(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】機械学習を用いた、迅速なデジタル原子炉設計
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20220810BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20220810BHJP
G06F 111/06 20200101ALN20220810BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/13
G06F111:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573316
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020036726
(87)【国際公開番号】W WO2020251910
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521538697
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティ・アドバンスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BWXT Advanced Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ピヴォヴァー,ロス エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,ライアン トリッグ
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA02
5B146DC03
5B146DC05
5B146DJ01
5B146DJ14
(57)【要約】
方法は、設計変数及び計量変数を用いて原子炉を設計する。ユーザは、設計変数用の範囲及び計量変数用の閾値を指定し、設計パラメータサンプルを選択する。各サンプルに対して、方法は、熱水力、中性子及び応力の計量変数を計算する3つの処理を実行する。方法は、閾値と比較して計量変数の集合残差を計算するために目的関数を適用する。方法は、サンプル及び計算された集合残差を用いて機械学習モデルを訓練する、又は、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリングあるいは差分進化を用いる、最適化方法を展開する。ベイズ最適化を用いる場合、方法は、機械学習モデルを用いて、個別の設計変数及び推定された残差の間の相関にしたがって、各設計変数の範囲を縮小する。これらのステップは、残差が最小のサンプルが複数回の反復の間変化しなくなるまで、繰り返される。最終モデルは、各設計変数の相対的重要度を評価する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用の複数の設計変数を特定すること;
熱水力特性を測定するための複数の計量変数、中性子特性を測定するための複数の計量変数、及び応力特性を測定するための複数の計量変数を含む、前記原子炉用の複数の計量変数を特定すること;
前記複数の設計変数の各々の値の個別の範囲を指定するためのユーザ入力を受け取ることによって、最初の信頼領域を形成すること;
前記複数の計量変数の各々の個別の閾値を指定するためのユーザ入力を受け取ること;
前記複数の設計変数間の多変量相関を最小化する前記最初の信頼領域内における設計パラメータ用の値のN個のサンプルを含むラテン超立方体を構築すること、ここで、Nは1より大きい整数である;
前記ラテン超立方体における前記N個のサンプルの各々に対して、
熱水力特性を計測する前記複数の計量変数を計算するために熱水力分析処理を実行すること;
前記中性子特性に対応する前記複数の中性子計量値を計算するために中性子分析処理を実行すること;
前記応力特性に対応する前記複数の計量変数を計算するために応力分析処理を実行すること;及び
前記複数の計量変数用の前記閾値と比較して前記複数の計量変数の個別の集合残差を計算するために目的関数を適用すること;
前記N個のサンプル及び前記対応する計算された集合残差にしたがって機械学習モデルを訓練すること;
残差が最小のサンプルを中心として、前記信頼領域を縮小すること、ここで、各設計変数用の前記個別の範囲は、前記個別の設計変数及び推定された残差の間の相関にしたがって、前記機械学習モデルを用いて縮小される;
残差が最小のサンプルが所定数の反復の間変化しなくなるまで、構築すること、前記熱水力処理を実行すること、前記中性子処理を実行すること、前記応力処理を実行すること、計算すること、及び、訓練することを反復すること;
各設計変数の相対的重要度の評価をするために最後の反復からの前記機械学習モデルを使用すること;及び
前記評価を視覚的にリポートに提供すること、
を含む、
原子炉を設計する方法。
【請求項2】
前記機械学習モデルは、決定木のランダムフォレスト又はベイズ最適化用のニューラルネットワークである、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記機械学習モデルは、遺伝的アルゴリズム、連成シミュレーテッドアニールアルゴリズム及び/又は差分進化的アルゴリズムを含む1以上の進化的方法を用いる、
請求項1の方法。
【請求項4】
前記熱水力分析処理を実行すること、前記中性子分析処理を実行すること、及び、前記応力分析処理を実行することは、同時に行われる、
請求項1の方法。
【請求項5】
前記熱水力分析処理を実行すること、前記中性子分析処理を実行すること、及び、前記応力分析処理を実行することは、連続して行われる、
請求項1の方法。
【請求項6】
前記熱水力分析処理、前記中性子分析処理及び前記応力分析処理は、それぞれ、個別の異なる計算サブシステムで行われる、
請求項1の方法。
【請求項7】
反復の間に、
前記残差が最小の前記サンプルが前記信頼領域の境界上の第1設計変数の値を有することの決定をすること;及び
前記決定に応答して、前記信頼領域を、前記信頼領域に以前はなかった前記第1設計変数の範囲を含むように拡張すること;
を、更に含む、
請求項1の方法。
【請求項8】
前記複数の計量変数の一つは、実効中性子増倍率(K
eff)である、
請求項1の方法。
【請求項9】
前記縮小することは、ユーザ入力により指定された学習係数を使用する、
請求項1の方法。
【請求項10】
最初のラテン超立方体は、前記複数の設計変数のユーザが指定した範囲の平均値を中心とする、
請求項1の方法。
【請求項11】
前記複数の設計変数は、離散的なカテゴリ値を有する第1設計変数を含み、
前記方法は、
第1置換設計変数を形成するために、各異なるカテゴリ値を連続する範囲内の数値として符号化すること;及び
前記第1設計変数を前記第1置換設計変数に置き換えること、
を更に含む、
請求項1の方法。
【請求項12】
各反復の間、
前記残差が最小の前記サンプルに対して、前記目的関数にしたがって異なるカテゴリ値に切り替わることがより小さい残差を生み出す確率を推定すること;及び
直後の反復のために、前記推定された確率に比例する前記ラテン超立方体のサンプリングレートを使用すること、
を更に含む、
請求項11の方法。
【請求項13】
前記第1設計変数、流体タイプ又は材料タイプである、
請求項11の方法。
【請求項14】
流体タイプ又は材料タイプの前記カテゴリ値は、単相気体、液体及び固体を含む材料のデータベースから選択される、
請求項13の方法。
【請求項15】
各々、1以上のプロセッサ及びメモリを有する1以上のコンピュータを備え、
前記メモリは、前記1以上のプロセッサによる実行のために構成される1以上のプログラムを記憶し、
前記1以上のプログラムは、
原子炉用の複数の設計変数を特定すること;
熱水力特性を測定するための複数の計量変数、中性子特性を測定するための複数の計量変数、及び応力特性を測定するための複数の計量変数を含む、前記原子炉用の複数の計量変数を特定すること;
前記複数の設計変数の各々の値の個別の範囲を指定するためのユーザ入力を受け取ることによって、最初の信頼領域を形成すること;
前記複数の計量変数の各々の個別の閾値を指定するためのユーザ入力を受け取ること;
前記複数の設計変数間の多変量相関を最小化する前記最初の信頼領域内における設計パラメータ用の値のN個のサンプルを含むラテン超立方体を構築すること、ここで、Nは1より大きい整数である;
前記ラテン超立方体における前記N個のサンプルの各々に対して、
熱水力特性を計測する前記複数の計量変数を計算するために熱水力分析処理を実行すること;
前記中性子特性に対応する前記複数の中性子計量値を計算するために中性子分析処理を実行すること;
前記応力特性に対応する前記複数の計量変数を計算するために応力分析処理を実行すること;及び
前記複数の計量変数用の前記閾値と比較して前記複数の計量変数の個別の集合残差を計算するために目的関数を適用すること;
前記N個のサンプル及び前記対応する計算された集合残差にしたがって機械学習モデルを訓練すること;
残差が最小のサンプルを中心として、前記信頼領域を縮小すること、ここで、各設計変数用の前記個別の範囲は、前記個別の設計変数及び推定された残差の間の相関にしたがって、前記機械学習モデルを用いて縮小される;
残差が最小のサンプルが所定数の反復の間変化しなくなるまで、構築すること、前記熱水力処理を実行すること、前記中性子処理を実行すること、前記応力処理を実行すること、計算すること、及び、訓練することを反復すること;
各設計変数の相対的重要度の評価をするために最後の反復からの前記機械学習モデルを使用すること;及び
前記評価を視覚的にリポートに提供すること、
のための指示を含む、
計算システム。
【請求項16】
前記機械学習モデルは、決定木のランダムフォレスト又はベイズ最適化用のニューラルネットワークである、
請求項15の計算システム。
【請求項17】
前記機械学習モデルは、遺伝的アルゴリズム、連成シミュレーテッドアニールアルゴリズム及び/又は差分進化的アルゴリズムを含む1以上の進化的方法を用いる、
請求項15の計算システム。
【請求項18】
前記複数の計量変数の一つは、実効中性子増倍率(Keff)である、
請求項15の計算システム。
【請求項19】
前記複数の設計変数は、離散的なカテゴリ値を有する第1設計変数を含み、
前記方法は、
第1置換設計変数を形成するために、各異なるカテゴリ値を連続する範囲内の数値として符号化すること;及び
前記第1設計変数を前記第1置換設計変数に置き換えること、
を更に含む、
請求項15の計算システム。
【請求項20】
各反復の間、
前記残差が最小の前記サンプルに対して、前記目的関数にしたがって異なるカテゴリ値に切り替わることがより小さい残差を生み出す確率を推定すること;及び
直後の反復のために、前記推定された確率に比例する前記ラテン超立方体のためのサンプリングレートを使用すること、
を更に含む、
請求項19の計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された実装は、一般に、原子炉の設計に関し、より詳細には、実行可能な設計を迅速に生成するために機械学習を利用するシステム、方法及びユーザインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明では、特定の構造及び/又は方法に言及する。しかしながら、以下の言及は、これらの構造及び/又は方法が先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が本発明に対する先行技術として適格ではないことを実証する権利を明示的に留保する。
【0003】
原子炉の炉心の設計は、物理学分野の複雑な相互作用を満たす必要がある。例えば、設計には臨界(核分裂反応)を維持する中性子が必要であるが、臨界は燃料と減速材の特性にも依存する。設計には、熱流束プロファイル、伝導率及び出力等の熱特性も必要である。加えて、設計は、エネルギー流束とサイクリング(cycling)の応力下で溶融又は分裂しないアセンブリの完全性及び材料特性の応力分析を満たす必要がある。
【0004】
モンテカルロN粒子輸送コード(MCNP)又は他の検証済みシミュレータを使用した中性子の事例の試験は、単一の設計に数日かかることが多く、その後、熱及び応力のシミュレーション又は演算も実行する必要がある。特定の形状の設計パラメータの有効な組み合わせを見つけるには、数か月かかる場合がある。歴史的に、この処理を高速化する試みは、(i)計算能力の追加及び/又はスーパーコンピュータの使用、(ii)GPU計算開発の使用等による計算の加速、及び/又は(iii)ワークフローとフォーマットの互換性の非効率性を処理し、代替の検証されていない解法を展開する可能性のある最上位のソフトウェアの利用、とうい形をとっていた。ただし、処理は依然として非常に遅く、提案された設計がすべての要件を満たしていないことを判断するのに数か月かかることがよくある。加えて、一部のシステムは、忠実度を高めようとし、物理ベースのモデリング及びシミュレーションソフトウェアを、多くの場合政府の研究所を介して、費用のかかる開発とさらに統合しようとする。これにより、プロセスがさらに遅くなることがよくある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、人工知能(AI)スイートを使用して、ユーザ指定の制約内で最適な設計空間を見つる。これにより、(i)概念原子炉設計の迅速で自動化された評価、(ii)中性子、熱水力及び応力の要件を満たす有効なパラメータ空間及び最適なパラメータの特定、及び(iii)意思決定を容易にするための結果の統合及び分析、を提供する。
【0006】
いくつかの実装は、世界的な人口ベースのアルゴリズムを提供する。これは、例えば核分裂炉の活性炉心領域(active core region)の設計空間全体の最適化のために機械学習を使用するヒューリスティックベースの処理を適用する。アルゴリズムの実装は、(i)最適な設計解への収束を加速するために、重要でない変数を適応的にスクリーニング及び/又は削除し、(ii)最適化中に複雑な多変量相互作用を体系的に評価する。これは、意思決定(設計要件分析)及び詳細な炉心理解(設計分析)の制限制約を評価するレポートの生成にも使用される。選択肢スイート内のいくつかの実装は、遺伝的アルゴリズム、連成シミュレーテッドアニーリングアルゴリズム、又は差分進化アルゴリズムと組み合わせて同じ手法を適用し、進化的最適化を提供する。
【0007】
開示された実装は、機械学習ベースのアルゴリズムを使用して、物理学の分野にわたる機械学習に基づく確率的サンプリングにより、ミッションとエンジニアリングの制約に沿って設計の選択肢を迅速に特定して最適化する。応答空間をサンプリングしてトポロジを学習することにより、目的関数にしたがって潜在的な候補サブ領域の各パラメータを再帰的に調整し、最終的な有効な設計空間を特定し、有効な設計の選択肢を、有効な設計のトレードオフ及び特性を調査するために、分析情報とともにユーザに出力する。処理中に、設計パラメータの「信頼領域」は最初にユーザによって指定され、通常、各反復中にサイズが縮小される。信頼領域は、最終的な設計空間に収束する。
【0008】
設計部分空間は非球形であり、ユーザ定義のベースラインの選択と制約に基づいて絞り込まれる。開示された実装は、比較的迅速な実行を使用して、サンプリングモードでマルチフィジクス分析(中性子、熱水力分析及び応力分析)を採用する。これには、実効中性子増倍率(k-effective又はKeff)をモデル化して、最適な設計空間に向かう傾向のある様々な設計変数の勾配を検出するための解法が含まれる。有効な設計空間が特定されると、有効性の可能性が高い優先設計の選択肢のみを、高忠実度の実行(例えば、MCNP、又は、中性子、熱及び/又は応力分析のために炉心をモデル化する他の高忠実度のシミュレーション)により更に検証する必要がある。開示された処理は、他の方法ではコストのかかる計算リソース、計算遅延、及び個々の対象分野の専門家の処理時間の使用を回避する。開示された処理は、無効な設計に対するこれらのリソースの行使を減らし、最終的に柔軟性とカスタマイズを追加する。
【0009】
開示された方法は、人間が明示的に処理するには複雑すぎる相互作用を(時間枠内で)理解する能力を提供する。開示されたアプローチは、設計基準を満たす複数の設計を提供する。むしろ、開示されたアプローチは、実行を中断することなくコンピュータ分析の実行中に動作し、進展する設計発見及び一連の設計入力及び変化するミッションプロファイルによって自然に生じる複数の設計間のトレードオフを分析する。
【0010】
いくつかの実装によれば、方法は計算システムで実行される。典型的には、計算システムは、それぞれが1以上のプロセッサ及びメモリを有する複数のコンピュータを含む。この方法は、原子炉の炉心を設計するために使用される。設計処理は、原子炉の複数の設計変数を使用する。設計変数は、基本的に独立して制御される変数である。さらに、設計処理は、原子炉に関連する複数の計量変数を使用する。設計変数は、例えば、熱水力特性を測定する変数、中性子特性を測定する変数、及び応力特性を測定する変数を含む。計量変数は基本的に従属変数であり、設計の実行可能性を測定する。他の計量変数も使用できる。
【0011】
ユーザは、設計変数の各々の値の個別の範囲(材料データベースからの材料選択を含む)を指定し、それによって最初の信頼領域を形成する。信頼領域は、最初は超立方体であり、座標が範囲の各々の平均であるポイントを中心とする。ユーザは、計量変数の各々の個別の制約値も指定する。例えば、最大燃料温度又は最大圧力損失。
【0012】
方法は、最初の信頼領域内の設計パラメータの値のN個のサンプルを含むラテン超立方体を構築する。ラテン超立方体は、設計変数間の多変量相関を最小化するように構築される。処理は、(i)サンプル数を増やす、及び/又は(ii)代替サンプルを選択する、の潜在的に2つの手段で相関を最小化する。Nは、1より大きい整数(例えば、10、25又は50)である。
【0013】
ラテン超立方体のN個のサンプルの各々について、方法はいくつかの行動、すなわち、(i)熱水力特性を測定する複数の計量変数を計算するために熱水力分析処理を実行すること、(ii)中性子特性に対応する複数の中性子計量を計算するために中性子分析処理を実行すること、(iii)応力(及び関連する)特性に対応する複数の計量変数を計算するために応力分析処理を実行すること、及び、(iv)計量変数の目標(閾)値と比較して計量変数の個別の集合残差を計算するために目的関数を適用すること、を実行する。
【0014】
方法は、次に、N個のサンプル及び対応する計算された集合残差にしたがって機械学習モデルを訓練する。様々な機械学習手法が使用される。いくつかの実装において、機械学習モデルは決定木のランダムフォレストである。いくつかの実装において、機械学習モデルはニューラルネットワークである。いくつかの実装は、機械学習にガウス過程を使用する。他の実装において、進化的最適化のためのメモリレスな方法が使用され得る。いくつかの実装において、設計問題に最もよく適合する選択をするために一連の最適化手法が提供される。
【0015】
方法は、次に、信頼領域を縮小し、変更された信頼領域を、残差が最小のサンプルポイント(ラテン超立方体のN個のサンプルの1つ)を中心として配置する。信頼領域は最初こそ超立方体として開始されるが、信頼領域は、縮小するために通常は超立方体ではない。各設計変数の個別の範囲は、個別の設計変数、及び、機械学習モデルを使用して推定された残差の間の相関にしたがって縮小される。
【0016】
処理は、次に、構築すること、熱水力処理を実行すること、中性子処理を実行すること、応力処理を実行すること、計算すること、及び、訓練することを、残差が最小のサンプルが所定の反復回数の間変化しないようになるまで繰り返す。方法は、最後の反復からの機械学習モデルを使用して、各設計変数の相対的重要度の評価をし、レポート内に視覚的に評価を提供する。いくつかの実装において、レポートは、各設計変数の重要度を示す、及び/又は、どの計量変数が最大の設計制限を課したかを示す1以上のデータ視覚化図を有するインタラクティブなグラフィカルユーザインターフェースである。
【0017】
いくつかの実装において、熱水力分析処理を実行すること、中性子分析処理を実行すること、及び、応力分析処理を実行することは、同時に行われる。いくつかの実装において、ポイントの各々に対して最初の粗いスクリーニングがあり、非常に悪い結果を生成するサンプルポイントは完全には処理されない(例えば、Keffが不十分なサンプルポイントは拒絶される)。
【0018】
いくつかの実装において、熱水力分析処理を実行すること、中性子分析処理を実行すること、及び、応力分析処理を実行することは、連続して行われる。
【0019】
いくつかの実装において、熱水力分析処理、中性子分析処理及び応力分析処理は、それぞれ、個別の異なる計算サブシステムで行われる。このようにして、処理は並行して実行されることができ、各計算サブシステムは、特定のタイプの演算用に最適化されることができる(例えば、ハードウェア及び/又はソフトウェア)。
【0020】
場合によっては、最適なサンプルポイントは信頼領域の境界にある。これは、最適な解が現在の信頼領域の外にある可能性があることを示す。この場合、いくつかの実装は、信頼領域を拡張する。具体的には、方法が、反復において、残差が最小のサンプルが信頼領域の境界にある第1設計変数の値を有すると決定する場合、方法は、信頼領域に以前は含まれていなかった第1設計変数の範囲を含むように、信頼領域を拡張する。いくつかの実装において、信頼領域の拡張は、ユーザが指定した初期パラメータを超えて拡張することは許可されない(例えば、拡張は、以前の縮小を取り消すことができる)。
【0021】
いくつかの実装において、複数の計量変数の一つは、実効中性子増倍率(Keff)である。
【0022】
いくつかの実装において、信頼領域を縮小することは、ユーザ入力により指定された学習係数を使用する。
【0023】
いくつかの実装において、最初のラテン超立方体は、複数の設計変数のユーザが指定した範囲の平均値を中心とする。
【0024】
方法は、1以上の設計変数が数値範囲というよりは離散的なカテゴリ値を有する場合にも機能する。例えば、複数の設計変数の1つは、例えば「水素」、「ヘリウム」及び「窒素」等のカテゴリ値を有する流体タイプであり得る。いくつかの実装において、設計変数が離散的なカテゴリ値を有する第1設計変数を含む場合、方法は、(i)第1置換設計変数を形成するために各個別のカテゴリ値を連続範囲の数値として符号化すること、及び(ii)第1設計変数を第1置換設計変数に置き換えること、を更に含む。
【0025】
1以上のカテゴリ設計変数がある場合、方法は、各反復の間、(i)残差が最小のサンプルについて、異なるカテゴリ値に切り替えることが目的関数にしたがってより小さい残差を生み出す確率を推定するために機械学習モデルを使用すること、及び、(ii)次の反復のために、確率に比例する、ラテン超立方体のサンプリングレートを使用すること、を更に含む。例えば、いくつかの実装は、すべてのカテゴリ値の合計が1になるように確率を正規化する。
【0026】
いくつかの実装において、計算システムは、1以上のコンピュータを含む。コンピュータの各々は、1以上のプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、1以上のプロセッサによる実行のために構成される1以上のプログラムを格納する。1以上のプログラムは、ここで記載される方法のいずれかを実行するための指示を含む。
【0027】
いくつかの実装において、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、1以上のコンピュータを有する計算システムによる実行のために構成される1以上のプログラムを格納し、各コンピュータは1以上のプロセッサ及びメモリを有する。1以上のプログラムは、ここで記載される方法のいずれかを実行するための指示を含む。
【0028】
したがって、機械学習を用いる迅速なデジタル原子炉設計を提供する方法及びシステムが開示される。
【0029】
ここに記載の議論、例、原理、組成物、構造、特徴、配置及びプロセスは、任意の減速材システム(水及び軽元素等)及び任意の冷却材システム(水、液体金属、溶融塩及びガス等)を使用する原子炉に適用し、適合させ、具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
開示されたシステム及び方法、並びに追加のシステム及び法をよりよく理解するために、以下の図面と併せて、以下の実装の説明を参照すべきである。以下の図面では、同様の参照番号は、図面を通して対応する部分に言及する。
【0031】
【
図1】いくつかの実装にかかる原子炉の炉心を設計する処理の概要を提供する。
【
図2】いくつかの実装にかかる計算装置のブロック図である。
【
図3A】いくつかの実装にかかる、機械学習を用いる迅速なデジタル原子炉設計の処理のフローチャートである。
【
図3B】いくつかの実装にかかる、機械学習を用いる迅速なデジタル原子炉設計の処理のフローチャートである。
【
図4A】いくつかの実装にかかる、原子炉設計の出力分析情報を示す。
【
図4B】いくつかの実装にかかる、原子炉設計の出力分析情報を示す。
【
図4C】いくつかの実装にかかる、原子炉設計の出力分析情報を示す。
【
図4D】いくつかの実装にかかる、原子炉設計の出力分析情報を示す。
【0032】
ここで、実装を参照する。その例は、添付の図面に示されている。以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示されている。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細を必要とせずに実施され得ることは当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、いくつかの実装にかかる原子炉の炉心を設計する処理の概要を提供する。入力102は、1以上のユーザにより提供される。いくつかの実装において、入力は、入力ユーザインターフェース222(例えば、グラフィカルユーザインターフェース)に提供される。いくつかの実装において、入力102は、コマンドラインインターフェースを通じて、又は、入力ファイルを用いて、提供される。入力102は、設計変数110を含む。設計変数110は、炉心の物理的設計特性(例えば、形状、運転条件、燃料負荷、燃料タイプパターン、サイズ、質量、燃料及び減速材の代替物の限定リスト、又は、建設資材)を指定するパラメータである。ユーザは、設計変数110及び材料ライブラリから選択される材料の各々ついて、値の範囲(又は離散値のリスト)を指定する。入力102は、また、計量変数112を含む。計量変数112は、炉心がどう機能するか(例えば、出力メガワット、中心温度、流体圧力損失、推力、流れ、ISP(比推力)、総質量、部品質量、毒物、又は電力分配)の制約である。ユーザは、計量変数の閾値を指定する。いくつかの制約は、根本的なものであり、例えば、意図する寿命の間、構造的完全性を維持することに関連するものである。
【0034】
アルゴリズム104は、反復的であり、信頼領域120から始まる。この信頼領域120から、複数のサンプルポイントが選択される。いくつかの実装において、サンプルは、ラテン超立方体(例えば、座標が各範囲の平均である点を中心とする)を形成する。アルゴリズムは、設計変数間の最大多変量相関が最小化されるようにサンプルポイントを選択する。いくつかの実装において、これは、所定の最大値p_maxを指定して、最大多変量相関がp_maxより小さくなるまで反復する反復処理である。
【0035】
サンプルポイントが選択された後、アルゴリズム104は、各サンプルポイントの品質を決定するために3つの処理を実行する。通常、これらの処理は並行して実行されるが、いくつかの実装は、実行可能とはほど遠い設計を除外するために、1つ以上の処理(例えば、中性子エンジン136)を使用して初期スクリーニングを実行する。熱水力エンジン132、機械的安定性(「応力」)エンジン134及び中性子エンジン136の各々は、1以上の計量変数112の値を計算する。各サンプルについて、アルゴリズムは、炉心の実行可能なモデルを生成するという観点からサンプルの品質を指定する目的関数を計算する。いくつかの実装において、目的関数は、残差を計算する。残差は、計量変数の各々がその目標の制約値(閾値)から異なる量の重み付きの多項式である。例えば、nの計量変数y1,y2,…,ynが、目標の制約値c1,c2,…,cn及び重みw1,w2,…,wnとともにあるとする。いくつかの実装は、残差を、合計w1(y1-c1)+w2(y2-c2)+…+wn(yn-cn)として指定する。
【0036】
サンプルポイント及び計算された残差は、機械学習エンジン140に入力される。機械学習エンジン140は、データを使用して、機械学習モデル262(又は複数のモデル)を構築する。いくつかの実装において、モデルは、決定木のランダムフォレストである。いくつかの実装において、モデルは、ニューラルネットワークである。いくつかの実装は、機械学習にガウス過程を使用する。他の実装では、進化的最適化のためのメモリレスな方法が使用され得る。いくつかの実装において、設計上の問題に最もよく適合するように選択するための一連の最適化方法が提供される。機械学習モデル262に基づいて、アルゴリズム104は、設計変数の各々の相対的重要度を決定する。設計変数の一部は残座に大きな影響を与えるが、他の設計変数は残差にほとんど影響を与えない。このデータを用いて、アルゴリズム104は、信頼領域120を縮小でき(150)、より小さい信頼領域で反復処理を繰り返す。信頼領域は反復毎に縮小するため、アルゴリズム104は、より小さな領域についてより多くの情報を収集し、そのため、データはより正確になる。機械学習モデル262を構築するときに、すべての反復からの累積的にサンプルポイントが使用されることに留意されたい(例えば、2回目の反復で同じ数のサンプルポイントが生成される場合、2回目の反復は、機械学習モデルの構築に合計で2倍のサンプルポイントを有する)。
【0037】
いくつかの実装において、プロセスは、各反復での信頼領域の縮小の代わりに又は加えて、遺伝的アルゴリズムを使用する。遺伝的アルゴリズムを使用する場合、サンプルポイントの各々は、残差にしたがって重み付けされる。この場合、残差が小さいサンプルほど重みが大きくなる。いくつかの実装において、残差が大きすぎるサンプルの重みはゼロであってよい。これらの重みは、次の反復で使用されるサンプルを作成するために使用される。例えば、サンプルのペアをそれらの重みに応じてランダムに選択し、各ペアについて、突然変異及び/又はクロスオーバを使用して次の反復の子サンプルを作成する。いくつかの実装において、次の反復の子サンプルを生成するために3個以上のサンプルが使用される。
【0038】
最良のサンプルポイントが複数回の反復後に変化しない場合、アルゴリズム104は処理ループを終了する。最後の反復からのデータは、ユーザに出力分析情報106を提供するために使用される。いくつかの実装において、出力分析情報106は、グラフィカルデータ視覚化
図160及び162等のグラフィカルデータ視覚化図として提供される。第1グラフィカルデータ視覚化
図160は、入力パラメータ(すなわち、設計変数110)に基づく残差構成を示す。これは、設計変数110の各々が計算された残差にどの程度寄与したかを示す。この例では、炉心の半径、炉心の高さ、流路孔の直径及び流量等、残差に寄与する8つの入力パラメータがある。いくつかの実装において、残差への寄与が閾値未満である入力パラメータは
図160から除外される。第2グラフィカルデータ視覚化
図162は、計量制約112に基づく残差構成を示す。この例のデータ視覚化
図162において、T
max及びK
effは、2つの最も重要な制約である一方で、入口温度(Inlet
T)及び圧力損失dP/Pはあまり重要ではない。いくつかの実装において、これらのデータ視覚化
図160及び162は、対話型であって、ユーザに選択肢の調査をすることを可能にする。
【0039】
図2は、いくつかの実装にかかる計算デバイス200のブロック図である。計算デバイス200の様々な例には、サーバの高性能クラスタ(HPC)、スーパーコンピュータ、デスクトップコンピュータ、クラウドサーバ及び他の計算デバイスが含まれる。計算デバイス200は、典型的には、メモリ214に格納されたモジュール、プログラム及び/又は指示を実行することによって処理動作を実行するための1以上の処理ユニット/コア(CPU)202と、1以上のネットワーク又は他の通信インターフェース204と、メモリ214と、これらのコンポーネントを相互接続する1以上の通信バス212と、を含む。通信バス212は、システムコンポーネント間の通信を相互接続及び制御する回路を含み得る。
【0040】
計算デバイス200は、ディスプレイデバイス208及び1以上の入力デバイス又は機構210を含むユーザインターフェース206を含み得る。いくつかの実装において、入力デバイス/機構はキーボードを含む。いくつかの実装において、入力デバイス/機構は、ディスプレイデバイス208に必要に応じて表示されて、ユーザがディスプレイ208に現れる「キーを押す」ことを可能にする「ソフト」キーボードを含む。いくつかの実装において、ディスプレイ208及び入力デバイス/機構210は、タッチスクリーンディスプレイ(タッチセンサ式のディスプレイとも呼ばれる)を備える。
【0041】
いくつかの実装において、メモリ214は、DRAM、SRAM、DDR RAM、又は他のランダムアクセスソリッドステートメモリデバイス等の高速ランダムアクセスメモリを含む。いくつかの実装において、メモリ214は、1以上の磁気ディスクストレージデバイス、光ディスクストレージデバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性ソリッドステートストレージデバイス等の不揮発性メモリを含む。いくつかの実装形態では、メモリ214は、CPU202から遠くに配置された1以上のストレージデバイスを含む。メモリ214又はメモリ214内の不揮発性メモリデバイスは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を備える。いくつかの実装において、メモリ214又はメモリ214のコンピュータ可読記憶媒体は、以下のプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
・オペレーティングシステム216。これは、様々な基本的なシステムサービスを処理し、ハードウェアに依存するタスクを実行するための手順を含む。
・通信モジュール218。これは、計算デバイス200を、他のコンピュータ又はデバイスに、1以上の通信ネットワークインターフェース204(有線又は無線)及び1以上の通信ネットワーク(例えば、インターネット、他のワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、メトロポリタンエリアネットワーク等)を通じて、接続するために使用される。
・ウェブブラウザ220(又は、他の、ウェブページを表示できるアプリケーション)。これは、ユーザに、リモートコンピュータ又はデバイスを用いたネットワークを通じた通信をすることを可能にする。
・入力ユーザインターフェース222。これは、ユーザに、設計変数110の許容される値の範囲232を指定すること、及び、制約112の目標(閾)値242を指定することを可能にする。設計変数の範囲は、最初の信頼領域120を指定することに使用される。
・出力ユーザインターフェース224。これは、構築された設計に関するグラフィカル分析情報226を提供する。グラフィカル分析情報226のいくつかの例は、
図1のデータ視覚化
図160及び162である。
・データサンプルセレクタ250。これは、信頼領域内のサンプルのセットを選択する。いくつかの実装において、データサンプルセレクタは、ラテン超立方体を形成する。いくつかの実装において、ラテン超立方体は、設計変数110のサンプル値間の多変量相関を減らすために繰り返し形成される。
・熱水力エンジン132。これは、熱流束プロファイル、熱輸送、圧力損失及び溶融等の様々な特性を決定する。いくつかの実装において、これは、有限要素法(Finite Element method:FEM)、有限差分法(Finite Difference Method:FDM)、又は有限体積法(Finite Volume Method:FVM)を使用する。いくつかの実装において、これは、ANSYSモデル、又は、アイダホ国立研究所のMOOSEフレームワーク等の(例えば、政府の研究所の)高精度のマルチフィジクスシミュレーションスイートを使用する。
・機械的安定性エンジン134。これは、熱膨張係数(CTE)、CTEミスマッチ、応力-ひずみ、サイクリング(cycling)及び亀裂の影響等の様々な機械的特性を決定する。
・中性子エンジン136。これは、核分裂臨界、範囲、減速、流速量及び持続可能性等の様々な特性を計算する。いくつかの実装において、中性子エンジンは、モンテカルロN粒子シミュレーション(MCNP)、SCALE(オークリッジ国立研究所によって維持されている核安全性分析のためのモデリング及びシミュレーションスイート)、及び/又は、Open MC(コミュニティで開発されたモンテカルロ中性子及び光子輸送シミュレーションコード)を使用する。
・材料モジュール138。これは、建設、燃料、被覆、毒物又は減速材に使用される材料等の様々なコンポーネントに使用される可能性のある材料を評価する。評価される特性は、散逸粒子構造、材料反応特性、及び材料混合の状態を含み得る。
・機械学習エンジン140。これは、サンプル、及び、サンプルの各々について計算された計量に基づいて機械学習モデル262を構築する。いくつかの実装において、機械学習エンジン140は、決定木のランダムフォレストを構築する。いくつかの実装において、機械学習エンジン140は、ニューラルネットワークを構築する。いくつかの実装において、機械学習エンジン140は、機械学習モデル262を構築するために、ガウス過程を使用する。
・0以上のデータベース又はデータソース270(例えば、第1データソース240A及び第2データソース240B)。いくつかの実装において、データソースは、スプレッドシートファイル、CSVファイル、XMLファイル、フラットファイル、HDFファイル又はSQLデータベースとして格納される。データベースは、リレーショナル又は非リレーショナルの形式で格納され得る。
【0042】
上記で特定された実行可能なモジュール、アプリケーション、又は手順のセットの各々は、前述のメモリデバイスの1以上に格納され得、上記の機能を実行するための指示のセットに対応する。上記で特定されたモジュール又はプログラム(すなわち、指示のセット)は、別個のソフトウェアプログラム、手順又はモジュールとして実装される必要はなく、したがって、これらのモジュールの様々なサブセットは、様々な実装において組み合わされるか、さもなければ再配置され得る。いくつかの実装において、メモリ214は、上記で特定されたモジュール及びデータ構造のサブセットを格納する。さらに、メモリ214は、上記に記載されていない追加のモジュール又はデータ構造を格納し得る。
【0043】
図2は計算デバイス200を示すが、
図2は、本明細書で説明されている実装の構造概略図というよりは、存在し得る様々な特徴の機能的説明としてより意図されている。実際には、そして当業者によって認識されているように、別々に示されたアイテムは組み合わされることができるし、いくつかのアイテムは分離されることができる。
【0044】
図3Aは、連続する設計変数を用いる迅速な原子炉設計のフローチャートを提供する。 処理は、変数(設計変数110及び計量変数112の両方)を取得すること(304)により始まる(302)。ユーザは、設計変数110の各々の範囲を指定し、各計量変数112の制約(例えば、片側不等式)を指定する。設計変数110はパラメータと呼ばれることがあり、範囲の超立方体はパラメータ空間と呼ばれることがある。パラメータ空間は、最初の信頼領域(TR)を形成する(304)。計量変数の空間は、応答空間と呼ばれることがある。
【0045】
次に、処理は、最初の信頼領域からサンプルのラテン超立方体(LH)を生成する(306)。ラテン超立方体の生成は反復的であり、処理は、サンプルの設計変数間の多変量相関が所定の制約pmax未満になるまで、立方体のサイズについて反復をする(306)。各反復は、ラテン超立方体のサイズを増加し、及び/又は、サンプルの少なくとも一つを新しいサンプルに置き換える。ラテン超立方体を構築するための最初の確率過程は、信頼領域の平均を中心とする(306)。
【0046】
処理は、ラテン超立方体内のポイントの各々について熱水力(TH)演算を実行する(308)。いくつかの実装は、演算に3次元有限要素法を使用する。いくつかの実装は、の実装では、2次元流体演算(軸方向及び半径方向)及び2次元熱伝導演算(軸方向及び半径方向)の両方を含む真の2次元演算を使用する。ただし、いくつかの実装は、完全な2次元演算未満で高品質な結果を生み出すことができる。一般に、形状は、実際には関連する軸方向の変化のみをもたらす流れを生む。したがって、いくつかの実装は、半径方向の成分なしで1次元の軸方向の流れのみを解く。伝導についてはその逆が当てはまる。半径方向の成分は非常に重要であるが、軸方向の成分はそれほど重要ではない。したがって、いくつかの実装は、1次元の半径方向の伝導のみを解く。この状況では、軸方向と半径方向との両方を解くことがあるが、それらは真の二次元演算ではない。1次元の軸方向の流れと1次元の半径方向の伝導のみを計算することは、「1.5次元」と呼ばれることがある。
【0047】
熱水力演算からの出力(例えば、軸方向温度分布)は、次に、中性子演算及び機械的安定性分析への入力として使用される(310)。熱水力処理、中性子処理及び機械的安定性分析は、様々な計量変数を計算する。特に、処理は、このプロセスでは、中性子演算からノミナル(nominal)Keffとその標準誤差を抽出する(312)。いくつかの実装において、ボックス312に進む前に、このフローのボックス308及び310は、収束のためにループする。
【0048】
複数の物理処理から計算された計量値は、次に、目的関数への入力として使用される。目的関数は、制約を満たすことに関してサンプルの全体的な品質を測定する(314)。すべてのサンプルが原子炉の実行可能な設計を提供できない場合でも、一部の設計は他の設計よりも優れており、より優れた設計を反復して見つけるために使用され得る。目的関数で使用される計量は、通常、中性子、熱水力、機械的安定性、質量、形状、コスト及びその他の要因に基づく計量を含む。いくつかの実装において、目的関数fは、各計量変数の目標の制約値と各計量変数の計算値の差分の重み付けされた組み合わせ、例えば、Σiwi(yi-ci)である。ここで、wiは重み、yiは測定された計量値、ciは目標の制約値である。
【0049】
目的関数からのデータを使用して、処理は、モデルを構築するために機械学習を適用する(316)。このフローチャートで示される例において、機械学習は、設計変数のサンプル及び目的関数の値にしたがって決定木のランダムフォレスト(RF)を使用する(316)。目的関数は、複数の計量のデータを単一の数値(多次元よりも1次元)に変換することにより、分析を簡素化する。いくつかの実装は、遺伝的アルゴリズム、連成シミュレーテッドアニーリングアルゴリズム又は差分進化アルゴリズム等のメモリレス進化的最適化を使用して、非ベイズアルゴリズムにしたがってデータを適合させる。
【0050】
サンプルの中から、処理は、最小の残差(つまり、目的関数の最小値)を生み出すベクトル(つまり、サンプルポイント)を特定する(318)。処理は、ランダムフォレスト及びブートストラップを使用して、このベクトルの周囲の領域の変動性及び信頼性を評価する。特に、処理は、このサンプルポイントでの統計的検出力を演算(320)して、次のラテン立方体のサンプルサイズnを決定する。いくつかの実装は、ガウスベースの分析を使用してこれらのステップを実行する。中心極限定理により、ガウス分布を使用するとうまくいくことがよくある。いくつかの実装は、ガウス分布に次の方程式を使用して、次のサンプルサイズnを決定する。
【0051】
【数1】
ここで、MSEは、モデルの平均二条誤差である(例えば、ランダムフォレストでのブートストラップの使用)。Z
αは、アルファ信頼水準でのガウス分位点である。Z
βは、ベータ検出力水準でのガウス分位点である。errorは、差の小ささが重要であることを示すためにユーザにより指定される定数である。MSEは、信頼性を指定する。
【0052】
代替案としては、いくかの実装は、より複雑な方程式を必要とする二項式に基づく非ガウス分布を使用する。
【0053】
変動性及び信頼性がわかれば、処理は信頼領域を縮小する(322)。いくつかの実装において、縮小はユーザから提供される学習係数にしたがう。設計変数の各々の縮小は、その設計変数の目的関数の変動性にしたがう。縮小は、最良のベクトルを中心とする新しい信頼領域(322)を生み出し、当該領域は、通常、超立方体ではない。この新しい信頼領域及び決定されたサンプルサイズを使用して、処理は、サンプルの新しいラテン超立方体を生成し(324)、次に、新しいラテン超立方体の演算を反復する(ボックス308から始まる)。
【0054】
この反復処理の間、残差が最小のベクトルは、信頼領域の壁(別名、境界)にあり得る(326)。これが発生した場合、最適な解は、信頼領域の外にある可能性があるため、信頼領域は壁を超えて拡張される(例えば、境界に垂直な方向に拡張される)(326)。
【0055】
反復処理は、最良のベクトルが複数の反復にわたって同じになるまで継続する(328)。いくつかの実装は、一部の実装では、処理が停止する前に不変の最良のベクトルの生成の所定回数を指定する。例えば、いくつかの実装は、所定の反復回数を3、5又は10に設定する。
【0056】
処理が完了すると、選択された最適化方法からのデータ(例えば、最後のランダムフォレストからのデータ)は、設計及び計量変数に関する分析データをユーザに提供するために使用される。出力のいくつかの例は、
図4A~
図4Dにおいて図で示されている。いくつかの実装において、処理は、各設計変数の重要度を図示する(330)。ベイズ最適化は、通常、ランダムフォレストを使用する。非ベイズ最適化の場合、いくつかの実装は、各変数の重要度を評価するために、勾配ブースティング又は有限差分法を使用する。
【0057】
図3Bは、
図3Aの処理が、(連続的な数値の設計変数に加えて)1以上のカテゴリ設計変数を含むように拡張される方法を説明する。この場合、ラテン超立方体には、カテゴリ変数毎に追加の次元を含む(350)。カテゴリ変数の値の領域(domain)は、「レベル」と呼ばれることがある。カテゴリ変数の個別のデータ値の数に関係なく、カテゴリ変数毎に次元がラテン超立方体に追加される。いくつかの実装において、この処理は、各カテゴリ変数の代わりに数値の変数を使用し、カテゴリ値を数値として符号化する。これは、「ホットエンコーディング」と呼ばれることがある。例えば、流体タイプにカテゴリ変数があり、選択肢が窒素、水素、又は酸素である場合、これらの3つの流体タイプは、1、2及び3(例えば、01、10及び11)として符号化される。処理は、既存のランダムフォレストを使用して、設計変数間の共変量を制御する(352)。
【0058】
共変量が制御されると、処理は、(ランダムフォレストに基づいて)最良のベクトルでの不確実性を演算する(354)。この最良のベクトルの場合、処理は、カテゴリ変数のすべての順列を特定する(356)。通常、カテゴリ変数の数は少ないため、順列の数は多くない。次に、プロセスは各順列でランダムフォレストモデルを適用し(358)、順列が現在の最良よりも優れた結果を生成する確率を評価する。このステップでは、処理は、基本的に、最良のベクトルからのすべての非カテゴリ変数を保持し、カテゴリ変数の各順列を含む複数の新しいサンプルを構築する。複数の新しいサンプルの各々は、現在の最良のベクトルよりも優れた結果が得られる確率を推定するために、機械学習モデル(例えば、ランダムフォレスト)にしたがって評価される。
【0059】
一般に、各カテゴリ値に対応するサンプルポイントの数は同じではない。したがって、処理は、重み付けが小さくされた誤ってバイアスされた要因を回避するために、各カテゴリのデータポイントの数によって標準誤差を調整する(360)。いくつかの実装において、確率は、すべての確率の合計が1になるように調整される(362)。処理は、次に、確率をサンプリングレートとして使用する(364)。例えば、特定のカテゴリ値がより良い結果につながる可能性が高い場合、他のカテゴリ値よりも高い頻度でサンプリングに使用され得る。
【0060】
処理は、次のラテン超立方体の生成において計算されたサンプリングレートを使用する(366)。次のラテン超立方体は、各カテゴリのレベルを、サンプリングレートに比例して、分割する。言い換えると、連続値用に設定されたラテン超立方体を取得し、ランダムフォレストによって演算された確率値に比例するレベルに基づいてサンプルを「ビン」に分類する。処理は、次に、
図3Aに示すように、それが収束するまで繰り返す(368)。
【0061】
熱水力エンジン132、機械的安定性分析エンジン134及び中性子エンジン136のための演算は、様々なレベルの忠実度で実行され得る。いくつかの実装において、3つの広いレベルの忠実度がある。忠実度の最低レベルでは、サンプルの全体的な適合性がテストされ、このようなサンプルの多くは、制約を満たすこととは程遠いため、すぐに破棄され得る。忠実度の第2のレベルでは、演算はより遅くなるが、かなり正確である。第2レベルの忠実度を使用するサンプルポイントの数を制限することにより、アルゴリズム全体で数時間で設計空間を生成できる。
【0062】
忠実度の第3レベルは、開示された処理の範囲外で適用される。この最高レベルの忠実度は、政府の規制で指定された厳格な要件を満たすように設計を検証するために使用される。開示された処理は非常に優れた設計空間を生成するため、最高の忠実度のアルゴリズム(実行に数週間又は数か月かかる場合がある))は、生成された設計空間内の設計を検証することが期待される。
【0063】
典型的な高忠実度CFD演算は、共役加熱演算を通じた流体と固体伝導間の相互作用を組み込む。ただし、CFD演算は、流体境界層を解決するため、演算に時間がかかる可能性がある。代わりに、3DFEM伝導メッシュが、物理的な解の収束を加速するために、FDM一次元軸流又は一次元多孔質媒体演算と結合され得る。結合は、疑似時間ステップを実装し、FEM/FDM収束を反復することによって実現される。多くの設計演算では、すべてのフローチャネルにわたる圧力の均等化が必要であるか、目的の境界条件基準を達成するためにフローを検索する必要がある。このフロー検索又は圧力均等化も、非常に時間のかかる処理になる可能性がある。したがって、収束した物理解を実現してフロー検索又は圧力均等化の目標を達成するために解を収束させる間、疑似時間ステップの使用を利用することによって、コードを反復的に変更する。この処理は、全体的な実行時間を大幅に短縮することになる。フローの検索に使用されるのと同じ概念は、流体密度、静圧、流体温度、出力、又は、熱水力学あるいは構造物理学の演算におけるその他のパラメータにも適用できる。
【0064】
中性子演算は、FEMメッシュを利用して、「プリミティブ(primitive)」形状に基づかない複雑な設計の中性子性能を決定することもできる。
【0065】
図4A-
図4Dは、原子炉設計処理に関する出力分析情報を含むいくつかの図を提供する。
【0066】
図4Aにおいて、棒グラフの各々は、様々な設計変数に関するサンプルの分布を示すヒストグラムである。例えば、第1ヒストグラム402は、様々な炉心半径を有するサンプルの分布を示す。第2ヒストグラム404は、半径方向の反射器の厚み(rr_thickness)に関するサンプルの分布を示す。第3ヒストグラム406は、上部反射器の厚み(tr_thicknes)に関するサンプルの分布を示す。第4ヒストグラム408は、底部反射器の厚み(br_thickness)に関するサンプルの分布を示す。第5ヒストグラム410は、本質的に燃料ヘックスの幅である「対辺間距離(flat to flat)」に関するサンプルポイントの分布を示す。第6分布412は、炉心高さに関するサンプルの分布を示す。第7ヒストグラム414は、流体流路のサイズに関するサンプルポイントの分布を示す。
【0067】
図4Bは、一組の計量変数112及び総残差420の間の相関を示す画像表示である。この例では、計量変数112は、入口温度422、最大燃料温度424、相対圧力損失426、及び実効中性子増倍率428である。各ボックスには、-1(完全な負の相関)と1(完全な正の相関)との間の範囲であり得る数値がある。もちろん、計量の各々はそれ自体と完全に相関しているため、自己相関を表すボックス(ボックス434等)の値は1である。
図4内の図は、残差420が最高温度424と中程度に相関し(ボックス430では0.42の相関)、残差420が相対圧力損失426と強く相関している(ボックス432では0.95の相関)ことを示す。この図は、また、入口温度422が最高温度424といくらか負で相関している(ボックス436では-0.64の相関)ことを示す。さらに、ボックス438は、入口温度422と相対圧力損失426との間に0.09の非常に小さな正の相関があることを示す。この図は、また、相関値がボックス内にどのように表示されるかを示す色の凡例440を含む。この例では、より高い正又は負の相関が、より強い色及びより大きな彩度の両方で表示される。これにより、ユーザはより重要な相関を迅速に確認できる。
【0068】
図4Cは、熱水力処理によって生成された、いくつかのグラフを示す。グラフの各々は、軸方向の距離に対してプロットされた異なる変数を示す。これらのグラフは、熱水力演算の挙動を示し、洞察と診断を可能にする。
【0069】
図4Dは、目的関数(残差)の計算における各計量変数の相対的重要度を示す。この例では、実効中性子増倍率K
eff450、最大中心温度452、総質量454(つまり、炉心のすべての総質量)、圧力損失456、及び入口温度458を含む5つの計量変数がある。この図では、残差演算に対する各計量の相対的重要度が、合計が1.0になるように調整される。いくつかの実装において、ユーザは、表示する計量を選択できる。例えば、システムは、通常、圧力損失(P)とシステム圧力に対する圧力損失(dP/P)の両方の計量がある。示された図では、圧力のみが表示される。この図に示されているように、K
eff450は残差の50%を占め、最大中心温度452は残差の20%を占め、他の各計量は残差の10%を占める。これらのパーセンテージは、処理されたすべてのサンプルに基づいて集計される。
【0070】
いくつかの実装は、前の反復で何が起こったかを示すバッチ相関及びプロットも含む。このようにして、最適化が実行されている間、ユーザは、(最適化が完了するまで待つというよりは)何が起こっているかを確認できる。
【0071】
ここでの発明の説明で使用される用語は、特定の実施を説明することのみを目的としており、発明を限定することを意図するものではない。発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことを意図している。ここで使用される「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目の1つ又は複数のありとあらゆる可能な組み合わせを指し、それを包含することも理解される。さらに、「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、ここで使用される場合、記載された機能、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、1以上の他の機能、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0072】
上記の記載は、説明の目的で、特定の実装を参照して記述されている。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、又は発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教えを考慮して、多くの修正及び変形が可能である。実装は、発明の原理及びその実際の適用を最もよく説明するために選択及び説明され、それにより、当業者が発明及び企図される特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な実装を最もよく利用できるようにする。
【国際調査報告】