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特表2022-536609特に材料の堆積による、部品の表面の選択的かつ局所的処理システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】特に材料の堆積による、部品の表面の選択的かつ局所的処理システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20220810BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20220810BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20220810BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220810BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B29C64/112
B29C64/386
B33Y50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569375
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 FR2020000175
(87)【国際公開番号】W WO2020234517
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1905232
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521508944
【氏名又は名称】ウエストレイク コンパウンズ ホールディング
【氏名又は名称原語表記】WESTLAKE COMPOUNDS HOLDING
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】アムールー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】エッ フォーザリ,ムスタファー
(72)【発明者】
【氏名】エルアラグ,ホッサム
【テーマコード(参考)】
2H113
4F213
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB19
2H113BB23
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL32
4F213WL85
(57)【要約】
部品の表面を選択的かつ局所的に処理する方法であって、処理表面を有する部品を提供し、前記表面は、方向Pおよび方向Qによって定義され、前記処理表面に関して平面PQ内の各点に高さを関連付ける3次元データのセットF1を取得するために、前記処理表面から3次元形状測定データを取得し、前記セットF1を、前記湾曲を差し引く目的でデジタル処理をし、再処理済みの3次元データのセットF2を取得し、前記セットF2のデータについて、前記表面上の各点に前記表面上の前記点の前記高さに関連する少なくとも1つの基準に応じて第1のバイナリ値または第2のバイナリ値を帰するデジタル処理をし、前記処理表面に関するバイナリデータのセットF3を取得し、前記表面を、バイナリデータの前記セットF3を使用して選択的かつ局所的に処理し、前記バイナリデータが前記第1または前記第2のバイナリ値を有する前記表面上の点でのみ前記表面処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の表面を選択的かつ局所的に処理するための方法であって、
(a)処理する表面を有する部品を提供し、前記表面は、方向Pおよび方向Qによって定義され、前記表面PおよびQは、湾曲を有し得るステップと、
(b)前記処理する表面に関して平面PQ内の各点に高さを関連付ける3次元データのセットF1を取得するために、前記処理する表面から3次元形状測定データを取得するステップと、
(c)このデータの前記セットF1を、前記湾曲を差し引く目的でデジタル処理をし、前記処理する表面に関する再処理済みの3次元データのセットF2を取得するステップと、
(d)このデータの前記セットF2について、前記表面上の各点に前記表面上の前記点の前記高さに関連する少なくとも1つの基準に応じて第1のバイナリ値または第2のバイナリ値を帰するデジタル処理をし、前記処理する表面に関するバイナリデータのセットF3を取得するステップと、
(e)前記表面を、バイナリデータの前記セットF3を使用して選択的かつ局所的に処理し、前記バイナリデータが前記第1または前記第2のバイナリ値を有する前記表面上の点でのみ前記表面処理を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)において、少なくとも1つのデータフィルタリング動作を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異常点を除去するために少なくとも1つのデータフィルタリング動作を実行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
表面処理から孤立点を除去するために、前記データセットF3を再処理する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
特定の表面積に達しない隣接区域を表面処理から除去するために、前記データセットF3を再処理する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
表面処理の隣接区域を拡大するために、前記データセットF3を再処理する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面処理の区域の角度を丸めるために、前記データセットF3を再処理する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
表面処理の区域内の特定の数の点より小さいサイズの穴を除去するために、前記データセットF3を再処理する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理する表面は、起伏のある表面要素を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
2つの隣接するスキャン線を一定間隔で離間させながら、前記方向Pに平行なスキャン線による一連の線形スキャンから前記3次元形状測定データを取得し、前記一定間隔は、好ましくは100μm未満、より好ましくは90μm未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面処理は、前記バイナリ値が前記第1または第2の値をとるすべての点について同一である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイナリデータが前記第1のバイナリ値をとる点に対して第1の表面処理を実行し、次に前記バイナリ値が前記第2のバイナリ値をとる点に対して第2の表面処理を実行する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
-ステップ(d)を繰り返して、前記データセットF3を生成するために使用したものとは異なる前記表面の前記点の前記高さに関連する基準を持つデータセットF3’を取得し、且つ、
-ステップ(e)に従って2つの処理を実行する、つまり、データセットF3およびF3’の各セットに対して同一または異なる性質の前記処理をすることができる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記表面処理は、インクの堆積などの材料を堆積するステップ、若しくは穴の掘削などの材料を除去するステップ、または前記表面を架橋することができるエネルギーの供給などの前記表面を化学修飾するステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記部品は、
-車の客室のカバー部分、特にダッシュボードやドアのカバー部分などの自動車のカバー部品、
-天然若しくは人工皮革で作られる部品、特に皮革製品若しくは家具部品、または皮革製品または家具部品の目に見える部分の製造に使用されている部品、
-生地表面を有している部品、
-金型の表面と接触して製造されている金属またはプラスチック部品、
によって形成される群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
規則的または不規則な表面起伏を有する部品を装飾し、前記表面起伏は、特に、粒子、継ぎ目、シール、縁、刻印に対応することができる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
レーザー形状測定器を搭載し、3次元形状測定データを取得可能な少なくとも1つの把持アームと、少なくとも1つの表面処理ツールとを備えたロボットと、
前記ロボット、前記レーザー形状測定器および前記少なくとも1つの表面処理ツールと通信し、前記ロボット、前記レーザー形状測定器および前記少なくとも1つの表面処理ツールの動作を制御するように構成されているコンピュータと、
を含む装置であって、
請求項1から16のいずれか一項に記載の部品の表面を選択的かつ局所的に処理するための方法を実施するように構成され且つ実施することができる、装置。
【請求項18】
前記コンピュータは、ステップ(c)および(d)の前記デジタルデータ処理を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記表面処理ツールは、インクジェットプリントヘッドまたはレーザータイプの発光体であることを特徴とする、請求項17または18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項の装置の活動の制御が意図され且つ可能なコンピュータ上で動作する、請求項1から15のいずれか一項による方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の堆積を介して、より具体的にはインクジェット印刷を介して、部品の表面を選択的かつ局所的に処理するための方法に関する。より具体的には、本発明は、それらの起伏に従って、方法自体の実行中に決定される区域へのインク堆積による選択的かつ局所的な装飾のステップを含む表面処理方法に関する。この方法は、粒子、継ぎ目、シール、ロゴ、パターン、縁など、表面が規則的または不規則な起伏を持つ形状の部品の装飾に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
材料の堆積を介して部品の表面を処理するための技術、例えばインクジェット印刷が知られている。これらの技術は、大きなサイズの表面に画像を印刷するために使用することができ、これらの表面は、例えば、約数十センチメートルから一若しくは二メートルまでの寸法を有する。印刷は、多軸ロボットのアームの端に配置されたインクジェットプリントヘッドによって実行できる。
【0003】
このようなシステムは、米国特許出願公開第2015/0042716号明細書(Heidelberger Druckmaschinen AG)に記載されている。自動車の車体などの曲面にインクジェットで画像を印刷することができる。同様のシステムは、自動車のボディに印刷するための米国特許出願公開第2014/0063096号明細書(Heidelberger Druckmaschinen AG)、および自動車の窓に印刷するための米国特許出願公開第2013/0314460号明細書(Exatex)に記載されている。欧州特許出願公開第2873496号明細書(ABB Technology AG)は、制御された動きを実行可能な圧電アクチュエータによる6軸ロボットのアームにインクジェットプリントヘッドが接続されている同様のシステムを提案している。
【0004】
これらのシステムは、一般に、インクジェットプリントヘッドの経路となる経路上の部品の(平坦なまたは湾曲している)全体的な形状を取得するためのシステムを含む。それらは、この平坦なまたは湾曲している表面に画像を印刷することができる。しかしながら、これらのシステムは、それらが設計されていない用途、すなわち、局所的な起伏の態様、例えば、ボス、折り目、溝または他の態様に由来する区域の表面の選択的処理の別の用途には適していない。そのような表面の態様は、例えば、天然または人工の皮革の表面に見られ、皮革の粒子または継ぎ目によって引き起こされる可能性がある。同一の型で成形して得られた部品の場合でも、これらの局所的な起伏の態様の位置と形状は、ある部品から別の部品で厳密に再現できるわけではない。印刷によるそのような表面の装飾中に、表面起伏の再現性の欠如により、画像の配置が不正確になる可能性がある。
【0005】
従来技術によるシステムは、以前に取得された部品の全体的な形状に基づいて、表面の局所的な態様を無視することによって、局所的な態様を有するそのような表面に画像を印刷することができる。印刷された画像を局所的な起伏に重ね合わせる必要がない場合、この印刷は十分な精度を有する可能性がある。他方、従来技術によるシステムは、これらの局所的な表面の態様を選択的に処理することができない。例として、それらは、皮革表面の継ぎ目線にインクを選択的に堆積させること、または皮革表面の粒子線(すなわち、2つの粒子の間の窪み)を選択的に着色することができない。「皮革の表面」という用語は、ここでは表面の態様を指し、化学的性質が当座の問題にとって重要ではない材料を指すものではない。この皮革の表面は、たとえば自動車のダッシュボードの分野で一般的な、プラスチック材料などの人工皮革の表面であり得る。
【0006】
本発明が解決しようとしている問題は、平坦なまたは湾曲した表面を処理するためのシステムを提案することであり、これにより、上記表面上の起伏に(窪みまたは隆起のいずれかとして)刻み込まれている上記表面の区域の表面の選択的処理、例えば選択的装飾が可能になる。このシステムは、基板の平面に平行な方向のオフセットをできるだけ低くし、且つ、基板の平面に垂直な方向のオフセットをできるだけ低くする必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の目的は、部品の表面を選択的かつ局所的に処理するための方法であって、
(a)処理する表面を有する部品を提供し、前記表面は、方向Pおよび方向Qによって定義され、前記表面PおよびQは、湾曲を有し得るステップと、
(b)前記処理する表面に関して平面PQ内の各点に高さを関連付ける3次元データのセットF1を取得するために、前記処理する表面から3次元形状測定データを取得するステップと、
(c)このデータの前記セットF1を、前記湾曲を差し引く目的でデジタル処理をし、前記処理する表面に関する再処理済みの3次元データのセットF2を取得するステップと、
(d)このデータの前記セットF2について、前記表面上の各点に前記表面上の前記点の前記高さに関連する少なくとも1つの基準に応じて第1のバイナリ値または第2のバイナリ値を帰するデジタル処理をし、前記処理する表面に関するバイナリデータのセットF3を取得するステップと、
(e)前記表面を、バイナリデータの前記セットF3を使用して選択的かつ局所的に処理し、前記バイナリデータが前記第1または前記第2のバイナリ値を有する前記表面上の点でのみ前記表面処理を実行するステップと、
を含む。
【0008】
典型的には、前記処理する表面は、起伏のある表面要素を有する。
【0009】
一実施形態では、2つの隣接するスキャン線を一定間隔で離間させながら、前記方向Pに平行なスキャン線による一連の線形スキャンから前記3次元形状測定データを取得し、前記一定間隔は、好ましくは100μm未満、より好ましくは90μm未満である。
【0010】
ステップ(c)において、例えば、異常な点を排除するために、データについて少なくとも1つのデジタルフィルタリング操作を実行することができる。
【0011】
特定の実施形態では、ステップ(d)における表面の点の高さに関連する前記基準は、最小の高さと最大の高さの間に位置するすべての点に同一バイナリ値を帰する。
【0012】
別の特定の実施形態では、ステップ(d)を繰り返して、前記データセットF3を生成するために使用したものとは異なる前記表面の前記点の前記高さに関連する基準を持つデータセットF3’を取得し、且つ、ステップ(e)に従って2つの処理を実行する、つまり、データセットF3およびF3’の各セットに対して同一または異なる性質の前記処理をすることができる。
【0013】
他のすべてと組み合わせることができる別の実施形態では、表面処理から孤立点を除去するために、特定の表面積に達しない隣接区域を表面処理から除去するために、表面処理の隣接区域を拡大するために、表面処理の区域の角度を丸めるために、または表面処理の区域内の特定の数の点より小さいサイズの穴を除去するために、データセットF3を再処理する。
【0014】
通常、前記表面処理は、前記バイナリ値が前記第1または第2の値をとるすべての点について同一である。
【0015】
前記表面処理は、インクの堆積などの材料を堆積するステップ、若しくは穴の掘削などの材料を除去するステップ、または前記表面を架橋することができるエネルギーの供給などの前記表面を化学修飾するステップを含むことができる。
【0016】
別の方法では、バイナリデータが前記第1のバイナリ値をとる点に対して第1の表面処理を実行し、次に、バイナリ値が前記第2のバイナリ値をとる点に対して第2の表面処理を実行する。
【0017】
前記部品は、通常、
-車の客室のカバー部分、特にダッシュボードやドアのカバー部分などの自動車のカバー部品、
-天然若しくは人工皮革で作られる部品、特に皮革製品若しくは家具部品、または皮革製品または家具部品の目に見える部分の製造に使用されている部品、
-生地表面を有している部品、
-金型の表面と接触して製造されている金属またはプラスチック部品、
によって形成される群から選択される。
【0018】
本発明の別の目的は、規則的または不規則な表面起伏を有する部品の装飾のための本発明による方法の使用であり、前記表面起伏は、特に粒子、継ぎ目、シール、縁、刻印に対応することができる。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、以下を含む装置である。
・レーザー形状測定器を搭載し、3次元形状測定データを取得可能な少なくとも1つの把持アームと、少なくとも1つの表面処理ツールとを備えたロボット。
・前記ロボット、前記レーザー形状測定器および前記少なくとも1つの表面処理ツールと通信し、前記ロボット、前記レーザー形状測定器および前記少なくとも1つの表面処理ツールの動作を制御するように構成されているコンピュータ。
【0020】
前記装置は、本発明による部品の表面を選択的かつ局所的に処理するための方法を実施するように構成され、実施することができる。有利には、前記コンピュータは、ステップ(c)および(d)の前記デジタルデータ処理を実行するように構成されている。前記表面処理が材料の堆積による処理である場合、前記表面処理ツールは、有利にはインクジェットプリントヘッドである。
【0021】
本発明の最後の目的は、本発明による装置の動作の制御が意図され且つ可能なコンピュータ上で動作するとき、本発明による方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図2から7は、本発明の異なる態様を示している。それらは本発明の範囲を制限するものではない。
図1図1は、本発明による表面処理装置の測定ヘッドを概略的に示す。この構成要素は先行技術の一部である。
図2図2は、表面を選択的かつ局所的に処理するための本発明による方法を実施することを可能にする本発明による表面処理装置を概略的に示す。
図3図3は、自動車のダッシュボードのカバー部分の写真であり、3本の平行な偽継ぎ目を有し、その内の2本の周辺線は、本発明による方法で印刷によって処理したものである。この偽継ぎ目線のそれぞれの長さは約4~6mmであり、その幅は約1mmである。
図4図4は、本発明による方法の4つのステップ(図3に示すものと同様のダッシュボードのカバー部分に適用したもの)について、すなわち、偽継ぎ目線に直交する方向(方向Q)にスキャンしてから上記線に平行な方向(方向P)に変位するレーザービームによる表面起伏の取得(図4(a))、上記継ぎ目線に直交する方向(方向Q)の生の表面起伏(曲線(1))および曲線の減算による後退(図4(b))、一連の取得により分析された表面の3次元画像の再構成(平面QPに直交する方向の高さをグレーレベルで表す)(図4(c))、選択的な装飾のために黒インクで識別された表面の重要な態様のバイナリ画像(白黒)(図4(d))を示す。
図5図5は、図4(b)の曲線(2)と同様の曲線を示し、ダッシュボードの3本の偽継ぎ目線も示す。次に、図5(a)、図5(b)、および図5(c)は、表面処理を適用する区域を定義する表面のバイナリ画像を取得する目的の3つの異なる処理による3次元データを示す。
図6図6は、本発明による方法を用いて灰色インクで装飾した後の4本の偽継ぎ目線(これらの線は、図3および図4(c)の2本の周辺線を形成する線と同様である)の光学顕微鏡写真を示す。偽継ぎ目線のそれぞれの長さは約4mmである。この例では、インクは起伏の高い区域に堆積されている。
図7図7は、本発明による方法および装置を使用するインクジェットによる材料の堆積によって表面を選択的かつ局所的に処理することができる部品の他の例を示す。図7(a)は、一連の取得により分析された表面の3次元画像の再構成を示す(平面QPに直交する方向の高さをグレーレベルで表す)。図7(b)は、選択的な装飾の目的で識別された表面の重要な態様のバイナリ画像を示す。インクは、窪み(起伏の窪み)の区域に堆積する。
図8図8は、本発明による方法および装置を使用するインクジェットによる材料の堆積によって表面を選択的かつ局所的に処理することができる部品のさらに他の例を示す。図8(a)は、一連の取得により分析された表面の3次元画像の再構成を示す(平面QPに直交する方向の高さをグレーレベルで表す)。図8(b)は、選択的な装飾の目的で識別された表面の重要な態様のバイナリ画像を示す。インクは、図7と同様に、窪み(起伏の窪み)の区域に堆積する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、起伏のある表面に表面の態様で画像を印刷することは、問題を十分に解決され得ないことに気付いた。ここでの画像印刷という用語は、所定の画像を表面に印刷し、場合によっては局所的な形状に従って空間内で再寸法化する方法を意味する。本発明によれば、選択的表面処理(表面の印刷は特定の場合を表す)は、特定の表面態様の存在に応じて、それらの高さおよび/若しくはそれらの深さ並びに/またはその正確な形状を考慮して、選択された区域でのみ行われる。
【0024】
本発明による方法の第1のステップにおいて、処理する表面を有する部品が提供される。この部品の処理する表面は、典型的には長軸に沿って、および/または上記長軸に対して直交するかまたは直交しないことができる短軸に沿って湾曲し得る。上記長軸および短軸は、直線または曲線であり得る。処理する表面は、典型的には、部品の曲面の区域、例えば、部品の長さ方向に実質的に平行な縦の区域である。別の実施形態では、処理する表面は湾曲せずに、実質的に平坦である。
【0025】
部品の処理する表面は、通常、処理する表面の全部または一部にわたって、任意の幾何学的配置または形状に従って延び得る起伏要素を含む。これらの起伏要素は装飾要素であり得る。
【0026】
例として、起伏要素は、隆起または窪みを含み得る。それらは、狭くて細長い線で配置されることができ、または逆に、処理する表面のかなりの部分にわたって延びることができる。例として、起伏要素は、偽継ぎ目、および/若しくは皮革のスタイルの粒子、および/若しくは「ワニ皮」、若しくはあらゆる種類の縫い目やあらゆる方法によって得られた起伏(冷若しくは熱で実行可能な刻印、および/または冷若しくは熱で実行可能なエンボス加工)、または自然な起伏に対応し得る。
【0027】
部品は、空間の決定された方向に有利に固定される。有利なことに、それは支持体上に配置される。処理する表面が長軸を有する場合、この長軸がほぼ水平になるように部品が有利に配向される。
【0028】
別の方法では、部品を固定するのでなく、方法の次のステップの少なくとも1つを実行している間に変位させる。例えば、それは、真っ直ぐあるかそうでない、且つ/若しくは1つか複数の方向に傾斜できる、且つ/若しくは少なくとも1つの軸周りで回転できる経路に従って変位可能な可動キャリッジに固定することができる。部品は、そのような長軸を有する場合、その長軸を中心に回転することができ、且つ/若しくは、そのような短軸を有する場合、その短軸を中心に回転することができ、且つ/または、他の任意のタイプの空間内の回転、傾斜、若しくは変位を受けることができる。
【0029】
いずれにせよ、同一であると想定される多数の部品を処理する必要がある場合(たとえば、同一製造シリーズからのもの、たとえば同一プラスチック金型からのもの)、支持体により再現可能な位置決めを可能にすることが重要である。適用可能な場合、部品のタイプごとに特定の支持体を製造する必要がある。
【0030】
第2のステップでは、処理する表面から形状測定データを取得する。これらの形状測定データは、レーザービームを使用した一連の2次元線形スキャン(ここでは形状測定線と呼ばれる)から再構築された3次元データである。これらの形状測定線は互いに平行であり、2つの隣接する線の間の間隔は有利に一定である。
【0031】
これらの形状測定データは、最初に、処理する表面の全体的な3次元形状を表す必要がある。それらにより、また、装飾要素を十分な3次元解像度で表現するか、若しくは決定することが可能でなければならない。この最小解像度は、処理する表面の形状、装飾要素の性質と形状、装飾要素の長さと深さのスケール、および表面処理の要求精度に依存する。
【0032】
この第2のステップは、たとえば、ロボットアームに固定され、処理する表面上で1つ若しくは複数のスキャン経路を実行するレーザースキャナの測定ヘッドを使用して実行できる。これらの経路は、部品の長さ方向(ここでは文字Pで示される方向)に平行にすると有利である。処理する表面の区域の寸法に応じて、データ取得は1つ若しくは複数の経路で実行できる。より具体的には、各経路により、通常、スキャン線に直交する方向に特定の幅Qを有する区域上のデータを取得することが可能である。したがって、処理する表面の長さに応じて、処理される区域の幅をいくつかの部分区域に細分する必要があり、その各部分区域は少なくとも1つのスキャン経路の対象となる。これらの部分区域は、部分的にオーバーラップする可能性がある。通常、データ取得は、方向Qの線形プロファイルの個別取得の連続を介して行われ、2つの連続する個別取得は、方向Pの同一距離だけ離間される。したがって、3次元プロファイルは、2次元取得(形状測定線)の連続から構築される。
【0033】
方向Pの第1の経路により、処理する表面の全体的な形状を決定することができ、第2の経路により、処理する表面のより細かい解像度のデータを取得できる。少なくともこの2回目の通過の間、測定ヘッドと表面との間の距離は、有利に一定のままであるか、またはほとんど変化させず(有利には、最大で±5、好ましくは最大で±3mm、より好ましくは最大で±2mm)、表面に対するレーザービームの方向も一定にする。このため、湾曲した部品の場合、測定ヘッドを5軸または6軸のロボットのアームに固定すると有利である。処理する部品の表面が長さ方向を有する場合、スキャン経路はこの長さ方向に平行であると有利である。有利なことに、所与の幅Qを有する区域を分析するために単一のスキャン経路が実行される。有利な実施形態では、高度に湾曲した部分並びに/または直線ではない線Pおよび/若しくはQについて、線Pおよび/若しくはQの曲率に従うように、方向Qでのスキャン中に測定ヘッドの高さzを変更する、且つ/または方向Pでのスキャン中に測定ヘッドの高さzを変更することは有利ではない。この場合、データ取得区域をそのような調整を必要としない区域に制限してから最初の区域に隣接する別のデータ取得区域を定義することが望ましいことがよくある。言い換えれば、測定ヘッドのスキャン中のロボットのアームの独立した動きの数を制限することが好ましい場合がある。同一のことが、第5のステップで、ロボットのアームによって運ばれる表面処理ツールにも当てはまる。
【0034】
この第2のステップは、部品の表面の3次元データの第1のファイルの生成を意味する。このファイルをここではF1と呼ぶ。線P上で連続して取り、方向Qにおいて取得した形状測定線に対応するデータを使用してこれを構築する。
【0035】
第3のステップでは、形状測定データをデジタル処理し、分析する。この処理は、いくつかの個別のステップを含むことができる。それは、デジタルフィルタリングを含むことができる。このフィルタリングは、取得した各形状測定線に対して、且つ/または形状測定線から再構築した3次元プロファイルに対して実行することができる。
【0036】
このフィルタリングの枠組みにおいて、異常な点を削除したり、且つ/または表面を滑らかにしたりすることができる。これらの2つの操作は、通常、公知のデジタル技術を使用して実行することができる。より具体的には、方向Z(すなわち、スキャンPの方向に直交する方向)での部品の曲率を克服するために、背景を差し引く。このステップにより、部品の表面の3次元データの第2のファイルを作成する。このファイルをここではF2と呼ぶ。
【0037】
この第3のステップの実施形態では、まず、第1のサブステップで、各形状測定線に関するデジタル平滑化を実行し(例えば、適切な指数フィルタによって)、次に、低周波数を有利に除去し(例えば、適切なハイパスフィルタによって)、次に、プロファイルを補正する(たとえば線形回帰を介して)。これらの異なる処理は、順序の変更が可能だが、示した順序が好ましい。
【0038】
次に、第2のサブステップにおいて、たとえば平面回帰(平均平面の計算)を介して3次元プロファイルを処理し、異常な点を削除する。この処理には、たとえば、標準偏差による点のフィルタと、平面から過度に遠い点のフィルタを含ませることができる。
【0039】
第4のステップは、処理する表面の処理する区域を特定または局在化することが目的である。これらの区域を、特定の起伏特性によって定義する。したがって、処理する表面の起伏から表面処理を適用する区域を決定する。このステップは、本発明による方法にとって不可欠である。実際、例えば、表面への印刷の場合、本発明による印刷方法は、表面上に事前に確立された画像を印刷することを含まない。本発明による方法の枠組みでは、画像を(例えばファイルの形で)提供するのでなく、後で選択した表面処理手段によって処理する表面の区域を表面の起伏に従って方法自体の間に決定する。換言すれば(そしてインクジェット印刷による表面処理の例では)、表面に印刷する画像の微細な形状は、表面自体に依存し、事前に固定されていない。
【0040】
この第4のステップは、処理する表面のバイナリ画像(ファイルF3)を生成することが目的である。このバイナリ画像は、平面QP内の各点のバイナリ情報を含む。各点について、上記バイナリ情報は、表面処理を実行するか否かを示す。
【0041】
通常、処理する区域は、低起伏(つまり、窪み)または高起伏(つまり、ボス)、あるいはその両方である。次に、高さの最小閾値と最大閾値を調整し(この高さは、表面の画像の「グレーレベル」に対応する)、最小閾値と最大閾値の間に含まれる点を「黒」点として定義し(つまり、表面処理を行う)、最大閾値より上及び最小閾値より下の点は「白」にする(つまり、表面処理を行わない)。この閾値の決定(たとえば、最大閾値と最小閾値との間の偏差)は、同一シリーズの異なる類似部品、特に同一金型からの部品に対して同一にすることができる。
【0042】
第5のステップでは、処理する表面の処理を実行する。この処理は、通常、材料の堆積を含む。通常、この表面処理は、ロボットアームに固定され、処理する表面上で、好ましくは部品の形状測定データの取得に使用した軌道に沿って、1つ若しくは複数のスキャン経路を実行する表面処理ツールを介して行われる。このツールは、インクを堆積させることができるインクジェットプリントヘッドにすることができる。ここでの「インク」という用語は、乾燥および/または架橋後に、固体基板上に固体堆積物を形成することができる任意の液体調製物を意味する。したがって、この用語は、インクジェットプリンタで通常使用するインクだけでなく、ワニス(着色または非着色や不透明または透明のもの)やその他の製品も含む。
【0043】
この処理は、1つまたは複数の経路で行うことができ、1つまたは複数のインクを使用することができ、例えば、着色インクおよび着色インクの上に堆積された透明または半透明のワニスを使用することができる。このワニスは、異なる機能、例えば、引っかき傷に対する保護機能、若しくは光学特性の変更機能(反射防止機能、明るさの変更や知覚される色の変更などの美的機能)、若しくは感触の変更機能、または防汚機能を有することができる。
【0044】
有利な実施形態によれば、第5のステップ中にいくつかのインクを使用する場合、各インクに対して異なるプリントヘッドを使用する。
【0045】
他の有利な実施形態およびその代替案のそれぞれと組み合わせることができる別の有利な実施形態によれば、Xについての精度、すなわち、処理する区域の形状に関して、上記処理の位置決めの偏差(例えば、印刷の位置決めの偏差)は、Xの値を超えない印刷システム(ロボット、印刷する区域を決定するためのシステム、および表面処理ツールを含む)を使用する。Xのこの値は、有利には100μm未満、より有利には90μm未満である。有利なことに、高解像度のプリントヘッドは、少なくとも1インチあたり360ノズルの間隔で使用され、そのようなヘッドは、例えば、合計512個のノズルを含むことができる。
【0046】
以上に示したように、本発明の本質的な特徴によれば、表面に印刷された画像の微細な形状は、表面自体に依存する。したがって、この方法は、印刷を処理する表面の区域を識別することができる。例として、部品が自動車のダッシュボードの要素であって、人工的または実際の継ぎ目があり、着色する必要がある場合、縫い目の偶発的な欠如を該方法が認識し、その長さの欠落しているスレッドを色付けしない。この例では、該印刷方法は、事前定義された画像の印刷を伴うのでなく、その識別が方法自体の一部である区域の選択的な表面処理(ここでは着色)を伴うことをよく示している。
【0047】
以下、本発明による方法について図を使用して説明する。
【0048】
図1は、本発明による表面処理装置に使用できる測定ヘッドを概略的に示す。これは、典型的な、分析する表面と機械的に接触しない光学スキャン形状測定法である。より正確には、測定ヘッド1は、分析する表面5に向けられる入射ビーム3と呼ばれるレーザービームを放出するレーザー源2(通常はレーザーダイオード)を含む。センサー6は反射ビーム7を検出する。装置は、典型的には、反射ビームが通過する少なくとも1つのレンズを含む光学系8を備える。この測定ヘッドは、方向Yに平行な長さY1の線4を取り、2つの隣接する点の間の距離ΔYだけ間隔を空けて1回限りの測定を続ける。この距離は通常一定である。Y方向の各点について、垂直方向Zの高さを検出し、Y方向にスキャンした線上で表面の高さのプロファイルを取得する。この線を、以下、形状測定線と呼ぶ。次に、測定ヘッドまたは表面を、Xとして指定された方向に距離ΔXだけ変位させ、これは、典型的にはYに直交し且つ典型的には表面の長さ方向に対応し、プロファイルを上記のようにこの線上で取得する。したがって、分析された区域上の表面の点についてファイルF1を取得でき、各点は、その3つの座標X、Y、Zによって特徴付けられる。レーザースキャンによるこの3D形状測定技術については、当業者に知られており、詳細な説明をしない。
【0049】
図2は、本発明による方法を実行可能にする本発明による装置10を概略的に示す。この装置は、本体17に取り付けられたロボットを含む。この例では、これは5つの軸を持つロボットであり、軸をA1からA5の文字でマークしている。ロボットの関節式アーム15は、その端部に、上記測定ヘッド1を取り付けることができる把持アーム16と、表面処理ツールとを備える。処理する部品12は、同一シリーズのおそらく同一であると思われる部品の再現可能な且つ同一の位置決めを可能にする支持体11上にある。部品12の処理する表面4は、上向きである。ここでは、これは湾曲部分である。この図に示す方向PおよびQについて、以下の図3に関連して説明する。プログラム可能なコンピュータ(図示せず)によって、装置10を制御する。
【0050】
ここで使用する「コンピュータ」という用語は、特にコンピュータおよびプログラマブル(論理)コントローラを含む。上記コンピュータは、本発明による装置10の活動を制御することを意図し、制御することができ、この目的のために、それは、特に、上記プログラムが上記コンピュータ上で動作する場合、上記プログラムが本発明による方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを含む。
【0051】
上記表面処理ツールは、上記測定ヘッドに統合することができ、または上記測定ヘッドのボックスとは別のものに収容することができ、その場合、上記測定ヘッドに係合させることができる。図示しない別の実施形態では、把持アーム16は、測定ヘッドおよび表面処理ツールが使用されていないときに受容ステーションに堆積されていることを知って、測定ヘッドおよび表面処理ツールを交互に把持する。
【0052】
図3は、本発明による方法によって処理する部品の写真を示しており、ここでは、自動車のダッシュボードのカバー部品である。この部品は、部品の長さ方向に平行に伸びる偽継ぎ目の区域で構成されている。より正確には、部品の人工継ぎ目は2つの起伏面、すなわち、平行な縁を持つ部品の2つの部分30’、30”の間の接続を模擬する中央継ぎ目31と、上記中央継ぎ目31に平行な2つの周辺継ぎ目32’、32”とで構成されている。周辺継ぎ目では、縫い目は中央継ぎ目よりも部品の平面に対して高い高さで現れている。線分Qは、上記中央継ぎ目31に対応する線P上で選択された各点での形状測定器1のレーザービームのスキャンを表す。このレーザービームを、図4のものと同様の部分(ただし、より暗い色)についての写真である図4(a)に示す。画像の下部には、部品の表面の一部に配置された、センチメートル単位で較正された定規を示す。
【0053】
したがって、本発明による方法の第2のステップで、3次元データファイルF1を取得し、処理する表面の平面内の起伏を特定し、この平面内の各点について上記平面に対する高さまたは深さを定量化することが可能である。
【0054】
図4(b)は、線P上の点で得られた線Qに対応する生の形状測定曲線(曲線(1))と、デジタル補正後の同一の形状測定曲線(曲線(2))を示す。この曲線(2)は、部品の曲面に対応するベースレベルに対する表面の高さの変化を表す。2つの周辺継ぎ目42’、42”と中央継ぎ目41が生の曲線(1)で識別されている。デジタル補正(曲線(2))後、2つの周辺継ぎ目52’、52”と中央継ぎ目51が真っ直ぐな平面上に現れている。
【0055】
図4(c)は、特定の長さの線P上のいくつかの平行な線分Qで連続して行った形状測定による再構成画像を示す。この画像は、形状測定線の補正後、つまり図4(b)に示す曲線(2)のような形状測定線から取得される。データは、フィルタリング済みでもある。したがって、図4(c)は、本発明による方法の第3のステップの終了時のファイルF2のデータを示し、グレーレベルは、上記ベースレベルに対する高さを表す。これは、3次元符号化での人工継ぎ目を示す。
【0056】
特にインクジェット印刷などの材料の堆積を介して、処理する表面の周辺縫い目のみを処理することが求められる場合、ファイルF2の3次元データについて、中央継ぎ目を除去するデジタル処理にかけることができる。このデジタル処理は、表面の平面に対する高さを考慮に入れ、且つ/または表面形態を考慮に入れるデジタルフィルタを含むことができる。したがって、本発明による方法の第4のステップの終わりに、再処理済みの3次元データのファイルF3が得られ、これは、処理する表面のバイナリ画像を表す。
【0057】
図4(d)は、適切なフィルタリングによってファイルF2の3次元データから取得したこのようなバイナリ画像(つまり、白黒)を示す。ここで、このフィルタリングは、表面処理によって処理しない中央継ぎ目31を除去するように設計されている。線72’、72”は、継ぎ目32’、32”に対応する。このバイナリ画像は、バイナリデータのファイルF3に対応し、各要素点について、表面処理(通常、インクまたはワニスの液滴の投射による)を実行する必要があるかどうかを示す。このファイルF3を構成する点は、好ましくも、2次元空間上に定義されている。
【0058】
中間的な結論として、上記のように、形状測定線で得られた高さの曲線(図4(b)の曲線(1))をファイルF1の作成に入力する。このファイルは、平面QPの各点について、この平面に直交する高さを含む。データの補正および様々なデジタルフィルタリング操作の後、ファイルF2を取得し、このようにして、図4(c)のように、高さがグレーレベルで表される再構成画像で表面を表すことができる。
【0059】
本発明による方法は、材料の堆積を介して表面処理を実行するためにこのファイルF2を直接使用せず、この堆積を、インクまたはワニスの液滴の投射を介して実行する。したがって、平面QP内の各点の高さの値を持つ3次元データが含まれるファイルF2を、平面QP内の各点に対し高さではなくこの点での表面処理の有無を示すバイナリ値を関連付けるファイルF3に変換する必要がある。
【0060】
次に、バイナリデータのファイルF3を導き、本発明による方法の第4のステップを表すこのフィルタリング方法について、より詳細に説明する。
【0061】
図5は、図4(b)の曲線(2)と同様に、デジタル補正後の形状測定線を示す。水平軸は線分Q(図3)上の位置を表し、縦軸は平面QPに対する高さを表す。2つの周辺継ぎ目52’、52”と中央継ぎ目51とが区別されている。
【0062】
ここで(3つの選択肢(a)、(b)および(c)における)図5を使用して、表面処理が適用される区域を定義するための閾値Zmax、Zminの利用について説明する。この閾値を、ここで単一の形状測定線に対して説明し、同様に、一行ずつ進めることも可能であるが、実際には、ファイルF2のすべての3次元データを使用してこの操作を実行する方が有利である。
【0063】
この変換は、適切なフィルタリングによって実行することができる。各タイプの表面トポグラフィに適合させる必要がある。
【0064】
例として、このようなフィルタリングの原理を、偽継ぎ目の場合について図5に示す。それは、処理する表面の態様を識別するステップを含む。これは、対称または非対称(または片側)のクリッピングを介して実行することができる。図5(a)および5(b)は、同一の目的を有しない2つの異なる対称クリッピングを示す。図5(a)のクリッピングは、その選択的表面処理の目的で、中央継ぎ目51を識別することを目的とする一方、図5(b)のクリッピングは、その選択的処理の目的のために、二つの周辺継ぎ目52’、52”を識別することを目的とする。図5(a)の例では、閾値Zmaxおよび閾値Zminは、中央継ぎ目51の区域を選択するように固定され、高さの値(垂直軸)は、高さの値がZminとZmaxとの間にある水平軸上の任意の点については「黒」、および高さの値がZmaxより大きいかZminより小さい水平軸上の任意の点について「白」のバイナリ値に変換される。このようにして、ここでファイルF3と呼ぶバイナリデータファイルを構築する。本発明による方法の第5のステップにおいて、値「黒」に帰する(その名前に重要性はない)形状測定線上の点は選択的表面処理にかけられる一方、「白」点は上記選択的表面処理にかけられない。
【0065】
閾値Zmaxおよび閾値Zminの値は、自動で、または手動で決定することができる。これは、特に同一と思われる一連の部品(通常は同一金型で製造する)の最初の部品に対して実行することができる。実際、多くの場合、補正済みプロファイルの閾値をこのように決定することで、同一と思われる一連の部品を安定して再現可能な方法で処理することが可能になる。実際には、同一金型からの部品の表面は完全に再現可能ではなく、これらの偏差により、先行技術の方法による画像の表面印刷では満足のいく結果を得られないことに注意する必要がある。
【0066】
図5(b)に示すように、たとえば、閾値Zmaxよりも小さい閾値Z’maxを選択できる。したがって、水平軸上のより狭い表面処理区域を得ることができる。これを図5(c)に示す。ここで、点線のボックスは、実線のボックスよりも低い閾値Zmaxで取得した区域の幅を表す。
【0067】
図5(b)および5(c)の例では、関心区域52’、52”をより狭い幅で特定するように選択することもできる。閾値とより低いZmaxを用いて、たとえば一定の幅により定義されている処理区域を人為的に拡大(拡張)することができる。上述のように、このクリッピングおよび関心区域の選択は、特定のタイプの部品に対して手動で行うことができる。このステップでは、このように得られた二値画像を表示するために、ファイルF3の一時的な生成が必要になり得る。閾値Zmaxおよび/またはZminは、その後、満足な結果を得るために改変することができる。上述のように、典型的には、この構成は、同一タイプの表面トポグラフィを持つ一連の部品(たとえば、同一金型からのダッシュボード部品)の試験部品に対して実行することができる。
【0068】
本発明の特定の有利な実施形態によれば、表面処理の品質、特にその位置決めの品質を改善するために、バイナリファイルに対して追加の処理を実行する。例として、黒の区域を拡張(拡大)したり、逆に黒の区域を侵食したりすることができる。孤立した黒い点(ノイズと見なされる)または特定の表面積(ピクセル数として表される)を超えない黒い点の隣接区域を削除することができる。黒の区域の角度を丸めることも可能である。黒の区域内の穴を取り除くことも可能である。バイナリファイルに対して実行するこれらの追加処理は、自動車産業、皮革産業、および表面品質に高い要求を有する他の製品産業によって要求されるような、高品質の表面処理を得るのに非常に有利である。
【0069】
図6は、灰色のインクを使用して、本発明による方法によって着色された縫い目の4つの拡大写真を示す。部品は図3および4の部品と同一である。選択的且つ局所的な表面のこの表面処理の並外れた精度に留意していただきたい。
【0070】
図7は、本発明による方法によって処理することができる別の表面を示す。ここでは、これは、窪みに「Y」の規則的な起伏をエンボス加工することによって作成されたPVC表面である。図7(a)は、グレーレベル(ファイルF2の表現)として表された起伏を示し、図7(b)は、ファイルF2からのファイルF3に対応するバイナリ画像(ビットマップ)を示す。
【0071】
図8は、本発明による方法によって処理することができる別の表面を示す。ここでは、これは、「ワニ皮」タイプの表面であり、天然または人工である(たとえば、PVC表面にエンボス加工することによって実行される)。図8(a)は、グレーレベル(ファイルF2)で示されている起伏を示し、図8(b)は、ファイルF2からのバイナリ画像(ビットマップ)を示す。
【0072】
図7図8の例では、表面処理(ここではインクの堆積)は、周囲に対して窪みのある区域で実行されたが、周囲に対して高いところに位置する区域を処理するため、同一の方法を、図3に示す部分の継ぎ目と同様に適用できる。
【0073】
図3に示す部品の例では、平行な継ぎ目31、32’、32”の線は直線ではないことに留意いただきたい。スキャン幅Qが周辺継ぎ目32’、32”およびその両側の周囲をカバーするのに必要な幅よりも十分に大きい場合、測定ヘッド1によるスキャンは、直線Pをたどることができる。必要に応じて、部品の長さ方向の幅をいくつかの線分に分割することができる。測定ヘッド1は、各線分の直線Pをたどり、2つの隣接する線分間で直交方向に平行移動する。あるいは、そのスキャン中に測定ヘッド1の位置の連続的な適応を提供することができる。ただし、これにより、処理するデジタルデータの量が大幅に増加する。
【0074】
同一部品の処理を伴うシリーズタイプの生産では、最適な解像度と精度を得るために、表面の形状測定スキャンを個々の部品ごとに進めるのが有利である。同一と考えられる一連の部品内であっても、2つの部品間の偏差は、装飾後に目に見える偏差を生成するのに十分な大きさを有するからである。一方、ファイルF1をファイルF2に変換するデジタルフィルタリングは、2つの部品間の局所的なばらつきが通常、中央継ぎ目と周辺継ぎ目との起伏間の差よりも小さいため、同一と思われる一連の部品に対して定義することができる。これは、実際には、各部品を再現可能な方法でヘッドの下に配置できることを前提としている。したがって、各タイプの部品に適合した支持体が必要である。
【0075】
本発明による方法は、産業の多くの分野に適用することができ、陸、海、空の乗り物の客室のカバー部品の装飾に使用することができる。例として、自動車のダッシュボードの表面を装飾したり、自動車の客室内をカバーするために使用される他の目に見える部品を装飾したりするために使用することができる。それは、最も多様な用途を目的として、天然または人工皮革の表面を装飾するために、皮革、皮革細工および家具産業で使用することができる。この装飾は、装飾部品の目に見える継ぎ目に特に関係する可能性があり、それらは、人工的(たとえば、PVC製のプラスチック材料で作られた部品の場合)または機能的(天然皮革で作られた部品の場合)なものであり得る。それはまた、革若しくは「ワニ皮」タイプの表面の粒子などの粒子表面の粒子、または技術的方法によって得られる任意のタイプの表面起伏に関連する可能性がある。より一般的には、低い起伏の下部若しくは起伏の上部を表すすべての表面の態様に関連する可能性がある。
【0076】
本発明による方法は、多くの代替手段を用いて実施することができる。
【0077】
例として、処理する区域は、材料の堆積の前に前処理することができる。この前処理は、例えば、大気圧でのコロナ処理またはプラズマによる処理であり得る。それは、ロボットのアームによって運ばれる前処理ツールとなる特定の処理ツールに由来することができ、上記ツールを、前処理する区域上に変位させる。
【0078】
ソフトウェアによって計算された印刷区域よりも広い区域に堆積できる材料の第1層を堆積させることができる。この材料は、結合層または保護層にすることができる。たとえば、透明、半透明、且つ場合によっては色付き、または不透明にすることができる。
【0079】
表面処理は、装飾および/または保護に関連し得る。第1の装飾表面処理は、例えば、1つまたは複数の経路で実行することができ、第2の保護表面処理は、1つまたは複数の経路で実行することができる。上記第1および第2の表面処理は、同一ファイルF3または異なるファイルF3に基づくことができる。例えば、第2のファイルF3は、第1のファイルF3の「黒」点のデジタル拡張により取得することができる。同一の記述を装飾および/または保護処理の異なる経路に適用し、それを厳密に重ね合わせることができ、または第2の経路に、拡張点、若しくは狭めた点、若しくは異なる閾値Zmax、Zminを用いて得たファイルF3を使用することができる。これらの選択肢のそれぞれにより、特に異なるインクを使用する場合、特定の装飾効果を導くことができる。この目的のために、より一般的には、ファイルF3の他の任意のデジタル変換が可能である。
【0080】
また、材料の堆積を介した表面処理の1つ若しくは複数の経路の後、形状測定データの新たな取得を実行して、その次のステップで本発明による方法を再開することができる。これは、表面の装飾中にかなりの厚さの材料を堆積させる場合に特に役立つ。
【0081】
本発明による方法の代替では、第4のステップにおいて、表面のバイナリ画像を表すファイルを作成するのでなく、3値画像またはさらに複雑なものを作成する。一例として、データの図5(a)のような、中央継ぎ目51を選択する目的の閾値ZminおよびZmaxによる処理、データの図5(b)のような、周辺継ぎ目52’、52”を選択する目的の閾値ZminおよびZmaxによる処理を同一ファイルで実行することが可能である。したがって、第1の固定値を中央継ぎ目の表面処理の点に、第2の固定値を周辺継ぎ目の表面処理の点に、第3の固定値を表面処理なしの点に割り当てる。方法の第5のステップでは、2つの異なる表面処理を、2つの別々の処理ツールまたは2つの異なる処理を選択的に実行できる単一の処理ツールで連続して実行することができる。このようなツールとして、2つの異なる色のインクを投射できるインクジェットプリントヘッドがあり得る。
【0082】
本発明による方法の別の代替案では、形状測定データを、測定ヘッド1を置き換えた光学カメラによって記録した画像から計算し、表面のバイナリ画像を取得するためにその画像を分析する。表面処理はまた、材料の堆積を伴わない手段によって表面を変形させる少なくとも1つのステップを含み得るか、またはそれは、材料の堆積を伴わないステップから完全に構成され得る。例として、材料の堆積を伴わない手段によって表面を変形させる上記ステップは、粒子による表面への衝撃、光ビームによる表面の照射、局所的な熱の追加、レーザービームによる穴の掘削であり得る。変換のこれらのステップは、特に、材料の表面層の化学的変換(例えば、架橋若しくは光化学的若しくは熱的硬化)またはその物理的変換(例えば、局所融合による)の目的のものを有し得る。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
【国際調査報告】