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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】靴底および支持要素
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20220810BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A43B13/14 D
A43B13/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573588
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020066339
(87)【国際公開番号】W WO2020249754
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】00799/19
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】01379/19
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521074106
【氏名又は名称】エックス-テクノロジー スイス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ランベルツ,ボド
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA36
4F050BA40
4F050BA55
4F050EA22
4F050HA55
(57)【要約】
本発明は、支持層(31)および複数の支持要素(4)を有する靴底(3)を備えた靴(1)を含むセットに関し、支持層(31)は、同一の一定のキャビティ断面領域を有する複数のキャビティ(310)を含む。各キャビティ(310)の少なくとも1つの端面は凹状に形成され、それにより、少なくとも1つの側で開いたキャビティ(310)の構造が支持層(31)に形成される。支持要素(4)は、同一の一定の断面領域を有する棒として設計され、形状が合致した状態でキャビティ(310)に挿入すること、およびキャビティ(310)から取り除くことができ、支持要素(4)は、挿入された支持要素(4)の選択によって靴底(3)の減衰度を変更できるように、異なる強度で存在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層(31)と複数の支持要素(4)とを有する靴底(3)を備える靴(1)を含むセットであって、
前記支持層(31)は、同一の一定のキャビティ断面領域を有する複数のキャビティ(310)を含み、前記キャビティ(310)の長さは、その幅および高さよりも大きく、各キャビティ(310)の少なくとも1つの端面は凹状に形成され、これにより、少なくとも1つの側で開いたキャビティ(310)の構造が前記支持層(31)に形成されるセットにおいて、
前記支持要素(4)は、同一の一定の断面領域を有する棒として設計され、形状が合致した状態で前記キャビティ(310)に挿入すること、および前記キャビティ(310)から取り除くことができ、前記支持要素(4)は異なる強度で存在し、その結果、前記挿入される支持要素(4)の選択によって前記靴底(3)の減衰度を変更できることを特徴とするセット。
【請求項2】
前記キャビティおよび前記支持要素(4)の断面領域が、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形または六角形、特にハニカム形状である、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記支持要素(4)が内部的に完全に充填され、その断面が好ましくは均一に充填されている、請求項1または2に記載のセット。
【請求項4】
前記キャビティ(310)が直線状または曲線状である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセット。
【請求項5】
前記靴底(3)がユーザの重みを支持するときに、力の流れのいくつかの線が2つ以上のキャビティ(310)を通過するように、前記キャビティ(310)が部分的に重ね合わされる、請求項1~4のいずれか一項に記載のセット。
【請求項6】
各支持要素(4)が、前記キャビティ(310)の端面で終端するようにユーザによって前記キャビティ(310)の長さに合わせて切断することができる、請求項1~5のいずれか一項に記載のセット。
【請求項7】
各強度の少なくとも1つ、好ましくは2つの支持要素(4)が十分な長さで提供され、そこから必要な長さを切断することで、廃棄物をできる限り少なくすることができる、請求項1~6のいずれか一項に記載のセット。
【請求項8】
異なる強度の前記支持要素(4)が、使用時の混乱を避けるために異なる色を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踵領域と爪先の間の領域のアウトソール層と支持層と、複数の支持要素とを備える靴底について記載する。
【背景技術】
【0002】
DE102013202306号は、剛性を確実に高める靴底を備えた靴を開示しており、それによって靴底の減衰特性も従来技術に比べて改善される。この目的のために、靴底またはアウトソールに使用される材料は本質的に最適化された。靴底は、エチレンビニルアセテート(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ゴム、ポリプロピレン(PP)、またはポリスチレン(PS)、或いはそれらの混合物で作られている。
【0003】
高い減衰特性を備え、且つ軽量の材料が望ましい。靴底全体の特性の局所的な改善を達成するために、補強要素がソール本体にある領域にわたって部分的に組み込まれて成形されるが、この成形は、より高い減衰効果が望まれる踵の部分で好ましくは行われる。或いは、補強要素は、選択された領域、例えば足の中間の領域の靴底の下側、靴底の外側に、接合することもできる。補強は、靴または靴底の製造中に行われ、製造業者によって、一対の靴ごとに靴のサイズに基づいて計算される既知の要件に調整される。このような補強は、例えば、平らでない地形でジョギングをする間、または足の過回内の際に、筋骨格系(例えば、足、足首、膝、腱、靭帯等)の負担を軽減するのに役立ち得る。製造プロセス中に靴底に固定的に導入される、局所的または地域的に組み込まれて成形された補強要素および他の要素が、US9930928号から明らかである。
【0004】
EP2830451号では、靴ボトム部分または多層靴底が、中央支持層を備えて設計されており、中央支持層は、異なる領域が異なる所定の減衰特性を有するように成形されている。これらの減衰領域は、靴を履く人のニーズに合わせて調整されるため、靴底の恒久的な固定減衰特性が支持層によって達成される。
【0005】
最新技術において、補強要素が選択された領域に配置され、用途に応じて最適な方法で挿入された靴底が知られている。補強要素は、一度靴底に分離不可能に接合または成形された後、この所定の位置に残る。しかしながら、ユーザの足の形状に依存して、これは、ユーザが対応する靴底のサイズを有する適切な靴のサイズを選んだ場合でさえ、十分でない場合がある。その結果、補強された靴底は、靴のアッパー部分がユーザにぴったりとフィットしているにもかかわらず、誤った位置で減衰効果を発現してしまう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ユーザごとに個々に最適化して変更できる、局所的に決定された機械的減衰を可能にする靴または靴底を創出するという目的を表明する。靴ボトム部分の様々な領域の減衰特性は、ユーザのニーズに合わせて独立して、さらにはユーザ自身によって簡単に調整できる。この最適化を市場に普及させるためには、調整が特別な工具を使わずに可能であること、また靴底を異なる用途に合わせて最適化できるように可逆的であることが必要である。
【0007】
本発明は、支持層とそれに適合する取り付け可能な支持要素とを備えた靴底に関するものであるため、請求項1の特徴によれば、そのような支持要素を備えた靴底のセットが特許請求され、それに基づいて、ユーザは、個々に望まれる変更可能な減衰度を備えた完成した靴底を作り出すことができる。
【0008】
本発明の特徴の組み合わせの変形またはマイナーな適応は、詳細な記載中に見出すことができ、図に示され、従属請求項に含まれる。
【0009】
本発明の主題は、添付の図面に関連して以下に詳細に記載される。本発明の必要な特徴、詳細、および利点は、この以下の記載から明らかになるだろう。そこには、本発明の好ましい実施形態およびいくつかの追加または任意選択の特徴が列記されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】交換可能な支持要素を備えた靴を含む、本発明によるセットの分解図を示す。
図2図1のセットを完成した状態で示し、支持要素が挿入されている。
図3a-3d】異なる支持層を通した断面または支持層を通した異なる高さまたは面における断面を示し、異なる支持要素はソールの長手方向軸または横断方向に関して異なる方向に挿入および除去可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2は、靴のアッパー部分2と靴底3と呼ばれる靴のボトム部分とを備えた靴1を構成するセットを示し、靴底はここでは複数の層で設計されている。また、異なる層を1つの層に組み合わせたり、印刷したり、封入したりすることもできる。靴のアッパー部分2と靴底3との間の接続は知られており、本発明の核心ではないので、これ以上詳しく述べない。靴底3は靴の爪先Sから踵エリアFまで延びる。セットは後述の支持要素4も含む。
【0012】
ここで、靴のアッパー部分2から離れた側から見ると、靴底3はここでは、アウトソール層30と、支持層31と、図示しないインナーソールが載るカバーソール層32とを含む。インナーソールは、通常、靴のアッパー部分2の内側でカバーソール層32上に配置され、通常は交換可能である。他の層は製造中に相互に接合され、次いで靴のアッパー部分2がそれらに固定される。今日、靴底3の層はプラスチックで作られており、そのいくつかは発泡された形態で成形される。しかしながら、特に3Dプリンタによる、積層造形技術を利用することもできる。
【0013】
アウトソール層30は、図2に示すような外側形状300を有している。これにより靴底3のスリップ抵抗性が向上する。支持層31は、ここではプラスチック製の構造体として成形されている。カバーソール層32は任意選択の靴底層であり、これはユーザが足の裏に圧迫点を感じることを防ぐことを目的としている。しかしながら、靴のアッパー部分2に面する支持層31の表面の形状に依存して、カバーソール層32は省くことができる。このインソールは、他のソール層と同様に合成または天然の繊維またはレザーを含み得るユーザが選択・交換可能なソール層である。
【0014】
この目的を達成するために、ここでは支持層31は必須であるが、一方で、他の層は省略したり、分離不可能に接続したり、それに対して形成したりすることができる。例えば、支持層31は、エチレンビニルアセテート(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ゴム、ポリプロピレン(PP)またはポリスチレン(PS)、あるいは本明細書で述べたいくつかの材料のブレンドで作られる。
【0015】
好ましくは、支持層31は、複数のキャビティ310を有する構造を有する。キャビティ310は、一方向に直線的または曲線的に延び、支持層31内に構造を形成するように構成される。キャビティ310は、互いに距離を置いて、好ましくは互いに平行に、および/または一定の間隔で配置されている。最適な減衰効果は、複数のキャビティ310が規則的に隣り合って、時に互いに重なり合って延びる場合に得られる。
【0016】
キャビティ310は、同一の一定のキャビティ断面領域を有しており、キャビティ310の長さは、その幅および高さよりも大きい。さらに、各キャビティ310の少なくとも1つの端面が形成されず、それにより支持層31に少なくとも1つの側で開いたキャビティ310の構造が形成される。典型的には、各キャビティ310の両方の端面が形成されず、それにより連続したチャネルが形成される。
【0017】
図1に示すように、支持要素4は、支持層31のキャビティ310に挿入することができる。ここで支持要素4は棒として設計され、キャビティ310と同じである同一の一定の断面領域を有する。これにより、支持要素4をキャビティ310に積極的に挿入することおよびキャビティ310から取り除くことが可能となる。
【0018】
本発明によれば、支持要素4は異なる強度で存在し、ゆえに挿入された支持要素4の選択によって靴底3の減衰度を変更することができる。この強度によって、ユーザが靴を履いたときの減衰効果が決まる。したがって、ここでいう強度とは、棒状の支持要素に横方向の力を加えたときに測定できる圧縮抵抗として理解される。
【0019】
好ましくは、これらの横断面は、円形、楕円形、三角形、五角形または六角形である。特に、図1および2に示すように、ハニカム状の横断面は、互いに接近して配置できるので有利である。
【0020】
一定の定められた減衰を達成し、靴底3の縁に閉じたきれいな表面を形成することができるように、支持要素4は、その断面が一様に充填されるように、均質な質量から構造なしで内部設計される。そのため、挿入時の支持要素4のねじれは、減衰には関係ない。また、このような支持要素4は、低コストで製造することができる。
【0021】
支持要素4は、支持層31に設けられたキャビティ310に可逆的に挿入・除去することができる。それらは図1では部分的に挿入された状態で、図2では完全に挿入された状態で示されている。キャビティ310は、図1および図2に示すように、支持層31の異なる平面に形成されると好ましい。それらは部分的に重ねて配置され、それによりユーザが靴底3に荷重をかけたときに力の流れのいくつかの線が2つ以上のキャビティ310を通過するようにする。これにより、ユーザが減衰度を最適に調整できる可能性が高まり、支持要素4がランニング時に力の流れの線を横切るほど、そこでの足踏みのクッション性は柔軟になる。足に最も大きな力と衝撃がかかる踵部分には、それに応じて最も多くの平面が上下に配置されており、そこには支持要素4を備えたキャビティ310が存在する。
【0022】
ここでは棒の形態である支持要素4は、支持層31から突出しないように、または最小限しか突出しないように、キャビティ310の長さに合わせて切断する必要がある。また、可能であれば、キャビティ310の空いている部分に汚れがたまらないように、短すぎてもいけない。そのため、支持要素4は、キャビティ310の端面で終端するように、ユーザによって長さに合わせて切断されるように構成されている。好ましくは、そのセットには、長さに合わせた切断を安全かつきれいに行うことができるシンプルで適切なツールも含まれる。これは各家庭に通常置いてあるようなナイフまたはハサミであってよい。支持要素4の強度はそれに応じて設計する必要がある、または、名目上の切断点を設けることで、例えばねじり切り、せん断、または切断により、短縮化をより容易に行うことができる。
【0023】
減衰効果を得るために、支持要素4は適切な機械的特性を有していなければならず、ここで支持要素4の剛性が特に注目される。支持要素4の材料としては、合成ポリマーが好ましく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーを用いることができる。支持要素4の曲げ剛性は、細長いキャビティ310に挿入できるようなものでなければならない。適切な支持要素4は、可塑剤などの添加剤によって製造することができる。
【0024】
廃棄物をできるだけ少なくするために、支持要素4は、できるだけ長く、必要に応じてユーザが長さに合わせて切断することができる棒の形態にすることができる。そのため、各強度の支持要素4が少なくとも1つは必要である。両方の靴は通常同じように装備されるので、セット中に各強度の少なくとも2つの支持要素4を提供することが意味を成す。
【0025】
異なる色で異なる強度の支持要素4を設計することが有効であることが分かっている。一方でこれは使用時の混乱を防止する。他方、靴底3のどの領域でどの強度が選択されたかを後から判断することもできる。
【0026】
図1~3に示すように、靴底3のキャビティ310は、異なる方向に延びることができる。一方で、それらは移動方向Lを横切る方向Qに、水平方向に延びることができる。図3aでは、支持要素4は、対応するキャビティ310に挿入される前の状態で横方向に示されている。
【0027】
図3bでは、踵領域にさらなる支持要素4がさらに示されており、これは走る方向Lに延びるキャビティ310に挿入することができる。
【0028】
図3cは、キャビティ310が、実質的に互いに平行で、基板にも平行(水平)な異なる平面で、異なる方向に構成されていることを示し、走る方向Lのキャビティ310を有する平面と、走る方向Qを横切るキャビティ310を有する平面とが交互に配置されている。矢印は挿入の方向を示す。
【0029】
支持要素4は、挿入されるだけ、したがって細長いキャビティ310内に積極的に接続・保持された状態で横たわる。一体成型も接着も必要ない。積極的な接続により、支持要素4は適切に固定される。支持要素4は硬さの異なる材料で作られており、プラスチックやプラスチック複合材料が使用される。
【0030】
図3dに見られるように、キャビティ310は、直線的または曲線的、すなわち、この場合、その長さに沿って波状またはS字状、あるいはよりU字状にすることができる。これらの湾曲したキャビティ310は、ソールの長手方向軸Lまたは横方向Qに対して異なる角度で配向することもできるが、地面と実質的に平行に広がる水平面内にとどまり、したがって力の流れの平面に対して垂直である。ここでも、いくつかの垂直方向にオフセットされた平面を設けることができ、その中でキャビティ310が形成される。
【0031】
支持要素4は、矢印の方向に細長いキャビティ310に挿入される。波形の実施形態では、支持要素4は依然ねじれていてもよく、すなわち回転されてもひずんでいてもよい。
【0032】
靴1または靴底3のユーザが支持要素4を正しく配置するために、素早く参照できる説明書がセットと一緒に提供され得る。この中で、靴1の異なる用途のための支持要素4の配置が説明される。
【0033】
非常に柔らかい支持要素4が、衝撃方向に対して横方向に押し込まれたときに、両側に開いたキャビティ310の中で詰まってしまうのを防ぐために、セットは十分な長さの筒状の薄いストッキングを含み得る。挿入の前に、支持要素4はこのストッキングに包まれ、このストッキングは少なくとも一端で支持要素4を越えて突出している。この端部で、ストッキングはキャビティ310を通して引っ張られ、その他端は同時に保持される。これにより、支持要素4が伸びてその断面が狭くなり、詰まりが防止される。その後、ストッキングは切断される。
【符号の説明】
【0034】
1 靴
2 靴アッパー部分
3 靴底(足の下)
30 アウトソール層
300 アウトソール層外側形状
31 支持位置
310 キャビティ(直線、細長い:幅/高さより長い)
32 カバーソール層
4 支持要素(複数、完全、異なる硬さ/厚さ)
5 爪先
F 踵領域
L ソール長手方向軸
Q 横断方向
図1
図2
図3a-3c】
図3d
【国際調査報告】