(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-17
(54)【発明の名称】再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム用の熱バリア材料
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20220809BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20220809BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20220809BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20220809BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/293
H01M50/291
H01M10/658
H01M50/204 401E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506327
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020044442
(87)【国際公開番号】W WO2021022130
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ミッシェル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロゼン,ケルスティン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ミデンドルフ,クラウス エイチ.ジー.
(72)【発明者】
【氏名】クエステラズ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クラップ,ジャン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ガグノン,ドナルド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥグラス,エミー
(72)【発明者】
【氏名】タルピン,ロバート エイチ.
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC02
5H031CC05
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH03
5H031KK02
5H040AA27
5H040AA37
5H040AS07
5H040AS13
5H040AS14
5H040AT02
5H040AT06
5H040JJ04
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN00
(57)【要約】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリア及び/又は火炎バリアとして使用するための多層材料が提供される。多層材料は、無機接着剤による無機粒子及び無機繊維を含む不織布層に結合された少なくとも1つの無機布地層を含み、無機接着剤である。無機接着剤は、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤とを含む改質無機接着剤であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層に結合された少なくとも1つの無機布地層を含み、前記無機接着剤は、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、多層材料。
【請求項2】
前記無機布地が、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、浸出及びイオン交換繊維(leached and ion-exchanged fibers)、セラミック繊維、ケイ酸塩繊維、スチールフィラメント、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項3】
前記無機布地が、ガラス繊維布地である、請求項1又は2に記載の多層材料。
【請求項4】
前記ガラス繊維布地が、ケイ酸カルシウムコーティングでコーティングされている、請求項3に記載の多層材料。
【請求項5】
前記少なくとも1つの不織布層が、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、多結晶繊維、非バイオ永続繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つの不織布層が、無機紙又は無機基板を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項7】
前記不織布層が、ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒子、並びに有機接着剤結合剤を含む無機絶縁紙である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項8】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒子、並びに有機結合剤を含む無機紙と、
無機接着剤によって前記無機紙の主表面に結合された表面コーティングされたガラス繊維布地層と、を含む、多層材料。
【請求項9】
前記ガラス繊維布地が、ケイ酸カルシウムコーティングでコーティングされている、請求項8に記載の多層材料。
【請求項10】
前記無機接着剤が、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、請求項8又は9に記載の多層材料。
【請求項11】
前記無機接着剤が、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99.9重量%の無機成分と、0.01~0.1重量%の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項12】
前記有機添加剤が、ポリビニルアルコールである、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項13】
前記無機布地が、0.3~3mmの範囲内の厚さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項14】
前記無機布地が、400g/m2を超える坪量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項15】
前記少なくとも1つの不織布層が、100~2500g/mの範囲内の重量を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項16】
前記多層材料が、0.7~5mmの総厚を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項17】
前記無機接着剤によって不織布層の露出表面に結合された第2の布地層を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の多層材料。
【請求項18】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層の第1の主表面に結合された第1の無機布地層と、
前記無機接着剤によって前記不織布層の第2の主表面に結合された第2の無機布地層と、を備え、
前記無機接着剤は、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、多層材料。
【請求項19】
少なくとも1つの電池セルと、
前記多層材料は、熱暴走事象中に火炎バリアを提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載の多層材料と、を備える、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
【請求項20】
前記多層材料が、前記少なくとも1つの電池セルに面する前記無機布地と共に配置されている、請求項19に記載の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
【請求項21】
前記多層材料が、前記少なくとも1つの電池セルと前記貯蔵システムの蓋との間に配置されている、請求項19又は20に記載の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
【請求項22】
前記多層材料が、接着剤で前記蓋に取り付けられている、請求項21に記載の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、例えば、電池パック内の複数の単一の再充電可能な電池セル又は電池セルモジュールを備える、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとしての多層材料の使用に関する。特に、本発明は、電動ビークル(electric vehicle)電池モジュールに関し、具体的には、電池モジュールの熱暴走事象を管理するためのブラスト及び耐熱性バリア物品に関する。
【0002】
例えば、携帯電話及び携帯型コンピュータ又は電気自動車若しくはビークル若しくはハイブリッド車の電力供給を含む、例えば、リチウムイオンセルなどのいくつかの単一の電池セルを含む再充電可能若しくは再装填可能な電池又は再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムが知られており、いくつかの技術分野で使用されている。
【0003】
また、リチウムイオンセルなどの特に再充電可能な電池セルは、時に、セル内の短絡、不適切なセル使用、製造欠陥、又は極端な外部温度への曝露などの事象によって引き起こされる内部過熱を受けることが知られている。この内部過熱は、高温によって引き起こされるセル内の反応速度が、引き抜かれ得るよりも多くの熱がセル内で発生する点まで増加し、発生した熱が、反応速度の更なる増加をもたらし、発生した熱の変化につながる場合に、いわゆる「熱暴走」につながる可能性がある。例えば、リチウムイオン(Liイオン)電池では、例えば、そのような欠陥セル内で発生する熱は、局所的ホットスポットにおいて、500℃~1000℃に達することができる。
【0004】
特に、そのような場合では、欠陥のある電池セル又はセルパックで発生した熱が隣接するセルに広がり得、次いで過熱を引き起こし、次いで、熱暴走を受ける可能性があるため、欠陥のあるセル又はセルパックから、貯蔵システムの他の部分又は貯蔵システムの周りへの、熱伝達を遮断又は少なくとも低減することが不可欠である。また、上述の温度で処理されたときに破壊又は損害され得、電気的不足を引き起こし、それにより、更なるセルが熱暴走するので望ましくない影響をもたらす可能性がある、貯蔵システムの周りの部品への熱伝達を制限することが重要である。
【0005】
したがって、特にまだ影響を受けていない電池セル又はパックを含むが、電池セルを含むシステム又はデバイス又は装置の構築要素を囲む、発生した熱に対して、過熱された電池セル又は電池セルのパックの環境を保護するための安全上の注意事項を提供することは通常である。
【0006】
この目的のために、例えば、過熱された電池セル又は電池セルのパックから、他の電池セル若しくは電池のセルパック及び/又は貯蔵システムの環境への熱伝達を防止又は低減するために、貯蔵システムの内部に熱的に絶縁されたバリア要素を挿入することが提案されている。
【0007】
これは、例えば、米国特許出願公開第2006/0164795号(Jonesら)又は米国特許第8,541,126号(Hermannら)に記載されている。これらの先行技術文献によれば、熱バリア要素は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カルシウムケイ酸マグネシウム、又はアルミナケイ酸塩などのセラミック材料からなり得、この材料は、約500℃~約1500℃以上の高い融解温度を提供し、すなわち、電池における熱暴走事象中の短時間でも通常達する温度をはるかに上回り、50W/mK未満の熱伝導率などの比較的低い熱伝導率(25℃で測定)と組み合わされる。そのようなセラミック要素は、例えば、好適な耐熱性の樹脂を含浸させた当該セラミック材料のいくつかのラミネート(laminates)を圧縮することによって生成されるプレートからなり得る。
【0008】
欧州特許第3142166(A1)号では、特に、実質的に剛性のプレート及び圧縮性層がそれらの大きな表面に垂直方向に交互に配置された層状アセンブリである電池用の熱的に絶縁されたバリア要素として有用な圧縮性複合材料が開示されている。
【0009】
2018年3月14日にグローバルレジストリで確立された米国の「Technical Regulation on the Electric Vehicle Safety (EVS)」であるグローバル技術規制No.20によれば、以下は、将来のビークルに必要とされる。
【0010】
可燃性電解質を含む再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)を備えたビークルの全体的な安全性を確保するために、ビークル乗員は、熱伝播(内部短絡による単一のセル熱暴走によってトリガされる)から生じる危険な環境に曝されるべきではない。第1の目標は、熱伝播を完全に抑制することである。熱伝播を完全に抑制することができない場合、熱事象の警告後5分以内に、外部からの火災又は爆発が発生せず、客室に煙が入らないようにする必要がある。
【0011】
再充電可能なエネルギー貯蔵システム用のハウジングは、例えば、アルミニウム又は有機ポリマーシート成形化合物から作製され得る。両方とも600℃以上の温度に達するとすぐに損傷する可能性がある。スチールケーシングでさえ、例えば、電気絶縁材料の事故又は機能不全に起因するケーシングの変形などの特定の状況ではリスクがあり得る。600℃より高い温度に達するハウジング内での熱暴走事象が存在するとすぐに、熱、及びガスがハウジングから出るリスクがある。
【0012】
試験可能であるために、製品が上記の要件を満たす場合、いくつかの試験方法が開発されてきたが、それらのうちの1つはいわゆる釘刺し試験(Nail-Penetration Test)である。
【0013】
更なる傾向は、特に自動車産業において、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムがより大きくなり、より多くのエネルギーを運ぶためにエネルギー密度がより高くなり、ビークルが貯蔵システムを再充電することなく完全に充電された貯蔵システムで駆動することができる範囲を拡大するのに役立つことがある。そのようなより大きな貯蔵システムに欠陥がある場合、それらのシステムに蓄積されたエネルギーがより高いため、以下の反応もより強く得る可能性がある。これは、より高い温度につながる可能性がある。
【0014】
ニッケル金属水素化物又はリチウムイオン(Liイオン)を含む再充電可能な電池は、エネルギーを貯蔵し、電力を供給するために電動ビークルで使用される。再充電中の電池への、又は電池からビークル及びその付属品内への、いずれかの電流の流れは、熱を発生し、これは、電池セル及び相互接続されたシステムの内部抵抗を乗じた電流の平方に比例して、管理/消散される必要がある。より多い電流の流れは、より強力な加熱効果を意味する。
【0015】
リチウムイオン電池は、特定の動作温度範囲内で最適に機能する。特定の範囲の境界外で動作が生じる場合、電池内のセルの損傷又は劣化の加速が生じる。したがって、電池はまた、環境条件に応じて冷却又は加熱する必要もあり得る。これにより、今度は、使用及び再充電の前及び間に、電池の熱的態様を効果的に管理する必要性が生じる。
【0016】
電動ビークル電池モジュールは、様々な電気接続部(すなわち、バスバー)を通してパック内で互いに接続されたパウチに格納され得る数百のセルを含む。熱暴走伝播と呼ばれる壊滅的な現象は、電池モジュール内の1つのセルがその動作においてパンク、損傷、又は不良のため発火したときに生じる。得られた火災は、連鎖反応中の電池全体を通して、隣接するセルからセルに拡散する。このような火災は、特に、数十、数百、又は更には数千個の個々のセルを含有する電池パックが一般的に見られる高電力デバイス、例えば電動ビークルにおいて、潜在的に大規模になる可能性がある。このような火災は電池に限定されず、周囲の構造体に広がり、ビークル乗員又はこれら電池が配置されている他の構造体を危険にさらし得る。
【0017】
セル内で熱暴走が発生すると、セルが急激に爆発する場合、熱管理システムが排出された破片を遮断及び/又は封じ込めることも望ましい。電動ビークル用途では、火災によって発生する熱から乗員を保護し、それにより、ビークルを停止させて逃げるのに十分な時間をかせぐことも重要である。
【0018】
熱暴走伝播によってもたらされる重度のリスクは、そのような熱暴走の影響を軽減し、火災の場合にビークル乗員が安全に空隙を与えるための時間をもたらすために、ブラスト及び熱的に絶縁されたバリアを備えた電池モジュールの設計を必要とする。
【発明の概要】
【0019】
上記を考慮して、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内の熱伝播を防止又は遅延させるのに役立つ好適な材料及び好適な配置を提供すること、並びに上述の条件及び温度で処理されたときに破壊又は損傷し得る、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムの周り又は外側の部品への熱伝達を提供することが依然として必要である。また、組み立てプロセスで使用することが容易であり、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを設計する柔軟性を提供する、そのような好適な材料が必要とされている。
【0020】
本発明は、電動ビークル電池モジュールに関し、具体的には、電池モジュールの熱暴走事象を管理するためのブラスト及び耐熱性バリア物品に関する。提供される物品は、例えば、自動車、又は他の電気輸送用途、及び定置型電力貯蔵用途において特に有用であり得る。
【0021】
例示的実施形態では、本発明は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとしての多層材料の使用を提供し、多層材料は、少なくとも1つの無機布地、並びに無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む。
【0022】
第2の実施形態では、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリア及び/又は火炎バリアとして使用するための多層材料が提供される。多層材料は、無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層に結合された少なくとも1つの無機布地層を含み、無機接着剤は、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤とを含む改質無機接着剤である。
【0023】
第3の実施形態では、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける火炎バリアとして使用するための多層材料が提供される。多層材料は、ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒子又は粒状充填剤、並びに有機結合剤で作製された無機紙と、無機接着剤によって無機紙の主表面に結合されたコーティングされたガラス繊維布地層と、を含む。
【0024】
第4の実施形態では、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける火炎バリアとして使用するための多層材料が提供される。多層材料は、無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層の第1の主表面に結合された第1の無機布地層と、無機接着剤によって不織布層の第2の主表面に結合された第2の無機布地層と、を含み、無機接着剤は、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤とを含む改質無機接着剤である。
【0025】
第5の実施形態では、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける火炎バリアとして使用するための多層材料が提供される。多層材料は、無機接着剤によって、ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒状充填剤、並びに有機結合剤で作製された無機紙の第1の主表面に結合された第1のコーティングされたガラス繊維布地層と、無機紙の第2の主表面に結合された第2のコーティングされたガラス繊維布地層と、を含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの電池セル及び/又はモジュール並びに多層材料を有する再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを提供し、多層材料は、断熱バリア及び/又は火炎バリアとして使用される。多層材料は、少なくとも1つの無機布地、並びに無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む。
【0027】
電動ビークル電池における突然の熱暴走事象に関連する危険からの保護は、重要な技術的課題である。普遍的な解決策を考案する際の問題の1つは、熱暴走の1つの側面に対する保護において良好に作用する材料が、他の場合では不十分なことである。例えば、ポリマー繊維及び発泡体の不織ウェブは、優れた断熱特性を表示することができるが、一般的なポリマーは、可燃性である傾向があるか、又は繊維及び発泡体は、可燃性である封止材材料でコーティングされる。織られた不燃性繊維(例えば、無機繊維)から作製された熱シールド材料は、火災の侵入を防止するには有効であり得るが、火災の強烈な熱に対して適切に絶縁する、又はセルが爆発したときに飛び散る破片を吸収/そらすには薄すぎる傾向がある。熱シールド材料のより厚い層を使用することは、一般に費用効率が高くない。これらの材料の組み合わせが作用する可能性はあるが、特に接合材料の選択が可燃性の問題によって制約され得る場合には、これらの材料を互いに接合させることは困難な可能性がある。
【0028】
従来の熱管理システムで使用される繊維及び発泡体を使用する場合、別の技術的困難が生じる。耐火性繊維及び発泡体でさえ、例えば、600℃(1112°F)を超える、十分に高い温度で溶融する傾向がある。そのような熱暴走事象(例えば、酸化ポリアクリロニトリル)中に溶融しない繊維及び発泡体は、比較的脆くなる傾向があり、製品製造、中間での取り扱い、及び使用中の繊維脱落又は材料の緩みに関連する新しい問題を引き起こす可能性がある。このような繊維は、繊維ウェブ内で互いに束縛されていないので、非溶解性繊維が外に出て他の電池構成要素及び電池を取り囲む空間を汚染することがないように、これらの繊維を固定するための代替方法を考案しなければならない。
【0029】
現在の試験方法は、材料を単独で、又は他の材料と組み合わせて、電動ビークルコンパートメントの障壁として効果的に使用して、ブラスト及び耐熱保護を提供する方法を十分に測定することができない。また、現在の試験方法は、セル及びモジュールを含む実際の電池構成要素を使用し、これは高価で時間がかかる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、本発明の特定の実施形態を例示する以下の図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【
図2】再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)の概略図である。
【0031】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【0032】
定義
本明細書で使用するとき、
「熱バリア材料」とは、熱事象の拡散又は拡大を制限するように設計された材料を意味する。本発明の熱バリア材料は、熱又は火炎の透過を低減することができ、また任意選択的に、熱暴走事象中における破片からの保護を提供することができる。
「厚さ」は、単層物品又は多層バリア物品の両面の間の距離を意味する。
「布地」は、無機繊維の織り交ぜ、織り、編み、又はかぎ針編みによって生成される柔軟な材料又は布地を意味する。
完全に加水分解されたポリビニルアルコール(PVA)を参照する際のその使用に関して、「完全に加水分解された」とは、加水分解度が滴定によって測定されるPVAポリマー中の98モル%以上であることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその等価物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0035】
「含む」という用語及びそのバリエーションは、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、及び垂直などの相対語が、本明細書で使用される場合があり、その場合、特定の図において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0036】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。
【0037】
本発明による多層材料は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えたビークルの全体的な安全性を改善するために使用することができる火炎バリア材料であり得る。例示的実施形態では、例示的な多層材料は、無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層に結合された少なくとも1つの無機布地を含む。多層材料は、用途に応じて2つの層を含み得るが、それはまた、上述の材料の3つ以上の層を含み得る。層は、有機接着剤又は無機接着剤のいずれかで一緒に結合され得る。例示的な態様では、有機材料を多層材料に含めることが、有機材料が燃料源として機能し得る熱暴走事象中の材料の性能に有害であり得るため、少なくとも1つの無機布地を、無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層に結合させるために、無機接着剤を使用する。
【0038】
プリズム状Liイオンセルの熱暴走は、基本的に、3つの相に分離され得る。
1.バーストプレートが開いたときの爆発性通気(例えば、120Ahプリズムセルで6~8バール)、即時温度は約700℃まで増加する。
2.高圧ジェットガス通気及び高温(典型的には600~700℃で約30~50秒)での粒子ブローアウト。
3.静かなガス通気/発光炎。
【0039】
したがって、熱伝播を防止するための断熱バリアとして使用される好適な材料は、ガス通気及び粒子ブローを伴う高温及び高圧に、損傷を与えすぎずに耐える必要がある。加えて、材料は、高温、圧力、及びガス、並びに/又は粒子衝撃の間及び後でさえ、熱及び電気絶縁特性を提供する必要がある。
【0040】
本発明による多層材料は、可撓性であり得る。多層材料の可撓性は、可撓性が、材料の屈曲を可能にし、したがって、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内の一方又は他の方法でそれを適用するより多くの選択肢を可能にするため、材料のより広い使用及び材料のより効果的な適用を可能にする。本発明による多層材料はまた、圧縮可能であり得る。圧縮性は、より広い使用及びより効果的な用途を可能にし得る。例えば、材料は、非圧縮状態と比較して、多層材料の総厚が圧縮状態で1/3未満であるように圧縮可能であり得る。多層材料が、例えば、非圧縮状態で6mmの厚さである場合、圧縮状態では、4mmまで圧縮可能であるべきである。
【0041】
本発明に係る多層材料は、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、Cガラス繊維、ARガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、ケイ酸塩繊維、スチールフィラメント、又はこれらの組み合わせなどの無機繊維から作製された無機布地を含み得る。繊維は化学処理されてもよい。無機布地は、例えば、織布、布、編布、ステッチボンド布、クロッシェ編布、交絡布、又はこれらの組み合わせであることができる。無機布地は、多層複合体に対する引張強度、引裂強度、及び伸びを増加させ、これは工業製造及び変換プロセス、並びに、多層材料中の他の層を熱暴走事象中の熱的及び機械的衝撃から保護することに役立ち得る。
【0042】
無機布地は、例えば、0.3~3mm、例えば、0.4~1.5mm、又は0.4~1mmの範囲の厚さを有し得る。無機布地はまた、400g/m2(gsm)を超える坪量も有し得る。例示的な無機布地は、400gsm~6100gsmの坪量を有することができる。いくつかの実施形態では、例示的な無機布地は、400gsm~1000gsmの坪量を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、無機布地、特にガラス繊維布地に表面仕上げ又は表面コーティングを適用して、最大700℃までの高温耐性又は最大750℃までの短時間のバーストを強化できる。例示的な表面コーティングとしては、高温耐性を高めるためのケイ酸カルシウム、バーミキュライト、又はシリカゾルが挙げられる。例示的な表面コーティングはまた、無機繊維の耐摩耗性を高めることができる。
【0044】
本発明による多層材料はまた、無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不織布層を含み得る。無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層の無機繊維は、不織マットの形態で、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、Cガラス繊維、ARガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、多結晶繊維、非バイオ永続繊維(Non-bio-persistent fibers)、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ケイ酸ホウ素繊維、又はこれらの組み合わせの群から選択され得る。非バイオ永続繊維は、例えば、アルカリ土類ケイ酸塩繊維であり得る。より具体的には、繊維状材料は、アニールされたガラス繊維又は非バイオ永続繊維を含む、アニールされた溶融形成セラミック繊維、ゾルゲル形成セラミック繊維、多結晶セラミック繊維、アルミナ-シリカ繊維、ガラス繊維を含み得る。Liイオン電池の熱事象において生成された高温に耐える場合、他の繊維も可能である。
【0045】
いくつかの実施形態では、無機粒子又は無機微粒子充填剤としては、限定するものではないが、グラスバブルズ、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせを挙げることができ、好ましくは、微粒子充填剤混合物は、グラスバブルズ、カオリン粘土、タルク、マイカ、及び炭酸カルシウムのうちの少なくとも2種を含む。好適なカオリン粘土の種類としては、湿式カオリン粘土、デラミカオリン粘土、焼成カオリン粘土、及び表面処理カオリン粘土が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、無機粒状充填剤は、グラスバブルズ、カオリン粘土、マイカ、及びそれらの混合物、例えば、公開された特許協力条約出願国際公開第2020/023357号に記載された無機紙及び基板材料及びラミネートを含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。任意選択的に、アルミナ三水和物などの、吸熱性充填剤を添加することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、例示的な材料は、3M Company(St.Paul,MN,USA)から市販されている、ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒子、並びに有機結合剤を含む、3M CEQUIN I無機紙などの無機紙又は無機基板である少なくとも1つの不織布層を含むことができる。3M CEQUIN I無機紙は、UL1446及びIEC標準61857に準拠したクラス220(R)による電気絶縁システムにおける主要な絶縁としての使用について承認されている。クラス220(R)は、システムの最大許容動作温度が220℃であり、システムが電気的完全性を維持しながら連続的に動作することができることを示す。最大220℃の最大システム動作温度を有する材料の組み合わせは、コーティングされたガラス布地の場合、600~650℃又は750℃までの温度に耐えることができるガラス布地などの材料と組み合わせることができ、熱暴走事象で発生する可能性のある、1000℃又は2000℃までの温度に少なくとも10分間耐えることができる材料を製造することは驚くべきことである。
【0047】
無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの不織布層は、膨張性材料を更に含み得る。本発明による多層材料において用いられる有用な膨張材料としては、これらに限定されるものではないが、未膨張バーミキュライト鉱石、処理済未膨張バーミキュライト鉱石、部分的に脱水されたバーミキュライト鉱石、膨張性グラファイト、膨張性グラファイトと処理済又は未処理未膨張バーミキュライト鉱石との混合物、加工された膨張性ケイ酸ナトリウム、例えば、3M Company(St.Paul,MN,USA)より市販のEXPANTROL不溶性ケイ酸ナトリウム、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0048】
無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの不織布層は、0.1~20mmの範囲の厚さを有し得る。より薄い材料が使用されるいくつかの用途では、無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、0.2~4.0mm、好ましくは0.2~2.0mmの範囲の厚さを有し得る。無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、100~2500g/m2、例えば100~2000g/m2の範囲の重量を有し得る。
【0049】
本発明による多層材料は、少なくとも1つのスクリム層を含み得る。スクリム層は、繊維及び/又は粒子が多層材料から脱落するのを防ぐことによって、多層材料の取り扱いを改善するために使用され得る。スクリム層は、PET、PE、メラミン、例えば、Eガラスなどの無機材料を含み得る。それはまた、又は代替として、無機又は有機コーティングを含み得る。スクリム層はまた、任意の他の好適な材料を含み得る。それは、無機粒子又は繊維を含む少なくとも1つの層の隣に配置され得る。いくつかの実施形態では、スクリム層は、本発明による多層材料全体をカプセル化し得る。
【0050】
多層材料の総厚は、0.5~23mmであり得る。より薄い材料が使用されるいくつかの用途では、多層材料の総厚は、0.7~5mmである。いくつかの実施形態では、多層材料は、3mm未満、好ましくは2mm未満の総厚を有する。材料が使用される用途に応じて、材料の厚さを調整することが可能である。既に上述したように、材料は、組み立てプロセスにおける材料の適用の容易さを改善するために可撓性であり得る。材料はまた、組み立てプロセスにおける材料の適用の容易さを改善するために圧縮可能であり得る。
【0051】
多層材料は、少なくとも1つの無機布地と、無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層との間に有機又は無機接着剤の層を含み得る。接着剤は、有機であっても無機であってもよい。接着剤は、無機布地、又は無機粒子若しくは無機繊維を含む層のいずれかに既に含まれていてもよい。スクリムが多層材料に使用される場合、多層材料はまた、多層材料とスクリムとの間に接着剤を含み得る。接着剤は、有機であっても無機であってもよい。それは、スクリム自体又は多層材料に使用される材料のいずれかに既に含まれてもよい。
【0052】
例示的な有機接着剤は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、又はシリコーン系接着剤であり得る。有機接着剤は、絶縁接着剤、熱伝導性接着剤、難燃性接着剤、導電性接着剤、又は導電性及び難燃特性の組み合わせを有する接着剤であり得る。ラミネートに使用される例示的な有機接着剤は、接触接着剤、感圧性(PSA)接着剤、Bステージ処理可能な接着剤、又は構造用接着剤であり得る。例示的な態様では、アクリルPSAを使用して、熱バリア複合材料の機能層を一緒に結合することができる。
【0053】
本開示の例示的な無機接着剤は、接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.9重量%の無機成分を含む。いくつかの実施形態では、無機接着剤は、接着剤の総固形分含有量に基づいて、100重量%の無機成分を含む。無機接着剤中の例示的な無機成分は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、又はこれらの組み合わせから選択され得る。
【0054】
水溶液中に配置された無機ケイ酸塩は、他の材料の表面上又は他の材料の表面の間に薄層として適用される場合、結合用途に有用である。無機ケイ酸塩溶液は乾燥して、不燃性で、3000°F(1650℃)までの温度に耐え、強くて硬い、頑強で強固に接着した無機結合又は膜を形成する。ケイ酸塩フィルムは、分解を引き起こす可能性がある水分感受性であり得ることに留意されたい。
【0055】
無機ケイ酸ナトリウムは、様々な比率の砂(SiO2)及びソーダ灰(Na2CO3)を溶かして作製されたガラスの溶液である。これらの比率は、通常、SiO2/Na2Oの重量比によって定義される。いくつかの実施形態では、例示的な無機接着剤は、2.8~3.3のSiO2/Na2Oの重量比を有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、無機接着剤は、無機接着剤の可撓性を改善するために、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、1重量%未満の有機添加剤を含む改質無機接着剤であり得る。驚くべきことに、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%以下の有機添加剤を含む本発明の改質無機接着剤は、材料の火炎バリア性能を低下させることなく、多層材料の性能(すなわち、可撓性)の顕著な改善を示した。改善された可撓性により、製造中の例示的な多層材料のスプールを可能にし、より便利な加工及び送達、並びに輪郭形成された又は非平面の用途における設備の改善を可能にする。改質無機接着剤を利用した多層ラミネート材料の改善された可撓性により、電池モジュール/パックの蓋の輪郭のある特徴/形状の周りで材料を曲げることができる。更に、改質無機接着剤の使用は、所望のレベルのトーチ火炎性能を依然として維持しながら、高湿度への曝露後の接着剤結合強度を改善することが見出された。
【0057】
改質無機接着剤中の非常に低濃度の有機添加剤(例えば、接着剤の総固形分含有量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の有機添加剤)の添加は、無機接着剤中の総固形分に基づいて、100重量%の無機接着剤を使用して形成された多層材料に対して、改質接着剤を使用する多層ラミネートのガーレー剛性を少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%減少させた。
【0058】
例示的な有機添加剤としては、糖、ソルビトール及びキシリトールなどの糖アルコール、グリセリン、ポリオール、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、並びにゴム格子が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリビニルアルコールである。例示的な態様では、ポリビニルアルコールは、完全に加水分解されたポリビニルアルコールである。驚くべきことに、無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、本発明の改質無機接着剤に0.1重量%未満のポリビニルアルコールを組み込むことは、材料の火炎バリア性能を低下させることなく、多層材料の性能(すなわち、可撓性)の顕著な改善を示した。より高い濃度のポリビニルアルコールを添加すると、改質無機接着剤の不安定性がもたらされた。例えば、無機接着剤中の0.5重量%及び1重量%のポリビニルアルコールは、混合すると直ちに溶液中に沈殿物が形成され、50重量%のポリビニルアルコール混合物は、直ちに反応し、流動性水溶液からゲルになった。
【0060】
有機又は無機接着剤は、機能層のうちの1つに直接コーティングされ得、任意選択的に乾燥され得るか、又は次の機能層に接触する前に、機能層のうちの1つの表面に適用され得る自立型ラミネートフィルム接着剤に予め形成され得る。代替的な態様では、機能層のうちの1つ以上は、機能性材料上に既に配置された接着剤層(例えば、感圧接着剤層)を有するテープの形態であり得る。
【0061】
いくつかの用途では、例示的な多層材料は、電気絶縁材料であるべきである。特に、多層材料は、最小絶縁破壊電圧が2kV、より好ましくは>3kVで電気絶縁を提供することが有利であり得る。
【0062】
本発明はまた、少なくとも1つの電池セル及び多層材料を有する再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムに関し、多層材料は、少なくとも1つの無機布地層と、無機粒子、無機繊維、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層とを含む断熱バリアとして使用される。
【0063】
本発明による多層材料は、例えば、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えたビークルの全体的な安全性を確保するために使用することができる。
【0064】
多層材料は、無機布地が少なくとも1つの電池セル又は電池セルパックに面するように、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内に配置され得る。無機布地は、熱暴走事象中に発生する可能性があるため、温度及び他の衝撃に対する高い耐性を有するように選択される。高砂ブラスト耐性及び/又は高い引張強度は、そのような高い全体抵抗の指標であり得る。無機布地が少なくとも1つの電池セル又は電池セルパックに面する場合、布地は、上記の熱暴走事象の主な段階(すなわち、爆発性通気、粒子排出及び静かなガス通気/発光炎を用いた高圧ガス通気)に耐えることができる。
【0065】
そのようなシナリオにおける無機布地の主な機能は、それらの段階の熱的及び機械的衝撃から他の層を保護することである。そのようなシナリオにおける他の層の主な機能は、高温が再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内、好ましくは欠陥セル又はモジュール内に留まるように、断熱バリアを提供することである。再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムがビークルに使用される場合、本発明による多層材料の主な目的は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えた車両の全体的な安全性を確保することである。
【0066】
本発明による再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1つの電池セル又はモジュールと貯蔵システムの蓋との間に位置付けられた多層材料を提供し得る。多層材料は、例えば、接着剤、機械的留め具、又はこれらの組み合わせによって蓋に固定され得る。多層材料を蓋に取り付けるための例示的な接着剤は、移送接着剤、ダブルコーティング接着テープ、ホットメルト接着剤、又は構造用接着剤を含み得る。いくつかの態様では、例示的な接着剤は、移送接着剤、ダブルコーティング接着テープ、ホットメルト接着剤、又は構造用接着剤の難燃剤バージョンであり得る。いくつかの態様では、例示的な多層材料は、電池セル又はモジュールと蓋との間に配置され得る。多層材料は、そのような位置で、蓋のための断熱バリア火炎バリア及び/若しくは爆発バリアとして、又は蓋及び蓋に隣接して配置された任意のシステム、構成要素を保護するために使用され得る。
【0067】
多層材料はまた、隣接する電池セル、モジュール、又は電池パックの断熱バリア又は火炎バリアとして使用され得る。それはまた、例えばケーブル又はバスバーなどの電池セル又は電池パックの周りの任意の電気部品の断熱バリア又は火炎バリアとして使用され得る。多層材料が追加の電気絶縁特性を提供する場合、例えば、変形又は他のハームによる短絡、例えば、異なる電池システムの周りの加熱された電気絶縁も防止することができる。別の可能性は、少なくとも1つの電池セルのバーストプレートを覆うように多層材料を配置することである。当然のことながら、材料は、上述の要件の全てを満たす再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのように配置することもできる。既に上述したように、無機布地が少なくとも1つの電池セル又はモジュールに向かって面するように、本発明による多層材料を位置決めすることが有利であり得る。
【0068】
また、本発明による多層材料の使用は、特定の種類の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける使用に限定されない。例えば、プリズム電池セル、パウチセル、又は円筒形セルを含む再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおいて使用され得る。
【0069】
驚くべきことに、上記の多層材料の使用は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内で外部火災が発生しないように、並びに再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムの周囲又は外部の部品への熱伝達が含まれるように、効果的に使用され得ることが見出された。以下の実施例のセクションで説明されるように、試験は、本発明による多層材料が、Global Technical Regulation No.20:Global Technical Regulation on the Electric Vehicle Safety (EVS)(GTR20とも呼ばれる)に記載されていることを示している。
【0070】
本明細書では、以下に、本発明の様々な実施形態を記載し、また図面に示すが、図中では、同様の要素には同じ参照番号が付けられる。
【0071】
図1は、本発明による多層材料1の断面図を示す。
図1の多層材料は、任意選択のスクリム層4に取り付けられた繊維マット3に取り付けられた無機布地層2を含む。スクリム層4及び布地層2は、繊維マット3の両側に配置されている。層2、3、4は、例えば、接着剤によって互いに取り付けられ得る。接着剤は、有機接着剤であっても無機接着剤であってもよい。
【0072】
図2は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)5の概略図である。システムは、プリズム電池セル6を含む。プリズム電池セル6は、例えば、熱暴走事象の場合、通気穴を通して潜在的に生成された過剰な圧力を解放するためのバーストプレート7を各々備える。セル6は、モジュールハウジング8(実際には閉じている2つの開放壁、1つの前壁及び1つの側壁、が示されている)に配置されている。ハウジングは、蓋9を提供する。複数のモジュールハウジングを、電池パック(図示せず)に組み立てることができる。
【0073】
既に上述したように、規制は、再充電可能なエネルギー貯蔵システムが外部火災を発生しないように構築されることを要求する。保護される必要がある1つの領域は、バーストプレート7の上方の領域である。バーストプレートの上に配置されたシステムの部分は、電池の溶け落ち、及びシステムの外側における裸火を回避するために、熱バリアを必要とする。本発明によれば、
図1に示される多層材料1は、無機布地層2が電池セル(図示せず)に面するように、蓋9の下のそれらのバーストプレート7の上に電池セル6の上に配置され得る。追加の多層材料は、モジュールハウジング8と電池パックとの間に配置され得る。
【0074】
多層材料1はまた、セル6(図示せず)の間に配置され得る。又は、セル6とモジュールハウジング8の側壁又は底壁(図示せず)との間に配置されてもよい。
【0075】
本明細書に記載されるブラスト及び耐熱性バリア物品は、いくつかの実施形態において、Liイオン電池における熱暴走伝播の影響を緩和するのに有効であり得る。これらの物品はまた、飛び散る破片及び/又は熱変動の影響から人々又は周囲の構造体を保護する必要がある、自動車、住宅、産業、及び航空宇宙用途などの他の商業及び産業用途において潜在的な用途を有し得る。例えば、提供されるブラスト及び耐熱性バリア物品は、輸送機関又は建築コンパートメント構造に沿って又はその周りに延びる主要構造部分に組み込まれてユーザ及び乗員を保護することができる。このような用途としては、電池モジュール、燃料タンク、及び任意の他のエンクロージャ又はコンパートメントの周りの保護を含み得る。
【0076】
提供されるバリア物品は、一般に、複数の繊維又は補助層に結合された若しくは補助層と結合された難燃性発泡体を含むコア層を含む。任意選択的に、バリア物品は、難燃性接着剤を含み得る。これらの層は、好適な結合剤を使用して、コンパートメント壁に又は互いに接合されてもよい。構成要素、その構成、及び試験方法は、以下のサブセクションに記載されている。
【実施例】
【0077】
試験方法
釘刺し試験:
本発明による多層材料を試験するために使用された釘刺し試験は、以下のように実施された。釘刺し試験は、高容量(120Ah)プリズムLiイオン電池セルで行った。セル内の熱を保つために、1つの単一Liイオンセルの両側を断熱ハードプラスターFERMACEL(市販のプレート)で覆った。このサンドイッチ構造(FERMACELLプレート-電池セル-FERMACELLプレート)は、2枚の強力な鋼板の間に、巨大なワークベンチに固定された。鋼釘(直径5mmのX15CrNiSi25-21釘)は、25mm/分の速度で、鋼板の穴から100%帯電したセルに貫通する。
【0078】
調査されるバリア材料を、寸法200×200×1.5mmのアルミニウムプレートに固定した。このプレートは、画定された距離(12mm及び20mm)でセルの上部の上に位置付けられた。バリア材料の効率は、バリア材料を有するアルミニウムプレートの下方及び上方のタイプK温度センサで温度を測定することによって定量化された。プレートの上面の上に、裏側からの放射を減少させ、炎が向きを変えることによる加熱を避けるために、PERTINAXフェノールシートで作製された熱シールドが配置された。
【0079】
釘が電池セルの内側のセパレータを貫通するとき、内部ショートカットは、熱暴走、続いて、電解質の温度上昇及び分解を開始する。セル内の圧力がいくつかのバーの限界を超えた後、バーストプレートブレーキ及び約600~750℃の高温ガス及び粒子が、高圧下で約45~60秒間吹き出される。更に4~5分間、高温ガスを減圧で放出する。
【0080】
サンドブラスト試験
サンドブラスト試験について、市販のサンドブラストキャビネットを使用した。サンプル材料を、寸法100×50mmの金属シートに取り付けた。寸法80×45mmのサンプルを、全ての側面にマスキングテープで金属シートに固定した。キャビネット内の固定具は、ノズルの前の画定された位置にサンプルを保持した。圧縮空気を使用して、試験片が直径4±1mmの面積で損傷するまで、サンドブラスト媒体を標的に加速させた。研磨時間(秒(s))は、粒子充填空気に対するサンプルの耐性の尺度であった。サンプル材料は、試験前に700℃5分間で、実験室キルン(Nabertherm GmBH(Lilienthal,Germany)のL24/11/P330)を熱処理した又は熱処理しなかった。サンドブラスト試験条件は、以下の通りであった。ノズルまでのサンプル距離65mm、ノズル直径4mm、粒径70~110マイクロメートルを有するタイプ211ガラスビーズを媒体として使用し、衝撃角は90°~100°であった。
【0081】
結合強度
材料サンプルは、周囲温度及び湿度で調整するか、又は試験前に少なくとも16時間、95%の相対湿度及び23℃に曝露した。湿度曝露は、試験サンプルを水位の上方に保つために、水及び上昇したプラットフォームからなる密封された高湿度容器にサンプル材料を配置することによって達成された。湿度曝露試料を、Williams Applate Co(Watertown,NY,USA)から180°F(82℃)で約10分間入手可能な実験室乾燥缶で乾燥させ、試験テープタブは、サンプルに十分に接着して接着結合試験を行うことができる。
【0082】
試験片は、例示的な多層例示的材料の5インチ(12.7cm)×1.5インチ(3.8cm)のストリップを切断することによって調製した。各ストリップの一端で、布地層及び紙層を、約1インチ(2.54cm)の長さのユーティリティナイフで注意深く分離した。高結合/強度テープである3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能な3M2960Multi-Useダクトテープを、ストリップの各分離端部に適用し、テープをそれ自体上に折り畳み、テキスト固定具のジョー/クランプによって把持することができるタブ領域を作成した。サンプル端への試験テープタブの接着を最大化するために、100°F/38℃及び40psiの圧力に設定されたChemsultants International Hot Roll Laminatorニップを5フィート/分の速度で通過させた。
【0083】
次いで、試験片の2タブを、5.08cm/分のクロスヘッド速度でThwing Albert QC-3A引張試験機のユニバーサル試験機械のジョー/クランプに挿入した。各試験片について2層を分離する力を記録し、4つの二重測定から平均結合強度を計算した。
【0084】
結合保持率は、湿度エージング接着強度を、湿度エージングを伴わない接着強度で割った比率をパーセントで表したものである。
【0085】
剛性
ASTM D-6125のガーレー剛性試験方法を使用した。試験サンプルを周囲条件で事前調整した。
【0086】
引張試験
ISO4606及びASTM D-828の引張試験方法を使用した。引張測定は、非熱処理サンプルで行った。
【0087】
エルメンドルフ引裂強度
ASTM D-689の試験方法を使用して引裂強度を測定した。試験サンプルを周囲条件で事前調整した。
【0088】
絶縁破壊電圧
ASTM D-149の試験方法を使用して、絶縁破壊電圧を測定した。試験サンプルを周囲条件で事前調整した。
【0089】
火炎試験:
UL94 HB燃焼性試験の方法に従った。材料がパンクしていない場合、サンプルは試験に合格した。
【0090】
2054℃/3730°Fの空気中火炎温度を提供するMAP Pro燃料シリンダを備えたBernzomaticトーチTS-4000トリガを用いて、トーチ火炎試験Aを実施した。試験サンプルを、試験中にサンプルを安定化させるのを助けるために、金属クリップをサンプルの底部に取り付けた状態で、火炎から2.75インチ(7cm)の固定距離に据え付け、10分の連続期間にわたって、試験サンプルをパンクさせることなく火炎に曝露した。炎から2.75インチ(7cm)の固定距離で測定された温度は、約1000℃であった。
【0091】
更に高温のトーチ火炎試験Bは、2054℃/3730°F火炎から1インチ(2.54cm)の固定距離で、10分の連続期間にわたって、試験サンプルをパンクさせることなくサンプルを試験することによって実施された。
【0092】
【0093】
改質無機接着剤の調製
試験室ブレンダー中でケイ酸ナトリウム及び選択された有機添加剤を室温で組み合わせることによって、改質無機接着剤を調製した。改質接着剤組成物データを表4に提供する。
【0094】
比較例1(CE1)
比較例1を、1.8mmサイズの噴霧ヘッドを備えた3M Accuspray ONE Spray Gunシステムを使用して、Micashield D338Sでコーティングした。サンプルを80℃で30分間乾燥した。マイカ層は、約30gsmの乾燥重量を有した。サンプル構造を表1に表し、試験性能データを表2に提供する。
【0095】
比較例2(CE2)
多層ラミネートは、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、RHOPLEX E-358アクリルエマルションを15ミルのCEQUIN I無機絶縁紙材料に適用することによって調製した。次いで、TG430/9KK-CSケイ酸カルシウムでコーティングされたガラス布地を上に配置し、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延した。次いで、多層ラミネートを82℃(180°F)で5分間乾燥させた。サンプル構造を表4に表し、試験性能データを表5に提供する。
【0096】
比較例3(CE3)
15ミルのCEQUIN I無機絶縁紙のサンプルを1000℃火炎試験(火炎試験A)に供した。サンプルは45秒で炎が燃え尽きて不合格であった。
【0097】
比較例4(CE4)
20ミルのCEQUIN I無機絶縁紙のサンプルを1000℃火炎試験(火炎試験A)に供した。サンプルは189秒で炎が燃え尽きて不合格であった。
【0098】
20ミルのCEQUIN I無機絶縁紙のサンプルを2000℃火炎試験(火炎試験B)に供した。サンプルは19秒で炎が燃え尽きて不合格であった。
【0099】
比較例5(CE5)
TG430/9KK-CSケイ酸カルシウムでコーティングされたガラス布地のサンプルを1000℃火炎試験(火炎試験A)に供した。サンプルは9秒で炎が燃え尽きて不合格であった。
【0100】
TG430/9KK-CSケイ酸カルシウムでコーティングされたガラス布地のサンプルを2000℃火炎試験(火炎試験B)に供した。サンプルは3秒で炎が燃え尽きて不合格であった。
【0101】
TG430/9KK-CSケイ酸カルシウムでコーティングされたガラス布地のサンプルの絶縁破壊強度は、0.39kVと測定された。
【0102】
比較例6(CE6)
TW-600-13-100玄武岩布地のサンプルは、1000℃火炎試験(火炎試験A)に合格したが、2000℃火炎試験(火炎試験B)に不合格で、5秒で火炎が燃え尽きた。
【0103】
TW-600-13-100玄武岩布地のサンプルの絶縁破壊強度は、0.18kVと測定された。
【0104】
実施例1~3(EX1~EX3)
実施例1~3の多層ラミネートは、3M Display Mount spray接着剤を布地に噴霧することによって調製した。繊維マットを布地の上に配置し、次いで4.54kg(10ポンド)ローラーで圧延した。サンプル構造を表1に表し、試験性能データを表2に提供する。
【0105】
実施例4~6(EX4~EX6)
実施例4~6の多層ラミネートは、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、K(登録商標)ケイ酸ナトリウム接着剤をCEQUIN I無機絶縁紙材料に適用することによって調製した。次いで、無機布地層を無機接着剤層の上に配置し、次いで、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延した。次いで、多層ラミネートを82℃(180°F)で5分間乾燥させた。例えば、EX6、K(登録商標)ケイ酸ナトリウム接着剤の第2の層を、#30メイヤーロッドを使用してCEQUIN I無機絶縁紙の反対側に適用した。次いで、第2の無機布地層を第2の無機接着剤層の上に配置し、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延し、82℃(180°F)で5分間乾燥させた。サンプル構造を表1に表し、選択された物理的、機械的、及び電気的特性を表2に提供し、熱/火炎バリア試験性能データを表3に提供する。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
比較例CE3~CE5は、個々の布地及び紙層自体がトーチ火炎試験(火炎試験A/火炎試験B)を合格することができないことを示している。比較例CE6は、火炎試験Aに合格したが、火炎試験Bは、5秒で布地に穴が開いて不合格であった。前述のように、例示的なバリア材料はまた、電気絶縁性である必要があり、玄武岩布地の絶縁破壊強度は低く、所定の用途のための火炎バリア材料として単独で使用するのに適していない。無機紙層とコーティングされたガラス布地層とをアクリル接着剤で組み合わせる比較例CE2も、トーチ火炎試験(火炎試験A/火炎試験B-表5を参照されたい)に合格しなかった。対照的に、無機布地層が無機接着剤で無機紙層に取り付けられた本発明の例示的な多層材料は、必要な特性のバランスを提供し、自動車又は他の電化輸送用途及び定置型エネルギー貯蔵用途でバリア材料として使用できるようにする。
【0110】
ガーレー剛性データを、実施例EX3及びEX5について機械方向及びクロスウェブ方向について測定した。EX3のガーレー剛性は、機械方向に16,894mg及びクロスウェブ方向に12,812mgであると測定した。EX5のガーレー剛性は、機械方向に28,804mg及びクロスウェブ方向に18,669mgであると測定した。これらの値をCE2(機械方向に11,516mg、及びクロスウェブ方向に7,023mg)のガーレー剛性データと比較することは、例示的な多層材料の層を一緒にラミネートするために無機接着剤を使用する剛化効果を示す。
【0111】
実施例5は、下部温度トーチ火炎試験Aに耐えたが、高温トーチ火炎試験Bに耐えられなかった。しかしながら、布地層が無機ベースの紙層(CEQUIN)の両側にあるように追加の布地層を加えると、実施例6のラミネートがはるかに高い温度のトーチ火炎B試験を合格できることは予想外であった。
【0112】
実施例7~13(EX7~EX13)
実施例7~13の多層ラミネートは、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、無機又は改質無機接着剤を20ミルCEQUIN I無機絶縁紙材料に適用することによって調製した。次いで、TG430ガラス布布地の層を上に配置し、4.54kg(10ポンド)ローラーで圧延した。多層ラミネートを180°F(82℃)で5分間乾燥させた。実施例14は、SC2025ケイ酸カルシウムでコーティングされた繊維ガラス布地を、TG430ガラス布布地の代わりにKSS無機接着剤を用いて20ミルCEQUIN I無機絶縁紙材料に結合したことを除いて、実施例EX7~EX13と同じ手順に従って調製した。サンプル構造を表4に表し、試験性能データを表5に提供する。
【0113】
【0114】
実施例15~16(EX15~EX16)
実施例15は、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、第1の100重量%KSS無機接着剤層を20ミルCeQUIN I無機絶縁紙に適用することによって調製した。次いで、TG430ガラス布布地の第1の層を第1の無機接着剤層の上に配置し、4.54kg(10ポンド)ローラーで圧延した。多層ラミネートを180°F(82℃)で5分間乾燥させた。次いで、KSS接着剤の第2の層を、#30メイヤーロッドを使用してCEQUIN I無機絶縁紙の反対側に適用した。次いで、第2の無機TG 430ガラス布布地層を第2の無機接着剤層の上に配置し、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延し、82℃(180°F)で5分間乾燥させた。得られた多層ラミネートの坪量は1415.9gsmであり、総サンプル厚は1.48mmであった。試験性能データを表5に提供する。
【0115】
実施例16は、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、99.96重量%のKSS及び0.04重量%のSELVOL 9-325を含む第1の改質無機接着剤層を20ミルCeQUIN I無機絶縁紙の第1の側に適用することによって調製した。次いで、TG430ガラス布布地の第1の層を無機接着剤層の上に配置し、4.54kg(10ポンド)ローラーで圧延した。多層ラミネートを180°F(82℃)で5分間乾燥させた。例えば、第2の改質無機接着剤層を、#30メイヤーロッドを使用してCEQUIN I無機絶縁紙の反対側に適用した。次いで、第2の無機TG430ガラス布布地層を第2の無機接着剤層の上に配置し、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延し、82℃(180°F)で5分間乾燥させた。得られた多層ラミネートの坪量は1345.4gsmであり、総サンプル厚は1.43mmであった。試験性能データを表5に提供する。
【0116】
【0117】
グリセリンは、無機接着剤中の総固形分含有量に基づいて、1~5重量%の濃度範囲のケイ酸塩接着剤用の既知の可塑剤である。しかしながら、5重量%のグリセリンを有する改質無機接着剤を利用したEX9の多層材料は、0.04重量%のポリビニルアルコールを有する改質無機接着剤を利用したEX8の多層材料と比較して、より高い充填量ではるかに小さい剛性減少(2.7%対17.1%)を示した。5重量%のグリセリンを添加すると、高湿度曝露後の結合強度回復保持も低減した。
【0118】
無機接着剤に対するアクリル変性を、EX10で評価した。アクリル接着剤は、多層ラミネート構造におけるラミネート接着剤として頻繁に使用される。無機接着剤に対する10重量%のアクリル結合剤変性は、0.04重量%のポリビニルアルコールを有する改質無機接着剤を利用したEX8の多層材料と比較して、ラミネート剛性の同等の低減を生成した。しかしながら、高湿度曝露後、10重量%のアクリル変性Kケイ酸ナトリウムラミネートは、火炎に約7分間曝露されたときに、1000℃トーチ火炎試験(トーチ試験A)に不合格であった。
【0119】
実施例EX15及びEX16を用いて、単純なマンドレル曲げ試験を実施した。Ex15多層材料は、6インチマンドレルの周りに巻き付けられたときに視覚的及び触覚的に座屈することが観察され、EX16多層材料は、6インチのマンドレルの周りに滑らかに巻き付けられた。
【0120】
多種多様な電池セル、電池モジュール、及び電池セルパック設計により、様々な性能特性を有する材料は、それらが設計にどのように組み込まれるかに応じて適用可能であり得る。
【0121】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前者の記載における情報が統制される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層に結合された少なくとも1つの無機布地層を含み、前記無機接着剤は、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、多層材料。
【請求項2】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
ガラス繊維及びマイクロファイバー、無機粒子、並びに有機結合剤を含む無機紙と、
無機接着剤によって前記無機紙の主表面に結合された表面コーティングされたガラス繊維布地層と、を含む、多層材料。
【請求項3】
再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとして使用するための多層材料であって、
無機接着剤によって無機粒子及び無機繊維を含む不織布層の第1の主表面に結合された第1の無機布地層と、
前記無機接着剤によって前記不織布層の第2の主表面に結合された第2の無機布地層と、を備え、
前記無機接着剤は、前記無機接着剤の総固形分含有量に基づいて、少なくとも99重量%の無機成分と、少なくとも0.01重量%及び1重量%未満の有機添加剤と、を含む改質無機接着剤である、多層材料。
【請求項4】
少なくとも1つの電池セルと、
前記多層材料は、熱暴走事象中に火炎バリアを提供する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の多層材料と、を備える、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
【国際調査報告】