(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】1成分ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 183/08 20060101AFI20220815BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20220815BHJP
C09D 177/00 20060101ALI20220815BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20220815BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220815BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D175/02
C09D177/00
C09D7/40
C08L77/00
C08L75/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573482
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020037825
(87)【国際公開番号】W WO2020252490
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517405976
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イエッツィ,エリック,ビー.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BB033
4J002CK011
4J002CL032
4J002DL007
4J002EZ049
4J002FA043
4J002FA087
4J002FA106
4J002FD098
4J002FD159
4J002GT00
4J038CG002
4J038DA162
4J038DG002
4J038DG052
4J038DG062
4J038DG181
4J038DG262
4J038DH001
4J038DL081
4J038HA216
4J038HA486
4J038KA08
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA09
4J038NA14
4J038PA06
4J038PA20
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
有機シランポリマー、ポリアミドポリマー、および摩耗骨材を有する組成物が開示される。有機シランは、アミノ官能性アルコキシシランを1つ以上のポリイソシアネートと反応させて未反応のイソシアネート基を有する1つ以上の付加物を形成することと、ポリマーが未反応のイソシアネート基を含有しないように付加物を1つ以上の多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物と反応させること、によって作られる。多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物は、脂環式基または芳香族基を有する。組成物は、ローラー、スプレー、または鏝によって塗布され、かつ大気中の水分で硬化する、1成分ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティングを作るために使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シランポリマーであって、
アミノ官能性アルコキシシランを1つ以上のポリイソシアネートと反応させて未反応のイソシアネート基を有する1つ以上の付加物を形成することと、
前記ポリマーが未反応のイソシアネート基を含有しないように前記付加物を1つ以上の多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物と反応させることであって、前記多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物は、脂環式基または芳香族基を含む、反応させること
を含む方法によって作られた有機シランポリマーと、
ポリアミドポリマーと、
摩耗骨材
を含む組成物。
【請求項2】
前記アミノ官能性アルコキシシランは、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、または(N-シクロヘキシルメチル)メチルジエトキシシランである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのホモポリマー、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのホモポリマー、またはメチレンジフェニルジイソシアネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物は、イソホロンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,3,3-トリメチル-N-(1-メチルエチル)-5-[(1-メチルエチル)アミノ]シクロヘキサンメタンアミン、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルシクロヘキサンアミン)、プロパン-1,2,3-トリアミン、1,5-ペンタンジオール、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、または樹状ポリエステルポリオールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアミドポリマーは、脂肪族基、芳香族基、または両方を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記摩耗骨材は、丸みを帯びたまたは角ばった粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記摩耗骨材は、0.10~2.5mmの平均直径を有する粒子であり、かつ
前記摩耗骨材は、3~9の平均モース硬度を有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
溶媒、顔料、フィラー、添加剤、または触媒
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
表面上に請求項1に記載の組成物を塗布することと、
前記アルコキシシラン基と大気中の水分との反応およびそれに続くシラノール基の縮合により前記組成物を硬化させること
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって作られる1成分ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティング。
【請求項11】
前記組成物は、ローラー、スプレー、または鏝によって塗布される、請求項9に記載の1成分ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してポリシロキサンコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
滑り止め/ノンスリップコーティングは、ローラー、スプレー、または刷毛で塗布されると攻撃性のある表面を提供する粘性材料である。これらの材料は、海上で航空機、船員、および機材にトラクションを提供するために、水上船舶の内外の甲板に使用される。攻撃性のより低いプロファイルを有してであるが、類似の材料が、航空宇宙用地上支援機材の外装、地上車両の床、およびヘリコプターの翼にトラクションを提供するために使用される。
【0003】
海軍の水上船舶では、伝統的な滑り止めコーティングは、エポキシおよびアミン官能性分子、顔料、溶媒、フィラー、増粘剤、ならびに摩耗骨材を含有する粘性2成分(2K)材料である。これらの構成成分は、機械設備を使用してともに混合され、次いで、けばのないフェノールローラーまたはスプレーポンプを介して船舶の甲板に塗布される。海軍の滑り止めコーティングは、MIL-PRF-24667要件に該当し、航空業務の発生する甲板上に存在しなければならない。残念ながら、エポキシ-アミン滑り止めコーティングはしばしば、摩耗プロファイルの低下および変色をもたらす日光による劣化、下層の下塗り剤への不十分な密着性による甲板からの剥離、または異物(FOD)を生じる頂部破損のため、その要求される耐用年数に達する前に機能しなくなる。船員はしばしば、これらの粘性材料を手で混合できないため追加の滑り止めを塗布する能力がないにもかかわらず、腐食およびさらなる剥離を防ぐために、滑り止めが剥離した領域に下塗り剤を塗布する。結果として、船舶の甲板の領域はしばしば、配備中に摩耗面のないままであり、言うまでもなく、甲板は、滑り止めおよびむき出しの下塗り剤で所々覆われた場合、見苦しいまだらの外観を有する。
【発明の概要】
【0004】
有機シランポリマー、ポリアミドポリマー、および摩耗骨材を含む組成物が、本明細書で開示される。有機シランポリマーは、アミノ官能性アルコキシシランを1つ以上のポリイソシアネートと反応させて未反応のイソシアネート基を有する1つ以上の付加物を形成することと、付加物を1つ以上の多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物と反応させてポリマーを形成することとを含む方法によって作られる。多官能性アミノおよび/またはヒドロキシル化合物は、脂環式基または芳香族基を含む。有機シランポリマーは、未反応のイソシアネート基を含有しない。
【0005】
より完全な理解が、以下の発明を実施するための形態および添付の図面を参照することにより容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】架橋(硬化)時の有機シランポリマーを示す。
【
図3】6”×12”×1/4”のエポキシ下塗りパネル上に、けばのないフェノールローラーで塗布した後の、1成分(1K)滑り止め/ノンスリップコーティングの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の記載では、限定ではなく説明の目的で、本開示の完全な理解を提供するために特定の詳細が述べられる。しかしながら、これらの特定の詳細から逸脱する他の実施形態において本主題を実施できることは、当業者には明らかであろう。他の実施例では、不必要な詳細で本開示を不明瞭にしないために、周知の方法および装置の詳細な説明は省略される。
【0008】
ケイ素-酸素結合を含有するポリシロキサンコーティングは、すべて有機ポリマーに基づくコーティングに比べて向上された、その優れた屋外耐久性、耐薬品性、および熱安定性のため、世界のコーティング市場内でますます人気が高まっている。1成分(1K)ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティングは、構成成分の計量および混合を必要とせず、ローラーまたはスプレーで塗布することができ、かつ日光への曝露時に耐久性および保色性のある摩耗面を提供する材料を提供することによって、2Kエポキシ系コーティングの制限を克服する。
【0009】
本明細書に記載される1成分ポリシロキサン滑り止め/ノンスリップコーティングは、骨格に脂環式および/または芳香族ユニットを含有し、かつアルコキシシラン基で終端する、合成有機シランポリマーに基づく。これらの1K滑り止めコーティングはまた、アミドコーティングポリマーおよび摩耗骨材、加えてフィラー、顔料、溶媒、添加剤、および触媒を含有する。コーティングは、表面上にローラー、スプレー、刷毛、または鏝で塗布され得る。塗布されると、ポリマー内のアルコキシシラン基は、水分で加水分解してシラノールを形成する。これらのシラノールは、続いて縮合して硬いポリシロキサン/ゾル-ゲルネットワークを形成し、耐久性のある滑り止め/ノンスリップコーティングを提供する。
【0010】
有機シランポリマーは、様々な分子を使用して合成され得るが、それは、骨格に脂環式または芳香族ユニットを含まなければならない。これらの分子は、1)脂肪族、脂環式、および芳香族二官能性もしくは三官能性イソシアネートなどの、イソシアネート官能性分子、2)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、および(N-シクロヘキシルメチル)メチルジエトキシシランなどの、アミン官能性アルコキシシラン分子、3)イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジアミン、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルシクロヘキサンアミン)、メタキシリレンジアミン、およびプロパン-1,2,3-トリアミンなどの、二官能性および三官能性第一級および第二級アミン、ならびに/または4)1,5-ペンタンジオール、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、および樹状ポリエステルポリオールなどの、ヒドロキシル官能性分子を含む。
【0011】
いくつかの好適な有機シランポリマーは、米国特許第10,190,020号に開示される(本出願全体を通して参照されるすべての刊行物および特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。有機シランポリマーは、アミン官能性アルコキシシランをポリイソシアネートと反応させて付加物を形成することによって形成される末端アルコキシシラン基を有する。アミン基に対して過剰のイソシアネート基が存在し、その結果付加物は、未反応のイソシアネート基を有する。付加物を次いで、二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物と反応させて、すべての未反応のイソシアネート基を消費する。典型的な反応スキームを以下に示す。ジオールの使用は、ポリマー中にウレタン基を形成することに留意されたい。あるいは、二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物を、まずイソシアネートと反応させ、続いてアミン官能性アルコキシシランと反応させて本明細書で特許請求されるのと同じ化合物を形成できる。特許請求される化合物は、いずれの方法によっても作られ得る。反応物の各々は、そのような一般構造の化合物を複数含んでもよい。他の反応物は、存在する場合または除外される場合がある。
【化1】
【0012】
値aは、1、2、または3であり、ケイ素原子に結合した少なくとも1つのアルコキシ基が存在する。値nは、正の整数であり、ポリイソシアネートは、n+1個のイソシアネート基を有する。有機シランポリマーは、上記化合物と他の有機シランポリマーの混合物であってよい。混合物は、以下に示すように、すべてのイソシアネート基がアミン官能性アルコキシシランと反応する少量のポリマーを含んでよい。
【化2】
【0013】
反応はまた、反応物の比に依存して、化合物の混合物を生成し得る。例えば、50mol%超のアミン官能性アルコキシシランが使用される場合、ポリイソシアネートの一部は、上に示すように、アミン官能性アルコキシシランと完全に反応する。二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物からの50mol%超のNHまたはOHが使用される場合、それぞれ、反応は、以下に示すように、二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物の複数の繰り返し単位(m)を有するいくつかの化合物を生成する。
【化3】
【0014】
有機シランポリマーは、未反応のイソシアネート基を有しない。本明細書で使用する「未反応のイソシアネート基がない」とは、すべてのイソシアネート基と反応するのに十分なイソシアネート反応性基が使用されることを意味するが、微量の未反応のイソシアネートが残る可能性がある。
【0015】
アミン官能性アルコキシシランの各R1基は、すべてのR1基が同じであるか、または複数の種類のものであり得るように、独立して選択されたアルキル基であり得る。アミン官能性アルコキシシランの各R2基は、独立して選択された水素、アリール、アルキル、シクロアルキル、エステル含有脂肪族、エステル含有フッ素化脂肪族、アミド含有脂肪族、またはポリシロキサンであり得る。アミン官能性アルコキシシランは、有機シランポリマー自体とは異なる化合物であり、尿素基およびウレタン基を含まない場合がある。好適なアミン官能性アルコキシシランとしては、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(N-シクロヘキシルメチル)メチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、またはN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-β-アラニンブチルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ポリイソシアネートのR3基は、脂肪族、脂環式、または芳香族であってよい。脂肪族イソシアネートは、コーティングにより良好な可撓性および耐候性を提供し得る。好適なポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのホモポリマー、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのホモポリマー、またはメチレンジフェニルジイソシアネート、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。市販の高分子イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体および三量体などの混合物を含む場合がある。
【0017】
二官能性アミノ化合物の各R4基は、独立して選択された水素、アリール、アルキル、シクロアルキル、エステル含有脂肪族、エステル含有フッ素化脂肪族、アミド含有脂肪族、またはポリシロキサンであり得る。二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物の各R5基は、脂環式基、または芳香族基、またはそれらの任意の組み合わせを含む。好適な二官能性アミノまたはヒドロキシル化合物としては、イソホロンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,3,3-トリメチル-N-(1-メチルエチル)-5-[(1-メチルエチル)アミノ]シクロヘキサンメタンアミン、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルシクロヘキサンアミン)、プロパン-1,2,3-トリアミン、1,5-ペンタンジオール、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、または樹状ポリエステルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
アルコキシシラン末端有機シランポリマーはまた、米国特許第9,139,753号または第9,701,868号に開示される特定のポリ尿素であってよく、それらの両方は参照により本明細書に組み込まれ、その特定の主題は以下に含まれる。これらの出願の教示は、現在開示されているポリ尿素に適用され得る。
【0019】
ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、または芳香族であり得る。脂肪族ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートよりも耐候性が高く(すなわち、屋外耐久性がある)、それにより外部コーティングに利用されるとより高い色安定性を提供する。脂肪族ポリイソシアネートは、その構造に依存して、分子ごとにさまざまな数の反応性イソシアネート(NCO)基を有することができる。典型的には、数は、2.5~5.5の範囲である。本コーティング組成物の場合、脂肪族ポリイソシアネートは、分子当たり2個より多くのNCO基を有し得る。好適な脂肪族ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート(例えば、HDIおよびIPDI三量体)、ビウレット、ウレトジオン、アロファネート、オキサジアジントリオン、イミノオキサジアジンジオン、ならびにウレタン含有プレポリマーに基づく構造が挙げられるが、これらに限定されない。これらのイソシアネートの混合物も使用され得る。多くの市販の芳香族、脂肪族、および脂環式ポリイソシアネートが存在する。
【0020】
N-置換アミノ官能性アルコキシシランは、N-置換3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-置換3-アミノプロピルアルキルジアルコキシシラン、またはN-置換ジアルキルアルコキシシランであり得、ケイ素原子に結合したアルキル基は、メチルまたはエチルであり得、ケイ素原子に結合したアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、またはn-ブトキシであり得る。
【0021】
N-置換アミノ官能性アルコキシシランのN-置換基は、C1~C12アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり得る。例としては、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-イソプロピル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-tert-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、N-イソブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ノニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-ドデシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。これらの多くが市販されている。
【0022】
N-置換アミノ官能性アルコキシシランのN-置換基はまた、エステル含有脂肪族またはエステル含有フッ素化脂肪族であってよく、それらは、アクリレートなどの反応性「エン」基を有する分子と、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルアルキルジアルコキシシラン、または3-アミノプロピルジアルキルアルコキシシランとの間のマイケル付加(共役付加)反応によって形成される。アミンとのマイケル付加による付加物の形成条件は、文献でよく知られている。好適なアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、および3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。例としては、メチル3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパノエート、ブチル3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパノエート、2-エチルヘキシル3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパノエート、オクチル3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパノエート、3,3,3-トリフルオロプロピル3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパノエート、ジメチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アスパルテート、およびジエチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アスパルテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
N-置換アミノ官能性アルコキシシランのN-置換基はまた、アミド含有脂肪族であってよく、それは、アクリルアミドなどの反応性「エン」基を有する分子と、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルアルキルジアルコキシシラン、または3-アミノプロピルジアルキルアルコキシシランとの間のマイケル付加(共役付加)反応によって形成される。好適なアクリルアミドとしては、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-エチルマレイミド、およびN,N’-ジエチルマレアミドが挙げられるが、これらに限定されない。例としては、N-プロピル-3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパンアミド、N-ブチル-3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパンアミド、N-シクロヘキシル-3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロパンアミド、および1-エチル-3-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)ピロリジン-2,5-ジオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
当業者であれば、少量のイソシアネート基(例えば、1~5%)が、ポリマー中に未反応のまま残る可能性があり、それにより基材への接着を支援するのに使用され得るか、または本明細書で論じられていないイソシアネート反応性材料と反応するのに使用され得ることを理解する。しかしながら、ポリマー上のイソシアネート基のわずかな割合を開示されていない材料と反応させても、ポリマーの性質を変化させる見込みはなく、別個のポリマーと見なすべきではない。イソシアネートを含まないコーティングを作るために、すべてのイソシアネート基を有機シランポリマーの合成中に反応させることが推奨される。
【0025】
有機シランポリマーの合成に適した溶媒は、イソシアネート基と反応しないものである。これらの溶媒としては、キシレン、軽質芳香族ナフサ、ミネラルスピリット、酢酸ブチル、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、tert-ブチルアセテート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、4-クロロベンゾトリフルオリド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメチルアセトアミド、およびN-メチルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
触媒は、アルコキシシラン基の加水分解速度を加速するため、および得られたシラノール基の架橋を促進して硬化コーティングを形成するために使用され得る。好適な触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、およびジブチルスズビス(2-エチルヘキソエート)などの有機スズ化合物、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、およびアミノアルコキシシランを含むチタンキレートなどの金属アルコキシド、水酸化カリウム、有機酸、無機酸、第三級アミン、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
好適な顔料としては、二酸化チタン、カーボンブラック、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、銅フタロシアニンブルー、スルホケイ酸ナトリウムアルミニウム、酸化クロム、コバルトクロマイトグリーンスピネル、クロムグリーンブラックヘマタイト、ニッケルアンチモンチタンイエロールチル、およびマンガン系顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ポリアミドポリマーは、可撓性またはチキソトロピー性を提供するために使用されてよく、かつポリマー骨格中に含まれるアミド基を含有する任意のポリマーであり得、脂肪族、脂環式、または芳香族ポリアミドであり得る。例としては、脂肪酸系ポリアミド、二量化した脂肪酸系ポリアミド、パラフェニレンテレフタルアミド、ナイロン、ポリアスパルテート、およびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
フィラーは、組成物の体積を充填するか、粘度を調整するか、または耐食性を改善するために使用される任意の材料であり得る。例としては、タルク、セラミックミクロスフェア、非晶質シリカ、中空ガラス球、マイカ、アルミニウムフレーク、アルミニウム球、亜鉛粒子、ガラスフレーク、珪灰石、および炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
添加剤は、粘度、耐衝撃性、耐候性、または組成物の他の性質を調整するために少量含まれる任意の材料であり得る。これらの添加剤としては、顔料分散剤、ゴムビーズ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(UVA)、導電性ポリアニリン、およびグラフェンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
摩耗骨材は、組成物が固化すると組成物の表面の摩擦係数を増加させる、組成物に組み込まれる任意の粒子であり得る。それは、0.10~2.5mmの大きさおよび3~9のモース硬度からなる、丸みを帯びた、または角ばった粒子であり得る。例としては、褐色酸化アルミニウム、白色酸化アルミニウム、クルミ殻、アルミニウム、破砕ガラス、ガラスビーズ、トウモロコシの穂軸、メラミン、アクリル、および尿素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
組成物が表面に塗布されると、それは硬化して固体コーティングを形成し得る。有機シランポリマーのアルコキシシラン基は、加水分解および互いとの縮合を経る。
【0033】
2成分滑り止めコーティングと異なり、1成分ポリシロキサン滑り止めは、構成成分の計量および混合を必要としないオールインワン缶システムである。滑り止めは、撹拌および塗布が容易であり得、さらには、硬化すると攻撃的で硬いプロファイルを提供する。コーティング内のケイ素-酸素結合は、エポキシ-アミン滑り止めで使用されるもののような、すべて有機結合に基づくポリマーよりも高い、日光による劣化への耐性を提供し、したがって1K滑り止めは、より長い期間、その色およびプロファイルを保持し得る。強化された屋外耐久性を提供する1K滑り止めは、船舶の甲板での滑り止めの耐用年数を延長し、維持費を削減し得る。
【0034】
以下の実施例は、特定の用途を説明するために与えられる。これらの特定の実施例は、本出願の開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0035】
実施例1
有機シランポリマーの合成 - ヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン(Desmodur N-3400、Covestro)に基づく脂肪族イソシアネートを、窒素入口、メカニカルスターラ、および温度計を備えた1Lの四口丸底フラスコ中の4-クロロベンゾトリフルオリド(Sigma-Aldrich)(イソシアネート/溶媒重量で~1.2/1)に溶解する。次に、ビニルトリメトキシシラン(Gelest)を、水分捕捉剤として添加する。滴下漏斗を使用して、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Gelest)(当量のNH対当量のNCOの比3/5)を、温度を50~60℃に維持しながら溶液に滴下する。添加が完了したら、脂肪族環状ジアミンである1,3,3-トリメチル-1-アミノメチル-5-アミノシクロヘキサン(Clearlink 1080、Dorf Ketal)(当量のNH対当量のNCOの比2/5)を、再び温度を50~60℃に維持して滴下する。添加後、反応を、FTIR分析に従って、すべてのイソシアネート基が消費されるまで、さらに30分~1時間撹拌する。反応から作られた1つのポリマーの構造を、
図1に示す。
【0036】
実施例2
1成分滑り止め/ノンスリップ配合物 - 1成分滑り止め/ノンスリップコーティングを、実施例1からの有機シランポリマーを二酸化チタン(R-960、Chemours)、無機黒色顔料(Black 30C940、Shepherd Pigments)、無機青色顔料(Blue 30C527、Shepherd Pigments)、およびセラミックミクロスフェア(W-610、3M)と混合することによって調製する。これに続いて、アミド含有ポリマー(Crayvallac PA4BA20、Palmer Holland)、フィブリル化高密度ポリエチレン繊維(Mini Fibers, Inc.)、12~30メッシュのガラスビーズ(Blast-O-Lite)、およびジブチルスズジラウレート(Sigma- Aldrich)を添加する。配合物中の割合の範囲を、表1に示す。混合後、コーティングを、9インチのけばのないフェノールローラー(Grainger)を使用してエポキシ下塗り鋼板上に塗布し、次いで、72°Fおよび相対湿度40~60%で14日間硬化させる。
図2は、反応から作られた1つの架橋(硬化)有機シランポリマーの構造を示す。
図3は、一晩硬化後の、ローラーで塗布された滑り止め/ノンスリップコーティングの例を示す。ポリシロキサンコーティングは、1日後に触れると硬い。
【0037】
使用する有機シランポリマーの量は、用途に依存する。例えば、階段用のノンスリップ処方は、高い割合のポリマー、ならびに低い割合の骨材およびフィラーを使用する。車道用の高摩擦の滑り止め表面は、より低い割合のポリマー、ならびにより高い割合の骨材およびフィラーを使用する。
【表1】
【0038】
明らかに、上記の教示に照らして多くの修正および変形が可能である。したがって、特許請求される主題は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施され得ることを理解すべきである。例えば、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、または「前記(said)」を使用した、単数形のクレーム要素への言及は、要素を単数形に限定するものと解釈されない。
【国際調査報告】