(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】生物学的内腔内の物体を遠隔制御するための磁気システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/04 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
A61M25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573465
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 US2020037012
(87)【国際公開番号】W WO2020252033
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スローミン、アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA33
4C267BB26
4C267BB44
4C267BB56
4C267CC08
4C267CC12
4C267CC22
4C267EE01
(57)【要約】
生物学的内腔および生物内の同様の空間に挿入するための遠隔制御可能な内部装置、およびその遠隔制御のための磁気システム。実施形態は、内腔内の線形運動の機構、治療、診断、および検査材料のペイロード放出の機構、および様々な医学的および生物学的目的のために内腔の外壁に装置を固定するための固定機構を含む。関連する実施形態は、ペイロードの徐放および可逆的な固定機構を含む追加の特徴を提供する。異なる機能(運動、ペイロード放出、固定)は、異なる磁力閾値および直交配向磁気応答を特徴とする実施形態構成を通じて独立して制御可能である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔内の標的物体を磁気的に制御するための装置であって、
同様の寸法および対応する同様の面を有し、それらのそれぞれの同様の面に配置された同様の極を有する少なくとも2つの永久双極子磁石と、
磁気回路を完成させることができる材料を組み込んだヨークと、を含み、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石は、互いに隣接して前記ヨークに固定されており、それにより、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石の同様の極面が前記ヨークの同じ単一面と接触して固定され、
磁石間空間が前記少なくとも2つの永久双極子磁石を分離するように、前記少なくとも2つの永久双極子磁石が前記ヨークの同じ単一面の位置で前記ヨークに固定されており、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの反対の極面は、前記磁石間空間によって露出され、隣接し、かつ分離されている、装置。
【請求項2】
前記標的物体を磁気的に制御することは、
前記標的物体の空間位置、および、
前記標的物体の空間配向角度、のうちの少なくとも1つを制御することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
磁気回路を完成させることができる前記材料が、
常磁性体、および、
強磁性体、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石が、異なる磁場強度を有する複数の永久磁石から選択される永久磁石と交互に交換可能な少なくとも1つの永久磁石を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記異なる磁場強度を有する複数の永久磁石が、
前記標的物体の動きを制御するための永久磁石、および
前記標的物体からのペイロードの放出を制御するための磁石、からなる群から選択される少なくとも1つの磁石を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石が、所定の磁場配向を有する永久磁石と交互に交換可能な少なくとも1つの永久磁石を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記所定の磁場配向が、
所定の方向への前記標的物体の動きを制御するための配向、および、
前記標的物体からのペイロードの放出を制御するための配向、からなる群から選択される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石が幾何学的に一致する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石の形状が、
角柱、
反角柱、
円柱、および、
円錐台、からなる群から選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石の長さ寸法が、永久双極子磁石の対向する磁極間の距離である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記長さ寸法が、前記少なくとも2つの永久双極子磁石の最大寸法である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記長さ寸法が、前記磁石間空間よりも実質的に大きい、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
磁気回路を完成させることができる材料を組み込んだヨーク延長部をさらに含み、
前記ヨーク延長部の面は、前記ヨークの同じ単一面に取り付けられ、前記磁石間空間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの極配向が平行であり、
前記装置は、前記磁石間空間に配置された少なくとも1つの対向する永久双極子磁石をさらに含み、
前記対向する永久双極子磁石は、その極配向が、前記少なくとも2つの永久双極子磁石の極配向と反平行的に配向される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ヨークに最も近い対向する永久双極子磁石の極が前記ヨークと接触している、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ヨークに最も近い対向する永久双極子磁石の極が前記ヨークから可変距離にある、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石は、斜めであり、かつ、前記ヨークに固定されたそれらの同様の面の間の最小距離が、それらの露出した同様の面の間の最小距離よりも実質的に大きくなるように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、前記磁石間空間に配置された少なくとも1つの対向する永久双極子磁石をさらに含み、
前記対向する永久双極子磁石は、その極配向が前記少なくとも2つの永久双極子磁石の極配向と反対になるように配向される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記標的物体が、前記内腔の内壁に対して前記標的物体を配向するためのホイールを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記標的物体を磁気的に制御することは、前記標的物体の空洞から前記内腔へのペイロードの放出を制御することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記標的物体が、前記内腔の内壁に対して前記標的物体を配向するためのホイールを備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記標的物体が、磁性材料を組み込んだピストンをさらに含み、
前記ピストンは、前記装置からの磁場に曝されたときに、前記ペイロードを前記空洞から排出するように動作する、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記空洞が、前記ペイロードが前記空洞から前記内腔に排出される開口部を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記ピストンが、前記ペイロードが前記空洞から前記内腔に排出される開口部を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記標的物体が、前記開口部上の膜をさらに含み、前記膜が、所定の破裂圧力で破裂するように構成され、それにより、前記ピストンが少なくとも前記所定の破裂圧力と同じくらい大きい圧力を加えたときに、前記ペイロードを前記空洞から前記内腔に排出する、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記標的物体が、前記開口部上の膜をさらに含み、
前記膜が、所定の破裂圧力で破裂するように構成され、それにより、前記ピストンが少なくとも前記所定の破裂圧力と同じくらい大きい圧力を加えたときに、前記ペイロードを前記空洞から前記内腔に排出する、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記装置は、
前記標的物体からのペイロードを操作するための、前記空洞内のピボット可能なスクープと、
そのためのアクチュエータと、を含み、
前記ピボット可能なスクープは、前記アクチュエータによって前記空洞内で閉じられると、前記ペイロードを前記空洞内に保持し、
前記ピボット可能なスクープは、前記アクチュエータによって空洞から開かれると、前記ペイロードを前記空洞から前記内腔に排出し、
前記アクチュエータは、前記装置からの磁場に曝されたときに前記ピボット可能なスクープをピボットするように動作する磁性材料を組み込んでいる、請求項13に記載の装置。
【請求項28】
前記標的物体を磁気的に制御することは、前記標的物体を前記内腔の内壁に固定するための前記標的物体内のアンカーを制御することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記標的物体の前記アンカーが、
前記内腔の前記内壁を貫通してねじ込むための固定貫通ねじ部材であって、これにより、前記標的物体を前記内腔の前記内壁に固定する、固定貫通ねじ部材と、
前記装置からの回転磁場に曝されたときに前記固定貫通ねじ部材にトルクを加えるように作動する永久磁石を組み込んだねじアクチュエータであって、これにより、前記固定貫通ねじ部材が前記内腔の前記内壁にねじ込まれ、それによって前記標的物体を前記内腔の前記内壁に固定する、ねじアクチュエータと、を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記ねじアクチュエータが、前記固定貫通ねじ部材に直接組み込まれている、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記ねじアクチュエータが、前記装置からの逆回転磁場に曝されたときに、前記固定貫通ねじ部材に逆トルクを加えるようにさらに動作可能であり、それにより、前記固定貫通ねじ部材は前記内腔の前記内壁から抜かれ、よって前記内腔の前記内壁から前記標的物体を解放する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記装置からの前記回転磁場が、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有さない、請求項29に記載の装置。
【請求項33】
前記装置からの前記回転磁場が、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有さない、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
前記装置からの前記回転磁場が、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有さない、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記装置からの前記回転磁場が、前記回転磁場の軸に沿って前記ねじアクチュエータに力を加えるために、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有する、請求項29に記載の装置。
【請求項36】
前記装置からの前記回転磁場が、前記回転磁場の軸に沿って前記ねじアクチュエータに力を加えるために、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有する、請求項30に記載の装置。
【請求項37】
前記装置からの前記回転磁場は、前記回転磁場の軸に沿って前記ねじアクチュエータに力を加えるために、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有する、請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記標的物体が、前記ペイロードを放出するためのねじアクチュエータを含み、
前記ねじアクチュエータは、前記装置からの回転磁場に曝されたときに前記ねじアクチュエータにトルクを加えるように動作する永久磁石を組み込んでいる、請求項5に記載の装置。
【請求項39】
前記装置からの前記回転磁場は、前記回転磁場の軸に沿って前記ねじアクチュエータに力を加えるために、前記回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有する、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
生物学的媒体に移植し、外部磁気制御システムによる制御に応答するための内部装置であって、
デバイス軸に沿って互いに線形相互接続された複数の磁気要素を含み、それによって前記複数の磁気要素のそれぞれが、少なくとも1つの他の要素および最大で2つの他の要素に隣接して接続され、
隣接する前記磁気要素の各対は、非磁性の可撓性コネクタによって相互接続され、
前記複数の磁気要素のそれぞれは、
前記外部磁気制御システムによる制御に関連する機能、および、
前記外部磁気制御システムとのデータ通信に関連する機能、からなる群から選択される少なくとも1つの所定の機能を有する、内部装置。
【請求項41】
前記外部磁気制御システムによる制御に関連する機能が、
前記生物学的媒体内の前記内部装置の線形運動に関連する機能、
前記磁気要素の角運動に関連する機能、
前記内部装置の角運動に関連する機能、
隣接して接続された磁気要素への前記磁気要素の接続に関連する機能、
前記内部装置を前記生物学的媒体内の特徴部に固定することに関連する機能、
前記生物学的媒体内の特徴部から前記内部装置の固定を解放することに関連する機能、および、
前記磁気要素によって運ばれるペイロードの放出に関連する機能、からなる群から選択される、請求項40に記載の内部装置。
【請求項42】
前記外部磁気制御システムとのデータ通信に関連する機能が、
前記磁気要素の制御に関連する前記外部磁気制御システムからデータを受信すること、
前記内部装置の制御に関連する前記外部磁気制御システムからデータを受信すること、
前記磁気要素の状態に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記内部装置の位置に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の特徴部へ前記内部装置を固定することに関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の特徴部から前記内部装置の固定を解放することに関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記磁気要素の角度配向に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記内部装置の角度配向に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記内部装置の速度に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記磁気要素の角速度に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記生物学的媒体内の前記内部装置の角速度に関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、
前記磁気要素によって運ばれるペイロードに関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、および、
前記磁気要素によって放出されたペイロードに関連するデータを前記外部磁気制御システムに送信すること、からなる群から選択される、請求項40に記載の内部装置。
【請求項43】
前記複数のうちの少なくとも1つの磁気要素が、運動に関連する所定の機能を有し、
前記複数のうちの少なくとも1つの磁気要素が、ペイロードの放出に関連する所定の機能を有する、請求項40に記載の内部装置。
【請求項44】
前記所定の機能が運動に関連し、
前記磁気要素が、磁化軸を備えた永久磁石を含み、
前記永久磁石が、前記装置の装置軸と前記磁化軸の両方に直交する回転軸の周りを回転するように動作する、前記請求項41に記載の内部装置。
【請求項45】
磁気要素は、他の磁気要素の前記装置軸の周りの回転とは無関係に、前記装置軸の周りを回転するように動作する、請求項40に記載の内部装置。
【請求項46】
前記所定の機能は、前記磁気要素によって運ばれるペイロードの放出に関連し、前記磁気要素が前記ペイロードを排出するように動作する半径方向に磁化された送りねじを含む、請求項41に記載の内部装置。
【請求項47】
内腔内の標的物体を磁気的に制御するための装置であって、
同様の寸法および対応する同様の面を有し、それらのそれぞれの同様の面に配置された同様の極を有する少なくとも2つの永久双極子磁石と、
ヨークであって、前記ヨークが、磁気回路を完成させることができ、前記ヨークの第1の面の開口部から前記ヨークの反対側の面の開口部まで前記ヨークを通る通路を有する材料を組み込み、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石が、互いに隣接する前記ヨークに可逆的に固定されており、それにより、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石の同様の極面が、前記ヨークの同じ単一面と接触して可逆的に固定され、
磁石間空間が前記少なくとも2つの永久双極子磁石を分離するように、前記少なくとも2つの永久双極子磁石が前記ヨークの第1の面上の位置で前記ヨークに可逆的に取り付けられており、
前記少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの反対の極面が、前記磁石間空間によって露出、隣接、および分離されている、ヨークと、
前記磁石間空間に配置され、前記ヨークを通る通路を横断することができる可動の対向する永久双極子磁石と、を含む、装置。
【請求項48】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの極配向が平行であり、前記対向する永久双極子磁石が、その極配向が、前記少なくとも2つの永久双極子磁石の極配向と反平行的に配向される、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの極配向が逆平行である、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記少なくとも2つの永久双極子磁石が前記ヨークの第1の面に沿ってスライド可能である、請求項47に記載の装置。
【請求項51】
前記2つの永久双極子磁石のうちの少なくとも1つが回転するように構成され、それによってその極配向を反転させる、請求項47に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的マトリックス内に挿入された内部装置の遠隔制御のための外部生成磁場の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途では、生物学的マトリックス内に挿入された内部装置の動きおよび/または機械的動作を制御することがしばしば必要であり、その非限定的な例は「内腔」である。
【0003】
内部装置の医学的使用には、治療的、外科的、および診断的、ならびにそれらの任意の順序または組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。この問題で制御する必要があり得る内部装置の非限定的な例には、ステント、カテーテル、マイクロロボット、マイクロポンプ、「スマートピル」、画像化のための基準マーカー、センサー、および放射性プラークが挙げられる。
【0004】
この分野での主な課題は、堅牢で、用途が広く、信頼性が高く、効率的で、費用効果が高く、安全な方法で、内部装置の動きと操作を遠隔制御できるようにすることである。この目標は、本発明の実施形態によって成し遂げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、遠隔適用される磁場および遠隔制御機構を提供し、生物学的マトリックス内の内腔または同様の領域内の内部装置の動きおよび機械的動作の無線制御を可能にする。本明細書に開示される実施形態は、内腔を参照して説明されるが、内腔に関するそのような説明は非限定的であり、生物学的マトリックスの他の特徴内の内部装置を遠隔制御することも、該当する場合、代替の実施形態が適用されることが理解される。
【0006】
本明細書で使用される用語:
【0007】
・本明細書における「生物学的マトリックス」という用語は、生物標本またはその一部を意味し、これには、種、生きているか死んでいるか、および活性、鎮静、または麻酔されているかどうかに関係なく生物(および医学的検査中のそのような生物、診断、および/または治療は、本明細書では「患者」とも呼ばれる)生物学的器官、組織、胚性物質など、幾何学的領域を占め、1つ以上の内部空間をその外部空間から分離する境界を有する生物学的生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
・本明細書における「内腔」という用語は、周囲の外壁または表面を有する管状器官または同様の構造物の内部空洞として概略的に説明された生物学的チャネルを意味する。内腔を有する生物学的構造物の非限定的な例には、血管、くも膜下腔、および胆管が含まれる。
【0009】
・本明細書の「外壁」という用語は、内腔を取り囲む管状または同様に配置された組織を意味するか(「内腔の外壁」のように;非限定的な例では、動脈の組織は、本明細書では「動脈の内腔の外壁」と呼ばれる)、または、文脈に応じて、本明細書における「外壁」はまた、内腔を取り囲む管状または同様に配置された組織の内面を指す。
【0010】
・内腔を取り巻く外壁組織が均一である必要はなく、組織が不均一で内腔内の場所ごとに異なる場合には、別個の「外壁側」を別個に識別することができる。
【0011】
・本明細書における「内部装置」という用語は、生物学的マトリックスの外部の製造された構造物を意味し、これは、その中に挿入され、生物学的マトリックスの外部の領域から遠隔制御可能であり、材料またはその製造に関係なく、機械的または分子的構造であるかどうか、および構成要素からの組み立て、印刷、合成、または他の物理的および/または化学的および/または生物学的手段によって作成されるかどうかに関係なく、そのような構造物を示す。
【0012】
・「外部」という用語は、さらなる修飾なしに使用される場合、本明細書では、特定の生物学的マトリックスの境界の外側の領域を示し、形容詞として使用される場合、その修飾名詞がそのような領域に位置することを示す。
【0013】
したがって、本発明の一実施形態によれば、(a)内腔内の標的物体を磁気的に制御するための装置が提供され、本装置は、(b)同様の寸法および対応する同様の面を有し、それらのそれぞれの同様の面に配置された同様の極を有する少なくとも2つの永久双極子磁石と、(c)磁気回路を完成させることができる材料を組み込んだヨークと、を含み、(d)少なくとも2つの永久双極子磁石が互いに隣接してヨークに取り付けられることで、(e)少なくとも2つの永久双極子磁石の同様の極面がヨークの同じ単一面と接触して取り付けられ、(f)磁石間空間が少なくとも2つの永久双極子磁石を分離するように、少なくとも2つの永久双極子磁石がヨークの同じ片面上の位置でヨークに取り付けられており、(g)少なくとも2つの永久双極子磁石のそれぞれの反対の極面が、磁石間空間によって露出され、隣接し、そして分離されている。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、生物学的媒体に移植し、外部磁気制御システムによる制御に応答するための内部装置が提供され、内部装置は、装置軸に沿って複数の線形相互接続された磁気要素を含むことで、複数の磁気要素のそれぞれが、少なくとも1つの他の要素および最大で2つの他の要素に隣接して接続され、隣接する磁気要素の各対は、非磁性の可撓性コネクタによって相互接続され、複数の磁気要素のそれぞれは、外部磁気制御システムによる制御に関連する機能、および外部磁気制御システムとのデータ通信に関連する機能からなる群から選択される少なくとも1つの所定の機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
開示された主題は、添付の図面とともに読むときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0016】
【
図1】
図1は、別個の外壁側面を有する内腔と、外部磁石によって制御されるその中の内部装置を概略的に示している。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施形態による外部磁気システムの様々な構成を示している。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態による、外部磁石に対する内腔および内部装置位置の断面(xz平面)を示している。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態による、外部磁石の調整動作を示している。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態による、内部装置からのペイロード放出の機構を示している。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施形態による、内部装置からのペイロード放出の機構を示している。
【
図11C】
図11Cは、本発明の実施形態による、内部装置からのペイロード放出の機構を示している。
【
図11D】
図11Dは、本発明の実施形態による、内部装置からのペイロード放出の機構を示している。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態による、内腔の外壁に内部装置を固定するための機構を示している。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による、非磁性の可撓性コネクタによってそれらの間のペイロード放出要素に接続された2つの磁気構成要素を備えた内部装置を示している。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態による、標的に到達すると方向を反転させる移動する内部装置を示している。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態による、2つの磁気構成要素およびそれらの間に空洞を有する内部装置を示す。
【
図16】
図16は、
図8に対応する磁気システムの実施形態について、平衡力および平衡角度の分布を示している。
【
図17A】
図17Aは、本発明の実施形態による内部装置の様々な構成を示している。
【
図17B】
図17Bは、本発明の実施形態による内部装置の様々な構成を示している。
【
図17C】
図17Cは、本発明の実施形態による内部装置の様々な構成を示している。
【
図17D】
図17Dは、本発明の実施形態による内部装置の様々な構成を示している。
【
図17E】
図17Eは、本発明の実施形態による内部装置の様々な構成を示している。
【0017】
図を簡潔かつ明確にするために、図に示されている要素は、一定の縮尺に従って描かれておらず、いくつかの要素の寸法は他の要素に比べて誇張されている場合がある。さらに、本文中に図示および/または開示されている寸法は、例示的かつ非限定的であり、典型的には、本発明の実施形態ごとに異なる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
内部装置は、最初に挿入プロセスを介して内腔に導入される。挿入機構はよく知られており、注射と摂取が含まれますが、これらに限定されない。内腔に挿入した後、前述の品質を有する方法で、内部装置の動きおよび機械的動作を遠隔で制御することが望ましい。
【0019】
いくつかの用途では、解剖学的理由から、内部装置が内腔の特定の外壁側に沿って移動することが望ましい。非限定的な例では、くも膜下腔内で、内腔の一方の側が硬膜であり、もう一方の側が軟膜である。軟膜は硬膜よりも繊細であるため、くも膜下内腔内の内部装置は、硬膜に関連する外壁側に近接したままであり、軟膜に関連する外壁側に近づいたり接触したりしないようにすることが望ましい。本発明の特定の実施形態に関する議論では、内腔の「好ましい外壁側」を「サイドA」とし、対向する外壁側を「サイドB」と記す。
【0020】
特定の実施形態では、磁気構成要素(永久磁石または強磁性材料など)が内部装置に埋め込まれている。
【0021】
これらの実施形態によれば、内部装置をサイドAに近づけたままにするために、外部磁気装置は、生物学的マトリックスの外側、サイドBよりもサイドAに近い位置に配置される。外部磁気装置は、内部装置を引き付け、サイドAの近くに保たせる。
【0022】
図1に示すように、領域全体が直線に近い内腔の場合、外部磁石を内腔のできるだけ近くで外壁に位置させ、外部磁石をA側に沿った方向に移動させることで、磁気相互作用により内部装置がA側に沿って動き、それによって内部装置の動きが制御される。
【0023】
ただし、実際の状況では、通常、様々な複雑な要因が存在することに注意されたい。
・内腔は湾曲していてもよい。
・解剖学的制約により、内腔と外部磁石の間の距離は下から制限される場合がある(外部磁石は生物学的マトリックスの外側にあるため、内腔に任意に近づけることができない)。
・内腔の外壁は、不規則であるか、または内部装置に付着している可能性があり、内部装置の滑らかなスライド運動を妨げる可能性がある。
・内腔の外壁は、特定の生物学的または解剖学的特徴を含み得、医学的理由(例えば、特定の血管または神経束)のために内部装置が接触するのを避けるべきである。
・内腔は不連続である場合もあれば、分岐を含む場合もある。
・内部装置のアスペクト比(長さ/幅)は、内腔の最小寸法と同等で有り得、その結果、内部装置の特定の空間的向きにより、装置が粘着し、内腔がブロックされ、それ以上の動きが困難または不可能になる可能性がる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、上記の制限を克服して、内腔内の湾曲した軌道に沿った内部装置の移動を可能にし、外壁の不規則性および/または接着を説明し、異なる内腔分岐部に沿った移動を提供し、内部装置と外部磁石の間の非ゼロ距離を説明し、内腔内の内部装置の空間的配向の制御を提供する。
【0025】
このさらなる実施形態は、以下の特徴に依存している。
・内部装置には、事前定義されたNS磁化方向を持つ磁気構成要素が埋め込まれている。
・外部磁気システムは、所定の空間構成で組み立てられた複数の永久磁石を含む。関連する実施形態は、追加の強磁性ヨーク(非限定的な例では、鉄または磁性ステンレス鋼製)を提供する。
・外部磁気システムの様々な構成要素の磁化ベクトルの組み合わせにより、内部装置上に合成された力ベクトルおよび合成されたトルクベクトルが生成され、内部装置の運動方向およびその3次元空間方向の両方を制御することができる。
【0026】
非限定的な例では、内腔は、皮膚表面から約30mmの距離に位置するくも膜下腔である。非限定的な例示の目的のために、内部装置は、直径0.8mmおよび高さ0.8mmの円筒形である。
【0027】
Y-Z平面での動き
【0028】
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、および
図8は、本発明の実施形態による、外部磁気システムの様々な構成を示している。使用される寸法、形状、および材料は、実施形態によって異なる。これらすべての図で、内部装置はy軸に沿って水平磁化を持っていると見なされる。
【0029】
図2A、
図3A、および
図4Aは、
図2、
図3、および
図4に示される構成にそれぞれ従って、システムの幾何学的パラメータの異なる値に対して、内部装置上で動作する力ベクトルを推定するシミュレーションの結果を示している。見られるように、本発明の実施形態の磁気システムは、y軸に沿った外部磁気システムに対する内部装置の位置を変化させることによって、2次元(y-z)で磁力ベクトルの可変制御を提供する。これにより、内部装置に様々な程度の水平方向と垂直方向の力とトルクのベクトルが提供される。
【0030】
本発明の他の実施形態では、内部装置に作用する可変トルク/力ベクトルは、外部磁気システムに対する内部装置の位置を変える代わりに、またはそれに加えて、外部磁気システムの内部構成を変えることによって生成することができる。
図8は、内部装置が配置されている動作領域内の磁場の方向および強度を調整するために、外部磁気システム(磁石3)のサブ構成要素の制御された動きを提供する構成を示している。
図8Aは、内部装置に外壁に向かって純粋な引っ張り力を加え、それによってそれが移動するのを阻止する関連する実施形態の構成を示している。外部磁気システムの構成を
図8Bに示すものに変更すると、内部装置に純粋に水平方向の力が加えられる。
【0031】
関連する実施形態によれば、内部装置の運動の方向は、外部磁気システム構成要素の互いに対する向きを変えることによって逆転させることができる。非限定的な例では、
図8では、磁石1、2、および3は、右から左への動きを達成するために垂直に反転されるであろう。別の関連する実施形態では、長さパラメータC(
図2)は、右から左への動きを達成するように調整される。さらに別の実施形態では、これは、パラメータを動的に変更することによって行われ、さらなる実施形態は、外部磁気システムのための2つの異なる構成を提供し、左から右または右から左への動きのために、必要に応じてそれらの間で交互にする。
【0032】
別の実施形態では、内腔内の内部装置は、Y-Z平面に可変トルクを加えることによって、外部磁気システムに対して反転される。
【0033】
上に開示したように、本発明の様々な実施形態では、Y-Z力ベクトルの方向は、内部装置に対してy軸に沿って外部磁気システムを動かすことによって正確に制御される。これにより、ライブフィードバックループと動きの方向の変更に基づいて内部装置の動きを動的に制御し、内腔の外壁で発生する不規則性や分岐などを克服する。
【0034】
X軸に沿った動き
【0035】
特定の条件下では、内腔内のx軸に沿った横方向の動きを制御することが望ましい場合がある。非限定的な例では、
図9は、内腔の断面を示しており、星は、内部装置の可能な所望の位置を示している。上記のケースは、A位置(内部装置が外部磁石に最も近い)での内部装置の動きを示している。1つの特定のシナリオでは、内腔の中心から見て、点Aから120°離れて位置するBまたはC位置に内部装置を移動させることが望ましい。本発明の一実施形態によれば、これは、磁石を回転させて内部装置に面するようにしながら、外部磁気システムをx軸に沿って移動させることによって達成される(
図10を参照)。
【0036】
さらなる実施形態によれば、上に開示されたように、Y-Z軸における力/トルクのベクトルを変更することにより、内部装置は、内腔内の外壁を「登る」。
【0037】
ペイロード放出
【0038】
特定の医療用途では、遠隔制御されたトリガーを介して、内腔内の事前定義された位置にある内部装置からペイロードを放出することが望ましい。ペイロードの非限定的な例には、治療物質(例えば、薬物)および診断補助剤(例えば、放射性同位元素、画像コントラスト増強物質など)が挙げられる。本発明の実施形態による磁気システムは、1つ以上の埋め込まれたペイロードを含む内部装置内の1つ以上の空洞を使用することによって、ペイロード放出を提供する。
図11Aは本発明のある特定の実施形態による構成を示し、空洞がペイロードを運ぶ空洞が内部装置の2つの永久磁気区画の間に埋め込まれ、内部装置が内腔外壁に接触するホイール上に配置される。ペイロード空洞内には、自由に動く磁気構成要素(永久磁石または強磁性材料)があり、
図11Aで黒い楕円としてマークされている。このような構成要素は、本明細書では「磁気ピストン」と呼ばれる。
図11Aに概略的に示されているように、垂直方向の引力が外部磁気システムによって内部装置に加えられると、自由に動く磁気ピストンがペイロードを空洞の外側に押し出す。関連する実施形態では、ペイロードは、膜によって密封され、磁気ピストンからそれに加えられる圧力が膜を破裂させるのに十分大きい場合にのみ破られる開口部を備えた空洞に包まれている。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、そのような磁気引力は、内部装置を停止するのと同じ機構によって生成され、そして、この力の強さは、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、外部磁気システムを内部装置に近づけたり遠ざけたりすること、および/または外部磁気システムの内部構成要素を操作することによって調整される。
【0040】
本発明の様々な実施形態において、内腔内の内部装置の効果的な運動のための力閾値は、本明細書ではF1として定義され、ペイロード放出のための力閾値は、本明細書ではF2として定義される。
【0041】
通常の内部装置の動作中に、ペイロードの制御されていない、または意図しない放出を防ぐことが重要である。したがって、本発明の特定の実施形態は、線形運動およびペイロード放出のために直交ベクトルを利用する、すなわち、ベクトルF
1およびF
2は直交している(例えば、
図1に従って、ペイロード放出トリガーをxz平面に拘束しながら線形運動をy軸に拘束することによる)。特定の他の関連する実施形態では、システムは、ペイロード放出のための力の大きさの閾値がF
2|≫|F
1|となるように構成される。特定の実施形態では、これは、F
1を最小化することによって(例えば、ホイール、潤滑コーティング、および流体力学的流線化を用いて、外壁摩擦および内腔液体含有量の粘性抵抗を低減することによって)、および/またはF
2を増加させることによって(例えば、ペイロード空洞をシールする膜、空洞の開口部のサイズを小さくする、または磁気ピストンの磁気モーメントを下げる)達成される。関連する実施形態では、ペイロード放出は、単一の時間での総ペイロード放出のために、F
2の単一パルスで達成され、別の関連する実施形態では、ペイロード放出は、漸進的または連続的なペイロード放出のためのF
2の複数のパルスの過程に渡って達成される。
【0042】
図11Bおよび
図11Cは、外部磁気システムに向かう方向だけでなく、異なる方向にペイロード放出を提供する本発明の実施形態による、内部装置内のペイロード空洞構成を概略的に示す。ペイロードは、必ずしも外部磁石に向かってではなく、特定の解剖学的特徴が配置されている内腔の特定のセクションに向かって放出される必要がある場合があるため、この柔軟性は望ましい。非限定的な例では、
図9に示されるように、内腔内の点Bおよび/またはCに向かってペイロードを放出することが望ましい場合がある。
【0043】
他の実施形態によれば、内部装置の空洞から液体またはゲルのペイロードを押したり排出したり、または固体のペイロードを堆積させたりするために、同じ機構に複数の機械的バリエーションが提供される。非限定的な例では、
図11Dは、外部磁気システムに向かって引張り力を使用して、内部装置から固体ペイロード(カプセル)を放出するための機構を示している。
【0044】
図14は、本発明の実施形態による、一方向(この実施例では右から左)に移動し、標的に到達すると方向を反転させる内部装置を示している。いくつかの実施形態では、これは、外部磁石の向きを機械的に反転させることによって達成される(この実施例では垂直に)。いくつかの実施形態では、これは、反対の(この実施例では垂直の)磁化を有する新しい外部磁石を導入することによって達成される。内部装置内のピストンがすぐにペイロードを排出し、装置が逆方向(この実施例では左から右)に移動し始める。
【0045】
固定
【0046】
特定の医療用途では、以下を含むがこれらに限定されない目的のために、内腔の外壁に内部装置を固定することが望ましい。
・後続の医療処置の基準マーカーとして、医用画像システムではっきりと見える内部装置を使用する。
・内部装置からのペイロードの時限的および/または段階的な放出。
・特定の生化学的マーカーを監視する。
・データの収集および/または感覚活動の検出。
・内部装置を治療機器として使用して様々なタイプの治療を可能にする(例えば、熱焼灼、電気刺激、放射線療法)。
・内腔に導入される他の医療構成要素(例えば、カテーテル)のためのアンカーポイントを提供する。
【0047】
本発明の特定の実施形態は、外壁組織を貫通し、内部装置を外壁に固定する固定構成要素を展開する外壁に向かって引力を加えることによって、内腔の外壁に内部装置を制御可能に固定するための磁気手段(埋め込まれた永久磁石または強磁性構成要素を有する)を提供する。他の実施形態によれば、内部装置は、ペイロード放出および固定を含む複数の機能を提供する。
【0048】
これらの実施形態によれば、固定構成要素を固定するための力閾値は、本明細書ではF3として定義され、固定を放出するための力閾値は、-F3として概算される。前述の実施形態と同様の方法で、これらの本実施形態によれば、システムは、固定が線形の原動力に耐えること、および通常の動作中に意図しない固定がないことを保証するために、F3|≫|F1|に構成される。同様に、|F2|≫|F3|≫|F1|は、制御されたモーション、続く制御されたアンカー、続く制御されたペイロード放出のシーケンスを支援する。
【0049】
本発明の特定の実施形態は、内腔外壁の組織を貫通して固定するための貫通ねじ運動を提供する。
図12は、貫通構成要素が、内腔の外壁に面する、コルク栓抜きまたは積極的にねじ切りされた乾式壁ねじの形状に類似したらせん形状を有するシステムの非限定的な例を示す(
図12A)。関連する実施形態では、固定要素は、固定された水平磁化を有する2つの永久磁石の間の内部装置の内部に配置されている。上記のように、固定構成要素は磁気を帯びています。永久磁石が使用される実施形態では、それは半径方向に磁化される(すなわち、ねじの対称軸に直交する)。外壁に向かう引力が発生すると、固定構成要素が内部装置から出て、外壁を押して貫通する(
図12B)。同時に、外部磁気システムは外壁に接する平面で回転し、それによって対称軸に沿った引力に加えて、対称軸の周りのアンカー要素に回転トルクを誘発し、それを効果的にねじ込みます内腔の外壁に挿入し、それによって内部装置を外壁の内側に固定する。
【0050】
特定の実施形態によれば、固定手順は、内腔外壁から離れて内部装置に反発力を加え、外部磁気システムを反対方向に回転させることによって可逆的であり、それにより、放出可能に固定可能な内部装置を提供する。
【0051】
非磁性フレキシブルコネクタで相互接続された磁気要素を備えた内部装置
【0052】
本発明の実施形態によれば、内部装置は、非磁性の可撓性コネクタによって接続された一組の磁気要素からなる。要素は、装置の動き、ペイロードの放出、または内腔壁への固定など、複数の機能を持つことができる。
【0053】
図13は、2つの磁気構成要素とその間にペイロード放出要素があり、この実施例ではy軸に沿って移動する内部装置を示している。磁気構成要素は、非磁性軸を中心に自由に回転する永久磁石で構成されている。この実施例の回転軸は、z軸に平行である(つまり、内腔壁に直交している)。永久磁石の磁化は、定義上、y方向の運動である。ペイロードキャリアは、ペイロードで満たされた非磁性ケーシングで構成され、ケーシングの壁の穴に面した「アルキメデスねじ」または送りねじが組み込まれている。ねじの磁化は、xy平面で放射状である。装置がy方向に移動している間、すべての磁気構成要素はy軸の方向に整列する。装置が停止すると、外部磁場がxy平面で回転し始める。この実施例では、各磁気構成要素がその軸を中心に回転する(装置全体がその軸を中心に回転するのではない)。内腔が狭いため、この方法では、装置が内腔を横切って動かなくなるのを防ぐ。同時に、ペイロード放出要素は、ケーシング壁の穴に面する放射状に磁化されたねじを含む。ねじが回転すると、ペイロードがケーシングの外側に排出される。
【0054】
装置のすべての動きについて、装置構成要素に作用する力とトルクはほぼ同じであることに留意されたい。そのため一斉に動くであろう。
【0055】
この構成の隣接する要素間の距離は、異なる磁気要素が互いに影響を与えないように(つまり、互いにくっついたり、互いにトルクをかけたりしないように)、特定の最小閾値を超えて維持する必要がある。これは、隣接する要素間のコネクタとして非磁性の弾性ばねを使用することで実現することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ペイロード放出要素の代わりに、実際のねじ(送りねじではない)を備えた固定要素があり、要素を内腔壁に固定することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、回転外部磁場は、回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有さない。いくつかの実施形態では、回転外部磁場は、回転磁場の軸に沿ってねじに力を加えるために、回転磁場の軸の方向に磁場勾配を有する。いくつかの実施形態では、ねじ機構を逆回転方向に使用して、要素を外側から内側に「吸い込む」か、またはねじを内腔壁から可逆的に切り離すことができる。
【0058】
図15は、本発明の実施形態による、この実施例ではy軸に沿って移動する2つの磁気構成要素およびそれらの間に空洞を有する内部装置を示す。2つの磁気構成要素にはそれぞれ、半径方向に磁化された自由に回転する丸い磁石が含まれている。2つの磁石の反対の極が向かい合って引力を生成する。2つの磁気構成要素は空洞によって分離されている。空洞の内部には、ペイロードと、2つの磁気構成要素を押し離す柔軟な非磁性スプリングがあります。ただし、y方向(内腔に平行)の運動の場合、2つの磁気構成要素内の2つの磁石の対向する極が互いに引き付けられ、それらは磁気構成要素をはじくばねの力よりも強い力を生成する。その結果、2つの磁気構成要素は互いに近接したままになり、ペイロードが空洞から逃げるのを防ぐ。磁場の方向が変わると(この実施例ではz軸に沿って下向き)、2つの磁気構成要素内の自由に回転する磁気要素が回転する(この実施例では下向きになる)。現在、それらの類似した極は互いに近接しているため、引力ではなく反発力を生成する。その結果、磁気構成要素は互いに押しのけ、それらの間の空洞が開き、それによってペイロードが放出される。磁場が左(装置の運動方向を逆にする)または右(装置の運動方向に沿って継続)に回転すると、内部装置は初期構成に戻る。
【0059】
内部装置は、様々な力と様々なトルクの両方に曝されることに注意する必要があり、これにより、内腔内の内部装置に埋め込まれた内部磁石の向きが変わる可能性がる。内部装置の磁気構成要素が自由に回転している場合(たとえば、シェル内で自由に回転している球形の磁石)、これは、磁石がそれに作用するトルクがゼロに等しくなる平衡位置まで回転している間、この外部シェルは回転しないことを意味する。内部装置のシェルが内部磁石に固定されている場合、トルクは装置全体に作用する。状況に応じて、どちらの状況も利用することができる。例えば、(内腔内の装置の向きに関係なく)内部装置に特定の力を加えることが望まれる場合、装置は、その内部に自由に回転する磁石を備えていてもよい。あるいは、装置の空間的向きの変更(例えば、装置を対角線上に向ける)が望まれる場合、内部磁石を装置に取り付けることができる。
【0060】
また、自由に回転する内部磁石に作用する瞬間的な力は、同じ磁石に作用する平衡力(つまり、トルクがゼロのときに磁石に作用する力)とは異なることに注意する必要がある。これは、最初は内部装置が平衡位置にない可能性があるためである。自由に回転する内部磁石に作用するトルクがゼロの場合、y平面を基準とした内部磁石の角度を平衡角度とする。
【0061】
外部磁気システムによって生成される磁場(力とトルク)の空間分布は、内腔内で不均一である。その結果、平衡力と平衡角度は内腔の各ポイントで異なる。定義上、装置が外部磁気システムに対して点Aに配置され、外部磁気システムを基準にして移動している場合、装置は瞬時に新しい点Bに移動し、装置に作用する力とトルクは点Aではことなるであろう。磁気システムを注意深く設計することにより、力とトルクの特定の空間分布を作成でき、内部磁石のより良い運動制御を可能にする。特に興味深いのは、内部磁石がその望ましい運動軌道から逸脱しないことを保証する力/トルク分布である。
【0062】
例えば、
図16は、
図8に対応する磁気システムの特定の実施形態について、平衡力および平衡角度の分布を示している。力の単位はmN、距離の単位はmmである。この特定の構成では、負の水平力はY<0(外部磁気システムの対称軸でY=0と仮定)の領域で達成でき、正の水平力はY>0の領域で達成できます。これにより、効果的な双方向水平運動制御が可能になる。また、この特定の構成でYが大きくなると、平衡力のZ構成要素は強く負になり、Y構成要素はゼロに近づき、装置を内腔壁に外部磁石に最も近で効果的に接続し、装置の発散を防止する(つまり、制御理論の命名法における負のフィードバックループ)。これにより、装置のモーションコントロールの信頼性が高まる。同じ現象がY<0領域で対称的に見られる。
【0063】
内部磁石と磁気制御システムの間の距離が小さくなると、Z力成分は強く負になり、Y成分はゼロに近くなることに注意されたい。これにより、Zモーションの効率的な制御が可能になり、制御システムに最も近い内腔表面から装置がドリフトするのを防ぐ。
【0064】
Y=0線付近の平衡角は約-90度であることに注意されたい。これは、自由に回転する磁石が内腔壁に対して直交するように配向されることを意味する。これは、この構成で自由に回転する磁石を使用することが重要である理由を再び強調している。
【0065】
特定のシナリオでは、自由に回転する磁石を水平に向けて(つまり、平衡度0で-90ではなく)再配置してから、様々なアクティビティのためにxy平面で回転させることが望ましい場合がある。このような活動には、装置を内腔壁に固定すること(
図12を参照)、または送りねじ機構を使用して装置からペイロードを排出すること(
図13を参照)が含まれ得る。
図17A~17Dは、外部磁気制御システムの構成を機械的に操作することによってこれをどのように達成できるかを示している。
【0066】
図17Aは、
図8に対応する初期構成を示しており、4つの外部磁気構成要素がそれぞれ番号1、2、3、および4で示されている。大きな矢印は磁石1~3の磁化方向を示しています。外部磁気システムの上の緑色の矢印は、内腔内の内部磁石の平衡角度を示しています(最初は-90度)。構成要素4(ヨーク)の白い点線は、構成要素3(中央の磁石)が構成要素4を介して機械的に動くことを可能にする穴を示している。
【0067】
まず、磁石1と2を機械的に横に動かし、磁石3によって生成された勾配によって内部磁石を所定の位置に保持する(
図17Bを参照)。次に、磁石2がxz平面で回転し、その磁化が垂直に反転する。これは、磁石2が他のシステム構成要素から離れているため(力とトルクを最小限に抑える)、機械的に簡単に実行できるようになった(
図17Cを参照)。
【0068】
次に、磁石3がヨーク4の穴を通って押し下げられ、同時に磁石1および2をそれらの初期位置に近づけさせる。これで、内部磁石は磁石3ではなく磁石1および2の影響を強く受ける。その結果、平衡角が変化する(
図17Dを参照)。
【0069】
最終構成(
図17E)では、磁石3はヨーク4の下に配置され、内部磁石に力を加えない。内部磁石は外部磁気システムに向かって引き下げられ、その平衡角は必要に応じて0になる。この状況では、外部磁気制御システムは必要に応じてxy平面で回転する。プロセスは可逆的であることに注意されたい(つまり、必要に応じて構成17Aに戻すことができる)。
【国際調査報告】