEC12560)に、説明したような同一のICT試験装置を配置することによって実行された。AOS DPI及びICTを使用したTLDは、上記と同じ構成及び方法を使用して、4kPaの圧力降下及び2Lの体積で実行された。各抽出物のシクレソニド濃度は、上記の例2に詳述されているように、RP-HPLCごとに実行され、平均放出用量に対する総回収用量の%として報告された。高RH(25℃/75%RH)のICTで測定されたデータは、この薬剤とデバイスの組み合わせが優れた環境ロバスト性を備えていることを示す。薬物及び担体の高度に結晶性で疎水性の性質を考えると、これは驚くべきことではない。
【0275】
高度に結晶性の製剤は、エアロゾル性能の環境ロバスト性に関して利点を提供することが期待される。結晶性の高い材料は非吸湿性である傾向があり、相対湿度が高い条件でも水分をほとんど吸収しないのは、1%シクレソニド/ロイシンブレンド(実施例11)と噴霧乾燥した「ベンチマーク」担体DSPC:CaClとの吸湿等温線の比較である(図10)。この担体粒子は、疎水性であると考えられるリン脂質である約93%w/wのジステアロイルホスファチジルコリンを含む。全体として、シクレソニド/ロイシンブレンドの水分吸収は低い。最も高いRHで、水含有量はわずか0.2%w/wである。対照的に、DSPC:CaClプラセボはかなり吸湿性がある。どのRHでも、DSPG:CaClプラセボは、シクレソニド/ロイシンブレンドよりも30~80倍吸湿性がある。
【0276】
例10.吸入コルチコステロイドの肺への標的化:現在市販されているICSとの比較
実施例11(吸入用シクレソニド粉末、CPI)は、例8(表10及び11)に詳述されているように、成人の肺へのICSの標的化を、乾燥粉末吸入器、定量吸入器、及びソフトミスト吸入器(SMI)から送達される現在市販されている微細な及び極微細な製剤と比較して向上させる(図11)。
【0277】
胸郭外(すなわち、上気道)沈着に対するTLD(すなわち、下気道)沈着の比率は、実施例11では13.3である(93.0%TLD/7.0%URT)。これは、高効率のRespimat(商標)SMIで投与されるブデソニドを含む、市販されているすべてのICS製品よりも5倍高い。肺の標的化は、最も売れているAdvair(商標)ディスクス(Diskus)(登録商標)に対して55倍改善されている。
【0278】
CPIで見られた改善された肺の標的化は、喉の炎症、嗄声、日和見感染症(例えば、カンジダ症及び下行性肺炎(descending pneumonia))を含むURTの局所的な有害事象を軽減することが期待される。経口バイオアベイラビリティを有するICSの場合、咽喉の沈着が減少すると、全身曝露が減少するため、成長遅延、腎不全、及び骨塩量増加への影響などの全身性有害事象が減少する。改善された肺標的化はまた、改善された標的化に起因するだけでなく、TLDの変動性の減少にも起因して、名目用量の減少を可能にし得る。
【0279】
例11.理想化小児咽喉(ICT)におけるICS製剤の沈着
CPI(実施例11)を含む3つのICS製剤について、デバイス、ICT、及びフィルタ(TLDを表す)におけるICSの沈着が図12に示されている。Ruzyckiらにより、パルミコート(Pulmicort)(登録商標)タービュヘイラー(Turbuhaler)(登録商標)及びQVAR(登録商標)では、ICTモデルにおいてin vitroとin vivoの強い相関関係が確立された(Pharm Res.2014;31:1525-1531)。
【0280】
これらの2つのICS製剤と比較して、CPIはデバイス及びURTでの沈着を大幅に削減した。放出用量(ED)のパーセンテージとして表される場合、ICTでの沈着はパルミコート(登録商標)で69.0%、QVAR(登録商標)で39.2%、CPIで13.5%であった。TLD値は、パルミコート(登録商標)の31.0%から、QVAR(登録商標)の60.8%、CPIの86.5%に増加した。TLD/ICT沈着の比率は、パルミコート(登録商標)で0.45、QVAR(登録商標)で1.55、CPIで6.41であった。したがって、CPIは、市販のDPI及び極微細pMDI製剤と比較して、小児咽喉モデルでの肺標的化を大幅に改善することができる。
【0281】
例12.ICS製剤の空気力学的粒度分布(aPSD)の比較
様々なICS製剤のaPSDが、図13A~13Fに詳述されている。図13A~13Cは、フロ酸モメタゾン(アスマネックス(Asmanex)(登録商標)Twisthaler(登録商標))及びフルチカゾンプロピオン酸エステル(Flovent(登録商標)ディスクス(Diskus)(登録商標))の2つの主要なラクトースブレンド製剤、及び本開示のCPI製剤(実施例11)を示す。CPIの場合、放出用量の2.5%のみが咽頭/誘導ポート(T)及び次世代インパクターのステージ1及び2に沈着する。沈着の大部分はインパクターのステージ4から6で発生し、ステージ7とフィルターで少量の沈着が発生する。対照的に、アスマネックス(登録商標)及びFlovent(登録商標)DPI製剤では、ほとんどの用量が咽喉及びプレセパレータに沈着する。全体として、CPIの場合、喉を迂回した薬物は代わりに肺に沈着し、小気道にかなりの割合で沈着するようである。
【0282】
図13D~13Fは、「極微細な」溶液pMDI及びDPI製剤のaPSDプロファイルを示す。これらの製剤では、CPIと比較して咽喉への沈着が10倍以上増加している。同様に、これらの「極微細な」製剤では、ステージ7及びフィルターへの沈着も増加する。
【0283】
例13:気道への標的化送達
表12は、NGI(商標)ステージ分布に基づいた様々なICS製剤のためのステージグループ化の測定項目を比較している。CPIは、そのステージ分布において明らかに特徴的である。他の極微細な製剤と比較して、CPIはS7-Fへの沈着が制限されているため、肺胞送達及び粒子吐き出しの可能性が低くなる。これは、ξの非常に高い値に反映される。ξの値は微粒子DPI製剤でも高いが、どちらかと言うと、これはこれらの製品が肺末梢領域に放出用量のほとんどを沈着させない可能性が高いことを反映していると言える。
【0284】
【表12】
【0285】
θの増加に反映されるように、小気道への標的化の改善も、CPIでは微粒子DPI製剤に対して約6倍であることが確認される。極微細な溶液pMDIで観察されたθの高い値は、ステージ3~4での沈着が非常に少ない結果である。これらのステージへの沈着は、大気道への効果的な送達にとって重要であると考えられる。
【0286】
したがって、CPIは、URTでの沈着を大幅に回避すると同時に、大気道と小気道の両方に薬物を効果的に送達する一方で、肺胞沈着と粒子の吐き出しを制限したいという要求のバランスをとっているように見える。
【0287】
実施例14:有機共溶媒原料から調製されたロイシン担体粒子
表13は、有機共溶媒原料から調製されたロイシン担体粒子の粒子特性を示す。ロイシン担体粒子を、少量(0~15%w/w)の有機共溶媒を含む原料から調製した。実施例20~24は、1%固形分を含む溶液から調製された5つのロイシン粉末バッチを提供し、実施例25~27は、噴霧乾燥の前に(0.22μm膜を使用して)濾過された飽和溶液から調製された。噴霧乾燥は、例1に記載されているように行った。これらの実施例は、エタノールや2-プロパノールなどのアルコールが原料の表面張力を低下させ、噴霧化された液滴サイズを減少させることを示す。さらに、アルコールと水の相対蒸発速度によっては、アルコールを添加すると、混合溶媒へのロイシンの溶解度が低下するため、粒子が早く形成される可能性がある。
【0288】
表13は、それぞれがエタノールを含む原料を含む実施例20~26が、0.034g/cm~0.050g/cmの範囲のタップ密度を達成したことを示す。固形分はタップ密度に影響しなかったが、エタノールの使用はタップ密度に適度な効果を奏し、7.5%エタノール(1%固形分)及び5%エタノール(1.8%固形分)から噴霧乾燥した例で最低密度が測定された。実施例27は、共溶媒として2-プロパノールを使用して噴霧乾燥し、エタノールを含む原料から生成されたどの乾燥粉末(実施例20~26)よりも密度が高かった(0.057g/cm)。
【0289】
実施例におけるほとんどの乾燥粉末の一次粒径(X50)は約2.0μmであったが、唯一の例外は、固形分が最も高い溶液から噴霧乾燥された実施例24であった。実施例20~27はすべて、0.5μm未満のD値を達成した。実施例20及び実施例21のD値と実施例28(エタノールなしで調製)のD値との比較により、エタノールを使用すると同じ固形分でより低いD値が得られるという利点があることが示される。
【0290】
【表13】
【0291】
例15:様々な乾燥技術を使用したシクレソニド/ロイシンブレンドの調製。
表14は、様々な乾燥プロセスを使用した1%(w/w)シクレソニド/ロイシンブレンドの粒子特性を示す。単一のシクレソニド/ロイシン原料を例5に記載されているように調製し、次に噴霧乾燥、真空乾燥、及び凍結乾燥を使用してさらに処理するために3つのアリコートに分けた。原料は、1%w/wのシクレソニドを含むように配合された。噴霧乾燥は、例2に記載されているように行った。
【0292】
真空乾燥は、VWR真空オーブンとWelch DryFast Ultraダイヤフラム真空ポンプ(最終圧力=270Pa)を使用して周囲温度で実施した。周囲温度では、この圧力によってPFOBが沸騰することはない。約45gの原料を250mLのガラス瓶内に7mmの層になるように注いだ。このアプローチを使用すると、蒸発速度は約30g/時であった。
【0293】
Edwards 2 E2M2ロータリーベーン真空ポンプ、2つの真空チャンバー、及びAccutools Blu Vac+デジタル真空計で構成される特注の装置を使用して、凍結乾燥を行った。最初の真空チャンバーは凝縮器として機能し、ドライアイス(-78℃)で冷却した。2番目のチャンバーは、乾燥させるサンプルを含み、真空ポンプの遠位に配置した。約46gの原料を250mLガラス瓶内に7mmの層になるように注ぎ、実験室用冷凍庫に-13℃で約2時間入れた。次に、PFOBに懸濁した冷凍シクレソニド/ロイシンブレンドをサンプルチャンバー内に配置し、これを氷と塩化カルシウムの混合物(約-20℃)で冷却した。乾燥は、低真空(74Pa)を16時間適用して行った。
【0294】
表14に示されるように、真空乾燥及び凍結乾燥が閉じ込められたサンプルを使用することを考えると、実施例30及び31の収率は、これらのプロセスに関して事実上100%である。噴霧乾燥の場合、実施例31の収率は、乾燥中の微粒子の収集効率、ならびに噴霧乾燥後の容器内の少量の残留原料のために、約56%であった。
【0295】
噴霧乾燥及び凍結乾燥は、ばらばらな状態の流動性のある粉末をもたらしたが、真空乾燥は高密度のひび割れた粉末ケーキをもたらした。真空乾燥後、マグネチックスターラーで低速(200RPM)で約2分間撹拌することにより、もろいケーキを粉砕した。
【0296】
実施例29の凍結乾燥サンプルのタップ密度が最も低く、次に実施例31の噴霧乾燥サンプルが続き、その次の実施例30の(粉砕された)真空乾燥サンプルでは著しく密度が高かった。
【0297】
【表14】
【0298】
さらに、表14は、凍結乾燥及び真空乾燥粉末の一次粒径(X50)が噴霧乾燥粉末のそれよりも大きかったことを示す。その密度と一次粒径が大きいため、真空乾燥粉末は最大のD値となった。凍結乾燥及び噴霧乾燥粉末は、同等のD値となった。
【0299】
例示した実施形態を含む特定の態様及び特徴の前述の説明は、例示及び説明の目的でのみ提示されており、網羅的であることも、開示された厳密な形態に開示を限定することも意図していない。多数の修正、適合、及びそれらの使用は、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴はまた、単一の実施において組み合わせて実施され得る。逆に、単一の実施の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の方法で個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションの組み合わせで実施することもできる。さらに、複数の特徴は特定の組み合わせで機能するものとして上記で説明される場合があるが、ある組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから切り離すことができ、その組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けられ得る。したがって、特定の実施形態が説明されてきた。他の実施形態は、本開示の範囲内である。
【0300】
本特許明細書に記載されている各参考文献、米国特許、米国特許出願、及び国際特許出願の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
【国際調査報告】