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特表2022-5365063Dバイオプリントされた皮膚組織モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20220809BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220809BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/071
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021573557
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2020066454
(87)【国際公開番号】W WO2020249814
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】1950711-0
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518429296
【氏名又は名称】ビコ グループ アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】BICO Group AB
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ ボンデソン
(72)【発明者】
【氏名】アデル イテダル ナムロ レドワン
(72)【発明者】
【氏名】ヘクトル マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】エリク ガテンホルム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029HA09
4B065AA90X
4B065BB19
4B065BC46
4B065BC47
(57)【要約】
本発明は、3D印刷された皮膚組織モデル、前記モデルを提供するための方法、および前記モデルの使用に関する。前記3D印刷された皮膚組織モデルは、少なくとも1つのバイオインクA、少なくとも1つの細胞型Aおよび少なくとも1つの因子Aを含み、前記バイオインクAは少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含み、前記少なくとも1つの細胞型Aは、表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、且つ前記少なくとも1つの因子Aは成長因子、タンパク質および/または分子であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化された方法での皮膚組織モデルの製造方法であって、以下の段階:
(a) 少なくとも1つのバイオインクAを準備する段階、
(b) 少なくとも1つの細胞型Aを準備する段階、
(c) 少なくとも1つの因子Aを準備する段階、
(d) 段階(a)~(c)において準備された成分、および任意に他の成分を、その混合物についての印刷適性を可能にして且つ前記少なくとも1つの細胞型Aについて生存可能な状態を提供する割合で混合する段階、
(e) 得られる混合物を、自動化され且つ再現性のある方法でバイオプリントおよび/または吐出することにより、組織モデルが形成され、前記組織が皮膚組織として特徴付けられる段階
を含み、
前記バイオインクAは少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物、例えば脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞を含み、
前記増粘剤は、多糖類系物質、例えばナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムまたはプルランガム、またはタンパク質系物質、例えばコラーゲンまたはゼラチンであって、前記バイオインクAの粘度を調整するものであり、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものであり、且つ
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する、
前記方法。
【請求項2】
前記バイオインクAが、(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×102~1×107の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aが、バイオインク1mLあたり1×103~10×107の細胞および/または1cm2あたり1×103~10×105の細胞の量で使用され、且つ/または
前記少なくとも1つの因子Aが、成長因子については1×10-9~1×10-3モル、および1×10-6~1×10-1モルおよび/または1~1000mg/mLの他の因子の量で使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの追加的な細胞型A、少なくとも1つの追加的なバイオインクA、および少なくとも1つの追加的な因子Aを準備し、その際、2つ以上のバイオインクが配合されて、バイオインクAは1つの細胞型Aを支持し、前記追加的なバイオインクAは第2のまたはさらなる細胞型Aを支持する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
細胞懸濁液Aを準備し、および前記細胞懸濁液Aを、段階(e)において形成された組織に施与する段階(f)をさらに含み、前記細胞懸濁液Aは、
細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、
任意に増粘剤、
細胞型A、
細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、
任意に光開始剤、
任意に細胞外マトリックスタンパク質
を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバイオポリマーが、ナノセルロースまたはナノフィブリルセルロース、ゼラチン、例えばゼラチンメタクリレート、アルギン酸塩、アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンおよびトラガカントを含む群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記増粘剤が、多糖類系物質、例えばナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムまたはプルランガム、またはタンパク質系物質、例えばコラーゲンまたはゼラチンである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分が、ヒトまたは動物源に由来し、且つグリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフを含む群から選択され得る、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記光開始剤が、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)またはirgacureから選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞状添加物が、脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞の1つ以上から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の細胞型Aが、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞、および/またはマクロファージ
から選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの細胞型Aは、健康な、罹患した、および/または欠損のあるヒトおよび/または動物源の体の、巨視的な位置、例えば顔面の位置、胸部、腹部、尿道、食道および/または頭部に由来、且つ/または微視的な位置、例えば真皮乳頭層または真皮網状層に由来する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(e)が、押出、シリンジまたはインクジェットに基づくバイオプリント装置を使用して実施される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記組織が、2つ以上の区画および/または1つ以上の細胞勾配が組織内で生じるようにバイオプリントまたは吐出される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組織が、皮下組織区画、真皮区画および/または表皮区画を形成するようにバイオプリントまたは吐出され、且つ任意に、1つ以上の区画内で細胞勾配がバイオプリントまたは吐出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2つ以上の区画および/または細胞勾配が、同時に、および/または後で1回以上、バイオプリントまたは堆積される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記因子Aが、前記少なくとも1つのバイオインクAおよび/または追加的なバイオインクAに化学的に取り付けられるか、または捕捉され、且つ/または少なくとも1つの細胞型Aと共に組み込まれる、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
製造された皮膚組織モデルをさらに培養方法に供し、ここで、前記皮膚組織モデルは、
(i) 培地に浸漬することにより、
(ii) 脈管系を模倣するためのフローデバイス内で、且つ/または
(iii) 気液界面で
培養される、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1つまたはいくつかの培養方法の組み合わせを、同じ皮膚組織モデルのために、同時におよび/または順次使用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルであって、
i. 少なくとも1つのバイオインクA
ii. 少なくとも1つの細胞型A
iii. 少なくとも1つの因子A
を含み、前記バイオインクAは、少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものであり、
前記増粘剤は、多糖類系物質、例えばナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムまたはプルランガムであるか、またはタンパク質系増粘剤、例えばコラーゲンまたはゼラチンであり、且つ
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する、前記3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項20】
前記バイオインクAが、(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×102~1×107の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aが、バイオインク1mLあたり1×103~10×107の細胞および/または1cm2あたり1×103~10×105の細胞の量で使用され、且つ/または
前記少なくとも1つの因子Aが、成長因子については1×10-9~1×10-3モル、および1×10-6~1×10-1モルおよび/または1~1000mg/mLの他の因子の量で使用される、
請求項19に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項21】
前記少なくとも1つのバイオポリマーが、ナノセルロースまたはナノフィブリルセルロース、またはゼラチン、例えばゼラチンメタクリレートから選択される、請求項19または20に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項22】
追加的な細胞懸濁液Aをさらに含み、前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む、請求項19から21までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項23】
前記1つ以上の細胞型Aが、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞、および/またはマクロファージ
から選択される、請求項19から22までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項24】
前記モデルが、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画を表す少なくとも1つの区画を含む、請求項19から23までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項25】
前記モデルが、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画に相応する生物学的勾配を表す2つ以上の区画を含み、且つ任意に、1つ以上の前記区画内で生物学的勾配を含む、請求項19から24までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項26】
請求項19から25までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用であって、以下の1つ以上:
(i) 3D環境内での細胞活性、例えば細胞分布、遊走、増殖、マトリックス産生、他の細胞および周囲の環境との相互作用などの理解を得るための発生生物学、および/または
(ii) 化粧品およびスキンケア製品の評価、毒性研究、刺激性研究、アレルゲン試験、代謝研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての化合物試験、および/または
(iii) 組織の再生および若返りの用途、例えば組織リモデリング、細胞増殖、細胞代謝、細胞分化/成熟、細胞・細胞相互作用、細胞・マトリックス相互作用、細胞クロストーク/シグナリング、血管新生など、および/または
(iv) 創薬、ターゲットバリデーション、アレルゲン研究、毒性研究、代謝研究、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての薬学的用途、および/または
(v) 内側および/または外側の皮膚面と接触する装置のための、医療機器の評価および開発、毒性研究、アレルゲン研究など、および/または
(vi) 分散細胞、スフェロイド、オルガノイドなどとしての、細胞分化および成熟に焦点を当てた幹細胞研究
における前記使用。
【請求項27】
内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道に関連する用途における、請求項26に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織、特に皮膚組織モデルの3Dバイオプリンティングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚についてのin vitroモデルの分野において、細胞培養の代表的な存在は、表皮区画を模倣する融合層を形成できる2次元(2D)培養で成長した細胞である。この2D培養は、真皮線維芽細胞の支持細胞層で覆われていることがある組織培養プラスチック上、または真皮線維芽細胞を有する3次元(3D)構造上のいずれかで実施される。この3D構造は通常、成型された、または真皮線維芽細胞で播種された足場である。人体内の細胞は3D空間で組織化され且つ分布しているので、それらのタイプの細胞培養は天然組織環境との類似性が高められている。しかしながら、それらの方法は大きな労働力を要し、且つin vitroモデルの制御された構造を可能にしない。従って、研究のために、細胞および人間生理学の関連性の高い情報を提供できる標準化されたモデルを開発する必要がある。
【0003】
国際公開第2018064778号(WO2018064778 A1)は、生体材料および組織をバイオプリンティングするための手持ち式の装置を開示している。印刷のために、天然または合成のバイオポリマー溶液と細胞および/または成長因子との混合物である溶液が使用される。ハイドロゲル、細胞を含有しない層が、細胞を含む層のための機械的な支持体として最初に印刷されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018064778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞、生体材料および生体分子の堆積を制御してin vitroの皮膚組織モデルの自動化生産を可能にする3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルは、皮膚研究の分野の進歩に寄与している。3D皮膚組織モデルは、薬剤の開発、化合物試験、若返りの研究、再生組織工学研究、組織工学、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、毒性学研究、刺激性研究、アレルゲン試験、および再生医療における用途のために、外部環境に対する保護および界面としての皮膚の重要な二重の機能に起因して、生理学的、欠陥および病理学的な理解のために、身体の内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道について非常に興味深い。関連性の高いヒトの生理学的模倣を有する3D皮膚組織モデルは、治療、生物学的およびスキンケア製品の研究開発の効率を改善する。
【0006】
従って、本発明の課題は、構造が制御された3D皮膚組織モデルを提供することである。3D皮膚組織モデルの製造方法であって、効率的で容易且つ皮膚組織モデルの構造の制御を可能にする前記方法を提供することも課題である。
【0007】
さらに、本発明の課題は、in vitroで印刷表面(例えばプラスチックまたはガラス)上へ直接的にバイオプリンティングを可能にする3D皮膚組織モデルを提供することである。
【0008】
なおもさらに、本発明の課題は、製造された際にばらつきが少ないかまたは最低限であるいくつかの複製の製造を可能にする3D皮膚組織モデルを提供することである。
【0009】
さらに、本発明の課題は、多種多様なサイズおよび解像度で吐出することを可能にし、それにより例えば幅広いモデルおよび/または、種々のサイズのモデルの種類を、および種々の容器サイズ内で、および/または種々の表面上で可能にする、3D皮膚組織モデルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、前記の課題は、自動化された方法での皮膚組織モデルの製造方法によって解決され、標準化された方法での薬剤のスクリーニングまたは化学試験のための皮膚組織モデルの堅牢な製造を達成する必要があり、例えば以下の段階:
(a) 少なくとも1つのバイオインクAを準備する段階、
(b) 少なくとも1つの細胞型Aを準備する段階、
(c) 少なくとも1つの因子Aを準備する段階、
(d) 段階(a)~(c)において準備された成分、および任意に他の成分を、その混合物についての印刷適性を可能にして且つ前記少なくとも1つの細胞型Aについて生存可能な状態を提供する割合で混合する段階、
(e) 得られる混合物を、自動化され且つ再現性のある方法でバイオプリントおよび/または吐出することにより、組織モデルが形成され、前記組織が皮膚組織として特徴付けられる段階
を含み、
前記バイオインクAは少なくとも1つのバイオポリマー、例えばコラーゲン、メタクリレートコラーゲン(ColMA)、ゼラチン、メタクリレートゼラチン(GelMA)、セルロース、ナノフィブリルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、アカシアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンまたはトラガカント、増粘剤、例えばナノセルロース、グルコマンナン,キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガム、プルラン(Pullalun)ガム、コラーゲンまたはゼラチン、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、例えばグリコサミノグリカン(glycoamino glycan)、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフ、および任意に光開始剤、例えばフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)またはirgacureおよび/または細胞状添加物(cellular addition)を含み、
前記増粘剤は多糖類系物質、例えばナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムまたはプルラン(Pullalun)ガム、またはタンパク質系物質、例えばコラーゲンまたはゼラチンであって、前記バイオインクAの粘度を調整するものであり、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたもの、例えばケラチノサイト、メラノサイト、線維芽細胞、脂腺細胞、樹状細胞、マクロファージ、幹細胞、誘導多能性幹細胞、脂肪細胞、腺細胞または胞細胞であり、
且つ、前記少なくとも1つの因子Aは、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子(前記因子Aは、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する)、および/または成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。
【0011】
実施態様において、以下の量の成分が使用される:
前記バイオインクAは(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×102~1×107の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、バイオインク1mLあたり1×103~10×107の細胞および/または1cm2あたり1×103~10×105の細胞の量で使用され、
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)については1×10-9~1×10-3モル(molar)、および他の因子、例えばグリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフ、サイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものについては1×10-6~1×10-1モルおよび/または1~1000mg/mLの量で使用され、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。
【0012】
これにより、本発明の課題が解決される。より具体的には、例えば本発明の皮膚組織モデルを、種々のレベルの解像度で吐出でき(6~34Gノズル/ニードルまたは10~0.01mm)、ここで、全てのサイズ/解像度のレベルを1つのモデル内で利用できるか、または種々のタイプのモデルを作り出すために使用できる。モデルを種々の興味、例えば薬剤試験、化粧品試験、疾患モデリングまたは細胞シグナル研究、分析のセットアップに適合させ、且つ/または種々のバイオリアクタおよび潅流システムに合うようにカスタマイズすることを可能にする。選択した任意のバイオプリンタを使用でき、且つバイオプリントされた際にばらつきが少なく且つ細胞および材料の堆積が制御された皮膚組織モデルのいくつかの複製を作製できる。また、本発明は、モデルが、種々のサイズでバイオプリントされ、且つ種々の容器サイズにおいて、および/または種々の容器サイズの上で、例えば種々のサイズのペトリ皿、チップ、スライド、血管新生モジュール、ウェルプレートおよびトランスウェルの上で、および種々の表面、例えば種々の種類のガラス、プラスチック(処理済および未処理)、生体材料、コーティングおよび/またはポリマーの上で印刷されることを可能にする。
【0013】
さらには、本発明の皮膚組織モデルを作り出すために、材料の正確な堆積が必要とされる/ツールとして意図される。モデル内の適切な位置で材料を正確に吐出できるノズル/ニードルおよびバイオプリンタを使用することが要件である。本発明による増粘剤を有するバイオインク組成物は、堆積後、硬化前後にその形状を保持する独立型の堅牢なin-vitroモデルの製造を可能にする。種々の種類の3D in-vitroモデルのデザインを成型のための予めの要求。
【0014】
1つの実施態様によれば、少なくとも1つの追加的な細胞型A、少なくとも1つの追加的なバイオインクA、および少なくとも1つの追加的な因子Aを準備し、その際、2つ以上のバイオインクが配合されて、バイオインクAは1つの細胞型Aを支持し、追加的な(単数または複数の)バイオインクAは第2のまたはさらなる細胞型Aを支持する。
【0015】
1つの実施態様によれば、前記方法は細胞懸濁液Aを準備し、および前記細胞懸濁液Aを、段階(e)において形成された組織に施与する段階(f)をさらに含む。
【0016】
1つの実施態様によれば、前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む。これは、例えば種々の表現型を実現し且つ/または完全な成熟に達するための培養の間、3Dバイオプリントされたモデル内での細胞の応答がバイオインク内のマトリックス並びにシグナルの流入に強く依存するからである。
【0017】
1つの実施態様によれば、少なくとも1つのバイオポリマーは、ナノセルロースまたはナノフィブリルセルロース、ゼラチン、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、例えばコラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩、アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンおよびトラガカントを含む群から選択される。
【0018】
1つの実施態様によれば、前記増粘剤は多糖類系またはタンパク質系物質であって、バイオインクAの粘度を、再現性のあるバイオプリントおよび/または吐出を可能にする程度に調整するものである。多糖類系増粘剤は、ナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムおよびプルランガム(pullalun gum)を含み得る一方で、タンパク質系増粘剤はコラーゲンおよびゼラチンを含み得る。
【0019】
1つの実施態様によれば、細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分はヒトまたは動物源に由来し、且つグリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフを含む群から選択できる。
【0020】
光開始剤は、特定の波長範囲の光が施与される際にバイオインクの光架橋プロセスを開始するために必要とされる。1つの実施態様によれば、光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)またはIrgacureから選択できる。より敏感な細胞についてはLAPが好ましく、なぜならそれは細胞に対してあまり有害ではない400nmを上回るより高い周波数範囲の波長で使用できるからである。Irgacureはより強力な光開始剤であり、より短い光架橋時間を必要とし、より堅い構造をもたらすが、全ての細胞に許容できるわけではない350nm付近の波長の光でしか励起され得ない。
【0021】
1つの実施態様によれば、前記細胞状添加物は、脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞の1つ以上から選択される。前記細胞状添加物は、バイオプリントされた皮膚組織モデルの複雑性を前進させ、天然の皮膚組織を大幅に模倣する。天然の皮膚組織、および天然の皮膚組織内での天然のクロストークを完全に複製するには、皮膚の全ての細胞の種類および細胞付属物、例えば毛嚢、脂腺および汗腺をモデル内で表さなければならない。
【0022】
1つの実施態様によれば、前記1つ以上の細胞型Aは、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞および/またはマクロファージ
から選択される。
【0023】
1つの実施態様によれば、前記少なくとも1つの細胞型Aは、健康な、罹患した、および/または欠損のあるヒトおよび/または動物源の体の、巨視的な位置、例えば顔面の位置、胸部、腹部、尿道、食道および/または頭部に由来し、且つ/または微視的な位置、例えば真皮乳頭層、真皮網状層に由来する。
【0024】
1つの実施態様によれば、前記因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。
【0025】
1つの実施態様によれば、段階(e)は、押出、シリンジまたはインクジェットに基づくバイオプリント装置を使用して実施される。
【0026】
1つの実施態様によれば、前記組織は、2つ以上の区画および/または1つ以上の細胞勾配が組織内で生じるようにバイオプリントまたは吐出される。
【0027】
1つの実施態様によれば、前記組織は皮下組織区画、真皮区画および/または表皮区画を形成するようにバイオプリントまたは吐出され、且つ任意に、1つ以上の区画内で細胞勾配および/または分子勾配がバイオプリントまたは吐出される。勾配では、細胞、追加的な分子、タンパク質、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、グリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフ、サイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物および/または核酸における種々の濃度が、モデル内の種々の層または位置で、バイオプリントまたは吐出される。これは、天然の皮膚組織内で見出される天然の勾配を模倣することを可能にし、且つバイオプリントされた皮膚組織モデルの関連性および複雑性を強化する。それを天然の皮膚組織により類似させて、より関連性があり且つ天然の、埋め込まれた細胞の応答をもたらす。
【0028】
1つの実施態様によれば、2つ以上の区画および/または細胞勾配が、同時に、および/または後で1回以上、バイオプリントまたは堆積される。
【0029】
1つの実施態様によれば、前記因子Aは、少なくとも1つのバイオインクAおよび/または追加的なバイオインクAに化学的に取り付けられるか、または捕捉され、且つ/または少なくとも1つの細胞型Aと共に組み込まれる。
【0030】
1つの実施態様によれば、製造された皮膚組織モデルをさらに、培養方法に供し、ここで、前記皮膚組織モデルは、
(i) 培地に浸漬することにより、
(ii) 脈管系を模倣するためのフローデバイス内で、且つ/または
(iii) 気液界面で
培養される。
【0031】
1つの実施態様によれば、1つまたはいくつかの培養方法の組み合わせを、同じ皮膚組織モデルのために、同時におよび/または順次使用する。
【0032】
第2の態様によれば、3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルは、
i. 少なくとも1つのバイオインクA
ii. 少なくとも1つの細胞型A
iii. 少なくとも1つの因子A
を含んで提供され、前記バイオインクAは、少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化且つiPSCまたはESC誘導されたものであり、
前記増粘剤は、多糖類系物質、例えばナノセルロース、グルコマンナン、キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムまたはプルランガム(pullalun gum)、またはタンパク質系増粘剤、例えばコラーゲンまたはゼラチンであり、
前記少なくとも1つの因子Aは、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子であり、前記因子Aは、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進し、および/または成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。
【0033】
実施態様によれば、
前記バイオインクAは(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×102~1×107の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、バイオインク1mLあたり1×103~10×107の細胞および/または1cm2あたり1×103~10×105の細胞の量で使用され、且つ/または
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子については1×10-9~1×10-3モル、および1×10-6~1×10-1モルおよび/または1~1000mg/mLの他の因子の量で使用される。
【0034】
1つの実施態様によれば、前記少なくとも1つのバイオポリマーは、コラーゲン、メタクリレートコラーゲン(ColMA)、ゼラチン、メタクリレートゼラチン(GelMA)、セルロース、ナノフィブリルセルロース、アルギン酸塩、キトサン、アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンまたはトラガカントから選択される。
【0035】
1つの実施態様によれば、前記モデルはさらに、追加的な細胞懸濁液Aを含み、前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む。
【0036】
1つの実施態様によれば、前記1つ以上の細胞型Aは、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞および/またはマクロファージ
から選択される。
【0037】
1つの実施態様によれば、前記モデルは、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画を表す少なくとも1つの区画を含む。
【0038】
1つの実施態様によれば、前記モデルは、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画に相応する生物学的勾配を表す2つ以上の区画を含み、且つ任意に、1つ以上の前記区画内で生物学的勾配を含む。
【0039】
第3の態様によれば、上記による3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用であって、以下の1つ以上:
(i) 3D環境内での細胞活性、例えば細胞分布、遊走、増殖、マトリックス産生、他の細胞および周囲の環境との相互作用などの理解を得るための発生生物学、および/または
(ii) 化粧品およびスキンケア製品の評価、毒性研究、刺激性研究、アレルゲン試験、代謝研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての化合物試験、および/または
(iii) 組織の再生および若返りの用途、例えば組織リモデリング、細胞増殖、細胞代謝、細胞分化/成熟、細胞・細胞相互作用、細胞・マトリックス相互作用、細胞クロストーク/シグナリング、血管新生など、および/または
(iv) 創薬、ターゲットバリデーション、アレルゲン研究、毒性研究、代謝研究、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての薬学的用途、および/または
(v) 内側および/または外側の皮膚面と接触する装置のための、医療機器の評価および開発、毒性研究、アレルゲン研究など、および/または
(vi) 分散細胞、スフェロイド、オルガノイドなどとしての、細胞分化および成熟に焦点を当てた幹細胞研究
における前記使用が提供される。
【0040】
1つの実施態様によれば、上記による3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用は、内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道に関連する用途におけるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】バイオプリントされた皮膚組織モデルを構築しデザインするために使用できる種々の区画の図。種々の図は、ブロック区画(A)、縁区画(B)、硬質区画(C)、ブロック区画と縁区画との組み合わせ(A+B)、およびブロック区画と硬質区画との組み合わせ(A+C)の例を示す。
図2】どのようにモデルを組み立てることができるかの設計図(blueprint)。Aは、高濃度の表皮細胞(三角)を有する表皮区画である。BおよびCは、真皮細胞(星印)の生物学的勾配を有する真皮区画を表し、表皮区画に向かう部分(B)ではより高い濃度を有し、下方部分(C)においてはより低い濃度を有する。
図3】表皮を用いた(B)、または表皮を用いない(A)、バイオインクの1つの組成物中で培養された14日目時点でのヒトの真皮線維芽細胞の効果。図Bは真皮線維芽細胞に典型的な細長い形態を示す。図Cは構造内での種々の区画の堆積を示し、明るいほうの細胞は表皮を表し、明るくないほうの細胞は真皮を表す。画像AおよびBは10倍の倍率であり、画像Cは4倍の倍率である。
図4】処理に対する応答としての皮膚組織モデル内でのエラスチン産生に及ぼす効果。基本のバイオプリントされた完全な厚さの皮膚組織モデルであるコントロール試料においてはエラスチンの発現が低い一方で、処理されたモデルにおいてはエラスチン産生が急激に増加する。I型コラーゲンの産生は影響されない。画像は10倍の倍率で取り込まれ、スケールバーは100μmである。
図5】14日目(A、C)および28日目(D)時点でのバイオインクの1つの組成における種々の処理に対する皮膚モデルの細胞応答の例。画像は未処理のモデル(A、B)、および生体分子で処理されたモデル(C、D)におけるI型コラーゲンの発現を示す。画像は10倍の倍率で取り込まれている。
図6】3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの断面のH&E染色であり、ここで表皮(明るい灰色)が真皮(暗い灰色)上に形成されている。画像は4倍の倍率で取り込まれ、スケールバーは200μmである。
図7】種々の増粘剤が粘度に及ぼす効果を示すグラフ(XG: キサンタンガム、Glu: グルコマンナン、NFC: ナノフィブリル化セルロース)。
図8】GelMA(A)および増粘剤改質されたGelXG(B)の温度変化。GelMAについてのゲル化点は貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との間の切片として示される。
図9】1%、2%および3%のキサンタンガムを含有するハイドロゲルでバイオプリントされた構造の比較画像。
図10】アルギン酸塩(A)およびナノセルロースで改質されたアルギン酸塩(CELLINKのバイオインク、B)の流動変化。ずり減粘挙動は、ずり速度の上昇に伴う粘度の減少として示される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明は、細胞、バイオインクおよび生体分子で構成され、3D皮膚組織モデリング分野において科学的な研究のために使用される皮膚組織モデルに関する。このような組織モデルの用途は、化粧品の化合物評価および/または発見、医療機器の評価、スキンケア化合物の評価および/または発見、医薬品の評価および/または発見、再生医療の研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、組織工学の開発、毒性学研究、刺激性研究、アレルゲン試験、および皮膚生理学および/または病理学について特異的であり得る。細胞、バイオインクおよび生体分子を特定の堆積で層状化して、天然の皮膚内での細胞および細胞外マトリックスの天然の分布を、内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道について模倣できる。構築された皮膚組織モデルが培養において安定化される場合、そのモデルは気液界面で培養されて、皮膚の天然の環境を模倣し、且つ表皮の分化並びにモデルの成熟を刺激する。そのモデルをフローデバイスにおいて培養して、栄養分の天然の分布および/または内側の皮膚面上での体液の散発的な流れを模倣することもできる。
【0043】
皮膚は、種々の層内で種々の特定の組成を有する透明な別個の層を有する器官である。従って、天然組織に似た皮膚組織モデルを作り出すために、それらの特定の層状化されたモデルの創出を支えることができる独特の組織並びに材料を有するモデルを構築するための両方の方法が必要とされる。3Dバイオプリント法は、細胞および生体分子を有する生体材料の特定の堆積、並びに細胞および/または生体分子のバイオインク内での濃度の調整の柔軟性、構造のアーキテクチャ、細胞および/または生体分子の局在化、および細胞/バイオインクおよび/または生体分子の空間的組織化を可能にする。生理学的条件、病理学的条件および/または欠損条件の模倣性が強化されたモデルを作り出す必要がある。生体材料および/または生体分子の印刷可能な混合物であるバイオインクは、それらのモデルの創出を可能にすると共にバイオプリンティングの利用を可能にする。
【0044】
バイオインクは正常な、欠損した、または病的な皮膚の機能に向かって組織の成熟を促進するように調整されている。バイオインクは、皮膚のニッチ環境を模倣する、細胞外マトリックスタンパク質と共に組み込まれる合成および/または天然のバイオポリマーのいずれかに基づく。バイオポリマーは植物原料に由来する多糖類、例えば種々のフィブリル構造のセルロース、アルギン酸塩、アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンおよびトラガカントであってよい。バイオインクはバイオガムとして公知の増粘剤、例えばキサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガムおよびプルランガム(pullalun gum)、または他の増粘剤、例えばナノセルロース、グルコマンナン、コラーゲンまたはゼラチンを含み得る。ヒトおよび/または動物源に由来する細胞外マトリックスタンパク質、例えば脱細胞化細胞外マトリックス、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばコラーゲン、エラスチン、フィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフが組み込まれる。バイオインクの各々の成分は印刷適性、架橋、細胞接着、細胞増殖、細胞成熟および細胞の機能性のために必須である。バイオインクの組成によってもたらされるバランスの取れたニッチによって、動物またはヒト由来の、初代またはiPSCまたはESC誘導された、皮膚細胞、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞が、刺激因子によって指示されるそれぞれの生理学的状態、病理学的状態および/または欠損状態を維持する。
【0045】
皮膚組織モデルにおいて使用される細胞は、ヒト、好ましくは、および/または動物源のものであり、皮膚組織から単離されるか、または幹細胞、例えば胚および/または誘導多能性幹細胞に由来し、および皮膚組織内で表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞の機能を模倣する。単一培養、または種々の組み合わせで共培養された細胞、例えば線維芽細胞、ケラチノサイトおよびメラノサイトは、in vitroで化合物の細胞効果を調べるために一般に使用される。ケラチノサイトは、表皮を模倣する緻密で融合性の層を形成するように2Dで培養されるか、または透過性、化合物の局所吸収、または刺激性/毒性学の試験のために線維芽細胞支持細胞層または構造の上で播種されるかのいずれかである。線維芽細胞構造は、通常、材料、一般にはコラーゲンまたはフィブリンの成型された構造であり、線維芽細胞、または線維芽細胞で播種された足場と混合される。前記構造は通常、ケラチノサイトが上部に播種される前に成熟させられる。光線過敏性のモデルについては、通常、ケラチノサイトの代わりに、ケラチノサイトとメラノサイトとの不均質な混合物が播種される。それらの全ての方法は、大きな労働力を要し、且つ手動で作業するいくつかの段階を必要とする。3Dバイオプリンティングを使用することによって、本願内に記載される細胞、バイオインクおよび生体分子を用いて生成された3D皮膚組織モデルは、複製の堅牢性を確実にするための手動での作業が少なくて済む。
【0046】
前記バイオインクの印刷適性特性は、種々の細胞型および生体分子成分の互いに対する特定の堆積および配置を可能にする。組成およびアーキテクチャは、特定の問題について定義され得る。例えば、線維芽細胞を、線維芽細胞の濃度がより低い層の上に高濃度の線維芽細胞を堆積した層で勾配をつけてバイオプリントできる。代替的に、特定の成分を表皮区画に組み込むか、または真皮区画において層状化し、該当の細胞型を封じ込めて、組織モデル内での成分の細胞の効果、パラクリンシグナル伝達、および/または細胞の機能を調査できる。
【0047】
機能化されたバイオインクを用いた皮膚モデルの生成は、天然の皮膚の表皮区画、真皮区画および皮下組織区画を模倣するように層状化でき、体の内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道の機能的な皮膚組織モデルを提供できる。バイオインクは、植物、微生物、動物および/またはヒト源からの、合成または天然由来のバイオポリマー、高分子、タンパク質および小分子から配合される。バイオポリマーは、限定されずに、多糖類、例えば種々のフィブリル構造のセルロース、動物/ヒトの組織から誘導された細胞外マトリックスタンパク質、例えばグリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、ラミニンおよびアグリカンを含む。バイオインク配合物は、印刷適性、粘度、架橋能力、分解および細胞代謝/活性を高めるための他の成分で構成される。もたらされるバイオインクは、該当の細胞型の代謝、増殖および機能性を支えるための独自の能力を有する。種々の条件、例えば年齢、可能性のある疾患、タンパク質の抽出方法の動物またはヒトなどの皮膚から誘導される、皮膚に特異的なラミニン、皮膚に特異的な細胞外マトリックスタンパク質、および他の高分子、例えばエクソソーム、タンパク質、リガンド、因子であって種々の動物/ヒトの組織から単離/抽出されるものでバイオインクを機能化することにより、ニッチ環境が得られ、それが動物由来とヒト由来との両方の細胞株、幹細胞、例えばESCsまたはiPSCs、細胞状添加物、例えば脂腺細胞、腺細胞、胞細胞および初代細胞を支える。
【0048】
用いられる細胞は好ましくはヒト由来のものであり、特に前臨床に基づく用途について3D皮膚組織モデルの関連性を高め、臨床試験への変換および/またはヒトの応答を模倣することを容易にして、動物実験を制限する。それらの細胞はヒトまたは動物由来のものであってよく、それは現在皮膚の研究において利用されている細胞株、初代細胞、および細胞の不均一混合物であってよい。細胞は、限定されずに、初代の、不死化された、およびESCまたはiPSC誘導された真皮線維芽細胞(皮膚の真皮区画をモデリングするために一般に使用される)、および初代の、不死化された、およびESCまたはiPSC誘導されたケラチノサイト(皮膚の表皮区画をモデリングするために一般に使用される)を含む。線維芽細胞の真皮の機能は、細胞外マトリックス組成物の組成を和らげることである。ケラチノサイトの表皮の機能は、表皮の皮膚のバリアを提供することである。初代の、不死化された、およびESCまたはiPSC誘導されたメラノサイトは、皮膚の表皮区画の光保護機能をモデリングするために一般に使用される。初代の、不死化された、およびESCまたはiPSC誘導された脂肪細胞は、真皮線維芽細胞と組み合わせて、皮膚の皮下組織区画をモデリングするために利用される。ヒト関連性を高めるために、上皮幹細胞、内皮細胞、例えばヒトの真皮微小血管内皮細胞、シュワン細胞、樹状細胞および/またはマクロファージ、初代の、不死化された、およびESCまたはiPSC誘導されたもの、且つ/または細胞状添加物、例えば限定されずに脂腺細胞、腺細胞および胞細胞を組み込んで、より複雑な組織モデルをもたらすことができる。
【0049】
本開示の皮膚組織モデルを、化粧品化合物の評価および/または発見、医療機器の評価、スキンケア化合物の評価および/または発見、医薬品の評価および/または発見、再生医療の研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、組織工学の開発、毒性学研究、刺激性研究、アレルゲン試験、および皮膚生理学および/または病理学のために使用でき、化学的および/または機械的な刺激物が必要とされる。従って、機能するためには、模倣する因子にモデルが応答する必要がある。該分野で使用される一般的な化学的因子は、ヒアルロン酸、VEGF、FGF、EGF、KGF、CaCl2、L-アスコルビン酸、および他の分子であって、例えば、線維芽細胞による細胞外マトリックスの過剰産生、並びに血管新生またはケラチノサイトの増殖の高まりを誘導できるものである。例えば潅流培養およびフローチャンバーを使用することによって、機械的因子を培養物にもたらして、天然組織において存在し得る機械的応力条件を再現することができる。
【0050】
従って、本開示は、第1の態様において、自動化された方法で皮膚組織モデルを製造する方法であって、以下の段階:
(a) 少なくとも1つのバイオインクAを準備する段階、
(b) 少なくとも1つの細胞型Aを準備する段階、
(c) 少なくとも1つの因子Aを準備する段階、
(d) 段階(a)~(c)の成分、および任意に他の成分を、その混合物についての印刷適性を可能にして且つ前記少なくとも1つの細胞型Aについて生存可能な状態を提供する割合で混合する段階、
(e) 得られる混合物を、自動化され且つ再現性のある方法でバイオプリントまたは吐出することにより、組織モデルが形成され、前記組織が皮膚組織として特徴付けられる前記段階
を含む方法を提供する。
【0051】
前記バイオインクAは、少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含む。典型的には、前記バイオインクAは(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×102~1×107の細胞状添加物を含む。
【0052】
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものである。典型的には、前記少なくとも1つの細胞型Aは、バイオインク1mLあたり1×103~10×107の細胞および/または1cm2あたり1×103~10×105の細胞の量で使用される。
【0053】
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。典型的には、前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子については1×10-9~1×10-3モル、および他の因子、例えばタンパク質または分子については1×10-6~1×10-1モルおよび/または1~1000mg/mLの量で使用される。
【0054】
段階(e)は、好ましくは、押出、シリンジまたはインクジェットに基づくバイオプリント装置を使用して実施される。
【0055】
1つの実施態様によれば、前記方法において、少なくとも1つの追加的な細胞型A、少なくとも1つの追加的なバイオインクA、および少なくとも1つの追加的な因子Aを準備する。好ましくは、存在する2つ以上のバイオインクが配合されて、バイオインクAは1つの細胞型Aを支持し、追加的な(単数または複数の)バイオインクAは第2のまたはさらなる細胞型Aを支持する。例えば3つのバイオインクおよび3つの細胞型Aが準備される場合、第1のバイオインクAは第1の細胞型Aを指示し、第2のバイオインクAは第2の細胞型Aを指示し、そして第3のバイオインクAは第3の細胞型Aを指示する。しかしながら、2つのバイオインクを準備して、同じ細胞型Aではあるが異なる配合を有するものを支持して、異なる方法で細胞型Aについての細胞の発達を調節または制御することも可能である。さらには、1つのバイオインクが1つより多くの細胞型、例えば第1および第2の、およびさらに第3以上の細胞型Aを支持することも可能である。
【0056】
1つの実施態様によれば、前記第1の態様による方法はさらに、細胞懸濁液Aを準備し、および前記細胞懸濁液Aを、段階(e)において形成された組織に施与する段階(f)を含む。前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む。
【0057】
バイオインク中で使用されるバイオポリマーは、ナノセルロースまたはナノフィブリルセルロース、またはゼラチン、例えばゼラチンメタクリレート、またはコラーゲンから選択される。バイオポリマーは植物原料に由来する多糖類、例えばアラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンおよびトラガカントであってよい。
【0058】
増粘剤成分は、種々の原料、つまり多糖類またはタンパク質を有することができ、ナノセルロース、グルコマンナン,キサンタンガム、ゲランガム、ジウタンガム、ウェランガム、プルラン(Pullalun)ガム、コラーゲンおよびゼラチンを含み得る。
【0059】
上記で特定されたとおり、バイオインクの各々の成分は一般に印刷適性のために必須である。バイオインクはメタクリル化ゼラチンを含み得る。メタクリル化ゼラチン(GelMA)はゼラチンと無水メタクリル酸(MA)との反応によって製造される。ゼラチンの側鎖上に存在する多数のアミノ基が、無水メタクリル酸におけるメタクリロイル基によって置き換えられ、変性ゼラチンを形成する。GelMAは、メタクリロイル基の存在ゆえに架橋の特徴を得る。GelMAヒドロゲルは細胞挙動を支えることができ、且つゼラチンの生体適合性および分解特性は影響を受けない。さらに、GelMAヒドロゲルの物理的特性および化学的特性を、様々な用途の要請に合うように柔軟に調整できる。
【0060】
メタクリル化ゼラチンを使用することにより、バイオインクを用いたバイオプリンティングによって製造された構造の機械的安定性が強化される。さらに、バイオインク中にメタクリル化ゼラチンを含むことにより、構造を架橋して、構造の機械的安定性をさらに強化することが可能である。
【0061】
さらに、バイオインク中に増粘剤を含むことにより、バイオインクの粘度が上昇することによってバイオインクのレオロジー特性が改善される。これはバイオプリンティング工程を改善し、なぜなら、バイオプリンティング形状の忠実度が改善されるからである。この態様において、バイオプリンティング形状の忠実度とは、バイオプリントされる構造が印刷に際しその形状を維持することを意味する。
【0062】
増粘剤は天然または合成のものであってよい。好ましくは、増粘剤は細胞に中立的な影響を有する天然の多糖類である。多糖類増粘剤、例えばキサンタンガム、グルコマンナンおよびナノセルロースは、3Dバイオプリンティング用途のためのバイオインクにおける特に有利な増粘剤であることが示されている。それらはバイオインクの粘度を変え(図7参照)、印刷温度のウィンドウをシフトさせ且つ高め(図8参照)、且つ複雑な多層構造の印刷の解像度を改善することができる(図9参照)。ゲル化点への影響は、バイオプリンティング工程の間の温度依存性の低下をもたらす。より具体的には、これは印刷適性温度を20~24℃の範囲に動かし、それは達成が遙かに容易である。バイオプリンティングは、温度制御された印刷ヘッドを用いなくても、制御の強化のために温度制御された印刷ヘッドを用いても実施できる。さらに、増粘剤はバイオインクのずり減粘特性を改善できる(図10参照)。増粘剤によってもたらされる粘度の増加は、バイオプリンティング工程の間のずり応力から細胞を保護するようにも見える。
【0063】
さらに、バイオインクはバイオポリマーを含むことができ、それはバイオインクの架橋能力に寄与できる。例えば、アルギン酸塩をバイオポリマーとして使用できる。アルギン酸塩はさらに、バイオインクのイオン架橋に寄与する。
【0064】
細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分は、好ましくはヒトおよび/または動物源に由来し、且つ脱細胞化細胞外マトリックス、単離ラミニン、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、プロテオグリカン、アグリカン、精製された分子タンパク質、例えばコラーゲン、エラスチン、フィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフを含む群から選択され得る。さらに、細胞外マトリックス成分は他の高分子、例えばエクソソーム、タンパク質、リガンド、および/または因子であって、種々の動物/ヒトの組織から単離/抽出されるものを含み得る。しかしながら、合成の細胞外マトリックスタンパク質を使用することも可能である。
【0065】
光開始剤は、好ましくはフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)またはirgacureから選択される。しかしながら、当業者は、製造される皮膚組織モデルの目的に適した光開始剤を選択できる。
【0066】
より複雑な組織モデルを得るために、細胞状添加物がバイオインクに添加される。好ましくは、それは脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞の1つ以上から選択される。しかしながら、当業者は、製造される皮膚組織モデルの目的に適した組織モデルを得ることを助ける細胞状添加物を識別できる。
【0067】
前記1つ以上の細胞型Aは、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞および/またはマクロファージ
から選択される。
【0068】
前記少なくとも1つの細胞型Aは、健康な、罹患した且つ/または欠損のあるヒトおよび/または動物源の体の、巨視的な位置、例えば顔面の位置、胸部、腹部、尿道、食道および/または頭部に由来、且つ/または微視的な位置、例えば真皮乳頭層または真皮網状層に由来する。
【0069】
前記因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸である。前記因子Aは、少なくとも1つのバイオインクAおよび/または追加的なバイオインクAに化学的に取り付けられるか、または捕捉され、且つ/または少なくとも1つの細胞型Aと共に組み込まれることができる。
【0070】
前記組織は、2つ以上の区画および/または1つ以上の細胞勾配が組織内で生じるようにバイオプリントまたは吐出され得る。前記組織はさらに、皮下組織区画、真皮区画および/または表皮区画を形成するようにバイオプリントまたは吐出されることができ、且つ任意に、1つ以上の区画内で細胞勾配がバイオプリントまたは吐出される。前記2つ以上の区画および/または細胞勾配は、同時に、および/または後で1回以上、バイオプリントまたは堆積され得る。表皮区画は、外向きで且つ環境に面している皮膚組織の部分である表皮に相応し、皮下組織区画は、他の内部組織に面する皮膚組織の下の部分である皮下組織に相応し、且つ真皮区画は、表皮と皮下組織との間の皮膚組織の部分である真皮に相応する。図2は、皮膚組織モデルが、表皮区画A、および真皮区画内での勾配、BおよびCを有してバイオプリントされた実施態様を示す。しかしながら、そのデザインが3つ全ての区画について同じであって、区画Cにおける細胞型およびバイオインクの組成を調整して皮下組織を表してもよい。従って、種々の区画が皮膚の表皮区画(A)、真皮区画(B)および皮下組織区画(C)を表すことができる。さらに、皮膚組織モデルの種々の層内での生体分子の分布、および/または組成物内での種々のバイオインクの層状化を図2において、そこに示されるような細胞の勾配によって図示する。
【0071】
上記で開示された細胞懸濁液Aを、バイオプリントされた真皮区画に、および/またはバイオプリントされた皮下組織区画に、および/またはバイオプリントされた表皮区画に添加できる。
【0072】
製造された皮膚組織モデルをさらに、培養方法に供することができ、ここで、前記皮膚組織モデルは、
(i) 培地に浸漬することにより、
(ii) 脈管系を模倣するためのフローデバイス内で、且つ/または
(iii) 気液界面で
培養される。
【0073】
1つまたはいくつかの培養方法の組み合わせを、同じ皮膚組織モデルのために、同時におよび/または順次使用できる。気液界面を使用する場合、皮下組織区画は液体培地と接触し、表皮区画が空気に晒されるように皮膚組織を配置することが好ましい。培養のためにフローデバイスを使用して、脈管系を介した栄養分の分布を模倣し、且つ/または内側の皮膚面上での、例えば尿道の場合における、体液の散発的な流れを模倣できる。一般に、本開示による皮膚組織モデルの培養は、適した培地において実施されるはずであり、なぜなら、当業者は皮膚組織モデルにおいて使用される細胞に基づいて簡単に特定できるからである。さらには、標準的な培養条件、例えば約37℃の温度、約5%のCO2、および約95%の相対湿度が適用されるべきである。培養条件および培地は、当業者にとって通常の一般的な知識の一部である。
【0074】
皮膚組織モデルがバイオプリントされた後、且つ上述の培養方法のいずれかを用いて培養している間に、前記因子Aを、製造された皮膚組織モデルに連続的に添加することも可能である。これは、使用される因子Aに依存して、皮膚組織モデルの成熟をもたらすことができる。代替的に、特定の条件を誘導するなど、前記皮膚組織モデルにおいて行われるべき研究に適した皮膚組織モデルの開発をもたらすことができる。
【0075】
従って、本発明による皮膚組織モデルの製造方法は、成分を層状化して、皮膚における細胞、生体材料および生体分子の天然の分布を模倣することを可能にする。さらに、これは皮膚内でのニッチ環境を作り出すことができる。さらに、皮膚組織モデルを適した培養方法で培養することによって、天然の環境を模倣できる。従って、本発明の方法は、多種の3Dバイオプリント技術を用いた組織モデル、および製造される皮膚組織モデルの多種の用途において、使用者が複雑な3D構造を生成することを可能にする。
【0076】
第2の態様によれば、本開示は、少なくとも1つのバイオインクA、少なくとも1つの細胞型Aおよび少なくとも1つの因子Aを含む、3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルを提供する。前記バイオインクAは、少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含む。前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものである。前記少なくとも1つの因子Aは、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子であり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する。3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル内に含まれる成分および量は、一般に、本発明の方法について上記で開示されたものと同じである。
【0077】
前記バイオポリマーは、コラーゲン、メタクリレートコラーゲン(ColMA)、ゼラチン、メタクリレートゼラチン(GelMA)、セルロース、ナノフィブリルセルロース、アルギン酸塩またはキトサンなどのバイオポリマーから選択される。バイオポリマーは植物原料に由来する多糖類、例えばアラビアガム、タラガム、グルコマンナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナンおよびトラガカントであってよい。
【0078】
第2の態様の1つの実施態様によれば、前記皮膚組織モデルは、追加的な細胞懸濁液Aを含み、前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む。
【0079】
前記1つ以上の細胞型Aは、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞および/またはマクロファージ
から選択される。
【0080】
前記モデルは、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画を表す少なくとも1つの区画を含むことができる。前記モデルはさらに、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画に相応する生物学的勾配を表す2つ以上の区画を含むことができ、且つ任意に、1つ以上の前記区画内で生物学的勾配を含むことができる。
【0081】
第3の態様によれば、上記による3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用であって、以下の1つ以上:
(i) 3D環境内での細胞活性、例えば細胞分布、遊走、増殖、マトリックス産生、他の細胞および周囲の環境との相互作用などの理解を得るための発生生物学、および/または
(ii) 化粧品およびスキンケア製品の評価、毒性研究、刺激性研究、アレルゲン試験、代謝研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての化合物試験、および/または
(iii) 組織の再生および若返りの用途、例えば組織リモデリング、細胞増殖、細胞代謝、細胞分化/成熟、細胞・細胞相互作用、細胞・マトリックス相互作用、細胞クロストーク/シグナリング、血管新生など、および/または
(iv) 創薬、ターゲットバリデーション、アレルゲン研究、毒性研究、代謝研究、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての薬学的用途、および/または
(v) 内側および/または外側の皮膚面と接触する装置のための、医療機器の評価および開発、毒性研究、アレルゲン研究など、および/または
(vi) 分散細胞、スフェロイド、オルガノイドなどとしての、細胞分化および成熟に焦点を当てた幹細胞研究
における、前記使用が提供される。
【0082】
従って、それは化粧品化合物の評価および/または発見、医療機器の評価、スキンケア化合物の評価および/または発見、医薬品の評価および/または発見、再生医療の研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、組織工学の開発、毒性学研究、刺激性研究、アレルゲン試験、および皮膚生理学および/または病理学に関連し得る。
【0083】
本発明による3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用を、内側の皮膚面、例えば食道および尿道と、外側の皮膚面、例えば皮膚に関する両方の用途において実施できる。
【実施例
【0084】
製造手順の例
下記はバイオインクA、細胞型Aおよび追加的な細胞型A、および1つの因子Aを有する皮膚組織モデルを製造する例である:
モデルのデザイン: モデルをデザインするために、任意の種類の3Dモデリングソフトウェアを使用して、スキャンされたモデル、例えばCTスキャンまたはMRスキャンを修正するか、またはモデルを最初から作り出すことができる。最初からモデルを作り出す場合、種々の種類の区画を構成ブロックとして使用できる。図1は、3種の区画の種類、およびどのようにそれらを組み合わせてモデルを作り出すことができるかの2つの例を例示する。
【0085】
A ブロック区画。これらのブロックは異なる寸法を有することができ、且つ互いに積み重ねおよび/または配置して、モデル内で種々の区画を形成できる。印刷の間ブロックの形状を保持できる堅牢なバイオインク配合物を使用して、ブロックを利用してモデル内またはモデル全体にわたって1つまたはいくつかの微小区画を形成できる。それらを使用して、種々のバイオインクA、細胞型Aおよび/または因子Aを、モデルの種々の層/レベルにおいて堆積することを可能にすることにより、勾配を形成することもできる。それらのブロックは円柱形状ものであってもよいし、および/または任意の多面体の形状であってもよい。
【0086】
B. 縁区画。縁は、ブロックモデルの上部に成型されて、例えば、1つまたは複数のウェルを形成できるか、またはモデル内で区画またはモデルの一部を分離できる壁構造である。モデルの上部に配置される場合、それは、細胞、例えばケラチノサイトおよび/またはメラノサイト、および/または因子(本開示で例示されたようなもの)を有するまたは有さない、粘性の低いバイオインクを保持する容器としてはたらくことができる。A+Bの1つのそのようなモデルを図1に例示する。
【0087】
C. 硬質区画。硬質区画は例えば、溝として使用できるか、且つ/またはモデル内またはモデル上部で集合体を形成する穴を作り出す。ブロックモデルの上に、またはブロックモデル内に配置される場合、形成された穴は、細胞および/または追加的な因子を有する堆積物バイオインクを穴の底部に共に導くことによって、スフェロイド、オルガノイド、腺および/または小胞形成のための集合点として利用されることができる。A+Cの1つのそのようなモデルを図1に例示する。
【0088】
設定され且つ完成したデザインは、モデルの設計図である。図2は3つのブロック区画からなるモデルの設計図を例示し、ここで、ブロックを利用して真皮内の線維芽細胞の勾配を形成している。ここで、ブロックの底面は8×8mmに設定されている。図2における区画Aは皮膚の表皮を表し、且つバイオインクA、細胞型A、バイオインクA1mLあたり0.5×106~50×106の細胞、および80%の直線インフィルで、1つの中実の層として印刷されている。図2における区画Bは、この例においては皮膚の真皮乳頭層を表し、且つバイオインクA、追加的な細胞型A、バイオインクA1mLあたり5×106~10×106の細胞、および20%の直線インフィルで、1つの多孔質の層として印刷されている。図2における区画Cは、この例においては皮膚の真皮網状層を表し、且つバイオインクA、追加的な細胞型A、バイオインクA1mLあたり0.5×106~5×106の細胞、および10%のグリッドインフィルで、2または3つの多孔質の層として印刷されている。そのようなモデルの利点は、中実層Aから出発して、次に多孔質層Bを印刷し、最後に最も多孔質の構造Cを上に印刷して、上下反対に印刷されることである。多孔質構造は、より高速の培地の拡散および材料の効率的な使用を可能にし、印刷される間に形状を保つように安定なバイオインクを必要とする。
【0089】
ブロックA、BおよびCの高さは、モデルを印刷することが意図されているノズルまたはニードルを考慮して設定される。内径0.41mmを有する22Gノズルについては、層高さ0.4~0.5mmを各々意図される層について使用できる。設計図のgコードを作り出すために、各々のブロックA、BおよびCを別々に3Dファイルとして、例えばstlフォーマットでセーブし、次いでスライスソフトウェアにインポートする(そうでない場合、これは作り出される3Dファイルと同じプログラムにおいて可能である)。スライスソフトウェアにおいて、ブロックを互いの上に配列し、ブロックAをプリントヘッド1、ブロックBをプリントヘッド2、およびブロックCをプリントヘッド3に割り当てる。上述のとおり、各々のブロックについてインフィルパターンおよび密度を設定し、gコードファイルをエクスポートする。バイオプリンタにおいて速度または押出速度を調整できない場合は、適宜、スライスプログラムにおいてそれらのパラメータも設定する。速度5~10mm/秒が良好な開始点であるが、バイオインクAの特徴、例えば粘度および温度に合わせる必要があるだろう。バイオインクAのパラメータ、例えば粘度、温度およびずり減粘、並びにノズルまたはニードルの選択は、印刷のために必要な押出速度または圧力に影響する。
【0090】
モデルのバイオプリント: gコードが正しく機能していること、および必要な全ての材料、例えばノズル、カートリッジおよびルアーロックアダプタが印刷前に滅菌されていることを確認する。ブロックの区画あたり0.5~1.5mLの予熱したバイオインクAが24の複製を印刷する。つまり、全24のウェルプレートである。第1に、細胞のプロトコルに従い、細胞型Aと追加的な細胞型Aとを分けて計数することによって3つの細胞懸濁液を調製する。第2に、適切な数の細胞を再懸濁して、バイオインクA1mLあたり100μLの細胞懸濁液の全容積で、栄養液内での所望の細胞濃度を達成する。バイオインクを容積1~3mLの3つの異なるシリンジに分配し、適切な細胞型Aおよび/または適切な濃度の追加的な細胞型Aと混合する。適切な細胞懸濁液と適切な量のバイオインクとを、例えばメス/メスルアーロックアダプタで接続された2つのシリンジを使用して混合し、埋め込まれた細胞を有するバイオインクをカートリッジに移す。そのカートリッジを割り当てられた印刷ヘッドに取り付け、設計図において設定されたとおり、ブロックAのための細胞型Aを有するバイオインクAはプリントヘッド1、ブロックBのための追加的な細胞型Aを有するバイオインクAはプリントヘッド2、およびブロックCのための追加的な細胞型Aを有するバイオインクAはプリントヘッド3である。この例におけるモデルは上下逆に印刷されたことから、バイオプリントされたモデルを硬化後に裏返して、表皮が上向きになるようにする。バイオプリントされたモデルが既に適切な方向を向いている場合には必要ない。
【0091】
バイオプリントされたモデルの硬化: 硬化は、バイオインクAの特徴を化学的および/または物理的に変化および/または活性化させて、バイオプリントされたモデルを架橋させて安定な構造にする工程である。バイオプリントされたモデルの硬化を、印刷の間に一層毎に、または1つの構成が完了した後、および/またはモデルの全ての複製が印刷され且つ印刷工程が終了した後のいずれかで実施できる。光硬化、例えば365または405nmなどの波長、因子A、例えば酵素またはタンパク質、および/またはイオンを使用して、硬化を行うことができる。この例においては、バイオインクAは15~45秒の間、モデルの上3~5cmの距離のところで光硬化させるか、および/または3~5分間、細胞中性イオン溶液を用いてイオン架橋させることができる。硬化後、試料を細胞培地で標準的な培養条件(37℃、5%のCO2且つ95%の相対湿度)で培養するか、または洗浄して過剰なイオンを除去し、次に、因子A、例えばトロンビンと共に0.01~48時間培養して、バイオインクAにおける天然の特徴、細胞型Aおよび/または追加的な細胞型Aを活性化する。
【0092】
3D培養およびモデルの分析: 完成したら、その目的を満たすように適宜培養および分析する。完全な皮膚組織モデルを形成するため、バイオプリントされた構造は、少なくとも2日間、増殖性細胞培養条件において、培地に浸漬して培養した後、モデルの分化(成熟)を、例えば培地組成を変更すること、またはバイオプリントされたモデルを気液界面へと上げることによって開始することが推奨される。
【0093】
バイオプリントされた皮膚組織モデルを培養する間に実施できる分析の例は、試料または構造の一部を染色することによる、生存細胞または死細胞についての生存率分析である。この分析は、バイオプリントされた構造内で細胞がどれだけ良好であるかに加え、細胞の形態的な発達、移動度および空間的な配置を示す。例えば図3においては、生存率分析を使用して、バイオプリントされた皮膚組織モデルにおいて真皮線維芽細胞が培養条件に依存してどのように異なり得るかを示す。図3Aは、1つのバイオインクAを用いて表皮は有さず3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルにおいて培養された線維芽細胞である一方で、図3Bは同じバイオインクAを用いて表皮を有して3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルにおいて培養された線維芽細胞を示す。図3Bの線維芽細胞のみが、真皮線維芽細胞に典型的な細長い形態を生じさせる。図3Cは、バイオプリントされたモデルの空間的な配置を視覚化するために、生存率分析がどのように使用され得るかを示し、明るいほうの細胞は表皮を表し、強度の低い細胞は真皮線維芽細胞であり、構造内でのそれらの堆積が明らかに見られる。
【0094】
バイオプリントされた皮膚組織モデルにおいて実施され得る分析の他の例は、他の分析法の中でも、qPCR分析のための試料の瞬間凍結、および免疫組織学または免疫蛍光染色のための構造の固定である。図4は、バイオプリントされた皮膚組織モデルの種々の処理におけるタンパク質の発現プロファイルを評価するために、どのように免疫蛍光染色を利用できるかの例を示す。図4においては、真皮におけるエラスチンの発現が特定の因子Aを用いて処理された場合に急激に増加することがわかり、図5においては、処理された試料と未処理の試料との両方において経時的にどのようにI型コラーゲンの発現が生じるかが示される。図6はどのように組織免疫学を利用してバイオプリントされた試料の断面のモデルの成熟を分析できるかの例を示し、ここで、表皮は、バイオインクAおよび細胞型Aを用いてバイオプリントされた、バイオプリントされた真皮の上に形成されていることが注記され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化された方法での皮膚組織モデルの製造方法であって、以下の段階:
(a) 少なくとも1つのバイオインクAを準備する段階、
(b) 少なくとも1つの細胞型Aを準備する段階、
(c) 少なくとも1つの因子Aを準備する段階、
(d) 段階(a)~(c)において準備された成分、および任意に他の成分を、その混合物についての印刷適性を可能にして且つ前記少なくとも1つの細胞型Aについて生存可能な状態を提供する割合で混合する段階、
(e) 得られる混合物を、自動化され且つ再現性のある方法でバイオプリントおよび/または吐出することにより、組織モデルが形成され、前記組織が皮膚組織として特徴付けられる段階
を含み、
前記バイオインクAは少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物、例えば脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞を含み、
前記増粘剤は、ナノセルロース、グルコマンナンおよびキサンタンガムを含む群から選択される多糖類系物質であって、前記バイオインクAの粘度を調整するものであり、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものであり、且つ
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進し、
前記少なくとも1つのバイオポリマーは、ナノセルロース、ナノフィブリルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはメタクリレートゼラチンを含む群から選択される、植物または動物由来のバイオポリマーであり、且つ
前記バイオインクAは、(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×10 2 ~1×10 7 の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、バイオインク1mLあたり1×10 3 ~10×10 7 の細胞および/または1cm 2 あたり1×10 3 ~10×10 5 の細胞の量で使用され、且つ/または
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子については1×10 -9 ~1×10 -3 モル、および1×10 -6 ~1×10 -1 モルおよび/または1~1000mg/mLの他の因子の量で使用される、
前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの追加的な細胞型A、少なくとも1つの追加的なバイオインクA、および少なくとも1つの追加的な因子Aを準備し、その際、2つ以上のバイオインクが配合されて、バイオインクAは1つの細胞型Aを支持し、前記追加的なバイオインクAは第2のまたはさらなる細胞型Aを支持する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
細胞懸濁液Aを準備し、および前記細胞懸濁液Aを、段階(e)において形成された組織に施与する段階(f)をさらに含み、前記細胞懸濁液Aは、
細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、
任意に増粘剤、
細胞型A、
細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、
任意に光開始剤、
任意に細胞外マトリックスタンパク質
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分が、ヒトまたは動物源に由来し、且つグリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、アグリカン、単離ラミニン、グリコールアミノグリカン、例えばヒアルロン酸およびヘパリン、精製された分子タンパク質、例えばフィブリノーゲンおよびフィブリン、および/または精製された分子タンパク質モチーフ、例えばRGDモチーフを含む群から選択され得る、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記光開始剤が、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)またはirgacureから選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞状添加物が、脂腺細胞、腺細胞および/または胞細胞の1つ以上から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の細胞型Aが、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞、および/またはマクロファージ
から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの細胞型Aは、健康な、罹患した、および/または欠損のあるヒトおよび/または動物源の体の、巨視的な位置、例えば顔面の位置、胸部、腹部、尿道、食道および/または頭部に由来、且つ/または微視的な位置、例えば真皮乳頭層または真皮網状層に由来する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階(e)が、押出、シリンジまたはインクジェットに基づくバイオプリント装置を使用して実施される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組織が、2つ以上の区画および/または1つ以上の細胞勾配が組織内で生じるようにバイオプリントまたは吐出される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組織が、皮下組織区画、真皮区画および/または表皮区画を形成するようにバイオプリントまたは吐出され、且つ任意に、1つ以上の区画内で細胞勾配がバイオプリントまたは吐出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上の区画および/または細胞勾配が、同時に、および/または後で1回以上、バイオプリントまたは堆積される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記因子Aが、前記少なくとも1つのバイオインクAおよび/または追加的なバイオインクAに化学的に取り付けられるか、または捕捉され、且つ/または少なくとも1つの細胞型Aと共に組み込まれる、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
製造された皮膚組織モデルをさらに培養方法に供し、ここで、前記皮膚組織モデルは、
(i) 培地に浸漬することにより、
(ii) 脈管系を模倣するためのフローデバイス内で、且つ/または
(iii) 気液界面で
培養される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
1つまたはいくつかの培養方法の組み合わせを、同じ皮膚組織モデルのために、同時におよび/または順次使用する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルであって、
i. 少なくとも1つのバイオインクA
ii. 少なくとも1つの細胞型A
iii. 少なくとも1つの因子A
を含み、前記バイオインクAは、少なくとも1つのバイオポリマー、増粘剤、少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス、および任意に光開始剤および/または細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aは、ヒトおよび/または動物由来の表皮、真皮および/または皮下組織の細胞または細胞株であり、前記細胞は任意に初代細胞、不死化された、およびiPSCまたはESC誘導されたものであり、
前記増粘剤は、ナノセルロース、グルコマンナンおよびキサンタンガムを含む群から選択される多糖類系物質であり
前記少なくとも1つの因子Aは、成長因子、例えば線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、または血管内皮細胞成長因子(VEGF)、および/または小分子、高分子、および/またはタンパク質、例えばサイトカイン、ホルモン、脂質、炭水化物または核酸であって、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するものであり、前記因子Aは表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり、且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進し、
前記少なくとも1つのバイオポリマーは、ナノセルロース、ナノフィブリルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはメタクリレートゼラチンを含む群から選択される、植物または動物由来のバイオポリマーであり、且つ、
前記バイオインクAが、(バイオインクの総質量に対して)2~15質量%、好ましくは2~10質量%の少なくとも1つのバイオポリマー、0.5~3質量%の増粘剤、0.1~2質量%の少なくとも1つの細胞外マトリックスまたは脱細胞化マトリックス成分、および任意に0.05~1質量%の光開始剤、および/または1mlあたり1×10 2 ~1×10 7 の細胞状添加物を含み、
前記少なくとも1つの細胞型Aが、バイオインク1mLあたり1×10 3 ~10×10 7 の細胞および/または1cm 2 あたり1×10 3 ~10×10 5 の細胞の量で使用され、且つ/または
前記少なくとも1つの因子Aが、成長因子については1×10 -9 ~1×10 -3 モル、および1×10 -6 ~1×10 -1 モルおよび/または1~1000mg/mLの他の因子の量で使用される、
前記3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項17】
追加的な細胞懸濁液Aをさらに含み、前記細胞懸濁液Aは、細胞関連培地、および/または合成由来または細菌、植物および/または動物由来の材料、例えばゼラチンメタクリレート、コラーゲン、コラーゲンメタクリレート、アルギン酸塩またはセルロース、任意に増粘剤、細胞型A、細胞型Aに特異的であり、細胞型Aの代謝の変化または異常代謝を刺激するタンパク質または分子である因子であって、表皮細胞、真皮細胞および/または皮下組織細胞に特異的であり且つ細胞増殖、細胞修復、真皮血管新生、皮膚組織の成熟、および/または他の細胞刺激、例えば運動性および/または阻害を促進する因子A、任意に光開始剤、任意に細胞外マトリックスタンパク質を含む、請求項16に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項18】
前記1つ以上の細胞型Aが、
(i) 表皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、ケラチノサイト、メラノサイト、および/または上皮細胞、または
(ii) 真皮細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、線維芽細胞、内皮細胞、シュワン細胞および/または樹状細胞、または
(iii) 皮下組織細胞、例えばヒトおよび/または動物由来の誘導多能性幹細胞、胚幹細胞、他の幹細胞、初代細胞、および細胞株に由来する、脂肪細胞、線維芽細胞、および/またはマクロファージ
から選択される、請求項16または17に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項19】
前記モデルが、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画を表す少なくとも1つの区画を含む、請求項16から18までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項20】
前記モデルが、皮下組織区画、真皮区画、および/または表皮区画に相応する生物学的勾配を表す2つ以上の区画を含み、且つ任意に、1つ以上の前記区画内で生物学的勾配を含む、請求項16から19までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデル。
【請求項21】
請求項16から20までのいずれか1項に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用であって、以下の1つ以上:
(i) 3D環境内での細胞活性、例えば細胞分布、遊走、増殖、マトリックス産生、他の細胞および周囲の環境との相互作用などの理解を得るための発生生物学、および/または
(ii) 化粧品およびスキンケア製品の評価、毒性研究、刺激性研究、アレルゲン試験、代謝研究、組織および/または細胞の若返りの研究、光線過敏性試験、薬剤および/または分子化合物吸収試験、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての化合物試験、および/または
(iii) 組織の再生および若返りの用途、例えば組織リモデリング、細胞増殖、細胞代謝、細胞分化/成熟、細胞・細胞相互作用、細胞・マトリックス相互作用、細胞クロストーク/シグナリング、血管新生など、および/または
(iv) 創薬、ターゲットバリデーション、アレルゲン研究、毒性研究、代謝研究、細胞分化/成熟、スフェロイド分化/成熟、オルガノイド分化/成熟などについての薬学的用途、および/または
(v) 内側および/または外側の皮膚面と接触する装置のための、医療機器の評価および開発、毒性研究、アレルゲン研究など、および/または
(vi) 分散細胞、スフェロイド、オルガノイドなどとしての、細胞分化および成熟に焦点を当てた幹細胞研究
における前記使用。
【請求項22】
内側と外側との両方の皮膚面、例えば皮膚、食道および尿道に関連する用途における、請求項21に記載の3Dバイオプリントされた皮膚組織モデルの使用。
【国際調査報告】