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特表2022-536854癌患者における抗腫瘍免疫の増強のための患者選択
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-19
(54)【発明の名称】癌患者における抗腫瘍免疫の増強のための患者選択
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220812BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220812BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220812BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575320
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020038557
(87)【国際公開番号】W WO2020257536
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/907,375
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,153
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513102268
【氏名又は名称】ジー1、セラピューティクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】G1 THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、ジョセフ、ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ、ライ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ、ソレンティノ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
癌患者の無増悪生存期間または全生存期間を延長するための方法であって、方法が、以下の工程:癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、化学療法のレジメンが免疫原性細胞死を誘導するか否かを判定する工程、両方が肯定的である場合に、有効量のI、II、III、IV、もしくはVから選択されるCDK4/6阻害化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、化学療法の投与前または場合により化学療法の前および化学療法と同時に投与する工程を含んでなり、無増悪生存期間または全生存期間の延長が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記患者の癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死を誘導するか否かを判定する工程、
(i)および(ii)の両方が肯定的である場合には、
(iii)化合物I、II、III、IV、もしくはV:
【化1】
[式中、
Rは、C(H)X、NX、C(H)Y、またはC(X)であり、
Xは、直鎖、分岐鎖または環状のC~Cアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、sec-ペンチル、およびシクロペンチルであり、
Yは、NRであり、
およびRは、独立にXであるか、またはRおよびRは一緒になって、1もしくは2個のヘテロ原子(N、O、もしくはS)を含む架橋を形成するアルキル基であり、
2個のX基は一緒になって、アルキル架橋、またはスピロ化合物を形成するための1もしくは2個のヘテロ原子(N、S、もしくはO)を含む架橋を形成してもよい。]
またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量のCDK4/6阻害剤を投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与の前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。
【請求項2】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌がIFN-γ優位型のクラスの癌であるか否か、高いIFN-γシグネチャーの癌微小環境を有するか否か、または高い拡張された免疫シグネチャー、PD-L1陽性、もしくはそれらの組合せを有するか否かを評価することを含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物II、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づくICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性であり、かつ前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記ICD誘導化学療法を、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物Vまたはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与の前、または場合により前記ICD誘導化学療法の前および前記ICD誘導化学療法と同時に投与される、前記方法。
【請求項21】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性であり、その判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性であり、その判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記癌がGalonイムノスコアシステムに従って免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される場合に、前記癌が免疫原性である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される場合に、前記癌が免疫原性である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、排除性に変化したものとして免疫原性的に分類される癌を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、IFN-γ優位型のクラスの癌として分類される場合に、高いIFN-γシグネチャーの癌微小環境を有する場合に、または高い拡張された免疫シグネチャー、PD-L1陽性、もしくはそれらの組合せを有する場合に、前記癌が免疫原性である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記CDK4/6阻害剤が、まず前記ICD誘導化学療法の投与前約22~26時間に投与され、前記ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に再投与される、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項20~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定および化学療法のレジメンが免疫介在性応答を誘導し得るか否かの判定に基づいて、前記患者または前記患者集団を選択する工程、
(ii)前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項37】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項39】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項36に記載の使用。
【請求項40】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項41】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項42】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項43】
前記患者が免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項36に記載の使用。
【請求項44】
前記患者が免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項36に記載の使用。
【請求項45】
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌、高いIFN-γシグネチャーもしくは拡張された免疫シグネチャーを有する癌微小環境、またはPD-L1陽性である癌を有する、請求項36に記載の使用。
【請求項46】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項36に記載の使用。
【請求項47】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項36~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項36~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項36~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項36~49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、請求項36~49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
前記癌がトリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項36~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項36~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫介在性応答を誘導し得る化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量の前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項55】
前記癌が図6に従って評価した際に免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
前記癌がGalonイムノスコアシステムに従って評価した際に、免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項57】
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項58】
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項59】
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項60】
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項54~59のいずれか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項54~59のいずれか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌微小環境を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌微小環境を有するか、PD-L1陽性である癌を有する、請求項54に記載の使用。
【請求項63】
前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞浸潤を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、請求項54に記載の使用。
【請求項64】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項54~63のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項54~63のいずれか一項に記載の使用。
【請求項66】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項54~65のいずれか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項54~66のいずれか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項54~66のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項54~69のいずれか一項に記載の使用。
【請求項70】
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、請求項54~69のいずれか一項に記載の使用。
【請求項71】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項54~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項54~71のいずれか一項に記載の使用。
【請求項73】
前記患者が、前記化学療法の最初の投与前約22~26時間に投与され、前記化学療法の最初の投与前約4時間以内に再投与される、請求項38~72のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量の前記CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与の前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項75】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、図6に従って癌を評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項77】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項74に記載の使用。
【請求項78】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項79】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項80】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項81】
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項74~79のいずれか一項に記載の使用。
【請求項82】
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項74~79のいずれか一項に記載の使用。
【請求項83】
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌微小環境を有するか、またはPD-L1陽性である癌を有する、請求項74~79のいずれか一項に記載の使用。
【請求項84】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項85】
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、請求項74に記載の使用。
【請求項86】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項74~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項87】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項74~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項88】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項74~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項89】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項74~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項90】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項74~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項91】
前記ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項74~90のいずれか一項に記載の使用。
【請求項92】
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、請求項74~90のいずれか一項に記載の使用。
【請求項93】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項74~92のいずれか一項に記載の使用。
【請求項94】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項74~93のいずれか一項に記載の使用。
【請求項95】
前記患者が、前記化学療法の最初の投与前約22~26時間に投与され、前記化学療法の最初の投与前約4時間以内に再投与される、請求項74~93のいずれか一項に記載の使用。
【請求項96】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項74~95のいずれか一項に記載の使用。
【請求項97】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌がIFN-γ優位であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がIFN-γ優位であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項98】
前記癌がIFN-γ優位であるか否かの判定が、高いM1/M2極性化、強いCD8+T細胞染色、および高いT細胞受容体多様性を有する癌微小環境に基づく、請求項97に記載の使用。
【請求項99】
前記癌がIFN-γ優位であるか否かの判定が、Thorssonらの6クラス免疫シグネチャースコアの分類に基づく、請求項97に記載の使用。
【請求項100】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有し、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および化学療法の投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項101】
前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、腫瘍微小環境における遺伝子IDO1、CXCL10、CSCL9、HLA-DRA、STAT1、およびIFN-γの発現レベルに基づく、請求項100に記載の使用。
【請求項102】
前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、高いAyersらのIFN-γシグネチャースコアに基づく、請求項100に記載の使用。
【請求項103】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有し、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項104】
前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かの判定が、腫瘍微小環境における遺伝子CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA-DRB1、HLA-DQA1、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、およびTIGITの発現レベルに基づく、請求項103に記載の使用。
【請求項105】
前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かの判定が、Ayersらの拡張された免疫シグネチャースコアに基づく、請求項103に記載の使用。
【請求項106】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)前記癌がホット腫瘍であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者が免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がホット腫瘍であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項107】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項108】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項109】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項106に記載の使用。
【請求項110】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項111】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項112】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項113】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項114】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現から選択される免疫チェックポイント活性化を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項115】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)発現およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項116】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞機能の障害を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項117】
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、請求項106に記載の使用。
【請求項118】
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌がPD-L1陽性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がPD-L1陽性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項119】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項97~118のいずれか一項に記載の使用。
【請求項120】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項97~118のいずれか一項に記載の使用。
【請求項121】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項97~118のいずれか一項に記載の使用。
【請求項122】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項97~118のいずれか一項に記載の使用。
【請求項123】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項97~118のいずれか一項に記載の使用。
【請求項124】
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項97~123のいずれか一項に記載の使用。
【請求項125】
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、請求項97~124のいずれか一項に記載の使用。
【請求項126】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項97~125のいずれか一項に記載の使用。
【請求項127】
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、請求項97~126のいずれか一項に記載の使用。
【請求項128】
トリプルネガティブ乳癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)前記トリプルネガティブ乳癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)化学療法のレジメンが免疫介在性応答を誘導し得るか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量のCDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合によっては前記化学療法の前および前記化合療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【請求項129】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項130】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項131】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、請求項128に記載の使用。
【請求項132】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項133】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項134】
前記癌の微小環境が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項135】
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項128のいずれか一項に記載の使用。
【請求項136】
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項128のいずれか一項に記載の使用。
【請求項137】
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌を有するか、またはPD-L1陽性である癌を有するか、またはそれらの組合せを有する、請求項128に記載の使用。
【請求項138】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項139】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現から選択される免疫チェックポイント活性化を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項140】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)発現およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項141】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞機能の障害を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項142】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、請求項128に記載の使用。
【請求項143】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項128~142のいずれか一項に記載の使用。
【請求項144】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項128~142のいずれか一項に記載の使用。
【請求項145】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項128~142のいずれか一項に記載の使用。
【請求項146】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項128~142のいずれか一項に記載の使用。
【請求項147】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項128~143のいずれか一項に記載の使用。
【請求項148】
前記化学療法がゲムシタビンおよびカルボプラチンである、請求項36~147のいずれか一項に記載の使用。
【請求項149】
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のための、化学療法を受けているヒト患者において骨髄抑制が軽減するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫調節に応答しない周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが前記化学療法により誘導される骨髄抑制を誘導するか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量の前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
骨髄抑制の軽減が、前記化学療法単独の投与に基づく骨髄抑制と比較したものである、前記使用。
【請求項150】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項151】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項152】
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌をGalonイムノスコアシステムに従って評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項153】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項154】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項155】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項156】
前記患者が、免疫的にコールドな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、請求項149に記載の使用。
【請求項157】
前記患者が、腫瘍微小環境において低いIFN-γ発現を有する癌を有するか、IFN-γ優位型のクラスの癌ではないか、低いIFN-γシグネチャーもしくは低い拡張された免疫シグネチャーの癌を有するか、またはPD-L1陰性である、請求項149に記載の使用。
【請求項158】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項159】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低いプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および低い細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項160】
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低発現のT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)および低発現のリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)を有するか否かを評価することを含んでなる、請求項149に記載の使用。
【請求項161】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項149~160のいずれか一項に記載の使用。
【請求項162】
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、請求項149~160のいずれか一項に記載の使用。
【請求項163】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、請求項149~160のいずれか一項に記載の使用。
【請求項164】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、請求項149~160のいずれか一項に記載の使用。
【請求項165】
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、請求項149~160のいずれか一項に記載の使用。
【請求項166】
前記化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せから選択される、請求項149~165のいずれか一項に記載の使用。
【請求項167】
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、請求項149~166のいずれか一項に記載の使用。
【請求項168】
前記癌が非小細胞肺癌である、請求項149~166のいずれか一項に記載の使用。
【請求項169】
前記CDK4/6阻害剤が、維持処置レジメンにおいて前記化学療法の処置の終了後に1回以上投与され、前記化学療法が前記CDK4/6阻害剤の投与時には投与されない、請求項36~147のいずれか一項に記載の使用。
【請求項170】
前記CDK4/6阻害剤が1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、および6か月毎に少なくとも1回からなる群から選択される投与スケジュールで投与される、請求項169に記載の使用。
【請求項171】
前記CDK4/6阻害剤が、化学療法用量低減維持処置レジメンにおいて標準処置の終了後に化学療法薬と組み合わせて1回以上投与され、前記化学療法は標準処置中に投与される用量よりも低い用量で投与される、請求項36~147のいずれか一項に記載の使用。
【請求項172】
前記CDK4/6阻害剤および前記化学療法が1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、6週間毎に少なくとも1回、2か月毎に少なくとも1回、3か月毎に少なくとも1回、4か月毎に少なくとも1回、5か月毎に少なくとも1回、または6か月毎に少なくとも1回からなる群から選択される投与スケジュールで投与される、請求項171に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年6月18日に出願された米国仮出願6 62/863,153;および2019年9月27日に出願された米国仮出願62/907,375の利益を主張するものであり、これらのそれぞれの全内容は、あらゆる目的で引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は癌治療の分野に関し、本明細書において詳細に説明されるように、患者および癌のプロファイルに基づき、化学療法と併用してサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤を投与することを含む、癌を対象とする有利な処置のために患者を選択する方法を提供する。癌患者の特定のサブセクションに化学療法と併用してCDK4/6阻害剤を投与すると、この選択された患者集団は無増悪生存期間および/または全生存期間に利益を示すことが見出された。いくつかの実施形態では、例えば抗体である抗PD-1、抗PD-L1、または抗CTLA4薬などの免疫チェックポイント阻害剤を使用せずにこの結果を得ることができる。また、癌患者の様々な特定のサブセクションに化学療法と併用してCDK4/6阻害剤を投与すると、免疫細胞を保護する骨髄保護効果が得られ、未治療と比較してT細胞および/またはB細胞の割合が高くなり得るとともに、おそらく全生存期間の改善に至らなくても、患者の経験および生活の質を高めることが見出されている。
【背景技術】
【0003】
腫瘍微小環境(TME)は、腫瘍内またはその周囲の種々の細胞成分および非細胞成分から構成される。TMEは腫瘍の進行に重要な役割を果たすことが知られている。TMEは腫瘍の進展を方向付け(腫瘍が退縮するか否か、耐性を獲得するか否か、免疫系を回避するか否か、および/または転移するか否か)、その結果、患者の転帰に影響を及ぼす。Chen et al., New horizons in tumor microenvironment biology: challenges and opportunities. BMC Med. 2015 Mar 5;13:45. doi: 10.1186/s12916-015-0278-7。TMEの主要成分である腫瘍浸潤免疫細胞のレベルと、患者予後との間には関連性が認められており、大腸癌の研究では、高レベルの腫瘍浸潤CD3+免疫細胞が、無病生存期間の改善と関連することが示された。Galon et al., Type, density, and location of immune cells within human colorectal tumors predict clinical outcome. Science. 2006 Sep 29;313(5795):1960-4。
【0004】
最近では、化学療法の作用は非常に複雑であり、腫瘍に対してだけでなく、通常は罹患細胞から身体を保護する主要な役割を果たしている患者の免疫細胞に対しても影響を及ぼすことが認められている。このため、化学療法のプロトコールでは、腫瘍に対してだけでなく、腫瘍微小環境に対する影響についても考慮しなければならない。
【0005】
すべてではないがある特定の化学療法が、腫瘍細胞において「免疫原性細胞死(ICD)」と称される経路を引き起こし得ることも見出されている(一般的には、Locy, H., et al., Immunomodulation of the Tumor Microenvironment: Turn Foe Into Friend, Frontiers in Immunology, 2018; 9: 2090を参照のこと)。ICDは一種の制御された細胞死であり、腫瘍関連抗原の放出を誘発し、抗腫瘍免疫応答を引き起こす。(同上)。ICDは宿主の免疫系に細胞が損傷を受けたことを警告するダメージ関連分子経路(DAMP:Damage-Associated Molecular Pathway)の放出に関与する。細胞死を促進するDAMPには、カルレティキュリン(「CRT」)、高移動度群ボックス1(HMGB1:high mobility group box 1)、細胞外ATP、I型インターフェロン、癌細胞由来核酸およびANXA1の6種類がある。これらのDAMPがICD抗腫瘍応答の強さと持続性を決定する。Wang, et al, Immunogenic effects of chemotherapy induced tumour cell death, Genes & Diseases (2018) 5, 194-203も参照のこと。
【0006】
また、化学療法薬は、腫瘍が免疫応答を回避するために使用する戦略を混乱させることにより、免疫原性効果を誘導する可能性がある。例えば、Emens et al., The Interplay of Immunotherapy and Chemotherapy: Harnessing Potential Synergies. Cancer Immunol Res; 3(5) May 2015を参照のこと。例えば、化学療法は、腫瘍の顕著な免疫生物学的特徴を薬物依存的、用量依存的、およびスケジュール依存的に調節することができ、顕著な化学療法薬は様々な機構を介して腫瘍細胞の内因的免疫原性を調節することができる(例えば、Chen G, Emens LA. Chemoimmunotherapy: reengineering tumor immunity. Cancer Immunol Immunother 2013;62:203-16を参照のこと)。また、化学療法は腫瘍抗原自体または抗原が結合するMHCクラスI分子の発現を上方調節することにより、腫瘍の抗原提示を促進し得る。あるいは、化学療法は、腫瘍細胞の表面に発現された共刺激分子(B7-1)を上方調節するかまたは共抑制分子(PD-L1/B7-H1もしくはB7-H4)を下方調節することができ、エフェクターT細胞活性の強さを増進する。また、化学療法はfas依存的、パーフォリン依存的、およびグランザイムB依存的機構を介して、T細胞媒介性溶解に対する腫瘍細胞の感受性を高くする。
【0007】
さらに、個々の腫瘍の微小環境の特徴に基づく腫瘍分類システムの発展を可能にする、腫瘍-免疫系相互作用の基本的機構に関する最新の知見が、免疫エフェクター細胞集団ならびにある種の免疫原性バイオマーカーおよびシグナルの有無と関連して得られている。2009年、Camusらは、ホット、変化(altered)、およびコールドのカテゴリーを用いた大腸癌に関する研究を報告した。これらの腫瘍の2年再発データは10%、50%および80%であった。Camus, M., et al., Coordination of intratumoral immune reaction and human colorectal cancer recurrence, Cancer Research 69, 2685-2693 (2009)。彼らはさらに変化した腫瘍(altered tumor)を排除性(excluded)または免疫抑制性(immunosuppressed)として分類した。彼らは一部の腫瘍において、T細胞は腫瘍先進部に見られたが浸潤できず(つまり排除性に変化(altered excluded))、このことがそれ自体腫瘍の保護を可能にしていたことを見出した。他の症例においては、腫瘍の免疫浸潤(immune infiltration)の程度は低く、このことは先進部バリアの程度は低いが免疫抑制環境であることを示唆した(つまり免疫抑制性に変化(altered immunosuppressed))。この腫瘍のカテゴリー化は、今や大腸癌だけでなくそれ以外の癌の分野においても進行を予測する手段として受け入れられつつある。
【0008】
GalonおよびBruniは、腫瘍の4つのカテゴリー分類をホット、排除性に変化(altered-excluded)、免疫抑制性に変化(altered-immunosuppressed)およびコールドに拡張し、研究およびコミュニケーションを促した。具体的には、カテゴリー層別化は、腫瘍部位内の免疫細胞の種類、密度および位置に基づいている(図7a参照)。著者らは、腫瘍中心部と先進部の両方の2種類のリンパ球集団(CD3およびCD8)の定量化に基づく採点システム「イムノスコア(Immunoscore)」を用いて癌の種類ではなく免疫浸潤に従って腫瘍を分類する。スコアの範囲はI0(低密度、両領域において両細胞種が見られない)~I4(両方の位置において高密度の免疫細胞種)。I4腫瘍は「ホット」、I0腫瘍は「コールド」とみなされる。腫瘍進行(Tステージ)および浸潤(Nステージ)は、この既存の腫瘍内獲得免疫に依存すると報告された。今や研究者らは、腫瘍内の免疫細胞の特性、密度、免疫機能的配向および分布に注目する頻度が高くなっている。Galon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumours with combination immunotherapies”, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと。
【0009】
Galonにより報告されたように、免疫的にホットな腫瘍の基本的な特徴は(i)T細胞および細胞傷害性T細胞の高度な浸潤、(ii)チェックポイントの活性化またはT細胞機能障害である。免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍(altered-immunosuppressed immune tumor)は、(i)T細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤が不十分ではあるが不在ではない、(ii)可溶性阻害メディエーターの存在、(iii)免疫抑制細胞の存在、ならびに(iv)T細胞チェックポイントの存在により分類される。免疫的に排除性に変化した腫瘍(altered-excluded immune tumor)の特徴は、(i)腫瘍内部に意味のあるT細胞浸潤がなく、腫瘍辺縁部にT細胞の集積、(ii)発癌経路の活性化、(iii)エピジェネティック調節および腫瘍微小環境のリプログラミング、ならびに(iv)腫瘍血管系および/または間質の異常、ならびに(v)低酸素状態である。コールド腫瘍の特徴は、(i)腫瘍内部および腫瘍端部にT細胞が存在しない、ならびに(ii)T細胞プライミングの不成功(すなわち抗原提示が不十分であるか、ほとんど無いかまたは全く無い、腫瘍突然変異量が低いおよび/またはT細胞傷害性に対する内因性非感受性)である。また、コールド腫瘍は低いPD-L1発現も示すことがある。
【0010】
本明細書の図6に示され、また2019年3月のNature Reviews204頁の彼らの論文に報告されたように(Galonらの図3参照)、Galonらは腫瘍の4つのカテゴリー、腫瘍細胞が自身を保護するために用いる機構およびその保護を打ち破るために使用できる薬物/療法の包括的な車輪状の図を提示している。
【0011】
Thorssonらは、33種類の多様な癌を含んでなる10,000を超える腫瘍の広範な免疫ゲノム解析に基づいて、多くの種類の腫瘍を包含する免疫的に6つのサブタイプを特定した。Thorsson et al., “The Immune Landscape of Cancer,” Immunity 48, 812-830, 2018を参照のこと。免疫的な6つのサブタイプは:C1-「創傷治癒型」、高い増殖速度、高い血管新生遺伝子発現および獲得免疫浸潤物へのTh2細胞バイアスを特徴とする;C2-「IFN-γ優位型」、最高のM1/M2マクロファージ分極、強いCD8シグナルおよびTCRの高度な多様性を特徴とする;C3-「炎症型」、Th17およびTh1遺伝子の上昇、低~中等度の増殖、低い異数性および全般的な体細胞コピー数変化を特徴とする;C4-「リンパ球枯渇型」、Th1抑制を伴う顕著なマクロファージシグネチャーおよび高いM2応答を特徴とする;C5-「免疫学的沈黙型」、低いリンパ球応答およびM2優位の高いマクロファージ応答を特徴とする;ならびにC6-「TGF-β優位型」、高いTGF-βおよびリンパ球浸潤を伴う混合型の腫瘍サブグループを特徴とする。Thorssonらは、免疫サブタイプは全生存期間(OS)および無増悪期間(PFI)と関連しており、C3分類に該当する癌の予後は最良である一方で、C2またはC1分類の癌は実質的な免疫成分を有しているにもかかわらず転帰はあまり良くなく、より混合型のシグネチャーサブタイプであるC4およびC6の転帰は最も不良であったと述べている。
【0012】
Ayersらは、PD-1処置患者の処置前のベースライン時の腫瘍サンプルから得たRNAを用いて遺伝子発現プロファイル(GEP)を解析し、9種類の癌のタイプにわたって臨床活性と相関している免疫関連シグネチャーを特定した。Ayers et al., “IFN-γ-related mRNA profile predicts clinical response to PD-1 blockade. J Clin Invest. 2017;127(8):2930-2940を参照のこと。彼らはT細胞-炎症性GEPが抗原提示、ケモカイン発現、細胞傷害活性、および獲得免疫耐性に関連するIFN-γ応答遺伝子を含み、これらの特徴はチェックポイント阻害剤の使用から臨床的有用性を得るために必要ではあるが常に十分であるわけではないことを見出した。彼らは6つの遺伝子のサブセット(「IFN-γシグネチャー」)とさらに18の遺伝子(「拡張された免疫シグネチャー」)を特定し、その発現プロファイルからPD-1/PD-L1に対するモノクローナル抗体による処置の有効性を判定するための予測値が得られた。
【0013】
化学療法が腫瘍微小環境に及ぼす効果についてのさらなる理解、および理解を深め患者転帰を改善するための腫瘍の分類の分野における進展にもかかわらず、癌療法から利益を受ける患者集団を的確に選択し、どのような利益を得ることができるのかについては、さらなる研究および発見が必要なのは明らかである。癌療法の推進に関与している複雑な多くの因子が、この目標を困難なものとし、予測を難しいものにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
1つの目標は、無増悪生存期間に対する利益および/または全生存期間に対する利益をもたらし得る患者集団の選択を可能にすることである。
【0015】
もう1つの目標は、療法が、無増悪生存期間に対する利益または全般的利益を問わず、患者の経験または生活の質を改善させ、免疫細胞を保護する骨髄保護効果をもたらし得る患者集団を選択することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、患者に化学療法と組み合わせてサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害剤が投与される場合に特定の癌療法の転帰を得るための患者選択の問題に取り組むものである。
【0017】
特定の癌患者のサブセクションに化学療法と併用してCDK4/6阻害剤が投与される場合に、この選択された患者集団が無増悪生存期間に対する利益および/または全生存期間に対する利益を示すことが見出された。この結果は、いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1、抗PD-L1、または抗CTLA4薬、例えば抗体を用いずに得ることができる。例えば、癌患者がAyersのインターフェロン-γシグネチャー、Ayersの拡張された免疫シグネチャーまたはThorssonらの6クラス免疫シグネチャーに従って本明細書に記載されるような特定の特徴を示す腫瘍を有する場合には、患者集団は、化学療法と併用してCDK4/6阻害剤が投与されると、無増悪生存期間または全生存期間に利益を得る可能性がより高い。一実施形態において、腫瘍は、Thorssonの6クラス免疫シグネチャーに従うとインターフェロン-γ(IFN-γ)優位であり、またはAyersのIFN-γシグネチャースコアもしくは拡張された免疫シグネチャースコアに従うと高いIFN-γシグネチャーもしくは拡張された免疫シグネチャーを有する。
【0018】
また、種々の特定の癌患者のサブセクションに化学療法と併用してCDK4/6阻害剤を投与すると、選択された患者集団において免疫細胞を保護する骨髄保護効果が得られ、その療法を用いない場合よりも高い割合のT細胞および/またはB細胞が生じ得ることも見出された。一実施形態において、骨髄保護効果が得られる種々の特定の癌患者のサブセクションは非小細胞肺癌である。この患者集団には、背景技術またはそうでなければ本明細書に記載されるような特徴に従って、特に免疫原性がないかまたは免疫調節に感受性がない癌を有する患者集団が含まれる。一実施形態において、この癌は免疫原性が低く、PD-L1発現が比較的低い(正常な発現の約50%、40%またはさらには30%未満)。別の実施形態において、腫瘍は、低い免疫原性環境を反映した既知の免疫回避機構である主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII分子発現の低下を有する。
【0019】
従って、本発明は、療法の転帰を判定するための手段を提供し、従って、抗腫瘍免疫を最大とするために、腫瘍種、化学療法種、および抗サイクリン依存性キナーゼ(CDK)療法および投与レジメンの組合せの適当な選択を用いた治療プロトコールを提供する。この利益は、一般的な免疫監視の増強に加え、T細胞疲弊の逆転、T細胞を含む免疫細胞活性化の増強、免疫記憶の形成、および/または免疫抑制の軽減であり得る。この結果は、いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1、抗PD-L1または抗CTLA4薬、例えば抗体を用いずに得ることができる。重要なこととして、チェックポイント阻害化合物を投与する必要なく無増悪生存期間および/または全生存期間を延長できれば、肺炎、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、腎臓感染症、ならびにスティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、剥脱性皮膚炎、および水疱性類天疱瘡を含む免疫介在性発疹を始めとする、免疫チェックポイント阻害剤投与に関連する潜在的副作用が軽減する可能性がある。
【0020】
具体的には、ヒト臨床試験から、免疫原性が高い癌、例えば、ホット腫瘍(引用することにより本明細書の一部とされ、以下にさらに述べられるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumours with combination immunotherapies”(前掲)に定義される通り)、高いIFN-γ発現、または免疫原性感受性の他の許容可能な指標の癌が、少なくとも化学療法の投与前に投与される、あるいはまた化学療法の前および化学療法と同時の両方で投与される短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて、限定されるものではないが、免疫原性細胞死および/または制御性T細胞(Treg細胞)抑制を含む免疫介在性応答を引き起こす化学療法で処置される場合、無増悪生存期間および/または全生存期間が改善され得ることが見出された。癌療法が適当な投与レジメンにおいてこれらの3成分を含む場合、T細胞の環境を免疫抑制環境(すなわち、Treg細胞)からT細胞活性の増強および細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)の増加へと変化させることによって無増悪生存期間および/または全生存期間を増進する免疫腫瘍学効果が存在する。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は維持型治療レジメンでさらに投与され、CDK4/6阻害剤は、化学療法無しで単剤として、化学療法処置の終了後、定期的投与で、例えば、限定されるものではないが、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、または6週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬とともに維持型治療レジメンでさらに投与され、CDK4/6阻害剤は、より低用量の化学療法とともに、定期的投与で、最初の化学療法処置レジメンの終了後、例えば、限定されるものではないが、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、6週間毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回、4か月毎に1回、5か月毎に1回、または6か月毎に1回投与される。
【0021】
別の実施形態において、Galonらの採点システムに従って排除性に変化または免疫抑制性に変化として分類された癌が、少なくとも化学療法の投与前に投与される、あるいはまた化学療法の前および化学療法の両方に投与される短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて、限定されるものではないが、免疫原性細胞死を誘導する化学療法を含む免疫介在性抗腫瘍応答を増強する化学療法で処置された場合に、無増悪生存期間および/または全生存期間が改善され得る。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、維持型治療レジメンでさらに投与され、CDK4/6阻害剤は、化学療法無しで単剤として、化学療法処置の終了後、定期的投与で、例えば、限定されるものではないが、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、または6週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、維持型治療レジメンで化学療法薬とともにさらに投与され、CDK4/6阻害剤は、最初の化学療法投与レジメンの終了後、より低用量の化学療法とともに、定期的投与で、例えば、限定されるものではないが、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、6週間毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回、4か月毎に1回、5か月毎に1回、または6か月毎に1回投与される。
【0022】
特定の実施形態において、短時間作用型CDK4/6阻害剤は、
【化1】
[式中、
Rは、C(H)X、NX、C(H)Y、またはC(X)であり、
Xは、直鎖、分岐鎖または環状のC~Cアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、sec-ペンチル、およびシクロペンチルであり、
Yは、NRであり、
およびRは、独立にXであるか、またはRおよびRは一緒になって、1もしくは2個のヘテロ原子(N、O、もしくはS)を含む架橋を形成するアルキル基であり、
2個のX基は一緒になって、アルキル架橋、またはスピロ化合物を形成するための1もしくは2個のヘテロ原子(N、S、もしくはO)を含む架橋を形成してもよい。]
またはその薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0023】
細胞傷害性化学療法は一般に、白血球細胞、赤血球、および血小板を生成する骨髄内の重要な幹細胞を含む、複製している健常細胞と癌細胞とを区別しない(両方を無差別に死滅させる)。この化学療法により誘導される骨髄損傷は骨髄抑制として知られる。白血球細胞、赤血球および血小板が枯渇するようになると、化学療法を受けている患者は感染リスクが高まり、貧血および疲労を覚え、出血リスクも高まる。骨髄抑制は多くの場合、増殖因子および血液または血小板輸血などのレスキューインターベンション(rescue intervention)の投与を必要とし、化学療法投与の遅延および低減を招くことがある。また、結果として病院および医師訪問も増え、患者および医療制度の両方に負担となり、患者のリスクも増す。骨髄保護薬は、そうでなければ造血幹細胞、白血球細胞、赤血球および/または血小板がストレスを受ける、損傷を受ける、または死滅する状況(例えば、化学療法)においてこれらの細胞を保護する薬剤である。
【0024】
「トリラシクリブ」としても知られ、G1 Therapeutics,Inc.によって開発された化合物Iは現在、1)転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)におけるゲムシタビンおよびカルボプラチン、2)進行期の小細胞肺癌(SCLC)におけるトポテカン、3)SCLCにおけるカルボプラチンおよびエトポシド、ならびに4)SCLCにおけるカルボプラチン、エトポシド、およびPD-L1免疫チェックポイント阻害剤アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))を用いた化学療法の前に静脈注射を介して投与される骨髄保護剤として非経口使用するために、多くのヒト臨床試験で検討中である。
【0025】
「レロシクリブ」としても知られ、G1 Therapeutics,Inc.によって開発された化合物IIIは現在、1)EGFR阻害剤オシメルチニブ(タグリッソ(登録商標))と組み合わせてEGFR突然変異非小細胞肺癌を治療するため、および2フルベストラントと組み合わせてER+、HER2-乳癌を治療するために、一般に、1日1回投与(医療提供者の判断で必要に応じて休薬)などの連続的投与を介する抗悪性腫瘍薬として、多くのヒト臨床試験で検討中である。
【0026】
本明細書で提供されるように、以下の実施例および考察は典型的な化合物としてトリラシクリブまたはその薬学的に許容可能な塩を用いて示される。別の実施形態において、例えば、レロシクリブを含め、上記の短時間作用型CDK4/6阻害剤以外のものも使用可能である。さらに別の実施形態において、パルボシクリブ、または別の選択的CDK4/6阻害剤、例えば、アベマシクリブまたはリボシクリブが使用される。これは、これらの化合物はいずれも性能または効果はトリラシクリブと同等であるが、潜在的に別の治療効果、用量または転帰を有する別の実施形態と見なされることを表すものではない。
【0027】
意外にも、化学療法中の造血系前駆細胞および幹細胞の生存力を保護するために骨髄保護薬としてトリラシクリブを用いるヒト臨床試験は、実際にはそれどころか、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)において統計的有意性をもって全患者集団に全生存期間の改善をもたらしたことが見出された。従って、このヒト臨床試験が計画および予想されたものとは異なる、より良い転帰を示したことは全く予想外であった、実施例2、3、および4に示されるように、個々の腫瘍の免疫原性が考慮される場合に効果はいっそう大きくなる。この予想外の免疫腫瘍学的効果が本発明の基礎である。
【0028】
対照的に、トリラシクリブは、一般に免疫学的にコールドな、従って、誘導される免疫応答に有利でない癌と見なされる小細胞肺癌を治療するために骨髄保護薬として、エトポシドおよびカルボプラチンと組み合わせて使用される場合に、統計的に有意な骨髄保護効果を伴って計画通りに働いたが、患者集団において無増悪生存期間または全生存期間に統計的に有意な改善は無かった。しかしながら、臨床試験データを再検証すると、奏効者の亜集団内で、トリラシクリブが投与された患者に優位な免疫活性、最も顕著には新たなT細胞クローンの増殖が見られたことが示された(実施例5図11~14)。重要なこととしては、T細胞のクローン増殖の増加が見られたこれらの同じ患者で全生存期間の延長も見られた。
【0029】
本明細書に提示する非臨床データおよび臨床データは、トリラシクリブの抗腫瘍有効性の利益が免疫介在性の現象であり、化学療法の種類と腫瘍の種類の両方が転帰に関連することを示す。免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死を誘導する化学療法、および免疫調節により有利な微小環境を有する腫瘍がトリラシクリブの抗腫瘍有効性を補助する。
【0030】
さらに、臨床データは、IFN-γシグナル伝達などの因子ならびにT細胞の溶解活性、抗原提示、およびケモカイン産生などの関連のバイオロジーがトリラシクリブの抗腫瘍有効性に顕著な役割を果たしていることを示す。重要なこととしては、本明細書に記載されるように、CDK4/6抗腫瘍有効性の潜在的有効性を決定する因子が療法の開始前に測定可能であり、全生存期間および/または無増悪生存期間を延長し得る治療レジメンの潜在的有効性および実装形態の有効かつ再現性のある決定が提供される。
【0031】
例えば、SCLCは高度のゲノム不安定性および喫煙関連の突然変異プロファイルを特徴とするが、SCLC腫瘍は、主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスIIの両複合体の有意に低いレベルを示し、これは抗腫瘍免疫を回避する既知の方法である(これはこの腫瘍を免疫学的に「コールド様」の腫瘍とする)(Semenova et al., Origins, genetic landscape, and emerging therapies of small cell lung cancer. Genes Dev 2015; 29: 1447-62)。従って、SCLCにおいて、トリラシクリブは患者集団において抗腫瘍有効性を必ずしも改善せずに化学療法誘導性の骨髄抑制を軽減する働きをする。これに対して、TNBCは一般にゲノム的に不安定であり、強いICD薬であるゲムシタビンで処置した場合、腫瘍微小環境はより免疫原性または「ホット様」となり(例えば、Park et al., How shall we treat early triple-negative breast cancer (TNBC): from the current standard to upcoming immuno-molecular strategies. ESMO Open 2018; 3 (suppl 1): e000357を参照のこと)、抗腫瘍有効性の改善および全生存期間の延長をもたらし得る。
【0032】
具体的には、以下の実施例に記載されるように、最初のデータカットオフ日2019年5月15日において、mTNBCを治療するためのゲムシタビン/カルボプラチン(GC)スケジュール(両投与スケジュール)にトリラシクリブを加えるとGC単独に比べて、抗腫瘍有効性に臨床的に有意な改善が確立された。特に、最初のデータカットオフは、GC単独の12.6か月(群1:G/C療法(21日間サイクル1日目および8日目))から、GCにトリラシクリブルを追加した20.1か月(群2:G/C療法(1日目および8日目)+21日間サイクルの1日目および8日目にIV投与するトリラシクリブ)、および17.8か月(群3:G/C療法(2日目および9日目)+21日間サイクルの1日目、2日目、8日目、および9日目にIV投与されるトリラシクリブ)に全生存期間中央値に有意な延長を示した(表5;図2参照)。2020年5月15日の追跡データカットオフ日において、全生存期間中央値(OS)(95%CI)は群1で12.6(6.3、15.6)か月であり、群2ではOS中央値には至らず(NR未到達)(患者集団の生存の延長のため)(10.2、NR)(HR=0.31、P=0.0016)、群3では17.8(12.9、32.7)か月であった(HR=0.40、P=0.0004)。群2および3を合わせると、OS中央値は19.8(14.0、NR)か月であった(HR=0.37、群1に対してP<0.0001)。重要なこととしては、CDK4/6複製非依存性または不確定として分類された腫瘍間で全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、またはOSに差はなかった。
【0033】
ゲムシタビン/カルボプラチン(GC)単独の全生存期間中央値は、同様の設定で処置されたmTNBC患者に関して公開されている文献と一致する(O’Shaughnessy et al., Phase III study of iniparib plus gemcitabine and carboplatin versus gemcitabine and carboplatin in patients with metastatic triple-negative breast cancer. J Clin Oncol 2014; 32: 3840-47を参照のこと)。転移性疾患に関して化学療法のレジメン前に0~2回の処置を受けた患者におけるイニパリブおよびGC併用とGC単独第3相試験において、GC単独で処置した258名の患者の全生存期間中央値は11.1か月であった(同書)。同様に、mTNBC患者の第一選択治療に関する併用化学療法の最近の試験では、OS中央値は、GCを用いた場合、12.1か月であった(Yardley et al., nab-Paclitaxel plus carboplatin or gemcitabine versus gemcitabine plus carboplatin as first-line treatment of patients with triple-negative metastatic breast cancer: results from the tnAcity trial. Ann Oncol 2018; 29: 1763-70)。
【0034】
特定の腫瘍類および化学療法薬レジメンとトリラシクリブの併用は、腫瘍において細胞傷害性および制御性T細胞のサブセットを差次的に停止させ、次いで、制御性T細胞(Treg)に比べてより早く細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を回復させることによって免疫活性化を増強し、抗腫瘍免疫を促進すると考えられる。CTLとTregの間の細胞周期速度のこの差次的な変化は、Tregに対するCTLの割合を高め、T細胞活性化の増強、およびTreg介在性免疫抑制機能の低下をもたらす。これらの事象はともに、腫瘍細胞のCTL介在クリアランスを促進する。従って、トリラシクリブの抗腫瘍効果は、T細胞の一時的な増殖停止(化学療法により誘導される損傷からそれらを保護する)と、その後のTregが少ないという状況の腫瘍微小環境におけるCTLの活性化によるものである。
【0035】
加えて、T細胞受容体(TCR)分析は、トリラシクリブが治療中の抗腫瘍T細胞サブセットの増殖に重要な役割を果たし得ることを示す。以下の実施例にさらに記載されるように、エトポシド、カルボプラチン、およびPD-L1阻害剤(アテゾリズマブ)(E/P/A)を受けている小細胞肺癌患者がトリラシクリブを受けると、E/P/A単独を受けた患者に比べてトリラシクリブ処置後に増殖T細胞クローンの数が有意に多かった(P=0.01、図11)。加えて、トリラシクリブが奏効した患者コホートは、プラセボを受けた患者よりもT細胞クローン増殖が多く(p=0.001)、ならびにトリラシクリブが奏効しなかった患者よりもクローン増殖が多かった(p=0.006)。プラセボとは異なり、トリラシクリブは新たに増殖したクローンの数および割合を有意に増加させ、エトポシド、カルボプラチン、アテゾリズマブ処置レジメンへのトリラシクリブの追加がT細胞媒介性抗腫瘍応答を増強することを示す。これらのデータは、トリラシクリブが免疫介在性応答を誘導することを裏付ける。
【0036】
重要なこととしては、特定の腫瘍種において全生存期間を延長できることが投与前に予測することができる。例えば、以下の実施例2に記載されるように、TNBCがThorssonらの6クラス免疫シグネチャー分類システム(引用することにより本明細書の一部とされ、以下にさらに述べられるThorsson et el., “The Immune Landscape of Cancer,”(前掲)に定義される)に従ってC2 IFN-γ優位として分類されたトリラシクリブ受容患者において、トリラシクリブを受けなかったC2 IFN-γ優位と分類されたTNBC患者に比べ、全生存期間および無増悪生存期間に統計的に有意な改善が見られた。実施例3に記載されるように、TNBCがAyersらの分類システム(引用することにより本明細書の一部とされ、以下にさらに述べられるAyers et al., “IFN-γ-related mRNA profile predicts clinical response to PD-1 blockade,”(前掲)に定義される)に従って高い「IFN-γシグネチャー」および「拡張された免疫シグネチャー」スコアを有するトリラシクリブを受けた患者では、高い「IFN-γシグネチャー」および「拡張された免疫シグネチャー」スコアを有し、トリラシクリブを受けたTNBC患者に比べて、全生存期間および無増悪生存期間に同様の統計的に有意な改善が見られた。さらに、実施例4に記載されるように、トリラシクリブを受けているTNBC PD-L1陽性腫瘍を有する患者は、トリラシクリブを受けていないTNBC PD-L1陽性腫瘍を有する患者よりも有意に長い全生存期間を有した。
【0037】
一時的なCDK4/6阻害の免疫活性化効果に加え、これらの効果が腫瘍のCDK4/6複製依存性とは独立であることが判明した(以下の表6~8を参照)。例えば、mTNBCは主として機能的にCDK4/6複製非依存性疾患であるが、下記のこのヒト臨床試験に登録された患者の一部は、CDK4/6複製依存性腫瘍を有していた。前臨床試験からの所見に基づき(それにより、Rbコンピテントマウスモデルにおいてカルボプラチンと組み合わせてパルボシクリブが投与された)(Roberts et al., Multiple roles of cyclin-dependent kinase 4/6 inhibitors in cancer therapy. J Natl Cancer Inst 2012; 104: 476-87)、G1停止を誘導するリスクの存在が腫瘍細胞の増殖を低減し、CDK4/6複製依存性腫瘍における化学療法の有効性に負の影響を及ぼし得る。しかしながら、様々な化学療法薬と同時に投与されるこの特定のクラスのCDK4/6阻害剤の、複数のCDK4/6依存的マウスモデルでの前臨床試験は、CDK4/6複製依存の確立されたシグネチャーを用いる本試験からの臨床データとともに(表6参照)、本明細書に記載の短時間作用型CDK4/6阻害剤が化学療法の抗腫瘍活性に負の影響を及ぼすというエビデンスを提供しない。
【0038】
従って、本明細書で提供されるように、免疫介在性応答を増強する化学療法薬、例えば、限定されるものではないが、ICD誘導化学療法薬と組み合わせた本明細書に記載のCDK4/6阻害剤の包含は、CDK4/6複製依存性腫瘍、CDK4/6複製非依存性腫瘍、またはCDK4/6依存性細胞と非依存性細胞の両方を含む不均一な腫瘍を治療するために使用可能であり、ここで、腫瘍はホットであり、または別の実施形態においては、免疫抑制性変化型または排除性変化型である。同様に、化学療法薬、例えば、ICD誘導化学療法薬と組み合わせた本明細書に記載のCDK4/6阻害剤を包含することで、CDK4/6複製依存性腫瘍、CDK4/6複製非依存性腫瘍、またはCDK4/6依存性細胞と非依存性細胞の両方を含む不均一な腫瘍を治療するために使用することができ、この腫瘍は免疫原性であり、例えば、免疫原性的にホットである;高いイムノスコア、例えば、イムノスコアI4を有する;C2「IFN-γ優位」である;高い「IFN-γシグネチャー」もしくは「拡張された免疫シグネチャー」スコアを有する;PD-L1陽性である;または当技術分野で公知の他のいずれかの認識可能な評価によって判定された場合に免疫原性であると判定される。
【0039】
よって、特定の態様において、本明細書では、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死(ICD)を誘導し得るか否かを判定する工程、
(i)および(ii)の両方が肯定的である場合には、
(iii)化合物I、II、III、IV、もしくはVまたはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量のCDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与の前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
無増悪生存期間および/または全生存期間の延長が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく予測全生存期間と比較したものである、前記方法が提供される。
【0040】
いくつかの実施形態において、癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの決定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの決定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの決定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、ホットとして分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、排除性に変化したものとして分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるようにC2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である癌を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物II、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約24時間以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約30分以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、まず、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約18~28時間に投与され、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に再投与される。いくつかの実施形態において、患者に免疫チェックポイント阻害剤は投与されない。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、維持処置レジメンにおいて化学療法処置の終了後に1回以上、例えば、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、6か月毎に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬と組み合わせて、化学療法用量低減維持処置レジメンにおいて処置の終了後に、1回以上、例えば、1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、6週間毎に少なくとも1回、2か月毎に少なくとも1回、3か月毎に少なくとも1回、4か月毎に少なくとも1回、5か月毎に少なくとも1回、または6か月毎に少なくとも1回投与される。
【0042】
別の実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性があり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間および/または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間および/または全生存期間と比較したものである、前記方法が提供される。
【0043】
いくつかの実施形態において、癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定は、免疫効果を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるようにホットとして分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、排除性に変化したものとして分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載されるように、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である癌を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物II、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約24時間以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約30分以内に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、まず、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約22~26時間に投与され、免疫応答介在化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に再投与される。いくつかの実施形態において、患者に免疫チェックポイント阻害剤は投与されない。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、維持処置レジメンにおいて化学療法処置の終了後に1回以上、例えば、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、6か月毎に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬と組み合わせて、化学療法用量低減維持処置レジメンにおいて処置の終了後に1回以上、例えば、1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、2か月毎に少なくとも1回、6週間毎に少なくとも1回、3か月毎に少なくとも1回、4か月毎に少なくとも1回、6か月毎に少なくとも1回、または6か月毎に少なくとも1回投与される。
【0045】
免疫介在性応答を誘導し得る化学療法は一般に当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、およびオキサリプラチンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、ミトロキサントロン(mitroxantrone)、ゲムシタビン、および5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;ブレオマイシンおよびアントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、およびバルルビシンを含む)などの細胞傷害性抗生物質;パクリタキセル、カバジタキセル、およびドセタキセルなどのタキサン;トポテカン、イリノテカン、およびエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害剤;カルボプラチンおよびシスプラチンなどの白金化合物;26Sプロテアソームサブユニット阻害剤であるボルテゾミブ;ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンなどのビンカアルカロイド;ジアジコン;メクロレタミン;マイトマイシンC;フルダラビン;シトシンアラビノシド;およびそれらのいずれかの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、ICD誘導化学療法は、イダルビシン、エピルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、ゲムシタビン、およびシクロホスファミド、およびそれらの組合せから選択される。
【0046】
特定の癌を有する患者が免疫応答を誘導し得る化学療法を受ける候補であるか否かを判定するための方法は既知であるが、このような療法に対するCDK4/6阻害剤の効果は、特に免疫チェックポイント阻害剤を用いずには十分に探索されていない。考慮すべき点としては、治療する癌の種類が特定の化学療法薬に応答することが知られているか否か、患者が過去に既に化学療法薬を受けているか否か、および患者の癌がその化学療法に対して耐性を生じているまたはその化学療法を無効とする生物季節学的特徴(phenological characteristic)を有しているか否かが含まれる。
【0047】
現在記載のあるCDK4/6阻害剤を用いた方法を使用する処置に好適な標的癌には、免疫原性であるか、または免疫腫瘍学的化学療法薬処置レジメンに感受性のある腫瘍が含まれる。いくつかの実施形態において、治療される患者は、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、胆管癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、皮膚黒色腫、子宮内膜癌、および黒色腫からなる群から選択される免疫原性癌を有する。
【0048】
よって、本明細書で提供される方法は、以下のものを含む。
A.CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死を誘導するか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合には、化合物I、II、III、IV、もしくはVまたはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量のCDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与の前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
無増悪生存期間または全生存期間の延長が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0049】
B.CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記癌の免疫原的分類を判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫介在性応答を誘導し得る化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫介在性応答を誘導し得る前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0050】
C.CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0051】
D.CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0052】
E.癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
(i)前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死を誘導するか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合には、化合物I、II、III、IV、もしくはVまたはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量のCDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与の前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
無増悪生存期間または全生存期間の延長が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0053】
F.癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者集団の選択が、以下の工程:
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫介在性応答を誘導し得る化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫介在性応答を誘導し得る前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0054】
G.癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者集団の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0055】
H.癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者集団の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法、例えば、前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、文献もしくはそうでなければ公開されているエビデンス、前臨床試験もしくは臨床試験中の比較、または当業者に認知されている他の手段のいずれかに基づいた前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。いくつかの実施形態において、処置レジメン中、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)患者に対してカルボプラチンおよびゲムシタビン(GC療法)の前に投与した場合の、骨髄および免疫系の保護、ならびに化学療法の抗腫瘍有効性の増強におけるトリラシクリブ(化合物I)の臨床的利益を評価する、G1T28-04ヒト臨床試験の治験概要図である。処置段階は、21日サイクルからなる:トリラシクリブは、ゲムシタビン/カルボプラチン注入の前に240mg/mを静脈内投与した。ゲムシタビンは、1000mg/mを静脈内投与した。カルボプラチンは、各患者の曲線下面積(AUC)2に基づいて算出した用量を静脈内投与した。末梢血サンプルはフローサイトメトリー分析のために、投与前および奇数サイクルの1日目;処置後来院時;および最初の生存追跡調査時に採取した。腫瘍の評価は、39週目までは9週間毎、それ以降は12週間毎に実施した。図に示される場合、LOT=治療歴、Trila=トリラシクリブ、Tox=毒性、PD=疾患進行、WD=撤回、DC=中止、PI=治験責任医師、ANC=絶対好中球数、IV=静脈内、OS=全生存期間、PTV=処置後来院、FU=追跡調査。データカットオフ日である2019年6月28日とほぼ1年後の2020年5月15日の2時点におけるデータスナップショット間で、トリラシクリブのPFSおよびOSに及ぼす効果は、安定していた。
図2図2は、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数およびリスクを有する患者数を表す。y軸は生存率を表す。全生存期間は、群1に対して群3(ハザード比=0.40;名目上のp値=0.0004)および群1に対して群2(ハザード比=0.31;名目上のp値=0.0016)で有意に長かった。データカットオフ日は2020年5月15日。
図3図3は、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数およびリスク患者の数を表す。y軸は無増悪生存率を表す。データカットオフ日は2020年5月15日。
図4A図4Aは、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のフォレストプロットである。データは治療意図(intention to treat)集団のものであり、トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。後天性トリプルネガティブ乳癌とは、転移性トリプルネガティブ乳癌が確認され、過去の生検でエストロゲンおよびプロゲステロン受容体またはHER2陽性が示された患者を指す。トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。層別ログランク検定により両側p値を得た。2処置群間(トリラシクリブとゲムシタビン/カルボプラチンのみ)のハザード比は、その95%信頼区間(CI)とともに、処置と適切な層別因子が固定条件として含められているCox比例ハザードモデルから算出した。プロット中に示される場合:ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。P値は適切な層別因子を共変量として用いる層別ログランク検定から得た。解析は、データカットオフ日を2019年6月28日として実施した。
図4B図4Bは、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のフォレストプロットである。データは治療意図集団のものであり、トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。後天性トリプルネガティブ乳癌とは、転移性トリプルネガティブ乳癌が確認され、過去の生検でエストロゲンおよびプロゲステロン受容体またはHER2陽性が示された患者を指す。トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。層別ログランク検定により両側p値を得た。2処置群間(トリラシクリブとゲムシタビン/カルボプラチンのみ)のハザード比は、その95%信頼区間(CI)とともに、処置と適切な層別因子が固定条件として含められているCox比例ハザードモデルから算出した。プロット中に示される場合:ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。P値は適切な層別因子を共変量として用いる層別ログランク検定から得た。解析は、データカットオフ日を2019年6月28日として実施した。
図4C図4Cは、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のフォレストプロットである。データは治療意図集団のものであり、トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。後天性トリプルネガティブ乳癌とは、転移性トリプルネガティブ乳癌が確認され、過去の生検でエストロゲンおよびプロゲステロン受容体またはHER2陽性が示された患者を指す。トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。層別ログランク検定により両側p値を得た。2処置群間(トリラシクリブとゲムシタビン/カルボプラチンのみ)のハザード比は、その95%信頼区間(CI)とともに、処置と適切な層別因子が固定条件として含められているCox比例ハザードモデルから算出した。プロット中に示される場合:ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。P値は適切な層別因子を共変量として用いる層別ログランク検定から得た。解析は、データカットオフ日を2020年5月15日として実施した。
図4D図4Dは、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のフォレストプロットである。データは治療意図集団のものであり、トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。後天性トリプルネガティブ乳癌とは、転移性トリプルネガティブ乳癌が確認され、過去の生検でエストロゲンおよびプロゲステロン受容体またはHER2陽性が示された患者を指す。トリラシクリブの群2および3のデータは、所定のサブグループ分析のために併合した。層別ログランク検定により両側p値を得た。2処置群間(トリラシクリブとゲムシタビン/カルボプラチンのみ)のHR(ハザード比)は、その95%信頼区間(CI)とともに、処置と適切な層別因子が固定条件として含められているCox比例ハザードモデルから算出した。プロット中に示される場合:ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。P値は適切な層別因子を共変量として用いる層別ログランク検定から得た。解析は、データカットオフ日を2020年5月15日として実施した。
図5図5は、ex vivo刺激後のインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)陽性のCD8陽性T細胞集団(IFN-γ+IL-17A-[CD3+CD8+])の正規化後平均頻度を示すグラフである。解析には、3サイクル以上のゲムシタビン/カルボプラチン(GC)を受けた患者のみ(コホート当たりn=8~15名)を含め、統計学的外れ値は排除した。エラーバーは、95%信頼区間を表す。群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)。データポイントは、同じ患者から異なる時点に採取されたサンプルを表す。グラフ中に示される場合:C=サイクル;D=日。
図6図6は、全内容が本明細書の一部とされる、Galon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumours with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218に示される図3の複写物であり、抗癌治療へと導くツールとして使用するためのイムノフラムを説明するものである。癌は、それらが関連するT細胞(CD3+およびCD8+)の有無と分布に従って4つの主要なサブタイプに分類できる(ホット、排除性に変化、免疫抑制に変化およびコールド)。ホット癌は、免疫構成パラメーターが同時に存在すると定義される:細胞種(CD3+、CD8+、濾胞性ヘルパーT(TFH)、Tヘルパー1(TH1)、記憶および疲弊T細胞);その位置(腫瘍先進部、腫瘍中心部および3次リンパ様構造);密度(免疫密度および量);および機能的免疫配向(ケモカイン、サイトカイン、細胞傷害性因子、接着、誘引およびTH1)。イムノグラムに示される場合、DORA2A:A2Aアデノシン受容体、βm:β2-ミクログロブリン、BET:ブロモドメインおよびエクストラターミナルモチーフタンパク質、BTLA:BおよびTリンパ球アテニュエーター、CAR T細胞:キメラ抗原受容体T細胞、CCR:CC-ケモカイン受容体、CIN:染色体不安定性、CSF1R:コロニー刺激因子1受容体、CTLA4:細胞傷害性Tリンパ球関連抗原、CXCL:CXC-ケモカインリガンド、DDR:DNA損傷応答、ECM:細胞外マトリックス、EMT:上皮間葉転換、FDA:米国食品医薬品局、FGFR3:線維芽細胞増殖因子受容体3、FOXP3:フォークヘッドボックスP3、GITR:グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質、GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、HDAC:ヒストンデアセチラーゼ、HIF1α:低酸素誘導因子1-α、HLA:ヒト白血球抗原、HMA:脱メチル化剤、IAP:アポトーシスファミリー阻害剤(XIAPとしても知られる)、ICAM1:細胞間接着分子1、ICD:免疫原性細胞死、ICOS:誘導性T細胞共刺激因子、ICP:免疫チェックポイント、IDO:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、IFN:インターフェロン、IL:インターロイキン、LAG3:リンパ球活性化遺伝子3、LIGHT:腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14、MAdCAM1:粘膜アドレッシン細胞接着分子1、MCL1:誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質Mcl1、MDSC:骨髄由来抑制細胞、MEK:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ、MET:間葉上皮転換、MSI:マイクロサテライト不安定性、NK:ナチュラルキラー、NOS1:酸化窒素シンターゼ1、PD-1:プログラム細胞死タンパク質1、PD-L1:PD-1リガンド、PI3Kγ:ホスホイノシチド3-キナーゼ-γ、PPARγ:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ、SIGLEC9:シアル酸結合Ig様レクチン9、STING:インターフェロン遺伝子刺激因子、TDO:トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ、TGFβ:トランスフォーミング増殖因子-β、TIGIT:T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン、TIM3:T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3、TKI:チロシンキナーゼ阻害剤、TLR:Toll様受容体、Treg細胞:制御性T細胞、VCAM1:血管細胞接着分子1、VEGF:血管内皮増殖因子、VISTA:T細胞活性化のV-ドメインIg抑制因子、XCL1:リンホタクチン、XCR1:ケモカインXC受容体1。頭字語または略語に続く小文字「i」は阻害剤を示す;頭字語または略語に続く小文字「a」は作動剤を示す。
図7図7Aは、全内容が本明細書の一部とされる、Galon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218に示される図1Aの複写物であり、ホット、変化およびコールド免疫癌の例を説明する。暗色の(3,3’-ジアミノベンジジン(DAB))染色はCD3+T細胞を示し、明るい色の(アルカリ性ホスファターゼ)対比染色は、均質な組織のバックグラウンド染色を示す。CD3+およびCD8+T細胞浸潤のレベルと空間分布により4つの明確な固形腫瘍表現型が識別される:ホット(または炎症性);変化、これは排除性または免疫抑制性であり得る;およびコールド(または非炎症性)。これらの腫瘍表現型はそれぞれ高い、中間、および低いイムノスコアを特徴とする。図7Bは、全内容が本明細書の一部とされる、Galon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218に示される図1Bの複写物であり、免疫腫瘍の4つのサブタイプの概略図である。注目すべきは排除性に変化した腫瘍において、CD3+およびCD8+T細胞浸潤物が腫瘍中心で低く、腫瘍先進部で高く、全体として中間的なイムノスコアとなっていることである。一方、免疫抑制性に変化した腫瘍はCD3+およびCD8+T細胞浸潤(低)のより均一なパターンを示している。CT、腫瘍中心部;Hi、高い;IM、腫瘍先進部;Lo、低い。
図8A図8Aは、G1T28-04臨床試験(NCT02978716)に参加した患者の処置前の癌サンプルのAyersのIFN-γシグネチャースコア分布図である。x軸は確率密度曲線を表し、y軸は算出したAyersのIFN-γシグネチャースコアである。グラフの左側の垂直の点線は第1三分位を表し、グラフの右側の垂直の点線は第2三分位を表し、第1三分位と第2三分位の間の垂直の点線は中央値を表す。
図8B図8Bは、G1T28-04臨床試験(NCT02978716)に参加した患者の処置前の癌サンプルのAyersの拡張された免疫シグネチャースコア分布図である。x軸は確率密度曲線を表し、y軸は算出したAyersのIFN-γシグネチャースコアである。グラフの左側の垂直の点線は第1三分位を表し、グラフの右側の垂直の点線は第2三分位を表し、第1三分位と第2三分位の間の垂直の点線は中央値を表す。
図8C図8Cは、G1T28-04臨床試験(NCT02978716)においてAyersのIFN-γシグネチャースコアが高いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。全生存期間は群1に対して群4(群2+3)で有意に長かった(p=0.0194)。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図8D図8Dは、G1T28-04臨床試験(NCT02978716)においてAyersのIFN-γシグネチャースコアが低いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図8E図8Eは、G1T28-04臨床試験においてAyersのIFN-γシグネチャースコアが低いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図8F図8Fは、G1T28-04臨床試験においてAyersのIFN-γシグネチャースコアが低いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図9A図9Aは、G1T28-04臨床試験においてAyersの拡張された免疫シグネチャースコアが高いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。全生存期間は群1に対して群4(群2+3)で有意に長かった(p=0.0266)。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図9B図9Bは、G1T28-04臨床試験においてAyersの拡張された免疫シグネチャースコアが低いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図9C図9Cは、G1T28-04臨床試験においてAyersの拡張された免疫シグネチャースコアが高いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図9D図9Dは、G1T28-04臨床試験においてAyersの拡張された免疫シグネチャースコアが低いと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの経過月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図10A図10Aは、G1T28-04臨床試験において6クラス免疫シグネチャースコアのC2 IFN-γ優位型と判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。全生存期間は群1に対して群4(群2+3)で有意に長かった(p=0.036)。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図10B図10Bは、G1T28-04臨床試験において6クラス免疫シグネチャースコアのC2 IFN-γ優位型ではないと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の全生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの経過月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図10C図10Cは、G1T28-04臨床試験において6クラス免疫シグネチャースコアのC2 IFN-γ優位型と判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図10D図10Dは、G1T28-04臨床試験において6クラス免疫シグネチャースコアのC2 IFN-γ優位型ではないと判定された、群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ)、および群4(群2+群3)のトリプルネガティブ乳癌ヒト患者の無増悪生存期間のカプラン・マイヤープロットである。x軸は無作為化からの経過月数を表す。y軸は生存率を表す。凡例:破線(- - - -) 群1;点線(・・・・) 群2;実線(-) 群3;一点鎖線(-・-・-) 群4。
図11図11は、ベースライン(誘導前)に対して誘導後および維持療法開始前の、トリラシクリブまたはプラセボを受けた患者の全血中のT細胞受容体β配列の示差存在量解析により測定した増殖T細胞クローン数を示す図である。水平バーは、各グループの拡大クローン数の中央値を示す。
図12図12は、ベースライン(誘導前)に対して誘導後および維持療法開始前の、奏効者および非奏効者の全血中のT細胞受容体β配列の示差存在量解析により測定した増殖T細胞クローン数を示す図である。水平バーは、各グループの増殖クローン数の中央値を示す。
図13図13は、ベースライン(誘導前)に対して誘導後および維持療法開始前の、プラセボまたはトリラシクリブを受けた奏効者および非奏効者における新規増殖T細胞クローン数を示す図である。水平バーは、各グループの増殖クローン数の中央値を示す。
図14図14は、ベースライン(誘導前)に対して誘導後および維持療法開始前の、プラセボまたはトリラシクリブを受けた奏効者および非奏効者における新規増殖T細胞クローンの割合を示す図である。水平バーは、各グループの増殖クローン数の中央値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
定義
化合物は、標準的な命名法を用いて記載される。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0058】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、量の限定を表すものではなく、言及された項目の少なくとも1つの存在を表す。用語「または」は、「および/または」を意味する。値の範囲の列挙は、特に断りのない限り、単にその範囲内に入る各個の値を個々に示す略記法として役立つように意図されたものであり、各個の値は、それが本明細書に個々に列挙される場合と同様に本明細書に組み込まれる。すべての範囲の終点もその範囲内に含まれ、独立に組み合わせることができる。本明細書に記載される方法はすべて、本明細書に特に断りのない限り、またはそうでなければ文脈に明らかな矛盾がない限り、好適な順序で実施することができる。例または例示言語(例えば「など」)の使用は単に本発明をより良く説明することを意図したものであるにすぎず、そうではないことが特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を示すものではない。特に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0059】
「有効量」は、本明細書で使用する場合、治療利益または予防利益を提供する量を意味する。
【0060】
疾患を「治療する」とは、本明細書においてこの用語が使用される場合、患者が被る疾患または障害の少なくとも1つの徴候もしくは症状の頻度もしくは重症度を軽減すること(すなわち、待期療法)または疾患もしくは障害の原因もしくは影響を軽減すること(すなわち、疾患修飾処置)を意味する。
【0061】
本明細書に示される場合、明細書に記載の方法に従って処置される、「宿主」、「対象」、「患者」、または「個体」は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0062】
本開示において、本発明の様々な態様は範囲形式で示すことができる。範囲形式での記載は単に便宜上のものであり、本発明の範囲の限定と解釈されるものではないと理解されるべきである。範囲の記載は、その範囲内のすべての存在し得る部分範囲ならびに個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6などの、その範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。これは範囲の幅にかかわらずに当てはまる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、少なくとも1種類の活性薬剤、および少なくとも1種類の担体などの他の物質を含んでなる組成物である。「医薬組合せ」は、単一の投与形に合わせられ得る、またはそれらの活性薬剤が本明細書に記載の障害を治療するために一緒に使用されることの説明を添えて別個の投与形で一緒に提供され得る、少なくとも2種類の活性薬剤の組合せである。
【0064】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物がその無機および有機の非毒性酸または塩基付加塩を形成することによって修飾されている、開示の化合物の誘導体である。本化合物の塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から従来の化学法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適当な塩基(水酸化、炭酸、重炭酸Na、Ca、Mg、またはKなど)と反応させることによって、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適当な酸と反応させることによって作製することができる。このような反応は一般に水もしくは有機溶媒、または両方の混合物中で行われる。一般に、実施可能な場合には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が典型的である。本化合物の塩としてはさらに、化合物の、および化合物塩の溶媒和物が含まれる。
【0065】
薬学的に許容可能な塩の例としては、限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などが挙げられる。薬学的に許容可能な塩としては、例えば、非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩および第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、従来の非毒性酸塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの;酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH-COOH(ここで、nは0~4である)などの有機酸から、または同じ対イオンを生じる異なる酸を用いて作製される塩が挙げられる。その他の好適な塩の一覧は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa., p. 1418 (1985)に見出すことができる。
【0066】
本発明の医薬組成物/組合せに適用される用語「担体」は、有効化合物がともに提供される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「免疫チェックポイント阻害剤(ICI)」は、刺激された際に免疫刺激に対する免疫応答を弱めることができる免疫系の重要なレギュレーターである免疫チェックポイントを標的とする阻害療法を指す。一部の癌は、免疫チェックポイント標的を刺激することによって自身を攻撃から保護することができる。ICIは、阻害チェックポイントを遮断し、免疫系の機能を回復させる。ICIとしては、プログラム細胞死-1タンパク質(PD-1)、PD-1リガンド-1(PD-L1)、PD-1リガンド-2(PD-L2)、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA:V-domain Ig suppressor of T-cell activation)、B7-H3/CD276、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIRs)、癌胎児性抗原細胞接着分子(CEACAM)例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン15(Siglec-15)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT:T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)、ならびにBおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)タンパク質などの免疫チェックポイントタンパク質が含まれる。免疫チェックポイント阻害剤は当技術分野で公知である。
【0068】
いくつかの実施形態において、用語「CDK4/6複製非依存性癌」は、複製にCDK4/6の活性を有意には必要としない癌を指す。このような種類の癌は、常にではないが多くの場合、CDK2活性レベルの増大または網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサータンパク質もしくは網膜芽細胞腫ファミリーメンバータンパク質、例えば、限定されるものではないがp107およびp130の発現の低下を特徴とする(例えば、それを示す細胞を有する)。CDK2活性レベルの増大または網膜芽細胞腫腫瘍サプレッサータンパク質もしくは網膜芽細胞腫ファミリーメンバータンパク質の発現の低下もしくは欠損は、例えば、正常細胞に比べての増大または低下であり得る。いくつかの実施形態において、CDK2活性レベルの増大は、MYC癌原遺伝子増幅または過剰発現に関連したものであり得る(例えば、それから生じ得るかまたはそれとともに見られ得る)。いくつかの実施形態において、CDK2活性レベルの増大は、サイクリンE1、サイクリンE2、またはサイクリンAの過剰発現に関連したものであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、用語「CDK4/6複製依存性癌」は、複製もしくは増殖にCDK4/6の活性を必要とする、または選択的CDK4/6阻害剤の活性を介して成長阻害を受け得る癌を指す。このような種類の癌および疾患は、機能的網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質の存在を特徴とし得る(例えば、それを示す細胞を有する)。このような癌および疾患は、Rb陽性として分類される。
【0070】
CDK4/6阻害剤療法の抗癌/免疫効果の予測
多数の腫瘍関連または免疫関連バイオマーカーが、ICD誘導化学療法を含む化学療法薬レジメンにCDK4/6阻害剤を加えて抗腫瘍効果を実現可能であるか否かの予測因子として使用可能である。このような予測バイオマーカーとしては、腫瘍細胞による免疫抑制分子(例えば、PD-L1)の発現;炎症性遺伝子の発現を包含する腫瘍微小環境の分子プロファイリング;突然変異ランドスケープおよびネオアンチゲン負荷の評価;ミスマッチ修復欠損およびMSI;腫瘍異数性;免疫浸潤;およびイムノスコア(一般に、引用することにより本発明の一部とされるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと)が挙げられる。例えば、高レベルの体細胞コピー数変化(SCNA)を有する腫瘍は、黒色腫患者における細胞傷害性免疫浸潤の発現の低下に関連している(Davoli et al., Tumor aneuploidy correlates with markers of immune evasion and with reduced response to immunotherapy, Science 355, eaaf8399 (2017)を参照のこと)。高レベルのSCNAを有し、細胞傷害性免疫浸潤の発現の低い腫瘍を有する患者は、化学療法のレジメンにCDK4/6阻害剤を加えて全生存期間の延長をもたらす抗腫瘍効果を実現するとは予測しにくい。
【0071】
重要なこととしては、Galon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumours with combination immunotherapies(前掲)は、改善された免疫応答を誘導する方法で腫瘍を処置するに当たって多数の戦略を記載しているが、それを実施するための、ICD誘導化学療法と組み合わせたCDK4/6阻害剤の使用は記載していない(図6参照)。Galonの文献は、有名科学誌の文献の包括性にもかかわらず、それは癌患者の無増悪生存期間または全生存期間を延長し得る有効な抗癌療法の一部としてのイムノグラムにCDK4/6阻害剤を含むプロトコールの慎重な使用または適当な選択を記載も示唆もしていなかったことから、本発明の発明性のある、意外な態様を強調する。この臨床結果は意外なものである。腫瘍の異常性、全般的免疫状態、免疫細胞浸潤、チェックポイントの欠損、可溶性阻害剤の欠損、阻害的腫瘍代謝の欠損、および腫瘍の免疫エフェクター感受性を含むさらなるパラメーターも、全生存期間の延長をもたらす抗腫瘍効果がそれらの化学療法のレジメンにCDK4/6阻害剤を加えて実現可能であるか否かを判定するために使用することができる。これらの因子の評価は、腫瘍ゲノミクス、イムノスコアアッセイ、免疫組織化学、標準的な血液アッセイおよび免疫遺伝子シグネチャー、前療法および後療法の両方の組合せによって達成することができる(引用することにより本明細書の一部とされるBlank et al., The “cancer immunogram,” Science 352, 658-660 (2016)を参照のこと)。
【0072】
腫瘍の免疫原性分類
上記のように、腫瘍は、ある特定の免疫原性的特徴に基づいて分類することができる。重要なこととしては、腫瘍は様々な分類を経て経時的に進行し得ることが見出された。また、特定の場合において、ある種の腫瘍は異なる個体で異なる免疫原性的特徴を持ち得ることも見出された。
【0073】
本明細書で示されるように、免疫的にホットな腫瘍は、(i)高度のT細胞および細胞傷害性T細胞浸潤、すなわち、高いイムノスコア;および(ii)チェックポイント活性化能(プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、T細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG3))またはそうでなければT細胞機能障害(例えば、細胞外カリウム駆動性T細胞抑制)を有するものである。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の存在および腫瘍関連免疫細胞上での抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現に加え、ホット腫瘍は特徴的に、潜在的ゲノム不安定性および既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示す。例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと。
【0074】
免疫的にホットな腫瘍の特徴が見られることが多い腫瘍としては、限定されるものではないが、膀胱癌、腎細胞癌、肝臓癌(肝細胞癌)、非小細胞肺癌、結腸腺癌、乳房浸潤性癌腫、胆管癌、食道癌、メルケル細胞癌、HPV+頭頸部扁平上皮癌、進行期の黒色腫、皮膚黒色腫、子宮内膜癌、胃癌および子宮頸癌;ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;およびマイクロサテライト不安定性を有する腫瘍(MSI)が挙げられる。免疫的にホットな腫瘍の特徴を有する例示的切除腫瘍を図7Aに示す。
【0075】
免疫抑制性に変化した腫瘍は、(i)不十分な、場合によっては存在しないT細胞および細胞傷害性T細胞浸潤(中間的イムノスコア)、(ii)可溶性阻害メディエーター(トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)、インターロイキン10(IL-10)および血管内皮増殖因子(VEGF))の存在、(iii)免疫抑制細胞(骨髄由来サプレッサー細胞および制御性T細胞)の存在、ならびに(iv)T細胞チェックポイント(PD-1、CTLA4、TIM3およびLAG3)の存在を特徴とする。免疫抑制性に変化した腫瘍部位は、低度の免疫浸潤を示し(図7A)、これは物理的障壁の欠損およびさらなるT細胞動員および増殖を制限する免疫抑制環境の存在を示唆する。例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと。免疫的に免疫抑制に変化した腫瘍の特徴を有する例示的切除腫瘍を図7Aに示す。
【0076】
免疫的に排除性に変化した腫瘍の特徴は(i)腫瘍床内部にT細胞浸潤が認められず;腫瘍辺縁部(腫瘍先進部)にT細胞が集積(中間的イムノスコア)、(ii)発癌経路の活性化、(iii)エピジェネティック調節および腫瘍微小環境のリプログラミング、(iii)腫瘍血管系および/または間質の異常、ならびに(iv)低酸素症である。免疫的に排除性に変化した腫瘍において、T細胞は腫瘍に浸潤できずに腫瘍端部(腫瘍先進部)に見られる。この「排除」表現型は、T細胞介在性免疫応答の効率的に惹起する宿主免疫系の内因的能力およびT細胞浸潤を物理的に隠すことによってこのような応答を回避する腫瘍の能力を表す(図7A)。例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと。免疫的に排除性に変化した腫瘍の特徴を有する例示的切除腫瘍を図7Aに示す。
【0077】
コールド腫瘍の特徴は、(i)腫瘍内部および腫瘍端部にT細胞が存在しない(低いイムノスコア)、および(ii)T細胞プライミングの不成功(低い腫瘍遺伝子変異量、不十分な抗原提示およびT細胞傷害性に対する内因性非感受性)である。また、コールド腫瘍では低いPD-L1発現も示す場合がある。浸潤が不十分である他、コールド腫瘍はまた、免疫学的に無応答(PD-L1をほとんど発現しない)であり、低い突然変異量(低いネオアンチゲン発現)および主要組織適合性複合体クラスI(MHCI)などの抗原提示機構マーカーの低い発現を伴った高い増殖を特徴とすることも記載されている。例えば、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるGalon, J., and Bruni, D., Approaches to treat immune hot, altered and cold tumors with combination immunotherapies, Nature Reviews Drug Discovery (18), March 2019, 197-218を参照のこと。コールド免疫腫瘍の特徴を有する例示的切除腫瘍を図7Aに示す。
【0078】
非免疫原性、または「コールド」の腫瘍は、T細胞の浸潤がなお見られず、これはこれらの腫瘍において免疫応答が機能していない徴候である。T細胞の欠如は、免疫療法薬で免疫応答を誘発することを困難にする。コールド腫瘍の周囲の微小環境は骨髄由来抑制細胞(MDSC)および制御性T細胞(Treg)を含有し、免疫応答を弱め、および腫瘍に移動しようとするT細胞を阻害することが知られている。コールド腫瘍のその他の特徴としては、腫瘍抗原の欠如、抗原提示の血管、T細胞活性化の不在および腫瘍床へのCD8+ホーミングの欠損が含まれる。
【0079】
これらの種類の腫瘍は、チェックポイント阻害剤および免疫療法アプローチが有効でなかったことから、大抵の場合、従来の癌療法で処置される。一部の乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、神経芽腫、小細胞肺癌、および膠芽腫は一般にコールド腫瘍である。
【0080】
腫瘍の免疫原性分類の判定は、切除した腫瘍(原発性または転移性)で行うことができる(例えば図7A参照)。腫瘍内のCD8+T細胞を検出する免疫陽電子放射断層撮影(PET)イメージングなどの侵襲性の低い診断法も使用可能である。腫瘍内CD8+T細胞の免疫PET検出の説明については、引用することにより本明細書の一部とされるRooney et al., Molecular and genetic properties of tumors associated with local immune cytolytic activity, Cell 160, 48-61 (2015)を参照のこと。
【0081】
上記に加え、バルク遺伝子発現プロファイルを用いて腫瘍の免疫原性分類を判定することもできる(それぞれ引用することにより本明細書の一部とされるAli et al., Patterns of immune infiltration in breast cancer and their clinical implications: a gene- expression-based retrospective study, PLOS Med. 13, e1002194 (2016); Newman et al., Robust enumeration of cell subsets from tissue expression profiles, Nat. Methods 12, 453-457 (2015); Rooney et al., Molecular and genetic properties of tumors associated with local immune cytolytic activity, Cell 160, 48-61 (2015), Bindea, G. et al., Spatiotemporal dynamics of intratumoral immune cells reveal the immune landscape in human cancer. Immunity 39, 782-795 (2013)を参照のこと)。
【0082】
CIBERSORT(全白血球集団中の免疫サブセットの相対的割合を推論する)、xCell(全TME中の免疫細胞の存在量を予測する)、TIMER(64の免疫および間質細胞種に割合に基づいてエンリッチメントスコアを作成する)および統合免疫ゲノミクス法(CIBERSORTに基づくアプローチを用い、注目すべきは癌の6つの免疫サブタイプを特定した)などの複数のさらなるツールは、バルク遺伝子発現データのデコンボリューションを使用することによって腫瘍内免疫浸潤物の存在量を評価するために使用可能である(それぞれ引用することにより本明細書の一部とされるNewman et al., Robust enumeration of cell subsets from tissue expression profiles, Nat. Methods 12, 453-457 (2015); Gentles et al., The prognostic landscape of genes and infiltrating immune cells across human cancers, Nat. Med. 21, 938-945 (2015); Aran et al., xCell: digitally portraying the tissue cellular heterogeneity landscape, Genome Biol. 18, 220 (2017); Li et al., TIMER: a web server for comprehensive analysis of tumor- infiltrating immune cells, Cancer Res. 77, e108-e110 (2017); Thorsson, V. et al., The immune landscape of cancer. Immunity 48, 812-830 (2018)を参照のこと)。
【0083】
イムノスコア
イムノスコアは、デジタルパソロジーであり、種々の腫瘍位置でCD3+およびCD8+T細胞の密度を測定するIHCに基づく免疫アッセイである。イムノスコアの採点は、2500を超えるSt I-III結腸癌患者に対して実施された大きな国際的SITC主導の後ろ向きバリデーション試験で定義されている(引用することにより本明細書の一部とされるPages et al, International validation of the consensus Immunoscore for the classification of colon cancer: a prognostic and accuracy study, The Lancet Volume 391, ISSUE 10135, P2128-2139, 2018年5月26日を参照のこと)。市販のイムノスコアアッセイは、例えば、HalioDx,Inc.(Richmond、Va)から入手可能である。簡単に述べれば、CD3およびCD8免疫染色ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)スライドをスキャンし、2つ対応するデジタル画像がオペレーターによりバリデートされる。画像解析は専用のソフトウエア(Immunoscore Analyzer、HalioDx)によって行われ、組織病理学的構造の自動検出の後にオペレーターによってガイドされる腫瘍、健常組織(粘膜下、固有筋層、漿膜)、および上皮(粘膜)の定義が行われる。このオペレーターはまた、偽陽性を避けるためにすべての壊死、膿瘍、およびアーティファクト(気泡保持、裂開領域、バックグラウンド)領域を除外する。健常組織で360μm、腫瘍でも360μmにわたるIMがこのソフトウエアによって自動算出される。複数のFFPEブロックの存在下、イムノスコア評価のために選択するためのものはIMを含有するものである。
【0084】
Ayersの免疫スコア
CDK4/6阻害剤療法の抗腫瘍効果を予測するためのさらなる手段は、Ayers et al. Ayers M, et al. “IFN-γ-Related MRNA Profile Predicts Clinical Response to PD-1 Blockade.” Journal of Clinical Investigation, vol. 127, no. 8, 2017, pp. 2930-2940., doi:10.1172/jci91190(引用することにより全内容が本明細書の一部とされる)に記載されるように腫瘍のIFN-γシグネチャースコアおよび/または拡張された免疫シグネチャースコアを決定することであり、彼らは免疫チェックポイント阻害剤(例えば、ペンブロリズマブ)に対する応答を予測する遺伝子発現シグネチャーを構築するための徹底的な反復アプローチの概略を述べている。黒色腫データから始め、片側t検定を用いてペンブロリズマブに対する奏効者と非奏効者の間で差次的に発現される遺伝子を検出した。これらの差次的に発現される遺伝子の多くはIFN-γシグナル伝達に関連したことは特筆すべきものであり、Ayersらは、IFN-γ経路およびその関連遺伝子内の平均的発現によるICI応答のための予備的なIFN-γシグネチャーを開発した。
【0085】
この応答の予備的なシグネチャーのロバスト性は、さらに黒色腫、HNSCCおよび胃癌でも評価された。予備的なシグネチャーはBORおよびPFSとの有意な関連を示したが、OSはそうではなかった。非黒色腫癌における予測を改善するために、拡大コホート内で個々の遺伝子とBORおよびPFSの間の単変量関連を評価することによってこれらの免疫シグネチャーをトリミングし拡大した。統計学的に有意でない関連を有する遺伝子をシグネチャーから取り除き、有意な関連を有する加えて中間的なIFN-ガンマシグネチャーを形成した。
【0086】
このような予測シグネチャーの複数の癌種への拡大のための概念実証として、抗PD-1療法に対する奏効者と非奏効者の識別における予備的かつ中間的なIFN-ガンマシグネチャーの成功を参照し、KEYNOTE-012(ClinicalTrials.gov ID:NCT01848834)およびKENYNOTE-028治験(ClinicalTrials.gov ID:NCT02054806)から得たワイドアレイサンプルを用いて複数の癌種のための最終シグネチャーを開発した。BORに対する罰則付きロジスティック回帰を用い、中間シグネチャーを18のPD-1/PD-L1応答関連遺伝子の最終セットにさらに絞った。
【0087】
IFN-γシグネチャー分析は、6つの遺伝子:IDO1、CXCL10、CXCL9、HLA-DRA;STAT1、およびIFN-γの発現プロファイルを決定することからなる。拡張された免疫シグネチャー分析は、18の遺伝子:CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA-DRB1、HLA-DQA1、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、およびTIGITの発現プロファイルを決定することからなる。
【0088】
Ayersらは、Nanostringプラットフォームで680遺伝子のパネルを用いてシーケンシング定量を行った。いずれかの多遺伝子シグネチャー(IFN-γシグネチャーまたは拡張された免疫シグネチャー)のサンプルスコアを計算するために、log10変換とその後の遺伝子セットの平均取得の前にクオンタイル正規化を行う。シグネチャースコアの識別能の指標として、ROC曲線下面積の計算を使用した。潜在的臨床有用性を示すために「最適」カットオフ、すなわちシグネチャースコアの「高」/「低」を選択するための横断的方法として、ROC曲線の集約尺度であるYouden指数(引用することにより本明細書の一部とされるYouden WJ. Index for rating diagnostic tests. Cancer. 1950;3(1):32-35を参照のこと)を使用した。例えば、「高い」IFN-γシグネチャーまたは拡張された免疫シグネチャーは、既知の免疫原性サンプルのスコアとの比較に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態において、「高い」IFN-γシグネチャーまたは拡張された免疫シグネチャースコアは、少なくとも2.25、2.5、または2.75より大きいスコアのものである。いくつかの実施形態において、「高い」IFN-γシグネチャーまたは拡張された免疫シグネチャースコアは、少なくとも2.5より大きいスコアのものである。
【0089】
この評価は、T細胞炎症性微小環境の生物学を捕捉するT細胞炎症性遺伝子発現プロファイルの腫瘍種非依存的適用可能性を提供し、以下の例に示されるように、高いIFN-γシグネチャースコアおよび/または増大した免疫シグネチャースコアを有し、CDK4/6阻害剤が投与されるTNBC患者は、CDK4/6阻害剤が投与されないTNBC患者に比べて統計的に有意な全生存期間の改善を示す。
【0090】
Thorssonらの6クラス免疫シグネチャー
CDK4/6阻害剤療法の抗腫瘍効果を予測するためのその他の測定は、Thorsson et al., “The Immune Landscape of Cancer.” Immunity, vol 51, no. 2, 2018, pp. 812-830(引用することにより全内容が本明細書の一部とされる)に記載されているように腫瘍の6クラス免疫シグネチャーを決定することである。Thorssonらは、発現シグネチャーに関して拡大文献検索をを行い、免疫応答の様々な相を特徴付けた。この検索の結果、検討のためのシグネチャーは160となった。全TCGA(The Cancer Genome Atlas)データセットにわたる重み付き遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA)を用いて、これらの160シグネチャーを、一貫した免疫現象を測定するという主旨の9つの識別可能なシグネチャーモジュール、またはシグネチャーコレクションにクラスター化した。次に、候補シグネチャーを、これらの9つのモジュールのそれぞれから「平均プロファイル」に最も近いシグネチャーに限定した。
【0091】
更なる検討により、これらの9つの代表的シグネチャーのうち4つはTCGAデータに関してロバストな分類指標ではなく、モデルトレーニングのどのサンプルが使用されたかによって変動性の高い分類となることが確認された。これによりサンプル分類に用いるために5つの免疫シグネチャーが残り、これらを以下の表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
これらの5つのシグネチャーのそれぞれのスコアは、TCGAデータセットに対して単一サンプル遺伝子セットエンリッチメント分析(ssGSEA)を用いて計算した。次に、これらのデータを、教師なしのコンセンサスクラスタリングアプローチを用いてクラスター化し、表2に記載されるように6つの識別免疫応答サブタイプを得た。
【0094】
【表2】
【0095】
実施例3に記載されるように、C2「IFN-γ優位」分類の腫瘍を有するTNBC患者にCDK4/6阻害剤を投与したところ、処置中にCDK4/6阻害剤が投与されていないC2「IFN-γ優位」の患者に比べて統計的に有意な全生存期間の改善を示す。
【0096】
PD-L1の状態
CDK4/6阻害剤療法の抗腫瘍効果を予測するためのその他の手段は、腫瘍のプログラム細胞死-1リガンド(PD-L1)の状態を決定することである。PD-L1は、その2種の阻害受容体、すなわち、プログラム細胞死-1(PD-1)およびB7.1への結合を介して免疫応答を下方調節する膜貫通タンパク質である。PD-1は、T細胞の活性化の後にT細胞上に発現される阻害受容体であり、慢性感染または癌などの慢性的刺激状態で持続される(Blank, C and Mackensen, A, Contribution of the PD-L1/PD-1 pathway to T-cell exhaustion: an update on implications for chronic infections and tumor evasion. Cancer Immunol Immunother, 2007. 56(5): p. 739-745)。PD-L1のPD-1への結合は、T細胞の増殖、サイトカイン産生および細胞溶解活性を阻害し、T細胞の機能的不活性化または疲弊をもたらす。B7.1は、抗原提示細胞および活性化されたT細胞上に発現される分子である。T細胞および抗原提示細胞上のB7.1へのPD-L1の結合は、T細胞の活性化およびサイトカイン産生の阻害を含む免疫応答の下方調節を媒介し得る(Butte MJ, Keir ME, Phamduy TB, et al. Programmed death-1 ligand 1 interacts specifically with the B7-1 costimulatory molecule to inhibit T cell responses. Immunity. 2007;27(1):111-122を参照のこと)。PD-L1の発現は免疫細胞および腫瘍細胞に認められている。Dong H, Zhu G, Tamada K, Chen L. B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion. Nat Med. 1999;5(12):1365-1369; Herbst RS, Soria JC, Kowanetz M, et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature. 2014;515(7528):563-567を参照のこと。腫瘍細胞上でのPD-L1の異常な発現は、抗腫瘍免疫を妨げて免疫回避をもたらすことが報告されている。従って、PD-L1/PD-1経路の妨害は、腫瘍微小環境におけるPD-L1の発現により抑制された腫瘍特異的T細胞免疫を再活性化するための魅力的な戦略となる。癌では、PD-L1の上方調節が癌を宿主免疫系から回避させ得る。
【0097】
PD-L1発現は、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。例えば、PD-L1発現は、ペンブロリズマブ処置のためのコンパニオン試験としてDako and Bristol-Meyers Squibbによって開発され、米国食品医薬品局に承認されたin vitro診断免疫組織化学(IHC)検査であるPD-L1 IHC 22C3 pharmDxを用いて検出することができる。これはモノクローナルマウス抗PD-L1、クローン22C3 PD-L1およびホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト非小細胞肺癌組織中のPD-L1を検出するためのAutostainer Lin 48上のEnVision FLEX可視化システムを用いた定性的アッセイである。発現レベルは、部分的または完全な膜染色を示す生存能ある腫瘍細胞のパーセンテージを測定するtumor proportion score(TPS)を用いて測定することができる。染色は1%~100%のPD-L1発現を示し得る。
【0098】
PD-L1発現はまた、ニボルマブ処置のためのコンパニオン試験としてDako and Merckにより開発され、米国食品医薬品局により承認されたin vitro診断免疫組織化学(IHC)検査であるPD-L1 IHC 28-8 pharmDxを用いて検出することもできる。この定性的アッセイは、モノクローナルウサギ抗PD-L1、クローン28-8およびホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト非小細胞肺癌組織中のPD-L1を検出するためのAutostainer Lin 48上のEn Vision FLEX可視化システムを使用する。
【0099】
PD-L1検出のための他の市販の検査としては、モノクローナルウサギ抗PD-L1、クローンSP263を用いるVentana SP263アッセイ(AstraZenecaとの連携のもとVentanaにより開発された)およびウサギモノクローナル抗PD-L1クローンSP142を用いるVentana SP142アッセイ(Genentech/Rocheとの連携のもとVentanaにより開発された)が含まれる。PD-L1状態の判定は適応特異的であり、評価は、強度によらずPD-L1発現腫瘍浸潤免疫細胞により占有される腫瘍面積の割合(%IC)または強度によらずPD-L1発現腫瘍細胞のパーセンテージ(%TC)のいずれかに基づく。例えば、尿路上皮癌組織においては、例えば、Ventana PD-L1(SP142)アッセイによって≧5%ICのPD-L1発現と判定されるが、TNBCにおけるPD-L1陽性状態は≧1%ICと考えられ、NSCLCは≧50%TCまたは≧10%ICと考えられる。
【0100】
短時間作用型CDK4/6阻害剤
本発明における使用のための短時間作用型CDK4/6阻害剤としては、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、および化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0101】
トリラシクリブ(2’-((5-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-7’,8’-ジヒドロ-6’H-スピロ(シクロヘキサン-1,9’-ピラジノ(1’,2’:1,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン)-6’-オン)として知られる化合物Iは、下記の構造を有する選択性の高いCDK4/6阻害剤である。
【化2】
【0102】
本明細書で提供されるように、トリラシクリブまたはその薬学的に許容可能な塩、その組成物、同位体類似体、またはプロドラッグは、ICD誘導化学療法薬などの化学療法を含む免疫応答を含む化学療法薬において、好適な担体とともに投与される。トリラシクリブは引用することにより全内容が本明細書の一部とされる米国特許第8,598,186号に記載されている。トリラシクリブは、引用することにより全内容が本明細書の一部とされるWO2019/0135820に記載されるように合成することができる。
【0103】
トリラシクリブ、一実施形態において、ICD誘導化学療法などの化学療法を含む免疫応答の投与前に、患者に非経口的に、例えば、静脈内投与され得る。いくつかの実施形態において、トリラシクリブは、化学療法の投与前最大約24時間以内に、または最大約20、15、10、5、または4時間以内に、例えば、約30~60分以内に投与される。いくつかの実施形態において、トリラシクリブは、化学療法の投与前およそ約22~26時間に投与され、化学療法の投与前約4時間以内、例えば、約30~60分以内に再び投与される。いくつかの実施形態において、投与されるトリラシクリブの用量は、約180~約280mg/mである。例えば、用量は、医療関係者によって望ましいと判定されるように、最大約100、125、150、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、もしくは280mg/m、またはこれらの数値の間のいずれの用量であってもよい。特定の実施形態において、用量は、約240mg/mである。
【0104】
トリラシクリブは、全身、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、または皮内を含む、所望の転帰を得るいずれの様式で投与することもできる。注射の場合、トリラシクリブは、一実施形態において、例えば、300mgのトリラシクリブ(349mgのトリラシクリブ二塩酸塩に相当)を提供する無菌凍結乾燥黄色塊としての300mg/バイアルとして提供され得る。この製品は例えば単回使用20mL透明ガラスバイアルで供給してよく、保存剤を含有しない。投与前に、注射用トリラシクリブ300mg/バイアルを19.5mLの0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液で再構成してよい。この再構成溶液のトリラシクリブ濃度は15mg/mLであり、その後、一般に、静脈内投与前に希釈される。
【0105】
別の実施形態において、レロシクリブ、またはその薬学的に許容可能な塩として知られる化合物IIIがトリラシクリブの代わりに投与される。レロシクリブ(2’-((5-(4-イソプロピルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-7’,8’-ジヒドロ-6’H-スピロ[シクロヘキサン-1,9’-ピラジノ[1’,2’:1,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン]-6’-オン)は以下の化学構造を有する。
【化3】
【0106】
レロシクリブは、全身、非経口、経口、静脈内、筋肉内、皮下、または皮内を含む所望の効果を得るいずれの様式で投与することもできる。レロシクリブは、引用することにより本明細書の一部とされるWO2014/144325に従前に記載されているように製造することができる。いくつかの実施形態において、レロシクリブは、トリラシクリブに関して上記したものと同じ推奨量および方法を用いて投与される。
【0107】
さらに別の実施形態において、以下の構造を有するCDK4/6阻害剤:
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩がトリラシクリブの代わりに投与される。いくつかの実施形態において、この化合物は、トリラシクリブに関して上記したものと同じ推奨量および方法を用いて投与される。
【0108】
さらに別の実施形態において、以下の構造を有するCDK4/6阻害剤:
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩がトリラシクリブの代わりに投与される。いくつかの実施形態において、この化合物は、トリラシクリブに関して上記したものと同じ推奨量および方法を用いて投与される。
【0109】
さらに別の実施形態において、以下の構造を有するCDK4/6阻害剤:
【化6】
[式中、
Rは、C(H)X、NX、C(H)Y、またはC(X)であり、
Xは、直鎖、分岐鎖または環状のC~Cアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、sec-ペンチル、およびシクロペンチルであり、
Yは、NRであり、
およびRは、独立にXであるか、またはRおよびRは一緒になって、1もしくは2個のヘテロ原子(N、O、もしくはS)を含む架橋を形成するアルキル基であり、
2個のX基は一緒になって、アルキル架橋、またはスピロ化合物を形成するための1もしくは2個のヘテロ原子(N、S、もしくはO)を含む架橋を形成してもよい。]
またはその薬学的に許容可能な塩が、トリラシクリブの代わりに投与される。いくつかの実施形態において、この式から選択される化合物は、トリラシクリブに関して上記したものと同じ推奨量および方法を用いて投与される。
【0110】
別の実施形態において、上記に具体的に記載されたもの以外のCDK4/6阻害剤も本発明において使用可能である。限定されない例として、パルボシクリブ、アベマシクリブ、およびリボシクリブが挙げられる。
【0111】
あるいは、CDK4/6阻害剤は、任意の薬学的に有効な形態として、例えば、丸剤、注射剤もしくは輸液、カプセル剤、錠剤、シロップ、経皮パッチ、皮下パッチ、皮下注射剤、ドライパウダー、口内もしくは舌下製剤、非経口製剤、またはその他の好適な投与製剤として調剤され得る。
【0112】
免疫介在性応答を誘導し得る化学療法
標準的な癌化学療法は、(i)その意図された治療効果の一部として免疫原性細胞死を誘導する;および(ii)腫瘍が免疫応答を回避するために使用する戦略を妨害するという2つの主要な方法で腫瘍免疫を増進することができる。データの大部分は、いくつかの化学療法薬はそれらの標準的な用量およびスケジュールで、少なくとも一部には免疫原性細胞死を誘導することによりそれらの抗腫瘍効果を媒介することを示す(例えば、Emens et al., Chemotherapy: friend of foe to cancer vaccines? Curr Opin Mol Ther 2001;3:77-84; Vanmeerbeek et al., Trial Watch: Chemotherapy-Induced Immunogenic Cell Death in Immuni-Oncology. Oncoimmunology Vol. 9, No. 1 2020:e1703449を参照のこと。これらは両方とも引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0113】
免疫原性細胞死(ICD)は、例えば、カルレティキュリン(CRT)の細胞表面転移、ATPおよび高移動度群ボックス1(HMBG1)の細胞外放出、ならびにI型インターフェロン(IFN)応答の刺激を特徴とする細胞死の一種である。癌細胞におけるICDは、抗癌免疫応答をプライミングし得る。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の存在量および組成の変化によって示されるように、多様な化学療法薬がICDを誘導し得る。
【0114】
ICD誘導化学療法薬に応答して、腫瘍細胞は死の前に細胞表面にCRTを発現し、アポトーシスの際にはATPなどのダメージ関連分子パターン(DAMP)分子を、または続発性の壊死の際にはHMGB1を放出する。これらのDAMPは、樹状細胞(DC)の腫瘍床への動員、腫瘍抗原の取り込みおよびプロセシング、ならびにT細胞への最適な抗原提示を刺激する。CD8+T細胞の交差プライミングは、成熟DCおよびγδT細胞によってIL-1βおよびIL-17依存的に誘発される。次に、プライミングされたCTLは直接的な細胞傷害性応答を惹起し、IFN-γ、パーフォリン-1およびグランザイムBの生成を介して残りの腫瘍細胞を死滅させる。
【0115】
本発明における使用のためのICD誘導化学療法としては、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、およびオキサリプラチンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、ミトロキサントロン(mitroxantrone)、ゲムシタビン、および5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;ブレオマイシンおよびアントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、およびバルルビシンを含む)などの細胞傷害性抗生物質;パクリタキセル、カバジタキセル、およびドセタキセルなどのタキサン;トポテカン、イリノテカン、およびエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害剤;カルボプラチンおよびシスプラチンなどの白金化合物;ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびビンデシンなどの抗微小管ビンカアルカロイド薬が挙げられる。他のICD誘導化学療法としては、ボルテゾミブ、26Sプロテアソームサブユニット阻害剤、メクロレタミン、ジアジコン、マイトマイシンC、フルダラビンおよびシトシンアラビノシドが挙げられる。いくつかの実施形態において、ICD誘導化学療法は、イダルビシン、エピルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、ゲムシタビン、およびシクロホスファミド、およびそれらの組合せから選択される。別の実施形態において、投与される、免疫応答を誘導し得る化学療法薬は、免疫原性細胞死とは異なる機構によって腫瘍免疫を調節し得る。様々な化学療法薬は、増強抗原提示、B7.1(CD80)およびB7.2(CD86)を含む共刺激分子の発現の増強、プログラム細胞死-リガンド1(PD-L1)などのチェックポイント分子の下方調節、またはfas、パーフォリン、またはグランザイムB経路による腫瘍細胞死の促進を介して、腫瘍細胞の顕著な免疫細胞サブセットの活性または免疫表現型を調節することができる。腫瘍免疫を調節する化学療法は、例えば、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、シスプラチン、およびドキソルビシンなど、骨髄由来抑制細胞(MDSC)活性を排除すること;例えば、シクロホスファミド、5-フルオロウラシルなど、Treg活性を排除すること;パクリタキセル、シスプラチン、およびフルダラビン;例えば、ゲムシタビンおよびアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシンおよびイダルビシン)など、T細胞の交差プライミングを増強すること;例えば、アントラサイクリン、タキサン、シクロホスファミド、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、およびマイトマイシンCなど、樹状細胞の活性化を増進すること;例えば、シクロホスファミドおよびパクリタキセルなど、抗腫瘍CD4+T細胞表現型を促進すること;ならびに例えば、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、ドキソルビシン、シスプラチン、およびシトシンアラビノシドなど、腫瘍細胞の認識および溶解を促進することによってこれを行うことができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のシクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、またはオキサリプラチンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、ミトロキサントロン(mitroxantrone)、ゲムシタビン、または5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;ブレオマイシンまたはアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、もしくはバルルビシン)などの細胞傷害性抗生物質;パクリタキセル、カバジタキセル、およびドセタキセルなどのタキサン;トポテカン、イリノテカン、およびエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害剤;カルボプラチンおよびシスプラチンなどの白金化合物;ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどの抗微小管ビンカアルカロイド薬;ボルテゾミブ;メクロレタミン;ジアジコン;フルダラビン;マイトマイシンC;およびシトシンアラビノシドと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、化学療法と組み合わせたCDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0117】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のシクロホスファミドと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、シクロホスファミドと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0118】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のトラベクテジンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、トラベクテジンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0119】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のテモゾロミドと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、テモゾロミドと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0120】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のメルファランと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、メルファランと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0121】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のダカルバジンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ダカルバジンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0122】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のオキサリプラチンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、オキサリプラチンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0123】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のメトトレキサートと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、メトトレキサートと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0124】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量の5-フルオロウラシル(5-FU)と組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、フルオロウラシル(5-FU)と組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0125】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のゲムシタビンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ゲムシタビンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0126】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のミトキサントロンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ミトキサントロンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0127】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のドキソルビシンと組み合わせて投与することを含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ドキソルビシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0128】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のダウノルビシンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ダウノルビシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0129】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のイダルビシンと組み合わせて投与することを含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、イダルビシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0130】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のバルルビシンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、バルルビシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0131】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のエピルビシンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、エピルビシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0132】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のブレオマイシンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ブレオマイシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0133】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のボルテゾミブと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ボルテゾミブと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0134】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のパクリタキセルと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、パクリタキセルと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0135】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のドセタキセルと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ドセタキセルと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0136】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のカバジタキセルと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、カバジタキセルと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0137】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のトポテカンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、トポテカンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0138】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のエトポシドと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、エトポシドと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0139】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のイリノテカンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、イリノテカンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0140】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のシスプラチンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、シスプラチンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0141】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のカルボプラチンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、カルボプラチンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0142】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のビンブラスチンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ビンブラスチンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0143】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のビンクリスチンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ビンクリスチンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0144】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のビノレルビンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ビノレルビンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0145】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のビンデシンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ビンデシンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0146】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のジアジコンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、ジアジコンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0147】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のメクロレタミンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、メクロレタミンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0148】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のマイトマイシンCと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、マイトマイシンCと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0149】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のフルダラビンと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、フルダラビンと組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0150】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この方法が、以下の工程:癌が、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否か、あるいは免疫原性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に有効量のCDK4/6阻害剤を、有効量のシトシンアラビノシドと組み合わせて投与する工程を含んでなる方法が提供される。いくつかの実施形態において、シトシンアラビノシド(cytosine arobinoside)と組み合わせた短時間作用型CDK4/6阻害剤の投与は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含まない。いくつかの実施形態において、患者は、免疫原性として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的にホットな腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、免疫的に排除性に変化した腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、コールド腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、C2「IFN-γ優位型」クラス癌として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、高い「IFN-γシグネチャー」または高い「拡張された免疫シグネチャー」として分類される腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性の腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。いくつかの実施形態において、投与されるCDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0151】
上記の実施形態のいずれにおいても、処置される患者は、免疫調節に有利な周囲微小環境を有する、免疫原性である、または免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性である癌を有すると判定されている。従って、癌が本明細書に記載されるような分類に当てはまる限り、患者は記載の処置に好適であり得る。いくつかの実施形態において、処置される癌は、限定されるものではないがエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌およびトリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、胆管癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、皮膚黒色腫および黒色腫からなる群から選択される。
【0152】
いくつかの実施形態において、本発明では、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含むトリプルネガティブ乳癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この工程は、以下の工程:患者にゲムシタビンおよびカルボプラチンを投与する工程、ならびに化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩から選択されるCDK4/6阻害剤を、ゲムシタビンおよびカルボプラチンの投与前に投与する工程を含んで也、癌が、処置の開始前に、免疫原性であるか、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか、または免疫調節に有利な周囲微小環境を有すると判定される方法が提供される。
【0153】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含むトリプルネガティブ乳癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、この工程は、以下の工程:患21日サイクルの1日目および8日目に患者にゲムシタビンおよびカルボプラチンを投与する工程、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩から選択されるCDK4/6阻害剤を、CDK4/6阻害剤はゲムシタビンおよびカルボプラチンの投与前に投与する工程を含んでなり、トリプルネガティブ癌は、処置の開始前に、免疫原性であるか、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか、または免疫調節に有利な周囲微小環境を有すると判定される方法が提供される。
【0154】
投与プロトコール
本明細書に記載の方法は、癌患者の全生存期間または無増悪生存期間を延長するための、CDK4/6阻害剤と、癌において免疫介在性応答を誘導し得る化学療法、例えば、ICD誘導化学療法の投与を提供し、このような方法は、以下の工程:患者が、免疫原性として分類され得るか否か、免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否か、またはCDK4/6阻害剤処置に感受性がある癌を有するか否か、あるいはその癌が、免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、および、そうであれば、患者に免疫介在性応答を誘導し得る化学療法薬をCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬の投与前または投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化学療法薬による処置の前、約24時間、約20時間、約16時間、約12時間、約8時間、約4時間、約2.5時間、約2時間、約1時間、約1/2時間またはそれより短い時間以内に対象に投与される。特定の実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化学療法薬投与の約1/2時間前に投与される。
【0156】
一般に、選択的CDK4/6阻害剤は、CDK4/6阻害剤が化学療法薬による処置前または処置中にピーク血清レベルに達して免疫エフェクター細胞の増殖の阻害を可能とする、従って化学療法の有害作用からそれらを保護するように、化学療法薬による処置の前に対象に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬曝露と同時に、またはそれに近接して投与される。一実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である。一実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0157】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬による処置前、約24時間、約20時間、約16時間、約12時間、約8時間、約4時間、約2.5時間、約2時間、約1時間、約1/2時間またはそれより短い時間以内に対象に投与される。特定の実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化学療法薬の投与の約1/2時間前に投与される。一般に、選択的CDK4/6阻害剤は、CDK4/6阻害剤が化学療法薬による処置前または処置中にピーク血清レベルに達して免疫エフェクター細胞の増殖の阻害を可能とする、従って化学療法の有害作用からそれらを保護するように、化学療法薬による処置の前に対象に投与される。一実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬曝露と同時に、またはそれに近接して投与される。あるいは、本明細書に記載のCDK4/6阻害剤は、所望により化学療法薬曝露に関連する免疫エフェクター細胞損傷を緩和するために化学療法薬曝露後に投与することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法の投与前に対象に2回投与される。例えば、いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法投与の約18~28時間前、次いで化学療法薬による処置前約4時間、約2.5時間、約2時間、約1時間、約1/2時間またはそれより短い時間以内にもう1回投与される。特定の実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、化学療法薬の投与約22~26時間前および化学療法薬の投与の前約1/2時間以内に再投与される。
【0159】
特定の実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬の投与前、または投与と同時投与され、化学療法薬は、例えば、21日毎に1~3日目に;28日毎に1~3日目に;3週間毎に1日目に;28日毎に1日目、8日目、および15日目に、28日毎に1日目および8日目に;21日毎に1日目および8日目に;21日毎に1~5日目に;6~8週間、1週間の1日目に;1日目、22日目、および43日目に;毎週1日目および2日目に;1~4日目および22~25日目に;1~4日目に;22~25日目および43~46日目に;および同様のタイプの化学療法薬レジメンで投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬投与レジメン中、化学療法薬の少なくとも1回の投与前または投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6は、化学療法薬投与レジメン中、化学療法薬の1回以上の投与前にまたは投与と同時に投与される。一実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬投与レジメン中、各化学療法薬投与の前または投与と同時に投与される。
【0160】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、例えば21日日サイクルなどの標準化学療法薬プロトコール中に、例えば各化学療法薬投与の前または投与と同時に投与される。標準化学療法薬プロトコールの停止後、CDK4/6阻害剤は、さらに維持量で単独投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、さらに少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、26、52、104週間、またはそれより長い期間、1週間に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、化学療法薬プロトコールの停止後21日毎に1回投与される。一実施形態において、選択的CDK4/6阻害剤は、速効性の短半減期CDK4/6阻害剤である。
【0161】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、標準化学療法薬プロトコールの停止後、維持療法投与レジメンで化学療法薬剤とともに投与される。維持療法は、第一選択または従前のレジメンの一部としての所与の薬剤の継続(継続維持)または新たな薬剤による処置(切り替え維持)をいずれかを含んでなり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、さらに維持型治療レジメンで投与され、CDK4/6阻害剤は、低減維持量の化学療法と組み合わせて、規定の投与間隔で、例えば、限定されるものではないが、最初の化学療法処置の終了後、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1か月毎に1回、6週間毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回、または6か月毎に1回投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、従前の化学療法処置相で使用したものと同じ薬剤とともに投与される。いくつかの実施形態において、CDK4/6阻害剤は、従前の化学療法処置相で使用したものと異なる化学療法薬とともに投与される。
【0163】
いくつかの実施形態において、患者にチェックポイント阻害剤は投与されない。
【0164】
実施形態
以下の実施形態が本明細書で提供される。
【0165】
実施形態1
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)前記患者の癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが免疫介在性応答、例えば、免疫原性細胞死を誘導するか否かを判定する工程、
(i)および(ii)の両方が肯定的である場合には、
(iii)化合物I、II、III、IV、もしくはV:
【化7】
[式中、
Rは、C(H)X、NX、C(H)Y、またはC(X)であり、
Xは、直鎖、分岐鎖または環状のC~Cアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、sec-ペンチル、およびシクロペンチルであり、
Yは、NRであり、
およびRは、独立にXであるか、またはRおよびRは一緒になって、1もしくは2個のヘテロ原子(N、O、もしくはS)を含む架橋を形成するアルキル基であり、
2個のX基は一緒になって、アルキル架橋、またはスピロ化合物を形成するための1もしくは2個のヘテロ原子(N、S、もしくはO)を含む架橋を形成してもよい。]
またはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量のCDK4/6阻害剤を投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与の前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記方法。
【0166】
実施形態2
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態1の方法。
【0167】
実施形態3
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態1の方法。
【0168】
実施形態4
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、実施形態1の方法。
【0169】
実施形態5
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態1の方法。
【0170】
実施形態6
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態1の方法。
【0171】
実施形態7
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態1の方法。
【0172】
実施形態8
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態1~7のいずれかの方法。
【0173】
実施形態9
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態1~7のいずれかの方法。
【0174】
実施形態10
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌がIFN-γ優位型のクラスの癌であるか否か、高いIFN-γシグネチャーの癌微小環境を有するか否か、または高い拡張された免疫シグネチャー、PD-L1陽性、もしくはそれらの組合せを有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態1~7のいずれかの方法。
【0175】
実施形態11
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~7のいずれかの方法。
【0176】
実施形態12
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物II、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~11のいずれかの方法。
【0177】
実施形態13
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~11のいずれかの方法。
【0178】
実施形態14
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物IV、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~11のいずれかの方法。
【0179】
実施形態15
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物V、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~11のいずれかの方法。
【0180】
実施形態16
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態1~15のいずれかの方法。
【0181】
実施形態17
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態1~15のいずれかの方法。
【0182】
実施形態18
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態1~15のいずれかの方法。
【0183】
実施形態19
前記化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1~18のいずれかの方法。
【0184】
実施形態20
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のために、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように患者または患者集団を選択するための方法であって、
前記方法が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づくICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性であり、かつ前記ICD誘導化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記ICD誘導化学療法を、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、もしくは化合物Vまたはその薬学的に許容可能な塩から選択される有効量の短時間作用型CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与の前、または場合により前記ICD誘導化学療法の前および前記ICD誘導化学療法と同時に投与される、前記方法。
【0185】
実施形態21
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性であり、その判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態20の方法。
【0186】
実施形態22
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性であり、その判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態20の方法。
【0187】
実施形態23
前記癌がGalonイムノスコアシステムに従って免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性である、実施形態20の方法。
【0188】
実施形態24
前記癌が免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される場合に、前記癌が免疫原性である、実施形態20の方法。
【0189】
実施形態25
前記癌が免疫的に免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される場合に、前記癌が免疫原性である、実施形態20の方法。
【0190】
実施形態26
前記患者が、排除性に変化したものとして免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態20の方法。
【0191】
実施形態27
前記癌が、IFN-γ優位型のクラスの癌として分類される場合に、高いIFN-γシグネチャーの癌微小環境を有する場合に、または高い拡張された免疫シグネチャー、PD-L1陽性、もしくはそれらの組合せを有する場合に、前記癌が免疫原性である、実施形態20の方法。
【0192】
実施形態28
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態20~27のいずれかの方法。
【0193】
実施形態29
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態20~27のいずれかの方法。
【0194】
実施形態30
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態20~29のいずれかの方法。
【0195】
実施形態31
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態20~29のいずれかの方法。
【0196】
実施形態32
前記CDK4/6阻害剤が、前記ICD誘導化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態20~29のいずれかの方法。
【0197】
実施形態33
前記CDK4/6阻害剤が、まず前記ICD誘導化学療法の投与前約22~26時間に投与され、前記ICD誘導化学療法の投与前約4時間以内に再投与される、実施形態20~29のいずれかの方法。
【0198】
実施形態34
前記ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態20~33のいずれかの方法。
【0199】
実施形態35
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態1~34のいずれかの方法。
【0200】
実施形態36
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定および化学療法のレジメンが免疫介在性応答を誘導し得るか否かの判定に基づいて、前記患者または前記患者集団を選択する工程、
(ii)前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【0201】
実施形態37
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0202】
実施形態38
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0203】
実施形態39
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、実施形態36の使用。
【0204】
実施形態40
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0205】
実施形態41
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0206】
実施形態42
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0207】
実施形態43
前記患者が免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態36の使用。
【0208】
実施形態44
前記患者が免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態36の使用。
【0209】
実施形態45
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌、高いIFN-γシグネチャーもしくは拡張された免疫シグネチャーを有する癌微小環境、またはPD-L1陽性である癌を有する、実施形態36の使用。
【0210】
実施形態46
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態36の使用。
【0211】
実施形態47
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態36~46のいずれかの使用。
【0212】
実施形態48
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態36~46のいずれかの使用。
【0213】
実施形態49
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態36~46のいずれかの使用。
【0214】
実施形態50
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態36~49のいずれかの使用。
【0215】
実施形態51
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、実施形態36~49のいずれかの使用。
【0216】
実施形態52
前記癌がトリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態36~51のいずれかの使用。
【0217】
実施形態53
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態36~52のいずれかの使用。
【0218】
実施形態54
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫介在性応答を誘導し得る化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量の前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【0219】
実施形態55
前記癌が図6に従って評価した際に免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0220】
実施形態56
前記癌がGalonイムノスコアシステムに従って評価した際に、免疫調節に有利な周囲微小環境を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0221】
実施形態57
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0222】
実施形態58
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0223】
実施形態59
前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0224】
実施形態60
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態54~59のいずれかの使用。
【0225】
実施形態61
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態54~59のいずれかの使用。
【0226】
実施形態62
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌微小環境を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌微小環境を有するか、PD-L1陽性である癌を有する、実施形態54の使用。
【0227】
実施形態63
前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞浸潤を有する場合に、前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性である、実施形態54の使用。
【0228】
実施形態64
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態54~63のいずれかの使用。
【0229】
実施形態65
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態54~63のいずれかの使用。
【0230】
実施形態66
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態54~65のいずれかの使用。
【0231】
実施形態67
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態54~66のいずれかの使用。
【0232】
実施形態68
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態54~66のいずれかの使用。
【0233】
実施形態69
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態54~69のいずれかの使用。
【0234】
実施形態70
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、実施形態54~69のいずれかの使用。
【0235】
実施形態71
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態54~70のいずれかの使用。
【0236】
実施形態72
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態54~71のいずれかの使用。
【0237】
実施形態73
前記患者が、前記化学療法の最初の投与前約22~26時間に投与され、前記化学療法の最初の投与前約4時間以内に再投与される、実施形態38~72のいずれかの使用。
【0238】
実施形態74
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫原性的にCDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に前記癌に基づく免疫応答を誘導する化学療法、例えば、ICD誘導化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量の前記CDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与の前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0239】
実施形態75
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0240】
実施形態76
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、図6に従って癌を評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0241】
実施形態77
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、実施形態74の使用。
【0242】
実施形態78
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0243】
実施形態79
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0244】
実施形態80
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0245】
実施形態81
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態74~79のいずれかの使用。
【0246】
実施形態82
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態74~79のいずれかの使用。
【0247】
実施形態83
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌微小環境を有するか、またはPD-L1陽性である癌を有する、実施形態74~79のいずれかの使用。
【0248】
実施形態84
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0249】
実施形態85
前記癌が免疫原性的に前記CDK4/6阻害剤処置に感受性であるか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、実施形態74の使用。
【0250】
実施形態86
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態74~85のいずれかの使用。
【0251】
実施形態87
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態74~85のいずれかの使用。
【0252】
実施形態88
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態74~85のいずれかの使用。
【0253】
実施形態89
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態74~85のいずれかの使用。
【0254】
実施形態90
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態74~85のいずれかの使用。
【0255】
実施形態91
前記ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態74~90のいずれかの使用。
【0256】
実施形態92
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、実施形態74~90のいずれかの使用。
【0257】
実施形態93
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態74~92のいずれかの使用。
【0258】
実施形態94
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態74~93のいずれかの使用。
【0259】
実施形態95
前記患者が、前記化学療法の最初の投与前約22~26時間に投与され、前記化学療法の最初の投与前約4時間以内に再投与される、実施形態74~93のいずれかの使用。
【0260】
実施形態96
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態74~95のいずれかの使用。
【0261】
実施形態97
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌がIFN-γ優位であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がIFN-γ優位であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0262】
実施形態98
前記癌がIFN-γ優位であるか否かの判定が、高いM1/M2極性化、強いCD8+T細胞染色、および高いT細胞受容体多様性を有する癌微小環境に基づく、実施形態97の使用。
【0263】
実施形態99
前記癌がIFN-γ優位であるか否かの判定が、Thorssonらの6クラス免疫シグネチャースコアの分類に基づく、実施形態97の使用。
【0264】
実施形態100
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有し、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および化学療法の投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0265】
実施形態101
前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、腫瘍微小環境における遺伝子IDO1、CXCL10、CSCL9、HLA-DRA、STAT1、およびIFN-γの発現レベルに基づく、実施形態100の使用。
【0266】
実施形態102
前記癌が高いIFN-γシグネチャーを有するか否かの判定が、高いAyersらのIFN-γシグネチャースコアに基づく、実施形態100の使用。
【0267】
実施形態103
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有し、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0268】
実施形態104
前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かの判定が、腫瘍微小環境における遺伝子CCL5、CD27、CD274、CD276、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA-DRB1、HLA-DQA1、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、およびTIGITの発現レベルに基づく、実施形態103の使用。
【0269】
実施形態105
前記癌が高い拡張された免疫学的シグネチャーを有するか否かの判定が、Ayersらの拡張された免疫シグネチャースコアに基づく、実施形態103の使用。
【0270】
実施形態106
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)前記癌がホット腫瘍であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者が免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がホット腫瘍であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0271】
実施形態107
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0272】
実施形態108
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0273】
実施形態109
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、実施形態106の使用。
【0274】
実施形態110
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0275】
実施形態111
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0276】
実施形態112
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0277】
実施形態113
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0278】
実施形態114
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現から選択される免疫チェックポイント活性化を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0279】
実施形態115
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)発現およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0280】
実施形態116
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞機能の障害を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0281】
実施形態117
前記癌がホット腫瘍であるか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、実施形態106の使用。
【0282】
実施形態118
癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌がPD-L1陽性であるか否かを判定する工程、
(ii)前記患者に免疫応答を誘導する化学療法を投与可能であるか否かを判定する工程、
(iii)前記癌がPD-L1陽性であり、かつ免疫応答を誘導する前記化学療法が投与可能であると判定される場合に、有効量の前記化学療法を有効量のCDK4/6阻害剤と組み合わせて投与する工程
を含んでなり、
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前、あるいは前記化学療法の投与前および投与と同時に投与され、
無増悪生存期間または全生存期間の改善が、前記化学療法単独の投与に基づく無増悪生存期間または全生存期間と比較したものである、前記使用。
【0283】
実施形態119
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態97~118のいずれかの使用。
【0284】
実施形態120
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態97~118のいずれかの使用。
【0285】
実施形態121
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態97~118のいずれかの使用。
【0286】
実施形態122
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態97~118のいずれかの使用。
【0287】
実施形態123
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態97~118のいずれかの使用。
【0288】
実施形態124
ICD誘導化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態97~123のいずれかの使用。
【0289】
実施形態125
前記化学療法が、免疫原性細胞死(ICD)誘導化学療法である、実施形態97~124のいずれかの使用。
【0290】
実施形態126
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態97~125のいずれかの使用。
【0291】
実施形態127
前記患者に前記CDK4/6阻害剤の投与と同時に免疫チェックポイント阻害剤が投与されない、実施形態97~126のいずれかの使用。
【0292】
実施形態128
トリプルネガティブ乳癌療法のための、無増悪生存期間または全生存期間が延長するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)前記トリプルネガティブ乳癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)化学療法のレジメンが免疫介在性応答を誘導し得るか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量のCDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合によっては前記化学療法の前および前記化合療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
全生存期間または無増悪生存期間の延長が、前記化学療法単独の投与に基づく全生存期間または無増悪生存期間と比較したものである、前記使用。
【0293】
実施形態129
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0294】
実施形態130
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0295】
実施形態131
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、Galonイムノスコアシステムに従う、実施形態128の使用。
【0296】
実施形態132
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0297】
実施形態133
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0298】
実施形態134
前記癌の微小環境が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌が有効な免疫応答を惹起するために利用可能な十分に高レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0299】
実施形態135
前記患者が、免疫的にホットな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態128のいずれかの使用。
【0300】
実施形態136
前記患者が、免疫抑制性に変化した腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態128のいずれかの使用。
【0301】
実施形態137
前記患者が、C2 IFN-γ優位型のクラスの癌である癌を有するか、高いIFN-γシグネチャーもしくは高い拡張された免疫シグネチャーの癌を有するか、またはPD-L1陽性である癌を有するか、またはそれらの組合せを有する、実施形態128の使用。
【0302】
実施形態138
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が十分に高度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0303】
実施形態139
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現から選択される免疫チェックポイント活性化を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0304】
実施形態140
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)発現およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0305】
実施形態141
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境がT細胞機能の障害を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0306】
実施形態142
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌がゲノム不安定性を有するか否か、および微小環境が既存の抗腫瘍免疫応答の存在を示すか否かを評価することを含んでなる、実施形態128の使用。
【0307】
実施形態143
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態128~142のいずれかの使用。
【0308】
実施形態144
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態128~142のいずれかの使用。
【0309】
実施形態145
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態128~142のいずれかの使用。
【0310】
実施形態146
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態128~142のいずれかの使用。
【0311】
実施形態147
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態128~143のいずれかの使用。
【0312】
実施形態148
前記化学療法がゲムシタビンおよびカルボプラチンである、実施形態36~147のいずれかの使用。
【0313】
実施形態149
CDK4/6阻害剤および化学療法の投与を含む癌療法のための、化学療法を受けているヒト患者において骨髄抑制が軽減するように選択された患者または患者集団に対する医薬の製造における、化合物I、化合物II、化合物III、化合物IV、化合物Vから選択される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記患者または前記患者の選択が、以下の工程:
(i)癌が免疫調節に応答しない周囲微小環境を有するか否かを判定する工程、
(ii)前記化学療法のレジメンが前記化学療法により誘導される骨髄抑制を誘導するか否かを判定する工程、
(iii)(i)および(ii)の両方が肯定的である場合に、有効量の前記CDK4/6阻害剤を、前記化学療法の投与前、または場合により前記化学療法の前および前記化学療法と同時に投与する工程
を含んでなり、
骨髄抑制の軽減が、前記化学療法単独の投与に基づく骨髄抑制と比較したものである、前記使用。
【0314】
実施形態150
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、癌組織サンプルを図7で特徴付けられる癌組織サンプルと比較することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0315】
実施形態151
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、図6に従って前記癌を評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0316】
実施形態152
前記癌が免疫調節に有利な周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌をGalonイムノスコアシステムに従って評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0317】
実施形態153
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスI抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0318】
実施形態154
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0319】
実施形態155
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低レベルの主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスII抗原を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0320】
実施形態156
前記患者が、免疫的にコールドな腫瘍として免疫原性的に分類される癌を有する、実施形態149の使用。
【0321】
実施形態157
前記患者が、腫瘍微小環境において低いIFN-γ発現を有する癌を有するか、IFN-γ優位型のクラスの癌ではないか、低いIFN-γシグネチャーもしくは低い拡張された免疫シグネチャーの癌を有するか、またはPD-L1陰性である、実施形態149の使用。
【0322】
実施形態158
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低度のT細胞および細胞傷害性T細胞の浸潤を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0323】
実施形態159
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低いプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)発現および低い細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)発現を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0324】
実施形態160
前記癌が免疫調節に有利でない周囲微小環境を有するか否かの判定が、前記癌の微小環境が低発現のT細胞免疫グロブリンムチン受容体3(TIM3)および低発現のリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)を有するか否かを評価することを含んでなる、実施形態149の使用。
【0325】
実施形態161
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態149~160のいずれかの使用。
【0326】
実施形態162
投与される前記CDK4/6阻害剤が、化合物III、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態149~160のいずれかの使用。
【0327】
実施形態163
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約24時間以内に投与される、実施形態149~160のいずれかの使用。
【0328】
実施形態164
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約4時間以内に投与される、実施形態149~160のいずれかの使用。
【0329】
実施形態165
前記CDK4/6阻害剤が、前記化学療法の投与前約30分以内に投与される、実施形態149~160のいずれかの使用。
【0330】
実施形態166
前記化学療法が、シクロホスファミド、トラベクテジン、テモゾロミド、メルファラン、ダカルバジン、オキサリプラチン、メトトレキサート、ミトロキサトロン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、カルボプラチン、シスプラチン、ボルテゾミブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ジアジコン、メクロレタミン、マイトマイシンC、フルダラビン、シトシンアラビノシド、およびそれらの組合せから選択される、実施形態149~165のいずれかの使用。
【0331】
実施形態167
前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、膀胱癌、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PBMCL)、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)固形腫瘍、ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)固形腫瘍、胃または胃食道接合部(GEJ)腺癌、食道扁平上皮癌、子宮頸癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、卵巣癌、肛門管癌、大腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態149~166のいずれかの使用。
【0332】
実施形態168
前記癌が非小細胞肺癌である、実施形態149~166のいずれかの使用。
【0333】
実施形態169
前記CDK4/6阻害剤が、維持処置レジメンにおいて前記化学療法の処置の終了後に1回以上投与され、前記化学療法が前記CDK4/6阻害剤の投与時には投与されない、実施形態36~147のいずれかの使用。
【0334】
実施形態170
前記CDK4/6阻害剤が1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、および6か月毎に少なくとも1回からなる群から選択される投与スケジュールで投与される、実施形態169の使用。
【0335】
実施形態171
前記CDK4/6阻害剤が、化学療法用量低減維持処置レジメンにおいて標準処置の終了後に化学療法薬と組み合わせて1回以上投与され、前記化学療法は標準処置中に投与される用量よりも低い用量で投与される、実施形態36~147のいずれかの使用。
【0336】
実施形態172
前記CDK4/6阻害剤および前記化学療法が1週間に少なくとも1回、2週間毎に少なくとも1回、3週間毎に少なくとも1回、1か月に少なくとも1回、6週間毎に少なくとも1回、2か月毎に少なくとも1回、3か月毎に少なくとも1回、4か月毎に少なくとも1回、5か月毎に少なくとも1回、または6か月毎に少なくとも1回からなる群から選択される投与スケジュールで投与される、実施形態171の使用。
【実施例
【0337】
実施例1:トリラシクリブは、ゲムシタビンおよびカルボプラチンが投与されたヒト転移性トリプルネガティブ乳癌患者において全生存期間および無増悪生存期間を向上させる
【0338】
研究デザイン
転移性TNBCを有する患者のためのゲムシタビン(IV、1000mg/m2)+カルボプラチン(IV、AUC-2)(G/C)療法と組み合わせたトリラシクリブ(IV、240mg/m)1日1回投与の安全性、忍容性、有効性、およびPKを検討するために多施設共同無作為化非盲検第2相試験を計画した(G1T28-04)。患者を3群のうち1群に無作為に割り付けた(1:1:1形式)。
・群1:G/C療法(21日サイクルの1日目および8日目);
・群2:G/C療法(1日目および8日目)+21日サイクルの1日目および8日目にIV投与されるトリラシクリブ;
・群3:G/C療法(2日目および9日目)+21日サイクルの1日目、2日目、8日目、および9日目にIV投与されるトリラシクリブ
トリラシクリブはGC注入の前に静脈内投与した。
【0339】
試験の概要を図1に示す。
【0340】
腫瘍が免疫組織化学評価(<10%核染色として定義)によりエストロゲンおよびプロゲステロン受容体陰性かつ米国臨床腫瘍学会/米国病理医協会診療ガイドラインに従ってHER2陰性(すなわち、免疫組織化学の局所評価[0または1+]もしくは蛍光in situハイブリダイゼーション[HER2/CEP17比<2・0]によって過剰発現無し、または局所評価によって平均HER2遺伝子コピー数<4シグナル/核)であるという条件で、評価可能な生検確認済みの局所再発性または転移性TNBC(mTNBC)を有する成人患者(≧18歳)が登録に適格であった。TNBCを確認する診断腫瘍組織サンプルが利用可能なことが登録の必須条件であった。ヘモグロビンレベルは、トリラシクリブの初回投与前14日以内は、赤血球(RBC)輸血無く≧9.0g/dL、絶対好中球数(ANC)≧1.5×10/Lおよび血小板総数≧100×10/Lでなければならなかった。患者は、局部再発性TNBCまたはmTNBCに対して過去に2回を超える細胞傷害性化学療法のレジメンを受けていた場合には選択不適格であった。術前補助/術後補助状況で投与された化学療法は、最後の処置と疾患再発の間が12か月未満であれば一系統の療法と見なした。患者は米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス0または1ならびに血清クレアチニン(≦1.5mg/dLまたはクレアチニンクリアランス≧60mL/分)、総ビリルビン≦1.5×基準値上限(ULN)、およびアスパラギン酸トランスアミナーゼおよびアラニントランスアミナーゼ≦2.5×ULN(または肝臓転移がある場合には≦5×ULN)の臨床検査で判定した場合に十分な腎機能および肝機能を有していなければならなかった。脱毛症を除き、以前の処置からの血液毒性のグレード≦1への分解能を要した。患者は、無作為化前3年以内にTNBC以外の悪性腫瘍、即治療を要する中枢神経系転移/軟髄膜疾患、非管理心疾患または症候性鬱血性心不全、トリラシクリブの初回投与前6か月以内に脳卒中または脳血管発作の既知の履歴、既知の重症活動性感染、または患者の安全性、コンプライアンス、もしくは追跡調査に影響を及ぼす他のいずれかの非管理重症慢性疾患もしくは精神医学的状態があった場合には選択不適格であった。以前の放射線療法または細胞傷害性化学療法にはそれぞれ2週間または3週間のウォッシュアウト期間を要した。
【0341】
ヘルシンキ宣言の原則および調和国際会議の医薬品の臨床試験の実施の基準ガイドラインに従って試験を計画および実施した。試験プロトコールおよびすべての試験関連材料は、各治験現場の治験審査委員会または独立倫理委員によって承認されたものであった。試験手順の開始前に各患者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。
【0342】
患者を21日サイクルの以下の所与の処置に無作為に割り付けた:群1には1日目および8日目にゲムシタビンおよびカルボプラチンを投与し(化学療法のみ)、群2には1日目および8日目にゲムシタビンおよびカルボプラチンの前にトリラシクリブを投与し(1日目および8日目にトリラシクリブ+化学療法)、群3には1日目および8日目にトリラシクリブのみ、2日目および9日目にゲムシタビンおよびカルボプラチン前にトリラシクリブを投与した(1日目および8日目にトリラシクリブ、2日目および9日目にトリラシクリブ+化学療法)。群3は、化学療法前の2回目のトリラシクリブ投与が、化学療法投与時に一時的停止状態にある血液幹細胞および前駆細胞の割合を増し、それによって骨髄抑制転帰を改善できるであろうという仮説を検証するために含められた。ゲムシタビンは1000mg/m2で、カルボプラチン濃度時間曲線下面積(AUC)2μg×h/mLで、両方とも静注により投与した。トリラシクリブ240mg/m2は、ゲムシタビンおよびカルボプラチン処置の前に30分(許容範囲25~35分)で静注として投与した。トリラシクリブの用量変更は許容しなかった。
【0343】
処置サイクルは、毒性制御のために必要である場合を除き、中断なく連続的に行った。化学療法に関して用量減が必要であれば、以下の順序で行った:第1に、ゲムシタビン用量を1000mg/m2から800mg/m2に低減し;第2に、カルボプラチン用量をAUC2μg×h/mLからAUC1.5μg×h/mLに低減し;第3に、カルボプラチンまたはゲムシタビンのいずれかを中止し、他方の薬物を低減量で継続し;最後に、すべての治験薬を恒久的に中止した。用量低減は各サイクルに1回のみ許容し、恒久的とした。
【0344】
トリラシクリブはGC療法を伴う場合にのみ投与し、化学療法の投与が保持または中止されれば、トリラシクリブも保持または中止した。治験薬投与は疾患進行、許容されない毒性、同意の撤回、または治験責任医師による中止のうち最も早く起こるものまで継続した。
【0345】
プロトコールに従い、処置群によらず各21日サイクルの1日目、8日目、および15日目に血液学的臨床検査のためにサンプルを採取した。次サイクルの開始が遅延した場合、患者が次のサイクルを開始できるかまたは化学療法を恒久的に中止するまで毎週臨床検査を行った(例えば、22日目、29日目、36日目など)。規定外の臨床検査は臨床上必要であれば許容した。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む予防的増殖因子の使用は、サイクル1中は許容しなかった。それ以外では、輸血を含む支持療法は、処置期間を通じて必要であれば許容した。血小板は10,000/μL以下または血小板総数50,000/μL(中枢神経系または眼球出血の場合には100,000/μL)未満の閾値で輸注した。ヘモグロビン濃度が8.0g/dL未満または症候性貧血の患者は、治験責任医師の判断で赤血球輸血により処置した。赤血球輸血を受けた患者のパーセンテージおよび経時的に受けた赤血球輸血の回数を5週以降に感度分析の一部として試験の1日目から分析した。
【0346】
抗腫瘍応答の評価は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)バージョン1・1に従い、治験責任医師によって行った。腫瘍評価のために、コンピューター断層撮影法または磁気共鳴画像法をスクリーニング時およびプロトコールにより指定される間隔(最初の6か月は9週間毎、その後は12週間毎)で、疾患進行、同意の撤回、または続いての抗癌治療の受付まで行った。骨および脳のスキャンはスクリーニング時に必要とされた。骨病変の追跡調査評価には、別の撮像法を使用することができ、脳スキャンは、脳転移が存在した場合にのみ腫瘍評価の一部として繰返した。
【0347】
T細胞のサイトカイン産生能を評価するために、全血をブレフェルジンAの存在下、5μg/mLのブドウ球菌内毒素Bで一晩(15~18時間)刺激した。細胞を処理し、IFN-γ、IL-17A、CD3、およびCD8に対する蛍光団標識抗体で標識し、Covance Central Laboratory Services(インディアナポリス、IN、USAおよびジュネーブ、スイス)によって、フローサイトメトリー(BD FACSCalibur and FACSCanto II clinical cell analysers;BD Biosciences、フランクリンレイク、NJ、USA)により評価した。フローサイトメトリーデータは、Fios Genomicsによって分析された。
【0348】
2つの確立されたシグネチャー(Prosigna Breast Cancer Prognostic Gene Signature Assay[PAM50]およびLehmannの1~4型トリプルネガティブ乳癌)を用い、患者腫瘍をCDK4/6非依存性、依存性、または不確定として分類した。ゲノム網膜芽細胞腫不活性化率は20%に過ぎないにもかかわらず、トリプルネガティブ乳癌は主として機能的にCDK4/6依存性疾患であることから、これらのシグネチャーをCDK4/6感受性のより包括的な分析を提供するために選択した。PAM50シグネチャーを用い、CDK4/6非依存性は基底細胞様腫瘍と相関する。増殖のCDK4/6経路への依存は不明または不均一であることから、残りのPAM50シグネチャー群(HER2、正常様、管腔A、および管腔Bを含む)はCDK4/6不確定として分類される。逆に、Lehmannシグネチャーを用いると、CDK4/6依存は管腔アンドロゲン受容体腫瘍と密接な相関があり、一方、残りのLehmannシグネチャー群(基底細胞様および間葉を含む)は、PAM50シグネチャーに関して概説されたものと同じ理由でCDK4/6不確定と分類される。
【0349】
安全性は、インフォームド・コンセントの提示から試験処置の最後の投与の30日後まで継続的にモニタリングされた。安全性評価は、処置期間および用量変更の分析、治療中に発生した有害事象および治療中に発生した重篤な有害事象の評価、輸注反応、臨床安全性評価、バイタルサイン、診察、および心電図検査を含んだ。治療中に発生した有害事象は、グレード(有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events [CTCAE]バージョン4.03)および治験薬との関連に従って要約した。重篤な有害事象は、用量によらず、死亡、生命を脅かす事象(すなわち、その事象時に患者に死亡リスクがある)、入院または現入院の延長、持続的もしくは著明な障害もしくは機能不全、または先天性異常もしくは先天性欠損をもたらす、好ましくないいずれの医療上の出来事として定義された。
【0350】
化学療法の一次毒性は骨髄抑制(トリラシクリブが軽減すると仮定される)であるので、血液学的有害事象の発生率および重症度、臨床検査値(絶対好中球数、ヘモグロビン濃度、および血小板総数)、支持療法の介入(赤血球および血小板輸血、G-CSFの使用)、ならびにゲムシタビンおよびカルボプラチン用量低減の用量強度および発生率を含む、いくつかの血液学的パラメーターを、複数の造血系統で評価した。すべてのパラメーターの完全な詳説を以下にさらに記載する。
【0351】
転帰
主要な目的は、化学療法とともに投与されるトリラシクリブの安全性および忍容性を評価することであり;特に注目する評価項目は、統計学的分析計画に詳細に述べられ、これは主要評価項目をサイクル1における重度好中球減少症(重度の好中球減少症は有害事象共通用語規準グレード4、絶対好中球数<0.5×10細胞/Lとして定義される)の持続期間および処置期間中の重度好中球減少症の存在として定義している。サイクル1における重度好中球減少症の持続期間は、初期絶対好中球数値0.5×10細胞/L未満の日から、初期絶対好中球数値0.5×10細胞/L以上の日まで(ただし、サイクルの終了まで0.5×10細胞/L未満の絶対好中球数値が見られないこと)の日数と定義された。サイクル1において重度好中球減少症を示さなかった患者の重度好中球減少症の持続期間を0とした。重度好中球減少症の発生は、処置期間中、絶対好中球数0.5×10細胞/L未満が1回以上測定された場合と定義される2値エンドポイントであった。予定されたものおよび規定外のものの両方の血液検査結果が、両主要評価項目の分析に含まれた。重度好中球減少症と感染リスクおよび罹患率および死亡率の増大の間の臨床関連に基づく一次分析のために、臨床的に意味のある0.5×10細胞/Lのレベルを選択した。
【0352】
重要な副次的評価項目としては、5週目以降の赤血球輸血の発生、G-CSF投与、血小板輸血、および全生存期間を含んだ。5週目より前の赤血球輸血の除外は、赤血球の半減期(およそ8~9週間)に基づき、潜在的利益の分析が残存する過去の処置の影響によって混乱しないようにするためであった。赤血球および血小板輸血の発生は2値エンドポイント(有または無)とし、総輸血回数はカウントエンドポイント(固有開始日を有する輸血回数)とした。全生存期間は、無作為化日から、経過によらず死亡日までの期間(月)として算出した。
【0353】
補助的な副次的抗腫瘍活性評価項目は、客観的奏効(確認された完全奏効または部分奏功として定義)に達した患者の割合、奏効期間、および無増悪生存期間である。臨床的有効割合は、処置後任意の時点で完全奏効もしくは部分奏功を示している、または24週間以上疾患が安定している患者からのデータを用いて算出し、患者が完全奏効または部分奏功を示しておらず、安定期間が不確定であれば、それらは評価不能と見なした。無増悪生存期間は、無作為化日から放射線学的に確認された疾患進行または理由によらず死亡のうちいずれか最も早いものまでの期間(月)として定義された。
【0354】
統計分析
トリラシクリブ開発プログラムに沿い、統計分析計画において事前に指定された特定の評価項目を用いて、群1に対する群3の優位性を少なくとも1つの主要評価項目(サイクル1における重度好中球減少症の持続期間または重度好中球減少症の発生のいずれか)について検出力90%で示した。全体の両側I型誤り率を0.05に維持するために均等重み付けボンフェローニ法を用い、サイクル1における重度好中球減少症の持続期間の3日の短縮を検出するために64名の患者(各群32名)を必要としたことを、共通SD2.5日または重度好中球減少症患者の割合の41パーセンテージ点絶対的低下(すなわち、群1では45%、群3では4%)として算出した。試験中止率5%を仮定して、合計102名(各群34名)の患者を必要とした。
【0355】
共分散のノンパラメトリック分析を用い、ベースライン絶対好中球数値を共変量とし、層別因子および処置を固定効果として用いて、サイクル1における重度好中球減少症の持続期間の処置群差を評価した。重度好中球減少症、G-CSF投与、5週目以降の赤血球輸血、および血小板輸血の発生については、修正ポアソン回帰モデルを用いて処置効果を評価した。このモデルは、重度好中球減少症の持続期間に関して使用したもの同じ固定項目を含み、重度好中球減少症およびG-CSF投与分析の共変量としてベースライン絶対好中球数を、赤血球輸血分析の共変量としてベースラインヘモグロビン濃度を、また、血小板輸血分析の共変量としてベースライン血小板総数を使用した。このモデルでは処置期間(週間)を調整した。試験の1日目から、赤血球輸血を受けた患者のパーセンテージおよび経時的な赤血球輸血回数を感度分析の一部として分析した。5週目以降の赤血球輸血回数および血小板輸血については、負の2項回帰モデルを用いて処置効果を評価した。このモデルは、重度好中球減少症の持続期間に関して使用したもの同じ固定項目を含み、赤血球輸血分析の共変量としてベースラインヘモグロビンを、また血小板輸血分析の共変量としてベースライン血小板を使用した。このモデルでは処置期間(週間)を調整した。あらゆる理由での用量低減の回数を、固定効果として層別因子および処置のみを含んだ負の2項回帰モデルを用いて分析し、サイクル数を調整した。Hochbergに基づくゲートキーピング法を用い、骨髄抑制の主要評価項目および重要な副次的評価項目についてファミリーワイズエラー率0.025(片側)を制御した。モデルに基づく点推定は95%CIで報告する。
【0356】
客観的奏効における処置群差は、層別因子を考慮する正確コクラン・マンテル・ヘンツェル検定法を使用して分析した。客観的奏効に達した患者の割合に関する95%CIは、正確クロッパー・ピアソン法を用いて算出した。奏効期間、無増悪生期間、および全生存期間などの時間事象変数については、カプラン・マイヤー法を用いて期間中央値およびその95%CIを推定した。処置群差は、層別因子を考慮するために層別ログランク検定を用いて検定した。ハザード比(HR)およびそれらの関連95%CIは、コックス比例ハザードモデルから、処置および層別因子を固定効果として算出した。
【0357】
統計分析計画は、主要評価項目および重要な副次的評価項目に関する一次統計比較は群3と群1の間として事前に指定し、二次比較を群2と群1の間、およびトリラシクリブ群を併合したものと群1の間として事前に指定した。
【0358】
活性分析は、少なくとも1回の治験薬投与を受け、ベースライン腫瘍評価時に測定可能な標的病変を有し、かつ、処置後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けた(もしくは処置後に腫瘍評価を受けなかったが治験責任医師によって記載された臨床進行を有した)か、または処置後最初の腫瘍スキャン前に疾患進行のために死亡した患者(奏効評価可能集団)において分析された腫瘍応答評価項目(客観的奏効および臨床利益)を除き、骨髄抑制および抗腫瘍活性評価項目に関して割り付けられた処置に基づく治療意図(ITT)集団を用いて行った。生存追跡調査の期間は、無作為化日から死亡日または全体を通じて指定された活性データカットオフ時の最終接触日までを算出した。安全性分析には、少なくとも1回の治験薬が投与されたすべての患者を含んだ。層別因子(全身療法および肝臓への侵襲の治療歴数)を統計モデルにおいて調整した。
【0359】
無増悪生存期間および全生存期間に関して事前に指定されたサブグループ分析を行い、処置効果の一貫性を評価した(すなわち、年齢群、人種、肝臓への侵襲、国、ECOGパフォーマンスステータス、治療歴の数、BRCA分類、および組織学的トリプルネガティブ乳癌分類)。
【0360】
トリラシクリブが化学療法中にCDK4/6依存性腫瘍細胞を停止させることによってCDK4/6依存性腫瘍を有する患者における抗腫瘍活性を低下させる理論上のリスクを評価するために、2つの確立されたシグネチャー(PAM50およびLehmannトリプルネガティブ乳癌タイプ1~4)を用いた抗腫瘍活性評価項目(客観的奏効、無増悪生存期間、および全生存期間)の事前に指定された他のサブグループ分析を行って患者腫瘍をCDK4/6非依存性、依存性、または不確定として分類した。
【0361】
抗腫瘍活性評価項目(客観的奏効、無増悪生存期間、および全生存期間)の事後分析を、試験期間中に患者が受けた全体のサイクル数中央値に基づいて行った。分析は、1~7サイクルを受けたか7サイクル以上を受けたかによって分類した患者で行った。
【0362】
結果
142名の患者をスクリーニングし、102名の適格患者を、化学療法単独群(群1;n=34)、トリラシクリブ+化学療法群(群2;n=33)、またはトリラシクリブ(1日目および8日目)、トリラシクリブ+化学療法(2日目および9日目)群(群3;n=35;ITT集団)に無作為に割り付けた。これらのうち98名(96%)の患者は少なくとも1回の治験薬投与を受けた(安全性分析集団)。ベースライン時の人口統計学的特性は処置群間で同等であり、表3に開示される。102名のうち38名(37%)の患者が1回または2回の化学療法治療歴を有し、26名(25%)が肝臓転移を有した。
【0363】
【表3】
【0364】
ゲムシタビンおよびカルボプラチンへのトリラシクリブの追加は、事前に指定された骨髄抑制主要評価項目に有意な改善をもたらさなかった。サイクル1中、平均重度好中球減少症持続期間は、群1では1日(SD2.4)、群2では2日(3.5)、群3では1.0日(2.6)であった(p=0.70)。重度好中球減少症は、群1では34名中9名(26%)、群2では33名中12名(36%)、群3では35名中8名(23%)の患者に見られた(p=0.70;表2)。100週間で5週目以降の赤血球輸血の回数は両トリラシクリブ群で低下した(群1の4.6に対して群2では1.9、群3では1.6;p=0.020)。試験時の1日目に収集した赤血球輸血データ(感受性分析)は、5週より前のデータを除外した場合に認められたものと同様であった。G-CSFを投与したまたは血小板輸血をしている患者の数に有意差は見られなかった。
【0365】
【表4】
【0366】
薬物曝露の最後の評価時に(データカット2019年6月28日)、少なくとも1回カルボプラチン用量を低減した患者の数は、群1で10名(33%)、群2で13名(39%)、群3で15名(43%)であった。ゲムシタビンについては、群1で13名(43%)、群2で20名(61%)、群3で17名(49%)が少なくとも1回の用量低減を行っていた。ゲムシタビンおよびカルボプラチンにトリラシクリブを追加すると、ゲムシタビンおよびカルボプラチンの暴露期間および累積用量が、ゲムシタビンおよびカルボプラチン単独で処置した患者に比べて増大した。処置期間の中央値は、群1で101日(IQR63~203[4サイクルの中央値])、群2で161日(77~287[7サイクルの中央値])、群3で168日(91~217[8サイクルの中央値])であった。カルボプラチンの累積量中央値は、群1のAUC15μg×h/mL(IQR8~28)に対し、群2ではAUC24μg×h/mL(IQR10~40)、群3ではAUC22μg×h/mL(IQR15~34)であった。ゲムシタビンについては、累積量中央値は、群1では7306.2mg/m(IQR4020.1~15138.9)に、群2では12000.0mg/m(IQR5029.4~21882.7)、群3では11800.1mg/m(IQR7000.0~17446.9)に増大した。トリラシクリブが投与された患者ではゲムシタビンおよびカルボプラチンの期間が長いにもかかわらず、トリラシクリブ群で治療中に発生した血液学的有害事象は、化学療法単独群と同等またはそれ以下の頻度であった。
【0367】
安全性データの最後の評価時に(データカット2020年5月15日)、1名(群3)を除くすべての患者が治療中に発生した有害事象を1以上有していた。ほとんどの患者では、治療中に発生した有害事象は薬物に関連すると見なされた。治療中に発生した有害事象のうち最も多いのは、群1では貧血(34名中22名[73%])、好中球減少症(21名[70%])、および血小板減少症(18名[60%]);群2では、好中球減少症(33名中27[82%])、血小板減少症(19名[58%])および貧血(17名[52%]);群3では好中球減少症(35名中23名[66%])、血小板減少症(22名[63%])、および悪心(17名[49%])であった。群1の1名の患者および群2の1名の患者に発熱性好中球減少症が見られた。治療中に発生した重篤な有害事象は、群1では10名(33%)の患者、群2では11名(33%)、群3では4名(11%)の患者で報告された。治療中に発生した重篤な有害事象が見られたのは2名以下であった。合計58名の死亡が見られた:群1では25名(疾患進行[n=21]、治療中に発生した有害事象[n=1;処置に無関連の右心室不全]、その他[n=3])、群2では13名(疾患進行[n=11]、その他[n=2])、群3では20名(疾患進行[n=19]、その他[n=1])。全体的に見れば、治験薬の中止に至った治療中に発生した有害事象が報告された患者の数は各群で同等であった:群1で10名(33%)、群2で14名(42%)、群3で11名(31%)。
【0368】
抗腫瘍有効性の最後の評価時に(データカット2020年5月15日)、追跡調査中央値は、群1で8.4か月(IQR3.8~15.6)、群2で14か月(5.5~26.8)、群3で15.3か月(6.7~23.7)であった。奏効に関して評価可能な患者のうち、客観的奏効に達した割合は、群1では29.2%(24名中7名)に対し、群2では50%(30名中15名)、群3では338.7%(31名中12名)(表6)であった。24週間以上の安定を含む臨床利益に達した患者の割合は、群1で38%(24名中9名)、群2では57%(30名中17名)、群3で43%(30名中13名)。無増悪生存期間中央値は、群2で9.4か月(IQR5.3~13.0)、群3で7.3か月(IQR6.2~13.9)、群1で5.7か月(IQR2.2~9.9)であった。群1に対してそれぞれ分析した両群のHRは、群2では0.62(95%CI 0.32~1.20;p=0.21)、群3では0.63(95%C I0.32~1.22;p=0.18)であった(表3;図3)。両トリラシクリブ群に登録された患者は、群1に登録された患者に比べて全生存期間に有意な改善を示し(群2では中央値未到達[IQR9.4~未到達]およびHR0.31、95%CI 0.15~0.63;p=0.0016 in;群3では17.8か月[IQR8.8~32.7]およびHR0.40、95%CI 0.22~0.74;p=0.0004]に対し、群1では12.6か月[IQR5.8~17.8])(表5;図2)。併合サブグループ分析の結果は、2019年6月28日のデータカット時に、見られた無増悪生存期間(図4B)および全生存期間に対する利益(図4A)がサブグループ間で一貫していたことを示した。群1と群3間で更新された分析を図4Cおよび図4Dに示す。
【0369】
CDK4/6非依存性、依存性、または不確定として分類された腫瘍に関する群1、2、および3間、および群内の事前に指定された、客観的奏効、無増悪生存期間、および全生存期間の評価によって、ある腫瘍サブタイプが別のものに優る一貫した傾向は明らかにされなかった。
【0370】
【表5】
【0371】
ゲムシタビンおよびカルボプラチンへのトリラシクリブの追加は、リンパ球数を保護することも、T細胞活性化を増強することもなかったが、事前に指定された分析において、ゲムシタビンおよびカルボプラチン+トリラシクリブで処置された患者では、群1の患者より刺激の後にIFN-γを産生するCD8+T細胞の頻度が高いことが認められた(図5)。
【0372】
TNBC診断からのアーカイブ腫瘍組織を、2つの異なる公開RNAシグネチャー:1)PAM50(引用することにより本明細書の一部とされるPrat et al., Response and survival of breast cancer intrinsic subtypes following multi-agent neoadjuvant chemotherapy. BMC Med. 2015; 13: 303. doi: 10.1186/s12916-015-0540-zを参照のこと)によって定義されるCDK4/6非依存性および変動のあるCDK4/6依存性バケット;および2)Lehmann(引用することにより本明細書の一部とされるLehmann et al., Identification of human triple-negative breast cancer subtypes and preclinical models for selection of targeted therapies. J Clin Invest. 2011;121:2750-67. doi: 10.1172/JCI45014を参照のこと)によって定義されるCDK4/6依存性および変動のあるCDK4/6依存性バケットを用いて評価した(表6)。
【0373】
【表6】
【0374】
化学療法薬レジメンにおけるトリラシクリブの選択は、変動のあるまたはCDK4/6依存性の腫瘍、すなわち、PAM50 Other(Her2、正常様、LumA、LumB)またはLehmann TNBC type-4 LARとして分類される腫瘍を有するTNBC患者における化学療法有効性に拮抗しなかった(表7)。処置間の既知の非依存性(基底細胞様)患者においてORR/PFS/OSに差はなかった。
【0375】
【表7】
【0376】
化学療法薬レジメンにおけるトリラシクリブの選択は、変動のあるまたCDK4/6非依存性の腫瘍、すなわち、PAM50 Basal-LikeまたはLehmann TNBCtype-4 Other(BL1、BL2、M)と分類される腫瘍を有するTNBC患者における化学療法有効性に拮抗しなかった(表8)。
【0377】
【表8】
【0378】
サイクル数中央値(1~7サイクルと>7サイクル)に従った抗腫瘍効果の事後分析からの結果を表9に示す。3つの処置群のすべてで、客観的奏効に達した患者の割合は、7サイクル以下を受けた患者に比べて7サイクルを超える患者で高かった。
【0379】
【表9】
【0380】
実施例2:Ayers免疫スコア分析
実施例1に記載の臨床試験に参加した患者からの腫瘍サンプルを、Q Solutions(モリスビル、NC)によってアッセイし、Ayers et al., IFN-γ-related mRNA Profile Predicts Clinical Response to PD-1 Blockade, J Clin Invest. 2017127(8)2930-2940に従ってそれらのAyers免疫スコアを決定した。RNA Accessを用いてデータを処理し、FPKM正規化を行った後にlog10変換を行い、平均を求めた。
【0381】
89サンプルを分析した。IFN-γシグネチャーおよび拡張された免疫シグネチャーの両方に関して算出したシグネチャースコアは単峰形分布であり、スコア中央値を用いて「高い」および「低い」のカテゴリーを定義した。図8Aは、試験した89サンプルのAyersのIFN-γシグネチャーの分布を示す。図8Bは、試験した89サンプルのAyersの拡張された免疫シグネチャーの分布を示す。
【0382】
事前に定義した免疫応答群内の処置群間の生存率および応答率は、実施例1に記載したG1T28-04臨床試験で導出されたデータに基づく一連のペアワイズ2群検定を用いて決定した。さらに、単一処置群内の異なる免疫応答カテゴリー間の生存率および応答率の差の検討分析も行った。結果を表10および表11に示す。
【0383】
【表10】
【0384】
【表11】
【0385】
群間の全生存期間および無増悪生存期間を可視化するためにカプラン・マイヤー曲線を作成した(図8C~8Fおよび9A~9D参照)。群は次にように分けた:群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン投与)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ投与)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)、およびカプラン・マイヤー曲線に関して、群4(群2+群3)。
【0386】
示されるように、投与レジメンの一部としてトリラシクリブが投与され、「高い」IFN-γシグネチャースコアおよび/または「高い」拡張された免疫シグネチャースコアを有したTNBCを有する患者は、投与レジメンの一部としてトリラシクリブが投与されずに、「高い」IFN-γシグネチャースコアおよび/または「高い」拡張された免疫シグネチャースコアを有したTNBCを有する患者に比べて全生存期間が有意に改善していた(それぞれp=0.0194;p=0.036)。
【0387】
実施例3:Thorssonらの6クラス免疫分類分析
実施例1に記載の臨床試験(Clinical trials.gov ID NCT02978716)に参加した患者からの腫瘍サンプルを、Q Solutions(モリスビル、NC)によってアッセイし、Thorsson V, et al. “The Immune Landscape of Cancer.” Immunity, vol 51, no. 2, 2018, pp. 812-830. doi: 10.1016/j.immuni.2018.03.023(全内容が引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されるようにそれらの6クラス免疫分類を決定した。
【0388】
簡単に述べれば、Thorssonらの分類を、実施例1に記載の臨床試験で固定される89の処置前トリプルネガティブ乳癌サンプルに適用するために6ステップ法を実施した。RNAseqデータ取得の後、データクリーニングを行い、データソースの遺伝子名およびサンプル名のリコンサイルによって均質化した。有効な分類を保証するように臨床試験により作成されたデータおよびTCGAデータを同等とするために、一括修正を行った。要するに、臨床試験データ(従前に導出、実施例1表7参照)内のPAM50クラスの存在量をより密接に表すように、得られたTCGA発現データ内のサンプルを無作為にダウンサンプリングした。臨床試験データにおけるバッチ効果を推定するために、log2変換した上位四分位数正規化表現に対する遺伝子ごとの線形回帰モデリングを用いた。次に、これらの推定バッチ効果を臨床試験サンプルの表現から減算により除去し、TCGAサンプル方向への平均シフトを得た。
【0389】
データセットのリコンサイルにおけるこのアプローチの妥当性を検討するために、PCAプロットを使用した。修正の前に、臨床試験サンプルおよびTCGAサンプルは、分離により明瞭なバッチ効果を示す。上記で述べた修正手順は、2つのサンプル群の間の分離を消去し、2セットの発現データを同等にする。バッチ修正後、導出されたデータをGibbs免疫クラスタリングソフトウエアパッケージ(https://github.com/CRI-iAtlas/ImmuneSubtypeClassifierで利用可能)にインプットして、Thorssonの6分類免疫応答スキームに関して臨床試験サンプルを分類した。スクリプトおよびその必要物をダウンロードし、インストールし、バッチ修正臨床試験データに対して実行した。
【0390】
臨床試験サンプルで見られたクラスの分布を表12に示す。
【0391】
【表12】
【0392】
免疫学的沈黙(C5)と分類された患者はいなかった。乳癌に関してThorssonらによって使用されたトレーニングサンプルに、原図に免疫学的沈黙として分類されたものはないので、このことは意外なことではない。さらに、C1およびC2の外側のクラスの低い有病率のために、C3と非C3、C4と非C4、およびC6と非C6の検定を除くことになった。
【0393】
事前に定義された免疫応答群内の処置群間の生存率および応答率を、実施例1に記載のG1T28-04臨床試験で導出されたデータに基づき、一連のペアワイズ2群検定を用いて決定した。さらに、単一処置群内の異なる免疫応答カテゴリー間の生存率および応答率の差の検討分析も行った。結果を表13に示す。
【0394】
【表13】
【0395】
群間の全生存期間および無増悪生存期間を可視化するためにカプラン・マイヤー曲線を作成した(図10A~10D参照)。群は次のように分けた:群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン投与)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ投与)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)、およびカプラン・マイヤー曲線に関して、群4(群2+群3)。
【0396】
示されるように、投与レジメンの一部としてトリラシクリブが投与され、C2 IFN-γ優位として分類されたTNBCを有する患者は、投与レジメンの一部としてトリラシクリブが投与されずに、C2 IFN-γ優位と分類されたTNBCを有する患者に比べて全生存期間が有意に改善していた(p=0.036)。
【0397】
実施例4:PD-L1腫瘍の状態
実施例1に記載のG1T28-04臨床試験からの患者腫瘍を、PD-L1発現スコアに基づき、Ventana SP142アッセイを用いて、PD-L1標識免疫細胞を含有した全腫瘍領域のそれぞれ<1%または≧1%であれば、陰性または陽性として特徴付けた。PD-L1発現と抗腫瘍有効性の関連は、比例ハザード回帰を用いて評価した。群は次のように分けた:群1(21日サイクルの1日目および8日目のみにゲムシタビン+カルボプラチン投与)、群2(21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン+カルボプラチン+トリラシクリブ投与)、および群3(21日サイクルの2日目および9日目にゲムシタビン+カルボプラチン、1日目、2日目、8日目、および9日目にトリラシクリブ投与)。結果を表14に示す。
【0398】
【表14】
【0399】
上記に示すように、トリラシクリブが投与された、PD-L1陽性TNBC腫瘍を有する患者は、トリラシクリブが投与されなかった、PD-L1陽性TNBC腫瘍を有する患者よりも統計的に有意な全生存期間を有した(p=0.005)。
【0400】
実施例5:トリラシクリブ投与はT細胞増殖を増強する
未治療の進展期小細胞肺癌を有する患者における、トリラシクリブを伴うまたは伴わないカルボプラチン、エトポシド、およびアテゾリズマブの第2相試験を開始した(Clinicaltrials.gov ID NCT03041311)。21日の導入相および21日の維持相を含んでなるカルボプラチン。維持相サイクルの開始の前に4導入相サイクルを完了した。
【0401】
導入相では、患者は、各エトポシド/カルボプラチン/アテゾリズマブ(E/P/A)療法サイクル(合計最大4サイクル)の21日サイクルの1日目~3日目に1日1回IV投与されるトリラシクリブ(240mg/m2 250mL D5Wまたは0.9%塩化ナトリウム溶液中に希釈)またはプラセボ(250mLのD5Wまたは0.9%塩化ナトリウム溶液)を受けた。カルボプラチン用量は、カルバート式[合計カルボプラチン用量(mg)=(AUC目標値)×(GFR+25)]を用いて算出し、ここで、AUC目標値=5(最大750mg)各21日サイクルの1日目に30分でIV、および1日目、2日目、および3日目に1日1回、60分でIV投与される100mg/m2 エトポシド。250mLの0.9%塩化ナトリウム溶液中アテゾリズマブ(1200mg)は、導入相および維持相ともに、各21日サイクルの1日目にIV注入として投与した。アテゾリズマブは初回投与として60分で注入し、忍容されれば、続いてのすべての注入を30分で送達した。アテゾリズマブは、化合物Iまたはプラセボ、エトポシド、およびカルボプラチンの投与の終了後に投与した。
【0402】
トリラシクリブアームとプラセボアームの間の免疫応答および免疫調節活性のバイオマーカーを同定するために、血液サンプルにおけるTCRB遺伝子座の分析を行った。1-rxn TCRBアッセイを用い、すべてのサンプルの配列決定を行った。増殖したT細胞クローンの数は、ベースラインに対して導入療法後および維持療法開始前に患者から得た全血におけるT細胞受容体β配列の示差存在量解析によって決定した。トリラシクリブ奏効者は、プラセボ奏効者よりもクローン増殖が多い(p=0.01)とともに、トリラシクリブ非奏効者よりもクローン増殖が多く(p=0.006)、クローン増殖の増加はトリラシクリブMOAおよび臨床奏効両方のバイオマーカーであることが示唆される(図11および図12)。
【0403】
さらに、トリラシクリブが投与された奏効者はまた、より多くの新規増殖クローンを生成し(p=0.001、図13)、著しくは、トリラシクリブが投与されていない処置が奏効した患者に比べて全増殖クローンに対する新規増殖クローンの割合を有意に増した(p=0.001、図14)。全T細胞クローンに対する新規増殖クローンの割合の中央値を下回るおよび上回る患者の層別化は、有意ではないが、末梢T細胞クローン増殖のレベルが高い患者ほど全生存期間OSが長い傾向を明らかにしたが(HR[95%CI]=0.56、P=0.10)、サブグループ分析(トリラシクリブとプラセボ)は、新規増殖クローンの割合の中央値を上回る患者は、トリラシクリブが投与された場合に有意に長いOSを有しており(HR=0.34;p=0.04)、PFSでも有意ではないが同様の傾向を伴っていたことを明らかにした。同様の有用性が、クローン増殖中央値および新規増殖クローン層別中央値にも見られた。プラセボとは異なり、トリラシクリブは新規増殖クローンの数および割合を有意に増し、エトポシド、カルボプラチン、アテゾリズマブ投与レジメンへのトリラシクリブの追加がT細胞媒介性抗腫瘍応答を増強することを示す。
【0404】
本明細書は本発明の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、当業者ならば、以下の特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変および変更が行えることが分かるであろう。従って、本明細書は、限定の意味ではなく例示として見なされるべきであり、このような改変はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】