(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】促進酸化プロセスのための電気化学的に活性化された過硫酸塩
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
C02F1/461 101C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572037
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020038029
(87)【国際公開番号】W WO2020257218
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チェン
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DA03
4D061DA08
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4D061GC14
4D061GC20
(57)【要約】
本発明は、水処理システムを開示する。本システムは、入口および出口ならびに過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードおよびアノードを有する電気化学セルと、電気化学セルの上流に位置する過硫酸塩の供給源と、電気化学セルの上流に位置する第1の汚染物質濃度センサーと、少なくとも第1の汚染物質濃度センサーから1つ以上の入力信号を受信するように操作可能に連結されたコントローラーと、を含む。本明細書に開示される電気化学セルを使用して水を処理する方法を開示する。本明細書に開示される電気化学セルを準備することによって水処理を容易にする方法を開示する。本明細書に開示される電気化学セルを準備することによってAOPを有する水処理システムを改装する方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を処理するためのシステムであって、
入口および出口を有する電気化学セルであって、前記電気化学セルの前記入口は、少なくとも1つの汚染物質を含む水源に流体接続可能であり、前記電気化学セルは、
過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードおよび
アノード、
を備える、電気化学セルと、
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な過硫酸塩の供給源と、
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な第1の汚染物質濃度センサーと、
少なくとも前記第1の汚染物質濃度センサーから1つ以上の入力信号を受信するように操作可能に連結されたコントローラーであって、前記コントローラーは、前記1つ以上の入力信号に基づいて、少なくとも前記水源からの水の導入速度、前記水源への過硫酸塩の導入速度および前記電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するように操作可能である、コントローラーと、
を備える、水を処理するためのシステム。
【請求項2】
前記第1の汚染物質濃度センサーは、有機汚染物質濃度センサーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カソード触媒材料は、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよび金属合金からなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記カソード材料は、銅を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記アノードは、白金、マグネリ相酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング寸法安定性アノード(DSA)材料、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)または鉛/鉛酸化物のうちの1つを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な第1の水流センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラーは、前記第1の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも前記水源からの水の前記導入速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気化学セルに連結された電流センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラーは、前記電流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも前記電気化学セルに印加される前記電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記水源に流体接続可能な過硫酸塩濃度センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラーは、前記過硫酸塩濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、前記水源への少なくとも過硫酸塩の前記導入速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気化学セルの下流に位置する第2の水流センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラーは、前記第2の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも前記水源からの水の前記導入速度、前記水源への過硫酸塩の前記導入速度および前記電気化学セルに印加される前記電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記電気化学セルの前記出口の下流に位置し、かつ前記電気化学セルの前記出口に流体接続可能な第2の汚染物質濃度センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラーは、前記第2の汚染物質濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも前記水源からの水の前記導入速度、前記水源への過硫酸塩の前記導入速度および前記電気化学セルに印加される前記電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な第1のpHセンサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な第1のpH調整ユニットをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のpH調整ユニットは、前記水源のpHをpH7未満に調整するように構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラーは、前記第1のpHセンサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、前記pH調整剤が前記第1のpH調整ユニットから前記水源に導入される速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記電気化学セルの前記出口の下流に位置する第2のpHセンサーをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気化学セルの前記出口の下流に位置する第2のpH調整ユニットをさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記電気化学セルの上流に位置し、かつ前記水源に流体接続可能な導電率センサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記電気化学セルに流体接続可能な導電率調整ユニットをさらに備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記コントローラーは、前記導電率センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、前記導電率調整剤が前記導電率調整ユニットから前記水源に導入される速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能である、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記電気化学セルは、参照電極をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
複数の電気化学セルをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記電気化学セルの下流に位置し、かつ前記電気化学セルの前記出口に流体接続可能な処理容器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
水を処理する方法であって、
少なくとも1つの汚染物質を含む水源からの水を準備することと、
前記水源からの前記水中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定することと、
前記水中の前記少なくとも1つの汚染物質の少なくとも測定濃度を表す信号に基づく濃度で過硫酸塩を前記水に導入して、第1の処理水を生成することと、
電気化学セルの入口に前記第1の処理水を導入することと、
前記電気化学セル内において触媒材料を含む電極で前記過硫酸塩から過硫酸塩遊離基を電気化学的に生成して、第2の処理水を生成することと、
を含む、水を処理する方法。
【請求項30】
前記第2の処理水中の前記少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて、前記水に導入される前記過硫酸塩の前記濃度を調整することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の処理水中の前記少なくとも1つの汚染物質の前記測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて前記電気化学セルに印加される電位を調整することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の処理水中の前記少なくとも1つの汚染物質の前記測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて、前記水源からの水の導入速度を調整することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記過硫酸塩遊離基は、前記電気化学セルのカソードで生成される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの汚染物質は、有機汚染物質を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記水源からの前記水にpH調整剤を導入することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記水源からの前記水のpHを7未満の値に調整することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記水源からの前記水に導電率調整剤を導入することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記電気化学セルから前記電気化学セルの下流に位置する処理容器に前記第2の処理水を導入することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の処理水のpHを調整することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
水処理を容易にする方法であって、
水処理システムを準備することであって、前記システムは、少なくとも1つの汚染物質を含む水源に導入された過硫酸塩を、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を備える電極で電気化学的に活性化するように構成された電気化学セルを備える、水処理システムを準備することと、
第1の汚染物質濃度センサー、第1の水流センサー、電流センサーおよび過硫酸塩濃度センサーのうちの少なくとも1つを準備することと、
前記水の少なくとも測定汚染物質濃度に応答して、少なくとも前記水源からの水の導入、導入された前記過硫酸塩の量および電気化学セルに印加される電位を調節するように構成されたコントローラーを準備することと、
前記電気化学セルを前記水源に流体接続するようにユーザーに指示することと、
前記水処理システムを前記コントローラーに接続するようにユーザーに指示することと、
を含む、水処理を容易にする方法。
【請求項42】
前記過硫酸塩を準備することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記コントローラーは、測定された水の流量にさらに応答する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記コントローラーは、測定された過硫酸塩濃度にさらに応答する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記コントローラーは、前記電気化学セルの測定された電流にさらに応答する、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの汚染物質を含む水源と流体連通する促進酸化プロセス(AOP)を備える水処理システムを改装する方法であって、
過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードを含む電気化学セルを準備することと、
前記電気化学セルを前記水源に流体接続することと、
処理水を生成するために前記電気化学セルを操作して前記水源に導入される過硫酸塩を活性化する指示を準備することと、
を含む、少なくとも1つの汚染物質を含む水源と流体連通する促進酸化プロセス(AOP)を備える水処理システムを改装する方法。
【請求項47】
前記水処理システムから紫外線(UV)AOPを置き換えることをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記電気化学セルは、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含むカソードを備える、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記電気化学セルは、白金、マグネリ相酸化チタン、MMOコーティングDSA材料、グラファイト、BDDまたは鉛/酸化鉛のうちの1つを含むアノードを備える、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記過硫酸塩を準備することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも前記水源からの水の導入速度、前記水源への前記過硫酸塩の導入速度および前記電気化学セルに印加される電位を調節するように構成されたコントローラーを準備することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年6月19日に出願された“Electro Activated Persulfate Process using a Copper Catalyst for Advanced Oxidation”と題する米国仮特許出願第62/863,459号に基づく優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張し、その開示全体は、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書に開示される態様および実施形態は、概して、水から有機化合物を除去するための促進酸化プロセスの分野に関する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、水を処理するためのシステムが提供される。そのシステムは、入口および出口を有する電気化学セルであって、電気化学セルの入口が少なくとも1つの汚染物質を含む水源に流体接続可能である電気化学セルと、電気化学セルの上流に位置し、水源に流体接続可能な過硫酸塩の供給源と、電気化学セルの上流に位置し、かつ水源に流体接続可能な第1の汚染物質濃度センサーと、少なくとも第1の汚染物質濃度センサーから1つ以上の入力信号を受信するように操作可能に連結されたコントローラーと、を備え得る。電気化学セルは、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードと、アノードとを備え得る。コントローラーは、1つ以上の入力信号に基づいて、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するように操作可能であり得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、第1の汚染物質濃度センサーは、有機汚染物質濃度センサーを備える。
【0005】
いくつかの実施形態では、過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、カソード触媒材料は、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよび金属合金からなる群から選択される金属を含む。特定の実施形態では、カソード材料は、銅を含む。いくつかの実施形態では、アノードは、白金、マグネリ相酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング寸法安定性アノード(DSA)材料、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)または鉛/鉛酸化物のうちの1つを含む。
【0006】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの上流に位置し、かつ水源に流体接続可能な第1の水流センサーを備え得る。コントローラーは、第1の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0007】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルに連結された電流センサーを備え得る。コントローラーは、電流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0008】
さらなる実施形態では、システムは、水源に流体接続可能な過硫酸塩濃度センサーを備え得る。コントローラーは、過硫酸塩濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、水源への少なくとも過硫酸塩の導入の速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0009】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの下流に位置する第2の水流センサーを備え得る。コントローラーは、第2の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0010】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの出口の下流に位置し、かつ電気化学セルの出口に流体接続可能な第2の汚染物質濃度センサーを備え得る。コントローラーは、第2の汚染物質濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0011】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの上流に位置し、かつ水源に流体接続可能な第1のpHセンサーを備え得る。特定の実施形態では、システムは、電気化学セルの上流に位置し、かつ水源に流体接続可能な第1のpH調整ユニットを含む。第1のpH調整ユニットは、水源のpHを7未満のpHに調整するように構成される。コントローラーは、第1のpHセンサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、pH調整剤が第1のpH調整ユニットから水源に導入される速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの出口の下流に位置する第2のpHセンサーおよび第2のpH調整ユニットを含み得る。
【0012】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの上流に位置し、かつ水源に流体接続可能な導電率センサーを備え得る。特定の実施形態では、システムは、電気化学セルに流体接続可能な導電率調整ユニットを含む。コントローラーは、導電率センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、導電率調整剤が導電率調整ユニットから水源に導入される速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、参照電極をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、システムは、複数の電気化学セルを含む。
【0015】
さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの下流に位置し、かつ電気化学セルの出口に流体接続可能な処理容器を含む。
【0016】
別の態様では、水を処理する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの汚染物質を含む水源からの水を準備することを含み得る。この方法は、水源からの水中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定することをさらに含み得る。この方法は、水中の少なくとも1つの汚染物質の少なくとも測定濃度を表す信号に基づく濃度で過硫酸塩を水に導入して第1の処理水を生成することをさらに含み得る。この方法は、第1の処理水を電気化学セルの入口に導入することをさらに含み得る。この方法は、触媒材料を含む電極で電気化学セル内の過硫酸塩から過硫酸塩遊離基を電気化学的に生成して、第2の処理水を生成することをさらに含み得る。
【0017】
さらなる実施形態では、この方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて、水に導入される過硫酸塩の濃度を調整することを含む。
【0018】
さらなる実施形態では、この方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて、電気化学セルに印加される電位を調整することを含む。
【0019】
さらなる実施形態では、この方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される少なくとも信号に基づいて、水源からの水の導入速度を調整することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、過硫酸塩遊離基は、電気化学セル内のカソードで生成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの汚染物質は、有機汚染物質を含む。
【0021】
さらなる実施形態では、この方法は、水源からの水にpH調整剤を導入することを含む。pH調整剤は、水源からの水のpHを7未満の値に調整し得る。さらなる実施形態では、この方法は、水源からの水に導電率調整剤を導入することを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、この方法は、電気化学セルからの第2の処理水を、電気化学セルの下流に位置する処理容器に導入することを含む。処理容器に導入される第2の処理水のpHは、調整され得る。
【0023】
別の態様では、水処理を容易にする方法が提供される。この方法は、水処理システムを準備することを含み得、システムは、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含む電極で少なくとも1つの汚染物質を含む水源に導入された過硫酸塩を電気化学的に活性化するように構成された電気化学セルを備える。この方法は、第1の汚染物質濃度センサー、第1の水流センサー、電流センサーおよび過硫酸塩濃度センサーのうちの少なくとも1つを準備することをさらに含み得る。この方法は、少なくとも測定された水の汚染物質濃度に応答して、少なくとも水源からの水の導入、導入される過硫酸塩の量および電気化学セルに印加される電位を調節するように構成されたコントローラーを準備することをさらに含み得る。この方法は、電気化学セルを水源に流体接続するようにユーザーに指示することをさらに含み得る。この方法は、水処理システムをコントローラーに接続するようにユーザーに指示することをさらに含み得る。
【0024】
さらなる実施形態では、本方法は、過硫酸塩を準備することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、準備されるコントローラーは、少なくとも水源からの水の導入、導入される過硫酸塩の量および電気化学セルに印加される電位を、測定された水の流量、測定された過硫酸塩の濃度および電気化学セルの測定電流の少なくとも1つに応答して、調節するようにさらに構成され得る。
【0026】
別の態様では、少なくとも1つの汚染物質を含む水源と流体連通する促進酸化プロセス(AOP)を備える水処理システムを改装する方法が提供される。この方法は、過硫酸塩遊離基を電気化学的に生成するための触媒材料を含むカソードを含む電気化学セルを準備することを含み得る。この方法は、電気化学セルを水源に流体接続することをさらに含み得る。この方法は、水源に導入された過硫酸塩を活性化して処理水を生成するように電気化学セルを操作する指示を準備することをさらに含み得る。
【0027】
さらなる実施形態では、本方法は、水処理システムから紫外線(UV)AOPを置き換えることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金からなる群から選択される金属を含むカソードを備える。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、白金、マグネリ相酸化チタン、MMOコーティングDSA材料、グラファイト、BDDまたは酸化鉛/酸化鉛のうちの1つを含むアノードを備える。
【0029】
さらなる実施形態では、本方法は、過硫酸塩を準備することを含む。さらなる実施形態では、本方法は、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節するように構成されたコントローラーを準備することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
添付の図面は、縮尺通りに描かれていることを意図していない。図面では、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表される。明瞭にするため、各図面で、各構成要素に符号が付けられていない場合がある。
【0031】
【
図1】水中に12ppmのフミン酸を有する溶液のUV透過率を波長の関数として示す。
【
図2】一実施形態による、鉄合金カソードを使用する電気化学セルにおける線形掃引ボルタモグラムを示す。
【
図3】一実施形態による、電気化学セルを使用して水を処理するためのシステムの概略図を示す。
【
図4】一実施形態による、電気化学セルを使用した1,2,4-トリアゾールの除去を示す。
【
図5】一実施形態による、電気化学セルを使用したt-ブタノール(TBA)の除去を示す。
【
図6】一実施形態による、電気化学セルを使用したフミン酸の除去を示す。
【
図7】一実施形態による、電気化学セルを使用したペルフルオロオクタン酸(PFOA)の除去を示す。
【
図8】一実施形態による、電気化学セルを使用したフミン酸の除去を示す。
【
図9】一実施形態による、電気化学セルを使用したフミン酸の除去を示す。
【
図10】一実施形態による、電気化学セルを使用してフミン酸を除去する前後のUV-Visスペクトルを示す。
【
図11】一実施形態による、電気化学セルを使用してフミン酸およびメチレンブルーを除去する前後のUV-Visスペクトルを示す。
【
図12】一実施形態による、過硫酸塩ラジカルのUV生成および電気化学セルを使用した、汚染された工業用水からのTOC除去の効率の比較を示す。
【0032】
本開示の利点を考えると、図は単なる例示の目的であることが当業者によって認識されるであろう。説明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される実施形態に他の特徴が存在し得る。
【発明を実施するための形態】
【0033】
促進酸化プロセス(AOP)は、望ましくない有機化合物の分解または不活性化にますます使用されている。これらの有機化合物は、半導体製造または飲料水に使用される水などの高純度水中に見られ得る。これらの有機化合物は、内分泌かく乱化学物質を含むことがあり、廃水中にも見られ得る。AOP技術には、2つの例として、紫外線(UV)照射および超音波キャビテーションなどの処理が含まれる。紫外線システムは、過硫酸塩、オゾン、過酸化水素などの酸化剤とともに利用され得、有機化合物を分解または不活性化する紫外線にさらされるとラジカル種を生成する。
【0034】
促進水処理のための活性化遊離基プロセスは、一般に、過酸化物または過硫酸塩をUV活性化して、汚染水に含まれる有機種を無機化する酸化剤としてヒドロキシルまたは過硫酸塩遊離基を生成することによって達成される。UV-AOPは、例えば、過酸化物または過硫酸塩分子を遊離基の形に変換し得る固有の波長のランプ効率によって本質的に制限される。例えば、過硫酸塩を活性化するためのUVランプの効率は、濁度の低い水中で約10~30%である。この制限は、将来、必要な波長の発光ダイオード(LED)が市販されるようになったときに解決され得る。特に、UV-AOPは、水中のUV透過率によっても制限される。例えば、
図1に示されるように、13mmの経路長にわたる12ppmのフミン酸を含有する脱イオン水中のUV透過率は、320nm未満のUV波長で66%未満である。透過率が低下すると、UV-AOPスキームのプロセス効率が低下し、エネルギー消費量が増加するため、使用できる用途が制限される。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、汚染水の供給源からの有機化合物の除去に関する。1つ以上の実施形態によれば、処理される水は、1つ以上の標的化合物を含有し得る。例えば、水源からの水は、様々な有機化合物、例えば、t-ブタノールおよび天然に存在する高分子量有機化合物、例えば、フミン酸またはフルボ酸を含有し得る。水は、1,2,4-トリアゾールまたはパーフルオロアルキル物質(PFAS)、例えばパーフルオロオクタン酸(PFOA)などの人工有機分子をも含有し得る。本発明は、処理される有機化合物の種類に限定されない。
【0036】
AOPプロセスは一般に、さまざまな有機種の分解または除去のために酸化塩の活性化を利用する。強力な酸化剤を生成するための前駆体として開始され得る任意の塩を、本明細書に開示されるシステムおよび方法で使用し得る。いくつかの非限定的な実施形態では、過硫酸化合物、すなわち、過硫酸塩は、酸化剤として使用され得る。少なくともいくつかの実施形態では、少なくとも過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、および/または過硫酸カリウムのうちの1つを酸化剤として使用し得る。他の強力な酸化剤、例えば、酸素ガス、オゾン、または過酸化水素もまた、酸化剤として使用され得る。水源からの水は、酸化剤を投与され得る。
【0037】
本明細書に記載のシステムおよび方法の酸化剤として過硫酸塩を選択したとき、そのラジカル形態への活性化は、一般に、以下の反応経路に従って起こる。
S2O8
2-+e-→SO4・-+SO4
2- 式1
SO4・-+e-→SO4
2- 式2
S2O8
2-+2e-→2SO4
2- 式3
2H++2e-→H2 式4(競争反応)
【0038】
本明細書に記載の電気化学セルを含むシステムでは、これらの反応は一般にカソードの表面で起こり、カソード材料は、過硫酸塩の過硫酸塩遊離基への活性化を促進し得る触媒材料として選択され得る。式1~4に見られるように、過硫酸塩への活性化の反応速度論は、不活性な硫酸イオンの生成(式2および3)を減らし、水分解に起因する水素イオンの還元からの水素ガスの発生(式4)を減らすように、制御すべきである。ステンレス鋼304(SS304)カソードでの過硫酸塩活性化の線形掃引ボルタモグラムを示す
図2に示すように、垂直破線矢印によって示される電位窓内において過硫酸塩のカソード還元が発生し得、過電圧が低い方が好ましい。過電圧は、一般に、半反応の熱力学的に決定された還元電位と酸化還元事象が実験的に行われる電位との間の電位差、すなわち電圧に関連し得、電気化学セルの電圧効率に直接関連し得る。
図2は、過硫酸塩アニオンへの電子移動が、+0.3V対RHEから始まることを示している(
図2では、電解質は、NaOHによってpHが7に調整された20mMのNa
2SO
4である)。-0.2Vを超えると、過硫酸塩アニオンの還元的活性化での代わりに、水素の発生がカソード表面での主要なカソード反応として優勢になり始める。
【0039】
本発明のシステムは、入口および出口を有する電気化学セルであって電気化学セルの入口は少なくとも1つの汚染物質を含む水源に流体接続可能である電気化学セルと、電気化学セルの上流に位置し水源に流体接続可能な過硫酸塩の供給源と、電気化学セルの上流に位置し水源に流体接続可能な第1の汚染物質濃度センサーと、少なくとも第1の汚染物質濃度センサーから1つ以上の入力信号を受信するように操作可能に連結されたコントローラーを含み得る。電気化学セルは、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードおよびアノードを備え得る。コントローラーは、1つ以上の入力信号に基づいて、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するように操作可能であり得る。
【0040】
本明細書に記載されているように、UV光を使用する過硫酸塩ラジカルの生成は、原水のUV透過率によって制限され得る。過硫酸塩ラジカルの電気化学的生成は、任意の透過率レベルの水中で発生し得、過硫酸塩の活性化効率は、水の透過率の影響を受けることはない。例えば、過硫酸塩ラジカルの電気化学的生成は、不透明または濁った水、例えば、高度な濁水よりも、水中で起こり得、これは、UV透過率を実質的に低下させるであろう。いくつかの実施形態では、電気化学セルは、効率が水マトリックスを通る透過率と相関するUVラジカル生成などの他のラジカル生成プロセスの効率よりも高い過硫酸塩遊離基生成効率を有し得る。
【0041】
本発明のシステムは、システムおよびその中で発生するプロセスの1つ以上のパラメーターを測定するための任意の数のセンサーを含み得る。センサーは通常、特性を測定し、その特性を表す信号をシステムの操作を調節または監視するように構成されたコントローラーまたはその他のデバイスに送信するように構成される。センサーは、電気化学セルの上流、電気化学セルの下流、または電気化学セルの構成要素など、システム内の任意の実用的な場所に位置し得る。例えば、第1の汚染物質濃度センサーは、全有機炭素(TOC)センサーなど、特定の種に非固有のセンサーであり得る。あるいは、または加えて、システムは、1つ以上の化学物質固有のセンサーを含み得る。当業者は、システムのセンサーの数および固有性が、既知の汚染物質または水源の他の特性に基づいて選択され得ることを理解し得る。いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、電気化学セルの上流に位置し水源に流体接続可能な第1の水流センサーを含み得る。第1の水流センサーは、電気化学セルに入る水源からの水の流量を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、電気化学セルに連結された、すなわち、電気化学セルの少なくとも1つの電極に連結された電流センサーを含み得る。電流センサーは、少なくとも、電気化学セルのカソードなどの電極に流れる電流を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、水源に流体接続可能な過硫酸塩濃度センサーを含み得る。過硫酸塩濃度センサーは、水源からの水に加えられた過硫酸塩の量を測定するように構成し得る。さらなる実施形態では、システムは、電気化学セルの下流に位置する第2の汚染物質濃度センサーを含み得る。第2の汚染物質センサーは、電気化学的に処理された水が十分に処理されて排出の準備ができているかどうか、または処理された水が本明細書に記載される1つ以上の追加の電気化学セルでのさらなる処理または当業者に既知の任意の他の水処理などのさらなる処理を必要とするかどうかを決定するために使用され得る。第2の汚染物質センサーは、TOCセンサーなどの非固有センサーであり得るか、または1つ以上の化学的固有センサーを備え得る。
【0042】
電気化学セルを含む本発明のシステムは、任意の実際の配置で接続された複数の電気化学セルを含み得る。例えば、システムは、直列に接続された複数の電気化学セルを含み得、各電気化学セルに異なる処理段階を提供する。あるいは、または加えて、システムは、水処理システムの全体的な処理スループットを向上させるために並列に接続された複数の電気化学セルを含み得る。本発明は、複数の電気化学セルの数および可能な構成に決して限定されることなく、当業者は、任意の数の電気化学セルおよび任意の数の可能な電気化学セル構成を利用して、濾過性能および/または結果として生じる水質の所望のレベルを達成し得ることを理解し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、例えば、カソードの近位に参照電極を含み得る。参照電極は、作用電極、すなわちカソードに、電流が流れることなく、その電位の連続測定を可能にし得る。したがって、参照電極を使用すると、特定の導電率を有する水中のセル電圧を正確に制御することが可能であり得、それゆえ、競争反応(本明細書に記載の式2~4)を制限するために、本明細書に記載の反応速度を決定する電流を制御する。いくつかの場合においては、本明細書に記載の電気化学セルの電極は、カソードに印加される電位が-0.6~-0.2V対Ag/AgCl/1M KClの範囲にあるとき、通電電流で過硫酸塩活性化に対して最高の効率を達成し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、カソード用の触媒材料は、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよび金属合金からなる群から選択される金属を含み得る。合金は、鉄、銅、ニッケル、コバルトのいずれかと別の金属または別の適切な材料との間にあり得る。例えば、電極は鋼、少なくとも鉄および炭素を含む合金であり得る。例示的なカソード材料は、銅である。カソードは、様々な形状、例えば、平面または円形に形成され得る。少なくともいくつかの実施形態では、カソードは、箔、メッシュまたはフォーム構造によって特徴付けられ得、これは、表面上で活性化反応が発生するために十分な活性部位を提供し得るより高い活性表面領域、細孔構造および/または細孔分布に関連し得る。例えば、カソードは、1cm2~1000cm2の間の活性領域を有し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、アノードは、白金、マグネリ相酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング寸法安定性(DSA)材料、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)、または鉛/酸化鉛からなる群から選択される材料を含み得る。DSA材料は、コーティングされていない場合もあり得、特にIrO2などの貴金属または金属酸化物でコーティングされている場合もあり得る。マグネリ相酸化チタン電極および当該電極を含む電気化学セルは、PCT/US2019/047922に記載されており、その開示を、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に援用する。例示的なアノード材料は、白金であり、これはその電流誘導酸化が低電流密度で無視され得るためである。白金は、固体導体として使用され得、またはチタンなどの別の電極基板上のコーティングとして使用され得る。
【0046】
電気化学セルを組み込んだ本発明のシステムの例示的な実施形態を
図3に示す。
図3に示されるように、水源102は、本明細書に記載されるように、電気化学セル106の入口に流体接続可能である。このシステムは、電流センサー107を有する電気化学セル106の上流に位置する第1の汚染物質濃度センサー101および第1の水の流量センサー103を含む。第1の汚染物質濃度センサー101は、電気化学セル106に入る水源に存在する少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定するように構成され得る。いかなる特定の理論に拘束されることをも望むものではないが、過硫酸塩の供給源104から水源102に供給される過硫酸塩の量は、水源102の測定された汚染物質濃度と相関し得る。水源102に流体接続可能な過硫酸塩の供給源104から、適切な量の過硫酸塩を電気化学セル106に投与し得る。水源102からの水に投与される過硫酸塩の量は、水の汚染物質濃度を規制基準によって提供される濃度などの許容可能レベルに低減するのに十分な量であり得る。あるいは、水源102からの水に投与される過硫酸塩の量は、水の汚染物質濃度を許容レベルまで低下させるのに必要な量を超え得る。過硫酸塩の供給源104は、水源102からの水に添加された過硫酸塩を測定するために、過硫酸塩濃度センサー105などの必要な制御をさらに含み得る。過硫酸塩は、貯蔵タンクなどの任意の適切な容器に貯蔵され得、適切な弁、例えば計量弁によって制御され水源へ分散され得る。システムは、電気化学セル106の出口の下流において、電気化学セル106から排出される処理水のそれぞれの特性を測定するように構成された第2の汚染物質濃度センサー108および第2の水の流量センサー110を含む。システムの様々な構成要素は、操作中にコントローラー120によって制御され得る。コントローラー120は、本明細書に記載されるように、センサーから生成された入力信号が操作中に利用され得るように、システム100の様々な構成要素に動作可能に連結され得る。様々なシステム構成要素は、任意の既知の接続タイプ、例えば、ワイヤまたはケーブルによる直接接続によって、または任意の既知の無線データ伝送規格を介して、コントローラー120に接続され得る。システム構成要素とコントローラーとの間の接続のタイプは当業者にとって既知であり、本発明は、システム構成要素とコントローラーとの間の接続のタイプによって制限されない。
【0047】
図3の破線のボックスによって示されるように、システム100は、水源102に流体接続可能な第1のpH調整ユニット112などの追加の構成要素を必要に応じて含み得る。第1のpH調整ユニット112は、電気化学セル106にエネルギーを与える前に、水源102からの水のpHを調整するように構成され得る。水源102からの水のpHは、水源102と電気化学セル106との間に位置する適切に構築された第1のpHメーターまたは第1のpHセンサー113によって測定され得る。いくつかの実施形態では、水源102からの水のpHは、電気化学セル106の操作および/または性能を改善するために調整され得る。一例として、本明細書に記載の電気化学プロセスの場合、水源102からの水のpHは、電気化学セル106内で使用されるカソード材料のタイプと相関し得る。いかなる特定の理論に拘束されることを望むものではないが、水源102からの水のpHは、銅カソードを有する電気化学セルを使用して処理するために、酸性、すなわち7未満のpHであり得る。いくつかの実施形態では、水源102からの水のpHは、鉄または鉄合金、すなわち、鋼、ニッケル、コバルトまたは他の電極材料を備えた電気化学セルを使用して処理するときに調整する必要がない場合があり得る。当業者は、水源からの水のpHが、カソード材料の特定の電子構造または他の特性に基づいて調整され得ることを理解し得る。本明細書に記載される第1のpH調整ユニットは、水源からの水にある量のpH調整剤を投与して、pHを所望のレベルに調整するように構成され得る。例えば、第1のpH調整ユニットは、水源からの水中にH
2SO
4などの酸性pH調整剤を投与するように構成され得る。他の適切なpH調整剤は、当技術分野で既知である。
【0048】
図3を引き続き参照すると、およびいくつかの実施形態では、システム100は、水源102に流体接続された導電率調整ユニット114を必要に応じて含み得る。導電率調整剤の追加は、電気化学セルの性能に悪影響を与えることなく、電気化学セルを操作するために必要なエネルギー消費を低減し得る。導電率調整ユニット114は、電気化学セル内の水源からの水の溶液導電率の測定に基づいて、塩などの導電率調整剤の量を投与するように構成され得る。水源102からの水の導電率は、水源102と電気化学セル106との間の適切な位置に位置する適切な導電率メーターまたは導電率センサー115によって測定され得る。電気化学セル106内の水源102からの水に添加される導電率調整剤は、任意の適切な塩であり得る。例えば、Na
2SO
4などの硫酸塩は、電気化学セル106内の水源102からの水に添加され得る。他の適切な導電率調整剤は、当技術分野で既知である。
【0049】
図3を引き続き参照すると、およびいくつかの実施形態では、システム100は、必要に応じて、電気化学セル106の下流に位置する処理容器118を含み得る。処理容器118は、貯蔵および/または排出前の追加の処理プロセスを適用するために、電気化学セル106で処理された水を受け取るように構成され得る。例えば、処理容器118は、処理水の1つ以上のパラメーターを監視するために、少なくとも1つのセンサーに流体接続可能であり得る。少なくとも1つのセンサーは、電気化学的に処理された水の測定されたパラメーターの信号または表現を提供し得る。少なくとも1つのセンサーは、例えば、導電率メーター、pHセンサー、TOCセンサー、化学物質固有のセンサー、または任意の他のセンサー、プローブ、または電気化学セルを使用して処理した後の処理容器118に流入する水の所望の特性またはパラメーターの表示を提供するのに有用な科学機器を含み得る。例えば、
図3を引き続き参照すると、システム100は、排出または他の処理ステップの前に、電気化学的に処理された水のpHを所望のpHレベルに調整するように構成された第2のpHセンサー117および第2のpH調整ユニット116を含み得る。
【0050】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載の任意の方法を実施し任意のシステムを操作するように構成され得るコントローラーが準備される。コントローラーは、少なくとも第1の汚染物質濃度センサーから1つ以上の入力信号を受信するように操作可能に連結され得る。コントローラーに送信される1つ以上の入力信号は、コントローラーを、1つ以上の入力信号に基づいて、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度、および例えば電極に印加される電位など電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成することを可能にする。コントローラーは、システムのセンサーから任意の数の入力信号を受信するように構成され得る。例えば、コントローラーは、少なくとも第1の水流センサー、電気化学セルに連結された電流センサーおよび/または過硫酸塩濃度センサーなどの、電気化学セルの上流に位置するセンサーからの入力信号を受信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、コントローラーは、第1の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラーは、電流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラーは、過硫酸塩濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、水源への少なくとも過硫酸塩の導入速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0051】
コントローラーはさらに、少なくとも第2の汚染物質濃度センサーおよび第2の水流センサーなどの、電気化学セルの下流に位置するセンサーからの入力信号を受信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、コントローラーは、第2の汚染物質濃度センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度、および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラーは、第2の水流センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、少なくとも水源からの水の導入速度、水源への過硫酸塩の導入速度および電気化学セルに印加される電位を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。非限定的な例として、コントローラーは、制御信号を過硫酸塩の供給源に送信して、過硫酸塩遊離基で処理した後の水中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定する第2の汚染物質濃度センサーから受信した信号に少なくとも基づいて過硫酸塩の量を投与するように構成され得る。第2の汚染物質濃度センサーからの測定結果は、少なくとも1つの汚染物質の濃度が依然として許容レベルよりも高いことを示し得、したがって、コントローラーは、必要なシステム構成要素に、水源に添加される過硫酸塩の量を増加させ、電気化学セルに入る水源からの水の流れを減少させ、および/または電気化学セルに印加される電位を調整するように指示する制御信号を生成し得る。本発明は、システムのセンサーからコントローラーによって受信される入力信号の数およびタイプによって決して制限されることなく、また、コントローラーからシステムの出力デバイスに送信される制御信号によっても決して制限されない。
【0052】
本明細書で説明するように、センサーおよび他の任意のシステム構成要素は、コントローラーに直接接続されるか、またはコントローラーに操作可能に連結された通信ネットワークを使用してコントローラーに間接的に接続され得る。例えば、センサーは、コントローラーに直接接続される入力デバイスとして構成され得る。過硫酸塩の供給源用の計量バルブおよび/またはポンプ、pH調整剤および導電率調整剤などのデバイスは、コントローラーに接続される出力デバイスとして構成され得、上記のいずれか1つ以上は、通信ネットワークを介してコントローラーと通信するための別の補助コンピューターシステムまたは構成要素に連結され得る。このような構成により、あるセンサーを別のセンサーから離れた距離に位置することが可能となり、または任意のセンサーをシステム構成要素および/またはコントローラーから離れた距離に位置し、それらの間にデータを提供することが可能となる。
【0053】
電気化学セルの上流に第1のpH調整ユニットが含まれるシステムの実施形態では、コントローラーは、第1のpHセンサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、第1のpH調整ユニットから水源に導入されるpH調整剤の速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。電気化学セルの下流に第2のpH調整ユニットが含まれるシステムの実施形態では、コントローラーは、第2のpHセンサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、第2のpH調整ユニットから処理水に導入されるpH調整剤の速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。電気化学セルの上流に導電率調整ユニットが含まれるシステムの実施形態では、コントローラーは、導電率センサーから少なくとも1つの入力信号を受信して、導電率調整ユニットから水源に導入される導電率調整剤の速度を調節する制御信号を生成するようにさらに操作可能であり得る。
【0054】
コントローラーは、デコーダー機能に命令を提供するようにシステムプロセッサをプログラムするように構成されたデコーダー機能を実行するように構成された命令を格納するメモリーデバイスに連結されたシステムプロセッサを備え得る。コントローラーは、1つ以上のコンピューターシステムを使用して実装され得る。コンピューターシステムは、例えば、Intel CORE(登録商標)タイププロセッサ、Motorola POWERPC(登録商標)プロセッサ、Sun ULTRASPARC(登録商標)プロセッサ、Hewlett-Packard PA-RISC(登録商標)プロセッサまたはその他のタイプのプロセッサまたはそれらの組み合わせに基づく、汎用コンピューターであり得る。あるいは、コンピューターシステムは、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)、専用プログラムされた専用ハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、または分析システムを対象としたコントローラーを含み得る。
【0055】
コントローラーは、通常、1つ以上のメモリーデバイスに接続された1つ以上のプロセッサを含み得、これは、例えば、ディスクドライブメモリー、フラッシュメモリーデバイス、RAMメモリーデバイスまたはデータを格納するための他のデバイスのいずれか1つ以上を備え得る。水処理システムの動作中にプログラムおよびデータを格納するために、1つ以上のメモリーデバイスを使用し得る。例えば、メモリーデバイスは、ある期間にわたって測定されたセンサーデータに関連する履歴データ、ならびに操作データを格納するために使用され得る。本発明の実施形態を実施するプログラミングコードを含むソフトウェアは、コンピューター読み取り可能および/または書き込み可能な不揮発性記録媒体に格納され得、その後、通常、1つ以上のメモリーデバイスにコピーされ、1つ以上のプロセッサによって実行され得る。このようなプログラミングコードは、複数のプログラミング言語のいずれか、例えば、ラダーロジック、Java、Visual Basic、C、C#、またはC++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basic、COBOLまたはさまざまな組み合わせのいずれかで記述され得る。
【0056】
別の態様では、水を処理する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの汚染物質を含む水源から水を準備することと、水源からの水中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を測定することと、少なくとも1つの汚染物質の少なくとも測定濃度を表す信号に基づく濃度で過硫酸塩を水に導入して第1の処理水を生成することと、第1の処理水を電気化学セルの入口に導入することとを含み得る。この方法は、触媒材料を含む電極で電気化学セル内の過硫酸塩から過硫酸塩遊離基を電気化学的に生成して、第2の処理水を生成することをさらに含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、水を処理する方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される信号に少なくとも基づいて、水に導入される過硫酸塩の濃度を調整することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、水を処理する方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される信号に少なくとも基づいて電気化学セルに印加される電位を調整することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、水を処理する方法は、第2の処理水中の少なくとも1つの汚染物質の測定濃度から生成される信号に少なくとも基づいて、水源からの水の導入速度を調整することをさらに含み得る。第1の処理水を形成するために水に添加される過硫酸塩は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムのうちの少なくとも1つを含み得る。水を処理する方法のいくつかの実施形態では、過硫酸塩遊離基は、本明細書に記載されるように、電気化学セルのカソードで生成される。水を処理する方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの汚染物質は、有機汚染物質を含み得る。
【0058】
水を処理する方法は、水源からの水に少なくとも1つのpH調整剤または導電率調整剤の量を導入することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、水を処理する方法は、水源からの水のpHを7未満の値に調整することをさらに含み得る。水を処理する方法は、電気化学セルから電気化学セルの下流に位置する処理容器に第2の処理水を導入することをさらに含み得る。処理容器に導入される水のpHは、pH調整を有し得る。
【0059】
別の態様では、水処理を容易にする方法が提供される。この方法は、本明細書に記載の水処理システムを準備することを含み得、水処理システムは、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含む電極で少なくとも1つの汚染物質を含む水源に導入された過硫酸塩を電気化学的に活性化するように構成された本明細書に記載の電気化学セルを備える。水処理を容易にする方法は、第1の汚染物質濃度センサー、第1の水流センサー、電流センサーおよび過硫酸塩濃度センサーのうちの少なくとも1つを準備することをさらに含み得る。水処理を容易にする方法は、少なくとも測定された水の汚染物質濃度に応答して、少なくとも水源からの水の導入、導入された過硫酸塩の量および電気化学セルに印加される電位を調節するように構成されたコントローラーを準備することをさらに含み得る。水処理を容易にする方法は、水処理システムをコントローラーに接続するようにおよび/または電気化学セルを水処理システムに流体接続するようにユーザーに指示することをさらに含み得る。
【0060】
水処理を容易にする方法のいくつかの実施形態では、この方法は、過硫酸塩を準備することをさらに含み得る。水処理を容易にする方法のいくつかの実施形態では、準備されるコントローラーは、測定された水の流量、測定された過硫酸塩濃度および電気化学セルの測定された電流のうちの少なくとも1つに応答して、水源からの水の導入、導入される過硫酸塩の量および電気化学セルの印加される電位のうちの少なくとも1つを調節するようにさらに構成され得る。
【0061】
別の態様では、少なくとも1つの汚染物質を含む水源と流体連通する促進酸化プロセス(AOP)を備える水処理システムを改装する方法が提供される。この方法は、過硫酸塩遊離基の電気化学的生成のための触媒材料を含むカソードを含む電気化学セルを準備することを含み得る。この方法は、電気化学セルを水源に流体接続することをさらに含み得る。この方法は、水源に導入された過硫酸塩を活性化して処理水を生成するように電気化学セルを操作するための指示を準備することをさらに含み得る。
【0062】
改装方法のいくつかの実施形態では、この方法は、水処理システムからの紫外線(UV)AOPを置き換えることをさらに含み得る。改装方法のいくつかの実施形態では、電気化学セルは、鉄、銅、ニッケル、コバルトおよび金属合金からなる群から選択される金属を含むカソードを設け得る。改装方法のいくつかの実施形態では、電気化学セルは、白金、マグネリ相酸化チタン、MMOコーティングDSA材料、グラファイト、BDDまたは鉛/鉛酸化物からなる群から選択される材料を含むアノードを設け得る。
【0063】
改装方法のいくつかの実施形態では、この方法は、過硫酸塩を準備することをさらに含み得る。改装方法のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも水源からの水の導入速度、過硫酸塩が水源に導入される速度および電気化学セルに印加される電位を調節するように構成され得る、本明細書に記載のコントローラーを準備することをさらに含み得る。
【実施例】
【0064】
これらの実施形態および他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からよりよく理解することができる。これらの例は、本質的に例示を意図し、本発明の範囲を制限するものとは決して見なされない。
【0065】
本明細書に記載の実施例に使用するカソードは、ステンレス鋼304(SS304)、ニッケル金属メッシュ、コバルト金属箔、および銅金属メッシュを含む。SS304を、マクマスターカーサプライカンパニー(製品番号85385T88)から購入した。実験の前に、SS304メッシュを折りたたんで所望の形状にプレスし、セル容器に収め、超音波処理装置で脱イオン(DI)水を使用して5分間洗浄した。ニッケルメッシュ(カタログ番号AA397040S)およびコバルト箔(カタログ番号AA42659FI)を、サーモフィッシャーサイエンティフィックから購入した。銅メッシュを、マクマスターカー(製品番号9224T49)から購入した。実験前に、ニッケル、コバルト、銅のカソードにも同様の洗浄手順を採用した。エヴォクアウォーターテクノロジーズ製の2つの白金コーティングチタン電極を、すべての実験を通してアノードとして使用した。各アノードの活性領域の幾何学的サイズは6cm2である。
【0066】
1,2,4-トリアゾール、t-ブタノール(TBA)、硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウムおよびパーフルオロオクタン酸(PFOA)を含む、実施例で使用したすべての試薬は、アルファエイサーから購入した分析グレードの化学物質であり、さらなる精製をせずに使用した。フミン酸を、シグマアルドリッチから購入した(カタログ番号:H16752)。
【0067】
TOC(全有機炭素)測定を、白金触媒酸素燃焼管を備えた島津TOC LCPH/CPNアナライザーを使用して実施した。炉の温度を720°Cに設定し、NPOC(非パージ性有機炭素)法を使用して、水中の有機物の濃度をTOC値として報告した。パージ時間は90秒であった。UV-Vis吸収スペクトルを、Hach6000分光計を使用して1nm/sの波長走査速度で収集した。化学的酸素要求量(COD)値を、Hach TNT821メーターを使用して測定した。PFOAの測定を、PRONTOSIL HPLCカラム(Bischoff Chromatography、レオンベルク、ドイツ)を備えた機器でイオンクロマトグラフィー(IC)を使用して実施した。移動相として、10mMホウ酸と10%アセトニトリル(pH8に調整)との溶液を使用した。
【0068】
水から有機分子を除去するための過硫酸塩の直接電気化学的活性化の有効性を説明するために、次の例では、水中で自然に発生する汚染と人為的な汚染との両方をシミュレートするために、さまざまな有機分子を脱イオン水に追加した実験について説明する。
【実施例1】
【0069】
この例において、本明細書に記載の電気化学セルを使用して、医薬品の構成要素として通常使用される人工有機分子である1,2,4-トリアゾールを水から除去することを示す。10ppmの1,2,4-トリアゾールの溶液を、2電極構成の電気化学セルに分注した。電気化学セルには、カソードとしてSS304メッシュを使用し、アノードとして白金コーティングチタンを使用した。使用したSS304メッシュカソードの表面積は、約0.5m2であった。電気化学セルに挿入するために、SS304メッシュを折りたたんで、約5cm×6cm×3cmのサイズのブロックにプレスした。実験の前に、DI水中の10ppmの1,2,4-トリアゾール250mLを新たに調製し、溶液の導電率を向上させるために5mMのNa2SO4を添加した。実験をバッチモードで実施した。電気化学セル内の水の流れを改善するために、マグネティックスターラーを使用した。実験を開始するために、2000ppmのNa2S2O8の溶液を水に加え、40mAのDC電流を電気化学セルに流した。TOCデータ、つまり全1,2,4-トリアゾール濃度データを、電気化学セルに電力を供給した後、1時間ごとに収集した。
【0070】
この実験の結果を
図4に示す。ここに見られるように、1,2,4-トリアゾールは、電気化学セル内で生成された過硫酸塩ラジカルによって連続的に除去された。6時間の実行時間の後、測定されたTOCは初期の1,2,4-トリアゾール濃度(C
0)の6.25%に減少した。これらの結果は、電気化学セルを使用した過硫酸塩ラジカルの生成が、酸化プロセス中に1,2,4-トリアゾールおよびその中間体を除去するための効果的なシステムであり得ることを示唆する。
【0071】
Na
2S
2O
8酸化剤の化学酸化または白金アノードの電気化学酸化による電気化学セルの性能への影響がないことを確認するために、同じ電気化学セル構成を使用して対照実験をも実施した。
図4に、対照実験の結果をも示す。これらは、Na
2S
2O
8もDC電位も単独では水から1,2,4-トリアゾールを除去するのに効果的ではなかったことを示す。
【実施例2】
【0072】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用して、市販の燃料およびコーティングに通常見られるt-ブタノール(TBA)を水から除去することを示す。10ppmの濃度のTBAの溶液を、同じ電気化学セルのセットアップ(ステンレス鋼(SS304カソード))を使用して処理し、例1において説明したものと同じデータ収集手順に従った。
【0073】
この実験の結果を
図5に示す。実施例1に記載した1,2,4-トリアゾールの除去のための実験と同様に、t-ブタノールは、電気化学セルで生成された過硫酸塩ラジカルによって連続的に除去された。6時間の実行時間の後、初期t-ブタノール濃度の93%および形成された中間体が水から除去された。実施例1と同じ方法で実施した対照実験は、Na
2S
2O
8またはDC電位単独では水からt-ブタノールを除去するのに効果がないことを示した。t-ブタノールの濃度は、t-ブタノールと水との混合物を攪拌することによって、混合物に過硫酸塩を添加せずにまたはセルにDC電位を印加せずに、減少することが見出されたことに留意されたい。これは、t-ブタノールの蒸気圧が高いと、電気化学的処理の前に混合物からの放出が増加し得ることを示唆する。
【実施例3】
【0074】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用した水からのフミン酸の除去を示す。12ppmのフミン酸の溶液を、同じ電気化学セルのセットアップ(ステンレス鋼(SS304カソード))を使用して処理し、例1および2で説明したのと同じデータ収集手順に従った。
【0075】
この実験の結果を
図6に示す。実行時間の6時間後、初期フミン酸濃度の約70%および形成された中間体が水から除去された。それぞれ実施例1および2に記載されている1,2,4-トリアゾールおよびt-ブタノールと比較して、電気化学的処理を使用したフミン酸除去のより低い効率は、複雑な酸化反応を有するフミン酸の大きな分子に起因し、したがって、反応速度を阻害する。
【実施例4】
【0076】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用した水からのペルフルオロオクタン酸(PFOA)の除去を説明する。PFOAおよび類似のPFAS分子は、その極端な疎水性ならびにごくわずかな自然分解速度が環境の持続性および生体内蓄積をもたらし、環境での寿命が長いため、近年注目されている。
【0077】
この例では、12ppmPFOAの溶液を、実施例1~3で説明したのと同じ電気化学セルセットアップ(ステンレス鋼(SS304カソード))を使用して、以下で説明する変更したデータ収集手順で処理した。実験では、10ppmのPFOAを有するDI水を250mL新たに調製し、溶液の導電率を向上させるために2mMのNaClO4を添加した。実験をバッチモードで実施した。電気化学セル内の水の流れを向上させるために、マグネティックスターラーバーを使用した。実験を開始するために、4000ppmおよび6000ppmのNa2S2O8の別々の溶液を、PFOAで汚染された水の別々のサンプルに添加し、20mAのDC電流を各電気化学セルに適用した。両方の実験のすべてのNa2S2O8が完全に活性化され、SO4
2-に変換されたとき、20時間の処理後に実験を停止した。
【0078】
この実験の結果を
図7に示す。過硫酸塩単独では、酸化電位が不十分であり、白金アノードでのPFOAの電気酸化が反応速度論的に制限されるため、PFOAとは反応しない。対照的に、6000ppmの過硫酸塩で電気化学セルを使用して処理したPFOAの初期濃度は、20時間の電気化学セルの実行時間後に55.5%減少した。より高い過硫酸塩投与量または多段階電気化学的処理が利用されるとき、より高い除去率がさらに期待され得る。
【実施例5】
【0079】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用した水からのフミン酸の除去を示す。実験を、ニッケルメッシュまたはコバルト箔(5cm×5cm)で作られたカソードと、6cm2の活性領域を有する白金コーティング寸法安定性電極で作られたアノードを使用して、ラボビーカー電気化学セルで行った。カソードに使用するニッケルメッシュは、約800cm2の活性領域を有し、ビーカーの電気化学セルに合うように折りたたまれてプレスされた。2000ppmのNa2S2O8を添加した後、20mAのカソード電流をカソードに流した。
【0080】
これらの実験の結果を
図8に示す。実験の過程で、フミン酸およびその中間体の濃度は、ニッケルとコバルトとの両方のカソードを使用して連続的に減少した。例えば、
図8に示されるように、電気化学的処理の4時間後、初期フミン酸濃度は、ニッケルおよびコバルトカソードでそれぞれ58.74%と90%とに減少した。実施例3に記載された実験と同様に、白金コーティングチタンアノード上での直接酸化の影響のためのまたは不活性化された過硫酸ナトリウムによる濃度低下の効果は無視できるものであった。これは、この実験でのすべてのフミン酸の除去は、ニッケルまたはコバルト電極上での過硫酸塩の電気触媒活性化に起因することを示した。
【実施例6】
【0081】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用した水からのフミン酸の除去を図示する。実験を、銅メッシュで作られたカソードと、6cm2の活性領域を有する白金コーティング寸法安定性電極で作られたアノードを使用して、ラボビーカー電気化学セルで実施した。銅メッシュは、約200cm2の表面積を有し、ビーカーセルに収まるように折りたたんでプレスされた。
【0082】
実験では、実験前に12ppmのフミン酸を有するDI水80mLを新たに調製した。次に、5mMのNa2SO4および1mMのH2SO4の溶液をフミン酸溶液に添加して、導電率を高め、pHを調整した。300ppmおよび600ppmのNa2S2O8の別々のアリコートを各フミン酸溶液に投与した。次に、電気化学セルを外部DC電源に接続し、固定電流(60mAおよび20mA)を1時間流した。処理後、各セルのサンプルを、Hach TNT 821メーター(検出範囲2~150ppm)を使用して分析し、実験を通じて化学的酸素要求量(COD)を追跡した。
【0083】
これらの実験の結果を
図9に示す。
図9はまた、IrO
2コーティングTiから製造されたカソードを使用した対照実験の結果を示す。
図9の凡例は次のとおりである。
S1-電気化学的処理前のサンプル(12ppmのフミン酸、0ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4)
S2-電気化学的処理前のサンプル(12ppmのフミン酸、300ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4)
S3-電気化学的処理前のサンプル(12ppmのフミン酸、600ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4)
S4-電気化学的処理後のサンプル(12ppmのフミン酸、600ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4、銅メッシュカソード、60mAの通電電流)
S5-電気化学的処理後のサンプル(12ppmのフミン酸、600ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4、銅メッシュカソード、20mAの通電電流)
S6-電気化学的処理後のサンプル(12ppmのフミン酸、600ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4、IrO
2コーティングTiカソード、60mAの通電電流)
S7-溶液に浸漬した銅メッシュカソードを用いたNa
2S
2O
8中での直接酸化によって処理されたサンプル(12ppmのフミン酸、600ppmのNa
2S
2O
8、1mMのH
2SO
4、通電電流なし)
【0084】
図9に示されるように、銅カソードを使用する電気化学的に活性化された過硫酸塩処理は、COD減少に対して最高効率を示し、したがって、サンプル中のフミン酸濃度の最大の減少を示した。電極に流れる電流が60mAであるか20mAであるかに関わらず、処理後のCODは、約2ppm(Hatch TNT 821メートルの検出下限)に減少した。比較すると、IrO
2コーティングTiカソードを使用する電気化学セルは、20.4ppmの測定値を有する処理後の残留CODによって証明されるように、過硫酸塩の活性化を効果的に触媒しなかった。過硫酸塩単独によるCOD減少も発生することがわかった。これは、電流が印加されていない条件下でも過硫酸塩を直接酸化し得る銅メッシュカソードによって提供される追加の不均一触媒表面積に起因していた。過硫酸ナトリウムの干渉から生じると考えられる、CODの減少に対する過硫酸ナトリウム濃度依存性があることも観察された。
【0085】
図10に図示されるように、銅カソードを備えた電気化学セルを使用したフミン酸の分解を、UV-Vis吸収分光法によってさらにサポートした。電気化学的に活性化された過硫酸塩で処理した後、フミン酸の吸収が発生する300nm~500nmのUV-Vis吸収スペクトルは、処理後に減少した。
【実施例7】
【0086】
この例は、本明細書に記載の電気化学セルを使用した溶液からの複数の汚染物質の除去を示す。この例では、12ppmのフミン酸と2ppmの芳香染料メチレンブルー(MB)を含有する溶液を、実施例6で説明した電気化学セルで処理し、同じデータ収集手順を使用した。
【0087】
実験では、10mAのDC電流を電気化学セルに流した。処理後のCODの約0.015ppmへの削減は、Hatch TNT 821メートルの検出限界(2ppmのLOD)よりも大幅に低く、サンプル水から両方の化合物が効率的に除去されたことを示す。両方の化合物の効率的な除去を、処理前後のUV-Vis吸収スペクトルの測定によってさらにサポートした。
図11に示すように、フミン酸の吸収が起こる300nmから500nmの間とMBの場合671nmとの両方の特徴的なUV-Vis吸収ピークは、電気化学的処理後に減少した。
【実施例8】
【0088】
この例は、市販のUVベースの過硫酸塩活性化システム(エヴォクアウォーターテクノロジーズ、ペンシルバニア州ピッツバーグから入手可能なVANOX(登録商標)システム)と本明細書に記載の電気化学セルとの間の工業用水中の有機物の除去効率の比較を示す。UVベースの過硫酸塩活性化システムは、1kWの低圧UVランプを備えた。この例に使用した電気化学セルは、実施例1に記載の電気化学セル、すなわち、カソードとしてSS304メッシュを有し、アノードとして白金コーティングチタンを有する電気化学セルであった。この例で使用した工業用水は、半導体製造操作から取られ、初期TOC濃度は60ppmであった。UVベースの過硫酸塩活性化システムで処理するために、3.5Lの工業用水に8000ppmのNa2S2O8の溶液を投与した。電気化学セルで処理するために、250mLの工業用水に8000ppmのNa2S2O8の溶液を投与した。
【0089】
【0090】
この実験の結果を
図12に示す。ここに見られるように、過硫酸塩のUV活性化と電気化学的活性化との両方は、UVベースの過硫酸塩活性化システムについては最大4時間、電気化学セルについては18時間のプロセス実行時間後、工業用水のTOCをほぼ同じ濃度に減少させた。表1は、工業用水を処理するための各プロセスのエネルギー消費量をそれぞれの実行時間にわたって1m
3の体積にスケールアップしたものと、太字で示した各プロセス中に計算された累積エネルギーとの比較を提供する。表1に示すように、電気化学セルを使用した処理では、UVベースの過硫酸塩活性化システムを操作してほぼ同じ最終TOC濃度の処理水を生成するために必要なエネルギーの約1%を消費するであろう。UVベースの過硫酸塩活性化システムのエネルギー効率の低下は、工業用水中の低いUV透過率に起因し得、UV透過率は、
図13に示されるこの固有の水の波長の関数としてのものである。
【0091】
本明細書で使用されている表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定的なものと見なされるべきではない。本明細書中で使用される、「複数」という用語は、二つ以上の物品または構成要素を指す。「含む」、「含む」、「実行する」、「有する」、「含有する」、「伴う」という用語は、明細書または特許請求の範囲等のいずれにおいても、オープンエンドの用語であり、すなわち、「~を含むが、それに限定されない」を意味する。したがって、このような用語の使用は、その後に列挙された項目およびその均等物、同様に追加の項目を包含することを意味する。移行句「からなる」および「実質的に~からなる」のみが、請求項に関してそれぞれ限定的なまたは半限定的な移行句である。請求項における請求項要素を修飾するための「第1」、「第2」、「第3」等のような序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の他のものに対する任意の優先権、優先順位もしくは順序、または方法の行為が行われる時間的順序を意味するものではなく、請求項要素を区別するために、ある名前を有する一つの請求項要素を同じ名前を有する別の要素(ただし、序数用語を使用する場合)から区別するためのラベルとしてのみ使用される。
【0092】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明したことにより、様々な変更、修正、および改善が容易に生じることを当業者に理解されたい。任意の実施形態で説明される任意の特徴は、任意の他の実施形態の任意の特徴に含まれ得るかまたはそれらの代わりになり得る。そのような変更、修正、および改善は、本開示の一部であることを意図しており、本発明の範囲内にあることを意図している。したがって、前述の説明および図面は、単なる例にすぎない。
【0093】
当業者は、本明細書に記載されるパラメーターおよび構成は例示的であり、実際のパラメーターおよび/または構成は、本開示の方法および材料が使用される特定の用途に依存することを理解されたい。当業者はまた、本発明の特定の実施形態に対する等価物を、ルーチンの実験のみを用いて認識または確認可能であるはずである。
【国際調査報告】