(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】二次電池及び該二次電池を備える電池モジュール、電池パック、装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220810BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220810BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220810BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220810BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220810BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220810BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220810BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220810BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20220810BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220810BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220810BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20220810BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20220810BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/587
H01M50/133
H01M4/133
H01M4/134
H01M50/15
H01M50/342 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508962
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2020114266
(87)【国際公開番号】W WO2021057483
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910933499.4
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 欣
(72)【発明者】
【氏名】宋 晋▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 信
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ ▲輝▼森
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ ▲伝▼苗
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011BB03
5H011KK00
5H011KK01
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD17
5H012GG01
5H012JJ10
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ06
5H029BJ14
5H029DJ02
5H029DJ16
5H029DJ17
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA10
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050FA05
5H050FA17
5H050FA19
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA19
(57)【要約】
本出願は、二次電池及び該二次電池を備える電池モジュール、電池パック、装置に関する。具体的には、該二次電池は、ケースと、ケース内に収容された電気コア及び電解液と、を備え、前記電気コアは、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、正極活物質を含む正極フィルムと、を含み、前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含み、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、負極活物質を含む負極フィルムと、を含み、前記負極活物質は、シリコン系材料及び炭素材料を含み、且つ前記二次電池は、0.05≦Z≦0.6を満たす。該二次電池は、高エネルギー密度、急速な充電及び長サイクル寿命などの特徴を兼ね備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、ケース内に収容された電気コア及び電解液と、を備える二次電池であって、
前記電気コアは、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、正極活物質を含む正極フィルムと、を含み、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、負極活物質を含む負極フィルムと、を含み、
前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含み、前記負極活物質は、シリコン系材料及び炭素材料を含み、且つ前記二次電池は、0.05≦Z≦0.6を満たし、
ここで、
Z={Vt-V0-(H
b-H
a)*S-V1}/CAP、
Vtは、ケースの内部空間の体積を示し、単位がcm
3であり、
V0は、電池が0%SOCであるときの電気コアの体積を示し、単位がcm
3であり、
H
aは、電池が0%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、
H
bは、電池が100%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、
Sは、電池における負極フィルムの総面積を示し、単位がcm
2であり、
V1は、化成後の電池における電解液の体積を示し、単位がcm
3であり、
CAPは、電池の定格容量を示し、単位がAhである、二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、0.1≦Z≦0.5を満たし、選択可能に、0.15≦Z≦0.4を満たす請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記二次電池は、1<H
b/H
a≦1.5を満たし、選択可能に、1<H
b/H
a≦1.3を満たす請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記二次電池は、さらに1.5g/Ah≦Mel/CAP≦2.4g/Ahを満たし、選択可能に、1.7g/Ah≦Mel/CAP≦2.2g/Ahを満たし、ここで、Melは化成後の電池における電解液の質量を示し、単位がgである請求項1から3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解液の密度Delは、1.0g/cm
3≦Del≦1.3g/cm
3であり、選択可能に、1.1g/cm
3≦Del≦1.25g/cm
3である請求項1から4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極フィルムの塗布重量CWは、5mg/cm
2≦CW≦15mg/cm
2であり、選択可能に、6mg/cm
2≦CW≦13mg/cm
2である請求項1から5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極フィルムの緻密化密度PDは、1.4g/cm
3≦PD≦1.8g/cm
3であり、選択可能に、1.5g/cm
3≦PD≦1.7g/cm
3である請求項1から6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン合金、シリコン酸素化合物、シリコン炭素化合物、シリコン窒素化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、前記シリコン系材料は、シリコン酸素化合物を含む請求項1から7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極活物質における前記シリコン系材料の質量比Wは、W≦40%を満たし、選択可能に、10%≦W≦30%を満たす請求項1から8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記炭素材料は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、前記炭素材料は黒鉛を含み、前記黒鉛は、人工黒鉛及び天然黒鉛のうちの1種類又は複数種類から選択される請求項1から9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記ケースの壁の厚さTは、0.2mm≦T≦1mmを満たし、選択可能に、0.4mm≦T≦0.7mmを満たす請求項1から10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記二次電池は、反転ユニットが設けられたトップカバーを更に備え、前記反転ユニットの耐圧強度は≧0.35MPaである請求項1から11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記正極活物質は、一般式とするLi
aNi
bCo
cM
dM’
eO
fA
g、又は表面の少なくとも一部に被覆層が設けられたLi
aNi
bCo
cM
dM’
eO
fA
gのうちの1種類又は複数種類を含み、ここで、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1、MはMn、Alのうちの1種類又は複数種類から選択され、M’はZr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti、Bのうちの1種類又は複数種類から選択され、AはN、F、S、Clのうちの1種類又は複数種類から選択される請求項1から12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記正極活物質の少なくとも一部は単結晶粒子である請求項1から13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記正極活物質は、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、コバルト酸リチウム及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を更に含む請求項1から12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の二次電池を備える電池モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載の電池モジュールを備える電池パック。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか1項に記載の二次電池、請求項16に記載の電池モジュール、又は請求項17に記載の電池パックのうちの少なくとも1種類を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年09月27日に提出された発明名称が「二次電池及び該二次電池を備える電池モジュール、電池パック、装置」の中国特許出願第201910933499.4号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電気化学の技術分野に関し、具体的には、二次電池及び該二次電池を備える電池モジュール、電池パック、装置に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギー自動車は、世界の自動車産業の発展方向を表している。二次電池は、高電圧、高エネルギー密度を有する新型な充電可能な電池として、軽量、高エネルギー密度、クリーン、長寿命などの優れた特徴を備えており、新エネルギー自動車に広く適用されている。航続距離に対する消費者の需要が高まるにつれ、大容量リチウムイオン電池の開発は業界の注目を集めている。
【0004】
リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるために、エネルギー密度がより高い正極活物質及び負極活物質を必要とする。負極材料として、従来の黒鉛負極材料は技術発展の要求に応えられなくなっている。シリコン系材料は、黒鉛の10倍以上の1グラムあたりの容量と低いリチウム吸蔵電位を有するため、研究のホットスポットとなっていた。しかし、シリコン材料は、リチウムを吸蔵する過程で巨大な体積膨張(300%)を引き起こす。巨大な体積効果は充放電の過程で、粉末化、脱落を引き起こしてその電気化学的性能を劣化させ、それにより、シリコン系負極材料の商業応用を妨げている。
【0005】
したがって、電気コアの容量及び電気コアのエネルギー密度を確保した上で、シリコン含有負極材料を用いた二次電池の電気化学的性能及び動力学的性能をさらに向上させる必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本出願の第1の態様は、二次電池を提供し、該二次電池はケースと、ケース内に収容された電気コア及び電解液と、を備え、電気コアは、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、正極シートは、正極集電体、及び正極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、正極活物質を含む正極フィルムを含み、負極シートは、負極集電体、及び負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、負極活物質を含む負極フィルムを含み、正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活物質は、シリコン系材料及び炭素材料を含み、
【0007】
且つ二次電池は、0.05≦Z≦0.6を満たし、ここで、
【0008】
Z={Vt-V0-(Hb-Ha)*S-V1}/CAP、
【0009】
Vtは、ケースの内部空間の体積を示し、単位がcm3であり、
【0010】
V0は、電池が0%SOCであるときの電気コアの体積を示し、単位がcm3であり、
【0011】
Haは、電池が0%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、
【0012】
Hbは、電池が100%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、
【0013】
Sは、電池における負極フィルムの総面積を示し、単位がcm2であり、
【0014】
V1は、化成後の電池における電解液の体積を示し、単位がcm3であり、
【0015】
CAPは、電池の定格容量を示し、単位がAhである。
【0016】
本出願では、電池を設計する場合、電極シート、ケースの体積及び電解液の含有量などのパラメータを合理的に設定して特定の関係式を満たすことにより、二次電池は、高エネルギー密度、長サイクル寿命及び優れた動力学的性能を兼ね備えている。
【0017】
上記任意の実施形態において、二次電池は、0.1≦Z≦0.5を満たし、選択可能に、0.15≦Z≦0.4を満たす。Zが所定の範囲内にある場合、電池のサイクル寿命及び動力学的性能をさらに改善することができる。
【0018】
上記任意の実施形態において、二次電池は、1<Hb/Ha≦1.5を更に満たし、選択可能に、1<Hb/Ha≦1.3を満たす。
【0019】
上記任意の実施形態において、二次電池は、さらに1.5g/Ah≦Mel/CAP≦2.4g/Ahを満たし、選択可能に、1.7g/Ah≦Mel/CAP≦2.2g/Ahを満たし、ここで、Melは化成後の電池における電解液の質量を示し、単位がgである。電池が当該条件を満たす場合、そのサイクル性能及び界面安定性はさらに改善される。
【0020】
上記任意の実施形態において、電解液の密度Delは、1.0g/cm3≦Del≦1.3g/cm3であり、選択可能に、1.1g/cm3≦Del≦1.25g/cm3である。
【0021】
上記任意の実施形態において、負極フィルムの塗布重量CWは、5mg/cm2≦CW≦15mg/cm2であり、選択可能に、6mg/cm2≦CW≦13mg/cm2である。
【0022】
上記任意の実施形態において、負極フィルムの緻密化密度PDは、1.4g/cm3≦PD≦1.8g/cm3であり、選択可能に、1.5g/cm3≦PD≦1.7g/cm3である。
【0023】
上記任意の実施形態において、シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン合金、シリコン酸素化合物、シリコン炭素化合物、シリコン窒素化合物のうちの1種類又は複数種類を含んでもよく、選択可能に、シリコン系材料は、シリコン酸素化合物を含んでもよい。
【0024】
上記任意の実施形態において、負極活物質におけるシリコン系材料の質量比Wは、W≦40%を満たし、選択可能に、10%≦W≦30%を満たす。シリコン系材料の含有量が上記範囲内にある場合、電池は、シリコン系材料の高いエネルギー密度という利点を得ると共に、シリコン系材料の膨張の悪影響をさらに軽減することができる。
【0025】
上記任意の実施形態において、炭素材料は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種類又は複数種類を含んでもよく、選択可能に、炭素材料は黒鉛を含んでもよく、黒鉛は、人工黒鉛及び天然黒鉛のうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0026】
上記任意の実施形態において、ケースの壁の厚さTは、0.2mm≦T≦1mmを満たし、選択可能に、0.4mm≦T≦0.7mmを満たす。
【0027】
上記任意の実施形態において、二次電池は、反転ユニットが設けられたトップカバーを更に備え、反転ユニットの耐圧強度は≧0.35MPaである。このような設計により、電池の安全性を更に改善することができる。
【0028】
上記任意の実施形態において、正極活物質は、一般式とするLiaNibCocMdM’eOfAg、又は表面の少なくとも一部に被覆層が設けられたLiaNibCocMdM’eOfAgのうちの1種類又は複数種類を含んでもよく、ここで、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1、MはMn、Alのうちの1種類又は複数種類から選択され、M’はZr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti、Bのうちの1種類又は複数種類から選択され、AはN、F、S、Clのうちの1種類又は複数種類から選択される。このような正極活物質は、より高いエネルギー密度を備える。
【0029】
上記任意の実施形態において、正極活物質の少なくとも一部は単結晶粒子であってもよい。
【0030】
上記任意の実施形態において、正極活物質は、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、コバルト酸リチウム及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0031】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様に係る二次電池を備える電池モジュールを提供する。
【0032】
本出願の第3の態様は、本出願の第2の態様に係る電池モジュールを備える電池パックを提供する。
【0033】
本出願の第4の態様は、本出願の第1の態様に係る二次電池、本出願の第2の態様に係る電池モジュール、又は、本出願の第3の態様に係る電池パックのうちの少なくとも1種類を備える装置を提供する。
【0034】
本出願の電池モジュール、電池パック及び装置は、本出願における二次電池を用いるため、同一又は類似する技術的効果を有する。
【0035】
以下、本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、実施例で必要な図面を簡単に説明する。なお、下記の図面は本出願の一部の実施例であり、当業者であれば、クリエイティブな労力を必要とせずに、他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本出願に係る二次電池の一実施形態の模式図である。
【
図3】本出願に係る電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図4】本出願に係る電池パックの一実施形態の模式図である。
【
図6】本出願に係る装置の一実施形態の模式図である。
【0037】
図面は、実際の縮尺で描くことではない。ここで、符号の説明は以下のとおりである。
1…電池パック、2…上部ボックス、3…下部ボックス、4…電池モジュール、5…二次電池、51…ケース、52…電極組立体、53…カバープレート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願の発明の目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、本出願を実施例と合わせてより詳細に説明する。本明細書に記載の実施例は、単に本出願を説明するためのものであり、本出願を限定するものではないことを理解すべきである。
【0039】
簡単にするために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみを明確に開示している。ただし、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよい。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はその範囲に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0040】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、本数を含み、「1種類又は複数種類」における「複数種類」とは、2種類又は2種類以上を意味する。
【0041】
本明細書の説明において、特に説明しない限り、「又は」は、含むという意味を有する。例えば、「A又はB」は、「A、B、或いはA及びBの両方」を表す。より具体的には、以下のように、Aは真(或いは存在)であるがBは偽(或いは存在しない)であること、Aは偽(或いは存在しない)であるがBは真(或いは存在)であること、或いは、AとBはいずれも真(或いは存在)であることはいずれも条件「A又はB」を満たす。
【0042】
本出願の上記発明の概要は、本出願に開示の各実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をより具体的に例示して説明する。本出願全体を通して、様々な組み合わせの形で使用できる一連の実施例によってガイダンスが提供される。各例において、列挙は代表的なグループとして使用され、網羅的であると解釈されるべきではない。
【0043】
以下、本出願の第1の態様に係る二次電池について詳しく説明する。
【0044】
本出願のおける二次電池は、ケースと、ケース内に収容された電気コア及び電解液と、を備え、前記電気コアは、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、正極活物質を含む正極フィルムと、を含み、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、負極活物質を含む負極フィルムと、を含み、前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含み、前記負極活物質は、シリコン系材料及び炭素材料を含み、且つ上記二次電池は、0.05≦Z≦0.6を満たす。
【0045】
本出願では、Z値は、Z={Vt-V0-(Hb-Ha)*S-V1}/CAPと定義される。ここで、Vtは、ケースの内部空間の体積を示し、単位がcm3であり、V0は、電池が0%SOCであるときの電気コアの体積を示し、単位がcm3であり、Haは、電池が0%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、Hbは、電池が100%SOCであるときの負極フィルムの厚さを示し、単位がcmであり、Sは、負極フィルムの総面積を示し、単位がcm2であり、V1は、化成後の電池における電解液の体積を示し、単位がcm3であり、CAPは、電池の定格容量を示し、単位がAhである。
【0046】
なお、電池が0%SOCである状態を「電池の完全な放電状態」と称する場合もある。電池が100%SOCである状態を「電池の完全な充電状態」と称する場合もある。
【0047】
電池の定格容量CAPとは、室温で完全に充電された電池が1I1(A)の電流で放電し、最終電圧に達するときの放電した容量を指し、I1は1時間の放電電流を表す。具体的には、中国国家標準GB/T31484-2015電気自動車用パワーバッテリのサイクル寿命要求及び測定方法を参照することができる。
【0048】
本発明者らは、二次電池の負極フィルムにおいてシリコン系材料を負極材料として使用する場合、電池の安全性能、サイクル寿命及び動力学的性能が大きく影響を受けることを見出した。電池の研究開発の過程において、本発明者らは、電池を組み立てる過程におけるケースの体積、電極シート及び電解液の関連パラメータ等を特定の関係式を満たすように調整する場合、シリコン含有負極材料を用いる電池の使用過程におけるガスの発生、サイクル、界面等の問題を効果的に改善し、それにより、電池が高いエネルギー密度を有する前提で、長いサイクル寿命と優れた動力学的性能及び安全性能を両立させることができることを意外にも見出した。
【0049】
既知のように、Z<0.05である場合、シリコン系負極活物質を用いる電池が充電する時、シリコン負極フィルムがより激しく反発し、ケース内部のほぼ全空間を占めて、ベア電気コアの電極シートがケースに突き出る可能性があるので、正負極が接触して短絡し、さらに安全上の問題が発生する。また、ケースの内部空間が完全に占められる場合、短時間でのサイクル又はストレージにより、電池の反転ユニットの故障を引き起こし、電気コアを廃棄する可能性がある。
【0050】
既知のように、Z>0.6である場合、電池の使用過程において、生成されたガスが電極シートに残留する可能性があるので、電極シートの界面の不良を引き起こして電池の動力学的性能に影響を与え、負極フィルムに大量の黒点リチウム析出が発生する可能性があり、それにより、電池の使用寿命に影響を与え、さらに安全リスクを発生する可能性がある。
【0051】
本出願のいくつかの実施形態において、Zの下限値は、0.05、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.22、0.23、0.25、0.27、0.28、0.3、0.35、0.38、0.4のいずれか1つであってもよく、Zの上限値は、0.4、0.42、0.45、0.48、0.5、0.55、0.6のいずれか1つであってもよい。
【0052】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記電池は、0.1≦Z≦0.5を満たし、例えば、前記電池は、0.15≦Z≦0.4、0.146≦Z≦0.435、0.217≦Z≦0.346等を満たす。
【0053】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記二次電池は、1<Hb/Ha≦1.5を満たし、例えば、1<Hb/Ha≦1.3を満たす。
【0054】
本出願において、前記二次電池は、前記ケースを密封するために用いられ、反転ユニットが設置されているトップカバーを更に備え、二次電池内部の気圧が一定の圧力まで上昇すると、前記反転ユニットが変形する。電池の内圧値が小さいほど耐高温(例えば、45℃)性能が良く、高温でガスの発生により故障する可能性が低いことを表し、内圧が一定の数値範囲を超える場合、電池の耐高温の寿命が短くなる。
【0055】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記反転ユニットの耐圧強度≧0.35MPaである。
【0056】
本出願のいくつかの実施形態において、前記二次電池は、さらに1.5g/Ah≦Mel/CAP≦2.4g/Ahを満たし、ここで、Melは化成後の電池における電解液の質量を示し、単位がgである。電池が当該条件を満たす場合、そのサイクル性能及び界面安定性はさらに改善される。
【0057】
本出願のいくつかの実施形態において、Mel/CAPの下限値は、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.8、1.9のいずれか1つであってもよく、Mel/CAPの上限値は、1.7、1.8、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4のいずれか1つであってもよい。
【0058】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記二次電池は、1.7g/Ah≦Mel/CAP≦2.2g/Ah、1.6g/Ah≦Mel/CAP≦2.02g/Ah、1.75g/Ah≦Mel/CAP≦2.15g/Ah、1.8g/Ah≦Mel/CAP≦2.1g/Ah等を満たす。
【0059】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記電解液の密度Delは、1.0g/cm3≦Del≦1.3g/cm3であり、例えば、1.1g/cm3≦Del≦1.25g/cm3などである。
【0060】
本出願の二次電池は、ケースと、ケース内に固定された電気コアと、ケース内に注入された電解液と、を備え、前記電気コアは正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、前記電気コアが電解液に浸し、活性イオンが電解液を媒体として正極と負極との間で移動することで、電池の充放電を実現する。正極と負極との間に短絡を発生することを回避するために、セパレータを用いて正極シートと負極シートを隔離する必要がある。
【0061】
前記電気コアは、巻回構造又は積層構造を用いることができる。電気コアが巻回構造を用いる場合、前記電池のケースには1つ又は複数の巻回電気コアが含まれていてもよい。
【0062】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記二次電池のケースは、ハードケースであり、前記ケースの材料はアルミニウムケース、スチールケース、プラスチックなどの硬質材料から選択される。
【0063】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記二次電池は、角形電池又は円筒形電池であってもよい。
図1は、一例としての角形構造の二次電池5を示している。いくつかの実施形態において、
図2を参照し、外装は、ケース51とカバープレート53を備える。ここで、ケース51は、底板と、底板に接続された側板と、を備え、底板と側板が収容室を取り囲んで形成する。ケース51は、収容室に連通している開口を有し、カバープレート53は前記収容室を封止するように前記開口をカバーする。正極シート、負極シートとセパレータは巻回工程又は積層工程によって電極組立体52を形成する。電極組立体52は、前記収容室に封入されている。電解液は、電極組立体52に浸される。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は1つまたは複数であってもよく、必要に応じて調整できる。
【0064】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記電池のケースの壁の厚さTは、0.2mm≦T≦1mmを満たし、例えば、0.4mm≦T≦0.7mmを満たす。
【0065】
本明細書に係る各パラメータは、当技術分野の既知の方法によって測定することができる。例えば、本出願の実施例に示すような方法によって測定することができる。
【0066】
以下、リチウムイオン二次電池を例として、本出願の技術案を詳しく説明する。
【0067】
まず、正極シートは、当技術分野の従来の方法によって製造できる。本出願では、正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含むことが要求される場合以外、正極シートに対して限定されない。一般的に、上記正極活物質は、導電剤(例えば、カーボンブラックなどの炭素材料)、接着剤(例えば、PVDF)などを添加する必要がある。必要に応じて、他の正極活物質又は他の添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料等)を添加してもよい。一般的に、これらの材料を混合して溶媒(例えば、NMP)に分散させて、均一に撹拌した後、正極集電体に均一に塗布し、乾燥を経て、正極シートを得る。正極集電体としては、アルミニウム箔等の金属箔や多孔質金属板等の材料を用いることができる。好ましくは、アルミニウム箔が用いられる。
【0068】
次に、電池の負極シートを製造する。本出願の負極シートは、当技術分野の従来の方法によって製造できる。一般的に、負極活物質と選択可能な導電剤(例えば、カーボンブラックなどの炭素材料及び金属粒子など)、接着剤(例えば、SBR)、他の選択可能な添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料)などの材料を混合して溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させて、均一に撹拌した後、負極集電体に均一に塗布し、乾燥を経て、負極フィルムを含む負極シートを得る。負極集電体としては、銅箔等の金属箔や多孔質金属板等の材料を用いることができる。好ましくは、銅箔が用いられる。
【0069】
なお、正極シート及び負極シートを製造する場合、集電体の両面を塗布してもよく、片面を塗布してもよい。Z値を算出する場合、Ha、Hbはいずれも負極フィルムの片面の厚さ(片面塗布又は両面塗布に関わらない)を示し、Sは負極フィルムの総面積(即ち、片面塗布の場合に片面の面積を示し、両面塗布の場合に両面の総面積を示す)を示す。
【0070】
最後、セパレータが正極シートと負極シートの間に位置して隔離の作用を果たすように正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層して巻回し、電気コアを得る。電気コアを外装のケースに入れ、トープカバーをカバーし、乾燥した後、電解液を注入し、真空包装、静置、化成、成形などのプロセスを経て電池を得る。
【0071】
本出願における電池では、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、正極活物質を有する正極フィルムを含む。前記正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1種類又は複数種類を含む。選択可能に、前記正極活物質は、一般式とするLiaNibCocMdM’eOfAg、又は表面の少なくとも一部に被覆層が設けられたLiaNibCocMdM’eOfAgのうちの1種類又は複数種類を含み、ここで、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1、MはMn、Alのうちの1種類又は複数種類から選択され、M’はZr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti、Bのうちの1種類又は複数種類から選択され、AはN、F、S、Clのうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0072】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、正極活物質の少なくとも一部は単結晶粒子である。
【0073】
一般的に、前記正極フィルムは、導電剤(例えば、アセチレンブラック等)、接着剤(例えば、PVDF等)及び他の選択可能な添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料等)を更に含む。
【0074】
前記正極集電体の種類は特に限定されず、必要に応じて選択すればよい。具体的には、前記正極集電体は、アルミニウム箔などの金属箔を選択すればよい。
【0075】
本出願における電池では、負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられ、負極活物質を有する負極フィルムと、を含み、前記負極活物質はシリコン系材料及び炭素材料を含む。
【0076】
前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン合金、シリコン酸素化合物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能に、前記シリコン系材料は、シリコン酸素化合物を含む。
【0077】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記負極活物質における前記シリコン系材料の質量比は、0<W≦40%であり、例えば、5%≦W≦40%、10%≦W≦30%などである。シリコン系材料の含有量が上記範囲内にある場合、電池は、シリコン系材料の高いエネルギー密度という利点を得ると共に、シリコン系材料の膨張の悪影響をさらに軽減することができる。
【0078】
前記炭素材料は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種類又は複数種類を含み、黒鉛を含むことが好ましい。前記黒鉛は、人工黒鉛及び天然黒鉛のうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0079】
一般的に、負極フィルムは、導電剤と接着剤を更に含む。
【0080】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記導電剤は、負極フィルム全体に対する重量含有量≦10%、例えば、2%~8%等であるカーボンナノチューブ(CNT)を含む。
【0081】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記接着剤は、負極フィルム全体に対する重量含有量≦10%、例えば、2%~8%等であるポリアクリル酸系化合物を含み、前記ポリアクリル酸系化合物はポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸ナトリウムのうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0082】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記負極フィルムの塗布重量CWは、5mg/cm2≦CW≦15mg/cm2であり、例えば、6mg/cm2≦CW≦13mg/cm2などである。
【0083】
本出願のいくつかの実施形態において、選択可能に、前記負極フィルムの緻密化密度PDの範囲は、1.4g/cm3≦PD≦1.8g/cm3であり、例えば、1.5g/cm3≦PD≦1.7g/cm3などである。
【0084】
前記負極集電体の種類は、特に限定されず、必要に応じて選択すればよい。具体的には、前記負極集電体は、銅箔などの金属箔を選択すればよい。
【0085】
本出願において、前記正極フィルムは正極集電体の1つの表面に設けられてもよく、正極集電体の2つの表面の両方に設けられてもよい。前記負極フィルムは負極集電体の1つの表面に設けられてもよく、負極集電体の2つの表面の両方に設けられてもよい。なお、上記正極フィルム、負極フィルムが集電体の2つの表面に同時に設置された場合、上記各正極フィルム、負極フィルムのパラメータ範囲はいずれも片面の正極フィルム、負極フィルムのパラメータ範囲(例えば、厚さ、塗布重量、緻密化密度等)を指す。また、本出願の前記正極フィルム、負極フィルムの厚さ、塗布重量はいずれも冷間プレスにより圧縮された、電池を組み立てるための正極シート、負極シートの厚さ及び塗布重量を指す。
【0086】
本出願における二次電池では、前記セパレータは、正極シートと負極シートの間に隔離の作用を果たすように設けられる。ここで、前記隔離膜の種類は、特に限定されず、従来の電池に使用される任意の隔離膜の材料であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン及びそれらの多層複合フィルムであるが、これらに限定されない。
【0087】
本出願における二次電池では、前記電解液の種類は特に限定されない。前記電解液は、電解質塩及び有機溶媒を含んでもよく、電解質塩及び有機溶媒の種類はいずれも限定されず、必要に応じて選択すればよい。例えば、一般的に、非水電解液として、有機溶媒に溶解したリチウム塩溶液を用いる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6などの無機リチウム塩であり、又は、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、 LiCnF2n+1SO3(n≧2)などの有機リチウム塩である。非水電解液に用いられる有機溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル、γ-ブチロラクトン等の環状エステル、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル、アセトニトリル、プロパンニトリル等のニトリル類、又はこれらの溶媒の混合物である。前記電解液は、さらに添加剤を含んでもよく、前記添加剤の種類は特に限定されず、負極成膜用の添加剤であってもよいし、正極成膜用の添加剤であってもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤であってもよい。例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等であってもよい。選択可能に、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート溶媒(FEC)を含む。
【0088】
本出願における二次電池は、既知の方法によって製造できるが、電池を製造する前に、本出願に係るパラメータを考慮する必要がある。例えば、電池を製造する過程における化成プロセスにおいて、一部の電解液を消費し、化成後の電池内部の電解液の総質量が設計要件を確実に満たすために、経験により初期の電解液の添加量を算出する必要があり、ここで、初期の電解液の添加量=化成後の電池における電解液の総質量+化成に消費される電解液の質量。選択可能に、本出願の二次電池において、化成プロセスで消費された電解液の質量は、0.1g/Ahから0.3g/Ahであると考慮してもよい。
【0089】
従来の二次電池と比較し、本出願では、二次電池が高いエネルギー密度を備える前提で、電池の高温サイクル性能及び動力学的性能を効果的に改善することができる。したがって、新エネルギー自動車などの分野に対して非常に重要である。
【0090】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様に係るいずれか1種類又は複数種類の二次電池を備える電池モジュールを提供する。前記電池モジュールにおける二次電池の数は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調整されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次に配置されてもよい。もちろん、他の任意の形態で配置することもできる。さらに、複数の二次電池5は、締結具により固定される。
【0092】
選択可能に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するケースをさらに備えてもよい。
【0093】
本出願の第3の態様は、本出願の第1の態様に係るいずれか1種類又は複数種類の二次電池、又は、本出願の第2の態様に係るいずれか1種類又は複数種類の電池モジュールを備える電池パックを提供する。
【0094】
本出願における電池パックは、本出願の二次電池を採用するため、高いエネルギー密度、サイクル性能及びストレージ性能を両立させることができる。
【0095】
前記電池パックにおける電池モジュールの数は、電池パックの応用及び容量に応じて調整されてもよい。
【0096】
いくつかの実施例において、
図4及び
図5を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池ボックスは、上部ボックス2と下部ボックス3を備え、上部ボックス2は、下部ボックス3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の形態で電池ボックス内に配置される。
【0097】
本出願の第4の態様は、本出願における二次電池と、電池モジュールと、電池パックとのうちの少なくとも1種類を備える装置を提供する。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー蓄積手段として用いられてもよい。該装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー蓄積システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
例えば、
図6は、一例としての装置を示す。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などであり、ここで、本出願における二次電池、電池モジュール、電池パックのうちの少なくとも1種類を備える。本出願における二次電池、電池モジュール、電池パックは、当該装置に給電する。
【0099】
以下、実施例を参照し、本出願の有益な技術的効果をさらに説明する。
【実施例】
【0100】
本出願の発明の目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、本出願を実施例と合わせてより詳細に説明する。しかし、本明細書に記載の実施例は、単に本出願を説明するためのものであり、本出願を限定するものではなく、本出願の実施例が本明細書に記載された実施例に限定されないと理解すべきである。実施例において、具体的な試験条件又は操作条件を明記しない場合、通常の条件で製造し、又は材料供給者により推奨される条件で製造する。
【0101】
一.テスト用の電池の製造
【0102】
各実施例及び比較例の電池は、いずれも下記の方法によって製造及びテストを行った。
【0103】
実施例1
【0104】
電池の定格容量は70Ahである。
【0105】
(1)正極シートの製造
【0106】
正極活物質であるNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるPVDFを96:2:2の重量比で混合してNMP溶媒に添加し、真空撹拌機の作用で均一に攪拌し、正極スラリーを得る。正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、室温で乾燥させた後にオーブンに移して乾燥し続け、その後、冷間圧延、スリット、裁断を経た後、正極シートを得た。
【0107】
(2)負極シートの製造
【0108】
負極活物質、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリアクリル酸ナトリウムを一定の重量比で混合して(詳細は表1を参照)溶媒である脱イオン水に添加し、真空撹拌機の作用で均一に攪拌し負極スラリーを得る。負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、その後、冷間圧延、スリット、裁断を経た後、負極シートを得た。
【0109】
(3)電解液の調製
【0110】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を体積比EC:EMC:DEC=1:1:1で混合して有機溶媒を得、十分乾燥されたリチウム塩LiPF6を有機溶媒に溶解させ、その後、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加し、均一に混合して電解液を得る。LiPF6の濃度が1mol/Lであり、電解液中のFECの質量比が6%である。
【0111】
(4)セパレータ
【0112】
セパレータとしてポリエチレンフィルムが用いられる。
【0113】
(5)リチウムイオン電池の製造
【0114】
セパレータが正極シートと負極シートの間に位置して隔離の作用を果たすように上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層して巻回し、電気コアを得る。電気コアを内部体積が364cm3である外装ケースに入れ、トープカバーをカバーし、乾燥された後、電解液を注入し、真空包装、静置、化成、成形などのプロセスを経てリチウムイオン電池を得る。
【0115】
実施例2~28及び比較例1~12は、実施例1の製造方法と類似するが、その相違点は、Z値を変更するために、関連するプロセスパラメータを調整することである。
【0116】
二.電池のパラメータ及び性能のテスト
【0117】
1.パラメータのテスト方法
【0118】
(1)ケースの内部体積Vt
【0119】
ケースが角形(直方体又は立方体)である場合、定規を使用してケース内部の長さA、幅B、高さCを測定し、Vt=A*B*Cである。
【0120】
ケースが円筒形である場合、定規及びノギスを使用してケースの内部の直径A、高さhをそれぞれ測定し、Vt=h*π*(0.5*A)2である。
【0121】
(2)電池が0%SOCであるときの電気コアの体積V0
各実施例及び比較例の電池を1Cの倍率で0%SOCまで放電した後、排水法によって電気コアの体積V0を測定する。
【0122】
(3)電解液の密度Del
一定の体積V(cm3)の電解液を取り、電子秤でその質量m(g)を測定し、Del=m/Vである。
【0123】
(4)電池が0%SOCである負極フィルムの厚さHa
各実施例及び比較例の電池を1Cの倍率で0%SOCまで放電した後、マイクロメータを使用して負極フィルムの厚さHa(片面)を測定する。
【0124】
(5)電池が100%SOCであるときの負極フィルムの厚さHb
各実施例及び比較例の電池を1Cの倍率で100%SOCまで充電した後、マイクロメータを使用して負極フィルムの厚さHb(片面)を測定する。
【0125】
(6)負極フィルムの総面積
【0126】
巻回型電気コア
【0127】
1)片面塗布
S=負極フィルムの全長*負極フィルムの幅*ケース内の電気コアの数
【0128】
2)両面塗布
S=2*負極フィルムの全長(片面)*負極フィルムの幅(片面)*ケース内の電気コアの数
【0129】
積層型電気コア
【0130】
1)片面塗布
S=1つの負極シートにおける負極フィルムの長さ*1つの負極シートにおける負極フィルムの幅*負極シートの数
【0131】
2)両面塗布
S=2*1つの負極シートにおける負極フィルムの長さ(片面)*1つの負極シートにおける負極フィルムの幅(片面)*負極シートの数
【0132】
2.性能のテスト方法
【0133】
(1)高温貯蔵でのガス発生
実施例及び比較例で製造されたリチウムイオン電池にガス発生装置を取り付け、1C/1Cで完全に充放電して容量を測定し、その後、1Cで完全に充電し、電池を70℃で放置し72時間貯蔵して内圧値を読み取る。
【0134】
(2)動力学的性能のテスト
25℃で、実施例及び比較例で製造されたリチウムイオン電池を3Cで完全に充電し、1Cで完全に放電したことを10回繰り返し、リチウムイオン電池を3Cで完全に充電した後、負極シートを分解し、負極シートの平坦度及び表面のリチウム析出状態を観察する。ここで、負極の表面のリチウム析出領域の面積が5%よりも小さいことは僅かなリチウム析出であり、負極の表面のリチウム析出領域の面積が5%~40%であることは中程度のリチウム析出であり、負極の表面のリチウム析出領域の面積が40%より大きいことは深刻なリチウム析出であると考えられる。
【0135】
(3)サイクル性能のテスト
45℃で、実施例及び比較例で製造されたリチウムイオン電池を1Cの倍率で充電し、1Cの倍率で放電し、リチウムイオン電池の容量が初期容量の80%に低減するまで、完全に充放電サイクルを行い、サイクルの回数を記録する。
【0136】
三.各実施例、比較例のテスト結果
【0137】
各実施例及び比較例の電池の構成データ及び性能のテスト結果は、下記表1~表2に示す。
【0138】
実施例1~28から分かるように、電池のZ={Vt-V0-(Hb-Ha)*S-V1}/CAPが0.05≦Z≦0.6を満たす場合、電池は優れたサイクル性能(サイクル回数が480回以上)及び動力学的性能(リチウム未析出又は僅かなリチウム析出)を両立させることができる。特に、0.1≦Z≦0.5である場合、電池のサイクル性能(サイクル回数が600回以上)及び動力学的性能(リチウム未析出)はもっと優れた。
【0139】
比較例1~12は、Z値が小さすぎると、サイクル性能が非常に低くなり、電池の内圧が大きくなり、Z値が大きすぎると、深刻なリチウム析出が発生する。
【0140】
したがって、電池のZ値を本出願の所定の範囲内に制御する場合にのみ、優れたサイクル性能及び動力学的性能を両立させると共に、電池の使用安全を確保することができる。
【0141】
上記明細書の開示及び示唆により、当業者であれば、上記実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本出願は、上記開示及び説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本出願に対する修正及び変更も本出願の特許請求の範囲に含まれている。特に、衝突がない限り、各実施例に言及された様々な技術的特徴はいずれも任意の方式で組み合わせることができる。
【0142】
【0143】
【符号の説明】
【0144】
1…電池パック
2…上部ボックス
3…下部ボックス
4…電池モジュール
5…二次電池
51…ケース
52…電極組立体
53…カバープレート
【国際調査報告】