IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジペベ システムの特許一覧

特表2022-536750ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置
<>
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図1
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図2
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図3
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図4
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図5
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図6
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図7
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図8
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図9
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図10
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図11
  • 特表-ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ねじ込み状態での係止を伴うねじ固定装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/32 20060101AFI20220810BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20220810BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
F16B39/32 Z
F16B37/00 B
F16B39/02 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021573796
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020066119
(87)【国際公開番号】W WO2020249629
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】1906293
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520317217
【氏名又は名称】ジペベ システム
【氏名又は名称原語表記】JPB SYSTEME
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】マルク,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】メサジェ,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】レ ベル,ロール
(57)【要約】
ナットは、回転作動リング(19)内部のカムプロファイルによって浮動端部が作動する係止顎部(14)を備える。顎部は、ナットの本体(11)から材料を除去することによって製造され、弾性屈曲変形によって係止状態から解放状態、及び係止状態から解放状態に移行する。顎部の内部の係止面(16)は、ナットの本体と同じねじ山を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補型ねじ山(7)と螺合するように意図されたねじ付き円筒面(12)を有する本体(11)と、
前記本体に少なくとも間接的に接続され、使用時に前記相補型ねじ山(7)に向かって回転する係止面(16)を側面(20)に有する少なくとも1つの顎部(14)であって、前記相補型ねじ山に係止当接するように構成され位置決めされ、前記本体に接続された取付け端部(17)と実質的に半径方向に浮動する端部(18)との間で、前記円筒面(12)の前記軸(10)に対して実質的に周方向である方向に延在する、少なくとも1つの顎部(14)と、
前記顎部(14)を、前記係止面(16)が前記相補型ねじ山(7)に係止圧力を加える係止状態と、相対的なねじ込み動作及びねじ込み解除動作の解放状態とに選択的に置くために、係止位置と解放位置との間で移動することが可能な作動要素(19)と
を備える、ねじ込み状態での係止を伴うねじ式締結装置であって、
前記作動要素は、前記ねじ付き円筒面(12)の前記軸(10)の周りに前記本体(11)に対して回転可能に取り付けられた作動リング(19)であることを特徴とするねじ式締結装置。
【請求項2】
前記作動要素(19)は、使用時に前記相補型ねじ山(7)に向けられた力を、前記顎部の前記係止面(16)とは反対方向を向く側面(15)に加えるように構成され、前記顎部の前記解放状態への戻りは弾性によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記作動要素(19)は屈曲することによって、前記顎部(14)を前記解放状態から前記係止状態に進行するように付勢することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも前記係止状態では、前記顎部の前記係止面(16)は前記顎部(14)と前記作動要素(19)との間の相互作用領域(21)よりも前記顎部の前記取付け端部(12)に近いため、前記顎部は前記係止状態にあるときに前記係止面(16)と前記相互作用領域(21)との間で曲げ歪みを受けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記顎部の前記取付け端部(17)は、前記本体(11)に強固に接続されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記顎部(14)及び前記本体(11)は、単一の材料片から作製され、前記顎部の前記取付け端部(17)で共に接続されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記顎部の前記係止面(16)は、前記ねじ付き円筒面(12)に属することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記作動要素(19)は、前記本体(11)に対して恒久的に接続されるか、又は工具を用いない限り分解されない方法で接続されて、使用時に前記本体から損失しないようにしてあることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記リング(19)は、前記顎部(14)を保護する保護カバーとして構成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記作動リング(19)は、保持リング(46)を用いて前記本体(11)に対して軸方向に保持されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記保持リングは、前記保持リングが前記本体(11)に対して回転しないように実質的に固定されるように、周方向の移動によって少なくとも一方の顎部(14)に当接するように成形された2つの端部(51)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記保持リング(46)は、前記本体(11)に対する軸方向位置決めのために、前記顎部(14)と前記本体(11)との間に配置された空隙(48)内に部分的に収容されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記保持リング(46)は、前記本体(11)及び前記作動リング(19)の一方に対して回転しないように固定され、前記本体及び前記作動リングの他方に設けられた少なくとも1つの凹部(53)と協働して前記本体(11)に対する前記作動リング(19)の角度移動を制限する少なくとも1つの突起(51)を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記凹部(53)は、前記突起(51)が硬質点効果を伴う前記保持リングの弾性によって進行することができる少なくとも1つのボス(54)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記作動リング(19)及び前記顎部(14)は、それぞれの共役カムプロファイル(25、26、27)を用いて相互作用することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記作動リング(19)及び前記顎部(14)の少なくとも一方のカムプロファイルは、前記ねじ付き円筒面(12)の前記軸(10)を中心とするそれぞれの楕円に属することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記共役カムプロファイル(25、26、27)は、係止位置と解放位置との間における前記作動リング(19)の移動のための硬質点を画定することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記係止位置と前記解放位置との間における前記作動要素(19)の移動は、少なくとも1つの硬質点を通過して、使用時に起こり得る振動及び慣性効果などの機械的励起に逆らって前記顎部(14)の前記係止状態を安定化させることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
望ましくない機械的励起に逆らって、前記作動要素(19)をその係止位置及び解放位置のそれぞれで安定化させる相互係止システム(41、42、43)を備えることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記相互係止システムは歯(43)を備え、前記歯は、この歯と協働して前記本体(11)に対する前記作動要素(19)の前記移動の範囲を定める2つのストッパ(41)の間で、及び前記歯(43)が硬質点効果を伴う弾性変形によって進行することができるボス(42)の前記2つのストッパの間で、変位することを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記係止位置及び前記解放位置への変位中に前記作動要素(19)の移動を制限する停止手段(28、43)を備えることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記停止手段は、前記顎部(14)の2つの端部の間に突出する前記作動要素(19)の少なくとも一つの肉厚部(28)を備えることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記作動要素(19)の位置を示す手段(44、45)を備えることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記締結装置はナットであることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記本体(11)は、前記ねじ付き円筒面(12)が内部に設けられた管状壁を含み、少なくとも1つの顎部(14)は、前記管状壁からの材料除去によって少なくとも部分的に画定されることを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記締結装置は、ねじ付き円筒面(12)を有する前記本体(11)と、前記少なくとも1つの顎部(14)と、前記作動要素(19)とを、単一の独立した組立体に組み込むことを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つの顎部は、前記ねじ付き円筒面(12)の前記軸(10)の周りに分布する幾つかの顎部(14)を備え、前記作動要素(19)は、すべての顎部に共通であることを特徴とする、請求項1~26のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に振動、慣性効果などの機械的励起の作用下における、偶発的なねじ込み解除に対抗する摩擦係止手段を含むねじ式締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、重大なリスクを伴うことの多い偶発的なねじ込み解除に逆らってねじ込み接続を固定することは好適である。これは、特に航空学の場合、具体的には間にタイヤが封入される着陸装置の各車輪の2つの車輪半体を組み立てるボルトに関する場合に当てはまる。
【0003】
特に独国特許出願公開第3935753号明細書、米国特許出願公開第2019/0048918号明細書、米国特許第6,036,236号明細書、及び国際公開第2009/001421号パンフレットによれば、個別の角度位置における係止のみを可能にするラッチ式の係止システムを具備したねじ式締結装置が知られている。特定の締付けトルクが推奨されるべき用途において、推奨トルクに対応する相対角度位置は、係止を可能にする個別の離散角度位置の1つに必ずしも対応しないため、これらの係止システムは適切ではない。
【0004】
摩擦係止手段を具備したねじ式締結装置は、この問題を防止する。ナットが締付け状態に達すると自動的に作用するナット係止ワッシャが知られている。ねじ付きボア内に係止手段を含むナット、又はねじ込み回転中に摩擦を発生させるために特に楕円形状に部分的に歪められるナットも知られている。これらの既知のシステムは、少ない回数の係止及び係止解除の後に急速に効力を失う。
【0005】
中国特許出願公開第105485129号明細書は、雌ねじ付きカラーによって軸方向に延在するナットを記載している。カラーは複数の軸方向ノッチによって、実質的に接線方向の軸を中心に撓むことが可能な幾つかの係止顎部に細分される。形状記憶リングは、カラーを取り囲み、或る温度条件下でボルトの周りでカラーを把持する。リングは、この機能を保証するために非常に大きな力を加えなければならない。
【0006】
独国特許出願公開第3320679号明細書は、同様であるが係止力が別個のカップにねじ込まれた内部円錐ブッシングによって提供される装置を、図94を参照して記載している。多数の追加部品が必要であり、係止操作は煩雑であり、ブッシングが緩むリスク、並びにブッシング及びカップの損失は回避されていないように思われる。
【0007】
独国特許出願公開第102017213047号明細書は、ナット本体内ではなく、別個の変形可能なブッシング内にある雌ねじを提供している。係止のために、横方向ボルトは変形可能なブッシングを半径方向に付勢する。これらの係止手段は、ねじ込み装置の完全な再設計を必要とし、横方向ボルトの緩みを排除しない。
【0008】
米国特許出願公開第2019/0120279号明細書は、変形可能なブッシングを有する他の装置を記載している。
【0009】
米国特許出願公開第2016/0229226号明細書は、ボルトによって組み立てられた2つの車輪半体から成る着陸装置車輪を例示している。接続は、ボルトの横方向の穴を通過するねじ山又はワイヤによって固定される。
【0010】
英国特許出願公開第332463号明細書は、相補型ねじ山に当接するように構成され位置決めされた係止顎部が、本体に接続された取付け端部と半径方向に浮動する端部との間で、係止軸に対して実質的に周方向である方向に延在する、係止を伴うねじ式締結装置を記載している。
【0011】
本発明は、
■相補型ねじ山と螺合するように意図されたねじ付き円筒面を有する本体と、
■前記本体に少なくとも間接的に接続され、使用時に前記相補型ねじ山に向かって回転する係止面を側面に有する少なくとも1つの顎部であって、前記相補型ねじ山に係止当接するように構成され位置決めされ、前記本体に接続された取付け端部と実質的に半径方向に浮動する端部との間で、前記円筒面の前記軸に対して実質的に周方向である方向に延在する、少なくとも1つの顎部と、
■前記顎部を、前記係止面が前記相補型ねじ山に係止圧力を加える係止状態と、相対的なねじ込み動作及びねじ込み解除動作の解放状態とに選択的に置くために、係止位置と解放位置との間で移動することが可能な作動要素と
を備える、ねじ込み状態での摩擦係止を伴うねじ式締結装置に関する。
【0012】
このような装置は、独国実用新案第202013006947号明細書から知られている。実質的に周方向である1つ又は複数の顎部は、合理的な力で操作可能であり、ねじ山に有効な係止力を加えながら、軸方向に非常に小さな全体サイズを有することができる。
【0013】
本発明の目的は、数回のねじ込み/ねじ込み解除の後でも確実な係止を保証すること、使用が簡単であること、適度な作動力を実装すること、ねじ込み接続自体又はこの締結を使用して締結される要素の特別な設計を必要としないこと、損失するリスクのある部品又は付属品を必要としないこと、ねじ山を損傷しないこと、相補型ねじ山を支持する要素の修正を必要としないこと、及び締結装置の重量及び寸法に対する影響を最小限に抑えること、という目的を少なくとも部分的に満たす、ねじ込み状態での摩擦係止を保証するねじ式締結装置を提案することである。
【0014】
本発明によれば、締結装置は、作動要素が、ねじ付き円筒面の軸の周りで本体に対して回転可能に取り付けられた作動リングであることを特徴とする。したがって、作動リングの単純な回転は、締結装置を係止状態、又は逆に解放状態に置くことを可能にする。
【0015】
一変形例において、作動要素は、使用時に相補型ねじ山に向けられた力を、顎部の係止面とは反対方向を向く側面に加えるように構成され、解放状態にある顎部の戻りは弾性によって行われる。
【0016】
一実施形態によれば、作動要素は屈曲することによって、顎部を解放状態から係止状態に進行するように付勢する。本発明に係る周方向顎部は、特に、上述の或る先行文献の軸方向舌部よりもはるかに小さな耐屈曲性に対抗する。
【0017】
好適な実施形態において、少なくとも係止状態では、顎部の係止面は顎部と作動要素との間の相互作用領域よりも顎部の取付け端部に近いため、顎部は係止状態にあるときに係止面と相互作用領域との間で曲げ歪みを受ける。したがって、係止のために所望される付勢力に対して必要とされる作動力を減少させる、顎部に対する好適なレバー効果が生じる。また、作動要素と係止面との間の曲げ歪み(又は屈曲)領域は、係止面と相補型ねじ山との間の圧力を制限するのに役立つ。これにより、締結装置が保護される。
【0018】
非限定的であるが、好ましくは、顎部の取付け端部は本体に強固に接続される。一変形例において、顎部及び本体は、単一の材料片から生じ、顎部の取付け端部で共に接続される。したがって、実施形態を特に堅牢にしながら、製造は単純化される。
【0019】
一実施形態において、顎部の係止面は、ねじ付き円筒面に属する。したがって、係止状態において、係止面は相補型ねじ山と完全に一致する。
【0020】
好ましくは、メンテナンス作業を容易にし、より信頼性の高いものにするために、作動要素は、恒久的に、又は工具を用いない限り分解されない方法で本体に接続される。したがって、作動要素は、使用時に本体から損失することはない。
【0021】
リングは、好ましくは、少なくとも1つの顎部を保護する保護カバーとして構成される。
【0022】
一実施形態において、リングは、保持リングを用いて本体に対して軸方向に保持される。この配置は、全体サイズの点で好適である。また、リングの分解を可能にする保持リングへの接近は隠されるか又は不可能であるため、本発明に係る締結装置から予想される安全性に有害な介入、特に分解が回避される。
【0023】
本体に対する軸方向位置決めのために、保持リングが、顎部と本体の残りの部分との間に配置された空隙内に部分的に収容されるように提供することができる。この解決策は、機械加工及び空間要件の点で好適である。
【0024】
一変形例において、保持リングは、本体及びリングの一方に対して回転しないように固定され、本体及びリングの他方に設けられた少なくとも1つの凹部と協働して本体に対するリングの角度移動を制限する少なくとも1つの突起を含む。この解決策によって、保持リングが、作動リングの軸方向の固定と、その回転移動の制限とを提供することが可能になる。本変形例の好適な発展形態によれば、凹部は、硬質点と同様に、突起が弾性によって進行することができる少なくとも1つのボスを含む。この硬質点は、振動又は他の外乱によって引き起こされる偶発的な動きの場合に、本体に対する作動リングの角度位置を安定化させる。
【0025】
好ましくは、作動リング及び顎部は、それぞれの共役カムプロファイルを用いて相互作用する。この作用様式は、方向及び強度の点で、係止に必要な力の発生を容易にする。
【0026】
一変形例において、作動リング及び顎部の少なくとも一方のカムプロファイルは、円筒面の軸を中心とするそれぞれの楕円に属する。
【0027】
別の変形例又は同じ変形例において、共役プロファイルは、係止位置と解放位置との間の作動リングの移動のための硬質点を画定する。
【0028】
作動要素の移動におけるそのような硬質点の有用性は、一般的な用語で上述されている。硬質点は、既に開示されたものに加え、様々な方法で作ることができる。
【0029】
一般的かつ非限定的に、変位中の作動要素の動きを制限し、作動要素が係止位置及び解放位置を占めることを可能にする停止手段を設けることは好適である。好適には、これらの停止手段は、2つの顎端部の間に突出する作動要素の肉厚部を備えることができる。ここでの目的は、過剰な作動力が作動要素をその通常の移動を超えて駆動する操作誤差を根本的に防止することである。
【0030】
さらに一般的かつ非限定的に、装置は、好適には作動要素の位置を示す手段を備える。
【0031】
一変形例において、装置は、作動要素を本体に対して係止位置及び解放位置のそれぞれに固定する相互係止システムを備える。これは、作動要素を望ましくない機械的励起に逆らって安定化させて、位置の自発的な変化を回避したり、誤動作を示唆することが可能な関連する方法でその振動を回避したりする場合に当てはまる。一実施形態において、相互係止システムは、2つのストッパ間で変位する歯と、2つのストッパ間における、歯が弾性変形によって進行することができるボスとを備える。これは、機能が既に上述された硬質点を生成する別の方法を構成する。作動要素の係止位置及び解放位置において、歯は、上述のストッパとボスとの間に固定される。
【0032】
典型的には、締結装置はナットである。
【0033】
一実施形態において、本体は、ねじ付き円筒面が内部に設けられた管状壁を含み、少なくとも1つの顎部は、前記管状壁からの材料除去によって少なくとも部分的に画定される。
【0034】
非限定的であるが、好ましくは、締結装置は、ねじ付き円筒面を有する本体と、少なくとも1つの係止要素と、制御要素とを、単一の独立した組立体に組み込む。このようにして生成された本発明に係る装置は、ねじ込み後に作動要素を係止位置に、又はねじ込み解除前に解放位置に置く必要性を除いて、従来の締結装置のように使用される。複雑な操作は必要なく、追加の組立ては行われない。
【0035】
一変形例において、少なくとも1つの顎部は、ねじ付き円筒面の軸の周りに分布する幾つかの顎部を備える。作動要素は、すべての顎部に共通である。
【0036】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な実施例を参照して、以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る締結装置を使用するボルト締め接続部の部分軸方向断面図である。
図2】本発明に係るナットの第1の実施形態の斜視図である。
図3】2つの顎部を有する、図2のナットの本体の斜視図である。
図4】作動リングの部分断面を有する、図2のナットの部分斜視図である。
図5】解放状態にある、軸線に垂直な断面におけるナットの半図である。
図6図5と同様であるが係止状態にある図である。
図7】本発明の第2の実施形態の部分斜視図である。
図8】2つの相異なる軸方向平面に沿った断面における第3の実施形態の部分図である。
図9】本発明に係るナットの第4の実施形態の部分斜視図である。
図10図9のナットの分解斜視図である。
図11】解放状態にある図9のナットを例示する軸方向線図である。
図12図11と同様であるが係止状態を例示する図である。
【0038】
以上及び以下の説明は、記載された特定の特徴及び特定の組合せだけでなく、多かれ少なかれ一般化された特徴又は特徴の組合せを含むと理解されるべきであり、そのような特徴又は特徴の組合せが本発明特有の特徴を与えることができ最新技術に関して提起された問題を解決することが可能であるならば、句又は段落の残りの部分とは無関係に、句又は段落の一又は複数の部分から引き出されてもよい。
【0039】
図1に示す実施例において、部分的に図示されている2つの部品1、2は、接合平面3に対して横方向に延在する締結具4(一方のみが図示されている)を用いて、接合平面3内で互いに当接して組み立てられる。各締結具4は、頭部6及びねじ山7を有するボルト5と、「相補型ねじ山」 と称されるねじ山7にねじ込まれるナット8とを備える。ナット8は、ボルト5の自由端部に近接して相補型ねじ山7と協働する係止手段9を具備する。参照符号10は、ボルト5とナット8とに共通する軸を指す。ボルト5は、この種の用途のための標準ボルトであり、僅かな軸方向長さが任意に追加されることを除いて、ナットを係止するための特定の手段を含まない。したがって、係止手段9の構造及び製造は、ボルトに利用可能な限られた軸方向長さによって制約される。
【0040】
図2図6の実施例において、係止手段9を具備したナット8は、図1の相補型ねじ山7に螺合するように意図されたねじ付き円筒形内面12を有する環状本体11を備える。本体11は、その外周に、ねじ込み及びねじ込み解除中に回転して作動するための工具(不図示)用の嵌合構造13を有する。
【0041】
係止手段9は、本体11に接続されており使用時に側面15が相補型ねじ山に向かって回転する2つの顎部14を備え、係止面16は、相補型ねじ山7に選択的に摩擦係止当接するように構成され位置決めされる。顎部14は、ねじ付き円筒面12の軸10の周りに規則的に分布している。顎部14は、それらの係止面16が相補型ねじ山7に係止当接する係止状態になることができ、これにより、振動、慣性効果、車輪への負荷反転、及び熱応力の変化などの望ましくない励起の影響下でボルト5とナット8とが互いに対して回転するのが防止される。顎部14はまた、相補型ねじ山7に対する係止面16の圧力が実質的に取り消される解放状態になることもでき、これにより、ボルト5及びナット8に対する自由な回転が可能になる。
【0042】
本発明によれば、各顎部14は、本体11に接続された取付け端部17と、実質的に半径方向に浮動する端部18との間で、円筒面12の軸10に対して実質的に周方向に延在する。顎部は互いに同一であり、すべての顎部は、それらの取付け端部17から始まる同じ周方向に配向されている。本実施例において、各顎部の取付け端部17は、ナットの本体11に強固に接続されている。特に一変形例において、顎部及び本体は図3に示されるように、単一の材料片から生じ、顎部の取付け端部17で共に接続される。解放状態と係止状態との間における顎部の状態の変化は、顎部自体の曲げ弾性によって、その取付け端部17とその浮動端部18との間で許容される。
【0043】
図示の好ましい実施例において、係止面16はねじ付き円筒面12に属する。したがって、係止状態において、係止面16は相補型ねじ山7と完全に一致することができ、損傷を与えることがない。解放状態において、係止面16は、ねじ付き円筒面12と同じ運動学的ねじ込み及びねじ込み解除の関係を有して相補型ねじ山上を摺動する。
【0044】
係止手段9はまた、顎部14を相対的なねじ込み及びねじ込み解除動作の係止状態と、相対的なねじ込み及びねじ込み解除動作の解放状態とに選択的に置くために、係止位置と解放位置との間で移動することが可能な作動要素19を備える。
【0045】
図示の変形例において、作動要素は、顎部の係止面16とは反対方向を向く側面20に設けられた各顎部14の相互作用領域21に、使用時に相補型ねじ山7に向けられて係止状態を生じる力を加えるように構成される。顎部14の解放状態への戻りは、弾性によって生じる。本実施例において、解放状態は、顎部14の静止状態である。顎部の係止状態から解放状態への戻りを保証する弾性は、顎部の曲げ弾性である。
【0046】
少なくとも係止状態において、顎部14の係止面16は、図3の右側の顎部の観察によって明確に示されるように、相互作用領域21よりも顎部の取付け端部17に近い。したがって、係止状態において顎部は、係止面16と相互作用領域21(図6)との間で曲げ歪みを受ける。したがって、係止面16と相補型ねじ山7との間の所望の付勢力のために作動要素19によって顎部14に加えられる力を減少させる好適なレバー効果が生じる。また、作動要素19と係止面16との間の曲げ歪み領域は、係止面16と相補型ねじ山7との間の圧力を制限するのに役立つ。上述の圧力制限は、それがなければ操作不良に起因して作動要素19に加えられ得る過剰な力から締結装置全体を保護する。
【0047】
本実施例において、作動要素19は、ねじ付き円筒面12の軸10の周りで本体11に対して回転可能に取り付けられた作動リングである。作動リング19は、顎部14の保護カバーとして構成される。顎部は環状ハウジング22を占め、その基部は本体11によって画定され、その外周は作動リング19の周壁23によって画定され、その天井は作動リング19の上部カラー24によって画定される。
【0048】
作動リング19及び顎部14は、それぞれの共役カムプロファイル25、26、及び27を用いて相互作用する(図5及び図6)。
【0049】
本実施例(図5及び図6参照)において、作動リングのカムプロファイルは、各顎部14に対してボス25を含む。顎部の解放状態に対応する解放位置(図5)において、各ボス25は、それぞれの顎部14の相互作用領域21の溝26に対向している。したがって、顎部は、弾性回復によってそれらの解放状態をとることを許容されて、ねじ込み及びねじ込み解除を可能にする。顎部の係止状態に対応する係止位置(図6)において、ボス25は、各顎部の浮動端部18の近くに設けられたボス27に当接する。したがって、顎部は、顎部の係止面16が相補型ねじ山7上の係止当接位置をとるように、相補型ねじ山7に向かって付勢される。
【0050】
共役カムプロファイル25、26、及び27は、係止位置と解放位置との間における作動リング19の移動のための硬質点を画定する。図6に示すように、作動リングは、リングの内部ボス25が顎部14のボス27の頂点を僅かに超えたときにのみ、係止位置に達する。これにより、振動及び他の機械的外乱に逆らって係止状態が安定化する。
【0051】
一実施形態において、装置は、係止位置と解放位置との間における作動要素19の移動を制限する停止手段を備える。図2図6の実施例において、作動リング19はその内側側壁に、顎部の間に周方向に挿入された肉厚部28を含む。肉厚部28は、解放状態では顎部の浮動端部18に当接し、係止状態では顎部14の取付け端部17に当接する。これらの肉厚部は、作動要素19をその係止位置及び解放位置の一方又は他方を超えて変位させることからなる動作エラーを防止する。
【0052】
図3を観察することによって理解され得るように、本体11及び顎部14は、本体11及びタップ付き軸方向管状延長部を含むブランクから出発して単一部品から製造することができ、次いで管状延長部内の材料を除去して、顎部14のみを、材料のブリッジ29によって本体11に取り付けたままにする。上述のように、顎部の係止面16を取付け端部17(図3及び図4)に近い領域に制限するために、フライス加工30により顎部の内面をくり抜く。
【0053】
一変形例において、作動リング19は、作動リングの2つの角度位置、すなわち係止位置と解放位置との間で本体11に対して作動リング19を回転させるために使用することが可能な回転工具用の嵌合手段31(図2)を有する。本実施例において、嵌合手段は、本体11とは反対方向を向いて形成された切欠き部の形態の2つの嵌合構造31を備える。
【0054】
一変形例において、締結装置は、ねじ付き円筒面12を有する本体11と、少なくとも1つの顎部14と、作動要素19とを、単一の独立した組立体に組み込む。この目的のために、作動リング19は、図2図5には示されていない方法で本体11に対して軸方向に固定されるが、その実施例は以下の各図を参照して示される。
【0055】
一変形例において、作動要素19は、本体11に対して恒久的に接続されるか、又は工具を用いない限り分解されない方法で接続されて、使用時に本体から損失しないようにしてある。
【0056】
解放位置から係止位置への作動リング19の回転方向は、好適にはナットのねじ込み方向であるため、ねじ込み後に係止状態に進行するときに、リングの作動がナットを緩める傾向を回避する。
【0057】
図2図6の実施形態との相違点のみ説明される図7の実施形態は、作動要素19が作動していないときに作動要素の位置を安定化させ、特に、作動要素が解放位置と係止位置との間で一方向又は他方向に作動していないときに小さな移動を通して視認される遊びを有する作動要素を回避するための相互係止手段を含む。
【0058】
この目的のために、本体11は、2つのストッパ41と、2つのストッパ41の中間に配置されたボス42とを有する。作動要素19は歯43を有する。作動要素19の係止位置及び解放位置のそれぞれにおいて、歯43は、ボス42と、ストッパ41の一方との間に固定される。作動要素が上述の位置の一方から他方に変位すると、歯43は硬質点効果を伴って弾性的に撓んでボス42を通過し、次いでボス42と他方のストッパ41との間で相互係止する。
【0059】
相互係止手段が設けられると、作動リング19及び顎部14の共役カムプロファイル25、26、及び27(図5及び図6)が硬質点機能を提供する必要は無くなる。しかしながら、高い力又はトルクの下で発生しやすい動作エラーを防止する肉厚部28などの中実ストッパは、好ましくは維持される。
【0060】
図示の実施形態において、歯43は外側から視認される。その位置は、締結装置の係止状態又は解放状態を示す。本体11は、2つの可能な位置にラベル付けするレジスタマーク44、45を有する。
【0061】
図2図6の実施形態との相違点のみ説明される図8の実施形態は、本体11に対する作動リング19の軸方向固定の一例である。開放された弾性保持リング46は、作動リング19の内壁の周辺スロット47に挿入される。同時に、保持リングは、本体11と顎部14との間の空隙48に挿入される(図8の右側部分を参照)。空隙48を遮断する顎部の取付け端部17は、スロット47の向かい側に、保持リングも受けるスロット49(図8の左側部分)を含む。
【0062】
保持リング46は開放しているため、2つの端部51を含む。好ましくは、保持リングが本体11に対して回転しないように実質的に固定されるように、2つの端部51は、2つの顎部の間の周方向間隔に位置し、周方向の移動に関して2つの顎部に当接するように成形される。
【0063】
以上の実施形態との違いのみ説明される図9図12の実施形態において、保持リング46は、前述のように作動リング19の周壁の内面の周辺スロット47に収容される。しかし、このスロットはこのとき、顎部14に形成された周辺スロット52に面して位置する。このとき、保持リングの端部51はまた、作動リング19の凹部53内で半径方向外側に突出している。したがって、凹部53の周方向寸法は、本体11に対する作動リング19の角度移動を制限する。凹部53は、嵌合端部51が保持リング46の弾性によって進行することができる少なくとも1つのボス54を含み、この進行は硬質点効果を生じる。
【0064】
図9の実施形態において、作動リング19の外周は、本体11の回転嵌合構造プロファイル13と同じ回転嵌合構造プロファイル61を含む。解放状態において前記嵌合構造は、回転工具と同時に嵌合するように軸方向に対応することが保証される。
【0065】
本実施形態において、図11及び図12に示すように、作動リング19及び顎部14のカムプロファイルは、軸10を中心とするそれぞれの楕円に属する。本体11において、したがってより具体的にはここでは顎部14において、楕円の長軸は、顎部の浮動端部18を実質的に通過する。これらの楕円の長径と短径との差は、例えば1mmである。図11において、長軸は重ね合わされており、これにより、顎部が解放状態になることが可能になる。図12において、作動リング19の短軸は、長軸上に位置する浮動端部18に近づけられており、これにより顎部が圧縮されて係止状態になっている。
【0066】
本実施形態において、係止は、係止面の真後ろの顎部に加わる力によって画定される。係止面と、作動リングと顎部との相互作用領域との間に周方向距離は存在しなくなる。最適な力は、作動リング19に加わる所定のトルクに対応する。保持リング46の端部51が移動するボス面(図9のボス54)のために、係止状態にある作動リングの最適な角度位置は、前記位置にかかわらず安定化する。
【0067】
本実施形態において、顎部を半径方向に薄くすることができ、これにより、作動リング19を半径方向に厚くすることができる。この厚さにより、比較的深く作動要素19の動きをより効果的に制御する凹部53の生成が容易になる。
【0068】
もちろん、本発明は記載され図示されている実施例に限定されない。
【0069】
異なる実施形態の特徴は、他の組合せをもたらすことができる。
【0070】
例えば、単一のボス54のみを含み、硬質点効果によって、明確に決定された角度係止位置及び角度解放位置を分離する53などの凹部と組み合わせて図9の保持リング46を使用することも可能であり、その全体は、図2図6のタイプの顎部と組み合わせて使用されるが、必ずしも硬質点効果を生じるとは限らない共役カムプロファイルを介して作動する。
【0071】
図1図8の実施形態の作動要素19は、図9図12の61などの嵌合構造を含むことができ、逆に、図9図12の作動要素19は、図1図8の31などの嵌合構造を含むことができる。嵌合構造の他の実施形態も可能である。
【0072】
記載されているように関連付けられているかその他の方法で関連付けられているか、又は関連付けられていない相互係止システム41~43及び/又はレジスタマーク44、45は、様々な方法で生成することができ、すべての実施形態に適用可能である。
【0073】
係止装置は、ナット以外のねじ付き部に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】