(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-19
(54)【発明の名称】抗メソテリン抗体およびそのイムノコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20220812BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220812BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220812BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220812BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220812BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220812BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220812BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220812BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220812BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220812BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220812BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220812BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220812BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220812BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220812BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20220812BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220812BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/137
A61K31/573
A61K31/55
A61K47/65
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575367
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2020038365
(87)【国際公開番号】W WO2020257407
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519333446
【氏名又は名称】シルバーバック セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス, ブレンダ
(72)【発明者】
【氏名】バウム, ピーター ロバート
(72)【発明者】
【氏名】デュボーズ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】オデガード, ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
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4C086BC32
4C086CB09
4C086DA10
4C086MA01
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4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA17
4C206MA21
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB07
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
抗メソテリン抗体およびかかる抗体を含むコンジュゲート、ならびにがんなどの疾患の処置におけるかかるコンジュゲートの使用が、本明細書で開示される。本発明は、とりわけ、ヒトメソテリンに特異的に結合する抗メソテリン抗体を提供する。一部の態様では、抗メソテリン抗体は、リンカーを介して、細胞傷害剤または免疫刺激性化合物にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。他の実施形態では、リンカーは、非切断性リンカーである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーを介して、式(I):
【化24】
の化合物またはその薬学的に許容される塩にコンジュゲートされた、ヒトメソテリンに特異的に結合する抗体を含むコンジュゲートであって、式中、
R
1、R
2およびR
3は、水素、必要に応じて置換されたC
1~10アルキル、必要に応じて置換されたC
2~10アルケニル、必要に応じて置換されたC
2~10アルキニル、必要に応じて置換されたC
3~12炭素環および必要に応じて置換された3~12員複素環から独立して選択され、その各々が、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NH
2、=O、=S、-C(O)OCH
2C
6H
5、-NHC(O)OCH
2C
6H
5、C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル、C
3~12炭素環、3~12員複素環およびハロ(C
1~10アルキル)から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換され;
R
4は、必要に応じて置換された縮合5-5、縮合5-6または縮合6-6二環式複素環であり、ここでR
4の必要に応じた置換基は、各出現において、
ハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)および-CN; C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニルであって、その各々がハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)、-CN、C
3~12炭素環および3~12員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される、C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル;ならびに
C
3~12炭素環および3~12員複素環であって、その各々がハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)、-CN、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニルおよびC
2~6アルキニルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される、C
3~12炭素環および3~12員複素環
から独立して選択され、
前記リンカーは、R
4またはR
4の必要に応じた置換基に結合しており;前記抗体は、配列番号1に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域および配列番号10に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変領域を含む、コンジュゲート。
【請求項2】
式(II):
【化25】
によって示され、式中、
Abは、前記抗体であり;
Lは、前記リンカーであり;
Dは、前記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり;
pは、1~20である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、式(IA):
【化26】
またはその薬学的に許容される塩を有し、式中、
*は、前記リンカーへの結合点を示す、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記リンカーが、切断可能なリンカーである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記リンカーが、リソソーム酵素によって切断可能である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記リンカーが、式(V):
【化27】
によって示され、式中、L
4は、前記ペプチドのC末端を示し、L
5は、結合、アルキレンおよびヘテロアルキレンから選択され、L
5は、R
32から独立して選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換され;RX
*は、前記抗体の残基に結合した、結合、スクシンイミド部分または加水分解されたスクシンイミド部分を含み、RX
*上の
【化28】
は、前記抗体の前記残基への結合点を示し、他方の
【化29】
は、前記式(I)の化合物への結合点を示し;R
32は、各出現において、ハロゲン、-OH、-CN、-O-C
1~10アルキル、-SH、=O、=S、-NH
2、-NO
2;およびC
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニルであって、その各々がハロゲン、-OH、-CN、-O-C
1~10アルキル、-SH、=O、=S、-NH
2、-NO
2から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される、C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル、から独立して選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカーの前記ペプチドが、Val-CitまたはVal-Alaである、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記リンカーが、式(VI)または(VII):
【化30】
によって示される、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記リンカーおよび式Iの化合物が、式(VIII):
【化31】
またはその薬学的に許容される塩によって示され、RX
*は、前記抗体の残基に結合した、結合、スクシンイミド部分または加水分解されたスクシンイミド部分を含み、RX
*上の
【化32】
は、前記抗体の前記残基への結合点を示す、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーおよび式Iの化合物が、式(IX):
【化33】
によって示される、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
pが1~8である、請求項2から10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号9に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号2に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記CDRの残基が、Kabatに従って同定される、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記抗体が、配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)CDR1、配列番号17または18のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号19のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号22のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記抗体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
前記抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記抗体が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
前記抗体が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
前記抗体が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
前記抗体が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
前記抗体が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
前記抗体が、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項26に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
前記抗体が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項26に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
前記抗体が、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項26に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
前記抗体が、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項26に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
前記抗体が、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から25に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
前記抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
前記抗体が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
前記抗体が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項35】
前記抗体が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項36】
前記抗体が、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項37】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項1から36のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項38】
前記抗体が、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域および配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項1から37のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項39】
前記抗体が、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項40】
前記抗体が、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcRnに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項41】
前記抗体が、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、1つまたは複数のFcγ受容体に対する増加または減少した親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
前記抗体が全長抗体である、請求項1から41のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
前記抗体が抗原結合性断片である、請求項1から41のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項44】
請求項1から43のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項45】
前記組成物の平均薬物負荷が2~8である、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記組成物の平均薬物負荷が2~5である、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項47】
メソテリン発現がんを処置する方法であって、それを必要とする被験体に、請求項1から43のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは請求項44~46のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項48】
メソテリン発現がんを有する被験体において、標的化された免疫刺激を惹起する方法であって、それを必要とする被験体に、請求項1から43のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは請求項44~46のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項49】
前記投与するステップが、少なくとも2サイクルの前記コンジュゲートまたは医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含むレジメン中にあり、前記レジメンが、前記被験体において、前記コンジュゲートまたは医薬組成物の各投与後、4時間を超える前記コンジュゲートのTmaxを生じる、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記レジメンが、前記被験体への前記コンジュゲートまたは医薬組成物の少なくとも2サイクルの投与、および1サイクル当たり0.4mg/kgよりも多い前記コンジュゲートの総用量を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記レジメンが、1サイクル当たり0.5mg/kgよりも多い前記コンジュゲートの総用量を含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記レジメンが、前記コンジュゲートまたは医薬組成物の3回またはそれよりも多くの投与を含み、前記コンジュゲートのTmaxが、各投与後、4時間を超えるものである、請求項49から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記レジメンが、前記コンジュゲートまたは医薬組成物の各投与後、6時間を超える、8時間を超える、10時間を超える、12時間を超える、または15時間を超えるTmaxを生じる、請求項49から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
Tmaxが、前記コンジュゲートまたは医薬組成物の各投与の72時間後またはそれよりも前に到達される、請求項49から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
Tmaxが、各投与の48時間後もしくはそれよりも前に、各投与の30時間後もしくはそれよりも前に、または各投与の24時間後もしくはそれよりも前に到達される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
1サイクル当たりの前記総用量が、単一用量として投与される、請求項49から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
1サイクル当たりの前記総用量が、分割用量として投与される、請求項49から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記レジメンの1サイクル当たり投与される前記コンジュゲートまたは医薬組成物の前記総用量が、0.5~7.5mg/kgである、請求項49から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記コンジュゲートの前記総用量が、0.5~5mg/kg、0.5~4mg/kg、0.5~3.5mg/kgまたは0.5~2mg/kgである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
有効なレジメンの各サイクルが、1週間、2週間、3週間または4週間である、請求項49から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも2用量の前記コンジュゲートまたは医薬組成物が、7日間よりも長く空けてまたは10日間よりも長く空けて投与される、請求項49から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
少なくとも1サイクルの投与間に休止が存在する、請求項49から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が、少なくとも2サイクルで投与され、各サイクルが、2週間、3週間または4週間の期間を含み、1サイクル当たり投与される前記コンジュゲートの総第1の用量が、約0.5~約7.5mg/kgである、請求項49から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が皮下投与される、請求項47から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が、各投与において皮下投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が、前記被験体において前記コンジュゲートの各投与後、4時間を超える前記コンジュゲートのTmaxを生じる緩徐注入によって静脈内投与される、請求項47から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
B細胞枯渇剤を前記被験体にさらに投与するステップを含む、請求項47から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記B細胞枯渇剤が抗体である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記B細胞枯渇剤が、抗CD19または抗CD20抗体である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記B細胞枯渇剤が、前記医薬組成物の第1の投与と同時に、あるいは前記医薬組成物の第1の投与から14日以内、7日以内、1日以内、または24、12、6、4、3、2もしくは1時間以内に投与される、請求項67から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
B細胞が、前記医薬組成物の投与前に枯渇される、請求項67から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記医薬組成物の投与後のアナフィラキシー様毒性について、前記被験体をモニタリングするステップを含む、請求項47から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が、アナフィラキシー様毒性を軽減する薬剤と共に投与される、請求項47から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
アナフィラキシー様毒性を軽減する前記薬剤が、エピネフリン、抗ヒスタミン薬、コルチゾンおよびベータ-アゴニストから選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記被験体が、メソテリン発現がんを有し、前記メソテリン発現がんが、悪性中皮腫、膵がん、卵巣がん、膵がん、肺がん、乳がんである、請求項47から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記被験体がヒトである、請求項47から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
ヒトメソテリンに特異的に結合するヒト化抗体であって、配列番号9に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域および配列番号10に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗体。
【請求項78】
前記CDRの残基が、Kabatに従って同定される、請求項77に記載のヒト化抗体。
【請求項79】
配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)CDR1、配列番号17または18のアミノ酸配列を含むHC CDR2、配列番号19のアミノ酸配列を含むHC CDR3、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を含むLC CDR2、および配列番号22のアミノ酸配列を含むLC CDR3を含む、請求項77に記載のヒト化抗体。
【請求項80】
ヒトメソテリンに特異的に結合するヒト化抗体であって、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、ヒト化抗体。
【請求項81】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項77から79のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項82】
配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項83】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項84】
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項85】
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項86】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項87】
配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項88】
配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項89】
配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項81に記載のヒト化抗体。
【請求項90】
配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項91】
配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項92】
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項93】
配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項94】
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項95】
配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から89のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項96】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10または配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から79のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項97】
配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項96に記載のヒト化抗体。
【請求項98】
配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項96に記載のヒト化抗体。
【請求項99】
配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項96に記載のヒト化抗体。
【請求項100】
配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77から79のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項101】
IgG1抗体である、請求項77から100のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項102】
配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域および配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項77から101のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項103】
野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項77から101のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項104】
野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcRnに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項77から101のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項105】
野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、1つもしくは複数のFcγ受容体に対する増加および/もしくは減少した親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む、請求項77から101のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項106】
全長抗体である、請求項77から105のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項107】
抗原結合性断片である、請求項77から105のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
【請求項108】
免疫刺激性化合物にコンジュゲートされた請求項77から107のいずれか一項に記載のヒト化抗体を含む、コンジュゲート。
【請求項109】
細胞傷害性化合物にコンジュゲートされた請求項77から107のいずれか一項に記載のヒト化抗体を含む、コンジュゲート。
【請求項110】
前記免疫刺激性化合物がベンザゼピン薬物である、請求項108に記載のコンジュゲート。
【請求項111】
請求項77から107のいずれか一項に記載のヒト化抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項112】
請求項111に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項113】
請求項111に記載の単離された核酸または請求項112に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項114】
請求項77から107のいずれか一項に記載のヒト化抗体を発現する、宿主細胞。
【請求項115】
ヒト化抗体を産生する方法であって、請求項112または114に記載の宿主細胞を、前記ヒト化抗体を発現させるのに適切な条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項116】
前記ヒト化抗体を単離するステップをさらに含む、請求項115に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月19日出願の米国仮特許出願第62/863,463号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
米国における死亡の主要原因の1つは、がんである。化学療法、手術または放射線療法などのがん処置の従来の方法は、高度に毒性であるかもしくはがんに対して非特異的であるかのいずれかである、またはその両方である傾向があり、限定的な有効性および有害な副作用を生じる。しかし、免疫系は、がんと闘う際の強力な特異的ツールになる潜在性を有する。多くの場合、腫瘍は、その産物が悪性状態を誘導または維持するために要求される遺伝子を特異的に発現し得る。これらのタンパク質は、より特異的な抗がん免疫応答の発生および確立についての抗原マーカーとして機能し得る。この特異的免疫応答のブースティングは、がん処置の従来の方法よりも有効であり得、より少ない副作用を有し得る、強力な抗がん処置になる潜在性を有する。
【0003】
メソテリン遺伝子(MSLN)は、細胞表面上に存在するグリコシル-ホスファチジルイノシトールでアンカーされた糖タンパク質であるメソテリンと呼ばれる40キロダルトン(kDa)のタンパク質へとプロセシングされる71kDaの前駆体タンパク質をコードする(Chang, et al, Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93:136-40)。メソテリンは、正常ヒト組織におけるその発現が、体腔を裏打ちする中皮細胞、例えば、胸膜、心膜および腹膜に限定される、分化抗原である。メソテリンは、中皮腫、膵腺癌、卵巣がん、胃および肺腺癌を含むいくつかの異なるヒトがんにおいても高度に発現される(Hassan, et al., Eur J Cancer (2008) 44:46-53)。
メソテリンは、疾患処置の方法のための適切な標的であり、メソテリンを標的化するために有効なイムノコンジュゲートが必要とされている。本発明は、この必要および他の必要に取り組む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chang, et al, Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93:136-40
【非特許文献2】Hassan, et al., Eur J Cancer (2008) 44:46-53
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本発明は、とりわけ、ヒトメソテリンに特異的に結合する抗メソテリン抗体を提供する。
【0006】
一部の態様では、抗メソテリン抗体は、リンカーを介して、細胞傷害剤または免疫刺激性化合物にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。他の実施形態では、リンカーは、非切断性リンカーである。
【0007】
一部の態様では、本発明のコンジュゲートは、リンカーを介してベンザゼピン化合物にコンジュゲートされた、ヒトメソテリンに特異的に結合する抗体を含む。ベンザゼピン化合物は、例えば、式(IA)の化合物:
【化1】
またはその塩であり得、式中、
*は、リンカーへの結合点を示す。リンカーは、例えば、切断可能なリンカーまたは非切断性リンカーであり得る。
【0008】
メソテリン発現がんを処置するための方法およびメソテリン発現がんを有する被験体において標的化された免疫刺激を惹起するための方法であって、被験体に、本明細書で開示されるコンジュゲートを投与するステップを含む方法もまた、本明細書で提供される。
【0009】
本明細書に記載されるコンジュゲートを含む医薬組成物もまた提供される。
【0010】
本開示の新規特色は、添付の特許請求の範囲に特に示される。本開示の特色および利点のより良い理解は、本開示の原理が利用される例示的な態様を示す以下の詳細な説明、および添付の図面を参照して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、抗メソテリン抗体が、メソテリン発現腫瘍細胞系Ovcar3に結合することができることを実証する。
【0012】
【
図2A】
図2A~2Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体と類似のEC
50でメソテリン発現腫瘍細胞に結合することができ、カニクイザルMSLNにも同様に結合することができることを実証する。結合は、トランスフェクトされたカニクイザルMSLN細胞(2A)、OVCAR3細胞(2B)およびNCI-N87細胞(2C)への結合である。
【
図2B】
図2A~2Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体と類似のEC
50でメソテリン発現腫瘍細胞に結合することができ、カニクイザルMSLNにも同様に結合することができることを実証する。結合は、トランスフェクトされたカニクイザルMSLN細胞(2A)、OVCAR3細胞(2B)およびNCI-N87細胞(2C)への結合である。
【
図2C】
図2A~2Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体と類似のEC
50でメソテリン発現腫瘍細胞に結合することができ、カニクイザルMSLNにも同様に結合することができることを実証する。結合は、トランスフェクトされたカニクイザルMSLN細胞(2A)、OVCAR3細胞(2B)およびNCI-N87細胞(2C)への結合である。
【0013】
【
図3A】
図3A~3Bは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、ヒトMSLNでトランスフェクトされたHEK293細胞の存在下で、ヒトPBMCによる炎症促進性サイトカインTNFαの産生を増加させることができるが(3A)、MSLN発現を欠如するトランスフェクトされていないHEK293細胞では増加させることができない(3B)ことを実証する。
【
図3B】
図3A~3Bは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、ヒトMSLNでトランスフェクトされたHEK293細胞の存在下で、ヒトPBMCによる炎症促進性サイトカインTNFαの産生を増加させることができるが(3A)、MSLN発現を欠如するトランスフェクトされていないHEK293細胞では増加させることができない(3B)ことを実証する。
【0014】
【
図4A】
図4A~4Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、メソテリンを発現する種々の腫瘍細胞系、例えば、NCI-N87細胞系(4A)およびOvcar3細胞系(4B)の存在下で、ヒトPBMCによるTNFαの産生を増加させることができるが、非MSLN発現細胞系、例えば、HEK-293では増加させることができない(4C)ことを実証する。
【
図4B】
図4A~4Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、メソテリンを発現する種々の腫瘍細胞系、例えば、NCI-N87細胞系(4A)およびOvcar3細胞系(4B)の存在下で、ヒトPBMCによるTNFαの産生を増加させることができるが、非MSLN発現細胞系、例えば、HEK-293では増加させることができない(4C)ことを実証する。
【
図4C】
図4A~4Cは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、メソテリンを発現する種々の腫瘍細胞系、例えば、NCI-N87細胞系(4A)およびOvcar3細胞系(4B)の存在下で、ヒトPBMCによるTNFαの産生を増加させることができるが、非MSLN発現細胞系、例えば、HEK-293では増加させることができない(4C)ことを実証する。
【0015】
【
図5A】
図5A~5Bは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、カニクイザルMSLNでトランスフェクトされたHEK293細胞の存在下で、カニクイザルPBMCによるTNFαの産生を増加させることができるが(5A)、MSLN発現を欠如するトランスフェクトされていないHEK293細胞では増加させることができない(5B)ことを実証する。
【
図5B】
図5A~5Bは、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートが、カニクイザルMSLNでトランスフェクトされたHEK293細胞の存在下で、カニクイザルPBMCによるTNFαの産生を増加させることができるが(5A)、MSLN発現を欠如するトランスフェクトされていないHEK293細胞では増加させることができない(5B)ことを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され記載されているが、かかる実施形態は例としてのみ提供されることが、当業者に明らかである。多数のバリエーション、変化および置換が、本発明から逸脱することなしに、ここで当業者に想起される。本明細書に記載される本発明の実施形態の種々の代替法が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定すること、ならびにこれらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図される。
【0017】
本開示は、抗メソテリン結合ドメイン、ならびに疾患の処置におけるまたは免疫応答をモジュレートする際の使用のための、かかる結合ドメインを含むコンジュゲートおよび医薬組成物を提供する。
【0018】
定義
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数形の言及を含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、特異的抗原に特異的に結合するまたはそれに対して免疫学的に反応性である、免疫グロブリン分子を指す。抗体という用語には、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、単一ドメイン、遺伝子操作された抗体、およびそれらの抗原結合性断片が含まれる。抗体は、例えば、マウス、キメラ、ヒト化、ヘテロコンジュゲート、二特異性、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)またはテトラボディ(tetrabody)であり得る。抗原結合性断片には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、rIgG、scFv、VHH、VNARまたはナノボディ(nanobody)が含まれ得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、宿主において免疫応答を惹起し得る抗原性物質を指す。抗原は、抗体によって認識され得るペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖、脂質または糖脂質であり得る。これらの抗原のうち1つまたは複数への免疫細胞の曝露は、曝露されたT細胞およびB細胞のクローンの形成を生じる、迅速な細胞分裂および分化応答を惹起し得る。B細胞は、形質細胞へと分化し得、これは、抗原に選択的に結合する抗体を次いで産生し得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「MSLN」および「メソテリン」は、細胞におけるMSLNの発現およびプロセシングから生じる任意のネイティブMSLNを指す。この用語には、他に示されない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒトおよびカニクイザル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む任意の脊椎動物供給源由来のMSLNが含まれる。この用語には、MSLNの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントもまた含まれる。例示的なヒトMSLN前駆体タンパク質(シグナルペプチド、アミノ酸1~36を有する)のアミノ酸配列は、UniProtKB受託番号Q13421に示される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」は、抗体によって認識され得、正常(非がん性)細胞と比較してがん細胞上に優先的に存在する、がん細胞上に存在する抗原性物質を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」は、抗体のFc部分由来のドメイン、またはFc受容体、例えば、Fcガンマ受容体もしくはFcRn受容体に特異的に結合することができる非抗体分子由来のドメインを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、抗体相互作用に関して、「認識する」は、抗体と抗原との間の特異的会合または結合を指し得る。特異的会合または特異的結合は、抗原結合ドメインが任意の他の抗原と会合も結合もしないことは要求せず、むしろ、抗原結合ドメインが、無関係の抗原との会合または結合と比較して、抗原に優先的に会合または結合することを要求する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」などは、抗体と異なる抗原との相互作用(即ち、非特異的結合)と比較した、抗体と抗原との間の特異的会合または特異的結合を指す。一部の実施形態では、抗原を認識するまたはそれに特異的に結合する抗体は、<<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nMまたは<0.001nM(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート」は、免疫刺激性化合物または細胞傷害性化合物に、直接的にまたはリンカーを介してのいずれかで連結された、例えば、共有結合的に連結された、抗体を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「免疫刺激性化合物」は、免疫細胞、例えば、骨髄性細胞または抗原提示細胞を直接的または間接的に活性化または刺激する化合物である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「細胞傷害剤」は、本明細書で使用される場合、細胞機能を阻害もしくは防止するおよび/または細胞の死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤には、化学療法剤、成長阻害性薬剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)または放射性同位体が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「免疫刺激性コンジュゲート」は、in vitroまたはin vivoアッセイによって決定される、免疫系を活性化もしくは刺激するコンジュゲートまたはその一部分を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞または抗原提示細胞を指す。一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞またはNKT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、抗原提示細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、抗原提示細胞ではない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「骨髄性細胞アゴニスト」は、骨髄性細胞による免疫応答を活性化または刺激する化合物を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「B細胞枯渇剤」は、被験体に投与された場合に、被験体においてB細胞の数における低減を引き起こす薬剤を指す。一部の実施形態では、B細胞枯渇剤は、B細胞表面分子、例えば、CD20、CD22またはCD19などに結合する。一部の実施形態では、B細胞枯渇剤は、B細胞生存因子、例えば、BLySまたはAPRILなどを阻害する。B細胞枯渇剤には、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD22抗体、抗BLyS抗体、TACI-Ig、BR3-Fcおよび抗BR3抗体が含まれるがこれらに限定されない。非限定的な例示的なB細胞枯渇剤には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、エプラツズマブ、MEDI-51(抗CD19抗体)、ベリムマブ、BR3-Fc、AMG-623およびアタシセプトが含まれる。
【0034】
用語「塩」または「薬学的に許容される塩」は、当該分野で周知の様々な有機および無機対イオンに由来する塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸を用いて形成され得る。塩が由来し得る無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。塩が由来し得る有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基を用いて形成され得る。塩が由来し得る無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが含まれる。塩が由来し得る有機塩基には、例えば、第1級、第2級および第3級アミン、天然に存在する置換されたアミンを含む置換されたアミン、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的には、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンが含まれる。一部の実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩から選択される。
【0035】
用語「Cx~y」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニルなどの化学的部分と併せて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含む基を含むことが意図される。例えば、用語「C1~6アルキル」は、1~6個の炭素を含む直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキル基が含まれる、置換されたまたは未置換の飽和炭化水素基を指す。-Cx~yアルキレン-という用語は、アルキレン鎖中にx~y個の炭素を有する置換されたまたは未置換のアルキレン鎖を指す。例えば、-C1~6アルキレン-は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンから選択され得、これらのいずれか1つは、必要に応じて置換される。
【0036】
用語「Cx~yアルケニル」および「Cx~yアルキニル」は、長さおよび可能な置換が上記アルキルと同様であるが、少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む、置換されたまたは未置換の不飽和脂肪族基を指す。-Cx~yアルケニレン-という用語は、アルケニレン鎖中にx~y個の炭素を有する置換されたまたは未置換のアルケニレン鎖を指す。例えば、-C2~6アルケニレン-は、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレンおよびヘキセニレンから選択され得、これらのいずれか1つは、必要に応じて置換される。アルケニレン鎖は、アルケニレン鎖中に1つの二重結合または1つよりも多くの二重結合を有し得る。-Cx~yアルキニレン-という用語は、アルケニレン鎖中にx~y個の炭素を有する置換されたまたは未置換のアルキニレン鎖を指す。例えば、-C2~6アルケニレン-は、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレンおよびヘキシニレンから選択され得、これらのいずれか1つは、必要に応じて置換される。アルキニレン鎖は、アルキニレン鎖中に1つの三重結合または1つよりも多くの三重結合を有し得る。
【0037】
「アルキレン」は、炭素および水素のみからなり、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を好ましくは有する、分子の残部をラジカル基へと連結する直鎖二価炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合され、単結合を介してラジカル基に結合される。分子の残部へのおよびラジカル基へのアルキレン鎖の結合点は、それぞれ、末端炭素を介する。他の実施形態では、アルキレンは、1~5個の炭素原子を含む(即ち、C1~C5アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~4個の炭素原子を含む(即ち、C1~C4アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~3個の炭素原子を含む(即ち、C1~C3アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~2個の炭素原子を含む(即ち、C1~C2アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1個の炭素原子を含む(即ち、C1アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、5~8個の炭素原子を含む(即ち、C5~C8アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、2~5個の炭素原子を含む(即ち、C2~C5アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、3~5個の炭素原子を含む(即ち、C3~C5アルキレン)。本明細書で他のように具体的に述べられない限り、アルキレン鎖は、本明細書に記載される置換基などの1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換される。他に述べられない場合、アルキレン鎖は、好ましくは、1~20個の炭素原子、より好ましくは、1~10個の炭素原子を有する。
【0038】
「アルケニレン」は、炭素および水素のみからなり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、2~12個の炭素原子を好ましくは有する、分子の残部をラジカル基へと連結する二価炭化水素鎖を指す。アルケニレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合され、単結合を介してラジカル基に結合される。分子の残部へのおよびラジカル基へのアルケニレン鎖の結合点は、それぞれ、末端炭素を介する。他の実施形態では、アルケニレンは、2~5個の炭素原子を含む(即ち、C2~C5アルケニレン)。他の実施形態では、アルケニレンは、2~4個の炭素原子を含む(即ち、C2~C4アルケニレン)。他の実施形態では、アルケニレンは、2~3個の炭素原子を含む(即ち、C2~C3アルケニレン)。他の実施形態では、アルケニレンは、2個の炭素原子を含む(即ち、C2アルケニレン)。他の実施形態では、アルケニレンは、5~8個の炭素原子を含む(即ち、C5~C8アルケニレン)。他の実施形態では、アルケニレンは、3~5個の炭素原子を含む(即ち、C3~C5アルケニレン)。本明細書で他のように具体的に述べられない限り、アルケニレン鎖は、本明細書に記載される置換基などの1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換される。
【0039】
「アルキニレン」は、炭素および水素のみからなり、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、2~12個の炭素原子を好ましくは有する、分子の残部をラジカル基へと連結する二価炭化水素鎖を指す。アルキニレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合され、単結合を介してラジカル基に結合される。分子の残部へのおよびラジカル基へのアルキニレン鎖の結合点は、それぞれ、末端炭素を介する。他の実施形態では、アルキニレンは、2~5個の炭素原子を含む(即ち、C2~C5アルキニレン)。他の実施形態では、アルキニレンは、2~4個の炭素原子を含む(即ち、C2~C4アルキニレン)。他の実施形態では、アルキニレンは、2~3個の炭素原子を含む(即ち、C2~C3アルキニレン)。他の実施形態では、アルキニレンは、2個の炭素原子を含む(即ち、C2アルキニレン)。他の実施形態では、アルキニレンは、5~8個の炭素原子を含む(即ち、C5~C8アルキニレン)。他の実施形態では、アルキニレンは、3~5個の炭素原子を含む(即ち、C3~C5アルキニレン)。本明細書で他のように具体的に述べられない限り、アルキニレン鎖は、本明細書に記載される置換基などの1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換される。
【0040】
「ヘテロアルキレン」は、鎖中に少なくとも1つのヘテロ原子を含み、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子および1~6個のヘテロ原子、例えば、-O-、-NH-、-S-を好ましくは有する、二価炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合され、単結合を介してラジカル基に結合される。分子の残部へのおよびラジカル基へのヘテロアルキレン鎖の結合点は、鎖の末端原子を介する。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、1~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、1~4個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、1~3個の炭素原子および1~2個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、1~2個の炭素原子および1~2個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、1個の炭素原子および1~2個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、5~8個の炭素原子および1~4個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、2~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含む。他の実施形態では、ヘテロアルキレンは、3~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含む。本明細書で他のように具体的に述べられない限り、ヘテロアルキレン鎖は、本明細書に記載される置換基などの1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換される。
【0041】
用語「炭素環」は、本明細書で使用される場合、環の各原子が炭素である飽和、不飽和または芳香族環を指す。炭素環には、3~10員単環式環、6~12員二環式環および6~12員架橋環が含まれる。二環式炭素環の各環は、飽和、不飽和および芳香族環から選択され得る。例示的な実施形態では、芳香族環、例えば、フェニルは、飽和または不飽和環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロヘキセンに縮合され得る。二環式炭素環には、価数が許容する場合、飽和、不飽和および芳香族二環式環の任意の組合せが含まれる。二環式炭素環には、環サイズの任意の組合せ、例えば、4-5縮合環系、5-5縮合環系、5-6縮合環系、6-6縮合環系、5-7縮合環系、6-7縮合環系、5-8縮合環系および6-8縮合環系が含まれる。例示的な炭素環には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、アダマンチル、フェニル、インダニルおよびナフチルが含まれる。用語「不飽和炭素環」は、少なくとも1の不飽和度を有する炭素環を指し、芳香族炭素環は除く。不飽和炭素環の例には、シクロヘキサジエン、シクロヘキセンおよびシクロペンテンが含まれる。
【0042】
用語「複素環」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数のヘテロ原子を含む飽和、不飽和または芳香族環を指す。例示的なヘテロ原子には、N、O、Si、P、BおよびS原子が含まれる。複素環には、3~10員単環式環、6~12員二環式環および6~12員架橋環が含まれる。二環式複素環には、価数が許容する場合、飽和、不飽和および芳香族二環式環の任意の組合せが含まれる。例示的な実施形態では、芳香族環、例えば、ピリジルは、飽和または不飽和環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、モルホリン、ピペリジンまたはシクロヘキセンに縮合され得る。二環式複素環には、環サイズの任意の組合せ、例えば、4-5縮合環系、5-5縮合環系、5-6縮合環系、6-6縮合環系、5-7縮合環系、6-7縮合環系、5-8縮合環系および6-8縮合環系が含まれる。用語「不飽和複素環」は、少なくとも1の不飽和度を有する複素環を指し、芳香族複素環は除く。不飽和複素環の例には、ジヒドロピロール、ジヒドロフラン、オキサゾリン、ピラゾリンおよびジヒドロピリジンが含まれる。
【0043】
用語「ヘテロアリール」には、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは、1~4個のヘテロ原子、より好ましくは、1個または2個のヘテロ原子を含む、芳香族単環構造、好ましくは、5~7員環、より好ましくは、5~6員環が含まれる。用語「ヘテロアリール」には、2個またはそれよりも多くの環を有する多環式環系もまた含まれ、2個またはそれよりも多くの炭素は、2つの隣接環に共通し、環のうち少なくとも一方は、ヘテロ芳香族であり、例えば、他方の環は、芳香族または非芳香族炭素環式または複素環式であり得る。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。
【0044】
用語「置換された」は、構造の1つまたは複数の炭素または置換可能なヘテロ原子、例えば、-NH-上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。「置換」または「~で置換された」は、かかる置換が、置換された原子および置換基の許容される価数に従うという、ならびに置換が、安定な化合物、即ち、例えば、転位、環化、脱離などによる変換を自発的には受けない化合物を生じるという、黙示的条件を含むと理解される。ある特定の実施形態では、置換されたは、同じ炭素原子上の2個の水素原子を置き換える、例えば、単一の炭素上の2個の水素原子をオキソ、イミノまたはチオキソ基で置換する置換基を有する部分を指す。本明細書で使用される場合、用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを企図する。広い態様では、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐の、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つまたは複数であり得、同じまたは異なり得る。本開示の目的のために、ヘテロ原子、例えば、窒素は、ヘテロ原子の価数を満足する、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有し得る。
【0045】
一部の実施形態では、置換基には、本明細書に記載される任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(oximo)(=N-OH)、ヒドラジノ(=N-NH2)、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(式中、tは1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(式中、tは1または2である);ならびにアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル(aralkenyl)、アラルキニル(aralkynyl)、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルであって、それらのいずれかが、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジン(=N-NH2)、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(式中、tは1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(式中、tは1または2である)によって必要に応じて置換され得る、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルが含まれ得;式中、各Raは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルから独立して選択され、価数が許容する各Raは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、イミノ(=N-H)、オキシモ(=N-OH)、ヒドラジン(=N-NH2)、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(式中、tは1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(式中、tは1または2である)で必要に応じて置換され得;各Rbは、直接結合、または直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン、アルケニレンもしくはアルキニレン鎖から独立して選択され、各Rcは、直鎖または分岐鎖のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン鎖である。
【0046】
適切な場合、置換基自体が置換され得ることが、当業者に理解される。「未置換の」と具体的に述べられない限り、本明細書の化学的部分に対する言及は、置換されたバリアントを含むと理解される。例えば、「ヘテロアリール」基または部分に対する言及は、置換されたバリアントおよび未置換のバリアントの両方を黙示的に含む。
【0047】
炭素-炭素二重結合または炭素-窒素二重結合を有する化学的実体は、Z-形態もしくはE-形態(またはシス-形態もしくはトランス-形態)で存在し得る。さらに、一部の化学的実体は、種々の互変異性形態で存在し得る。他に特定しない限り、本明細書に記載される化合物は、全てのZ-形態、E-形態および互変異性形態も同様に含む意図である。「互変異性体」は、ある分子の1つの原子から、同じ分子の別の原子へのプロトンシフトが可能である分子を指す。互変異性化が可能である状況では、互変異性体の化学的平衡状態が存在する。
【0048】
語句「非経口投与」および「非経口投与される」は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、経腸および外用投与以外の投与の方式を意味し、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内(intracapsular)、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内(intraarticular)、嚢下、くも膜下、脊髄内および胸骨内(intrasternal)の注射および注入が、限定なしに含まれる。
【0049】
語句「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内の、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触した使用に適切な、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物および/または投薬形態を指すために、本明細書で使用される。
【0050】
語句「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者にとって有害でないという意味で、「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料の一部の例には、以下が含まれる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤ワックス;(9)油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)医薬製剤において使用される他の非毒性の適合性物質。
【0051】
抗体
とりわけ、SS1抗体の相補性決定領域(CDR)を含むヒト化抗体が含まれる抗体が、本明細書で提供される。例示的な実施形態では、SS1抗体の軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ならびにSS1抗体の重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体、ならびに改変された重鎖CDR2を有する抗体が含まれる。SS1抗体は、メソテリンに対する高い親和性および特異性を有するキメラモノクローナル抗体IgG/Kである。その各々が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Chowdhury and Pastan, Journal of Immunological Methods 231 (1999) 83-91およびChowdhury et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 95 (1998) 669-674を参照のこと。
【0052】
SS1抗体の軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ならびにSS1抗体の重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3を含むマウス、キメラまたはヒト化抗体、ならびに改変された重鎖CDR2を有するかかる抗体を含む免疫刺激性コンジュゲートが含まれるコンジュゲートもまた、本明細書で提供される。一部の態様では、改変された重鎖CDR2を有する抗体は、改変された重鎖CDR2を有さない対応する抗体よりも安定である。
【0053】
一部の実施形態では、抗体は、正確に位置付けられたジスルフィド連結によって会合した、2つの同一な軽タンパク質鎖(軽鎖)および2つの同一な重タンパク質鎖(重鎖)を含む。抗体が1つまたは複数のシステインを介して免疫刺激性化合物または細胞傷害剤にコンジュゲートされる実施形態では、これらの連結のうち一部または全ては、破断され得る。軽鎖および重鎖のN末端領域は、一緒になって、各抗体の抗原認識部位を形成し得る。構造的に、抗体の種々の機能は、別個のタンパク質ドメイン(即ち、領域)に制限され得る。抗原を認識しそれに結合できる部位は、2つの重鎖および2つの軽鎖のN末端部分において、可変重鎖領域および可変軽鎖領域内に存在し得る3つの相補性決定領域(CDR)からなる。フレームワークおよび定常ドメインは、抗体の一般的フレームワークを提供し得、抗原への抗体結合に直接的には関与しない場合があるが、定常ドメインの場合、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)への抗体の参加に関与し得る。
【0054】
天然の軽鎖可変領域および重鎖可変領域のドメインは、同じ一般的構造を有し得、各ドメインは、4つのフレームワーク領域を含み得、その配列は、いくらか保存され得、3つの超可変領域またはCDRによって接続され得る。4つのフレームワーク領域は、大部分はβ-シートコンフォメーションを取り得、CDRは、β-シート構造を接続する、一部の態様ではβ-シート構造の一部を形成する、ループを形成し得る。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によって近接して維持され得、他方の鎖からのCDRと共に、抗原結合部位の形成に寄与し得る。
【0055】
抗体は、1つもしくは複数の軽鎖(LC)CDR(LCDR)および1つもしくは複数の重鎖(HC)CDR(HCDR)、1つもしくは複数のLCDRまたは1つもしくは複数のHCDRを含み得る。例えば、抗体は、以下のうち1つまたは複数を含み得る:軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、または軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)。別の例として、抗体は、以下のうち1つまたは複数を含み得る:重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)または重鎖相補性決定領域3(HCDR3)。一部の実施形態では、抗体は、以下の全てを含む:軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)および重鎖相補性決定領域3(HCDR3)。他に述べられない限り、本明細書に記載されるCDRは、Kabatに従って定義され得る。
【0056】
抗体は、異なるクラスの免疫グロブリン、例えば、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割当てられ得る任意の型のものであり得る。いくつかの異なるクラスは、アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2へとさらに分類され得る。抗体は、1つの軽鎖および1つの重鎖、しばしば、1つよりも多くの鎖をさらに含み得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域(Fc)は、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμであり得る。軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかのうち一方であり得る。Fc領域は、Fcドメインを含み得る。Fc受容体は、Fcドメインに結合し得る。
【0057】
一部の実施形態では、抗体の抗原結合性断片(例えば、抗原結合ドメイン)は、抗原への特異的結合について、無傷抗体と競合する。抗原結合性断片には、例えば、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;ならびに(iii)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片が含まれる。一部の実施形態では、抗原結合性断片(例えば、抗原結合ドメイン)は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0058】
F(ab’)2およびFab’部分は、遺伝子操作すること、または免疫グロブリン(例えば、モノクローナル抗体)をプロテアーゼ、例えば、ペプシンおよびパパインで処置することによって産生され得、それには、2つのH鎖の各々中のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の近傍で免疫グロブリンを消化することによって生成された抗体断片が含まれ得る。Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含み得る。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステイン(複数可)を含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なり得る。
【0059】
Fvは、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最低限の抗体断片であり得る。この領域は、緊密に非共有結合的に会合した、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなり得る。この構成では、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、VH-VLダイマーの表面上の抗原結合部位を規定し得る。単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)は、抗原を認識しそれに結合し得るが、結合は、結合部位全体の親和性よりも低い親和性であり得る。
【0060】
抗体は、Fcドメインを含むFc領域を含み得る。抗体のFcドメインは、免疫細胞上で見出されるFcRと相互作用し得る。Fcドメインは、免疫系の活性化をもたらし得る、エフェクター分子と細胞との間の相互作用もまた媒介し得る。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の重鎖の第2および第3の定常ドメインに由来し得る2つの同一なタンパク質断片を含み得る。IgMおよびIgE抗体アイソタイプでは、Fc領域は、3つの重鎖定常ドメインを含み得る。IgG抗体アイソタイプでは、Fc領域は、FcR媒介性の下流の効果にとって重要であり得る、高度に保存されたN-グリコシル化部位を含み得る。
【0061】
Fcドメインは、改変されていない抗体またはFcドメインと比較して、少なくとも1つの定常領域媒介性の生物学的エフェクター機能を獲得または改善するために、例えば、FcγR相互作用を増強するために、改変され得る。Fcドメインは、異なる型のFcRと相互作用し得る。異なる型のFcRには、例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcαRI、FcμR、FcεRI、FcεRIIおよびFcRnが含まれ得る。FcRは、例えば、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、濾胞樹状細胞、好酸球、好塩基球、血小板および肥満細胞が含まれるある特定の免疫細胞の膜上に位置し得る。FcRがFcドメインによって係合されると、FcRは、例えば、受容体媒介性エンドサイトーシス、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)を介した抗原-抗体複合体のクリアランス、ならびに分泌、エキソサイトーシスおよび細胞代謝における変更を生じ得る原形質膜を横切るシグナルの、リガンド誘発される伝達が含まれる機能を開始し得る。FcRに、細胞表面において抗体および多価抗原が凝集した場合に、FcRは、シグナルを送達し得る。
【0062】
一部の実施形態では、抗体のFcドメインは、1つまたは複数のFc受容体に対する増加した結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、1つまたは複数のFcガンマ受容体に対する増加した結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcRn受容体に対する増加した結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcガンマおよびFcRn受容体に対する増加した結合親和性を示し得る。
【0063】
一部の実施形態では、抗体のFcドメインは、1つまたは複数のFc受容体に対する低減された結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、1つまたは複数のFcガンマ受容体に対する低減された結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcRn受容体に対する低減された結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcガンマおよびFcRn受容体に対する低減された結合親和性を示し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、Fcヌルドメインである。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcRn受容体に対する低減された結合親和性を示し得るが、野生型IgGと比較して、1つまたは複数のFcガンマ受容体に対する同じまたは増加した結合親和性を有し得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、FcRn受容体に対する増加した結合親和性を示し得るが、1つまたは複数のFcガンマ受容体に対する同じまたは減少した結合親和性を有し得る。本明細書で使用される場合、「Fcヌル」は、Fcガンマ受容体のいずれに対しても弱い結合しか示さない~結合を示さないドメインを指す。一部の実施形態では、Fcヌルドメインは、多くても1000分の1までの、Fcガンマ受容体に対する結合親和性における低減(例えば、Kdにおける増加)を示す。
【0064】
Fcドメインは、Fc受容体へのFcドメインの結合を減少させる1つもしくは複数の、2つもしくはそれよりも多くの、3つもしくはそれよりも多くのまたは4つもしくはそれよりも多くのアミノ酸置換を有し得る。ある特定の実施形態では、Fcドメインは、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組合せのうち1つまたは複数に対する減少した結合親和性を有する。Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を減少させるために、Fcドメインは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含み得る。
【0065】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の置換は、Kabat番号付けのEUインデックスに従う、E233P、L234V、L234A、L235A、L235E、ΔG236、G237A、E318A、K320A、K322A、A327G、A330SまたはP331Sに対応するIgG1重鎖変異のうちいずれか1つまたは複数を含む。
【0066】
一部の実施形態では、Fcドメインは、野生型IgG配列から改変されたIgGアイソフォームの配列を含み得る。一部の実施形態では、Fcドメインは、野生型IgG1配列から改変されたIgG1アイソフォームの配列を含み得る。一部の実施形態では、改変は、全てのFcγ受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、E233、L234およびL235の置換、例えば、E233P/L234V/L235AまたはE233P/L234V/L235A/ΔG236であり得る。改変は、KabatのEUインデックスに従って、P238の置換、例えば、P238A;D265の置換、例えば、D265A;N297の置換、例えば、N297A;A327の置換、例えば、A327Q;またはP329の置換、例えば、P239Aであり得る。
【0067】
一部の実施形態では、IgG Fcドメインは、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcγR1へのその結合親和性を低減させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、F241における置換、例えば、F241A;F243における置換、例えば、F243A;V264における置換、例えば、V264A;またはD265における置換、例えば、D265Aを含み得る。
【0068】
一部の実施形態では、IgG Fcドメインは、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcγR1へのその結合親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、A327およびP329における置換、例えば、A327Q/P329Aを含み得る。
【0069】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIおよびFcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、D270の置換、例えば、D270A;Q295の置換、例えば、Q295A;またはA327の置換、例えば、A237Sであり得る。
【0070】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIおよびFcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を増加させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、T256の置換、例えば、T256A;K290の置換、例えば、K290Aであり得る。
【0071】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を増加させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、R255の置換、例えば、R255A;E258の置換、例えば、E258A;S267の置換、例えば、S267A;E272の置換、例えば、E272A;N276の置換、例えば、N276A;D280の置換、例えば、D280A;H285の置換、例えば、H285A;N286の置換、例えば、N286A;T307の置換、例えば、T307A;L309の置換、例えば、L309A;N315の置換、例えば、N315A;K326の置換、例えば、K326A;P331の置換、例えば、P331A;S337の置換、例えば、S337A;A378の置換、例えば、A378A;またはE430の置換、例えば、E430であり得る。
【0072】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を増加させ、FcγRIIIA受容体への結合親和性を低減させる、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、H268の置換、例えば、H268A;R301の置換、例えば、R301A;またはK322の置換、例えば、K322Aであり得る。
【0073】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を減少させるが、FcγRIIIA受容体への結合親和性には影響を与えない、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、R292の置換;またはK414の置換、例えば、K414Aであり得る。
【0074】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を減少させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、F241およびF243の置換、例えば、F241S/F243SまたはF241I/F243Iであり得る。
【0075】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を減少させるが、FcγRII受容体への結合親和性には影響を与えない、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、S239の置換、例えば、S239A;E269の置換、例えば、E269A;E293の置換、例えば、E293A;Y296の置換、例えば、Y296F;V303の置換、例えば、V303A;A327の置換、例えば、A327G;K338の置換、例えば、K338A;またはD376の置換、例えば、D376Aであり得る。
【0076】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を増加させるが、FcγRII受容体への結合親和性には影響を与えない、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、E333の置換、例えば、E333A;K334の置換、例えば、K334A;A339の置換、例えば、A339T;またはS239およびI332の置換、例えば、S239D/I332Eであり得る。
【0077】
一部の実施形態では、改変は、FcγRIIIA受容体へのIgG Fcドメインの結合親和性を増加させる1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、L235、F243、R292、Y300およびP396の置換、例えば、L235V/F243L/R292P/Yl300L/P396L(IgG1VLPLL)であり得る。改変は、KabatのEUインデックスに従って、S298、E333およびK334の置換、例えば、S298A/E333A/K334Aであり得る。改変は、KabatのEUインデックスに従って、K246の置換、例えば、K246Fであり得る。
【0078】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインまたは領域の結合親和性を増加させ、FcγRIIIA受容体への結合親和性を増加させる、1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む。改変は、S298の置換、例えば、S298A;S239、I332およびA330の置換、例えば、S239D/I332E/A330L、またはS239およびI332の置換、例えば、S239D/I332Eであり得る。
【0079】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインまたは領域の結合親和性を増加させ、FcγRIII受容体への結合を減少させる、1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、L234A/L235A/G237A/K322A/S267E/L328Fを含む。
【0080】
一部の実施形態では、改変は、FcγRII受容体へのIgG Fcドメインまたは領域の結合親和性を増加させ、FcγRIII受容体への結合を減少させる、1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、S267E/L328Fを含む。
【0081】
1つまたは複数のFcγ受容体とのその相互作用に影響を与える、IgG Fcドメイン中の他の置換は、米国特許第7,317,091号および同第8,969,526号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0082】
一部の実施形態では、IgG Fcドメインは、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcRnへの結合親和性を低減させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。改変は、KabatのEUインデックスに従って、H435における置換、例えば、H435A;I253における置換、例えば、I253A;H310における置換、例えば、H310A、またはI253、H310およびH435における置換、例えば、I253A/H310A/H435Aを含み得る。
【0083】
改変は、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcRnに対するIgG Fcドメインの結合親和性を増加させる1つのアミノ酸残基の置換を含み得る。改変は、KabatのEUインデックスに従って、V308における置換、例えば、V308P;例えば、M428L;N434における置換、例えば、N434A;T250およびM428における置換、例えば、T250QおよびM428L;M428およびN434における置換、例えば、M428LおよびN434S、N434AもしくはN434H;M252、S254およびT256における置換、例えば、M252Y/S254T/T256E;またはP257L、P257N、P257I、V279E、V279Q、V279Y、A281S、E283F、V284E、L306Y、T307V、V308F、Q311V、D376VおよびN434Hから選択される1つもしくは複数のアミノ酸の置換を含み得る。FcRnとのその相互作用に影響を与える、IgG Fcドメイン中の他の置換は、米国特許第9,803,023号(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0084】
本発明の抗体は、ヒト化され得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含み得る全長免疫グロブリンまたはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の標的結合性サブドメイン)であり得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み得、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域(FR)の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の少なくとも一部分もまた含み得る。
【0085】
本発明の抗体は、キメラ抗体であり得る。キメラ抗体は、一般に、非ヒト可変重鎖および軽鎖(例えば、マウス)、ならびにヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の少なくとも一部分を含む。
【0086】
本明細書に記載される抗体は、二特異性抗体または二重可変ドメイン抗体(DVD)であり得る。二特異性抗体およびDVD抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、しばしばヒトのまたはヒト化された、モノクローナル抗体であり得る。
【0087】
本明細書に記載される抗体は、誘導体化された抗体であり得る。例えば、誘導体化された抗体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結によって改変され得る。
【0088】
ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号1に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域および配列番号10に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変領域を含む。一部のかかる態様では、抗体は、配列番号9に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含む。他のかかる態様では、抗体は、配列番号2に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含む。CDRは、例えば、Kabatを介して同定され得る。例えば、CDRがKabatによって同定される実施形態では、重鎖のCDR1は配列番号16であり、重鎖のCDR2は、配列番号17または配列番号18であり、重鎖のCDR3は配列番号19であり、軽鎖のCDR1は配列番号20であり、軽鎖のCDR2は配列番号21であり、軽鎖のCDR3は配列番号22である。一部の態様では、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2を含む抗体よりも安定である。
【0089】
一部の態様では、抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0090】
一部の態様では、抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の態様では、抗体は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0091】
本発明の抗体は、本明細書に記載される重鎖可変領域および軽鎖可変領域の任意の組合せを含み得る。例えば、抗体は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8または9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10、11、12、13、14または15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。例えば、例示的な実施形態では、抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号10もしくは配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0092】
例示的な実施形態では、抗体は、配列番号25または配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0093】
抗体は、当該分野で公知の任意の定常領域を含み得る。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型またはラムダ型の軽鎖定常領域であり得、重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型またはミュー型の重鎖定常領域であり得る。軽鎖または重鎖定常領域は、天然に存在する定常領域の断片、誘導体、バリアントまたはムテインであり得る。定常領域は、活性なFcドメインまたはヌルFcドメインを含み得る。一部の態様では、抗体は、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む。一部の態様では、抗体は、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、FcRnに対する同じもしくは実質的に類似の結合親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む。他の態様では、抗体は、野生型IgG1 Fcドメイン、または野生型IgG1 Fcドメインと比較して、1つまたは複数のFcγ受容体に対する増加または減少した親和性を有するIgG1 Fcドメインバリアントを含む。一部の態様では、抗体は、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域および配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域をさらに含み得る。
【0094】
抗メソテリン抗体を産生するための方法
抗メソテリン抗体は、抗体産生のための当該分野で公知の任意の方法によって産生され得る。一例として、抗メソテリン抗体は、抗メソテリン抗体をコードする単離された核酸配列、その核酸配列を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗体の産生のための組換え技法を使用する方法によって産生され得る。メソテリン抗体をコードする核酸配列は、さらなるクローニングのためまたは発現のために、複製可能なDNAベクター中に単離され得る。抗メソテリン抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離および配列決定され得る。当該分野で公知の多くのベクターが、ベクターとして使用され得る。ベクター構成要素には、以下のうち1つまたは複数が一般に含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。本明細書のDNAベクターをクローニングまたは発現させるための適切な宿主細胞は、本明細書に記載される原核生物、酵母または高等真核生物細胞であり得る。グリコシル化された抗メソテリン抗体の発現のための適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来し得る。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれ得るがこれらに限定されない。抗メソテリン抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な市販の培地中で培養され得る。組換え技法を使用する場合、抗メソテリン抗体は、例えば、細胞内で産生され得、細胞膜周辺腔中で産生され得、または培地中に直接的に分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、粒状デブリ、宿主細胞または溶解された断片のいずれかは、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去され得る。抗体が培地中に分泌される場合、かかる発現系からの上清は、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮され得る。プロテアーゼ阻害剤、例えば、フッ化フェニルメチルスルホニル(phenylmethylsuphonyl)が、タンパク質分解を阻害するために、上述のステップのいずれかにおいて含められ得、抗生物質が、偶発的な夾雑物の成長を防止するために含められ得る。細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得る。親和性リガンドとしてのプロテインAの適切性は、抗体中に存在し得る任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存し得る。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿もまた、抗体を回収するために使用され得る。任意の予備的精製ステップ(複数可)の後に、抗メソテリン抗体および夾雑物を含む混合物は、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得る。抗体をヒト化するための方法には、例えば、CDR移植(Jones et al., Nature 15 321:522 (1986))、ならびに「リシェイピング(reshaping)」(Verhoeyen, et al., 1988 Science 239:1534-1536;Riechmann, et al., 1988 Nature 332:323-337;Tempest, et al., Bio/Technol 1991 9:266-271)、「超キメラ化(hyperchimerization)」(Queen, et al., 1989 Proc Natl Acad Sci USA 86:10029-10033;Co, et al., 1991 Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873;Co, et al., 1992 J Immunol 148:1149-1154)および「ベニヤリング(veneering)」(Mark, et al., BW Metcalf, BJ Dalton (Eds.) Cellular adhesion: molecular definition to therapeutic potential. Plenum Press, New York; 1994:291-312)が含まれるそのバリアントを使用するヒト化が含まれ得る。超ヒト化(superhumanization)(Tan, et al., 2002 J Immunol 169: 1119-25)は、類似のCDR正準構造を有するヒト生殖系列抗体配列中に非ヒトCDRを移植するために使用され得る、別のバリアントヒト化方法である。
【0095】
コンジュゲート
本明細書に記載されるコンジュゲートは、抗体と、少なくとも1つの薬物に結合された少なくとも1つのリンカーとを含む。薬物は、例えば、免疫刺激性化合物、例えば、骨髄性細胞アゴニストまたは他のアゴニスト(例えば、TLR8アゴニスト、TLR7アゴニスト)などであり得る。あるいは、薬物は、細胞傷害剤であり得る。一部の態様では、本開示は、式II:
【化2】
によって示されるコンジュゲートであって、式中、
Abは、抗メソテリン抗体であり、
Lは、リンカーであり;
Dは、免疫刺激性化合物または細胞傷害剤であり;
pは、1~20から選択される
コンジュゲートを提供する。
【0096】
コンジュゲートでは、薬物負荷は、抗体1つ当たりの薬物-リンカー分子の数であるpによって示される。状況に依存して、pは、平均薬物負荷とも呼ばれる、抗体1つ当たりの薬物-リンカー分子の平均数を示し得る。種々の実施形態では、pは、1~20の範囲であり得る。一部のコンジュゲートでは、pは、好ましくは、1~8である。一部の好ましい実施形態では、pが平均薬物負荷を示す場合、pは、約2~約5の範囲である。一部の実施形態では、pは、約2、約3、約4、または約5または約8である。コンジュゲートの調製における抗体1つ当たりの平均薬物-リンカー分子は、従来の手段、例えば、質量分析法(mass spectroscopy)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、HIC、ELISAアッセイおよびHPLCによって特徴付けられ得る。
【0097】
本明細書に記載される免疫刺激性コンジュゲートは、疾患または状態の細胞に対する免疫応答を活性化、刺激または増大させ得る。骨髄性細胞アゴニストなどの免疫刺激性コンジュゲートによる免疫応答の活性化、刺激または増大は、免疫細胞(例えば、骨髄性細胞)を、コンジュゲートによって標的化される細胞と共に共培養し、サイトカイン放出、ケモカイン放出、免疫細胞の増殖、免疫細胞活性化マーカーの上方調節、および/またはADCCを測定することによって、in vitroで測定され得る。ADCCは、コンジュゲートの投与後の、標的細胞、骨髄性細胞および他の免疫細胞との共培養物中の残存する標的細胞のパーセンテージを決定することによって測定され得る。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、in vitroアッセイ、例えば、サイトカイン放出アッセイによって、活性化マーカー(例えば、MHCクラスIIマーカー)の検出または当該分野で公知の他のアッセイによって決定した場合、免疫細胞活性を活性化または刺激し得る。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、サイトカイン放出アッセイによって決定した場合、100nMまたはそれ未満のEC50を有する。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、サイトカイン放出アッセイによって決定した場合、50nMまたはそれ未満のEC50を有する。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、サイトカイン放出アッセイによって決定した場合、10nMまたはそれ未満のEC50を有する。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、1mMまたはそれ未満のEC50を有する。
【0098】
免疫刺激性化合物
本明細書に記載される抗メソテリン抗体は、免疫刺激性コンジュゲートを形成するために、リンカーを介して免疫刺激性化合物にコンジュゲートされ得る。免疫刺激性化合物は、投与後に抗腫瘍免疫応答を直接的または間接的に刺激する任意の化合物であり得る。例えば、免疫刺激性化合物は、その標的細胞によるサイトカインの放出を引き起こすことによって、抗腫瘍免疫応答を直接的に刺激し得、免疫細胞の活性化を生じる。別の例として、免疫刺激性化合物は、標的細胞によるIL-10の産生および分泌を抑制すること、ならびに/または調節性T細胞の活性を抑制することによって、免疫応答を間接的に刺激し得、免疫細胞による増加した抗腫瘍応答を生じる。免疫刺激性化合物による免疫応答の刺激は、炎症促進性サイトカインの上方調節および/または免疫細胞の増加した活性化によって測定され得る。この効果は、免疫細胞を、免疫刺激性コンジュゲートによって標的化される細胞と共に共培養し、サイトカイン放出、ケモカイン放出、免疫細胞の増殖、免疫細胞活性化マーカーの上方調節、および/またはADCCを測定することによって、in vitroで測定され得る。ADCCは、免疫刺激性コンジュゲートの投与後の、標的細胞および免疫細胞との共培養物中の残存する標的細胞、例えば腫瘍細胞のパーセンテージを決定することができるADCCアッセイによって測定され得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、免疫刺激性化合物は、パターン認識受容体(PRR)を標的化し得る。PRRは、病原体関連分子パターン(PAMP)および損傷関連分子パターン(DAMP)を認識することができる。PRRは、膜結合型であり得る。PRRは、細胞質ゾル型であり得る。PRRは、toll様受容体(TLR)であり得る。PRRは、RIG-I様受容体であり得る。PRRは、受容体キナーゼであり得る。PRRは、C型レクチン受容体であり得る。PRRは、NOD様受容体であり得る。PRRは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12またはTLR13であり得る。PRRは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9およびTLR10であり得る。
【0100】
ある特定の実施形態では、免疫刺激性化合物は、損傷関連パターン分子(DAMP)または病原体関連分子パターン分子(PAMP)であり得る。免疫刺激性分子モチーフ、例えば、PAMPは、自然免疫系の受容体、例えば、Toll様受容体(TLR)、Nod様受容体、C型レクチンおよびRIG-I様受容体によって認識され得る。これらの受容体は、病原体などの感染性因子に応答して免疫系の活性化をプライムすることができる、膜貫通およびエンドソーム内タンパク質であり得る。他のタンパク質ファミリーと同様、TLRは、TLR4、TLR7およびTLR8が含まれる多くのアイソフォームを有し得る。TLRアゴニストは、単純な分子から複雑な高分子までの範囲であり得る。同様に、TLRアゴニストのサイズは、小型から大型までの範囲であり得る。TLRアゴニストは、合成または生合成アゴニストであり得る。TLRアゴニストもまた、PAMPであり得る。さらなる免疫刺激性化合物、例えば、細胞質ゾルDNA、および環状ジヌクレオチドと呼ばれる独自の細菌核酸は、細胞質ゾルDNAセンサーとして作用し得るインターフェロン調節因子(IRF)またはインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)によって認識され得る。インターフェロン調節因子(IRF)によって認識される化合物は、TLRおよび他のパターン認識受容体による免疫調節において役割を果たし得る。
【0101】
免疫刺激性化合物は、TGFB、ベータ-カテニン、PI3K-ベータ、STAT3、IL-10、IDOまたはTDOの阻害剤を含み得る。免疫刺激性化合物は、ベータ-カテニン経路の阻害剤、例えば、TNIKまたはタンキラーゼの阻害剤であり得る。ある特定の実施形態では、免疫刺激性化合物は、キナーゼ阻害剤である。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、CDK4/6の阻害剤、例えば、アベマシクリブまたはパルボシクリブなどであり得る。
【0102】
一部の態様では、免疫刺激性化合物は、骨髄性細胞アゴニスト、例えば、TLR7またはTLR8アゴニストである。ある特定の実施形態では、TLR7アゴニストは、イミダゾキノリン、イミダゾキノリンアミン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジン、ヘテロアロチアジアジド(heteroarothiadiazide)-2,2-ジオキシド、ベンゾナフチリジン、グアノシンアナログ、アデノシンアナログ、チミジンホモポリマー、ssRNA、CpG-A、PolyG10およびPolyG3から選択される。ある特定の実施形態では、TLR7アゴニストは、イミダゾキノリン、イミダゾキノリンアミン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジン、ヘテロアロチアジアジド-2,2-ジオキシドまたはベンゾナフチリジンから選択されるが、グアノシンアナログ、アデノシンアナログ、チミジンホモポリマー、ssRNA、CpG-A、PolyG10およびPolyG3以外である。一部の実施形態では、TLR7アゴニストは、天然に存在しない化合物である。TLR7モジュレーターの例には、GS-9620、GSK-2245035、イミキモド、レシキモド、DSR-6434、DSP-3025、IMO-4200、MCT-465、MEDI-9197、3M-051、SB-9922、3M-052、Limtop、TMX-30X、TMX-202、RG-7863、RG-7795、ならびに米国特許出願公開第20160168164号(Janssen)、米国特許出願公開第20150299194号(Roche)、米国特許出願公開第20110098248号(Gilead Sciences)、米国特許出願公開第20100143301号(Gilead Sciences)および米国特許出願公開第20090047249号(Gilead Sciences)に開示される化合物が含まれる。一部の実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFアルファまたはIFNアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、500nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFアルファまたはIFNアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、100nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFアルファまたはIFNアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、50nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFアルファまたはIFNアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、10nMまたはそれ未満のEC50値を有する。
【0103】
ある特定の実施形態では、TLR8アゴニストは、ベンザゼピン、イミダゾキノリン、チアゾロキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジンまたはssRNAから選択される。ある特定の実施形態では、TLR8アゴニストは、ベンザゼピン、イミダゾキノリン、チアゾロキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジンから選択され、ssRNA以外である。一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、天然に存在しない化合物である。TLR8アゴニストの例には、モトリモド(motolimod)、レシキモド、3M-051、3M-052、MCT-465、IMO-4200、VTX-763、VTX-1463が含まれる。一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、TNFアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、500nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、TNFアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、100nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、TNFアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、50nMまたはそれ未満のEC50値を有する。一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、TNFアルファ産生を測定するPBMCアッセイによって、10nMまたはそれ未満のEC50値を有する。
【0104】
一部の実施形態では、TLR8アゴニストは、本明細書またはWO2018/170179に記載される化合物のいずれかである。
【0105】
他のTLR7およびTLR8アゴニストは、例えば、WO2016142250、WO2017046112、WO2007024612、WO2011022508、WO2011022509、WO2012045090、WO2012097173、WO2012097177、WO2017079283、米国特許出願公開第20160008374号、米国特許出願公開第20160194350号、米国特許出願公開第20160289229号、米国特許第6043238号、米国特許出願公開第20180086755号(Gilead)、WO2017216054(Roche)、WO2017190669(Shanghai De Novo Pharmatech)、WO2017202704(Roche)、WO2017202703(Roche)、WO20170071944(Gilead)、米国特許出願公開第20140045849号(Janssen)、米国特許出願公開第20140073642号(Janssen)、WO2014056953(Janssen)、WO2014076221(Janssen)、WO2014128189(Janssen)、米国特許出願公開第20140350031号(Janssen)、WO2014023813(Janssen)、米国特許出願公開第20080234251号(Array Biopharma)、米国特許出願公開第20080306050号(Array Biopharma)、米国特許出願公開第20100029585号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20110092485号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20110118235号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20120082658号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20120219615号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20140066432号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20140088085号(Ventirx Pharma)、米国特許出願公開第20140275167号(Novira Therapeutics)、および米国特許出願公開第20130251673号(Novira Therapeutics)、WO2018198091(Novartis AG)、および米国特許出願公開第20170131421号(Novartis AG)に開示されている。
【0106】
一部の態様では、TLR8アゴニストは、式Iの化合物:
【化3】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
1、R
2およびR
3は、水素、必要に応じて置換されたC
1~10アルキル、必要に応じて置換されたC
2~10アルケニル、必要に応じて置換されたC
2~10アルキニル、必要に応じて置換されたC
3~12炭素環および必要に応じて置換された3~12員複素環から独立して選択され、その各々が、ハロゲン、-CN、-NO
2、-NH
2、=O、=S、-C(O)OCH
2C
6H
5、-NHC(O)OCH
2C
6H
5、C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル、C
3~12炭素環、3~12員複素環およびハロ(C
1~10アルキル)から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換され;
R
4は、必要に応じて置換された縮合5-5、縮合5-6または縮合6-6二環式複素環であり、ここで必要に応じた置換基は、各出現において、ハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)および-CN;
その各々がハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)、-CN、C
3~12炭素環および3~12員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される、C
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル;ならびに
その各々がハロゲン、-OR
10、-SR
10、-C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)C(O)R
10、-N(R
10)C(O)N(R
10)
2、-N(R
10)
2、-C(O)R
10、-C(O)OR
10、-OC(O)R
10、-NO
2、=O、=S、=N(R
10)、-CN、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニルおよびC
2~6アルキニルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される、C
3~12炭素環および3~12員複素環
から独立して選択される。
【0107】
一部のかかる態様では、R1およびR2は、C1~4アルキルから独立して選択され、R3は-水素である。一部のかかる態様では、R1およびR2は、C3アルキルである。
【0108】
リンカーに結合される場合、リンカーは、好ましくは、R4またはR4の必要に応じた置換基に結合している。
【0109】
ある特定の実施形態では、リンカーへの結合前の例示的な免疫刺激性コンジュゲートは、式(IV)
【化4】
【0110】
またはその塩によって示される。リンカーに結合される場合、例示的な免疫刺激性は、式(IA)
【化5】
によって示され得、式中、
*は、リンカーへの結合点を示す。
【0111】
本明細書に記載される化合物の塩、特に、薬学的に許容される塩が、本開示に含まれる。十分に酸性の、十分に塩基性のまたは両方の官能基を保有する本開示の化合物は、いくつかの無機塩基、ならびに無機酸および有機酸のいずれかと反応して、塩を形成し得る。あるいは、本来的に荷電した化合物、例えば、4級窒素を有する化合物は、適切な対イオンと塩、例えば、ハライド、例えば、臭化物、塩化物またはフッ化物、特に臭化物を形成し得る。
【0112】
本明細書に記載される化合物を合成する際に有用な合成化学変換および方法論は、当該分野で公知であり、これには、例えば、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,239,862号が含まれる。
【0113】
リンカー
本明細書に記載される抗メソテリン抗体は、リンカーを介して、薬物、例えば、免疫刺激性化合物または細胞傷害剤にコンジュゲートされ得る。
【0114】
リンカーは、短い、可撓性、剛性、切断可能、非切断性、親水性または疎水性であり得る。リンカーは、異なる特徴を有するセグメント、例えば、可撓性のセグメントまたは剛性のセグメントを含み得る。リンカーは、細胞外環境に対して化学的に安定であり得る、例えば、血流中で化学的に安定であり得、または安定でも選択的に安定でもない連結を含み得る。リンカーは、細胞内で特異的または非特異的に切断するおよび/もしくは犠牲にするまたは他の方法で崩壊するように設計された連結を含み得る。切断可能なリンカーは、酵素に対して感受性であり得る。切断可能なリンカーは、酵素、例えば、プロテアーゼによって切断され得る。切断可能なリンカーは、例えば、ペプチド、例えば、バリン-シトルリンペプチドまたはバリン-アラニンペプチドを含み得る。ペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリン含有リンカーまたはバリン-アラニン含有リンカーは、例えば、ペンタフルオロフェニル基をさらに含み得る。ペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリン含有リンカーまたはバリン-アラニン含有リンカーは、例えば、マレイミドまたはスクシンイミド基を含み得る。ペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリン含有リンカーまたはバリン-アラニン含有リンカーは、例えば、パラアミノベンジルアルコール(PABA)基またはパラ-アミノベンジルカルバメート(PABC)をさらに含み得る。ペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリン含有リンカーまたはバリン-アラニン含有リンカーは、例えば、PABA基およびペンタフルオロフェニル基を含み得る。ペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリン含有リンカーまたはバリン-アラニン含有リンカーは、例えば、PABA基およびマレイミドまたはスクシンイミド基を含み得る。
【0115】
非切断性リンカーは、プロテアーゼ非感受性であり得る。非切断性リンカーは、マレイミドカプロイルリンカーであり得る。マレイミドカプロイルリンカーは、N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレートを含み得る。マレイミドカプロイルリンカーは、スクシンイミド基を含み得る。マレイミドカプロイルリンカーは、ペンタフルオロフェニル基を含み得る。リンカーは、マレイミドカプロイル基と1つまたは複数のポリエチレングリコール分子との組合せであり得る。リンカーは、マレイミド-PEG4リンカーであり得る。リンカーは、スクシンイミド基を含むマレイミドカプロイルリンカーと1つまたは複数のポリエチレングリコール分子との組合せであり得る。リンカーは、ペンタフルオロフェニル基を含むマレイミドカプロイルリンカーと1つまたは複数のポリエチレングリコール分子との組合せであり得る。リンカーは、ポリエチレングリコール分子に連結されたマレイミドを含み得、ここで、ポリエチレングリコールは、より高いリンカー可撓性を可能にし得る、またはリンカーを長くするために使用され得る。リンカーは、(マレイミドカプロイル)-(バリン-シトルリン)-(パラ-アミノベンジルオキシカルボニル)リンカーであり得る。リンカーは、操作されたシステインまたは天然に存在するシステインへの結合に適切なリンカーであり得る。
【0116】
リンカーは、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド基(複数可)およびまた、ポリアミノ酸、ポリペプチド、切断可能なペプチドまたはアミノベンジルカルバメートもまた含み得る。リンカーは、一方の末端にマレイミドを含み得、他方の末端にN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み得る。リンカーは、アセチル化されたN末端アミンを有するリシン、およびバリン-シトルリン切断部位を含み得る。リンカーは、微生物トランスグルタミナーゼによって創出されるリンクであり得、このリンクは、グルタミン側鎖のアシル基とリシン鎖の第1級アミンとの間での結合形成を触媒する酵素の結果として、アミン含有部分と、グルタミンを含むように操作された部分との間に創出され得る。リンカーは、反応性第1級アミンを含み得る。リンカーは、Sortase Aリンカーであり得る。
【0117】
当業者に理解されるように、リンカーは、リンカーと抗体および化合物との間の共有結合的連結によって、本明細書に記載される薬物を抗メソテリン抗体に連結し得る。
【0118】
限定ではなく例として、本明細書に記載されるコンジュゲート中に含められ得る一部の切断可能なリンカーおよび非切断性リンカーは、以下に記載される。
【0119】
切断可能なリンカーは、in vitroおよびin vivoで切断可能であり得る。切断可能なリンカーは、化学的または酵素的に不安定なまたは分解可能な連結を含み得る。切断可能なリンカーは、一部の態様では、化合物を遊離させる細胞内部のプロセス、例えば、細胞質中での還元、リソソーム中の酸性条件への曝露、または細胞内の特異的プロテアーゼもしくは他の酵素による切断に依存し得る。切断可能なリンカーは、化学的にまたは酵素的にのいずれかで切断可能な1つまたは複数の化学結合を組み込み得るが、リンカーの残りは、非切断性であり得る。
【0120】
リンカーは、化学的に不安定な基、例えば、ヒドラゾンおよび/またはジスルフィド基を含み得る。化学的に不安定な基を含むリンカーは、血漿と一部の細胞質区画との間での差次的特性を利用し得る。ヒドラゾン含有リンカーについて薬物放出を促進し得る細胞内条件は、エンドソームおよびリソソームの酸性環境であり得るが、ジスルフィド含有リンカーは、高いチオール濃度、例えば、グルタチオンを含み得る細胞質ゾル中で還元され得る。化学的に不安定な基を含むリンカーの血漿安定性は、化学的に不安定な基の近傍で置換基を使用して立体障害を導入することによって増大され得る。
【0121】
酸に不安定な基、例えば、ヒドラゾンは、血液の中性pH環境(pH7.3~7.5)における全身循環の間無傷のままであり得、コンジュゲートが細胞の軽度に酸性のエンドソーム(pH5.0~6.5)およびリソソーム(pH4.5~5.0)区画中に内在化されると、加水分解を受け得、薬物を放出し得る。このpH依存的放出機序は、薬物の非特異的放出に関連し得る。リンカーのヒドラゾン基の安定性を増加させるために、リンカーは、循環中での最小化された喪失と共に、リソソーム中でのより効率的な放出を達成するような調整を可能にする化学的改変、例えば、置換によって、変化され得る。
【0122】
ヒドラゾン含有リンカーは、さらなる切断部位、例えば、さらなる酸に不安定な切断部位および/または酵素的に不安定な切断部位を含み得る。
【0123】
切断可能なリンカーは、ジスルフィド基もまた含み得る。ジスルフィドは、生理的pHにおいて熱力学的に安定であり得、細胞内での内在化の際に薬物を放出するように設計され得、ここで、細胞質ゾルは、細胞外環境と比較して、顕著により還元性の環境を提供し得る。ジスルフィド結合の切断は、細胞質チオール補因子、例えば、(還元型)グルタチオン(GSH)の存在を要求し得、その結果、ジスルフィド含有リンカーは、循環中で合理的に安定であり、細胞質ゾルにおいて薬物を選択的に放出できる。細胞内酵素タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、またはジスルフィド結合を切断することが可能な類似の酵素もまた、細胞内でのジスルフィド結合の優先的切断に寄与し得る。GSHは、およそ5μMの循環中でのGSHまたはシステイン(最も豊富な低分子量チオール)の顕著に低い濃度と比較して、0.5~10mMの濃度範囲で細胞中に存在し得る。不規則な血流が低酸素状態をもたらし得る腫瘍細胞は、還元酵素の増強された活性、したがって、さらにより高いグルタチオン濃度を生じ得る。ジスルフィド含有リンカーのin vivo安定性は、リンカーの化学的改変、例えば、ジスルフィド結合に隣接する立体障害の使用によって増強され得る。
【0124】
使用され得る別の型のリンカーは、酵素によって特異的に切断されるリンカーである。例えば、リンカーは、リソソーム酵素によって切断され得る。かかるリンカーは、ペプチドベースであり得、または酵素の基質として作用し得るペプチド性領域を含み得る。ペプチドベースのリンカーは、化学的に不安定なリンカーよりも、血漿および細胞外環境において安定であり得る。
【0125】
リソソームタンパク質分解性酵素は、内因性阻害剤、およびリソソームと比較して好ましくなく高い血液のpH値に起因して、血液中で非常に低い活性を有し得るので、ペプチド結合は、良好な血清安定性を有し得る。コンジュゲートからの薬物の放出は、リソソームプロテアーゼ、例えば、カテプシンおよびプラスミンの作用に起因して生じ得る。これらのプロテアーゼは、ある特定の腫瘍組織において、上昇したレベルで存在し得る。リンカーは、リソソーム酵素によって切断可能であり得る。リソソーム酵素は、例えば、カテプシンB、カテプシンS、β-グルクロニダーゼまたはβ-ガラクトシダーゼであり得る。
【0126】
切断可能なペプチドは、例えば、テトラペプチドまたはジペプチド、例えば、Val-Cit、Val-AlaおよびPhe-Lysから選択され得る。ジペプチドは、より長いペプチドと比較して低い疎水性を有し得る。
【0127】
酵素的に切断可能なリンカーは、酵素的切断の部位から薬物を空間的に分離するために、自己犠牲的スペーサーを含み得る。ペプチドリンカーへの薬物の直接的結合は、薬物のタンパク質分解性放出を生じ得る。自己犠牲的スペーサーの使用は、アミド結合加水分解の際に、完全に活性な化学的に改変されていない薬物の脱離を可能にし得る。
【0128】
1つの自己犠牲的スペーサーは、二官能性パラ-アミノベンジルアルコール基であり得、これは、アミノ基を介してペプチドに連結して、アミド結合を形成できるが、アミン含有薬物は、カルバメート官能基を介してリンカーのベンジルヒドロキシル基に結合され得る(p-アミドベンジルカルバメート、PABCを生じる)。得られたプロドラッグ化合物は、プロテアーゼ媒介性切断の際に活性化されて、1,6-脱離反応をもたらし得、改変されていない薬物、二酸化炭素、およびリンカーの残余を放出する。以下のスキームは、p-アミドベンジルカルバメートの断片化および薬物の放出を示し:
【化6】
式中、X-Dは、改変されていない薬物を示す。
【0129】
酵素的に切断可能なリンカーは、β-グルクロン酸ベースのリンカーであり得る。薬物の容易な放出は、リソソーム酵素β-グルクロニダーゼによるβ-グルクロニドグリコシド結合の切断を介して実現され得る。この酵素は、リソソーム内に豊富に存在し得、一部の腫瘍型では過剰発現され得るが、細胞外での酵素活性は低い場合がある。β-グルクロン酸ベースのリンカーは、β-グルクロニドの親水性の性質に起因して凝集を受けるコンジュゲートの傾向を回避するために使用され得る。
【0130】
切断可能なリンカーは、非切断性部分もしくはセグメントを含み得、および/または切断可能なセグメントもしくは部分は、それを切断可能にするために、ほかの点で非切断性であるリンカー中に含められ得る。例のみとして、ポリエチレングリコール(PEG)および関連のポリマーは、ポリマー骨格中に切断可能な基を含み得る。例えば、ポリエチレングリコールまたはポリマーリンカーは、1つまたは複数の切断可能な基、例えば、ジスルフィド、ヒドラゾンまたはジペプチドを含み得る。
【0131】
リンカー中に含められ得る他の分解可能な連結には、PEGカルボン酸または活性化されたPEGカルボン酸の、薬物上のアルコール基との反応によって形成されるエステル連結が含まれ得、かかるエステル基は、生理的条件下で加水分解して、薬物を放出し得る。加水分解的に分解可能な連結には、カーボネート連結;アミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン連結;アルコールをリン酸基と反応させることによって形成されるリン酸エステル連結;アルデヒドとアルコールとの反応産物であるアセタール連結;ホルメートとアルコールとの反応産物であるオルトエステル連結;ならびにポリマーの末端、およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基が含まれるがこれらに限定されない位置においてホスホルアミダイト基によって形成されるオリゴヌクレオチド連結が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0132】
例示的な切断可能なリンカーは、式(V):
【化7】
によって示され、式中、L
4は、ペプチドのC末端を示し、L
5は、結合、アルキレンおよびヘテロアルキレンから選択され、L
5は、R
32から独立して選択される1つまたは複数の基で必要に応じて置換され;RX
*は、抗体の残基に結合した、結合、スクシンイミド部分または加水分解されたスクシンイミド部分を含み、RX
*上の
【化8】
は、抗体の残基への結合点を示し、他方の
【化9】
は、薬物への結合点を示し;R
32は、各出現において、ハロゲン、-OH、-CN、-O-C
1~10アルキル、-SH、=O、=S、-NH
2、-NO
2;およびその各々がハロゲン、-OH、-CN、-O-C
1~10アルキル、-SH、=O、=S、-NH
2、-NO
2から独立して選択される1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換されるC
1~10アルキル、C
2~10アルケニル、C
2~10アルキニル、から独立して選択される。一部のかかる実施形態では、リンカーのペプチドは、Val-CitまたはVal-Alaである。
【0133】
一部のかかる態様では、例示的な切断可能なリンカーは、式(VI)または(VII):
【化10】
によって示される。
【0134】
一部のかかる態様では、リンカーに結合された例示的なTLR8アゴニストは、式(VIII)もしくは(IX)またはその薬学的に許容される塩:
【化11】
によって示される。
【0135】
切断可能なリンカーは、ある特定の利点を提供し得るが、本明細書に記載されるコンジュゲート中のリンカーは、切断可能である必要はない。非切断性リンカーについて、薬物放出は、血漿と一部の細胞質区画との間での差次的特性に依存しなくてもよい。薬物の放出は、例えば、抗原媒介性のエンドサイトーシスを介したコンジュゲートの内在化およびリソソーム区画への送達後に生じ得、ここで、抗体は、薬物、リンカー、およびリンカーが共有結合的に結合されたアミノ酸残基(単数または複数)によって形成される分解された薬物誘導体であり得る。非切断性リンカーは、アルキレン鎖を含み得、またはポリマー性であり得る、例えば、ポリアルキレングリコールポリマー、アミドポリマーなどに基づき得、またはアルキレン鎖、ポリアルキレングリコールおよび/もしくはアミドポリマーのセグメントを含み得る。リンカーは、1~6個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールセグメントを含み得る。
【0136】
リンカーを抗体に結合させるために使用される結合基は、性質が求電子性であり得、これには、例えば、マレイミド基、アルキン、アルキノエート(alkynoate)、アレンおよびアレノエート(allenoate)、活性化されたジスルフィド、活性エステル、例えば、NHSエステルおよびHOBtエステル、ハロホルメート(haloformate)、酸ハライド、アルキル、ならびにベンジルハライド、例えば、ハロアセトアミドが含まれる。本開示に従って使用され得る「自己安定化性」マレイミドおよび「架橋性ジスルフィド」に関連する新興の技術もまた存在する。
【0137】
マレイミド基は、コンジュゲートの抗体のチオール基、例えば、システイン基との反応についてのそれらの特異性に起因して、コンジュゲートの調製において頻繁に使用される。抗体のチオール基と、マレイミド基を含むリンカーを有する薬物との間の反応は、以下のスキームに従って進行する:
【化12】
【0138】
チオ置換されたスクシンイミドからのマレイミド脱離をもたらす逆反応もまた起こり得る。マレイミド基は、別の利用可能なチオール基、例えば、利用可能なシステインを有する身体中の他のタンパク質と引き続いて反応し得るので、この逆反応は望ましくない。したがって、逆反応は、コンジュゲートの特異性を弱体化し得る。逆反応を防止するための1つの方法は、上のスキーム中に示される連結基中に塩基性基を組み込むことである。理論に束縛されることは望まないが、塩基性基の存在は、近傍の水分子の求核性を増加させて、スクシンイミド基の開環加水分解を促進し得る。加水分解された形態の結合基は、血漿タンパク質の存在下での脱コンジュゲーションに対して抵抗性である。代表的な概略図は、以下に示される:
【化13】
【0139】
上に概略的に示した加水分解反応は、スクシンイミド基のいずれかのカルボニル基においても生じ得る。したがって、以下に示されるように、2つの可能な異性体が生じ得る:
【化14】
【0140】
塩基の正体ならびに塩基とマレイミド基との間の距離は、チオ置換されたスクシンイミド基の加水分解の速度を調整するために、および例えば、コンジュゲートの特異性および安定性を改善することによって、標的へのコンジュゲートの送達を最適化するために、改変され得る。自己安定化性リンカーの例は、例えば、米国特許出願公開第2013/0309256号中に提供され、そのリンカーは、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の化合物と併せて有用な自己安定化性リンカーは、未置換のマレイミド含有リンカー、チオ置換されたスクシンイミド含有リンカー、または加水分解され開環されたチオ置換されたスクシンイミド含有リンカーと同等に記載され得ることが理解される。
【0141】
抗体へのリンカーの結合
リンカーは、抗体とリンカーとの間での結合によって、抗体に結合され得る。リンカーは、抗体のアミノ酸配列の末端に結合され得、またはリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン、非天然のアミノ酸残基もしくはグルタミン酸残基の側鎖など、抗体への側鎖改変に結合され得る。リンカーは、抗体のFcドメインのアミノ酸配列の末端に結合され得、またはリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン、非天然のアミノ酸残基もしくはグルタミン酸残基の側鎖など、抗体のFcドメインの側鎖改変に結合され得る。リンカーは、抗体のFcドメインのアミノ酸配列の末端に結合され得、またはリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン、非天然のアミノ酸残基もしくはグルタミン酸残基の側鎖など、抗体のFcドメインの側鎖改変に結合され得る。
【0142】
リンカーは、ヒンジシステインにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、軽鎖定常ドメインのリシンにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、重鎖定常ドメインのリシンにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、軽鎖中の操作されたシステインにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、Fcドメインのリシンにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、Fcドメインシステインにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、軽鎖グルタミン、例えば、操作されたグルタミンにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、重鎖グルタミン、例えば、操作されたグルタミンにおいて抗体に結合され得る。リンカーは、軽鎖中に操作された非天然のアミノ酸において抗体に結合され得る。リンカーは、重鎖中に操作された非天然のアミノ酸において抗体に結合され得る。アミノ酸は、抗体のアミノ酸配列、例えば、コンジュゲートのリンカー中に操作され得る。操作されたアミノ酸は、既存のアミノ酸の配列に付加され得る。操作されたアミノ酸は、アミノ酸の配列の1つまたは複数の既存のアミノ酸を置換し得る。
【0143】
リンカーは、抗体上のスルフヒドリル基を介して抗体にコンジュゲートされ得る。リンカーは、抗体上の第1級アミンを介して抗体にコンジュゲートされ得る。リンカーは、抗体上の非天然のアミノ酸の残基、例えば、ケトン部分を介して抗体にコンジュゲートされ得る。
【0144】
リシンベースのバイオコンジュゲーション
抗体は、リシンベースのバイオコンジュゲーションを介してリンカーにコンジュゲートされ得る。抗体は、約2mg/mL~約10mg/mLの濃度で、適切な緩衝液、例えば、リン酸、ホウ酸、PBS、トリス-酢酸、トリス-グリシン、HEPES、MOPS、MES、EPS、HEPPS、ヒスチジンまたはHEPBS中に交換され得る。適切な数の当量の薬物-リンカーが、攪拌しながら溶液として添加され得る。リンカー構築物の物理的特性に依存して、共溶媒が、溶解度を促進するために、リンカー構築物の添加前に導入され得る。反応は、観察された反応性に依存して、室温で2時間~約12時間撹拌され得る。反応の進行は、LC-MSによってモニタリングされ得る。反応が完了したとみなされると、残りの薬物-リンカー構築物は、適用可能な方法によって除去され得、コンジュゲートは、所望の製剤化緩衝液中に交換され得る。リシン連結されたコンジュゲートは、以下のスキームAに従って、抗体(mAb)または二特異性抗体(bsAb)および薬物-リンカー構築物、例えば、10当量で開始して合成され得る。モノマー含量および薬物-抗体比(モル比)は、本明細書に記載される方法によって決定され得る。
スキームA:
【化15】
【0145】
システインベースのバイオコンジュゲーション
抗体は、システインベースのバイオコンジュゲーションを介してリンカーにコンジュゲートされ得る。抗体は、適切な数の当量の還元剤、例えば、ジチオスレイトールまたはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンを伴って、約2mg/mL~約10mg/mLの濃度で、適切な緩衝液、例えば、リン酸、ホウ酸、PBS、トリス-酢酸、トリス-グリシン、HEPES、MOPS、MES、EPS、HEPPS、ヒスチジンまたはHEPBS中に交換され得る。得られた溶液は、所望の還元をもたらすために、適切な量の時間および温度にわたって攪拌され得る。本明細書に記載される化合物-リンカーは、攪拌しながら溶液として添加され得る。薬物-リンカー構築物の物理的特性に依存して、共溶媒が、溶解度を促進するために、薬物-リンカー構築物の添加前に導入され得る。反応は、観察された反応性に依存して、室温で約1時間~約12時間撹拌され得る。反応の進行は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によってモニタリングされ得る。反応が完了したとみなされると、残りの遊離薬物-リンカー構築物は、適用可能な方法によって除去され得、コンジュゲートは、所望の製剤化緩衝液中に交換され得る。かかるシステインベースのコンジュゲートは、以下のスキームBに記載される条件を使用して、抗体(mAb)および薬物-リンカー構築物、例えば、7当量で開始して合成され得る。モノマー含量および薬物-抗体比は、本明細書に記載される方法によって決定され得る。
スキームB:
【化16】
【0146】
医薬製剤
本明細書に記載されるコンジュゲートは、それを必要とする被験体への投与のための医薬組成物として有用である。医薬組成物は、被験体への投与に適切な、本明細書に記載されるコンジュゲートおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。医薬組成物は、必要に応じて、緩衝液、炭水化物および/または防腐剤をさらに含み得る。コンジュゲートを含む医薬組成物は、例えば、コンジュゲートを凍結乾燥すること、コンジュゲートを混合、溶解、乳化、封入または捕捉することによって製造され得る。医薬組成物は、本明細書に記載されるコンジュゲートを、遊離塩基形態または薬学的に許容される塩形態でも含み得る。
【0147】
本明細書に記載されるコンジュゲートの製剤化のための方法は、固体、半固体または液体組成物を形成するために、本明細書に記載されるコンジュゲートのいずれかを、1種または複数の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化するステップを含み得る。固体組成物には、例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒およびカプセルが含まれ得、一部の態様では、固体組成物は、非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤および他の薬学的に許容される添加物をさらに含む。あるいは、本明細書に記載されるコンジュゲートは、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水での再構成のために、凍結乾燥され得るまたは粉末形態であり得る。
【0148】
本明細書に記載される組成物は、注射としての投与のために製剤化され得る。注射のための製剤の非限定的な例には、油性または水性ビヒクル中の無菌の懸濁物、溶液またはエマルジョンが含まれ得る。適切な油性ビヒクルには、親油性溶媒またはビヒクル、例えば、脂肪油もしくは合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれ得るがこれらに限定されない。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を増加させる物質を含み得る。懸濁物は、適切な安定剤もまた含み得る。注射は、ボーラス注射または連続注入のために製剤化され得る。あるいは、本明細書に記載される組成物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水での再構成のために、凍結乾燥され得るまたは粉末形態であり得る。
【0149】
非経口投与のために、コンジュゲートは、薬学的に許容される非経口ビヒクルに関連した注射可能な単位投薬形態(例えば、レター(letter)溶液、懸濁物、エマルジョンを使用する)で製剤化され得る。かかるビヒクルは、固有に非毒性であり非治療的であり得る。ビヒクルは、水、食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンであり得る。非水性ビヒクル、例えば、不揮発性油およびオレイン酸エチルもまた使用され得る。リポソームは、担体として使用され得る。ビヒクルは、微量の添加物、例えば、等張性および化学的安定性を増強する物質(例えば、緩衝液および防腐剤)を含み得る。
【0150】
持続放出調製物もまた調製され得る。持続放出調製物の例には、コンジュゲートを含むことができる固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ得、これらのマトリックスは、成形物品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態であり得る。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸およびγエチル-L-グルタメートのコポリマー、分解不能なエチレン-酢酸ビニル、分解可能な乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPO(商標)(即ち、乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれ得る。
【0151】
本明細書に記載される医薬製剤は、コンジュゲートを、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または安定剤と混合することによって、貯蔵のために調製され得る。この製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液であり得る。許容される担体、賦形剤および/または安定剤は、使用される投薬量および濃度で、レシピエントにとって非毒性であり得る。許容される担体、賦形剤および/または安定剤には、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる抗酸化剤;防腐剤、ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミンもしくはゼラチン;親水性ポリマー;アミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンが含まれる、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体;ならびに/または非イオン性界面活性剤もしくはポリエチレングリコールが含まれ得る。
【0152】
医薬組成物の製剤化のための方法は、皮下投与または緩徐注入IV投与のために、固体、半固体または液体組成物を形成するために、本明細書に記載されるコンジュゲートのいずれかを、1種または複数の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化するステップを含み得る。固体組成物には、例えば、粉末が含まれ得、一部の態様では、固体組成物は、非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤および他の薬学的に許容される添加物をさらに含む。あるいは、本明細書に記載される組成物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水での再構成のために、凍結乾燥され得るまたは粉末形態であり得る。皮下投与のための製剤は、例えば、WO2018/136412、WO2016/036678、WO2013/173687、WO2013/096835、WO2012/151199、WO2011/147921、WO2011/104381、WO2011/090088、WO2011/017070、WO2011/012637、WO2009/084659およびWO2004/091658に記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。コンジュゲートは、薬学的に許容されるビヒクルに関連した単位投薬形態で、皮下投与のために製剤化され得る。かかるビヒクルは、固有に非毒性であり非治療的であり得る。ビヒクルは、水、食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンであり得る。非水性ビヒクル、例えば、不揮発性油およびオレイン酸エチルもまた使用され得る。ビヒクルは、微量の添加物、例えば、等張性および化学的安定性を増強する物質(例えば、緩衝液および防腐剤)を含み得る。
【0153】
医薬組成物および製剤は、滅菌され得る。滅菌は、無菌濾過を介した濾過によって達成され得る。
【0154】
本発明の例示的な医薬組成物は、例えば、1~20、1~10、1~8、2~8、2~5、3~5または5~8の平均薬物負荷を有し得る。
【0155】
治療的適用
コンジュゲートおよびその医薬組成物は、哺乳動物、ヒト、非ヒト哺乳動物、家畜化動物(例えば、実験動物、家のペットまたは家畜)、非家畜化動物(例えば、野生生物)、イヌ、ネコ、げっ歯類、マウス、ハムスター、ウシ、鳥類、ニワトリ、魚類、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、およびそれらの任意の組合せが含まれるがこれらに限定されない複数の異なる被験体を処置するために、本開示の方法において有用である。
【0156】
コンジュゲートおよびその医薬組成物は、治療薬として、例えば、治療効果を達成するために、それを必要とする被験体に、有効なレジメン中で投与され得る処置として、本明細書に記載される方法において使用され得る。治療効果は、その1つまたは複数の症状が含まれるがそれらに限定されない病態の低減、抑制、寛解、緩和または根絶によって、被験体において得られ得る。疾患もしくは状態を有する、またはその初期症状を示している、あるいは初期段階の疾患もしくは状態を示している、または疾患もしくは状態の初期段階にあるもしくはそれに近づいていると他の点で疑われる被験体における治療効果は、状態もしくは疾患、または状態前もしくは疾患前段階の低減、抑制、予防、遅延、寛解、緩和または根絶によって得られ得る。
【0157】
TLRアゴニスト(例えば、TLR7およびTLR8アゴニスト)が免疫刺激性コンジュゲートとして被験体に投与される場合、送達の方式が重要であり得ることが決定されている。ある特定の場合には、ボーラス反復IV投与は、アナフィラキシー毒性をもたらし得る。本発明者らは、免疫刺激性コンジュゲートが、各用量後、4時間を超えるTmaxを生じる様式で投与される場合、より迅速なTmaxを生じる投与と比較して、アナフィラキシー毒性の可能性が低減されることを発見している。一般に、ボーラス反復IV投与に関連するアナフィラキシー様毒性は、引き続く用量が、第1の用量の投与の少なくとも7または8日後に投与されるまでは観察されない。即ち、複数の用量が、アナフィラキシー様毒性を引き起こすことなしに、最初の約7日間にわたって投与され得るが、約7日後に投与される引き続く用量は、アナフィラキシー様毒性を引き起こし得る。
【0158】
ある特定の実施形態では、これらの方法は、TLRアゴニストを用いて処置可能な疾患(メソテリン発現疾患)に対する免疫応答を活性化、刺激または増大させるための、それを必要とする被験体への、有効なレジメン中での免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の皮下または静脈内緩徐注入投与を含む。コンジュゲートの抗体は、疾患または病態に関連する抗原を認識する。
【0159】
ある特定の実施形態では、これらの方法は、疾患または状態の細胞に対する免疫応答を活性化、刺激または増大させるための、それを必要とする被験体への、有効なレジメン中での免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の皮下または静脈内緩徐注入投与を含む。ある特定の実施形態では、これらの方法は、がん細胞がメソテリン抗原を発現する場合、がん細胞に対する免疫応答を活性化、刺激または増大させるための、それを必要とする被験体への、有効なレジメン中での免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の皮下または静脈内緩徐注入投与を含む。
【0160】
ある特定の実施形態では、これらの方法は、メソテリン抗原を発現する固形腫瘍の腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化、刺激または増大させるための、それを必要とする被験体への、有効なレジメン中での免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の皮下または静脈内緩徐注入投与を含む。
【0161】
当業者は、それを必要とする被験体への本明細書に記載される医薬組成物またはコンジュゲートの投与の量、持続時間および頻度が、例えば、被験体の健康、被験体の具体的な疾患または状態、被験体の具体的な疾患または状態のグレードまたはレベル、被験体に投与されているまたは投与されたさらなる治療薬などが含まれるがこれらに限定されないいくつかの因子に依存することを理解する。
【0162】
本明細書に記載される方法を実施する一部の態様では、免疫刺激性コンジュゲートは、少なくとも2または少なくとも3サイクルの有効なレジメン中で、皮下投与されるまたは緩徐IV注入によって投与される。各サイクルは、サイクル間に休止段階を必要に応じて含み得る。投与のサイクルは、任意の適切な長さであり得る。一部の実施形態では、各サイクルは、1週間(7日間)、10日間、2週間毎(14日間または隔週)、3週間毎(21日間)または4週間毎(28日間)である。一部の実施形態では、各サイクルは、1カ月である。一部の実施形態では、少なくとも2用量の免疫刺激性コンジュゲートが、7日間よりも長く空けてまたは10日間よりも長く空けて投与される。一部の実施形態では、少なくとも1用量の免疫刺激性コンジュゲートが、免疫刺激性コンジュゲートの初回用量から7日より後または10日より後に投与される。
【0163】
各サイクル内の免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の用量は、治療効果を達成するのに適切な量である。1サイクル内の用量は、単一用量または分割用量(即ち、1サイクル内に複数の用量)であり得る。一部の実施形態では、分割用量は、投与される医薬組成物の体積が、選択された経路によって単一用量で典型的に投与される医薬組成物の体積よりも大きい場合に投与される。例えば、典型的に皮下投与される最大体積は、約1.5mLであるが、それは、より大きい体積は、注射部位疼痛および注射部位における他の有害事象に関連すると考えられるからである。したがって、一部の実施形態では、皮下投与される医薬組成物の量が約1.5mLよりも大きい場合、分割用量が投与され、これは、体積が、例えば、各々1.5mL未満のより小さい体積へと分割されることを意味し、より小さい体積は各々、被験体の身体上の異なる部位において注射される。ある特定の実施形態では、1サイクル内の免疫刺激性コンジュゲートまたはその医薬組成物の総用量は、約0.1~約10mg/kgである。一部の実施形態では、総用量は、約0.5~約7.5mg/kgである。一部の実施形態では、総用量は、約0.5~約5mg/kgである。一部の実施形態では、総用量は、約0.5~約4mg/kgである。一部の実施形態では、総用量は、約0.5~約3.5mg/kgである。一部の実施形態では、総用量は、約0.5~約2mg/kgである。
【0164】
本明細書で開示される免疫刺激性コンジュゲートを使用する、本明細書で開示される方法は、複数の用量の免疫刺激性コンジュゲートの逐次投与(例えば、逐次皮下投与)を含む。この逐次投与は、免疫刺激性コンジュゲートの反復ボーラス投与に関連する毒性を回避する。一部の態様では、免疫刺激性コンジュゲートは、被験体において、免疫刺激性コンジュゲートの各投与後、4時間を超える免疫刺激性コンジュゲートのTmaxを生じる有効なレジメン中で投与される。一部の実施形態では、有効なレジメンは、免疫刺激性コンジュゲートの各投与後、6時間を超える、8時間を超える、10時間を超える、12時間を超える、または15時間を超えるTmaxを生じる。一部の態様では、Tmaxは、72時間でもしくはそれよりも前に、48時間でもしくはそれよりも前に、30時間でもしくはそれよりも前に、24時間でもしくはそれよりも前に、または16時間でもしくはそれよりも前に到達される。
【0165】
一部の処置レジメンは、所望により、メソテリン発現細胞に対する初回の標的化された免疫応答を惹起するために、例えば、免疫刺激性コンジュゲート、例えば、本明細書で開示される免疫刺激性コンジュゲートの第1の皮下または静脈内緩徐注入投与を含み得る。次いで、処置レジメンは、例えば、皮下または静脈内緩徐注入投与を介した免疫刺激性コンジュゲートの第2の投与を含み得る。本明細書で開示されるように、例えば、第2の投与は、免疫刺激性コンジュゲートの皮下または静脈内緩徐注入投与を含む。
【0166】
一部の実施形態では、B細胞は、免疫刺激性コンジュゲートの投与前に枯渇される。一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、B細胞枯渇剤と共に投与される。B細胞枯渇剤は、免疫刺激性コンジュゲートの前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。B細胞枯渇剤は、例えば、免疫刺激性コンジュゲートの第1の投与の14日以内、7日以内、1日以内、24、12、6、4、3、2または1時間以内に投与され得る。B細胞枯渇剤には、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD22抗体、抗BLyS抗体、TACI-Ig、BR3-Fcおよび抗BR3抗体が含まれるがこれらに限定されない。非限定的な例示的なB細胞枯渇剤には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、エプラツズマブ、MEDI-51(抗CD19抗体)、ベリムマブ、BR3-Fc、AMG-623およびアタシセプトが含まれる。
【0167】
一部の実施形態では、免疫刺激性コンジュゲートは、アナフィラキシー様毒性を軽減する薬剤と共に投与される。アナフィラキシー様毒性を軽減する非限定的な例示的な薬剤には、エピネフリン、抗ヒスタミン薬、コルチゾンおよびベータ-アゴニストが含まれる。投与は、例えば、免疫刺激性コンジュゲートの投与の1時間以内または数分以内であり得る。
【0168】
免疫刺激性コンジュゲートの皮下投与または緩徐IV注入投与は、毒性を免れるもしくは緩和する、またはコンジュゲートの反復ボーラス静脈内投与に関連する毒性、例えば、アナフィラキシー様応答を回避するように、実施され得る。いくつかのタイミングレジメンは、第1の用量投与後の第2の用量投与、例えば、第1の用量の7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24日以内の、第2の用量の投与と一致する。交互に、一部の投薬レジメンは、第1の用量の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24日後の、第2の用量の皮下投与を含む。
【0169】
同様に、いくつかの投薬量は、本明細書で開示される方法と一致する。典型的には、第2の用量および引き続く用量の投与は、第1の用量のレベルとほぼ同じまたは同じレベルである。第2の用量は、第1の用量よりも大きく、それと等しく、またはそれよりも少なく、様々であり得る。投薬量は、被験体の性状、例えば、被験体の体重に対して、被験体について決定される場合が多い。例示的な投薬量(例えば、皮下投薬量)は、例えば、1mg/kg未満から、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kgまでの範囲であり、値の上述の範囲中に列挙される値の中間の値も企図する。
【0170】
本明細書で開示される方法は、第1の用量、第2の用量、または1つもしくは複数のさらなる用量の投与後に、被験体をモニタリングするステップを含み得る。いくつかのモニタリングアプローチが、本明細書の開示と一致する。モニタリングは、アナフィラキシー様応答の少なくとも1つの症状もしくは有害事象、または増加したそのリスクの少なくとも1つの指標の検出に、一般に関する。例示的なモニタリングは、血液細胞計数、体温、皮膚変色、被験体の覚醒、またはアナフィラキシー様応答の他の指標をモニタリングすることを含む、リストから選択される少なくとも1回のモニタリングプロセスを含む。
【0171】
本発明の方法およびコンジュゲートによって処置または管理され得るがんおよび関連の障害には、上皮細胞起源のがんが含まれるがこれに限定されない。かかるがんの例には、以下が含まれる:腺管癌、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳がん、粘液性乳がん、管状乳がん、乳頭状乳がん、パジェット病、トリプルネガティブ乳がんおよび炎症性乳がんが含まれるがこれらに限定されない乳がん;例えば、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍であるがこれらに限定されない膵がん;膣がん、例えば、扁平上皮細胞癌、腺癌および黒色腫;外陰部がん、例えば、扁平上皮細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫およびパジェット病;例えば、扁平上皮細胞癌および腺癌であるがこれらに限定されない子宮頸がん(cervical cancer);例えば、子宮内膜癌および子宮肉腫であるがこれらに限定されない子宮がん;例えば、卵巣上皮癌、境界腫瘍、胚細胞腫瘍および間質腫瘍であるがこれらに限定されない卵巣がん;例えば、扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状癌および燕麦細胞(小細胞)癌であるがこれらに限定されない食道がん;例えば、腺癌、菌状(fungating)(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫および癌肉腫であるがこれらに限定されない胃がん;結腸がん;直腸がん;肺がん、例えば、非小細胞肺がん、扁平上皮細胞癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺がん;例えば、胚腫瘍(germinal tumor)、セミノーマ、未分化、古典的(典型的)、精母細胞、非セミノーマ、胎生期癌、テラトーマ癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)であるがこれらに限定されない精巣がん;例えば、扁平上皮細胞癌であるがこれに限定されない口腔がん;基底がん;例えば、腺癌、粘液性類表皮癌および腺様嚢胞癌であるがこれらに限定されない唾液腺がん;例えば、扁平上皮細胞がんおよびいぼ状であるがこれらに限定されない咽頭がん;例えば、腎細胞癌、腺癌、グラヴィッツ腫瘍、線維肉腫、移行細胞がん(腎盂および/または尿管(uterer))であるがこれらに限定されない腎臓がん;ウィルムス腫瘍;例えば、移行細胞癌、扁平上皮細胞がん、腺癌、癌肉腫であるがこれらに限定されない膀胱がん。さらに、がんには、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌および乳頭状腺癌が含まれる(かかる障害の概説については、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照のこと)。
【0172】
本発明の方法および組成物は、以下が含まれる(がそれらに限定されない)様々ながんまたは他の異常な増殖性疾患の処置においても有用である:扁平上皮細胞癌を含む、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃および子宮頸部の癌腫を含む癌腫。アポトーシスにおける異常によって引き起こされるがんもまた、本発明の方法および組成物によって処置されることも企図される。かかるがんには、濾胞性リンパ腫、p53変異を有する癌腫、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに前がん性病変、例えば、家族性腺腫性ポリポーシスおよび骨髄異形成症候群が含まれ得るがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、皮膚、肺、結腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、膵臓、卵巣または子宮における悪性疾患もしくは異常増殖性(dysproliferative)変化(例えば、化生および形成異常)、または過剰増殖性障害が処置される。他の具体的な実施形態では、肉腫、黒色腫または白血病が処置される。
【0173】
一部の実施形態では、がんは悪性であり、メソテリンを過剰発現する。他の実施形態では、処置される障害は、メソテリンを過剰発現する細胞に関連する前がん性状態である。
特定の配列の列挙
配列番号1 - 重鎖コンセンサス配列
【化17】
X
1は、GまたはYである(G27Y)
X
2は、TまたはSである(T28S)
X
3は、SまたはTである(S30T)
X
4は、GまたはAである(G55A)
X
5は、RまたはKである(R66K)
X
6は、VまたはAである(V67A)
X
7は、IまたはLである(I69L)
X
8は、AまたはVである(A71V)
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【実施例】
【0174】
以下の実施例は、本開示の一部の実施形態をさらに記載するために含められるのであって、本開示の範囲を限定するために使用すべきではない。
【0175】
(実施例1 - 例示的なヒト化抗体)
JH6を伴うヒト生殖系列VH1-eを、可変重鎖をCDR移植するために使用し、JK4を伴うヒト生殖系列VKIII-L6またはVKI-L12を、可変軽鎖をCDR移植するために使用した。CDR移植を、Kabat定義のCDRを使用して実施した。マウスフレームワーク復帰変異を含むいくつかのバリアントを生成し、配列を、CDR構造に対する残基の潜在的影響についての3D構造モデリングを使用して決定した。可変重鎖領域配列を、シグナルペプチド配列およびIgG1定常領域を含むベクター中にクローニングした。可変軽鎖領域を、シグナルペプチド配列およびカッパ定常領域を含むベクター中にクローニングした。
【0176】
6つのヒト化重鎖を、30mLの培養物中で、ExpiCHO発現系中へと、5つのヒト化軽鎖と共に共トランスフェクトした。上清を、Octetを介して分析して、解離速度(off rate)を決定し、結合を保持しかつより少ないマウス配列を含むあらゆるものを精製し、さらに特徴付けた。表1を参照のこと。クローン6および37を、さらなる最適化のために選択した。CDRH2中のさらなる変異G55Aを導入して、隣接するアスパラギン(N)残基の化学的改変を低減させた。これらのヒト化配列は、配列番号1~15で示される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0177】
(実施例2 - 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)および液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によるSS1ヒト化クローンの特徴付け)
抗体SS1は、分析的HICカラム(コスモトロピック塩として硫酸アンモニウムを用いるTSKgel Butyl-NPR)上でのそのプロファイルから明らかなように、複数のバリアント種からなるが、4つのヒト化結合ドメイン(表1中の6、37、55および56)は、より均一なプロファイルを生じる。これら4つのヒト化結合ドメインのうち、55および56は、それぞれ6および37と比較して、最大で4週間にわたる40℃の高温への曝露の際に有意により少ない変化を受け、これらは、N54の潜在的脱アミドを低減するように操作された単一の変異G55Aのみが、その親ヒト化配列とは異なる。熱ストレスに供され、トリプシンによって消化された試料のLC-MS(Charged Surface Hybrid C18カラムを使用する)によるペプチドマッピングは、55および56抗体が、親抗体と比較して、脱アミドの傾向が有意に低く、したがって、増加した安定性を示すことを直接的に支持する。
【0178】
(実施例3 - ヒト化抗メソテリン抗体は、Ovcar3腫瘍細胞系上で発現されたヒトMSLNに結合した)
OVCAR3細胞(50,000/ウェル)を、FACS Wash(FW-PBS、2.0%FBS、1mM EDTA)中で、滴定濃度のコンジュゲートされていない抗MSLN抗体または対照抗体(抗ジゴキシン)と共に、4℃で30分間インキュベートした。細胞をFWで洗浄し、抗huIgG1-PEを添加し、4℃でさらに30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
図1は、ヒト化抗メソテリン抗体が、Ovcar3腫瘍細胞系上で発現されたヒトMSLNに結合したことを実証している。
【0179】
(実施例4 - 例示的な抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲート)
抗体SS1、6、37、55および56を薬物-リンカーにコンジュゲートして、それぞれ、イムノコンジュゲートSS1-TLR8、6-TLR8、37-TLR8、55-TLR8および56-TLR8を形成した。各抗体を、10mg/mLの濃度で、HEPES緩衝液(100mM、pH7.0、1mM DTPA)中に交換した。各抗体溶液に、2.2当量の還元剤トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンを添加した。得られた溶液を、周囲温度で90分間穏やかに混合した。還元の完了の際に、抗体溶液に、DMSOを、10%v/vの最終濃度になるように添加した。次に、薬物-リンカー:
【化22】
を、溶液(7.0当量、DMSO中10mM)として滴下添加した。得られた混合物を、周囲温度で30分間穏やかに混合し、この時点で、未反応の薬物-リンカーを、システインの添加を介してクエンチした。次いで、コンジュゲートを、調製用サイズ排除クロマトグラフィーを介して精製し、コンジュゲートを、所望の製剤化緩衝液中に交換した。モノマー含量および薬物-抗体比は、本明細書で決定され得る。
【化23】
TLR8薬物-リンカーは、米国特許第10,239,862号に記載されるように合成した。
【0180】
(実施例5 - 抗メソテリンイムノコンジュゲートは、ヒトMSLN発現腫瘍細胞系に結合した)
MSLN発現細胞系(25,000/ウェルの、カニクイザルMSLNでトランスフェクトされた293細胞、OVCAR3細胞、およびNCI-N87細胞)を、FACS Wash(FW-PBS、2.05%FBS、1mM EDTA)中で、滴定濃度のコンジュゲートされていない抗メソテリン抗体(抗体55または56)、対照抗体(抗ジゴキシン)または抗メソテリンイムノコンジュゲートと共に、4℃で30分間インキュベートした。細胞をFWで洗浄し、抗huIgG1-PEを添加し、4℃でさらに30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
図2A~2Cは、抗メソテリンイムノコンジュゲートが、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体と類似のEC
50で、MSLN発現細胞に結合することを示している。
【0181】
(実施例6 - huPBMCによるTNFα産生が、ヒトMSLNでトランスフェクトされた細胞の存在下で、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートによって誘導された)
材料および一般手順
ヒト全血を、Bloodworks Northwestから得、10mL EDTA管中に収集した。次いで、ヒトPBMCを、Ficoll勾配遠心分離によって全血から単離し、アッセイ培地(10%胎仔ウシ血清、1mMピルビン酸ナトリウム、1×GlutaMAX-1、1×非必須アミノ酸、10mM HEPESおよび0.5%ペニシリン/ストレプトマイシン(全てGibcoから)を追加補充したRPMI-1640培地)中に再懸濁した。腫瘍細胞を、HyQTASE(Hyclone)を用いて組織培養フラスコから取り出し、2回洗浄し、アッセイ培地中に再懸濁した。
【0182】
上記のように単離したヒトPBMCを、アッセイ培地中に再懸濁し、96ウェル平底マイクロタイタープレート中にプレートした(125,000/ウェル)。次いで、MSLN発現HEK-293細胞を、滴定濃度のコンジュゲートされたまたはコンジュゲートされていない抗体と共に添加した(25,000/ウェル)。モックトランスフェクトされたHEK-293細胞を陰性対照として使用した。一晩培養の後、上清を収集し、TNFαレベルを、AlphaLISAによって決定した。
【0183】
図3を参照すると、全てのイムノコンジュゲートは、ヒトMSLNでトランスフェクトされたHEK-293細胞で活性であり、huPBMCからのTNFαの産生を用量依存的様式で刺激する(
図3A)。対照的に、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体SS1は、MSLN-HEK-293細胞の存在下では、huPBMCからのTNFα産生を刺激しなかった。さらに、イムノコンジュゲートもコンジュゲートされていない抗体も、MSLNの発現を欠如するHEK-293細胞の存在下では、huPBMCからのTNF-α産生を刺激しなかった(
図3B)。
【0184】
(実施例7 - huPBMCによるTNFα産生が、メソテリン発現腫瘍細胞系の存在下で、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートによって誘導された。)
PBMCを、上記のようにヒト血液から単離した。簡潔に述べると、huPBMCを、Ficoll勾配遠心分離によって単離し、RPMI中に再懸濁し、96ウェル平底マイクロタイタープレート中にプレートした(125,000/ウェル)。次いで、MSLN発現腫瘍細胞を、滴定濃度のコンジュゲートされたまたはコンジュゲートされていない抗体と共に添加した(25,000/ウェル)。モックトランスフェクトされたHEK-293細胞を陰性対照として使用した。一晩培養の後、上清を収集し、TNFαレベルを、AlphaLISAによって決定した。
【0185】
図4を参照すると、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートは、MSLN発現腫瘍細胞NCI-N87およびOVCAR3の存在下で、huPBMCからのTNFα産生を用量依存的様式で誘導したが、MSLNの発現を欠如するHEK-293細胞の存在下では誘導しなかった(
図4A~C)。コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体は、いずれの腫瘍細胞系の存在下でも、PBMCからのTNFα産生を刺激しなかった。さらに、コンジュゲートされた抗体もコンジュゲートされていない抗体も、MSLN発現腫瘍細胞の非存在下では、PBMCからのTNF-α産生を刺激しなかった(データ示さず)。
【0186】
(実施例8 - カニクイザルPBMCによるTNFα産生が、ヒトMSLNでトランスフェクトされた腫瘍細胞の存在下で、抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートによって誘導された)
凍結されたカニクイザルPBMCを、Primate Biologicalから得、液体窒素中で保存した。培養のために、カニクイザルPBMCを、37℃の水浴中で急速に解凍し、10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン、50μg/mLペニシリン、50U/mLストレプトマイシン(全てGibcoから)を追加補充したあらかじめ温めたRPMI 1640(Lonza)中に希釈し、500×gで5分間遠心分離した。次いで、カニクイザルPBMCを、使用のためにアッセイ培地中に再懸濁した。
【0187】
PBMCを、96ウェル平底マイクロタイタープレート中にプレートした(125,000/ウェル)。次いで、MSLN発現HEK-293細胞を、滴定濃度のコンジュゲートされたまたはコンジュゲートされていない抗体と共に添加した(25,000/ウェル)。モックトランスフェクトされたHEK-293細胞を陰性対照として使用した。一晩培養の後、上清を収集し、TNFαレベルを、AlphaLISAによって決定した。
【0188】
抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートは、カニクイザルMSLNでトランスフェクトしたHEK-293で活性であり、カニクイザルPBMCからのTNFαの産生を用量依存的様式で刺激した。対照的に、コンジュゲートされていない抗メソテリン抗体は、MSLN-HEK-293細胞の存在下では、カニクイザルPBMCからのTNFα産生を刺激しなかった(
図5A)。さらに、コンジュゲートされた抗体もコンジュゲートされていない抗体も、MSLNの発現を欠如するHEK-293細胞の存在下では、カニクイザルPBMCからのTNFα産生を刺激しなかった(
図5B)。
【0189】
(実施例9 - 非ヒト霊長類への抗メソテリンTLR8アゴニストコンジュゲートの投与は、免疫活性化を生じる)
SS1-TLR8を、反復用量非ヒト霊長類(NHP)研究において評価して、安全性および薬力学的(PD)効果を評価した。動物に、3用量にわたって6mg/kg Q3Wで、試験物品を皮下投与した。コンジュゲートは十分に耐容性を示し、有害な臨床的徴候も体重減少も認められなかった(データ示さず)。存在する臨床病理学変化は、研究の終了の時点で、ベースラインまで消散するか、またはベースラインに向かう傾向にあり、有害ではなかった。メソテリン発現を有することが公知の組織におけるものを含め、剖検時にも病理組織学的評価の間にも、顕著な所見は存在しなかった。各用量の後、TLR8アゴニスト活性と一致する一過的なPD関連効果が、CRP、MCP-1、MIP-1ベータ、好中球における増加、ならびにアルブミンおよびリンパ球における減少を含む、臨床化学、血液学およびサイトカイン/ケモカイン産生からの重要なパラメーターにおいて認められた。これらの変化は、CRSに関連する臨床的徴候も炎症性サイトカイン産生もなしに、自然免疫系の軽度~中程度の活性化を示した(データ示さず)。
【0190】
本開示の態様が、本明細書に示され記載されているが、かかる態様は例としてのみ提供されることが、当業者に明らかである。多数のバリエーション、変化および置換が、本開示から逸脱することなしに、ここで当業者に想起される。本明細書に記載される本開示の態様の種々の代替法が、本開示を実施する際に使用され得ることを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を規定すること、ならびにこれらの特許請求の範囲の内の方法および構造ならびにそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】