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特表2022-536582ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の造血系損傷の治療における使用
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  • 特表-ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の造血系損傷の治療における使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の造血系損傷の治療における使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/36 20150101AFI20220810BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220810BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
A61K35/36
A61P7/00
C12N5/071
C12N7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562049
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2019083027
(87)【国際公開番号】W WO2020211009
(87)【国際公開日】2020-10-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521454799
【氏名又は名称】▲諾▼希生物▲薬▼物▲開▼▲発▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NEXUS BIO‐DRUG DEVELOPMENT LIMITED
【住所又は居所原語表記】UNIT 511, 5/F., TOWER B HUNGHOM COMMERCIAL CENTRE, 37 MA TAU WAI ROAD, HUNGHOM, KOWLOON, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 承▲ヒン▼
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BD15
4B065BD16
4B065BD18
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB48
4C087CA06
4C087MA52
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA51
(57)【要約】
本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の治療における使用に関する。より具体的には、本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療により誘発される造血系損傷または汎血球減少症の治療における使用に関する。さらに、本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療により誘発される白血球減少症の治療における使用に関する。さらに、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は立再適であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される造血系損傷の予防または治療用薬剤の製造における使用。
【請求項2】
前記造血系損傷は骨髄抑制を含み、好ましくは白血球減少症を呈する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における造血系機能の回復または改善用薬剤の製造における使用。
【請求項4】
前記造血系機能の回復または改善は、骨髄抑制の解消または低減を含み、好ましくは白血球数の増加を含む、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される汎血球減少症の予防または治療用薬剤の製造における使用。
【請求項6】
前記汎血球減少症は白血球減少症を含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における全血液細胞の回復または増加用薬剤の製造における使用。
【請求項8】
前記全血液細胞は白血球である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は立再適である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記がん治療は、放射線治療、または抗がん剤治療、例えば、細胞毒性薬、好ましくはDNAに直接作用する薬剤、より好ましくはアルキル化薬、さらに好ましくは、例えばシクロホスファミドであるナイトロジェンマスタード類、を投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、経口剤または注射剤、好ましくは筋肉内注射剤または静脈内注射剤に調剤される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を以0.01U/kg~5U/kg、好ましくは0.1U/kg~2.5U/kg、より好ましくは0.15U/kg~1.15U/kgの量で、患者、好ましくはヒト患者に投与し、または、前記薬剤が0.6U~300U、好ましくは6U~150U、より好ましくは9U~70Uの前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に属する。具体的には、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の治療における新規な使用に関する。より具体的には、本発明は前記抽出物のがん治療により誘発される造血系損傷または汎血球減少症の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
定期的な健康診断によってがんの早期診断および発見が可能となり、外科手術によって得られる原発性がんの成功切除率はすでに安定に改善された。しかし、まだ多種のがん治療(放射線治療または抗がん剤治療を含む)が末期がんまたは転移性がんの治療に用いられている。
【0003】
がん治療はがん細胞に対して損傷を与えるだけではなく、細胞分裂が活発な正常な細胞、例えば骨髄造血細胞、に対しても損傷を与える。抗がん剤による副作用は造血機能損傷および骨髄抑制などを含み、これらの主な症状は白血球の減少であり、赤血球および血小板のいずれも異なる程度で減少し得る。がん治療を受けるときに、患者の体内では、侵入する細菌とウイルスに抵抗する白血球を十分に生産できない可能性があるため、これは生命に係わる感染を非常に引き起こしやすい。
【0004】
このような状況下において、がん治療により誘発される造血機能損傷および骨髄抑制の緩和または治療用薬剤の開発に関する需要は切迫的である。
【0005】
ニレストリオール(nilestriol)が抗がん放射線治療により引き起こされる造血系損傷の緩和に用いられることが知られている(Lirong Yi et.al、 Chinese Journal of Radiological Medicine and Protection、2016.6、Vol.36(6): 412-417、を参照すること)。しかし、がん治療、特に抗がん剤により引き起こされる造血系損傷の治療用の他の薬剤を開発する需要はまだある。
【0006】
本明細書において言及される、前記「ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物」とは、中国特許ZL98103220.6(中国特許番号CN1055249C)に記載されているような、ワクシニアウイルスの接種によって炎症を起こしたウサギの皮膚から抽出した活性物質のことであり、当該中国特許の全体内容を、参考としてここに組み入れる。このようなワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、立再適(lepalvir)なる商品名の下に市販品として入手でき、これは威世薬業(如皋)有限会社により製造されている。ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物とその薬理作用はWO2010/054531においても記載され、この出願の内容全体を、参考としてここに組み入れる。しかし、本発明に至るまでには、前記抽出物ががん治療により誘発される造血系損傷または汎血球減少症の治療に対し有効か否かは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第1055249号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/054531号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lirong Yi et.al、 Chinese Journal of Radiological Medicine and Protection、2016.6、Vol.36(6): 412-417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、がん治療により誘発される造血系損傷または汎血球減少症の予防、緩和または治療用薬剤の提供を含む。より具体的には、本発明の目的は、がん治療により誘発される白血球減少症の予防、緩和または治療用薬剤の提供を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の技術的課題はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物、好ましくは立再適の提供により解決される。
【発明の効果】
【0011】
概していえば、発明者は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、がん治療により誘発される副作用を、有効に予防、治療または緩和できることを発見した。具体的には、前記抽出物はがん治療により誘発される造血系損傷または骨髄抑制を有効に予防、治療または緩和できる。より具体的には、前記抽出物はがん治療により誘発される白血球減少症を有効に予防、治療または緩和できる。
【0012】
強調すべき点は、がん治療により誘発される白血球減少は、他の一般薬剤により引き起こされる白血球減少とは異なる可能性がある。例えば、抗生物質(例えばホルボールエステル)は血小板と白血球の凝集を誘発する可能性があり、または、一部の抗結核菌薬(例えばイソニアジド)は体内において白血球と結合する抗体を誘発する可能性がある。これらのすべては、血流中の白血球の破壊または減少を引き起こし得る。しかしこれらのすべての過程は、すでに存在しているおよび生成された白血球に対するものであり、そして比較的に期間が短く、造血機能損傷または骨髄抑制には関与しない。これに対し、がん治療はがん細胞を殺傷するだけではなく、その他の増殖が活発な細胞、例えば骨髄造血細胞、も殺傷する。したがって、抗がん剤により引き起こされる白血球減少とこれらの薬剤により引き起こされる白血球減少とは顕著に異なる。
【0013】
さらに、発明者は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、がん治療を受ける患者の体重を有効に回復または増加させ得ることを発見した。前記体重の回復または増加は前記抽出物の前記疾病または症状に対する予防または治療の有効性の指標となり得る。
【0014】
一態様において、本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される造血系損傷の予防または治療用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療により誘発される造血系損傷の予防または治療における使用に関する。一態様において、本発明はがん治療により誘発される造血系損傷を予防または治療する一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を、必要としている患者に投与することを含む。前記態様において、造血系損傷は骨髄抑制を含む。前記態様において、造血系損傷または骨髄抑制は白血球減少症を呈する。
【0015】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される骨髄抑制の予防または治療用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療により誘発される骨髄抑制の予防または治療における使用に関する。一態様において、本発明はがん治療により誘発される骨髄抑制を予防または治療する一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を必要としている患者に投与することを含む。前記態様において、造血系損傷または骨髄抑制は白血球減少症を呈する。前記態様において、骨髄抑制は白血球減少症を呈する。
【0016】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における造血系機能の回復または改善用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における造血系機能の回復または改善における使用に関する。一態様において、本発明はがん治療を受ける患者における造血系機能を回復させるまたは改善する一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を、前記がん治療を受ける患者に投与することを含む。前記態様において、造血系機能の回復または改善は骨髄抑制の解消または低減を含む。前記態様において、造血系機能の回復または改善は白血球数の増加を含む。
【0017】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における骨髄抑制の解消または低減用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における骨髄抑制を解消するまたは低減させる使用に関する。一態様において、本発明はがん治療を受ける患者における骨髄抑制を解消するまたは低減させる一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を、がん治療を受ける患者に投与することを含む。前記態様において、骨髄抑制の解消または低減は白血球数の増加を含む。
【0018】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の患者におけるがん治療により誘発される汎血球減少症の予防または治療用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される汎血球減少症を予防または治療する使用に関する。一態様において、本発明は患者におけるがん治療により誘発される汎血球減少症を予防または治療する一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を前記患者に投与することを含む。前記態様において、前記汎血球減少症は白血球減少症を含む。
【0019】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における全血液細胞の回復または増加用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、がん治療を受ける患者における全血液細胞の回復または増加における使用に関する。一態様において、本発明はがん治療を受ける患者における全血液細胞を回復または増加させる一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を前記患者に投与することを含む。一態様において、前記全血液細胞は白血球である。
【0020】
一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される体重減少の予防、緩和または治療用薬剤の製造における使用に関する。一態様において、本発明はワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、患者におけるがん治療により誘発される体重減少の予防、緩和または治療における使用に関する。一態様において、本発明は患者におけるがん治療により誘発される体重減少を緩和または治療する一種の方法に関し、前記方法は治療有効量のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を前記患者に投与することを含む。前記態様において、前記患者はがん治療を受ける患者である。前記態様において、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物はがん治療を受ける患者の体重を増加させるために使用される。強調すべき点は、抗体療法を受ける患者の体重の回復または増加は前記患者の造血機能の回復または骨髄抑制の緩和の指標となることができ、そのため本発明抽出物の治療効果をさらに表し得る。
【0021】
一態様において、本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物と、任意の薬学的に許容される担体、アジュバントまたは賦形剤と、を含む一種の組合せ医薬組成物に関する。本発明の一態様において、前記薬学的に許容される担体、アジュバントまたは賦形剤は、医薬品を経口剤または注射剤に調剤するものである。一態様において、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、経口剤または注射剤、好ましくは筋肉内注射剤または静脈内注射剤に製剤化される。一態様において、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は立再適である。
【0022】
本発明の一態様において、前記がん治療は放射線治療または抗がん剤治療を含む。本発明の一態様において、前記がん治療は細胞毒性薬を患者に投与することを含む。本発明の一態様において、前記抗がん剤は直接DNAに作用する薬剤を含む。本発明の一態様において、前記抗がん剤はアルキル化剤を含み、より好ましくはナイトロジェンマスタード類、例えばシクロホスファミドである。がん治療の投与量および投与方法は当業者よって実際の状況に基づいて選択でき、そのためこれらは本発明の実施を限定する条件ではない。
【0023】
本発明の一態様において、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物(好ましくは立再適)は約0.01~約5U/kg、好ましくは約0.1~約2.5U/kg、より好ましくは約0.15~約1.15U/kgの量で患者、好ましくはヒト、に投与される。例えば、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、約0.01U/kg、約0.02U/kg、約0.05U/kg、約0.1U/kg、約0.15U/kg、約0.2U/kg、約0.25U/kg、約0.3U/kg、約0.35U/kg、約0.5U/kg、約0.6U/kg、約0.8U/kg、約1U/kg、約1.05U/kg、約1.1U/kg、約1.13U/kg、約1.14U/kg、約1.15U/kg、約1.17U/kg、約1.18U/kg、約1.2U/kg、約1.3U/kg、約1.4U/kg、約1.5U/kg、約1.8U/kg、約2U/kg、約2.5U/kg、約3.5U/kg、約4.5U/kgおよびこれらの数字を上限または下限とする範囲から選択される量で患者、好ましくはヒト、に投与される。投与量として、ヒトの用量(U/kgまたはmg/kg)=マウスの用量(U/kgまたはmg/kg)/12.3、または人の用量(U/kgまたはmg/kg)=マウスの用量(U/kgまたはmg/kg)×0.08であることは、当業者に知られている。上記の用量は患者における前記疾病を治療する有効量であってよい。一態様において、前記ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は上記の用量で注射、例えば筋肉内注射または静脈内注射、によって投与される。
【0024】
本発明の一態様において、製造される薬剤は約0.6~約600U、好ましくは約6~約300U、より好ましくは約9~約70Uのワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を含む。前記薬剤はヒト、例えば成体ヒト、に投与される。成体ヒトの平均体重は例えば60kgである。したがって、本発明において製造される薬剤の中に含まれるワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の量は、例えば約0.6U、約1.2U、約3U、約3.5U、約3.6U、約6U、約9U、約12U、約15U、約18U、約21U、約30U、約36U、約40U、約60U、約63U、約66U、約67.8U、約68.4U、約69U、約69.5U、約70U、約70.2U、約70.8U、約72U、約78U、約84U、約90U、約108U、約120U、約150U、約210U、約270U、およびこれらの数字を上限または下限とする範囲にある。一態様において、前記薬剤は注射剤、例えば筋肉内注射剤または静脈内注射剤に製造される。一態様において、前記薬剤または注射剤は分割できない固定用量である。一態様において、前記薬剤または注射剤は、1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日以内においてさらに少ない用量に分割できない。一態様において、前記医薬または注射剤は1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日以内において一回だけ投与される。
【0025】
本発明の一態様において、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物はがん治療と同時に、別々にまたは順序に施用されてもよい。一態様において、前記抽出物はがん治療の前にまたは後に施用されてもよい。一態様において、患者に対しがん治療を施用後の約1~7日、好ましくは1~6日、例えば第1、2、3、4または5日以内に、前記患者にワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を投与する。一態様において、患者に対しがん治療を施用してから約1~約72時間、好ましくは約2~約48時間、より好ましくは約3~約24時間、より好ましくは約5~約12時間、より好ましくは約6~約8時間、より好ましくは約6時間後に、前記患者にワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を投与する。本発明の一態様において、約6~約72時間、好ましくは約12~約60時間、より好ましくは約24~約48時間、より好ましくは約36~約48時間、より好ましくは約48時間ごとに、前記患者にワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を投与する。本発明の一態様において、がん治療を受ける患者にワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を継続して少なくとも約24か月間、少なくとも約12か月間、少なくとも約6か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約1か月間、少なくとも約3週間、少なくとも約2週間、少なくとも約10日間、少なくとも約7日間、少なくとも約5日間または少なくとも約2日間投与する。
【0026】
一態様において、投与の1~12日、好ましくは2~8日、より好ましくは4~7日(例えば4、5、6または7日)後に、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は患者における白血球の増加を引き起こし、その増加レベルは前記抽出物を受けていない患者より大きい。この態様において、前記抽出物を受けている患者に現れる白血球増加レベルは前記抽出物を受けていない患者の白血球増加レベルの少なくとも約1倍、少なくとも約1.01倍、少なくとも約1.05倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、例えば約1.01~約2倍である。
【0027】
本発明の一態様において、患者または患畜は哺乳類であってよく、好ましくはヒトである。この態様において、前記患者はがん治療を受けるヒト患者。別の一態様において、患者はがん治療により誘発される造血系損傷または骨髄抑制を患うヒト患者である。さらに、ヒト患者における白血球減少または白血球減少症は造血系損傷または骨髄抑制により誘発されるまたは引き起こされる。
【0028】
本明細書において述べられている「ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物(extract from rabbit skin inflamed by vaccinia virus)」と「天然痘ワクチンによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物」は互換的に使用することができ、ワクシニアウイルスの接種によって炎症を起こしたウサギ皮膚の中から、例えば浸出、精製、再精製などの工程を経ることによって抽出された、活性物質を含む一種類の抽出物を意味する。この抽出物は通常黄色または淡い黄色の液体であるが、乾燥方法によって固体に形成させてもよい。この種類のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の注射剤は市販品として入手でき、商品名は立再適(Lepalvir)であり、威世薬業(如皋)有限会社によって生産される。一態様において、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物または立再適の製造方法は中国特許公開公報CN1205233A、CN1613305AおよびCN1493302A、PCT国際公開公報WO2004/060381、並びに欧州特許公開公報EP1557171などにおいて説明され、これらの内容全体は引用により本明細書に組み入れる。
【0029】
一態様において、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物または立再適以下の工程を含む方法により調製できる。
【0030】
(1)ワクシニアウイルス接種によって炎症を起こしたウサギ皮膚を収集し、前記ウサギ皮膚を破砕し、抽出溶媒で抽出し、溶液Aを得る工程、
(2)溶液Aを酸性に調製して加熱し、溶液Bを得る工程、
(3)溶液Bを塩基性に調製して加熱し、溶液Cを得る工程、
(4)酸性条件下で溶液Cを吸着して濾過し、塩基性条件下で溶出し、溶液Dを得る工程、
(5)溶液Dを中和して加熱し、溶液Eを得る工程、
(6)溶液Eを濃縮し、前記抽出物を得る工程、および
(7)任意に、抽出物を薬学的に許容される担体、アジュバントまたは賦形剤と混合する工程。
【0031】
一態様において、工程(1)において、ワクシニアウイルスをカイウサギに接種し、発痘させた皮膚を収集し、前記皮膚を破砕し、フェノール水溶液を加えて、約12℃を下回る温度(例えば約0~10℃、好ましくは約2~8℃、より好ましくは約3~6℃、より好ましくは約4℃)において少なくとも約12時間(例えば約24~90時間、好ましくは約48~72時間、より好ましくは約70または約72時間)浸漬し、遠心分離し上清を得、濾過して溶液Aを得る。前記フェノール水溶液中のフェノールの濃度は約1%~10%、好ましくは約2%~5%、より好ましくは約2%または約3%である。
【0032】
一態様において、工程(2)において、酸(例えば塩酸)で溶液Aを酸性(例えば約pH4~6、より好ましくは約pH4.5~5.5、より好ましくは約pH5)に調製し、(例えば約90~100℃、好ましくは約95℃において継続して少なくとも約10分間、例えば約20~50分間、好ましくは約30~40分間)加熱し、任意に温度を(例えば約50℃より低い、好ましくは約30℃より低い温度までに)下げ、その後遠心分離し上清を得、濾過して溶液Bを得る。前記工程(2)は窒素環境下において行ってもよい。
【0033】
一態様において、工程(3)において、塩基(例えば水酸化ナトリウム)を用いて溶液Bを塩基性(例えば約pH8~10、より好ましくは約pH8.5~9.5、より好ましくは約pH9または約pH9.2)に調整し、(例えば約90~100℃、好ましくは約95℃において継続して少なくとも10分間、例えば約30~50分間、好ましくは約30~40分間)加熱し、任意に温度を(例えば約50℃より低い、好ましくは約30℃より低い温度までに)下げ、濾過して溶液Cを得る。前記工程(3)は窒素環境下において行ってもよい。
【0034】
一態様において、工程(4)において、酸(例えば塩酸)を用いて溶液Cを酸性(例えば約pH3~6、より好ましくは約pH4~5、より好ましくは約pH4.5)に調整し、その中に吸着剤(例えば活性炭)を加えて(例えば撹拌しながら継続して少なくとも約1時間、好ましくは約2~10時間、より好ましくは約4時間)浸漬を行い、その後溶液を除去して活性成分を含有する吸着剤を収集する。その後、前記吸着剤を溶出液(例えば水)の中に加え、塩基(例えば水酸化ナトリウム)を用いてpHを塩基性(例えば約pH9~12、好ましくは約pH10またはpH11)に調整し、活性成分を吸着剤の中から分離させ(例えば少なくとも約1時間、好ましくは2~10時間、より好ましくは4時間を撹拌し、その後濾過し、さらに水を用いて吸着剤を洗浄)、溶液Dを得る。前記工程(4)は窒素環境下において行ってもよい。
【0035】
一態様において、工程(5)において、酸(例えば塩酸)を用いて溶液Dを弱酸性(例えば約pH5.5~6.6、好ましくは約pH6)に中和し、溶液Eを得る。好ましくは、前記工程(5)は無菌条件下で行ってもよい。
【0036】
一態様において、工程(6)において、溶液Eを(例えば減圧濃縮、好ましくは減圧蒸発濃縮、例えば約50℃~70℃において、好ましくは約54℃~56℃において)濃縮し、その後濾過し、活性成分を含有する抽出物を得る。前記工程(6)は窒素環境下において行ってもよい。
【0037】
本明細書において述べる「がん治療」、「抗腫瘍治療」、「抗がん治療」および「腫瘍治療」などは互換的に使用することができ、患者のがんまたは腫瘍に対し実施される治療方法を示すことができる。前記がん治療は薬物治療と放射線治療を含み、そのうち薬物治療は化学療法を含む。これらの治療は患者に対し、造血機能損傷例えば骨髄抑制、消化器症状例えば吐き気および嘔吐、毒性例えば心毒性および呼吸系毒性など、並びに脱毛などを含む副作用を引き起こし得る。
【0038】
本明細書において述べる「抗がん剤治療」、「抗がん剤」および「抗腫瘍剤」などは互換的に使用することができ、患者のがんまたは腫瘍に対して実施される薬物治療を示すことができる。「抗がん剤」は細胞毒性薬および非細胞毒性薬を含むことができ、前記細胞毒性薬は、核酸(例えばDNAまたはRNA)に直接作用する薬剤、代謝拮抗薬(例えばDNAの合成を阻害する薬剤)および構造タンパク質に作用する薬剤などを含むことができる。一態様において、抗がん剤はアルキル化剤を含むことができ、前記アルキル化剤はナイトロジェンマスタード類を含むことができる。シクロホスファミドがナイトロジェンマスタード類抗がん剤に属する。
【0039】
「造血系」は通常、造血器官と造血細胞の二つの部分によって構成され、体内において血液を製造するシステムの全体であり、主に卵黄嚢、肝臓、脾臓、腎臓、胸腺、リンパ節および骨髄を含む。本発明において、がん治療により損傷を受ける造血系は骨髄、肝臓、脾臓およびリンパ節、好ましくは骨髄、に関係してもよい。
【0040】
本明細書において述べる「骨髄抑制」と「骨髄機能抑制」は互換的に使用することができ、例えばがん治療により引き起こされる骨髄中の血液細胞の前駆細胞の活性または数量の減少を含むことができる。血流中の血液細胞は寿命が短く、常に間欠なき補充が必要である。タイムリーに補充する目的を達成するため、血液細胞の前駆細胞である幹細胞は速く分裂しなければならない。薬物治療(例えばシクロホスファミド)および放射線治療、および数多くその他の抗腫瘍治療は、すべて速く分裂する細胞をターゲットにするものであり、したがって正常な骨髄細胞の抑制を頻繁に引き起こす。多数のがん治療により引き起こされる骨髄抑制の中では通常、白血球の減少は比較的に速いものであり、メインである。したがって、化学療法の後に白血球の数量の検査測定によって骨髄抑制が発生したか否かを判断することができ、そして、薬剤の白血球回復効果もしたがって当該薬剤の骨髄抑制に対する治療効果の重要な指標である。
【0041】
「白血球減少症」通常、末梢血の中の白血球数が継続して4×10/Lより低い場合の症状を示すことができる。がん治療は腫瘍細胞を殺傷すると同時に、正常細胞、特に増殖が盛んな細胞、例えば骨髄造血細胞など、に対しても深刻な損傷を与え、血液細胞の減少を引き起こす。臨床上、白血球の減少により続発する重度の感染症などの影響を受け、がん療法がスムーズに進行できないことがしばしばあり、それによって治療効果が低減し、患者のクオリティオブライフが低下する。したがって、がん治療において末梢血の白血球を増加させることはすでに、がん治療の完成を保証するおよびがん治療の効果を高める鍵となっている。
【0042】
「汎血球減少症」は、血液中の赤血球、白血球および血小板数減少の医学症状を示すことができ、これは造血機能損傷または骨髄機能抑制により引き起こされる血球減少を含むことができる。がん治療中の血球減少において、白血球の減少が主でありかつ顕著であるため、薬剤の白血球増加に対する効果は、汎血球減少症に対する効果を合理的に表すとこができる。
【0043】
がん治療の副作用は患者の体重減少を引き起こし得る。したがって、薬剤の患者の体重増加に対する効果もこれが前記副作用(例えば造血系損傷、骨髄抑制、汎血球減少症および白血球減少症など)を有効に緩和または治療する指標になりうる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】シクロホスファミド(250mg/kg)に曝露されたマウスにおける末梢血白血球に対する立再適の影響の変化曲線。WBC:白血球。
図2】シクロホスファミドに曝露されたマウスにおける末梢血白血球濃度上昇幅に対する立再適の影響(第6日)。WBC:白血球。
【発明を実施するための形態】
【0045】
特に述べない限り、本明細書において使用するあらゆる科学用語は、当業者にとって普通に理解されているような意味を持つものとする。例示的な方法および材料は、以下に示す通りであるが、その等価なものを使用することも可能である。本明細書において述べるあらゆる刊行物およびその他の参考文献は、その内容の全体を、参考としてここに組み入れるものとする。
【0046】
本発明を、以下に記載する実施例を参照しつつ、さらに詳しく説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0047】
実施例
【0048】
実施例1-立再適の細胞毒性薬による造血系損傷に対する保護作用
【0049】
1.実験目的
シクロホスファミドに曝露されたマウスを用いて造血系損傷モデルを作製し、モデルマウスにおける末梢血白血球に対する立再適の影響を観察し、立再適がマウスに対し造血機能を促進する効果の有無について考察する。
【0050】
2.実験材料
2.1 被験薬
威世薬業(如皋)有限会社により提供された立再適であった。
【0051】
2.2 陽性対照薬
軍事医学科学院放射医学研究所9室により提供されたニレストリオール(Nilestriol)であった。
【0052】
2.3 実験動物
軍事医学科学院実験動物センターにより繁殖された成体KMマウスであった。マウスの体重は18.0~20.0gであった。実験動物許可証番号はSCXK-(軍)2002-001であった。実験動物は軍事医学科学院動物実験室で飼育され、実験室合格証番号はSYXK(軍)-2002-016であった。ケージ1個あたりにマウスを10匹収容し、マウス専用に調製された飼料を与え、水は自由に摂取させた。動物実験室内の温度は約25℃に維持され、相対湿度は40~70%に維持され、照明時間は毎日12時間であった。
【0053】
3.実験方法
3.1 グループ化方法
実験には、モデル対照群、陽性対照薬群(ニレストリオール10mg/kg)、立再適高用量群(14.4U/kg)、立再適中高用量群(7.2U/kg)、立再適中用量群(3.6U/kg)、立再適低用量群(1.8U/kg)、の6群を設けた。マウスを2回の投与前の正常な血液中の白血球数の平均値によって無作為にグループ化し、10匹/群とした。
【0054】
3.2 モデル作製方法
マウスにシクロホスファミド(250mg/kg)を1回投与し、投与容量は200μlであり、投与経路はすべて腹腔内注射であった。
【0055】
3.3 投与方法
陽性対照薬ニレストリオール(10mg/kg)をシクロホスファミドの投与6時間後に1回投与し、投与容量は200μlであった。各立再適群はシクロホスファミドの投与から6時間後に投与を開始した。48時間に1回、2週間継続投与し、投与経路は筋肉内投与であった。
【0056】
3.4 マウスにおける薬効の検査測定指標
モデル作製前にマウスの正常な血液状態指標を検査測定し、シクロホスファミド投与後、血液状態が完全に回復するまで、2~3日ごとに白血球の指標を検査測定した。終了後マウスを犠牲にし、骨髄切片を作製し骨髄組織の変化を観察するため、骨髄標本をホルマリンで保存した。
【0057】
3.5 データ処理
計量データはxの平均値±sで表示し、EXCELソフトウェア中のt検定プログラムを用いて、群間の統計学分析を行った。GraphPad Prism5を用いて各種の白血球の指標の変化曲線を描いた。
【0058】
4.実験結果
4.1 マウスの白血球に対する影響
シクロホスファミドに曝露された1日後に白血球数が最低値に低下し、その後回復が開始し、そしてモデル対照群と比較すると立再適投与群の回復速度が比較的に速かった。各群が12日に投与前の正常値の近くまで回復した。詳しくは表1および図1を参照。
【0059】
表1は、シクロホスファミド(250mg/kg)に曝露されたマウスにおける末梢血白血球に対する立再適の影響である。
【0060】
【表1】
【0061】
vs:モデル対照、“*”P<0.05;“**”P<0.01;“***”P<0.001
【0062】
5.評価
観察された時間範囲内において、動物の末梢血中の白血球数の変化は比較的に大きかった。シクロホスファミド投与1日後、モデル対照群の白血球の濃度が最も低い値に低下し、その後ゆっくり回復し、モデル作製12日後に投与前の測定値に近づいた。
【0063】
シクロホスファミドの投与から6時間後の投与を採用した。表1および図1に示すように、モデル作製後6日目に、被験薬群の白血球濃度の上昇幅が対照群より高くなり、造血系の回復段階において、被験薬は促進効果を有すると示唆した。図2はより直接的に立再適の造血系回復に対する促進効果を示した。
【0064】
6.結論
造血回復段階において、被験薬はマウスの白血球の指標の回復を有効に促進することを示唆した。これはさらに立再適はがん治療により誘発される造血系損傷および骨髄抑制を有効に治療できることを合理的に示した。
【0065】
実施例2-立再適の細胞毒性薬による体重減少に対する作用
【0066】
1.実験目的
シクロホスファミドに曝露されたマウスを用いて骨髄損傷モデルを作製し、モデルマウスの体重に対する被験薬の影響を観察する。
【0067】
2.実験材料
2.1 被験薬
威世薬業(如皋)有限会社により提供された立再適であった。
【0068】
2.2 シクロホスファミド注射剤
江蘇盛迪医薬有限会社により提供されたシクロホスファミドであった。
【0069】
2.3 実験動物
北京維通利華科技有限会社により提供された成体KMマウスであった。マウスの体重は18.0~22.0gであり、メスであった。実験動物許可証番号はSCXK-(京)2016-0011(NO.11400700269430)であった。実験動物は軍事医学科学院動物実験室内で飼育され、施設使用許可証はSYXK(軍)2012-0021であった。各ケージあたりマウスを10匹収容し、マウス専用に調製された飼料を与え、水は自由に摂取させた。動物実験室内の温度が約25℃に維持され、相対湿度が40~70%に維持され、毎日の照明時間は12時間であった。
【0070】
3.実験方法
3.1 モデルの作製
KMマウスを体重に応じてグループ化し、7匹をブランク対照群とした。
残りのKMマウスを、モデルの作製のために、シクロホスファミド(300mg/kg)の腹腔内注射に用いた。モデルが作製された3日目に、モデルKMマウスの血液状態を検査測定し、KMマウスの血液白血球の計数値によって無作為にグループ化し、動物10匹/群とした。
【0071】
3.2 グループ化方法
グループ化および処置の方法は、以下に示す。
1)ブランク対照群、7匹。
2)モデル対照群、10匹。
3)立再適高用量群、静脈内投与、投与量14.4U/kg、10匹。
4)立再適低用量群、静脈内投与、投与量1.8U/kg、10匹。
【0072】
3.3 投与方法
各被験薬群がグループ化された2日目(モデル作製4日目)から投与を開始し、48時間ごとに1回投与し、計4回投与した。
【0073】
3.4 体重の検査測定
投与前の3日目(-3d)、投与後の1、3、5、8および10日目(1d、3d、5d、8dおよび10d)にKMマウスの体重を計測した。
【0074】
3.5 統計方法
計量データはX±Sで表示し、スチューデントのt検定を用いて統計学分析を行った。
【0075】
4.薬効実験結果
モデルされた各群の実験動物の体重がすべて軽減し、明確にブランク対照群を下回った(P<0.05)。治療の5日目から体重が徐々回復し、治療の8日目から体重が明確に回復し、モデル対照群と比較すると顕著な差異があった(P<0.05)。表2および3を参照。
【0076】
表2は、KMモデルマウスおよび各処理群マウス体重変化値である。
【0077】
【表2】
【0078】
注:ブランク対照群との比較、“*”P<0.05;“**”P<0.01;“***”P<0.001;モデル対照群との比較、“?”P<0.05;“??”P<0.01;“???”P<0.001。
【0079】
表3 KMモデルマウスおよび各処理群マウス体重相対増加変化値
【0080】
【表3】
【0081】
注:ブランク対照群との比較、“*”P<0.05;“**”P<0.01;“***”P<0.001;モデル対照群との比較、“?”P<0.05;“??”P<0.01;“???”P<0.001。
【0082】
5.実験評価
シクロホスファミドによるマウス骨髄造血損傷モデルにおいて、すべてのマウスが体重の低減を呈した。被験薬がマウスの体重の回復に対する促進効果を有し、モデル対照群との対比は統計学的に有意な差があった。
【0083】
6.結論
被験薬立再適は、シクロホスファミドによる骨髄損傷モデルマウスの体重回復を促進でき、これが抗がん治療により引き起こされる造血系損傷および骨髄抑制を有効に緩和できることを間接的に示唆した。
図1
図2
【国際調査報告】