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特表2022-536460視力障害を治療するための方法及び製剤
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  • 特表-視力障害を治療するための方法及び製剤 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】視力障害を治療するための方法及び製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220809BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61K31/137
A61K31/46
A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570357
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020036775
(87)【国際公開番号】W WO2020251926
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/859,682
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518014014
【氏名又は名称】ジェニヴィジョン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウッドワード, デイビッド エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウェイジェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA14
4C084MA02
4C084MA58
4C084MA63
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA06
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA78
4C206MA83
4C206MA87
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬(LABA)化合物、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)、及びそれらの組み合わせを含む眼球用製剤が提供される。また、LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせで視力障害を治療する方法も提供される。本明細書では、LABA、LAMA、及び両薬物クラスの組み合わせを用いることによる、視力障害を治療するための薬物適用方法及び製剤が提供される。これらの方法は、偽近視、近視前症(pre-myopia)、毛様体筋麻痺、及び近視のような視力障害の治療に関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の視力障害を治療する方法であって、前記被験体の片眼または両眼に長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を投与して、前記被験体の前記視力障害を治療する、前記方法。
【請求項2】
前記投与は眼球投与または眼周囲投与である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記視力障害は、前記被験体の眼における毛様体筋の調節によって治療可能な障害である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記障害は、近視、近視前症、偽近視、左右異種屈折症、外斜位、弱視、不同視、内斜視、外斜視、デュアン症候群I、デュアン症候群II、ブラウン症候群、手術による眼の合併症、眼の損傷または眼窩骨の骨折、網膜剥離による視力障害、白内障による視力障害、糖尿病に伴う視力障害、重症筋無力症に伴う視力障害、及びバセドウ病に伴う視力障害からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記被験体の非罹患眼に投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記障害は、不同視、弱視、内斜視及び外斜視からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記被験体の罹患眼に投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記障害は、近視、偽近視、左右異種屈折症及び外斜位からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼に局所的眼球用製剤として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼に点眼薬として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、眼窩周囲皮膚に局所塗布することで前記眼に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼にインプラントとして投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記インプラントは、前眼房インプラントまたは脈絡膜上インプラントである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬はバテフェンテロールである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体の眼にムスカリン受容体拮抗薬を投与することをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬が投与された前記被験体の同一の眼に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、ウメクリジニウム、アクリジニウム及びグリコピロニウムならびにそれらの塩からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体は以前にアトロピンで治療されている、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬と組み合わせて使用されるアトロピンの用量は、前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬による治療の前に前記被験体に投与された前記アトロピンの用量と比較して減少する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体の眼にα-アドレナリン受容体刺激薬を投与することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記α-アドレナリン受容体刺激薬は、メトキサミン、ミドドリン、オキシメタゾリン、メタラミノール、フェニレフリン、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、デキスメデトミジン、アミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、それらの塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記α-アドレナリン受容体刺激薬はブリモニジンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体の眼にホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬を投与することをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬は、ビンポセチン、エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-7-[(2R,3R)-2-ヒドロキシ-6-フェニルヘキサン-3-イル]-5-メチル-1H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン、オキシインドール、9-(6-フェニル-2-オキソヘキサン-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン(PDP)、イナムリノン、ミルリノン、エノキシモン、アナグレリド、シロスタゾール、及びピモベンダン、メセンブレノン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロール、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモール、キナゾリン、パパベリン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ホスホジエステラーゼ阻害薬はテオフィリンである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を含む、眼球用製剤。
【請求項30】
前記β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、約0.001%~約10%w/vの濃度で存在する、請求項29~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
前記製剤は局所的眼球用製剤である、請求項29~31のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、請求項32に記載の製剤。
【請求項35】
前記製剤はムスカリン受容体拮抗薬をさらに含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム及びそれらの塩からなる群から選択される長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、臭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、約0.001%~約10%(w/v)の濃度で存在する、請求項35~38のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、請求項35~39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、請求項35~40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
近視を有する被験体の罹患眼における視力を改善する方法であって、前記被験体の前記罹患眼に長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬、ムスカリン受容体拮抗薬、またはそれらの組み合わせを投与して、前記被験体の前記罹患眼における視力を改善する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近視、弱視及び関連のある視力障害が、小児期に現れることを考慮することは重要である。この人生の初期段階において効果的な矯正手段が導入されるべきである。現在、一般的な治療法は眼鏡をかけることであるが、これは一時的処置であり、視力は悪化し続けることがあるので、眼鏡の度数をさらに強めていくことが求められる。眼球に物理的変化が生じることがあり、その結果、眼の症状は深刻になり得る。したがって、特にアジアでは若年時において、近視、弱視及び関連のある症状を治療するために、抗コリン作用薬であるアトロピンの使用など、このような症状のより永続的な矯正方式が探索されてきた。しかしながら、アトロピンは、慢性的に使用すると効果が失われることがあり、眼の多くの望まない副作用と、全身的には、場合によって生命を脅かす心臓の副作用がある。要するに、アトロピンには小児眼科において避けられるべき望ましくない副作用があるおそれがあり、現行の手法は主に用量を減らすことに依拠している。
【背景技術】
【0002】
多くの視力障害を治療するために、安全、効果的、及びより簡便な代替手段が急を要して必要とされている。長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬(LABA)は、広範囲の視力障害に対する現行の治療法に代わる、安全かつ効果が高い代替治療法を提供することができる。長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)は、アトロピン様化合物が改良されたものであり、LABAまたは他のβ-アドレナリン受容体刺激薬を加えることにより、臨床的性能が向上され得るものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、LABA、LAMA、及び両薬物クラスの組み合わせを用いることによる、視力障害を治療するための薬物適用方法及び製剤が提供される。これらの方法は、偽近視、近視前症(pre-myopia)、毛様体筋麻痺、及び近視のような視力障害の治療に関する。加えて、異常な毛様体筋の緊張を特徴とする不同視及び弱視などの他の障害も、本明細書に記載された化合物を用いて治療され得る。視力の改善に加えて、本明細書に記載される方法は、視力障害に関連する眼球の軸伸長及び異常発達を弱めることができる。このような治療上のベネフィットは、LABA、LAMAまたはそれらの組み合わせの投与によって達成される。近視の場合、LABAは毛様体筋の安定的かつ調節可能な弛緩を維持し、近視の老視への変化を防ぐ。本明細書に記載された化合物を用いることで、光をより正確に網膜上に集光することができ、より明瞭な視界を得ることができる。また、主要な悪化要因である眼精疲労も軽減され得る。
【0004】
不同視、弱視、及び関連のある視力障害の場合、病態生理学的には、片眼が絶えず十分に使用されていない。この過少使用は進行性である。十分に使用されていない眼は、一般的に「怠惰な」眼と呼ばれる。もう片方の眼は、「正常な」、「影響を受けない」、「強い」、「好ましい」、または「利き」眼と呼ばれる場合がある。最終的には、不同視、弱視、及び関連のある視力障害により、患者は「強い」眼に完全に頼ることになり、「怠惰な」眼は使われなくなる。治療目的は、「怠惰な」眼が使われなくなるのを防ぎ、患者が単眼視になるのを防ぐことである。このことは現在、「強い」または「利き」眼にパッチまたはアトロピンを適用することで達成されており、その結果、この「強い」または「利き」眼の使用と、その眼への過剰依存が減り、「弱い方の」眼の関与が増えて両眼視が回復する。
【0005】
本明細書に記載される方法で提供されるように、LABAは同様に、「正常な」または「強い」眼の視覚を弱めるために使用することができ、本明細書で「β-アドレナリン受容体刺激薬罰則化(penalization)」という用語で説明される。
【0006】
LABAを使用して毛様体筋の緊張を調節することによる、損なわれた視覚を治す方法も記載される。このような損なわれた視覚症状としては、非限定例として、不同視、弱視、偽近視、及び近視を挙げることができる。LABA化合物は、American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology(AAAAI Allergy and Asthma Medication Guide, 2016)によれば、LABAとして説明されるものであり、ホルモテロール、サルメテロール、アルホルモテロール、及びオロダテロールが挙げられる。被験体に投与されるLABAの量は、約0.001%~約10%(重量/体積、例えば、mg/mL)の範囲とすることができる。毛様体筋への薬物送達を行うことができる追加の非限定的送達方法としては、例えば、前房インプラント、結膜下注射、結膜下/脈絡膜上インプラント、及び眼窩周囲領域への局所塗布が挙げられる(例えば、米国特許第9820954号を参照のこと)。
【0007】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載されているように、LABAは、毛様体筋の安静時の緊張を低下させることができ、それによって偽近視に関連する毛様体筋の収縮及び痙攣の発生が減少すると考えられている。それとは反対に、サルブタモール(Rekik, WO2018/007864 A1, 2018)及びイソプロテレノールなどの短時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、相対的に一過性の効果を生み、突発的な毛様体筋痙攣の素因をもたらす可能性がある。本明細書に記載されているように、LABAの毛様体筋収縮に相反する効果により、近視を効果的に治療することができ、したがって、眼鏡またはコンタクトレンズを使用する必要性が低減もしくは解消するか、または矯正レンズの処方上の度数が増加する速度が遅くなる。本明細書で提供される方法を採用することにより、網膜剥離、近視性網膜症、及び緑内障のリスクを緩和または防止することができる。網膜剥離の発生が繰り返されると、失明に至ることがある。しかしながら、近視及び弱視で起こり得る眼軸長伸長は、本明細書に記載される方法を用いたLABAによる治療後に、減弱または解消され得る。
【0008】
近視及び弱視を治療するために、抗ムスカリン薬、特にアトロピンが用いられてきたが、効果はあるものの、それは散瞳、ドライアイ、及び羞明などの副作用を引き起こすことがある。LABAを所望により抗ムスカリン薬と組み合わせて使用することで、散瞳の発生率が抑えられる場合がある。また、抗ムスカリン薬は涙腺の分泌も減少させることがあるので、「ドライアイ」が引き起こされる。実際、アトロピンは、ドライアイの動物モデルを作製するために使用されてきた(Burgalassi et al. Development of a simple dry eye model in the albino rabbit and evaluation of some tear substitutes. Ophthalmol Res. 31: 229-235, 1999)。抗ムスカリン剤の代わりに、または加えて、長時間作用性β-アドレナリン受容体療法を用いることで、副作用のドライアイを回避、低減または解消することができる。さらに、抗ムスカリン剤は、小さな子供においていっそう顕著であり得る、重篤な心臓の副作用をもたらすおそれがある。特に懸念されるのは、制御不能な心拍数の増加であり、これは場合によっては致命的になることがある。LABAは子供の心臓に安全であることが知られており、若年性喘息の治療において既に広く使用されている。したがって、本明細書に記載されているように、必要な用量を減らすためにLABAを抗ムスカリン剤と組み合わせて使用することができ、それによって抗ムスカリン薬に関連する望まない副作用が軽減される。約0.0001%~約10%(重量/体積)の濃度のLABA及び/またはLAMAを有する製剤が提供される。本明細書に記載される方法及び製剤は、1種以上のLABA(または1種以上のLABA及び1種以上の抗ムスカリン剤)の組み合わせと、所望により、例えばブリモニジンなどのα-アドレナリン作用性化合物とを含むことができる。
【0009】
本明細書に記載されているように、一般的に説明されるような視力障害は、LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせの使用によって効果的に治療され得る。治療は、例えば毛様体筋の緊張を変化させることによって改善する場合がある視力障害に応じて、両眼性または単眼性であってよい。限定されないが、点眼薬及びインプラントを含む、多数の薬物送達方法を用いることができる。
【0010】
視力矯正を必要とする被験体の視力障害を治療する方法が提供される。当該方法は、LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせを、被験体の片眼または両眼に投与することを含む。
【0011】
当該方法は、所望により、以下の特徴を1つ以上含んでもよい。投与は、眼球投与または眼周囲投与とすることができる。視力障害は、被験体の罹患眼または非罹患眼における毛様体筋の調節によって治療可能な障害とすることができる。障害は、近視、近視前症、偽近視、毛様体筋麻痺、左右異種屈折症、外斜位、弱視、不同視、内斜視、外斜視、デュアン症候群I、デュアン症候群II、ブラウン症候群、手術による眼の合併症、眼の損傷または眼窩骨の骨折、網膜剥離による視力障害、白内障による視力障害、糖尿病に伴う視力障害、重症筋無力症に伴う視力障害、及びバセドウ病に伴う視力障害からなる群から選択することができる。LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせは、被験体の罹患眼、非罹患眼、またはその両方に投与することができる。障害は、不同視、弱視、内斜視、外斜視、及びそれらの併存症からなる群から選択することができる。障害は、近視、偽近視、左右異種屈折症、及び外斜位からなる群から選択することができる。LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせは、局所的眼球用製剤として眼に投与することができる。LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせは、点眼薬として眼に投与することができる。LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせは、眼窩周囲皮膚に局所的に塗布することにより、眼に投与することができる。LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせは、インプラントとして眼に投与することができる。インプラントは、前眼房インプラントまたは脈絡膜上インプラントとすることができる。LABAは、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。LAMAは、チオトロピウム、アクリジニウム、グリコピロレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。LABAとLAMAとの組み合わせは、単一ハイブリッド分子の形態とすることができる。ムスカリン受容体拮抗薬とβ-アドレナリン作用性の両方の特性を示す単一ハイブリッド分子(MABA)は、バテフェンテロール、AZD2115、及びAZD8871から選択してもよい。
【0012】
当該方法は所望により、LABA及び/またはLAMAの投与に加えて、被験体の眼にムスカリン受容体拮抗薬を投与することをさらに含むことができる。当該方法は、所望により、以下の特徴を1つ以上含むことができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、LABAが投与される被験体の同一の眼に投与することができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、チオトロピウム、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム臭化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピンとすることができる。所望により、被験体は、以前にアトロピンで治療された被験体とすることができる。所望により、LABAと組み合わせて使用されるアトロピンの用量は、LABAによる治療の前に被験体に投与されたアトロピンの用量と比較して減少させることができる。
【0013】
当該方法は所望により、LABA及び/またはLAMAの投与に加えて、被験体にα-アドレナリン受容体刺激薬を投与することをさらに含むことができる。当該方法は、所望により、以下の特徴を1つ以上含むことができる。α-アドレナリン受容体刺激薬は、メトキサミン、ミドドリン、オキシメタゾリン、メタラミノール、フェニレフリン、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、デキスメデトミジン、アミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、それらの塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。α-アドレナリン受容体刺激薬は、ブリモニジンとすることができる。
【0014】
当該方法は、LABA、LAMA及び/またはα-アドレナリン受容体刺激薬の投与に加えて、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬を被験体に投与することをさらに含むことができる。当該方法は、所望により、以下の特徴を1つ以上含むことができる。ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬は、ビンポセチン、エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-7-[(2R,3R)-2-ヒドロキシ-6-フェニルヘキサン-3-イル]-5-メチル-1H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン、オキシインドール、9-(6-フェニル-2-オキソヘキサン-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン(PDP)、イナムリノン、ミルリノン、エノキシモン、アナグレリド、シロスタゾール、及びピモベンダン、メセンブレノン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロール、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモール、キナゾリン、パパベリン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ホスホジエステラーゼ阻害薬は、テオフィリンとすることができる。
【0015】
また、LABAを含む眼球用製剤も提供される。β-アドレナリン受容体刺激薬は、オロダテロール、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、バンブテロール、クレンブテロール、プロトキロール及び超長時間作用性アルホルモテロール、カルモテロール、インダカテロール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。LABAは、約0.0001%~約10%w/vの濃度で存在することができる。製剤は、局所的眼球用製剤とすることができる。局所的眼球用製剤は点眼薬の形態とすることができる。局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態とすることができる。
【0016】
眼球用製剤は所望により、ムスカリン受容体拮抗薬をさらに含むことができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、チオトロピウム、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム臭化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピンとすることができる。ムスカリン受容体拮抗薬は、約0.0001%~約10%(w/v)の濃度で存在することができる。所望により、眼球用製剤は、ムスカリン受容体拮抗薬/β2-刺激薬ハイブリッド分子を含むことができ、それはバテフェンテロール、AZD2115、及びAZD8871から選択してもよい。
【0017】
また、近視を有する被験体の罹患眼における視力を改善する方法であって、LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせを被験体に投与すること、または単一ハイブリッド分子中のβ-アドレナリン受容体刺激薬/ムスカリン受容体拮抗薬を被験体に投与することを含む方法も提供される。
【0018】
本明細書に記載される方法は、いくつかの利点を提供する。第一に、当該方法は、毛様体筋の緊張を調節することにより、視力障害に対する安全かつ効果的な永続的(または、場合によっては、長期的、半永続的)治療を提供することができる。したがって、矯正レンズとは異なり、本明細書に記載される方法は、未処置におかれた場合、または矯正レンズのような他の手段により対症療法で治療された場合に、本明細書に記載される視力障害で発生し得る、眼球の進行性物理的変化により発症する可能性がある、網膜剥離、近視性網膜症(血管新生、網膜格子状変性、及び裂け目/破れなど)、ブドウ腫、白内障、ならびに緑内障などのより重篤な眼疾患の発症を防止することができる。
【0019】
第二に、本明細書に記載される方法は、そのような視力障害を有する被験体の矯正レンズへの依存を低減することができる。例えば、本明細書に記載される方法は、視力の改善を含む、視覚の改善を導くことができる。眼球の異常な軸伸長が回避される場合があり、それによって、併存症、特に重篤な、視界を脅かす網膜疾患も回避され得る。
【0020】
第三に、本明細書に記載される方法は、より重篤な副作用を有することがある治療法の使用、またはそれへの依存を低減または解消さえすることができる。例えば、通常用いられるムスカリン性薬物のアトロピンは、ドライアイ、散瞳、羞明などの眼の副作用を引き起こすことがある。アトロピンが血流内に吸収されると、心拍数についての未制御の交感神経刺激の結果として、心停止が引き起こされる場合がある。このことは、通常は心拍数を負に制御する副交感神経入力の減少または防止に起因し得る。アトロピンは、最も有毒(例、ベラドンナ中毒)な植物のうちの一つであると知られているAtropa Belladonna(ベラドンナ)の誘導体である。それを幼い子供に無制限に使用すれば、致命的になるおそれがある。本明細書に記載される方法は、アトロピンまたは他のムスカリン受容体拮抗薬の投与量を減らして、視力障害に対する安全で効果的な代替治療法を提供することができる。本明細書に記載されているように、当該方法は、アトロピンを使用せずに、視力障害に対する安全で効果的な最適化された治療法を提供することができる。
【0021】
第四に、本明細書に記載される方法は、被験体の眼内で作用時間の長い持続的な効果を提供することができ、安全性を向上可能にする。本明細書に記載される方法は、LABA、LAMA、またはそれらの組み合わせを併用投与もしくは別途投与するか、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子として投与することで、毛様体筋を長時間調節することができる。本明細書に記載される方法及び製剤は、毛様体筋の緊張を最適に低減及びリセットすることができ、それによって毛様体筋の収縮及び痙攣の発生が低減される。本明細書に記載される方法及び製剤は、毛様体筋の痙攣に対して一過性ではない効果をもたらす。本明細書に記載される方法及び製剤は、突発的な毛様体筋痙攣の原因となるものではなく、患者の近視を老眼に変化させるものでもない。
【0022】
第五に、本明細書に記載される方法は、眼における作用時間を長くまたは延ばすことで、小児患者にとってより安全かつ実用的な治療の選択肢を提供することができる。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明で示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、ならびに請求項から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】カルバコールで収縮させた、サルの長軸方向の毛様体筋標本一対に対するサルメテロールの効果を示すグラフである。
図1B】カルバコールで収縮させた、サルの長軸方向の毛様体筋標本一対に対するチオトロピウムの効果を示すグラフである。
図1C】カルバコールで収縮させた、サルの長軸方向の毛様体筋標本一対に対するサルメテロールとチオトロピウムの併用の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書では、長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬(LABA)化合物、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)、及びそれらの組み合わせを用いることによる、視力障害を治療するための方法及び製剤が提供される。
【0026】
本開示は、毛様体筋の緊張の調節及び制御を含む毛様体筋調節によって修正され得る視力障害、例えば、偽近視、近視、ならびに不同視及び弱視などのその他の障害、の治療(例えば、疾患の症状または経過が修正され得る)を目的とする。提供される方法は、視力障害を有する被験体に、LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせを、別途投与もしくは併用投与すること、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子として投与することを含むものである。
【0027】
近視に関与する決定的に重要な組織が毛様体筋である。毛様体筋の機能は水晶体の球形を制御することであり、このことにより眼球を通過する光の焦点が制御される。眼からさまざまな距離にある対象物に焦点を合わせる眼球の能力は、遠近調節と称され、眼球の重要な機能である。
【0028】
近視は多くの場合、偽近視として始まる。偽近視とは、毛様体筋の一過性の痙攣、及び毛様体筋が適切に弛緩できないことによる、一時的な光の屈折変化の現れである。偽近視は、副交感神経の過剰な活性の結果、または眼精疲労もしくは疲れ目の結果として生じる場合がある。この疲労が続くと、多くの場合徐々に眼球が伸長する。子供の近業による常時疲労は、眼軸長を延ばす悪化要因である。
【0029】
近視の治療には、眼鏡及びコンタクトレンズなどの矯正レンズが頻繁に使用されているが、これらは通常、光が硝子体液内ではなく網膜上に集束するように焦点を移動させるだけである。要するに、眼鏡及びコンタクトレンズは、通常、毛様体筋の制御による遠近調節を改善するのではなく、焦点位置を変えることで視力を改善するだけである。次いで、眼は新しい焦点を作るために調整する傾向があり、これにより眼球が徐々に伸長する。その結果、一般的に処方されるレンズの度数が増し、毛様体筋の機能がさらに損なわれ、負のサイクルが続いて生じることがある。毛様体筋はストレスを受けたままとなり、弛緩する能力が劣る場合がある。最終的には、網膜剥離、近視性網膜症、及び緑内障を含む望まない副作用が生じ得る。
【0030】
近視を軽減する現行の医学療法には、副交感神経の緊張を低減して、毛様体筋を弛緩させる方法がある。これは通常、ムスカリン受容体拮抗薬、ほとんどの場合アトロピンを用いることで達成される。アトロピンは、ドライアイ、散瞳、及び羞明を引き起こすことがあり、血流に吸収されると重篤な心臓の副作用をもたらし得る。ある場合には、心拍数への影響が致命的になることがある。また、アトロピンは時間の経過とともに効果が失われ得る。これらの特徴により、矯正治療が行われるべき集団である小児患者においては、アトロピンは特に望まれないものになり、潜在的に危険なものにさえなる。
【0031】
副交感神経が毛様体筋の緊張に対する影響を主に制御する一方で、交感神経は反対の制御入力を与える。交感神経の入力は毛様体筋を弛緩させ、このことは副交感神経の収縮活性に対抗する。毛様体筋の弛緩を媒介するいくつかの標的受容体のうちの一つが、β-アドレナリン受容体である(Zetterstrom and Hahnenberger, Exp Eye Res 46, 421-430, 1988)。LABAは、アトロピン治療と組み合わせるか、またはその代わりに使用することができる、毛様体筋の緊張を安定的に制御するための手法を提供することができる。
【0032】
一般的にレイジーアイとして知られている弱視も小児期に発症し、未処置におかれた場合、成人すると単眼視になる。不同視は弱視の前兆であることが多い。弱視及び関連のある視力障害では、片眼が反対側の(または怠惰な)眼よりも優先的に使用される。「怠惰な」眼は視力がより弱く、使われなくなる。「怠惰な」眼の発生には考えられる原因が多くある。原因としては、不十分な遠近調節による視力の貧弱さ、外眼筋の機能不全による最適以下の眼球運動、または視覚野の問題を挙げることができる。「怠惰な」眼の病態生理学的原因に関わらず、治療法は同一である。
【0033】
一般的な治療法の一つとしては、個々の眼に独立して処方した矯正レンズを使用することが挙げられる。眼鏡は長期的解決策ではなく、利き眼の視力を有意に改善するのみである。被験体は通常、弱視のままとなる。
【0034】
ポジティブな結果をもたらす別の一般的な方策としては、怠惰な眼または罹患眼を強制的に機能させるよう、「より強い」利き眼または非罹患眼を弱めることが挙げられる。利き眼を弱めるため手法の一つは、例えば6時間にわたって利き眼をパッチで覆うことである。しかしながら、小児患者にパッチの装着を遵守させることは困難であり得る。追加の手法はアトロピン罰則化と称されるものであり、これは毛様体筋の緊張を変化させて遠近調節を変化させることによって、「より強い」利き目の焦点を調整することに関わる。LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせ、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子は、より安定した「罰則化」を行うための有用な解決策となることができる。
【0035】
本明細書の方法に記載されているように、LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせを、併用投与もしくは別途投与するか、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子として投与することで、毛様体筋の緊張を調節して、適用可能な視力障害を治療可能にすることができる。本明細書に記載される方法においては、LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせ、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子で治療することで、視力障害に関連する眼の視力の改善、軸伸長の減弱、及び異常発達を制限することができる。近視を有する被験体の治療においては、LABA、LAMA、もしくはそれらの組み合わせ、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子により、毛様体筋の安定した弛緩を維持することができ、それによって光が網膜上に正確に集束するように遠近調節が改善され、より明瞭な視界が得られる。加えて、LABA、LAMA、及びそれらの組み合わせによって提供される長時間続く効果により、「怠惰な」眼の使用がより急速に復活し、両眼視が促進され得る。不同視または弱視を有する被験体の治療においては、利き眼に適用することで、「より強い」利き眼への過剰な依存が低減され、「より弱い」眼の関与が増えて両眼視を取り戻すことができる。また、主要な悪化要因である眼精疲労も軽減される。
【0036】
併用する場合、LABA、LAMA、またはその両方についてのさまざまな分量(用量)の範囲が企図される。LABA、LAMA、それらの組み合わせ、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の特性を有するハイブリッド分子の用量は、個々の被験体の個々の必要性に基づき得る。単一の被験体においては、個々の眼の視力が異なる可能性があり、したがって投与の必要量も異なる可能性がある。本明細書で使用する場合、用量とは、各投与時に個人に与えられる活性成分の量を意味する。用量は、所与の療法に対する通常の用量の範囲、投与頻度、個人の体格及び忍容性、治療される症状の重症度、副作用のリスク、ならびに投与経路を含む多くの要因に依存して変化することになる。当業者であれば、上記の要因によって、または治療の進展に基づいて用量が変更され得ることを認識するであろう。
【0037】
本明細書では、被験体の視力障害を治療する方法が提供される。被験体の視力障害を治療する方法は、LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を被験体に投与することを含む。薬物は、被験体、例えば被験体の眼に投与するために、適切な組成物で製剤化され得る。組成物は、一方または両方の薬物を含むことができる。別々に投与する場合、薬物は単独の組成物で製剤化される。毛様体筋の緊張を調節することによる、損なわれた視力を治療するための方法も提供される。例えば、LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を使用して毛様体筋の緊張を調節することにより、被験体の損なわれた視力を治療する方法が提供される。
【0038】
本明細書に記載される方法は、罹患眼または非罹患眼における毛様体筋の調節によって修正され得る視力障害の治療に有用であり得る。非罹患眼療法のための単眼性投与が好ましい視力障害の例としては、不同視、弱視、左右異種屈折症、内斜視、外斜視、デュアン症候群I/II、ブラウン症候群、及び眼窩骨骨折などの単眼性眼外傷が挙げられる。偽近視、近視、外斜位、ならびにバセドウ病、重症筋無力症、及び糖尿病などの全身性疾患に起因する眼の合併症の治療には、両眼性治療が好ましい場合がある。視力検査における明白な差に応じて、相異なる薬物の「分量」が必要となり得る。LABA、LAMA、β-アドレナリン受容体刺激薬とLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を、視力障害を有する被験体の罹患眼に投与することができる。理論に束縛されることは望まないが、LABA、LAMA、β-アドレナリン受容体刺激薬とLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物は、罹患眼の毛様体筋の緊張を調節することができ、それによって視力障害のうちの少なくとも一つの症状が緩和されると考えられている。LABA、LAMA、β-アドレナリン受容体刺激薬とLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を、視力障害を有する被験体の罹患眼に投与することで、被験体の視力を改善することができる。所望により、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を、視力障害を有する被験体の非罹患眼に投与することができる。理論に束縛されるものではないが、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物は、非罹患眼の毛様体筋の緊張を調節することができ、それによって視力障害のうちの少なくとも一つの症状が緩和されると考えられている。LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を、視力障害を有する被験体の非罹患眼に投与することで、被験体の罹患眼における視力を改善することができる。本明細書で使用する場合、罹患眼とは、視力障害に関連する1つ以上の症状を示す眼とみなされる被験体の眼である。例えば、非限定的な症状としては、不整な眼球形状(例えば、伸長)、視力低下(例えば、20/20未満、20/25未満、20/30未満、20/40未満、20/50未満、20/70未満、20/100未満、または20/200未満の視力)を挙げてもよい。非罹患眼とは、通常、視力障害(例えば、被験体の他の眼における障害)に関連する制限されたもしくは異常な運動、または視力低下といった、1つ以上の症状を示さない眼である。しかしながら、非罹患眼には罹患眼の視力を補う役割があるために、非罹患眼は眼精疲労など、いくつかの副次的症状を示す場合がある。弱視(レイジーアイ)を有する被験体においてなど、非罹患眼が利き目であるとみなされることがある。
【0039】
提供される方法、製剤及び組成物での使用に適したLABAは、長い親油性の側鎖を有していてもよく、一般に肺の平滑筋で6~15時間の持続時間を示す。LABAの非限定例としては、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、オロダテロールが挙げられる。さらに、本明細書に記載される方法、製剤、及び組成物での使用に適した非限定的な超長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬としては、アルホルモテロール、カルモテロール、及びインダカテロールが挙げられる。また、β-アドレナリン受容体刺激薬の組み合わせも想定されている。代表的なβ-アドレナリン受容体刺激薬化合物としては、American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology(AAAAI Allergy and Asthma Medication Guide, 2016)によって説明されるようなものが挙げられる。LABAは、安静時の毛様体筋の緊張を安定的に、安全に、及び/または効果的に低減することができ、それによって、視力障害を有する被験体の罹患眼または非罹患眼への投与による治療が提供される。
【0040】
これまで、近視及び弱視の治療のために、抗ムスカリン剤、ほとんどの場合アトロピンが用いられてきた。さらに最近では、長時間作用性ムスカリン受容体遮断薬であるウメクリジニウム及びチオトロピウムを含む、他のムスカリン受容体拮抗薬が、近視の治療のために企図されてきた(国際公開特許第2018/17445号、国際公開特許第2019/018749号)。効果的ではあるが、これらの薬剤は散瞳及び羞明などの副作用を引き起こすことがある。散瞳及び/または羞明の発生率は、LABAを抗ムスカリン剤と組み合わせて、または抗ムスカリン剤の代わりに投与することによって低減することができる。また、抗ムスカリン剤は涙腺の分泌も減少させることがあり、それによってドライアイが引き起こされる。逆に、LABAを投与する療法により、ドライアイの症状は最小になるか、改善さえされ得る。さらに、抗ムスカリン剤は重篤な心臓の副作用をもたらすおそれがある。このような副作用は、本明細書に記載される視力障害のための薬物ベース療法を通常受ける集団である、小さな子供において、特に顕著かつ危険なものになり得る。抗ムスカリン剤の代わりに長時間作用性β-刺激薬を投与することで、このような重篤な心臓の副作用を回避することができる。したがって、LABAを抗ムスカリン剤と組み合わせて投与して、必要な抗ムスカリン剤の用量を減らすことができ、それによってアトロピンなどの抗ムスカリン剤に関連する望まない副作用のリスクが低減される。
【0041】
LABAは、眼球内での滞留時間を延長するために十分な用量で使用され、及び/またはバイオアベイラビリティが向上することで作用時間が増えるように改変される。LABAの作用時間は、イオンペア複合体形成、または眼球への浸透性及び毛様体筋への薬物送達性を高める賦形剤の利用によって改善してもよい。LABAは、作用時間が長いために、治療効率の向上を可能にすることができる。所定の用量で、毛様体筋組織における薬物の生物活性のバイオアベイラビリティが低いことに起因するリバウンド、痙攣、または活性の喪失なしに、毛様体筋の緊張に対する一貫して最適な効果を得ることができる。例えば、サルメテロールの長時間作用効果は、そのバイオアベイラビリティではなく、独自の薬品作用学に基づいたものであることが確立されている(Coleman R. A. On the mechanism of the persistent action of salmeterol: what is the current position? Br J Pharmacol 2009;158: 180-182)。
【0042】
LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物は、局所的眼球用製剤として被験体の罹患眼または非罹患眼に投与することができる。所望により、局所的眼球用製剤は、被験体の罹患眼または非罹患眼に点眼薬として投与することができる。
【0043】
LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物の眼窩周囲投与経路(米国特許第9820954号)を使用することができる。
【0044】
局所的眼球用製剤は、被験体の罹患眼または非罹患眼の眼窩周囲皮膚に局所塗布することで投与することができる。眼窩周囲塗布では、薬物製剤は、各眼の上部及び下部眼窩周囲皮膚上に塗布し、眼瞼上部もしくは下部または眼瞼周縁部には塗布しない。いくつかの実施形態では、製剤は各眼の上部及び下部眼窩周囲皮膚上に塗布される。眼球用製剤の眼窩周囲塗布については、米国特許第9,820,954号でさらに説明されている。
【0045】
本明細書に記載される方法には、LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物を送達するために、追加の送達方法を使用することができる。被験体の罹患眼または非罹患眼へ送達する場合には、インプラント、例えば、前房インプラント、結膜下インプラント、脈絡膜上インプラントならびに注射、例えば、結膜下注射が挙げられる。
【0046】
本明細書に記載される方法で使用され得る非限定的な代表的β-アドレナリン受容体刺激薬としては、アルホルモテロール、バンブテロール、プロトキロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロールなどのLABA、またはアベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、それらの塩、及びそれらの組み合わせなどの超長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬が挙げられる。LABAは、ホルモテロール、サルメテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、それらの塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。追加のβ-アドレナリン受容体刺激薬としては、イソプロテレノール、デノパミン、ドブタミン、ドペキサミン、プレナルテロール、キサモテロール、ブフェニン、フェノテロール、イソエタリン、レブアルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、テルブタリン、及びリトドリンが挙げられる。所望により、LABAはサルメテロールである。所望により、LABAはホルモテロールである。所望により、LABAはβ-アドレナリン受容体刺激薬である。所望により、LABAはβ/β-アドレナリン受容体刺激薬である。所望により、LABAはβ/β-アドレナリン受容体刺激薬である。
【0047】
所望により、特定のLABAは小児眼科で安全に使用することができる。American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology(AAAAI Allergy and Asthma Medication Guide, 2016)によれば、サルメテロールとホルモテロールは、それぞれ4歳と5歳の幼い子供における使用が承認されている。
【0048】
LABAは、約0.001%~約10%(重量/体積)の範囲の濃度で製剤中に存在することができる。例えば、組成物の約0.001%~約9%、約0.001%~約8%、約0.001%~約7%、約0.001%~約6%、約0.001%~約5%、約0.001%~約4%、約0.001%~約3%、約0.001%~約2%、約0.001%~約1%、約0.001%~約0.5%、約0.001%~約0.1%、約0.01%~約9%、約0.01%~約8%、約0.01%~約7%、約0.01%~約6%、約0.01%~約5%、約0.01%~約0.5%、約0.01%~約4%、約0.01%~約3%、約0.01%~約2%、約0.01%~約1%、約0.01%~約0.5%、約0.01%~約0.1%、約0.01%~約0.05%、約0.05%~約2%、約0.05%~約1%、約0.05%~約0.09%、約0.01%~約0.08%、約0.01%~約0.075%、約1%~約5%、約2%~約5%、約3%~約5%w/v、約2%~約8%、約3%~約7%w/w、約4%~約6%、約5%~約10%、約5%~約9%、または約5%~約8%、約5%~約7%、または約5%~約6%である。いくつかの実施形態では、LABAは、組成物の約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.8%、約0.9%、約0.001%、または約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.015%、約0.025%、約0.035%、約0.045%、約0.055%、約0.065%、約0.075%、約0.085%、または約0.095%w/vの量で存在する。所望により、LABAは、組成物の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、または約10%w/vの量で存在し、ここでw/vはmg/mLである。これらの範囲内でのさらなる細分化も企図されており、例えば、LABAは、約0.001%~約0.1%(w/v)、または約0.0015%、0.002%、0.0025%、0.003%、0.0035%、0.004%、0.0045%、0.005%、0.0055%、0.006%、0.0065%、0.007%、0.0075%、0.008%、0.0085%、0.009%、0.0095%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、もしくは0.1%などの量で存在する。より小さな漸増的細分化も企図されており、例えば、LABAは、約0.2%~約0.3%(w/v)、または約0.2%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、及び0.30%w/vの量で存在する。
【0049】
LABAは、塩またはイオンペア複合体として存在することができる。理論に束縛されるものではないが、LABAイオンペア複合体は、イオンペア複合体として投与されないLABAと比較して、眼内での滞留時間が増加し得ると考えられている。
【0050】
本明細書の方法は、1種以上のムスカリン受容体拮抗薬を被験体の眼(例えば、視力障害次第で、罹患眼、または非罹患眼)に投与することをさらに含むことができる。本明細書の製剤は、1種以上のムスカリン受容体拮抗薬をさらに含むことができる。LAMAとしては、チオトロピウム、ウメクリジニウム、及びグリコピロレートが挙げられる。追加のムスカリン受容体拮抗薬の非限定例としては、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、チオトロピウム、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム及びその臭化物塩、他のそれらの対イオン塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。所望により、ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである。所望により、ムスカリン受容体拮抗薬はチオトロピウムである。所望により、ムスカリン受容体拮抗薬はウメクリジニウムである。所望により、ムスカリン受容体拮抗薬はアクリジニウムである。所望により、ムスカリン受容体拮抗薬はグリコピロレートである。ムスカリン受容体拮抗薬は、約0.0001%~約10%の濃度で製剤中に存在することができる。
【0051】
提供される方法及び製剤を用いて治療され得る視力障害の被験体には、以前にアトロピンで治療された被験体が含まれる。例えば、以前にアトロピンで治療された被験体を選択し、LABAで治療することができる。LABAを投与することにより、アトロピン投与の必要性が減少する場合がある。例えば、LABAと組み合わせて被験体に使用されるアトロピンの用量は、LABAによる治療の前に被験体に投与されたアトロピンの用量と比較して減少し得る。アトロピンの必要性または使用は、LABAの投与開始前にそれまでアトロピンで治療されていた被験体が、LABAで治療されている間にアトロピンをもはや受け入れることがないように、減少または完全に除去され得る。被験体は、散瞳、ドライアイ、及び心臓の副作用など、アトロピンの使用に関連する副作用の低減を経験することができる。
【0052】
当該方法は、1種以上のα-アドレナリン受容体刺激薬を被験体の眼に投与することをさらに含むことができる。α-アドレナリン受容体刺激薬は、LABA、LAMA、それらの組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物と組み合わせてもよい。本明細書の製剤は、1種以上のα-アドレナリン受容体刺激薬をさらに含むことができる。α-アドレナリン受容体刺激薬は、α-1刺激薬(例えば、メトキサミン、ミドドリン、オキシメタゾリン、メタラミノール、フェニレフリン)、α-2刺激薬(例えば、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、デキスメデトミジン)、またはアミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、それらの塩、及びそれらの組み合わせなどの他のα-アドレナリン受容体刺激薬から選択することができる。α-アドレナリン受容体刺激薬は、ブリモニジンである。α-アドレナリン受容体刺激薬は、約0.001%~約10%の濃度で製剤中に存在することができる。
【0053】
当該方法は、所望により、1種以上のホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬を被験体の眼に投与することをさらに含むこともできる。本明細書の製剤は、1種以上のホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬をさらに含むことができる。ホスホジエステラーゼ阻害薬は、非選択的またはサブタイプ選択的阻害薬から選択することができる。代表的な非限定の非選択的阻害薬としては、例えば、テオフィリン、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、及びテオブロミンを挙げることができる。代表的な非限定の選択的阻害薬としては、例えばビンポセチンなどのPDE1選択的阻害薬、例えばEHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、BAY 60-7550(2-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-7-[(2R.3R)-2-ヒドロキシ-6-フェニルヘキサン-3-イル]-5-メチル-1H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン)、オキシインドール、PDP(9-(6-フェニル-2-オキソヘキサン-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン)などのPDE2選択的阻害薬、例えばイナムリノン、ミルリノン、エノキシモン、アナグレリド、シロスタゾール、ピモベンダンなどのPDE3選択的阻害薬、例えばメセンブレノン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロールなどのPDE4選択的阻害薬、例えばシルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモールなどのPDE5選択的阻害薬、例えばキナゾリンなどのPDE7選択的阻害薬、例えばパパベリンなどのPDE10選択的阻害薬、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
当該方法は、1種以上のα-アドレナリン受容体拮抗薬を被験体の眼に投与することをさらに含むことができる。α-アドレナリン受容体拮抗薬は、LABA、LAMA、β-アドレナリン受容体刺激薬とLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬物に加えてもよい。本明細書の製剤は、1種以上のα-アドレナリン受容体拮抗薬をさらに含むことができる。α-アドレナリン受容体拮抗薬は、以下のα-1拮抗薬の非限定例から選択することができる:フェノキシベンザミン、フェントラミン、プラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン、アルフゾシン、テラゾシン、タムスロシン、ヨヒンビン、ラベタロール、カルベジロール、トラゾリン、トラゾドン、ミルタザピン、インドラミン、ウラピジル、及びイダゾキサン。
【0055】
本明細書で提供される製剤の投与経路には、眼球の前面部を囲む眼窩周囲皮膚への投与が含まれる。このことにより、簡便かつ許容できる投与経路がもたらされる。さらに、眼窩周囲皮膚は薬物を多く蓄積するので、活性部位への着実な薬物送達が促進される。活性成分は、LABA、LAMA、β-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン作用薬の両方の活性を示す単一薬物、α-アドレナリン受容体刺激薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、またはそれらの順列及び組み合わせとすることができる。
【0056】
製剤は局所的眼球用製剤の形態とすることができる。所望により、局所的眼球用製剤は点眼薬の形態とすることができる。所望により、局所的眼球用製剤は、眼窩周囲皮膚に局所塗布するための、局所的クリーム、ゲル、ヒドロゲル、有機ゲル、キセロゲル、ローション、ナノコンポジット型ヒドロゲル、泡、または有機溶媒中の溶液の形態とすることができる。所望により、製剤は、インプラント(例えば、前房インプラント、結膜下インプラント、脈絡膜上インプラント)または注射剤(例えば、結膜下注射用)の形態とすることができる。
【0057】
本明細書に記載される化合物を含有する製剤は、視力障害を治療するための製剤に使用される、生理学的に適合性のあるビヒクルを含有することができる。例えば、製剤は、点眼剤または注射剤とすることができる。ビヒクルは、生理食塩水、水、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル、ポリビニルアルコール及びポビドンなどのポリビニル、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、鉱物油及び白色ワセリンなどの石油誘導体、ラノリンなどの動物性脂肪、カルボキシポリメチレンゲルなどのアクリル酸ポリマー、ピーナッツ油などの植物性脂肪、デキストランなどの多糖、ヒアルロン酸ナトリウムなどのグリコサミノグリカン、ならびに塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの塩を含む、既知の点眼用ビヒクルから選択することができるが、これらに限定されるものではない。製剤は、溶液、懸濁液、軟膏、ゲル、または泡の形態とすることができる。
【0058】
本明細書で提供される方法が用いられる場合、被験体は、罹患眼の視力障害に関連する1つ以上の症状、または非罹患眼の副次的症状(眼精疲労など)の改善または消失を経験することができる。例えば、非限定的な症状の改善としては、眼球形状の均整の向上(例えば、伸長量減少)、視力改善(例えば、20/20超、20/25超、20/30超、20/40超、20/50超、20/70超、20/100超、または20/200超の視力達成)が挙げられる。近視を有する被験体の罹患眼の視力を改善するための方法であって、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、またはβ-アドレナリン受容体刺激薬及びムスカリン受容体拮抗薬の両方の特性を示す単一ハイブリッド薬を被験体の眼に投与する方法が提供される。LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬は、安静時の毛様体筋の緊張を安定的に低減することができ、それによって、近視前症または偽近視を有する被験体の罹患眼における毛様体筋の収縮及び痙攣の発生が低減される。所望により、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬の毛様体筋収縮に相反する効果により、近視または毛様体筋麻痺も同様に治療されるはずである。所望により、被験体が眼鏡またはコンタクトレンズを使用する必要性を低減及び/または解消することができる。所望により、被験体に処方される矯正レンズの度数を低減することができる。LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬を使用することで、被験体において、矯正レンズの処方上の度数が時間の経過とともに増加する必要性の進行を遅らせることができる。所望により、網膜剥離、近視性網膜症、及び緑内障のリスクが減少または除去されるはずである。所望により、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬を使用することで、近視または弱視を有する被験体で生じ得る眼軸長伸長を、遅らせる、止める、または防ぐことができる。
【0059】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。しかし、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、さまざまな修正が可能である点は理解されるであろう。例えば、本明細書に記載される方法において、LABA、LAMA、LABAとLAMAとを含む組み合わせ、または両方の活性を示す単一薬は、異なる量及び形態で使用される場合がある。それ故、その他の実施形態は特許請求の範囲の範疇にある。
【実施例
【0060】
実施例1 非ヒト霊長類から単離した毛様体筋
サルの眼球1つから毛様体筋の長軸方向の細片を合計で4本採取した。各実験用に4つの組織用バスを同時使用した。サルの毛様体筋標本は、10-6Mインドメタシンを含有するクレブス重炭酸バッファー中で、95%O/5%COで通気して培養した。標本を調整して200mgの張力にし、30分間平衡させた。温度は実験全体を通して37℃に維持した。平衡後、4つの組織用バスに(50μL×10-3M)10-6Mカルバコール(中間レベル40~60%の最大反応をもたらすのに十分)を加えた。10-6Mカルバコールでは有意収縮を引き起こすのに不十分である場合は、(50μL×3×10-3M)3×10-6Mまたは(50μL×10-2M)10-5Mを使用した。収縮反応を安定化させた。組織の張力は、マルチチャンネル電気生理学的レコーダーで記録した。
【0061】
目的の薬物である、サルメテロール(JV-M1)及びチオトロピウム(JV-M5)を、以下の通り、一定分量50μLで段階的に濃度を高めて累積的に添加した:10-5M(→10-8M)の一定分量50μL、10-4M(→10-7M)の一定分量50μL、10-3M(→10-6M)の一定分量50μL、10-2M(→10-5M)の一定分量50μL。1つの実験では、サルメテロールとチオトロピウムとを組み合わせて添加した。薬液の累積添加が完了した際、選択した量でバッファーを用いて3回完全にフラッシングすることにより、薬物を洗い流した。4つの組織用バスに再び10-6M(または選択した濃度)のカルバコールを加え、収縮反応を安定化させた。
【0062】
あらかじめ収縮したサルの毛様体筋標本に対するサルメテロール、チオトロピウム、及びそれらの組み合わせの効果を、それぞれ図1A、1B及び1Cに示す。
【0063】
アドレナリンβ-受容体刺激薬であるサルメテロール、及びムスカリン受容体拮抗薬であるチオトロピウムは、毛様体筋の緊張を同様に用量相関性に低下させたが(図1A及び図1B)、チオトロピウムによる弛緩の度合いは、サルメテロールで記録されたものよりも大きかった。洗い流し後、さらなるカルバコールの適用による収縮効果は、サルメテロール及びチオトロピウムの両方で鈍化したが、このことは両薬物の長時間作用特性と一致する(図1A及び図1B)。また、サルメテロールは後に投与するよりも先に投与する方が、より効果的であることも示唆している。サルメテロールとチオトロピウムとの組み合わせも、毛様体平滑筋の緊張を低下させるのに非常に有効であった(図1C)。
【0064】
毛様体筋の機能障害により遠近調節が異常となっている視力障害は、繊細な治療を必要とする。毛様体平滑筋の過剰な緊張を伴う近視では、治療は、眼球が近業においてもなお順応し得るように、毛様体筋の適度な弛緩に依拠するべきである。毛様体平滑筋が著しく弛緩すれば、遠視及び別の同等な問題となる視覚障害が引き起こされるはずである。サルメテロール(及びその他のLABA)と低用量のチオトロピウム(ならびにその他のLAMA及びムスカリン受容体拮抗薬)と、それらの組み合わせとによって、近視の最適な治療という目的が果たされるであろう。
【0065】
実施例2 カニクイザルの眼窩周囲皮膚へ塗布した後のサルメテロール及びチオトロピウムの眼内バイオアベイラビリティ
リン酸緩衝食塩水中でチオトロピウム及びサルメテロールを調製し、サルメテロールは懸濁液とした。片眼の上部及び下部眼窩周囲皮膚に溶液をマイクロブラシで複数回別々に塗布して塗り広げることで、合計中央値208μgのチオトロピウム及び155μgのサルメテロールの量が得られた。投与後、1、2、4、24時間後の所定の時点で動物を安楽死させた。次いで、血液試料及び眼球組織検体を採取し、LC/MS/MS分析の準備をした。チオトロピウム及びサルメテロールについての結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
非最適化水溶性製剤を用いてチオトロピウム(表1)及びサルメテロール(表2)を眼窩周囲皮膚に塗布することで、両薬物を薬理学的に活性な濃度で毛様体筋に到達させることができた。これにより、毛様体筋の緊張を適切に調節して視力障害を適正に矯正できるはずである。チオトロピウム及びサルメテロールの全身曝露がそれぞれ最小限またはない状態で、毛様体筋において十分な薬物レベルが得られたという点に留意すべきである。
図1A
図1B
図1C
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の視力障害を治療するための、長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を含む組成物であって、前記組成物は、前記被験体の片眼または両眼に投与されて、前記被験体の前記視力障害を治療することを特徴とする、組成物
【請求項2】
前記投与は眼球投与または眼周囲投与である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記視力障害は、前記被験体の眼における毛様体筋の調節によって治療可能な障害である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物
【請求項4】
前記障害は、近視、近視前症、偽近視、左右異種屈折症、外斜位、弱視、不同視、内斜視、外斜視、デュアン症候群I、デュアン症候群II、ブラウン症候群、手術による眼の合併症、眼の損傷または眼窩骨の骨折、網膜剥離による視力障害、白内障による視力障害、糖尿病に伴う視力障害、重症筋無力症に伴う視力障害、及びバセドウ病に伴う視力障害からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物
【請求項5】
前記組成物は、前記被験体の非罹患眼に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物
【請求項6】
前記障害は、不同視、弱視、内斜視及び外斜視からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物
【請求項7】
前記組成物は、前記被験体の罹患眼に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物
【請求項8】
前記障害は、近視、偽近視、左右異種屈折症及び外斜位からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物
【請求項9】
前記組成物は、前記眼に局所的眼球用製剤として投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物
【請求項10】
前記組成物は、前記眼に点眼薬として投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物
【請求項11】
前記組成物は、眼窩周囲皮膚に局所塗布することで前記眼に投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物
【請求項12】
前記組成物は、前記眼にインプラントとして投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物
【請求項13】
前記インプラントは、前眼房インプラントまたは脈絡膜上インプラントである、請求項12に記載の組成物
【請求項14】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物
【請求項15】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬はバテフェンテロールである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物
【請求項16】
前記組成物と組み合わせて前記被験体の眼にムスカリン受容体拮抗薬投与されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物
【請求項17】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、前記組成物が投与された前記被験体の同一の眼に投与される、請求項16に記載の組成物
【請求項18】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16~17のいずれか一項に記載の組成物
【請求項19】
前記長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、ウメクリジニウム、アクリジニウム及びグリコピロニウムならびにそれらの塩からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物
【請求項20】
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、請求項18に記載の組成物
【請求項21】
前記被験体は以前にアトロピンで治療されている、請求項16~20のいずれか一項に記載の組成物
【請求項22】
前記組成物と組み合わせて使用されるアトロピンの用量は、前記組成物による治療の前に前記被験体に投与された前記アトロピンの用量と比較して減少する、請求項20に記載の組成物
【請求項23】
前記組成物と組み合わせて前記被験体の眼にα-アドレナリン受容体刺激薬投与されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物
【請求項24】
前記α-アドレナリン受容体刺激薬は、メトキサミン、ミドドリン、オキシメタゾリン、メタラミノール、フェニレフリン、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、デキスメデトミジン、アミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、それらの塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物
【請求項25】
前記α-アドレナリン受容体刺激薬はブリモニジンである、請求項24に記載の組成物
【請求項26】
前記組成物と組み合わせて前記被験体の眼にホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬投与されることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物
【請求項27】
前記ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬は、ビンポセチン、エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-7-[(2R,3R)-2-ヒドロキシ-6-フェニルヘキサン-3-イル]-5-メチル-1H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン、オキシインドール、9-(6-フェニル-2-オキソヘキサン-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン(PDP)、イナムリノン、ミルリノン、エノキシモン、アナグレリド、シロスタゾール、及びピモベンダン、メセンブレノン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロール、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモール、キナゾリン、パパベリン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の組成物
【請求項28】
前記ホスホジエステラーゼ阻害薬はテオフィリンである、請求項26に記載の組成物
【請求項29】
長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を含む、眼球用製剤。
【請求項30】
前記β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、約0.001%~約10%w/vの濃度で存在する、請求項29~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
前記製剤は局所的眼球用製剤である、請求項29~31のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、請求項32に記載の製剤。
【請求項35】
前記製剤はムスカリン受容体拮抗薬をさらに含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム及びそれらの塩からなる群から選択される長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、臭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、約0.001%~約10%(w/v)の濃度で存在する、請求項35~38のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、請求項35~39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、請求項35~40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
近視を有する被験体の罹患眼における視力を改善するための、長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬、ムスカリン受容体拮抗薬、またはそれらの組み合わせを含む組成物であって、前記組成物は、前記被験体の前記罹患眼に投与されて、前記被験体の前記罹患眼における視力を改善することを特徴とする、組成物

【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明で示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、ならびに請求項から明白となるであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
被験体の視力障害を治療する方法であって、前記被験体の片眼または両眼に長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を投与して、前記被験体の前記視力障害を治療する、前記方法。
(項目2)
前記投与は眼球投与または眼周囲投与である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記視力障害は、前記被験体の眼における毛様体筋の調節によって治療可能な障害である、項目1~2のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
前記障害は、近視、近視前症、偽近視、左右異種屈折症、外斜位、弱視、不同視、内斜視、外斜視、デュアン症候群I、デュアン症候群II、ブラウン症候群、手術による眼の合併症、眼の損傷または眼窩骨の骨折、網膜剥離による視力障害、白内障による視力障害、糖尿病に伴う視力障害、重症筋無力症に伴う視力障害、及びバセドウ病に伴う視力障害からなる群から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記被験体の非罹患眼に投与される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記障害は、不同視、弱視、内斜視及び外斜視からなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記被験体の罹患眼に投与される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記障害は、近視、偽近視、左右異種屈折症及び外斜位からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼に局所的眼球用製剤として投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼に点眼薬として投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、眼窩周囲皮膚に局所塗布することで前記眼に投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、前記眼にインプラントとして投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記インプラントは、前眼房インプラントまたは脈絡膜上インプラントである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬はバテフェンテロールである、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記被験体の眼にムスカリン受容体拮抗薬を投与することをさらに含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬が投与された前記被験体の同一の眼に投与される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目16~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、ウメクリジニウム、アクリジニウム及びグリコピロニウムならびにそれらの塩からなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記被験体は以前にアトロピンで治療されている、項目16~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬と組み合わせて使用されるアトロピンの用量は、前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬による治療の前に前記被験体に投与された前記アトロピンの用量と比較して減少する、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記被験体の眼にα-アドレナリン受容体刺激薬を投与することをさらに含む、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記α-アドレナリン受容体刺激薬は、メトキサミン、ミドドリン、オキシメタゾリン、メタラミノール、フェニレフリン、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、デキスメデトミジン、アミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、それらの塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記α-アドレナリン受容体刺激薬はブリモニジンである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記被験体の眼にホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬を投与することをさらに含む、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬は、ビンポセチン、エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン(EHNA)、2-[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]-7-[(2R,3R)-2-ヒドロキシ-6-フェニルヘキサン-3-イル]-5-メチル-1H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン、オキシインドール、9-(6-フェニル-2-オキソヘキサン-3-イル)-2-(3,4-ジメトキシベンジル)-プリン-6-オン(PDP)、イナムリノン、ミルリノン、エノキシモン、アナグレリド、シロスタゾール、及びピモベンダン、メセンブレノン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、アプレミラスト、クリサボロール、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモール、キナゾリン、パパベリン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記ホスホジエステラーゼ阻害薬はテオフィリンである、項目26に記載の方法。
(項目29)
長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬を含む、眼球用製剤。
(項目30)
前記β-アドレナリン受容体刺激薬は、アルブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、アルホルモテロール、オロダテロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目29に記載の製剤。
(項目31)
前記長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬は、約0.001%~約10%w/vの濃度で存在する、項目29~30のいずれか一項に記載の製剤。
(項目32)
前記製剤は局所的眼球用製剤である、項目29~31のいずれか一項に記載の製剤。
(項目33)
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、項目32に記載の製剤。
(項目34)
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、項目32に記載の製剤。
(項目35)
前記製剤はムスカリン受容体拮抗薬をさらに含む、項目29~34のいずれか一項に記載の製剤。
(項目36)
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム及びそれらの塩からなる群から選択される長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬である、項目35に記載の製剤。
(項目37)
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、アトロピン、スコポラミン、ヒドロキシジン、イプラトロピウム、トロピカミド、ピレンゼピン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、ジメンヒドリナート、ジサイクロミン、フラボキサート、オキシブチニン、シクロペントレート、メチルアトロピン硝酸塩、トリヘキシフェニジル、トルテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンズトロピン、メベベリン、プロシクリジン、臭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目35に記載の製剤。
(項目38)
前記ムスカリン受容体拮抗薬はアトロピンである、項目37に記載の製剤。
(項目39)
前記ムスカリン受容体拮抗薬は、約0.001%~約10%(w/v)の濃度で存在する、項目35~38のいずれか一項に記載の製剤。
(項目40)
前記局所的眼球用製剤は点眼薬の形態である、項目35~39のいずれか一項に記載の製剤。
(項目41)
前記局所的眼球用製剤は眼窩周囲用製剤の形態である、項目35~40のいずれか一項に記載の製剤。
(項目42)
近視を有する被験体の罹患眼における視力を改善する方法であって、前記被験体の前記罹患眼に長時間作用性β-アドレナリン受容体刺激薬、ムスカリン受容体拮抗薬、またはそれらの組み合わせを投与して、前記被験体の前記罹患眼における視力を改善する、前記方法。

【国際調査報告】