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特表2022-536428可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル、その製造方法、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20220809BHJP
   A24B 15/167 20200101ALI20220809BHJP
   A24D 1/02 20060101ALI20220809BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20220809BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20220809BHJP
   C07H 15/203 20060101ALI20220809BHJP
   C07H 19/056 20060101ALI20220809BHJP
   C07H 5/06 20060101ALI20220809BHJP
   C07D 319/06 20060101ALI20220809BHJP
   C07C 235/12 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09K3/00 103M
A24B15/167
A24D1/02
A24D1/20
C07H15/04 A
C07H15/203
C07H19/056
C07H5/06
C07D319/06
C07C235/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518720
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2020094429
(87)【国際公開番号】W WO2021243657
(87)【国際公開日】2021-12-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517283640
【氏名又は名称】雲南中煙工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓▲いー▼
(72)【発明者】
【氏名】趙偉
(72)【発明者】
【氏名】鞏効偉
(72)【発明者】
【氏名】朱東来
(72)【発明者】
【氏名】李廷華
(72)【発明者】
【氏名】李寿波
(72)【発明者】
【氏名】張霞
(72)【発明者】
【氏名】洪▲りゅう▼
(72)【発明者】
【氏名】呉俊
(72)【発明者】
【氏名】陳永寛
(72)【発明者】
【氏名】▲りょ▼茜
(72)【発明者】
【氏名】廖思尭
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
4C057
4H006
【Fターム(参考)】
4B043BB10
4B043BB28
4B045AA21
4B045AB14
4C057AA03
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057DD03
4C057JJ03
4C057JJ23
4C057LL07
4H006AA03
4H006AB99
4H006BN10
4H006BT12
4H006BV22
(57)【要約】
可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルであって、糖系ゲル化剤0.1~3.0wt%と、霧化液97.0~99.9wt%とを含み、糖系ゲル化剤の分子がアミ基及び/又はアリール基を導入した糖分子であり、必要に応じて‐CxHy、‐O‐CxHy又は‐C(O)‐CxHyから選ばれる1種又は複数種の疎水性構造部分をさらに含んでもよく、ここで、x>2、y>2である、霧化液ゲル。霧化液ゲルは、熱可逆及び/又はせん断可逆的相転移特性を有し、加熱及び/又は振動を受けると、ゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤が放出されて吸入可能なエアロゾルを形成し、加熱及び/又は振動を停止すると、霧化液ゲルは、素早くゾル状態からゲル状態に戻り、霧化していない霧化剤が再びゲル内に固定化される。霧化液ゲルは、パフ停止後の煙の凝縮液、及び輸送中の気圧の変化や外力作用により引き起こされるアトマイザーからのリキッド漏れの問題を解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルであって、
糖系ゲル化剤0.1~3.0wt%と、
霧化液97.0~99.9wt%とを含み、
前記糖系ゲル化剤の分子が、アミド基及び/又はアリール基を導入した糖分子であり、オプションで、‐C、‐O‐C又は
から選ばれる1種又は複数種の疎水性構造部分をさらに含み、ここで、x>2、y>2である、ことを特徴とする、霧化液ゲル。
【請求項2】
前記糖系ゲル化剤は、糖系ゲル化剤I~Vの5種類の糖系ゲル化剤から選ばれる少なくとも1種であり、
前記糖系ゲル化剤Iの化学構造式は、
(式中、
Aはアリーレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリーレン基であり、
Rは‐C又は‐O‐C又は
であり、且つx>2、y>2である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IIの化学構造式は、
(式中、
Sはモノグリコシル基、マルトシル基、セロビオシル基又はラクトシル基であり、
Aはアリーレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリーレン基であり、
R’はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IIIの化学構造式は、
(式中、
はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基であり、

である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IVの化学構造式は、
(式中、
Sはモノグリコシル基、マルトシル基、セロビオシル基又はラクトシル基であり、
A(R)nは
である。)であり、
前記糖系ゲル化剤Vの化学構造式は、
(式中、
A’はアリールアルキレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリールアルキレン基であり、
R’はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基である。)である、ことを特徴とする、請求項1に記載の霧化液ゲル。
【請求項3】
前記糖系ゲル化剤Iの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IIの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IIIの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IVの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤Vの化学構造式は、
である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の霧化液ゲル
【請求項4】
前記霧化液の質量百分率を基準に、前記霧化液は、
前記霧化液に対して90~100wt%の霧化剤と、
前記霧化液に対して0~10wt%のニコチンと、
前記霧化液に対して0~10wt%の香料とを含み、
前記霧化剤はグリセリンとプロピレングリコールの混合物であり、グリセリンとプロピレングリコールとの体積比が3:7~7:3である、ことを特徴とする、請求項1に記載の霧化液ゲル。
【請求項5】
可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルとは、熱可逆的相転移特性及び/又はせん断可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルであり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度が100℃~248℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が40~800Paである、ことを特徴とする、請求項1に記載の霧化液ゲル。
【請求項6】
請求項1に記載の霧化液ゲルの製造方法であって、前記糖系ゲル化剤を加熱して前記霧化液に溶解させ、完全に溶解するまで撹拌し、冷却し、前記霧化液ゲルを形成する、ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の霧化液ゲルの使用であって、溶融した霧化液ゲル溶液を、電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、冷却してゲル化させて、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジを得る、ことを特徴とする、使用。
【請求項8】
請求項1に記載の霧化液ゲルの使用であって、溶融した霧化液ゲル溶液を、多孔質材料で製造されたエアロゾル発生デバイスに直接注入し、冷却してゲル化させて、多孔質材料に固定化する、ことを特徴とする、使用。
【請求項9】
前記多孔質材料は、金属、合金、セラミック、微小電気機械システム素子、炭素系材料、高分子重合体から選ばれる単一材料又は複合材料である、ことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の霧化液ゲルの使用であって、溶融した霧化液ゲル溶液を、サイジングにより加熱式非燃焼シガレットのシガレット紙の内面に塗布し、冷却してゲル化させて、シガレット紙の繊維多孔に固定化する、ことを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルの技術分野に属し、特に糖類由来の可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル、その製造方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超分子有機ゲルは非ガラス状態、非結晶状態の熱可逆的固体材料であり、絡み合ったおよび自己組織化されたゲル化剤繊維で製造された三次元網目(固相)とそれに固定化された有機連続相(液相)とを含む。超分子有機ゲルに含まれる主成分は、レオロジー挙動と固体の外観を有する有機液体である。連続有機相には、有機溶媒、植物油や鉱物油が含まれ、その中でも、ゲル化可能な有機溶媒には、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、アルコール類、シリコーンオイル、ジメチルスルホキシドなどがある。ゲル化剤は、比較的分子量が小さい(~3000Da)小分子量有機ゲル化剤であり、有機ゲル化剤は、分子構築モジュールとも呼ばれ、小分子量有機ゲル化剤を形成する基本構造骨格である、長鎖アルカン又はステロイド誘導体、アミノ酸誘導体、尿素、糖類系、金属錯体、電荷移動錯体、大環状物質や有機塩(イオン液体)などに由来する。小分子量有機ゲル化剤は水素結合、π-πスタッキング、ファンデルワールス力、静電作用などの非共有結合作用により自己組織化して三次元網目を得て、有機溶媒分子は界面力によって三次元網目に捕捉されて固定化されて粘弾性ゲル材料を形成し、このようなゲルは、複雑な超分子構造を有することから、超分子ゲル又は物理ゲルと呼ぶ。
【0003】
現在、有機ゲルは主に局所薬物送達、真皮薬物送達、経皮薬物送達、腸管を経由しない薬物送達、口腔薬物送達、粘膜接着剤としての原位置有機ゲル(in situ organic gel)、錠剤と坐剤及び培養微生物などの分野に応用されている。
【0004】
近年、糖類由来の小分子量有機ゲル化剤が注目されているが、次のような理由がある。糖類にはいくつかのヒドロキシ官能基が含まれていて、可逆性、特異性、方向性や協同(相乗)性を有する水素結合作用が広く分布しているため、糖類はその豊富な分子内と分子間の水素結合作用を利用して自己組織化して、複雑な組織系を製造することができ、その水素結合を利用した自己組織化の優位性は、アミノ酸誘導体や尿素などの有機ゲル化剤よりはるかに大きい。構造の豊富さ、糖単位、順序と連結部位の多様性、末端基の異性化、異なる位置の化学変性及び/又は置換、コンフォーマーの相互変性などの特徴は各種の特殊な有機ゲル化剤、水性ゲル化剤や汎用型ゲル化剤の製造に適している。糖の複数のヒドロキシル基を簡単に保護又は脱保護することにより、ゲル化の性質を容易に調節することができる。前駆糖類原料は安価で市販品として入手でき、豊富な再生可能資源に由来することができる。糖類は通常、生分解性で毒性がなく、環境にやさしい。糖系(糖基)小分子ゲル化剤の製造に用いられる前駆物質の代表例として、D-マルトース、D-ソルビトール、L-アスコルビン酸、トレハロース、アミグダリン、D-乳糖、D-アロース、D-マンノース、D-ガラクトース、D-グルコースがある。
【0005】
現在普及している電子ニコチン送達システム(電子タバコ)では、通常、電熱又は超音波霧化方式を用いて液体煙リキッドを霧化してエアロゾルを形成し、ニコチンと香味物質を送達する。現在、電子タバコのリキッド漏れは一般的に存在する問題であり、ユーザーの体験感に対して非常に悪影響をもたらし、電子タバコのリキッド漏れの原因には以下のことがある。1、リキッドを注入した電子タバコのリキッド貯蔵装置(アトマイザー)は輸送や貯蔵過程において気圧、温度や振動などの原因で漏れがよく発生する。2、ニコチンと香気成分はグリセリンとプロピレングリコールを主成分とする霧化剤に溶解して均一な粘性リキッドを形成するが、電熱高温又は超音波霧化の過程では、リキッドの粘度が明らかに低下し、流動性が向上し、外部と連通する気体通路系の影響や、パフ時の熱膨張により電子タバコの煙具の取り付け隙間が増加することにより、パフ中及びパフ終了後にリキッドがアトマイザーから漏れやすくなる。
【0006】
電子タバコのリキッド漏れの問題を解決又は改善するために、現在、主に2種類の対策を採用している。第一に、煙具とアトマイザーの構造と気体通路の設計、新しいリキッド貯蔵案内材料と新型センサデバイスの開発などの面から着手し、リキッド漏れのリスクを下げる。第二に、既存の液体リキッドを固体(半固体)リキッドに置き換え、付帯煙具を開発することで、リキッドの貯蔵輸送を容易にすると同時に、リキッド漏れのリスクを下げる。前者は研究開発コストの増加、構造と製造過程の複雑化という現実的な問題をもたらし、加えて、アトマイザーの使用過程で空気の流通が必要であり、アトマイザーを外部の大気と完全に遮断することができないため、依然としてリキッド漏れを制御しにくく、一方、後者に必要な固体(半固体)のリキッドは、その製造プロセスが複雑であるだけでなく、さらに重要なのは、可逆的相転移の性能がないか、相転移温度が低い、つまり、加熱されると溶融できるが、元の固体(半固体)に戻ることができないか、又は元の固体(半固体)に戻るには低い温度(例えば40℃)に冷却する必要があり、その結果、固体(半固体)リキッドは貯蔵と輸送時にリキッド漏れの問題を改善できるが、環境温度がやや高かったり、わずかな振動があったり、電子タバコの使用温度が繰り返し上昇したり下降したりするなどの実際状況に遭遇すると、固体(半固体)リキッドは液化したが、元の固体(半固体)に回復することが困難になり、その結果、依然としてリキッド漏れの問題が存在する。
【0007】
以上の問題を解決するために、本発明を提案する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様は、
糖系ゲル化剤0.1~3.0wt%と、
霧化液97.0~99.9wt%とを含み、
前記糖系ゲル化剤の分子が、アミド基及び/又はアリール基を導入した糖分子であり、必要に応じて、‐C、‐O‐C又は
から選ばれる1種又は複数種の疎水性構造部分をさらに含んでもよく、ここで、x>2、y>2である、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルを提供する。
【0009】
好ましくは、前記糖系ゲル化剤は、糖系ゲル化剤I~Vの5種類の糖系ゲル化剤から選ばれる少なくとも1種であり、
前記糖系ゲル化剤Iの化学構造式は、
(式中、
Aはアリーレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリーレン基であり、
Rは‐C又は‐O‐C又は
であり、且つx>2、y>2である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IIの化学構造式は、
(式中、
Sはモノグリコシル基、マルトシル基、セロビオシル基又はラクトシル基であり、
Aはアリーレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリーレン基であり、
R’はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IIIの化学構造式は、
(式中、
はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基であり、

である。)であり、
前記糖系ゲル化剤IVの化学構造式は、
(式中、
Sはモノグリコシル基、マルトシル基、セロビオシル基又はラクトシル基であり、
A(R)nは
である。)であり、
前記糖系ゲル化剤Vの化学構造式は、
(式中、
A’はアリールアルキレン基、又は1~4個の窒素ヘテロ原子を有するヘテロアリールアルキレン基であり、
R’はC2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基である。)である。
【0010】
ここで、アリーレン基とは芳香環分子から2つの水素原子が取り除かれた後に残った基であり、取り除かれた2つの水素は異なる原子上に位置しているのに対し、ヘテロアリーレン基はピリジル基、ピリミジル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基である。グリコシル基とは、糖分子から1つの水素原子が取り除かれた後に残った基であり、アリーレン基とは、芳香環分子から2つの水素原子が取り除かれた後に残った基であり、取り除かれた2つの水素は異なる原子上に位置している。アリールアルキレン基とは、芳香環に連結された炭化水素基がアルキレン基であることを意味する。C2-16アルキル基、C2-16アルケニル基、C2-16アルキニル基はC2-16の鎖状炭化水素基である。置換基はSの炭素原子や酸素原子上に結合することができる。
【0011】
好ましくは、前記糖系ゲル化剤Iの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IIの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IIIの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤IVの化学構造式は、
であり、
前記糖系ゲル化剤Vの化学構造式は、
である。
【0012】
本発明の可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは、小分子量有機ゲル化剤からなる超分子三次元網目と、該網目に固定化された液体霧化液とを含む。該霧化液ゲル中の小分子量有機ゲル化剤は糖系ゲル化剤であり、非共有結合作用(水素結合、π-πスタッキング、ファンデルワールス力、静電作用など)によって自己組織化して三次元網目を得て、霧化液物質の分子は界面力によって三次元網目中に捕捉されて固定化されて粘弾性材料を形成し、前記霧化液ゲルは、複雑な超分子構造を持っているので、超分子ゲル又は物理ゲルと呼ぶ。自己組織化による三次元網目形成のための駆動力は可逆性を有する非共有結合作用であるので、該霧化液ゲルは可逆的相転移特性を有する。
【0013】
本発明において、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルとは、熱可逆的相転移特性及び/又はせん断可逆的相転移特性を有するものをいう。前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度が190℃~240℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が85~700Paである。ここで、前記熱可逆的相転移特性とは以下のことを指す。該霧化液ゲルは、ゲル-ゾル相転移温度(Tgel)よりも低いときにゲル状態であり、そのゲル-ゾル相転移温度(Tgel)を超えて加熱されたときに、糖系ゲル化剤の分子間の非共有結合作用が破壊され、該霧化液ゲルは速やかに溶融してゾル状態になり、その糖系ゲル化剤に固定化された液体霧化液が蒸発して霧化し、霧化剤が放出されて、吸入可能なエアロゾルを形成し、該霧化液ゲルのゾル-ゲル相転移温度(Tgel)よりも低温になると、糖系ゲル化剤の分子間が、非共有結合作用により駆動されて自己組織化して超分子ゲル網目を形成し、溶融状態のゾルは速やかに凝縮硬化してゲル状態に戻り、霧化していない液体霧化液は再び超分子ゲル網目に固定化され、該霧化液ゲルはゲル状態に戻る。同様に、前記せん断可逆的相転移特性とは、以下のことを指す。該霧化液ゲルは、ゲル-ゾル臨界せん断応力よりも低いときにゲル状態であり、振動を受けてせん断応力が増大すると、糖系ゲル化剤の分子間の非共有結合作用が破壊され、該霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、その糖系ゲル化剤に固定化された液体霧化液が蒸発して霧化し、霧化剤が放出されて吸入可能なエアロゾルを形成し、振動を停止してせん断応力が減少すると、糖系ゲル化剤の分子間が非共有結合作用により駆動されて自己組織化して超分子ゲル網目を形成し、ゾル状態から速やかに凝縮硬化してゲル状態に戻り、霧化していない液体霧化液が再び超分子ゲル網目に固定化され、該霧化液ゲルはゲル状態に戻る。
【0014】
本発明は、5種類の糖系ゲル化剤の構造式を提供し、これらのうち、糖系ゲル化剤Iを用いて製造された霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度は100℃~140℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は40~250Paである。糖系ゲル化剤IIを用いて製造された霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度は190℃-240℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は85~700Paである。糖系ゲル化剤IIIを用いて製造された霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度は135℃~160℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は55~300Paである。糖系ゲル化剤IVを用いて製造された霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度は188℃~248℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は110~800Paである。糖系ゲル化剤Vを用いて製造された霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移温度は145℃~220℃であり、前記霧化液ゲルのゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は60~560Paである。
【0015】
本発明による5種類の糖系ゲル化剤の利点及び解決する問題は以下の通りである。
【0016】
1、霧化液の主成分である霧化剤はグリセリンとプロピレングリコールであり、両者は極性媒体であり、ヒドロキシル基を多く含む従来の糖系ゲル化剤では、水素結合供与体と受容体断片が溶媒和作用を起こしやすく、糖系ゲル化剤の分子間水素結合強度を明らかに低下させ、ゲル化三次元網目の安定性に影響を与え、さらには糖系ゲル化剤が霧化液と混和して霧化液ゲルを形成できないことを招く。
【0017】
この問題を解決するために、本発明は、糖系ゲル化剤に疎水性脂肪長鎖、芳香環を導入することにより、糖系ゲル化剤におけるファンデルワールス力、疎水化(疎溶媒化)作用、π-πスタッキングなどの作用を向上させ、糖系ゲル化剤における分子間水素結合強度を向上させ、糖系ゲル化剤の分子間の自己組織化能力をさらに向上させる。そのほか、脂肪長鎖が疎水性であることにより、糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)作用を高め、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。
【0018】
2、糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用は自己組織化のための主な駆動力であり、霧化液の主成分であるグリセリンとプロピレングリコールはアルコール性ヒドロキシル基を多く含み、このアルコール性ヒドロキシル基と糖系ゲル化剤中の糖ヒドロキシル基との間の水素結合作用は、糖系ゲル化剤自体の糖ヒドロキシル基の分子間水素結合作用と強い競合となり、これにより、糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用が弱まり、ゲルの剛性や熱安定性が低下し、その結果、高温条件下に適した可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルを製造することが困難となる。
【0019】
この問題を解決するために、本発明は、より多くの方向性ヒドロキシル基(例えば、環状糖)を有するか、又は付加的な水素結合供与体と受容体基(例えば、アミド基)が導入された糖系原料を用いて糖系ゲル化剤を製造し、このような糖系ゲル化剤分子は、本来の分子間水素結合作用に加えて、強い協同水素結合網目を形成し、水素結合作用を強化し、自己組織化に対する水素結合の駆動能力を増加させ、それにより、グリセリンとプロピレングリコールにおけるアルコール性ヒドロキシル基の水素結合競合力を弱め、形成した網目構造により剛性を持たせ、安定性及び剛性を向上させ、それによって、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0020】
上記内容によれば、本発明では、前記糖系ゲル化剤Iの化学構造式は、
である。
【0021】
本発明の糖系ゲル化剤Iは、メチル4,6-O-フェニルメチレン-α-D-グルコピラノース誘導体(式1、式2)であり、その構造中に環状糖構造のグリコシル基とフェニレン芳香族基、疎水性炭化水素基を含む。本発明の糖系ゲル化剤Iは以下の優位性を有する。1.環状糖構造には未変性の2-OHと3-OH、メチル基で保護された1-OH、フェニルメチレン基で保護された4-OHと6-OHが含まれており、また、環状糖構造は糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用を高め、グリセリンとプロピレングリコールにおけるアルコール性ヒドロキシル基の水素結合競合力を弱め、形成した網目構造により剛性を持たせ、安定性及び剛性を向上させる。2、フェニレン基の導入はπ-πスタッキング作用を高め、炭化水素鎖の長さの増加に応じてファンデルワールス力を導入し、その両者は、糖系ゲル化剤中の分子間水素結合強度を高めるだけでなく、炭化水素鎖の疎水化作用は糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)作用を高めることができ、それにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。上記の配置異性化は、霧化液をゲル化する能力を持たせ、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0022】
前記糖系ゲル化剤IIの化学構造式は、
である。
【0023】
本発明の糖系ゲル化剤IIの構造には、環状糖構造のグリコシル基、アミド基、芳香族基、疎水性炭化水素鎖が含まれている。本発明の糖系ゲル化剤IIは以下の優位性を有する。1、環状糖構造は糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用を高め、グリセリンとプロピレングリコールにおけるアルコール性ヒドロキシル基の水素結合競合力を弱め、形成した網目構造により剛性を持たせ、安定性及び剛性を向上させることができる。2、芳香族基の導入はπ-πスタッキング作用を高め、炭化水素鎖の長さの増加に応じてファンデルワールス力を導入し、両者は、糖系ゲル化剤中の分子間水素結合強度を高めるだけでなく、炭化水素鎖の疎水化作用は糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)の作用を高めることができ、それによって、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。3、グリコシルリガンドに水素結合供与体と受容体(アミド基)を導入することにより、グリコシルリガンドのヒドロキシルの水素結合を配向させたり分極させたりすることができ、水素結合の協同網目と協同センターを形成することにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用を大幅に強化し、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールのヒドロキシル基とゲル化剤のヒドロキシル基との間の水素結合作用によるゲル化剤の分子間水素結合の競合を効果的に抑制し、ゲル網目の構造を安定化し、ゲルの熱安定性とゲルの相転移温度を大幅に向上させることができる。上記の配置異性化は、霧化液をゲル化する能力を持たせ、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0024】
前記糖系ゲル化剤IIIの化学構造式は、
である。
【0025】
本発明の糖系ゲル化剤III構造には、グリコシル基、アミド基、疎水性炭化水素基が含まれている。本発明の糖系ゲル化剤IIIは以下の優位性を有する。1、グリコシルリガンドに水素結合供与体と受容体(アミド基)を導入することにより、グリコシルリガンドのヒドロキシルの水素結合を配向させたり分極させたりすることができ、水素結合の協同網目と協同センターを形成することにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用を大幅に強化し、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールのヒドロキシル基とゲル化剤のヒドロキシル基との間の水素結合作用によるゲル化剤の分子間水素結合の競合を効果的に抑制し、ゲル網目の構造を安定化し、ゲルの熱安定性とゲルの相転移温度を大幅に向上させることができる。2、炭化水素鎖の長さの増加に応じてファンデルワールス力を導入することにより、糖系ゲル化剤中の分子間水素結合強度を高めるだけでなく、炭化水素鎖の疎水化作用は糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)作用を高め、それにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。上記の配置異性化は、霧化液をゲル化する能力を持たせ、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0026】
前記糖系ゲル化剤IVの化学構造式は、
である。
【0027】
本発明の糖系ゲル化剤IV構造には、環状糖構造のグリコシル基、アミド基、芳香族基、疎水性炭化水素鎖が含まれている。本発明の糖系ゲル化剤IVは以下の優位性を有する。1.アミノ基(-NH)と2-位のヒドロキシル基(2-OH)との間に形成された5員環分子内に水素結合は、2番目の水素結合(すなわち、2つの二軸性ヒドロキシル基2-OHと4-OHとの間の6員環分子内の水素結合)を分極させ、その結果、4-位のヒドロキシル基(4-OH)が有効な協同供与体となり、すなわち、2-OH→4-OH→6-OHの協同水素結合網目が形成される。その結果、4-OHは協同供与体として、6-OHと別の分子内の水素結合を形成し、強い分子間水素結合を確立する可能性がある。これにより、ゲルの熱安定性及び剛性が著しく向上する。環状糖構造は、糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用を高め、グリセリンとプロピレングリコール中のアルコール性ヒドロキシル基の水素結合競合力を弱め、形成した網目構造により剛性を持たせ、安定性及び剛性を向上させることができる。2、芳香族基の導入はπ-πスタッキング作用を高め、炭化水素鎖の長さの増加に応じてファンデルワールス力を導入することができ、両者は糖系ゲル化剤中の分子間水素結合強度を高めるだけでなく、炭化水素鎖の疎水化作用は糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)作用を高め、それにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。3、グリコシルリガンドに水素結合供与体と受容体(アミド基)を導入することにより、グリコシルリガンドのヒドロキシル水素結合を配向させたり分極させたりすることができ、水素結合の協同網目と協同センターを形成することにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用を大幅に強化し、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールのヒドロキシル基とゲル化剤のヒドロキシル基との間の水素結合作用によるゲル化剤の分子間水素結合の競合を効果的に抑制し、ゲル網目の構造を安定化し、ゲルの熱安定性とゲルの相転移温度を大幅に向上させることができる。上記の配置異性化は、霧化液をゲル化する能力を持たせ、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0028】
前記糖系ゲル化剤Vの化学構造式は、
である。
【0029】
本発明の糖系ゲル化剤V構造には、グリコシル基、アミド基、芳香族基、疎水性炭化水素鎖が含まれている。本発明の糖系ゲル化剤Vは以下の優位性を有する。1.芳香族基の導入はπ-πスタッキング作用を高め、炭化水素鎖の長さの増加に応じてファンデルワールス力を導入し、両者は糖系ゲル化剤中の分子間水素結合強度を高めるだけでなく、炭化水素鎖の疎水化作用は糖系ゲル化剤の疎水化(疎溶媒化)作用を高め、ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができる。2、グリコシルリガンドに水素結合供与体と受容体(アミド基)を導入することにより、グリコシルリガンドのヒドロキシル水素結合を配向させたり分極させたりすることができ、水素結合の協同網目と協同センターを形成することにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用を大幅に強化し、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールのヒドロキシル基とゲル化剤のヒドロキシル基との間の水素結合作用によるゲル化剤の分子間水素結合の競合を効果的に抑制し、ゲル網目の構造を安定化し、ゲルの熱安定性とゲルの相転移温度を大幅に向上させることができる。上記の配置異性化は霧化液をゲル化する能力を持たせ、高い相転移温度、高い相転移せん断応力を持つ、可逆的相転移特性を有する霧化液ゲルは得られる。
【0030】
好ましくは、前記霧化液は、前記霧化液の質量百分率を基準に、前記霧化液に対して90~100wt%の霧化剤と、霧化液に対して0~10wt%のニコチンと、霧化液に対して0~10wt%の香料とを含む。
【0031】
前記霧化剤はグリセリンとプロピレングリコールとの混合物であり、グリセリンとプロピレングリコールとの体積比が3:7~7:3である。
【0032】
このとき、前記霧化液ゲル中の霧化液は、霧化剤を主成分又は担体とし、さらにニコチン及び/又は香気成分(香料)などの物質を含有又は含有しない溶液である。
【0033】
霧化液ゲルは、加熱及び/又は振動を受けると、ゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は、溶解したニコチンや香気成分などの物質を運んで一緒に放出され、吸入可能なエアロゾルを形成し、加熱及び/又は振動を停止すると、ゾル状態のゲルはゲル状態に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチンや香気成分などの物質の分子は再びゲル網目に固定化される。
【0034】
本発明の第2の態様は、前記糖系ゲル化剤を加熱して前記霧化液に溶解し、完全に溶解するまで撹拌した後、加熱混合液を徐冷して、前記霧化液ゲルを形成する前記霧化液ゲルの製造方法を提供する。
【0035】
前記ゲルを製造する際には、異なるタイプと含有量の糖系ゲル化剤を採用し、霧化液の各種成分のタイプと割合を調節することによって、ゲル化剤-ゲル化剤とゲル化剤-霧化液の作用の間にバランスをとることができ、沈殿、結晶又は均一な溶液を形成することなくゲルの形成を駆動することができる。
【0036】
本発明の第3の態様は、溶融した霧化液ゲル溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、冷却してゲル化させると、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジを製造する、前記霧化液ゲルの使用を提供する。
【0037】
前記ゲルは、加熱、高せん断や激しい振動を受けると、自己組織化して三次元網目構造を形成する非共有結合作用が弱いため、網目構造が破壊され、ゲルの粘度が低下し、捕集した霧化液が放出され、加熱が停止したり、せん断率が小さくなったり、高速せん断が停止したりすると、ゲルは、急速な粘弾クリープ回復性、良好なチキソトロピー挙動を有するので、速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度が再び増加する。そのため、ゲルは、加熱又は激しい振動(せん断)を受けると、ゾル状態になる良好な可逆性を有し、冷却又は静止(せん断停止)すると、速やかにゲルを形成することができる。上記の過程は複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、電気的又は非電気的加熱(たとえば高周波バルク音波や弾性表面波)による振動霧化装置に適用することができる。
【0038】
前記ゲルは、市販の電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入することができ、具体的には、溶融したゲル熱溶液をアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、ゾルが冷却されてゲル化すればよい。前記アトマイザーは、使い捨てタイプ(予備充填型)であることが好ましい。
【0039】
前記ゲルは、市場の需要、電子タバコの煙具の加熱デバイスの形状適合性と操作方式に応じて、異なる形状を有し、独立して貯蔵・包装する霧化液ゲルカートリッジとすることができる。霧化液ゲルカートリッジの形状は、小片、粒子、柱状などであってもよい。具体的には、カップ加熱型電子タバコについては、カップの構造に応じて大きさや形状に合わせた霧化液ゲルカートリッジを製造することができ、使用時にゲルカートリッジをカップに入れればよい。前記霧化液ゲルカートリッジは、繰り返し充填型電子タバコアトマイザーに適している。
【0040】
本発明の第4の態様は、溶融した霧化液ゲル溶液を多孔質材料で製造されたエアロゾル発生デバイスに直接注入し、冷却してゲル化させると、多孔質材料に固定化する、前記霧化液ゲルの使用を提供する。
【0041】
前記超分子ゲルは、クリープ回復性及びチキソトロピー性にきわめて優れているため、多孔質材料で製造されたエアロゾル発生デバイスに注入することができる。前記エアロゾル発生デバイスは、加熱及び/又は振動霧化と霧化液ゲル貯蔵の機能とを一体化することができる。前記多孔質材料のタイプは、金属、合金、セラミック、微小電気機械システム(MEMS)素子、炭素系材料、高分子ポリマーなどの単一材料又は複合材料を含むが、これらに限定されない。ゲルは、加熱及び/又は振動を受けると、ゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化液はゲル網目から放出されて霧化し、発生したエアロゾルは多孔質材料の細孔から放出され、加熱及び/又は振動を停止すると、ゾル状態のゲルはゲル状態に戻り、霧化液は再びゲル網目に固定化され、硬化して流動性が失われたゲルは多孔質材料内に閉じ込められる。該エアロゾル発生デバイスは、消費や製品のニーズに応じて、多孔質材料に貯蔵されたゲルを使い切った後に全体として交換したり、ゲルを使い切った後にゾル状態の熱ゲルを多孔質材料の細孔内に注入して冷却硬化させた後、継続して使用したりすることができる。
【0042】
この場合、霧化液はまず、ゲルの三次元網目に固定化されて霧化液ゲルを形成し、次に、霧化液ゲルは多孔質材料に固定化され、このような二重ロックにより、電子タバコアトマイザーのリキッド漏れの問題を解決する。
【0043】
本発明の第5の態様は、溶融した霧化液ゲル溶液を、サイジングにより加熱式非燃焼シガレットのシガレット紙の内面に塗布し、冷却してゲル化させると、シガレット紙の繊維多孔に固定化する、前記霧化液ゲルの使用を提供する。
【0044】
前記霧化液ゲルは、サイジングにより加熱式非燃焼シガレットに適用できるシガレット紙の内面に塗布することができ、ゲルは、クリープ回復性及びチキソトロピー性に優れているため、加熱ゾル状態でシガレット紙の繊維多孔に浸透し、冷却してゲルとなった後、これらの多孔に固定化することができる。加熱式非燃焼シガレットを低温でベークする際に、シガレット紙中のゲルはゾル化相転移を発生させて、それに固定化された霧化液は熱を受けて霧化し、発生した霧化剤、ニコチン及び香気成分のエアロゾルはシガレットロッドの充填物が熱を受けて蒸発した物質と一緒に放出され、このように、煙量を増大して、香喫味を高めて、増香する作用を果たし、ゲル超分子構造の熱的安定性及び化学的安定性のため、シガレットロッドの製造及び貯蔵中に、シガレット紙中に固定化されたゲル保持特性が安定である。
【0045】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0046】
1、本発明の霧化液ゲルは可逆的相転移特性を有し、霧化液ゲル中の糖系ゲル剤は非共有結合作用(水素結合、π-πスタッキング、ファンデルワールス力、静電作用など)により自己組織化して三次元網目を得て、霧化液物質の分子は界面力によって三次元網目に捕捉されて固定化されて霧化液ゲルを形成し、自己組織化による三次元網目形成のための駆動力は可逆性を有する非共有結合作用であるため、該霧化液ゲルは可逆的相転移特性を有する。霧化液ゲルは、加熱及び/又は振動を受けると、ゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は(又は霧化剤は溶解したニコチン及び香気成分などの物質を運んで)放出されて、吸入可能なエアロゾルを形成し、加熱及び/又は振動を停止すると、ゾル状態のゲルは速やかにゲル状態に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤(又は霧化剤、ニコチン、及び香気成分)の物質の分子は再びゲル網目に固定化される。本発明の前記霧化液ゲルは、電気的又は非電気的加熱(たとえば高周波バルク音波や弾性表面波)による振動霧化装置に適用することができる。
【0047】
2、本発明は5種類の糖系ゲル化剤を提供し、この5種類の糖系ゲル化剤を用いて製造された霧化液ゲルは、より高いゲル-ゾル相転移温度(100℃~248℃)を有し、この温度が霧化液の蒸発霧化温度に近いため、霧化液ゲルのゾル化相転移とそれにおける霧化液の蒸発霧化とを一致させる傾向にあり、このようにすると、以下の優位性を有する。一方では、従来技術において、低い相転移温度(例えば、60~80℃)のゲルは、加熱過程において、ゲルの相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度(200~250℃)より低いため、霧化液がゲルから放出されてから長時間経ても霧化されないことによるリキッド漏れのリスクを大幅に低減しながら、霧化までの時間を大幅に短縮し、熱の利用効率を高め、霧化液を迅速に霧化させ、他方では、さらに重要なのは、加熱や降温を停止すると、ゾル-ゲル相転移温度(Tgel)が高いため、溶融したゾルは速やかに凝固することができ、霧化していない霧化液はゲル網目に速やかに固定化されてゲルを形成し、それにより、低相転移温度ゲルの降温過程において、ゾルがゲルに凝固するまでの時間が長いか、再びゲル化することができないことにより発生する霧化液のリキッド漏れのリスクを大幅に低減することができる。本発明の霧化液ゲル中の糖系ゲル化剤の網目は極めて優れた化学安定性、熱的安定性や構造剛性を有し、電子タバコや加熱式非燃焼シガレットなど、霧化液を高温で霧化する必要がある製品に適している。
【0048】
3、通常の有機溶剤と区別される本発明の霧化液の主な特徴は、極性グリセリン及びプロピレングリコールが大量に含まれていることであり、これらの構造中に多価アルコール性ヒドロキシル基を含み、溶媒和作用とアルコール性ヒドロキシル基の競合作用は霧化液を固定化する有機ゲル化剤の選択、霧化液ゲルの安定性や高い相転移温度の実現に対して大きな課題をもたらす。本発明では、修飾変性により得られた異なる官能基を有する糖系ゲル化剤を用いることにより、ゲル化剤網目における非共有結合作用の強度が大幅に増加し、霧化液を固定化するには以下の優位性を有する。(1)ゲル化剤のグリコシルリガンドにヒドロキシル基が多く含まれており、自己組織化して三次元ゲル網目を形成する主要な駆動力として強い分子内及び分子間の水素結合作用を形成することができる。(2)グリコシルリガンドに芳香環と長鎖炭化水素基を導入することにより、既存の分子間水素結合作用にπ-πスタッキングやファンデルワールス力などの非水素結合作用を加え、そして、芳香環電子雲密度とアルカン鎖の長さを調節することによって、非水素結合の作用力の大きさを調節し、またグリコシルリガンドの疎水化作用を高め、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールなどの極性多価アルコールの溶媒和作用が糖系ゲル化剤の分子間水素結合に与える弱体化作用を補償する。(3)グリコシルリガンドに水素結合供与体と受容体(アミド基)を導入することにより、グリコシルリガンドのヒドロキシル水素結合を配向させたり分極させたりすることができ、水素結合の協同網目と協同センターを形成することにより、ゲル化剤の分子間水素結合作用を大幅に強化し、霧化液中のグリセリン/プロピレングリコールのヒドロキシル基とゲル化剤のヒドロキシル基との間の水素結合作用によるゲル化剤の分子間水素結合の競合を効果的に抑制し、ゲル網目の構造を安定化し、ゲルの熱安定性とゲルの相転移温度を大幅に向上させることができる。
【0049】
4、本発明の霧化液ゲルは、多孔質材料に貯蔵すると、霧化液の振り出し、漏れや揮発による質量の損失を効果的に低減することができ、多孔質材料の孔径の大きさ、細孔容量及びゲルのレオロジーに応じて、霧化液の貯蔵容量を調節することができる。霧化液ゲルは多孔質材料に貯蔵されているので、霧化液が外部環境や空気と接触する確率を大幅に減少させ、それにより、霧化液の汚染、酸化や揮発による損失などのリスクを低減している。加熱及び/又は振動霧化と霧化液ゲル貯蔵の機能を一体化した前記エアロゾル発生デバイスを採用することにより、集積度が高く、専用のリキッド貯蔵タンクの使用を回避し、アトマイザーを大幅に低減し、電子タバコの携帯性を向上させる。
【0050】
5、本発明の霧化液ゲルは堅固な超分子網目構造と相対的に厳しい相転移条件(例えば外部温度がその相転移温度を超える必要があること、激しい振動など)があるため、液体霧化液と同じ輸送・貯蔵条件下では、安定したゲル状態を維持することができ、特に空輸中の気圧変化や海抜地域別の気圧変化によるアトマイザーのリキッド漏れの問題を大幅に低減することができ、また、軽微な衝突による振動などの外力作用による漏れのリスクも大幅に低減することができる。
【0051】
6、本発明の霧化液自体は安定した性質のゲル化剤の三次元網目に固定化して封入されており、ゲル化剤の三次元網目は霧化液をその内部に閉じこむことができ、霧化液の保護バリアに相当し、霧化液の汚染、酸化変質や揮発による損失などのリスクを低減する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
理解を容易にするために、本発明は、具体的な実施形態によって、本発明の技術案をさらに説明する。なお、示された実施形態は本発明の理解を助けるものにすぎず、本発明に対する具体的な制限とみなされるべきではない。
【0053】
以下の実施例では、ゲル-ゾル相転移温度は、次の方法でテストされる。落球法を用いて測定し、具体的には、ゲルを直径10mmの試験管に置き、ゲルの頂部に直径5mm、質量0.24gのガラスビーズを1粒置き、試験管を恒温油浴に置き、1.5℃/minの昇温速度で加熱し、ガラスビーズが溶液中に完全に浸かったときの温度をゲル-ゾル相転移温度とする。テストを2回繰り返して平均値をとる。
【0054】
以下の実施例では、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力は、ISO 3219 (1993)Plastics - Polymers/ Resins in the Liquid State or as Emulsions or Dispersions - Determination of Viscosity Using a Rotational Viscometer with Defined Shear Rate(ラスチック-液体、又はエマルション状態又は分散剤として作用するポリマー/樹脂-所定のせん断率を有する回転粘度計を用いて粘度が測定される)国際標準方法でテストする。
【0055】
実施例1
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル1であり、この霧化液ゲル1は、糖系ゲル化剤0.8wt%と、霧化液99.2wt%とを含み、前記霧化液の質量百分率を基準に、前記霧化液は、前記霧化液に対して92.0wt%の霧化剤と、前記霧化液に対して2.0wt%のニコチンと、前記霧化液に対して6.0wt%の香料とを含み、前記霧化剤はグリセリンとプロピレングリコールとの混合物であり、グリセリンとプロピレングリコールとの体積比が5:5であった。
前記糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル1溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、冷却してゲル化させてから、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジ1を製造し、電子タバコに用いた。この霧化液ゲル1は、ゲル-ゾル相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度に近い125℃であり、220℃まで加熱した後、霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は溶解したニコチンと香気成分物質を運んで放出され、吸入可能なエアロゾルを形成した。数口パフした後、加熱を停止し、電子タバコの温度がゲル-ゾル相転移温度以下に低下してから、ゾル状態のゲルはゲル状に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチン及び香気成分物質の分子は再びゲル網目に固定化された。このことから、本実施例で製造された霧化液ゲル1は、熱可逆的相転移特性が顕著であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル1の相転移特性が顕著であることが分かり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル1は電子タバコのように霧化液を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
【0056】
実施例2
本実施例は、せん断可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル2であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル2溶液をアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、霧化液ゲルカートリッジ2を製造し、高周波バルク音波振動霧化装置に用いた。この霧化液ゲル2は、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が185Paであり、高せん断と激しい振動(音波周波数2.4MHz)では、ゲル網目構造が破壊され、ゲル粘度が低下し、捕集した霧化液が放出され、パフ可能なエアロゾルが発生した。数口パフした後、振動を停止して、速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度が再び増加した。上記過程は、複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、高周波バルク音波振動霧化装置に適用することができる。
【0057】
実施例3
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル3であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の糖系ゲル化剤は以下の優位性を有する。1、糖系ゲル化剤において、一方側が疎水性炭化水素基断片であり、他方側が親水性のグリコシルリガンドであり、界面活性剤に類似している。グリコシルリガンドにおける強い水素結合作用は、分子を単方向に自己組織化して伸長させ、最終的には繊維又はリボン状の3D網目を形成する。両親媒性構造はグリセリン、プロピレングリコールなどの極性成分と芳香族アルコール類などの非極性揮発性成分とを含む複雑な霧化液系をゲル化するのに適している。2、一方側の疎水性炭化水素基断片は炭化水素鎖の長さを増加して、それに応じてファンデルワールス力を導入し、一方、芳香環の中間基を導入することにより、π-πスタッキング作用をその分導入し、ファンデルワールス力とπ-πスタッキング作用を導入すると、糖系ゲル化剤における分子間水素結合強度を高めることができる一方、糖系ゲル化剤の分子間水素結合作用に対するグリセリンとプロピレングリコールの溶媒和作用の影響を弱めることができ、それにより、糖系ゲル化剤による霧化液固定化の安定性を高め、ゲル化の多様性をさらに高め、ゲル化温度を高めることができる。3、糖系ゲル化剤は、より多くの方向性ヒドロキシル基を有する環状糖を糖系原料として使用し、糖系原料に追加的な水素結合基(アミド基)を導入して得た糖系原料から糖系ゲル化剤を製造し、このような糖系ゲル化剤分子は、本来の分子間水素結合作用に加えて、強い協同水素結合網目を形成し、自己組織化水素結合の駆動能力を増加し、それにより、グリセリンとプロピレングリコールのヒドロキシル基の水素結合競合力を弱め、形成した網目構造により剛性を持たせ、熱安定性と熱可逆的相転移温度を向上させる。
本実施例の溶融した霧化液ゲル3溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジ3を製造し、電子タバコに用いた。この霧化液ゲル3は、ゲル-ゾル相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度に近い205℃であり、220℃まで加熱したら、霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は溶解したニコチンと香気成分物質を運んで放出され、吸入可能なエアロゾルを形成し、数口パフした後、加熱を停止し、電子タバコの温度がゲル-ゾル相転移温度以下に低下したとき、ゾル状態のゲルはゲル状に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチン及び香気成分物質の分子は再びゲル網目に固定化された。このことから、本実施例で製造された霧化液ゲル3は、熱可逆的相転移特性が顕著であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル3の相転移特性が顕著であることが分かり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル3は、電子タバコのように霧化液を高温に霧化する必要がある製品に適用することができる。
【0058】
実施例4
本実施例は、せん断可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル4であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル4溶液をアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、霧化液ゲルカートリッジ4を製造し、高周波バルク音波振動霧化装置に用いた。この霧化液ゲル4は、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が580Paであり、高せん断と激しい振動(音波周波数2.4MHz)では、ゲル網目構造が破壊され、ゲル粘度が低下し、捕集した霧化液が放出され、パフ可能なエアロゾルが発生し、数口パフした後、振動を停止し、また速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度は再び増加した。上記の過程は、複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、高周波バルク音波振動霧化装置に適用することができる。
【0059】
実施例5~6
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル5及び霧化液ゲル6であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式はそれぞれ、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル5及び霧化液ゲル6溶液を多孔質材料で製造されたエアロゾル発生デバイスに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、多孔質材料に固定化した。霧化液ゲル5及び霧化液ゲル6は、ゲル-ゾル相転移温度がそれぞれ230℃と235℃であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル5と霧化液ゲル6の相転移性能は依然として顕著であり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル5と霧化液ゲル6は電子タバコのように霧化液を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
【0060】
実施例7~9
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル7~9であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式はそれぞれ、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル7~9溶液を、サイジングにより、加熱式非燃焼シガレットに適したシガレット紙の内面に直接塗布し、ゲルは、クリープ回復性及びチキソトロピー性に優れているため、加熱ゾル状態でシガレット紙の繊維多孔に浸透し、冷却してゲル化した後に繊維多孔に固定化することができる。そして、ゲルが固定化されたシガレット紙を加熱式非燃焼シガレットのシガレットロッドにして、それと適合した加熱式非燃焼シガレットの煙具と組み合わせてパフし、加熱式非燃焼シガレットを低温でベークする際に、シガレット紙中のゲルはゾル化相転移を発生させ、それに固定化された霧化液は熱を受けて霧化し、発生した霧化剤、ニコチン及び香気成分のエアロゾルはシガレットロッドの充填物が熱を受けて蒸発した物質と一緒に放出され、それにより、煙量を増やして、香喫味を高めて、増香する作用を果たし、ゲル超分子構造の熱的安定性と化学的安定性により、シガレットロッドの製造と貯蔵の過程において、シガレット紙に固定化されたゲル保持性が安定している。
【0061】
実施例10
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル10であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル10溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジ10を製造し、電子タバコに用いた。この霧化液ゲル10は、ゲル-ゾル相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度に近い145℃であり、220℃まで加熱した後、霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は溶解したニコチンと香気成分の物質を運んで放出され、パフ可能なエアロゾルを形成し、数口パフした後、加熱を停止し、電子タバコの温度がゲル-ゾル相転移温度以下に低下したとき、ゾル状態ゲル状態に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチン、及び香気成分物質の分子は再びゲル網目に固定化された。このことから、本実施例で製造された霧化液ゲル10は、熱可逆的相転移特性が顕著であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル10の相転移特性が顕著であることが分かり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル10は、電子タバコのように霧化液を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
【0062】
実施例11
本実施例は、せん断可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル11であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル11溶液をアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、霧化液ゲルカートリッジ11を製造し、高周波バルク音波振動霧化装置に用いた。この霧化液ゲル11は、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が200Paであり、高せん断と激しい振動(音波周波数2.4MHz)では、ゲル網目構造が破壊され、ゲル粘度が低下し、捕集した霧化液が放出され、パフ可能なエアロゾルが発生し、数口パフした後、振動を停止し、また速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度が再び増加した。上記の過程は、複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、高周波バルク音波振動霧化装置に適用することができる。
【0063】
実施例12
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル12であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル12溶液を、多孔質材料で製造されたエアロゾル発生デバイスに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、多孔質材料に固定化した。この霧化液ゲル12は、ゲル-ゾル相転移温度がそれぞれ155℃であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル12の相転移性能が顕著であるため、本実施例で製造された霧化液ゲル12は、電子タバコのように霧化液を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
【0064】
実施例13
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル13であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル13溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジ13を製造し、電子タバコに用いた。この霧化液ゲル13は、ゲル-ゾル相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度に近い225℃であり、220℃まで加熱した後、霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は溶解したニコチンと香気成分物質を運んで放出され、パフ可能なエアロゾルを形成し、数口パフした後、加熱を停止し、電子タバコの温度がゲル-ゾル相転移温度以下に低下したとき、ゾル状態のゲルはゲル状態に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチン、及び香気成分物質の分子は再びゲル網目に固定化された。このことから、本実施例で製造された霧化液ゲル13は、熱可逆的相転移特性が顕著であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル13の相転移特性が顕著であることが分かり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル13は、電子タバコのように霧化液体を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
その霧化液ゲル13を高周波バルク音波振動霧化装置に用いた場合、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が690Paであり、高せん断と激しい振動(音波周波数2.4MHz)では、ゲル網目構造が破壊され、ゲル粘度が低下し、捕捉した霧化液が放出され、パフ可能なエアロゾルが発生し、数口パフした後、振動を停止し、また速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度が再び増加した。上記の過程は、複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、高周波バルク音波振動霧化装置に適用することができる。
【0065】
実施例14
本実施例は、熱可逆的相転移特性を有する霧化液ゲル14であり、使用する糖系ゲル化剤の化学構造式は、
であった。
その他の製造条件、各成分の割合は実施例1と同じであった。
本実施例の溶融した霧化液ゲル14溶液を電子タバコアトマイザーのリキッド貯蔵タンクに直接注入し、溶液を冷却してゲル化させてから、電子タバコに適用できる霧化液ゲルカートリッジ14を製造し、電子タバコに用いた。この霧化液ゲル14は、ゲル-ゾル相転移温度が霧化液の蒸発霧化温度に近い175℃であり、220℃まで加熱した後、霧化液ゲルはゲル状態からゾル状態に変わり、ゲル内に固定化された霧化剤は溶解したニコチンと香気成分物質を運んで放出され、パフ可能なエアロゾルを形成し、数口パフした後、加熱を停止し、電子タバコの温度がゲル-ゾル相転移温度以下に低下したとき、ゾル状態のゲルはゲル状態に戻り、ゲル中の霧化していない霧化剤、ニコチン、及び香気成分物質の分子は再びゲル網目に固定化された。このことから、本実施例で製造された霧化液ゲル14は、熱可逆的相転移特性が顕著であり、数回パフを繰り返しても霧化液ゲル14の相転移特性が顕著であることが分かり、このため、本実施例で製造された霧化液ゲル14は、電子タバコのように霧化液体を高温で霧化する必要がある製品に適用することができる。
その霧化液ゲル14を高周波バルク音波振動霧化装置に用いた場合、ゲル-ゾル相転移臨界せん断応力が440Paであり、高せん断と激しい振動(音波周波数2.4MHz)では、ゲル網目構造が破壊され、ゲル粘度が低下し、捕捉した霧化液が放出され、パフ可能なエアロゾルが発生し、数口パフした後、振動を停止してから、また速やかに自己組織化してゲルを形成し、ゲル粘度が再び増加した。上記の過程は、複数回繰り返すことができる。前記のとおり、本発明の前記霧化液ゲルは、高周波バルク音波振動霧化装置に適用することができる。
【国際調査報告】