(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】クラスター化粒子を分離するためのろ過ベースのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/06 20060101AFI20220810BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220810BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20220810BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20220810BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20220810BHJP
【FI】
C12M3/06
C12M1/00 A
C12N1/02
C12N5/00
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574907
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020038083
(87)【国際公開番号】W WO2020257247
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】サリオール、アリ ファティ
(72)【発明者】
【氏名】ボヤ、メルト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029FA05
4B029HA06
4B065AA93X
4B065BD18
4B065CA46
(57)【要約】
開示の技術の一実施の形態は、クラスター化粒子を分離するための装置を提供する。当該装置は、流体を受け入れるように構成された入口と、当該流体を出力するように構成された出口とを含むことができる。流体は、複数の非クラスター化粒子と複数のクラスター化粒子とを含むことができる。当該分離装置は、複数のマイクロウェルを含むことができる。各マイクロウェルは、複数の側壁と、メッシュ状捕捉領域を有する底面とを有することができる。当該メッシュ状捕捉領域は、当該複数のクラスター化粒子を捕捉しつつ、当該非クラスター化粒子を通過させることができる。当該出力される流体は、当該複数の非クラスター化粒子を含むことができ、また当該複数のクラスター化粒子を実質的に含まないようにすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラスター化粒子を分離するための装置であって、
複数の非クラスター化粒子と複数のクラスター化粒子とを含む流体を受け入れるように構成された入口と、
複数のマイクロウェルであって、それぞれが、複数の側壁と、前記複数のクラスター化粒子を捕捉し、かつ前記複数の非クラスター化粒子を通過させるように構成されたメッシュ状捕捉領域を有する底面とを含むマイクロウェルと、
前記流体を出力するよう構成された出口であって、出力される流体が、前記複数の非クラスター化粒子を含み、かつ前記複数のクラスター化粒子を実質的に含まないような、出口と、を備える、装置。
【請求項2】
前記流体は血液であり、前記非クラスター化粒子は非クラスター化細胞を含み、前記クラスター化粒子は細胞クラスターを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体は尿であり、前記非クラスター化粒子は非クラスター化細胞を含み、前記クラスター化粒子は細胞クラスターを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記入口および前記出口を約20mL/h~約100mL/hで通過する体積流量を提供するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各マイクロウェルの深さは、約10ミクロン~約500ミクロンである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
各側壁の少なくとも一部は傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は1平方ミリメートルあたり約40個~約280個のマイクロウェルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記メッシュ状捕捉領域は複数の隔壁線を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の隔壁線は複数の開口を画定する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の開口は、前記流体の流れを複数の流路に分割する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の開口は、アレイ状に配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の開口における各開口は、前記非クラスター化粒子が当該開口を通過し、前記クラスター化粒子が当該開口を通過しないようなサイズである、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の開口における各開口は、正方形状である、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の開口における各正方形状の開口は、約10ミクロン~約17ミクロンの辺の長さを有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の開口における各開口は、円形状である、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記複数の開口における各開口は、長円形状である、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記複数の開口における各開口は、多角形状である、請求項9に記載の装置。
【請求項18】
前記複数の開口における各開口は、同じ形状である、請求項9に記載の装置。
【請求項19】
前記クラスター化粒子はラベルなしである、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記クラスター化粒子はラベルありである、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は約5ミリメートル~約300ミリメートルの直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記装置はフッ素系ポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記装置はパーフルオロポリエーテル系ポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記装置はUV硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記装置は金属を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記装置は半導体を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
クラスター化粒子を分離するための装置を作製する方法であって、
シリコンウェハ上にシリコンモールドを作製することと、
ポリマーモールドを作製することと、
前記分離装置を作製することと、
分離装置を取り外すことと、を含む、方法。
【請求項29】
前記シリコンウェハ上に前記シリコンモールドを作製することは、
前記シリコンウェハ上に第1のフォトレジスト層を堆積させることと、
前記第1のフォトレジスト層をパターニングすることと、
前記シリコンウェハをエッチングして複数のピラーを形成することと、
前記シリコンウェハ上に窒化物層を堆積させることと、
第2のフォトレジスト層を堆積させることと、
前記第2のフォトレジスト層と前記窒化物層とをパターニングすることと、
前記シリコンウェハをエッチングして、前記複数のピラーにおける各ピラーへと延びる傾斜側壁を形成することと、
第3のフォトレジスト層を堆積させることと、
前記第3のフォトレジスト層をパターニングすることと、
前記シリコンウェハをエッチングして、前記シリコンモールドを形成することと、を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーモールドを作製することは、
前記シリコンウェハをシランで被覆することと、
前記シリコンウェハ上に第1のポリマー層を堆積させることと、
前記第1のポリマー層を硬化させて第1のポリマーモールドを形成することと、
前記シリコンウェハから前記該第1のポリマーモールドを取り除くことと、
前記第1のポリマーモールドをシランで被覆することと、
前記第1のポリマーモールド上に第2のポリマー層を堆積させることと、
前記第2のポリマー層を硬化させて前記第2のポリマーモールドを形成することと、を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のポリマー層および前記第2のポリマー層は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーモールドを作製することは、前記第1のポリマーモールドから前記第2のポリマーモールドを取り除くことをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記分離装置を作製することは、
前記第2のポリマーモールドを基板に貼り付けることと、
前記第2のポリマーモールドにUV硬化性ポリマーを充填することと、
前記UV硬化性ポリマーをUV光に露光させることと、
前記UV硬化性ポリマーを硬化させることと、を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
真空ポンプを用いて前記第2のポリマーモールドに前記UV硬化性ポリマーを充填する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記基板は、ビニルダイシングテープである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記基板は、アセテートシートである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記基板は、PETシートである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記熱硬化性ポリマーを前記第2のポリマーモールドに充填することは、熱電冷却器上で行う、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記UV硬化性ポリマーは、熱硬化性ポリマーである、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記分離チップを取り外すことは、
前記第2のポリマーモールドを取り除くことと、
前記基板から前記分離チップを取り除くことと、を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
クラスター化粒子を分離するための方法であって、
それぞれが複数の側壁とメッシュ状捕捉領域を有する底面とを有する複数のマイクロウェルを含む分離装置を提供することと、
複数のクラスター化粒子と複数の非クラスター化粒子とを含む流体を、前記分離装置に通すことと、
前記複数のクラスター化粒子を前記メッシュ状捕捉領域内で捕捉することと、
前記複数の非クラスター化粒子を含む流体を出力することと、を含む、方法。
【請求項42】
前記流体は血液であり、前記非クラスター化粒子は細胞であり、前記クラスター化粒子は細胞クラスターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記流体は尿であり、前記非クラスター化粒子は非クラスター化細胞を含み、前記クラスター化粒子は細胞クラスターを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記分離装置をろ過ホルダー内に位置決めすることをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記流体を前記分離装置に通すことは、約20mL/h~約100mL/hの流量で行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記出力された流体は、クラスター化粒子を実質的に含まない、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記クラスター化粒子を前記メッシュ状捕捉領域から回収することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記クラスター化粒子を前記メッシュ状捕捉領域から回収することは
前記クラスター化粒子をPBSで洗浄することと、
前記クラスター化粒子を保持容器に移し替えることと、を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
マイクロマニピュレーターが直接前記メッシュ状捕捉領域から前記クラスター化粒子を回収する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記クラスター化粒子を分析することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記クラスター化粒子は、循環腫瘍細胞クラスターを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記クラスター化粒子は、尿中の剥離した癌細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記分離装置を増殖培養液で被覆することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
前記捕捉されたクラスター化粒子は前記被覆された分離装置上で成長する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
当該成長させたクラスター化粒子を前記被覆された分離装置上で直接分析することをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記分離装置を無機材料で被覆することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項57】
前記分離装置を有機材料で被覆することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項58】
請求項1の装置を用いて血液の未処理サンプルをろ過する方法。
【請求項59】
請求項1の装置を用いて血液のサンプルをインラインでろ過する方法。
【請求項60】
請求項1の装置を用いて血栓を検出する方法。
【請求項61】
請求項1の装置を用いてクラスター化粒子を解離させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年6月17日に出願された米国仮特許出願第62/862,211号に対する優先権、および米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、その全体が、参照により、以下に完全に記載されているかのように、ここに組み込まれるものとする。
【0002】
(技術分野)
開示の技術は、一般に、流体中のクラスター化粒子を分離するシステムおよび方法に関し、より詳細には、流体中のクラスター化粒子を、速い体積流速で、当該クラスター化粒子を解離させることなく分離するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌患者の血流から濃縮された循環癌細胞クラスター(CTCクラスター)などのクラスター化粒子は、病期に関する貴重な情報を提供し、低侵襲な予後や診断を可能にし、転移の理解を深め、ひいては癌治療の向上に一役買うことができる。
【0004】
特に、CTCクラスターの転移傾向は、単一のCTCに比べて最大で100倍にもなる。この高い転移傾向は、アポトーシスの減少や生存属性の延長に関連している可能性がある。さらに、進行した乳癌患者においては、CTC-好中球クラスターは、転移の可能性を高める可能性があり、好中球が取り込んだCTCクラスターは、増殖マーカータンパク質(Ki67)や細胞周期進行に関連する遺伝子の、高い発現レベルを示す。臨床試験では、CTCクラスターの存在は、患者の無増悪生存期間および全生存期間の短縮と関連することが示されている。
【0005】
クラスター化粒子は、単一CTCなどの単一細胞を検出するために設計された既存の分離技術を用いて検出することができるが、既存の分離技術では、クラスター化粒子を捕らえるための感度および特異性が低い場合がある。精密ろ過技術は単純な場合もあるが、この技術は特定のクラスター化粒子の濃縮には適さない場合がある。例えば、CTCクラスターは、特に従来のろ過ベースのシステムで一般的に用いられる高圧において、流体力学的抵抗を低減する単一ファイルのチェーンのような構造として再編成することにより、小さなくびれを通過できる。さらに、多くの場合、ろ過システムにおける高いせん断力は、クラスター化粒子を単一細胞に解離させるため、効率的な濃縮ができない。また、抗体ベースの濃縮システムを単一細胞やクラスター化粒子の分離に用いることができる。しかし、この技術は、特定の細胞表面抗原に依存するため、異質なCTC単細胞やクラスターを分離しようとする際には困難な場合がある。CTCクラスターは表面積と体積の比率が小さいため、これらの抗体ベースの技術では捕捉効率に悪影響を与え、CTCクラスター濃縮のプラットフォームとしては非効率的なものとなる。
【0006】
また、改良した決定論的横方向変位(DLD)法を用いることにより、全血からCTCクラスターを分離するための2段連続流マイクロ流体チップが開発された。しかし、この技術ではスループットが2.5mL/h未満と低くなることがある。このような低スループットでは、クラスターが極端に少ないために大量の血液を処理する必要がある臨床アプリケーションでの使用が制限される可能性がある。さらに、この技術では、癌患者に観察されるCTCクラスターの大部分を占める、比較的小さな2、3個の細胞のクラスターを分離することができない。非平衡慣性分離アレイ(NISA)では、競争力のある流速での運用が可能である。しかし、マイクロ流路のサイズの制限により、5~6個以上の細胞からなる細胞クラスターは高いせん断応力を受けやすく、この比較的大きなクラスターに、損傷や解離を引き起こす可能性がある。最後に、患者のサンプルで観察される著しく大きなクラスターは、マイクロ流路の目詰まりにつながる可能性がある。
【0007】
したがって、クラスター化粒子を解離させることなく速い体積流速で分離するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、流体のサンプルからクラスター化粒子を分離するための装置に関する。分離装置は、メッシュ状捕捉領域を備える底面を有する複数のマイクロウェルを含むことができる。メッシュ状捕捉領域は、1つまたは複数の隔壁線を用いて複数の開口に分割することができる。非クラスター化粒子とクラスター化粒子とを含む流体のサンプルを分離装置に通すと、流体をマイクロウェルに注ぎ込むことができる。当該開口は、非クラスター化粒子が当該開口を通過し、当該クラスター化粒子が当該メッシュ状捕捉領域内で捕捉されるようなサイズとすることができる。当該クラスター化粒子は、捕捉すると、当該メッシュ状捕捉領域から回収し、分子・機能解析を行うことができる。
【0009】
開示の技術は、クラスター化粒子を分離するための装置を含むことができる。当該装置は、流体を受け入れるように構成された入口と、複数のマイクロウェルと、当該流体を出力するように構成された出口とを含むことができる。流体は、複数の非クラスター化粒子と複数のクラスター化粒子とを含むことができる。各マイクロウェルは、複数の側壁と、メッシュ状捕捉領域を有する底面とを含むことができる。当該メッシュ状捕捉領域は、当該複数のクラスター化粒子を捕捉し、当該複数の非クラスター化粒子を通過させるように構成することができる。出力される流体は、当該複数の非クラスター化粒子を含むことができ、また当該複数のクラスター化粒子を実質的に含まないようにすることができる。
【0010】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該流体は血液であってもよく、当該非クラスター化粒子は非クラスター化細胞を含むことができ、クラスター化粒子は細胞クラスターを含むことができる。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該流体は尿であってもよく、当該非クラスター化粒子は非クラスター化細胞を含むことができ、当該クラスター化粒子は細胞クラスターを含むことができる。
【0012】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置は、入口および出口を約20mL/h~約100mL/hで通過する体積流量を提供するように構成することができる。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、各マイクロウェルは、約10ミクロン~約500ミクロンの深さを有することができる。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、各側壁の少なくとも一部を傾斜させることができる。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置は1平方ミリメートルあたり約40個~約280個のマイクロウェルを含むことができる。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該メッシュ状捕捉領域は、1つまたは複数の隔壁線を含むことができる。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該1つまたは複数の隔壁線は、複数の開口を画定することができる。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口は、当該流体の流れを複数の流路に分割することができる。
【0019】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口は、アレイ状に配置することができる。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、当該非クラスター化粒子が当該開口を通過でき、当該クラスター化粒子が当該開口を通過できないようなサイズとすることができる。
【0021】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、正方形状とすることができる。当該複数の開口における各正方形状の開口は、約10ミクロン~約17ミクロンの辺の長さを有することができる。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、円形状とすることができる。
【0023】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、長円形状とすることができる。
【0024】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、多角形状とすることができる。
【0025】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該複数の開口における各開口は、同一の形状とすることができる。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該クラスター化粒子はラベルなしとすることができる。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該クラスター化粒子はラベルありとすることができる。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、装置は約5ミリメートル~約300ミリメートルの直径を有することができる。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置はフッ素系ポリマーを含むことができる。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置はパーフルオロポリエーテル系ポリマーを含むことができる。
【0031】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置は熱硬化性ポリマーを含むことができる。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置はUV硬化性ポリマーを含むことができる。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置は金属を含むことができる。
【0034】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該装置は半導体を含むことができる。
【0035】
開示の技術は、クラスター化粒子を分離するための分離装置の作製方法であって、シリコンウェハ上にシリコンモールドを作製することと、ポリマーモールドを作製することと、当該分離装置を作製することと、当該分離装置を取り外すこととを含む、作製方法を含むことができる。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該シリコンウェハ上に当該シリコンモールドを作製することは、当該シリコンウェハ上に第1のフォトレジスト層を堆積させることと、当該第1のフォトレジスト層をパターニングすることと、当該シリコンウェハをエッチングして複数のピラーを形成することと、当該シリコンウェハ上に窒化物層を堆積させることと、第2のフォトレジスト層を堆積させることと、当該第2のフォトレジスト層と当該窒化物層とをパターニングすることと、当該シリコンウェハをエッチングして、当該複数のピラーにおける各ピラーへと延びる傾斜側壁を形成することと、第3のフォトレジスト層を堆積させることと、当該第3のフォトレジスト層をパターニングすることと、当該シリコンウェハをエッチングして、当該シリコンモールドを形成することとを含むことができる。
【0037】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該ポリマーモールドを作製することは、当該シリコンウェハをシランで被覆することと、当該シリコンウェハ上に第1のポリマー層を堆積させることと、当該第1のポリマー層を硬化させて第1のポリマーモールドを形成することと、当該シリコンウェハから当該第1のポリマーモールドを取り除くことと、当該第1のポリマーモールドをシランで被覆することと、当該第1のポリマーモールド上に第2のポリマー層を堆積させることと、当該第2のポリマー層を硬化させて当該第2のポリマーモールドを形成することとを含むことができる。
【0038】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該第1のポリマー層および当該第2のポリマー層は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができる。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該ポリマーモールドを作製することは、当該第1のポリマーモールドから当該第2のポリマーモールドを取り除くことをさらに含むことができる。
【0040】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該分離装置を作製することは、当該第2のポリマーモールドを基板に貼り付けることと、当該第2のポリマーモールドにUV硬化性ポリマーを充填することと、当該UV硬化性ポリマーをUV光に露光させることと、当該UV硬化性ポリマーを硬化させることとを含むことができる。
【0041】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、真空ポンプを用いて当該第2のポリマーモールドに当該UV硬化性ポリマーを充填することができる。
【0042】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該基板は、ビニルダイシングテープとすることができる。
【0043】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該基板は、アセテートシートとすることができる。
【0044】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該基板は、PETシートとすることができる。
【0045】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該熱硬化性ポリマーを当該第2のポリマーモールドに充填することは、熱電冷却器上で行うことができる。
【0046】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該UV硬化性ポリマーは、熱硬化性ポリマーとすることができる。
【0047】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該分離チップを取り外すことは、当該第2のポリマーモールドを取り除くことと、当該基板から当該分離チップを取り除くこととを含むことができる。
【0048】
開示の技術は、クラスター化された粒子を分離するための方法であって、それぞれが複数の側壁とメッシュ状捕捉領域を有する底面とを有することができる複数のマイクロウェルを含む分離装置を提供することと、複数のクラスター化粒子と複数の非クラスター化粒子とを含む流体を、当該分離装置に通すことと、当該複数のクラスター化粒子を当該メッシュ状捕捉領域内で捕捉することと、当該複数の非クラスター化粒子を含む当該流体を出力することと、を含む方法を含むことができる。
【0049】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該流体は血液であってもよく、当該非クラスター化粒子は細胞とすることができ、当該クラスター化粒子は細胞クラスターとすることができる。
【0050】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該流体は尿であってもよく、当該非クラスター化粒子は細胞とすることができ、当該クラスター化粒子は細胞クラスターとすることができる。
【0051】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、分離装置をろ過ホルダー内に位置決めすることをさらに含むことができる。
【0052】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該流体を当該分離装置に通すことは、約20mL/h~約100mL/hの流量で行うことができる。
【0053】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該出力された流体は、クラスター化粒子を実質的に含まないようにすることができる。
【0054】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、当該メッシュ状捕捉領域から当該クラスター化粒子を回収することをさらに含むことができる。
【0055】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該メッシュ状捕捉領域から当該クラスター化粒子を回収することは、当該クラスター化粒子をPBSで洗浄することと、当該細胞クラスターを保持容器に移し替えることとをさらに含むことができる。
【0056】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、マイクロマニピュレーターによって直接当該メッシュ状捕捉領域から当該細胞クラスターを回収することができる。
【0057】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、細胞クラスターを分析することをさらに含むことができる。
【0058】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該クラスター化粒子は、循環腫瘍細胞クラスターを含むことができる。
【0059】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該クラスター化粒子は、尿中の剥離した癌細胞を含むことができる。
【0060】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、当該分離装置を増殖培養液で被覆することをさらに含むことができる。
【0061】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該捕捉されたクラスター化粒子は当該被覆された分離装置上で成長することができる。
【0062】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、当該成長させたクラスター化粒子は当該被覆された分離装置上で直接分析することができる。
【0063】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、当該分離装置を無機材料で被覆することをさらに含むことができる。
【0064】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、クラスター化粒子を分離するための当該方法は、当該分離装置を有機材料で被覆することをさらに含むことができる。
【0065】
開示の技術は、請求項1の装置を用いて血液の未処理サンプルをろ過する方法をさらに含むことができる。
【0066】
開示の技術は、請求項1の装置を用いて血液のサンプルをインラインでろ過する方法をさらに含むことができる。
【0067】
開示の技術は、請求項1の装置を用いて血栓を検出する方法をさらに含むことができる。
【0068】
開示の技術は、請求項1の装置を用いてクラスター化粒子を解離させる方法をさらに含むことができる。
【0069】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明および添付の図に記載されている。本発明の実施形態の他の態様および特徴は、図とともに本発明の具体的、例示的な実施形態の以下の説明を参照することにより、当業者には明らかになるであろう。本発明の特徴は、特定の実施形態および図に関連して説明することができるが、本発明のすべての実施形態は、本明細書で説明する特徴の1つまたは複数を含むことができる。さらに、1つまたは複数の実施形態は、特定の有利な特徴を有するものとして説明することができるが、そのような特徴の1つまたは複数は、本明細書で説明する本発明の様々な実施形態とともに用いることもできる。同様に、例示的な実施形態は、装置、システム、または方法の実施形態として以下で説明され得るが、そのような例示的な実施形態は、本発明の様々な装置、システム、および方法で実施され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
ここで、添付の図を参照する。これらの図は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。当該図面において、
【
図1A】
図1Aは、本開示のいくつかの態様による、分離装置の上面図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示のいくつかの態様による、分離装置の底面図である。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの態様による、ろ過ホルダー内の分離装置の図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示のいくつかの態様による、分離装置の複数のマイクロウェルを例示した図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示のいくつかの態様による、捕捉されたクラスター化粒子に作用する力を例示した図である。
【
図3C】
図3Cは、本開示のいくつかの態様による、捕捉されたクラスター化粒子を有するマイクロウェルを例示した図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示のいくつかの態様による、マイクロウェルのメッシュ状捕捉領域の変形例を例示した図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示のいくつかの態様による、マイクロウェルのメッシュ状捕捉領域の変形例を例示した図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示のいくつかの態様による、マイクロウェルのメッシュ状捕捉領域の変形例を例示した図である。
【
図4D】
図4Dは、本開示のいくつかの態様による、マイクロウェルのメッシュ状捕捉領域の変形例を例示した図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示のいくつかの態様による、複数のマイクロウェルの断面を例示した図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示のいくつかの態様による、
図5Aの複数のマイクロウェルの上面を例示した図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示のいくつかの態様による、複数のマイクロウェルの断面を例示した図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示のいくつかの態様による、
図6Aの複数のマイクロウェルの上面を例示した図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示のいくつかの態様による、複数のマイクロウェルの断面を例示した図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示のいくつかの態様による、
図7Aの複数のマイクロウェルの上面を例示した図である。
【
図8A】
図8Aは、本開示のいくつかの態様による、マイクロウェルの断面を例示した図である。
【
図8B】
図8Bは、本開示のいくつかの態様による、
図8Aのマイクロウェルの上面を例示した図である。
【
図9】
図9は、本開示のいくつかの態様による、分離装置を作製する方法の概要を示すフロー図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10B】
図10Bは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10C】
図10Cは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10D】
図10Dは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10E】
図10Eは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10F】
図10Fは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10G】
図10Gは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10H】
図10Hは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図10I】
図10Iは、本開示のいくつかの態様による、シリコンモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図11A】
図11Aは、本開示のいくつかの態様による、ポリマーモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図11B】
図11Bは、本開示のいくつかの態様による、ポリマーモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図11C】
図11Cは、本開示のいくつかの態様による、ポリマーモールドを作製する方法を例示した図である。
【
図12A】
図12Aは、本開示のいくつかの態様による、分離装置を作製し取り外す方法を例示した図である。
【
図12B】
図12Bは、本開示のいくつかの態様による、分離装置を作製し取り外す方法を例示した図である。
【
図12C】
図12Cは、本開示のいくつかの態様による、分離装置を作製し取り外す方法を例示した図である。
【
図13】
図13は、本開示のいくつかの態様による、クラスター化粒子を分離する方法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本開示は、非クラスター化粒子およびクラスター化粒子を含む流体のサンプルからクラスター化粒子を分離するための分離装置に関する。分離装置は、メッシュ状捕捉領域を備える底面を有する複数のマイクロウェルを含むことができる。メッシュ状捕捉領域は、1つまたは複数の隔壁線を用いて複数の開口に分割することができる。当該流体のサンプルは、速い体積流速で当該分離装置に通すとき、当該マイクロウェルに注ぎ込むことができる。当該開口は、当該非クラスター化粒子が当該開口を通過し、当該クラスター化粒子が当該メッシュ状捕捉領域内で緩やかに捕捉されるようなサイズとすることができる。当該クラスター化粒子は、捕捉すると、当該メッシュ状捕捉領域から回収し、分子・機能解析を行うことができる。当該捕捉されたクラスター化粒子を分離して分析することにより、貴重な診断情報と、採用し得る治療方針に関する洞察を得ることができる。
【0072】
開示の技術は、添付の図面を参照して以下により完全に説明される。しかしながら、この開示の技術は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載された例に限定されると解釈されるべきではない。開示の技術の様々な要素を構成するものとして以下に説明される構成要素は、例示的であり、限定的ではないことを意図している。本明細書に記載の構成要素と同じまたは類似の機能を実行するであろう多くの適切な構成要素が、開示された電子装置および方法の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素には、例えば、開示の技術の開発後に開発された構成要素が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0073】
以下の説明では、多くの具体的な詳細が示されている。しかしながら、開示の技術の例は、これらの具体的な詳細なしでも実施可能であることを理解されたい。他の例において、明細書の理解を曖昧にしないために、公知の方法、構造、および技術は詳細に示していない。「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」などへの言及は、そのように記載された開示の技術の実施形態が特定の特徴、構造、あるいは特性を含んでもよいことを示すが、すべての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、あるいは特性を含むわけではない。さらに、「一実施形態において」というフレーズを繰り返し用いたとき、それは必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。
【0074】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈によって明確に別の意味が示されていない限り、少なくとも本明細書に明示的に関連付けられた意味をとる。「または」という用語は、包含的な「または」を意味することを意図している。さらに、「a」、「an」、および「the」という用語は、別段の指定がない限り、また、単数形に対するものであることが文脈から明確でない限り、1つまたは複数を意味することを意図している。
【0075】
別段の指定がない限り、一般的な物体を説明するための序数形容詞「第1」、「第2」、「第3」などの使用は、同様の物体の異なる例について言及していることを示すだけであり、そのように記載された物体が、時間的に、空間的に、あるいは序列において、またはその他の意味で、特定の順序である必要があることを示唆することを意図したものではない。
【0076】
別段の指定がない限り、「クラスター化粒子(clustered particle)」および「クラスター化粒子(clustered particles)」という用語は、マイクロ粒子およびナノ粒子を含む、2つ以上の粒子の任意のクラスターを意味する。
【0077】
別段の指定がない限り、「細胞クラスター」という用語は、2つ以上の細胞の任意のクラスターを含み、細胞は任意の種類の細胞であってもよく、循環腫瘍細胞、剥離腫瘍細胞、赤血球、および人工的に合成されたナノ粒子とマイクロ粒子を含むが、これらに限定されない。
【0078】
図1Aは、分離装置100の上面図である。分離装置100は、流体を受け入れるように構成された入口112を有することができる。分離装置100は、クラスター化粒子を捕捉するように構成された複数のマイクロウェル102を含むことができる。マイクロウェル102は、分離装置100の窪みとすることができる。マイクロウェル102は、複数の側壁104を含むことができる。側壁104は、マイクロウェル102の上面から底面まで延びるようにすることができる。マイクロウェル102は、任意のサイズの深さを有することができる。マイクロウェル102の深さは、クラスター化粒子の分離および捕捉を容易にすることができる。マイクロウェル102の深さは、分離装置100が用いられる用途、および分離装置100によって捕捉されているクラスター化粒子のサイズに基づくことができる。いくつかの実施形態では、マイクロウェル102の深さは、約10ミクロン~約500ミクロンとすることができる。いくつかの実施形態では、分離装置100を用いてナノ粒子クラスター化粒子または細胞外小胞クラスター化粒子を捕捉することができる。本願では、マイクロウェル102の深さをサブミクロン単位とすることができる。分離装置100の底面は、メッシュ状捕捉領域106を含むことができる。複数の細い隔壁線110は、メッシュ状捕捉領域106を複数の開口108に分割することができる。
【0079】
図1Bは、分離装置100の底面図である。分離装置100は、流体を出力するように構成された出口114を含むことができる。入口112および出口114は、マイクロウェル102に流体を送りマイクロウェル102から流体を出すように構成された任意の種類の入口または出口とすることができる。いくつかの実施形態では、入口112は、マイクロウェル102の上方の開放面とすることができる。いくつかの実施形態では、出口114は、メッシュ状捕捉領域106の開口108に近接する開放面とすることができる。
【0080】
図2は、ろ過ホルダー202内に配置された分離装置100を例示する。ろ過ホルダー202は、市販されている任意のろ過ホルダーとすることができる。ろ過ホルダー202は、分離装置100の所望のサイズおよび形状、並びに分離装置100が用いられる用途に基づいてカスタマイズすることができる。
【0081】
分離装置100は、任意のサイズおよび任意の形状とすることができる。いくつかの実施形態では、分離装置100は、
図1Aおよび
図1Bに例示されるように、略長方形とすることができる。いくつかの実施形態では、分離装置100は、
図2に例示されるように、略円形とすることができる。分離装置100は、
図1A、
図1Bおよび
図2に例示されるように、直径Dを有することができる。
図1Aおよび
図1Bにおける分離装置100の直径Dは、長手方向軸に対する分離装置100の長さとすることができる。直径Dは、分離装置100を作製する方法において用いられるシリコンウェハなどの基板の直径に基づくことができる。分離装置100は約5ミリメートル~約300ミリメートルの直径Dを有することができる。分離装置100の直径Dは、分離装置100が用いられる用途に基づくことができる。1000mL/hを超える体積流量を必要とする用途では、分離装置100は、20mL/h~100mL/hの体積流量を必要とする用途と比較して、より大きな直径Dを有し得る。
【0082】
流体が分離装置100を通過できる流量は、分離装置100の直径Dと、分離装置100が用いられる用途に依存し得る。いくつかの実施形態では、流体は、約20mL/h~約100mL/hの流量で分離装置100を通過することができる。この体積流量では、分離装置100は、約25ミリメートル以上の直径Dを有することができ、クラスター化粒子を効果的に分離して捕捉することができる。いくつかの実施形態では、流体は、1000mL/hより大きい体積流量で分離装置100を通過することができる。この体積流量では、分離装置100は、約150ミリメートル~約300ミリメートルの直径Dを有することができ、クラスター化粒子を効果的に分離して捕捉することができる。
【0083】
流体が分離装置100を通過できる速度は、同様に、分離装置100のサイズと、分離装置100が用いられる用途に依存し得る。いくつかの実施形態では、流体は、毎秒約20ミクロン~毎秒約260ミクロンの速度で分離装置100を通過することができる。
【0084】
分離装置100は、任意の数のマイクロウェル102を含むことができる。マイクロウェル102の数は、分離装置100の表面積に依存し得る。マイクロウェル102の数は、分離装置100によって分離されるクラスター化粒子のサイズに依存し得る。いくつかの実施形態では、分離装置100は、1平方ミリメートル当たり約40個~約280個のマイクロウェルを有することができる。分離装置100がナノ粒子クラスター化粒子を分離するために用いられている場合、分離装置100は、1平方ミリメートル当たり約40,000個~約280,000個のマイクロウェル102を有することができ、各マイクロウェル102はナノメートルオーダーのサイズを有する。
【0085】
分離装置100は、必要に応じて流動し、その後固化することができ、かつ、マイクロパターニングおよび/またはナノパターニングすることができる任意の材料で作ることができる。いくつかの実施形態では、分離装置100は、実質的に、ポリマーで作られ得る。ポリマーは、UV硬化性ポリマーとすることができる。代替的に、またはそれに加えて、ポリマーは熱硬化性ポリマーとすることができる。ポリマーは、パーフルオロポリエーテル系ポリマーなどのフッ素系ポリマーとすることができる。フッ素系ポリマーは、分離装置100の作製中において、様々なモールドから分離装置100を容易に取り外せるようにできる。いくつかの実施形態において、分離装置100は、実質的に金属で作られ得る。いくつかの実施形態では、分離装置は、実質的に、半導体で作られ得る。
【0086】
図3Aは、分離装置100の複数のマイクロウェル102を例示する。流体のサンプルは、分離装置100の入口112を通過させることができる。流体は、複数の非クラスター化粒子302および複数のクラスター化粒子304を含むことができる。流体は、分離装置100が用いられる用途に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、流体は血液とすることができる。あるいは、いくつかの実施形態では、流体は尿とすることができる。非クラスター化粒子302は、単一赤血球や白血球などの非クラスター化細胞を含むことができる。いくつかの実施形態では、非クラスター化粒子302は、単一循環腫瘍細胞などの単一癌細胞306を含むことができる。クラスター化粒子304は、細胞クラスターを含むことができる。クラスター化粒子304は、2細胞クラスター、3細胞クラスター、10細胞クラスターなど、任意の数の細胞がクラスター化されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。クラスター化粒子304は、ラベルなしとすることができる。あるいは、クラスター化粒子304にラベルを付けることも可能である。ラベリングは、蛍光イメージングなどの分子ラベリングや、ビーズによるラベリングなどを含むことができる。細胞クラスターは、癌細胞クラスターとすることができる。例として、細胞クラスターは、循環腫瘍細胞(CTC)クラスター、卵巣癌細胞クラスター、乳癌細胞クラスター、前立腺癌細胞クラスターなどを含むことできる。いくつかの実施形態では、細胞クラスターは、血栓の存在の可能性を示す、血球のクラスターを含むことができる。いくつかの実施形態では、クラスター化粒子304は、ナノ粒子クラスター化粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、クラスター化粒子304は、細胞外小胞クラスター化粒子を含むことができる。
【0087】
流体のサンプルが分離装置100の入口112を通過するとき、マイクロウェル102は、非クラスター化粒子302およびクラスター化粒子304をメッシュ状捕捉領域106に注ぎ込むことができる。
図3Aに例示されるように、マイクロウェル102の側壁104は、傾斜部分104aを有することができる。傾斜側壁104aは、正の角度、負の角度、および0度の角度を含む任意の角度で傾斜させることができる。傾斜側壁104aは、非クラスター化粒子302およびクラスター化粒子304がメッシュ状捕捉領域106に容易に注ぎ込まれるようにできる。傾斜側壁104aはまた、捕捉されたクラスター化粒子304がマイクロウェル102内にしっかりと留まることができるように、捕捉されたクラスター化粒子304の動きを最小限に抑えることができる。
【0088】
開口108を形成する隔壁線110は、流体の流れを複数の流路に分割することができる。開口108は、分離装置100が用いられる用途に応じて、非クラスター化粒子302が開口108を通過して出口114から出ることができるようなサイズにすることができる。しかしながら、クラスター化粒子304の幾何学的形状は、開口108のサイズとの関係において、クラスター化粒子304が開口108を通過するのを妨げ得る。いくつかの実施形態では、開口108のサイズは、約100平方ミクロン~300平方ミクロンとすることができる。いくつかの実施形態では、分離装置100がナノ粒子クラスター化粒子を捕捉するのに用いられる場合、開口108は相応のサイズにすることができる。開口108のサイズは、マイクロウェル102が、白血球の望ましくない捕捉を最小限に抑えながら、細胞2個および細胞3個のクラスター化粒子304を捕捉できるように最適化することができる。非クラスター化粒子302は、開口108を干渉なく容易に通過できるため、分離装置100は、未処理の全血を含む大量の流体を、分離装置100が詰まるリスクなしに処理することが可能である。詰まるリスクを最小化することによって、分離装置100は、臨床の現場にとって理想的なものとなり得る。
【0089】
図3Bは、マイクロウェル102のメッシュ状捕捉領域106内のクラスター化粒子304に作用し得る力を例示する。流体がマイクロウェル102を通過する際の流体のサンプルの流れにより、ディーン抗力F
Dが生じ得る。クラスター化粒子304がメッシュ状捕捉領域106の隔壁線110と係合すると、反力F
Rが生じ得る。反力F
Rは、捕捉されたクラスター化粒子304に安定した平衡を提供することができる動的な力のバランスを形成することができる。さらに、クラスター化粒子304が傾斜側壁104aと係合するとき、摩擦力F
Fが生じ得る。これらの力の組み合わせにより、マイクロウェル102は、クラスター化粒子304を解離させることなく、クラスター化粒子304を緩やかに固定することができる。
【0090】
図3Cは、マイクロウェル102内に捕捉されたクラスター化粒子304を例示した追加の図である。メッシュ状捕捉領域106のこの構成により、マイクロウェル102がクラスター化粒子304を穏やかに捕捉することができる。この穏やかな捕捉は、クラスター化粒子304の解離を最小限に抑えることができる。クラスター化粒子304は、流体のサンプル内で比較的まれに生じるものであり得、分析時に貴重な情報を提供し得るので、クラスター化粒子304の解離を防止することは重要であり得る。
【0091】
図4A~
図4Dは、メッシュ状捕捉領域106の様々な構成を例示する。各メッシュ状捕捉領域106は、メッシュ状捕捉領域106を複数の開口108に分割し、捕捉されたクラスター化粒子304を支持するように構成された1つまたは複数の隔壁線110を含むことができる。
図4Aに示されるように、隔壁線110は、メッシュ状捕捉領域106を、正方形の形状を有する4つの開口108に分割することができる。開口108は2×2のアレイ状に配置することができる。いくつかの実施形態では、各正方形状の開口108は、約10ミクロン~約17ミクロンの辺の長さを有することができる。
図4Bに例示されるように、メッシュ状捕捉領域106は、略円形状を有する4つの開口108に分割することができる。
図4Cに例示されるように、メッシュ状捕捉領域106は、略楕円形の形状を有する4つの開口108に分割することができる。
図4Dに例示されるように、メッシュ状捕捉領域106は、略多角形状を有する5つの開口108に分割することができる。いくつかの実施形態では、各開口108は、六角形の形状を有することができる。
【0092】
なお、
図4A~
図4Dは、メッシュ状捕捉領域106の変形例を示しているが、メッシュ状捕捉領域106は、任意の数の隔壁線110を含んで、任意の幾何学的形状を有する任意の数の開口108を形成できると考えられる。開口108のサイズと形状は、クラスター化粒子304のサイズと形状、並びに分離装置100が用いられる用途に基づくことができる。いくつかの実施形態では、開口108は、同じ幾何学的形状およびサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、開口108は、異なる幾何学的形状およびサイズを有することができる。分離装置100がナノ粒子クラスター化粒、および/または、細胞外小胞クラスター化粒子を捕捉するのに用いられる場合、開口108のサイズは相応のサイズにすることができる。
【0093】
図5A~
図8Bは、複数のマイクロウェル102の構成例の断面図および上面図を例示する。
【0094】
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ、複数のマイクロウェル102の断面図および上面図を例示する。マイクロウェル102は、流体をメッシュ状捕捉領域106に注ぎ込むように構成された傾斜側壁104aを含むことができる。隔壁線110は、メッシュ状捕捉領域106を、2×2の開口アレイ状に配置された複数の正方形の開口108に分割することができる。マイクロウェル102は、分離装置100の上面の平坦な部分によってそれぞれから分離することができる。
【0095】
図6Aおよび
図6Bは、それぞれ、
図5Aおよび5Bに例示される複数のマイクロウェルから変更された上部を有する複数のマイクロウェル102の断面図および上面図を例示する。隣接するマイクロウェル102は、実質的に尖った先端を作ることができるように、互いに接続することができる。隔壁線110は、各マイクロウェル102のメッシュ状捕捉領域106を、2×2の開口アレイ状に配置された4つの正方形の開口108に分割することができる。マイクロウェル102は傾斜側壁104aを含み、クラスター化粒子304がメッシュ状捕捉領域106内に容易に注ぎ込まれ捕捉されるようにすることができる。
【0096】
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、開口108の線形アレイを有する複数のマイクロウェル102の断面図および上面図を例示する。隔壁線110は、各マイクロウェル102のメッシュ状捕捉領域106を12個の開口108に分割することができる。開口108は2×6の開口アレイ状に配置し、アレイが略線形となるようにすることができる。マイクロウェル102は傾斜側壁104aを含み、クラスター化粒子304がメッシュ状捕捉領域106内に容易に注ぎ込まれ捕捉されるようにすることができる。マイクロウェル102は、分離装置100の上面の平坦な部分によってそれぞれから分離することができる。
【0097】
図8Aおよび
図8Bは、それぞれ、略メッシュ状の構成を有する複数のマイクロウェル102の断面図および上面図を例示する。隔壁線110は、マイクロウェル102のメッシュ状捕捉領域106を36個の開口に分割することができる。開口108は9×4の開口アレイ状に配置することができる。マイクロウェル102は傾斜側壁104aを含み、クラスター化粒子304がメッシュ状捕捉領域106内に容易に注ぎ込まれ捕捉されるようにすることができる。
【0098】
図5A~
図8Bはマイクロウェル102の変形例を示しているが、マイクロウェル102は任意の構成を有することができると考えられる。メッシュ状捕捉領域106は、開口108の任意のアレイを含むことができる。開口部108のアレイは、2×2の開口アレイ、3×5の開口、4×6の開口アレイ、5×10の開口アレイなど、任意の数の開口によるアレイとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
開示の技術は、分離装置100を作製する方法900を含むこともできる。
図9に例示されるように、方法900は、シリコンウェハ上にシリコンモールドを作製すること(902)と、ポリマーモールドを作製すること(904)と、分離装置を作製すること(906)と、分離装置を取り外すこと(908)とを含むことができる。分離装置100を作製する方法900は、クリーンルームのない環境で実行することができ、それにより、コストおよび労働時間を削減する。
【0100】
図10A~
図10Iは、シリコンモールド1012を作製する方法を例示している。
図10Aに例示されるように、シリコンウェハ1002を提供することができる。いくつかの実施形態では、シリコンウェハ1002は、約300ミクロン~600ミクロンの厚みを有することができる。
【0101】
図10Bおよび10Cにおいて、第1フォトレジスト層1004をシリコンウェハ1002上に堆積させることができる。フォトレジスト層1002は、スピニングし、パターニングすることができる。パターニングされたフォトレジスト層1004は、メッシュ状捕捉領域106の開口108の所望のアレイの基礎とすることができる。
【0102】
図10Dにおいて、シリコンウェハ1002をエッチングしてピラー1006を形成することができる。シリコンウェハ1002は、深掘り反応性イオンエッチングを用いて約10ミクロンの深さでエッチングすることができる。
【0103】
図10Eにおいて、窒化物層1006を堆積させることができる。窒化物層1006は、約300ナノメートルの厚みとすることができる。窒化物層1006は、低圧化学気相成長炉で堆積させることができる。窒化物層1006は、第2のフォトレジスト層1008で被覆することができる。
図10Fに例示されるように、窒化物層1006および第2フォトレジスト層1008は、パターニングすることができる。いくつかの実施形態では、第2フォトレジスト層1008は、マスクレスアライナーによって露光することができる。
【0104】
図10Gに示されるように、窒化物層1006を反応性イオンエッチングを用いてエッチングしてハードマスクを形成し、シリコンウェハ1002を45%KOH溶液中において約80℃で約10分~20分間、異方性エッチングすることができる。シリコンウェハ1002のエッチングにより、傾斜壁を作ることができる。傾斜壁は、複数のピラーまで延びることができる。傾斜壁の形成は、分離装置100の傾斜側壁104aを形成するための基礎とすることができる。
【0105】
図10Hに例示されるように、第3フォトレジスト層1010を、シリコンウェハ1002上に堆積させ、パターニングすることができる。シリコンウェハ1002は、深掘り反応性イオンエッチングを用いて約50ミクロンの深さでエッチングすることができる。シリコンウェハ1002のエッチングにより、シリコンモールド1012を形成することができる。
【0106】
図11A~
図11Cは、ポリマーモールドを作製する方法を例示している。ポリマーモールドを作製する方法は、ポリマーの二重成型を含むことができる。シリコンモールド1012は、ポリマーモールドを作製する前に、8時間、真空条件下において、シランで被覆することができる。シリコンモールド1012をシランで被覆することにより、シリコンモールド1012から第1のポリマーモールド1102を容易に取り除くことができるようになる。いくつかの実施形態では、金層スパッタリングを含む金属層スパッタリングを用いて、8時間の待機時間を短縮し、かつ/あるいは無くすこともできる。
図11Aは、第1のポリマーモールド1102の作製を例示する。シリコンモールド1012の上に、第1のポリマー層を流し込むことができる。第1のポリマー層は、デシケーターで1時間脱気した後、オーブンで硬化させて第1ポリマーモールド1102を形成することができる。硬化された第1ポリマーモールド1102は、
図11Bに示されるように、シリコンモールド1012から剥離することができる。第1ポリマーモールド1102の表面は、約8時間、酸素プラズマを用いて活性化されシランで被覆することができる。
図11Cに例示されるように、第1のポリマーモールド1102は、第2のポリマーモールド1104の作製のためのモールドとして機能することができる。第2のポリマー層を第1のポリマーモールド1102上に注ぎ、硬化させて第2のポリマーモールド1104を形成することができる。第2のポリマーモールド1104を作製すると、第2のポリマーモールド1104を第1のポリマーモールド1102から取り除くことができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー層および第2のポリマー層は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができる。
【0108】
図12A~
図12Cは、分離装置100を作製し、取り外す方法を例示している。
図12Aに例示されるように、第2のポリマーモールド1104は、基板1202に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第2のポリマーモールド1104は、ビニルダイシングテープの非接着面に貼り付けることができる。あるいは、基板1202は、アセテートシート、PETシート、または他の同様の材料を含むことができる。第2のポリマーモールド1104を基板1202に貼り付けると、第2のポリマーモールド1104にUV硬化性ポリマーを充填することができる。UV硬化性ポリマーは、第2のポリマーモールド1104の入口を通して挿入することができる。第2のポリマーモールド1104へのUV硬化性ポリマーの充填を容易にするために、出口ポートに真空を適用することができる。第2のポリマーモールド1104にUV硬化性ポリマーを充填すると、UV硬化性ポリマーをUV光に曝すことができ、それにより、UV硬化性ポリマーを硬化させて、分離装置100を形成する。いくつかの実施形態では、UV光は、約365ナノメートルの波長を有することができる。いくつかの実施形態では、第2のポリマーモールド1104には、熱電冷却器の上で、UV硬化性ポリマーを充填することができる。熱電冷却器は、UV硬化性ポリマーの温度を下げることができ、それにより、UV硬化性ポリマーの粘度を上げることができる。UV硬化性ポリマーの粘度を上げることにより、気泡を発生させることなく、より高い真空レベルを用いることができ、製造歩留まりが向上する。
【0109】
図12Bに示されるように、UV硬化性ポリマーが硬化されると、第2のポリマーモールド1104を分離装置100から剥がすことができる。次に、
図12Cに例示されるように、分離装置100は、基板1202から取り外すことができる。いくつかの実施形態では、分離装置100は、熱電冷却器上に配置して、分離装置100を容易に取り外せるようにすることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、UV硬化性ポリマーは、パーフルオロポリエーテル系のポリマーを含む、フッ素系のポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、UV硬化性ポリマーは、熱硬化性ポリマーとすることができる。例として、UV光への曝露が望ましくない場合、分離装置100を形成するのに、PDMSなどの熱硬化性ポリマーを用いることができる。
【0111】
図10A~
図12Cは、分離装置100を作製する方法の一例を示しているが、他の方法も考えられる。いくつかの実施形態では、実質的にポリマーからなる分離装置100を作製するのにホットエンボス加工を用いることができる。ホットエンボス加工は、分離装置100を作製するための低コストでスケーラブルな技術であり得、それにより、この技術を広範囲の用途に適用可能にする。この技術において、ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィン共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンなどを含むことができる。当該技術は、一般的に、加熱、成型、および離型を含む。ポリマーは、ポリマーのガラス転移温度以上に加熱することで軟化させることができる。軟化したポリマーが下地のモールドの形状になるように圧力をかけることができる。離型工程では、ポリマーを冷却し、モールドから取り外すことができる。次に、ポリマー打ち抜いて貫通穴を開け、分離装置100の開口108を作成することができる。ポリマーの温度、圧力、および選択は、分離装置100の用途および、厚みなど、所望のパラメータに応じて変えることができる。
【0112】
さらに、いくつかの実施形態では、従来の無電解電気めっきを使用して、実質的に金属で作られた分離装置100を作製することができる。この技術は、本明細書に記載のように、第2のポリマーモールド1104を作製することを含むことができる。金属シード層は、高真空で電子ビーム蒸発器を用いて第2のポリマーモールド1104の表面に堆積させることができる。金属イオンは、第2のポリマーモールド1104の表面に付着し、その後、成長することができる。成長した金属は、第2のポリマーモールド1104と略同じ形状を有することができる。電気メッキされた金属の厚みを変えることによって、分離装置100の強度および柔軟性を変化させることができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、分離装置100を作製するのにシリコンマイクロマシニングを用いることができる。
図10Aから12Cに例示されたクリーンルームなしで実施可能な作製方法とは異なり、シリコンマイクロマシニングは、クリーンルーム内でシリコンウェハから分離装置100を作製することができる。この技術では、シリコンウェハ上に窒化シリコン層を堆積させることができる。窒化シリコン層は反応性イオンエッチングでパターニングし、シリコンウェハはKOH(またはTMAH)溶液でエッチングすることができる。裏面フォトリソグラフィを行い、その後、窒化物層をプラズマエッチングして、分離装置100を作製することができる。
【0114】
図13は、クラスター化粒子を分離する方法1300を示す。方法1300は、複数のマイクロウェル102を含む分離装置100を提供すること(1302)を含むことができる。各マイクロウェル102は、複数の側壁104と、メッシュ状捕捉領域106を有する底面とを含むことができる。分離装置100は、本明細書で説明した任意の機能をさらに含むことができる。
【0115】
方法1300は、流体を分離装置100に通すこと(1304)を含むことができる。流体は、複数の非クラスター化粒子302と複数のクラスター化粒子304とを含むことができる。流体が分離装置100を通過するとき、非クラスター化粒子302およびクラスター化粒子304をマイクロウェル102に注ぎ込むことができる。
【0116】
方法1300は、複数のクラスター化粒子304をメッシュ状捕捉領域106内で捕捉すること(1306)を含むことができる。
【0117】
方法1300は、流体のサンプルを出力すること(1308)を含むことができる。出力されたサンプルは複数の非クラスター化粒子302を含む。クラスター化粒子304はマイクロウェル102内に捕捉されたままとすることができるので、出力されたサンプルは、クラスター化粒子304を実質的に含まないものとすることができる。
【0118】
方法1300は、クラスター化粒子304をメッシュ状捕捉領域106から回収することをさらに含むことができる。クラスター化粒子304を回収するために、クラスター化粒子304をPBSで洗浄することができる。PBSでの洗浄に続いて、捕捉されたクラスター化粒子304は、流体が分離装置100を通って流れる体積流量に対して異なる相対的逆流流量で出力することができる。出力されたクラスター化粒子304は、その後、保持容器に移すことができる。あるいは、クラスター化粒子304は、メッシュ状捕捉領域106から直接回収することができる。いくつかの実施形態では、クラスター化粒子304は、マイクロマニピュレーターを用いてメッシュ状捕捉領域106から直接回収することができる。捕捉されたクラスター化粒子304がフィルタの表面に付着することができる従来のポアフィルタとは異なり、マイクロウェル102内のメッシュ状捕捉領域106の凹部により、分離装置100を、分析用に構成したシステムまたは装置に、捕捉されたクラスター化粒子304を失うリスクなしに移動させることができる。
【0119】
回収されたクラスター化粒子は、画像化され、任意の形式の分子・機能解析に供することができる。クラスター化粒子304を解析することにより、癌の原発部位や細胞の変異など、クラスター化粒子304に関する貴重な情報を得ることができる。さらに、採用し得る治療のコースを探すことができる。いくつかの実施形態では、クラスター化粒子304は、採用し得る薬剤、および/または、他の形態の治療によって、処置することができる。これらの薬剤および治療の結果は、個別化医療を改善するのに役立てることができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、クラスター化粒子を分離するための方法1300は、分離装置100を有機被覆材または無機被覆材で被覆することを含むことができる。いくつかの実施形態では、無機被覆材は、分離装置100の表面接着特性を高めることができる。無機被覆材は、分離装置100がクラスター化粒子304を捕捉することができるように、特定の親和性を有する抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、PEGまたはBSAコーティングなどの有機被覆材は、捕捉されたクラスター化粒子304を取り外すことができるように、非特異的な付着を減らすことができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、クラスター化粒子を分離するための方法1300は、分離装置100を成長培養物で被覆することを含むことができる。分離装置100が成長培養物で被覆されている場合、捕捉されたクラスター粒子304は、分離装置100上で直接成長させることができる。この意味で、分離装置100は、ヒトの器官および/または組織と同様に機能することができる。流体の流れ(例えば、血液の流れ)が連続的に栄養源となり得るため、捕捉されたクラスター化粒子304は容易に生存することができる。成長したクラスター化粒子304は、その後、様々な技術によってさらに分析することができる。いくつかの実施形態では、成長したクラスター化粒子304は、新しい細胞株の実現または新しい薬物治療法の開発のために取り外したり、培養したりすることができる。
【0122】
クラスター化粒子を分離する分離装置100、および/または、方法1300は、様々な追加の用途で用いることができる。例えば、尿細胞診は、膀胱癌を含む尿路癌を診断するために、尿中の異常な細胞を顕微鏡下で検査することができる技術である。この技術は、患者から得られた大量の排尿サンプルからの、まれな剥離癌細胞の濃縮を必要とする場合がある。現在の遠心分離およびサイトスピン法を用いる代わりに、分離装置100を用いれば、相当数のまれな剥離癌細胞を損傷したり喪失したりすることなく、大量の尿サンプルを濾過することができる。剥離したがん細胞を捕捉した後、蛍光染色やPap染色プロトコルを用いて、細胞の特徴を把握することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、分離装置100は、血液の未処理サンプルを濾過するのに用いることができる。さらに、分離装置100は、インライン血液浄化システムに用いることができる。循環腫瘍細胞クラスターは、個々の循環腫瘍細胞と比較して転移性が高いため、血液からCTCクラスターを除去することが重要になる場合がある。この用途では、患者から血液を取り除くことができる。血液ポンプで血液を送り、抗凝固剤を添加することができる。血液は、分離装置100の中を流れることができる。CTCクラスターは、単赤血球、白血球、および単一のCTCが分離装置100を通過することができる一方で、分離装置100のマイクロウェル102内に穏やかに捕捉されるようにすることができる。CTCクラスターを実質的に含まない洗浄された血液を、患者に戻すことができる。この技術は、ポータブルシステムで連続的に、かつ/または、患者の重症度に応じて間隔をあけて一定時間行うことができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、クラスター化粒子をばらばらにするのに分離装置100を用いることができる。この技術では、捕捉されたクラスター化粒子に対するせん断力も増加するように、血液のサンプルが分離装置100に通される体積流量を増加させることができる。せん断力の増加は、クラスター化粒子304の非クラスター化粒子302への解離を引き起こすことができる。一例として、CTCクラスターは、単一のCTCに解離させることができる。単一のCTCは転移しにくいことが分かっているため、この技術により治療介入を促進し、治療過程を改善することができる。
【0125】
本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、それらの用途について、明細書に説明され図面に示された構成要素の構成および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。むしろ、明細書および図面は、想定される実施形態の例を提供するものである。本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、他の実施形態がさらに可能であり、様々な方法で実施および実行することができる。また、本明細書で採用されている語句や用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものと見なすべきではないことを理解されたい。
【0126】
したがって、当業者は、本願および特許請求の範囲の基礎となる着想が、本願で提示した実施形態および特許請求の範囲のいくつかの目的を遂行するための他の構造、方法、およびシステムの設計のための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、そのような等価な構造を含むとみなされることが重要である。
【0127】
さらには、上記要約書の目的は、米国特許商標庁および一般市民、特に特許用語や法律用語に精通していない当業者が、一覧しただけで、本願の技術的開示の性質と本質を迅速に判断できるようにすることである。要約書は、本願の請求項を定義することを意図したものではなく、また、請求項の範囲をいかなる形でも限定することを意図したものでもない。その代わりに、本発明は、本書に添付された特許請求の範囲によって定義されることを意図している。
【国際調査報告】