(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】新規IL-15プロドラッグおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220815BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220815BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220815BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220815BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220815BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220815BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220815BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20220815BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20220815BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220815BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220815BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220815BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220815BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220815BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220815BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220815BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220815BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220815BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220815BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/24
C07K14/54
C07K14/715
C07K7/00
C07K14/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P31/12
A61P37/04
A61K38/20
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573353
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 US2020037439
(87)【国際公開番号】W WO2020252264
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347328
【氏名又は名称】アスクジーン・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AskGene Pharma, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ.ユエフォン
(72)【発明者】
【氏名】ユィ,チュンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ジエン-フォン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC07
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4C076CC41
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4C076FF34
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA41
4C084BA42
4C084BA44
4C084DA12
4C084NA05
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4C084ZB09
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4C084ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
ここに提供されるのは、IL-15サイトカインプロドラッグおよびその製造および使用方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、
マスキング部分が担体部分に融合し、
Sushiドメインが担体部分に融合し、そして
IL-15サイトカインがSushiドメインに融合している、
プロドラッグ。
【請求項2】
マスキング部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、
Sushiドメインが担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、そして
IL-15サイトカインがSushiドメインに第三ペプチドリンカーを介して融合しており、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つが開裂可能である、
請求項1のプロドラッグ。
【請求項3】
第三ペプチドリンカーが少なくとも15、20、25または30アミノ酸長であり、所望により、ここで、第三ペプチドリンカーが配列番号139または140を含む、請求項2のプロドラッグ。
【請求項4】
IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、
IL-15サイトカイン部分が担体部分に融合し、
Sushiドメインが担体部分に融合し、そして
マスキング部分がSushiドメインに融合している、
プロドラッグ。
【請求項5】
IL-15サイトカイン部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、
Sushiドメインが担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、そして
マスキング部分がSushiドメインに第三ペプチドリンカーを介して融合しており、所望により、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つが開裂可能である、
請求項4のプロドラッグ。
【請求項6】
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分の受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含む、請求項1~5の何れかのプロドラッグ。
【請求項7】
マスキング部分がヒトIL-2RβのECDまたはその機能的アナログおよび/またはヒトIL-2RγのECDまたはその機能的アナログを含む、請求項6のプロドラッグ。
【請求項8】
ヒトIL-2RγのECDまたはその機能的アナログが配列番号6またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項7のプロドラッグ。
【請求項9】
ヒトIL-2RβのECDまたはその機能的アナログが配列番号3、4または5またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項7のプロドラッグ。
【請求項10】
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合する抗体フラグメントを含む、請求項1~5の何れかのプロドラッグ。
【請求項11】
IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)および所望によりSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害する抗体フラグメントを含み、そして
マスキング部分がペプチドリンカーを介して担体部分、IL-15サイトカイン部分またはSushiドメインに融合する、
プロドラッグ。
【請求項12】
抗体フラグメントが146B7、146H5、404E4および404A8から選択される抗IL-15抗体の重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を含む、ScFvまたはFabである、請求項10または11のプロドラッグ。
【請求項13】
抗体フラグメントが配列番号100を含む重鎖CDR(HCDR)1、配列番号101を含むHCDR2、配列番号102または106を含むHCDR3、配列番号103を含む軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号104を含むLCDR2および配列番号105を含むLCDR3を含む、請求項10または11のプロドラッグ。
【請求項14】
抗体フラグメントが(i)配列番号107またはそれと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号108または123またはそれと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(ii)配列番号109;(iii)配列番号110;または(iv)配列番号124を含む、請求項10または11のプロドラッグ。
【請求項15】
重鎖CDR3のCys残基がSer、Thr、Met、Ala、Gly、AsnまたはGlnに変異される、請求項13または14のプロドラッグ。
【請求項16】
マスキング部分がIL-15サイトカイン部分のIL-15Rαへの結合を妨害しないかまたは最小限の影響を有する、請求項1~15の何れかのプロドラッグ。
【請求項17】
IL-15サイトカイン部分が配列番号2を含むヒトIL-15ポリペプチドまたはその変異タンパク質である、請求項1~16の何れかのプロドラッグ。
【請求項18】
ヒトIL-15ポリペプチドが配列番号2に対して、N1A、N1D、N4A、N4D、I6T、S7A、D8A、D8T、D8E、D8N、K10A、K10D、K11A、K11D、E46、V49、L45、S51、L52、D61A、D61N、T62L、T62A、E64A、E64L、E64K、E64Q、N65A、N65L、N65D、L66D、L66E、I67D、I67E、I68S、I68E、L69S、L69E、N72A、N72D、V63E、V63D、L66E、L66D、I67E、I67D、Q108E、N112A、N1D/D61N、N1D/E64Q、N4D/D61N、N4D/E64Q、D8N/D61N、D8N/E64Q、D61N/E64Q、E64Q/Q108E、N1D/N4D/D8N、D61N/E64Q/N65D、N1D/D61N/E64Q、N1D/Q108E、N1D/D61N/E64Q/Q108E、N4D/D61N/E64Q/Q108EおよびD30N/E64Q/N65Dから選択される1以上の変異を含む、請求項17のプロドラッグ。
【請求項19】
担体部分がPEG分子、アルブミン、アルブミンフラグメント、抗体Fcドメインまたは抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~18の何れかのプロドラッグ。
【請求項20】
担体部分が変異L234AおよびL235A(「LALA」) (EUナンバリング)を含む抗体Fcドメインまたは抗体である、請求項19のプロドラッグ。
【請求項21】
担体部分がノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体Fcドメインまたは抗体であり、ここで、IL-15サイトカイン部分およびマスキング部が抗体Fcドメインの異なるポリペプチド鎖または抗体の異なる重鎖に融合する、請求項19または20のプロドラッグ。
【請求項22】
ノブ・イントゥ・ホール変異がFcドメインの一方のポリペプチド鎖または抗体の一方の重鎖にT366Y「ノブ」変異およびFcドメインの他方のポリペプチドまたは抗体の他方の重鎖にY407T「ホール」変異を含むまたは
ノブ・イントゥ・ホール変異が「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349Cおよび/またはT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異(EUナンバリング)を含む、
請求項21のプロドラッグ。
【請求項23】
担体部分がIgG
4 Fcドメインであり、ここで、該第一ポリペプチドが配列番号80、81または87に示すものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、該第二ポリペプチド鎖が配列番号82~86から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項19のプロドラッグ。
【請求項24】
担体部分が配列番号55または56と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号54、60または61と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号52、53、58、59、62、63または69と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-1抗体である、請求項19または20のプロドラッグ。
【請求項25】
担体部分が配列番号55と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号66と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号64、65、67または68と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-1抗体である、請求項19または20のプロドラッグ。
【請求項26】
担体部分が配列番号50または51と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号47、48または49と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号45または46と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-L1抗体である、請求項19または20のプロドラッグ。
【請求項27】
担体部分がPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、CD47およびTIGITから選択される1以上の抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項19または20のプロドラッグ。
【請求項28】
担体部分が抗体Fcドメインまたは抗体であり、プロドラッグが次のポリペプチド対(N末端からC末端):
a) C1-AおよびC2-S-M、
b) A-C1およびM-S-C2、
c) C1-S-AおよびC2-M、
d) C1-A-SおよびC2-M、
e) S-A-C1およびM-C2または
f) A-S-C1およびM-C2
を含み、
ここで、C1およびC2がそれぞれ、Fcドメインの第一および第二ポリペプチド鎖であるかそれぞれ抗体の第一および第二重鎖であり;そして「-」が直接ペプチジル結合またはペプチドリンカーである、請求項19~27の何れかのプロドラッグ。
【請求項29】
Sushiドメインが配列番号7または9またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~28の何れかのプロドラッグ。
【請求項30】
第一、第二および第三ペプチドリンカーの少なくとも1つが所望により配列番号11~16から選択される、開裂不可能なペプチドリンカーである、請求項1~29の何れかのプロドラッグ。
【請求項31】
第一、第二および第三ペプチドリンカーの少なくとも1つがウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーター(uPA)、マトリプターゼ、マトリクスメタロペプチダーゼ(MMP)2またはMMP9の基質配列を含む開裂可能なペプチドリンカーである、請求項1~30の何れかのプロドラッグ。
【請求項32】
開裂可能なペプチドリンカーが(i)uPAおよびMMP2両者、(ii)uPAおよびMMP9両者、(iii)uPA、MMP2およびMMP9または(iv)MMP2およびマトリプターゼの基質配列を含む、請求項31のプロドラッグ。
【請求項33】
開裂可能なペプチドリンカーが配列番号17~36から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項31のプロドラッグ。
【請求項34】
開裂可能なペプチドリンカーが腫瘍部位またはその周囲環境に位置する1以上のプロテアーゼにより開裂可能であり、開裂が、腫瘍部位または周囲環境でのプロドラッグの活性化をもたらす、請求項1~34の何れかのプロドラッグ。
【請求項35】
請求項1~34の何れかのプロドラッグおよび薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項36】
請求項1~34の何れかのプロドラッグをコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド。
【請求項37】
請求項36の1以上のポリヌクレオチドを含む、発現ベクターまたはベクター。
【請求項38】
請求項37のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項39】
uPA、マトリプターゼ、MMP-2および/またはMMP-9をコードする遺伝子が宿主細胞でノックアウトされる、請求項38の宿主細胞。
【請求項40】
請求項1~34の何れかのプロドラッグを製造する方法であって、
請求項38または39の宿主細胞であって、哺乳動物細胞である宿主細胞を、該プロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し、そして
該プロドラッグを単離することを含む、
方法。
【請求項41】
処置を必要とする患者における癌もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、患者に治療有効量の請求項35の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項42】
請求項41における癌もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法において使用するための、IL-15プロドラッグ。
【請求項43】
請求項41における癌もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法において使用するための医薬の製造のための、IL-15プロドラッグの使用。
【請求項44】
患者がウイルス感染または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、甲状腺髄様癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有する、請求項41の方法、請求項42の使用のためのプロドラッグまたは請求項43の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月12日出願の米国仮出願62/860,635;2019年8月17日出願の米国仮出願62/888,444;2019年8月23日出願の米国仮出願62/891,190;2020年1月11日出願の米国仮出願62/959,973;および2020年5月23日出願の米国仮出願63/029,473に基づく優先権を主張する。上記優先権出願の開示を、引用によりそれらの全体を本明細書に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提供され、ここに、引用によりその全体を本明細書に包含させる配列表を含む。該ASCIIコピーは、2020年6月8日に作成し、025471_WO004_SL.txtなる名称であり、359,580バイトサイズである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
インターロイキン-15(IL-15)は、IL-2と構造的類似性を有するサイトカインである。IL-15は、ウイルス感染後、単核食細胞および他の免疫細胞により分泌される。IL-15は、ナチュラルキラー(NK)および免疫系の他の細胞の増殖を誘導し、ウイルスに感染した細胞および癌細胞の殺滅に関与する。IL-2と同様、IL-15は、中程度親和性受容体であるIL-2受容体(IL-2R)β/γ複合体に、約1nMのKDで結合する(Giri et al., EMBO J. (1994) 13:2822-30)。IL-15は、IL-15受容体(IL-15R)αにはるかに高い親和性(KD=約0.05nM)で結合する。IL-15RαはIL-2Rβ/γ複合体と結合し、IL-15特異的、機能的高親和性受容体(αβγ)を形成し得る(Minami et al., Annu Rev Immunol. (1993) 11:245-67; Giri et al., J Leukoc Biol. (1995) 5745:763-6; and Lehours et al., Eur Cytokine Netw. (2000) 11:207-15)。
【0004】
IL-15Rαの細胞外領域は、タンパク質-タンパク質相互作用の共通モチーフであるSushiドメインを含む。最初の65アミノ酸を有するIL-15Rα N末端フラグメントは部分的活性であるが、最初の85アミノ酸を含むフラグメントは完全に機能的であることが示されている(Wei et al., J Immunol. (2001) 167(1):277-82)。
【0005】
IL-15の変異が、IL-15のその受容体との相互作用の試験のために行われている。D8およびQ108は、例えば、それぞれIL-15のIL-2Rβおよびγサブユニットへの結合に関与することが示されている(Pettit et al., J Biol Chem. (1997) 272: 2312-18)。IL-15のIL-15RαまたはIL-2Rβへの結合に関与するIL-15の残基L45、Q48、S51、L52、E64、N65、I68およびL69の変異を含む、IL-15のさらなる変異が開示されている(米国特許7,858,081)。変異E64K、N65K、N65D、L66D、L66E、I67D、I67EまたはI68Dを有するIL-15変異タンパク質は、細胞ベースのアッセイで生物活性が低減されることが示されている(Zhu et al., J Immnol. (2009) 183(6):3598;およびWO2005/085282A1)。IL-15とIL-15Rαの相互作用を標的とする変異も報告されている。例えば、E46、V49、L45、S51およびL52は、IL-15Rα結合に関与することが示されている(Bernard et al., J Biol Chem. (2004) 279:24313-22)。E46は、酸性側鎖の塩基性側鎖(E46K)への置換が、IL-15とIL-15Rαの結合および生理活性の完全な喪失をもたらすため、特に重要と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念ながら、現在のIL-15薬物候補の有害作用は顕著であり、このような薬物の投与量を限定する。さらに、これら薬物候補によるT細胞、NK細胞および他の免疫細胞の活性化は部位特異的ではない。さらに、IL-15/2受容体に対する親和性が顕著に低減されていても、IL-15変異タンパク質に対する「PKシンカー」があると考えられる。IL-15ベースのタンパク質治療剤の産生には多数の困難もある。上記全てが、改善されたIL-15ベースの治療剤の必要性を強調する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、マスキング部分が担体部分に融合し、Sushiドメインが担体部分に融合し、IL-15サイトカイン部分がSushiドメインに融合している、プロドラッグを提供する。ある実施態様において、マスキング部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、Sushiドメインが担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、IL-15サイトカインがSushiドメインに第三ペプチドリンカーを介して融合しており、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、ペプチドリンカー全部が開裂可能ではない。具体的実施態様において、第三ペプチドリンカーは少なくとも15、20、25または30アミノ酸長(例えば、15~50または15~100アミノ酸長)であり、所望により、ここで、第三ペプチドリンカーは、配列番号139または140を含む。
【0008】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、IL-15サイトカイン部分が担体部分に融合し、Sushiドメインが担体部分に融合し、マスキング部分がSushiドメインに融合している、プロドラッグもまた提供する。ある実施態様において、IL-15サイトカイン部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、Sushiドメインが担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、マスキングがSushiドメインに第三ペプチドリンカーを介して融合しており、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、3つのペプチドリンカー全てが開裂可能ではない。
【0009】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、マスキング部分が担体部分に融合し、IL-15部分が担体部分に融合し、SushiドメインがIL-15部分に融合している、プロドラッグをさらに提供する。ある実施態様において、マスキング部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、IL-15部分が担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、Sushiドメインは、第三ペプチドリンカーを介してIL-15部分に融合し、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、ペプチドリンカー全部が開裂可能ではない。具体的実施態様において、第三ペプチドリンカーは少なくとも15、20、25または30アミノ酸長(例えば、15~50または15~100アミノ酸長)であり、所望により、ここで、第三ペプチドリンカーは、配列番号139または140を含む。
【0010】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、IL-15サイトカイン部分が担体部分に融合し、マスキング部分が担体部分に融合し、Sushiドメインがマスキング部分に融合している、プロドラッグもまた提供する。ある実施態様において、IL-15サイトカイン部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、マスキング部分が担体部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、Sushiドメインは第三ペプチドリンカーを介してマスキング部分に融合し、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、3つのペプチドリンカー全てが開裂可能ではない。
【0011】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、IL-15サイトカイン部分が担体部分に融合し、マスキング部分がIL-15部分に融合し、Sushiドメインが担体部分に融合している、プロドラッグもまた提供する。ある実施態様において、IL-15サイトカイン部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、マスキング部分は第二ペプチドリンカーを介してIL-15部分に融合し、Sushiドメインは第三ペプチドリンカーを介して担体に融合し、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、3つのペプチドリンカー全てが開裂可能ではない。
【0012】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)およびSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害し、マスキング部分が担体部分に融合し、IL-15部分がマスキング部分に融合し、Sushiドメインが担体部分に融合している、プロドラッグもまた提供する。ある実施態様において、マスキング部分が担体部分に第一ペプチドリンカーを介して融合し、IL-15部分がマスキング部分に第二ペプチドリンカーを介して融合し、Sushiドメインは第三ペプチドリンカーを介して担体に融合し、ここで、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能である。ある実施態様において、3個のペプチドリンカーの少なくとも1つ(例えば、1、2または3)は開裂可能ではない。ある実施態様において、3つのペプチドリンカー全てが開裂可能ではない。
【0013】
ある実施態様において、マスキング部分は、IL-15サイトカイン部分の受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含む。例えば、マスキング部分は、ヒトIL-2RβのECDまたはその機能的アナログおよび/またはヒトIL-2RγのECDまたはその機能的アナログを含む。具体的実施態様において、ヒトIL-2RγのECDまたはその機能的アナログは、配列番号6またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。他の特定の実施態様において、ヒトIL-2RβのECDまたはその機能的アナログは、配列番号3、4または5またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施態様において、マスキング部分は、IL-15サイトカイン部分に結合する抗体フラグメントを含む。
【0014】
本発明は、IL-15サイトカイン部分(A)、マスキング部分(M)、担体部分(C)および所望によりSushiドメイン(S)を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がIL-15サイトカイン部分に結合し、IL-15サイトカイン部分の生物活性を阻害する抗体フラグメントを含み、マスキング部分が所望によりペプチドリンカーを介して、担体部分IL-15サイトカイン部分またはSushiドメインに融合している、プロドラッグをさらに提供する。
【0015】
ある実施態様において、プロドラッグにおける抗体フラグメントは、146B7、146H5、404E4および404A8から選択される抗IL-15抗体の重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を含む、ScFvまたはFabである。例えば、抗体フラグメントは、配列番号100を含む重鎖CDR(HCDR)1、配列番号101を含むHCDR2、配列番号102を含むHCDR3または106、配列番号103を含む軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号104を含むLCDR2および配列番号105を含むLCDR3を含む。具体的実施態様において、抗体フラグメントは、(i)配列番号107またはそれと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号108または123またはそれと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(ii)配列番号109;(iii)配列番号110;または(iv)配列番号124を含む。ある実施態様において、重鎖CDR3(配列番号102)のCys残基は、Ser、Thr、Met、Ala、Gly、AsnまたはGlnに変異される。
【0016】
ある実施態様において、マスキング部分は、IL-15サイトカイン部分のIL-15Rαへの結合を妨害しないかまたは最小限の影響を有する。
【0017】
ある実施態様において、IL-15サイトカイン部分は、配列番号2を含むヒトIL-15ポリペプチドまたはその変異タンパク質である。具体的実施態様において、ヒトIL-15ポリペプチドは、配列番号2に対して、N1A、N1D、N4A、N4D、I6T、S7A、D8A、D8T、D8E、D8N、K10A、K10D、K11A、K11D、E46、V49、L45、S51、L52、D61A、D61N、T62L、T62A、E64A、E64L、E64K、E64Q、N65A、N65L、N65D、L66D、L66E、I67D、I67E、I68S、I68E、L69S、L69E、N72A、N72D、V63E、V63D、L66E、L66D、I67E、I67D、Q108E、N112A、N1D/D61N、N1D/E64Q、N4D/D61N、N4D/E64Q、D8N/D61N、D8N/E64Q、D61N/E64Q、E64Q/Q108E、N1D/N4D/D8N、D61N/E64Q/N65D、N1D/D61N/E64Q、N1D/Q108E、N1D/D61N/E64Q/Q108E、N4D/D61N/E64Q/Q108EおよびD30N/E64Q/N65Dから選択される1以上の変異を含む。
【0018】
ある実施態様において、担体部分は、PEG分子、アルブミン、アルブミンフラグメント、抗体Fcドメインまたは抗体またはその抗原結合フラグメントである。さらなる実施態様において、担体部分は、変異L234AおよびL235A(「LALA」)を含む抗体Fcドメインまたは抗体である(EUナンバリング)。ある実施態様において、担体部分はノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体Fcドメインまたは抗体であり、ここで、IL-15サイトカイン部分およびマスキング部は、抗体Fcドメインの異なるポリペプチド鎖または抗体の異なる重鎖に融合する。ある実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異は、Fcドメインの一方のポリペプチド鎖または抗体の一方の重鎖にT366Y「ノブ」変異およびFcドメインの他方のポリペプチドまたは抗体の他方の重鎖にY407T「ホール」変異を含むか、またはノブ・イントゥ・ホール変異は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349Cおよび/またはT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含む(EUナンバリング)。ある実施態様において、担体部分はIgG4 Fcドメインであり、ここで、該第一ポリペプチドは、配列番号80、81または87に示すものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、該第二ポリペプチド鎖は、配列番号82~86から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
ある実施態様において、担体部分は、配列番号55または56と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号54、60または61と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号52、53、58、59、62、63または69と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-1抗体である。さらなる実施態様において、担体部分は、配列番号55と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号66と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号64、65、67または68と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-1抗体である。
【0020】
ある実施態様において、担体部分は、配列番号50または51と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖;配列番号47、48または49と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第一重鎖;および配列番号45または46と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する第二重鎖を含む、抗PD-L1抗体である。
【0021】
ある実施態様において、担体部分は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3およびTIGITから選択される1以上の抗原に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0022】
ある実施態様において、担体部分は抗体Fcドメインまたは抗体であり、プロドラッグは、次のC1-AおよびC2-S-M、A-C1およびM-S-C2、C1-S-AおよびC2-M、C1-A-SおよびC2-M、S-A-C1およびM-C2またはA-S-C1およびM-C2のポリペプチド対(N末端からC末端)を含み;そしてC1およびC2は、それぞれ、Fcドメインの第一および第二ポリペプチド鎖であるかそれぞれ抗体の第一および第二重鎖であり;そして「-」は直接ペプチジル結合またはペプチドリンカーである。
【0023】
ある実施態様において、Sushiドメインは、配列番号7または9またはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
ある実施態様において、第一、第二および第三ペプチドリンカーの少なくとも1つは、所望により配列番号11~16から選択される、開裂不可能なペプチドリンカーである。
【0025】
ある実施態様において、第一、第二および第三ペプチドリンカーの少なくとも1つは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーター(uPA)、マトリプターゼ、マトリクスメタロペプチダーゼ(MMP)2またはMMP9の基質配列を含む開裂可能なペプチドリンカーである。例えば、開裂可能なペプチドリンカーは、(i)uPAおよびMMP2両者、(ii)uPAおよびMMP9両者、(iii)uPA、MMP2およびMMP9または(iv)MMP2およびマトリプターゼの基質配列を含む。具体的実施態様において、開裂可能なペプチドリンカーは、配列番号17~36から選択されるアミノ酸配列を含む。開裂可能なペプチドリンカーは、腫瘍部位またはその周囲環境に位置する1以上のプロテアーゼにより開裂可能であり、開裂が、腫瘍部位または周囲環境でのプロドラッグの活性化をもたらす。
【0026】
他の態様において、本発明は、本プロドラッグおよび薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物;本プロドラッグをコードする1以上のポリヌクレオチド;該1以上のポリヌクレオチドを含む1以上の発現ベクター;および該ベクターを含む、宿主細胞を提供する。ある実施態様において、uPA、マトリプターゼ、MMP-2および/またはMMP-9をコードする遺伝子は、宿主細胞でノックアウトされる。
【0027】
また提供されるのは、本プロドラッグを製造する方法であって、哺乳動物細胞である宿主細胞を、該プロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し、該プロドラッグを単離することを含む、方法である。
【0028】
他の態様において、本発明は、処置を必要とする患者における癌もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、患者に治療有効量の本プロドラッグを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。患者は、例えば、HIV感染または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、甲状腺髄様癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有し得る。また提供されるのは、このような処置に使用するためのIL-15プロドラッグおよびこのような処置のための医薬の製造におけるIL-15プロドラッグの使用である。
【0029】
本発明の他の特性、対象および利点は、以下の詳細な記載から明らかである。しかしながら、詳細な記載は、本発明の実施態様および態様を説明するものであるが、発明の説明のためのみに提供され、これを限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の種々の変化および修飾は、詳細な記載から当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1A~Cは、担体部分としてFcドメインを有するIL-15プロドラッグの略図である。
図1Aは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのC末端に融合したIL-15Rα Sushiドメインポリペプチドを示す。IL-15ポリペプチドは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。
図1Bは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して一方のFcポリペプチドのC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。
図1Cは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して一方のFcポリペプチドのC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。全3配置において、Fcドメインは、ノブ・イントゥ・ホール変異を含む。
【0031】
【
図2】
図2A~Cは、担体部分としてFcドメインを有するIL-15プロドラッグの略図を示す。
図2Aは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのN末端に融合したIL-15Rα Sushiドメインを示す。IL-15ポリペプチドは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、SushiドメインのN末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのN末端に融合する。
図2Bは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのN末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインポリペプチドは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのN末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのN末端に融合する。
図2Cは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのN末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのN末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、SushiドメインのN末端に融合する。全3配置において、Fcドメインは、ノブ・イントゥ・ホール変異を含む。
【0032】
【
図3】
図3A~Cは、担体部分として抗体(2つの抗原結合部位を有する)を有するIL-15プロドラッグの略図を示す。
図3Aは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。
図3Bは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15Rα Sushiドメインポリペプチドを示す。IL-15ポリペプチドは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。
図3Cは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により、開裂不可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。全3図において、抗体は、ノブ・イントゥ・ホール変異を含む。
【0033】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、担体部分として抗体を有するIL-15プロドラッグの略図である。抗体は、単一抗原結合部位を有する。
図4Aは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。
図4Bは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15Rα Sushiドメインポリペプチドを示す。IL-15ポリペプチドは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。両配置において、抗体はノブ・イントゥ・ホール変異を含み、マスキング部分は、抗体の重鎖可変領域と同じポリペプチド鎖にある。
【0034】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、担体部分として抗体を有するIL-15プロドラッグの略図である。抗体は単一抗原結合部分を有する。
図5Aは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15ポリペプチドを示す。IL-15Rα Sushiドメインは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。
図5Bは、所望により開裂不可能なペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の一方のC末端に融合したIL-15Rα Sushiドメインポリペプチドを示す。IL-15ポリペプチドは、所望により開裂不可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、抗体の他方の重鎖のC末端に融合する。両配置において、抗体はノブ・イントゥ・ホール変異を含み、IL-15ポリペプチドおよびSushiドメインは、抗体の重鎖可変領域と同じポリペプチド鎖にある。
【0035】
【
図6A】
図6Aは、Fc-IL-15プロドラッグ(JR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3)および対照分子(Fc-IL-15融合ポリペプチド、JR3.68.4およびJR3.68.5)の配列情報を示す。
【0036】
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの分子の構造を示す。分子全て担体部分としてFcドメインを有する。JR3.68.1、Sushiドメインは、開裂不可能なリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのC末端に融合する。IL-15ポリペプチドは、開裂不可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。JR3.68.2において、IL-15ポリペプチドは、開裂不可能なリンカーを介して、Fcドメインポリペプチドの一方のC末端に融合する。Sushiドメインは、開裂不可能なリンカーを介して、IL-15ポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。JR3.68.3において、IL-15ポリペプチドは、開裂不可能なリンカーを介して、一方のFcポリペプチドのC末端に融合する。Sushiドメインは、開裂不可能なリンカーを介して、他のFcポリペプチドのC末端に融合する。マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して、SushiドメインのC末端に融合する。JR3.68.4およびJR3.68.5は、それぞれJR3.68.1およびJR3.68.2の活性化形態(構築物ではマスキング部分がデザインされなかった)である。
【0037】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、
図6Bに示す活性化前後の、活性化可能融合ポリペプチドを分析するSDS-PAGEゲルの写真である。
【0038】
【
図8】
図8A~Cは、プロテインAカラムにより精製した、それぞれFc-IL-15/Sushi融合タンパク質サンプルJR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3のSEC-HPLC分析を示すグラフである。
【0039】
【
図9】
図9A~Cは、それぞれ活性化前後の活性化可能Fc-IL-15融合ポリペプチドJR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3の細胞ベースの活性を示す。全3図において、IL-15を陽性対照として使用した。
【0040】
【
図10A】
図10Aは、抗体-IL-15融合ポリペプチドJR3.74.1およびJR3.74.2(マスクなし)および活性化可能抗体-IL-15融合ポリペプチドJR3.73.2およびJR3.73.4の配列情報を示す表である。
【0041】
【0042】
【
図11】
図11Aおよび11Bは、プロテインAカラムにより精製したJR3.74.1、JR3.74.2、JR3.73.2およびJR3.73.4サンプルのSEC-HPLC分析を示すグラフである。
【0043】
【
図11C】
図11Cは、プロテアーゼ処理による活性化前後のプロドラッグサンプルのCTLL2増殖アッセイの結果を示すグラフである。
【0044】
【
図12】
図12Aおよび12Bは、抗IL-15抗体146B7由来scFv(scFv1またはscFv2)でマスクしたIL-15プロドラッグのNK92増殖アッセイ結果を示す。
図12Aは、活性化可能IL-15融合タンパク質の配列情報を示す。
図12Bは、NK92増殖アッセイの結果を示す。対照X1:XmAb Fcドメイン(IL-15/IL-15Rα-Fc)に融合したIL-15/IL-15-受容体アルファ複合体であるXmAb
(登録商標)24306。Fc-IL-15*:マスキング部分としてIL-2Rβ細胞外ドメイン(ECD)を有する活性化可能IL-15融合タンパク質。Fc-IL-15:マスキング部分がないFc-IL-15融合タンパク質。RLU:相対発光単位。
【0045】
【
図13】
図13Aおよび13Bは、活性化前後の活性化可能IL-15融合タンパク質のNK92細胞ベースの活性を示す。
図13Aは、野生型IL-15を含むIL-15融合タンパク質のNK92細胞ベースの活性を含む。
図13Bは、N65D変異を有するIL-15変異タンパク質を含むIL-15融合ポリペプチドのNK92細胞ベースの活性を示す。対照X1:XmAb Fcドメイン(IL-15/IL-15Rα-Fc)に融合したIL-15/IL-15-受容体アルファ複合体であるXmAb
(登録商標)24306。LUC:発酵単位のシグナル。Act:活性化。
【0046】
【
図14A】
図14Aは、活性化可能IL-15融合タンパク質の配列情報を示す表である。
【0047】
【
図14】
図14B~Dは、活性化前後の活性化可能IL-15融合タンパク質のNK92増殖アッセイ結果を示す。
図14Bは、IL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDによりマスクした野生型IL-15の結果を示す。
図14Cは、IL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDでマスクしたIL-15変異タンパク質Q108Eの結果を示す。
図14Dは、Sushiドメインがない活性化可能Fc-IL-15融合タンパク質(JR2.145.1)およびSushiドメインとIL-15ポリペプチド部分の間に長いリンカーを有する活性化可能Fc-IL-15融合タンパク質(JR2.145.2)の結果を示す。対照X1:XmAb Fcドメイン(IL-15/IL-15Rα-Fc)に融合したIL-15/IL-15-受容体アルファ複合体であるXmAb
(登録商標)24306。対照X2:は、SushiドメインがないPD-1抗体-IL-15変異タンパク質融合タンパク質である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な記載
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用する単数表現は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数を含む。
【0049】
ここでの、値またはパラメータへの「約」の付加は、その値またはパラメータ自体と共にその変動値を含む(記載する)。例えば、「約X」なる記載は、「X」を含む。さらに、ある一連の数値の前の「約」の使用は、その記載される一連の数値の各々の「約」を含む。例えば、「約X、YまたはZ」なる記載は、「約X、約Yまたは約Z」を記載することを意図する。
【0050】
用語「抗原結合部分」は、抗原に特異的に結合するポリペプチドまたは相互作用ポリペプチドのセットを意味し、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、二重特異的または二特異的抗体、抗イディオタイプ抗体または二機能性ハイブリッド抗体)またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)または二重特異性抗体)、一本鎖抗体およびイムノアドヘシンなどのFc含有ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、抗体は、重鎖アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)またはサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)の何れでもよい。ある実施態様において、抗体軽鎖アイソタイプ(例えば、カッパまたはラムダ)の何れでもよい。抗体は、ヒト、非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギまたは他の非ヒト動物)、キメラ(例えば、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を有する)またはヒト化(例えば、非ヒトCDRおよびヒトフレームワークおよび定常領域を有する)であり得る。ある実施態様において、抗体は、誘導体化抗体である。
【0051】
用語「サイトカインアゴニストポリペプチド」は、野生型サイトカインまたはそのアナログをいう。野生型サイトカインのアナログは、野生型サイトカインと同じ生物学的特異性(例えば、同じ受容体に結合し、同じ標的細胞を活性化)を有するが、アナログの活性レベルは、野生型サイトカインと異なり得る。アナログは、例えば、野生型サイトカインの変異タンパク質(すなわち、変異ポリペプチド)であってよく、野生型サイトカインに対して、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10の変異を含み得る。
【0052】
用語「サイトカインアンタゴニスト」または「サイトカインマスク」は、サイトカインに結合し、それにより、アンタゴニストまたはマスクに結合されたまま、サイトカインが標的細胞表面のその受容体と結合するおよび/またはその生物学的機能を発揮するのを阻害する部分(例えば、ポリペプチド)をいう。サイトカインアンタゴニストまたはマスクの例は、サイトカインと接触するサイトカインの天然受容体の細胞外ドメイン由来のポリペプチドを含むが、これに限定されない。
【0053】
用語「有効量」または「治療有効量」は、その症状の1以上の改善、軽減、低減および/または遅延などの、特定の障害、状態または疾患の処置に十分な化合物または組成物の量をいう。癌などの疾患について、有効量は、癌の進展または進行の遅延(例えば、腫瘍増殖速度低減および/または腫瘍血管形成、転移または癌細胞の末梢臓器への浸潤緩徐化または阻止)、類上皮細胞数減少、癌寛解誘導(例えば、腫瘍縮小または根絶)および/または癌発生または再発阻止または遅延に十分な量であり得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0054】
用語「機能的アナログ」は、対照分子と同じ生物学的特異性(例えば、同じリガンドに結合)および/または活性(例えば、標的細胞を活性化または阻害)を有する分子をいう。
【0055】
2個のポリペプチド配列に関する用語「融合した」または「融合」は、主鎖ペプチド結合を介する2個のポリペプチド配列の連結をいう。2個のポリペプチドは、直接または1以上のアミノ酸長のペプチドリンカーを介して融合され得る。融合ポリペプチドは、間のペプチドリンカーのコード配列を伴うまたは伴わず、2個の融合パートナーの各コード配列を含む、コード配列から組み換えテクノロジーにより製造され得る。ある実施態様において、融合は、化学的結合を含む。
【0056】
用語「薬学的に許容される添加物」は、組成物の成分をいうのに使用するとき、対象に有害な副作用なく、かつ原薬(API)の生物活性に影響することなく、ヒト対象を含む対象の処置のために投与するのに適する添加物を意味する。
【0057】
用語「対象」は、哺乳動物をいい、ヒト、ペット(例えば、イヌまたはネコ)、家畜(例えば、ウシまたはウマ)、齧歯類または霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0058】
ここで使用する「処置」または「処置する」は、有益または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。有益または所望の臨床結果は、次に述べるものを含むが、それらに限定されない:疾患が原因の1以上の症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患状態の軽減、疾患安定化(例えば、疾患の悪化または進行の阻止または遅延)、疾患の拡散(例えば、転移)の阻止または遅延、疾患再発の阻止または遅延、疾患の部分的または完全寛解の提供、疾患処置に必要な1以上の他の医薬の用量減少、患者のクオリティ・オブ・ライフの増加および/または生存延長。本発明の方法は、これら処置の態様の何れか1以上を意図する。
【0059】
ここに記載する種々の実施態様の性質の一つ、一部または全てを組み合わせて、本発明の他の実施態様を形成し得ることは理解される。記載する段落の表題は、構成上の目的のためのみであり、その下に記載される主題を限定すると解釈してはならない。
【0060】
I. IL-15プロドラッグ
本発明は、インビボで代謝されて、活性IL-15治療剤となるIL-15プロドラッグに関する。IL-15プロドラッグは、副作用が少なく、良好なインビボPKプロファイル(例えば、長い半減期)および良好な標的特異性を有し、従前のIL-15治療剤と比較して、より効果的である。本発明のIL-15プロドラッグは、凝集レベルを低減し、製造効率を改善し、それにより、融合分子および二特異的分子の製造の共通の課題を克服する、構成を有する。
【0061】
本プロドラッグは、IL-15ポリペプチド(A)(すなわち、サイトカインアゴニストポリペプチドまたはIL-15サイトカイン部分)、任意のIL-15Rα Sushiドメイン(S)、マスキング部分(M)(すなわち、サイトカインアンタゴニスト)および担体部分(C)を含む。成分は、ペプチドリンカーを介して互いに操作上結合され、その一つは、標的部位でのプロテアーゼによる活性化により、マスキング部分およびIL-15サイトカイン部分が互いに脱離するように、開裂可能であり得る。ある実施態様において、例えば、IL-15の受容体の細胞外ドメインまたはサイトカインに結合する抗体の結合フラグメントであり得るマスキング部分(IL-15アンタゴニスト)は、開裂可能なリンカー(例えば、開裂可能なペプチドリンカー)を介して、サイトカイン部分、Sushiドメインまたは担体部分に結合する。他の実施態様において、マスキング部分は、開裂不可能なリンカーを介して他の部分に結合する。
【0062】
マスクは、IL-15サイトカイン部分の生物学的機能を、マスクがそれに結合している間阻害する。ある実施態様において、本プロドラッグのマスキング部分は、IL-15ポリペプチドのIL-2Rβおよび/またはγ鎖相互作用ドメインに位置するエピトープに特異的に結合する。マスキング部分の阻害効果は、プロドラッグにおける開裂可能なリンカーのプロテアーゼ消化により除去され、マスキング部分とサイトカイン部分が分離することが可能となる。ある実施態様において、本プロドラッグのマスキング部分は、IL-15ポリペプチド(A)のIL-15Rαへの結合を遮断または妨害しない。プロドラッグは、リンカーの開裂により患者の標的部位(例えば、腫瘍部位または周囲環境または感染部位)で活性化され、続いてプロドラッグの残部サイトカインマスクまたはIL-15サイトカイン部分が放出され、予めマスクされたIL-15サイトカイン部分が露出され、IL-15サイトカイン部分を、標的細胞上のその受容体と結合させ、標的細胞にその生物学的機能を発揮させる。ある実施態様において、プロドラッグのための担体は、標的部位で抗原に結合する、抗体などの抗原結合部分である。
【0063】
本発明のIL-15プロドラッグのある実施態様において、Sushiドメインは、ペプチドリンカー(開裂不可能または開裂可能)を介して、担体、マスキング部分および/またはIL-15サイトカイン部分と融合される。ある実施態様において、IL-15サイトカイン部分は、ペプチドリンカー(開裂不可能または開裂可能)を介して、担体部分、マスキング部分および/またはSushiドメインと融合する。ある実施態様において、マスキング部分は、ペプチドリンカー(開裂不可能または開裂可能)を介して、担体部分、サイトカイン部分および/またはSushiドメインと融合する。
【0064】
ある実施態様において、本プロドラッグは、体内の担体により標的とされる標的部位で、代謝されて炎症促進性である活性IL-15サイトカインとなる。さらなる実施態様において、プロドラッグにおける担体は、プロドラッグが患者の腫瘍部位に送達され、サイトカインマスクを担体またはサイトカイン部分に連結するリンカーの開裂により局所的に(例えば、腫瘍微小環境内またはその近位)代謝され、炎症促進性サイトカイン部分を、標的細胞上のその受容体と相互作用できるようにし、局所的に標的免疫細胞を刺激するように、腫瘍抗原をターゲティングする抗体である。
【0065】
A. プロドラッグのIL-15部分
本IL-15プロドラッグにおいて、IL-15サイトカイン部分は、野生型ヒトIL-15ポリペプチド(配列番号2)などの野生型IL-15ポリペプチドまたは野生型IL-15と比較してIL-2Rβ(CD122)への親和性が低減されたヒト野生型IL-15由来のIL-15変異タンパク質などのIL-15変異タンパク質であり得る。IL-15変異タンパク質は、野生型IL-15と比較して、CD122または二量体IL-2Rへの親和性が有意に減少されている。
【0066】
ある実施態様において、IL-15部分は、マスクされたとき、生物活性は少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍減少され;またはEC50値は少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍増加している。
【0067】
ある実施態様において、IL-15部分は、ヒトIL-15のN1、N4、I6、S7、D8、K10、K11、E46、D61、T62、E64、N65、I68、L69、N72、V63、L66、I67、A70、N71、Q108、N112の位置に少なくとも1、2、3、4または5の変異を含む、IL-15変異タンパク質である。IL-15変異タンパク質の例は、N1A、N1D、N4A、N4D、I6T、S7A、D8A、DAT、D8E、D8N、K10A、K10D、K11A、K11D、D61A、D61N、T62L、T62A、E64A、E64L、E64K、E64Q、N65A、N65L、N65D、L66D、L66E、I67D、I67E、I68S、I68E、L69S、L69E、N72A、N72D、V63E、V63D、L66E、L66D、I67E、I67D、Q108EおよびN112Aから選択される1以上の変異を有するものである。ある実施態様において、IL-15部分は、E46、V49、L45、S51およびL52から選択される変異または位置を含む。特に断らない限り、ここに記載するIL-15およびIL-15変異タンパク質の全残基番号は、配列番号2のナンバリングに従う。他の実施態様において、IL-15部分は、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0068】
具体的実施態様において、IL-15変異タンパク質は、N1D/D61N、N1D/E64Q、N4D/D61N、N4D/E64Q、D8N/D61N、D8N/E64Q、D30N/E64Q/N65D、D61N/E64Q、E64Q/Q108E、N1D/N4D/D8N、D61N/E64Q/N65D、N1D/D61N/E64Q、N1D/D61N/E64Q/Q108EおよびN4D/D61N/E64Q/Q108Eから選択される変異を含む。
【0069】
B. IL-15受容体アルファSushiドメイン
ある実施態様において、本IL-15プロドラッグは、IL-15Rα Sushiドメインを含む。Sushiドメインは、担体に直接または IL-15サイトカイン部分に、所望によりリンカー(例えば、開裂不可能または開裂可能なペプチドリンカー)を介して融合し得る。マスキング部分は、開裂可能または開裂不可能なペプチドリンカーを介して、Sushiドメインまたは担体に融合し得る。特定の実施態様において、Sushiドメインは担体に融合し、サイトカインはSushiドメインにペプチドリンカーを介して融合している。本IL-15プロドラッグにおいて、Sushiドメインは、野生型Sushiドメインまたは配列番号7もしくは9のアミノ酸配列を含むSushiドメインであり得る。他の実施態様において、Sushiドメインは、配列番号7または配列番号9と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0070】
ある実施態様において、ヒトIL-15受容体アルファ(IL-15Rα)タンパク質は、配列番号8に示すアミノ酸配列を有する。ある例において、ヒトIL-15Rαのコード配列は、配列番号137に示す。ここに概説するプロドラッグのIL-15Rαタンパク質は、配列番号8のSushiドメイン(例えば、配列番号8のアミノ酸31~95または31~105)または換言すると、配列番号9または配列番号7のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるものである。ある実施態様において、IL-15Rαタンパク質は配列番号7のアミノ酸配列およびD96、P97、A98、D96/P97、D96/C97、D96/P97/A98、D96/P97/C98およびD96/C97/A98からなる群から選択されるアミノ酸挿入を有し、ここで、アミノ酸位置は、完全長ヒトIL-15Rαタンパク質または配列番号8に対するものである。例えば、D、P、A、DP、DC、DPA、DPCまたはDCAなどのアミノ酸を、IL-15Rαタンパク質(例えば、配列番号9)のC末端に加え得る。ある実施態様において、IL-15Rαタンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列およびK34C、A37C、G38C、S40CおよびL42Cからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を有し、ここで、アミノ酸位置は、配列番号9に対するものである。ある実施態様において、IL-15アナログおよびSushiドメインは、それぞれE87C:D96/P97/C98;E87C:D96/C97/A98;V49C:S40C;L52C:S40C;E89C:K34C;Q48C:G38C;E53C:L42C;C42S:A37C;およびL45C:A37Cからなる群から選択されるアミノ酸置換または付加のセットを有する(IL-15における変異はコロンの前に示す;そしてSushiドメインにおける変異はコロンの後に示す)。
【0071】
C. プロドラッグのマスキング部分
本プロドラッグのサイトカインアンタゴニスト、すなわち、マスキング部分は、プロドラッグにおけるサイトカイン部分と結合し、サイトカイン部分をマスキングし、その生物学的機能を阻害するペプチドまたは抗体または抗体フラグメントを含み得る。ある実施態様において、マスキング部分は、ヒトIL-15ポリペプチドに結合し、ヒトIL-15ポリペプチドの生物活性を阻害する抗体の抗原結合部分または結合フラグメントを含む。
【0072】
一例として、IL-15アンタゴニストは、IL-15に結合し、その受容体へのIL-15部分の結合を妨害し、マスクされているときIL-15部分の生物活性を減少させる、ペプチドおよび抗体を含み得る。ある実施態様において、IL-15アンタゴニストは、IL-2RβまたはIL-2Rγ細胞外ドメインまたはヒトIL-2RβまたはIL-2Rγ由来のものなどのその機能的アナログ(例えば、配列番号3~6の一つ)を含む。ある実施態様において、IL-15アンタゴニストは、ペプチドライブラリーのスクリーニングにより同定されたペプチドを含む。ある実施態様において、IL-15アンタゴニストは、IL-15またはIL-15変異タンパク質のIL-15受容体への結合を遮断する抗体またはそのフラグメントを含む。他の実施態様において、アンタゴニストは、IL-15ポリペプチドの生物活性を阻害する。ある実施態様において、アンタゴニストは、scFv、Fabまたは当分野で知られる他のタイプの抗体フラグメントを含む。好ましい実施態様において、抗体フラグメントは、IL-15に特異的なscFvである。他の好ましい実施態様において、アンタゴニストは、IL-15アゴニストポリペプチドのβおよび/またはγ鎖相互作用ドメインに位置するエピトープに特異的に結合する。具体的実施態様において、マスキング部分は、IL-15ポリペプチドのIL-15Rαへの結合を遮断または妨害しない。一例として、IL-15結合抗体は、146B7、146H5、404E4および404A8から選択され得る。ある実施態様において、scFvまたはFab IL-15アンタゴニストは、146B7、146H5、404E4および404A8から選択される抗IL-15抗体のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン;および146B7、146H5、404E4および404A8から選択される抗IL-15抗体の軽鎖からのCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含み、その全てが、WO2003/017935A2に記載される。
【0073】
ある実施態様において、IL-15アンタゴニストは、それぞれ配列番号100、101および102のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン;およびそれぞれ配列番号103、104および105のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。ある実施態様において、配列番号102の重鎖CDR3ドメインは、そのCys残基に置換変異を含む。配列番号102のCDR3ドメイン内のCys残基は、Ser、Thr、Ala、AsnまたはGlnに変異され得る。他の実施態様において、CDR3ドメインは、配列番号106のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、アンタゴニストまたはマスキング部分は、配列番号107または配列番号107と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび配列番号108もしくは123または配列番号108もしくは123と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含む、scFvまたはFabである。ある特定の部分において、マスキング部分は、配列番号110または124のアミノ酸配列を含む。
【0074】
D. プロドラッグの担体部分
本プロドラッグの担体部分は、抗原結合部分または抗原結合部分ではない部分であり得る。担体部分はサイトカインアゴニストポリペプチドの血清半減期などのPKプロファイルを改善し得て、またサイトカインアゴニストポリペプチドを、腫瘍部位など体内の標的部位に指向させ得る。
【0075】
ある実施態様において、担体部分(C)は、第一および第二ポリペプチド鎖(すなわち、2つの異なる重鎖)からなるFcドメインであり、ここで、該ポリペプチド鎖は、次の対の一つから選択される分子式(N末端からC末端)を含み:
a) F1-PL1-A-PL2-S、F2-CL-M(
図1A);
b) F1-PL1-S-PL2-A、F2-CL-M(
図1B);および
c) F1-PL1-S-PL2-A、F2-CL-M(
図1C);
ここで、F1およびF2は、ヘテロ二量体を形成する担体部分(例えば、Fcドメイン)のサブユニットであり;PL1およびPL2はペプチドリンカーであり;CLは開裂可能なペプチドリンカーであり;SはSushiドメインであり;そしてAはIL-15ポリペプチドである。
【0076】
ある実施態様において、担体部分(C)は、第一および第二ポリペプチド鎖(すなわち、2つの異なる重鎖)からなるFcドメインであり、ここで、該ポリペプチド鎖は、次の対の一つから選択される分子式(N末端からC末端)を含み:
a) A-PL1-S-F1、M-CL-F2(
図2A);
b) S-PL1-A-F1、M-CL-F2(
図2B);および
c) A-PL1-F1、M-CL-S-F2(
図2C);
ここで、F1およびF2は、ヘテロ二量体を形成する担体部分(例えば、Fcドメイン)のサブユニットであり;PL1およびPL2はペプチドリンカーであり;CLは開裂可能なペプチドリンカーであり;SはSushiドメインであり;そしてAはIL-15ポリペプチドである。
【0077】
ある実施態様において、担体部分(C)は、抗体の2つの軽差、第一抗体重鎖および第二抗体重鎖を含む抗体であり、ここで
a) 第一重鎖は分子式(N末端からC末端)C1-CL-Mを含み;そして
b) 第二重鎖は分子式(N末端からC末端)C2-PL1-S-PL2-Aを含み、
ここで、C1およびC2は抗体重鎖であり;該PL1およびPL2はペプチドリンカーであり;CLは開裂可能なペプチドリンカーであり;SはSushiドメインであり;そしてAはIL-15ポリペプチドである。他の実施態様において、上記第一および第二重鎖の順番が逆である(
図3Aおよび3B)。
【0078】
ある実施態様において、担体部分(C)は、抗体の2つの軽差、第一抗体重鎖および第二抗体重鎖を含む抗体であり、ここで
a) 第一重鎖は分子式(N末端からC末端)C1-Aを含み;そして
b) 第二重鎖ポリペプチド鎖は分子式(N末端からC末端)C2-PL1-S-CL-Mを含み、
ここで、C1およびC2は抗体重鎖であり;該PL1およびPL2はペプチドリンカーであり;CLは開裂可能なペプチドリンカーであり;SはSushiドメインであり;そしてAはIL-15ポリペプチドである(
図3C)。
【0079】
ある実施態様において、本発明のプロドラッグは3つのポリペプチド鎖 - 一つの抗体軽鎖と2つの重鎖 - を含み、ここで、第一ポリペプチド鎖は抗体軽鎖可変領域であり、第一重鎖は抗体の重鎖可変および定常領域を含み、第二重鎖はCH2およびCH3ドメインを含み、ここで、第一および第二重鎖は、次の対の一つから選択される分子式(N末端からC末端)を含み:
a) F-PL1-A-PL2-S、HC-CL-M(
図4A);
b) F-PL1-S-PL2-A、HC-CL-M(
図4B);
c) HC-PL1-A-PL2-S、F-CL-M(
図5A);および
d) HC-PL1-S-PL2-A、F-CL-M(
図5B)。
ここで、FはFcドメインのサブユニットであり(CH2およびCH3ドメインを含む);HCは、該軽鎖と抗原結合部分を形成する抗体の重鎖であり;PL1およびPL2はペプチドリンカーであり;CLは開裂可能なペプチドリンカーであり;SはSushiドメインであり;そしてAはIL-15ポリペプチドである。
【0080】
1. 抗原結合担体部分
担体部分は、抗体またはその抗原結合フラグメントまたはイムノアドヘシンであり得る。ある実施態様において、抗原結合部分は、2つの重鎖と2つの軽鎖の完全長抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド結合Fvフラグメント、単一ドメイン抗体、ナノボディまたは一本鎖可変フラグメント(scFv)である。ある実施態様において、抗原結合部分は、二特異的抗原結合部分であり、2つの異なる抗原または同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。抗原結合部分は、サイトカインアゴニストポリペプチドにさらなるかつおそらく相乗的である治療有効性を提供し得る。
【0081】
サイトカイン(IL-15)ポリペプチドおよびそのマスクは、抗原結合部分の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に融合し得る。一例として、サイトカイン(例えば、IL-15ポリペプチドおよびそのマスクは、抗体重鎖またはその抗原結合フラグメントまたは抗体軽鎖またはその抗原結合フラグメントに融合し得る。ある実施態様において、サイトカイン(IL-15)ポリペプチドは、抗体の一方または両方の重鎖のC末端に融合し、サイトカインのマスク は、開裂可能または開裂不可能なペプチドリンカーを介して、重鎖の他の末端またはサイトカインアゴニストポリペプチドのC末端に融合する。ある実施態様において、サイトカイン(IL-15)ポリペプチドは、抗体の重鎖の一方のC末端に融合し、サイトカインのマスクは、開裂可能なペプチドリンカーを介して抗体の他方の重鎖のC末端と融合し、ここで、2つの重鎖は、所望により2つの異なる重鎖の特異的対形成を可能にする変異を含む。
【0082】
Fc融合ポリペプチドまたは二特異的抗体のヘテロ二量体を形成する戦略は、周知である(例えば、Spies et al., Mol Imm. (2015) 67(2)(A):95-106参照)。例えば、プロドラッグの2つの重鎖ポリペプチドは、「ノブ・イントゥ・ホール」変異を介して安定なヘテロ二量体を形成し得る。「ノブ・イントゥ・ホール」変異は、抗体重鎖のヘテロ二量体の形成を促進するために行われ、二特異的抗体の製造に一般に使用される(例えば、米国特許8,642,745参照)。例えば、抗体のFcドメインは、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356CまたはS354C変異を導入することによる、CH3ドメイン間のさらなる鎖間ジスルフィド架橋も使用できる(例えば、Merchant et al., Nature Biotech (1998)16:677-81参照)。他の実施態様において、抗体部分は、2つのCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。ある実施態様において、抗体部分は、2つのCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにS354C(またはE356C)、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み、一方のCH3ドメインにおけるさらなるY349C変異および他方のCH3ドメインにおけるさらなるE356CまたはS354C変異を有し、鎖間ジスルフィド架橋を形成する(ナンバリングは、常にKabatのEUインデックスに従う;Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。EP1870459A1に記載されるような他のノブ・イントゥ・ホールテクノロジーをこれらとは別にまたはこれらに加えて使用し得る。故に、抗体部分のノブ・イントゥ・ホール変異の他の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインのR409D/K370E変異および「ホール鎖」のCH3ドメインのD399K/E357K変異を有する(EUナンバリング)。
【0083】
ある実施態様において、プロドラッグにおける抗体部分は、FcドメインにL234AおよびL235A(「LALA」)変異を含む。LALA変異は、補体結合および固定ならびにFcγ依存的ADCCを排除する(例えば、Hezareh et al. J. Virol. (2001) 75(24):12161-8参照)。さらなる実施態様において、LALA変異は、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えて、抗体部分に存在する。
【0084】
ある実施態様において、抗体部分は、FcドメインにM252Y/S254T/T256E(「YTE」)変異を含む。YTE変異は、血清半減期、組織分布およびIgG1活性の同時調節を可能にする(Dall'Acqua et al., J Biol Chem. (2006) 281: 23514-24;およびRobbie et al., Antimicrob Agents Chemother. (2013) 57(12):6147-53)。さらなる実施態様において、YTE変異は、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えて、抗体部分に存在する。具体的実施態様において、抗体部分は、YTE、LALAおよびノブ・イントゥ・ホール変異またはこれらの何らかの組み合わせを有する。
【0085】
抗原結合部分は、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞およびマクロファージなどの細胞の表面の抗原に結合するかまたはサイトカインに結合する。例えば、抗原結合部分はPD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、CTLA-4またはTGF-ベータに結合し得て、抗体であり得る。抗体は、免疫細胞を活性化する能力を有し、その抗癌活性を増強し得る。
【0086】
抗原結合部分は、腫瘍細胞の表面の抗原に結合し得る。例えば、抗原結合部分はFAPアルファ、5T4、Trop-2、PD-L1、HER-2、EGFR、クローディン18.2、DLL-3、GCP3または癌胎児性抗原(CEA)に結合し得て、抗体であり得る。抗体は、ADCC活性を有しても有していなくてもよい。抗体はまた、さらに細胞毒性薬物にコンジュゲートされ得る。
【0087】
ある実施態様において、抗原結合部分は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、炭水化物抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通型上皮性抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、クローディン18.2、クローディン6、BCMAまたはEPCAMに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3の上皮細胞増殖因子(EGF)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3のデルタ/Serrate/Lag2(DSL)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、GPC3の374番目のアミノ酸の後に位置するエピトープに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、GPC3のヘパリン硫酸グリカンに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分クローディン18.2に結合し、クローディン18.1に結合しない。ある実施態様において、抗原結合部分は、クローディン18.2への結合親和性より少なくとも10倍弱く、クローディン18.1に結合する。
【0088】
ある実施態様において、抗原結合部分(担体部分)は、当分野でPD-1に結合し、抗腫瘍免疫応答を刺激するように、PD-1とそのリガンド(PD-L1)の相互作用を妨害する、抗体またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗体またはその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。例えば、PD-1を標的とし、本発明で有用であり得る抗体は、ニボルマブ(BMS-936558、Bristol-Myers Squibb)、ペムブロリズマブ(ランブロリズマブ、MK03475またはMK-3475、Merck)、ヒト化抗PD-1抗体JS001(ShangHai JunShi)、モノクローナル抗PD-1抗体TSR-042(Tesaro, Inc.)、ピディリズマブ(抗PD-1 mAb CT-011、Medivation)、抗PD-1モノクローナル抗体BGB-A317(BeiGene)および/または抗PD-1抗体SHR-1210(ShangHai HengRui)、ヒトモノクローナル抗体REGN2810(Regeneron)、ヒトモノクローナル抗体MDX-1106(Bristol-Myers Squibb)および/またはヒト化抗PD-1 IgG4抗体PDR001(Novartis)を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、PD-1抗体はクローン:RMP1-14(ラットIgG)由来である - BioXcell cat# BP0146。他の適当な抗PD-1抗体は、米国特許8,008,449に開示のものを含む。ある実施態様において、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1との相互作用を妨害し、それにより、免疫活性を高める。PD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答を刺激する、当分野で知られるあらゆる抗体が、ここに記載する組み合わせ処置方法における使用に適する。例として、PD-L1を標的とする抗体は、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb)およびMPDL3280A(Genetech;現在人で治験中)を含む。他の適当なPD-L1を標的とする抗体は、米国特許7,943,743に開示される。PD-1またはPD-L1に結合し、PD-1/PD-L1相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0089】
ある実施態様において、ここで、担体は、ASKB1296、アベルマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブから選択される抗体である。
【0090】
ある実施態様において、担体は、癌細胞に発現される抗原に結合する抗体である。ある実施態様において、担体抗体はADCC活性を有する。ある実施態様において、担体抗体は、HER2、HER3、EGFR、CMET、Trop-2、GPC3、クローディン18.2、クローディン6、5T4、BCMA、CD38、CD20、CD30、CD47およびVEGFR2から選択される抗原に結合する。
【0091】
ある実施態様において、担体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-4、TIM-3、CD47およびTIGITから選択される2つの抗原に結合する二特異的抗体である。
【0092】
ある実施態様において、担体抗体はヒトPD-1に結合し、ここで、PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブまたはティスレリズマブの重鎖および軽鎖に由来するものと同じ重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインおよび軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。
【0093】
ある実施態様において、担体抗体はヒトPD-1に結合し、ここで、軽鎖は、配列番号55および56から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、第一重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号54、60または61と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;そしてここで、第二重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号52、53、58、59、62、63および69から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0094】
ある実施態様において、抗体はヒトPD-1に結合し、ここで、軽鎖は、配列番号55と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、第一重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号66と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;そしてここで、第二重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号64、65、67および68から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0095】
ある実施態様において、担体抗体はPD-1に結合し、ここで、軽鎖は、配列番号55および56から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、第一重鎖は、配列番号80、81または87から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;そしてここで、第二重鎖は、配列番号52、53、58、59、62、63および69から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0096】
ある実施態様において、担体抗体はPD-1に結合し、ここで、軽鎖は、配列番号55および56から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、第一重鎖は、配列番号54、60または61と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;そしてここで、第二重鎖は、配列番号82、83、84、85および86から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0097】
ある実施態様において、担体抗体はPD-L1に結合し、ここで、軽鎖は、配列番号50または51と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、第一重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号47、48または49と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み;そしてここで、第二重鎖ポリペプチド鎖は、配列番号45または46と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0098】
ある実施態様において、担体抗体は、HER2、HER3、EGFR、CMET、Trop-2、GPC3、クローディン18.2、クローディン6、5T4、BCMA、CD38、CD20、CD30およびVEGFR2から選択される2つの抗原に結合する二特異的抗体である。ある実施態様において、担体はcMetおよびEGFRに結合する二特異的抗体であり;ここで、EGFR結合ドメインは、配列番号88または90由来の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3および配列番号89または91由来の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0099】
ある実施態様において、担体部分はIgG1 Fcドメインであり、ここで、第一ポリペプチドは配列番号37、70~72および73から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、第二ポリペプチド鎖は、配列番号38、39、75~78および79から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0100】
ある実施態様において、担体部分はIgG4 Fcドメインであり、ここで、第一ポリペプチドは、配列番号80、81または87に示すものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、第二ポリペプチド鎖は、配列番号82~85および86から選択されるものと少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0101】
ある実施態様において、抗原結合部分は、CTLA-4に結合し、CD80およびCD86とのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。CTLA-4を標的とする抗体の例は、FDA承認されているイピリムマブ(MDX-010、MDX-101、Bristol-Myers Squibb)および現在ヒト治験中であるトレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675、206、Pfizer)を含む。CTLA-4を標的とする他の適当な抗体は、WO2012/120125、米国特許6,984,720、6,682,7368および米国特許出願2002/0039581、2002/0086014および2005/0201994に開示される。CTLA-4に結合し、CD80およびCD86とのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0102】
ある実施態様において、組み合わせ治療は、LAG-3と結合し、MHCクラスII分子とのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体を含む。LAG-3を標的とする抗体の例は、現在ヒト治験中である、IMP321(Immutep)である。LAG-3を標的とする他の適当な抗体は、米国特許出願2011/0150892に開示される。LAG-3に結合し、MHCクラスII分子とのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0103】
ある実施態様において、抗原結合部分は、TIM-3に結合し、ガレクチン9とのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。TIM-3を標的とする適当な抗体は、米国特許出願2013/0022623に開示される。TIM-3に結合し、ガレクチン9とのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0104】
ある実施態様において、抗原結合部分は、4-1BB/CD137に結合し、CD137Lとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。4-1BB/CD137と結合し、CD137Lまたは他のリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0105】
ある実施態様において、抗原結合部分は、GITRに結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。GITRと結合し、GITRLまたは他のリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0106】
ある実施態様において、抗原結合部分は、OX40に結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。OX40と結合し、OX40Lまたは他のリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0107】
ある実施態様において、抗原結合部分は、CD40に結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。CD40と結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0108】
ある実施態様において、抗原結合部分は、ICOSに結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。ICOSと結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0109】
ある実施態様において、抗原結合部分は、CD28に結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害する、当分野で知られる抗体またはそのフラグメントを含む。CD28と結合し、そのリガンドとのその相互作用を妨害し、抗腫瘍免疫応答もしくは全体的抗腫瘍活性をもたらす免疫刺激応答を刺激するあらゆる抗体がここに開示する組み合わせ処置方法における使用に適することを、当業者は理解する。
【0110】
抗原結合部分(担体部分)のさらなる例は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)および抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブまたはパニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)または抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)またはそのフラグメントの抗体重鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体重鎖を有する。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)またはそのフラグメントの抗体軽鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体軽鎖を有する。抗原結合部分はIL-15ポリペプチドに融合される。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33または抗EGFR抗体mAb806の6つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0111】
いくつかのCDR線引きが当分野で知られ、ここに包含される。当業者は、重鎖または軽鎖可変領域の配列に基づき、CDRのある線引きを容易に決定できる。「Kabat」CDRは、配列可変性に基づき、最も一般に使用される(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「Chothia」CDRは、構造ループの位置をいう(Chothia & Lesk, Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins, J. Mol. Biol., vol. 196, pp. 901-917 (1987))。Kabat CDRとChothia構造ループの妥協点を表す「AbM」CDRは、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「接触」CDRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらCDRの各々からの残基を、一般的抗体ナンバリングスキームを参照して、下表1に示す。ここで特に断らない限り、抗体のアミノ酸番号は、CDR線引きがKabat、Chothia、AbMまたは接触スキームを参照してなされたときを含み、Kabat et al., supraに記載のとおりKabatナンバリングスキームを参照する。このナンバリングシステムを使用して、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのフレームワーク領域(FR)またはCDRの短縮または挿入に対応して少ないまたは多いアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に一アミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)および重鎖FR残基82後に挿入残基(例えば、Kabatによる残基82a、82bおよび82cなど)に含み得る。残基のKabatナンバリングは、ある抗体について、「標準」Kabat番号付け配列の抗体の配列の相同性の領域と整列することにより決定し得る。
【表1】
【0112】
ある実施態様において、CDRは「拡張CDR」であり、異なるスキームに従い始まりまたは終わる領域を包含する。例えば、拡張CDRは次のとおりであり得る:L24-L36、L26-L34またはL26-L36(VL-CDR1);L46-L52、L46-L56またはL50-L55(VL-CDR2);L91-L97(VL-CDR3);H47-H55、H47-H65、H50-H55、H53-H58またはH53-H65(VH-CDR2);および/またはH93-H102(VH-CDR3)。
【0113】
ある実施態様において、抗原結合部分はEGFRに結合し、配列番号88と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号89と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号88からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号89からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0114】
ある実施態様において、抗原結合部分はEGFRに結合し、配列番号90と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号91と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号90からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号91からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0115】
ある実施態様において、抗原結合部分はc-METに結合し、配列番号92と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号92からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号93からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0116】
ある実施態様において、抗原結合部分はGPC3に結合し、配列番号94と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号95と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号94からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号95からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0117】
ある実施態様において、抗原結合部分は5T4に結合し、配列番号98または99と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインおよび配列番号96または97と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインまたはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号98または99からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号96または97からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0118】
ある実施態様において、抗原結合部分はTrop-2に結合し、KASQDVSIAVA(配列番号125)のアミノ酸配列を含むCDR1、SASYRYT(配列番号126)のアミノ酸配列を含むCDR2およびQQHYITPLT(配列番号127)のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;およびNYGMN(配列番号128)のアミノ酸配列を含むCDR1、WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号129)のアミノ酸配列を含むCDR2およびGGFGSSYWYFDV(配列番号130)のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0119】
ある実施態様において、抗原結合部分はメソテリンに結合し、SASSSVSYMH(配列番号131)のアミノ酸配列を含むCDR1、DTSKLAS(配列番号132)のアミノ酸配列を含むCDR2およびQQWSGYPLT(配列番号133)のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域;およびGYTMN(配列番号134)のアミノ酸配列を含むCDR1、LITPYNGASSYNQKFRG(配列番号135)のアミノ酸配列を含むCDR2およびGGYDGRGFDY(配列番号136)のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0120】
ある実施態様において、抗原結合部分は、1つ、2つまたは3つの抗原結合ドメインを含む。例えば、抗原結合部分は二特異的であってよく、HER2、HER3、EGFR、5T4、FAPアルファ、Trop-2、GPC3、VEGFR2、クローディン18.2およびPD-L1からなる群から選択される2つの異なる抗原に結合する。ある実施態様において、二特異的抗原結合部分は同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。例えば、二特異的抗体は、HER2の2つの異なるエピトープに結合し得る。
【0121】
2. 他の担体部分
他の非抗原結合担体部分を、本プロドラッグに使用し得る。例えば、抗体Fcドメイン(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc)、ポリマー(例えば、PEG)、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)またはそのフラグメントまたはナノ粒子が使用され得る。
【0122】
一例として、IL-15ポリペプチドおよびSushiドメインおよびIL-15アンタゴニストを抗体Fcドメインに融合して、Fc融合タンパク質を形成させ得る。ある実施態様において、Sushiドメインを、所望によりFcドメインの重鎖の一方のC末端またはN末端に融合し、IL-15ポリペプチドを開裂不可能なリンカーを介してSushiドメインのC末端またはN末端に融合し、マスキング部分を、開裂可能なペプチドまたは開裂不可能なリンカーを介して、Fcドメインの他方の重鎖のC末端またはN末端に融合する。ある実施態様において、Fcドメインの重鎖の各々は、それらの対形成を可能とする変異を含む。ある実施態様において、変異はノブ・イントゥ・ホール、YTEおよび/またはLALA変異であり得る。
【0123】
プロドラッグの担体部分は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)またはそのフラグメントを含み得る。ある実施態様において、アルブミンまたはアルブミンフラグメントは、ヒト血清アルブミンまたはそのフラグメントと約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上または約99.8%以上同一である。
【0124】
ある実施態様において、担体部分は、約10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上または550以上のアミノ酸長であるアルブミンフラグメント(例えば、ヒト血清アルブミンフラグメント)を含む。ある実施態様において、アルブミンフラグメントは、約10アミノ酸~約584アミノ酸長(例えば約10~約20、約20~約40、約40~約80、約80~約160、約160~約250、約250~約350、約350~約450または約450~約550アミノ酸長)である。ある実施態様において、アルブミンフラグメンは、Sudlow IドメインまたはそのフラグメントまたはSudlow IIドメインまたはそのフラグメントを含む。
【0125】
D. プロドラッグのリンカー成分
IL-15ポリペプチドおよびSushiドメインは、ペプチドリンカーを用いてまたは用いずに担体部分と融合され得る。ペプチドリンカー開裂不可能であり得る。ある実施態様において、ペプチドリンカーは、配列番号11~16から選択される。具体的実施態様において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号13)を含む。
ある実施態様において、IL-15ポリペプチド(A)は、ペプチドリンカーを介してSushiドメイン(S)に融合される。ペプチドリンカーは、少なくとも25、30または35アミノ酸長であり得る。ある実施態様において、ペプチドリンカーは、25~45アミノ酸であり得る。他の実施態様において、ペプチドリンカーは、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44または45アミノ酸を有する。ある実施態様において、リンカーは、アミノ酸配列GSAGSAAGSGEF(配列番号138)を含む。ある実施態様において、リンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)n1GSAGSAAGSGEF(GGGGS)n2(配列番号139)(ここで、n1=1、2または3およびn2=1、2または3である)を含む。ある実施態様において、リンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)n1AA(GGGGS)n2(配列番号140)(ここで、n1=2または3およびn2=2または3である)を含む。
【0126】
マスキング部分は、開裂可能なリンカーを介して担体に融合し得る。開裂可能なリンカーは、1以上の(例えば、2つまたは3つの)開裂可能部分(CM)を含み得る。各CMは、レグマイン、プラスミン、TMPRSS-3/4、MMP-2、MMP-9、MT1-MMP、カテプシン、カスパーゼ、ヒト好中球エラスターゼ、ベータ-セクレターゼ、uPAおよびPSAから選択される酵素またはプロテアーゼの基質であり得る。開裂可能なリンカーの例は、配列番号17~35および36から選択されるアミノ酸配列を含むものを含むが、これらに限定されない。
【0127】
ある実施態様において、本発明のIL-15プロドラッグは、ペプチドリンカーを介してIL-15ポリペプチドに融合したIL-15受容体アルファSushiドメイン(S)を含む。ある実施態様において、ペプチドリンカーは、少なくとも20アミノ酸、25アミノ酸、少なくとも30アミノ酸、少なくとも35アミノ酸または少なくとも40アミノ酸;または27アミノ酸、32アミノ酸、37アミノ酸、42アミノ酸または47アミノ酸を含む。
【0128】
II.
IL-15プロドラッグの例
ある実施態様において、活性化可能IL-15プロドラッグは、
図1A~1Cおよび
図2A~2Cの何れかに示す分子構造を有する。特定の実施態様において、IL-15プロドラッグは、
図1Bまたは
図2Bの何れかに示す分子構造を有する。ある実施態様において、IL-15プロドラッグは、
図3A~3Cの何れかに示す構造を含む。特定の実施態様において、IL-15プロドラッグは、
図3Bに示す構造を含む。ある実施態様において、担体部分は、
図4A、4B、5Aまたは5Bに示すとおり、1つの抗原結合部分を含む抗体である。好ましい実施態様において、IL-15プロドラッグは、
図4Bおよび
図5Bから選択される構造を含む。
【0129】
IL-15プロドラッグは、Sushiドメインまたはその機能的アナログの何れも含み得ない。ある実施態様において、IL-15プロドラッグは、E46、V49、L45、S51およびL52から選択される一か所以上に1以上の変異を含む、IL-15ポリペプチドを含む(配列番号2に従いナンバリング)。ある実施態様において、IL-15ポリペプチドは、変異E46Kを含む(配列番号2に従いナンバリング)。他の実施態様において、IL-15ポリペプチドは、変異E46K/N65Dを含む(配列番号2に従いナンバリング)。さらに他の実施態様において、IL-15ポリペプチドは、変異E46K/Q108Eを含む(配列番号2に従いナンバリング)。
【0130】
ある実施態様において、本発明のIL-15プロドラッグは、担体部分としてIgG
1 Fcドメインを含む。例えば、IL-15プロドラッグは、表2から選択され得る。他の実施態様において、本発明のIL-15プロドラッグは、IgG
4 Fcドメインを含む。例えば、IL-15プロドラッグは、表3から選択され得る。ある実施態様において、本発明のIL-15プロドラッグは、担体部分としてヒトPD-L1に結合する抗体を含む。例えば、IL-15プロドラッグは、表4から選択され得る。ある実施態様において、本発明のIL-15プロドラッグは、担体部分としてヒトPD-1に結合する抗体を含む。例えば、IL-15プロドラッグは、表5から選択され得る。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0131】
IL-15ポリペプチド、Sushiドメイン、サイトカインアンタゴニスト/マスク、担体、ペプチドリンカーおよびプロドラッグの特定の非限定的例を、下記配列セクションに示す。さらに、本発明のプロドラッグは、周知の組み換えテクノロジーにより製造され得る。例として、プロドラッグのポリペプチド鎖のコード配列を含むさらに1つの発現ベクターを哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)にトランスフェクトし、細胞をコード配列の発現および発現ポリペプチドのプロドラッグ複合体への集合を可能とする条件下、培養し得る。プロドラッグが不活性のままであるために、uPA、MMP-2および/またはMMP-9を発現しないまたは僅かしか発現しない宿主細胞が使用され得る。ある実施態様において、宿主細胞は、これらプロテアーゼの遺伝子のヌル変異(ノックアウト)を含み得る。
【0132】
III. 医薬組成物
本発明のプロドラッグおよび変異タンパク質(すなわち、原薬またはAPI)を含む医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形の所望の純度のAPIと1以上の任意の薬学的に許容される添加物(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition., Osol, A. Ed. (1980)参照)の混合により調製され得る。薬学的に許容される添加物(または担体)は、一般に用いる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、例えば、リン酸、クエン酸、コハク酸、ヒスチジン、酢酸または他の無機酸または有機酸もしくはその塩を含む緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;スクロース、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成カウンターイオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0133】
緩衝液は、特に、安定性がpH依存的であるとき、治療有効性を最適化する範囲内にpHを制御するために使用する。緩衝液は、好ましくは約50mM~約250mM範囲の濃度で存在する。本発明で使用するための適当な緩衝剤は、有機酸および無機酸両者およびその塩、例えばクエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩および酢酸塩などを含む。さらに、緩衝液は、ヒスチジンおよびTrisなどのトリメチルアミン塩を含み得る。
【0134】
防腐剤は、微生物増殖を遅らせるために加えられ、一般に0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本発明での使用のための適当な防腐剤は、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化(例えば、塩化、臭化、ヨウ化)ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールを含む。
【0135】
「安定化剤」としても知られることもある等張化剤は、組成物における液体の張性を調節または維持するために存在する。タンパク質および抗体などの大きな荷電生体物質と使用するとき、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより、分子間および分子内相互作用の可能性を低減し得るため、しばしば「安定化剤」と称される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%~25重量%以上、好ましくは1%~5重量%の何れかの量で存在し得る。好ましい等張化剤は、多価糖アルコール、好ましくはグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの三価以上の糖アルコールを含む。
【0136】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助け、撹拌誘発凝集に対する治療タンパク質の保護のために存在し、また、製剤が活性治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、剪断表面応力に曝されることも可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。
【0137】
適当な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(184、188など)、プルロニック(登録商標)ポリオール、トリトン(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(トゥイーン(登録商標)-20、トゥイーン(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む。使用できるアニオン性洗剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートを含む。カチオン性洗剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
【0138】
選りすぐりの医薬担体、添加物または希釈剤は、意図する投与経路および標準的製剤技術により選択され得る。医薬組成物は、さらに何らかの適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤または可溶化剤を含み得る。
【0139】
送達系が異なれば、組成物/製剤条件も異なり得る。一例として、本発明において有用な医薬組成物は、ミニポンプを使用してまたは、例えば、吸入用経鼻スプレーもしくはエアロゾルまたは摂取可能溶液として粘膜経路でまたは組成物が、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のための注射用形態で製剤される非経腸的に投与するように、製剤化され得る。
【0140】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、凍結乾燥タンパク質製剤である。他の実施態様において、医薬組成物は、水性液体製剤であり得る。
【0141】
IV. 処置方法
IL-15プロドラッグは、抗原結合ドメインにより結合される抗原に依存して、疾患の処置に使用され得る。ある実施態様において、IL-15プロドラッグは、癌の処置に使用される。ある実施態様において、IL-15プロドラッグは、例えば、薬物分子が抗細菌剤または抗ウイルス剤であるとき、感染の処置に使用される。
【0142】
ある実施態様において、対象における疾患(例えば癌、ウイルス感染または細菌感染)を処置する方法は、対象に有効量のIL-15プロドラッグを投与することを含む。他の実施態様において、処置方法は、IL-15プロドラッグと組み合わせて(前、後または同時)さらなる治療剤を投与することをさらに含む。さらなる薬剤は、一部ここに開示する抗体またはそのフラグメント、小分子薬物または他のタイプの治療薬物であり得る。
【0143】
ある実施態様において、癌は固形癌である。ある実施態様において、癌は血液癌または固形腫瘍である。処置し得る癌の例は、白血病、リンパ腫、腎臓癌、膀胱癌、尿路癌、頸部癌、脳腫瘍、頭頸部癌、皮膚癌、子宮癌、精巣癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、膵臓癌、非小細胞肺癌などの肺癌、胆管細胞癌、乳癌および卵巣癌を含むが、これらに限定されない。
【0144】
ある実施態様において、IL-15プロドラッグを、敗血症などの細菌感染の処置に使用する。ある実施態様において、細菌感染を引き起こす細菌は、薬物耐性細菌である。ある実施態様において、抗原結合部分は、細菌抗原に結合する。
【0145】
ある実施態様において、IL-15プロドラッグを、ウイルス感染の処置に使用する。ある実施態様において、ウイルス感染を引き起こすウイルスは、C型肝炎(HCV)、B型肝炎(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)である。ある実施態様において、抗原結合部分は、ウイルス抗原に結合する。
【0146】
一般に、本医薬組成物の投与量および投与経路は、標準製薬実務に従い、対象の体格および状態により決定される。ある実施態様において、医薬組成物を、経口、経真皮、吸入、静脈内、動脈内、筋肉内、創傷部位への特設適用、手術部位への適用、腹腔内、坐薬、皮下、皮内、経皮、噴霧化、胸膜内、脳室内、関節内、眼内、頭蓋内または髄腔内を含む、何らかの経路を介して、対象に投与する。ある実施態様において、組成物は、対象に静脈内投与される。
【0147】
ある実施態様において、医薬組成物の投与量は、単回投与または反復投与である。ある実施態様において、用量は、対象に1日1回、1日2回、1日3回または1日4回またはそれ以上で投与される。ある実施態様において、約1以上(例えば約2、3、4、5、6または7以上)の用量が1週で投与される。ある実施態様において、医薬組成物は、毎週、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、3週中2週間毎週または4週中3週間毎週で投与される。ある実施態様において、複数用量が、数日、数週、数カ月または数年にわたり投与される。ある実施態様において、処置の過程は、約1以上の投薬(例えば約2、3、4、5、7、10、15または20以上の投薬)である。
【0148】
ここで他に定義しない限り、本開示に関連して使用する科学的および技術的用語は、当業者に一般に理解される意味を有する。例示的方法および材料が下に記載されるが、ここに記載するのに類似するまたは等価な方法および材料も、本発明の実施または試験において使用され得る。矛盾があるならば、定義を含む本明細書が優先する。一般に、ここに記載する細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品化学および医薬化学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連しておよびその技術で使用する術語は、当分野で周知であり、一般に使用されるものである。酵素反応および精製技術は、当分野で一般に実施されるまたはここに記載するとおり、製造業者の仕様に従い実施する。さらに、文脈から他の解釈が必要ではない限り、単数表現は複数を含みかつ複数表現が単数を含む。本明細書および実施態様をとおして、用語「有する」および「含む」または「有し」、「含有する」、「含み」または「含んで」などのその変形は、記載された整数または整数の群を含むが、他のあらゆる整数または整数の群を除外しないことを含意すると理解される。ここに記載する本発明の態様およびバリエーションは、「からなる」および/または「から本質的になる」態様およびバリエーションを含むと理解される。ここに記載する全ての刊行物および他の引用文献は、引用により全体として本明細書に包含させる。多数の文献がここで引用されるが、この引用は、これらの文献の何れも、当分野の技術常識の一部を形成することを認めるものではない。
【実施例】
【0149】
HEK293細胞の一過性トランスフェクション
発現プラスミドを、ポリエチレンイミン(PEI)を使用して、2.5~3μg/mlで3×106細胞/mlフリースタイルHEK293細胞に共トランスフェクトした。FcベースのIL-15プロドラッグについて、Fc-IL-15変異タンパク質融合ポリペプチドおよびFc-マスキング部分融合ポリペプチドは、1:2比であった。抗体ベースのIL-15プロドラッグについて、ノブ重鎖(IL-15ポリペプチド含有)、ホール重鎖(マスキング部分含有)および軽鎖DNAは、2:1:2モル比であった。細胞培養物を、トランスフェクション6日後、9,000rpmで45分間遠心分離、続いて0.22μM濾過により採取した。
【0150】
タンパク質精製
Fcおよび抗体ベースのIL-15融合ポリペプチドは、一般に、プロテインA親和性クロマトグラフィー、続いてイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/またはサイズ排除クロマトグラフィーで精製した。ある例において、抗体ベースのIL-15プロドラッグのタンパク質の精製を、1)プロテインA親和性クロマトグラフィー;2)フロースルーモードで操作するCaptoTM Adhere;3)CaptoTM MMC ImpResおよび4)フロースルーモードで操作するQセファロース(登録商標)HPを含む4工程のクロマトグラフィーを使用して実施した。CaptoTM Adhereを、50mM 酢酸、30mM NaCl(pH5.5)を含む緩衝液で平衡化した。CaptoTM MMC ImpResを、緩衝液A(50mM 酢酸、30mM NaCl、pH5.5)を使用して平衡化し、緩衝液B(50mM 酢酸、0.5Mアルギニン、pH5.5)の30 CV線形勾配を使用して溶出した。Qセファロース(登録商標)HPを、40mM Bis Tris、pH6.5で平衡化した。
【0151】
SEC-HPLC分析
SEC-HPLCを、Tosoh BioscienceからのTSKgel(登録商標)G3000SWXLカラム(7.8mmID×30cm、5μm粒子径)を備えたAgilent 1100 Series HPLCシステムを使用して、実施した。100μlまでのサンプルを負荷した。カラムを、200mM K3PO4、250mM KClを含む緩衝液、pH6.5で流した。流速は0.5ml/分であった。カラムを室温で流した。タンパク質溶出を220nmおよび280nm両者でモニターした。
SDS-PAGE分析
【0152】
10μlの培養上清または20μgの精製タンパク質サンプルを、還元剤存在下または非存在下、BoltTM LDSサンプル緩衝液(Novex)と混合した。サンプルを70℃で3分間加熱し、次いでNuPAGETM 4~12%BisTris Gel(Invitrogen)に負荷した。ゲルを、NuPAGETM MOPS SDSランニング緩衝液(Invitrogen)で200ボルトで40分間流し、次いでクマシーで染色した。
【0153】
タンパク質分解処理
1μgのプロテアーゼ、ヒトMMP-2(R&D systems)、ヒトMMP-9(R&D systems)、マウスMMP-2(R&D systems)またはマウスMMP-9(R&D systems)を、50μgの前駆体タンパク質に加え、37℃で一夜インキュベートした。
【0154】
CTLL2アッセイ
CTLL2細胞を、L-グルタミン、10%ウシ胎児血清、10%非必須アミノ酸、10%ピルビン酸ナトリウムおよび55μM ベータ-メルカプトエタノールを添加したRPMI 1640培地で増殖させた。CTLL2細胞は非接着性であり、100ng/mlのIL-15を含む培地に5×104~1×106細胞/mlで維持した。一般に、細胞を週に2回分けた。バイオアッセイのために、細胞を継代後48時間以降に使用するのが最良であった。
【0155】
サンプルを96ウェルプレートで50μl/ウェルで2倍濃度に希釈した。IL-15標品を12ウェルで20ng/ml(2倍濃度)から3倍連続希釈で希釈して、力価測定した。サンプルを、適宜力価測定試験した。CTLL2細胞を5回洗浄してIL-15を除去し、50μlで5000細胞/ウェルに分配し、一夜または少なくとも18時間、サンプルとインキュベートした。その後、100μl/ウェルCell Titer Glo試薬(Promega)を加え、発光を測定した。
【0156】
NK92増殖アッセイ
NK92細胞増殖アッセイは、下記プロトコールに従い実施した。
【0157】
NK92細胞株は、増殖および生存のためにIL-2を必要とする因子依存的細胞株である。アッセイ前、細胞を洗浄してIL-2を除去し、増殖因子非存在下、一夜培養する。細胞を採取し、再び洗浄して、残存増殖因子を除去する。次いで、細胞(20,000/ウェル)を試験品の連続希釈物および対照を含む96ウェルプレートに加える。プレートを一夜インキュベートし、Cell Titer Glo(Promega)を加え、発光を測定する。これは、細胞生存能の指標として、ATPレベルの測定値を提供する。
【0158】
アッセイを、数個のIL-2Rβ細胞外ドメイン(ECD)、IL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDおよびIL-15抗体146B7由来scFv分子でマスクしたIL-15プロドラッグを使用して実施した。
【0159】
pSTAT5分析
NK92/pSTAT5安定細胞株を、0.1%FBS添加RPMI 1640培地で、一夜飢餓状態とした。96ウェルプレートの各ウェルに5×105の細胞を播種し、その後37℃および5%CO2で一夜インキュベートした。IL-15融合ポリペプチドを細胞に加え、該インキュベーターで5~6時間インキュベートした。その後、100μlのPierceTM Firefly Luc One-Step Glowアッセイ溶液を加え、生物発光をルミノメーターで測定した。
【0160】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
PBS中10μg/mlのIL-15融合タンパク質を、100μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、4度で一夜被覆した。ウェルをPBSで3回洗浄し、100μl 2%ミルク/PBSで1時間遮断した。次いで、ウェルをPBSで3回洗浄し、3倍連続希釈した100μlタンパク質サンプルを、室温(RT)での1時間のインキュベートで加えた。PBSで3回洗浄後、100μlのHRPコンジュゲート抗IgG抗体を加え、RTで1時間インキュベートした。その後、ウェルを再びPBSで3回洗浄し、続いて検出試薬を加え、光学密度(OD)を450nmで測定した。
【0161】
実施例1:IL-15プロドラッグの発現および試験
多数のプロドラッグを構築し、HEK293細胞で組み換えにより発現させた(
図6Aおよび
図10A参照)。IL-15プロドラッグにおいて、IL-15ポリペプチドは融合ポリペプチドの一部として発現され、その生物活性を試験した。発現されたIL-15融合ポリペプチドの配列のいくつかを
図6A、
図10Aおよび
図12Aに列記する。
【0162】
発現されたIL-15融合ポリペプチドを、活性化前後にSDS-PAGEで試験した(
図7A;非還元;および
図7B;還元)。データは、JR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3サンプルのマスキング部分が、プロテアーゼ処置により成功裏に開裂されたことを示した。
【0163】
実施例2:活性化可能IL-15プロドラッグ成分の精製
活性化可能IL-15プロドラッグJR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3をプロテインAカラムで精製し、SEC-HPLCを使用して分析した。JR3.68.1(
図1A)は、Fcドメインの重鎖の一方のC末端にペプチドリンカーを介して融合したSushiドメインを有し、IL-15ポリペプチドはペプチドリンカーを介してSushiドメインのC末端に融合し、マスキング部分(IL2Rβ ECD)はFcドメインの他方の重鎖のC末端に融合する。JR3.68.2は
図1Bに示し、JR3.68.3は
図1Cに示す。
【0164】
プロドラッグ分子の数個の成分の形式、配置、相対位置または立体配置が、プロテインA親和性カラムで精製したとき、薬物凝集のレベルに有意に影響したのは驚きであった。Fc-Sushi-IL-15(2個のポリペプチド鎖配列番号37および配列番号38を含む)(JR3.68.1)が、Fc-IL-15-Sushi(JR3.68.2、配列番号37および配列番号40の2個のポリペプチド鎖を有する)の形式と比較したとき(
図8B)、有意に高い純度(高い主ピークにより明らか;
図8A)および低レベルの凝集を有したのは明らかであった。同時に、SushiドメインおよびサイトカインがFcドメインの異なる重鎖にある形式は、JR3.68.2(JR3.68.3、
図8C)より良好であるが、JR3.68.1(
図8A)より低い、SEC-HPLC主ピーク純度を有した。担体が抗体であるとき、傾向は本質的に同じであった(例えば、ニボルマブ、ヒトPD-1に対する抗体;
図11B、JR3.73.2対JR3.73.4)。
【0165】
マスキング部分の付加により、融合ポリペプチドの純度が有意に向上したことも、予想外に観察された。担体部分として抗体を有するJR3.73.2 IL-15プロドラッグは、SEC-HPLCで活性化バージョンJR3.74.1より高い単量体純度であることが観察された(
図11Aおよび
図11B)。JR3.74.1の単量体ピークは顕著なショルダー(
図11A)であることも観察され、さらなる精製の潜在的課題を示し得る。
【0166】
実施例3:IL-15プロドラッグの細胞ベースの活性
CTLL2アッセイ
IL-15プロドラッグJR3.68.1、JR3.68.2およびJR3.68.3のCTLL2細胞ベースの活性を、
図9A~9Cに示すとおり、活性化前後に決定した。結果は、JR3.68.1がプロテアーゼ処理後、顕著に活性化されたことを示す。担体部分として抗体を有するIL-15プロドラッグの細胞ベースの活性を
図11Cに示す。結果は、IL-15プロドラッグJR3.73.2が活性化可能であったことを示す。
【0167】
NK92アッセイ
NK92細胞増殖アッセイも、scFv分子(IL-15抗体146B7由来)、IL-2Rβ ECDまたはIL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDでマスクした数個のIL-15プロドラッグで実施した。IL-15抗体146B7のscFv1またはscFv2でマスクしたIL-15プロドラッグのNK92増殖アッセイ結果は、scFv2およびscFv1両者が、IL-15 WTおよびN65D変異を有するIL-15変異タンパク質の活性を有意にマスクしたことを示す(
図12B)。
【0168】
活性化前後の活性化可能IL-15融合ポリペプチドのNK92細胞ベースの活性を、pSTAT5方法を使用して決定した。
図13Aは、scFv2およびscFv1両者が野生型IL-15を同程度マスクし、融合ポリペプチドは、プロテアーゼ処理により活性化可能であったことを示す。
図13Bは、scFv2がIL-15変異タンパク質N65Dの活性を有意にマスクしたことを示す。結果は、scFv1がIL-15変異タンパク質を効率的にマスクしたことも示す。両IL-15プロドラッグが、インビトロで、プロテアーゼ処理により、開裂したscFv分子を除去するためにさらに精製せずとも、活性化可能であったのは予想外であった。scFv2が、IL-15変異タンパク質N65Dに対して、scFv1より有意に強いマスキング効果を有することも驚きであった。
【0169】
IL-2Rβ ECDまたはIL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDでマスクしたさらなる活性化可能IL-15融合ポリペプチドのNK92細胞ベースの活性を決定した。これら融合ポリペプチドにおいて、野生型IL-15は、IL-2Rβ ECDおよびIL-2RγECDでマスクした。結果は、IL-2Rγ ECDと組み合わせたIL-2Rβ ECDが、野生型IL-15に対して有効なマスクを形成し、IL-15プロドラッグがプロテアーゼ処理により活性化可能であったことを示す(
図14A)。IL-15変異タンパク質Q108E(プロテアーゼ処理により活性化可能であった)の活性もIL-2Rβ ECDおよびIL-2Rγ ECDでマスクされた(
図14C)。
【0170】
Sushiドメインがない活性化可能Fc-IL-15融合ポリペプチド(JR2.145.1)およびSushiドメインとIL-15ポリペプチド部分の間に長いリンカーを有する活性化可能Fc-IL-15融合タンパク質(JR2.145.2)のNK92細胞ベースのアッセイ結果も決定した。データは、両者における、IL-15変異タンパク質N65Dの有意なマスキングを示した。結果は、scFv2マスクが、Sushiドメインの非存在下でIL-15ポリペプチドのマスキングに有効であることを示した。マスキングドメインは、SushiドメインとIL-15ポリペプチドの間のリンカーが長いとき(32アミノ酸)、また良好に機能した。
【0171】
上記非限定的例は、本開示の主題のより完全な理解を容易にするために、説明の目的のためのみに提供する。これらの例は、抗体、医薬組成物または方法および癌、神経変性または感染性疾患の処置のための使用に関するものを含む、本明細書に記載の実施態様の何れも限定すると解釈してはならない。
【0172】
配列
下記配列において、四角で囲った残基は変異を示す。開裂可能なリンカーにおける下線はプロテアーゼ基質配列を示す。
【表6】
【表7】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【配列表】
【国際調査報告】