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特表2022-536502癌を治療するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】癌を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220809BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4985
A61P35/00
A61K39/395 N
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573519
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2020037039
(87)【国際公開番号】W WO2020252054
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/859,933
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/882,147
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レラリオ,アントニオ エム.
(72)【発明者】
【氏名】モハン,ディピカ
(72)【発明者】
【氏名】ハンマー,ゲーリー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示は、癌を治療するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は、遺伝子発現およびメチル化プロフィールを利用して、副腎皮質癌を層別化し、治療するための組成物、システム、および方法、ならびにこれらの手段によって層別化された患者に有用性を有する薬物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
副腎皮質癌(ACC)を治療するための方法であって、
COC1 ACCを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記薬剤がIGF1R阻害剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者が、G0S2メチル化レベルを測定し、BUB1BおよびPINK1の発現レベルを決定することによって、COC1 ACCを有すると確認されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
BUB1BおよびPINK1の発現レベルが、BUB1B-PINK1発現スコアを計算するために使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
閾値レベルカットオフを超えるBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルがCOC1 ACCを示すことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
G0S2メチル化の閾値レベルが、メチル化感受性制限消化および増幅を用いて決定されるとき、4.696であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
G0S2メチル化の閾値レベルが、ロジット変換されたメチル化β値上のユークリッド距離を使用する教師なしの完全階層クラスタリングを使用して決定されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
BUB1B-PINK1発現スコアの閾値レベルが、転移性疾患の病歴を有する非CIMP高値患者の44パーセンタイルであることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記閾値レベルが1.5であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値レベルが1.6であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が、抗体、核酸、および小分子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
IGF1R阻害剤が、リンシチニブ、シクスツムマブ、ガニツマブ、フィギツムマブ、ダロツズマブ、イスチラツマブ、ドゥシギツマブ、またはテプロツムマブからなる群より選択されることを特徴とする、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
IGF1R阻害剤がリンシチニブであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生物学的サンプルが、組織サンプル、生検サンプル、血液サンプル、および尿サンプルからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
G0S2メチル化およびBUB1Bおよび/またはPINK1発現レベルを測定することが、
BUB1B、PINK1、およびG0S2のうちの少なくとも1つにハイブリダイズする核酸プローブ、
BUB1B、PINK1、およびG0S2のうちの少なくとも1つの増幅または伸長のための1つ以上の核酸プライマー、
1つ以上のメチル化特異的制限酵素、および、
メチル化されたG0S2核酸に特異的に結合する1つ以上の核酸プライマーからなる群より選択される1つ以上の試薬の使用を含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者からサンプルを取得し、または取得しておき、サンプル中のG0S2メチル化レベルおよびBUB1B-PINK1発現スコアを測定することによって、被験者を、COC1 ACCを有すると確認することと、
b) 前記被験者が、COC1 ACCの存在を示すG0S2メチル化レベルおよびBUB1B-PINK1発現スコアを有する場合、前記被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項17】
被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者由来のサンプルにおけるG0S2メチル化レベルならびにBUB1BおよびPINK1の発現レベルを決定することと、
b) サンプル中の閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者を、COC1 ACCを有すると確認することと、
c) COC1 ACCを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することと
含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
COC1 ACCを有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤の使用。
【請求項19】
COC1 ACCを有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤。
【請求項20】
ACCを治療するための方法であって、
被験者から単離されたサンプルにおいて閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項21】
被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者からサンプルを取得し、または取得しておき、サンプル中のG0S2メチル化のレベルおよびBUB1B-PINK1発現スコアのレベルを測定することによって、被験者を、閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認することと、
b) 前記被験者が閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する場合、前記被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項22】
被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者由来のサンプルにおけるG0S2メチル化レベルならびにBUB1BおよびPINK1の発現レベルを決定することと、
b) 閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者を確認することと、
c) 閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項23】
閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤の使用。
【請求項24】
閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は2019年6月11日に出願された米国仮出願第62/859,933号、および20191年8月2日に出願された米国仮出願第62/882,147号の優先権および利益を主張し、その含有量は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔開示の属する技術分野〕
本開示は、癌を治療するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は遺伝子発現およびメチル化プロフィールを利用して、副腎皮質癌を層別化し、治療するための組成物、システム、および方法、ならびにこれらの手段によって層別化された患者に有用性を有する薬物に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
副腎皮質癌(ACC)はまれな悪性腫瘍であり、全体的に予後不良である。ACCの治療選択肢は限られており、手術が長期寛解と治癒をもたらしうる唯一の治療法である。手術にもかかわらず、早期疾患の患者の多くは術後に転移を来すため、全身治療を必要とする。このため、切除断端無しの外科的切除後、アドレナリン分解化合物ミトタンによる補助療法は現在、ほとんどのACC患者に対する標準治療の一部となっている;しかし、現在の薬物治療の選択肢は非常に限られており、さらなる選択肢のための大きな未対処の医療の必要性を残している。最近の研究では、ミトタンは毒性が高い一方でわずかに有効であることが確認されている。ミトタンの治療上の血清中濃度は典型的には達成するのに数カ月間の薬物投与を要し、90%までの患者が、手術後のミトタンによる補助療法中に必然的に再発するか、切除不能例に対するミトタン療法中に進行する(この用量漸増期間中またはその後のいずれか)。さらに、切除不能病変に対する細胞毒性化学療法の効力も同様に限られており、副作用も重大である。その結果、患者のための現在の選択肢よりも安全、より効果的、またはその両方である新しい治療法に対する臨界未対処の医療の必要性が存在する。
【0004】
患者の層別化に対する現在のアプローチは、細胞増殖の組織学的評価に依存している。ゴールドスタンダードのKI67指数または有糸分裂数にはいくつかの限界があり、特定の治療に反応する可能性のある患者を確実に確認することはできない。特定の治療に反応する可能性のある患者を確認するための改善された方法が必要である。
【0005】
〔発明の概要〕
本開示は、癌を治療するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は、遺伝子発現およびメチル化プロフィールを利用して、副腎皮質癌を層別化および治療するための組成物、システム、および方法、ならびにこれらの手段によって層別化された患者に有用性を有する薬物に関する。
【0006】
本発明の実施形態の開発中に、IGF1R阻害剤(例えばリンシチニブ)による治療に従う患者集団を確認するための組成物および方法が開発された。特に、Mohan & Lerario ら Clinical Cancer Research 2019では、転移病変を有する患者の54人%の原発腫瘍においてG0S2メチル化が優勢であることが観察された。BUB1B-PINK1が高いと、転移巣を有する患者でも疾患の経過が遅くなることが予測される(表4)。G0S2メチル化とともに、BUB1B-PINK1発現スコアは、特に、「低」BUB1B-PINK1を有する患者を除外するために、IGF1R阻害剤による治療に通常反応しないと予測される患者の非明白かつ以前は確認できなかった亜集団を確認することを目標として、追加的に使用される。この特異的な集団を明確にし、以前に実施されたリンシチニブの臨床試験のプラセボ/治療群の生存曲線に25%生存率で分割が認められたことから(図9および実施例2)、この異常な反応を示す亜集団の患者をさらに定義するために、転移疾患の病歴を有する非CIMP高値の患者の44パーセンタイルにおけるBUB1B-PINK1のカットオフ値が用いられる。この結果、非CIMP高値の転移性病変を有する患者の56人%が組み入れられ、これらの集合的工程の適用後、転移性疾患を有する全患者の(0.56)(1-0.54)=25.8%を有する部分集団が得られ、図9で確認された25%生存率における患者集団を反映している。このカットオフの有益な特徴は、IGF2のアップレギュレーションをもたらす再発性改変を有し、ACC-TCGAからの他の再発性体細胞改変を有する可能性が低い染色体腫瘍を有する患者の確認を最適化することであり(COC1;図1、2、3)、ここに記載する標的療法の使用に対する生物学的動機付けを一致させることである。
【0007】
したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、ACCの治療を特定のサブタイプのACCにカスタマイズし、反応する可能性があると確認された患者のみにそのような治療を提供することによってIGF1R阻害剤治療の効力を改善することによって、改善された患者のケアを提供する。
【0008】
例えば、いくつかの実施形態では、副腎皮質癌(ACC)を治療するための方法であって、クラスター1(COC1)ACCを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばリンシチニブなどのIGF1R阻害剤)を投与することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、被験者は、G0S2メチル化レベルおよびBUB1BおよびPINK1の発現レベルを測定することによって、COC1 ACCを有すると確認される。例えば、いくつかの実施形態では、閾値レベル未満のG0S2メチル化レベル(例えばメチル化感受性制限消化/増幅によって決定されるとき、例えば4.696%未満のメチル化)およびBUB1B-PINK1の閾値レベルカットオフを超えるBUB1B-PINK1発現スコアがCOC1 ACCを示す。いくつかの実施形態では、G0S2メチル化の閾値レベルは、ロジット変換されたメチル化β値に対するユークリッド距離を使用する教師なしの完全階層クラスタリングを使用して決定される。いくつかの実施形態では、リンシチニブは単剤療法として投与される。
【0009】
本開示は、BUB1B-PINK1発現スコアについての特定の閾値レベルに限定されない。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、閾値レベル(例えばメチル化感受性制限によって決定されるとき、例えば4.696%未満のメチル化)未満のG0S2メチル化レベルを有する転移性疾患の病歴を有するACCサンプルの44パーセンタイル(例えば±1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10パーセンタイル)である。いくつかの具体的な実施形態では、BUB1B-PINK1発現の閾値は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を用いて評価されたサンプル中のBUB1BおよびPINK1のコピー閾値を差し引くことによって決定されるとき、例えば1.4、1.5、1.6、1.7、またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、閾値レベルを超えるG0S2メチル化レベルを有する被験者は、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)による治療から除外される。いくつかの実施形態において、閾値レベル未満のG0S2メチル化および閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験体は、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)による治療から除外される。
【0010】
さらなる実施形態は、被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者からサンプルを取得し、または取得しておき、サンプル中のG0S2メチル化レベルおよびBUB1bおよびPINK1の発現レベルを測定することによって、被験者を、COC1 ACCを有すると確認することと、
b) 前記被験者が、COC1 ACCの存在を示すG0S2メチル化レベルおよびBUB1B-PINK1発現スコアを有する場合、前記被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばリンシチニブなどのIGF1R阻害剤)を投与することと
を含む、方法を提供する。
【0011】
他の実施形態は、被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者由来のサンプルにおけるG0S2メチル化レベルおよびBUB1BおよびPINK1の発現レベルを決定することと、
b) サンプル中の閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者を、COC1 ACCを有すると確認することと、
c) COC1 ACCを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)を投与することと
を含む、方法を提供する。
【0012】
COC1 ACCを有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)の使用、または、COC1 ACCを有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)もまた、本明細書中に提供される。
【0013】
特定の実施形態は、ACCを治療するための方法であって、
被験者から単離されたサンプルにおいて閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者からサンプルを取得し、または取得しておき、サンプル中のG0S2メチル化のレベルおよびBUB1B-PINK1発現スコアのレベルを測定することによって、被験者を、閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認することと、
b) 前記被験者が閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する場合、前記被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)を投与すること
を含む方法を提供する。
【0015】
さらに他の実施形態は、被験者におけるACCを治療するための方法であって、
a) 被験者由来のサンプルにおけるG0S2メチル化レベルおよびBUB1BおよびPINK1の発現レベルを決定することと、
b) サンプル中の閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者を確認することと、
c) 閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)を投与することと
を含む方法を提供する。
【0016】
さらなる実施形態では、閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)の使用、または、閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)が提供される。
【0017】
また、副腎皮質癌(ACC)を治療するための方法であって、
a) ACCと診断された被験者由来のサンプルを、BUB1b、PINK1の発現レベル、ならびにG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態のうちの少なくとも1つを決定するための試薬と接触させることと、
b) BUB1B-PINK1発現スコアおよびG0S2発現またはメチル化のレベルに基づいて、ACCを分子サブグループ1(COC1)、クラスター2(COC2)、またはクラスター3(COC3)として特徴付けることと、
c) 分子に対してカスタマイズされた少なくとも1つの処置を被験者に投与すること、例えば、
細胞周期エフェクタータンパク質の阻害剤、DNA修復タンパク質の阻害剤、Wnt阻害剤、NR5A1阻害剤またはエピジェネティクライターの阻害剤のうちの1つ以上を、COC3癌を有すると確認された被験者に投与する、
Wnt阻害剤またはNR5A1阻害剤のうちの1つ以上を、COC2癌を有すると確認された被験者に投与する、または、
IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)のうちの1つ以上を、COC1癌を有すると確認された被験者に投与することと
を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、該方法はさらに、
COC2またはCOC3癌を有すると確認された被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)および/または、免疫チェックポイント阻害剤(NR5A1阻害剤、グルココルチコイド合成/代謝阻害剤またはグルココルチコイド受容体阻害剤との組合せ)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、COC1を有すると確認された被験者に、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、特徴付けは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含む。本開示は、ACCを特徴付けるための特定のカットオフ値または閾値に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルは、COC1を示す。いくつかの実施形態では、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化レベルは、COC2を示す。いくつかの実施形態では、4.696%を超える(例えば4.696%、4.7%、4.8%、4.9%、または5.0%を超える)G0S2メチル化の存在は、COC3を示す。いくつかの実施形態では、BUB1B-PINK1発現スコア閾値レベルは、1.4~1.8(例えば1.4、1.5、1.6、1.7、または1.8)である。いくつかの実施形態において、表1に示されるBUB1B-PINK1発現スコアおよびG0S2メチル化値は、ACCを特徴付けるために利用される。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、組織サンプル、生検サンプル、血液サンプル、または尿サンプルである。いくつかの実施形態では、試薬は、BUB1B、PINK1、およびG0S2のうちの少なくとも1つにハイブリダイズする1つ以上の核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2のうちの少なくとも1つの増幅または伸長のための1つ以上の核酸プライマー、または、メチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つ以上の核酸プライマーである。いくつかの実施形態では、増幅アッセイ(例えばリアルタイムPCR)を使用して、BUB1B、PINK、およびG0S2の発現を測定する。
【0019】
本開示は、特定の標的遺伝子または治療に限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬は、抗体、核酸、または小分子である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞周期エフェクタータンパク質はCDK4/6、PLK1、MELK、またはAURKであり、阻害剤はパルボシクリブである。いくつかの実施形態では、DNA修復タンパク質はWEE1またはPARPであり、阻害剤はオラパリブまたはアダボセルチブである。いくつかの実施形態において、エピジェネティクライターはEZH2および/またはDNMT1であり、阻害剤は3-デアザネプラノシンA、EPZ005687、EPZ-6438(タゼメトスタット)、デシタビン、または5-アザシチジンである。いくつかの実施形態において、IGF1R阻害剤は、リンシチニブ、シクスツムマブ、ガニツマブ、フィギツムマブ、ダロツズマブ、イスチラツマブ、ドゥシギツマブまたはテプロツムマブである。いくつかの実施形態では、Wnt阻害剤は、WNT974またはPRI-724である。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、Ipilimumab、Nivolumab、Pembrolizumab、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabまたはCemiplimabである。いくつかの実施形態では、NR5A1阻害剤は、SID 7969543、45594[4-(ヘプチルオキシ)フェノール]またはオクチルオキシフェニル(OOP)である。
【0020】
さらなる実施形態は、副腎皮質癌(ACC)を特徴付けるための方法であって、
a) ACCと診断された被験体由来の被験者由来のサンプルを、BUB1b、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベル、ならびにG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させることと、
b) 閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化が確認された場合に、ACCを分子サブグループCOC1として特徴付け、
閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアおよび閾値レベル(例えば4.696%)未満のG0S2メチル化が確認された場合に、ACCをCOC2として特徴付け、
閾値レベル(例えば4.696%)を超えるG0S2メチル化の存在が確認された場合に、ACCをCOC3として特徴付けることと、
を含む方法を提供する。
【0021】
さらなる実施形態は、
COC3癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、細胞周期エフェクタータンパク質の阻害剤、DNA修復タンパク質の阻害剤、Wnt阻害剤、NR5A1阻害剤、またはエピジェネティクライター阻害剤から選択される少なくとも1つの処置の使用、
COC2癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、Wnt阻害剤およびNR5A1阻害剤から選択される少なくとも1つの処置の使用、または、
COC1癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)およびチェックポイント阻害剤から選択される少なくとも1つの処置の使用を提供する。
【0022】
さらに他の実施形態は、COC3癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、細胞周期エフェクタータンパク質の阻害剤、DNA修復タンパク質の阻害剤、Wnt阻害剤、Wnt阻害剤、NR5A1阻害剤、またはエピジェネティクライター阻害剤から選択される少なくとも1つの処置、
COC2癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、Wnt阻害剤またはNR5A1阻害剤から選択される少なくとも1つの処置、または、
COC1癌を有すると確認された被験者におけるACCを治療する際に使用するための、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)を提供する。
【0023】
特定の実施形態は、副腎皮質癌(ACC)の処置をスクリーニングするための方法であって、
a) ACCと診断された被験者由来サンプルを、BUB1b、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させることと、
b) BUB1b、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいて、ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として特徴付けることと、
c) 細胞周期エフェクタータンパク質の阻害剤、DNA修復タンパク質の阻害剤、Wnt阻害剤、NR5A1阻害剤、またはエピジェネティクライター阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を、COC3癌を有すると確認された被験者に投与し、
Wnt阻害剤またはNR5A1阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を、COC2癌を有すると確認された被験者に投与し、または、
IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えば、IGF1R阻害剤)および/またはチェックポイント阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を、COC1癌を有すると確認された被験者に投与することと、
d) ACCの1つ以上の徴候または症状に対する処置の効果を評価することと、
を含む方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態は、副腎皮質癌(ACC)の処置を選択するための方法であって、
a) ACCと診断された被験者由来のサンプルを、BUB1b、PINK1、およびG0S2の少なくとも1つの発現レベルおよびG0S2のメチル化状態を決定するための試薬と接触させることと、
b) BUB1b、PINK1、およびG0S2の発現レベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいて、ACCを分子サブグループCOC1、COC2、またはCOC3として特徴付けることと、
c) COC3癌を有すると確認された被験者に対して、細胞周期エフェクタータンパク質の阻害剤、DNA修復タンパク質の阻害剤、Wnt阻害剤、NR5A1阻害剤、またはエピジェネティクライター阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を選択し、
COC2癌を有すると確認された被験者に対して、Wnt阻害剤およびNR5A1阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を選択し、
COC1癌を有すると確認された被験者に対して、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)および免疫チェックポイント阻害剤から選択される少なくとも1つの処置を選択することと、
を含む方法を提供する。
【0025】
追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術の当業者には明らかであろう。
【0026】
〔図面の説明〕
図1は、ACC-TCGAが、単一のプラットフォーム特徴まで純化することができるACCの3つの異なるマルチプラットフォーム分子サブタイプ(COC1-COC3)を確認することを示す。
A. 体細胞コピー数変化プロフィール(SCNA)、CpGアイランドメチル化因子表現型(CIMP)、およびmRNAサブタイプの特定のタイプは、各COCに収束する。
B. ACC-TCGAにおけるCOC割り当てを有する各サンプルについてのSCNA、CIMPおよびmRNA分類を示すヒートマップ。
C. 各COCに対する優性SCNA、CIMP、およびmRNAグループ。
【0027】
図2は、ACC-TCGA由来のCOC群が、異なる体細胞変化プロフィールおよび転写プログラムの活性化と関連することを示す。
A. COC3腫瘍は、構成的細胞周期活性化(「MUT」)をもたらすドライバー体細胞変化の頻度が高く、細胞周期スコアで測定される細胞周期遺伝子の発現が高い。
B. COC2-3腫瘍は、構成的Wnt経路活性化(「MUT」)をもたらすドライバー体細胞変化の頻度が高く、Wntスコアによって測定されるWnt経路標的の発現が高い。
C. 左- COC3腫瘍は、CpGアイランドに向けられた非生理的DNAメチル化を特徴とする異常なエピジェネティクな状況をしばしば担っており、「CIMP高値」、エピジェネティクススコアで測定したエピジェネティク酵素の発現が高い。
中- COC2+3腫瘍は、「ステロイド高値」および「ステロイド高値/増殖性」の転写プログラムが優勢であり、「ステロイドスコア」で測定したステロイド産生酵素の発現が高い。
右- ACC-TCGAでは、バルク中のACCは他の癌と比較してほとんど免疫不良であるが、COC1は「免疫スコア」で測定した免疫浸潤の程度が高いことが確認された。
【0028】
図3は、図1および図2のヒートマップをサンプルごとに示す。
A. ACC-TCGA RNA-seqデータからの遺伝子発現レベルは、行zスコア(ホワイトからブラック)によって色分けされる。
B. このヒートマップはこの場合を除いて、Aと同様の情報を描いているが、ただし、この場合、遺伝子は、対応するエピジェネティクス(「EPIG」)、細胞周期(「CELLCYCLE」)、ステロイド(「Steroid」)、Wnt(「Wnt」)、および免疫(「Immune」)のスコアに折りたたまれ、そしてスコアは実際の値によって色分けされている。
【0029】
図4は、ACC‐TCGAにおいて、BUB1B‐PINK1スコアがCOC1病患者をCOC2およびCOC3腫瘍患者と区別することを示す。
【0030】
図5は、ACC‐TCGAにおいて、非CIMP高値の進行性疾患を有するCOC1患者は非CIMP高値の進行性疾患を有するCOC2患者と統計的に異なったBUB1B‐PINK1を有することを示す。
【0031】
図6。BUB1B‐PINK1の閾値が、非CIMP高値の進行性疾患患者におけるCOC1とCOC2‐3腫瘍の合理的な識別を可能にする。
【0032】
図7。ACC‐TCGAにおけるBUB1B‐PINK1スコアの累積分布関数が、FMUSP+UM集団におけるqPCRによる比較可能なBUB1B‐PINK1カットオフの確認を可能にする。
【0033】
図8。BUB1B-PINK1とCIMPの状態を組み合わせると、進行性疾患患者のCOCが忠実に再現される。
【0034】
図9。Fassnachtら Lancet Oncology 2015の研究に登録された患者の無増悪生存曲線。
【0035】
図10。リンシチニブで治療された反応者および非反応者から得られたエクソーム配列決定データのブレークポイント分析。この図の各点は、「反応者」または「非反応者」の状態によって分類された、患者由来の配列決定された腫瘍において確認された切断点の総数を表す。
【0036】
図11。ノイズが多いACC患者はリンシチニブで進行する。左上は、各患者(行)の各常染色体(列)のB-アレル頻度プロフィールを「反応者」または「非反応者」に分類したものである。左下は、各患者の第1染色体のズームである。右は、ACC-TCGA由来の各SCNAクラスを表す患者サンプル由来の染色体1である。
【0037】
図12。ACC-TCGA由来の致命的なCIMP高値の腫瘍はしばしば、ノイズの多いコピー数/LOHプロフィールを有する。Aは、Mohan & Lerario ら Clinical Cancer Research 2019から改造され、ACC-TCGAおけるCIMP高の状態の腫瘍は日常的に致死的であることを示す。Bは、ACC‐TCGA由来のCIMP高値の腫瘍はノイズが多いコピー数/LOHプロフィールに対して有意に濃縮され、一方、ACC‐TCGA由来の非CIMP高値の腫瘍は染色体コピー数/LOHプロフィールに対して有意に濃縮され、COC3と一致することを示す。
【0038】
〔定義〕
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0039】
本明細書で使用される「感度」という語は、真陽性の数を真陽性と偽陰性の合計で割ることによって計算される、検定(例えば、方法、試験)の性能の統計的尺度として定義される。
【0040】
本明細書で使用される「特異性」という語は、真陰性の数を真陰性と偽陽性の合計で割ることによって計算される、検定(例えば、方法、試験)の性能の統計的尺度として定義される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「有益である」または「有益性」はマーカーまたはマーカーのパネルの質をいい、特に、陽性サンプル中のマーカー(またはマーカーのパネル)を見出す可能性をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「転移」は、身体の1つの器官または部分に由来する癌細胞が身体の別の部分に再配置され、そして複製を続けるプロセスをいうことを意味する。転移した細胞は続いて腫瘍を形成し、さらに転移することがある。このように転移とは、癌が最初に発生した部位から体の他の部位に広がることをいう。本明細書中で使用される場合、用語「転移ACC癌細胞」は、転移したACC癌細胞をいうことを意味する。
【0043】
本明細書で使用される「新生物」という用語は、組織の任意の新規かつ異常な成長を指す。したがって、新生物は、非悪性新生物、前悪性新生物または悪性新生物であり得る。用語「新生物特異的マーカー」は、新生物の存在を示すために使用され得る任意の生物学的物質をいう。生物学的材料の例えば核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂肪酸、細胞成分(例えば、細胞膜およびミトコンドリア)、および細胞全体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「アンプリコン」は、プライマー対を使用して生成される核酸をいう。アンプリコンは典型的には一本鎖DNA(例えば非対称増幅の結果)であるが、RNAまたはdsDNAであってもよい。
【0045】
核酸の文脈における「増幅する」または「増幅」という語は、増幅産物またはアンプリコンが一般に検出可能で典型的には少量のポリヌクレオチド(例えば単一のポリヌクレオチド分子)から出発する、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの一部の多重コピーの生成を指す。ポリヌクレオチドの増幅は、種々の化学的および酵素的プロセスを包含する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR;例えば、米国特許第5,494,810号を参照のこと;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の間の標的または鋳型DNA分子の1つまたは数コピーからの複数DNAコピーの生成が増幅の形態である。増幅のさらなるタイプとしては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない:アレル特異的PCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,639,611号を参照)、アセンブリPCR(例えば、その全体が参照により組み込まれている米国特許第5,965,408号を参照)、ヘリケース依存的増幅(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,662,594号を参照)、ホットスタートPCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,773,258号および第5,338,671号を参照)、インター配列特異的PCR、インバースPCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているTriglia、et al(1988)Nucleic Acids Res., 16:8186を参照)、ライゲーション媒介PCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているGuilfoyle、Ret al、Nucleic Acids Res., 25:1854-1858(1997);米国特許第5,508,169号を参照)、メチル化特異的PCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Herman、et al、(1996)PNAS 93(13) 9821-9826を参照)、ミニプライマーPCR、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているSchouten、et al、(2002) Nucleic Acids Res., 30(12); e57を参照)、多重PCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているChamberlain、et al、(1988) Nucleic Acids Res., 16(23) 1141-1156; Ballabio、et al、(1990)Hayden、BMC Genetics 84(6) 571-573; Hayden, ら、 (2008) BMC Genetics 9:80を参照)、ネステッドPCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているHiguchi、et al、(1988) Nucleic Acids Res., 16(15) 7351-7367を参照)、リアルタイムPCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているHiguchi、et al、(1992)Biotechnology 10:413-417; Higuchi、et al、(1993)Biotechnology 11:1026-1030; を参照)、逆転写PCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているBustin、S.A(2000)J. Molecular Endocrinology 25:169-193を参照)、固相PCR、熱的非対称インターレースPCR、およびタッチダウンPCR(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているDon、et al、Nucleic Acids Research(1991) 19(14) 4008; Roux、K(1994)Biotechniques 16(5) 812-814; Hecker、et al、(1996)Biotechniques 20(3) 478-485を参照)。ポリヌクレオチド増幅はまた、デジタルPCRを使用して達成され得る(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているKalininaら、Nucleic Acids Research.25; 1999-2004、(1997);VogelsteinおよびKinzler、Proc Natl Acad Sci USA;96; 9236-41、(1999);国際特許公開第WO05023091A2号;米国特許出願公開第20070202525号を参照)。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「相補的」または「相補性」は塩基対合規則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して使用される。例えば配列「5’-A-G-T-3’」は、配列「3’-T-C-A-5’」に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対合規則に従って一致する。または、核酸間で「完全である」または「全体的である」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に大きく影響する。これは、増幅反応、ならびに核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「プライマー」という語は、精製された制限消化物中のように天然に存在するか、または合成的に生成されるかにかかわらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(例えば、ヌクレオチドおよび生体触媒などの誘導剤(例えばDNAポリメラーゼなど)の存在下および適切な温度およびpHで置かれた場合)に、合成の開始点として作用し得るオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは増幅における最大効率のために典型的には一本鎖であるが、代わりに二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは一般に、伸長産物を調製するために使用される前に、最初にその鎖を分離するために処理される。いくつかの実施形態では、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を開始するのに十分な長さである。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、および方法の使用を含む多くの因子に依存する。特定の実施形態では、プライマーは捕捉プライマーである。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない、任意の核酸含有分子をいう。この用語は、限定されるわけではないが、4アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシル-メチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイド-ウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノ-メチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを含むDNAおよびRNAの既知の塩基アナログの任意のものを包含する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸塩基」は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当該分野で使用される他の用語と同義である。
【0050】
「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2つの核酸単量体単位(例えばヌクレオチド)、典型的には3つより多い単量体単位、より典型的には10より多い単量体単位を含む核酸を指す。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは一般に、オリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用を含む様々な因子に依存する。さらに説明すると、オリゴヌクレオチドは典型的には200残基未満の長さ(例えば15~100)であるが、本明細書で使用される場合、この語はまた、より長いポリヌクレオチド鎖を包含することが意図される。オリゴヌクレオチドはしばしば、その長さによって言及される。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドを「24-mer」と呼ぶ。典型的には、ヌクレオシドモノマーは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニリデート、ホスホラミデートなどを含むホスホジエステル結合またはそのアナログによって連結され、例えばH、NH 、Naなどの関連する対イオンを(そのような対イオンが存在する場合には)含んでいる。さらに、オリゴヌクレオチドは典型的には一本鎖である。オリゴヌクレオチドは任意に、既存のまたは天然の配列の単離、DNA複製または増幅、逆転写、適切な配列のクローニングおよび制限消化、または、Narang ら (1979)Meth Enzymol. 68: 90-99のホスホトリエステル法;Brown et al(1979)Meth Enzymol. 68: 109-151のホスホジエステル法;Beaucage ら (1981)Tetrahedron Lett. 22: 1859-1862のジエチルホスホラミダイト法;Matteucci ら (1981)J Am Chem Soc. 103:3185-3191のトリエステル法;自動合成法;または1984年7月3日にCaruthersらに発行された「PROCESS FOR PREPARING POLYNUCLEOTIDES」と題する米国特許第No.4,458,066号の固体支持体法、または当業者に公知の他の方法などの方法による直接化学合成を含むが、これらに限定されない、任意の適切な方法によって調製される。これらの参考文献の全ては、参照により組み込まれる。
【0051】
バイオポリマーの「配列」とは、バイオポリマー中の単量体単位(例えば、ヌクレオチドなど)の順序および同一性を指す。核酸の配列(例えば塩基配列)は、典型的には5’から3’の方向に読み取られる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「メチル化」は、シトシンのC5またはN4位におけるシトシンメチル化、アデニンのN6位、または他の種類の核酸メチル化をいう。インビトロで増幅されたDNAは、インビトロでのDNA増幅法が増幅鋳型のメチル化パターンを保持していないため、メチル化されていない。しかしながら、「メチル化されていないDNA」または「メチル化されたDNA」はまた、その元の鋳型がそれぞれメチル化されていないかまたはメチル化されている増幅されたDNAを指すこともできる。
【0053】
「メチル化状態」は、DNAの一部分内の特定のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドにおけるメチル化の存在、不在、および/または量を指す。特定のDNA配列(例えば本明細書に記載の遺伝子マーカーまたはDNA領域)のメチル化状態は、配列中のあらゆる塩基のメチル化状態を示すことができ、または、配列中の塩基対(例えば1つ以上のシトシン)のサブセットのメチル化状態を示すことができ、または、配列中のどこでメチル化が起こるかの正確な情報を提供することなく、配列内の局所メチル化濃度に関する情報を示すことができる。メチル化状態は、任意に、「メチル化値」によって表され、または示されることができる。メチル化値は、例えば、メチル化依存性制限酵素による制限消化後に存在する無傷DNAの量を定量することによって、または、亜硫酸水素塩反応後の増幅プロフィールを比較することによって、または、亜硫酸水素塩処理DNAおよび未処理DNAの配列を比較することによって、生成することができる。したがって、例えばメチル化値はメチル化状態を表し、したがって、遺伝子座の多数のコピーにわたるメチル化状態の定量的指標として使用することができる。これは、サンプル中の配列のメチル化状態を閾値または参照値と比較することが望ましい場合に特に有用である。
【0054】
本明細書で使用される「被験者」という語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むが、これらに限定されない、特定の治療の受け手である任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、「被験者」および「患者」という用語は、本明細書ではヒト被験者に関して互換的に使用される。
【0055】
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語は、限定されるものではないが、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ目、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギなどの脊椎動物を含むすべての非ヒト動物を指す。
【0056】
「遺伝子」という語は、ポリペプチド、RNA(例えばmRNA、tRNAおよびrRNAを含むが、これらに限定されない)または前駆体の生成に必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列をいう。ポリペプチド、RNA、または前駆体は、全長またはフラグメントの所望の活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達などについて)が保持される限り、全長コード配列によって、またはコード配列の任意の一部によってコードされ得る。この用語はまた、遺伝子が完全長mRNAの長さに相当するように、構造遺伝子のコード領域、および、両端の約1kbの距離の5’および3’末端の両方の、コード領域に隣接して位置する包含配列を包含する。コード領域の5’側に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNA型およびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは核内RNA(hnRNA)に転写される遺伝子の断片である。イントロンにはエンハンサーなどの調節エレメントが含まれていることがある。イントロンは核転写産物または一次転写産物から除去されるか、あるいは「スプライスアウト」される。したがって、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)プロセシング転写産物には存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳中に機能する。
【0057】
本明細書で使用される「遺伝子座」という用語は、染色体上または連鎖地図上の核酸配列を指し、コード配列、ならびに遺伝子の調節に関与する5’および3’配列を含む。
【0058】
〔発明の詳細な説明〕
本開示は、癌を治療するための組成物、システム、および方法に関する。特に、本開示は遺伝子発現およびメチル化プロフィールを利用して、副腎皮質癌を層別化し、治療するための組成物、システム、および方法、ならびにこれらの手段によって層別化された患者に有用性を有する薬物に関する。
【0059】
ACCに関する癌ゲノムアトラス研究(ACC‐TCGA)のような最近の包括的ゲノミクス研究は、ACCが増殖測定(KI67または有糸分裂計数)よりもむしろ分子層別化を用いてより良く層別化される可能性を示した。ACC-TCGAは、ACCが、主に3つの異なる分子サブタイプ-COC1、COC2、およびCOC3(Zhengら、Cancer Cell 2016)で構成される、分子的に不均一な疾患であることを実証した。注目すべきことに、これらの分子サブタイプは、体細胞変化の明確なパターン、独特の転写プログラムの活性化、およびエピジェネティクなパターン形成の著しい変化によって特徴付けられる。重要なことに、COC1-3の状態は、標準治療下での疾患経過を予測し、COC1疾患の患者は大部分が予後良好であり、COC2疾患の患者は予後が中等度であり、COC3疾患の患者は予後が一様に不良である。
【0060】
したがって、分子サブタイピングに基づくACCの層別化は有望と思われるが、臨床的に実施可能な検査に分子クラスを組み込む戦略は依然として解明されていない。理想的な分子バイオマーカーは単純なアッセイによって迅速に測定可能であり、明確な分子クラスを確実に捕捉する。ACC‐TCGAは、COC3 ACCが、「CIMP高値」として知られるCpGアイランドを標的とするゲノム全体のDNAメチル化のパターンによって特徴付けられることを明らかにした;このデータは、DNAメチル化に基づく分子バイオマーカーが、CIMP高値/COC3腫瘍の信頼できる確認を可能にすることを示す。実際、最近、G0S2遺伝子座におけるCpGアイランドメチル化を定量するための単純な一晩制限消化/qPCRに基づく分子アッセイを用いて、CIMP高値ACCと非CIMP高値ACCとを正確に区別することが達成され得ることが実証された(Mohan、Lerario ら、 Clinical Cancer Research 2019)。さらに、BUB1BおよびPINK1のmRNA発現を測定し、BUB1B-PINK1のCt値の減算の結果得られるスコアを算出するために、第2のqPCRに基づくアッセイを含めることで、手術後の疾患進行および随時の転移性疾患の開発の可能性に基づいて、ACCを「高リスク」、「中リスク」、および「低リスク」の予後グループにさらに層別化することが実証された。したがって、「高リスク」患者はほぼ例外なく外科的完全切除後に再発し、転移性疾患の急速な進行を示すが、「低リスク」患者は決して再発せず、転移性疾患を呈しない。このように、これらのカテゴリーは、ACC患者の臨床管理のためのこれらの分子バイオマーカーに基づく分子リスク層別化アプローチを提供する。
【0061】
ACCを予後判定するための上記の分子層別化戦略は、同時係属特許出願WO 2019/108568に記載されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかしながら、このような分類方法は、分子分類に基づいてカスタマイズされた治療法を提供しない。したがって、本明細書中に提供されるのは、COC1-3分類を使用して、処置過程のアクションを決定し、有効性について候補治療薬をスクリーニングし、そしてその関連する分子マーカーによるACC分類に基づいてACCを治療する方法である。
【0062】
このようなクラスの薬物の1つは、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤である。本明細書中で使用される場合、用語「IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤」は、IGF1RによるまたはIGF1Rを介するシグナル伝達を遮断する任意の薬剤をいう。例えば、IGF1Rの上流または下流シグナル伝達パートナー、モジュレーター、またはリガンドの阻害剤またはエンハンサーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、このような薬剤は、IGF1R受容体へのリガンド(例えばIGF2、IGF1)レベル、利用能、またはアクセスを低下させ、(例えば細胞外または細胞内に)結合し、IGF1R(例えば抗体または小分子キナーゼ阻害剤)および/または下流のIGF1Rシグナル伝達経路に拮抗する。
【0063】
いくつかの実施形態では、薬剤はIGF1R阻害剤である。リンシチニブはIGF1R阻害剤であり、ACCの患者において検討されたが、GALACCTIC第3相臨床試験の主要評価項目に達せず、開発が中止された。しかし、少数の患者群では、薬物活性を示す有意義かつ持続的な反応が認められた一方で、薬物毒性は限られており、管理可能であった。残念なことに、リンシチニブのようなIGF1R阻害剤に対する反応者のこの亜集団の患者、したがって、リンシチニブのようなIGF1R阻害剤による治療が予想外に有効である患者を確認する方法は、本開示前には存在しなかった。
【0064】
特に、進行副腎皮質癌(ACC)患者で対象にリンシチニブ(OSI-906としても知られる)の有効性を評価した最初の第3相試験は、Fassnacht ら Lancet Oncology 2015.にて発表されている。Fassnachtらは、リンシチニブ治療患者とプラセボ治療患者のKaplan-Meier法による無増悪生存曲線に統計学的な差はないと報告した。しかしながら、このデータを再検討したところ、長期持続的反応(無増悪生存期間>150日)は、リンシチニブで治療された少数の患者サブセットでは示され、プラセボで治療された患者では示されなかったことが観察された。
【0065】
本発明の実施形態の開発中に、分子分析(実施例2に詳細に記載される)を含む、この臨床試験からのデータの詳細な分析は、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばリンシチニブなどのIGF1R阻害剤)での治療に反応すると予想される独特の患者集団を予想外に確認し、一方、このような薬剤に反応しそうにない患者は除外した。実施例2に記載されているように、分子分析は、COC1 ACCを示す分子マーカーを有するものとして試験中の反応者を確認した。これは、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばリンシチニブなどのIGF1R阻害剤)による治療のための特定の患者集団を提供し、さらに、もし、まず患者がCOC1 ACCを有するかどうかを評価する試験を受けてそうであった場合だけ登録されるような臨床試験でこの治療法が採用されていれば、この失敗した臨床試験は、逆に、プラセボと比較してリンシチニブが臨床的に意味のある有効性を有することを示したであろう。
【0066】
例えば、いくつかの実施形態では、COC1 ACCを有する被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えば、IGF1R阻害剤)を投与する。いくつかの実施形態において、以下により詳細に記載されるように、閾値レベル未満のG0S2メチル化を有する被験者に、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えば、IGF1R阻害剤)を投与する。いくつかの実施形態では、G0S2メチル化に加えて、閾値限度を超えるBUB1B-PINK1スコアに、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)を投与する。さらに、いくつかの実施形態において、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えば、IGF1R阻害剤)に対する反応を示す分子マーカーを欠く被験体には、代替的な治療が提供される。
【0067】
したがって、本発明は、現状と比較して著しく改善された有効性および実証された安全性(例えば実施例3を参照されたい)を有する、ACC患者の特異的サブセットを治療するための組成物および方法を提供し、これは、改善された患者ケアをもたらし、この治療するのが困難な疾病のための新しい治療選択肢を提供する。
【0068】
以下の説明は、特定の療法による治療のための患者を確認し、そのような療法を提供するための組成物および方法を説明する。
【0069】
〔I. ACC分類の識別〕
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、1つ以上のACCマーカー(例えば、BUB1B、PINK1、またはG0S2について)の発現またはレベルおよびG0S2のメチル化状態に基づいてACCを分類するための組成物および方法が提供される。いくつかの実施形態において、ACCを特徴付けるために、発現および/またはメチル化スコアが使用される。いくつかの実施形態では、特徴付けは、BUB1B-PINK1発現スコアを決定することを含む。
【0070】
例示的な検出およびスコアリング方法を以下に記載する。
【0071】
〔A. 検出アッセイ〕
いくつかの実施形態において、RNAは、ノーザンブロット分析による検出である。ノーザンブロット分析は、RNAの分離および相補的標識プローブのハイブリダイゼーションを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、RNA(または対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによって検出される。ハイブリダイゼーションおよび検出のための種々の技術を使用する種々のハイブリダイゼーションアッセイが利用可能である。例えばいくつかの実施形態において、TaqManアッセイ(PE Biosystems、Foster City、CA;例えば、米国特許第5,962,233号および第5,538,848号(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)が利用される。このアッセイは、PCR反応中に行われる。TaqManアッセイは、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を利用する。PCR反応には、5’-レポーター色素(例えば蛍光色素)と3’-クエンチャー色素をもつオリゴヌクレオチドからなるプローブが含まれる。PCR中、プローブがその標的に結合される場合、AMPLITAQ GOLDポリメラーゼの5’-3’核酸分解活性は、レポーターとクエンチャー色素との間のプローブを切断する。クエンチャー色素からのレポーター色素の分離は、蛍光の増加をもたらす。シグナルはPCRの各サイクルで蓄積し、蛍光光度計でモニターすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、DNAマイクロアレイ(例えば、cDNAマイクロアレイおよびオリゴヌクレオチドマイクロアレイ);タンパク質マイクロアレイ;組織マイクロアレイ;形質移入または細胞マイクロアレイ;化学化合物マイクロアレイ;および抗体マイクロアレイを含むがこれらに限定されないマイクロアレイが、癌マーカーmRNAレベルを測定するために利用される。遺伝子チップ、DNAチップ、またはバイオチップとして一般に知られているDNAマイクロアレイは、数千の遺伝子の発現プロファイリングまたは発現レベルのモニタリングを同時に行うためのアレイを形成する固相(例えば、ガラス、プラスティック、またはケイ素チップ)に付着した微視的DNAスポットの集合体である。固定されたDNAセグメントはプローブとして知られており、その数千は単一のDNAマイクロアレイで使用することができる。マイクロアレイは、疾患および正常細胞における遺伝子発現を比較することにより、疾患遺伝子を確認するために使用することができる。マイクロアレイは、ガラススライド上への微尖ったピンでの印刷;予め作製されたマスクを使用するフォトリソグラフィー;動的マイクロミラーデバイスを使用するフォトリソグラフィー;インクジェット印刷;またはマイクロ電極アレイ上の電気化学を含むが、これらに限定されない、種々の技術を使用して作製され得る。
【0074】
さらに他の実施形態では、逆転写酵素PCR(RT-PCR)を使用してRNAの発現を検出する。RT-PCRにおいて、RNAは、逆転写酵素を用いて相補的DNAすなわち「cDNA」に酵素的に変換される。次いで、cDNAをPCR反応のための鋳型として使用する。PCR産物はゲル電気泳動およびDNA特異的染色による染色または標識プローブへのハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されない、任意の適切な方法によって検出され得る。いくつかの実施形態では、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、および第5,876,978号(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される、競合鋳型法の標準化された混合物を用いる定量的逆転写酵素PCRが利用される。
【0075】
いくつかの実施形態において、癌マーカーは、検出可能に標識されたプローブとのハイブリダイゼーションおよび得られたハイブリッドの測定によって検出される。検出方法の例示的な非限定的な例を以下に記載する。
【0076】
1つの例示的な検出方法であるハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)は、化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識(AE)プローブ)を標的配列にハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしていないプローブ上に存在する化学発光標識を選択的に加水分解し、残りのプローブから生成された化学発光をルミノメーターで測定することを含む。例えば、米国特許第5,283,174号;Nelson et al、Nonisotopic Probing、Blotting、and Sequencing、ch.17(Larry J.Kricka ed、第2版 1995、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0077】
2つの分子間の相互作用は、例えば、蛍光エネルギー移動(FRET)を使用して、検出することもできる(例えばラコウィックら、米国特許第5,631,169号;スタブリアノポウロスら、米国特許第4,968,103号を参照されたい;これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。フルオロフォア標識は、第1のドナー分子の放出された蛍光エネルギーが第2「アクセプター」分子上の蛍光標識によって吸収されるように選択され、これは次に、吸収されたエネルギーのために蛍光を発することができる。
【0078】
あるいは、「ドナー」タンパク質分子がトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを単に利用し得る。「アクセプター」分子標識が「ドナー」のものと区別され得るように、異なる波長の光を放出する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は、分子を分離する距離に関連するので、分子間の空間的関係を評価することができる。結合が分子間で起こる状況では、「アクセプター」分子標識の蛍光発光は最大でなければならない。FRET結合事象は、蛍光検出手段によって簡便に測定することができる。
【0079】
自己相補性を有する検出プローブの別の例は「分子ビーコン」である。分子ビーコンは、標的相補配列を有する核酸分子、増幅反応に存在する標的配列の非存在下でプローブを閉鎖立体配座に保持する親和性対(または核酸アーム)、および、プローブが閉鎖立体配座にある場合に相互作用する標識対を含む。標的配列と標的相補配列とのハイブリダイゼーションはアフィニティー対のメンバーを分離し、それによって、プローブを、開放立体配座にシフトさせる。開放立体配座への移動は、標識対の相互作用の減少のために検出可能であり、これは、例えばフルオロフォアおよび消光剤(例えば、DABCYLおよびEDANSについて)であり得る。分子ビーコンは、例えば米国特許第5,925,517号および第6,150,097号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
非限定的な例として、相互作用標識を有するプローブ結合対(例えば、米国特許5,928,862号に開示されるもの)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、本開示の実施形態の方法における使用に適合され得る。一塩基多型(SNP)を検出するために使用されるプローブ装置もまた、本発明において利用され得る。さらなる検出システムには、米国公開公報20050042638号に開示されているような「分子スイッチ」が含まれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。挿入色素および/または蛍光色素を含むものなどの他のプローブもまた、本開示の実施形態の方法の増幅産物の検出に有用である。例えば、米国特許第5,814,447号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0081】
いくつかの実施形態では、核酸配列決定法が検出のために利用される。いくつかの実施形態では、配列決定には、第2世代(別名次世代(Next Generation)またはNext-Gen)、第3世代(別名Next-Next-Gen)、または第4世代(別名N3-Gen)配列決定技術であり、これには、パイロシーケンシング、ライゲーションによる配列決定、単一分子配列決定、合成による配列決定(SBS)、半導体配列決定、大規模並列クローン、大規模並列単一分子SBS、大規模並列単一分子リアルタイム、大規模並列単一分子リアルタイムナノポア技術などが含まれるが、これらに限定されない。MorozovaおよびMarraは、Genomics,92: 255(2008)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において、いくつかのそのような技術の概説を提供する。当業者であれば、RNAは細胞内で安定性が低く、実験的にヌクレアーゼ攻撃を受けやすいので、RNAは通常、配列決定の前にDNAに逆転写されることを認識するであろう。
【0082】
DNA配列決定技術には、蛍光ベースの配列決定方法論が含まれる(例えばBirren ら、 Genome Analysis: Analyzing DNA, 1, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、配列決定は自動配列決定である。いくつかの実施形態では、配列決定は、分割されたアンプリコンの並列配列決定である(Kevin McKernanらのPCT公開番号WO2006084132、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、配列決定は、並列オリゴヌクレオチド伸長によるDNA配列決定である(例えばMaceviczらの米国特許第5,750,341号、およびMaceviczらの米国特許第6,306,597号を参照のこと、これらの両方はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。配列決定技術のさらなる例は、Church polony技術(Mitraら、2003、Analytical Biochemistry 320、55-65;Shendureら、2005 Science 309、1728-1732;米国特許第6,432,360号、米国特許第6,485,944号、米国特許第6,511,803号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、454ピコタイターパイロシーケンシング技術(Marguliesら、2005 Nature 437、376-380;米国20050130173号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、Solexa単一塩基付加技術(Bennettら、2005、Pharmacogenomics、6,373-382;米国特許第6,787,308号;米国特許第6,833,246号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、Lynx超並列配列決定技術(Brennerら(2000)) Nat. Biotechnol. 18:630-634;米国特許第5,695,934号、米国特許第5,714,330号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、およびAdessi PCRコロニー技術(Adessiら(2000)).Nucleic Acid Res.28、E87;WO 00018957号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0083】
例えば、連鎖ターミネーター(サンガー)配列決定、ダイターミネーター配列決定、およびハイスループット配列決定方法を含む、種々の核酸配列決定方法が、本発明の方法における使用のために意図される。例えば、Sangerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463-5467(1997);Maxamら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560-564(1977);Drmanacら、Nat. Biotechnol. 16:54-58(1998);(1998);Kato、Int. J. Clin. Exp. Med. 2:193-202(2009);Ronaghiら、Anal. Biochem. 242:84-89(1996);Marguliesら、Nature 437:376-380(2005);Ruparelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:5932-5937(2005)、およびHarrisら、Science 320:106-109(2008);Leveneら、Science 299:682-686(2003);Korlachら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:1176-1181(2008);Brantonら、Nat. Biotechnol. 26(10):1146-53(2008);Eidら、Science 323:133-138(2009)を参照されたい;これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
次世代配列決定(NGS)方法は、より古い配列決定方法に比べて低コストという目標をもって、大規模並列ハイスループット戦略の一般的な機能を共有している(例えば、Levy and Meyers、Annual Review of Genomics and Human Genetics Volume 17、2016 pp 95-115を参照;その全体が引用により本明細書に組み込まれる)。NGSのための多数の市販プラットフォームが入手可能である(例えば、Levy and Meyers、supraを参照)。
【0085】
哺乳動物において、メチル化は、シトシン残基においてのみ、より具体的には、グアニン残基に隣接するシトシン残基(すなわち、しばしば「CpG」と示される配列CG)においてのみ生じる。DNAメチル化の部位の検出およびマッピングは、エピジェネティクな遺伝子調節を理解し、遺伝子調節の誤りに関連する癌および他の病態を確認するための診断ツールを提供するために不可欠なステップである。
【0086】
特定の部位でのDNAメチル化の状態のマッピングは、現在、DNA中の5-メチルシトシンの検出のためにFrommerらによって記載される重亜硫酸塩法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1827-31(1992)、全ての目的のためにその全体が明示的に参照により本明細書に組み込まれる)またはその変形によって達成される。5-メチルシトシンをマッピングする重亜硫酸塩法は、シトシンは亜硫酸水素イオン(重亜硫酸塩としても知られている)と反応するが、5-メチルシトシンは反応しないという観察に基づいている。この反応は、通常、以下の工程に従って行われる:まず、シトシンが亜硫酸水素塩と反応してスルホン化シトシンを形成する。次に、スルホン化反応中間体の自然脱アミノ化は、スルホン化ウラシルを生じる。最後に、スルホン化ウラシルをアルカリ条件下で脱スルホン化してウラシルを形成する。ウラシルはアデニンと塩基対を形成する(したがってチミンのように振る舞う)のに対し、5-メチルシトシンはグアニンと塩基対を形成する(したがってシトシンのように振る舞う)ので、検出が可能である。これにより、非メチル化シトシンからのメチル化シトシンの識別が、例えば、重亜硫酸塩ゲノム配列決定(Grigg G、& Clark S、Bioessays(1994) 16: 431-36; Grigg G、DNA Seq). (1996)6: 189-98)、または、例えば米国特許第5,786,146号に開示されているメチル化特異的PCR(MSP)によって可能になる。
【0087】
遺伝子のメチル化状態はしばしば、その特定の部位を含むサンプル中のDNAの総集団に対する、特定の部位(例えば、単一ヌクレオチドで、または対象のより長い配列、例えばDNAの~100bpサブ配列まで)でメチル化されたDNAの個々の鎖の割合または百分率として表される。伝統的に、メチル化されていない(例えば、天然の)遺伝子の量は、キャリブレーターを使用するPCRによって決定される。次いで、既知量のDNAを亜硫酸水素塩処理し、得られたメチル化特異的配列を、リアルタイムPCRまたは同等の指数増幅のいずれかを用いて決定する。
【0088】
例えば、従来の方法は一般に、外部標準を使用することによって、非メチル化標的についての検量線を生成することを含む。検量線は、少なくとも2点から構築され、未メチル化DNAのリアルタイムC値を既知の定量標準に関連付ける。次いで、メチル化標的についての第2の標準曲線を、少なくとも2つの点および外部標準から構築する。この第2の検量線は、メチル化DNAのCを既知の定量標準に関連づける。次に、メチル化集団および非メチル化集団について試験サンプルC値を決定し、最初の2つの工程によって作製された検量線からDNAのゲノム当量を計算する。対象部位でのメチル化の百分率は、集団中のDNAの総量に対するメチル化DNAの量から、例えば、(メチル化DNAの数)/(メチル化DNAの数+非メチル化DNAの数)×100から計算される。
【0089】
本開示は、遺伝子のメチル化状態を測定する方法に制限はない。例えばいくつかの実施形態では、メチル化状態は、ゲノム走査法によって測定される。例えば一方法は、制限ランドマークゲノムスキャニング(Kawaiら、Mol.Cell.Biol.14:7421-7427、1994)を含み、別の例は、メチル化感受性任意プライミングPCR(Gonzalgoら、Cancer Res.57:594-599、1997)を含む。いくつかの実施形態において、特定のCpG部位におけるメチル化パターンの変化は、メチル化感受性制限酵素によるゲノムDNAの消化、続いて、対象領域のサザン分析(消化-サザン法)によってモニターされる。いくつかの実施形態では、メチル化パターンの変化を分析することは、PCR(例えばqPCR)増幅(Singer-Samら、Nucl.Acids Res.18:687、1990、またはQiagen、Hilden、DEから市販されている)の前に、ゲノムDNAをメチル化感受性制限酵素で消化することを含む、PCRに基づく過程を含む。さらに、メチル化分析の出発点としてDNAの亜硫酸水素塩処理を利用する他の技術が報告されている。これらには、メチル化特異的PCR(MSP)(Herman et alProcNatlAcadSciUSA 93:9821-9826、1992)および重亜硫酸塩変換DNAから増幅されたPCR産物の制限酵素消化(SadriおよびHornsby、Nucl.Acids Res.24:5058-5059、1996;ならびにXiongおよびLaird、Nucl.Acids Res.25:2532-2534、1997)が含まれる。PCR技術は、遺伝子変異の検出(Kuppuswamyら、Proc.Natl.Acad.Sci.55 USA 88:1143-1147、1991)および対立遺伝子特異的発現の定量化(SzaboおよびMann、Genes Dev.9:3097-3108、1995;およびSinger-Samら、PCR Methods Appl.1:160-163、1992)のために開発されている。このような技術は内部プライマーを使用し、これは、PCR生成鋳型にアニールし、そしてアッセイされる単一ヌクレオチドの5’で直ちに終結する。いくつかの実施形態では、米国特許第7,037,650号に記載されているような「定量的Ms-SNuPEアッセイ」を使用する方法が使用される。
【0090】
本明細書中に記載される方法において使用するための組成物は、上記のようなBUB1B、PINK1、およびG0S2の発現レベルならびにG0S2のメチル化状態を決定するための1つ以上の試薬を含むキットを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、試薬は例えば、BUB1B、PINK1、およびG0S2にハイブリダイズする核酸プローブ、BUB1B、PINK1、およびG0S2の増幅または伸長のための1つ以上の核酸プライマー、1つ以上のメチル化特異的制限酵素、または、メチル化G0S2核酸に特異的に結合する1つ以上の核酸プライマーである。
【0091】
プローブはまた、アレイの形態で提供されてもよい。好ましい実施形態において、キットは、全てのコントロール、アッセイを実施するための指示、および分析および結果の提示のための任意の必要なソフトウェアを含む、検出アッセイを実施するために必要な全ての構成要素を含む。
【0092】
〔B. COC分類〕
本明細書中に記載されるように、BUB1BおよびPINK1の発現レベルならびにG0S2のメチル化レベルは、COCをサブタイプCOC1~3に分類するために使用される。
【0093】
本開示は、ACCを特徴付けるための特定のカットオフ値または閾値には限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコア、および、閾値レベル未満(例えば、4.696%、4.6%、または4.5%未満)のG0S2メチル化は、COC1を示す。いくつかの実施形態では、G0S2メチル化レベルのカットオフ値は、4.696%±1%、5%、または10%未満である。
【0094】
いくつかの実施形態では、閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコア、および、閾値レベル未満(例えば、4.696%、4.6%、または4.5%未満)のG0S2メチル化は、COC2を示す。いくつかの実施形態では、G0S2メチル化レベルのカットオフ値は、4.696%±1%、5%、または10%未満である。
【0095】
いくつかの実施形態において、閾値レベルを超えるG0S2メチル化の存在(例えば、4.696%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、または5.0%を超える)は、COC3を示す。いくつかの実施形態では、G0S2メチル化レベルのカットオフ値は、4.696%±1%、5%、または10%未満である。
【0096】
本発明は、BUB1B-PINK1発現スコアについての特定の(例えばCOC1とCOC2とを区別するための)閾値レベルには限定されない。いくつかの実施形態では、BUB1B-PINK1発現スコア閾値レベルは、1.4~1.8(例えば、1.4、1.5、1.6、1.7、または1.8)である。いくつかの実施形態では、BUB1B-PINK1発現スコア閾値は、1.646±1%、5%、または10%である。
【0097】
いくつかの実施形態では、BUB1B-PINK1発現スコアは、BUB1BおよびPINK1のデルタCt値の減算に基づく。
【0098】
いくつかの実施形態では、BUB1BおよびPINK1がRNA-seqを含む代替技術を使用して測定される場合、BUB1B-PINK1発現スコアは、遺伝子発現のzスコアの減算によって決定される。
【0099】
いくつかの実施形態では、表1に示されるBUB1B-PINK1発現スコアおよびG0S2メチル化値(例えば、±1%、±5%、または10%)を利用して、ACCを特徴付ける。
【0100】
G0S2メチル化を評価するために、より高い分解能のアプローチが適用されている場合、G0S2メチル化を有するものとしてサンプルを分類するためのカットオフ値は変化し得る。これは、G0S2メチル化を評価するためのより高い分解能のアプローチは、メチル化を単一の値に減らすのではなく、むしろ、G0S2遺伝子座内およびその周辺に存在する多数のCpG残基の測定を行うためである。特に、ACC患者の集団におけるG0S2遺伝子座にわたる平均メチル化の分布は二峰性であり、Mohan & Lerario ら Clinical Cancer Research 2019(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で実証されているように、採用された測定戦略によって変化しない。ユーザが、ゲノム全体のDNAメチル化アレイを含むがそれに限定されないG0S2メチル化を測定するためのより高い分解能のアプローチ、または、標的とされる重亜硫酸塩配列決定を含む次世代配列決定に基づくアプローチをとっている場合は、別の方法を使用して、G0S2メチル化レベルが閾値レベルより上または下であるものとしてサンプルを分類する。例えばいくつかの実施形態では、G0S2遺伝子座内およびその周辺に存在するCpG残基のlogit変換されたメチル化ベータ値(または等価の値)に対するユークリッド距離を使用する教師なしの完全階層クラスタリングを使用して、Mohan & Lerarioら Clinical Cancer Research 2019に記載されるように、メチル化閾値より上または下であるものとしてサンプルを分類する(例えば、メチル化分布の低い方のサンプルを、閾値未満のものとして分類し、メチル化分布の高い方のサンプルを、閾値を超えるものとして分類する)。
【0101】
また、本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態において、BUB1B-PINK1スコア(標的とされるRNA-seqパネルを含むが、これに限定されない)を評価するためにより高い分解能のアプローチが適用される場合、BUB1B-PINK1発現スコアは発現のzスコアの減算を使用して計算され、そして発現のパーセンタイルに従って較正される。BUB1B-PINK1発現スコアがzスコアの差を用いて計算される場合、スコアの方向性は反転され、閾値レベル未満のG0S2メチル化および閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有するサンプルはこの場合、COC2として分類され、閾値レベル未満のG0S2メチル化および閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアを有するサンプルはCOC1として分類されることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態において、患者を層別化するためのBUB1B-PINK1発現スコアの閾値レベルは、転移性疾患の病歴を有する非CIMP高値患者の44パーセンタイルである。
【0102】
いくつかの実施形態では、ACC分類(例えばCOC1-3)を使用して、ACCを有する被験者に治療または候補治療を推奨し、および/または治療を施す。
【0103】
いくつかの実施形態では、コンピュータベースの解析プログラムを使用して、検出アッセイによって生成された生データ(例えば所与の1つまたは複数のマーカーの発現レベルまたはメチル化レベル)を、臨床医の予測価値のデータに翻訳する。臨床医は、任意の適切な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、本開示は、遺伝学または分子生物学において訓練される可能性が低い臨床医が生データを理解する必要がないというさらなる利益を提供する。データは、最も有用な形態で臨床医に直接提示される。次いで、臨床医は被験者のケアを最適化するために、情報を直ちに利用することができる。
【0104】
本開示は、アッセイ、情報提供、医療個人、および被験者を実施する研究所との間で情報を受信、処理、および送信することができる任意の方法を企図する。例えば、本開示の実施形態では、サンプル(例えば、生検または血液または尿サンプル)は、対象から取得され、生データを生成するために、世界中の任意の部分(例えば、被験者が存在する国または情報が最終的に使用される国とは別の国)に位置するプロファイリングサービス(例えば、医療施設における臨床研究所、ゲノムプロファイリングビジネスなど)に提出される。サンプルが組織または他の生物学的サンプルを含む場合、被験者は、医療センターを訪れて、サンプルを得てプロファイリングセンターに送ることができ、または、被験者は、サンプル(例えば、尿サンプル)を自分で収集し、それをプロファイリングセンターに直接的に送ることができる。サンプルが、以前に決定された生物学的情報を含む場合、情報は、被験者によってプロファイリングサービスに直接的に送られてもよい(例えば、情報を含む情報カードはコンピュータによってスキャンされてもよく、データは電子通信システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信されてもよい)。プロファイリングサービスによって受信されると、サンプルは処理され、被験者に所望される診断または予後情報に特異的なプロフィール(すなわち、発現またはメチル化データ)が生成される。
【0105】
次いで、プロフィールデータは、治療する臨床医による解釈に適したフォーマットで調製される。例えば、生の発現データを提供するのではなく、調製されたフォーマットは、特定の治療選択肢に対する推奨と共に、被験者に対する診断または危険性評価を表すことができる。データは、任意の適切な方法によって臨床医に表示されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、治療の時点で)印刷することができ、またはコンピュータモニタ上で臨床医に表示することができるレポートを生成する。
【0106】
いくつかの実施形態では、情報は、最初に、ケアの時点で、または地域施設で分析される。次いで、生データは、さらなる分析のために、および/または生データを臨床医または患者に有用な情報に変換するために、中央処理施設に送られる。中央処理施設は、プライバシー(全てのデータは、均一なセキュリティプロトコルで中央施設に記憶される)、速度、およびデータ分析の均一性の利点を提供する。次いで、中央処理施設は、被験者の治療後のデータの運命を制御することができる。例えば、中央設備は、電子通信装置を用いて、臨床医、被験者、または研究者にデータを提供することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、被験者は、電子通信システムを使用してデータに直接アクセスすることができる。被験者は、結果に基づいて、さらなる介入またはカウンセリングを選択することができる。いくつかの実施形態では、データは、研究用途に使用される。例えば、データは、特定の状態または病期の有益な指標として、または、治療行動過程を決定するためのコンパニオン診断として、マーカーの包含または排除をさらに最適化するために使用され得る。いくつかの実施形態において、結果は、薬物スクリーニングまたは臨床試験のための候補療法を選択するために使用される。
【0108】
〔II. ACCの治療〕
いくつかの実施形態では、ACCの治療を推奨し、施すために、ACCの分子分類が使用される。COC1-3 分子サブタイプは、これらの薬理学的薬剤によって、個別にまたは併用療法において標的とされる別個の転写プログラムの濃縮によって特徴付けられる。したがって、ACCをCOC1-3に分類することにより、所与の標的とされる薬剤(または標的とされる薬剤の組み合わせ)に最も反応しやすい患者集団の事前選択が可能になり、そのような薬剤による治療方法が提供され、最も有益でありそうな患者における使用に焦点を当てることによって、そのような薬剤の有効性が増大する。同様に、このような焦点を合わせた使用は、利益を得られそうもない患者における使用を減少または排除し、それにより、不必要な薬物毒性を減少または回避するとともに、費やす金銭を節約し、薬物が無効な場合に患者の不満を回避する。
【0109】
例えば、図1は、ACC-TCGA(Zheng ら Cancer Cell 2016)が、単一プラットフォーム特徴まで純化することができるACCの3つの異なるマルチプラットフォーム分子サブタイプ(COC1~COC3)を確認することを示す。SNPアレイプロファイリングに由来する特定のタイプの体細胞コピー数変化プロフィール(SCNA)、アレイに基づくDNAメチル化プロファイリングに由来するCpGアイランドメチル化因子表現型(CIMP)、および、RNA-seqトランスクリプトームプロファイリングに由来するmRNAサブタイプは、カイ二乗検定(A)またはヒートマップ(B)として測定されるように各COCに収束する。図1のCは、各COCに対する優性SCNA、CIMP、およびmRNAグループを示す。特に、本明細書中に記載され、そして特に実施例1-2に関連するように、COC3腫瘍は、CIMP高値DNAメチル化プロフィールおよびノイズのあるSCNAプロフィールを有する。各COCは、明確な予後と関連している-COC1(良好、疾患動態が緩徐)、COC2(中間、中等度の疾患動態)、COC3(不良、急速進行性の疾患動態)。
【0110】
ACC-TCGAデータの分析から、ACCの3つの分子クラス(COC1、COC2、COC3)すべてにわたるACC腫瘍の90%がIGF2(したがってIGF1R誘導性シグナル伝達)の高発現を示すことが明らかになった(Zhengら Cancer Cell 2016)一方で、COC3/CIMP高値腫瘍は、E2F依存性転写のさらなる強力な誘導(細胞周期遺伝子、DNA修復遺伝子、EZH2およびDNMT1などのエピジェネティクライターを含む)、NR5A1依存性ステロイド生成の高レベル、および、標準的なWntシグナル伝達活性化の高レベルを特徴とする。さらに、COC3/CIMP高値ACCは、免疫細胞転写マーカーの発現が低く、これらの腫瘍における免疫細胞排除と一致する。
【0111】
さらに、図2および図3に示されるように、ACC-TCGA由来のCOC群は、異なる体細胞変化プロフィールおよび転写プログラムの活性化と関連している。COC3腫瘍は、構成的細胞周期活性化(「MUT」)につながるドライバー体細胞変化の頻度が高い。この濃縮と一致して、COC3腫瘍は細胞周期スコアも高く、COC3腫瘍における細胞周期標的治療を支持している。この細胞周期スコアは、ACC-TCGA(Zhengら Cancer Cell 2016)RNA-seqデータとGSVA(Hanzelmannら BMC Bioinformatics 2013)とを用いて、サイクリング細胞(TOP2A、MKI67、BUB1B、AURKB、E2F2、PLK1、FOXM1)で真正の細胞周期およびより高い発現を有することが知られているE2F標的遺伝子の発現から得られる。COC2-3腫瘍は、構成的Wnt経路活性化(「MUT」)につながるドライバー体細胞変化の頻度が高い。この濃縮と一致して、COC2およびCOC3腫瘍はいずれも、Wntスコアが高く、COC2+3腫瘍におけるWnt経路標的治療を支持している。このWntスコアは、ACC-TCGA RNA-seqデータおよびGSVAを用いて、真正のWnt経路標的遺伝子(AXIN2、LEF1、NKD1、LGR5、APCDD1、BMP4)の発現から導き出される。
【0112】
COC3腫瘍はしばしば、CpGアイランド、「CIMP高値」に向けられた非生理学的DNAメチル化によって特徴付けられる異常なエピジェネティクな状況を有する。COC3腫瘍はまた、このプログラムに関与する3つの遺伝子(DNMT1、DNMT3A、EZH2)から成るエピジェネティクススコア(ACC-TCGA RNA-seqおよびGSVAを用いて導き出された)も高く、COC3腫瘍における標的とされるエピジェネティク療法(DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤およびEZH2阻害剤を含む)の役割を支持している。
【0113】
COC2およびCOC3腫瘍は、ACC-TCGAで確認されているように、「ステロイド高値」および「ステロイド高値/増殖性」転写プログラムによって支配されている。このプログラムの特徴は、副腎皮質転写因子SF1(NR5A1によってコードされる)の発現が高いことと、ステロイド生成酵素の発現が高いことである。これと一致して、このプログラムに関与する遺伝子(NR5A1、MC2R、MRAP、CYP17A1、HSD3B2、CYP21A2、CYP11B1)から成るACC‐TCGA RNA‐seq/GSVA由来ステロイドスコアは、COC2およびCOC3腫瘍で、より高い。このデータは、COC2およびCOC3におけるSF1およびステロイド生成を標的とする治療法を支持する。ACC-TCGAは、大部分のACCは他の癌と比較して免疫不良であることを確認した。図2に示すように、COC1腫瘍は、より高い程度の免疫浸潤(免疫遺伝子CD3D、CD3G、CD4、CD8A、CD8B、CD274、PDCD1の発現から成る、ACC-TCGA RNA-seq/GSVA由来の免疫スコアによって測定される)を有する。これは、COC1腫瘍における「免疫チェックポイント治療」として本明細書で言及されるT細胞ターゲティング免疫治療を支持する。最後に、コルチゾール/グルココルチコイド(その生成はステロイドスコアの導出に用いられる遺伝子によって制御される)は免疫抑制性である。したがって、いくつかの実施形態では、ステロイド生成阻害と免疫療法との組み合わせが、COC2およびCOC3腫瘍を有する患者を治療するために利用される。
【0114】
図3は、臨床コルチゾール生成(「コルチゾール」)および試験時の死亡(「死亡」)についての追加情報を含む、サンプルごとの図1および図2からの情報を示すヒートマップを提供する。各サンプルは列によって表され、樹状図は、遺伝子発現に基づいてサンプルに対して行われた教師なしの階層クラスタリングを示す。Wnt経路の変化は「Wnt_mut」トラックによって示され、細胞周期の変化は「CC」トラックによって示される。ACC-TCGA RNA-seqデータからの遺伝子発現レベルは、行zスコア(ホワイトからブラック)によって色分けされる。COC3腫瘍を有する患者は、より侵攻性の疾患(「死」)を有し、エピジェネティクス(DNMT1、DNMT3A、EZH2)および細胞周期遺伝子(TOP2A、MKI67、BUB1B、AURKB、E2F2、PLK1、FOXM1)の腫瘍発現がより高い。COC2およびCOC3疾患の患者は、臨床的コルチゾール生成、より侵攻性の疾患、および、ステロイド(NR5A1、MC2R、MRAP、CYP17A1、HSD3B2、CYP21A2、CYP11B1)およびWnt経路(AXIN2、LEF1、NKD1、LGR5、APCDD1、BMP4)遺伝子のより高い腫瘍発現を有する。COC1腫瘍の患者は、侵攻性が低く、コルチゾールを生成する頻度が低く、免疫浸潤と標的とすることが可能な免疫チェックポイント(CD3D、CD3G、CD4、CD8A、CD8B、CD274、PDCD1)の活性化に関連する遺伝子の発現が高い。
【0115】
図3Bは、遺伝子が、対応するエピジェネティクス(「EPIG」)、細胞周期(「CELLCYCLE」)、ステロイド(「STEROID」)、Wnt(「Wnt」)、および免疫(「IMMUNE」)スコアに折りたたまれているヒートマップを示す。尺度は、実際のスコア値(ホワイトからブラック)を表す。スコア値に基づいてサンプルおよびスコアに対して教師なしの階層的クラスタリングを実施し、エピジェネティクス、細胞周期、ステロイドおよびWntスコアの協調的調節、および、これらと免疫スコアとの抗相関を実証した。
【0116】
COC1腫瘍は、COC3(構成的細胞周期活性化および構成的Wnt経路活性化)およびCOC2(構成的Wnt経路活性化)(図2図3)で観察されるように、低レベルのE2F、低レベルのWnt依存性転写プログラム、および、現れた場合には構成的細胞周期活性化および構成的Wnt経路活性化につながるまれな体細胞変化によって特徴づけられ、この分子クラスIGF1R依存性シグナル伝達が優勢な発がんヒットであることを示している。さらに、COC1腫瘍は、免疫関連遺伝子の発現増加によって独特に特徴付けられる。したがって、COC1腫瘍を標的とする薬理学的薬剤には、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)および/または免疫チェックポイント阻害剤が含まれる。
【0117】
したがって、いくつかの特定の実施形態では、本発明は、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤(例えばリンシチニブ、シクスツムマブ、ガニツマブ、フィギツムマブ、ダロツズマブ、イスチラツマブ、ドゥシギツマブまたはテプロツマブを含むが、これらに限定されない)など)で、COC1(例えば閾値レベル未満のG0S2メチル化レベルおよび閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する腫瘍)を治療するための組成物および方法を提供する。いくつかの具体的な実施形態では、閾値レベル未満のG0S2メチル化および閾値レベルを超えるBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者はリンシチニブで治療され、閾値レベルを超えるG0S2メチル化レベルおよび閾値レベル未満のBUB1B-PINK1発現スコアを有する被験者はリンシチニブでも他のIGF1R阻害剤でもIGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤でも治療されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤に加えてまたはその代替として、COC1腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA-4、PD-1、またはPD-L1を標的とする薬剤)で治療する。
【0119】
いくつかの実施形態において、COC3/CIMP高値中の分子標的は、細胞周期エフェクター(例えばCDK4/6、PLK1、MELKまたはAURKBのうちの1つ以上)、DNA修復タンパク質(例えばWEE1および/またはPARP)、Wntシグナル伝達を変化させる薬剤(例えばβ-カテニン、CBP、TCF、LEF、Wntリガンド、APC/GSK3β破壊複合体、および/またはポルキュピン(Porcupine)のうちの1つ以上)、エピジェネティクライター(例えばEZH2および/またはDNMT1)、およびNR5A1を含むが、これらに限定されない。
【0120】
一方、COC3/CIMP高値腫瘍では、免疫チェックポイント阻害剤やIGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)が単独療法として反応しにくい。しかしながら、いくつかの実施形態では、上記に列挙した標的のうちの1つ以上に加えて、COC3腫瘍は、NR5A1阻害剤またはグルココルチコイド合成/代謝阻害剤またはグルココルチコイド受容体阻害剤と組み合わせて、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤および/または免疫チェックポイント治療でさらに処置される。
【0121】
同様に、COC2腫瘍は、高い標準的なWntシグナル伝達活性化、および高いレベルのNR5A1依存性転写によって特徴づけられる。COC2腫瘍を標的とする治療薬にはWnt阻害剤および/またはNR5A1アンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記に列挙した標的の1つ以上に加えて、COC2腫瘍は、NR5A1阻害剤またはグルココルチコイド合成/代謝阻害剤またはグルココルチコイド受容体阻害剤と組み合わせて、IGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤および/または免疫チェックポイント治療でさらに処置される。
【0122】
本開示は、特定の標的遺伝子または治療に限定されない。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体、核酸、または小分子である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞周期エフェクタータンパク質はCDK4/6、PLK1、MELK、またはAURKであり、阻害剤はパルボシクリブ(Pfizer、New York、NY)である。いくつかの実施形態において、DNA修復タンパク質はWEE1またはPARPであり、阻害剤はアダボセルチブ(Merck)またはオラパリブ(Merck、Kenilworth、New Jersey)である。いくつかの実施形態では、IGF1R阻害剤は、リンシチニブ(Achemtek、Worcester、MA)、cixutumumab(McKianら、Expert Opin Investig Drugs. 2009 Jul; 18(7): 1025-1033)、figitumumab(Pfizer)、ganitumab(Amgen、Thousand Oaks、CA)、teprotumumab(Horizon Pharma)、dalotuzumab(Merck / Pierre Fabre)、イスチラツマブ(Merrimack Pharma)、またはドゥシギツマブ(Medimmune/AstraZeneである。いくつかの実施形態では、Wnt阻害剤はWNT974(Novartis、Basel、スイス)またはPRI-724(Prism Pharma)である。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb、New York、NY)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、ペンブロリズマブ(Merck)、またはアテゾリズマブ(Hoffmann-La Roche、Basel、スイス)である。いくつかの実施形態において、NR5A1阻害剤は、SID 7969543(Bio-Techne Corporation、Minneapolis、MN)、45594[4-(ヘプチルオキシ)フェノール]またはオクチルオキシフェニル(OOP)(両方ともACADIA Pharmaceuticals、San Diego、CAから入手可能)である。いくつかの実施形態において、エピジェネティクライターはEZH2および/またはDNMT1であり、阻害剤は、3-デアザネプラノシンA(Cayman、Ann Arbor、MI)、EPZ005687(Epizyme、Cambridge、MA)、EPZ6438/タゼメトスタット(Epizyme)、または5-アザシチジン(Tocris、Minneapolis、MN)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb、New York、NY)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb、NY)、ペンブロリズマブ(Merck、Kenilworth、NJ)、アテゾリズマブ(Roche、Basel、スイス)、Avelumab(Merck、Kenilworth、NJ)、Durvalumab(AstraZeneca、Cambridge、United Kingdom)およびセミプリマブ(Regeneron、Tarrytown、NY)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド合成/代謝阻害剤またはグルココルチコイド受容体阻害剤は、アミノグルテチミド、オシロスタット(Novartis、Basel、スイス)、メチラポン(Catalent ドイツ Eberbach GmbH、Eberbach、ドイツ)、ミフェプリストン(Danco Laboratories、New York、NY)またはケトコナゾールである。
【0123】
いくつかの実施形態では、同じ遺伝子またはCOCサブタイプを標的とする1つ以上(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上)の阻害剤が被験者に投与される。いくつかの実施形態では、特定のCOCサブタイプに向けられた治療の組み合わせが組み合わせて使用される。例えば、1つの非限定的な例において、COC3癌を有する被験者に、Wnt阻害剤またはNR5A1阻害剤;ならびにIGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えば、IGF1R阻害剤)および/または免疫チェックポイント阻害剤と併用して、COC3を標的とする上記の1つ以上の治療を投与する。別の例では、COC2癌を有する被験者に、上記のCOC2を標的とする治療、ならびにIGF1Rシグナル伝達を遮断する薬剤(例えばIGF1R阻害剤)および/または免疫チェックポイント阻害剤を、NR5A1阻害剤またはグルココルチコイド合成/代謝阻害剤またはグルココルチコイド受容体阻害剤と併用して投与する。さらなる併用療法は、本明細書に記載される。
【0124】
いくつかの実施形態では、阻害剤は核酸である。記載されたマーカーの発現を(例えばマーカーの発現を妨げることによって)阻害するのに適した例示的な核酸にはアンチセンス核酸およびRNAiが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、核酸治療は、本明細書に記載されるマーカーの少なくとも部分(例えば、少なくとも5、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド)に相補的であり、ハイブリダイズする。
【0125】
いくつかの実施形態において、オリゴマーアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドを含む組成物は、本明細書に記載されるマーカーをコードする核酸分子の機能を調節し、最終的に発現されるマーカー遺伝子の量を調節するために、使用される。これは、マーカー遺伝子をコードする1つ以上の核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することによって達成される。オリゴマー化合物とその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、核酸の正常な機能を干渉する。標的核酸に特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能のこの調節は、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。干渉されるDNAの機能は、複製および転写を含む。干渉されるRNAの機能には、例えば、RNAのタンパク質翻訳部位への転位、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のmRNA種を生成するためのRNAのスプライシング、および、RNAに関与するかまたはRNAによって促進され得る触媒活性などの、すべての重要な機能が含まれる。このような標的核酸機能の干渉の全体的な効果は、発現されるマーカーの量を減少させることである。
【0126】
いくつかの実施形態では、核酸はRNAi核酸である。「RNA干渉(RNAi)」は、低分子干渉RNA(siRNA)、shRNA、またはマイクロRNA(miRNA)によって開始される配列特異的、転写後遺伝子サイレンシングの過程である。RNAiの間、RNAは標的mRNAの分解を誘導し、その結果、遺伝子発現の配列特異的阻害が起こる。
【0127】
「RNA干渉」または「RNAi」、「低分子干渉RNA」もしくは「短鎖干渉RNA」もしくは「siRNA」もしくは「短鎖ヘアピンRNA」もしくは「shRNA」の分子、または、「miRNA」において、ヌクレオチドのRNAi(例えば一本鎖、二本鎖またはヘアピン)は、目的の核酸配列、例えば本明細書に開示されるマーカーを標的とする。
【0128】
「RNA二重鎖」は、RNA分子の2つの領域間の相補的対合によって形成される構造を指す。RNAiで用いるRNAは、RNAiの二本鎖部分のヌクレオチド配列が標的遺伝子のヌクレオチド配列と相補的であるという点で、遺伝子を「標的」とする。特定の実施形態では、RNAiは、本明細書に記載のマーカーをコードする配列を標的とする。いくつかの実施形態では、RNAiの長さは30塩基対未満である。いくつかの実施形態において、RNAは、長さが32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10塩基対であり得る。いくつかの実施形態では、RNAiの長さは19~32塩基対の長さである。特定の実施形態では、RNAiの長さは19または21塩基対の長さである。
【0129】
いくつかの実施形態において、RNAiはヘアピン構造(例えばshRNA)を含む。ヘアピン構造は、二重鎖部分に加えて、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分を含み得る。ループは、長さを変えることができる。いくつかの実施形態では、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ループは18ヌクレオチド長である。ヘアピン構造はまた、3’および/または5’オーバーハング部分を含み得る。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、長さが0、1、2、3、4または5ヌクレオチドの3’および/または5’オーバーハングである。
【0130】
「miRNA」または「miR」は、コードRNAにハイブリダイズし、かつその発現を調節する、長さ18から25の核酸塩基の間の非コードRNAを意味する。特定の実施形態では、miRNAは、酵素ダイサーによるプレmiRNAの切断産物である。miRNAの例は、miRBaseとして知られるmiRNAデータベースに見出される。
【0131】
本明細書中で使用されるように、ダイサー基質RNA(DsiRNA)は、従来のRNAiと比較してRNA干渉において増加した効力を有する、化学的に合成された不斉25-mer/27-mer二重鎖RNAである。伝統的な21-merRNAi分子は、ダイサー生成物を模倣し、したがって酵素ダイサーとの相互作用をバイパスするように設計される。ダイサー(Dicer)は最近、RISCの構成要素であり、RISCへのRNAiの参加に関与していることが示されている。ダイサー基質RNAi分子は、ダイサーによって最適にプロセシングされるように設計され、この天然のプロセシング経路に関与することによって増加した効力を示す。このアプローチを用いて、サブナノモル濃度を用いて、持続的なノックダウンが定期的に達成されている(米国特許第8,084,599号; Kimら、Nature Biotechnology 23:222 2005; Roseら、Nucleic Acids Res.,33:4140 2005)。
【0132】
「shRNA」の転写単位は、対合していないヌクレオチドのループによって連結されたセンス配列およびアンチセンス配列から成る。shRNAは、Exportin-5によって核から出され、細胞質内で一旦ダイサーによってプロセシングされて、機能性RNAi分子が生成される。「miRNA」ステム-ループは、より大きな一次転写産物(pri-miRNA)の一部として典型的に発現される対合していないヌクレオチドのループによって連結されたセンス配列およびアンチセンス配列から成り、「miRNA」ステム-ループは、プレmiRNAとして知られるDrosha-DGCR8錯体生成中間体によって切除され、「miRNA」ステム-ループは、その後、Exportin-5によって核から出され、細胞質内で一旦ダイサーによってプロセシングされて、機能性miRNAまたはsiRNAが生成される。
【0133】
「人工miRNA」または「人工miRNAシャトルベクター」は、本明細書中で互換的に使用される場合、有効なDrosha処理に必要なステムループ内の構造要素を保持しながら、標的遺伝子のsiRNA配列で置換されたDroshaおよびダイサー処理を介して切除される二重鎖ステムループの領域(少なくとも約9~20ヌクレオチド)を有する一次miRNA転写物をいう。「人工的」という語は、フランキング配列(例えば、約35ヌクレオチド上流および約40ヌクレオチド下流)がRNAiのマルチクローニング部位内の制限酵素部位から生じることから生じる。本明細書中で使用される場合、用語「miRNA」は、天然に存在するmiRNA配列ならびに人工的に生成されたmiRNAシャトルベクターの両方を包含する。
【0134】
RNAiは、核酸配列によってコードされ得、核酸配列はまた、プロモーターを含み得る。核酸配列はまた、ポリアデニル化シグナルを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、合成最小ポリアデニル化シグナルまたは6つのTの配列である。
【0135】
本発明はさらに、薬学的組成物(例えば、上記の化合物を含む)を提供する。本開示の薬学的組成物は、局所的または全身的処置が所望されるかどうか、および処置される領域に依存して、多くの方法で投与され得る。投与は、局所(眼および膣および直腸送達を含む粘膜を含む)、肺(例えば、ネブライザーによるものを含む、粉末またはエアロゾルの吸入または吹き込みによる;気管内、鼻腔内、表皮および経皮による)、経口または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入;または頭蓋内、例えば、髄腔内または脳室内投与が含まれる。
【0136】
いくつかの実施形態では、1つ以上の標的療法が、ACCに対する既存の療法と組み合わせて投与される。例えば、いくつかの実施形態では、COC3腫瘍を有する被験者に、補助細胞傷害性化学療法(例えば、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、または他の細胞毒性剤のうちの1つ以上)を投与する。いくつかの実施形態では、COC分類決定が(例えば、治療中に、または外科手術後に)繰り返される。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される薬剤は、ACCに対する活性について(例えばインビトロ薬物スクリーニングアッセイまたは臨床研究において)スクリーニングされる。
【0138】
〔実験〕
以下の実施例は本発明の特定の好ましい実施形態および態様を実証し、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0139】
〔実施例1〕
ACCサンプルをCOC1-3サブグループに先を見越して分類するために、記載された2工程予後戦略の修正版(Mohan、Lerarioら、Clinical Cancer Research 2019)を使用する。本明細書に記載の方法は、COC1、COC2、およびCOC3を識別する。データは、G0S2過剰メチル化がCIMP高値/COC3においてほぼ例外なく観察され(したがって、ACCのこの攻撃的な分子サブタイプを確認するために使用できる)、非CIMP高値(COC1‐2)ACCは常に、低い、識別不能なレベルのG0S2メチル化を示すことを明らかにする。しかし、COC1とCOC2は、異なるBUB1B‐PINK1スコアを示す。ACC-TCGA RNA-seqデータの解析では、再発/転移腫瘍におけるBUB1BとPINK1のzスコアの発現の違いにより、COC1はCOC2およびCOC3と確実に区別された(表1および図4-8)。これを用いて、非CIMP高値転移性/再発性腫瘍の独立した集団における対応するBUB1B-PINK1スコア(TaqManアッセイによって測定)を計算した(例えば、Mohan、Lerarioら、Clinical Cancer Research 2019を参照のこと)。このカットオフは、TaqManアッセイを使用して、COC1とCOC2+3との間の区別を可能にする。したがって、COC3 ACCはG0S2メチル化>4.696%、BUB1B-PINK1スコアの任意の値で定義され、COC2 ACCはG0S2メチル化<4.696%、BUB1B-PINK1スコア<1.646で特徴づけられ、COC1 ACCはG0S2メチル化<4.696%、BUB1B-PINK1スコア>1.646で特徴づけられる(表1)。この戦略の適用は、新鮮な/凍結された組織サンプルの利用可能性に限定されず、包埋された凍結、またはACCサンプルからのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルに拡張可能である。
【0140】
【表1】
【0141】
〔実施例2〕
ACC-TCGA(Zhengら Cancer Cell 2016)は、3つのタイプのACC、すなわちCOC1、COC2およびCOC3が存在することを確認した。これらのタイプは、図1に示すように、特異的なコピー数変化プロフィール(SCNA)、DNAメチル化プロフィール(CIMP)およびmRNAプロフィール(mRNA)という独特な分子的特徴によって特徴づけられる。
【0142】
COC1、COC2およびCOC3は、異なる速度で進行する。ACC-TCGAに登録された全患者のうち、COC1疾患の患者は緩徐に進行し(イベントフリー生存期間中央値に達しなかった)、COC2疾患の患者は中等度に進行し(イベントフリー生存期間中央値38ヵ月)、COC3疾患の患者は急速に進行した(イベントフリー生存期間中央値8ヵ月)。しかしながら、COC1、COC2、およびCOC3は異なる速度で進行するにもかかわらず、全てのタイプのACCが転移性疾患に進展する可能性があり、ACC患者の大半は最終的に転移を発症する。ACC‐TCGA(n=40)で転移性疾患と診断されたかまたはその病歴を有する全患者の中で、8/40はCOC1(20%)、11/40はCOC2(27.5%)、21/40(52.5%)はCOC3であった。
【0143】
COC1、COC2、およびCOC3クラスの腫瘍を定義する独特の分子的特徴は、各ACCタイプ(COC1、COC2、COC3)が、特定のクラスでの使用を標的とした治療、または療法の併用に対して均一に感受性であることを示す。
【0144】
進行性副腎皮質癌(ACC)患者におけるOSI-906/リンシチニブの有効性を評価した第3相試験がFassnachtら Lancet Oncology 2015に発表されている。この試験では、RECIST基準(Eisenhauer ら Eur J.Cancer.2009)により定義された、忍容不可能な薬物有害作用または増悪イベントを経験するまで、適格患者をOSI-906またはプラセボで治療した;忍容不可能な薬物有害作用または増悪イベントを経験した患者は試験を中止した。Fassnachtらは、リンシチニブ治療患者とプラセボ治療患者のKaplan-Meier法による無増悪生存曲線に統計学的な差はないと報告した。しかしながら、ランダム化後150日までにプラセボで治療された全ての患者で病勢進行が認められたことから、リンシチニブ治療群とプラセボ治療群の病勢動態に25%の生存率で分岐が認められ、リンシチニブ治療群の患者のサブセットでは無増悪生存期間が長かった(150日を超える)ことが観察された。この長い無増悪生存期間はプラセボ群では観察されず、リンシチニブの反応を示している(図9)。
【0145】
この試験からのデータは、OSI-906で治療された患者90人中6人において良好な反応を実証した。これには、RECIST基準(Eisenhauer ら Eur J.Cancer.2009)により部分反応(PR)を達成した患者4例、長期安定疾患(SD; 同じくRECIST基準による、Eisenhauer らEur J.Cancer.2009)を達成した患者2例が含まれる。これらの個々の患者を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
試験終了後、OSI-906で治療された患者12人(OSI-906に良好な反応を示した患者6人(表2)、およびマッチングする非反応者6人(以下の表3))の腫瘍DNAに対してエクソーム配列決定が実施された。反応群と非反応群が他の点では同等であることを保証するために、現時点でACCを予後判定および分類するためのゴールドスタンダード方法である腫瘍グレードに基づいて、非反応群をマッチングさせた。RECIST基準(Eisenhauerら Eur J.Cancer.2009)により定義されたように、非反応例はいずれもリンシチニブ治療で進行した(「PD」)。
【0148】
【表3】
【0149】
このエクソーム配列決定研究の目標は、OSI-906に対する反応性の分子予測因子を確認することであった。各腫瘍のヘテロ接合性消失(LOH)プロフィールを特徴付けるために、エクソーム配列決定データを分析した。バイオインフォマティクスパイプライン(samtools mpileup、bcftools coll、およびR/CRANパッケージ変更点)を用いて、各腫瘍のB-対立遺伝子周波数プロフィールを作成し、対立遺伝子周波数が可変的な領域間の切断点を確認した。
【0150】
エクソーム配列決定は、リンシチニブ反応者が、より少ない染色体切断点を有し、「染色体」SCNAプロフィールを有し、リンシチニブ非反応者が、「ノイズが多い」SCNAプロフィールを有することを明らかにした(図10図11)。この最初の工程は、リンシチニブ反応者がCOC1またはCOC2のいずれかであり、一方、リンシチニブの非反応者がCOC3であったことを実証する(図1)。
【0151】
これらのリンシチニブ反応者がCOC1またはCOC2であるかどうかを判断するため、次の段階として、当初のリンシチニブ試験に登録された患者の疾患動態を検討した。薬物またはプラセボで治療された患者の生存曲線のどこに分かれが観察されたかに基づいて、どのクラスのACCが治療に反応したかを判断することが可能であろうという仮説が立てられた。
【0152】
予想されたように、上記の分子研究に基づいて、COC3疾患(全転移性ACCの52.5%を占める)が急速に進行する患者はリンシチニブ治療に反応することはないと判断された。したがって、47.5%生存率前のプラセボ治療群とリンシチニブ治療群との間に相違は見られず、これが観察されたことである。
【0153】
さらに、COC2病変のみ(全転移性ACCの27.5%を占める)の患者がリンシチニブ治療に反応した場合、47.5%生存率と20%生存率との間の範囲に及ぶ生存曲線の相違が観察されることが予想された。しかしながら、そうではなく、生存曲線の相違は、図9に示されるように、25%生存率の開始時でのみ生じたことが観察された。
【0154】
この分岐のタイミングから、リンシチニブ治療に反応した患者は、完全ではないにしても、ほとんどが、COC1(増殖が最も遅い疾患サブタイプ)を有する患者で構成されていることが実証された。
【0155】
COC1患者(COC2またはCOC3とは異なる)を確認するために用いたこれらの集合的手段により、第3相試験の生存曲線の相違に基づき、部分反応(PR)を達成したリンシチニブ治療群のCOC1患者6人中4人の長期無増悪生存の程度および持続時間は、転移性ACCのどの患者についてもこれまでに知られている予想を超えていたこと、反応は治療薬の効果によるものであったに違いなく、単に疾患が自然により緩徐に進行したことによるものではないことがさらに観察された。
【0156】
これを裏付けるのは、対照的に、転移性ACC患者の既知の自然病歴を示す患者サンプルであるプラセボ群(COC1腫瘍患者を含む)の全患者が150日までに進行したことである。この結果は、本質的に増殖速度が遅いCOC1疾患の患者が治療しないまま放置すると、依然として必然的に150日までに進行イベントを経験するという主張をさらに支持し、COC1リンシチニブ反応者が実際に、本剤の治療効果に反応していたという結論を裏付ける役目を果たす。
【0157】
〔実施例3〕
Fassnacht et al。2015の6/90の患者がリンシチニブに良好に反応したこと(表2、図9)、リンシチニブ反応者に起因する本明細書に開示される新規分子特徴の発明(図7-8)、および、これらの特徴を有する患者および有さない患者を確認するために使用され得る分子診断マーカーの発明(図12およびMohan & Lerarioら 2019)を考慮して、上記のこれらの分子診断マーカーを使用するリンシチニブの有効性を評価する臨床試験が行われる。
【0158】
表1に詳述したACC-TCGA分子クラスに従って試験に組み入れるように患者を層別化し、COC1のクラスに該当する患者のみを含める。この分子分類戦略の主な利点は、COC1(ACC-TCGA)を濃縮することに加えて(表1;図4~8)、バイオマーカーを使用して疾患動態も捕捉されることである(以下の表4)。閾値を超えるG0S2メチル化(CIMP高値DNAメチル化、したがってCOC3の状態の代用)の存在は、COC3患者を除外するために用いられる。G0S2メチル化がない場合に閾値未満のBUB1B-PINK1の存在は、COC2患者を除外するために用いられる。G0S2メチル化がない場合に閾値を超えるBUB1B-PINK1の存在は、COC1患者を確認して登録するために用いられる。リンシチニブは、癌の単剤療法として、登録された被験者に投与される。
【0159】
【表4】
【0160】
分子バイオマーカーの適用により、転移性疾患を有するがCOC1ではない患者の100-25.8%すなわち74.2%が試験登録から除外され、彼らはみな、IGF2/IGF1R標的単剤療法に反応する可能性が低い。
【0161】
このような仮説上の臨床研究では、以前のGALACCTIC試験の基準を用いて登録に適格であると考えられて、6人の反応例(限定されないが、彼らの疾患に対するすべての標準治療が失敗した病歴を含む)があった90人の患者については、以下の結果が計画される:BUB1B-PINK1およびG0S2メチル化の適用により、0.742×患者90人=患者67人が除外され、患者23人が試験に登録された。この23人の患者のうち、治療に反応した6人が再度観察されると考えられる。そのため、6/23すなわち26%の反応率が観察され、以前に失敗した試験と比較して臨床的に有意な反応率の増加が認められ、反応率は6/90=6.7%であった。この26%の反応率は4倍近くの増加であり、被験患者集団に対する本剤の臨床的有用性を実証し、確認するのに役立ち、リンシチニブの製造販売承認を求める申請の裏付けに使用される可能性がある。この試験設計、サイズ、および改善された有効性の数値的程度は単に例示的なものであり、当業者によって理解されるように、異なる設計、サイズ、および/または統計的検出力の試験、ならびに同様に改善された性質であるが異なる数値の反応率の結果は、本明細書中に開示される方法によって提供されるリンシチニブ反応率に対する臨床的に意味のある改善を実証するために使用され得る。
【0162】
上述の明細書に記載されている出版物および特許は、全て参照として本出願に組み込まれている。開示の範囲および精神から逸脱することなく、開示の記載された方法およびシステムの様々な修正および変形が、当業者には明らかであろう。本開示は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求される本開示はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、医学の当業者に明らかで本開示を実施するための記載されたモードの種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
図1】ACC-TCGAが、単一のプラットフォーム特徴まで純化することができるACCの3つの異なるマルチプラットフォーム分子サブタイプ(COC1-COC3)を確認することを示す。
図2】ACC-TCGA由来のCOC群が、異なる体細胞変化プロフィールおよび転写プログラムの活性化と関連することを示す。
図3図1および図2のヒートマップをサンプルごとに示す。
図4】ACC‐TCGAにおいて、BUB1B‐PINK1スコアがCOC1病患者をCOC2およびCOC3腫瘍患者と区別することを示す。
図5】ACC‐TCGAにおいて、非CIMP高値の進行性疾患を有するCOC1患者は非CIMP高値の進行性疾患を有するCOC2患者と統計的に異なったBUB1B‐PINK1を有することを示す。
図6】BUB1B‐PINK1の閾値が、非CIMP高値の進行性疾患患者におけるCOC1とCOC2‐3腫瘍の合理的な識別を可能にすることを示す。
図7】ACC‐TCGAにおけるBUB1B‐PINK1スコアの累積分布関数が、FMUSP+UM集団におけるqPCRによる比較可能なBUB1B‐PINK1カットオフの確認を可能にすることを示す。
図8】BUB1B-PINK1とCIMPの状態を組み合わせると、進行性疾患患者のCOCが忠実に再現されることを示す。
図9】Fassnacht ら Lancet Oncology 2015の研究に登録された患者の無増悪生存曲線を示す。
図10】リンシチニブで治療された反応者および非反応者から得られたエクソーム配列決定データのブレークポイント分析を示す。
図11】ノイズが多いACC患者はリンシチニブで進行することを示す。
図12】ACC-TCGA由来の致命的なCIMP高値の腫瘍はしばしば、ノイズの多いコピー数/LOHプロフィールを有することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】