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特表2022-536440電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20220809BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/63 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220809BHJP
   H01M 10/659 20140101ALI20220809BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01M50/204 401E
H01M50/249
H01M50/342 101
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/63
H01M10/6556
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M10/651
H01M10/659
A62C3/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551826
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2020107773
(87)【国際公開番号】W WO2021057280
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910914629.X
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】黄小騰
(72)【発明者】
【氏名】洪家栄
(72)【発明者】
【氏名】汪文礼
(72)【発明者】
【氏名】項延火
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H012DD05
5H012FF08
5H031AA09
5H031CC05
5H031EE04
5H031HH06
5H031KK08
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
(57)【要約】
本出願は、電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法を開示する。電池パックは、複数の二次電池とスプレー管路とを備えた電池パックであって、前記複数の二次電池は、それぞれのケースが脆弱部を有し、前記二次電池の熱暴走による熱流が前記脆弱部を突き破って排出されるように構成され、前記スプレー管路は、前記二次電池の前記脆弱部に対応し、かつ前記脆弱部と距離Bを隔てて設置され、前記スプレー管路の少なくとも前記脆弱部に対応する部分が破口領域であり、前記破口領域が前記熱流により開口を形成することができ、前記スプレー管路におけるスプレー媒体が前記開口を介して熱暴走した異常な二次電池に噴射され、ここで、異常な二次電池の熱暴走の拡散を緩和するために噴射されたスプレー媒体の重量Aは、
【数1】
に基づいて決定され、ここで、Dはスプレー媒体の潜熱を示し、Bは二次電池の容量を示す。本出願に開示された電池パック及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法は、電池パック内の熱暴走の拡散を効果的に緩和し、電池パック及び車両の安全性能を向上させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池とスプレー管路とを備えた電池パックであって、
前記複数の二次電池は、それぞれのケースが脆弱部を有し、前記二次電池の熱暴走による熱流が前記脆弱部を突き破って排出されるように構成され、前記スプレー管路は、前記二次電池の前記脆弱部に対応し、かつ前記脆弱部と距離Bを隔てて設置され、前記スプレー管路の少なくとも前記脆弱部に対応する部分が破口領域であり、
前記破口領域が前記熱流により開口を形成することができ、前記スプレー管路におけるスプレー媒体が前記開口を介して熱暴走した異常な二次電池に噴射され、
前記異常な二次電池の熱暴走の拡散を緩和するために噴射されたスプレー媒体の重量Aは、式(1)に基づいて決定され、
【数1】
前記式(1)において、Aはkgで計算したスプレー媒体の重量を示し、DはkJ/kgで計算した前記スプレー媒体の潜熱を示し、BはAhで計算した二次電池の容量を示す電池パック。
【請求項2】
【数2】
好ましくは、
【数3】
である請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記スプレー媒体の潜熱Dは、100kJ/kg以上であり、好ましくは、200kJ/kg~5000kJ/kgであり、さらに好ましくは、200kJ/kg~2000kJ/kgである請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記スプレー管路のスプレー圧力Pは、式(2)に基づいて決定され、
【数4】
前記式(2)において、Pは、kPaで計算した前記スプレー管路のスプレー圧力を示し、Bは、Ahで計算した二次電池の容量を示す請求項1~3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
【数5】
である、請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記スプレー管路のスプレー圧力Pは、10kPa以上であり、好ましくは、12kPa~150kPaである請求項1~5のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記スプレー管路の前記破口領域は、前記二次電池の前記脆弱部に対向して設けられる請求項1~6のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項8】
前記スプレー媒体は、消防ガス、消防液、消防コロイド及び消防粉体のうちの1種又は複数種から選択され、好ましくは、前記スプレー媒体は、水、エチレングリコール、液体窒素、液体アルゴン、液体二酸化炭素、液体ヘプタフルオロプロパン及びフッ化ケトンのうちの1種又は複数種から選択される請求項1~7のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項9】
貯蔵タンクをさらに備え、
前記スプレー管路は、前記貯蔵タンクに接続され、かつ少なくとも一部の前記スプレー管路は、前記二次電池の上方に位置し、又は、前記スプレー管路は、並列に設置された複数の管路ユニットを含み、各前記管路ユニットは、少なくとも1つの前記二次電池に対応して設置され、各前記管路ユニットは、いずれも前記貯蔵タンクに接続される請求項1~8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
前記貯蔵タンクは、前記スプレー管路の前記破口領域より高く設けられる請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
前記貯蔵タンクは、
内部空洞を有するタンク本体と、
前記タンク本体の内部空洞に位置し、かつ前記タンク本体を液体貯蔵部と気体貯蔵部に仕切る仕切り部材と、を備え、
前記液体貯蔵部が前記スプレー管路に連通し、前記気体貯蔵部が圧縮ガスを流入させるための入口を有し、前記仕切り部材が前記気体貯蔵部内の圧縮ガスの作用で前記液体貯蔵部内のスプレー媒体を前記スプレー管路に入るように駆動することができる請求項9に記載の電池パック。
【請求項12】
前記仕切り部材は、弾性仕切り膜であり、好ましくは、皮膜であり、又は、
前記仕切り部材は、仕切板であり、前記仕切板は、前記タンク本体の内壁に摺動可能に接続される請求項11に記載の電池パック。
【請求項13】
前記貯蔵タンクは、
内部空洞を有するタンク本体と、
前記タンク本体の前記内部空洞に設置され、弾性部材及び駆動部材を含み、前記弾性部材が前記駆動部材に接続され、前記駆動部材が前記貯蔵タンクの壁部と囲んで液体貯蔵部を形成し、前記液体貯蔵部が前記スプレー管路に連通する駆動装置と、を備え、
前記弾性部材の弾力作用で、前記駆動部材は、前記液体貯蔵部におけるスプレー媒体を前記スプレー管路に入るように駆動することができる請求項9に記載の電池パック。
【請求項14】
前記破口領域は、受熱溶融部を有することにより、前記二次電池の前記脆弱部から噴射された熱流の作用で溶融して前記開口を形成し、又は、
前記破口領域は、応力集中部を有することにより、前記二次電池の前記脆弱部から噴射された熱流の衝撃作用で破裂して前記開口を形成する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項15】
前記受熱溶融部の融点は、200℃~500℃であり、好ましくは、300℃~500℃である請求項14に記載の電池パック。
【請求項16】
前記脆弱部は、前記ケースに設置された防爆弁であり、又は、
前記脆弱部は、前記ケースに切り込み又は厚さ薄化領域を設置することにより形成される請求項1~15のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の電池パックを備える車両。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法であって、
二次電池の熱暴走による熱流は、前記脆弱部を突き破り、かつ前記スプレー管路に作用することにより、前記破口領域は、前記熱流により前記開口を形成することと、
前記スプレー媒体は、前記開口を介して熱暴走した二次電池に噴射することにより、前記電池パックの熱暴走の拡散を緩和することと、を備える制御方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2019年9月26日に提出された「電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法」という名称の中国特許出願201910914629.Xの優先権を主張することを要求し、該出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、エネルギー貯蔵装置の技術分野に属し、具体的には電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
環境保護問題が日増しに重視されるにつれて、新エネルギー電気自動車は日増しに普及されている。電池パックのエネルギー密度は電気自動車の航続距離に依存する。高エネルギーの要求を取得するために、現在電池パックは数が多い二次電池を用いて直並列接続組み合わせを行う。電池パックのエネルギー密度がますます高くなるにつれて、その熱安全の問題もますます深刻になる。電池パックの安全は電気自動車と乗客の安全に直接影響を与え、したがって、電池パックの安全問題は電気自動車のさらなる普及を阻害する抵抗となる。どのように電池パックの安全問題を効果的に解決するかは早急に解決すべき技術的問題となる。
【発明の概要】
【0004】
本出願の第1の態様により提供された電池パックは、複数の二次電池とスプレー管路とを備えた電池パックであって、複数の二次電池は、それぞれのケースが脆弱部を有し、二次電池の熱暴走による熱流が脆弱部を突き破って排出されるように構成され、スプレー管路は、二次電池の脆弱部に対応し、かつ脆弱部と距離Bを隔てて設置され、スプレー管路の少なくとも脆弱部に対応する部分が破口領域であり、破口領域が熱流により開口を形成することができ、スプレー管路におけるスプレー媒体が開口を介して熱暴走した異常な二次電池に噴射され、
異常な二次電池の熱暴走の拡散を緩和するために噴射されたスプレー媒体の重量Aは、式(1)に基づいて決定され、
【数1】
式(1)において、Aはkgで計算したスプレー媒体の重量を示し、DはkJ/kgで計算したスプレー媒体の潜熱を示し、BはAhで計算した二次電池の容量を示す。
【0005】
【数2】
好ましくは、
【0006】
好ましくは、
【数3】
である。
【0007】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、スプレー媒体の潜熱Dは100kJ/kg以上であり、好ましくは、200kJ/kg~5000kJ/kgであり、さらに好ましくは、200kJ/kg~2000kJ/kgである。
【0008】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、スプレー管路のスプレー圧力Pは式(2)に基づいて決定され、
【数4】
式(2)において、PはkPaで計算したスプレー管路のスプレー圧力を示し、BはAhで計算した二次電池の容量を示す。
【0009】
好ましくは、
【数5】
である。
【0010】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、スプレー管路のスプレー圧力Pは10kPa以上であり、好ましくは、12kPa~150kPaである。
【0011】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、上記スプレー管路の上記破口領域は上記二次電池の上記脆弱部に対向して設けられる。
【0012】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、上記スプレー媒体は、消防ガス、消防液、消防コロイド及び消防粉体のうちの1種又は複数種から選択され、好ましくは、上記スプレー媒体は、水、エチレングリコール、液体窒素、液体アルゴン、液体二酸化炭素、液体ヘプタフルオロプロパン及びフッ化ケトンのうちの1種又は複数種から選択される。
【0013】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、電池パックは、貯蔵タンクをさらに備え、スプレー管路は、貯蔵タンクに接続され、かつ少なくとも一部のスプレー管路は、二次電池の上方に位置し、又は、スプレー管路は、並列に設置された複数の管路ユニットを含み、各管路ユニットは、少なくとも1つの二次電池に対応して設置され、各管路ユニットは、いずれも貯蔵タンクに接続される。
【0014】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、上記貯蔵タンクは上記スプレー管路の上記破口領域より高く設けられることが好ましい。
【0015】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、貯蔵タンクは、
内部空洞を有するタンク本体と、
タンク本体の内部空洞に位置し、かつタンク本体を液体貯蔵部と気体貯蔵部に仕切る仕切り部材と、を備え、
液体貯蔵部がスプレー管路に連通し、気体貯蔵部が圧縮ガスを流入させるための入口を有し、仕切り部材が気体貯蔵部内の圧縮ガスの作用で液体貯蔵部内のスプレー媒体をスプレー管路に入るように駆動することができる。
【0016】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、仕切り部材は弾性仕切り膜であり、好ましくは、皮膜であり、又は、仕切り部材は仕切板であり、仕切板はタンク本体の内壁に摺動可能に接続される。
【0017】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、貯蔵タンクは、
内部空洞を有するタンク本体と、
タンク本体の内部空洞に設置され、弾性部材及び駆動部材を含み、弾性部材が駆動部材に接続され、駆動部材が貯蔵タンクの壁部と囲んで液体貯蔵部を形成し、液体貯蔵部がスプレー管路に連通する駆動装置と、を備え、
弾性部材の弾力作用で、駆動部材は、液体貯蔵部におけるスプレー媒体をスプレー管路に入るように駆動することができる。
【0018】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、破口領域は、受熱溶融部を有することにより、二次電池の脆弱部から噴射された熱流の作用で溶融して開口を形成し、又は、
破口領域は、応力集中部を有することにより、二次電池の脆弱部から噴射された熱流の衝撃作用で破裂して開口を形成する。
【0019】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、上記受熱溶融部の融点は200℃~500℃であり、好ましくは300℃~500℃である。
【0020】
本出願の第1の様態の上記任意の実施形態において、上記脆弱部は上記ケースに設けられた防爆弁であり、又は、上記脆弱部は、上記ケースに切り込み又は厚さ薄化領域を設けることにより形成される。
【0021】
本出願の第2の態様により提供された車両は、本出願の第1の態様係る電池パックを備える。
【0022】
本出願の第3の態様は、電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法を提供し、電池パックは本出願の第1の態様に係る電池パックであり、上記方法は、
二次電池の熱暴走による熱流は、脆弱部を突き破り、かつスプレー管路に作用することにより、破口領域は、熱流により開口を形成することと、
スプレー媒体は、開口を介して熱暴走した二次電池に噴射することにより、電池パックの熱暴走の拡散を緩和することと、を備える。
【0023】
本出願が提供する電池パック、車両及び電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法において、二次電池が熱暴走して発生した熱流はそのケースの脆弱部を突き破って排出することができ、かつスプレー管路の破口領域に作用する。破口領域は熱流により開口を形成することができ、これによりスプレー管路中のスプレー媒体は開口により熱暴走した二次電池に噴射される。また、異常な二次電池に噴射されたスプレー媒体の重量は式(1)を満たす。これにより、スプレー媒体は二次電池の熱暴走により生成された高温を効果的に低減し、かつ熱が他の二次電池に拡散することを防止することができ、これにより、異常な二次電池の熱暴走を効果的に制御し、同時に、電池パック内の熱暴走の拡散を効果的に緩和する。したがって、本出願の電池パックは高い安全性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下に本出願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に記載の図面は本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をしなくても、図面に基づいてさらに他の図面を取得することができる。
【0025】
図1】本出願の実施例に係る電池パックの構造概略図であり、ここで電池パックの外装及び他の部品が省略される。
図2図1の部分拡大概略図である。
図3】本出願の実施例に係る別の電池パックの構造概略図であり、ここで電池パックの外装及び他の部品が省略される。
図4】本出願の実施例に係る別の電池パックの構造概略図であり、ここで電池パックの外装及び他の部品が省略される。
図5】本出願の実施例に係る貯蔵タンクの構造概略図である。
図6】本出願の実施例に係る別の貯蔵タンクの構造概略図である。 なお、図面は実際の比率に応じて描かれない。
【発明を実施するための例】
【0026】
本出願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して本出願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は本出願を説明するためのものに過ぎず、本出願を限定するものではない。
【0027】
簡略化するために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを明確に開示する。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はいずれも該範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は自身の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0028】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、他に説明しない限り、「複数」の意味は1つ又は1つ以上である。「複数個/複数種」の意味は2つ/2種以上である。「以上」、「以下」は本数を含む。用語「上」、「下」、「内」、「外」等の指示された方位又は位置関係は図面に基づいて示された方位又は位置関係であり、説明を容易にして説明を簡略化するためのものであり、指定された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成されて操作されることを指示するか又は暗示するものではなく、したがって、本明細書を限定するものと理解すべきではない。
【0029】
本出願の説明において、さらに説明すべきことは、他に明確な規定及び限定がない限り、用語「取り付け」、「接続」、「連結」を広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能に接続されてもよく、又は一体的に接続されてもよい。直接的に接続されてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されてもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて本出願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0030】
本明細書の説明において、特に説明しない限り、用語「又は」は包括的なものである。即ち、文句「A又はB」は「A、B、又はA及びBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれかの条件はいずれも条件「A又はB」を満たす。Aが真(又は存在する)でありかつBが偽(又は存在しない)である。Aが偽(又は存在しない)でありかつBが真(又は存在する)である。又はA及びBがいずれも真である(又は存在する)。
【0031】
上述した本出願の発明の概要は、本出願の各実施形態や各実現方式を説明するためのものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。出願全体の複数箇所において、一連の実施例により指導を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループのみとして列挙し、網羅的に解釈すべきではない。
【0032】
電池パックの熱安全問題を解決し、電池パックの安全性能を向上させるために、本出願の実施例は電池パックを提供する。図1及び図2に示すとおり、本出願の実施例の電池パックは複数の二次電池10及びスプレー管路20を含む。
【0033】
各二次電池10のケースは脆弱部11を有することにより、二次電池10が熱暴走して生成した熱流が脆弱部11を突き破って排出することができる。
【0034】
スプレー管路20は、二次電池10の脆弱部11に対応して、脆弱部11から離間して設けられている。スプレー管路20の少なくとも脆弱部11に対応する部分は破口領域21であり、破口領域21は熱流により開口を形成することができる。スプレー管路20内のスプレー媒体は開口を介して熱暴走した異常な二次電池10に噴射される。
【0035】
電池パックにおいて、異常な二次電池10熱暴走の拡散を緩和するために噴射されたスプレー媒体の重量Aは式(1)に基づいて決定され、
[式(1)]
【数6】
式(1)において、Aはkgで計算したスプレー媒体の重量を示し、DはkJ/kで計算したスプレー媒体の潜熱を示し、BはAhで計算した二次電池の容量を示す。
【0036】
式(1)は、数値の計算のみに関する。例えば、スプレー媒体の重量Aは0.27kgであり、スプレー媒体の潜熱Dは2000kJ/kgであり、二次電池の容量Bは180Ahであり、即ち、
【数7】
【0037】
本出願の実施例の電池パックは、二次電池10が熱暴走して発生した熱流がそのケースの脆弱部11を突き破って排出することができ、かつスプレー管路20の破口領域21に作用する。破口領域21は熱流により開口を形成することができ、これによりスプレー管路20内のスプレー媒体は開口を通過して熱暴走した異常な二次電池10に噴射する。また、異常な二次電池10に噴射するスプレー媒体の重量は式(1)を満たす。これにより、スプレー媒体は、二次電池10の熱暴走による高温を効果的に低減し、かつ熱が他の二次電池10に拡散することを防止することができ、これにより異常な二次電池10の熱暴走を効果的に制御し、同時に電池パックにおける熱暴走の拡散を効果的に緩和する。したがって、本出願の実施例の電池パックは高い安全性能を有する。
【0038】
【数8】
好ましくは、
【0039】
【数9】
好ましくは、
【0040】
また、本出願の実施例の電池パックにおいて、二次電池10が熱暴走して排出した熱流によりスプレー管路20をトリガーして噴射する。この電池パックは、二次電池10の熱暴走に対する応答が迅速かつ正確である。また、該電池パックに熱暴走監視装置及びスプレー制御装置を設置する必要がないため、その構造が簡単であり、特に電池パックの重量及び体積がいずれも小さく、それに高い重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を備えさせることに役立つ。
【0041】
本出願は、二次電池10のタイプを特に限定せず、そのうちの正極、負極活物質及び電解液等はいずれも本分野の既知の材料を採用することができる。二次電池10は、典型的には、電極体および電解液をケースに封入したものである。二次電池10のケースにおいて、脆弱部11はケースに設置された防爆弁であってもよい。又は、二次電池10のケースに切り込み又は厚さ薄化領域を設置して脆弱部11を形成してもよい。
【0042】
熱暴走が発生する時、二次電池10内の様々な材料は熱分解、さらに燃焼等の反応が発生し、その内部の温度及び圧力を急激に上昇させる。二次電池10内の圧力が一定の限度に達する場合、高温高圧の混合流体はケースの脆弱部11を突き破り、ケース内の圧力を低下させ、防爆作用を果たす。即ち、熱流は二次電池10が熱暴走する時に脆弱部11により噴出された高温高圧の混合流体である。該混合流体は高温高圧の気体及び液体を含み、そのうち液体は主に電解液である。
【0043】
スプレー管路20の破口領域21は二次電池10の脆弱部11に対応して設置され、これにより二次電池10が熱暴走して噴射した熱流が破口領域21に直接作用して開口を形成することができる。また、このようにスプレー管路20は熱流の流出源に対応してスプレー媒体を噴射し、熱流の拡散をより効果的に低減することができ、これにより熱暴走及びその拡散の制御効率を向上させる。特に、破口領域21は脆弱部11に対応して設置されることによりさらにスプレー媒体が二次電池10のケース内部に流入することができる。これはケース内部の材料のさらなる熱分解、燃焼等の反応を抑制し、熱流の継続的な発生を制御し、これにより熱暴走及びその拡散の制御効率をさらに向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、スプレー管路20の破口領域21は二次電池10の脆弱部11に対向して設置される。例えば、二次電池10のケースの頂部に防爆弁が取り付けられ、スプレー管路20の破口領域21は防爆弁の直上に位置し、かつ防爆弁と互いに間隔を隔てる。
【0045】
スプレー管路20に破口領域21を設ける方式は様々である。一例として、スプレー管路20の少なくとも脆弱部11に対応する(又は正対する)部分は受熱溶融部を有する。受熱溶融部の融点はスプレー管路20の他の領域の融点より小さく、かつ二次電池10から噴射された熱流の高温作用で、受熱溶融部は溶融されて開口を形成し、噴射を実現することができる。例えば、二次電池10の熱暴走による噴射の熱流温度は500℃以上に達することができ、例えば600℃である。受熱溶融部の融点は熱流温度よりも小さいことにより、それは熱流の高温作用で溶融される。受熱溶融部の融点は200℃~500℃であってもよく、例えば300℃~500℃である。スプレー管路20の他の領域の融点は熱流温度より大きいことにより、それはスプレー媒体に対し熱暴走した二次電池10へ流れる流路を提供し、所定の位置で噴射を行うことができる。
【0046】
別の例として、スプレー管路20の少なくとも脆弱部11に対応する(又は正対する)部分に応力集中部を備えさせることができる。二次電池10の脆弱部11から噴射された熱流の圧力が大きく、熱流の高圧衝撃作用で、応力集中部は強度が低くかつ応力が集中するため破裂され、これにより開口を形成し、噴射を実現する。スプレー管路20の他の領域は、十分な強度を有するため損害されない。
【0047】
これから分かるように、電池パックが正常に動作する状態で、スプレー管路20の構造が完全であり、スプレー媒体をその内部に貯蔵する。充放電サイクル過程において、二次電池10の内部に複雑な化学反応が発生し、かつそれは一般的に一定の内部抵抗を有することにより、二次電池10は正常な動作過程において熱量を生成する。この時、スプレー管路20に貯蔵されたスプレー媒体はさらに二次電池10に対する降温作用を果たすことができ、二次電池10のサイクル耐用年数を向上させることに役立つ。二次電池10が熱暴走して熱流を噴射する場合、熱流によりスプレー管路20が開口する。該開口から熱暴走した二次電池10に重量Aのスプレー媒体を噴射し、熱暴走及びその拡散に対する効果的な制御を実現する。
【0048】
スプレー媒体は、当技術分野で既知の電池の熱暴走を制御することに用いることができる材料であってもよい。例えば、スプレー媒体は消防ガス、消防液、消防コロイド、消防粉体などから選択することができる。具体的な例として、スプレー媒体は水、エチレングリコール、液体窒素、液体アルゴン、液体二酸化炭素、液体ヘプタフルオロプロパン、フッ化ケトンのうちの1種又は複数種から選択することができる。
【0049】
いくつかの実施例において、スプレー媒体の潜熱Dは100kJ/kg以上、200kJ/kg以上、500kJ/kg以上、1000kJ/kg以上、1500kJ/kg以上、又は2000kJ/kg以上であってもよい。スプレー媒体の潜熱が大きく、それは多くの熱量を吸収することができ、これにより熱暴走二次電池10及びその放出された熱流の温度を迅速に低減させることができ、電池パックの熱暴走拡散の緩和効果を向上させる。かつ、二次電池10の熱暴走により放出された熱量が一定である場合、スプレー媒体の潜熱が大きいほど、必要なスプレー媒体の使用量が少なくなる。これは、システム全体の軽量化に有利である。
【0050】
いくつかの実施例において、スプレー媒体の潜熱Dは5000kJ/kg以下、4500kJ/kg以下、4000kJ/kg以下、3500kJ/kg以下、又は3000kJ/kg以下であってもよい。このように、式(1)を満たすスプレー媒体の重量Aが適切であることにより、熱暴走拡散の緩和により噴射されたスプレー媒体の体積が適切であり、熱暴走した二次電池10及びその放出された熱流に十分に作用することができ、これにより二次電池10の熱暴走及び熱暴走拡散を効果的に制御する。
【0051】
スプレー管路20から熱暴走した異常な二次電池10に重量Aのスプレー媒体を噴射することを様々な方式で実現することができる。
【0052】
いくつかの実施例において、図3に示すとおり、スプレー管路20は電池パック内の全ての二次電池10に少なくとも部分的に対応する連続的な管路であってもよい。管路内に重量A以上のスプレー媒体が封入されてもよい。電池パック内のある二次電池10に熱暴走が発生する場合、熱流によりスプレー管路20は該二次電池10の破口領域11に対応して開口を生成し、管路内のスプレー媒体は開口から該二次電池10に噴射され、熱暴走及び熱暴走拡散の効果的な制御を実現する。
【0053】
他の実施例では、図4に示すとおり、スプレー管路20は、複数の管路ユニット22を含むことができ、各管路ユニット22は電池パック内の少なくとも1つの電池セルに対応して設置され、かつ各管路ユニット22内に重量A以上のスプレー媒体をパッケージすることができる。各電池セルは、1つ以上の二次電池10を含んでいてもよい。
【0054】
例えば、電池パックは電池パックの幅方向に沿って配列された複数の電池セルを含むことができ、各電池セルは電池パックの長さ方向に沿って配列された複数の二次電池10を含むことができる。各電池セルに対応して1つの管路ユニット22がそれぞれ設置されてもよい。
【0055】
いずれか1つの電池セル中のある二次電池10が熱暴走が発生する場合、該電池セルに対応する管路ユニット22の破口領域11は熱流で開口を生成し、該管路ユニット22内のスプレー媒体を熱暴走した二次電池10に噴射し、二次電池10の熱暴走及び熱暴走拡散の効果的な制御を実現する。各電池セルに対応してスプレー媒体が入れた管路ユニット22はそれぞれ設置されるため、異なるいくつかの電池セルにおける二次電池10が熱暴走が発生する場合、いずれもそれに対応する管路ユニット22により重量Aを満たすスプレー媒体を独立して迅速に噴射し、所定の位置で噴射を行うことができる。電池パック内の熱暴走及び熱暴走拡散の制御効率がさらに向上する。
【0056】
いくつかの実施例において、電池パックはさらに貯蔵タンク30を含むことができる。
【0057】
スプレー管路20は電池パック内の全ての二次電池10に対応する連続的な管路であれば、貯蔵タンク30は連続的な管路の任意の一端又は両端に連通することができる。かつ、1つの貯蔵タンク30が連続的な管路の両端にそれぞれ連通することができる。又は、2つの貯蔵タンク30のうちの1つが連続的な管路の一端に連通し、もう1つが連続的な管路の他端に連通することができる。さらに、スプレー管路20は少なくとも部分的に二次電池10の上方に位置することができる。
【0058】
スプレー管路20は複数の管路ユニット22を含むと、貯蔵タンク30は各管路ユニット22の任意の一端又は両端に連通することができる。例えば、複数の貯蔵タンク30を有し、各貯蔵タンク30は独立して少なくとも1つの管路ユニット22の任意の一端又は両端に連通する。又は、貯蔵タンク30は1つであってもよく、複数の管路ユニット22における各管路ユニット22の任意の一端又は両端はいずれも該貯蔵タンク30に接続される。即ち、スプレー管路20における複数の管路ユニット22は並列に設置される。
【0059】
好ましくは、電池パックは分配器40を含むことができる。分配器40は複数の媒体出口(図示せず)を有し、それは該複数の媒体出口によりそれぞれ複数の管路ユニット22に連通することができる。例えば図4に示すように、2つの分配器40はそれぞれ複数の管路ユニット22の両端に設けられ、かつそのうちの1つの分配器40は該複数の管路ユニット22の一端に連通し、もう1つの分配器40は該複数の管路ユニット22の他端に連通する。分配器40の接続口41は、貯蔵タンク30に連通している。分配器40は貯蔵タンク30とスプレー管路20との間に設置され、貯蔵タンク30内のスプレー媒体を異なる管路ユニット22に分流するために用いられる。
【0060】
電池パックにおける貯蔵タンク30はスプレー媒体を貯蔵することができ、かつ貯蔵タンク30はスプレー管路20と連通する。スプレー管路20は熱暴走した二次電池10にスプレー媒体を噴射する時、貯蔵タンク30はスプレー管路20にスプレー媒体を提供することができ、熱暴走を制御するスプレー媒体の使用量の要求をを満たす。即ち、重量A以上のスプレー媒体はスプレー管路20及び貯蔵タンク30に貯蔵される。かつ、一部のスプレー媒体を貯蔵タンク30に貯蔵し、スプレー管路20の体積及び重量を減少させることができ、これによりシステム全体の体積及び重量を減少させることができる。
【0061】
二次電池10が熱暴走した場合、大量の高温流体を生成するため、二次電池10のケース内部の圧力が急激に増大する。本発明者の研究によれば、スプレー管路20の開口から熱暴走した二次電池10に噴射するスプレー圧力Pが以下の式(2)を満たすことにより、スプレー媒体がスプレー管路20内に搬送される抵抗力及び高温流体の圧力を効果的に克服することができ、これにより、スプレー媒体を熱暴走した二次電池10によりタイムリーで、効率的に噴射することを実現する。これにより、電池パック内の二次電池10の熱暴走及び熱暴走の拡散に対する制御の効率をさらに向上させることができる。
【0062】
[式(2)]
【数10】
【0063】
式(2)において、PはkPaで計算したスプレー管路のスプレー圧力を示し、BはAhで計算した二次電池の容量を示す。
【0064】
【数11】
好ましくは、
【0065】
同様に、式(2)は数値の計算のみに関する。例えば、スプレー管路20のスプレー圧力Pは120kPaであり、二次電池10の容量は180Ahであり、以下を満たす、
【数12】
【0066】
いくつかの実施例において、スプレー管路20のスプレー圧力Pは10kPa以上、12kPa以上、20kPa以上、30kPa以上、又は50kPa以上であってもよい。これにより、二次電池10の熱暴走および熱暴走の拡散に対して効果的に制御することに役に立つ。スプレー管路20のスプレー圧力Pは150kPa以下、120kPa以下、100kPa以下、又は80kPa以下であってもよい。これにより、スプレー圧力が大きすぎるので、二次電池10のケースへの破損等の損傷を防止することができ、高温高圧流体が迅速に周囲に拡散することを回避し、電池パックの熱暴走の拡散を緩和することに役に立つ。
【0067】
スプレー管路20の開口から熱暴走した二次電池10に噴射するスプレー圧力がPであることを様々な方式によって実現することができる。
【0068】
いくつかの実施例において、電池パックは貯蔵タンク30を備え、貯蔵タンク30と開口との間に高度差がある。具体的に、貯蔵タンク30の位置はスプレー管路20の開口より高い。これにより、スプレー管路20には開口が形成されて噴射する時、貯蔵タンク30内のスプレー媒体は高度差によりスプレー管路20内のスプレー媒体に圧力を印加し、これにより、スプレー管路20のスプレー圧力がPに達する。
【0069】
他の実施例において、図5に示すとおり、貯蔵タンク30は内部空洞を有するタンク本体31を含み、タンク本体内にさらに仕切り部材32が設置され、かつ該仕切り部材32はタンク本体31を液体貯蔵部31aと気体貯蔵部31bに仕切る。そのうち、液体貯蔵部31aはスプレー管路20に連通する。気体貯蔵部31bは圧縮ガスが流入するための入口を有し、気体貯蔵部31bにガスを充填する。仕切り部材32は気体貯蔵部31b内の圧縮ガスの作用で液体貯蔵部31a内のスプレー媒体をスプレー管路20に入るように駆動することができる。
【0070】
電池パックが正常に動作する状態で、スプレー媒体は液体貯蔵部31a及びスプレー管路20に貯蔵される。この時、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の仕切り部材32に対する作用力は気体貯蔵部31bにおける圧縮ガスの仕切り部材32に対する作用力と平衡する。二次電池10が熱暴走する場合、スプレー管路20は熱流で開口を生成し、かつ該開口から熱暴走した二次電池10にスプレー媒体を噴射する。この時、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の仕切り部材32に対する作用力が減少し、気体貯蔵部31bにおける圧縮ガスが仕切り部材32により反対側のスプレー媒体に駆動力を印加し、これによりスプレー管路20のスプレー圧力はPに達する。必要に応じて、気体貯蔵部31bの入口により気体貯蔵部31bにガスを補充することにより、気体貯蔵部31b内の圧縮ガスが十分な圧力を有することを保証し、これによりスプレー管路20がスプレー媒体を噴射する重量A及びスプレー圧力Pの要求を満たす。
【0071】
好ましくは、仕切り部材32は弾性仕切り膜であってもよい。スプレー管路20が噴射する時、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の弾性仕切り膜に対する作用力が減少することにより、弾性仕切り膜が気体貯蔵部31bにおける圧縮ガスの作用で膨張し、これにより圧縮ガスがスプレー媒体に圧力を印加する。例として、弾性仕切り膜は皮膜であってもよく、例えばEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer、エチレンプロピレンジエンゴム)皮膜である。
【0072】
好ましくは、仕切り部材32は仕切り板であってもよく、仕切り板はタンク本体31の内壁に摺動可能に接続される。これにより、スプレー管路20が噴射する時、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の仕切り板に対する作用力が減少し、気体貯蔵部31bにおける圧縮ガスの作用で、仕切り板は液体貯蔵部31aの流体出口方向に向かって移動することができる。このように、圧縮ガスは仕切り板によりスプレー媒体に圧力を印加することができる。
【0073】
さらに、仕切り板の外周壁とタンク本体31の内壁との間にさらに摺動シールが設置されてもよい。摺動シールを設置することにより、仕切り板がタンク本体31の内壁に対して移動することができると同時に、良好なシール作用を保持することができ、スプレー媒体及び/又は圧縮ガスが仕切り板の外周壁とタンク本体31の内壁との間から流通するリスクを減少させ、これにより仕切り板の移動の感度を向上させる。例えば、摺動シールは充填材シール等の構造であってもよい。
【0074】
他の実施例において、図6に示すとおり、貯蔵タンク30は内部空洞を有するタンク本体31を含み、タンク本体内にさらに駆動装置33が設置される。該駆動装置33は弾性部材33a及び駆動部材33bを含み、弾性部材33aは駆動部材33bに接続され、駆動部材33bはタンク本体31の壁部と囲んで液体貯蔵部31aを形成し、液体貯蔵部31aはスプレー管路20に連通する。ここで、駆動部材33bは弾性部材33aの弾力の作用で液体貯蔵部31a内のスプレー媒体がスプレー管路20に入るように駆動することができる。
【0075】
電池パックが正常に動作する状態で、スプレー媒体は液体貯蔵部31a及びスプレー管路20に貯蔵される。このとき、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の駆動部材33bに対する作用力は弾性部材33aの駆動部材33bに対する圧力と平衡する。二次電池10が熱暴走する場合、スプレー管路20は熱流で開口を生成し、かつ該開口から熱暴走した二次電池10にスプレー媒体を噴射する。このとき、液体貯蔵部31aにおけるスプレー媒体の駆動部材33bに対する作用力が減少し、弾性部材33aは駆動部材33bにより反対側のスプレー媒体に駆動力を印加し、これにより、スプレー管路20のスプレー圧力はPに達する。
【0076】
実際の要求に応じて適切な弾力を有する弾性部材33aを選択することにより、それがスプレー媒体に十分な圧力を提供することを保証し、これにより、開口でのスプレー媒体のスプレー量及びスプレー圧力の要求を満たす。例えば、弾性部材33aはバネ、弾性ゴム等から選択することができる。
【0077】
駆動部材33bは、駆動板であってもよい。駆動板はタンク本体31の内壁に摺動可能に接続される。さらに、駆動板の外周壁とタンク本体31の内壁との間にさらに摺動シールが設置されてもよい。摺動シールの作用および種類は前述の通りでよい。
【0078】
一例として、弾性部材33aの一端はタンク本体31の内壁に接続され、当接接続又は固定接続であってもよい。弾性部材33aの他端は、駆動部材33bに接続されている。スプレー管路20が噴射しない場合、液体貯蔵部31a内のスプレー媒体は駆動部材33bにより弾性部材33aを圧縮し、駆動システムは平衡安定状態にある。スプレー管路20がスプレー媒体を噴射する時、液体貯蔵部31a内のスプレー媒体の駆動部材33bに対する作用力が減少し、弾性部材33aの弾性復元力が駆動部材33bによりスプレー媒体に作用し、これにより、スプレー管路20のスプレー圧力はPに達する。
【0079】
別の例として、弾性部材33aの両端にそれぞれ駆動部材33bが接続される。2つの駆動部材33bはそれぞれタンク本体31の内壁と囲んで2つの液体貯蔵部31bを形成する。該2つの液体貯蔵部31bにそれぞれ流体出口が設置され、それぞれスプレー管路20の1つのポートに接続することができる。例えば、該2つの液体貯蔵部31bはそれぞれ上記連続的な管路の両端に接続される。又は、該2つの液体貯蔵部31bはそれぞれ上記管路ユニット22の両端に接続される。即ち、スプレー媒体は連続的な管路又は管路ユニット22の両端から入り、かつ開口から噴射を実現することができる。このようにスプレー媒体の噴射重量A及び圧力Pを増大させ、熱暴走及び熱暴走拡散を制御する効果を向上させる。
【0080】
さらに、弾性部材33aの両端の駆動部材33bの間にさらに位置制限部材33cを設置することができる。スプレー管路20がスプレー媒体を噴射しない場合、位置制限部材33cは駆動システムの平衡安定性を向上させることができる。スプレー管路20がスプレー媒体を噴射する場合、位置制限部材33cは弾性部材33aの弾力作用で位置制限作用を解除することにより、弾性部材33aはスプレー媒体に駆動力を印加する。
【0081】
例として、位置制限部材33cは2つの駆動部材33bのうちの1つに接続された第1の位置制限アームc1、及び2つの駆動部材33bのうちの他の1つに接続された第2の位置制限アームc2を含む。スプレー管路20が噴射しない場合、第1の位置制限アームc1と第2の位置制限アームc2は接着され、これにより、位置制限部材33cは位置制限作用を果たし、駆動システムの平衡安定性を強化する。スプレー管路20が噴射する時、弾性部材33aの弾力作用で、第1の位置制限アームc1と第2の位置制限アームc2の粘着作用が解除され、これにより位置制限作用が解除され、弾性部材33aがスプレー媒体に駆動力を印加する。接着剤、ゴムストリップ等により第1の位置制限アームc1と第2の位置制限アームc2の接着を実現することができる。
【0082】
位置制限部材33cは弾性部材33aの外周側に設置された1つ又は複数であってもよく、例えば弾性部材33aの外周側に均一に分布した2つ又は3つである。
【0083】
本発明の実施例はさらに車両を提供する。この車両は、本出願実施例のいずれかの電池パックを備えている。
【0084】
理解できるように、車両はハイブリッド自動車、純粋な電気自動車等であってもよいがこれらに限定されない。いくつかの実施例において、車両は動力源を含むことができ、該動力源は車両に動力を提供し、電池パックは動力源に電力を供給するように構成される。
【0085】
本出願の実施例の車両は本出願の実施例の電池パックを採用するため、対応する有益な効果を有することができ、ここで車両は高い安全性能を有する。車両の電池パックに二次電池が熱暴走する場合、電池パックの熱暴走の拡散を効果的に緩和することができるため、これは車内の乗員の脱出時間を大幅に延長し、これにより乗員の安全をより大きく保障する。
【0086】
本出願の実施例はさらに電池パックの熱暴走の拡散を緩和する制御方法を提供し、ここで電池パックは本出願の実施例のいずれかの電池パックである。本出願の実施例の電池パックの熱暴走拡散を緩和する制御方法は以下の工程を含む。
【0087】
S10は、二次電池が熱暴走して生成した熱流は脆弱部を突き破り、かつスプレー管路に作用し、スプレー管路の破口領域に熱流により開口を形成させる。
【0088】
S20は、スプレー媒体は開口を介して熱暴走した異常な二次電池に噴射することにより、二次電池の熱暴走の拡散を緩和する。ここで、異常な二次電池の熱暴走の拡散を緩和するために噴射されたスプレー媒体の重量Aは上記式(1)に基づいて決定される。
【0089】
本出願の実施例の電池パックの熱暴走拡散を緩和する制御方法は、二次電池が熱暴走して発生した熱流はそのケースの脆弱部を突き破って排出することができ、かつスプレー管路の破口領域に作用する。破口領域は熱流により開口を形成することができ、これによりスプレー管路中のスプレー媒体は開口により熱暴走した異常な二次電池に噴射される。また、異常な二次電池に噴射されたスプレー媒体の重量は式(1)を満たす。これにより、スプレー媒体は、二次電池の熱暴走による高温を効果的に低減し、かつ熱が他の二次電池に拡散することを防止することができ、これにより異常な二次電池の熱暴走を効果的に制御し、同時に電池パックにおける熱暴走の拡散を効果的に緩和する。したがって、本出願の実施例の電池パックの熱暴走拡散を緩和する制御方法を用いて、電池パックは高い安全性能を有する。
【0090】
また、本出願の実施例の電池パックの熱暴走拡散を緩和する制御方法において、二次電池の熱暴走により排出された熱流によりスプレー管路をトリガして噴射する。該方法は二次電池の熱暴走に対する応答が迅速で正確である。また、該方法を採用すると、電池パックに熱暴走監視装置及びスプレー制御装置を設置する必要がなく、したがって電池パックの構造を簡単にし、特に電池パックの重量及び体積をいずれも小さくし、電池パックに高い重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を備えさせることに役立つ。
【0091】
本明細書において、本出願の実施例の電池パックに記載された他の詳細も本出願の方法に適用することができ、ここで説明を省略する。
【実施例
【0092】
下記実施例は本出願に開示された内容をより具体的に説明し、これらの実施例は容易に理解するためのものに過ぎず、本出願に開示された内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、実施例に使用される全ての試薬は市販されるか又は従来の方法に従って合成して取得され、かつさらに処理する必要がなく直接使用することができ、及び実施例に使用される機器はいずれも市販される。
【実施例
【0093】
図1に示すように、電池パックは複数のリチウムイオン二次電池、該複数の二次電池の上方に位置しかつ二次電池と間隔を隔てて設置されたスプレー管路、及びスプレー管路に接続された貯蔵タンクを含む。各二次電池のケースは脆弱部を有することにより、二次電池が熱暴走して生成した熱流が脆弱部を突き破って排出することができる。スプレー管路のリチウムイオン二次電池の脆弱部に対向する部分は破口領域であり、該破口領域は熱流により開口を形成することができる。貯蔵タンクの構造は図5に示すように、貯蔵タンクは内部空洞を有するタンク本体及びタンク本体の内部空洞に位置する仕切り板を含み、かつ仕切り板はタンク本体を液体貯蔵部と気体貯蔵部に仕切る。液体貯蔵部はスプレー管路に連通し、液体貯蔵部とスプレー管路にスプレー液を有する。気体貯蔵部内に圧縮ガスを有する。仕切板は気体貯蔵部中の圧縮ガスの作用下で液体貯蔵部中のスプレー液をスプレー管路に入るように駆動することができる。ここで、二次電池の容量Bは180Ahであり、スプレー液の潜熱Dは2000kJ/kgであり、スプレー管路から噴射されたスプレー液の重量Aは0.27kgである。
【0094】
電池パックの1つの二次電池に熱暴走を発生させ、例えば該二次電池に過充電、ニードルパンチ又は加熱等の手段を行うことによりそれを熱暴走させることができる。二次電池が熱暴走して発生した熱流は脆弱部を突き破ってスプレー管路に作用する。破口領域は熱流により開口を形成する。スプレー液は開口を介して熱暴走した二次電池に噴射することにより、二次電池の熱暴走及び熱暴走の拡散を制御する。
【0095】
10個の電池パックをテストし、熱暴走拡散の制御成功率を記録する。
【0096】
熱暴走拡散の制御成功率=熱暴走の拡散が発生していない電池パックの数/テストされた電池パックの総数×100%
実施例2~19及び比較例1~5
【0097】
実施例と類似し、異なることは、電池パックの関連パラメータを調整することであり、詳細は表1に示すとおりである。
【0098】
【表1】
注:表1において、
【数13】
【0099】
表1の結果から分かるように、本出願の電池パックにスプレー管路を設置し、かつスプレー管路は二次電池のケースの脆弱部に対応して破口領域を有することにより、該破口領域は二次電池の熱暴走による熱流で開口を形成することができ、これによりスプレー管路におけるスプレー媒体は開口を介して熱暴走した異常な二次電池に噴射される。また、異常な二次電池に噴射されたスプレー媒体の重量は式(1)を満たす。これにより、スプレー媒体は、二次電池の熱暴走による高温を効果的に低減し、かつ熱が他の二次電池に拡散することを防止することができ、これにより異常な二次電池の熱暴走を効果的に制御し、同時に電池パックにおける熱暴走の拡散を効果的に緩和する。したがって、本出願の電池パックは高い安全性能を有する。
【0100】
比較例における電池パックにおいて、異常な二次電池に噴射されたスプレー媒体の重量は式(1)を満たすことができず、電池パックにおける二次電池が熱暴走する時、該二次電池の熱暴走をよく制御することができず、電池パック内に熱暴走の拡散が発生しやすく、深刻な安全上の問題が存在する。
【0101】
前記のように、本出願の具体的な実施形態に過ぎず、本出願の保護範囲はこれに限定されず、当業者は本出願に開示された技術的範囲内で、様々な等価の修正又は置換を容易に想到することができ、これらの修正又は置換はいずれも本出願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本出願の保護範囲は特許請求の範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0102】
10二次電池
11脆弱部
20スプレー管路
21破口領域
22管路ユニット
30貯蔵タンク
31タンク本体
31a液体貯蔵部
31b気体貯蔵部
32仕切り部材
33駆動装置
33a弾性部材
33b駆動部材
33c位置制限部材
c1第1の位置制限アーム
c2第2の位置制限アーム
40分配器
41接続口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】